JP6519015B2 - 高強度低合金鋼材 - Google Patents
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Description
C:0.60%を超えて1.0%以下、
Si:1.2〜2.0%、
Mn:0.30%以上1.0%未満、
Cr:0.5〜1.5%、
Al:0.005〜0.10%、
Mo:0〜0.30%未満、
Ti:0〜0.10%、
Nb:0〜0.10%、
V:0〜0.10%、
Zr:0〜0.20%、
残部がFeおよび不純物であり、
不純物としてのP、S、NおよびOが、P:0.030%以下、S:0.030%以下、N:0.030%以下およびO:0.010%以下であり、
金属組織が、ベイニティックフェライトと残留オーステナイトの2相からなり、該残留オーステナイトの体積率が10〜30%で、旧オーステナイト結晶粒がJIS粒度番号6.0以上である、
引張強さが1300MPa以上の、
高強度低合金鋼材。
C:0.60%を超えて1.0%以下、
Cは、本発明において最も重要な元素である。Cは、同じ強度でも吸蔵水素濃度を低減する作用があるので、Mo、Ni等の高価な元素の含有量を低くしても、耐水素脆化特性を向上させることができる。Cは、オーステナイト安定化元素であり、Mnと同様、残留オーステナイトの確保に有効な元素であるが、Mnとは異なって耐水素脆化特性を劣化させにくい。鋼材のC含有量が高くなると、オーステナイト中に濃化するC量が多くなり、安定な残留オーステナイトが得られるため、耐水素脆化特性が向上すると推定される。このため、Cは0.60%を超えて含有させなくてはならない。また、Cは、強度を向上させるとともに金属組織をベイニティックフェライトと残留オーステナイトの2相にする効果もある。さらに、Cは、Ac3点を低下させるため、比較的低い温度での加熱で、鋼が完全オーステナイト化しやすいので、旧オーステナイト結晶粒径が小さくなって、この点でも耐水素脆化特性と伸びが向上する。一方、Cの含有量が増えて1.0%を超えるとセメンタイトが析出しやすくなりベイニティックフェライトと残留オーステナイトの2相組織とするのが難しくなるし、靱性の劣化も著しくなる。したがって、Cの含有量を0.60%を超えて1.0%以下とする。C含有量の望ましい下限は0.65%、また望ましい上限は0.80%である。
Siは、脱酸作用を有し、強度および焼入れ性の向上作用もある。強度の向上は1300MPa以上の引張強さの確保に有効であり、また、焼入れ性の向上は、所望の金属組織が得やすくなるため製造の観点から有利である。また、Siは、炭化物の生成を抑制して残留オーステナイトを確保しやすくするので、安定して多量の残留オーステナイトを得るために重要な元素である。これらの効果を得るには、Siの含有量は1.2%以上とする必要がある。一方、2.0%を超えてSiを含有させてもその効果は飽和することに加え、靱性の劣化が生じる。したがって、Siの含有量を1.2〜2.0%とする。Si含有量の望ましい下限は1.3%、また、望ましい上限は1.5%である。
Mnは、焼入れ性と強度を向上させる作用を有する。強度の向上は1300MPa以上の引張強さの確保に有効であり、また、焼入れ性の向上は、所望の金属組織が得やすくなるため製造の観点から有利である。また、Mnには、Sと結合して硫化物を形成し、Sの粒界偏析を抑制して耐水素脆化特性を向上する効果もある。加えて、オーステナイト安定化元素であるMnには、残留オーステナイトを確保しやすくする効果もある。これらの効果を得るには、Mnの含有量は0.30%以上とする必要がある。一方で、Mnを過剰に含有させると粒界に偏析し、粒界割れ型の水素脆性破壊を促進する。したがって、Mnの含有量を0.30%以上1.0%未満とする。Mn含有量の望ましい下限は0.40%、また、望ましい上限は0.60%である。
Crは、強度を向上させるのに有効な元素である。また、炭化物の生成を抑制して残留オーステナイトを確保しやすくする。加えて、Crには、焼入れ性を向上させる作用もあり、焼入れ性の向上は、所望の金属組織が得やすくなるため製造の観点から有利である。これらの効果を得るためには、Crを0.5%以上含有させる必要がある。一方で、Crを過剰に含有させると靱性の劣化が生じる。したがって、Crの含有量を0.5〜1.5%とする。Cr含有量の望ましい下限は0.8%、また、望ましい上限は1.2%である。
Alは、脱酸作用を有する元素である。この効果を十分に確保するためにはAlを0.005%以上含有させる必要がある。一方、Alを0.10%を超えて含有させてもその効果は飽和する。したがって、Alの含有量を0.005〜0.10%とする。なお、本発明のAl含有量とは酸可溶Al(所謂「sol.Al」)での含有量を指す。
Moは、Fe炭化物の安定性を高めて、耐水素脆化特性を向上させる元素である。このため、必要に応じてMoを含有させてもよい。しかしながら、本発明では、C等の他の元素の含有量および金属組織を適正化することで良好な耐水素脆化特性を確保することができるし、Moが非常に高価な元素であるため、Moの多量の含有は経済性を大きく損なうことになる。したがって、含有させる場合のMo含有量を0.30%未満とする。Mo含有量の上限は、0.20%であることが望ましい。なお、前記の効果を安定して得るためには、Mo含有量の下限は、0.05%であることが望ましく、0.10%であることが一層望ましい。
Tiは、Cまたは/およびNと結合し、微細な析出物を形成し、旧オーステナイト結晶粒を微細化して耐水素脆化特性を向上させる元素である。このため、必要に応じてTiを含有させてもよい。しかしながら、0.10%を超える量のTiを含有させると、析出物の量が増大し、靱性を劣化させる。したがって、含有させる場合のTi含有量の上限を0.10%とする。Ti含有量の上限は、0.06%であることが望ましい。なお、前記の効果を安定して得るためには、Ti含有量の下限は、0.005%であることが望ましく、0.03%であることが一層望ましい。
Nbは、Cまたは/およびNと結合し、微細な析出物を形成し、旧オーステナイト結晶粒を微細化して耐水素脆化特性を向上させる元素である。このため、必要に応じてNbを含有させてもよい。しかしながら、0.10%を超える量のNbを含有させると、析出物の量が増大し、靱性を劣化させる。したがって、含有させる場合のNb含有量の上限を0.10%とする。Nb含有量の上限は、0.06%であることが望ましい。なお、前記の効果を安定して得るためには、Nb含有量の下限は、0.005%であることが望ましく、0.03%であることが一層望ましい。
Vは、Cまたは/およびNと結合し、微細な析出物を形成し、旧オーステナイト結晶粒を微細化して耐水素脆化特性を向上させる元素である。このため、必要に応じてVを含有させてもよい。しかしながら、0.10%を超える量のVを含有させても、旧オーステナイト結晶粒を微細にする効果は飽和し、コストが嵩むだけである。したがって、含有させる場合のV含有量の上限を0.10%とする。V含有量の上限は、0.06%であることが望ましい。なお、前記の効果を安定して得るためには、V含有量の下限は、0.005%であることが望ましく、0.03%であることが一層望ましい。
Zrは、Cまたは/およびNと結合し、微細な析出物を形成し、旧オーステナイト結晶粒を微細化して耐水素脆化特性を向上させる元素である。このため、必要に応じてZrを含有させてもよい。しかしながら、0.20%を超える量のZrを含有させると、析出物の量が増大し、靱性を劣化させる。したがって、含有させる場合のZr含有量の上限を0.20%とする。Zr含有量の上限は、0.12%であることが望ましい。なお、前記の効果を安定して得るためには、Zr含有量の下限は、0.010%であることが望ましく、0.06%であることが一層望ましい。
Pは、不純物として含有され、粒界に偏析して靱性および/または耐水素脆化特性を低下させる。Pの含有量が0.030%を超えると上記の悪影響が顕著になる。このため、Pの含有量を0.030%以下とする。Pの含有量は極力低いことが望ましい。
Sは、不純物として含有され、Pと同様に粒界に偏析して耐水素脆化特性を低下させる。Sの含有量が0.030%を超えると上記の悪影響が顕著になる。このため、Sの含有量を0.030%以下とする。Sの含有量は極力低いことが望ましい。
Nは、不純物として含有され、その含有量が過剰になって0.030%を超えると靱性の劣化が顕著になる。したがって、Nの含有量を0.030%以下とする。Nの含有量は極力低いことが望ましい。
O(酸素)は、不純物として含有され、Alと結びついて酸化物を形成する。その含有量が多くなって0.010%を超えると、酸化物が過剰に形成されて靱性が低下する等の問題が生じる。したがって、Oの含有量を0.010%以下とする。Oの含有量は極力低いことが望ましい。
上記(A)項で述べた化学組成を有する高強度低合金鋼材は、金属組織が、ベイニティックフェライトと残留オーステナイトの2相からなり、該残留オーステナイトの体積率が10〜30%で、旧オーステナイト結晶粒がJIS粒度番号6.0以上である。
本発明に係る高強度低合金鋼材は、前記(B)項で述べた金属組織を有し、引張強さが1300MPa以上である部品に用いる。なお、引張強さの上限は2500MPaであることが望ましく、2000MPaであればより望ましい。
油焼入れした直径25mmの丸棒を長手方向にその中心線をとおって切断(以下、「縦断」という。)して試験片を採取し、JIS G 0551(2013)に則って旧オーステナイト結晶粒の粒度番号を調査した。具体的には、上記試験片の縦断面が被検面となるように樹脂に埋め込んで鏡面研磨した後、上記JISの附属書JAに記載の、界面活性剤を添加したピクリン酸飽和水溶液によってエッチングして旧オーステナイト結晶粒界を現出し、倍率200倍で10視野光学顕微鏡観察して、上記JISの附属書Cに記載の切断法により粒度番号を測定した。
等温変態熱処理した直径25mmの丸棒のR/2部(「R」は丸棒の半径を表す。)から、長手方向に平行部の直径が6mmで標点距離が40mmの丸棒引張試験片を切り出し、室温で引張試験して、引張強さおよび伸びを求めた。なお、伸びが20%以上の場合に、大きい伸びを有するとしてこれを目標とした。
上記〈2〉の調査で1300MPa以上の引張強さと20%以上の伸びが得られた直径25mmの各丸棒のR/2部から、長手方向に図2に示す形状の切欠き付引張試験片を切り出し、引張強さの50%の応力を負荷した陰極チャージ下での定荷重試験を200時間行った際の破断の有無で、耐水素脆化特性を調査した。その際、厳しい環境を想定して試験片内部に2ppmの濃度で水素が吸蔵されるように陰極水素チャージの電流密度と水素添加の触媒となるチオシアン酸アンモニウムの濃度を調整した。なお、試験片内部に吸蔵される水素量は、3%NaCl溶液に0〜5g/lのチオシアン酸アンモニウムを加えた溶液を用いて0.8〜1.5mA/cm2の電流密度で陰極水素チャージを96時間行った時に、昇温脱離装置により10℃/分で昇温した際に500℃までに放出される水素量を用いた。
Claims (3)
- 化学組成が、質量%で、
C:0.60%を超えて1.0%以下、
Si:1.2〜2.0%、
Mn:0.30%以上1.0%未満、
Cr:0.5〜1.5%、
Al:0.005〜0.10%、
Mo:0〜0.30%未満、
Ti:0〜0.10%、
Nb:0〜0.10%、
V:0〜0.10%、
Zr:0〜0.20%、
残部がFeおよび不純物であり、
不純物としてのP、S、NおよびOが、P:0.030%以下、S:0.030%以下、N:0.030%以下およびO:0.010%以下であり、
金属組織が、ベイニティックフェライトと残留オーステナイトの2相からなり、該残留オーステナイトの体積率が10〜30%で、旧オーステナイト結晶粒がJIS粒度番号6.0以上である、
引張強さが1300MPa以上の、
高強度低合金鋼材。 - 質量%で、Mo:0.05%以上で0.30%未満を含有する、請求項1に記載の高強度低合金鋼材。
- 質量%で、Ti:0.005〜0.10%、Nb:0.005〜0.10%、V:0.005〜0.10%およびZr:0.010〜0.20%から選択される1種以上を含有する、請求項1または2に記載の高強度低合金鋼材。
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2015
- 2015-09-16 JP JP2015182881A patent/JP6519015B2/ja active Active
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