JP6524445B2 - 鉄分の供給材、鉄分の供給材の製造方法、及び鉄分の供給方法 - Google Patents

鉄分の供給材、鉄分の供給材の製造方法、及び鉄分の供給方法 Download PDF

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Description

この発明は、含鉄物質からの鉄の供給を促進する鉄分の供給材、鉄分の供給材の製造方法、及び鉄分の供給方法に関する。
近年、水域では、生物の生育に必要な鉄分の不足による生物生産量の低下が生じている。例えば、沿岸の海域では、海藻の群落である藻場が消失、いわゆる磯焼けが生じ、海藻だけでなく、そこに生育するウニ、アワビ、オキアミなど多くの水産資源の減少につながっている。
磯焼けの原因の一つとして、海水中の鉄分の減少が挙げられる。沿岸域の鉄分は、元来河川を通じて海に供給されてきたと考えられており、近年の森林の伐採や荒廃によってその供給量が減少したと示唆されている(松永克彦著、森が消えれば海も死ぬ、講談社、1993年7月20日、参照)。
このような沿岸環境が抱える課題に対し、含鉄物質である製鋼スラグまたは石炭溶融灰にキレーターとなる腐植酸含有物質を混合した水域環境用の施肥材が提案された(特許文献1)。ここで、腐植酸含有物質は、廃木材チップを腐葉土化することで得られる。また、腐植酸含有物質の代わりに水産加工残さを発酵させた魚かすを含鉄物質に混ぜる方法も提案されている(特許文献2)
さらに、同じく含鉄物質からの鉄の溶出を促進するべく、グルコン酸、グルタミン酸のいずれか一つを含む有機酸を含鉄物質に混合する方法が提案された(特許文献3)。
特開2006−212036号公報 特開2006−345738号公報 特開2011−160764号公報
Effects of surface Fe(III) oxides in a steel slag on the formation of humic−like dark−colored polymers by the polycondensation of humic precursors. Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects, 418: 117−123
海水のpHは、8.0〜8.3で維持されており、含鉄物質から鉄イオンの溶出は困難な環境である。また、溶出したとしても、水酸化物イオン(OH)と結合し、コロイド状の水酸化鉄として沈殿してしまう。そこで、特許文献1〜3では、弱酸性の腐植酸含有物質などと混合することで含鉄物質から鉄イオンを溶出させ、配位子と錯体を形成させることで、溶存態として鉄分を供給できるようにした。
実際、(特許文献1、2)では、海水中に鉄分を供給し、海藻を繁茂させることができたが、鉄分を供給できる期間や濃度の安定性に課題を有していた。
また、(特許文献3)にあるように、含鉄物質にアミノ酸だけを添加することで得られる鉄の溶出促進効果は極めて低いことが発明者らの実験的な検討によって明らかにされている。
そこで、本発明の課題は、含鉄物質からの鉄の供給を促進し、かつ安定的に持続させることのできる、鉄分の供給材、鉄分の供給材の製造方法、及び鉄分の供給方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、含鉄物質にベンゼン環に互いに隣り合って結合する2つの水酸基を有するフェノール酸物質及びアミノ酸を添加することによって、含鉄物質からの鉄の溶出を促進し、且つ長期にわたって安定的に供給できることを見出し、さらにこれを鉄分の供給材として利用できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)含鉄物質と、ベンゼン環に互いに隣り合って結合する2つの水酸基を有するフェノール酸物質と、アミノ酸含有物質とを含有することを特徴とする鉄分の供給材。
(2)含鉄物質と、ベンゼン環に互いに隣り合って結合する2つの水酸基を有するフェノール酸物質と、アミノ酸含有物質とからなることを特徴とする鉄分の供給材。
(3)前記鉄分の供給材は、前記フェノール酸物質として、腐植酸含有物質中に存在するフェノール酸物質以外のフェノール酸物質を含むことを特徴とする、(1)または(2)記載の鉄分の供給材。
(4)前記鉄分の供給材が、没食子酸を含まないことを特徴とする、(1)〜(3)の何れか1項に記載の鉄分の供給材。
(5)前記含鉄物質は、鉄鋼スラグ、スケール、鉄粉、酸化鉄粉、砂鉄、及び石炭溶融灰のうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の鉄分の供給材。
(6)前記アミノ酸含有物質は、アミノ酸及び腐植酸含有物質のうち少なくとも1種を含むことを特徴とする、(1)〜(5)の何れか1項に記載の鉄分の供給材。
(7)前記腐植酸含有物質は、腐葉土及び魚かすのうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする、(6)記載の鉄分の供給材。
(8)前記アミノ酸は、グルタミン酸及びグリシンのうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする、(6)または(7)記載の鉄分の供給材。
(9)前記フェノール酸物質がプロトカテキュ酸であることを特徴とする(1)〜(8)の何れか1項に記載の鉄分の供給材。
(10)含鉄物質と、ベンゼン環に互いに隣り合って結合する2つの水酸基を有するフェノール酸物質と、アミノ酸含有物質とを混合する工程を含むことを特徴とする、鉄分の供給材の製造方法。
(11)前記アミノ酸含有物質は、腐植酸含有物質及びアミノ酸のうち少なくとも1種を含むことを特徴とする、(10)に記載の鉄分の供給材の製造方法。
(12)前記腐植酸含有物質は、腐葉土及び魚かすのうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする、(11)記載の鉄分の供給材の製造方法。
(13)前記アミノ酸は、グルタミン酸及びグリシンのうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする、(11)または(12)記載の鉄分の供給材の製造方法。
(14)前記フェノール酸物質がプロトカテキュ酸であることを特徴とする(10)〜(13)の何れか1項に記載の鉄分の供給材の製造方法。
(15)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の鉄分の供給材を、水中に設置することを特徴とする鉄分の供給方法。
本発明によれば、従来に比べて、含鉄物質からの鉄分の溶出を促進し、且つ長期にわたって安定的に供給でき、さらにこれを鉄分の供給材として利用できる。
図1は、プロトカテキュ酸(PCA)を示す化学式である。 図2は、没食子酸(GA)を示す化学式である。 図3は、本発明の実施例による有機配位子と製鋼スラグの混合系による溶出挙動を示す図である。 図4は、本発明の実施例による有機配位子と製鋼スラグの混合系による溶出挙動を示す図である。
<1.本発明者による検討>
本発明者は、含鉄物質からの鉄の供給を促進し、かつ安定的に持続させることのできる、鉄分の供給材を鋭意検討した結果、本実施形態に係る鉄分の供給材等に想到した。そこで、まず、本発明者が行った検討について説明する。
含鉄物質中の鉄イオンは、水域環境、特にpH8.0〜8.3の海域では、溶出しにくい。そのため、含鉄物質から鉄を溶出させるためには、含鉄物質周囲の環境を弱酸性環境にするか、含鉄物質に還元剤を添加する必要がある。酸性物質である腐植酸含有物質を含鉄物質に混合することで弱酸性環境を創出することはできるが、含鉄物質の周囲には常にpH8.0〜8.3の海水が存在するため、長期にわたって弱酸性環境を維持し、溶出を安定化させることは困難である。
一方、含鉄物質に還元剤を添加する方法では、含鉄物質に必要量の還元剤を加えることで、溶出させる鉄の濃度や期間を調整することが容易となる。しかし、含鉄物質から鉄イオンが溶出しても、pH8.0〜8.3の海域では、二価鉄は三価鉄となり、三価鉄はOH基と結合することでコロイド鉄となり、沈殿してしまう(Fe3++3OH→Fe(OH))。そこで、水域環境中で鉄が溶存態として存在しうるには、鉄イオンがキレーターと結合し、錯体を形成する必要がある。
そこで、本発明では、還元作用を有し、且つキレーターとしての機能を有する物質を検討した。その結果、還元剤と鉄錯体形成サイトであるCOOH基を有する物質とを混合することで重合体(例えばオリゴマー)を形成し、この重合体を鉄イオンに反応させることに思い至った。その組み合わせとしては、土壌環境におけるグリシンとカテコールの重合化が知られていることから(非特許文献1)、アミノ酸とベンゼン環に互いに隣り合って結合する2つの水酸基を有する物質を手掛かりに検討を行った。その結果、ベンゼン環に互いに隣り合って結合する2つの水酸基を有するフェノール酸物質(以下、単に「オルト2置換フェノール酸物質」とも称する)とアミノ酸との重合体が、前記オルト2置換フェノール酸物質由来のOH基の還元反応によって含鉄物質からFe2+を溶出させ、前記フェノール酸物質及びアミノ酸が有するCOOH基によって、キレーターとして機能することを見出した。
具体的には、本発明者は、含鉄物質、プロトカテキュ酸(上述したオルト2置換フェノール酸物質の一例)、及びアミノ酸を混合することで第1の試料を作製し、人工海水中での溶出実験を実施した。この結果、溶液が黒色化し、溶液中の鉄濃度が上昇した。このことから、溶液中に上述した重合体が形成されていることが確認できた。また、溶液の波長400nmと波長600nmの吸光度Eの比、E400/E600は、分子量の増加によって低下することが知られている(Wang,Z.D.,Pant,B.C.,Langford,C.H.,1990.Spectroscopic and structural characterization of a Laurentian fulvic acid:notes on origin of color. Anal. Chim. Acta 232,43−49.)。そこで、時間経過に伴う吸光度Eの比の変化を測定した。この結果、時間経過に伴って、吸光度の比E400/E600が低下することが確認できた。この点においても、溶液中に上述した重合体が形成されていることが確認できた。
さらに、溶液のTOC(全有機態炭素)をTOC計で測定した。この結果、溶出試験開始後から時間が経過してもTOCはある一定の値を維持することが確認できた。この点においても、溶液中に上述した重合体が形成されていることを確認できた。
さらに、溶液の紫外・可視部(200−400nm)の吸光度を測定した。その結果、溶出開始から10日目以降から吸光度が減少し、炭素分の酸化が起こっていることが分かった。したがって、上述した重合体は、酸化によって二価鉄の溶出を促進していることがわかった。
以上の結果から、含鉄物質、オルト2置換フェノール酸物質、及びアミノ酸が含まれた系では、オルト2置換フェノール酸物質とアミノ酸との重合体が形成され、また、この重合体の炭素分の酸化に伴って、含鉄物質中の鉄分が還元溶出することが推察された。その鉄イオンは、プロトカテキュ酸‐アミノ酸重合体と錯体を形成することで液中に安定して溶存することが推察された。
一方、OH基の還元作用が鉄分の溶出を促進させる効果のあることを基に、上述したプロトカテキュ酸を、OH基の一つ多い没食子酸に置き換えて同様の溶出試験を行った。没食子酸は、図2に示すように、ベンゼン環に互いに隣り合って結合する3つの水酸基を有するフェノール酸物質である。この結果、溶液の色の変化はほとんど見られず、溶液中の鉄濃度は上昇しなかった。また、吸光度の比E400/E600もほとんど変化しなかった。一方、TOCは、溶出試験開始時に有意な値を示したが、その直後から著しく減少した。このため、何らかの形態で炭素分が溶存しなくなることが推察された。その原因としては、一旦溶液中に溶出した没食子酸が製鋼スラグ表面に吸着、もしくは溶液中に溶出した没食子酸中の炭素分の酸化が進み、COとして系外に排出されたことが考えられた。そこで、溶出液の紫外・可視部(200−400nm)の吸光度を測定した。その結果、吸光度の変化はほとんど見られなかった。このことから、上記のTOCの低下は、没食子酸の製鋼スラグ表面への吸着によるものと推察された。
この結果、没食子酸が含まれた系では、TOCの顕著な低下が見受けられ、かつ紫外・可視部(200−400nm)の吸光度に変化が見られなかったことから、溶液中に溶出した没食子酸は製鋼スラグの表面に直ちに吸着してしまうと推察された。このため、没食子酸は、アミノ酸との重合体を形成せず、鉄の溶出も促進しないと推察された。
上記の知見によれば、アミノ酸とベンゼン環に互いに隣り合って結合する2つの水酸基を有するフェノール酸物質とが重合体を形成すること、このような重合体は、含鉄物質から鉄の溶出を促進し、かつ鉄を安定的に溶存させることができることが明らかとなった。さらに、これらの物質の重合体は、高分子化しにくいという特性がある。すなわち、後述するように、キレーターが高分子化した場合、鉄のキレート化合物が沈殿してしまうが、本実施形態に係るキレーターは、従来技術において鉄のキレーターとして知られるフルボ酸ほど高分子化しにくい。本発明者は、上記の知見に基づいて、本実施形態に係る鉄分の供給材等に想到した。
<2.鉄分の供給材>
つぎに、本実施形態に係る鉄分の供給材について説明する。本実施形態の鉄分の供給材は、含鉄物質と、オルト2置換フェノール酸物質と、アミノ酸含有物質とを含有することを特徴とするものである。好ましくは、本実施形態に係る鉄分の供給材は、含鉄物質と、オルト2置換フェノール酸物質と、アミノ酸含有物質とからなる。
含鉄物質は、鉄鋼スラグ、スケール、鉄粉、酸化鉄粉、砂鉄、及び石炭溶融灰のうち、少なくとも1種を用いることができる。
鉄を供給する含鉄物質としては、穏効性の固形であればよく、鉄鋼スラグを用いることができる。鉄鋼スラグには、製鐵所から生成される鉄鋼スラグと、電炉メーカーから生成される電炉スラグ(電気炉系製鋼スラグ)とが含まれる。製鐵所から生成する鉄鋼スラグは、鉄鋼製造工程において副産物として発生する。鉄鋼スラグは大別して、高炉スラグと製鋼スラグに分けられる。本発明に使用するスラグは、これらのうち、製鋼スラグが好ましい。鉄分含有量が高炉スラグ(約0.4質量%)は製鋼スラグ(約20質量%)に比べて低い。したがって、より効率的な鉄分供給を行う場合には、製鋼スラグを使用することが好ましい。もちろん、本発明に使用するスラグは、製鋼スラグに限定されない。
製鋼スラグは、製鋼炉(転炉、電気炉)において、銑鉄やスクラップから鋼を製造する際に生成するスラグの総称であるが、本発明に用いる製鋼スラグは、転炉系の製鋼スラグであることが望ましい。転炉系の製鋼スラグは電気炉系製鋼スラグと比較し、成分組成が安定しており、品質管理が容易である。また、近年、鋼品質の高度化に対応するため、転炉による精錬のみでは不純物の除去が不十分となり、転炉前後の工程(溶銑予備処理、2次精錬)を付加された高級鋼製造工程から生成する溶銑予備処理スラグや2次精錬スラグも、転炉スラグと同様に転炉系の製鋼スラグに含まれる。本発明において使用する製鋼スラグは、粗鋼生産量の約10%相当量が生成することからも、安価で且つ安定的な供給が可能であり、鉄の供給材として非常に有望である。
本発明に使用する製鋼スラグとしては、炭酸化処理した製鋼スラグを用いることが特に望ましい。製鋼スラグはf−CaO(遊離石灰)を1〜2質量%前後含んでいるため、水中のpHを一時的に上昇させやすいという性質がある。このため、炭酸化処理を施し、f−CaOをCaCOとした炭酸化製鋼スラグとする。製鋼スラグを炭酸化製鋼スラグとすることで、溶出水のpH上昇の程度を抑制することができ、ひいては、より製鋼スラグからの鉄分の溶出を促進することができる。製鋼スラグの炭酸化処理は、製鋼スラグを二酸化炭素又は炭酸含有水と接触させることにより実施することができる。この操作により、CaOはCaCOとなり、また、CaCOは製鋼スラグの表面上に形成されるため、残存するCa2+の急激な溶出を抑制することができる。このような炭酸化処理を製鋼スラグに施すことにより、水域での一時的なpHの上昇を防ぐことができ、それによって、本発明の溶出効果(すなわち、オルト2置換フェノール酸物質とアミノ酸との重合体による製鋼スラグからの鉄分の溶出効果)がより積極的に発揮される。
また、電炉スラグは、鉄以外に、海藻の育成環境には好ましくない重金属を含むことがあり、使用の際は十分な注意が必要である。このことから、転炉系の製鋼スラグ又は高炉スラグを使用することが望ましい。
鉄鋼スラグのほか、酸化鉄、金属鉄を含むスケール、鉄粉、酸化鉄粉、砂鉄、石炭溶融灰を含鉄物質として使用してもよい。
スケールとしては、鉄鋼製造プロセスで発生するスケール(例えば、ミルスケールなど)が代表的なものとして挙げられる。
鉄粉、酸化鉄粉、砂鉄も含鉄物質として好ましい。ただし、スラグのように酸化鉄や金属鉄を複合的に含むものの方が、キレーターとの反応性が高く、鉄イオンの溶出能が高いので、より望ましい。
石炭溶融灰は、微粉炊ボイラー灰(フライアッシュ)と噴流床石炭ガス化炉からの溶融灰(スラグ)がある。フライアッシュ中には鉄分が酸化鉄(Fe)として0.6〜23質量%程度含まれているが、石炭ガス化複合発電(IGCC)における還元雰囲気中で生成した溶融灰では、酸化鉄の80質量%程度が二価鉄として存在する。
オルト2置換フェノール酸物質の例としては、ジヒドロキシ安息香酸が挙げられる。ジヒドロキシ安息香酸は、他のモノマーと重合でき、還元作用がある。さらに、ジヒドロキシ安息香酸は、COOH基を有するので、キレーターにもなりうる。そして、ジヒドロキシ安息香酸をアミノ酸含有物質と混合することで、ジヒドロキシ安息香酸とアミノ酸含有物質中に存在するアミノ酸とが重合体を形成する。この結果、より錯形成サイトが増し、キレーターとしての性能が向上する。ジヒドロキシ安息香酸の好ましい例は、プロトカテキュ酸(図1)である。プロトカテキュ酸は、アミノ酸―フェノール酸重合体を形成ことができる。このアミノ酸―フェノール酸重合体内には、還元サイトであるOH基と錯体形成サイトCOOH基とが構造的に近傍に存在する。このため、アミノ酸−フェノール酸重合体鉄錯体は安定的に海水中に存在することができる。
なお、オルト2置換フェノール酸物質は、還元作用を有する。しかし、COOH基が構造的に近接しないため、海水中で安定的に存在することができない。このため、オルト2置換フェノール酸物質を単体で含鉄物質に添加した場合、オルト2置換フェノール酸物質はFe2+と一旦結合するが、Fe2+を解離させてしまう。オルト2置換フェノール酸物質から解離したFe2+は、容易にFe3+に酸化される。酸化したFe3+は、上記の通り水酸化物コロイドとなり、沈殿してしまう。そのため、オルト2置換フェノール酸物質単体では、キレーターとしての効果が低くなってしまう。このため、本実施形態では、オルト2置換フェノール酸物質とアミノ酸含有物質とを混合する。
オルト2置換フェノール酸物質は、工業製品として、又は市販製品として、一般的に販売されているものであればよい。また、オルト2置換フェノール酸物質は、一般的な科学実験に使用する純度の高い試薬であってもよい。すなわち、本実施形態で使用されうる腐植酸含有物質にも、本実施形態に係るオルト2置換フェノール酸物質が含まれる場合がある。これに対し、本実施形態の鉄分の供給材は、腐植酸含有物質中に存在するオルト2置換フェノール酸物質以外のオルト2置換フェノール酸物質を含む。もちろん、本実施形態の鉄分の供給材は、腐植酸含有物質中に存在するオルト2置換フェノール酸物質を含んでいても良い。例えば、後述するように、アミノ酸含有物質として腐植酸含有物質を使用してもよい。この場合、鉄分の供給材は、腐植酸含有物質中に存在するオルト2置換フェノール酸物質を当然に含むことになる。
なお、没食子酸は、上述したように、ベンゼン環に互いに隣り合って結合する3つの水酸基を有するフェノール酸物質である。没食子酸と製鋼スラグとを混合すると、没食子酸が直ちにスラグ表面に吸着し、製鋼スラグからの鉄の溶出が起こらないことが本発明者の実験により明らかとなった。したがって、鉄分の供給材には没食子酸が含まれないことが好ましい。ただし、鉄分の供給材は、本実施形態の構成要件を満たす限り、没食子酸が含まれていても好適な効果を得ることができる。例えば、後述するように、アミノ酸含有物質として腐植酸含有物質を使用する場合がある。そして、腐植酸含有物質には没食子酸が含まれる場合がある。しかし、後述する実施例で明らかな通り、腐植酸含有物質に没食子酸が含まれる場合であっても、好適な効果が得られる。
アミノ酸含有物質は、アミノ酸の供給源となるものであり、アミノ酸及び腐植酸含有物質のうち少なくとも1種を含む。ここで、アミノ酸は、中性および酸性アミノ酸である。アミノ酸がオルト2置換フェノール酸物質と重合体を形成するためには、結合サイトであるアミン基の水素が他の元素と結合していない状態でなければならない。そのため、海水のpH(8.0〜8.3)よりも添加するアミノ酸の等電点が低くなければならない。したがって、等電点が8よりも低い、中性および酸性アミノ酸を添加する必要がある。アミノ酸の特に好ましい例は、グルタミン酸、グリシンである。
腐植酸含有物質は、落ち葉、倒木、魚介残渣などの動植物リターが、それをエネルギー源とする微生物によって分解されてゆく過程で生成される有機物の総称である。腐植酸含有物質は、上記分解の過程で生成される腐植酸を含む。腐植酸含有物質は、好ましくは、腐葉土及び魚かすのうち、少なくとも1種を含む。このような腐植酸含有物質も、上述したアミノ酸の供給源として機能しうる。なお、特許文献1では、含鉄物質である製鋼スラグを腐植酸含有物質と混合することで、製鋼スラグ中の鉄分を水域に溶出する方法を提供しており、溶出した鉄分のキレーターとしては、フルボ酸が効果的であるとしている。すなわち、特許文献1では、フルボ酸の供給源として腐植酸含有物質を使用している。フルボ酸は、植物由来の鉄のキレーターとして代表的であるが、フルボ酸の鉄との結合力は強く、かつ高分子化しやすく、沈殿しやすいという特徴がある。そのため、海藻などに鉄分を供給するまでに時間を要してしまう。そこで、本実施形態では、腐植酸含有物質をオルト2置換フェノール酸物質と重合体を形成するアミノ酸の供給源として使用する。上述したように、アミノ酸−フェノール酸重合体鉄錯体は、低分子で溶存しやすく、海藻などが摂取しやすい鉄分を長期間にわたって供給することができる。
腐葉土は、落ち葉や倒木などの植物リターが、それをエネルギー源とする土壌微生物によって分解されてゆく過程で生成される暗色で不定形の有機物の総称である。腐葉土化させる原料として、廃木材チップが好ましいが、間伐材なども利用できる。
魚かすは、魚介残渣等を発酵させて得られるものである。ところで、腐葉土及び魚かすは、その発酵過程において腐植酸以外にも無機態の窒素(硝酸態窒素、アンモニア態窒素)やリン(リン酸態リン)を豊富に生成する。そのため、腐葉土及び魚かすを含鉄物質と混合した場合、海藻類の成長に必須である窒素、リンを同時に供給することができる。従って、腐植酸含有物質として腐葉土及び魚かすのうち少なくとも1種を用いることが好ましい。
<3.鉄分の供給材の製造方法>
本発明による鉄分の供給材の製造方法(作製方法)としては、以下の方法が挙げられる。すなわち、含鉄物質に含鉄物質から溶出する鉄分が所定の量となるようにオルト2置換フェノール酸物質と、アミノ酸含有物質とを添加し、十分に混合する。それを、施用する場所に合わせて、透水性の袋や容器に充填すればよい。
<4.鉄分の供給材を用いた鉄分供給方法>
本発明による鉄分の供給材を用いて鉄分を供給する方法は特に問われないが、鉄分の供給材を鉄分の供給対象となる水中に設置すればよい。ここで、鉄分の供給材の設置方法(施用方法)も特に問われないが、例えば、鉄分の供給材を有機分解性で透水性の袋(例えば、麻袋、ココナッツ繊維製の袋)に入れ、水底に沈める、水底や汀線部に埋設する、また、鋼製の箱に詰めて、それを敷設する方法が挙げられる。それによって、鉄分の供給材の中に水が浸潤し、鉄分が溶出した栄養成分が外部に供給され、施用した周辺で海藻をはじめとした生物の生育効果が期待される。
鉄分の供給材が使用可能な場所は特に問われない。例えば、本発明の鉄分の供給材は、主に海、汽水域、さらに陸域での藻類の養殖場などにおいて使用可能であり、本発明による効果は、主に藻類や微細藻類の増殖、育成に及ぼすものである。
本発明の鉄分の供給材が効果を及ぼす場としては、藻場が挙げられる。藻場とは、水底で大型海藻が群落を形成する場所を意味する。藻場としては、例えば、コンブの群落から成るコンブ藻場、ノコギリモクやオオバモクなどのホンダワラ類から成るガラモ場、この他、アラメ・カジメ場等がある。海藻類の生育には、鉄が必須であることが知られており、鉄分の供給による藻場再生の実例は、日本各地で報告されている。
以下、本発明について、実施例に基づき説明する。なお、本発明は下記内容に制限されるものではない。
(実験例1)
表1に示す通り、(比較例1〜5)、(実施例1、2)、(対照例)として、含鉄物質である製鋼スラグと、そこからの鉄の溶出を促進するオルト2置換フェノール酸物質及びアミノ酸含有物質を含む配位子(以下、有機配位子)とをそれぞれ組み合わせて混合して人工海水中での溶出実験を実施した。製鋼スラグは、粒径0〜25mm(0より大きく25mm以下)の製鋼スラグを0.5mm以下に粉砕したものを用いた。有機配位子の添加濃度(後述する人工海水中の濃度)は、以下の通りに設定した。比較例1〜4の、各々グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、没食子酸(GA)、プロトカテキュ酸(PCA)、及び実施例1の上記4種の混合(MIX)に関しては、各有機配位子1分子にCOOH基が1つあることから、効果を比較するため同一量を製鋼スラグに添加し、且つ、製鋼スラグ中に含まれる鉄(20質量%以下)と十分に錯形成ができるように設定した。
比較例5の腐植酸含有物質である廃木材チップを腐葉土化したもの(L)と製鋼スラグを混合した系については、(特許文献1)にある混合比(製鋼スラグ:廃木材チップを腐葉土化したもの=6:5質量比)を参考にして腐植酸含有物質の添加量を決定した。また、実施例2の廃木材チップを腐葉土化したものにMIXを添加した系、(L+MIX)に関しては、上記と比較可能な等価量の有機配位子を製鋼スラグに添加した。
上記有機配位子及び/又は製鋼スラグを人工海水100mlをいれた三角フラスコに入れ、25℃で30日間、125rpmで振とう溶出を行った。溶出液を定期的に1.2mlずつ採取し、溶出液を遠心分離して懸濁物を除いた。そして、1mlの上澄み液に対して10mlの純水を加え、塩酸で酸処理を行うことで、溶液中の鉄を安定化させた。そして、原子吸光分析法で溶出液中の鉄濃度を測定した。
720時間(30日間)の溶出挙動を図3に示す。対照例(製鋼スラグ単独)、比較例1、2(アミノ酸単独)では鉄の溶出はほぼ見られなかった。オルト2置換フェノール酸物質を単独で使用した比較例4(PCA)では初期に溶出が見られたものの、その後は低下した。比較例3(GA)については、顕著な溶出は見られなかった。この違いは、還元性の違い、及び含鉄物質に対する挙動の違い(GAは含鉄物質の表面に吸着し、鉄分の溶出を妨げるが、PCAはそのような挙動を示さない)によるものと考える。比較例5については、他の比較例よりも鉄の溶出が見られたものの、実施例1に比べると最大で約1/5ほど低かった。そして、400時間以降は、濃度の上昇が見られず、溶出が持続しなかった。
一方、実施例1(製鋼スラグとMIXを混合したもの)では、実験開始直後から比較例1〜5よりも鉄濃度が高い値で推移した。さらに、30日目まで鉄濃度が上昇し続けた。このため、鉄の溶出が継続していたことは明らかであった。比較例1〜4のようにアミノ酸及びフェノール酸物質を単独で使用した場合には鉄の溶出はほとんど確認できなかったのに対し、実施例のようにアミノ酸とフェノール酸物質とを混合した場合には、鉄の溶出が長期にわたって確認された。このとき、混合系では、溶液が黒色化し、重合体が形成されていることは明らかであった。また、溶液の波長400nmと波長600nmの吸光度Eの比、E400/E600を測定した。この結果、時間経過に伴って、溶液中の低分子量の分子が減少し、高分子量の分子が増加することを確認した。MIXでは、実験開始直後に見られた分子量200付近の成分が、時間経過に伴い減少し、30日後には消失し、高分子分画(すなわち、アミノ酸−フェノール酸重合体鉄錯体)へ移行したと考えられる。本実施例では、溶出液中で混合物が互いに重合して重合体を形成し、この重合体中のOH基が製鋼スラグからの鉄の溶出を促進すること、重合体がキレーターとして溶出鉄を溶出液中で安定化させることが考えられる。
実施例2のL+MIXに関しても、実験開始直後から終了時まで鉄濃度が上昇し続け、溶出が持続していることが明らかであった。さらに、実施例2では、実施例1のMIXよりも有機配位子の濃度が高濃度であったことから、(L)と(MIX)の双方が製鋼スラグからの鉄分の溶出に関与していたことが推察される。以上の結果から、アミノ酸とベンゼン環にOH基が隣り合って2つ結合するフェノール酸物質を混合することで含鉄物質である製鋼スラグからの鉄の溶出を長期にわたって促進でき、かつ溶存させられることが可能となった。なお、実施例1、2では、鉄分の供給材に没食子酸が含まれる。没食子酸は、上述したように、鉄分の溶出を妨げる物質であるが、実施例1、2では、没食子酸以外にプロトカテキュ酸も含まれる。したがって、プロトカテキュ酸とアミノ酸との重合体による鉄分の溶出効果及び鉄分の保持効果が没食子酸による影響よりも強く発現されたと考えられる。
(実験例2)
次に有機配位子の組み合わせ、及び腐植酸含有物質の種類について検討した。
表2に示す通り、比較例6〜9、実施例3〜5として、含鉄物質である製鋼スラグと、そこからの鉄の溶出を促進する、アミノ酸及びオルト2置換フェノール酸物質を含む配位子(以下、有機配位子)とを混合して人工海水中での溶出実験を実施した。実験に使用した製鋼スラグおよび有機配位子の添加量は、実験例1と同様とした。
実施例5のL(原料が間伐材の腐植酸含有物質)にGly+PCAを添加した系、および実施例6のPCAを添加した系は、実施例2と比較可能な等価量の有機配位子を製鋼スラグに添加した。
上記有機配位子及び/又は製鋼スラグからの鉄溶出(900時間、37.5日間)および鉄の測定は、実験例1と同様に実施した。また、実験例1で測定した吸光度E(E400/E600)のほかに、溶出液中の有機態炭素の量を比較するために全有機態炭素(TOC)を680℃で燃焼させてCOガスとして検出するTOC計で測定した。更に、無機化の程度を評価するために、紫外・可視部(200−400nm)の吸光度を測定した。
900時間の溶出挙動を図4に示す。没食子酸を含む比較例6(Gly+GA)、7(Glu+GA)、そしてアミノ酸の組み合わせ比較例8(Glu+Gly)からは、鉄は溶出しなかった。没食子酸が含まれた系では、吸光度Eの比E400/E600は、変化せず、重合化の傾向が見られなかった。また、溶出液中の全有機態炭素(TOC)は溶出試験開始時に有意な値を示したが、その直後から著しく減少し、なおかつ、紫外・可視部(200−400nm)の吸光度に変化が起こらなかった。このことから、スラグ表面にGAが吸着したために、スラグからの鉄の溶出が起こらなかったと考えられる。比較例8(Glu+Gly)については、重合化が起こっていないことで、配位子としての安定性が低く、鉄の溶出が起こらなかったと考えられる。比較例9(GA+PCA)については、PCAが存在することで初期に溶出が起こったものの、その後、スラグ表面へのGAの吸着が起こったため、溶出が持続しなかった。
実施例3および4については、実験開始直後から液中の鉄は高濃度となり、900時間の溶出実験を通して維持され、溶出が持続していることが明らかであった。溶出液の吸光度の比E400/E600の低下からPCAとアミノ酸(Glu又はGly)との重合化が進行したことが推察された。また、液中のTOCは、ある一定の濃度で維持され、GAで見られたような顕著な低下は見られなかった。また、紫外・可視部(200−400nm)の吸光度は、240時間以上経過したころから低下した。以上のことから、PCAとアミノ酸は重合体を形成し、また、その炭素分の酸化が起こることで、製鋼スラグ中の鉄分が還元溶出され、鉄の溶出が促進したと推察された。以上の結果から、PCAおよびアミノ酸(GluおよびGly)の組み合わせ(実施例3および4)では、有機物の酸化が起こることによって、スラグからのFe(III)の還元溶出が促進され、更に溶出したFe(II)は、PCAとアミノ酸(Glu又はGly)との重合体と錯体を形成することによって、液中に長く溶存できると推察された。また、実施例3、4と実施例1とを比較すると、鉄の溶出量に顕著な差があった。実施例3、4は没食子酸が有機配位子中に含まれていないが、実施例1では有機配位子中に没食子酸が含まれている。このため、没食子酸は有機配位子中に含まれていないことが好ましい。
腐植酸含有物質LにGly+PCAを添加した実施例5は、実施例3よりも高い濃度で鉄が溶出し、腐植酸含有物質Lへの添加効果が示された。
また、腐植酸含有物質LにPCAを添加した実施例6は、実施例5と同程度に鉄が溶出し、腐植酸含有物質LへのPCA単独での添加効果が示された。また、実施例6によれば、腐植酸含有物質LにPCAを加えることで、製鋼スラグからの鉄の溶出が更に促進されることが示された。実施例6によれば、腐植酸含有物質はオルト2置換フェノール酸物質と重合体を形成可能なアミノ酸の供給源として機能することが明らかとなった。また、実施例5、6と実施例2とを比較すると、鉄の溶出量に顕著な差があった。実施例5、6では没食子酸は腐植酸含有物質に含まれる分しか有機配位子に含まれていないが、実施例2では腐植酸含有物質とは別に没食子酸を有機配位子に添加している。したがって、没食子酸は、腐植酸含有物質に不可避的に含まれる量であれば鉄の溶出に大きな影響を与えないが、腐植酸含有物質とは別途添加することは好ましくないと言える。
以上の結果から、実験例1では、アミノ酸とオルト2置換フェノール酸物質を混合することで含鉄物質である製鋼スラグからの鉄の溶出を促進できることが示された。そして、実験例2では、さらに、GAがスラグ表面に吸着することで溶出を阻害することを突き止め、オルト2置換フェノール酸物質としてPCAを用いることが最適であることを明らかにした。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (15)

  1. 含鉄物質と、ベンゼン環に互いに隣り合って結合する2つの水酸基を有するフェノール酸物質と、アミノ酸含有物質とを含有することを特徴とする鉄分の供給材。
  2. 含鉄物質と、ベンゼン環に互いに隣り合って結合する2つの水酸基を有するフェノール酸物質と、アミノ酸含有物質とからなることを特徴とする鉄分の供給材。
  3. 前記鉄分の供給材は、前記フェノール酸物質として、腐植酸含有物質中に存在するフェノール酸物質以外のフェノール酸物質を含むことを特徴とする、請求項1または2記載の鉄分の供給材。
  4. 前記鉄分の供給材が、没食子酸を含まないことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の鉄分の供給材。
  5. 前記含鉄物質は、鉄鋼スラグ、スケール、鉄粉、酸化鉄粉、砂鉄、及び石炭溶融灰のうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鉄分の供給材。
  6. 前記アミノ酸含有物質は、アミノ酸及び腐植酸含有物質のうち少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の鉄分の供給材。
  7. 前記腐植酸含有物質は、腐葉土及び魚かすのうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項6記載の鉄分の供給材。
  8. 前記アミノ酸は、グルタミン酸及びグリシンのうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項6または7記載の鉄分の供給材。
  9. 前記フェノール酸物質がプロトカテキュ酸であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の鉄分の供給材。
  10. 含鉄物質と、ベンゼン環に互いに隣り合って結合する2つの水酸基を有するフェノール酸物質と、アミノ酸含有物質とを混合する工程を含むことを特徴とする、鉄分の供給材の製造方法。
  11. 前記アミノ酸含有物質は、腐植酸含有物質及びアミノ酸のうち少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項10に記載の鉄分の供給材の製造方法。
  12. 前記腐植酸含有物質は、腐葉土及び魚かすのうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項11記載の鉄分の供給材の製造方法。
  13. 前記アミノ酸は、グルタミン酸及びグリシンのうち、少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項11または12記載の鉄分の供給材の製造方法。
  14. 前記フェノール酸物質がプロトカテキュ酸であることを特徴とする請求項10〜13の何れか1項に記載の鉄分の供給材の製造方法。
  15. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の鉄分の供給材を、水中に設置することを特徴とする鉄分の供給方法。
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