JP6525650B2 - 摺動部材 - Google Patents

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Description

本発明は、摺動部材に関する。
多孔質材料に潤滑油等の摩擦低減材料を含浸させてなる摺動部材は、古くから知られており、含油軸受(焼結金属、合成樹脂等の多孔質材料に潤滑油を含浸した軸受)等の用途で広く用いられている。このような摺動部材は、低摩擦化による省エネルギーの観点から様々な開発が行われてきている。
例えば、特許文献1には、摺動部材として、摩擦低減材料である特殊な潤滑油を用いた含油軸受が開示されている。ここで特許文献1の摺動部材には、グリースのように液ダレ・液漏れ・飛散汚染の抑制効果がありながら、刺激により低粘性の潤滑油として働く、熱可逆性ゲル状の潤滑性を有する組成物を上記特殊な潤滑油(摩擦低減材料)として利用している。尚、ここでいう飛散汚染とは、所定の材料が飛散して飛散先を汚染することをいうが、このとき当該材料が飛散しても飛散先において液ダレ・液漏れがない場合は飛散汚染が抑制されていることを意味する。
また特許文献1においては、上記特殊な潤滑油(摩擦低減材料)として用いられる組成物として、含油軸受に用いられる軸受用潤滑剤が挙げられている。この軸受用潤滑剤は、鉱油系及び/又は合成系の液状潤滑基油に、昇温による液状化と降温によるゲル化とを繰り返す熱可逆ゲルを生成するビスアミド及び/又はモノアミドを配合することで調製される。またこの軸受用潤滑剤は、0℃乃至80℃においてはゲル状を保つ一方で、100℃乃至200℃においてのみ液状となる熱可逆性ゲルが備える潤滑性を有する組成物である。
特開2012−17472号公報 特開平9−87158号公報 特開2014−112636号公報 特表2008−533245号公報
しかしながら、特許文献1に示されている組成物は、室温ではグリースのように液ダレ・液漏れ・飛散汚染の抑制効果も持たせるために、ゾル−ゲル相転移温度が低くても80℃程度である。このため特許文献1に示されている組成物は、室温においては必然的にゲルとして作用するが潤滑油(摩擦低減材料)としては機能しない。その結果、特許文献1に示されている組成物を用いた摺動部材である含油軸受においては室温では十分な摩擦低減効果が得られない。加えて、特許文献1に示されている組成物は、特に、室温下でかつ摩擦熱も十分に発生しない静摩擦段階においては良好な摩擦低減効果が得られない場合があった。つまり、グリースのように液ダレ・液漏れ・飛散汚染の抑制効果がありながら、刺激により潤滑油として働く摩擦低減材料を有する摺動部材にはさらなる改良の余地があった。
本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、グリースのように液ダレ・液漏れ・飛散汚染の抑制効果がありながら、室温でも十分な摩擦低減効果が得られ、また特に静摩擦段階でも良好な摩擦力の低減が行える摺動部材を提供することにある。
本発明の摺動部材は、多孔質部と、前記多孔質部中に含まれるゲル状組成物少なくとも摺動面の一部に有し、
前記ゲル状組成物が、
ポリスチレン系材料、セルロース及びポリエーテルを含む混合物、および水素化ブロックコポリマーから選ばれる少なくとも1つの有機ポリマーと、
アミド系油、水、エステル油から選ばれる少なくとも1つの潤滑媒体を有するチクソゲルであり、
前記ゲル状組成物に対して、前記有機ポリマーが、1重量%以上40重量%未満含まれることを特徴とする。
本発明によれば、グリースのように液ダレ・液漏れ・飛散汚染の抑制効果がありながら、室温でも十分な摩擦低減効果が得られ、また特に静摩擦段階でも良好な摩擦力の低減が行える摺動部材を提供することができる。
動作機構の例を示す模式図である。 図1(a)中のα部分の部分拡大図である。
本発明の摺動部材は、多孔質部と、前記多孔質部中に含まれるゲル状組成物少なくとも摺動面の一部に有している。本発明において、ゲル状組成物は、有機ポリマーと、潤滑媒体とを有するチクソゲルである。また本発明において、ゲル状組成物に対して、有機ポリマーは、1重量%乃至50重量%含まれる。
以下、本発明の実施形態を説明する。
[摺動部材]
本発明において、摺動部材とは、他の部材と接触した状態で運動することにより摺動する部材に限られず、他の部材と接触した状態で当該他の部材が運動することにより相対的に摺動する部材も含まれる。
本発明の摺動部材の形状は、他の部材と接触する接触面、即ち、摺動面を有する形状であれば特に限定されない。本発明の摺動部材の好ましい形状として、例えば、シート状及びドーナツ状が挙げられる。
次に、本発明の摺動部材に含まれる部材について説明する。
(1)多孔質部
本発明の摺動部材を構成する多孔質部は、少なくとも摺動部材の摺動面の一部に設けられるが、摺動面の全面にわたって多孔質部が設けられてもよい。また本発明においては、摺動部材そのものが多孔質材料で形成されることで、摺動部材の外形そのものが多孔質部であってもよい。
このように、本発明の摺動部材は、少なくとも摺動面の一部に多孔質部を設けていればよいので、摺動面ではない面の外側を金属等の多孔質でない材料で覆ってもよい。また本発明の摺動部材を作製する際には、多孔質でないマトリックスの中に多孔質材料をその表面が表出される程度に埋め込まれている部材や、多孔質でないマトリックスの一部の面を加工して多孔質化したもの等を用いることができる。
本発明において、多孔質部の構造、即ち、空孔率、空隙率、骨格径、細孔径等の多孔質部の物性によって特定される構造は、摺動部材に対して要求される特性に合わせて適宜選択すればよい。
多孔質部を構成する多孔質材料としては、特に限定されるものでは無く、材料自体が有する多孔質内に後述するゲル状組成物を含ませることができる材料であれば、所望の物性に応じて、従来公知のものを適宜単独あるいは組み合わせて用いることができる。また多孔質材料の形状や厚み、多孔質材料が有する細孔の種類(独立孔、連続孔)、細孔の大きさや細孔の配置等は、本発明の摺動部材において所望の物性や用いる用途に応じて適宜最適なものを選択すればよい。
本発明において、多孔質部の構成材料となる多孔質材料として、好ましくは、連続孔を有する材料である。ここでいう連続孔とは、多孔質材料の表面から内部へ向けて伸びる細長い孔をいう。連続孔を有する多孔質材料は、独立孔のみの多孔質材料と比較してより多くのゲル状組成物を孔内に導入することができる。また本発明において、連続孔の孔径は、好ましくは、1μm乃至50μmである。連続孔の孔径が1μm乃至50μmであると、毛細管現象を利用してゲル状組成物を孔内に導入することができる。
本発明において用いられる多孔質材料として、例えば、焼結銅や焼結アルミニウム等の焼結金属;焼結フッ素樹脂等の焼結樹脂;焼結カーボン;母金属相中に金属やセラミックスの粒子や繊維を加えて焼結することにより固体化した焼結複合材料;活性炭;グラスウール;スポンジ;フェルト;セラミック;グラファイト;連続気泡発泡シート、合成樹脂シートを延伸して得られた多孔質シート、抽出法又は凝固法等で製造された多孔質シート等が挙げられる。
上記多孔質シートを構成している合成樹脂として、例えば、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスルホン樹脂等が挙げられる。もちろん、エポキシ樹脂発泡体、メラミン樹脂発泡体、尿素樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体等の樹脂発泡体やポリプロピレン樹脂多孔質体等も上記多孔質シートとして利用できる。
特に、使用される多孔質材料が樹脂系の多孔質材料の場合は、軽量性や、成形性が高まるため、輸送コストや生産性等の観点から好適である。尚、樹脂系の多孔質材料は、後述するゲル状組成物に対して化学的に安定であれば特に制限はない。また用いられる多孔質材料の融解温度、即ち、融点Tmがゲル状組成物のTmよりも高い場合には、多孔質材料に当該ゲル状組成物を加熱して液体状態にしてから含浸させることも可能となるため好適である。
(2)ゲル状組成物
本発明の摺動部材に用いられるゲル状組成物は、有機ポリマーと、潤滑媒体とを有するチクソ性を有するゲル(チクソゲル)である。本発明において、ゲル状組成物を構成する有機ポリマー及び潤滑媒体は、ゲル状組成物がチクソ性を有するものであるならば、その組み合わせは特に限定されるものではない。尚、本発明において、有機ポリマーは、チキソトロピー剤成分とも呼ばれる材料である。
本発明において、チクソゲルとは、塑性固体で示されるゲルの性質と非ニュートン液体で示されるゾルの性質との中間となる性質を有する物質である。具体的には、せん断応力を印加すると液状になる(ゲルからゾルへの相転移)一方で、せん断応力の印加が静止すると粘度が上昇し固体状になる(ゾルからゲルへの相転移)性質を有するゲルである。チクソ性を有するゲル状組成物は、室温下でシェアがかからない状態ではゲル状で固化しているため、グリースのように液ダレ・液漏れ・飛散汚染を抑制する効果がある。またせん断応力に対してゾル−ゲル相転移が敏感であるほど、必然的に、摩擦低減効果が高まる傾向にある。
尚、ゲル内部の流動性が高い点から、無機材料を母体とするゲル状組成物よりも、有機ポリマー等の有機材料を母体とするゲル状組成物の方が、ゾル−ゲル相転移がより早い傾向にある。また、チキソトロピー剤成分として有機ポリマー等の有機材料を用いる方が、ゾル−ゲル相転移後のゲル状組成物の流動性も良好になるため好ましい。その結果、特に、静摩擦段階(摺動部材が静止している段階)においても摩擦力の低減をきわめて良好に行うことができる傾向にある。即ち、静摩擦係数と動摩擦係数との差を小さくする効果が高まる傾向にあるため、ゲル状組成物の中でも有機ポリマー等の有機材料を有するものが望ましい。
ゲル状組成物にチキソトロピー剤成分として含まれる有機ポリマーとして、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド等のポリエーテル類、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の合成セルロース類、ジグリセリンモノオレアート、ジグリセリンラウラート、デカグリセリンオレアート、ジグリセリンモノラウラート、ソルビタンラウラート等の油脂、水素化ヒマシ油及びそれらの誘導体、カチオン性架橋共重合体、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS、ポリブタジエン/スチレン共重合体)、水素化ブロックコポリマー等の共重合材料等が挙げられる。尚、以上列挙した有機ポリマーは、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
チキソトロピー剤成分として、特に、有機ポリマーを用いる場合は、ポリマー同士の絡み合い効果等によってゲル内でのネットワークが良好に形成されるため、ゲル状組成物(チクソゲル)がゲル状態になった時の硬さが高い傾向にある。またチキソトロピー剤成分として有機ポリマーを用いると、ゾル状態のときに一旦解れたポリマー同士の絡み合いが高分子ネットワークにより再び良好に絡み合う。これにより、ゾル状態とゲル状態とを交互に変化するゾル−ゲル相転移の速度が早くなる。その結果、グリースのように液ダレ・液漏れ・飛散汚染を抑制する効果が極めて良好に発揮される。
また有機ポリマーが、例えば、チキソトロピー剤成分としてゲル状組成物に含まれる場合、この有機ポリマーは、共重合体で形成されていることが好ましい。共重合体の有機ポリマーは、相異なる性質を持つ複数種類のモノマーユニットを適宜組み合わせて構成されているので、成分の組み合わせ、割合、配列等を調節して、チクソ性や流動性等といったゲル状組成物の性質を適宜コントロールできるからである。
ゲル状組成物に含まれる潤滑媒体としては、ゲル状組成物が備えるべき所望の特性を考慮してこの所望の特性に適する潤滑媒体を選択すればよい。潤滑媒体として、例えば、水、オイル等の有機溶媒等が挙げられる。一般的に、水溶性の有機ポリマーを使用する場合、潤滑媒体としては水等の極性が強い溶媒が用いられる。また非水溶性(親油性)の有機ポリマーを使用する場合、潤滑媒体としてはオイル等の極性が弱い有機溶媒が用いられる。本発明において、潤滑媒体として用いられる溶媒は、一種類であってもよいし、二種類以上であってもよい。
また潤滑媒体として用いられる溶媒の粘度は、チクソ性等の所望の物性を有するゲル状組成物が得られるのであれば特に制約はない。尚、潤滑媒体として用いられる溶媒の粘度が低い場合、ゾル−ゲル相転移によってゲル状組成物が液状化したときの粘度が低くなる傾向にある。このように液状化したゲル状組成物の粘度が低いと、摩擦低減効果が大きくなる傾向にある。
本発明の摺動部材を構成するゲル状組成物には、上述した有機ポリマー及び潤滑媒体の他に、添加剤が適宜含まれてもよい。ここでいう添加剤としては、有機低分子化合物又は無機化合物からなるチキソトロピー剤成分、潤滑媒体に含まれる溶媒以外の物質、例えば、酸化防止剤等の安定剤、有機リン系化合物等の界面活性剤等が挙げられる。
有機低分子化合物からなるチキソトロピー剤成分として、例えば、脂肪酸アミド(例えば、ステアラミド、ヒドロキシステアリン酸ビスアミド);脂肪酸エステル(例えば、キャスターワックス、ビーズワックス、カルナウバワックス)等が挙げられる。
無機化合物からなるチキソトロピー剤成分として、例えば、シリカ粉体、カオリン粉体等が挙げられる。
尚、上述したように、有機成分のみから形成されるゲル状組成物は、無機成分を有するゲル状組成物よりも摩擦低減効果が高く、また/あるいは静摩擦段階における摩擦低減効果が高い場合がある。これは、ゲル状組成物に無機成分が含まれると、必然的に粘度上昇を招くことが原因であり、この粘度上昇により液状(ゾル状)になっても摩擦を良好に低減できなくなったり、静摩擦と動摩擦との差が大きくなったりする。
従って、本発明においては、ゲル状組成物中に無機成分をなるべく含ませないようにするのが好ましい。具体的には、無機成分は、ゲル状組成物に対して3重量%未満含まれることが好ましく、0.3重量%未満含まれることがより好ましい。このように無機成分の含有量を制限することで、特に、静摩擦段階における摩擦低減効果が極めて良好に現われる。即ち、静摩擦係数と動摩擦係数の差が小さくなるため好ましい。また上述した無機化合物からなる粉体(例えば、特許文献2に記載のシラノール基を有する無機粉体)を用いてゲル状組成物を形成する場合、ゲル状組成物を増粘させるには、多量の無機化合物が必要となり、ハンドリングの悪さ、分散性、安定性の面で問題がある。
また、ゲル状組成物に含まれる潤滑媒体が水である場合、この水には、上述した無機成分を極力含めないにすることが好ましい。
本発明において、ゲル状組成物に含まれる潤滑媒体と、有機ポリマー等からなるチキソトロピー剤成分との組成割合は、チクソ性等の所望の物性を有するゲル状組成物が得られる組合せであれば特に制約はない。一般的に、ゲル状組成物中に含まれるチキソトロピー剤成分の割合が少ない方がゾル−ゲル相転移が小さいシェアで誘起される傾向があるため好ましい。一方、チキソトロピー剤の割合が大きくなると、当然ながらゲル化し易くなる。ゲル状組成物に対してチキソトロピー剤成分は、0.1重量%以上90重量%以下含まれるが望ましく、好ましくは、1重量%以上30重量%以下含まれる。チキソトロピー剤成分が有機ポリマーである場合、ゲル状組成物が備えるチクソ性の観点から、有機ポリマーは、ゲル状組成物に対して1重量%以上50重量%以下含まれる。有機ポリマーは、好ましくは、ゲル状組成物に対して、1重量%以上30重量%以下含まれ、より好ましくは、5重量%以上30重量%以下含まれる。
本発明の摺動部材において、摩擦低減化の度合いは、必然的に、ゲル状組成物の配置位置や導入量、ゲル状組成物が有するチクソ性等により変化する。ここでこれらの特性は、ゲル状組成物の構成材料(有機ポリマー、潤滑媒体等)や組成に依存するものであるため、所望の特性を奏するようにゲル状組成物の構成材料や組成は適宜選択される。
(3)本発明の摺動部材の作用・効果
本発明の摺動部材は、少なくとも摺動面の一部に設けられる多孔質部中にチクソ性を有するゲル状組成物が導入されている。このため、シェア(せん断力、せん断応力)等の応力が印加されない状態では、グリースのように液ダレ・液漏れ・飛散汚染を抑制する効果がある。従って、応力が印加されていない状態では、多孔質部中に設けられるゲル状組成物は多孔質部から漏れたり、飛び散ったりすることはない。一方、本発明の摺動部材に摺動対象物が摺動することで、シェアがかかる(せん断応力が印加される)場合、ゲル状組成物が液状になる。ここで液状化したゲル状組成物の一部が多孔質部から飛散したとしても、飛散したものについてはシェアがかからなくなる(せん断応力の印加が行われなくなる)ことでゲル化するため、その飛散先でのさらなる汚染等は起こらない。つまり、本発明の摺動部材を構成するゲル状組成物は、仮に飛散したとしても飛散後の汚染広がりは抑制される。
一方、本発明の摺動部材は、その摺動面に摺動対象物が接触し、本発明の摺動部材又は摺動対象物が摺動することで、ゲル状組成物にシェアがかかり、ゾル−ゲル相転移が誘起され、ゲル状組成物が潤滑油状に変化するため、室温でも良好な摺動が得られる。加えて、摺動開始のシェアとともにゾル−ゲル相転移が誘起されるため、静摩擦段階においても良好な摩擦低減効果が得られる。その結果、動摩擦係数と静摩擦係数の差が小さくなる。つまり、シェア等の機械的負荷が加わる段階と加え続けている段階において、摩擦係数の大きな測定ばらつきは起こらない。即ち、機械的負荷が加わる段階と加え続けている段階とにおける摩擦係数の差である動摩擦係数と静摩擦係数との差Δμが低くなる。
以上のことから、本発明の摺動部材は、グリースのように液ダレ・液漏れ・飛散汚染を抑制する効果がありながら、室温でも十分な摩擦低減効果が得られる。特に、静摩擦段階において摩擦力を良好に低減することが可能となる。
[摺動部材の製造方法]
本発明の摺動部材の製造方法としては、従来公知の方法を適宜用いることができ、その具体的な製造プロセスは特に限定されない。例えば、下記(1)乃至(3)の工程を経て製造されるが、少なくとも(1)及び(2)の工程を経るのが好ましい。
(1)ゲル状組成物を液状化させる液状化工程
(2)液状化したゲル状組成物を多孔質部へ埋設する埋設工程
(3)ゲル状組成物を加熱しつつ圧力をかけることで摺動面を均一にする成型工程
以下、各工程において説明する。
(1)液状化工程
ゲル状組成物を液状化させる方法としては、ゲル状組成物にシェアをかける方法、ゲル状組成物を融点温度以上に加熱する方法等が挙げられる。これら方法のうち、ゲル状組成物を融点温度以上に加熱する方法は、取り扱いの観点から好適な方法である。
(2)埋設工程
本発明において、ゲル状組成物は、少なくとも摺動面の一部に設けられる多孔質部に埋設される。ここで摺動面の全面に多孔質部が設けられる場合は、この摺動面の少なくとも一部にゲル状組成物が埋設されていればよいが、好ましくは、この摺動面の全面にわたってゲル状組成物が埋設される。ゲル状組成物が埋設される面積が大きければ大きいほどゲル状組成物の埋設による摩擦低減効果、特に、静摩擦段階における摩擦低減効果が大きくなる。
また、ゲル状組成物によってもたらされる摺動面における摩擦低減効果を効果的に生じさせるという観点から、ゲル状組成物は、一定の厚みをもって多孔質部中に埋設されるのが好ましい。本発明において、多孔質部中に埋設されるゲル状組成物の厚みは、特に限定されないが、摺動部材を構成する多孔質部が摺動面近辺にのみ設けられる場合は、この多孔質部により多くのゲル状組成物が埋設されるようにゲル状組成物の厚みを調整するのが好ましい。
ここで、摺動部材の全体が多孔質材料で構成される場合、ゲル状組成物は、少なくとも摺動面において一定の厚みをもって当該多孔質材料中に埋設されるのが望ましいが、ゲル状組成物の埋設量や埋設深さ(厚み)は、所望の材料物性に応じて適宜調整ができる。
例えば、摺動部材を構成する多孔質材料の形状がシート状である場合、摺動面に通じている細孔においてその表面から対向する面方向への断面において、ゲル状組成物は、0.1%から100%含浸されていることが好ましい。シートの厚みに対して0.1%以上の厚みでゲル状組成物を埋設することで、ゲル状組成物のゾル−ゲル相転移によってもたらされる摩擦力の低減の効果が良好に表れる。
ここで、多孔質部にゲル状組成物を埋設する方法として、例えば、前工程(液状化工程)で液状化したゲル状組成物を多孔質部に含浸させる方法が挙げられる。
(3)プレス工程
上述した埋設工程により多孔質部中にゲル状組成物が埋設されるが、摺動面を均一にする目的で、上記埋設工程の後でプレス処理等を行ってもよい。
このプレス処理の具体的手法としては特に限定されないが、ゲル状組成物の厚みを均一に揃えやすいことから、例えば、熱圧着によるホットプレスが特に好適に用いることができる。尚、ここでいう「ホットプレスする」とは、加熱しながらプレスすることに限定されず、プレスした状態で昇温することも含まれる。
本工程(プレス工程)を行う際に、加熱温度、プレス圧、時間については、上記ゲル状組成物を構成する有機ポリマーの分解温度以下であれば特に限定されるものではない。つまり、用いる有機ポリマーや、本発明の導電材料を構成する導電性材料及びポリマー化合物等に応じて適宜選択すればよい。例えば、加熱プレスの温度は、30℃乃至150℃にすることが好ましい。また、プレス圧は1kg/cm2乃至100kg/cm2の範囲で設定するのが好ましく、10kg/cm2乃至50kg/cm2の範囲で設定するのがより好ましい。
以上の工程を経て本発明の摺動部材が製造される。尚、得られた摺動部材の表面状態や摺動部材を構成するゲル状組成物(チクソゲル)の埋設の状態は、レーザー顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)測定による直接観察により容易に確認できる。
[摺動部材の用途]
本発明の摺動部材は、グリースのように液ダレ・液漏れ・飛散汚染の抑制効果がありながら、室温でも十分な摩擦低減効果が得られる。特に、静摩擦段階において摩擦力を良好に低減できる。このことから本発明の摺動部材は、例えば、省エネルギーや静音等の観点から低摩擦化を必要とする、すべり軸受け等の摺接製品等を構成する一の部材として好適に利用することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明について説明する。図1は、動作機構の例を示す模式図である。具体的には、(a)は、第1例を示す斜視図であり、(b)は、第2例を示す断面図である。尚、図1は、本発明の摺動部材の使用態様の例を示す模式図でもある。
図1(a)の動作機構10aは、平板上の基材11と、この基材11の上に設けられるシート状の摺動部材1と、この摺動部材1の表面を摺動する丸棒状の軸12と、を有している。図1(a)の動作機構10aにおいて、摺動部材1は、シート状の多孔質材料と、この多孔質材料中に含まれるゲル状組成物(チクソゲル)と、を有する部材である。図2は、図1(a)中のα部分の部分拡大図である。つまり、図2は、図1(a)中の摺動部材1の表面の一部分を示す図である。図2において、摺動部材1は、細長い形状の孔を複数有する多孔質材料3と、多孔質材料3が有する孔に充填されているゲル状組成物4と、を有している。尚、図1(a)の動作機構10aにおいて、摺動部材1を構成するゲル状組成物4は、少なくとも軸12と摺接する(軸12に対して相対的に摺動する)摺動面1a、即ち、摺動部材1の表面に設けられる。
一方、図1(b)の動作機構10bは、丸棒状の軸12と、この軸12に相対的に摺動する摺動部材2である軸受と、を有している。また図1(b)において、この摺動部材2である軸受は、軸受本体13の一部、具体的には、軸12と摺接する(軸12に対して相対的に摺動する)摺動面の一部に、凹部13aが3か所設けられている。ここでこの凹部13aには、多孔質部となるドーナツ形状の多孔質材料3が設けられており、この多孔質材料3中にゲル状組成物4が充填されている。尚、ここでいうドーナツ形状とは、軸12の方向に一定の幅を有する円筒の周方向に沿った環状形状をいい、このドーナツ形状の内側面は、摺動部材2が軸12と接触した状態で相対的に摺動する際の摺動面の一部である。
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、以下に説明する実施例はあくまでも例示にすぎず、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また以下に説明する実施例を、発明の要旨の範囲内において適宜変形、変更したものについても本発明に含まれる。
[ゲル状組成物及び摺動部材の評価方法]
後述する実施例及び比較例で得られるゲル状組成物及び摺動部材の評価方法を以下に説明する。
(1)ゲル状組成物の液ダレ・液漏れ・飛散汚染の抑制効果の評価
後述する実施例及び比較例において調製したゲル状組成物(チクソゲル)の液ダレ・液漏れ・飛散汚染の抑制効果の評価は以下に説明する方法で行った。まず当該ゲル状組成物をバイヤル瓶に半分程度詰め、室温下で静置し、この状態におけるゲルの充填高さ(瓶の下面からゲル表面までの長さ)を測定した。次に、バイヤル瓶をゆっくりと逆さにして終夜放置し、放置後におけるゲルの充填高さ(瓶の上面からゲル表面までの長さ)を測定した。そして、逆さの状態で放置させる前後におけるゲル状組成物の充填高さを基に、下記(★)の計算式からゲル状組成物の状態変化割合を計算した。
[バイヤル瓶を逆さまにして放置した後のゲルの充填高さ]÷[バイヤル瓶を逆さまにする前のゲルの充填高さ]=[ゲル状組成物の状態変化割合] (★)
そしてその計算結果を、下記表1の通り、下記(i)乃至(iii)の三段階のいずれかで評価した。
Figure 0006525650
グリースについても上記評価を行ったところ、(i)と評価されたため、(i)と評価されたものについては、液ダレ・液漏れ・飛散汚染の抑制効果がグリースと同様であると判断できる。そこで、ゲル状組成物の液ダレ・液漏れ・飛散汚染の抑制効果の評価の際には、評価ランクが(i)の場合は、○(合格)と評価し、それ以外の評価ランクの場合は×(不合格)と評価した。
(2)ゲル状組成物(チクソゲル)の室温におけるゾル−ゲル相転移の評価
後述する実施例及び比較例において調製したゲル状組成物(チクソゲル)の、室温におけるゾル−ゲル相転移の確認は以下に説明する方法で行った。即ち、調製したゲル状組成物(チクソゲル)を詰めた瓶を左右に激しく振り、瓶を振る前後におけるゲル状組成物の充填高さから、下記(★★)の計算式からゲル状組成物の状態変化割合を計算した。
[瓶を振った後のゲルの充填高さ]÷[瓶を振る前のゲルの充填高さ]
=[ゲル状組成物の状態変化割合] (★★)
そしてその計算結果を、下記表2の通り、下記(i)乃至(iii)の三段階のいずれかで評価した。
Figure 0006525650
ここで、(ii)又は(iii)と評価された場合、室温でのゾルゲル相転移が確認できたとして、○(合格)と評価し、(i)と評価された場合は×(不合格)と評価した。
(3)摺動部材の摩擦評価
後述する実施例及び比較例で作製したサンプル(摺動部材)において、その摩擦係数は、往復型摩擦試験機(新東科学社製)を用いた摩擦試験で測定した。尚、摩擦試験は、ゲル状組成物を埋設した多孔質材料の表面で行った。また摩擦係数を測定する際は、次の条件の下で行われる摺動操作を30セット行った。
摺動部材の材質・形状:SUS材・10mmφボール形状
荷重:100g
摺動速度:600mm/min
摺動距離:30mm
往復回数:10回
雰囲気:室温・大気下
ここで試験開始直後の測定値を静摩擦係数とし、30セット目の摺動操作における測定値を動摩擦係数とした。測定の結果、動摩擦係数が0.2以下の場合は、「室温でも十分な摩擦低減効果が得られる」とし、摩擦評価については○(合格)と評価した。一方、動摩擦係数が0.2よりも大きい場合は、×(不合格)と評価した。また測定の結果得られる動摩擦係数及び静摩擦係数を用いて動摩擦係数及び静摩擦係数の差分Δμを算出し、下記の評価基準に照らして評価した。
(a):Δμがきわめて小さい(動摩擦係数に対するΔμの割合が10%未満)。
(b):Δμが小さい(動摩擦係数に対するΔμの割合が10%以上30%未満)。
(c):Δμが大きい(動摩擦係数に対するΔμの割合が30%以上)。
ここで、Δμが小さい場合、具体的には、ランク(a)又は(b)と評価された場合は、「静摩擦段階においても摩擦力を良好に低減できる」として○(合格)と評価した。一方、ランク(c)と評価された場合は×(不合格)と評価した。
ここで上記(1)乃至(3)による評価の結果、全て合格(○)と評価された場合は、グリースのように液ダレ・液漏れ・飛散汚染の抑制効果がありながら、室温でも十分な摩擦低減効果を奏する摺動部材が得られたといえる。
[実施例1]
(1)ゲル状組成物(チクソゲル)の調製
有機ポリマーとしてポリスチレン系材料であるHIPS(旭化成ケミカルズ株式会社製)を、潤滑媒体としてアミド系油であるジメチルアセトアミド(DMAc)を、それぞれ用いて、以下に示す方法によりゲル状組成物(チクソゲル)を調製した。
まずHIPSと、DMAcとを混合した。このとき、混合物全体に対するHIPSの含有量が5重量%になるように調整した。次に、この混合物を加熱撹拌しながらHIPSを溶解させた後、室温下静置させた。これにより、ゲル状組成物(チクソゲル)を得た。
(2)摺動部材の作製
まず(1)で作製したゲル状組成物を加熱しながら撹拌することで液状にした。次に、液状化したゲル状組成物をポリエチレン樹脂多孔質体(日東電工社製、孔径:17μm、気孔率:30%、厚さ:2mm)に含浸させた。次に、150℃に加熱した加熱プレスを用いて、加圧力0.1MPaで1分間上記多孔質体の表面をホットプレスした。これにより、多孔質材料中にゲル状組成物(チクソゲル)を有する摺動部材を作製した。
尚、レーザー顕微鏡による撮影から、多孔質材料中にチクソゲルが埋設されていることを確認した。
[実施例2]
実施例1(1)において、混合物全体に対するHIPSの含有量が13重量%になるように調整したこと以外は、実施例1と同様の方法により摺動部材を作製した。
[実施例3]
実施例1(1)において、混合物全体に対するHIPSの含有量が26重量%になるように調整したこと以外は、実施例1と同様の方法により摺動部材を作製した。
[実施例4]
特許文献3を参考にして、有機ポリマーとしてセルロース及びポリエーテルからなる混合材料を、潤滑媒体として純水を、それぞれ用いて、以下に示す方法で摺動部材を作製した。
(1)ゲル状組成物(チクソゲル)の調製
上記混合材料と、純水とを混合した。このとき、混合物全体に対する上記混合材料の総含有量が12重量%になるように調整した。次に、この混合物を加熱撹拌しながら上記混合材料を溶解させた後、室温下静置させた。これにより、ゲル状組成物(チクソゲル)を得た。
(2)摺動部材の作製
(1)で作製したゲル状組成物を加熱しながら撹拌することで液状にした。次に、液状化したゲル状組成物をテフロン(登録商標)樹脂多孔質体(PTFE、日東電工社製)に含浸させた。次に、150℃に加熱した加熱プレスを用いて、加圧力0.1MPaで1分間上記多孔質体の表面をホットプレスした。これにより、多孔質材料中にゲル状組成物(チクソゲル)を有する摺動部材を作製した。
[実施例5]
実施例1(1)において、ゲル状組成物を調製する際に、HIPSと、スメクタイト(コープケミカル社製)と、DMAcとを混合した。このとき、混合物全体に対するHIPS及びスメクタイトの含有量が、それぞれ6重量%、1重量%になるように調整した。これを除いては、実施例1と同様の方法により摺動部材を作製した。
[実施例6]
特許文献4を参考にして、有機ポリマーとして水素化ブロックコポリマーを、潤滑媒体としてエステル油(ダイズ油)を、それぞれ用いて、以下に示す方法で摺動部材を作製した。
(1)ゲル状組成物(チクソゲル)の調製
水素化ブロックコポリマーと、エステル油(ダイズ油)とを混合した。このとき、混合物全体に対する水素化ブロックコポリマーの含有量が22.5重量%になるように調整した。次に、この混合物を加熱撹拌しながら水素化ブロックコポリマーを溶解させた後、室温下静置させた。これにより、ゲル状組成物(チクソゲル)を得た。
(2)摺動部材の作製
(1)で作製したゲル状組成物を加熱しながら撹拌することで液状にした。次に、液状化したゲル状組成物をポリプロピレン樹脂多孔質体(富士ケミカル社製、孔径:30μm、気孔率:35%、厚さ:10mm)に含浸させた。次に、150℃に加熱した加熱プレスを用いて、加圧力0.1MPaで1分間上記多孔質体の表面をホットプレスした。これにより、多孔質材料中にゲル状組成物(チクソゲル)を有する摺動部材を作製した。
[比較例1]
実施例1(1)において、混合物全体に対するHIPSの含有量が40重量%になるように調整したこと以外は、実施例1と同様の方法により摺動部材を作製した。
[比較例2]
(1)ゲル状組成物(チクソゲル)の調製
スメクタイト(コープケミカル社製)と、水とを混合した。このとき、混合物全体に対するスメクタイトの含有量が6重量%になるように調整した。次に、この混合物を加熱撹拌しながらスメクタイトを溶解させた後、室温下静置させた。これにより、ゲル状組成物を得た。
(2)摺動部材の作製
(1)で作製したゲル状組成物を加熱しながら撹拌することで液状にした。次に、液状化したゲル状組成物をポリプロピレン樹脂多孔質体(富士ケミカル社製、孔径:30μm、気孔率:35%、厚さ:10mm)に含浸させた。次に、150℃に加熱した加熱プレスを用いて、加圧力0.1MPaで1分間上記多孔質体の表面をホットプレスした。これにより、多孔質材料中にゲル状組成物を有する摺動部材を作製した。
[比較例3]
特許文献1を基にして、以下に示す方法で摺動部材を作製した。
(1)ゲル状組成物の調製
アミド材料(低分子系材料)と、エステル油(VG32)とを混合した。このとき、混合物全体に対するアミド材料の含有量が17重量%になるように調整した。次に、この混合物を加熱撹拌しながらアミド材料を溶解させた後、室温下静置させた。これにより、ゲル状組成物を得た。
(2)摺動部材の作製
(1)で作製したゲル状組成物を加熱しながら撹拌することで液状にした。次に、液状化したゲル状組成物をポリプロピレン樹脂多孔質体(富士ケミカル社製、孔径:30μm、気孔率:35%、厚さ:10mm)に含浸させた。次に、150℃に加熱した加熱プレスを用いて、加圧力0.1MPaで1分間多孔質体の表面をホットプレスした。これにより、多孔質材料中にゲル状組成物(チクソゲル)を有する摺動部材を作製した。
[性能評価]
下記表3に、各実施例、比較例にてそれぞれ得られたゲル状組成物及び摺動部材について、「液ダレ・液漏れ・飛散汚染の抑制効果」、「室温でゾル−ゲル相転移」及び「Δμ」に関する評価結果を下記表3に示す。
Figure 0006525650
実施例(実施例1乃至実施例6)、比較例1及び比較例3より、摺動部材に含まれるゲル状組成物がチクソ性を有する場合には、グリースのように液ダレ・液漏れ・飛散汚染の抑制効果がありながら、室温でも十分な摩擦低減効果が得られることがわかった。また摺動部材に含まれるゲル状組成物がチクソ性を有する場合には、特に、静摩擦状態において摩擦力が有効に低減できることがわかった。つまり、比較例1及び比較例3の摺動部材は、液ダレ・液漏れ・飛散汚染の抑制効果はあるものの、ゲル状組成物についてチクソ性(室温でのゾルゲル相転移)は確認できなかった。このため、比較例1及び比較例3の摺動部材において、ゲル状組成物が潤滑成分として働かないので、室温での低摩擦化が行えないことが示された。
また、実施例1乃至実施例3及び比較例1の結果から、同種の有機ポリマーであってもゲル状組成物中の含有量によっては、チクソ性(室温でのゾル−ゲル相転移)を発揮したり発揮しなかったりすることがわかった。HIPS及びDMAcを使用した系では、比較例1より、ゲル状組成物中のHIPSの含有量が40重量%の場合はチクソ性が確認できなかった。つまり、比較例1の摺動部材に含まれるゲル状組成物は潤滑成分として働かないので、室温での低摩擦化が行えないことが示された。一方、実施例1乃至3より、HIPS及びDMAcを使用した系では、ゲル状組成物中のHIPSの含有量は1重量乃至30重量%が好ましいことが確認できた。
実施例1乃至実施例6及び比較例2の結果から、ゲル状組成物中に有機ポリマーを含めることが必須であることがわかった。また実施例5の結果から、ゲル状組成物に無機成分が含まれたとしてもその含有量がゲル状組成物に対して3重量%未満である場合には、特に、静摩擦状態において摩擦力を良好に低減できることが確認できた。つまり、比較例2では、ゲル状組成物中に有機ポリマーが含まれておらずゲル状組成物中に無機成分のみが含まれている。この場合には、液ダレ・液漏れ・飛散汚染の抑制効果はあるが、室温で十分な摩擦低減効果が得られず、また加えてΔμの評価も悪いため、特に、静摩擦状態における摩擦力の低減が良好に行えないことが確認できた。
以上の各実施例で示したように、本発明の摺動部材は、グリースのように液ダレ・液漏れ・飛散汚染の抑制効果がありながら、室温でも十分な摩擦低減効果が得られることがわかった。また本発明の摺動部材は、特に、静摩擦状態においても摩擦力を良好に低減することができることがわかった。
本発明の摺動部材は、軸受や電気・電子機器等の一構成部材として利用することができる。
1(2):摺動部材、1a(2a):摺動面

Claims (21)

  1. 多孔質部と、前記多孔質部中に含まれるゲル状組成物少なくとも摺動面の一部に有し、
    前記ゲル状組成物が、
    ポリスチレン系材料、セルロース及びポリエーテルを含む混合物、および水素化ブロックコポリマーから選ばれる少なくとも1つの有機ポリマーと、
    アミド系油、水、エステル油から選ばれる少なくとも1つの潤滑媒体を有するチクソゲルであり、
    前記ゲル状組成物に対して、前記有機ポリマーが、1重量%以上40重量%未満含まれることを特徴とする、摺動部材。
  2. 前記有機ポリマーはポリスチレン系材料あるいは水素化ブロックコポリマーであり、
    前記潤滑媒体はアミド系油、あるいはエステル油であることを特徴とする、請求項1に記載の摺動部材。
  3. 前記有機ポリマーはポリスチレン系材料であり、
    前記潤滑媒体はアミド系油であることを特徴とする、請求項1に記載の摺動部材。
  4. 前記有機ポリマーはセルロース及びポリエーテルを含む混合物であり、
    前記潤滑媒体は水であることを特徴とする、請求項1に記載の摺動部材。
  5. 前記有機ポリマーは水素化ブロックコポリマーであり、
    前記潤滑媒体はエステル油であることを特徴とする、請求項1に記載の摺動部材。
  6. 前記有機ポリマーはフッ素化合物ではないことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の摺動部材。
  7. 前記ゲル状組成物は室温でゾル−ゲル相転移することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の摺動部材。
  8. 形状がシート状又はドーナツ状であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の摺動部材。
  9. 前記多孔質部の構成材料となる多孔質材料が連続孔を有することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の摺動部材。
  10. 前記連続孔の孔径が1μm乃至50μmであることを特徴とする、請求項に記載の摺動部材。
  11. 前記有機ポリマーが、前記ゲル状組成物に対して1重量%以上30重量%以下含まれていることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の摺動部材。
  12. 前記有機ポリマーが、前記ゲル状組成物に対して5重量%以上26重量%以下含まれることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の摺動部材。
  13. 前記ゲル状組成物に対して、無機成分が3重量%未満含まれていることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の摺動部材。
  14. 前記ゲル状組成物に対して、無機成分が0.3重量%未満含まれていることを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の摺動部材。
  15. 前記ゲル状組成物に、無機成分が含まれないことを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の摺動部材。
  16. 請求項1乃至15のいずれか一項に記載の摺動部材を有する軸受であって、
    前記軸受が、少なくとも軸と摺接する摺動面の一部に、前記摺動部材に含まれる多孔質部と、前記多孔質部中に含まれるゲル状組成物と、を有することを特徴とする、軸受。
  17. 軸と、前記軸と摺接する軸受と、を有する動作機構であって、
    前記軸受が、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の摺動部材を有することを特徴とする、動作機構。
  18. 請求項1乃至15のいずれか一項に記載の摺動部材、あるいは請求項16に記載の軸受を備えたことを特徴とする、電子機器。
  19. 請求項1乃至15のいずれか一項に記載の摺動部材の製造方法であって、
    ゲル状組成物を液状化させる液状化工程と、
    液状化した前記ゲル状組成物を多孔質部へ埋設する埋設工程と、を有することを特徴とする、摺動部材の製造方法。
  20. 前記ゲル状組成物を、前記ゲル状組成物の融点よりも高い温度で加熱することで液状化させることを特徴とする、請求項19に記載の摺動部材の製造方法。
  21. 前記埋設工程の後、前記ゲル状組成物を加熱しつつ圧力をかけることで摺動面を均一にする成型工程をさらに有することを特徴とする、請求項19又は20に記載の摺動部材の製造方法。
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