〔第一の実施形態〕
本発明の第一の実施形態を、図1ないし17を参照しながら説明する。なお、当該説明の中の前後左右および上下は、図2に示される掘削装置1を組立てた状態の概略図に基づいて定義されるものとする。また、特に記載がない限り上下方向と軸方向とは同義である。
本発明の第一の実施形態に係る掘削装置1は、図1および図2に示すように、回転駆動源としてのアースオーガ2と、アースオーガ2の回転駆動力を伝達しかつ掘削した廃土を排出するためのスクリューロッド3と、打ち込みに用いられるダウンザホールハンマー4と、地盤を切削するためのドリル片を備えたパイロットビット5と、このパイロットビット5と着脱自在に接続するリングビット6と、杭として埋め込まれるケーシング7と、このケーシング7の下端部に溶接によって接合されたケーシングシュー8とを有して構成されている。
アースオーガ2は、地盤を掘削するために必要な回転駆動力を供給するための構成部品であって、前記回転駆動力を発生させる電気モータ(図示せず)と、この電気モータを収容する機器枠体2bと、電気モータの回転軸と接続し下方へと延出する出力軸2cとから構成されている。前記出力軸2cは、スクリューロッド3の上端部と接続し、スクリューロッド3の下端部に取付けられたパイロットビット5およびこれと回転伝達可能に接続するリングビット6へと回転駆動力を伝達する。
スクリューロッド3は、アースオーガ2によって生み出された回転駆動力をパイロットビット5およびリングビット6に伝達するとともに、掘削した廃土を地表へ排出するための構成部品であって、例えば鉄またはその合金等の金属からなり、上下に伸長する円管状のロッド部3aと、その周囲に形成された螺旋状を呈したスクリュー部3bとから構成されている。ロッド部3aの上端は、アースオーガ2の出力軸2cと接続し、また、ロッド部3aの下方には、ダウンザホールハンマー4が配設され、さらにその下端部に、詳細については後述するパイロットビット5が取付けられている。ここで、ダウンザホールハンマー4は、パイロットビット5に押圧力(打ち込み力)を印加することでこれに下方推進力を付与し、もって迅速で効率的な削孔形成を可能にする構成部品である。
パイロットビット5は、地盤を掘削し削孔を形成するための構成部品であって、例えば鉄またはその合金等の金属からなり、図4および5に示すように、小径をなす円筒状の駆動軸部5aと、この駆動軸部5aの下方にあって大径をなす円盤状のヘッド部5bとから構成されている。
前記駆動軸部5aは、スクリューロッド3のロッド部3aの下端部と接続しており、これによってアースオーガ2が具備する電気モータからの回転駆動力が、スクリューロッド3を通じて伝達される構造となっている。また、駆動軸部5aは、ダウンザホールハンマー4と、例えばスプライン嵌合によって上下方向(軸方向)に相対移動可能に接続している。
前記ヘッド部5bは、図3に示すように、その先端面(下端面)に多数の突起状部材からなる中心側ドリル片5cが点在するように設けられている。この中心側ドリル片5cは、駆動軸部5aを通じて伝達された回転駆動力により回転し、その切削作用で地盤を掘削する部位である。これにより、地表Tの下方にある地盤が掘削され削孔が形成される。
また、前記ヘッド部5bは、図5に示すように、その外周面にリングビット6と回転伝達可能な状態で接続(チャッキング)するための継手要素としてのマウント構造(詳細については後述するバヨネットマウント構造)の一部を構成するロック用切欠部5gが設けられている。このロック用切欠部5gは、例えば周回りに略60度の等間隔で6箇所配設されており、排出溝5eと連通する開口部を有し、かつこの開口部から、アースオーガ2が具備する前記電気モータの回転方向と逆方向(図5では平面視において左回り)に向けて延在する凹部として形成されている。このロック用切欠部5gは、縦断面形状が縦長の矩形状を呈し、かつ前記開口部から周回りに所定の範囲にかけて延在することで側面視における形状が横長の矩形状を呈しており、さらに組付け性を向上させるために、例えば上端部が内側下方へ傾斜している。
さらに、前記ヘッド部5bは、図4および5に示すように、その上部にダウンザホールハンマー4からの押圧力(打ち込み力)を受ける部位として機能する肩部5hが、半径方向外方へ円盤状に突出するようにして形成されている。この肩部5hの下端面5i(この下端面5iは、特許請求の範囲に記載の「パイロットビットの端面」に相当する)は、詳細については後述するケーシングシュー8の上端面8cと対向し、ダウンザホールハンマー4からの押圧力(打ち込み力)をこの上端面8cへと伝達するように構成されている。
パイロットビット5の内部には、図3および4に示すように、略中心軸方向に延びるエアー通路5dが形成されている。このエアー通路5dは、掘削した土を上方へ押し上げるための加圧空気を供給するための通路であって、前記駆動軸部5aおよびヘッド部5bの略軸中心に沿って延在するとともに、前記ヘッド部5bの先端部分(下端部分)の近傍において複数(4体)に分岐している。さらにこれら分岐路は、それぞれが前記ヘッド部5bの先端面(下端面)において開口するように形成されている。
前記複数(4体)に分岐したエアー通路5dの各開口部からは、排出溝5eが半径方向外方に向かって延設されている。これら複数の排出溝5eは、前記ヘッド部5bの外周部まで放射状に延出した後、図4および5に示すように、ヘッド部5bの外周面上に沿って上方へと延在し、ヘッド部5bの上端面5fにおいて開口するように設けられている。上端面5fにおける各排出溝5eの開口部は、ケーシング7の内部空間7aに連通しており、掘削により生じた廃土等が、前記エアー通路5dから供給される加圧空気により各排出溝5eを通って当該内部空間7aへ排出されるように構成されている。
リングビット6は、ケーシング7直下の地盤を掘削するための構成部品であって、例えば鉄およびその合金等の金属からなり、図6ないし8に示すように、リング状を呈したヘッド部6aと、このヘッド部6aの上面から上方へ延在する円筒状を呈した筒状部6bとから構成されている。
前記ヘッド部6aは、その先端面(下端面)が地盤と接触する部位であって、先端面(下端面)の外周縁部には、地盤を掘削するための外周縁ドリル片6cが設けられている。
なお、前記ヘッド部6aの外周面は、図4、7および12に示すように、下方から上方へ向かうにつれて次第に外径寸法が小さくなるテーパ形状を呈している。このように、ヘッド部6aの外周面をテーパ形状としたことで、ヘッド部6aの外周面と削孔側面とが圧着するのを回避し、これによりヘッド部6aの外周面を介しての土圧の作用を抑えて掘削装置1にかかる負荷が低減される構造となっている。
前記筒状部6bは、ケーシングシュー8の内側に挿入される部位であって、その外周面の中間位置に、縦断面形状が凹状を呈した第1係止部(以下「溝部」という)6dが全周にわたってリング状に形成されている。当該溝部6dは、詳細については後述する連接部材10の一部が挿入され、当該連接部材10を介してケーシングシュー8と連接するように構成されている。
また、前記筒状部6bは、図6に示すように、パイロットビット5へ着脱自在に取付くバヨネットマウントの一部を構成するロック用突起部6fが、その内周面に設けられている。このロック用突起部6fは、例えば周回りに略60度の等間隔で6箇所配設されており、その周方向長さLは、組付け性を確保するために、パイロットビット5が備える排出溝5eの幅未満に設計されている。また、ロック用突起部6fの縦断面形状は、パイロットビット5に形成されたロック用切欠部5gの縦断面と相似形の略矩形状を呈しており、組付け性を向上させるために、例えば上端部が内側下方に傾斜した面取部6gが設けられている。
ケーシング7は、削孔に打ち込まれた状態のまま本杭として利用される構成部品であって、図1および2に示すように、例えば鉄およびその合金等の金属から形成された円管状の鋼管からなる。このケーシング7の下端部には、図4に示すように、ケーシングシュー8が、例えば溶接Wによって同軸状に接合されている。また、後述するように、ケーシング7の内側に形成された中空状の内部空間7aには、削孔作業中、その略中心軸回りに回転駆動されるスクリューロッド3およびこれに接続するパイロットビット5が挿入される。
ケーシングシュー8は、ケーシング7の下端部と接合する構成部品であって、例えば鉄およびその合金等の金属から形成された円筒部材からなり、図9および10に示すように、上部に位置する小径円筒部として形成された本体基部8aと、この本体基部8aから下方に向かって延出する大径円筒部として形成された支持部8bとから構成されている。なお、本発明の第一の実施形態においては、掘削抵抗を考慮して、支持部8b(大径円筒部)の外周面の半径と本体基部8a(小径円筒部)の外周面の半径との寸法差が、例えばケーシング7の板厚分と略同じとなるように設計されている。
前記本体基部8aは、ケーシング7の下端部内側に挿入される部位であって、図4に示すように、ケーシング7の下端部先端と対向する位置において、例えばその全周にわたり溶接Wされている。また、本体基部8aの内側には、図4および10に示すように、パイロットビット5のヘッド部5bが収容され、その上端面8cは、パイロットビット5の肩部5hにおける下端面5iと対向しかつこの下端面5iを通じてダウンザホールハンマー4からの押圧力(打ち込み力)を受ける構成となっている。
前記支持部8bは、その内側にリングビット6の筒状部6bを相対回転可能に収容する部位であり、図4および10に示すように、その内周面8dの内径は、本体基部8aの内周面の内径よりも大きく、これによって形成された本体基部8aの内周面の下方の段状となっている下端面8iと支持部8bの内周面8dとで囲まれた円状の空間に、リングビット6の筒状部6bが収容される構造となっている。言い換えれば、ケーシングシュー8のリングビット6を収納する部分より上方の内径を縮小して形成される段部の下側側に下端面8iを形成している。
また、図12に示すように、ケーシングシュー8の下端面8iは、リングビット6の上部を構成する筒状部6bの上端面6hと対向しており、この対向する領域S1(第一の領域)に、緩衝部材11が配設されている。
この緩衝部材11は、ケーシングシュー8の下端面8iとリングビット6の上端面6hとが直接当接することを防止し、かつダウンザホールハンマー4からの大きな押圧力(打ち込み力)に起因した衝撃を吸収することで、掘削装置1の振動・騒音を抑制させるための部品であって、例えば、木、硬質ゴムまたは樹脂等の比較的硬質な素材からなる。また、その形状は、図12および15に示すように、縦断面が矩形状の平板でリング状を呈しており、その外径寸法D11は、例えばケーシングシュー8の下端面8iの外径寸法よりも小さく且つリングビット6の上端面6hの外径寸法と同等またはそれ以上大きい寸法とし、また、その内径寸法d11は、例えばケーシングシュー8の下端面8iにおける内径寸法およびリングビット6の上端面6hにおける内径寸法と同等またはそれ以上大きい寸法としている。さらに、この緩衝部材11の表面11aには、平滑処理が施されており、これによって、ケーシングシュー8の下端面8iおよびリングビット6の上端面6hとの摩擦抵抗が低減され、リングビット6に共連れしてケーシングシュー8が回転することを防止している。
また、前記支持部8bの内周面8dの中間位置(前記リングビット6の溝部6dに対向する位置)には、図10および12に示すように、縦断面形状が凹状を呈した第2係止部(以下「溝部」いう)8eが全周にわたってリング状に形成されている。当該溝部8eは、下記する連接部材10の一部を収納する部位である。
また、前記支持部8bの側壁には、図9および10に示すように、支持部8bの外周面から溝部8eに至るワイヤ挿入孔(以下「貫通孔」という)8fが設けられている。この貫通孔8fは、連接部材10としてのワイヤー10aを、支持部8bの外側から内側に挿入して溝部6dと溝部8eとの間に装着するための孔である。貫通孔8fは、前記装着を容易にするために、挿入されたワイヤー10aが、リング状を呈する溝部6d,8eの略接線方向へ案内されるように、半径方向に対して傾斜して形成されている。
さらに、前記支持部8bの外周面には、図9ないし12に示すように、上下方向(軸方向)に伸長しかつ半径方向外方に突出する突起部8gが、例えば周回りに略45度の等間隔で複数箇所(8箇所)に配設されている。この突起部8gは、回転防止機構を構成する部位であって、例えば鍛造品であるケーシングシュー8を切削加工することで一体的に形成されている。この突起部8gが設けられたことで、ケーシングシュー8と地盤との間の接触抵抗が増大し、ケーシングシュー8およびこれと接合するケーシング7が、その内側に収容するスクリューロッド3、パイロットビット5およびリングビット6の回転に共連れして一緒に回転することを防止する効果がもたらされる。
ここで、本発明の第一の実施形態においては、図12に示すように、突起部8gの最外径寸法D8がリングビット6の最外径寸法D61と同等以下となるように構成されている。当該構成によれば、突起部8gがリングビット6によって形成された削孔領域より外側に突出することがなくなる。このため、突起部8gを設けたことで掘削抵抗が大きく増加することを防止できる。これにより、共連れを効果的に抑制しつつ、削孔作業の効率を低下させることのない回転防止機構が実現される。なおリングビット6によって形成された掘削穴の内径は、土圧によって小さくなろうとするため、形成された掘削穴の内周面に突起部8gが食い込み、これによって回転抑止効果は十分生じる。
次に、前記掘削装置1を用いて削孔作業を実施するための具体的手順を、掘削装置1の組立手順と、組立てた掘削装置1を用いて削孔を形成する手順(削孔作業手順)とに分けて説明する。
掘削装置1の組立は、図1に示すように、削孔を行う地盤の地表Tに装置固定枠体9を構築することから始める。この装置固定枠体9の略中央には、開口部9aが開口している。
装置固定枠体9を構築後、開口部9aにケーシング7を挿入してこれを略鉛直に起立させる。次に、予め工場において、ケーシングシュー8の下端部にリングビット6を、後述する連接構造により、相対移動(回転移動および上下移動)可能かつ互いが上下方向(軸方向)に外れない状態に取り付けておいたものを用意し、そのケーシングシュー8を、ケーシング7の下端に溶接Wにより接合する。
ここで前記連接構造について説明すると、この連接構造は、図12に示すように、リングビット6の筒状部6bに形成された溝部6dと、ケーシングシュー8の支持部8bに形成された溝部8eと、溝部6dと溝部8eの間に介在する連接部材10とから構成されている。本発明の第一の実施形態では、連接部材10として、図14に示すように、溶接Pによって両端が接続されることで最終的にリング状となる鉄製ワイヤー10aを用いている。
前記連接構造を用いてリングビット6とケーシングシュー8とを連接するにあたり、先ずはリング状を呈した緩衝部材11を上端面6h上に載置する。次に、リングビット6の筒状部6bをケーシングシュー8の支持部8b内に挿入する。この時、筒状部6bの外周面に形成された凹状の溝部6dとケーシングシュー8の支持部8bに設けられた溝部8eとの上下位置(軸方向位置)を合わせる。その後、ワイヤー10aを、ケーシングシュー8の外側から貫通孔8fへと挿入し、凹状の両溝部8e,6dの間全体にワイヤー10aを這わす様にして装着する。装着されたワイヤー10の両端は貫通孔8fを通じて溶接Pされ、さらにその後、貫通孔8fに図示しない金属片を埋め込みこれを溶接することで閉塞する。この時、緩衝部材11は、ケーシングシュー8の下端面8iとこれに対向する前記リングビットの上端面6hとの間の第一の領域S1に配設される。以上によりリングビット6とケーシングシュー8との連接が完了する。
前記連接構造においては、構成部位の各部寸法が、以下に示す関係を満たすように設計されている。すなわち、図12および14に示すように、ケーシングシュー8の支持部8bにおける内周面8dの内径寸法は、筒状部6bの外径寸法より大きく、ワイヤー10aの外径寸法D10(図14参照)より小さく、筒状部6bの外径寸法は、ワイヤー10aの内径寸法d10(図14参照)よりも大きく設計されている。また、溝部6d,8eの幅(図12における上下寸法)は、組付け性を考慮して、ワイヤー10aの線径αの略1.5倍となるように設計することが好ましい。
前記構成からなる連接構造によれば、リングビット6とケーシングシュー8との間に隙間が形成されることで相対回転を可能にしつつ、図13に示すように、両溝部6d,8eとワイヤー10aが干渉し合うことで、リングビット6とケーシングシュー8とを確実に連接することが可能になる。
図1、図2に戻って、前記装置固定枠体9の構築およびケーシング7の起立およびケーシング7へのケーシングシュー8等の取付作業を進めると同時に、アースオーガ2、スクリューロッド3、ダウンザホールハンマー4およびパイロットビット5とからなるアセンブリを、図1に示されるような所定の形に組立てる。具体的は、最上部にアースオーガ2を配設し、このアースオーガ2が備える出力軸2cにスクリューロッド3の一端部を接続し、さらにこのスクリューロッド3の他端部にダウンザホールハンマー4を接続し、このダウンザホールハンマー4の下方に、パイロットビット5の駆動軸部5a(図4参照)を、例えばスプライン嵌合等によって取り付ける。次に、前記アセンブリをクレーンで吊しながら起立したケーシング7内へと挿入する。これによって、図2に示す状態となる。
図2で示される掘削装置1において、前記アセンブリの上端部に位置するアースオーガ2が、ケーシング7の上端部分に連結される。このときアースオーガ2の機器枠体2bは、内部に収容する電気モータに共連れして回転しないように、例えば図16および17に示すように、回転止め手段としての回転止めキャップ20を介してケーシング7の上端部分に連結されている。この回転止めキャップ20は、上方が閉塞し下方が開口する中空円筒状部材からなるキャップ本体20aを有し、上方にアースオーガ2の機器枠体2bの下端部が溶接等により固定され、内周面に中心軸に向かって内方に突出するキャップ側回転係合板20bが円周方向に沿って略等間隔で複数設けられている。一方、ケーシング7の上端部の外周面には、前記キャップ側回転係合板20bと係合するための部位として、中心軸から外方に突出するケーシング側回転係合板7bが円周方向に沿って略等間隔で複数設けられている。そして、この回転止めキャップ20を構成しているキャップ本体20aは、当該キャップ本体20aの下端側に設けられた開口部から、ケーシング7の上端部分を覆うように外嵌されることによって装着される構造となっている。
また、図2で示される掘削装置1において、前記アセンブリの下端部に位置するパイロットビット5が、ケーシングシュー8を介してケーシング7の下方に取付けられたリングビット6に、バヨネットマウントを用いて着脱自在に接続(チャッキング)される。当該バヨネットマウント構造について詳述すると、パイロットビット5の外周面には、前述したように、ロック用切欠部5gが、周回りに略60度の等間隔で所定の範囲、すなわち、排出溝5eを起点にアースオーガ2が備える電気モータの回転方向と逆の方向(図5では平面視において左回りの方向)へ例えば20度回転した範囲に6箇所設けられ、また、リングビット6における内周壁面には、前述したように、ロック用突起部6fが周回りに略60度の等間隔で所定の範囲に6箇所設けられている(図5ないし8参照)。
前記構成からなるバヨネットマウント構造を用いた接続手順は、以下のとおりである。はじめに、リングビット6のロック用突起部6fとパイロットビット5が備える排出溝5eとが、平面視において重なるように位置合わせする(当該位置は、ロック用切欠部5gおよびロック用突起部6fどうしが非嵌合状態となる角度位置である)。その状態でリングビット6のロック用突起部6fとパイロットビット5のロック用切欠部5gとが、側面視において同じ高さとなるよう双方または一方を軸方向に移動させる。その後、リングビット6をロック用切欠部5gが延在する所定の方向(図5では平面視において左回り。当該回転方向は、電気モータの回転方向と逆の回転方向)へ例えば20度回転させる(リングビット6を静止させた状態でパイロットビット5を回転させる場合には、平面視において右回りに例えば20度回転させる)。これにより、リングビット6の突起部6fとパイロットビット5のロック用切欠部5gとが嵌合状態となる。なお当該嵌合状態を解除するには、平面視において、リングビット6のロック用突起部6fがパイロットビット5の排出溝5eの位置にくるように、リングビット6を前記所定の方向と逆の右周りに例えば20度回転(または、パイロットビット5を平面視において左回りに例えば20度回転)させればよい。これによって、掘削装置1の組立てが完了する。
次に、削孔作業の手順について説明する。削孔作業は、組立てられた掘削装置1のアースオーガ2が備える電気モータを起動させることで開始される。前記電気モータの回転駆動力は、出力軸2cに接続するスクリューロッド3を介してパイロットビット5およびこれに接続するリングビット6へと伝達され、パイロットビット5が備える中心側ドリル片5cおよびリングビット6が備える外周縁ドリル片6cによって地盤を掘削する。掘削された土は、エアー通路5dを通じて送り込まれる加圧空気とともに排出溝5eを通って上方へと押し上げられ、スクリューロッド3が備えるスクリュー部3bに乗って地表へと運ばれ排出される。
前記掘削と同時に、ダウンザホールハンマー4からの押圧力(打ち込み力)を、例えば毎秒3回の周期で、パイロットビット5の上部を構成するヘッド部5bの上方に形成された肩部5hの上端面5fに印加する。この押圧力(打ち込み力)は、肩部5hの下端面5iを通じてこれと対向するケーシングシュー8の上端面8cに伝達され、さらにケーシングシュー8と接合するケーシング7へと付与される。これにより、パイロットビット5およびリングビット6の掘削により形成された削孔にケーシング7およびケーシングシュー8が効率的に下方に向けて打ち込まれる。これら一連の作業によって削孔作業が進められる。
前記削孔作業を円滑かつ効率的に進めるためには、前述したように、掘削した土を迅速に排出することが必須であり、そのためには、スクリューロッド3が回転することで生じる押上作用および加圧空気による押上力を廃土へ効果的に作用させることが必要であるが、これを可能にするためには、スクリューロッド3、パイロットビット5およびリングビット6の回転に共連れしてケーシング7が回転しない構造が必要とされている。
このため本掘削装置1においては、ケーシングシュー8の外周面に突起部8gを突設することでケーシングシュー8と地盤との間の接触抵抗、特にケーシングシュー8が回転することを抑制する方向に働く接触抵抗を増大させ、これによって、ケーシングシュー8およびこれと接合するケーシング7が、その内側に収容するスクリューロッド3、パイロットビット5およびリングビット6の回転に共連れして回転しないようにしている。
また、削孔作業をより迅速且つ効果的に行なうため、本掘削装置1においては、ダウンザホールハンマー4からの押圧力(打ち込み力)を、パイロットビット5およびリングビット6に印加し、これを下方推進力として利用する構造となっている。すなわち、この掘削装置1においては、ダウンザホールハンマー4の下面とパイロットビット5が備える肩部5hの上端面5fとが対向し、また、肩部5hの下端面5iとケーシングシュー8の上端面8cとが対向し、さらにケーシングシュー8の下端面8iとリングビット6の上端面6hとが緩衝部材11を介して対向するように構成されている。当該構成によれば、ダウンザホールハンマー4からの押圧力(打ち込み力)は、パイロットビット5が備える肩部5hに直接印加された後、肩部5hを通じてケーシングシュー8に伝えられ、さらにケーシングシュー8を通じてリングビット6へと伝達される。これにより、ダウンザホールハンマー4からの押圧力(打ち込み力)は、パイロットビット5およびリングビット6を下方へ押下げる推進力として作用することになる。
ここで、リングビット6の上端面6hには、前述したように、緩衝部材11が載置されている(図12参照)。このため、ダウンザホールハンマー4からの押圧力(打ち込み力)がパイロットビット5を通じてケーシングシュー8に伝えられ、さらにこれがリングビット6へと伝達される際に、ケーシングシュー8の下端面8iと、これと対向するリングビット6の上端面6hとが、互いに直接強打することを回避でき、打ち込み時のケーシングシュー8とリングビット6間の振動および騒音を効果的に抑制することができる。特に、掘削開始時は、ケーシング7が全て空中にあってその重量が全てケーシングシュー8に掛かっており、このため、もし緩衝部材11が介在していないと、ダウンザホールハンマー4を打ち込む度に、ケーシング7の重量が全てかかったケーシングシュー8の下端面8iがリングビット6の上端面6hに強い力で当接し、大きな当接音が生じるが、本実施形態では、緩衝部材11が介在しているので、前記強い力での当接を防止でき、大きな騒音を防止できる。なお、ケーシング7が所定の深さまで土中に入り込むと、土圧によってケーシング7の重量が支えられるため、前記ケーシングシュー8にはケーシング7の重量が掛からなくなり、前記ケーシングシュー8の下端面8iとリングビット6の上端面6hとの当接力は小さくなり、もしも緩衝部材11を介在していなくても騒音は小さくなる(もちろんその場合でも緩衝部材11を介在する方が、騒音はより小さくなる)。
さらに、当該緩衝部材11は、リングビット6の上端面6hとケーシングシュー8の段部の下端面8iとの間に緩衝部材11が隙間無く配設されることから、ダウンザホールハンマー4からの押圧力(打ち込み力)がパイロットビット5を通じてケーシングシュー8からリングビット6へ伝達される際、ケーシングシュー8の段部の下端面8iが緩衝部材11を強打し、または緩衝部材11がリングビット6の上端面6hを強打することがなくなる。このため、打ち込み時の振動および騒音をより効果的に抑制することができる。
また、木、硬質ゴムまたは樹脂等の比較的硬質な素材からなる緩衝部材11は、ダウンザホールハンマー4の大きな押圧力(打ち込み力)に対しても十分な耐性を有している。このため、長時間にわたる削孔作業に対しても支障なく使用できる。また、表面を平滑に加工することが容易であることから、相対回転するケーシングシュー8の下端面8iおよびリングビット6の上端面6hとの間の摩擦係数を小さくすることができ、これによってケーシングシュー8がリングビット6に共連れして回転することを効果的に抑制することもできる。
さらに、当該緩衝部材11を、ケーシングシュー8の下端面8iとリングビット6の上端面6hとの間であって、リングビット6の上端面6h上に載置しているので、緩衝部材11を設置するために、ケーシングシュー8とリングビット6の構造が複雑化することはなく、簡素化でき、またその組み立てもリングビット6と緩衝部材11とケーシングシュー8とを当該順序で積層するように組み立てられる構造なので、緩衝部材11の組み付けを容易に行うことができる。さらに当該緩衝部材11は、上述のように、好ましい形態としてリング状の一体品(複数部品を接合固定したものでないもの)で構成されている。これにより、ケーシングシュー8からの強い衝撃力にも十分耐えることができる。なお、十分な強度が確保されていれば、分割構造の緩衝部材としてもよい。分割構造の緩衝部材によれば、組付性をより向上させることができる。
以上のようにして、削孔作業を行ってゆき、削孔が予定の深さに達したら、削孔作業を中止し、パイロットビット5とリングビット6との接続(チャッキング)を解除し、パイロットビット5、スクリューロッド3およびダウンザホールハンマー4を引き抜いてこれら部位を回収する。一方、ケーシング7、ケーシングシュー8およびリングビット6は、地中に残したまま本杭として利用される。
〔第二の実施形態〕
本発明の第二の実施形態を、主に図18および19を参照しながら説明する。なお、前記本発明の第一の実施形態と構成が同じ部分については、その説明を省略する。
本発明の第二の実施形態は、本発明の第一の実施形態における緩衝部材11に替えて、平板状でリング状の緩衝部材110を、パイロットビット5上部に形成された肩部5hの下端面5iとケーシングシュー8の上端面8cとが対向する領域S2(第二の領域)の一部分に配設したことを特徴とし(図18および19を参照)、その他の構成は、本発明の第一の実施形態と同じである。
ケーシングシュー8の上端面8cの外周縁部には、図19に示すように、緩衝部材110が載置・収納される矩形凹状に切欠いたリング形状の緩衝部材収納部8jが形成されている。この緩衝部材収納部8jは、緩衝部材110と隙間なく係合するようにその形状が画定される。すなわち、その縦断面形状は、略矩形状を呈し、前記緩衝部材110の縦断面形状と略同一形状に形成され、また、緩衝部材収納部8jの高さ(軸方向長さ)は、リング状を呈した緩衝部材110の厚みと略同等またはそれより小さく形成されている。なお、緩衝部材収納部8jは、上端面8cの外周縁部でなく内周縁部または中間部に設けてもよい。さらに緩衝部材収納部8jの平面視形状を、係合する緩衝部材110の平面視形状と共に、円環形状以外の各種形状にすることもできる。
緩衝部材110は、図15に示された緩衝部材11と材質および基本形態が同じであり、木または硬質ゴムまたは樹脂によって形成され、図18および19に示すように、リング状かつ縦断面形状が略矩形状を呈し、その表面は平坦であって平滑処理が施されている。なお、緩衝部材110は、後述するように、種々の形態をとることができる。
本発明の第二の実施形態における掘削装置の組立手順は、以下に説明する点以外は、上記第一の実施形態と同じである。
即ち、前述した連接構造により相対移動(回転移動および上下移動)可能かつ互いが上下方向(軸方向)に外れない状態でリングビット6を連接したケーシングシュー8を、ケーシング7の下端に溶接する前に、緩衝部材110を、ケーシングシュー8の上端面8cの緩衝部材収納部8jに予め載置・収納しておき、その後ケーシングシュー8をケーシング7の開口部に挿入してから溶接Wを実施する。これにより、ケーシング7の内側のケーシングシュー8の上端面8c上に、緩衝部材110が載置された状態となる。なお、緩衝部材110が変形容易な材料からなる場合には、例えばケーシング7とケーシングシュー8間を溶接Wした後に、リングビット6およびケーシングシュー8の中央の開口を通じて緩衝部材110を変形させながらケーシングシュー8の上端面8c側に挿入し、上記変形を解いて上端面8cの緩衝部材収納部8jに載置・収納してもよい。
切削作業も、上記第一の実施形態と同様に行われる。本発明の第二の実施形態によれば、切削作業時、パイロットビット5を通じて印加されるダウンザホールハンマー4からの押圧力(衝撃力)を、緩衝部材110とケーシングシュー8の上端面8c(緩衝部材収納部8jを設けていない部分)の両者で受けることになる。このため、前記押圧力が緩衝部材110とケーシングシュー8の上端面8c(緩衝部材収納部8jを設けていない部分)とに分散される。即ち、前記押圧力は、直接ケーシングシュー8を押圧する力と、緩衝部材110を介して押圧する力とに分かれるが、何れの力もケーシングシュー8を押圧する力となるので、前記押圧力に変化はない。一方、前記押圧力の一部は、前記緩衝部材110によって緩衝されるので、従来のように緩衝部材110を設けないでパイロットビット5の下端面5iがケーシングシュー8の上端面8c全体を直接押圧する場合に比べ、その振動および騒音を効果的に抑制することができる。
なおこの実施形態において、ケーシングシュー8の上端面8c全体の上に緩衝部材110を設けず、上端面8cの一部に設けた理由は以下の通りである。即ち、ケーシングシュー8の上端面8c全体上に緩衝部材110を設けると、パイロットビット5の押圧力(衝撃力)の全てを緩衝部材110が受けてしまう。実験によれば、硬質ゴム材製の緩衝部材110を、ケーシングシュー8の上端面8c全体上に設置して切削作業を行った場合、短い時間で緩衝部材110が劣化した。一方、本実施形態のように構成すれば、上記問題が生じなかった。特に本実施形態のように、ケーシングシュー8の上端面8cの一部(外周縁部分)に緩衝部材収納部8jを設ける構成とすれば、緩衝部材110がパイロットビット5によって大きく潰される虞は無く、且つ振動および騒音を効果的に抑制することができる。また緩衝部材収納部8jは上端面8cの外周縁部分に設けられているので、緩衝部材110の取り付けを容易に行うことができる。なお、パイロットビット5がケーシングシュー8に当接して押圧する力に比べ、ケーシングシュー8がリングビット6に当接して押圧する力は小さいので、前記第一の実施形態において、緩衝部材11を、リングビット6の上端面6hの全面とケーシングシュー8の下端面8iの全面間に設けても問題は生じにくい(もちろん第二の実施形態の場合と同様に、リングビット6の上端面6hやケーシングシュー8の下端面8iに、緩衝部材収納部を設けるなどして前記押圧力の一部のみを緩衝部材11が受ける構成としても良い)。また、緩衝部材110が圧縮強度に優れた材料からなる場合には、ケーシングシュー8の上端面8cに緩衝部材収納部8jを設けることなく、上端面8c全体を覆うように緩衝部材110を設置してもよい。
また、緩衝部材110の表面が平坦かつ平滑であることで、この表面と圧接するパイロットビット5の下端面5iおよびケーシングシュー8の上端面8cとの間の摩擦抵抗が低減することから、緩衝部材110が介在することで、パイロットビット5とケーシングシュー8との相対回転が円滑なものとなる。これにより、ケーシングシュー8およびこれと連結するケーシング7の共連れ現象も効果的に防止することができる。
緩衝部材収納部8jおよび緩衝部材110は、前述したように、図18および19で示される形状等に限定される訳ではなく、種々の形態をとることができる。例えば緩衝部材110が弾性材料から形成される場合には、その厚みを、緩衝部材収納部8jの深さ(高さ)より大きく設定してもよい。この場合、緩衝部材110の厚みと緩衝部材収納部8jの深さとの差分は、印加される押圧力(パイロトビット5を通じて印加されるダウンザホールハンマー4からの押圧力)によって生じる緩衝部材110の変形量に相当する。緩衝部材110の耐久性能に鑑みれば、前記差分を、緩衝部材110の弾性域に収まるよう設定することが好ましい。なお、緩衝部材110の厚みを部分的に変えた仕様としてもよい。このように、緩衝部材収納部8jの深さ寸法よりも緩衝部材110の厚み寸法が大きい弾性材料からなる緩衝部材110によれば、パイロットビット5を通じて印加されるダウンザホールハンマー4からの押圧力(より具体的には、衝撃力として印加される前記押圧力における衝撃エネルギ)の一部を効果的に吸収することで、振動および騒音の抑制効果がより高められる。
なお、以上で説明した第一の実施形態における緩衝部材11と、第二の実施形態における緩衝部材110とを、同時に設置しても良い。このように構成すれば、さらに効果的な振動・騒音防止効果を得ることができる。
本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、明細書及び図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、緩衝部材は、平坦ではなくウェーブ状に波打った形状などとしてもよい。また、複数の緩衝部材を積層してもよい。このとき異なる物性を持つ複数の材料からなる緩衝部材を積層するように構成してもよい。また、前記実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いに構成を組み合わせることも可能である。また、前記記載及び図面によって示された内容は、その一部であっても、それぞれが独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は、前記記載及び図面によって示された内容を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。