JP6505744B2 - 老眼補正のための改良された眼科用レンズ - Google Patents

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Description

本発明は、老眼補正のための眼科用レンズ、及び、老眼補正のための眼科用レンズを最適化して製造するための方法に関する。
老眼補正のための眼科用レンズは、例えば二焦点レンズ、多焦点レンズ、又は、可変焦点レンズなどの多焦点コンタクトレンズ及び眼鏡レンズを含む。これらの補正手段のそれぞれは、一連の利点及び不利点を有する。
二焦点レンズ及び三焦点レンズは、2つ(二焦点レンズ)又は3つ(三焦点レンズ)の物体距離で鮮明な高コントラストの像を形成する。そのようなレンズは、2つ又は3つの視覚領域(二焦点レンズを用いた遠見領域及び近見領域、並びに、三焦点レンズが与えられる遠見領域、中間領域、及び、近見領域)を有し、この場合、それぞれの物体は単一の距離で鮮明に結像され得る。二焦点眼鏡又は三焦点眼鏡の着用者は、自分の凝視を移動させることにより主視覚領域のうちの1つを選択できる。しかしながら、二焦点レンズ及び三焦点レンズは、それらが全ての物体距離において鮮明な像を可能にするとは限らないという不利点を有する。更なる不利点は、レンズ表面の曲率があらゆる場所で互いの方へ連続的に移行できなくなる視覚領域の境界で形成される、目立つプリズムジャンプである。目立つプリズムジャンプは、多数の人によって非審美的であると知覚される。
多焦点コンタクトレンズは、観察方向とは無関係に複数の物体距離で同時に鮮明な像を可能にするという利点を有するが、これらの像のコントラストが同様に全ての観察方向で弱められる。これは、入射光の強度を複数の焦点距離間で分配しなければならないからである。コントラスト低下は、主に、物体の鮮明な像と同時に知覚されるぼやけた像で現れる。異なる焦点距離をもたらすために回折構造が使用される場合には、回折構造により更に広がって散乱される光が、更なるコントラスト低下をもたらす場合があるとともに、縦色収差が生み出される場合がある。コントラストが低い像の持続的な知覚は、多焦点コンタクトレンズの着用者によって干渉する或いはひどく骨が折れると認識される場合があり、多焦点コンタクトレンズの不利点である。
可変焦点レンズは、主視覚領域(遠い視覚領域、中間の視覚領域、及び、近い視覚領域)で鮮明な高コントラストの像を可能にする、1つ以上の連続して累進的な屈折面を有する。それにより、物体は、それぞれの単一の距離で鮮明に結像されるが、距離は、観察位置又は観察方向に依存する。可変焦点レンズの着用者は、自分の凝視を下げることによって鮮明に描かれた物体の物体距離を連続的に調整する場合がある。また、可変焦点レンズは、屈折力の非審美的な移行も有さない。しかしながら、可変焦点レンズにおける効果の連続的な増大に起因して、及び−これとも関連して−連続的な物体距離関数に起因して、主視覚領域の側部に外周非点収差が必然的に生じる。この外周非点収差は、主視覚領域の側部に目を向ける際に見る鮮明度を低下させるとともに、可変焦点眼鏡の着用者が耐えられなくなる場合がある歪みをもたらす。したがって、外周非点収差は、可変焦点眼鏡の大きな不利点である。
欧州特許出願公開第0967509B1号明細書では、1つの眼鏡レンズにおいて回折性屈折力と屈折性屈折力とを組み合わせることにより遠部分と近部分との間で3つの異なる屈折力曲線を実現することが提案される。しかしながら、これらの屈折力曲線のそれぞれは必然的に外周ぼやけ領域をもたらし、これは、従来の可変焦点レンズが与えられても当てはまる。
欧州特許出願公開第2175306B1号明細書及び欧州特許出願公開第2175307A1号明細書には、2つの異なる物体距離において同じ視点で鮮明な視覚を可能にする眼科用レンズが記載され、これは、互いに交互に起こる複数の屈折力領域に眼鏡を分割することにより求められる。しかしながら、可変焦点レンズの外周非点収差は、これによって排除されない。これは、物体距離関数のうちの少なくとも1つに関して、屈折力領域のうちの1つの範囲内に屈折力の連続的な移行が存在するからである。また、屈折力領域の境界における不連続は、必然的に、視覚的印象に悪影響を及ぼす光散乱をもたらす。
欧州特許出願公開第2171526A4号明細書は、付加的な回折構造を近見領域に有する可変焦点レンズを示す。回折構造はレンズに存在する非点収差をいくらか減少させるが、非点収差は排除はされない。これに加えて、回折構造は、光散乱、色収差、及び、二次的な像が生じるため、近見領域で視覚の質を低下させる。光散乱、色収差、及び、二次的な像は、レンズを通過する光の残存する強度に起因し、この強度は0番目の回折次数のままである。色収差及び二次的な像は、例えば明るい物体を読む又は観察する際に、とりわけ高いコントラストを伴う視覚的印象が与えられると干渉すると分かる場合がある。
例えばカラーフリンジで表される色収差−横色収差及び縦色収差を意味する−は、全ての眼科用レンズで生じるが、とりわけ、眼鏡レンズでは、それらが一例として先に言及されたように生じる。それにより、カラーフリンジは、眼科用レンズの外周に更に激しく生じ、また、とりわけ高いプラス効果又はマイナス効果が与えられると視覚的印象の低下をもたらす場合がある。
欧州特許出願公開第0967509B1号明細書 欧州特許出願公開第2175306B1号明細書 欧州特許出願公開第2175307A1号明細書 欧州特許出願公開第2171526A4号明細書
本発明の目的は、老眼補正のための眼科用レンズを通した視覚的印象を改善することである。
特に、本発明の副次的な目的は、眼科用レンズ内で屈折力の連続的な移行を達成し、それにより同時に、非審美的なプリズム移行を回避する或いは隠すことである。更なる副次的な目的は、少なくとも1つの光波長及び物体距離に関して望ましくない外周のぼやけた領域の印象の強さ及び/又は面積のサイズを回避する或いは減少させることである。更なる副次的な目的は、純粋に回折性の或いは純粋に屈折性の眼科用レンズが与えられると存在する色収差を減少させることである。用語「色収差」により理解されるものは、横色収差及び/又は縦色収差である。横色収差は、眼科用レンズを通して見る際に主にカラーフリンジをもたらし、それにより、最適な視覚的印象にとって色収差の減少が重要である。着用の快適さ及び眼科用レンズを通して見る際の視覚的な質は、副次的な目的のうちの少なくとも1つを達成することにより改善され、また、不寛容の可能性が減らされる。
前記目的は、屈折面(屈折性屈折力部)の屈折力の適切な分配と眼科用レンズの屈折力に相当する少なくとも1つの適切に設計された回折構造との組み合わせによって達成される。
本発明の第1の態様によれば、少なくとも1つの回折構造を伴う老眼補正のための眼科用レンズが提供される。回折構造は、レンズの屈折力に寄与する回折構造の少なくとも1つの回折次数の回折効率が空間的に変化可能である可変回折効率の少なくとも1つの領域を有し、空間的に変化可能とは、回折効率が眼科用レンズ上の視点に応じて変化することを意味する。少なくとも1つの回折次数の回折効率は、特に、物体距離モデルが相関であるように、すなわち、複数の物体両眼転導を1つの視点と関連付けることができ、それにより、少なくとも1つの物体距離で鮮明な像が可能であるように或いは鮮明に見ることができるように選択されてもよい。
老眼補正のための眼科用レンズは、多焦点コンタクトレンズ、多焦点眼鏡レンズ(例えば、二焦点レンズ、三焦点レンズ)、又は、プログレッシブ眼鏡レンズであってもよい。眼科用レンズは、好ましくは、遠い基準点と近い基準点との間の接続線に沿って屈折力(すなわち、レンズの屈折力の屈折部)が連続的に変化するプログレッシブ眼鏡レンズである。
これに変えて又は加えて、回折構造は、回折構造の少なくとも1つの回折次数の屈折力が空間的に変化可能である可変回折性屈折力の少なくとも1つの領域を有する。空間的に変化可能とは、屈折力が眼科用レンズ上の視点に応じて変化することを意味する。それにより、この領域におけるレンズの全屈折力が同様に空間的に変化可能又はほぼ一定であってもよい。可変回折効率の領域又は可変回折性屈折力の領域は、少なくとも部分的に或いは完全に重なり合ってもよい。
老眼補正のための眼科用レンズの形態が与えられると、可変回折効率及び/又は可変回折性屈折力を有する屈折構造と回折構造との組み合わせは、眼科用レンズの視覚特性を向上させるために使用されてもよい更なる自由度を与える。したがって、本発明の第1の態様に係る眼科用レンズを用いると、眼科用レンズの結像誤差(例えば、望ましくない非点収差、プリズム不連続性等)及び/又は色収差を減らすことができる。特に、プログレッシブ眼鏡レンズが与えられると外周で生じる屈折性屈折力部の望ましくない非点収差(例えば、少なくとも1つの回折次数において0.2dpt)を少なくとも部分的に補償することができる。
回折効率及び/又は屈折力の変化は連続的であってもよく或いは不連続であってもよい。回折効率及び/又は回折性屈折力の変化は連続的であることが好ましい。
回折構造は、回折格子(例えば、振幅及び/又は位相格子)、特に鋸歯回折格子又はブレーズド回折格子、透過型回折格子又はホログラフィック格子であってもよく、或いは、そのような回折格子を備えてもよい。回折構造は、同様に、回折率が変化する層又は膜(傾斜屈折率材料)によって実現される回折格子であってもよく或いはそのような回折格子を備えてもよい。回折格子は、細かく構造化された回折格子及び粗く構造化された回折格子のいずれであってもよい(例えば、MOD=ulti−rder iffraction Grating;多次数回折格子)。眼科用レンズの屈折面のうちの1つ以上が回折構造を有してもよい。したがって、少なくとも1つの回折構造は、眼科用レンズの前面上及び/又は後面上又はこれらの面内に配置され或いは取り付けられてもよい。ベースレンズとカバーレンズとから形成される複合システムを設けることもでき、この場合、少なくとも1つの回折構造がベースレンズ及び/又はカバーレンズの保護された内部(すなわち、対向して位置されるベースレンズ及び/又はカバーレンズの側)に取着される。
或いは、回折格子を形成する或いは回折格子の境界を定める材料は、静的であってもよく、或いは、例えば電気的に切り換え可能であってもよい。静的な或いは切り換え可能な回折格子を製造する方法は、従来技術から知られている。
老眼補正のための眼科用レンズ(例えば、二焦点眼鏡レンズ、三焦点眼鏡レンズ、プログレッシブ眼鏡レンズ、又は、多焦点コンタクトレンズ)は、異なる距離を見るためにそれぞれ設計される異なる屈折力の少なくとも2つの領域を備える。眼科用レンズは、湾曲した回折面を有するレンズ又は屈折率分布型レンズであってもよい。プログレッシブレンズが与えられると、屈折力の曲線は、任意であって、レンズの意図される(例えば、主に遠くを見る、近くを見る、中間距離で見るための)用途及び/又は設計概念(ソフト設計、ハード設計等)に依存してもよい。
異なる屈折率の媒体間の光学的屈折に帰されるべき眼科用レンズの回折特性は、一般に、球面度数、円柱度数、及び/又は、軸度数の変化によって表される。球面度数、円柱度数、及び/又は、軸度数は、眼科用レンズの表面特性又は使用位置での特性であってもよい。球面度数、円柱度数、及び/又は、軸度数は、視点に応じて変化してもよい。また、球面度数、円柱度数、及び/又は、軸度数は、レンズが使用される使用位置に応じて変化してもよい。少なくとも球面度数又は等価球面度数は、好ましくは、視点に応じて、また、適用可能な場合には、レンズの使用位置に応じて変化する。球面度数、円柱度数、及び/又は、軸度数から構成される眼科用レンズの(純粋に)屈折性の屈折力は、成分M_ref、J0_ref及びJ45_refを有する屈折力ベクトルの平均によって表されてもよく、この場合、M_refは等価球面度数を示し、また、J0_ref及びJ45_refは非点収差成分を示す。
回折構造のn番目の回折次数の屈折力−すなわち、回折構造を通過する際のn次の光の回折に起因して生じる回折性屈折力部−が考慮される場合、等価球面度数M_n_diffを有する及び2つの非点収差成分J0_n_diff及びJ45_n_diffを有する屈折眼科用レンズと同等のものが表されてもよい。一般に、「n」は、回折構造の任意の回折次数を表す。1次元格子の境界線の場合には、「n」が1つの整数として表されてもよく、2次元回折要素が与えられると、「n」は、2つの整数の組として表されてもよい。それにより、n次の回折構造で回折される入射光の割合は、回折効率eta_nによって表される。
回折構造を有する眼科用レンズのそれぞれのポイントで、特定の回折次数で回折される光におけるレンズの全屈折力は、屈折面の屈折力寄与度(屈折性屈折力)及び回折構造の屈折力寄与度(回折性屈折力)から構成される。本発明の1つの態様によれば、回折構造の少なくともn番目の回折次数の回折効率及び/又は屈折力は、回折構造を通過する視点に応じて制御される。それにより、回折効率及び屈折力は、互いに概ね無関係に制御され或いは変えられてもよい。
それにより、回折構造のn番目の回折次数の屈折力部又は屈折力(M_n_diff、J0_n_diff、J45_n_diff)は、回折構造全体にわたって一定であってもよく、或いは、回折構造の一部にわたってのみ一定であってもよく、或いは、視点に応じて変化してもよく、この場合、そのような変化は、連続及び不連続のいずれであってもよい。
回折次数の回折性屈折力部又は屈折力は、視点に応じた回折構造の周期性の適切な変化によって変えられてもよい。格子の周期性の変化が視点を発端として全ての方向で一様に大きい程度まで行われる場合には、球面屈折力がもたらされる。回折格子が位相関数(例えば、国際特許出願公開第2012/065738号公報において紹介された位相関数を参照)によって表される場合、この場合の位相関数は全てのポイントで同じ曲率を示す。この場合、眼科用レンズの全屈折力に対する回折構造の屈折力寄与度は一定である。格子の周期性の変化が視点を発端として2つの異なる方向で異なって大きい程度まで行われる場合、更なる非点収差屈折力寄与度がもたらされてもよく、この場合、そのような態様でもたらされる非点収差の軸の位置が制御され或いは変えられてもよい。回折格子の局所的な周期性の変化により、回折構造を伴う眼科用レンズの屈折特性を具体的に操作するべく回折構造の屈折力寄与度の任意の所望の変化が達成されてもよい。
回折次数で回折構造により回折される光の回折効率は、回折構造の屈折力曲線とは可能な限り無関係に、回折構造の適切な設計によって制御されてもよく、この場合、全ての回折次数で回折される光の強度の和のみが、散乱損失と共に、入射光の強度をもたらす。例えば、回折効率は、ブレージングとして知られるものにより影響されてもよい。したがって、鋸歯又はブレーズ格子(すなわち、鋸歯状の外形を有する格子)として知られるものが回折構造として使用されてもよい。特定の回折次数の光の部分(すなわち、特定の回折次数における回折効率)は、ブレーズ面と基板との間の角度(すなわち、ブレーズ角度)の変化によって変えられてもよい。
回折効率に影響を及ぼすための更なる可能性は、視覚位置によって(回折構造を形成する)2つの媒体間の屈折率差を変えることである。例えば、眼科用レンズを形成するためのベース材料の屈折率が屈折率勾配を有してもよい。ベース材料の表面を覆う仕上げ又はコーティングが同様に屈折率傾斜を有してもよい。そのような仕上げ又はそのような層は、液晶から成ってもよく或いは液晶を備えてもよく、液晶が更に重合されてもよい。そのような重合された液晶層は、例えば位相板の製造において使用される。
それにより、回折効率は、回折構造全体にわたって一定であってもよく、或いは、回折構造の一部にわたってのみ一定であってもよく、或いは、視点に応じて変化してもよく、この場合、そのような変化は、連続及び不連続のいずれであってもよい。
既に前述したように、屈折構造(湾曲した屈折面及び/又は屈折率傾斜を備える)と可変回折効率及び/又は屈折力を有する回折構造との組み合わせは、老眼補正のための眼科用レンズの形態が与えられると、決定的な利点を有する。光の大部分は屈折面で完全に屈折され、また、反射損に起因して僅かな部分のみが失われるが、回折効率及び/又は回折性屈折力に起因して、1つ以上の回折次数の回折構造は、眼科用レンズの視覚特性の向上のために使用されてもよい更なる自由度を与える。
例えば、回折構造は、レンズの第1の基準点と第2の基準点とを接続する線に沿って回折構造の少なくとも1つの回折次数の回折効率及び/又は屈折力が常に又は連続的に変化するように設計されてもよい。例えば、少なくとも1つの回折次数の回折効率は、2つの基準点を接続する線に沿う連続的な変化が与えられると、第1の基準点で第1の高い値(例えば、ほぼ100%)を示すとともに、低い値(例えば、ほぼ0%)まで連続的に降下してもよい。眼科用レンズがプログレッシブレンズであれば、このレンズは、遠い基点と近い基準点との間に少なくとも1つの接続線を有してもよく、この接続線に沿って、少なくとも1つの回折次数の回折効率が連続的に変化する。
2つの視点間又は異なる屈折力ベクトルを有する2つの区域間の屈折力の新規な移行が、−例えば−ぼやけた領域、歪み、又は、明確なプリズムジャンプを避けるために眼科用レンズの設計において使用されてもよいそのような回折構造を用いて実現され得る。
したがって、レンズの全体の屈折力が2つの基準点で異なってもよい。1つの例において、レンズの屈折力は、第1の基準点における第1の値(M_1,J0_1,J45_1)から第2の基準点における第2の値(M_2,J0_2,J45_2)へと移行する。レンズの屈折力に寄与する少なくとも1つの回折次数の回折効率の連続的な変化に起因して、望ましくないぼやけた領域又は歪みが形成されないようにこの移行を設計することができる。
1つの例において、第1の基準点は、レンズの屈折力が遠距離で又は中間距離で見るのに適した値に相当する遠い基準点であってもよい。第2の基準点は、レンズの屈折力が近距離で見るのに適した値に相当する近い基準点であってもよい。2つの基準点を接続する線は、凝視の移動時(例えば、凝視の下降時)に視点(すなわち、眼科用レンズの屈折面のうちの1つとの可視光線の貫通点)を接続する線であってもよい。
異なる屈折力ベクトルを有する2つの視点又は基準点間(例えば、遠い基準点と近い基準点との間)の屈折力の連続的な移行は、従来の可変焦点レンズから知られているが、視点の連続的な変化が与えられると(純粋に屈折性の)屈折力ベクトル(M,J0,J45)の成分のそれぞれが連続的に変化するという事実に基づく連続する屈折力曲線によって実現される。そのような移行は、審美的に目立つプリズムジャンプをそれらが二焦点レンズ又は三焦点レンズから知られているように示さない。しかしながら、そのような連続的な移行の必然的な結果は、Minkwitz定理として知られているものと密接に関連する可変焦点レンズの外周における望ましくない領域及び歪みである。
本発明に係る(例えば、プログレッシブレンズが与えられる)1つの例において、眼科用レンズにおける連続する屈折力曲線は、物体距離の連続する範囲内で鮮明な像を可能にするために実現されてもよく、この場合、外周で生じる望ましくないぼやけた領域の深刻度が減少される。したがって、例えば、近くを見るように設計される眼科用レンズの領域の屈折性屈折力部は、純粋に屈折性のレンズが与えられるよりも低くなるように設計されてもよい。球面効果の欠落が、例えば近くを見るように設計された領域内に位置される回折構造によってもたらされてもよい。前述したように、回折構造は、更なる効果をもたらす回折次数の回折効率が縁部へ向けて小さい値(好ましくは0%)まで減少するように設計されてもよく、これが、回折構造が外周に更なる非点収差を何らもたらさない理由である。屈折性屈折力の球面部の回折は従来の純粋に屈折性のレンズが与えられるよりも小さいため、外周の望ましくない非点収差の深刻度も同様に低い。それにより、良く見える領域を広げることができる。
また、回折構造は、可変回折効率の領域内で少なくとも1つの他の更なる回折次数の回折効率が眼科用レンズの視点に応じて空間的に変化するように設計されてもよい。更なる回折次数は、レンズの屈折力に同様に寄与する回折次数であってもよい。しかしながら、更なる回折次数がレンズの屈折力に寄与しないことが想定し得る。2つの回折効率は、合計で75%、80%、90%、95%、98%、又は、99%、又は、100%を超えるようになることが好ましい。
それにより、少なくとも2つの回折次数のうちの1番目の回折次数の回折効率は、基準点を接続する線に沿って常に或いは連続的に減少することができ、また、基準点を接続する更なる線の回折効率は常に或いは連続的に増大することができる。変化は、基準点を接続する線上の全ての点で全ての回折次数の回折効率の和がほぼ一定のままであるように行われてもよい。
前述したように、1番目の回折次数の回折効率は、第1の基準点で高い値を有するとともに、第2の基準点でそれよりも低い値を有してもよい。逆に、更なる回折次数の回折効率は、第1の基準点で低い値を有するとともに、第2の基準点でそれよりも高い値を有してもよい。
特に、回折構造は、第1のn番目の回折次数がレンズの屈折力に寄与するとともに高い値(例えば、ほぼ100%)を伴う回折効率eta_nを有する第1の領域を有してもよい。n次の屈折力寄与度がほぼ一定であってもよい。基準点を接続する線に沿う視点の連続的な変化が与えられると、回折効率eta_nは、より高い値から低い値(例えば0%)へと連続的に変えられてもよい。回折効率は、n番目の回折次数の回折効率eta_nが減少するのと同じ程度まで他の回折次数において増大してもよい。境界線の場合、それにより、これは、回折効率eta_nと回折効率eta_mとの和が100%に近づくように単一の異なる付加的な回折次数mであってもよい。
2番目の回折次数は、レンズの屈折力ベクトルに寄与してもよいが、寄与する必要はない。したがって、第2のm番目の次数がレンズの屈折力ベクトルに寄与しない場合、n番目の次数の回折効率eta_nの0%への連続的な移行及びeta_mの100%への連続的な移行は、回折構造の連続的な消失に相当する。
第1のn番目及び第2のm番目の回折次数はそれぞれ、1番目及び0番目の回折次数であってもよい。それにより、0番目の回折次数はレンズの屈折力ベクトルに寄与しない。これは、0番目の回折次数と関連付けられる屈折力ベクトル(0,0,0)の回折部の全ての成分がゼロに等しいからである。1番目の回折次数は、視覚位置に依存しない一定の屈折力寄与度又は屈折力を有してもよい。しかしながら、1番目の回折次数が視覚位置に依存する屈折力を有することも想定し得る。
ゼロとはかなり異なる回折効率を有する全ての回折次数が一緒に考慮されれば、そのような眼科用レンズの物体距離区域は、従来の屈折レンズが与えられるように関数ではなく、むしろ相関である。これは、−所定の視点が与えられると−複数の物体距離で物体から放射される光が少なくとも1つの回折次数により網膜上に鮮明に結像され得るからである。(定常的な遠近調節が与えられる)そのような眼科用レンズの着用者により知覚されて網膜上に鮮明に結像される像は、−その像がn番目の回折次数により回折される光により形成されるが、回折効率eta_nの減少に伴って強度を失う。同時に、ぼやけた像の強度が増大し、この場合、ぼけは、二次の収差(ピンぼけ及び/又は非点収差)及び更に高次の収差(コマ収差、トレフォイル収差、球面収差等)の両方を条件とする。第1及び第2の基準点間で定常的な遠近調節及び所定の凝視偏向が与えられると、それにより、鮮明に形成された像の連続的なコントラスト低下が結果的に視覚印象として生じ、このコントラスト低下は、n番目の回折次数で回折される光によりもたらされる。しかしながら、コントラストの低下は、例えば望ましくない非点収差により引き起こされるぼけよりもかなり干渉が少ないように知覚され、それにより、眼科用レンズがその着用者にとって良好であると見なされる像を伝送する領域は比較的大きい。
−異なる屈折力の2つの区域間で回折性屈折力部のこの連続的な変換が与えられると−構成要素ごとにそれぞれの区域の屈折力ベクトルを互いへと連続的に移行する必要がないため、回折構造と屈折構造との組み合わせによって望ましくない非点収差の更なる領域がもたらされない。したがって、前述した屈折力の移行は、明確なプリズムジャンプ並びに望ましくないぼやけた領域及び歪みを完全に回避する又は減少させるために使用されてもよい。
また、回折構造は、一定の回折効率の少なくとも1つの領域を有してもよく、この領域では、回折構造の少なくとも1つの回折次数の回折効率が一定である。
回折構造は、好ましくは、異なる回折次数がそれぞれ最大(例えば100%)回折効率を有する一定の回折効率の少なくとも2つの領域を有する。可変回折効率の領域は、一定回折効率の2つの領域に隣接してもよい。異なる回折効率の2つの領域は、異なる屈折力を有してもよい。
したがって、眼科用レンズ(例えば、二焦点眼鏡レンズ又は三焦点眼鏡レンズ)は、異なる屈折力の少なくとも2つの領域を有してもよく、これらの領域ではそれぞれ、1番目又は0番目の回折次数がほぼ100%の回折効率を有する。異なる屈折力の2つの領域は、2つの回折次数の回折効率の連続的な移行がほぼ0%の値とほぼ100%の値との間で起こる可変回折効率の領域に隣接してもよい。0次の回折性屈折力部は、0次の回折効率がほぼ100%である一定回折効率の領域ではゼロである。
全体的により高い屈折力を有するとともに近くを見るのに適している領域は、一般に、眼科用レンズの下部に位置される。より低い等価球面度数を有する領域は、眼科用レンズの上部に位置され、また、遠距離で或いは中間の物体距離で見るために使用されてもよい。例えば特別な用途のためのレンズ(例えばパイロットレンズ)においては、異なる配置が同様に可能である。異なる屈折力の領域の配置とは無関係に、回折構造は、中間等価球面度数に対して(例えば、1番目の回折次数により)プラス又はマイナスに寄与してもよく、それにより、回折構造は、眼科用レンズの上部(例えば遠部分)及び下部(例えば近部分)の両方に位置されてもよい。
先の例において、n番目及びm番目の回折次数はそれぞれ、1番目及び0番目の回折次数である。しかしながら、それらの回折次数は、1番目及び0番目の回折次数とは異なる2つの任意の回折次数であってもよい。そのような眼科用レンズは、−前述したように−異なる屈折力を有する2つの領域を有してもよく、これらの領域では、正確に1つの次数の回折効率がほぼ100%に相当し、また、これらの領域は、回折効率の連続的な移行が存在する可変回折効率の領域に隣接する。
眼科用レンズの先の例では、眼科用レンズの2つの区域又は視点間で連続的な移行がもたらされ、その移行が与えられると、鮮明に画定されたプリズムジャンプも更なるぼやけた区域及び歪みも生み出されない。したがって、ぼやけた区域及び歪みを回避でき、又は、それらを従来のプログレッシブレンズと比べて減少させることができる。したがって、視覚の質に関して、本発明は、従来の二焦点レンズ、三焦点レンズ、及び、可変焦点レンズに対する利点を与える。
ぼけ及びプリズムジャンプの回避に加えて或いは代えて、プログレッシブレンズが与えられると、既に存在する望ましくない非点収差が少なくとも部分的に補償されてもよい。それにより、プログレッシブレンズの屈折値曲線は、レンズが主に遠距離で、近距離で、或いは、中間距離で物体を見るために使用されるべきかどうかに応じて任意であってもよい。
本発明の(第1の態様に依存しない)第2の態様によれば、これは、眼科用レンズが(特に連続する屈折値曲線に起因して)該レンズの屈折部によりもたらされる望ましくない外周非点収差を少なくとも部分的に補償するように設計される少なくとも1つの回折構造を有するという点において達成されてもよい。回折構造は、好ましくは、少なくとも1つの回折次数で全非点収差を生じる最大値が好ましくは2.5dpt、2.0dpt、1.5dpt、1dpt、0.5dpt、0.3dpt、又は、0.25dpt、特に好ましくは0.2dpt未満であるように、少なくとも1つの回折次数でレンズの屈折性屈折力部の望ましくない非点収差を少なくとも部分的に補償するべく設計される。
特に、回折構造は、レンズの純粋に屈折性の部分の非点収差を少なくとも部分的に補償する非点収差屈折力部を有する。回折性屈折力部及び屈折性屈折力部は、共に合わさって、その望ましくない非点収差が純粋に屈折性の眼科用レンズが与えられる場合よりも低い複合屈折力をもたらす。そのような回折構造の位相関数は、回転対称な位相関数である。一例として、回転対称な回折構造が楕円形の格子線を有してもよい。そのような回折構造は、非点収差を1つのポイントで局所的に完全に補償するための位置にある。しかしながら、複数のポイントで非点収差を補償することが有利であり、これは、非対称な回折格子を用いて達成されてもよい。
回折構造の周期性は、回折構造が一定の或いは不定の回折性屈折力を有するように選択されてもよい。一定の屈折力を有する回折構造は、製造時に利点を成す場合がある。しかしながら、屈折部の望ましくない非点収差が、不定の屈折力を用いてより良く補償されてもよい。これは、視点に応じて、望ましくない屈折非点収差の完全な或いは少なくとも部分的な補償のために異なる回折効果が必要な場合があるからである。それにより、回折性屈折力部の非点収差の軸位置及び/又は大きさが変えられてもよい。
以下、本発明の1つの態様に係る回折構造を用いた望ましくない外周非点収差の補償の一例について説明する。
回折構造又は回折格子は、例えば国際特許出願公開第2012/065738号明細書、欧州特許出願公開第2011/005782号明細書、及び、ドイツ特許出願公開第102010051号明細書に記載される位相関数などの位相関数を用いて表され或いは与えられてもよい。位相関数Ψ(x,y)は、格子を通過する光を表す波面に対する回折格子の影響を表す。二次の結像誤差に対する回折格子の寄与度は、国際特許出願公開第2012/065738号明細書中の表2に示される位相関数Ψ(x,y)の二次導関数によって与えられる。傾く波面の屈折力ベクトルのための対応する方程式が以下のように示される。
望ましくない非点収差を少なくとも部分的に補償する回折格子の決定は、例えば以下のように行われてもよい。
が可能な限り小さくなければならない。
S,Z,Aは、最も簡単なケースでは、直接的には、眼鏡着用者の処方データ、すなわち、球面度数、円柱度数、及び、軸度数である。一般的なケースにおいて、S,Z,Aは、処方データに対応する頂点球で波面をもたらすために、そのy軸が局所的な屈折面内に位置する考慮されるべき区域の正接座標系内で局所的な波面が有さなければならない値に対応する。
ステップ2
その後、二次位相関数が積分により結果的に生じる。それぞれの(2回連続的に微分可能な)関数に関して有効である以下の恒等式に起因して、
が得られてもよい。
これは、以下の関数
の形式で書かれてもよく、この関数の等値線は楕円であり、その中間点に基準点が位置する。
ステップ3
設定されてもよい。
ステップ4
ステップ5
ステップ6
ステップ7
複数の基準点がレンズに存在すれば、異なる格子の重なり合いを避けることが有利である。前述の方法は、特に、領域のサイズを他の要件に適合させるための柔軟性を与える。好ましい例において、外周非点収差の補償は、累進域の左又は右のそれぞれの補正領域によって行われる。
好ましい例によれば、望ましくない非点収差の補償は、互いに直交して位置されて0番目の回折次数とは異なる2つの回折次数を用いて行われてもよい。原理的に、純粋に屈折性の効果により生み出された眼科用レンズを通過する波面の最強及び最弱の曲率の主要部分は、互いに略直交する。したがって、互いに直交して位置される2つの回折次数を用いた望ましくない非点収差のそのような補償は、2つの異なる(例えば、遠くを見るため及び近くを見るための)物体距離に関する非点収差を補償できるようにする。
特に、回折次数のうちの1つ(例えば(1,0))によって回折効果がもたらされるという点において物体距離における非点収差を完全に或いは部分的に補償することができ、その回折効果は、より弱く湾曲された主要部分における波面の曲率を、より強く湾曲された主要部分における波面の曲率に適合させ、それにより、(例えば)近くを鮮明に見ることができる。同じ視点で、他の回折次数(例えば、次数(0,1))の回折効果は、強く湾曲された主要部分における曲率が弱く湾曲された主要部分における曲率に適合されるという効果を有し、それにより、異なる物体距離でも(例えば遠い物体においても)同様に鮮明に見ることができる。
先の説明は、遠部分及び近部分において球面効果を全体的に有する眼科用レンズに関する。また、曲率の対応する適合が、遠見及び近見のための非点収差処方を有する眼科用レンズに関して行われてもよく、この場合、非点収差処方は、適用できれば、非点収差の軸及び/又は大きさが異なってもよい。
望ましくない屈折力非点収差が2つの物体距離において同時に補償されるべき区域において、望ましくない非点収差の補償のために眼科用レンズ上又は眼科用レンズ内に存在する回折構造は、(場合により歪められる)菱形、正方形、又は、長方形の形状にほぼ似ている段差を伴うピッチ外形又は隆起外形を有する。したがって、ピッチの不連続は、場合により歪められる2次元格子の形状を有する。そのような回折構造は、従来の眼科用レンズで使用される回折要素とはかなり異なり、前記回折要素のピッチは、通常は、長尺なストリップ状の段差を有するとともに、不連続間に環状領域を有する。
先の例において、回折構造は、所定の閾値(例えば、0.5dpt、0.75dpt、1dpt等)よりも大きい外周の望ましくない非点収差を屈折性屈折力が有するレンズの視点又は領域に回折構造の少なくとも一部がかなり及ぶように配置されてもよい。前述したように、回折構造を用いて少なくとも1つの波長における望ましくない非点収差を、好ましくは最大で2.5dpt、2.0dpt、1.5dpt、1dpt、0.5dpt、0.3dpt、0.25dpt、又は、0.2dptの値まで減らすことができる。更なるぼやけた領域を回避するために、前述したように、回折構造は、その縁部へ向けて、回折非点収差屈折力をもたらす回折次数の回折効率の連続的な移行を有してもよい。
回折構造は、眼科用レンズの全面にわたって延在してもよい。これは、眼科用レンズが付加的な回折性屈折力部に起因して更に薄い構造を有することができるという利点を有する。
或いは、回折構造は、レンズの1又は複数の部分のみにわたって延在してもよい。したがって、回折構造は、主に見るために使用されるレンズの区域の外側、又は、良く見える領域の外側に配置されてもよい。良く見える領域によって理解されるものは、レンズの望ましくない非点収差又は屈折誤差、非点収差誤差が所定の(例えば、0.5又は0.75又は1.0dptの)閾値を下回るレンズの全ての領域である。したがって、回折構造の不都合−例えば、眼科用レンズの主に使用される領域内での光散乱又は二次的な像を生じる−が避けられ得る。しかしながら、例えば回折構造が色収差を補正するように設計される場合には、良く見える領域の少なくとも一部が回折構造を含むことが想定し得る。
少なくとも1つの回折構造が眼科用レンズの一部にわたってのみ延在する場合には、プリズム及び/又は屈折力の不連続が純粋に屈折性の部分と回折構造との間の境界で或いは縁部で生じる場合がある。1つの例において、回折構造及び/又は屈折部は、屈折部と回折構造との間の境界の少なくとも1つの部分で眼科用レンズのプリズム全体が不連続を有さないように設計されてもよい。
本発明の第3の態様によれば、少なくとも1つの回折構造がその一部にわたって延在する眼科用レンズが提供され、この場合、レンズのプリズム全体又はプリズム効果は、純粋に屈折性の屈折力を有するレンズの領域と回折性屈折力及び場合により屈折性屈折力を有する領域との間の境界の少なくとも一部にプリズムジャンプを示さない或いは不連続を示さない。純粋に屈折性の部分と回折部との間の境界に対するレンズのプリズム全体のそのような適合は、好ましくは、これらの区域間で凝視を一掃する際に像ジャンプを回避するために行われる。レンズのプリズム全体の適合は、好ましくは、2つの区域の境界に沿って水平プリズム及び垂直プリズムの両方の連続的な曲線を得ることを目的として行われる。それにより、適合は、回折効率を用いて適切に重み付けられて複数の回折次数にわたって平均化されるプリズム効果に関して或いは回折次数に関して行われ得る。
プリズム効果の適合は、回折効率及び/又は屈折率の曲線とは無関係に行われてもよい。プリズム効果の適合は、回折構造が少なくともその縁部の一部で100%近くの回折効率を有するときに特に有利となる場合があり、この場合、前記縁部は、純粋に屈折性の屈折力を有する区域に隣接する。プリズム効果の適合は、屈折部を有する回折構造の縁部又は境界の一部分のみで行われてもよい。回折構造の縁部の他の部分で、プリズム効果の適合は、例えば望ましくない非点収差領域を回避するために意図的に放棄されてもよい。
例えば、プリズム効果の適合は、屈折構造のプリズム効果が縁部へ向けて減少する或いは消失するという点において行われてもよい。他の可能性は、眼科用レンズの屈折構造に起因してプリズム効果の不連続を可能にすることにある。この不連続は、本質的に、プリズム全体の連続曲線が結果的に生じるように、回折構造の縁部の一部で回折構造により引き起こされるプリズム効果の不連続を補償してもよい。プリズム効果の不連続の補償は、眼科用レンズの前面及び/又は背面で行われてもよい。同様に、回折構造が眼鏡自体の材料中に位置されることも想定し得る。
本発明の第4の態様によれば、少なくとも1つの回折構造を有する眼科用レンズが提供され、この場合、回折構造は、色収差を減らすように設計される。特に、回折構造は、−レンズ上の視点の少なくとも1つの区域において−眼科用レンズの回折構造の色収差及び屈折構造の色収差が互いを少なくとも部分的に補償するように設計される。
屈折構造と回折構造との組み合わせによっては、それぞれの構造の非点収差屈折力の補償と共に色収差の完全な補償を一般に達成できないため、最適な結果を得るべく両方の目標が互いに対して重み付けられることが好ましい。
本発明の更なる態様によれば、少なくとも1つの回折構造を有する眼科用レンズを最適化するための方法が提案される。方法は、
最適化されるべき眼科用レンズを指定するステップと、
レンズの少なくとも1つの評価ポイントで眼科用レンズの少なくとも1つの光学特性の値の公称値からのずれが最小にされるように用意されたレンズを最適化するステップと、
を含む。
少なくとも1つの回折構造を有する眼科用レンズを製造するための方法も同様に提案され、該方法は、本発明の先の態様に係る眼科用レンズを最適化するための方法を含む。
最適化されるべきレンズの仕様は、レンズの屈折面の仕様、並びに、回折構造及び最適化されるべきレンズ上における回折構造の配置を含んでもよい。少なくとも1つの屈折面及び/又は少なくとも1つの回折構造は、好ましくは、順応性のある数学的表示(例えば、スプライン表示又は多項式表示)を用いて表される。
また、最適化方法は、物体距離モデル及び/又は最適化されるべきレンズの使用位置のためのモデルの仕様又は回折効果を含んでもよい。物体距離モデルは、複数の物体両眼転導又は複数の物体距離面が1つの視点と関連付けられ得る関係であってもよい。レンズは、該レンズの所定の使用位置において所定の物体距離モデルの考慮の下で最適化されてもよく、この場合、少なくとも1つの物体距離での鮮明な結像が、少なくとも1つの視点で、好ましくは複数の視点で可能である。眼科用レンズの使用位置は、顔形角及び/又は角膜頂距離及び/又は前傾及び/又は瞳孔間距離及び/又は他のデータによって特徴付けられてもよい。
少なくとも1つの回折構造を有する眼科用レンズの最適化又は製造のための方法は、達成されるべき眼科用レンズの球面効果及び/又は非点収差効果及び/又はプリズム効果に関するデータの検出、物体距離モデルに関するデータの検出、及び、−眼鏡の場合には−眼鏡の個々の使用位置或いは平均使用位置に関するデータの検出を含んでもよい。達成されるべき効果に関するデータは、眼鏡着用者の処方データ又は最適化されるべき眼科用レンズのための処方データであってもよい。眼鏡の個々の使用位置又は平均使用位置に関するデータは、眼鏡の使用位置を特徴付ける顔形角及び/又は角膜頂距離及び/又は前傾及び/又は瞳孔間距離及び/又は他のデータを含んでもよい。
最適化は、回折構造の少なくとも1つの可変パラメータの変更及び/又は屈折面の少なくとも1つの可変表面パラメータの変更を含んでもよい。特に、最適化は、少なくとも1つ、好ましくは2つの回折次数の回折効率及び/又は屈折力(例えば、球面屈折力、非点収差屈折力、及び/又は、プリズム屈折力)の変更又は適合を含んでもよい。少なくとも1つの回折次数の変更又は適合は、異なる屈折力の2つの領域間の屈折力の連続的な移行が行われるように、良く見える領域が増大されるように、レンズの少なくとも1つの領域における望ましくない非点収差が最小にされるように、及び/又は、色収差が最小にされるように、前述したごとく行われてもよい。これに加えて或いは代えて、最適化は、純粋に屈折性の部分と回折部との間の境界でのレンズのプリズム全体の適合を含んでもよい。そのような適合は、好ましくは、水平プリズム及び垂直プリズムの両方が境界の少なくとも一部分に沿って連続する曲線を有するようにもたらされる。
最適化は、眼鏡の少なくとも1つの屈折面が所定の回折構造に関して最適化されるように行われてもよい。回折構造の最適化は、同様に、固定された所定の屈折面が与えられると可能である。眼鏡の回折構造及び少なくとも1つの屈折表面の両方が最適化されてもよく、この場合、表面の最適化が同時に或いは交互に行われてもよい。
最適化されるべきレンズの少なくとも1つの光学特性は、色収差及び/又は少なくとも1つの単色結像誤差、例えば屈折誤差、非点収差偏差、及び/又は、レンズのプリズムであってもよい。前述したように、少なくとも1つの光学特性の公称値からのずれの最小化は、回折構造の位相関数の変化によって、或いは、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの回折次数における回折構造の(局所的な)屈折力及び/又は(局所的な)回折効率の変化によって行われてもよい。少なくとも1つの光学的効果は、好ましくは、複数の評価位置で少なくとも1つの回折次数に関して評価されて、対応する公称値と比較され、この場合、複数の評価位置は、少なくとも1000個、好ましくは少なくとも2000個、より好ましくは少なくとも5000個、特に好ましくは少なくとも10000個の評価位置を含む。原理的には、評価位置の数に制限はない。したがって、評価位置の数が20000を超えてもよい。最適化は、好ましくは、望ましくない非点収差及び/又は色収差が最小化されるように行われる。
また、最適化では、回折構造の位相関数が製造を容易にする付加的な特性(その光学的特性以外)を有するべきことも有利な場合がある。例えば、これは、回折構造の位相関数が(例えばスプラインを用いて)適切に数学的に表されるとともに、適切な二次的条件又は公称値(例えば、位相関数の任意の導関数における二次的条件又は公称値)が最適化において予め決定されるという点において達成されてもよい。簡単な製造能力を確保するための他の可能性は、位相関数として適切な解析関数を可能にすることであり、この適切な解析関数は、仕上げられた回折構造に比較的簡単に対応する。
眼科用レンズの最適化は、好ましくは、レンズの使用位置で行われ、この場合、眼科用レンズの特性は、使用位置で考慮されるとともに、少なくとも1つの回折構造の存在が与えられる。使用位置での少なくとも1つの回折格子を有するレンズの特性の計算は、例えば国際特許出願公開第2012/065738号明細書に詳しく記載される。
最適化のための方法は繰り返し行われることが好ましく、この場合、眼科用レンズの変更の全てのステップの後、変更された眼科用レンズの少なくとも1つの光学特性の評価、少なくとも1つの光学特性に応じた変更された眼科用レンズの査定、及び、場合により、眼科用レンズの更なる変更が、少なくとも1つの評価ポイントで行われる。繰り返し方法は、所定のステップの後に終了されてもよい。方法は、好ましくは、光学素子の査定が肯定的であるとき、すなわち、特定の品質基準が満たされるときに終了される。
眼科用レンズの最適化又は変更は、好ましくは、少なくとも1つの光学特性に依存する目的関数の計算を含む。眼科用レンズが眼鏡レンズである場合には、目的関数が単眼目的関数又は両眼目的関数であってもよい。
例えば、眼科用レンズの最適化は、例えば眼科用レンズの色収差及び非点収差の最適な補正を達成するために、多色目的関数の最小化を含んでもよい。国際特許出願公開第2012/065737A1号明細書は、以下の適切な多色目的関数を開示する。
本発明の1つの態様によれば、回折効率>0%を有する複数の回折次数が1つの視覚位置に或いは1つの評価位置に存在してもよい。本発明の1つの態様によれば、目的関数の計算が与えられると、ゼロとは異なる回折効率を有する全ての回折次数が含まれ、この場合、局所的な公称値及び重みは同様に回折次数に依存する。個々の回折次数における等価球面度数の屈折誤差及び非点収差偏差の大きさも計算される。例えば、複数の回折次数が組み入れられる多色関数は以下の関数である。
同一の視覚ポイント又は評価位置並びに同一の波長が与えられると、様々な回折次数の重み付けは、それら自体、回折効率の単調増加関数として選択される。
眼科用レンズの最適化又は製造のための方法は、最適化された眼科用レンズの或いは場合により複数のステップで変更された眼科用レンズの処理データの提供を含んでもよい。処理データは、屈折面の表面データ、及び、回折格子のデータ(例えば、周期、ブレーズ角、格子線等)を含んでもよい。処理データは、同様に、眼科用レンズの厚さ及び/又は眼科用レンズの回折率に関するデータを含んでもよい。
眼科用レンズの製造のための方法は、提供された処理データにしたがった眼科用レンズの製造を含んでもよい。回折格子を有するレンズの製造に適した方法は、従来技術から知られている。
また、少なくとも1つの回折構造を有する眼科用レンズの最適化又は製造のための装置が提供され、この場合、装置は、
最適化されるべき眼科用レンズを指定するための手段と、
眼科用レンズの最適化にとって好ましい典型的な方法にしたがって眼科用レンズの最適化を実施するようになっている最適化手段と、
を備える。
特に、最適化手段は、少なくとも1つの評価位置で眼科用レンズの少なくとも1つの光学特性の値の公称値からのずれが最小にされるように最適化されるべきレンズを最適化するようになっている。最適化手段は、適切に構成された或いはプログラミングされたコンピュータ、専用のハードウェア及び/又はコンピュータネットワーク又はコンピュータシステム等を用いて実施されてもよい。
また、光学素子の製造のための装置は、最適化された眼科用レンズの処理データを記憶するための記憶手段を備えてもよい。また、装置は、与えられた処理データにしたがって最適化された眼科用レンズを製造するようになっている処理手段を備えてもよい。
また、装置は、達成されるべき眼科用レンズの効果に関するデータ及び/又は眼科用レンズの(例えば眼鏡レンズの)個々の使用位置又は平均使用位置に関するデータを検出するようになっている検出手段を備えてもよい。
本発明の更なる目的、特徴、及び、利点は、図面に関連する典型的な実施形態の以下の説明から明らかになる。
回折構造を有する典型的な眼科用レンズの異なる領域の配置が示される。 可変回折効率の領域内の異なる回折次数の回折効率の曲線の一例が示される。 回折構造を伴う眼科用レンズの一例を通して見る際のビーム曲線の一例が示される。 回折構造を伴う眼科用レンズの例が示される。 回折構造を有する眼科用レンズ及び外周非点収差の減少が示される。 3つの回折次数の回折効率が変えられる、回折構造を有する眼科用レンズの一例が示される。 3つの回折次数の回折効率が変えられる、回折構造を有する眼科用レンズの一例が示される。 図6A及び図6Bに示されるレンズの回折構造の異なる回折次数の回折効率の曲線の例が示される。 適合されたプリズム効果を有する外科用レンズの例が示される。 遠くを見るのに望ましくない非点収差が回折構造によって少なくとも部分的に補償された、回折構造を有する外科用レンズを通して見る際のビーム曲線、及び、レンズの一部を通して凝視する際の外周非点収差の減少の例が示される。 近くを見るのに望ましくない非点収差が回折構造によって少なくとも部分的に補償された、回折構造を有する外科用レンズを通して見る際のビーム曲線、及び、レンズの一部を通して凝視する際の外周非点収差の減少の例が示される。 遠くを見る際に非点収差を少なくとも部分的に補償する格子の一例が示される。 近くを見る際に非点収差を少なくとも部分的に補償する格子の一例が示される。 一貫した変化する回折効率の区域を示した回折構造の一例が示される。 本発明に係るレンズの純粋に屈折性の後面の屈折力分布が示される。 本発明に係るレンズの純粋に屈折性の後面の非点収差分布が示される。
図中、同一の参照符号は、同じ又は類似の要素のために使用される。使用される専門用語に関しては、特に国際特許出願公開第2012/065737A1号明細書及び国際特許出願公開第2012/065738A1号明細書も参照され、それらの対応する記述も本発明の一体の開示要素を表す。
図1は、回折構造を有するレンズの一例の異なる領域の配置を概略的に示す。レンズ(例えば、二焦点眼鏡レンズ、三焦点眼鏡レンズ、又は、プログレッシブ眼鏡レンズ、或いは、多焦点コンタクトレンズ)は、異なる屈折力の2つの領域又は区域10,14を有する。第1の領域10は、レンズの屈折力が第1の値(例えば、遠くを見るための処方により必要とされる値)を有する第1の基準点16(例えば、距離基準点)を有する。第2の領域14は、レンズの屈折力が第2の値(例えば、近くを見るための処方により必要とされる値)を有する第2の基準点18を有する。中間領域12がレンズの第1及び第2の領域間に配置される。
線20が2つの基準点16,18又は2つの領域10,14を接続する。線20は、第1の基準点から第2の基準点へ凝視を下げる際の外科用レンズの前面又は後面との視線の貫通点(すなわち、視点)を接続する線であってもよい。同様に、線20は、外科用レンズの主視線[視軸]と一致してもよい。
また、レンズは回折構造も備える。図1に示される例において、回折構造は、第1の領域の少なくとも一部、第2の領域の少なくとも一部、及び、中間領域12の少なくとも一部に及ぶ。しかしながら、回折構造が領域12の一部のみに及び、また、適用可能であれば、領域14の一部に及ぶことが想定し得る。
第1の領域10では、回折構造の第1のn番目の回折次数がレンズの屈折力に寄与する。n番目の回折次数の回折効率eta_nは、領域10内で高い値、例えばほぼ100%の値を有する。第2の領域14では、n番目の回折次数の回折効率eta_nが低い値、例えばほぼ0%の値を有する。
回折効率の変化は中間領域12で起こる。特に、中間領域12では、線20に沿って視点が連続的に変化すると、n番目の回折次数の回折効率eta_nが低い値ヘと(例えば、ほぼ0%の値へと)連続的に移行する。
回折構造の第2のm番目の回折次数は、逆の回折効率の曲線を有する。すなわち、m番目の回折次数の回折効率は、第2の領域14内で高い値(例えば、ほぼ100%)を有するとともに、第1の領域10内で低い値(例えば、ほぼ0%)を有する。m番目の回折次数「m」の回折効率は、n番目の次数の回折効率eta_nが減少するのと同じ程度まで増大する。第2のm番目の次数は、随意的に、屈折力ベクトルに寄与してもよい。m番目の次数が屈折力ベクトルに寄与しない場合、n番目の次数の回折効率eta_nの0%への連続的な移行及びeta_mの100%への連続的な移行は、回折構造の連続的な消失に相当する。
前述したように、n番目の回折次数が1番目の回折次数であってもよく、また、m番目の回折次数が0番目の回折次数であってもよい。この場合、0番目の回折次数は、レンズの屈折力に寄与しない。また、n番目の回折次数(図2の線L1参照)及びm番目の回折次数(図2の線L2参照)がそれぞれ二次元格子の(1,0)及び(0,1)回折次数であることも想定し得る。
図2は、線20に沿う第1のn番目の回折次数(線L1)及び第2のm番目の回折次数(線L2)の回折効率の曲線の一例を示す。
可変回折効率に起因して、回折構造は、眼科用レンズを改良するために使用されてもよい更なる自由度を与える。特に、第1の屈折力ベクトル(M_1,J0_1,J45_1)を有する第1の基準点から異なる屈折力ベクトル(M_2,J0_2,J45_2)を有する他の基準点への新たなタイプの連続的な屈折力の移行を実施することができる。この移行では、望ましくないぼやけた領域又は歪みが生じない。
図3は、回折構造を伴う眼科用レンズの一例を通して見る際のビーム曲線の一例を示す。特に、図3A及び図3Bは、異なる構造を有する眼科用レンズ30内に同じ視点を伴う複数の物体距離区域(ここでは、例えば、2つの物体距離区域O1及びO2)の関連性の一例を示す。ビーム曲線は主要な部分に関して描かれており、この部分において、回折構造の描かれた回折次数における全体の屈折力は、それぞれの回折次数の全体の屈折力の平均等価球面度数に対応する。
図3Aに示されるように、物体距離区域O1上のポイントP1は、1番目の回折次数(例えば、n番目の回折次数)の回折により、眼32の中心窩内の最小錯乱円上へマッピングされる(ビーム経路S1)。同時に、物体距離区域O2上のポイントP2は、同様に、異なる2番目の回折次数(例えば、m番目の回折次数)の回折により、眼32の中心窩内の最小錯乱円上へマッピングされる(ビーム経路S2)。マッピングされたポイントP1,P2の最小錯乱円は、大部分が互いに重なり合う。したがって、1番目の回折次数による第1のポイントP1の鮮明な結像と2番目の回折次数による第2のポイントP1の鮮明な結像とが同時にもたらされる。
図3Bが示すように、1番目の回折次数による眼32の中心窩内の最小錯乱円上への物体距離区域O1の物点P1の結像(ビーム経路S1)に加え、同時に、この物点の眼32の網膜上へのぼやけたコントラストが低い結像が2番目の回折次数によって起こる(ビーム経路S3)。図3Cに示されるように、2番目の回折次数による眼32の中心窩内の最小錯乱円上への物体距離区域O2の物点P2の結像(ビーム経路S2)に加え、同時に、眼32の網膜上へのぼやけたコントラストが低い結像が1番目の回折次数によって起こる(ビーム経路S4)。
図3から明らかなように、所定の視点又は所定の視覚位置が与えられる複数の物体距離で少なくとも1つの鮮明な像がもたらされ得る。ゼロとはかなり異なる回折効率を有する全ての回折次数が一緒に考慮されれば、結果として、物体距離区域は、−所定の従来の屈折レンズのように−関数ではなく、むしろ相関である。これは、所定の視点が与えられる複数の物体距離で少なくとも1つの鮮明な像がもたらされ得るからである。
強力な遠近調節が与えられるそのような眼科用レンズの着用者により知覚されて網膜上に鮮明に結像される像は、それがn番目の回折次数により回折される光により形成されるが、回折効率eta_nの減少に伴って強度を失う。同時に、ぼやけた像の強度が増大し、この場合、ぼけは、二次の収差(ピンぼけ及び/又は非点収差)及び更に高次の収差(コマ収差、トレフォイル収差、球面収差等)に起因する。したがって、鮮明に再現される像の定常的なコントラスト低下は、結果的に、第1及び第2の基準点間で或いは異なる屈折力の第1及び第2の領域間で強力な遠近調節及び凝視偏向が与えられる視覚印象として生じる。しかしながら、コントラストの低下は、(例えば)望ましくない非点収差により引き起こされるぼけよりもかなり破壊が少ないように知覚され、それにより、眼科用レンズがその着用者により良好であると知覚される結像を行う領域は比較的大きい。
異なる屈折力の2つのポイント間又は領域間で回折性屈折力部の定常的な変換がなされると、構成要素ごとにそれぞれの領域の屈折力ベクトルを互いへと着実に変換する必要がないため、先の例に係る回折構造と屈折構造との組み合わせによって望ましくない非点収差の更なる領域がもたらされない。これにより、ぼやけた領域、歪み、又は、明確なプリズムジャンプを避けるために眼科用レンズの設計において使用されてもよい、異なる屈折力ベクトルを有する2つの領域間の屈折力の新規な移行を実現できる。
以下の例では、異なる屈折力の2つの領域間の屈折力の前述の新規な移行の異なる適用について説明する。特に、提案される移行は、明確なプリズムジャンプ及び/又は望ましくないぼやけた領域及び歪みを完全に回避する或いは(かなり)減少させるために使用されてもよい。
図4は、回折構造を有する眼科用レンズの例を示し、この場合、図4Aは、回折構造がレンズの上部に配置される眼科用レンズを示し、また、図4Bは、回折構造がレンズの下部に配置される眼科用レンズを示す。
図4A及び図4Bの左にはそれぞれ、異なる屈折力の2つの領域10,14を有する老眼補正のための眼科用レンズ42が示される。第1の領域は、純粋に屈折性の屈折力を有する。第2の領域は、屈折性屈折力及び回折性屈折力の両方を有する。図4A及び図4Bの右側には、異なる屈折力の2つの領域10,14が更なる領域12に隣接する眼科用レンズ40が示され、更なる領域12では、2つの領域10,14の屈折力間で移行が生じる。
図4A及び図4Bに示される眼科用レンズでは、回折構造が可変回折効率を伴う2つの回折次数「n」及び「m」を有する。n番目及びm番目の回折次数はそれぞれ、1番目及び0番目の回折次数であってもよい。これにより、0番目の回折次数は、レンズの屈折力ベクトルに寄与しない。1番目の回折次数は、視覚位置に依存しない一定の屈折力寄与度を有する。
1番目又は0番目の回折次数がそれぞれ本質的に100%の回折効率を有する異なる屈折力の2つの領域10,12はいずれも、2つの回折次数の回折効率の連続的な移行が本質的に0%と100%との間で起こる領域14に隣接する。0番目の次数の回折効率がほぼ100%に相当する領域では、回折性屈折力部が(0,0,0)である。
これらの例における物体距離区域は視点の関数ではなく、むしろ相関である。これは、1つの視点が与えられる2つの距離で物体を鮮明に結像できるからである(図3参照)。
全体的により高い屈折力を有するとともに近くを見るのに適している領域は、一般に、眼科用レンズの下部に位置される。より低い等価球面度数を有する領域は、眼科用レンズの上部に位置されて、遠くを見るために使用されてもよい。2つの領域の異なる配置が同様に想定し得る。配置とは無関係に、回折構造は、平均等価球面度数に対してプラス又はマイナスの寄与度を与えてもよく、それにより、−異なる実施形態では−回折構造が眼科用レンズの上部(図4A参照)及び眼科用レンズの下部(図4B参照)の両方に位置されてもよい。
他の例では、n番目及びm番目の回折次数がそれぞれ0とは異なる回折次数であってもよい。図4に示される眼科用レンズと同様に、そのような眼科用レンズは、異なる屈折力ベクトルを伴う2つの領域を有し、これらの領域では、正確に1つの次数の回折効率がそれぞれほぼ100%であり、また、2つの領域は、2つの回折次数の回折効率の連続的な移行が行われる領域に隣接する。回折構造は、この場合、眼科用レンズの全面にわたって延在してもよい。眼科用レンズは、回折構造の付加的な回折性屈折力部に起因して更に薄くされてもよい。
先の例において、レンズの屈折性屈折力は、3つの全ての領域内で一定であってもよい。レンズの屈折力の必要な増大は、専ら回折構造のみに起因して行われてもよい。
しかしながら、眼科用レンズにおいては、同様に、連続的な屈折性屈折力曲線を実現でき、したがって、物体距離の連続する範囲内で鮮明な結像を可能にし得る。回折構造に起因して、外周で生じる望ましくないぼやけた領域の強度が同時に低下されてもよい。近くを見るように設計される眼科用レンズの領域の屈折性屈折力部は、純粋に屈折性のレンズが与えられるよりも低くなるように設計されてもよい。球面効果の欠落が、近くを見るように設計された領域内に位置される回折構造によってもたらされてもよい。付加的な効果を生み出す次数の回折効率は、回折構造の縁部へ向かって、小さな値まで、好ましくは0%の値まで低下する場合があり、それにより、更なる非点収差がレンズの外周に生じる。2つの基準点間の屈折性屈折力の球面部の回折は、従来の純粋に屈折性のレンズが与えられるよりも小さいため、外周の望ましくない非点収差の強度も同様に、同じ屈折力を有する純粋に屈折性のレンズが与えられるよりも小さい。
ぼけ及びプリズムジャンプの回避以外に、異なる屈折力の領域間での先に描かれた移行は、同様に、既に存在する望ましくない非点収差を少なくとも部分的に補償するために使用されてもよい。そのような実施形態は、特に連続的な屈折性屈折力曲線の場合に有利である。外周非点収差は、屈折性屈折力の連続曲線に起因して必然的に生じ、この外周非点収差は、回折構造によって減少され或いは少なくとも部分的に補償され得る。同時に、回折構造の不都合−例えば、眼科用レンズの主に使用される領域内での光散乱又は二次的な像の発生−が避けられ得る。
望ましくない非点収差を少なくとも部分的に補償するために、回折構造の少なくとも一部は、屈折性屈折力が比較的高い外周非点収差を示す視覚位置にそれが本質的に及ぶように眼科用レンズ上に配置される。同時に、回折構造の位置は、好ましくは、主に見るために使用されるレンズの区域内へとそれが及ばないように、また、二次的な像又は光散乱に起因する視覚的印象の望ましくない悪化もそれがもたらさないように選択される。例えば、回折構造は、望ましくない非点収差が0.5;0.75;1.0dptよりも大きい或いは異なる所定の閾値のような眼科用レンズ(例えば、プログレッシブレンズ)の領域内に配置されてもよい。
回折構造は、屈折構造の望ましくない非点収差を少なくとも部分的に補償する非点収差屈折力部を有する。回折性屈折力部及び屈折性屈折力部は、共に合わさって、その望ましくない非点収差が純粋に屈折性の眼科用レンズが与えられる場合よりも低い複合屈折力をもたらす。そのような回折構造の位相関数は、回転対称な位相関数である。
回折構造の周期性は、それが一定の或いは不定の回折性屈折力を有するように選択されてもよい。一定の屈折力を有する回折構造は、通常は、生み出すことがより容易であるが、望ましくない非点収差の補正において少ない自由度を与える。不定の屈折力を有する回折構造は、屈折構造の非点収差のより良い補償を可能にする。これは、−視覚位置に応じて−屈折非点収差の完全な或いは少なくとも部分的な補償のために異なる回折効果が必要な場合があるからである。それにより、回折性屈折力部の非点収差の軸位置及び/又は大きさが変えられてもよい。
更なるぼやけた領域を回避するために、回折構造は、その縁部へ向けて、例えば前述したような回折非点収差屈折力をもたらす回折次数の回折効率の連続的な移行を有してもよい。
1つの例によれば、非点収差の補償は、互いに直交して位置されて0番目の回折次数とは異なる2つの回折次数を用いて行われてもよい。純粋に屈折性の効果により生み出された眼科用レンズを通過する波面の最強又は最弱の曲率の主要部分は互いに略直交するため、それにより、互いに直交する2つの回折次数を用いた補償を行って、−同じ視覚位置で−2つの異なる(例えば、遠くを見るため及び近くを見るための)物体距離に関して非点収差を補償することができる。
したがって、(例えば、近くを見るための)物体距離における非点収差は、一方又は両方の回折次数によりもたらされる回折性屈折力によって全体的に或いは部分的に起こり得る。この回折次数(例えば、次数(1,0))は、例えばこの物体距離で鮮明に見えることができるように弱く湾曲された主要部分における波面の曲率を強く湾曲された主要部分における波面の曲率に一致させる回折効果又は屈折力をもたらし得る。同じ視点で、他の回折次数(例えば、次数(0,1))の回折効果により、強く湾曲された主要部分における曲率が弱く湾曲された主要部分における曲率に一致され、それにより、異なる物体距離でも、例えば(図3及び図8に示されるような)遠い物体においても同様に鮮明に見ることができる。
眼科用レンズを通過する波面の主要部分の前述した補正は、異なる屈折力の2つの領域に(例えば、遠部分及び近部分に)球面効果を全体的に有する眼科用レンズを参照する。同様に、曲率の対応する適合が、遠見及び近見のための非点収差処方を有する眼科用レンズに関してもたらされてもよく、この場合、非点収差処方は、適用できれば、非点収差の軸及び/又は大きさが異なってもよい。
2つの物体距離に関して望ましくない屈折非点収差が同時に補償される領域において、本発明に係る眼科用レンズ上又は眼科用レンズ内に存在する回折構造は、レンズで使用される従来の回折要素の位相関数とはかなり異なる位相関数を示す。特に、位相関数は、菱形、正方形、又は、長方形の形状とほぼ同様であって場合により変形されるレベルを有する。したがって、位相関数のこの不連続は、(場合により歪められる)2次元格子の形状を有する。そのような回折構造は、眼科用レンズで従来から使用されてその位相関数が通常は長尺な帯状の段を成すとともに不連続間に環状領域を有する回折要素とはかなり異なる。
図5は、レンズの望ましくない非点収差を補償するように設計される回折構造を有する眼科用レンズ(例えばプログレッシブ眼鏡レンズ)の例を示し、この場合、図5Aは、遠くを見るために設計されたレンズを示し、図5Bは、近くを見るために設計されたレンズを示し、及び、図5Cは、中間距離で見るために設計された眼科用レンズを示す。図5の左の列はそれぞれ、眼科用レンズの屈折性屈折力の領域の配置の一例を示し、真ん中の列は、回折構造の配置の一例を示し、右の列は、回折次数のうちの1つで且つ少なくとも1つの物体距離で鮮明に見ることができる眼科用レンズの区域の描写を示す。
図5Aに示される眼科用レンズ50は、遠くを見るために設計されるレンズである。このために設けられるレンズの遠部分は、非点収差が本質的に無い特に大きな領域51を有する。この本質的に非点収差が無い領域51では、眼科用レンズの屈折性屈折力のみを用いて遠い物体を鮮明に見ることができる。領域51は、回折構造が無いことが好ましい。領域51の左右にある領域52では、望ましくない外周非点収差に起因してぼけが生じる。生じる望ましくない外周非点収差は、一例として等非点収差線53によって表される。例えば、0.5dpt(又は0.75dpt又は1.0dpt)等非点収差線は、良好な視覚領域51を望ましくない外周非点収差を伴う領域52から分離してもよい。
眼科用レンズ50上又は眼科用レンズ50内の2つの回折構造の配置の一例が図5Aの真ん中に描かれる。この例において、2つの回折構造はそれぞれ、領域54,55に位置され、主として、主に近くを見るために設計されるレンズの下側領域に位置される。領域54における回折効率はほぼ一定であり、異なる屈折力を有するポイント間の2つの回折次数の回折効率の曲線が領域55にのみ生じる。回折構造は、−前述したように−屈折性屈折力部の望ましくない外周非点収差を少なくとも部分的に補償するように設計される。近くを見るために外周非点収差が補償された視点では、低いコントラストをもって近い物体を鮮明に見ることができ、遠くの物体はぼやけるように見える(例えば、図8参照)。
回折次数のうちの少なくとも1つで且つ少なくとも1つの物体距離で鮮明に見ることができる眼科用レンズ50における領域が図5Aの右の例図に概略的に示される。概ね非点収差が無い遠見(領域56)、近見(領域58)、及び、中間距離での視見(領域57)はそれぞれ、領域56,57,58において可能である。領域59は、外周非点収差が所定の閾値よりも大きい、鮮明度が不十分な結像を伴う領域を表す。
主に近くを見るために設計された眼科用レンズが与えられると、屈折性屈折力曲線は、近くを見るために設けられる近部分が特に大きい本質的に非点収差が無い領域51を有するように逆に選択されてもよい(図5Bの左参照)。レンズの遠部分に配置される2つの回折構造に起因して(図5Bの真ん中参照)、そこに存在する屈折性屈折力部の望ましくない非点収差が少なくとも部分的に補償される。図5Bの右の例図に示されるように、遠くを見るために外周非点収差が補償された視点では、低いコントラストをもって遠い物体を鮮明に見ることができ、遠くの物体はぼやけるように見える(例えば、図9参照)。
中間距離の物体を見るようになっている特に大きい領域を有するべき眼科用レンズが与えられると、それに応じて、中間距離で見るための特に幅広い領域を有する屈折性屈折力曲線が選択されてもよい(図5Cの左参照)。それに応じて、遠くを見るために設計された領域及び近くを見るために設計された領域の両方で望ましくない非点収差が増大するが、これらは、レンズの真ん中の部分に配置される4つの回折構造(図5Cの真ん中参照)を用いて少なくとも部分的に補償され得る。そのような眼科用レンズでは、コントラスト損失を伴って遠く又は近くを鮮明に見ることができる視点が存在する(図8及び図9参照)。したがって、近領域及び遠領域の両方が拡大されてもよい(図5Cの右の例図参照)。
図5Cに示される眼科用レンズの更なる適合においては、レンズの遠部分における屈折力と近部分における屈折力との間の移行が、中間距離で見るために設けられる眼科用レンズの部分の左右にあるそれぞれの回折構造を用いてもたらされる。このため、3つの回折次数の回折効率は、移行が起こる区域で変化される。図6A及び図6Bは、3つの回折次数の回折効率が変えられる、回折構造を有する眼科用レンズ60の一例を示す。
区域62,64では、屈折性屈折力曲線により引き起こされる望ましくない屈折非点収差が少なくとも部分的に補償される。それにより、区域62における回折効率はほぼ一定であり、また、異なる屈折力を有するポイント間の曲線が3つの回折次数を用いて区域64で生じる。この移行は、少なくとも線66,67,68の領域で回折次数のそれぞれの1つの回折効率がほぼ100%であるように設計される。線66,67,68のうちの2つが互いに隣接するポイントでは、それぞれの対応する回折次数のうちの1つの回折効率がほぼ0%である。
例えば、遠部分における非点収差を補償する回折次数(例えば、n番目の回折次数)は、眼科用レンズの遠部分においてほぼ100%の回折効率を有するとともに、近部分及び介在領域の両方へ向かう凝視偏向が与えられると、ほぼ0%まで低下する。逆に、近部分における非点収差を補償する回折次数(例えば、m番目の回折次数)に同じことが当てはまり、その回折次数の回折効率は、遠部分又は介在領域へ向かう凝視偏向が与えられると、ほぼ100%からほぼ0%まで低下する。3番目の回折次数(例えば、0番目の回折次数であってもよいk番目の回折次数)は、回折構造と介在領域との間の境界でほぼ100%の回折効率を有し、その回折効率は、レンズの周方向でほぼ0%まで降下する。それにより、近部分又は遠部分における非点収差を補償する2つの回折次数は、同一(例えば、1番目の回折次数)であってもよいが、異なってもよい(例えば、互いに直交する2つの方向で回折最大量をもたらす回折構造の次数(1,0)及び(0,1))。
図6Bは、異なる区域における眼科用レンズ上の視点X1,X2,X3,X4,X12a,X12b,X12c,X23a,X23b,X23cを示す。特に、
−X12a及びX23bは、純粋に屈折性の屈折力の区域と屈折性屈折力及び回折性屈折力の区域との間でプリズム効果が適合されるポイントを示し、及び、
−X12b,X23a,X24は、純粋に屈折性の屈折力を伴う区域と屈折性屈折力及びサービス屈折力を伴う区域との間で(前述した)連続的な移行が起こるポイントを示す。
図6Cは、それぞれの接続線に沿う位置の関数として異なる回折次数の回折効率の曲線の例を示し、この場合、破線X00は0番目の回折次数を示し、実線X01は(1,0)回折次数を表し、及び、点線X02は(0,1)回折次数を示す。
眼科用レンズの更なる例において、眼科用レンズのプリズム効果の適合は、純粋に屈折性の屈折力を有する区域と回折性屈折力及び場合により屈折性屈折力を有する区域との間の境界で成されてもよい。適合は、異なる区域の境界に沿って水平プリズム及び垂直プリズムの両方の(すなわち、プリズム全体の両方の構成要素の)連続的な曲線を得ることを目的として行われてもよい。これにより、純粋に屈折性の屈折力の区域と屈折性屈折力及び場合により回折性屈折力を有する区域との間で凝視を一掃する際に像不連続が回避され又は減少されてもよい。プリズム効果の適合又はレンズのプリズム全体の適合は、回折次数に関して行われてもよい。代わりに、適合は、回折効率を用いて適切に重み付けられて複数の回折次数にわたって平均化されるプリズム効果に関して行われてもよい。
これにより、プリズム効果の適合は、回折効率の曲線とは無関係に行われてもよい。プリズム効果の適合は、回折構造が少なくともその縁部の一部で100%近くの回折効率を有する場合に特に有利であり、この場合、この縁部は、純粋に屈折性の屈折力を有する区域に隣接する。プリズム効果の適合は、回折効率の縁部全体に沿って行われてもよい。しかしながら、回折構造の縁部の一部のみでプリズム効果の適合をもたらすことができる。プリズム効果の適合は、望ましくない非点収差領域を回避するために回折構造の縁部の異なる部分で意図的に放棄されてもよい。
プリズム効果の適合は、例えば、屈折構造のプリズム効果が縁部へ向けて減少する或いは消失するという点において行われてもよい。他の可能性は、眼科用レンズの屈折構造に起因してプリズム効果の不連続を可能にすることである。この不連続は、本質的に、プリズム全体の連続曲線が結果的に生じるように、回折構造の縁部の一部で回折構造により引き起こされるプリズム効果の不連続を補償してもよい。屈折構造に起因する又はレンズの屈折部に起因するプリズム効果の不連続は、眼科用レンズの前面及び/又は背面で行われてもよい。
前述した眼科用レンズの全ての例を考えると、適合は、屈折性屈折力及び回折性屈折力を有する区域のうちのそれぞれの1つと純粋に屈折性の屈折力及び低い非点収差を有する隣接する区域との間の境界でレンズのプリズム効果について更に行われてもよい。同時に、非点収差を補償する回折次数の回折効率は、両方の区域間の境界でほぼ100%である。プリズム効果の適合は、屈折性屈折力及び回折性屈折力を有する区域の残りの縁部で求められず、この代わりに、非点収差を補償する回折次数の回折効率がほぼ0%まで低下する。
図7は、適合されたプリズム効果を有する3つの異なる眼科用レンズ70における回折構造の配置の例を示す。図7Aは、図5Aに示されるレンズと同様の幅広い遠部分を有する眼科用レンズを示し、図7Bは、図5Bに示されるレンズと同様の幅広い近部分を有する眼科用レンズを示し、図7Cは、図5Cに示されるレンズと同様の幅広い中間部分を有する眼科用レンズを示し、及び、図7Dは、図6に示されるレンズと同様の眼科用レンズを示す。
眼科用レンズの領域72,74又は84において、屈折性屈折力曲線により引き起こされる望ましくない屈折非点収差は、適切に設計された回折構造を用いて前述したように少なくとも部分的に補償される。それにより、領域72における回折効率はほぼ一定である。異なる屈折力を有するポイント間の回折効率の曲線は、領域74又は84において生じる。2つの回折次数を用いた移行は、前述したように区域74で起こる。区域84では、移行のために3つの回折次数が使用され、この場合、それぞれの異なる回折次数の回折効率は、線86,87,88のうちの少なくとも1つの領域でほぼ100%である。線86,87,88のうちの2つが互いに隣接するポイントでは、対応する回折次数のうちのそれぞれの1つの回折効率がほぼ0%である。回折構造は、プリズム効果の補償が(前述したように)行われる1又は複数の縁部76又は89を更に有する。
同様に、外周非点収差の補正を伴わない眼科用レンズ(例えば図4に示されるレンズなど)が与えられてもプリズム効果の適合を実施することができる。これらのレンズが与えられると、屈折性屈折力及び回折性屈折力の両方を有する領域は、遠くを見る又は近くを見るために設計される純粋に屈折性の屈折力を有する2つの領域間に位置されてもよい。これらの屈折領域のうちの1つと混成領域との間で、像ジャンプが回避されるようにプリズム効果が適合される。少なくとも1つの回折次数の回折効率の連続的な低下は、他の純粋に屈折性の領域と混成領域との間で起こる。したがって、全体としては、二次的な像又は光散乱を乱さない大きい区域がそのような眼科用レンズの着用者に対して与えられる。
図8は、遠くを見る際に望ましくない屈折非点収差が補償された眼科用レンズ90の区域を通して見た際の、最小屈折力及び最大屈折力の主要部分における2つの回折次数に関するビーム曲線を概略的に示す。図8Aは、遠くを見る際のビーム曲線を示し、また、図8Bは、近くを見る際のビーム曲線を示す。
図8Aに示されるように、物体距離面O1で或いは物体距離面O1上で遠くの物体を見る際には、1番目の回折次数のビーム曲線S1に起因して鮮明な像が眼32内に形成される。同時に、2番目の回折次数のビーム曲線S3,S5によってぼやけた非点収差像が同様に形成される。物体距離面O2で或いは物体距離面O2上で近くの物体を見る際には、1番目の回折次数のビーム曲線S2,S6に起因して眼82内にぼやけた非点収差像が形成される。同時に、2番目の回折次数のビーム曲線S4に起因して同様にぼやけた第2の像が同様に形成される(図8B参照)。
図9は、近くを見る際に望ましくない屈折非点収差が補償された眼科用レンズ90の区域を通して見た際の、最小屈折力及び最大屈折力の主要部分における2つの回折次数に関するビーム曲線の概略的な描写を示す。図9Aは、遠くを見る際のビーム曲線を示し、また、図9Bは、近くを見る際のビーム曲線を示す。
図9Aに示されるように、物体距離面O1で或いは物体距離面O1上で遠くの物体を見る際には、1番目の回折次数のビーム曲線S1,S5に起因してぼやけた非点収差像が眼32内に形成される。同時に、2番目の回折次数のビーム曲線S3に起因して同様にぼやけた第2の像が同様に形成される。物体距離区域O2内で近くの物体を見る際には、1番目の回折次数のビーム曲線S2に起因して鮮明な像が眼32内に形成される。同時に、2番目の回折次数のビーム曲線S4,S6によってぼやけた非点収差像が同様に形成される(図9B参照)。
図10〜図14は、異なる回折格子を有するプログレッシブ眼鏡レンズの例を示す。全ての眼鏡レンズは、屈折Sph=0.5dpt、Cyl=0dpt、及び、Add=2.5dptとなるように設計されるとともに、6.25dptの屈折平均表面屈折力をもつ球状の前面と、同一の純粋に屈折性のプログレッシブ後面とを有する。
図10は、遠くを見る際に非点収差を少なくとも部分的に補償する格子の一例を示し、この場合、全ての100番目の光子帯の曲線が示される。格子は、眼鏡レンズの球状の前面上に配置される。この場合の回折効率は1又は100%である。
図11は、近くを見る際に非点収差を少なくとも部分的に補償する格子の一例を示し、この場合、全ての100番目の光子帯の曲線が示される。格子は、眼鏡レンズの球状の前面上に配置される。この場合の回折効率は1又は100%である。
図12は、遠い範囲内及び近い範囲内の望ましくない外周非点収差を少なくとも部分的に補償する回折効率の一例を示し、この場合、全ての100番目の光子帯の曲線が示される。回折構造は、眼鏡レンズの球状の前面上に配置されるとともに、可変回折効率をもつ少なくとも1つの回折次数を有し、この場合、回折効率の変化は、描かれた格子帯のコントラストの変化によって表される。図12には、回折構造が描かれ、この場合、回折構造の均一な変化する回折効率の区域が描かれる。
回折構造は、レンズの上部及び下部における主視線の左右にそれぞれ配置される4つの区域又は4つの個々の回折格子を備える。全ての回折格子は、均一な回折効率の区域54と、変化する回折効率の区域55とを有する。均一な回折効率の区域54及び変化する回折効率の区域55の配置は、例えば、図5Cの真ん中に示される配置に対応する。図12に描かれる回折構造の上部(y>0mm)又は下部(y<0mm)のみがそれぞれ使用されるべき場合には、遠い範囲内又は近い範囲内(例えば、図5Bの真ん中、又は、図5Aの真ん中参照)の望ましくない外周非点収差を少なくとも部分的に補償してもよい回折構造が実現されてもよい。
図13は、眼鏡レンズの純粋に屈折性の後面の平均表面屈折力の曲線を示す。図14は、眼鏡レンズの屈折性後面の表面屈折力の曲線を示す。2つの隣り合う等屈折力線又は等非点収差線間の距離は0.25dptである。
本発明の更なる好ましい実施形態は、2つのポイント間の連続的な屈折力移行を有する眼科用レンズであって、眼科用レンズが少なくとも1つの回折構造を有する、眼科用レンズにおいて、
屈折性屈折力部の外周に生じる望ましくない非点収差が回折性屈折力部を用いて少なくとも部分的に補償され(例えば、少なくとも1つの回折次数において2.5、2.0、1.5、0.5、0.3、0.25又は0.2dpt未満)、
レンズの遠い基準点と近い基準点との間に少なくとも1つの接続線が存在し、該接続線に沿って少なくとも1つの回折次数の回折効率が連続的に変化し、
レンズの遠い基準点と近い基準点との間に少なくとも1つの接続線が存在し、該接続線に沿って屈折力の屈折部が連続的に変化する、
ことを特徴とする眼科用レンズに関する。
前述の回折構造を有する眼科用レンズに加えて或いは代えて、屈折構造と回折構造との適切な組み合わせにより眼科用レンズの色収差を減少させることができる。1つの例において、回折構造は、眼科用レンズの回折構造の色収差及び屈折面の色収差が視点の少なくとも1つの区域において互いを少なくとも部分的に補償するように設計される。
屈折構造と回折構造との組み合わせによってそれぞれの構造の非点収差屈折力の補償と同時に色収差の完全な補償を一般に達成できないため、両方の目標が互いに対して重み付けられてもよい。屈折構造及び回折構造を有する眼科用レンズの最適化が与えられると、これは、例えば国際特許出願公開第2012/065737号明細書から知られるように、以下の目的関数によって行われてもよい。
この式において、Fは、最小にされるべき目的関数であり、SΔ及びZΔは、等価球面度数の屈折誤差又は非点収差偏差の大きさであり、SΔ,Nominal及びZΔ,Nominalは対応する公称値であり、g(i,λ),g(i,λ)は対応する重みである。全ての結像特性が所定の波長で評価され、また、指数iの全体にわたる和は、様々な評価位置又は眼科用レンズ(例えば、眼鏡レンズ)の視方向にわたって及び、並びに、波長λにわたって及び、この場合、目的関数は、その波長に関して少なくとも2つの異なる値を含む。
屈折面のピッチを除き、最適化の自由度は、同様に、回折構造を表す関数、例えば国際特許出願公開第2012/065738A1号明細書において紹介された位相関数Ψ(x,y)である。
視点でゼロとは異なる回折効率を有する複数の回折次数vが存在し得るため、最適化方法の一例では、これらの回折次数の全てが目的関数の計算に組み入れられる。回折次数に応じて公称値及び重みを与えることも適している。評価されるべきレンズの光学特性(例えば、等価球面度数の屈折誤差及び非点収差偏差の大きさ)の全てがそれぞれの回折次数に関して計算される。
回折次数に関して拡張される多色関数が例えば以下の関数であってもよい。
先の式において、総計は、評価位置i及び波長λの全てにわたってのみならず、全ての回折次数vにわたっても行われる。
同一の視覚位置又は評価位置並びに同一の波長が与えられる異なる回折次数の重み付けは、それら自体、回折効率の単調増加関数として選択されてもよい。
先の多色関数は、更なる光学特性を用いて、又は、更なる結像誤差、例えばレンズの局所的なプリズム効果を用いて拡張されてもよい。屈折誤差及び非点収差偏差の代わりに、他の結像誤差が同様に目的関数に組み入れられてもよい。多色関数は、重み付けられた項、例えば、重み付けられた屈折誤差、又は、重み付けられた非点収差偏差にのみ依存してもよい。
少なくとも1つの回折構造を有する眼科用レンズが計算され或いは最適化されれば、対応する表面データ及び回折構造のデータが与えられて、眼科用レンズが仕上げられる。このために必要とされる製造方法及び処理機械が従来技術から知られている。
10,14 異なる屈折力の領域
12 可変回折効率の領域
16,18 基準点
20 基準点を接続する線
30,40,42,50,60,70,80,90 眼科用レンズ
32 眼の中心窩
51 非点収差が無い領域
52 望ましくない外周非点収差の領域
53 等非点収差線
54,55 回折構造を有する領域
54 ほぼ一定の回折効率の領域
55 可変回折効率の領域
56,57,58 遠くを見る、近くを見る、及び、中間距離で見るためにそれぞれ設計される領域
59 鮮明度が不十分な結像を有する領域
62,64 屈折性屈折力曲線により引き起こされる望ましくない屈折非点収差が少なくとも部分的に補償される領域
62 ほぼ一定の回折効率の領域
64 可変回折効率の領域
66,67,68 回折次数の最大回折効率の線
72,74 回折構造を有する領域
72 ほぼ一定の回折効率の領域
74 可変回折効率の領域
82,84 屈折性屈折力曲線により引き起こされる望ましくない屈折非点収差が少なくとも部分的に補償される領域
82 ほぼ一定の回折効率の領域
84 可変回折効率の領域
86,87,88 回折次数の最大回折効率の線
76,89 プリズム効果の補償が行われる回折構造と屈折部との間の縁部
L1,L2,X00,X01,X02 2つの異なる回折次数における回折効率の曲線
O1,O2 物体距離面
S1〜S8 眼科用レンズを通るビーム経路
X1,X2,X3,X4,X12a,X12b,X12c,X23a,X23b,X23c 視点

Claims (17)

  1. 少なくとも1つの回折構造を備える、老眼補正のための眼科用レンズ(30;40;50;60;70;80;90)であって、前記回折構造は、
    前記レンズの屈折力に寄与する前記回折構造の少なくとも1つの回折次数の回折効率が前記眼科用レンズ上の視点に応じて変化する、可変回折効率の少なくとも1つの領域(12;55;64;74;84)を有し、
    前記回折構造は、光を、2つの回折次数に対応する少なくとも2つの回折ビームに回折するよう設計されており、前記2つの回折次数は、0次の回折次数とは異なり、前記少なくとも2つの回折ビームは、互いに直交しており、
    前記回折構造はまた、
    1番目の回折次数において回折される光によりもたらされる非点収差効果によって、視点で、第1の物体距離に関して、前記レンズの屈折部の望ましくない非点収差を完全に又は少なくとも部分的に補償するように、及び、
    2番目の回折次数において回折される光によりもたらされる非点収差効果によって、同じ視点で、第2の物体距離に関して、前記レンズの前記屈折部の望ましくない非点収差を完全に又は少なくとも部分的に補償し、前記第2の物体距離は前記第1の物体距離と異なるように、
    設計されている、眼科用レンズ(30;40;50;60;70;80;90)。
  2. 前記2つの回折次数は、(1,0)回折次数及び(0,1)回折次数である、請求項1に記載の眼科用レンズ(30;40;50;60;70;80;90)。
  3. 回折効率の変化が連続的である、請求項1又は2に記載の眼科用レンズ(30;40;50;60;70;80;90)。
  4. 前記回折構造の少なくとも1つの回折次数の回折効率は、前記レンズの第1の基準点(16)と前記レンズの第2の基準点(18)とを接続する線(20)に沿って連続的に変化する、請求項に記載の眼科用レンズ(30;40;50;60;70;80;90)。
  5. 少なくとも1つの更なる回折次数の回折効率は、前記眼科用レンズの視点に応じて、可変回折効率の領域(12;55;64;74;84)で空間的に変化する、請求項1からのいずれか一項に記載の眼科用レンズ(30;40;50;60;70;80;90)。
  6. 1番目の回折次数の回折効率は、前記基準点を接続する前記線(20)に沿って連続的に減少し、
    前記少なくとも1つの更なる回折次数の回折効率は、前記基準点を接続する前記線(20)に沿って増大する、
    請求項及び請求項に記載の眼科用レンズ(30;40;50;60;70;80;90)。
  7. 前記1番目の回折次数の回折効率は、第1の基準点(16)でほぼ100%の値に相当し、第2の基準点(18)でほぼ0%の値に相当する、請求項からのいずれか一項に記載の眼科用レンズ(30;40;50;60;70;80;90)。
  8. 前記回折構造は、
    前記回折構造の少なくとも1つの回折次数の屈折力が変化可能である、可変回折性屈折力の少なくとも1つの領域(10;14)、及び/又は、
    前記回折構造の少なくとも1つの回折次数の屈折力が一定である、一定回折効率の少なくとも1つの領域(54;62;72;82)、
    を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の眼科用レンズ(30;40;50;60;70;80;90)。
  9. 前記回折構造は、前記眼科用レンズの屈折部の非点収差を少なくとも部分的に補償するように設計される請求項1からのいずれか一項に記載の眼科用レンズ(30;40;50;60;70;80;90)。
  10. 前記少なくとも1つの回折構造は、良く見える領域(51)の外側に配置される、請求項1から9のいずれか一項に記載の眼科用レンズ(30;40;50;60;70;80;90)。
  11. 前記少なくとも1つの回折構造が少なくとも1つの屈折部を境界付け、前記回折構造及び前記屈折部は、前記レンズのプリズム全体が少なくとも前記屈折部と前記回折構造との間の境界部分(76;89)で不連続を有さないように設計される、請求項1から10のいずれか一項に記載の眼科用レンズ(30;40;50;60;70;80;90)。
  12. 前記回折構造は、前記眼科用レンズの前記屈折部の色収差を前記レンズの少なくとも1つの領域で少なくとも部分的に補償するように設計される、請求項1から11のいずれか一項に記載の眼科用レンズ(30;40;50;60;70;80;90)。
  13. 請求項1から12のいずれか一項に記載の老眼補正のための眼科用レンズ(30;40;50;60;70;80;90)を製造する方法であって、
    最適化されるべき眼科用レンズを用意するステップと、
    前記レンズの少なくとも1つの評価位置で前記眼科用レンズの少なくとも1つの光学特性の値の公称値からのずれが最小にされるように、前記用意されたレンズを最適化するステップと、
    を備える、方法。
  14. 前記レンズの少なくとも1つの光学特性は、色収差、屈折誤差、非点収差、及び/又は、レンズのプリズムである、請求項13に記載の方法。
  15. 前記用意されるレンズの最適化は、以下の目的関数の最小化を含み、
    ここで、
    は、波長λ及び回折次数vにおけるi番目の評価位置での等価球面度数の屈折誤差を示し、
    は、波長λ及び回折次数vにおけるi番目の評価位置での屈折誤差の公称値を示し、
    は、波長λ及び回折次数vにおけるi番目の評価位置での非点収差偏差の大きさを示し、
    は、波長λ及び回折次数vにおけるi番目の評価位置での非点収差偏差の大きさの公称値を示し、
    は、波長λ及び回折次数vにおけるi番目の評価位置での屈折誤差の重みを示し、
    は、波長λ及び回折次数vにおけるi番目の評価位置での非点収差偏差の大きさの重みを示す、
    請求項13又は請求項14に記載の方法。
  16. 同一の評価位置及び同一の波長が与えられる場合、異なる回折次数の重み付けは、回折効率の単調増加関数である、請求項15に記載の方法。
  17. 請求項1から12のいずれか一項に記載の老眼補正のための眼科用レンズ(30;40;50;60;70;80;90)を製造する装置であって、
    最適化されるべき眼科用レンズを用意する手段と、
    前記レンズの少なくとも1つの評価位置で前記眼科用レンズの少なくとも1つの光学特性の値のずれが最小にされるように最適化されるべき前記レンズを最適化するようになっている最適化手段と、
    を備える、装置。
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