JP6499510B2 - 遺伝子組み換え酵母及びそれを用いた5−アミノレブリン酸の製造法 - Google Patents
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Description
従って、本発明の課題は、酸性条件下でも生育が可能で、かつ5−アミノレブリン酸の効率のよい生産が可能な微生物、及び当該微生物を用いた5−アミノレブリン酸の製造法を提供することである。
〔2〕酵母中で発現するプロモーターの下流に遺伝子(a)を有するベクターと酵母中で発現するプロモーターの下流に遺伝子(b)を有するベクターで形質転換されたもの、あるいは酵母中で発現するプロモーターの下流に遺伝子(a)及び遺伝子(b)を有するベクターで形質転換されたものである〔1〕記載の遺伝子組み換え酵母。
〔3〕酵母中で発現するプロモーターが、PGKプロモーターである〔2〕記載の遺伝子組み換え酵母。
〔4〕酵母が、Saccharomyces cerevisiaeである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の遺伝子組み換え酵母。
〔5〕〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の遺伝子組み換え酵母を培養することを特徴とする5−アミノレブリン酸又はその塩の製造法。
(a)5−アミノレブリン酸合成酵素をコードする遺伝子HEM1、及び
(b)ミトコンドリア膜上のキャリアタンパク質をコードする遺伝子であるMDL1、JEN1、POR2、DIC1、CTP1及びYPR011Cから選ばれる1種以上の遺伝子の発現を増強することで、5−アミノレブリン酸の生産性を向上させている。
(b)の遺伝子群は、ミトコンドリアの内外の物質の輸送にかかわるタンパク質の遺伝子であり、酵母中に存在する。しかし、これらの遺伝子の発現が強化することで、ミトコンドリア膜上でのこれらキャリアタンパク質が増加し、これがミトコンドリア内で合成された5−アミノレブリン酸のミトコンドリア外への輸送を助けているものと考えられる。その結果、本発明にかかる遺伝子組み換え酵母では5−アミノレブリン酸の生産性が向上しているものと考えられる。本発明では、前述の(a)のHEM1の遺伝子と共に、この(b)の遺伝子群の発現を増強する必要がある。
形質転換手段としては、プロトプラスト法、金属処理(リチウム処理など)法等が用いられる。
Saccharomyces cerevisiaeの5−アミノレブリン酸合成酵素の遺伝子HEM1のDNA断片を得るために、Saccharomyces cerevisiae Genome Databaseに登録されている遺伝子配列を参考にして、PCRのプライマーとして下記配列を設計した。
5′-GGCCgctagcATGCAACGCTCCATTTTTGC-3′ (配列番号1)
5′-GGCCggatccTTACTGCTTGATACCACTAGAAAC-3′ (配列番号2)
上記プライマーを用いて、Saccharomyces cerevisiae YPH499株(leu2、ura3)のゲノムDNAをテンプレートとし、PCR増幅を行い、その増幅物をNheIおよびBamHIで消化して、HEM1遺伝子のNheI−BamHI断片を得た。
この断片をJ.Biochem.(2009)145:701−708に記載のpGK405のPGK1プロモーター(PGK3’)とPGK1ターミネーター(PGK5’)の間のNheI−BamHI消化部位に連結し、HEM1発現プラスミドpGK405−HEM1を得た。
得られたプラスミドpGK405−HEM1は、マーカー合成酵素遺伝子LEU2中の制限酵素EcoRVで消化した後に、Saccharomyces cerevisiae YPH499株を宿主酵母株とし、Ito H, Fukuda Y, Murata K, Kimura A (1983)Transformation of intact yeast cells treated with alkali cations. J Bacteriol 153:163-168に記載の方法で形質転換を行い、HEM1の発現がPGK1プロモーターで強化された形質転換体「YPH499/pGK405−HEM1」を得た。
Saccharomyces cerevisiaeのミトコンドリアキャリアーのMDL1遺伝子のDNA断片を得るために、Saccharomyces cerevisiae Genome Databaseに登録されている遺伝子配列を参考にして、PCRのプライマーとして下記配列を設計した。
5′-GGCCgctagcATGATTGTAAGAATGATACGTCTTTG-3′(配列番号3)
5′-GGCCgtcgacTTATACTTCCCGGGCAACACTATTGTCC-3′(配列番号4)
上記プライマーを用いて、Saccharomyces cerevisiae YPH499株のゲノムDNAをテンプレートとし、PCR増幅を行い、その増幅物をNheIおよびSalIで消化して、MDL1遺伝子のNheI−SalI断片を得た。
この断片を非特許文献(J.Biochem.(2009)145:701−708)に記載のpGK406のPGK1プロモーター(PGK3’)とPGK1ターミネーター( PGK5’)の間のNheI−SalI消化部位に連結し、MDL1発現プラスミドpGK406−MDL1を得た。
得られたプラスミドpGK406−MDL1をマーカー合成酵素遺伝子URA3中の制限酵素NcoIで消化した後、製造例1で得られたSaccharomyces cerevisiae YPH499/pGK405−HEM1を宿主酵母株とし、製造例1と同様に形質転換を行い、MDL1とHEM1の発現がPGK1プロモーターで強化された形質転換体「YPH499/pGK405−HEM1/pGK406−MDL1」を得た。
Saccharomyces cerevisiaeのミトコンドリアキャリアーのJEN1遺伝子のDNA断片を得るために、Saccharomyces cerevisiae Genome Databaseに登録されている遺伝子配列を参考にして、PCRのプライマーとして下記配列を設計した。
5′-GGCCgctagcATGTCGTCGTCAATTACAGATGAG-3′ (配列番号5)
5′-GGCCggatccTTAAACGGTCTCAATATGCTCCTC-3′ (配列番号6)
上記プライマーを用いて、Saccharomyces cerevisiae YPH499株のゲノムDNAをテンプレートとし、PCR増幅を行い、その増幅物をNheIおよびBamHIで消化して、JEN1遺伝子のNheI−BamHI断片を得た。
この断片を非特許文献(J.Biochem.(2009)145:701−708)に記載のpGK406のPGK1プロモーター(PGK3’)とPGK1ターミネーター(PGK5’)の間のNheI−BamHI消化部位に連結し、JEN1発現プラスミドpGK406−JEN1を得た。
得られたプラスミドpGK406−JEN1をマーカー合成酵素遺伝子URA3中の制限酵素EcoRVで消化した後、製造例1で得られたSaccharomyces cerevisiae YPH499/pGK405−HEM1を宿主酵母株とし、製造例1と同様に形質転換を行い、JEN1とHEM1の発現がPGK1プロモーターで強化された形質転換体「YPH499/pGK405−HEM1/pGK406−JEN1」を得た。
Saccharomyces cerevisiaeのミトコンドリアキャリアーのPOR2遺伝子のDNA断片を得るために、Saccharomyces cerevisiae Genome Databaseに登録されている遺伝子配列を参考にして、PCRのプライマーとして下記配列を設計した。
5′-GGCCgctagcATGGCACTACGATTTTTCAACG-3′(配列番号7)
5′-GGCCggatccTCAGGGCGAGAACGATAGAGAG-3′(配列番号8)
上記プライマーを用いて、Saccharomyces cerevisiae YPH499株のゲノムDNAをテンプレートとし、PCR増幅を行い、その増幅物をNheIおよびBamHIで消化して、POR2遺伝子のNheI−BamHI断片を得た。
この断片を非特許文献(J.Biochem.(2009)145:701−708)に記載のpGK406のPGK1プロモーター(PGK3’)とPGK1ターミネーター(PGK5’)の間のNheI−BamHI消化部位に連結し、POR2発現プラスミドpGK406−POR2を得た。
得られたプラスミドpGK406−POR2をマーカー合成酵素遺伝子URA3中の制限酵素EcoRVで消化した後、製造例1で得られたSaccharomyces cerevisiae YPH499/pGK405−HEM1を宿主酵母株とし、製造例1と同様に形質転換を行い、POR2とHEM1の発現がPGK1プロモーターで強化された形質転換体「YPH499/pGK405−HEM1/pGK406−POR2」を得た。
Saccharomyces cerevisiaeのミトコンドリアキャリアーのDIC1遺伝子のDNA断片を得るために、Saccharomyces cerevisiae Genome Databaseに登録されている遺伝子配列を参考にして、PCRのプライマーとして下記配列を設計した。
5′-GGCCgctagcATGTCAACCAACGCAAAAGAGTC-3′(配列番号9)
5′-GGCCggatccCTACTTGTCTTCCTTTGGCATG-3′(配列番号10)
上記プライマーを用いて、Saccharomyces cerevisiae YPH499株のゲノムDNAをテンプレートとし、PCR増幅を行い、その増幅物をNheIおよびBamHIで消化して、DIC1遺伝子のNheI−BamHI断片を得た。
この断片を非特許文献(J.Biochem.(2009)145:701−708)に記載のpGK406のPGK1プロモーター(PGK3’)とPGK1ターミネーター(PGK5’)の間のNheI−BamHI消化部位に連結し、DIC1発現プラスミドpGK406−DIC1を得た。
得られたプラスミドpGK406−DIC1をマーカー合成酵素遺伝子URA3中の制限酵素EcoRVで消化した後、製造例1で得られたSaccharomyces cerevisiae YPH499/pGK405−HEM1を宿主酵母株とし、製造例1と同様に形質転換を行い、DIC1とHEM1の発現がPGK1プロモーターで強化された形質転換体「YPH499/pGK405−HEM1/pGK406−DIC1」を得た。
Saccharomyces cerevisiaeのミトコンドリアキャリアーのCTP1遺伝子のDNA断片を得るために、Saccharomyces cerevisiae Genome Databaseに登録されている遺伝子配列を参考にして、PCRのプライマーとして下記配列を設計した。
5′-GGCCgtcgacAAGCTACCAAAAGTGACGTAGATCC-3′(配列番号11)
5′-GGCCggatccCAGGCTAGCATAACTAAGACCTTTC-3′(配列番号12)
上記プライマーを用いて、Saccharomyces cerevisiae YPH499株のゲノムDNAをテンプレートとし、PCR増幅を行い、その増幅物をNheIおよびBamHIで消化して、CTP1遺伝子のNheI−BamHI断片を得た。
この断片を非特許文献(J.Biochem.(2009)145:701−708)に記載のpGK406のPGK1プロモーター(PGK3’)とPGK1ターミネーター(PGK5’)の間のNheI−BamHI消化部位に連結し、CTP1発現プラスミドpGK406−CTP1を得た。
得られたプラスミドpGK406−CTP1をマーカー合成酵素遺伝子URA3中の制限酵素EcoRVで消化した後、製造例1で得られたSaccharomyces cerevisiae YPH499/pGK405−HEM1を宿主酵母株とし、製造例1と同様に形質転換を行い、CTP1とHEM1の発現がPGK1プロモーターで強化された形質転換体「YPH499/pGK405−HEM1/pGK406−CTP1」を得た。
Saccharomyces cerevisiaeのミトコンドリアキャリアーのYPR011C遺伝子のDNA断片を得るために、Saccharomyces cerevisiae Genome Databaseに登録されている遺伝子配列を参考にして、PCRのプライマーとして下記配列を設計した。
5′-GGCCgctagcATGGCAGAAGTACTGACCGTCC-3′(配列番号13)
5′-GGCCggatccTCACCAATTTCTTACAGAATCAC-3′ (配列番号14)
上記プライマーを用いて、Saccharomyces cerevisiae YPH499株のゲノムDNAをテンプレートとし、PCR増幅を行い、その増幅物をSalIおよびBamHIで消化して、YPR011C遺伝子のSalI−BamHI断片を得た。
この断片を非特許文献(J.Biochem.(2009)145:701−708)に記載のpGK406のPGK1プロモーター(PGK3’)とPGK1ターミネーター(PGK5’)の間のSalI−BamHI消化部位に連結し、YPR011C発現プラスミドpGK406−YPR011Cを得た。
得られたプラスミドpGK406−YPR011Cをマーカー合成酵素遺伝子URA3中の制限酵素EcoRVで消化した後、製造例1で得られたSaccharomyces cerevisiae YPH499/HEM1株を宿主酵母株とし、製造例1と同様に形質転換を行い、PGK1プロモーターによりYPR011とHEM1の発現が強化された形質転換体「YPH499/pGK405−HEM1/pGK406−YPR011C」を得た。
製造例2〜8の比較製造例として、製造例2〜8でミトコンドリアキャリアーの遺伝子を含まないプラスミドpGK406そのものを制限酵素EcoRVで消化した後、製造例1で得られたSaccharomyces cerevisiae YPH499/pGK405−HEM1を宿主酵母株とし、製造例1と同様にpGK406を組み込んだ形質転換体「YPH499/pGK405−HEM1/pGK406」を得た。
製造例8で取得した、HEM1遺伝子の発現を増強した酵母YPH499/pGK405−HEM1/pGK406をSD培地(6.7g/L Yeast nitrogen base w/o amino acids(Difco laboratories製)、20g/Lグルコース)5mlで30℃、攪拌200rpmの条件で24時間振盪することにより種母培養を行った。このようにして得られた培養液を、SD培地50mlを含む坂口フラスコへ、OD600=0.15となるよう植菌し、30℃、攪拌120rpmの条件で24時間培養を行った。なお、培養終了時点での最終的なpHは参考例1、2、実施例1の全てでpH2.7〜3.0であった。
また、比較のため、上記YPH499/pGK405−HEM1/pGK406に代えて、親株のSaccharomyces cerevisiae YPH499株を使用して、上記と同様の方法で培養を行った。
これらの24時間培養後の培養液について、培養液中の乾燥細胞濃度と、培養上清中の5−アミノレブリン酸濃度を、それぞれ下記方法により測定した。測定結果を(表1)に示す。
培養液の600nmの吸光度を測定し、換算係数0.3を乗ずることで、培養液当たりの乾燥細胞濃度を算出した。
5−アミノレブリン酸は、下記方法で測定用のサンプルを調製し、Okayamaらの方法(CLIN.CHEM.、36/8、1494−1497(1990))に従い、高速液体クロマトグラフィーにより下記条件で分析した。
測定サンプルの調製:
サンプルの調製は、培養液を1mL回収し、4℃、3000×gにて、10分間遠心分離を行い、培養液上清を得、これを水で10倍希釈した。この水で10倍に希釈した培養液上清に対し、70倍量の試薬A(15%(v/v)アセチルアセトン、10%(v/v)エタノール、4g/L塩化ナトリウム水溶液)および10倍量の試薬B(9%(v/v)ホルムアルデヒド水溶液)を添加し、沸騰水中で15分反応させた。その後、氷冷し、測定用サンプルとした。
分析条件:
カラム;HSSC18SB(Waters社製)
溶離液;2.5%(v/v)酢酸水溶液:メタノール=6:4、
検出器;蛍光検出器(Ex363nm、Em473nm)、
カラム温度;40℃
製造例8で取得した、HEM1遺伝子の発現の強化したYPH499/pGK405−HEM1/pGK406を参考例1と同様のSD培地、またはSD培地に5mMグリシンと40mMレブリン酸を添加した培地を用いて24時間培養を行った。
その後、参考例1と同様の方法で、培養液中の細胞濃度と、培養液上清中の5−アミノレブリン酸濃度を測定した。測定結果を(表2)に示す。
(表2)からわかるように、5mMグリシンと40mMレブリン酸を添加したSD培地を用いることにより、SD培地を用いた場合と比較して5−アミノレブリン産生量が向上した。
製造例2〜7で作製した、HEM1遺伝子と特定のミトコンドリアキャリアー遺伝子の発現を増強した各酵母と、これらの比較株として製造例8で作成したHEM1遺伝子のみを強化した酵母を、SD培地に5mMグリシンと40mMレブリン酸を添加した培地を用いて参考例2と同様に培養し、24時間培養後の培養液について、培養液中の乾燥細胞濃度と、培養上清中の5−アミノレブリン酸濃度を測定した。測定結果を(表3)及び(表4)に示す。
(表3)、(表4)の結果からわかるように、HEM1遺伝子の発現に加え、ミトコンドリアキャリアーの遺伝子MDL1、JEN1、POR2、DIC1、CTP1およびYPR011Cの発現を増強することにより、5−アミノレブリン産生量が向上した。
Claims (4)
- (a)5−アミノレブリン酸合成酵素をコードする遺伝子HEM1、並びに(b)ミトコンドリア膜上のキャリアタンパク質をコードする遺伝子であるMDL1、JEN1、POR2、DIC1、CTP1及びYPR011Cから選ばれる1種以上の発現が増強された遺伝子組み換え酵母であって、
酵母中で発現するプロモーターの下流に遺伝子(a)を有するベクターと酵母中で発現するプロモーターの下流に遺伝子(b)を有するベクターで形質転換された遺伝子組み換え酵母、あるいは酵母中で発現するプロモーターの下流に遺伝子(a)及び遺伝子(b)を有するベクターで形質転換された遺伝子組み換え酵母。 - 酵母中で発現するプロモーターが、PGKプロモーターである請求項1記載の遺伝子組み換え酵母。
- 酵母が、Saccharomyces cerevisiaeである請求項1又は2記載の遺伝子組み換え酵母。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の遺伝子組み換え酵母を培養することを特徴とする5−アミノレブリン酸又はその塩の製造法。
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