JP6516597B2 - 画像処理装置及び画像処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は眼科診療に用いられる画像処理装置及び画像処理方法に関する。
生活習慣病や失明原因の上位を占める疾病の早期診療を目的として、被検眼の検査が広く行われている。共焦点レーザー顕微鏡の原理を利用した眼科装置である走査型レーザー検眼鏡(SLO;Scanning Laser Ophthalmoscope)は、測定光であるレーザーを眼底に対してラスター走査し、その戻り光の強度から平面画像を高分解能かつ高速に得る装置である。
開口部(ピンホール)内を通過した光のみを検出することで、特定の深度位置の戻り光のみを画像化でき、眼底カメラ等に比べてコントラストの高い画像を取得できる。
以下、このような平面画像を撮像する装置をSLO装置、該平面画像をSLO画像と記す。
近年、SLO装置において測定光のビーム径を大きくすることにより、横分解能を向上させた網膜のSLO画像を取得することが可能になってきた。しかし、測定光のビーム径の大径化に伴い、網膜のSLO画像の取得において、被検眼の収差によるSLO画像のS/N比及び分解能の低下が問題になってきた。
それを解決するために、被検眼の収差を波面センサでリアルタイムに測定し、被検眼にて発生する測定光やその戻り光の収差を波面補正デバイスで補正する補償光学系を有する補償光学SLO装置が開発され、高横分解能なSLO画像の取得を可能にしている。
このような高横分解能なSLO画像は動画像として取得することができ、たとえば血流動態を非侵襲に観察するために、各フレームから網膜血管を抽出した上で毛細血管における血球の移動速度などが計測される。また、SLO画像を用いて視機能との関連を評価するために視細胞Pを検出した上で視細胞Pの密度分布や配列の計測が行われている。図6(b)に高横分解能なSLO画像の例を示す。視細胞Pや毛細血管の位置に対応した低輝度領域Q、白血球の位置に対応した高輝度領域Wが観察できる。
前記SLO画像において、視細胞Pを観察する場合にはフォーカス位置を網膜外層(図6(a)のB5)付近に設定して図6(b)のようなSLO画像を撮影する。一方、網膜内層(図6(a)のB2からB4)には網膜血管や分岐した毛細血管が走行している。フォーカス位置を網膜内層に設定して補償光学SLO画像を取得すると、例えば網膜血管壁を直接観察できる。
しかし、網膜内層を撮影した共焦点画像では神経線維層から反射する光の影響でノイズ信号が強く、血管壁の観察や壁境界の検出が難しい場合があった。
そこで、近年は受光部手前にあるピンホールの径や形状、位置を変えることにより散乱光を取得して得られた非共焦点画像を観察する方法が用いられるようになってきている。非共焦点画像ではフォーカス深度が大きいために血管のように深度方向に凹凸のある物体の観察がしやすく、また神経線維層からの反射光を直接受光しにくくなるためノイズが低減される。
一方、網膜動脈は血管径が約10〜100μm程度の細動脈であり、その壁は内膜・中膜・外膜から構成されている。さらに中膜は平滑筋細胞で構成されており、血管の周囲方向へコイル状に走行している。高血圧症などを背景として網膜動脈壁にかかる圧力が増大すると、平滑筋が収縮して壁厚が増加する。この時点では降圧剤を服用するなどして血圧を下げれば網膜動脈壁の形状は元に戻る。しかし高血圧のまま長期間放置すると、中膜を構成する平滑筋細胞が壊死するとともに中外膜の繊維性肥厚が生じて壁厚が増加していく。この時点では既に網膜動脈壁に器質的(非可逆)な障害が生じており、細動脈障害がさらに悪化しないように継続的に治療を行う必要がある。
これまで、SLO画像における網膜血管の走行に略垂直な線分上で生成した輝度プロファイルを小区間ごとに線形近似した場合の、回帰直線の傾きの最大値・最小値を生じる位置を網膜血管境界として取得し、網膜血管径を計測する技術が非特許文献1に開示されている。さらに、補償光学眼底カメラ画像上の網膜血管壁境界を可変形状モデルにより半自動抽出する技術が非特許文献2に開示されている。
ここで、被検眼の網膜動脈は、全身の細動脈のうち直接観察可能な唯一の組織である。このとき、高血圧や糖尿病等の患者を診断するために、体内における細動脈の変化の有無や程度として、網膜動脈の血管壁の厚みを精度良く計測することが望まれている。このためには、網膜動脈の血管壁の内側境界及び外側境界の位置を簡便に且つ精度良く特定する必要がある。
本発明の目的の一つは、被検眼の眼底画像における血管壁の内側境界及び外側境界の位置を簡便に且つ精度良く特定することである。
本発明に係る画像処理装置の一つは、
被検査物の画像の血管領域を横断する少なくとも1つの方向における輝度分布に対して、第1のサイズ第1の平滑化処理を行い、前記第1のサイズよりも小さな第2のサイズ第2の平滑化処理を行う処理手段と、
前記第1の平滑化処理を行って得た輝度分布に基づいて、前記被検査物の画像における血管壁の位置を特定する第1の特定手段と、
前記第2の平滑化処理を行って得た輝度分布に基づいて、前記被検査物の画像における前記血管壁の内側境界の位置及び外側境界の位置を特定する第2の特定手段と、を有する。
また、本発明に係る画像処理方法の一つは、
被検査物の画像の血管領域を横断する少なくとも1つの方向における輝度分布に対して、第1のサイズ第1の平滑化処理を行い、前記第1のサイズよりも小さな第2のサイズ第2の平滑化処理を行う処理工程と、
前記第1の平滑化処理を行って得た輝度分布に基づいて、前記被検査物の画像における血管壁の位置を特定する第1の特定工程と、
前記第2の平滑化処理を行って得た輝度分布に基づいて、前記被検査物の画像における前記血管壁の内側境界の位置及び外側境界の位置を特定する第2の特定工程と、を有する。
本発明の一つによれば、被検眼の眼底画像における血管壁の内側境界及び外側境界の位置を簡便に且つ精度良く特定することができる。
本発明の第一の実施形態に係る画像処理装置10の機能構成例を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係る画像処理装置10を含むシステムの構成例を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係るSLO像撮像装置20の全体の構成について説明する図である。 記憶部120、画像処理部130に相当するハードウェアを有し、且つその他の各部をソフトウェアとして保持し、実行するコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係る画像処理装置10が実行する処理のフローチャートである。 本発明の実施形態での画像処理内容を説明する図である。 本発明の実施形態での画像処理内容を説明する図である。 本発明の第一の実施形態でのS530、S540で実行される処理の詳細を示すフローチャートである。 本発明の実施形態でのS560で表示される内容を説明する図である。 本発明の第二の実施形態に係る画像処理装置10の機能構成例を示すブロック図である。 本発明の第二の実施形態でのS530、S540で実行される処理の詳細を示すフローチャートである。 本発明の第三の実施形態に係る画像処理装置10の機能構成例を示すブロック図である。 本発明の第三の実施形態でのS531、S541で実行される処理の詳細を示すフローチャートである。
本実施形態に係る画像処理装置の一つは、被検眼の眼底画像の血管領域を横断する少なくとも1つの方向における輝度分布に対して、第1のサイズ毎に第1の平滑化処理を行い、第1のサイズよりも小さな第2のサイズ毎に第2の平滑化処理を行う処理手段(例えば、平滑化微分処理部132)を有する。また、本実施形態に係る画像処理装置の一つは、第1の平滑化処理を行って得た輝度分布に基づいて、眼底画像における血管壁の位置を特定する第1の特定手段(例えば、概略特徴特定部1331)を有する。また、本実施形態に係る画像処理装置の一つは、第2の平滑化処理を行って得た輝度分布に基づいて、眼底画像における血管壁の内側境界の位置及び外側境界の位置を特定する第2の特定手段(例えば、壁特徴特定部1332)を有する。これにより、被検眼の眼底画像における血管壁の内側境界及び外側境界の位置を簡便に且つ精度良く特定することができる。なお、本発明は、少なくとも1つの方向における輝度分布に対して平滑化処理が行われれば良く、例えば、眼底画像全体や血管領域全体に対して平滑化処理が行われても良い。
また、別の本実施形態に係る画像処理装置の一つは、被検眼の眼底画像の血管領域を横断する少なくとも1つの方向における輝度分布に対して、第1のサイズ及び第1のサイズよりも小さい第2のサイズで平滑化処理を行う処理手段(例えば、平滑化微分処理部132)を有する。また、別の本実施形態に係る画像処理装置一つは、第1のサイズで平滑化処理して得た輝度分布における複数の特徴点を第1の血管壁及び第2の血管壁の位置として特定する第1の特定手段(例えば、概略特徴特定部1331)を有する。また、別の本実施形態に係る画像処理装置の一つは、第1のサイズよりも小さい第2のサイズで平滑化処理して得た輝度分布における第1の血管壁及び第2の血管壁の位置の近傍の複数の特徴点を、第1の血管壁の内側境界及び外側境界と第2の血管壁の内側境界及び外側境界との位置として特定する第2の特定手段(例えば、壁特徴特定部1332)を有する。これにより、被検眼の眼底画像における血管壁の内側境界及び外側境界の位置を簡便に且つ精度良く特定することができる。ここで、従来、被検眼の眼底画像(例えば、補償光学技術を適用したSLO装置により被検眼の眼底を撮影して得た画像)に対して、網膜動脈の血管壁厚や血管膜厚等をユーザは手動で計測していた。このため、これらの計測が煩雑であり、しかも操作者による計測誤差が含まれるために再現性が低かった。そこで、被検眼の血管壁やそれを構成する膜及び細胞が描出された画像から壁境界や膜境界を自動的に特定し、血管壁厚や血管膜厚を自動で計測することが好ましい。このため、第1の血管壁の外側境界及び内側境界と第2の血管壁の外側境界及び内側境界との位置を用いて、血管壁厚と血管内径と血管外径との少なくとも1つを計測する計測手段を更に有することが好ましい。
また、別の本実施形態に係る画像処理装置の一つは、被検眼の眼底画像の血管領域を横断する方向における少なくとも1つの輝度分布に基づいて、血管壁の位置を特定する第1の特定手段(例えば、概略特徴特定部1331)を有する。また、別の本実施形態に係る画像処理装置の一つは、輝度分布における特定された血管壁の位置の近傍の複数の特徴点を、血管壁の内側境界の位置及び外側境界の位置として特定する第2の特定手段(例えば、壁特徴特定部1332)を有する。これにより、被検眼の眼底画像における血管壁の内側境界及び外側境界の位置を簡便に且つ精度良く特定することができる。なお、上述した非特許文献1には、SLO画像に対してSliding Linear Regression Filterを用いて網膜血管境界を取得し、網膜血管径を計測する技術について開示されている。しかしながら、非特許文献1には、血管壁や膜が描出された補償光学SLO画像に対して血管の壁境界や膜境界を検出する技術や、血管壁厚や血管膜厚を自動計測する技術等については開示されていない。また、上述した非特許文献2には、補償光学眼底カメラ画像に対して可変形状モデルを用いて網膜血管壁境界を検出して網膜動脈壁厚を半自動計測する技術について開示されている。しかしながら、非特許文献1には、補償光学眼底カメラ画像では静脈壁や、動静脈壁を構成する膜を描出できないため、静脈壁や動静脈の膜境界を検出する技術や、静脈壁厚や動静脈の血管膜厚を計測する技術等については開示されていない。
以下、添付図面に従って本発明に係る画像処理装置、画像処理方法の好ましい実施形態について詳説する。ただし本発明はこれに限定されるものではない。
[第1の実施形態]
本実施形態に係る画像処理装置は、共焦点画像と非共焦点画像を取得するSLO装置を用いて撮影した網膜血管壁の画像を異なるスケール(サイズ)で平滑化微分した画像において、網膜血管を横断する方向で取得した輝度プロファイル(輝度分布)上の特徴点に基づき壁境界を特定する。
具体的には、共焦点画像と非共焦点画像を同時に取得するSLO装置を用いて撮影した網膜血管壁の非共焦点画像を2種類のスケール(サイズ)で平滑化し、微分する。第1のサイズの一例である大きいスケールで平滑化微分した画像において網膜血管を横断する輝度プロファイル上の特徴点から壁(第1の血管壁と第2の血管壁)の概略位置(代表位置)を特定する。第2のサイズの一例である小さなスケールで平滑化微分した画像において網膜血管を横断する輝度プロファイル上の特徴点から壁境界候補点列を取得し、外れ値除去後に血管走行方向に接続することで血管壁境界を特定して壁厚を計測する場合について説明する。ここで、本明細書において「平滑化微分処理」という文言は、「平滑化処理して得た輝度分布に対する微分処理(差分でも良いし、除算でも良い)」の考え方を含むし、「輝度分布に対する線形近似」の考え方を含む。なお、本発明において、微分処理は必須の処理ではないが、詳細は後述する。
(全体構成)
図2は本実施形態に係る画像処理装置10を含むシステムの構成図である。図2に示すように画像処理装置10は、SLO像撮像装置20やデータサーバ40、時相データ取得装置50と、光ファイバ、USBやIEEE1394等で構成されるローカル・エリア・ネットワーク(LAN)30を介して接続されている。なおこれらの機器との接続は、インターネット等の外部ネットワークを介して接続される構成であってもよいし、あるいは画像処理装置10と直接接続されている構成であってもよい。
SLO像撮像装置20は被検眼の広画角画像Dlや高倍率画像である共焦点画像Dcと非共焦点画像Dnを撮像する装置である。SLO像撮像装置20は、広画角画像Dlや共焦点画像Dc、非共焦点画像Dn、及びその撮影時に用いた固視標位置Fl、Fcnの情報を画像処理装置10及びデータサーバ40へ送信する。
時相データ取得装置50は、自律的に変化する生体信号データ(時相データ)を取得する装置であり、例えば脈波計もしくは心電計からなる。時相データ取得装置50は不図示の操作者による操作に応じ、前記広画角画像Dlや前記共焦点画像Dcと非共焦点画像Dnの取得と同時に時相データPiを取得する。得られた時相データPiは、画像処理装置10、データサーバ40へ送信される。なお、時相データ取得装置50は、SLO像撮像装置20に直接接続されている構成であってもよい。
なお、各画像を異なる撮影位置で取得する場合にはDli、Dcj、Dnkのように表す。すなわちi、jは各々撮影位置番号を示す変数であり、i=1,2,...,imax、j=1,2,...,jmax、k=1,2,...,kmaxとする。また、共焦点画像Dcや非共焦点画像Dnを異なる倍率で取得する場合には、最も倍率の高い画像から順にDc1m,Dc2o,...(Dn1m,Dn2o,...)のように表記する。Dc1m(Dn1m)のことを高倍率共焦点(非共焦点)画像、Dc2o,...(Dn2o,...)を中間倍率共焦点(非共焦点)画像と表記する。
データサーバ40は被検眼の広画角画像Dlや共焦点画像Dc、非共焦点画像Dn、及びその撮影時に用いた固視標位置Fl、Fcnのような撮像条件データ、時相データPi、被検眼の画像特徴などを保持する。被検眼の画像特徴として、本発明では網膜血管、網膜血管壁、血管壁を構成する膜や壁細胞に関する画像特徴を扱う。SLO像撮像装置20が出力する広画角画像Dl、共焦点画像Dc、非共焦点画像Dn、撮影時に用いた固視標位置Fl、Fcn、時相データPi、画像処理装置10が出力する被検眼の画像特徴を該サーバに保存する。また画像処理装置10からの要求に応じ、広画角画像Dl、共焦点画像Dc、非共焦点画像Dn、時相データPi、被検眼の画像特徴を画像処理装置10に送信する。
次に、図1を用いて本実施形態に係る画像処理装置10の機能構成を説明する。図1は画像処理装置10の機能構成を示すブロック図であり、画像処理装置10は画像取得部110、記憶部120、画像処理部130、指示取得部140を有する。
また、画像取得部110は共焦点データ取得部111、非共焦点データ取得部112、時相データ取得部113を備える。画像処理部130は輝度分布取得部131、平滑化微分処理部132、特定部133、連結部134、計測部135、表示制御部136を有する。さらに、特定部133は、第1の特定部の一例である概略特徴特定部1331及び第2の特定部の一例である壁特徴特定部1332を備える。
図3(a)(b)を用いて補償光学を適用したSLO撮像装置20を説明する。SLO撮像装置20はSLD201、シャックハルトマン波面センサ206、補償光学系204、ビームスプリッタ(202、203)、X−Y走査ミラー205、フォーカスレンズ209、絞り210、光センサ211、画像形成部212、出力部213を有する。
光源であるSLD(Super Luminescent Diode)201から照射された光は眼底で反射され、一部が第二のビームスプリッタ203経由でシャックハルトマン波面センサ206へ、それ以外は第一のビームスプリッタ202経由で光センサ211へ入力される。シャックハルトマン波面センサ206は眼の収差を測定するためのデバイスであり、レンズアレイ207にCCD208が接続されている。入射光がレンズアレイ207を透過するとCCD208に輝点群が現れ、該投影された輝点の位置ずれに基づき波面収差が測定される。補償光学系204はシャックハルトマン波面センサ206で測定された波面収差に基づき、収差補正デバイス(可変形状ミラーもしくは空間光位相変調器)を駆動して収差を補正する。該収差補正された光はフォーカスレンズ209、絞り210を経由し光センサ211にて受光される。X―Y走査ミラー205を動かすことで眼底上の走査位置を制御でき、操作者が予め指定した撮影対象領域、時間(フレームレート×フレーム数)のデータを取得する。該データを画像形成部212へ伝送し、走査速度のばらつきに起因する画像歪みの補正や、輝度値の補正を行って画像データ(動画像もしくは静止画像)を形成する。出力部213は画像形成部212が形成した画像データを出力する。
SLO撮像装置20において、共焦点画像Dcと非共焦点画像Dnを取得可能な構成であれば、図3(a)における絞り210及び光センサ211の部分は任意の構成にしてよい。本実施形態では、遮光部210−1(図3(b)・図3(e))及び光センサ211−1、211−2、211−3(図3(b))で構成する。図3(b)において戻り光(反射光や散乱光)は、結像面に配置された遮光部210−1に入射した一部光は反射して光センサ211−1へ入射する。ここで、図3(e)を用いて遮光部210−1の説明を行う。遮光部210−1は透過領域210−1−2及び210−1−3、遮光領域(不図示)、反射領域210−1−1で形成され、中心は戻り光の光軸中心に位置するように配置される。遮光部210−1は戻り光の光軸に対して斜めに配置されたときに、光軸方向から見て円形になるような楕円形状のパターンを持っている。遮光部で分割された光は光センサ211−1に入射する。遮光部210−1の透過領域210−1−2及び210−1−3を通過した光は、結像面に配置されたプリズム210−2によって分割され、図3(b)に示すように、光センサ211−2、211−3へそれぞれ入射する。
各光センサで得られた電圧信号は、画像形成部212内のADボードにてデジタル値に変換された後に2次元画像に変換される。光センサ211−1に入射された光に基づいて生成された画像は、特定の狭い範囲に焦点を合わせた共焦点画像となる。また、光センサ211−2及び211−3に入力される光に基づいて生成された画像は、広い範囲に焦点を合わせた非共焦点画像となる。
なお、非共焦点信号の分割法はこれに限られるものではなく、例えば図3(f)のように4つに分割して受信するよう構成してもよい。また、共焦点信号及び非共焦点信号の受信方法はこれに限定されるものではなく、例えば絞り210(開口部)の径や位置を可変とし、図3(c)のように共焦点信号として受信したり、図3(d)のように非共焦点信号を受信するよう調節してもよい。開口部の径や移動量は任意に設定して良く、例えば図3(c)では開口部の径を1ADD(Airy Disc Diameter)、図3(d)では開口部の径を10ADD程度、移動量を6ADD程度に設定できる。あるいは、図3(g)や(h)のように、複数の非共焦点信号を略同時に受信するよう構成してもよい。
本実施形態では非共焦点信号が2種類あることから、片側をRチャンネル画像の意味でDnr、もう一方をLチャンネル画像の意味でDnlと表記する。
非共焦点画像Dnと標記する場合は、Rチャンネル画像Dnr及びLチャンネル画像Dnlの両方を指している。
なお、図3(a)の構成で走査光学系の振り角を大きくし、補償光学系204が収差補正を行わないよう指示することによってSLO像撮像装置20は通常のSLO装置としても動作し、広画角画像を取得できる。
なお、以下では高倍率画像Dc、Dnよりも低倍率で、データ取得手段110が取得した画像の中で最も低倍率な画像のことを広画角画像Dl(Dlc、Dln)と呼ぶ。従って、広画角画像Dlは補償光学が適用されたSLO画像の場合もあるし、単なるSLO画像の場合も含まれる。
次に、図4を用いて画像処理装置10のハードウェア構成について説明する。図4において、301は中央演算処理装置(CPU)、302はメモリ(RAM)、303は制御メモリ(ROM)、304は外部記憶装置、305はモニタ、306はキーボード、307はマウス、308はインターフェースである。本実施形態に係る画像処理機能を実現するための制御プログラムや、当該制御プログラムが実行される際に用いられるデータは、外部記憶装置304に記憶されている。これらの制御プログラムやデータは、CPU301による制御のもと、バス309を通じて適宜RAM302に取り込まれ、CPU301によって実行され、以下に説明する各部として機能する。
画像処理装置10を構成する各ブロックの機能については、図5のフローチャートに示す画像処理装置10の具体的な実行手順と関連付けて説明する。
<ステップ510>
画像取得部110はSLO像撮像装置20に対して高倍率画像(共焦点画像Dcj、非共焦点画像DnrkおよびDnlk)の取得を要求する。また、これらの画像に対応する固視標位置Fl、Fcnの取得を要求する。SLO像撮像装置20は該取得要求に応じて広画角画像Dl、共焦点画像Dcjや非共焦点画像Dnrk、Dnlk、対応する属性データ及び固視標位置Fl、Fcnを取得し送信する。画像取得部110はSLO像撮像装置20からLAN30を介して当該広画角画像Dl、共焦点画像Dcj、非共焦点画像Dnrk、Dnlk、固視標位置Fl、Fcnを受信し、記憶部120に格納する。
また、時相データ取得部113は時相データ取得装置50に対し生体信号に関する時相データPiの取得を要求する。本実施形態では時相データ取得装置として脈波計を用い、被験者の耳垂(耳たぶ)から脈波データPiを取得する。ここで脈波データPiは一方の軸に取得時刻、他方の軸に脈波計が計測した脈波信号値を持つ点列として表現される。時相データ取得装置50は該取得要求に応じて対応する時相データPiを取得し送信するので、時相データ取得部113は時相データ取得装置50からLAN30を介して当該脈波データPiを受信する。時相データ取得部113は受信した時相データPiを記憶部120に格納する。
ここで時相データ取得装置50が取得する時相データPiのある位相に合わせて共焦点データ取得部111もしくは非共焦点データ取得部112が画像を取得開始する場合と、画像の取得要求後直ちに脈波データPiと画像取得を同時に開始する場合が考えられる。本実施形態では画像取得要求後直ちに時相データPiと画像取得を開始する。
時相データ取得部113より各画像の時相データPiを取得し、各々の時相データPiの極値を検出して心拍動の周期及び心時相の相対値(relative cardiac cycle)を算出する。なお、心時相の相対値は、心拍動の周期を1とした場合に0から1までの浮動小数点数で表わされる相対値である。
また、網膜血管を撮影した場合の共焦点画像Dc、非共焦点画像Dnrの例を図6(c)及び(d)に示す。共焦点画像Dcでは背景の神経線維層の反射が強く、背景部分のノイズにより位置合わせが難しくなりやすい。また、Rチャンネルの非共焦点画像Dnrでは、右側の血管壁のコントラストが高くなる。一方、Lチャンネルの非共焦点画像Dnl(図6(e))では、左側の血管壁のコントラストが高くなる。
なお、非共焦点画像としては、Rチャンネル画像とLチャンネル画像との演算処理によって得られる画像
a)Rチャンネル画像とLチャンネル画像の加算平均画像Dnr+l(図6(g))
b)非共焦点画像に関する差分強調処理((L−R)/(R+L))を行ったSplit Detector画像Dns(図6(f))
のいずれかを用いて血管壁の観察や、血管壁に関する計測処理を行ってもよい。
また、高倍率画像の取得位置は任意の取得位置の画像を用いてよい。例えば視神経乳頭部周囲で取得された画像や、網膜血管アーケードに沿って取得された画像を用いる場合も本発明に含まれる。
<ステップ520>
画像処理部130は、取得された画像のフレーム間位置合わせを行う。次に、画像処理部130は、各フレームの輝度値やノイズ、基準フレームとの間の変位量に基づいて例外フレームを判定する。
まず、広画角画像Dl及び非共焦点画像Dcにおけるフレーム間位置合わせを行い、該フレーム間位置合わせパラメータ値を各々共焦点画像Dnr、Dnlに対しても適用する。
具体的なフレーム間位置合わせ法として、
i)画像処理部130は、位置合わせの基準となる基準フレームを設定する。本実施形態では、最もフレーム番号の小さいフレームを基準フレームとする。なお、基準フレームの設定法はこれに限るものではなく、任意の設定法を用いて良い。
ii)画像処理部130は、フレーム間の大まかな位置の対応付け(粗位置合わせ)を行う。任意の位置合わせ手法を利用できるが、本実施形態では、画像間類似度評価関数として相関係数、座標変換手法としてAffine変換を用いて粗位置合わせを行う。
iii)画像処理部130は、フレーム間の大まかな位置の対応関係のデータに基づいて精密位置合わせを行う。
本実施形態ではii)で得られた粗位置合わせ済み動画像に対し、非剛体位置合わせ手法の一種であるFFD(Free Form Deformation)法を用いてフレーム間の精密位置合わせを行う。
なお、精密位置合わせの手法はこれに限らず、任意の位置合わせ手法を用いて良い。
また、本実施形態では共焦点画像Dcに対してフレーム間位置合わせを行うことによって得られる位置合わせパラメータを非共焦点画像Dnのフレーム間位置合わせパラメータとして用いたが、これに限定されない。例えば、非共焦点画像Dn(DnrやDnlや、DnrとDnlとの演算処理により得られる画像も含む)のフレーム間位置合わせによって得られる位置合わせパラメータを共焦点画像Dcのフレーム間位置合わせパラメータとして用いる場合も本発明に含まれる。
次に、画像処理部130は広画角画像Dlと高倍率画像Dcjとの位置合わせを行い、広画角画像Dl上の高倍率画像Dcjの相対位置を求める。
画像処理部130は、記憶部120から高倍率共焦点画像Dcjの撮影時に用いた固視標位置Fcnを取得し、広画角画像Dlと共焦点画像Dcjとの位置合わせにおける位置合わせパラメータの探索初期点とする。該パラメータ値の組み合わせを変化させながら広画角画像Dlと高倍率共焦点画像Dcjとの位置合わせを行う。
広画角画像Dlと高倍率共焦点画像Dcjとの類似度が最も高い位置合わせパラメータ値の組み合わせを広画角画像Dlに対する非共焦点画像Dcjの相対位置として決定する。位置合わせ手法はこれに限らず、任意の位置合わせ手法を用いて良い。
また、S510において中間倍率の画像が取得されている場合には、より低倍率な画像から順に位置合わせを行う。例えば高倍率非共焦点画像Dc1mと中間倍率非共焦点画像Dc2oが取得されている場合にはまず広画角画像Dlと中間倍率画像Dc2oとの間で位置合わせを行い、次いで中間倍率画像Dc2oと高倍率画像Dc1mとの間で位置合わせを行う。
さらに、広画角画像Dlと共焦点画像Dcjに対して決定された画像貼り合わせパラメータ値を非共焦点画像(Dnrk、Dnlk)の貼り合わせに対しても適用する。広画角画像Dl上の高倍率非共焦点画像Dnrk、Dnlkの相対位置が各々決定される。
<ステップ530>
第1の特定部の一例である概略特徴特定部1331が、以下の手順で血管壁の概略位置を特定する。
i)S520でフレーム間位置合わせ済みの非共焦点動画像を重ね合わせ処理した上で大小2種類のスケール(サイズ)で平滑化処理を行う。また、該平滑化処理を行って得た画像に対して微分処理を行うことで平滑化微分画像を生成する。なお、本実施形態では、画像全体に平滑化処理を行っているが、眼底画像の血管領域を横断する少なくとも1つの方向における輝度分布に対して平滑化処理が行われれば良い。また、眼底画像の互いに垂直な2つの方向に対して微分処理が行われれば良いが、血管領域を横断する方向における輝度分布に対して微分処理を行う際には、横断する方向に沿って微分処理を行えば良い。
ii)i)で生成して得た平滑化微分画像のうち、小さいスケールで平滑化して微分処理して得た平滑化微分画像に対してモルフォロジーフィルタを適用して網膜血管の中心線を検出する。
iii)i)で生成した平滑化微分画像のうち、第1のサイズである大きなスケール(大きなフィルタのサイズ、大きなフィルタ係数)で第1の平滑化処理を行い、該第1の平滑化処理を行って得た画像に対して第1の微分処理を行う。また、該第1の微分処理を行って得た平滑化微分画像における該血管中心線上の各位置で、該血管中心線に略垂直な線分上での輝度プロファイル(輝度分布)を取得する。
iv)iii)で生成した輝度プロファイル上で右方向に最大値、左方向に最小値検出を行い、壁の概略位置を特定する。さらに第1の血管壁・第2の血管壁の一例である左壁・右壁の概略位置候補点列を各々グルーピングした上で、各壁の概略位置候補点から血管中心線までの距離を算出する。各グループ内で該距離値に関して上位・下位の所定割合を外れ値とみなし、該外れ値を持つ壁の概略位置候補点を除去して残った壁の概略位置候補点列を壁の走行方向に補間する。なお、外れ値判定法は本実施形態のように中心線からの距離値に基づく手法に限定されるものではなく、任意の公知の外れ値判定法を用いてよい。
具体的な壁概略位置の特定処理についてはS810〜S860で詳述する。
<ステップ540>
第2の特定部の一例である壁特徴特定部1332が、以下の手順で血管壁境界位置を特定する。
i)S530のi)で生成した平滑化微分画像のうち、第2のサイズである小さなスケール(小さなフィルタのサイズ、小さなフィルタ係数)で第2の平滑化処理を行い、該第2の平滑化処理を行って得た画像に対して第2の微分処理を行う。また、該第2の微分処理を行って得た微分画像における該血管中心線上の各位置で、該血管中心線に略垂直な線分上での輝度プロファイル(輝度分布)を取得する。また、S530のiv)で特定した壁の概略位置を取得する。
ii)i)で取得した輝度プロファイル上の右側の壁概略位置近傍において2極大点、左側の壁概略位置近傍において2極小点を検出して壁境界候補点とする。さらに各壁境界候補点を左壁の外側境界、左壁の内側境界、右壁の外側境界、右壁の内側境界にグルーピングした上で、各壁境界候補点に対して1次モーメント(中心線からの距離×輝度値)を算出する。ただし、ここでは輝度値として非共焦点画像(R+L画像)における輝度値を参照する。また外れ値判定法は本実施形態のように1次モーメントに基づく手法に限定されるものではなく、任意の公知の外れ値判定法を用いてよい。各グループ内で該モーメント値に関して上位・下位の所定割合を外れ値とみなし、該外れ値を持つ壁境界候補点を除去して残った壁境界候補点列を壁の走行方向に補間することで壁境界として特定する。
具体的な壁境界特定処理についてはS811〜S841で詳述する。
<ステップ550>
計測部135は、S540で特定された血管壁境界の位置に基づいて血管走行に沿った壁厚や壁厚に関する指標値の分布を計測する。
具体的には検出された壁の壁厚、血管の内径及び外径、壁厚に関する指標値(Wall−to−Lumen Ratio;WLR)を算出し、各々平均値と標準偏差、最大値と最小値も求める。ここで、WLR=(血管外径―血管内径)/(血管内径)である。これらの統計値は画像全体に対してだけでなく血管枝単位で算出してもよい。また、壁厚や壁厚に関する指標の統計値については、血管枝内の片側(血管走行方向に対して右側もしくは左側)単位で算出したり、小領域ごとに算出してもよい。
なお、血管壁厚に関する指標としてはこれに限定されず、左右両側の壁で算出した壁厚値の演算によって指標を算出してもよい。例えば、
・血管走行方向から見て左側、右側の壁厚比
(血管壁の大部分を占める壁細胞はコイル状に走行していて壁厚異常が生じる場合は両側に生じやすいと考えられるため、壁厚計測値に関する信頼性の指標として用いる)
を算出してもよい。
<ステップ560>
表示制御部136が、取得された画像や検出された壁境界の位置、計測結果(壁厚や壁厚に関する指標値)をモニタ305に表示する。本実施形態では、
i)・非共焦点動画像(図9(a)のI1)
・脈波の特定の位相に対応するフレームを選択して重ね合わせ処理した画像(図9(a)のI2)
・血管の内腔を抽出した画像の並置表示(図9(a)のI3)
ii)壁境界の検出位置(図9(a)のBv)
iii)血管壁の走行に沿って計測された壁厚もしくは壁厚に関する指標値を示すグラフ(図9(a)のG1)
iv)小領域ごとに算出した壁厚もしくは壁厚に関する指標値の分布を示すマップ(図9(b))
をモニタ305に表示する。なお、iv)については算出した値とカラーバーを対応付けた上で、カラー表示する。
<ステップ570>
指示取得部140は、S510で取得した画像やS550で計測したデータ、すなわち非共焦点画像Dnkにおける壁境界位置や壁厚等の値をデータサーバ40へ保存するか否かの指示を外部から取得する。この指示は例えばキーボード306やマウス307を介して操作者により入力される。保存が指示された場合はS580へ、保存が指示されなかった場合はS590へと処理を進める。
<ステップ580>
画像処理部130は検査日時、披検眼を同定する情報と、S570で決定した保存対象の画像や計測結果に関するデータとを関連付けてデータサーバ40へ送信する。
<ステップ590>
指示取得部140は画像処理装置10による高倍率非共焦点画像Dnkに関する処理を終了するか否かの指示を外部から取得する。この指示はキーボード306やマウス307を介して操作者により入力される。処理終了の指示を取得した場合は処理を終了する。一方、処理継続の指示を取得した場合にはS510に処理を戻し、次の披検眼に対する処理(または同一披検眼に対する再処理を)行う。
さらに、図6、図7及び図8(a)に示すフローチャートを参照しながら、S530で実行される処理の詳細について説明する。
<ステップ810>
平滑化微分処理部132がフレーム間位置合わせ済みの非共焦点動画像に対してマルチスケールでの平滑化処理を行う。任意の公知の平滑化処理を適用可能であるが、本実施形態ではフレーム間位置合わせ済みの非共焦点動画像Dr+lに対して重ね合わせ処理した後、フィルタサイズ4及び10で平均値フィルタを適用する。
<ステップ820>
平滑化微分処理部132がS810で平滑化した画像に対して微分処理を行う。任意の公知の微分処理を適用可能であるが、本実施形態では差分型のエッジ検出オペレータを適用する。生成される平滑化微分画像は、図6(i)に示すようにSplit Detector画像Dns(図6(f))を平滑化したものと類似した画像になる。
<ステップ830>
輝度分布取得部131がS810で生成した平滑化画像のうちフィルタサイズの小さい方の平滑化画像に対し、モルフォロジーフィルタを適用して網膜動脈の中心線を検出する。本実施形態ではトップハットフィルタを適用し、血柱反射に相当する幅の狭い高輝度領域を検出する。さらに該高輝度領域を細線化処理して血管中心線を検出する。なお、血管中心線の検出方法はこれに限らず任意の公知の検出方法を用いてよい。
<ステップ840>
次に輝度分布取得部131は、大きなスケールで平滑化後に微分した画像(図6(i))における該血管中心線上の各位置で該血管中心線に垂直な線分に沿った輝度プロファイルGpri1(図7(b)、i=0,1,2,...,N)を生成する。
さらに、概略特徴特定部1331はGpri1(図7(b))上の輝度値を探索し、中心線位置G0から左側に最小値Gmin、右側に最大値Gmaxを取得することにより壁概略位置候補を特定する。
<ステップ850>
画像処理部130は、S840で特定された各輝度プロファイル上での壁概略位置候補を
(i)左壁の概略位置候補群
(ii)右壁の概略位置候補群
の2つにグルーピングした上で、各概略位置候補群内で外れ値判定を行って外れ値除去を行う。本実施形態では、血管中心線からの距離に関して上位Tt1%、下位Tb1%を外れ値とみなし、該距離値を持つ概略位置候補を除去する。
<ステップ860>
連結部134が残った壁概略位置候補を血管走行方向へ補間処理した上で接続することにより、血管壁境界を特定する。補間及び接続方法は任意の公知の手法を適用可能であるが、本実施形態では自然スプライン補間法により補間して接続する。
さらに、図6、図7及び図8(b)に示すフローチャートを参照しながら、S540で実行される処理の詳細について説明する。
<ステップ811>
小さいスケールで平滑化後に微分した画像における血管中心線上の各位置で該血管中心線に垂直な線分に沿った輝度プロファイルGpri2(図7(c)、i=0,1,2,...,N)と壁概略位置Gmin、Gmaxを取得する。
<ステップ821>
壁特徴特定部1332は、S811で取得した輝度プロファイルGpri2において、壁概略位置Gminの近傍における極小値2点と、壁概略位置Gmaxの近傍における極大値2点を選択することで壁境界候補位置を特定する。
<ステップ831>
画像処理部130は、S821で特定された各輝度プロファイル上での壁境界候補を以下の4つにグルーピングした上で、各境界候補群内で外れ値判定を行って外れ値除去を行う。
(i)左壁の外側境界候補群
(ii)左壁の内側境界候補群
(iii)右壁の外側境界候補群
(iv)右壁の内側境界候補群
本実施形態では各境界候補群で1次モーメント(輝度値×血管中心線からの距離)を算出した上で、上位Tt2%、下位Tb2%を外れ値とみなし、該モーメント値を持つ壁境界候補を除去する。ただし、ここでは輝度値として非共焦点画像(R+L画像)における輝度値を参照するものとする。
<ステップ841>
連結部134が残った壁境界候補点列を各境界候補群ごとに血管走行方向へ補間処理した上で接続することにより、血管壁境界を特定する。補間及び接続方法は任意の公知の手法を適用可能であるが、本実施形態では自然スプライン補間法により補間して接続する。
なお、本実施形態では輝度プロファイルを平滑化微分するのに非共焦点画像に対して平滑化フィルタと微分フィルタを適用して平滑化微分画像上の輝度プロファイルを取得したが、本発明はこれに限定されない。例えば図8(c)及び(d)に示すような手順で、非共焦点画像に対して血管を横断する方向で輝度プロファイルを取得する。該輝度プロファイルを小区間ごとに線形近似してその回帰直線の傾きを出力する処理を、小区間を一定間隔で移動させながら繰り返すことにより平滑化微分した輝度プロファイルを生成する場合も本発明に含まれる。この場合、画像全体を平滑化微分するのではなく、輝度プロファイル上の輝度値のみ平滑化微分される。このとき、第1のスケールに相当する大きなサイズの区間で第1の線形近似を行い、第2のスケールに相当する小さいサイズの区間で第2の線形近似を行うことが好ましい。
また、本実施形態では非共焦点画像Dr+lに対して血管壁境界を特定したが、本発明はこれに限定されない。例えば、共焦点画像Dcに対して本実施形態で説明した画像処理手法を適用して壁境界を特定する場合も本発明に含まれる。
また、本実施形態では1種類の非共焦点画像(R+L画像)に対して異なるスケールで平滑化微分を行い、該平滑化微分画像における輝度プロファイル上の特徴点に基づいて血管壁の概略位置及び血管壁境界を特定したが、本発明はこれに限定されない。例えば、異なる種類の非共焦点画像(Rチャンネル画像・Lチャンネル画像)を各々異なるスケールで平滑化後微分処理しておく。左側の血管壁の概略位置や壁境界はLチャンネル画像を平滑化微分した画像での輝度プロファイルを参照して特定し、右側の血管壁の概略位置や壁境界はRチャンネル画像を平滑化微分した画像での輝度プロファイルを参照して特定する場合も本発明に含まれる。
さらに、本実施形態では位置合わせ済み動画像を異なるスケールで平滑化するのに重ね合わせ処理してから異なるフィルタサイズで平滑化する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、重ね合わせのみ行った画像を小さなスケールでの平滑化画像とし、重ね合わせ後に面内での平滑化を行った画像を大きなスケールでの平滑化画像とする場合も本発明に含まれる。あるいは、フレーム間位置合わせ済み動画像に対して面内方向のフィルタサイズが異なる3次元平滑化フィルタを適用することにより、異なるスケールで平滑化した2次元画像を生成する場合も本発明に含まれる。なお、重ね合わせ処理する場合には心拍動の影響により血管壁を構成する膜境界の位置が変化するのを避けるために脈波の特定の位相に対応するフレームを選択して重ね合わせ処理することが望ましい。
さらに、本実施形態では血管中心線をモルフォロジーフィルタを用いて自動的に取得する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、操作者がキーボード306やマウス307等を用いて指定した血管中心線の位置を指示取得部140から取得することにより血管中心線を手動設定する場合も本発明に含まれる。
以上述べた構成によれば、画像処理装置10は共焦点画像と非共焦点画像を取得するSLO装置を用いて撮影した網膜血管壁画像を異なるスケールで平滑化微分した画像に対し、血管を横断する方向で取得した輝度プロファイル上の特徴点に基づき壁境界を特定する。
これにより、被検眼の画像から血管壁領域を簡便かつロバストに特定する。
[第2の実施形態]
本実施形態に係る情報処理装置は、複数種類の非共焦点画像を取得するSLO装置で撮影した画像に対して以下の処理を行う。まず2種類の非共焦点画像を異なるスケールで平滑化する。さらに、大きなスケールで平滑化された異なる種類の非共焦点画像間での差分演算を実行することで、大きなスケールで平滑化されたSplit Detector画像を生成する。また、小さなスケールで平滑化された異なる種類の非共焦点画像間での差分演算を実行することで小さなスケールで平滑化されたSplit Detector画像を生成する。実施形態1と同様の手法で該大きなスケールで平滑化されたSplit Detector画像から血管壁の概略位置を特定し、小さなスケールで平滑化されたSplit Detector画像から血管壁境界を特定する場合について説明する。
本実施形態に係る情報処理装置10と接続される機器の構成は第1実施形態と同様であるので省略する。
次に、本実施形態に係る情報処理装置10の機能ブロックを図10に示す。画像処理部130に平滑化微分処理部132がなく、代わりに平滑化部137と非共焦点データ演算部138を備える点が実施形態1と異なっている。
また、本実施形態での画像処理フローは図5(a)に示す通りであり、S530、S540以外は実施形態1の場合と同様であるので説明は省略する。
<ステップ530>
概略特徴特定部1331が、以下の手順で血管壁の概略位置を特定する。
i)S520でフレーム間位置合わせ済みの非共焦点動画像を重ね合わせした後、大小2種類のスケールで平滑化する。
ii)大きなスケールで平滑化した異なる種類の非共焦点画像間での差分演算、及び小さなスケールで平滑化した異なる種類の非共焦点画像間での差分演算を実行することで平滑化スケールの異なる2枚のSplit Detector画像を生成する。
iii)i)で平滑化した画像のうち小さなスケールで平滑化した非共焦点画像に対してモルフォロジーフィルタを適用して網膜血管の中心線を検出する。
iv)ii)で生成した画像のうち大きなスケールで平滑化したSplit Detector画像における該血管中心線上の各位置で、該血管中心線に略垂直な線分上での輝度プロファイルを取得する。
v)iv)で生成した輝度プロファイル上で右方向に最大値、左方向に最小値検出を行い、壁の概略位置を特定する。さらに左壁・右壁の概略位置候補点列を各々グルーピングした上で、各壁の概略位置候補点から血管中心線までの距離を算出する。各グループ内で該距離値に関して上位・下位の所定割合を外れ値とみなし、該外れ値を持つ壁の概略位置候補点を除去して残った壁の概略位置候補点列を壁の走行方向に補間する。なお、外れ値判定法は任意の公知の手法を適用してよい。
さらに、図7(d)及び図11(a)に示すフローチャートを参照しながら、S530で実行される処理の詳細について説明する。ただし、S1130、S1150、S1160については第1実施形態の場合と同様であるので説明は省略する。
<ステップ1110>
平滑化部137がフレーム間位置合わせ済みの非共焦点動画像に対してマルチスケールでの平滑化処理を行う。任意の公知の平滑化処理を適用可能であるが、本実施形態ではフレーム間位置合わせ済みの非共焦点動画像Dnr、Dnlを重ね合わせ処理した後、フィルタサイズ4及び10でガウシアンフィルタを適用する。
<ステップ1120>
非共焦点データ演算部138がS1110で平滑化した異なる種類の非共焦点画像間での差分演算を行う。本実施形態では同じスケールで平滑化したRチャンネル画像およびLチャンネル画像を用いて差分強調処理((L−R)/(R+L))を行い、平滑化したSplitDetector画像(図6(f))を生成する。ただし、これに限らず微分と同様の効果を持つ任意の公知の演算処理を適用してよい。なお、非共焦点データ演算部138は、上述した差分演算の代わりに、平滑化した異なる種類の非共焦点画像間での除算演算を行っても良い。
<ステップ1140>
次に輝度分布取得部131は、大きなスケールで平滑化したSplit Detector画像(図6(f))における該血管中心線上の各位置で該血管中心線に垂直な線分に沿った輝度プロファイルSpri1(図7(d)、i=0,1,2,...,N)を生成する。
さらに、概略特徴特定部1331は輝度プロファイルSpri1(図7(d))上の輝度値を探索し、中心線位置G0から左側に最小値Gmin、右側に最大値Gmaxを取得することにより壁概略位置候補を特定する。
<ステップ540>
壁特徴特定部1332が、以下の手順で血管壁境界位置を特定する。
i)S530のi)で生成した小さなスケールで平滑化したSplit Detector画像における該血管中心線上の各位置で、該血管中心線に略垂直な線分上での輝度プロファイルSpri2(図7(e))を取得する。また、S530のv)で特定した壁の概略位置を取得する。
ii)i)で取得した輝度プロファイル上の右側の壁概略位置近傍において2極大点、左側の壁概略位置近傍において2極小点を検出して壁境界候補点とする。さらに各壁境界候補点を左壁の外側境界、左壁の内側境界、右壁の外側境界、右壁の内側境界にグルーピングした上で、各壁境界候補点に対して1次モーメント(中心線からの距離×輝度値)を算出する。ただし、ここでは輝度値として非共焦点画像(左壁境界候補についてはLチャンネル画像、右壁境界候補についてはRチャンネル画像)における輝度値を参照する。各グループ内で該モーメント値に関して上位・下位の所定割合を外れ値とみなし、該外れ値を持つ壁境界候補点を除去して残った壁境界候補点列を壁の走行方向に補間することで壁境界として特定する。なお、外れ値判定法は任意の公知の手法を適用してよい。
さらに、図7(e)及び図11(b)に示すフローチャートを参照しながら、S540で実行される処理の詳細について説明する。ただし、S1141については第1実施形態の場合と同様であるので説明は省略する。
<ステップ1111>
小さいスケールで平滑化したSplit Detector画像における血管中心線上の各位置で該血管中心線に垂直な線分に沿った輝度プロファイルSpri2(図7(e)、i=0,1,2,...,N)と壁概略位置Gmin、Gmaxを取得する。
<ステップ1121>
壁特徴特定部1332は、S1111で取得した輝度プロファイルSpri2において、壁概略位置Gminの近傍における極小値2点と、壁概略位置Gmaxの近傍における極大値2点を選択することで壁境界候補位置を特定する。
<ステップ1131>
画像処理部130は、S1121で特定された各輝度プロファイル上での壁境界候補を以下の4つにグルーピングした上で、各境界候補群内で外れ値判定を行って外れ値除去を行う。
(i)左壁の外側境界候補群
(ii)左壁の内側境界候補群
(iii)右壁の外側境界候補群
(iv)右壁の内側境界候補群
本実施形態では各境界候補群で1次モーメント(輝度値×血管中心線からの距離)を算出した上で、上位Tt2%、下位Tb2%を外れ値とみなし、該モーメント値を持つ壁境界候補を除去する。ただし、ここでは輝度値として非共焦点画像(左壁境界候補についてはLチャンネル画像、右壁境界候補についてはRチャンネル画像)における輝度値を参照するものとする。
なお、本実施形態では同じスケールで平滑化した異なる種類の非共焦点画像同士の差分演算により平滑化微分画像を生成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、異なる種類の非共焦点画像同士の差分演算によりSplit Detector画像を生成した後、該Split Detector画像を異なるスケールで平滑化することにより平滑化微分画像を生成する場合も本発明に含まれる。
また、本実施形態では位置合わせ済み動画像を異なるスケールで平滑化するのに重ね合わせ処理してから異なるフィルタサイズで平滑化する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、重ね合わせのみ行った画像を小さなスケールでの平滑化画像とし、重ね合わせ後に面内での平滑化を行った画像を大きなスケールでの平滑化画像とする場合も本発明に含まれる。あるいは、フレーム間位置合わせ済み動画像に対して面内方向のフィルタサイズが異なる3次元平滑化フィルタを適用することにより、異なるスケールで平滑化した2次元画像を生成する場合も本発明に含まれる。なお、重ね合わせ処理する場合には心拍動の影響により血管壁を構成する膜境界の位置が変化するのを避けるために脈波の特定の位相に対応するフレームを選択して重ね合わせ処理することが望ましい。
さらに、本実施形態では血管中心線をモルフォロジーフィルタを用いて自動的に取得する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、操作者がキーボード306やマウス307等を用いて指定した血管中心線の位置を指示取得部140から取得することにより血管中心線を手動設定する場合も本発明に含まれる。
以上述べた構成によれば、画像処理装置10は異なる種類の非共焦点画像を取得するSLO装置を用いて網膜血管壁を撮影し、大きなスケールで平滑化したSplit Detector画像及び小さなスケールで平滑化したSplit Detector画像を生成する。網膜血管を横断する方向で取得した該大きなスケールで平滑化したSplit Detector画像及び小さなスケールで平滑化したSplit Detector画像上の輝度プロファイルの特徴点に基づき壁境界を特定する。
これにより、被検眼の画像から血管壁領域を簡便かつロバストに特定する。
[第3の実施形態]
本実施形態に係る画像処理装置は、複数種類の非共焦点画像を取得するSLO装置で撮影した網膜血管壁画像を異なるスケールで平滑化微分した画像に対し、血管を横断する方向で取得した輝度プロファイル上の特徴点に基づき血管の膜境界を特定するよう構成したものである。
具体的には、共焦点画像と非共焦点画像を同時に取得するSLO装置を用いて撮影した網膜血管壁の非共焦点画像(Rチャンネル画像・Lチャンネル画像)を2種類のスケールで平滑化した上で、微分処理する。大きいスケールで平滑化微分した画像において網膜血管を横断する輝度プロファイル上の特徴点から壁の概略位置を特定する。小さなスケールで平滑化微分した画像において網膜血管を横断する輝度プロファイル上の特徴点から膜境界候補点列を取得し、外れ値除去後に血管走行方向に接続することで血管の膜境界を特定して血管膜厚を計測する場合について説明する。
本実施形態に係る情報処理装置10と接続される機器の構成は第1実施形態と同様であるので省略する。
次に、本実施形態に係る情報処理装置10の機能ブロックを図12に示す。特定部133に壁特徴特定部1342がなく、代わりに膜特徴特定部1343を備える点が実施形態1と異なっている。
また本実施形態での画像処理フローは図5(b)に示す通りであり、S531、S541、S551、S561以外は実施形態1の場合と同様であるので説明は省略する。
<ステップ531>
概略特徴特定部1331が、以下の手順で血管壁の概略位置を特定する。
i)S521でフレーム間位置合わせ済みの非共焦点動画像を重ね合わせ処理した上で大小2種類のスケールで平滑化し、該平滑化した画像を微分処理する。
ii)i)で平滑化した画像のうち小さなスケールで平滑化した非共焦点画像に対してモルフォロジーフィルタを適用して網膜血管の中心線を検出する。
iii)i)で生成した平滑化微分画像のうち大きなスケールで平滑化した微分画像における該血管中心線上の各位置で、該血管中心線に略垂直な線分上での輝度プロファイルを取得する。
iv)iii)で生成した輝度プロファイル上でRチャンネル画像の場合は右方向に最大値、Lチャンネル画像の場合は左方向に最小値検出を行い、壁の概略位置を特定する。さらに左壁・右壁の概略位置候補点列を各々グルーピングした上で、各壁の概略位置候補点から血管中心線までの距離を算出する。各グループ内で該距離値に関して上位・下位の所定割合を外れ値とみなし、該外れ値を持つ壁の概略位置候補点を除去して残った壁の概略位置候補点列を壁の走行方向に補間する。なお、外れ値判定法は任意の公知の手法を適用してよい。
さらに、図7及び図13(a)に示すフローチャートを参照しながら、S531で実行される処理の詳細について説明する。
<ステップ1310>
平滑化微分処理部132がフレーム間位置合わせ済みの非共焦点動画像(Rチャンネル画像・Lチャンネル画像)に対してマルチスケールでの平滑化処理を行う。任意の公知の平滑化処理を適用可能であるが、本実施形態ではフレーム間位置合わせ済みの非共焦点動画像Dnr、Dnlを重ね合わせ処理した後、フィルタサイズ4及び10で平均値フィルタを適用する。
<ステップ1320>
平滑化微分処理部132がS1310で平滑化したRチャンネル画像及びLチャンネル画像に対して微分処理を行って平滑化微分画像を生成する。任意の公知の微分処理を適用可能であるが、本実施形態では差分型のエッジ検出オペレータを適用する。
<ステップ1340>
次に輝度分布取得部131は、大きなスケールで平滑化後に微分したRチャンネル画像およびLチャンネル画像における該血管中心線上の各位置で該血管中心線に垂直な線分に沿った輝度プロファイルを生成する。図6(k)にLチャンネル画像の場合の輝度プロファイル生成位置Prli(i=0,1,2,...,N)の例を示す。また大きなスケールで平滑化微分したLチャンネル画像に対して、対応する位置で生成した輝度プロファイルを図7(g)に示す。
さらに、概略特徴特定部1331は大きなスケールで平滑化後に微分したRチャンネル画像もしくはLチャンネル画像上の輝度プロファイル上の輝度値を中心線位置G0から探索し、以下のように壁概略位置候補を特定する。すなわち、Rチャンネル画像の場合は最大値Gmax、Lチャンネル画像の場合は最小値Gminを取得することで壁概略位置候補を特定する。図7(g)に大きなスケールで平滑化微分したLチャンネル画像の輝度プロファイルGprli1を示す。該輝度プロファイルGprli1は左壁の概略位置候補を特定する場合に参照する。
<ステップ541>
壁特徴特定部1332が、以下の手順で血管壁境界位置を特定する。
i)S531のi)で生成した平滑化微分画像のうち小さなスケールで平滑化した微分画像における該血管中心線上の各位置で、該血管中心線に略垂直な線分上での輝度プロファイルを取得する。また、S531のiv)で特定した壁の概略位置を取得する。
ii)i)で取得した輝度プロファイル上の右側の壁概略位置近傍において3極大点、左側の壁概略位置近傍において3極小点を検出して膜境界候補点とする。さらに各壁境界候補点を6グループに分類した上で、各膜境界候補点に対して1次モーメント(中心線からの距離×輝度値)を算出する。ただし、ここでは輝度値として右壁の膜境界候補の場合はRチャンネル画像、左壁の膜境界候補の場合はLチャンネル画像における輝度値を参照する。各グループ内で該モーメント値に関して上位・下位の所定割合を外れ値とみなし、該外れ値を持つ膜境界候補点を除去して残った膜境界候補点列を壁の走行方向に補間することで膜境界として特定する。なお、外れ値判定法は任意の公知の手法を適用してよい。
さらに、図7及び図13(b)に示すフローチャートを参照しながら、S541で実行される処理の詳細について説明する。
<ステップ1311>
小さいスケールで平滑化後に微分した画像における血管中心線上の各位置で該血管中心線に垂直な線分に沿った輝度プロファイルと壁概略位置を取得する。図7(h)にLチャンネル画像を小さいスケールで平滑化微分した場合の輝度プロファイルGprli2(i=0,1,2,...,N)を示す。
<ステップ1321>
膜特徴特定部1333は、S1311で取得した輝度プロファイルにおいて、壁概略位置の近傍における極値点3点を選択することにより膜境界候補位置を特定する。例えばLチャンネル画像の場合、図7(h)に示すGprli2において、壁概略位置Gminの近傍における極小値3点(Glmin_in及びGlmin_out、及び両者の間にある小さな極小値)を選択することで膜境界候補位置を特定する。例えば、血管径が100μm程度の動脈の場合にはGlmin_inから該小さな極小点までが内膜、該小さな極小点からGlmin_outまでが中膜に相当する。その場合、Glmin_inが左壁の内膜の内側境界候補、該小さな極小点が左壁の内膜と壁細胞が存在する膜との境界候補、Glmin_outが左壁の壁細胞が存在する膜の外側境界候補である。
<ステップ1331>
画像処理部130は、S1321で特定された各輝度プロファイル上での膜境界候補を以下の6つにグルーピングした上で、各境界候補群内で外れ値判定を行って外れ値除去を行う。
(i)左壁の壁細胞が存在する膜の外側境界候補群
(ii)左壁の内膜と壁細胞が存在する膜との境界候補群
(iii)左壁の内膜の内側境界候補群
(iv)右壁の壁細胞が存在する膜の外側境界候補群
(v)右壁の内膜と壁細胞が存在する膜との境界候補群
(vi)右壁の内膜の内側境界候補群
本実施形態では各境界候補群で1次モーメント(輝度値×血管中心線からの距離)を算出した上で、上位Tt2%、下位Tb2%を外れ値とみなし、該モーメント値を持つ壁境界候補を除去する。ただし、ここでは輝度値として非共焦点画像(右壁を構成する膜境界候補の場合はRチャンネル画像、左壁を構成する膜境界候補の場合はLチャンネル画像)における輝度値を参照するものとする。
<ステップ551>
計測部135は、S541で特定された血管壁を構成する膜境界の位置に基づいて血管走行に沿った壁厚や膜厚、壁厚や膜厚に関する指標値の分布を計測する。
本実施形態では検出された壁の壁厚、血管の内径及び外径、壁厚に関する指標値(Wall−to−Lumen Ratio)、内膜厚、中膜厚を算出し、各々平均値と標準偏差、最大値と最小値も求める。これらの統計値は画像全体に対してだけでなく血管枝単位で算出してもよい。また、壁厚や膜厚については、血管枝内の片側(血管走行方向に対して右側もしくは左側)単位で算出したり、小領域ごとに算出してもよい。
<ステップ561>
表示制御部136が、取得された画像や検出された膜境界の位置、計測結果(壁厚や膜厚、壁厚や壁厚に関する指標値)をモニタ305に表示する。本実施形態では、以下のi)からiv)をモニタ305に表示する。
i)・非共焦点動画像(図9(a)のI1)
・脈波の特定の位相に対応するフレームを選択して重ね合わせ処理した画像(図9(a)のI2)
・血管の内腔を抽出した画像の並置表示(図9(a)のI3)
ii)膜境界の検出位置
iii)血管壁の走行に沿って計測された壁厚や膜厚もしくは壁厚や膜厚に関する指標値を示すグラフ
iv)小領域ごとに算出した壁厚や膜厚、もしくは壁厚や膜厚に関する指標値の分布を示すマップ
なお、iv)については算出した値とカラーバーを対応付けた上で、カラー表示する。
なお、本実施形態では輝度プロファイルを平滑化微分するのに非共焦点画像に対して平滑化フィルタと微分フィルタを適用して平滑化微分画像上の輝度プロファイルを取得したが、本発明はこれに限定されない。例えば図13(c)及び(d)に示すような手順で、非共焦点画像に対して血管を横断する方向で輝度プロファイルを取得する。該輝度プロファイルを小区間ごとに線形近似してその回帰直線の傾きを出力する処理を小区間を一定間隔で移動させながら繰り返すことにより平滑化微分した輝度プロファイルを生成する場合も本発明に含まれる。
また、本実施形態では2種類の非共焦点画像に対し異なるスケールで平滑化微分し、左壁はLチャンネル画像、右壁はRチャンネル画像を異なるスケールで平滑化微分した画像における輝度プロファイル上の特徴点に基づき壁の概略位置及び膜境界を特定した。本発明はこれに限定されるものではなく、例えば以下のような方法で血管壁の概略位置や膜境界を特定する場合も本発明に含まれる。すなわち図6(m)に示すような単一の非共焦点画像(R+L画像もしくは大きなピンホール径で撮影した画像)を異なるスケールで平滑化後微分した画像上の輝度プロファイルを参照して血管壁の概略位置や膜境界を特定する場合も本発明に含まれる。
さらに、本実施形態では位置合わせ済み動画像を異なるスケールで平滑化するのに重ね合わせ処理してから異なるフィルタサイズで平滑化する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、重ね合わせのみ行った画像を小さなスケールでの平滑化画像とし、重ね合わせ後に面内での平滑化を行った画像を大きなスケールでの平滑化画像とする場合も本発明に含まれる。あるいは、フレーム間位置合わせ済み動画像に対して面内方向のフィルタサイズが異なる3次元平滑化フィルタを適用することにより、異なるスケールで平滑化した2次元画像を生成する場合も本発明に含まれる。なお、重ね合わせ処理する場合には心拍動の影響により血管壁を構成する膜境界の位置が変化するのを避けるために脈波の特定の位相に対応するフレームを選択して重ね合わせ処理することが望ましい。
さらに、本実施形態では血管中心線をモルフォロジーフィルタを用いて自動的に取得する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、操作者がキーボード306やマウス307等を用いて指定した血管中心線の位置を指示取得部140から取得することにより血管中心線を手動設定する場合も本発明に含まれる。
以上述べた構成によれば、画像処理装置10は非共焦点画像を取得するSLO装置で撮影した網膜血管壁の画像を異なるスケールで平滑化微分して得られる画像において、網膜血管を横断する方向で取得した輝度プロファイル上の特徴点に基づき膜境界を特定する。
これにより、被検眼の画像から血管壁を構成する膜領域を簡便かつロバストに特定する。
[その他の実施形態]
上述の実施形態では画像取得部110に共焦点データ取得部111と非共焦点データ取得部112を両方とも含む場合について説明したが、非共焦点データを2種以上取得可能な構成であれば、画像取得部110に共焦点データ取得部111を含まなくてもよい。
また上述の実施形態では平滑化微分した輝度プロファイル上の特徴点に基づき壁の概略位置及び壁境界を特定する場合について説明したが、異なるスケールで平滑化した画像の輝度プロファイル上の特徴点に基づき壁の概略位置や壁境界を特定するよう構成してよい。平滑化する前の輝度プロファイルPriの例を図7(a)に示す。図7(a)において、P0が血管中心、Pwlが左側の血管壁、Pwrが右側の血管壁に相当する。例えば壁の概略位置を特定するには、該輝度プロファイルを中央の極大点を起点として左側(もしくは右側)に輝度値を探索し、最大値と最小値との差(もしくは血管中心P0の輝度値と最小値との差)に対して所定の比率となる位置を壁の概略位置として特定すればよい。
また、平滑化する際のスケールの設定値が処理対象画像に対して適切でない場合には、平滑化微分した画像上の輝度プロファイルにおける特徴点の数が不足することが考えられる。そこで、壁境界を特定する場合に小さいスケールで平滑化微分した画像上の輝度プロファイルにおける極値を生じる点が4点未満の場合には極値を生じる点が4点になるまで平滑化のスケールを変更するよう構成してよい。なお、膜境界を特定する場合には平滑化微分した画像上の輝度プロファイルにおける極値を生じる点が6点未満の場合には極値を生じる点が6点になるまで平滑化のスケールを変更すればよい。
さらに、計測対象の(血管中心線や壁境界を含む)血管領域を特定しやすくするために画像処理装置10が関心領域設定手段を備え、取得された眼底画像から所定の範囲の関心領域を少なくとも一つ設定するよう構成してもよい。この場合、関心領域の画角としては血管が1本だけ含まれるように0.5mmX0.5mm以下に設定する。また、輝度分布取得部131が輝度プロファイルを生成する位置(線分)の長さは、計測対象とする血管の直径の略2倍に相当する長さに設定することが望ましい。
さらに上述の実施形態では本発明を画像処理装置として実現したが、本発明の実施形態は画像処理装置のみに限定されない。例えばコンピュータのCPUにより実行されるソフトウェアとして実現しても良い。本ソフトウェアを記憶した記憶媒体も本発明を構成することは言うまでもない。

Claims (19)

  1. 被検査物の画像の血管領域を横断する少なくとも1つの方向における輝度分布に対して、第1のサイズで第1の平滑化処理を行い、前記第1のサイズよりも小さな第2のサイズで第2の平滑化処理を行う処理手段と、
    前記第1の平滑化処理を行って得た輝度分布に基づいて、前記被検査物の画像における血管壁の位置を特定する第1の特定手段と、
    前記第2の平滑化処理を行って得た輝度分布に基づいて、前記被検査物の画像における前記血管壁の内側境界の位置及び外側境界の位置を特定する第2の特定手段と、
    を有することを特徴とする画像処理装置。
  2. 前記処理手段は、前記第1のサイズに相当するフィルタのサイズで平滑化処理して得た輝度分布に対する微分処理である第1の微分処理を行い、前記第2のサイズに相当するフィルタのサイズで平滑化処理して得た輝度分布に対する微分処理である第2の微分処理を行い、
    前記第1の特定手段は、前記第1の微分処理を行って得た輝度分布における特徴点を前記血管壁の位置として特定し、
    前記第2の特定手段は、前記第2の微分処理を行って得た輝度分布における複数の特徴点を、前記血管壁の内側境界の位置及び外側境界の位置として特定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
  3. 前記処理手段は、前記被検査物の画像の血管領域を横断する方向で取得された輝度分布に対して、前記第1のサイズに相当する区間のサイズで第1の線形近似を行い、前記第2のサイズに相当する区間のサイズで第2の線形近似を行い、
    前記第1の特定手段は、前記第1の線形近似を行って得た輝度分布における特徴点を前記血管壁の位置として特定し、
    前記第2の特定手段は、前記第2の線形近似を行って得た輝度分布における複数の特徴点を、前記血管壁の内側境界の位置及び外側境界の位置として特定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
  4. 被検査物の画像の血管領域を横断する少なくとも1つの方向における輝度分布に対して、第1のサイズ及び前記第1のサイズよりも小さい第2のサイズで平滑化処理を行う処理手段と、
    前記第1のサイズで平滑化処理して得た輝度分布における複数の特徴点を第1の血管壁及び第2の血管壁の位置として特定する第1の特定手段と、
    前記第2のサイズで平滑化処理して得た輝度分布における前記特定された第1の血管壁及び第2の血管壁の位置の近傍の複数の特徴点を、前記第1の血管壁の内側境界及び外側境界と前記第2の血管壁の内側境界及び外側境界との位置として特定する第2の特定手段と、
    を有することを特徴とする画像処理装置。
  5. 前記第2の特定手段は、前記第2のサイズで平滑化処理して得た輝度分布における前記第1の血管壁及び前記第2の血管壁の位置の近傍の極値点を、前記第1の血管壁の内側境界及び外側境界と前記第2の血管壁の内側境界及び外側境界との位置として特定することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
  6. 前記第2の特定手段は、前記第2のサイズで平滑化処理して得た輝度分布における複数の特徴点を、前記第1の血管壁及び前記第2の血管壁に関する内膜の内側境界と前記内膜と壁細胞が存在する膜との境界と前記壁細胞が存在する膜の外側境界との位置として特定することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
  7. 前記内膜の内側境界と前記内膜と壁細胞が存在する膜との境界と前記壁細胞が存在する膜の外側境界との少なくとも1つに基づいて、血管膜厚と血管壁厚と血管内径と血管外径との少なくとも1つを計測する計測手段を更に有することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
  8. 前記第1の血管壁の外側境界及び内側境界と前記第2の血管壁の外側境界及び内側境界との位置を用いて、血管壁厚と血管内径と血管外径との少なくとも1つを計測する計測手段を更に有することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
  9. 前記被検査物からの散乱光を分割して得た複数の光が受光されることにより得られた複数の種類の非共焦点画像であるRチャンネル画像及びLチャンネル画像を前記被検査物の画像として取得する画像取得手段を更に有し、
    前記第2の特定手段は、前記Rチャンネル画像及び前記Lチャンネル画像の一方を用いて、前記第1の血管壁の内側境界及び外側境界の位置を特定し、前記Rチャンネル画像及び前記Lチャンネル画像の他方を用いて、前記第2の血管壁の内側境界及び外側境界の位置を特定することを特徴とする請求項4乃至のいずれか1項に記載の画像処理装置。
  10. 被検査物の画像の血管領域を横断する少なくとも1つの方向における輝度分布に対して処理を行うことにより得た特徴点を血管壁の位置として特定する第1の特定手段と、
    記特定された血管壁の位置の近傍の複数の特徴点であって、前記輝度分布に対して処理を行うことにより得た前記複数の特徴点を、前記血管壁の内側境界の位置及び外側境界の位置として特定する第2の特定手段と、
    を有することを特徴とする画像処理装置。
  11. 前記被検査物の画像の血管領域を横断する少なくとも1つの方向における輝度分布に対して平滑化処理を行う処理手段を更に有し、
    前記第1の特定手段は、前記処理手段による平滑化処理を行って得た輝度分布における特徴点を前記血管壁の位置として特定し、
    前記第2の特定手段は、前記処理手段による平滑化処理を行って得た輝度分布における前記特定された血管壁の位置の近傍の複数の特徴点を、前記血管壁の内側境界の位置及び外側境界の位置として特定することを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
  12. 前記被検査物の画像から前記血管領域を特定するために、前記被検査物の画像において0.5mmX0.5mm以下の少なくとも1つの関心領域を設定する関心領域設定手段を更に有することを特徴とする請求項乃至11のいずれか1項に記載の画像処理装置。
  13. 前記被検査物からの散乱光を分割して得た複数の光が受光されることにより得られた複数の種類の非共焦点画像の間で差分演算または除算演算することで得られた画像を前記被検査物の画像として取得する画像取得手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の画像処理装置。
  14. 前記被検査物は、被検眼であり、
    前記被検査物の画像は、光を照射した前記被検眼からの戻り光を用いて得た前記被検眼の眼底画像であることを特徴とする請求項1乃至1のいずれか1項に記載の画像処理装置。
  15. 前記眼底画像は、補償光学を適用した撮像装置により得られることを特徴とする請求項14に記載の画像処理装置。
  16. 被検査物の画像の血管領域を横断する少なくとも1つの方向における輝度分布に対して、第1のサイズで第1の平滑化処理を行い、前記第1のサイズよりも小さな第2のサイズで第2の平滑化処理を行う処理工程と、
    前記第1の平滑化処理を行って得た輝度分布に基づいて、前記被検査物の画像における血管壁の位置を特定する第1の特定工程と、
    前記第2の平滑化処理を行って得た輝度分布に基づいて、前記被検査物の画像における前記血管壁の内側境界の位置及び外側境界の位置を特定する第2の特定工程と、
    を有することを特徴とする画像処理方法。
  17. 被検査物の画像の血管領域を横断する少なくとも1つの方向における輝度分布に対して、第1のサイズ及び前記第1のサイズよりも小さい第2のサイズで平滑化処理を行う処理工程と、
    前記第1のサイズで平滑化処理して得た輝度分布における複数の特徴点を第1の血管壁及び第2の血管壁の位置として特定する第1の特定工程と、
    前記第2のサイズで平滑化処理して得た輝度分布における前記特定された第1の血管壁及び第2の血管壁の位置の近傍の複数の特徴点を、前記第1の血管壁の内側境界及び外側境界と前記第2の血管壁の内側境界及び外側境界との位置として特定する第2の特定工程と、
    を有することを特徴とする画像処理方法。
  18. 被検査物の画像の血管領域を横断する少なくとも1つの方向における輝度分布に対して処理を行うことにより得た特徴点を血管壁の位置として特定する第1の特定工程と、
    記特定された血管壁の位置の近傍の複数の特徴点であって、前記輝度分布に対して処理を行うことにより得た前記複数の特徴点を、前記血管壁の内側境界の位置及び外側境界の位置として特定する第2の特定工程と、
    を有することを特徴とする画像処理方法。
  19. 請求項1乃至1のいずれか1項に記載の画像処理方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
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