JP6515986B2 - コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム - Google Patents

コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム Download PDF

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Description

本発明は、絶縁破壊特性に優れたコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムに関する。
二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、耐電圧性及び低い誘電損失特性等の優れた電気特性、並びに高い耐湿性を有する。これらの特性を生かして、電子及び電気機器において、例えば高電圧コンデンサ、各種スイッチング電源、コンバータ及びインバータ等のフィルタ用コンデンサ及び平滑用コンデンサ等のコンデンサ用誘電体フィルムとして好ましく利用されている。またポリプロピレンフィルムは、近年需要が高まっている電気自動車及びハイブリッド自動車等の駆動モーターを制御するインバータ電源機器用コンデンサとしても利用され始めている。
このような自動車等に用いられるインバータ電源機器用のコンデンサに対しては、車両の小型化と軽量化に伴い、コンデンサ自体のさらなる小型化及び軽量化が求められている。コンデンサの小型化及び軽量化を図るためには、コンデンサ用フィルムとして高延伸性能を有するポリプロピレンフィルムを用いて、例えば極薄化することが考えられる。しかしながら、極薄化されたフィルムは、高い電圧を印加した場合に絶縁破壊が生じやすくなるため、さらなる高い耐電圧性を有するポリプロピレンフィルムが必要とされる。
このような高い耐電圧性を有するポリプロピレンフィルムを得るために、ポリプロピレン自体の分子設計等がなされている。例えば低分子量側に広がった分布を有する分子量分布となるように、ポリプロピレン樹脂成分を選択する方法等が挙げられる。分子量分布について低分子側へ広がりを持たせることにより、二軸延伸時に適度な樹脂流動性が得られ、耐電圧性と薄膜化を両立させることができる。このような分子量分布を調整する方法としては、例えば、ポリプロピレン樹脂に対して、高いメルトフローレートを有するポリプロピレン、即ち低分子量のポリプロピレンを混合する方法等が挙げられる(例えば、特許文献1)。また、高分子量のポリプロピレンを、過酸化物により選択的に過酸化分解処理することにより、ポリプロピレン樹脂中における低分子量のポリプロピレンの割合を増大させる方法(例えば、特許文献2)等が挙げられる。
更に、ポリプロピレン樹脂に対して高溶融性張力ポリマーである分岐鎖状ポリプロピレンを添加することにより、溶融押し出しした樹脂シートの冷却工程で生成する球晶サイズを小さく制御する方法が挙げられている(例えば、特許文献3)。また、特許文献3では、さらに分岐鎖状ポリプロピレンを少量添加することで、フィルムの表面を制御する方法(例えば、特許文献3)が開示されている。
このように、コンデンサ用に用いられるポリプロピレンフィルムを得るために、さまざまな方法が行われている。しかし、コンデンサのさらなる小型化及び軽量化の向上のためには、薄膜化したポリプロピレンフィルムのさらなる耐電圧性が要求される。
国際公開第2009/060944号 特開2012−149171号公報 特開2007−246898号公報
本発明は、高温下での耐電圧性を有する、絶縁破壊特性に優れた、極薄膜化が可能なコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを提供することを主な目的とする。さらに、上記のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いて得られるコンデンサを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンの結晶構造に着目した。そして、ポリプロピレンフィルム中のポリプロピレンの分子鎖間の面間隔値の変化、即ちポリプロピレンフィルム中のポリプロピレンの分子鎖間の距離(即ち、分子鎖充填状態)の変化が絶縁破壊特性に大きく影響することを見出した。本発明は、斯かる知見に基づき完成するに至ったものである。
項1:ポリプロピレン樹脂を含む二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、X線回折によって測定されるα晶(040)面の面間隔値が5.25〜5.30Åであるコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
項2:X線回折によって測定されるα晶の面間隔値から算出されるa軸方向の格子定数が6.65〜6.75Åであり、かつ、b軸方向の格子定数が21.00〜21.20Åである項1に記載のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
項3:ポリプロピレンフィルムの広角X線回折法により測定したα晶(040)面反射ピークの半価幅からScherrerの式を用いて算出した結晶子サイズが、13.5nm以下である、項1又は2に記載のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
項4:ポリプロピレン樹脂が、
(1) 重量平均分子量が25万〜45万、分子量分布が6〜12であるポリプロピレン;並びに
(2) 長鎖分岐ポリプロピレン(2a)、
エチレン含有量が5mol%未満のエチレン−プロピレンコポリマー(2b)、及び
重量平均分子量が80万〜140万、分子量分布が3〜6である超高分子量ポリプロピレン(2c)
よりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマー;
を含む項1〜3のいずれかに記載のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
項5:ポリプロピレン樹脂中、ポリマー(2)を、10〜40質量%含有する項1〜4のいずれかに記載のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
項6:項1〜5のいずれかに記載のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に電極を有する、コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
項7:項1〜6のいずれかに記載のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いて得られるコンデンサ。
本発明のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、高温下においても高い耐電圧性を有し、絶縁破壊特性に優れる。
また、本発明のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いて得られるコンデンサは、ポリプロピレンフィルムを薄膜化することにより、小型化かつ軽量化が可能である。
さらに、本発明のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いて得られるコンデンサは、高温下、高電圧が印加される高容量のコンデンサとして好適に使用することが可能である。
本発明のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、α晶(040)面において、特定の面間隔値を有することを特徴とする。以下、本発明のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムについて詳細に説明する。
本発明のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムのα晶(040)面における面間隔値としては、5.25〜5.30Åであり、5.25〜5.29Å程度がより好ましい。α晶(040)面における面間隔値が5.25Å未満であると、分子鎖が密に充填され、形成される結晶格子が小さくなりすぎ、結果として形成される結晶子のサイズが大きくなる。そのため、高電圧が印加された際の漏れ電流が大きくなる傾向にある。また、漏れ電流によって発生するジュール発熱により構造破壊の発生が生じ、耐熱性、耐電圧性、及び絶縁破壊特性を損なう傾向にある。一方、α晶(040)面における面間隔値が5.30Åを超えると、もはやポリプロピレンのα晶の結晶構造とは言えない「緩い(粗な)」分子鎖充填状態となる。そのため、長距離秩序性を維持できなくなり、結晶化度の低下を招き、絶縁破壊特性を損なう傾向にある。
上記のα晶(040)面における面間隔値は、広角X線回折(XRD)法によって測定される。より具体的には、二軸延伸ポリプロピレンフィルム又はその金属化フィルムのXRDを行い、α晶(040)面の回折角度2θ値を測定し、以下のBraggの式を用いて算出される。
2 d sinθ=λ (1)
[ここで、dは面間隔値、θは測定される回折ブラッグ角、λは、用いたX線の波長である(本発明ではλ=1.5418Åである)。]
本発明では、二軸延伸ポリプロピレンフィルムのα晶の回折強度曲線、つまり、回折角度2θ値を測定するために、より具体的には、リガク社製のディストップX線回折装置MiniFlex300(商品名)を使用し、以下の条件によって測定される。
出力30kV、10mAで発生させたX線を用いる。受光モノクローメーターで単色化したCuKα線(波長1.5418Å)をスリットで平行化し、測定フィルムに照射する。回折強度は、シンチュレーションカウンターを用い、ゴニオメーターを用いて2θ/θ連動走査して測定する。装置に標準で付属されている統合粉末X線解析ソフトウェアPDXLを用いて、得られたデータを利用して、α晶の回折反射の回折角度2θ値を求める。
さらに、上記の広角X線回折測定から得られたα晶(110)面、α晶(040)面、α晶(130)面等の複数の結晶性回折の面間隔値dを用い、以下の式(2)によって、ポリプロピレンの結晶のa軸、b軸、及びc軸の格子定数が求められる。
Figure 0006515986
[式(2)中、dはα晶における面間隔値、h、k、lは、その面間隔値に指数付けされたα晶のミラー指数(hkl)(α晶(040)面にその回折線が指数付けされた場合には、h=0、k=4、l=0となる)、aはa軸の格子定数、bはb軸の格子定数、cはc
軸の格子定数、βはa軸及びc軸がなす傾斜角である(α晶を単斜晶とした場合)]
「Polymer Handbook」, 4th ed. 、John Wiley & Sons(N.Y.) 1999によると、 アイ
ソタクチックポリプロピレンのα晶(単斜晶)の格子定数は、a=6.65Å、b=20.96Å、c=6.50Å、β=99.33°と記述されている。格子定数は固有の値であるため、純粋なポリプロピレンの場合、この格子定数とほぼ同値となるはずであるが、本発明においては、後述のように、少なくとも2種以上のポリプロピレンのブレンド等の効果によって、内部構造(分子鎖充填状態=面間隔値)が変化し、a−b面格子を拡大させる。
つまり、上記式(2)により算出されるa軸の格子定数としては、6.65〜6.75Å程度が好ましく、6.67〜6.74Å程度がより好ましい。また、b軸の格子定数としては、21.00〜21.20Å程度が好ましく、21.05〜21.20Å程度がより好ましい。
a軸の格子定数を6.65Å以上、かつb軸の格子定数を21.00Å以上と、「Polymer Handbook」記載の標準的なa−b面格子の大きさより、大きく設定することが、分子鎖が緩やか(粗)に充填され、結果として形成される結晶子のサイズが小さくなる。その結果、高電圧が印加された際の漏れ電流が小さくなるため、高い電圧まで、漏れ電流によるジュール発熱が抑制される。よって得られる二軸延伸ポリプロピレンフィルムに、優れた絶縁破壊特性を付与できるようになり、好ましい。一方、a軸の格子定数は6.75Å以下、かつb軸の格子定数を21.20Å以下に設定することが、α晶の結晶構造を維持しておくという観点から好ましい。この値より大きな格子を有すると、もはやポリプロピレンのα晶の結晶構造とは言えない「緩い(粗な)」分子鎖充填状態となる。そのため、長距離秩序性を保てなくなるので、結果的に、結晶化度の低下を招き、絶縁破壊特性を損なう恐れがある。
上記式(2)により算出されるc軸の格子定数としては、特に制限されるものではなく、「Polymer Handbook」記載の通りの値であれば良い。例えば、6.45〜6.55Å程度が好ましく、傾斜角βも、同様に、「Polymer Handbook」記載の通りの値であれば良く、例えば、98.83〜99.85°程度であれば良い。
本発明のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、耐電圧性の観点から、広角X線回折法により測定したα晶(040)面反射ピークの半価幅からScherrerの式を用いて算出して13.5nm以下の結晶子サイズを有することが好ましい。
本発明において、ポリプロピレンフィルムの「結晶子サイズ」とは、広角X線回折法(XRD法)を用いて測定される、ポリプロピレンフィルムのα晶(040)面の回折反射ピークの半価幅から、後述するScherrerの式を用いて算出される結晶子サイズをいう。
結晶子サイズは、より好ましくは13.4nm以下であり、さらにより好ましくは、13.3nm以下である。結晶子サイズが上記の範囲のポリプロピレンフィルムを使用すると、電流は、結晶内を通過することがないので、(例えば、細かな砂には水は浸透しづらいのと同様に、)その形態学的効果によって、漏れ電流が小さくる。その結果、ジュール発熱による構造破壊の発生が抑制さるため、耐熱性、耐電圧性及び長期間にわたる耐熱性及び耐電圧性において優れる。ポリプロピレンフィルムの結晶子サイズは、ポリプロピレンフィルムの機械的強度及び融点を維持する観点から、好ましくは10.0nm以上であり、より好ましくは10.5nm以上である。なお、機械的強度等の観点及び高分子鎖のラメラ(折り畳み結晶)厚さを考慮すると、結晶子サイズの下限は、通常、10.0nm前後と考えられる。
本発明のポリプロピレンフィルムの「結晶子サイズ」は、具体的には、以下のようにして求めることができる。まず、二軸延伸ポリプロピレンフィルム又はその金属化フィルムの広角X線回折を行い、得られたα晶(040)面の回折反射ピークの半価幅を求める。次に、得られたα晶(040)面の回折反射ピークの半価幅から、下記(3)式に示すScherrerの式を用いて、結晶子サイズを求める。なお、本発明では、形状因子定数Kは、0.94を用い、λ=1.5418Åである。
D=K λ/(β cosθ) (3)
[式(3)中、Dは、結晶子サイズ(nm)、Kは定数(形状因子)、λは使用X線波長(nm)、βはα晶(040)面の回折反射ピークの半価幅、θはα晶(040)面の回折ブラッグ角である]
本発明では、α晶(040)面の回折反射ピークを測定するために、より具体的には、リガク社製のディストップX線回折装置MiniFlex300(商品名)を使用する。出力30kV、10mAで発生させたX線を用いる。受光モノクローメーターで単色化したCuKα線(波長1.5418Å)をスリットで平行化し、測定フィルムに照射する。回折強度は、シンチュレーションカウンターを用い、ゴニオメーターを用いて2θ/θ連動走査して測定する。装置に標準で付属されている統合粉末X線解析ソフトウェアPDXLを用いて、得られたデータを利用して、α晶(040)面の回折反射ピークの半価幅を求める。
本発明のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂を含む。
本発明のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレン樹脂の230℃におけるMFRは、延伸性の観点から7g/10分以下であることが好ましく、6g/10分以下であることがより好ましい。また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みの精度を高める観点から1g/10分以上であることが好ましく、1.5g/10分以上であることがより好ましい。なお、前記MFRは、JIS K 7210−1999に準拠して測定することができる。
ポリプロピレン樹脂としては、ポリプロピレン(1)と、長鎖分岐ポリプロピレン(2a)、エチレン−プロピレンコポリマー(2b)、及び超高分子量ポリプロピレン(2c)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマー(2)とを含有することが、上記のα晶(040)面の特定の面間隔値を有するポリプロピレンフィルムを容易に得ることができる観点から好ましい。
ポリプロピレン(1)の重量平均分子量(Mw)は、25万以上45万以下であることが好ましい。このようなポリプロピレン樹脂を用いると、二軸延伸時に適度な樹脂流動性が得られ、キャスト原反シートの厚さの制御が容易となる。例えば小型かつ高容量型のコンデンサ用に適した、極薄化された二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることが容易となるため好ましい。また、キャスト原反シート及び二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みのムラが発生し難くなるため好ましい。ポリプロピレン(1)の重量平均分子量(Mw)は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みの均一性、力学特性、熱−機械特性等の観点から、27万以上であることがより好ましく、29万以上であることがさらに好ましい。ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ポリプロピレン樹脂の流動性及び極薄化された二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得る際の延伸性の観点から、40万以下であることがより好ましい。
ポリプロピレン(1)の、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比として算出される分子量分布(Mw/Mn)は、6以上12以下であることが好ましい。また分子量分布(Mw/Mn)は、7以上であることがより好ましく、7.5以上であることがさらに好ましい。さらに分子量分布(Mw/Mn)は、11以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。このようなポリプロピレン(1)を用いると、二軸延伸時に適度な樹脂流動性が得られ、厚みムラのない極薄化された二軸延伸プロピレンフィルムを得ることが容易となるため好ましい。また、このようなポリプロピレンは、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの耐電圧性の観点からも好ましい。
ポリプロピレン(1)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。GPC法に使用されるGPC装置には特に制限はなく、ポリオレフィン類の分子量分析が可能な市販の高温型GPC測定機、例えば、東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵型高温GPC測定機、HLC−8121GPC-HT等を使用することができる。この場合、例
えば、GPCカラムとして東ソー株式会社製、TSKgel GMHHR−H(20)H
Tを3本連結させたものが用いられ、カラム温度は140℃に設定され、溶離液としてトリクロロベンゼンが用いられ、流速1.0ml/分にて測定される。通常、標準ポリスチレンを用いて検量線を作製し、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を得る。
ポリプロピレン(1)としては、例えばアイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン等のポリプロピレンのホモポリマー、及びポリプロピレンとポリエチレンとのコポリマーが挙げられる。耐熱性の観点から、ポリプロピレン(1)は、アイソタクチックポリプロピレンであることが好ましく、オレフィン重合用触媒の存在下でポリプロピレンを単独重合して得られるアイソタクチックポリプロピレンであることがより好ましい。
ポリプロピレン(1)のメソペンタッド分率([mmmm])は、94%以上98%以下であることが好ましい。またメソペンタッド分率は、95%以上97%以下であることがより好ましい。ポリプロピレン(1)を含むポリプロピレン樹脂を用いることで、適度に高い立体規則性によって樹脂の結晶性が適度に向上し、初期耐電圧性及び長期間に渡る耐電圧性が向上する。一方で、キャスト原反シートを成形する際の適度な固化(結晶化)速度によって所望の延伸性を得ることができる。
メソペンタッド分率([mmmm])は、高温核磁気共鳴(NMR)測定によって得ることができる立体規則性の指標である。具体的には、例えば、日本電子株式会社製、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)、JNM−ECP500を利用して測定することができる。観測核は、13C(125MHz)であり、測定温度は、135℃、ポリプロピレン樹脂を溶解する溶媒にはo−ジクロロベンゼン(ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(混合比=4/1)を用いることができる。高温NMRによる測定方法は、例えば、「日本分析化学・高分子分析研究懇談会編、新版 高分子分析ハンドブック、紀伊国屋書店、1995年、第610頁」に記載の方法を参照して行うことができる。
測定モードは、シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅は、9.1μsec(45°パルス)、パルス間隔5.5sec、積算回数4500回、シフト基準は、CH(mmmm)=21.7ppmとすることができる。
立体規則性度を表すペンタッド分率は、同方向並びの連子「メソ(m)」と異方向の並びの連子「ラセモ(r)」の5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmm及びmrrm等)に由来する各シグナルの強度の積分値に基づいて百分率で計算される。mmmm及びmrrm等に由来する各シグナルは、例えば、「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」等を参照して帰属することができる。
230℃におけるポリプロピレン(1)のMFRは、延伸性の観点から7g/10分以下であることが好ましく、6g/10分以下であることがより好ましい。また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みの精度を高める観点から、ポリプロピレン(1)のMFRは、3g/10分以上であることが好ましく、4g/10分以上であることがより好ましい。なお、MFRは、前記と同様の方法により測定することができる。
ポリプロピレン(1)は、従来公知の方法を用いて製造することができ、重合方法としては、例えば、気相重合法、塊状重合法及びスラリー重合法が挙げられる。重合は、1つの重合反応機を用いる一段重合であってよく、2以上の重合反応器を用いた多段重合であってもよい。また、反応器中に水素又はコモノマーを分子量調整剤として添加して重合を行ってもよい。重合触媒としては、従来公知のチーグラー・ナッタ触媒を使用することができ、重合触媒には助触媒成分やドナーが含まれていてもよい。ポリプロピレン(1)の分子量、分子量分布及び立体規則性等は、重合触媒その他の重合条件を適宜調整することによって制御することができる。
ポリマー(2)としては、長鎖分岐ポリプロピレン(2a)、エチレン−プロピレンコポリマー(2b)、及び超高分子量ポリプロピレン(2c)よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。このようなポリマー(2)を含有することにより、異なる2種以上のポリプロピレンのブレンドの効果(1種の相分離・相互浸入効果)によって、主ポリマーであるポリプロピレン(1)が形成する分子鎖充填状態が変化する。そして、本発明に係るα晶(040)面の特定の面間隔値を有し、a−b面結晶格子が通常より拡大されたポリプロピレンフィルムを得ることができるので好ましい。
長鎖分岐ポリプロピレン(2a)とは、長鎖の枝分かれを有するポリプロピレンである。具体的には、例えば、Basell社製のProfax PF-814、PF-611、PF-633及びBorealis社製
のDaploy HMS-PP(WB130HMS、WB135HMS、及びWB140HMS等)等が例示できる。
230℃における長鎖分岐ポリプロピレン(2a)のMFRは、製膜性の観点から1g/10分以上、20g/10分以下であることが好ましく、1g/10分以上、10g/10分以下であることがより好ましい。
また、分岐鎖状分子の場合、溶融張力が高くなる傾向にあるが、本発明に用いる長鎖分岐ポリプロピレン(2a)の溶融張力は、1cN以上、50cN以下であることが好ましく、10cN以上、40cN以下であることがより好ましい。
エチレン−プロピレンコポリマー(2b)は、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー等のいずれのコポリマーであっても良いが、入手が容易である点、本発明のα晶(040)面の特定の面間隔値を効果的に得る観点等から、ランダムコポリマーであることが好ましい。
エチレン−プロピレンコポリマー(2b)のエチレン含有率は、5mol%未満であるのが良い。より具体的には、0.1mol%以上5mol%未満が好ましく、0.5〜3mol%程度がより好ましい。エチレン含有量が0.1mol%以上であることが、本発明のα晶(040)面の特定の面間隔値を効果的に得るために必要であり、エチレン含有量が5mol%以上含有すると、結晶性=融点の低下が著しく大きくなるため、結果的に、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの結晶化度の低下を招き、絶縁破壊特性を損なう恐れがあるため、好ましくない。
エチレン含有率は、例えば、フーリエ変換核磁気共鳴装置(FT−NMR)等を用いて求める。本発明においては、より具体的には、Varian社製、高温FT−NMR VNMRS−400を用い、観測核は、13C(100.6MHz)にて測定することができる。
測定モードは、逆ゲーテッドデカップリング、シフト基準は、プロピレン単位5連鎖(mmmm)(21.86ppm)することができる。
エチレン含有率(mol%)は、頭−尾結合2連鎖に基づくメチレン炭素のシグナル積分値より、例えば、「Y.−D. Zhang et al., Polym. J.,35巻
,551頁(2003)」等の記載を参考に、算出することができる。
230℃におけるエチレン−プロピレンコポリマー(2b)のMFRは、製膜性の観点から1g/10分以上、20g/10分以下であることが好ましく、1g/10分以上、10g/10分以下であることがより好ましい。
超高分子量ポリプロピレン(2c)の重量平均分子量(Mw)は、80万〜140万程度が好ましく、90万〜120万程度がより好ましい。超高分子量ポリプロピレン(2c)の重量平均分子量(Mw)が、80万以下であると、従来のポリプロピレンの分子量と然程大きな相違がないため、効果が限定的となり好ましくない。一方、140万を超えると、樹脂流動性・混練性の観点から、混ざりにくくなるので、実用上好ましくない。
超高分子量ポリプロピレン(2c)の、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比として算出される分子量分布(Mw/Mn)は、3〜6程度が好ましく、3〜5程度が好ましい。上記の範囲に超高分子量ポリプロピレン(2c)の分子量分布(Mw/Mn)を設定することにより、ポリプロピレン(1)の分子量分布と近くなる。そのため、混和性が良くなり、本発明のα晶(040)面の特定の面間隔値を効果的に得ることができる。
上記の超高分子量ポリプロピレン(2c)の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)は、前記「ポリプロピレン(1)」と同様の方法により測定することができる。
ポリプロピレン樹脂中、ポリマー(2)の含有割合としては、10〜40質量%程度が好ましく、20〜40質量%程度がより好ましい。ポリプロピレン樹脂中のポリマー(2)の含有割合が10質量%以上であると、ポリプロピレンフィルムのα晶(040)面の面間隔値を特定の範囲に設定することができ、絶縁破壊特性に優れる。一方、ポリプロピレン樹脂中のポリマー(2)の含有割合が40質量%を超えると、結晶化度の低下を招き、絶縁破壊特性を損なう恐れがある。そればかりでなく、製膜が困難になったり、結晶サイズが小さくならず、所望の効果が得られない等、実用上、好ましくない。
ポリプロピレン樹脂がポリプロピレン(1)及びポリマー(2)を含有する場合、ポリプロピレン(1)及びポリマー(2)を、ドライあるいは溶融状態で混合することが好ましい。ここで、これらの樹脂は、その重合粉あるいはペレットをミキサー等によってドライブレンドする方法、その重合粉あるいはペレットを混練機によって溶融混練してブレンド樹脂を得る方法等を含む非限定的な任意の混合方法に従って混合してもよい。
本発明において、上記のポリプロピレン(1)及びポリマー(2)以外の他の樹脂(以下「他の樹脂」ともいう)を本発明の効果を損なわない範囲内で混合してもよい。ここで、「他の樹脂」は特に限定されず、コンデンサ用途に適したものとされる従来公知の樹脂を本発明においても適宜用いることができる。他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリ(1−ブテン)、ポリイソブテン、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(1−メチルペンテン)等のポリプロピレン以外の他のポリオレフィン;プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のα−オレフィン同士の共重合体;スチレン−ブタジエンランダム共重合体等のビニル単量体−ジエン単量体ランダム共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のビニル単量体−ジエン単量体−ビニル単量体共重合体等が挙げられる。このような他の樹脂の配合量は、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは5質量部以下である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、上記のポリプロピレン樹脂の他に、必要に応じて少なくとも1種の添加剤を含有してもよい。添加剤は、一般的に、ポリプロピレン樹脂に使用される添加剤である限り特に制限されない。このような添加剤には、例えば酸化防止剤、塩素吸収剤、紫外線吸収剤等の安定剤、滑剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤、着色剤等が含まれる。このような添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内でポリプロピレン樹脂中に添加してもよい。
「酸化防止剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。酸化防止剤は、一般的に2種類の目的で使用される。一つの目的は、押出機内での熱劣化及び酸化劣化を抑制することであり、他の目的は、フィルムコンデンサとしての長期使用における劣化抑制及びコンデンサ性能の向上に寄与することである。押出機内での熱劣化及び酸化劣化を抑制する酸化防止剤を「1次剤」ともいい、コンデンサ性能の向上に寄与する酸化防止剤を「2次剤」ともいう。これらの2つの目的のために、2種類の酸化防止剤を用いてもよいし、2つの目的のために1種類の酸化防止剤を使用してもよい。
2種類の酸化防止剤を用いる場合、ポリプロピレン樹脂は、1次剤として、例えば、2,6−ジ−ターシャリー−ブチル−パラ−クレゾール(一般名称:BHT)を、ポリプロピレン樹脂を基準(100質量部)に対して、1000ppm〜4000ppm程度含むことができる。この目的の酸化防止剤は、押出機内での成形工程にてほとんどが消費され、製膜成形後のフィルム中には、ほとんど残存しない(一般的には、残存量100ppmより少ない)。
2次剤として、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を使用することができる。本発明において使用できるカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特に制限されないが、例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−ターシャリー−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(商品名:イルガノックス245)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イル
ガノックス259)、ペンタエリスルチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1010)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1035)、オクタデ
シル−3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ
ート(商品名:イルガノックス1076)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(商品名:イルガノッ
クス1098)等が挙げられる。なかでも、高分子量であってポリプロピレンとの相溶性に富み、低揮発性かつ耐熱性に優れたペンタエリスルチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が、最も好ましい。
カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤は、押出機内で少なからず消費されることを考慮して、ポリプロピレン樹脂の総量に基づいて、好ましくは2000ppm以上7000ppm以下、より好ましくは3000ppm以上7000ppm以下の量で、ポリプロピレン樹脂中に含まれる。
ポリプロピレン樹脂が1次剤を含まない場合、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤をより多く使用することができる。この場合、押出機内におけるカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の消費量が増える点から、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤は、ポリプロピレン樹脂100質量部を基準に、3000ppm以上8000ppm以下の量で添加することが好ましい。
本発明では、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの長期使用時における経時的に進行する劣化を抑制する目的で、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤(2次剤)を1種類以上含有することが好ましい。当該2次剤の、フィルム中の含有量は、ポリプロピレン樹脂の総量に基づいて、1000ppm以上6000ppm以下であることが好ましく、1500ppm以上6000ppm以下であることが好ましい。
ポリプロピレンと分子レベルで相溶性が良好であるカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を、最適な特定範囲の量を含有させたフィルムコンデンサは、高い耐電圧性能を維持したまま、非常に高温の長期の試験においても、静電容量を低下させず(劣化が進行せず)、長期耐用性が向上するので好ましい。
「塩素吸収剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。塩素吸収剤として、例えば、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸等を例示できる。
「紫外線吸収剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。紫外線吸収剤として、例えば、ベンゾトリアゾール(BASF製Tinuvin328等)、ベンゾフェノン(Cytec製Cysorb UV−531等)、ハイドロキシベンゾエート(Ferro製UV−CHEK−AM−340等)等を例示できる。
「滑剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。滑剤として、例えば、第一級アミド(ステアリン酸アミド等)、第二級アミド(N−ステアリルステアリン酸アミド等)、エチレンビスアミド(N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド等)等を例示できる。
「可塑剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。可塑剤として、例えば、ポリプロピレンランダム共重合体等を例示できる。
「難燃化剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。難燃化剤として、例えば、ハロゲン化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン酸塩、ボレート、アンチモン酸化物等を例示できる。
「帯電防止剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。帯電防止剤として、例えば、グリセリンモノエステル(グリセリンモノステアレート等)、エトキシル化された第二級アミン等を例示できる。
「着色剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。着色剤として、例えば、カドミウム、クロム含有無機化合物からアゾ、キナクリドン有機顔料の範囲まで例示できる。
本発明においてポリプロピレン樹脂がポリプロピレン(1)及びポリマー(2)を含み、ポリプロピレン樹脂を混合して使用する場合、混合方法は特に制限されないが、例えば粉末状あるいはペレット状の各樹脂をミキサー等によってドライブレンドする方法、粉末状あるいはペレット状の各樹脂を混練機内で溶融混練することによりブレンド樹脂を得る方法等が挙げられる。
使用できるミキサーには特に制限が無く、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサー等を使用することができる。また、使用できる混練機にも特に制限は無く、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、又はそれ以上の多軸スクリュータイプの何れを使用することもできる。2軸以上のスクリュータイプの場合、同方向又は異方向回転のいずれの混練タイプも使用できる。
溶融混練によるブレンドの場合には、良好な混練さえ得られる限り混練温度に特に制限はないが、一般的には、200〜300℃の範囲であり、230〜270℃が好ましい。あまり高い温度で混練を行うと、樹脂の劣化を招く場合があるため好ましくない。樹脂の混練混合の際の劣化を抑制するために、混練機中へ窒素等の不活性ガスをパージしてもよい。溶融混練された樹脂は、既知の造粒機を用いて適当な大きさにペレタイズすることによって、混合ポリプロピレン原料樹脂ペレットを得ることができる。
本発明におけるポリプロピレン樹脂中に含まれる重合触媒残渣等に起因する総灰分は、電気特性を向上させるために可能な限り少ないことが好ましい。総灰分は、ポリプロピレン樹脂を基準(100質量部)として、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、75ppm以下であることが特に好ましい。
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、上記のポリプロピレン樹脂を通常の方法に従って二軸延伸することによって得ることができる。本発明では、まず、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造するための「延伸前のキャスト原反シート」を、公知の方法を使用して成形することが好ましい。例えば、ポリプロピレン樹脂ペレット、ドライ混合されたポリプロピレン樹脂ペレット及び/又は粉末、もしくは、予め溶融混練して作製した混合ポリプロピレン樹脂ペレット類を押出機に供給して、加熱溶融し、ろ過フィルタを通した後、170℃〜320℃、好ましくは、200℃〜300℃に加熱溶融してTダイから溶融押し出し、通常80℃〜140℃、好ましくは90℃〜120℃、より好ましくは90℃〜105℃に保持された少なくとも1個以上の金属ドラムで、冷却、固化させることによって、未延伸のキャスト原反シートを成形することができる。上記キャスト原反シートの厚さは、0.05mm〜2mmであることが好ましく、0.1mm〜1mmであることがより好ましい。
二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、前記ポリプロピレンキャスト原反シートに延伸処理を行って製造することができる。延伸は、縦及び横に二軸に配向させる二軸延伸が行われ、延伸方法としては同時又は逐次の二軸延伸方法が挙げられるが、逐次二軸延伸方法が好ましい。逐次二軸延伸方法としては、例えば、まずキャスト原反シートを100〜160℃の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向に3〜7倍に延伸し、直ちに室温に冷却する。引き続き、当該延伸フィルムをテンターに導いて160℃以上の温度で幅方向に3〜11倍に延伸した後、緩和、熱固定を施して、巻き取る。巻き取られたフィルムは、20〜45℃程度の雰囲気中でエージング処理を施された後、所望の製品幅に断裁することができる。
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さは、小型かつ大容量型のコンデンサ素子を得る点で1〜7μmであることが好ましい。厚さが1.5μm以上の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いることがより好ましい。また、用いる二軸延伸ポリプロピレンフィルムは極薄化されていることが望ましく、その厚さは6μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。フィルムの厚さは、例えば紙厚測定器、マイクロメータ(JIS−B7502)等を用いて、JIS−C2330に準拠して測定することができる。
このような延伸工程によって、機械的強度、剛性に優れたフィルムとなり、また、表面の凹凸もより明確化され、微細に粗面化された延伸フィルムとなる。二軸延伸ポリプロピレンフィルムの表面には、巻き適性を向上させつつ、コンデンサ特性をも良好とする適度な表面粗さを付与することが好ましい。
二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、少なくとも片方の表面において、その表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra)で0.03μm以上0.08μm以下であることが好ましく、かつ、最大高さ(Rz、旧JIS定義でのRmax)で0.3μm以上0.8μm以下に微細粗面化されていることが好ましい。Ra及びRzが、上述の好ましい範囲にある場合、表面は、微細に粗化された表面になり得、コンデンサ加工の際には、素子巻き加工において巻きシワが発生し難く、好ましく巻上げることができる。更に、フィルム同士の間も均一な接触が可能となるため、耐電圧性及び長期間に渡る耐電圧性も向上し得る。
ここで、「Ra」及び「Rz」(旧JIS定義のRmax)とは、例えばJIS−B0601:2001等に定められている方法によって、一般的に広く使用されている触針式表面粗さ計(例えば、ダイヤモンド針等による触針式表面粗さ計)を用いて測定された値をいう。「Ra」及び「Rz」は、より具体的には、例えば、東京精密社製、三次元表面粗さ計サーフコム1400D−3DF−12型を用い、JIS−B0601:2001に定められている方法に準拠して求めることができる。
フィルム表面に微細な凹凸を与える方法としては、エンボス法、エッチング法等、公知の各種粗面化方法を採用することができ、その中でも、不純物の混入等の必要がないβ晶を用いた粗面化法が好ましい。β晶の生成割合は、一般的には、キャスト温度及びキャストスピードを変更することによって制御することができる。また、縦延伸工程のロール温度によってβ晶の融解/転移割合を制御することができ、これらのβ晶生成とその融解/転移の二つのパラメーターについて最適な製造条件を選択することによって微細な粗表面性を得ることができる。
二軸延伸ポリプロピレンフィルムには、金属蒸着加工工程等の後工程における接着特性を高める目的で、延伸及び熱固定工程終了後に、オンラインもしくはオフラインにてコロナ放電処理を行うことができる。コロナ放電処理は、公知の方法を用いて行うことができる。雰囲気ガスとしては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、及びこれらの混合ガスを用いることが好ましい。
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、片面又は両面に電極を設けることができる。電極を設ける工程では、二軸延伸されたポリプロピレンフィルムの片面に金属蒸着膜を形成する方法が挙げられる。二軸延伸ポリプロピレンフィルムに金属蒸着膜を設ける方法としては、例えば真空蒸着法、スパッタリング法等が挙げられ、生産性や経済性等の点からは真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法によって金属蒸着膜を設ける場合には、るつぼ方式、ワイヤー方式等公知の方式から適宜選択して行われる。金属蒸着膜を構成する金属としては、亜鉛、鉛、銀、クロム、アルミニウム、銅、ニッケル等の単体金属、これらの金属から選択される複数種の金属からなる混合物又は合金等を使用することができる。環境面、経済性、及びフィルムコンデンサ性能、とりわけ静電容量や絶縁抵抗の温度特性並びに周波数特性等の点からは、金属蒸着膜を構成する金属として、亜鉛及びアルミニウムから選択される単体金属、金属混合物又は合金を採用することが好ましい。
金属蒸着膜の膜抵抗は、コンデンサの電気特性の点から、1〜100Ω/□が好ましい。この範囲内でも高めであることがセルフヒーリング(自己修復)特性の点から望ましく、膜抵抗は5Ω/□以上であることがより好ましく、10Ω/□以上であることが更に好ましい。また、コンデンサ素子としての安全性の点から、膜抵抗は50Ω/□以下であることがより好ましく、30Ω/□以下であることが更に好ましい。金属蒸着膜の膜抵抗は、例えば当業者に既知の二端子法によって金属蒸着中に測定することができる。金属蒸着膜の膜抵抗は、例えば蒸発源の出力を調整して蒸発量をすることによって調節することができる。
フィルムの片面に金属蒸着膜を形成する際、フィルムを巻回した際にコンデンサとなるよう、フィルムの片方の端部から一定幅は蒸着せずに絶縁マージンが形成される。さらに、金属化ポリプロピレンフィルムとメタリコン電極との接合を強固にするため、絶縁マージンと逆の端部に、ヘビーエッジ構造を形成することが好ましく、ヘビーエッジの膜抵抗は通常1〜8Ω/□であり、1〜5Ω/□であることが好ましい。
形成する金属蒸着膜のマージンパターンには特に制限はないが、フィルムコンデンサの保安性等の点からは、フィッシュネットパターン、Tマージンパターン等のいわゆる特殊マージンを含むパターンとすることが好ましい。特殊マージンを含むパターンで金属蒸着膜を二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面に形成すると、得られるフィルムコンデンサの保安性が向上し、フィルムコンデンサの破壊やショートを抑制できるため、好ましい。マージンを形成する方法としては、蒸着時にテープによりマスキングを施すテープ法、オイルの塗布によりマスキングを施すオイル法等、公知の方法を何ら制限なく使用することができる。
電極を設けた二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、フィルムの長尺方向に沿って巻き付ける巻き付け加工を経て、金属化ポリプロピレンフィルムコンデンサに加工される。すなわち、本発明では、上記のように作製された金属化ポリプロピレンフィルムを2枚1対として、金属蒸着膜とポリプロピレンフィルムとが交互に積層されるように重ね合わせて巻回する。その後、両端面に金属溶射によって一対のメタリコン電極を形成してフィルムコンデンサ素子を作製する工程により金属化ポリプロピレンフィルムコンデンサが得られる。
フィルムコンデンサ素子を作製する工程では、フィルムの巻き付け加工が行われる。例えば、金属蒸着部とポリプロピレンフィルムとが交互に積層されるように、更には、絶縁マージン部が逆サイドとなるように、2枚1対の金属化ポリプロピレンフィルムを重ね合わせて巻回する。この際、2枚1対の金属化ポリプロピレンフィルムを1〜2mmずらして積層することが好ましい。用いる巻回機は特に制限されず、例えば、株式会社皆藤製作所製の自動巻取機3KAW−N2型等を利用することができる。
扁平型コンデンサ素子を作製する場合、巻回後、通常、得られた巻回物に対してプレスが施される。プレスによってフィルムコンデンサ素子の巻締まり・素子成形を促す。層間ギャップの制御・安定化を施す点から、与える圧力は、ポリプロピレンフィルムの厚さ等によってその最適値は変わるが、2〜20kg/cmである。
続いて、巻回物の両端面に金属を溶射してメタリコン電極を設けることによって、フィルムコンデンサ素子を作製する。
金属化ポリプロピレンフィルムコンデンサ素子に対して、更に所定の熱処理が施される。すなわち、本発明では、フィルムコンデンサ素子に対し、80〜115℃の温度で1時間以上の真空下にて熱処理を施す工程(以下、「熱エージング」と称することがある)を含む。
フィルムコンデンサ素子に対して熱処理を施す上記工程において、熱処理の温度は、通常80℃以上であって、90℃以上とすることが好ましい。一方、熱処理の温度は、通常130℃以下であって、125℃以下とすることが好ましい。上記の温度で熱処理を施すことによって熱エージングの効果が得られる。具体的には、金属化ポリプロピレンフィルムに基づくコンデンサ素子を構成するフィルム間の空隙が減少し、コロナ放電が抑制され、しかも金属化ポリプロピレンフィルムの内部構造が変化して結晶化が進む。その結果、耐電圧性が向上するものと考えられる。熱処理の温度が所定温度より低い場合には、熱エージングによる上記効果が十分に得られない。一方、熱処理の温度が所定温度より高い場合には、ポリプロピレンフィルムに熱分解や酸化劣化等が生じることがある。
フィルムコンデンサ素子に対して熱処理を施す方法としては、例えば、真空雰囲気下で、恒温槽を用いる方法や高周波誘導加熱を用いる方法等を含む公知の方法から適宜選択してもよい。具体的には、恒温槽を用いる方法を採用することが好ましい。
熱処理を施す時間は、機械的及び熱的な安定を得る点で、1時間以上とすることが好ましく、10時間以上とすることがより好ましいが、熱シワや型付等の成形不良を防止する点で、20時間以下とすることがより好ましい。
熱エージングを施したフィルムコンデンサ素子のメタリコン電極には、通常、リード線が溶接される。また、耐候性を付与し、とりわけ湿度劣化を防止するため、コンデンサ素子をケースに封入してエポキシ樹脂でポッティングすることが好ましい。
本発明の方法によって得られるコンデンサ素子は、金属化ポリプロピレンフィルムに基づく小型かつ大容量型のフィルムコンデンサ素子であって、高温下での高い耐電圧性及び高温下での長期耐用性を有するものである。
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、これらの例は本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。また、特に断らない限り、例中の「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
各物性値である、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、メソペンタッド分率([mmmm])、メルトフローレート(MFR)、及びエチレン含有率を以下の測定方法により測定した。
なお、下記のポリプロピレン樹脂の物性値は、原料樹脂(ペレット)の形態での値である。また、ポリプロピレン(1)は、酸化防止剤(1次剤)として、2,6−ジ−ターシャリー−ブチル−p−クレゾール(一般名称:BHT)を2000ppm、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤(2次剤)として、ペンタエリスルチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1010)を5000〜6500ppm含有する。
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下の条件で、各樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)を測定
した。
東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵高温GPC装置であるHLC−8121GPC-HT型を使用した。カラムとして、東ソー株式会社製のTSKgel GMHHR−H(20)HTを3本連結して使用した。140℃のカラム温度で、溶離液としてトリクロロベンゼンを、1.0ml/minの流速で流して測定した。検量線を東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用いて作製し、測定された分子量の値をポリスチレンの値に換算して、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を得た。このMwとMnの値を用いて分子量分布(Mw/Mn)を得た。
<メソペンタッド分率([mmmm])の測定>
ポリプロピレンを溶媒に溶解し、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)を用いて、以下の条件で、メソペンタッド分率([mmmm])を求めた。
測定機:日本電子株式会社製、高温FT−NMR JNM−ECP500
観測核:13C(125MHz)
測定温度:135℃
溶媒:オルト−ジクロロベンゼン〔ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(
4/1)〕
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:9.1μsec(45°パルス)
パルス間隔:5.5sec
積算回数:4500回
シフト基準:CH(mmmm)=21.7ppm
5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmmやmrrm等)に由来する各シグナルの強度積分値より、百分率(%)で算出した。mmmmやmrrm等に由来する各シグナルの帰属に関し、例えば、「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」等のスペクトルの記載を参考とした。
<メルトフローレート(MFR)の測定>
JIS K 7210−1999に準拠して230℃にて測定した。
<エチレン含有率の測定>
エチレン含有率は、フーリエ変換核磁気共鳴装置(FT−NMR)を用いて、以下の条件で求めた。
測定機:Varian社製、高温FT−NMR VNMRS−400
観測核:13C(100.6MHz)
測定モード:逆ゲーテッドデカップリング
シフト基準:プロピレン単位5連鎖(mmmm)(21.86ppm)
エチレン含有率(mol%)は、頭−尾結合2連鎖に基づくメチレン炭素のシグナル積分値より、例えば、「Y.−D. Zhang et al.,Polym. J.,35巻,551頁(2003)」等の記載を参考として算出した。
〔実施例1〕
ポリプロピレン(1)(Mw=31×10、Mw/Mn=8.6、mmmm=95mol%、MFR=4.6g/10min)に、長鎖分岐ポリプロピレン(2a)として、Borealis社製のDaploy HMS-PP、WB135HM(MFR=2.5g/10min、溶融張力=
32cN)を表1に示した含有割合で混合し、混合ドライブレンド体を得た。得られたドライブレンド体を、ジーエムエンジニアリング社製の単軸押出機(GM65−32押出機)に供給して、樹脂温度250℃の温度で溶融し、Tダイを用いて押出し、金属ドラムに巻きつけて固化させ、厚さ約250μmのキャスト原反シートを作製した。引き続きこの未延伸キャスト原反シートをブルックナー社製のバッチ式研究用二軸延伸装置(KARO
IV ラボストレッチャー)にて、165℃の温度で、流れ方向に5倍に延伸した後、直ちに横方向に10倍に延伸して、厚さ5μmの薄い二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
表2は、表1の配合より得た二軸延伸ポリプロピレンフィルムの物性値である。
〔実施例2〕
実施例1の長鎖分岐ポリプロピレン(2a)の配合量を、表1に従って変えて混合した以外は、実施例1と同様にして、厚さ5μmの薄い二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
表2は、表1の配合より得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの物性値である。
〔実施例3〕
実施例1の長鎖分岐ポリプロピレン(2a)に代えて、エチレン−プロピレンコポリマー(2b)としてエチレン含有率2.5mol%であり、MFRが6g/10min、Mw=16×10、Mw/Mn=3である日本ポリプロ社製のノバテックPP、BC03B(エチレン−プロピレンランダムコポリマー)を混合した以外は、表1の配合に従い、実施例2と同様にして、厚さ5μmの薄い二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
表2は、表1の配合より得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの物性値である。
〔実施例4〕
実施例1の長鎖分岐ポリプロピレン(2a)に代えて、超高分子量ポリプロピレン(2c)としてMw=109×10、Mw/Mn=5の樹脂を混合した以外は、表1の配合に従い、実施例1と同様にして、厚さ5μmの薄い二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。なお、超高分子量ポリプロピレン(2c)は、下記の方法により製造した。
<超高分子量ポリプロピレン(2c)の製造>
高圧重合槽を用いてプロピレン重合体を得た。内容積1リットルの重合器に溶媒としてヘプタン、触媒として、ジエーテル系チーグラー・ナッタ触媒15mg、助触媒としてトリイソブチルアルミニウムを使用した。全量500mlとして、プロピレン圧を5気圧に調整した。反応器温度50℃で1時間重合した後、少量のエタノールにて反応停止し、プロピレンをパージした。その後、粉末を分離し、キシレン/メタノールによって再沈殿後、80℃で一晩減圧乾燥することで、ポリプロピレン重合体を得た。
表2は、表1の配合より得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの物性値である。
〔比較例1〕
樹脂としてポリプロピレン(1)のみを用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ5μmの薄い二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
表2は、表1の配合より得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの物性値である。
〔比較例2〕
実施例1の長鎖分岐ポリプロピレン(2a)の配合量を、表1に従って変えて混合した以外は、実施例1と同様にして、厚さ5μmの薄い二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
表2は、表1の配合より得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの物性値である。
〔比較例3〕
実施例3の超高分子量ポリプロピレン(2c)の配合を表1に従って変えて混合した以外は、実施例3と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ようとしたが、薄いフィルムを得るに至らなかった。
表2に、結果を記す。
Figure 0006515986
〔特性値の測定方法等〕
実施例及び比較例における特性値の測定方法等は以下の通りである。
<フィルムの厚さ>
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さは、マイクロメーター(JIS−B7502)を用いて、JIS−C2330に準拠して測定した。
<結晶子サイズ及びα晶(040面)の面間隔値の測定、並びに格子定数の算出>
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの結晶子サイズ及び面間隔値の測定は、XRD(広角X線回折)装置を用い、以下の通り、測定した。
測定機:リガク社製のディストップX線回折装置MiniFlex300
X線発生出力:30KV、10mA
照射X線:モノクローメーター単色化CuKα線(波長1.5418Å)
検出器:シンチュレーションカウンター
ゴニオメーター走査:2θ/θ連動走査
得られたデータから、解析コンピューターを用い、装置標準付属の統合粉末X線解析ソフトウェアPDXLを用い、回折強度曲線を得た。
結晶子サイズは、α晶(040)面の回折反射ピークの半価幅を算出した。得られたα晶(040)面の回折反射ピークの半価幅から、下記(1)式のScherrerの式を用いて、結晶子サイズを求めた。なお、本発明では、形状因子定数Kは、0.94を用いた。
D=K λ/(β Cosθ) (3)
[ここで、Dは、結晶子サイズ(nm)、Kは定数(形状因子)、λは使用X線波長(nm)、βはα晶(040)面の回折反射ピークの半価幅、θはα晶(040)面の回折ブラッグ角である]
また、α晶(040)面における面間隔値は、XRD実験により得られたα晶(040)面の回折反射ピークの回折角度2θ値を測定し、以下のBraggの式を用いて算出した。
2 d sinθ=λ (1)
[ここで、dは面間隔値、θは測定された回折角度、λは、用いたX線の波長である(本発明ではλ=1.5418Åである)。]
さらに、XRD測定から得られたα晶(110)面、α晶(040)面、α晶(130)面等の複数の結晶性回折の面間隔値dを用い、、以下の式(2)によって、ポリプロピレンの結晶のa軸、b軸、及びc軸の格子定数が求められた。
Figure 0006515986
[式(2)中、dはα晶における面間隔値、h、k、lは、その面間隔値に指数付けされたα晶のミラー指数(hkl)(α晶(040)面にその回折線が指数付けされた場合には、h=0、k=4、l=0となる)、aはa軸の格子定数、bはb軸の格子定数、cはc
軸の格子定数、βはa軸及びc軸がなす傾斜角である(α晶を単斜晶とした場合)]
<絶縁破壊電圧>
JIS C2330(2001)7.4.11.2 B法(平板電極法)にならって、交流(ac)電源を使用し、100℃で、絶縁破壊電圧値を測定した。12回の測定の平均絶縁破壊電圧値(VAC)を、フィルムの厚み(μm)で割り、上位2回及び下位2回の値を除いた8回の平均値を、絶縁破壊電圧(VAC/μm)とした。
なお、100℃での絶縁破壊電圧は、230VAC/μm以上の場合、絶縁破壊特性において極めて優れる。
Figure 0006515986
<結果と考察>
実施例1、2、3及び4から明らかな通り、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルム

















































は、100℃の高温下で、高い絶縁破壊電圧値を有しているフィルムである。そのため、耐熱・高耐電圧性能に優れた、コンデンサ用フィルムとして、極めて好適なものであった。
一方、従来技術に基づくポリプロピレン樹脂の構成の場合、二軸延伸ポリプロピレンフィルムのα晶(040)面の面間隔値が本発明の範囲外となり、絶縁破壊電圧値が劣るものであった(比較例1)。
また、ポリプロピレン樹脂中に、長鎖分岐ポリプロピレン(2a)を含む場合においても、α晶(040)面の面間隔値が小さく、本発明の範囲外となる場合には、絶縁破壊電圧値が劣るものであった(比較例2)。
本発明のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、絶縁破壊電圧に優れるので、このフィルムを用いてコンデンサを製造することで、高温下での耐電圧性、特に初期耐電圧性及び長期耐電圧性の向上が見込まれる。さらに、本発明のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、絶縁破壊電圧に優れると共に厚さを薄くすることができるので、高い耐電圧性が要求される小型かつ高容量型のコンデンサに好ましく利用可能である。

Claims (4)

  1. ポリプロピレン樹脂を含む二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、X線回折によって測定されるα晶(040)面の面間隔値が5.25〜5.30Åであり、
    ポリプロピレンフィルムの広角X線回折法により測定したα晶(040)面反射ピークの半価幅からScherrerの式を用いて算出した結晶子サイズが、10.5nm以上13.4nm以下であり、
    前記ポリプロピレンフィルムを構成する樹脂が、
    (1) 重量平均分子量が25万〜45万、分子量分布が7〜12であるポリプロピレン;並びに
    (2) 長鎖分岐ポリプロピレン(2a)、
    エチレン含有量が5mol%未満のエチレン−プロピレンコポリマー(2b)、及び
    重量平均分子量が80万〜140万、分子量分布が3〜6である超高分子量ポリプロピレン(2c)
    よりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマー;
    を含み、かつ、極性基を実質的に含まない石油樹脂及び極性基を実質的に含まないテルペン樹脂を含まず、
    ポリプロピレン樹脂中、前記ポリマー(2)を、20〜40質量%含有し、
    厚さが1〜6μmであ
    コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
  2. X線回折によって測定されるα晶の面間隔値から算出されるa軸方向の格子定数が6.65〜6.75Åであり、かつ、b軸方向の格子定数が21.00〜21.20Åである請求項1に記載のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
  3. 請求項1又は2に記載のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に電極を有する、コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いて得られるコンデンサ。
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