JP6508386B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
非磁性支持体と、
磁性粉末を含む磁性層と
を備え、
磁性粉末は、ε−Fe2O3結晶(Feサイトの一部が金属元素Mで置換されたもの
を含む)を含み、
垂直方向に測定した磁性層の残留磁化と厚さとの積が、0.5mA以上6.0mA以下であり、
磁性層の厚みが、30nm以上100nm以下である磁気記録媒体である。
1 磁気記録媒体の構成
2 磁気記録媒体の製造方法
図1に示すように、本技術の一実施形態に係る磁気記録媒体は、非磁性支持体1と、非磁性支持体1の一方の主面に設けられた非磁性層2と、非磁性層2上に設けられた磁性層3とを備える。磁気記録媒体が、必要に応じて、非磁性支持体1の他方の主面に設けられたバックコート層4をさらに備えるようにしてもよい。本技術の一実施形態に係る磁気記録媒体は、例えば、記録再生システムの再生ヘッドとしてトンネル型磁気抵抗効果型(Tunneling Magneto-Resistance:TMR)ヘッドが用いられる垂直磁気記録媒体である。
非磁性支持体1は、例えば、可撓性を有する長尺状のフィルムである。非磁性支持体1の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート、セルロースブチレートなどのセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのプラスチック、アルミニウム合金、チタン合金などの軽金属、アルミナガラスなどのセラミックなどを用いることができる。さらには、機械的強度を高めるために、AlまたはCuの酸化物を含む薄膜を、ビニル系樹脂などを含む非磁性支持体1の主面のうち少なくとも一方に成膜したものを用いてもよい。
磁性層3は、例えば、磁性粉末、結着剤および導電性粒子を含んでいる。磁性層3が、必要に応じて、潤滑剤、研磨剤、防錆剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。
磁性粉末は、ε−Fe2O3結晶(Feサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含む)を主相とする鉄酸化物の粒子からなる。金属元素Mは、例えば、Al、GaおよびInからなる群より選ばれる1種以上である。但し、鉄酸化物におけるMとFeのモル比をM:Fe=x:(2−x)と表すとき、0≦x<1である。
結着剤としては、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂などに架橋反応を付与した構造の樹脂が好ましい。しかしながら結着剤はこれらに限定されるものではなく、磁気記録媒体に対して要求される物性などに応じて、その他の樹脂を適宜配合してもよい。配合する樹脂としては、通常、塗布型の磁気記録媒体において一般的に用いられる樹脂であれば、特に限定されない。
導電性粒子としては、炭素を主成分とする微粒子、例えば、カーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン社の旭#15、#15HSなどを用いることができる。また、シリカ粒子表面にカーボンを付着させたハイブリッドカーボンを用いてもよい。
磁性層3は、非磁性補強粒子として、酸化アルミニウム(α、β、γ)、酸化クロム、酸化珪素、ダイヤモンド、ガーネット、エメリー、窒化ホウ素、チタンカーバイト、炭化珪素、炭化チタン、酸化チタン(ルチル、アナターゼ)などをさらに含有していてもよい。
非磁性層2は、非磁性粉末および結着剤を主成分として含んでいる。非磁性層2が、必要に応じて、導電性粒子、潤滑剤などの各種添加剤をさらに含んでいてもよい。
非磁性粉末としては、針状、球状、板状など、各種形状の微粒子を適宜使用することができる。
結着剤としては、上述した磁性層3において適用可能なものをいずれも使用することができる。また、非磁性層2においては、樹脂にポリイソシアネートを併用して、これを架橋硬化させるようにしてもよい。ポリイソシアネートとしては、例えば、トルエンジイソシアネート、およびこれらの付加体、アルキレンジイソシアネート、およびこれらの付加体などが挙げられる。
非磁性層2の導電性粒子としては、上述した磁性層3の導電性粒子と同様に、例えば、カーボンブラック、シリカ粒子表面にカーボンを付着させたハイブリッドカーボンなどを用いることができる。
磁性層3および非磁性層2に含有させる潤滑剤としては、例えば、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸と、炭素数2〜12の1価〜6価アルコールのいずれかとのエステル、これらの混合エステル、またはジ脂肪酸エステル、トリ脂肪酸エステルを適宜用いることができる。潤滑剤の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ペンチル、ステアリン酸ヘプチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチルなどが挙げられる。
次に、上述の構成を有する磁気記録媒体の製造方法の一例について説明する。
まず、非磁性粉末、導電性粒子および結着剤などを溶剤に混練、分散させることにより、非磁性層形成用塗料を調製する。次に、磁性粉末、導電性粒子および結着剤などを溶剤に混練、分散させることにより、磁性層形成用塗料を調製する。磁性層形成用塗料および非磁性層形成用塗料の調製には、同様の溶剤、分散装置および混練装置を適用することができる。
磁性層の自発磁化量σsおよび保持力Hcは、以下のようにして求めた。まず、振動試料磁力計(Vibrating Sample Magnetometer:VSM)を用いて、磁性粉末のM−Hループを得た。次に、得られたM−Hループから、自発磁化量σsおよび保持力Hcを求めた。
ε−Fe2O3結晶磁性粉末の物理体積(平均粒子サイズ)は、以下のようにして求めた。まず、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて、磁性粉末を撮影した。次に、撮影したTEM写真から500個の粒子を無作為に選び出し、それらの粒子の粒子径をそれぞれ測定した。ここで、粒子径は、粒子の最大の差し渡し長さ(すなわち最大粒子径)を意味する。次に、測定した500個の粒子の粒子径を単純に平均(算術平均)して、平均粒子径Rを求めた。次に、粒子の形状を球形状と見なして、上述のようにして求めた平均粒子径Rを用いて物理体積Vを以下の式から求めた。
V=(4π(R/2)3/3)[nm3]
磁性層の充填率は、以下のようにして求めた。まず、磁性層中に磁性粒子しか含まれない場合の飽和磁化量Mp(emu/cm3)を、磁性粒子の比重S(g/cm3)および自発磁化量σs(emu/g)の積により計算した(Mp=S×σs(emu/cm3))。次に、磁気テープを任意の位置で一定の面積を切り出し、そのサンプルの飽和磁化量mtape(emu)をVSM(Vibrating Sample Magnetometer)を用いて測定した。測定方向は、磁気テープの長手方向とした。この時、飽和磁化量mtapeを測定する印可磁界は測定サンプルが磁気的に十分飽和する磁界とし、MH曲線が飽和している領域を直線近似し、非磁性層や支持体等の磁性層以外のバックグラウンドノイズ因子を補正した。また、以後に記載している方法で、測定サンプルの磁性層の平均厚さを測定した。これら磁性層の平均厚さ、飽和磁化量mtapeを測定するサンプル面積、ならびに飽和磁化量mtapeの値から、飽和磁化量Mtape(emu/cm3)を算出した。以上により求めたMpならびにMtapeを用いて下式により充填率を求めた。
充填率(%)=(Mtape/Mp)×100
リールにまかれている磁気テープを任意の位置で一定の面積を切り出し、磁気テープの垂直方向にMH曲線を測定した。測定磁界は磁気テープのMH曲線が十分に飽和する磁界とした。得られたMH曲線は非磁性層や支持体等の磁性層以外のバックグラウンドノイズが含まれているため、MH曲線が飽和している領域を直線近似し、MH曲線から差し引きを行うことにより磁性層のみのMH曲線を得ることができる。得られたMH曲線の磁界0 Oeにおける磁化量(emu)の絶対値を平均することにより、残留磁化量Mr(emu)を算出した。得られた残留磁化量Mr(emu)と測定サンプルのサイズからMr・t(mA)を算出した。
上記の手順で長手方向に測定したMH曲線のうち、十分に磁界を掛け磁化量が飽和している部分の磁化量Ms(emu)を算出した。上記で求めたMr(emu)をMs(emu)で除することによりMH曲線の角形比Mr/Msを計算した。
非磁性層、および磁性層の平均厚さは、以下のようにして求めた。まず、磁気テープをその主面に対して垂直に切り出し、その断面をTEMにより6万倍で撮影した。次に、撮影したTEM写真から無作為に10点を選び出し、それらの各点において非磁性層、および磁性層の厚さを測定した。次に、これらの測定値をそれぞれ単純に平均(算術平均)して非磁性層、および磁性層の平均厚さを求めた。
下記配合の第一組成物をエクストルーダで混練した。その後、ディスパーを備えた攪拌タンクに、第一組成物と、下記配合の第二組成物を加えて予備混合を行った。その後、さらにサンドミル混合を行い、フィルター処理を行い、磁性層形成用塗料を調製した。
ε−Fe2O3結晶磁性粉末:100質量部
(表1に示すように、自発磁化量σs=5〜25emu/g、物理体積=800〜4000nm3、充填率=30%以上、保持力Hc=2000〜4500Oeの範囲とした。)
塩化ビニル系樹脂(シクロヘキサノン溶液30質量%):55.6質量部
(重合度300、Mn=10000、極性基としてOSO3K=0.07mmol/g、2級OH=0.3mmol/gを含有する。)
酸化アルミニウム粉末:5質量部
(α−Al2O3、平均粒径0.2μm)
カーボンブラック:2質量部
(東海カーボン社製、商品名:シーストTA)
塩化ビニル系樹脂:27.8質量部
(樹脂溶液:樹脂分30質量%、シクロヘキサノン70質量%)
n−ブチルステアレート:2質量部
メチルエチルケトン:121.3質量部
トルエン:121.3質量部
シクロヘキサノン:60.7質量部
針状酸化鉄粉末:100質量部
(α−Fe2O3、平均長軸長0.15μm)
塩化ビニル系樹脂:55.6質量部
(樹脂溶液:樹脂分30質量%、シクロヘキサノン70質量%)
カーボンブラック:10質量部
(平均粒径20nm)
ポリウレタン系樹脂UR8200(東洋紡績製):18.5質量部
n−ブチルステアレート:2質量部
メチルエチルケトン:108.2質量部
トルエン:108.2質量部
シクロヘキサノン:18.5質量部
カーボンブラック(旭社製、商品名:#80):100質量部
ポリエステルポリウレタン:100質量部
(日本ポリウレタン社製、商品名:N−2304)
メチルエチルケトン:500質量部
トルエン:400質量部
シクロヘキサノン:100質量部
磁性層形成用塗料の第一組成物に含まれるε−Fe2O3結晶磁性粉末として、表2に示す自発磁化量σs、物理体積、充填率および保持力Hcを有するものを用いた。また、磁性層の平均厚さを表2に示す厚さに設定した。これ以外のことは、実施例1〜16と同様にして磁気テープを得た。
磁性層形成用塗料の第一組成物に含まれるε−Fe2O3結晶磁性粉末に代えて、表2に示す自発磁化量σs、物理体積、充填率および保持力Hcを有するバリウムフェライト(BaFe12O19)磁性粉末を用いた。また、磁性層の平均厚さを表2に示す厚さに設定した。これ以外のことは、実施例1〜16と同様にして磁気テープを得た。
メディアノイズ支配率は以下のような方法を用いて算出した。AC消磁された磁気テープを再生ヘッドで再生することで得られる再生ノイズ(トータルノイズ)NtotalとシステムノイズNsystemの各ノイズスペクトラムを、スペクトラムアナライザーを用いて計測を行った。各ノイズは周波数0〜20MHzの積算値を用いて定量化を行い、これらのノイズ値を用いて、以下の式に従い、メディアノイズNmedia、及び、メディアノイズ支配率を求めた。
Nmedia=√((Ntotal)2−(Nsystem)2)
メディアノイズ支配率=(Nmedia/Ntotal)×100[%]
前記トータルノイズに対するメディアノイズの割合をメディアノイズ支配率と定義した。
記録周波数0.5MHz(記録波長4μm)の記録再生を行った時の(孤立)再生波形をオシロスコープ上で波形観察を行い、波形ピーク近傍の波形の潰れ度合で、テープからの漏れ磁束による再生ヘッドの磁気飽和状態を推測した。表中では、波形の潰れが観察されたものを“×”、波形の潰れが観察されなかったものを“○”と表記した。出力飽和、すなわち再生波形の潰れが観察されるということは、本来得られるべき出力が得られていないということであり、一つの記録再生システムの中で考えたときに、その記録媒体を使用することは適していないものと考えられ、また波形の潰れが悪化するとノイズ発生原因にもなり得る。
記録周波数を10MHz(記録波長0.2μm)とし、最適記録電流で記録再生を行い、Lecroy社製デジタルオシロスコープを用いて、再生出力の変動量を計測した。出力変動量に関しては以下のように定義した。
出力変動量=(σ/TAA)×100[%]
ここで、TAAはTrack Averaged Amplitude(トラック平均出力)とし、σはその標準偏差を用いた。
表中では、この出力変動量が10%以下であるサンプルを“○”と表記し、10%を超えるサンプルを“×”と表記した。出力変動がおおきくなるということは、磁性層の厚みのバラつきが大きくなっていることや、再生波形が欠けてしまうドロップアウトが発生していることを示唆している。このうち10%を超えるものについては、例え良好なC/Nが局所的に得られていてもビットエラーレートの悪化などが見られるため、高密度磁気記録媒体としては適さない。
記録周波数を10MHz(記録波長0.2μm)とし、最適記録電流で記録再生を行い、スペクトラムアナライザーを用いて、10MHzの再生出力値と、10MHz±1MHzのノイズの平均値を計測し、それらの差をC/N値と定義した。表中では、比較例15のC/N値を0dBとして、その相対差で表記している。
(1)
非磁性支持体と、
磁性粉末を含む磁性層と
を備え、
上記磁性粉末は、ε−Fe2O3結晶(Feサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含む)を含み、
上記磁性層の残留磁化と厚さとの積が、0.5mA以上6.0mA以下であり、
上記磁性層の長手方向に測定した角形比が、0.3以下である磁気記録媒体。
(2)
上記磁性層の厚みが、30nm以上100nm以下である(1)に記載の磁気記録媒体。
(3)
上記磁性粉末の自発磁化量が、5emu/g以上25emu/g以下である(1)または(2)に記載の磁気記録媒体。
(4)
上記磁性層の保持力が、2000Oe以上4500Oe以下である(1)から(3)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(5)
上記磁性粉末の物理体積が、800nm3以上4000nm3以下である(1)から(4)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(6)
上記磁性粉末の充填率が、30%以上である(1)から(5)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(7)
再生ヘッドとしてトンネル型磁気抵抗効果型ヘッドが用いられる(1)から(6)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
2 非磁性層
3 磁性層
4 バックコート層
Claims (15)
- 非磁性支持体と、
磁性粉末を含む磁性層と
を備え、
上記磁性粉末は、ε−Fe2O3結晶(Feサイトの一部が金属元素Mで置換されたものを含む)を含み、
垂直方向に測定した上記磁性層の残留磁化と厚さとの積が、0.5mA以上6.0mA以下であり、
上記磁性層の厚みが、30nm以上100nm以下である磁気記録媒体。 - 上記垂直方向に測定した上記磁性層の残留磁化と厚さとの積が、2.0mA以上4.0mA以下である請求項1に記載の磁気記録媒体。
- 上記磁性粉末の自発磁化量が、5emu/g以上25emu/g以下である請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
- 上記磁性粉末の自発磁化量が、20emu/g以上25emu/g以下である請求項1から3のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 上記磁性層の保磁力が、2000Oe以上4500Oe以下である請求項1から4のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 上記磁性層の保磁力が、3500Oe以上4000Oe以下である請求項1から5のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 上記磁性粉末の物理体積が、800nm3以上4000nm3以下である請求項1から6のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 上記磁性粉末の物理体積が、1000nm 3 以上1500nm 3 以下である請求項1から7のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 上記磁性粉末の充填率が、30%以上である請求項1から8のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 上記磁性粉末の充填率が、30%以上50%以下である請求項1から9のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 再生ヘッドとしてトンネル型磁気抵抗効果型ヘッドが用いられる請求項1から10のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 上記磁性層の長手方向に測定した角形比が、0.22以下である請求項1から11のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 上記磁性層の厚みが、50nm以上70nm以下である請求項1から12のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 上記磁性粉末の金属元素Mが、Al、GaおよびInからなる群より選ばれる1種以上であり、
鉄酸化物におけるMとFeのモル比をM:Fe=x:(2−x)と表すとき、0≦x<1である請求項1から13のいずれかに記載の磁気記録媒体。 - 上記磁性層は、垂直磁気記録層である請求項1から14のいずれかに記載の磁気記録媒体。
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