JP6497202B2 - 点火時期制御装置 - Google Patents
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Description
その制御部は、
(1)前記機関の燃焼室内での燃料の燃焼に伴う熱の発生率が最大となる熱発生率最大時期の目標値である目標最大時期(目標熱発生率最大時期)を前記機関の運転状態を表すパラメータに基づいて決定し、
(2)前記燃焼室内に形成された混合気の燃料が実際に燃焼を開始する着火時期から前記目標最大時期までの期間である前半燃焼期間の長さを機関回転速度及び前記目標最大時期における燃焼室容積に基づいて計算により求め、
(3)前記目標最大時期と前記求められた前半燃焼期間の長さとから前記着火時期の目標値である目標着火時期を計算により求め、
(4)前記機関回転速度及び特定時期における前記燃焼室内の燃料密度に基づいて、前記点火時期から前記着火時期までの期間である着火遅れ期間の長さを計算により求め、
(5)前記求められた目標着火時期と前記求められた着火遅れ期間の長さとから目標点火時期を計算により求め、
(6)前記求められた目標点火時期にて実際の点火を行う。
前記制御部は、前記目標着火時期が圧縮上死点後のクランク角である場合(即ち、ATDC着火の場合)、前記特定時期における前記燃焼室内の燃料密度として「前記目標着火時期における燃料密度」を採用して前記着火遅れ期間の長さを計算により求める。
前記制御部は、「MBT(Minimum advance for the Best Torque;機関の発生トルクが最大となる点火時期)にて燃料が点火された際に前記機関が発生するトルク」に対する「目標トルク」の比である、目標トルク効率を、前記機関の運転状態を表すパラメータに基づいて決定し、前記決定された目標トルク効率に基づいて前記目標最大時期を決定する。
前記制御部は、
NEを前記機関回転速度、
V@θdQpeak_tgtを前記目標最大時期における燃焼室容積、
aを前記前半燃焼期間の長さ、
C3,α及びβのそれぞれを所定の定数とするとき、
a=C3・(V@θdQpeak_tgt)α・NEβ
なる前半燃焼期間長モデル式に基づいて前記前半燃焼期間の長さaを計算するように構成されている。
前記制御部は、
NEを前記機関回転速度、
ρfuel@FAを前記目標着火時期における燃料密度、
ρfuel@SAzを前記仮想の点火時期における燃料密度、
τを前記着火遅れ期間の長さ、
τzを前記仮想の着火遅れ期間の長さ、
C1、C2、φ、ψ、χ及びδのそれぞれを所定の定数とするとき、
前記目標着火時期が圧縮上死点後のクランク角である場合、
τ=C2・ρfuel@FAφ・NEψ
なる着火遅れ期間長モデル式に基づいて前記着火遅れ期間の長さτを計算し、
前記目標着火時期が圧縮上死点前のクランク角である場合、
τz=C1・ρfuel@SAzχ・NEδ
なる着火遅れ期間長モデル式に基づいて前記仮想の着火遅れ期間の長さτzを計算するように構成されている。
図1は、本装置をピストン往復動型・火花点火式・ガソリン燃料・多気筒(4気筒)・4サイクル内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。なお、図1は、特定の気筒の断面のみを図示しているが、他の気筒も同様な構成を備えている。
排気還流管55の一端は、エキゾーストマニホールド51の集合部に連通している。排気還流管55の他端は、インテークマニホールド41のサージタンク部41bに連通している。
EGRバルブ56は、排気還流管55に配設されている。EGRバルブ56は指示信号に応答して排気還流管55が形成する通路(排気還流路)の断面積を変更するようになっている。
スロットルポジションセンサ62は、スロットル弁44の開度を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。
カムポジションセンサ63は、インテークカムシャフトが所定角度から90度、次いで90度、更に180度回転する毎に一つのパルスを出力するようになっている。
クランクポジションセンサ64は、クランク軸24が10度回転する毎にパルスを出力するようになっている。クランクポジションセンサ64から出力されるパルスは機関回転速度NEを表す信号に変換されるようになっている。更に、カムポジションセンサ63及びクランクポジションセンサ64からの信号に基いて、各気筒のクランク角θが求められるようになっている。
アクセル開度センサ68は、運転者によって操作されるアクセルペダル81の操作量を検出し、アクセルペダル81の操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
電気制御装置70のCPU71(以下、単に「CPU」と称呼する。)は、後に詳述するように、図2に概略を示した工程に従って点火時期(目標点火時期)を決定し、実際の点火時期が「その決定した目標点火時期」に一致するように点火信号をイグナイタ38に送信する。なお、本明細書において、単位[deg]及び単位[CA]は、何れも「クランク軸が1回転する角度を360°としたときのクランク角1°」を示す。一般に、[deg]は特定のクランク角を指し示す場合に使用され、[CA]はクランク角の幅を示す場合に使用される。
上述したように、本装置は、着火遅れ期間長モデル式及び前半燃焼期間長モデル式等を用いた計算を行うことにより、目標点火時期SAを求める。従って、以下において、これらのモデル式及びそのモデル式の正当性について説明する。
(1)モデル式
着火遅れ期間長τは、図3を参照しながら既に説明したように、点火プラグから火花が発生させられる点火時期から、燃焼室内に形成された混合気の燃料が実際に燃焼を開始する着火時期までの期間の長さである。即ち、着火遅れ期間は、点火プラグの電極間に火花放電が行われる点火時期から、この火花によって生成された火炎核が成長して爆発的な燃焼が開始する着火時期までの期間である。着火遅れ期間長τの単位はクランク角幅[CA]であるが、モデル式の都合上[ms]の単位を有する長さとして計算される場合がある。
(条件τ2)EGR率Gegrは「0」である。即ち、外部EGRは実行されていない。
(条件τ3)冷却水温THWは機関完全暖機終了を示す冷却水温閾値Tth(例えば、80℃)以上である。この条件τ3は機関が完全暖機後であることという条件であるので、冷却水温THWに代わり機関の潤滑油の温度が条件τ3の判定に用いられてもよい。
(条件τ4)吸気弁の開弁特性(吸気弁開弁時期IVO、吸気弁閉弁時期IVC、吸気弁作用角VCAM、吸気弁位相角INVT及び吸気弁リフト量IVLiftの最大値等)が吸気弁の基準特性(吸気弁基準特性)に設定されている。即ち、吸気弁開弁時期IVOが基準開弁時期IVOrに、吸気弁閉弁時期IVCが基準閉弁時期IVCrに、吸気弁作用角VCAMが基準作用角VCAMrに、吸気弁位相角INVTが基準位相角INVTrに、吸気弁リフト量IVLiftの最大値が基準最大値に、それぞれ設定されている。
(条件τ5)排気弁の開弁特性(排気弁開弁時期EVO、排気弁閉弁時期EVC、排気弁位相角EXVT及び排気弁リフト量EVLiftの最大値等)が排気弁の基準特性に設定されている。即ち、排気弁開弁時期EVO、排気弁閉弁時期EVC、排気弁位相角EXVT及び排気弁リフト量EVLiftのそれぞれが、それぞれの基準値に設定されている。
C1は、実験等により予め適合された定数であり、
ρfuel@SAは、点火時期SAにおける筒内(燃焼室内)の燃料密度(=筒内燃料量[mol]/点火時期SAでの燃焼室容積[L])であり、
χ及びδは、何れも実験等により予め適合された定数である。
NEは、機関回転速度(本明細書において同じ。)である。
C2は、実験等により予め適合された定数であり、
ρfuel@FAは、着火時期における筒内の燃料密度(=筒内燃料量[mol]/着火時期での燃焼室容積[L]]であり、
φ及びψは、何れも実験等により予め適合された定数である。
次に、上記(1)式及び(2)式に基づくことにより、着火遅れ期間長τを精度良く推定できる点について説明する。即ち、(1)式及び(2)式が着火遅れ期間モデル式として適切である点について説明する。
図4はBTDC着火であり且つ上記条件τ1〜τ5が総て成立している場合における、筒内燃料密度ρfuel@SAと着火遅れ期間長τ[ms]との関係を種々の機関回転速度NEに対して実測した結果を示すグラフである。
図6はATDC着火であり且つ上記条件τ1〜τ5が総て成立している場合であって機関回転速度NEが1200[rpm]であるときに、筒内燃料密度ρfuel@FAと着火遅れ期間長τ[ms]との関係を種々の負荷率KLに対して実測した結果を示すグラフである。なお、負荷率KLは、空気充填率あり、着目する気筒が一回の吸気行程において吸入する空気量をMc[g]、空気密度をρ[g/L])、機関の排気量をLv[L]、機関の気筒数を「4」であるとしたとき、次式により算出される。
KL={Mc/(ρ・Lv/4)}・100(%)
着火遅れ期間においては点火用火花により生成された火炎核が成長している。一方、着火遅れ期間において燃焼室容積は時々刻々変化しているから、火炎核の成長に相関が強い筒内燃料密度ρfuelも時々刻々変化している。従って、本来的には時々刻々変化する筒内燃料密度ρfuelを変数として有する着火遅れ期間のモデル式により着火遅れ期間の長さを推定することが好適であると考えられる。しかしながら、そのような着火遅れ期間のモデル式は複雑化する。そこで、発明者は、着火遅れ期間における燃料密度ρfuelの平均的な値を代表する値として「特定の時期(所定時期)での燃料密度ρfuel」を着火遅れ期間のモデル式の変数として採用することを検討した。
(1)モデル式
前半燃焼期間長aは、図3を参照しながら既に説明したように、着火時期から熱発生率dQ/dθが最大となる時期(即ち、熱発生率最大時期θdQpeak)までの期間の長さである。熱発生率最大時期θdQpeakの単位は圧縮上死点後のクランク角[deg]であり、前半燃焼期間長aの単位はクランク角(クランク角の幅)[CA]である。
(条件a2)排気弁の開弁特性(排気弁開弁時期EVO、排気弁閉弁時期EVC、排気弁位相角EXVT及び排気弁リフト量EVLiftの最大値等)が排気弁の基準特性に設定されている。即ち、排気弁開弁時期EVO、排気弁閉弁時期EVC、排気弁位相角EXVT及び排気弁リフト量EVLiftの最大値のそれぞれが、それぞれの基準値に設定されている。なお、実際には、この条件a2は必須ではなく、排気弁の開弁特性は任意の特性であってもよい。
C3は、実験等により予め適合された定数であり、
V@θdQpeakは、熱発生率最大時期θdQpeakにおける燃焼室容積[L]であり、
α及びβは、何れも実験等により予め適合された定数である。
次に、上記(3)式に基づくことにより、前半燃焼期間長aを精度良く推定できる点について説明する。即ち、(3)式が前半燃焼期間長モデル式として適切である点について説明する。
図11は、点火時期SAを除く機関運転状態パラメータのうちEGR率Gegrのみが互いに異なる複数の機関運転状態において取得された熱発生率波形であって、熱発生率最大時期θdQpeakを互いに一致させるように点火時期SAを調整した熱発生率波形を重ねて表示したグラフである。
図12は、点火時期SAを除く機関運転状態パラメータのうち空燃比A/Fのみが互いに異なる複数の機関運転状態において取得された熱発生率波形であって、熱発生率最大時期θdQpeakを互いに一致させるように点火時期SAを調整した熱発生率波形を重ねて表示したグラフである。
図13は、点火時期SAを除く機関運転状態パラメータのうち冷却水温THWのみが互いに異なる複数の機関運転状態(即ち、機関暖機状態のみが互いに異なる運転状態)において取得された熱発生率波形であって、熱発生率最大時期θdQpeakを互いに一致させるように点火時期SAを調整した熱発生率波形を重ねて表示したグラフである。
次に、本装置の点火時制御制御のための具体的な作動について説明する。ECU70は、上記(1)乃至(3)式により表されるモデル式であって「吸気弁位相角INVT及び吸気弁作用角VCAM」の組み合わせ毎に適合・作成されたモデル式を、ROM72内に格納している。更に、CPUは、点火時期を制御するために図18にフローチャートにより示したルーチンをクランク角が180[CA]回転する毎に繰り返し実行する。なお、このルーチンは、上述の条件τ1(空燃比A/F=理論空燃比)、条件τ2(EGR率Gegr=0)、条件τ3(冷却水温THW≧Tth)及び条件τ5(排気弁の開弁特性が排気弁の基準特性である:条件a2)が成立している場合に実行される。
熱発生率最大時期の目標値である目標最大時期(目標熱発生率最大時期θdQpeak_tgt)を機関の運転状態を表すパラメータ(運転状態パラメータ)に基づいて決定し(ステップ1810及びステップ1815)、
前半燃焼期間の長さ(前半燃焼期間長a)を機関回転速度(NE)及び目標最大時期における燃焼室容積(V@θdQpeak_tgt)に基づいて計算により求め(ステップ1825)、
目標最大時期と前半燃焼期間の長さとから目標着火時期(FA)を計算により求め(ステップ1830)、
機関回転速度(NE)及び「特定時期における前記燃焼室内の燃料密度(ρfuel@FA又はρfuel@SAz)に基づいて着火遅れ期間の長さ(τ)を計算により求め(ステップ1845、又は、ステップ1860乃至ステップ1890)
求められた目標着火時期と求められた着火遅れ期間の長さとから目標点火時期(SA)を計算により求め(ステップ1855)、
求められた目標点火時期にて実際の点火を行う(ステップ1857)。
目標トルク効率(ηTQ)を機関10の運転状態を表すパラメータに基づいて決定し(ステップ1810)、前記決定された目標トルク効率に基づいて前記目標最大時期を決定する(ステップ1815)。
Claims (5)
- 内燃機関の点火プラグから火花が発生させられる点火時期を制御する制御部を備えた点火時期制御装置において、
前記制御部は、
前記機関の燃焼室内での燃料の燃焼に伴う熱の発生率が最大となる熱発生率最大時期の目標値である目標最大時期を前記機関の運転状態を表すパラメータに基づいて決定し、
前記燃焼室内に形成された混合気の燃料が実際に燃焼を開始する着火時期から前記目標最大時期までの期間である前半燃焼期間の長さを機関回転速度及び前記目標最大時期における燃焼室容積に基づいて計算により求め、
前記目標最大時期と前記求められた前半燃焼期間の長さとから前記着火時期の目標値である目標着火時期を計算により求め、
前記機関回転速度及び特定時期における前記燃焼室内の燃料密度に基づいて、前記点火時期から前記着火時期までの期間である着火遅れ期間の長さを計算により求め、
前記求められた目標着火時期と前記求められた着火遅れ期間の長さとから目標点火時期を計算により求め、
前記求められた目標点火時期にて実際の点火を行う、
ように構成された点火時期制御装置。 - 請求項1に記載の内燃機関の点火時期制御装置において、
前記制御部は、
前記目標着火時期が圧縮上死点後のクランク角である場合、前記特定時期における前記燃焼室内の燃料密度として前記目標着火時期における燃料密度を採用して前記着火遅れ期間の長さを計算により求め、
前記目標着火時期が圧縮上死点前のクランク角である場合、仮想の点火時期を設定し、前記特定時期における前記燃焼室内の燃料密度として前記仮想の点火時期における燃料密度を採用して仮想の着火遅れ期間の長さを計算により求め、前記仮想の点火時期と前記仮想の着火遅れ期間の長さとから仮想の着火時期を計算により求め、前記仮想の着火時期が前記目標着火時期と一致する場合に前記仮想の着火遅れ期間の長さを前記着火遅れ期間の長さとして決定し、前記仮想の着火時期が前記目標着火時期と一致しない場合には前記仮想の点火時期を変更して前記仮想の着火遅れ期間の長さを再度計算により求め直すように構成された、
点火時期制御装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の点火時期制御装置において、
前記制御部は、
MBTにて燃料が点火された際に前記機関が発生するトルクに対する目標トルクの比である目標トルク効率を前記機関の運転状態を表すパラメータに基づいて決定し、前記決定された目標トルク効率に基づいて前記目標最大時期を決定するように構成された、
点火時期制御装置。 - 請求項1又は2に記載の内燃機関の点火時期制御装置において、
前記制御部は、
NEを前記機関回転速度、
V@θdQpeak_tgtを前記目標最大時期における燃焼室容積、
aを前記前半燃焼期間の長さ、
C3,α及びβのそれぞれを所定の定数とするとき、
a=C3・(V@θdQpeak_tgt)α・NEβ
なる前半燃焼期間長モデル式に基づいて前記前半燃焼期間の長さaを計算するように構成された点火時期制御装置。 - 請求項2に記載の内燃機関の点火時期制御装置において、
前記制御部は、
NEを前記機関回転速度、
ρfuel@FAを前記目標着火時期における燃料密度、
ρfuel@SAzを前記仮想の点火時期における燃料密度、
τを前記着火遅れ期間の長さ、
τzを前記仮想の着火遅れ期間の長さ、
C1、C2、φ、ψ、χ及びδのそれぞれを所定の定数とするとき、
前記目標着火時期が圧縮上死点後のクランク角である場合、
τ=C2・ρfuel@FAφ・NEψ
なる着火遅れ期間長モデル式に基づいて前記着火遅れ期間の長さτを計算し、
前記目標着火時期が圧縮上死点前のクランク角である場合、
τz=C1・ρfuel@SAzχ・NEδ
なる着火遅れ期間長モデル式に基づいて前記仮想の着火遅れ期間の長さτzを計算するように構成された点火時期制御装置。
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