JP6502551B1 - ノズル及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶接等によって発生する飛散物がノズル内部に付着しにくく、ノズル内部の摩耗及び変形を防止しやすいノズルを提供する。
【解決手段】本発明のノズル1は、内部に流路10が形成され、先端に噴射口11を備える。前記流路10の壁面12がめっき層2で被覆されている。本発明のノズルの製造方法は、流路10に電極30を配置して電気めっきを行うことで前記流路10の壁面をめっき層2で被覆させる工程を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、ノズル及びその製造方法に関する。
レーザー溶断機、プラズマ溶断機及びガス溶断機等の各種機器には、噴射口を有するノズルが先端部分に取り付けられる。ノズル内部に形成される流路を通じて、噴射口から高温のガス等が噴出され、対象物に到達する。
このようにノズルの噴射口からは高温のガスが噴出するので、例えば、対象物が溶接されるにあたり、対象物の溶融物等の飛散物がノズルに到達し、ノズルに付着あるいはノズルを腐食させることがある。これを防止すべく、例えば、ノズル部材に対して耐食めっきを施す技術(例えば、特許文献1等)、あるいは硬質炭素膜を施す技術(例えば、特許文献2等)が提案されており、ノズルの耐久性を向上させることが行われている。
特開平5−209575号公報 特開平10−6222号公報
しかしながら、前記飛散物は噴射口及び噴射口からノズル内部に到達することもあり、これにより、ノズルの噴射口を塞いだり、噴射口及び内部が腐食したりする等の問題があり、ノズルの耐久性の低下を引き起こす原因となっていた。また、特許文献2に開示される技術のように、ノズルの内面にまで硬質炭素膜を施す技術であっても、ノズルの耐久性をわずかに延ばせるに過ぎず、特に、噴射口の孔径が小さいノズル内面に対して硬質炭素膜の皮膜を形成することが困難であった。内面に耐食めっきを施すことは、実現不可能な技術であると認識されており、ノズル内面には、ノズルの素材そのものを露出せざるを得なかった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、溶接等によって発生する飛散物がノズル内部に付着しにくく、ノズル内部の摩耗及び変形を防止しやすいノズルを提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ノズル内の流路の壁面にめっき層を形成することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
内部に流路が形成され、先端に噴射口を備えたノズルにおいて、
前記流路の壁面がめっき層で被覆されている、ノズル。
項2
前記噴射口の孔径が3mm以下である、項1に記載のノズル。
項3
前記壁面に被覆されているめっき層は、噴射口に近い程厚くなる、項1又は2に記載のノズル。
項4
前記めっき層は、クロム、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、コバルト、ニッケル及びオスミウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む、項1〜3のいずれか1項に記載のノズル。
項5
内部に流路が形成され、先端に噴射口を備えたノズルの製造方法において、
前記流路に電極を配置して電気めっきを行うことで前記流路の壁面をめっき層で被覆させる工程を備える、ノズルの製造方法。
本発明のノズルは、ノズル内の流路の壁面にめっき層が形成されているので、溶接等によって発生する飛散物がノズル内部に付着しにくく、ノズル内部の摩耗及び変形を防止しやすい。この結果、本発明のノズルは、長期間にわたって内部の腐食及び閉塞等が防止されやすく、耐久性に優れる。
本発明のノズルに係る実施形態の一例であり、(a)はその側面図、(b)は断面図である。 本発明のノズルの製造方法に係る実施形態の一例であり、ノズル内部の流路壁面にめっき層を被覆させる工程を説明する断面の模式図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
1.ノズル
図1は、本発明のノズルに係る実施形態の一例である。図1(a)はノズルの側面図、(b)は断面図である。以下、本発明のノズルを、図1の実施形態のノズルにより説明する。
本実施形態のノズル1は、内部に流路10が形成され、先端に噴射口11を備え、前記流路10の壁面12がめっき層2で被覆されている。流路10は、例えば、ガスあるいはレーザー等が通過するための空間である。ガスあるいはレーザー等は、流路10を通過して、噴射口11から噴出される。
本実施形態のノズル1は、流路10の壁面12がめっき層2で被覆されていることで、溶接等によって発生する飛散物がノズル1内部に付着しにくく、ノズル1内部の摩耗及び変形を防止しやすい。
本実施形態のノズル1は、例えば、レーザー溶接機及びプラズマ溶断機等の各種機器に適用され得る。図1では示していないが、ノズル1は、レーザー溶断機、プラズマ溶断機及びガス溶断機等が備える各種機械部品(例えば、保持部材)に連結される。例えば、ノズル1は、連結部50で、各種機械部品と螺合して連結され得る。連結部50は、通常、図1に示すように、ノズル1の噴射口11とは逆側の端部に形成される。
なお、本明細書において、ノズル1の連結部50側を「上流側」と表記する。
ノズル1を形成するための材料は特に限定されず、例えば、公知の材料を広く適用することができる。具体的には、ノズル1を形成するための材料として、銅、真鍮、ステンレス、りん青銅等を挙げることができる。ノズル1は、1種単独の材料で形成されていてもよいし、2種以上の材料で形成されていてもよい。
本実施形態のノズル1の形状は、流路10及び噴射口11が形成されている限りは特に限定されず、例えば、公知のノズルの形状を広く採用することができる。
噴射口11は、ノズル1の先端部17に形成されている。ここでいうノズル1の先端とは、ノズル1内からガス等が噴出する方向の先端をいう。噴射口11は、ノズル1の先端部17の一部が打ち抜かれて孔として形成される。
図1(b)に示すように、噴射口11は、流路10と連通するように設けられている。噴射口11は、例えば、平面視で円形又は楕円形に形成される。
噴射口11の孔径は、特に限定されず、公知のノズルと同様の大きさとすることができる。
特に本発明では、噴射口11の孔径Lは、例えば、5mm以下、好ましくは3mm以下とすることができる。従来、噴射口11の孔径Lが小さくなると、ノズル1の内面である流路の壁面にめっき層を形成することはなかったが、本発明のノズル1では、噴射口11の孔径Lが、例えば、3mm以下であっても、流路10の壁面12にめっき層2が形成され得る。
噴射口11の孔径Lは、5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましく、2.5mm以下であることが特に好ましい。噴射口11の孔径Lの下限値は、流路10の壁面12にめっき層2を形成しやすくするという観点から、例えば、1mmとすることができる。
本実施形態のノズル1は、内部に流路10が形成されている。流路10は、ノズル1の内部を貫通するように形成されており、上流側から噴射口11の方向に延伸するように形成されている。流路10は管状に形成され、例えば、断面が円形に形成され得る。
流路10の一端は、噴射口11に到達し、ノズル1の外側と連通するように形成されている。流路10の他端は、連結部50の上流側の端部まで到達し、連結部50を貫通するように形成される。流路10は、連結部50で連結している前述の各種機械部品に到達し、該部品の空間部と連通する。
流路10の形状は特に限定されず、例えば、公知のノズルに形成されている流路と同様の形状とすることができる。流路10は、例えば、図1の実施形態に示すように、上流側から噴射口11に向かって、先細り(例えば、テーパー状)になるように形成される。
流路10の噴射口11側の直径は、噴射口11の孔径Lと一致する。
流路10が、例えば前述のように上流側から噴射口11に向かって先細りになるように形成されている場合、流路10の最大直径は、例えば、5〜15mmとすることができる。
流路10の壁面12は、めっき層2で被覆されている。なお、壁面12は、ノズル1の内面ということもできる。
めっき層2は、例えば、電気めっきによって形成することができる各種の材料で形成される層である。
めっき層2は、例えば、公知のめっき層を広く適用することができる。
めっき層2は、クロム、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、コバルト、ニッケル及びオスミウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。この場合、めっき層2は、耐摩耗性が特に良好であり、また、対象物の溶接等に伴う飛散物等の付着も抑制されるので、ノズル1の耐久性がより向上しやすい。めっき層2に含まれる金属は1種のみとすることができ、あるいは、2種以上とすることもできる。
めっき層2は、ノズル1を形成する材料よりも融点が高く、かつ、硬い金属を含むことが好ましい。この観点から、例えば、ノズル1が銅又は真鍮等で形成されている場合は、めっき層2はクロム(特に硬質クロム)を含むことが好ましい。めっき層2に含まれる金属はクロムのみであってもよい。
めっき層2は、単層で形成することができ、あるいは、複数の層が積層した積層構造として形成することもできる。めっき層2が積層構造である場合は、各層は同一のめっき層とすることができ、あるいは、各層の一部又は全てを異なる種類のめっき層で形成することもできる。
めっき層2は、ノズル1において、流路10の壁面12全面を被覆するように形成されていることが好ましい。この場合、ノズル内部の摩耗及び変形が特に起こりにくく、ノズル1の耐久性が特に向上する。めっき層2が流路10の壁面12全面に形成されていないにしても、例えば、流路10において噴射口11に近づくほど、めっき層2の被覆率が大きくなることが好ましい。また、少なくとも、壁面12の噴射口11付近はすべてめっき層2で被覆されていることが好ましい。
流路10の壁面12を被覆するめっき層2の膜厚は特に限定されず、例えば、0.1〜500μmとすることができ、好ましくは、1〜100μmとすることができ、より好ましくは、5〜30μmとすることができる。めっき層2の膜厚は、例えば、めっき層2の断面を顕微鏡で観察して得た画像から計測することができる。めっき層2の膜厚の調節は、例えば、電気めっきの条件、例えば、電流密度を一定としてめっき時間を調整することで行える。
流路10の壁面12に被覆されているめっき層2は、噴射口11に近い程厚くなることが好ましい。噴射口11に近い程、溶接又は溶断時において、対象物の飛散物等が到達しやすいことから、噴射口11付近のめっき層2が厚く形成されている場合は、飛散物等によるノズル1内部の腐食、閉塞及び変形等が防止されやすく、結果として、ノズル1の耐久性が向上する。
流路10の壁面12に被覆されているめっき層2は、噴射口11に最も近い部分が10〜30μmの厚み、噴射口11に最も遠い部分を2〜10μmの厚みとすることができる。
流路10の壁面12に被覆されているめっき層2の表面粗さRzは特に限定されず、例えば、5μm以下とすることができる。この場合、溶接又は溶断時において、対象物の飛散物等がより付着しにくくなるので、ノズル1の耐久性が向上しやすい。なお、本明細書でいう表面粗さRz(μm)は、JIS B 0601:2001で定義される。
ノズル1は、流路10の壁面12にめっき層2が形成されている限り、その他の部分にもめっき層2が形成されていてもよい。
図1(b)に示すように、例えば、ノズル1の先端部17にもめっき層2が形成され得る。あるいは、ノズル1の外周部18にもめっき層2が形成され得る。ノズル1の先端部17及び外周部18の両方にめっき層2が形成されていてもよい。ここでいう外周部18とは、例えば、連結部50を除くノズル1の外面のことをいう。
ノズル1の先端部17にめっき層2が形成されている場合、このめっき層2は、例えば、1〜100μm、好ましくは20〜60μmの膜厚とすることができる。この場合、溶接又は溶断時において、対象物の飛散物等が付着しにくく、また、飛散物等による摩耗も抑制されやすい。先端部17にめっき層2が形成されていることで、溶接又は溶断時において、対象物の飛散物等が先端部17に付着しにくくなり、ノズル1の耐久性が向上しやすい。
ノズル1の外周部18にめっき層2が形成されている場合、このめっき層2は、例えば、1〜100μm、好ましくは10〜30μmの膜厚とすることができる。外周部18にめっき層2が形成されていることで、溶接又は溶断時において、対象物の飛散物等が外周部18に付着しにくくなり、ノズル1の耐久性が向上しやすい。
ノズル1は、壁面12、先端部17及び外周部18以外の他の部分にもめっき層2が形成されていてもよい。当該他の部分のめっき層2の厚みは、例えば、5〜20μmとすることができる。
ノズル1の先端部17に形成されるめっき層2は、流路10の壁面12に被覆されているめっき層2の種類と同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、ノズル1の外周部18に形成されるめっき層2は、流路10の壁面12に被覆されているめっき層2の種類と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
ノズル1の先端部17及び外周部18に形成されるめっき層2の表面粗さRzは特に限定されず、例えば、5μm以下とすることができる。
本実施形態のノズル1は、内面にめっき層2が形成されていることで、変形が抑制され、この結果、例えば、ノズル1を使用したレーザー加工において、ノズル1中央のレーザー集光回路に干渉しにくいため、高精度な加工を継続して行うことが可能となる。
また、本実施形態のノズル1は、熱変形も抑制され、かつ、連結部50で連結される機械部品等への熱伝導も抑制されるので、長時間連続的に使用しても安定な加工を行うことができる。
本実施形態のノズル1は、各種機器に取り付けることが可能であり、例えば、レーザー溶断機、プラズマ溶断機、ガス溶断機等に好適に使用することができる。
2.ノズルの製造方法
本発明のノズル1の製造方法は特に限定されない。本発明のノズル1の製造方法の一例として、前記実施形態のノズル1を例に説明する。
本実施形態のノズル1の製造方法は、前記流路10に電極30を配置して電気めっきを行うことで前記流路10の壁面12をめっき層2で被覆させる工程を備えることができる。以下、この工程を「内部めっき工程」と表記する。
図2は、内部めっき工程の様子を説明する模式図である。
内部めっき工程は、ノズル1の壁面12にめっき層2を形成させるための工程である。この工程では、ノズル1を準備する。ノズル1は、内部に流路10が形成され、先端に噴射口11を備える限り、その種類は特に限定されず、公知のノズル広く採用することができる。内部めっき工程で使用するノズル1は、壁面12に何らの層が形成されていないものであってもよいし、めっき層2以外の層が形成されていてもよい。通常は、壁面12に何らの層が形成されていないノズル1を準備する。なお、図2に示されるノズル1は、めっき層2が形成されていないことを除いては、図1のノズル1と同じである。
内部めっき工程において、めっき層2は、電気めっきによって形成される。この電気めっきを行うにあたり、電極30が用いられる。
電極30の種類は特に限定されず、例えば、電気めっきに使用することができる公知の電極を広く採用することができる。
電極30の具体例としては、白金電極、鉛合金電極、白金コートチタン電極、酸化イリジウムコートチタン電極、鉄電極等が挙げられる。めっき層2の形成が容易である観点から、電極30は不溶性電極であることが好ましい。
内部めっき工程において、電極30はノズル1の流路10に配置するので、電極30は、棒状又は針状の形状を取り得る。
電極30は、例えば、ノズル1の流路10の全長よりも少なくとも長く形成されていることが好ましい。言い換えれば、電極30は、ノズル1の流路10に電極30が配置された状態において電極30の一端が、噴射口11からノズル1の外部へ突き抜け、かつ、電極30の他端が、連結部50からノズル1の外部へ突き抜ける長さを有することが好ましい(図2参照)。
また、電極30の外径は、電極30の一端が噴射口11を貫通できる大きさであることが好ましい。この場合、電極30はノズル1に接触せずに、噴射口11を貫通することが好ましい。この観点から、電極30の外径は、0.7mm以下であることが好ましく、0.6mm以下であることがより好ましく、0.5mm以下であることが特に好ましい。なお、電極30の外径とは、電極30の断面が円形以外の形状である場合は、電極30の円相当径を意味することができる。
より詳しくは、電極30の外径は、噴射口11の孔径に対して1/5〜2/3の範囲であることが好ましい。この場合、電極30をノズル1に接触させずに流路10に配置させやすく、また、めっき層2をより均一、かつ、所望の表面粗さRz(例えば、5μm以下)で形成しやすい。
内部めっき工程において電気めっきをするにあたっては、めっき浴を使用する。なお、図2では、めっき浴は省略した状態で示している。
めっき浴の種類は特に限定されず、所望のめっき層2の成分に応じて、適宜のめっき浴を選択することができ、例えば、公知のめっき浴を広く使用することができる。
めっき浴の具体例としては、サージェント浴、ケイフッ化浴、ヒーフ浴、シュウ酸浴等を挙げることができる。これらのめっき浴も、公知のめっき浴と同じ組成を有するものを使用することができる。ここで、サージェント浴とは、例えば、無水クロム酸と硫酸を含むめっき浴であることを示す。ケイフッ化浴とは、フッ化物を含有するめっき浴であることを示す。ヒーフ浴とは、無水クロム酸と、1種又は複数の有機酸を含むめっき浴であることを示す。シュウ酸浴とは、シュウ酸を含むめっき浴であることを示す。
内部めっき工程において、電極30をノズル1の流路10に配置して固定する方法は特に限定されない。例えば、所定のめっき浴中にノズル1を固定し、この固定されたノズル1の噴射口11側又は連結部50側から電極30を挿入して、電極30の両端それぞれが、噴射口11及び連結部50を突き抜けるように配置させることができる。電極30の両端は、例えば、適宜の方法で固定して、電極30がノズル1に接触しないように、電極30を保持することができる。
めっき浴中にノズル1及び電極30を固定する方法は特に限定されず、使用する電気めっきの装置に応じて、適宜の方法を採用することができる。例えば、ノズル1は、めっき浴が収容されている容器に取り付けた適宜の固定部材により、固定され得る。また、電極30は、容器に取り付けた適宜の固定部材により、両端を固定させることで、電極30がノズル1に接触しないように、電極30を保持することができる。
電気めっきの条件は特に限定されず、例えば、公知の電気めっきと同様の条件を採用することができる。例えば、めっき層2が所望の厚みになるように、電流密度、めっき時間等を適宜設定することができる。例えば、電流密度は20〜40A/dm、めっき時間は30〜60分とすることができる。
内部めっき工程では、電極30を正極として、ノズル1を負極として電気めっきを行うことができる。
上記内部めっき工程を経て、壁面12がめっき処理されてめっき層12が形成される。これにより、例えば、図1の形態に示すノズル1を得ることができる。
電極30が流路10に配置された状態では、図2からも判断できるように、噴射口11に近い程、電極30と壁面12との距離は短い。この場合、壁面12に形成されるめっき層2は、噴射口11に近い程、厚く形成され得る。
前記内部めっき工程においては、めっき層2を形成させることを望まない部分には、例えば、その部分に適宜の方法で遮蔽させたノズル1を使用することができる。この場合、所望の部分のみにめっき層2を形成することができる。
図1の実施形態のノズル1のように、壁面12以外の部分、例えば、先端部17及び外周部18にもめっき層2を形成する場合、その方法は特に限定されず、例えば、公知のめっき処理の方法を広く採用することができる。先端部17及び外周部18にもめっき処理をする場合、このめっき処理は、前記内部めっき工程によって壁面12にめっき層2を形成した後に施すことができ、あるいは、前記内部めっき工程によって壁面12にめっき層2を形成する前に施すこともでき、その順序に制限はない。また、壁面12と、先端部17及び外周部18とのめっき処理を同時に行うこともできる。
また、壁面12、先端部17及び外周部18以外の他の部分にめっき層2を形成させる場合でも、当該他の部分へのめっき処理の順序は特に限定されない。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
(実施例1)
図2に示す流路と噴射口とを有する銅製の加工用ノズルを準備した。この加工用ノズルは、レーザー溶断機用であって、どの部分にもめっき層が形成されていないものであった。また、加工用ノズルの噴射口(円形)の孔径は2mmであった。
まず、この加工用ノズルの先端部及び外周部にそれぞれ、40μm及び20μmの厚みで、硬質クロムめっき層を形成させた。また、壁面以外の部分にも同様に15μmの厚みで、硬質クロムめっき層を形成させた。これらのめっき層は、公知の電気めっき条件により形成した。
次いで、上記のように電気めっき処理を行った加工用ノズルを、ケイフッ化浴中に適宜の方法で固定し、この加工用ノズル内部の流路を貫通させるように、外径が0.5mmである白金製不溶性電極を配置した。この際、電極がノズルに接触しないように、電極を保持させた。電極の一端は噴射口を突き抜け、他端は連結部を突き抜けるようにした。電極の両端は、適宜の方法で固定することで保持させた。この状態にて、電極を正極として、加工用ノズルを負極として電気めっきを行った。電気めっきは、電流密度を20〜40A/dmの範囲、めっき時間を30〜60分の範囲で調節して行った。これにより、加工用ノズル内部の流路の壁面に、めっき層を形成させ、試験用ノズルを得た。流路の壁面に形成されためっき層は、噴射口に近い程厚く形成されており、最大厚みが20μm、最小厚みが5μmであった。
(比較例1)
実施例1で準備した加工用ノズルと同様の加工用ノズルを準備し、この加工用ノズルの外周部のみに20μmの厚みで、硬質クロムめっき層を形成させた。この硬質クロムめっき層の形成も実施例1と同様の方法で行った。これにより、試験用ノズルを得た。
(評価方法)
[耐久性試験]
実施例及び比較例で得た試験用ノズルを用いて、厚みが1〜10mmである炭素鋼、低合金鋼及びステンレス鋼のそれぞれの板を、500〜2000mm/minの速度で切断加工した。切断にはCOガスレーザー溶断機を使用し、試験用ノズルを接続した。切断加工にあたっては、入熱エネルギーを500〜2000J/cmとした。また、アシストガスは、炭素鋼及び低合金鋼を切断する場合は酸素、ステンレス鋼を切断する場合は窒素とした。
(評価結果)
耐久性試験の結果、比較例1で得た試験用ノズルは、1.5ヶ月程度の使用で摩耗による劣化、先端部分の変形、及び、噴射口の閉塞等が生じたことで使用不可となり、中には、5日程度で使用不可になる場合もあった。
一方、実施例1で得られた試験用ノズルは、4ヶ月以上の使用を継続しても、先端部、外周部、及び流路の壁面いずれにも摩耗による劣化及び変形は見られず、噴射口の閉塞等も見られなかった。従って、実施例1で得られた試験用ノズルは、耐久性に優れることを確認した。
また、比較例1で得た試験用ノズルを用いて溶接を連続的に行う場合は、飛散した付着物を除去すべく、使用開始から3時間でノズル冷却しなければならなかったのに対し、実施例1で得られた試験用ノズルは、使用開始から5時間以上の連続加工を行っても、冷却せずに使用を継続することができた。
1:ノズル
10:流路
11:噴射口
12:壁面
17:先端部
18:外周部
30:電極
50:連結部

Claims (4)

  1. 内部に流路が形成され、先端に噴射口を備えたノズルにおいて、
    前記流路の壁面がめっき層で被覆されており、
    前記壁面に被覆されているめっき層は、噴射口に近い程厚くなる、ノズル。
  2. 前記噴射口の孔径が3mm以下である、請求項1に記載のノズル。
  3. 前記めっき層は、クロム、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、コバルト、ニッケル及びオスミウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む、請求項1又は2に記載のノズル。
  4. 内部に流路が形成され、先端に噴射口を備えた請求項1〜3のいずれか1項にノズルの製造方法において、
    記流路に電極を配置して電気めっきを行うことで前記流路の壁面をめっき層で被覆させる工程を備える、ノズルの製造方法。
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