以下、本発明の実施形態を、特にそれに限定されないが腕時計型の計時装置を例にして、図面を参照しながら説明する。
図1は、計時装置の外観図である。
この図において、計時装置1は、本体ケース2の外周側面の対向二箇所にそれぞれ係合部3、4を設け、これらの係合部3、4にベルト5、6の各一端を取り付けて構成されている。
本体ケース2の外周側面には、少なくとも、時刻の修正などを行うためのリューズ7と、文字盤照明用の押しボタン8とが設けられており、さらに、本体ケース2の外縁部には、外周側面から中心に向かって庇(ひさし)状に張り出した張り出し部9が一周延設されている。
本体ケース2の張り出し部9に囲まれた開口10には、透明保護体(強化ガラスまたは強化プラスチック)が嵌め込まれており(図示せず)、ユーザは、この透明保護体を透して、本体ケース2の内部に設けられた文字盤11を視認する。
文字盤11は、開口10と略同形状で、かつ、張り出し部9の裏側部分まで延びる平面形状を有するプレート12と、このプレート12の平面中心位置に、プレート12の表裏を貫通して回転可能に立設された同軸状複合回転軸13と、を備えている。
さらに、文字盤11は、同軸状複合回転軸13に基端側が取り付けられた時針15と分針14と秒針16と、プレート12の外縁に沿って等間隔に配置された時刻マーク17と、を備えている。
さらに、文字盤11は、プレート12の任意位置に穿設された日付表示窓18と、プレート12の任意位置に配設された平面表示パネル19と、プレート12の任意位置に配設された機能表示部20と、を備えている。この文字盤11は表示手段を構成する。
ここで、プレート12の全体または一部は、光を電気に変換する光電変換素子、たとえば、ソーラーパネルで構成されていてもよい。このようにすると、プレート12の発電エネルギーによって、後述のバッテリ41(図2参照)を充電できる。以下の説明においては、プレート12とソーラーパネルとを同義語として取り扱うものとし、必要に応じ、「プレート12(ソーラーパネル)」と併記するものとする。
本体ケース2の張り出し部9の裏側部には複数個の発光素子、たとえば、この実施形態では四つのLED(LED21、LED22、LED23およびLED24)が配されている。四つのLED21〜24は、本体ケース2内に等間隔(図では90度間隔)になるように配置されており、ユーザが押しボタン8を操作したときに、これら四つのLED21〜24が所定の条件の下で適応的に可変決定される時間だけ所定の明るさで継続して点灯するようになっている。
機能表示部20は、図示の例では、計時装置1の現在の動作モードを表示するための機能針25を備えるが、これに限定されない。たとえば、機能針25はストップウォッチ用の指針であってもよく、または、午前(AM)や午後(PM)の表示用の指針であってもよい。あるいは、24時間時計用の指針であってもよく、さらに、単針ではなく2針にしてワールドタイム機能表示用の指針としてもよい。
図2は、計時装置1の内部構成概念図である。
この図において、計時装置1は、計時装置機構部26と、電子制御部27と、計時装置1に加えられる加速度を検出する加速度センサ48と、計時装置1の傾斜(傾き)を検出する傾斜センサ58とを備える。
計時装置機構部26は、モータ駆動回路28と、このモータ駆動回路28からの電力によって個別の回転動力を発生する四つの回転動力発生部(図では第一ステッピングモータ29、第二ステッピングモータ30、第三ステッピングモータ31および第四ステッピングモータ32)と、四つの回転動力発生部の各々によって駆動される四つの輪列機構(図では第一輪列機構33、第二輪列機構34、第三輪列機構35および第四輪列機構36)と、四つの輪列機構の各々によって運針される四つの指針(時針15、分針14、秒針16および機能針25)ならびに日車37と、を備える。
モータ駆動回路28は、CPU47から適宜に入力される制御信号に従い、四つのステッピングモータ(第一ステッピングモータ29〜第四ステッピングモータ32)の各々に適切なタイミングで駆動信号を出力して個別に回転駆動する。
なお、モータ駆動回路28では、後述のCPU47から入力される制御信号に基づいて駆動信号のパルス幅や駆動電圧を適宜調整可能となっている。
また、一度に大きな負荷をかけないために四つのステッピングモータ(第一ステッピングモータ29〜第四ステッピングモータ32)が同時に駆動される制御信号が入力された場合、モータ駆動回路28は、これらの駆動タイミングを互いに重ならない微小間隔でずらして順番に各々のステッピングモータ(第一ステッピングモータ29〜第四ステッピングモータ32)を回転駆動させることができるようにもなっている。
第一ステッピングモータ29は、複数の歯車の配列である第一輪列機構33を介して秒針16を回転動作させる。第一ステッピングモータ29が一回駆動されると、秒針16は、1ステップで6度回転する。つまり、第一ステッピングモータ29の60回の動作により、文字盤11の中で秒針16が一周するようになっている。
第二ステッピングモータ30は、第二輪列機構34を介して時針15および分針14を回転動作させる。第二輪列機構34は、時針15を分針14に連動して回転させる構成であり、分針14を1度ずつ回転移動させると共に、時針15を1/12度ずつ回転移動させる。
第三ステッピングモータ31は、第三輪列機構35を介して日車37を回転動作させる。
日車37は、特にそれに限定されないが、計時装置1のプレート12の裏側に、このプレート12と平行、かつ、回転自在に設けられた、薄板状で土星の輪のような環状部材であり、この環状部材(日車37)に等間隔に表記(印刷または刻印等)された“1”から“31”までの各日付を表す標識情報(以下、日付情報という)の一つがプレート12の日付表示窓18の開口から露出するように(ユーザから見えるように)構成されている。
具体的には、第三ステッピングモータ31が一回駆動されると、日車37が1ステップ分の角度だけ回転移動し、150ステップの回転移動に伴って360/31度の回転が生じ、プレート12の日付表示窓18の開口に露出する日付情報が1日分変化するようになっている。そして、日車37が1カ月分(31日分)回転移動すると、再び最初の日付を示す日付情報が日付表示窓18の開口から露出するようになっている。
第四ステッピングモータ32は、第四輪列機構36を介して機能針25を回転動作させる。機能針25は、特にそれに制限されないが、たとえば、時針15、分針14および秒針16の回転軸(同軸状複合回転軸13)ならびに日車37の回転軸とは異なる別の回転軸の周りを回転し、日時表示以外の内容(たとえば、計時装置1の動作モード等)の表示に用いられる。第四輪列機構36は、たとえば、第四ステッピングモータ32の一回の回転に対して機能針25を所定角度(例:6度)回転させる。
電子制御部27は、操作部38と、表示ドライバ39と、充電制御回路40と、充電可能なバッテリ41(二次電池)と、発振回路42と、分周回路43と、計時回路44と、読み出し専用の半導体メモリ(ROM:Read Only Memory)(以下、ROM45という)と、データの書き換えと消去が可能な半導体メモリ(RAM:Random Access Memory)(以下、RAM46という)と、中央演算処理部(CPU:Central Processing Unit)(以下、CPU47という)と、照明駆動回路57と、を備える。
なお、ROM45は、読み出し専用の半導体メモリに限定されない。たとえば、書き換え可能な不揮発性の半導体メモリ(フラッシュメモリ等)であっても構わない。
計時回路44は、現在の日付と時刻(以下、日時という)を計数する。計時回路44は、分周回路43から入力されたクロック信号を計数し、日時の初期値に加算していくことで現在の日時データを保持するカウンタである。
充電制御回路40は、プレート12(ソーラーパネル)およびバッテリ41のそれぞれと電気的に接続されており、CPU47からの制御指令に基づいて、プレート12(ソーラーパネル)からバッテリ41への充電動作を制御するとともに、バッテリ41への充電量をCPU47へ通知する。
プレート12の一部または全部は、光を電気信号に変換して発電する発電デバイス(ソーラーパネル)で構成されており、このソーラーパネルによって発電された電気エネルギーがバッテリ41に蓄電されるようになっている。
発振回路42は、たとえば、水晶発振器を備えており、この水晶発振器で発振された所定の基準周波数信号を出力する。分周回路43は、発振回路42から入力された所定の基準周波数信号を、CPU47や計時回路44で必要とされる各種の周波数信号に分周して各々出力する。
操作部38は、少なくとも押しボタン8を備え、この押しボタン8へのユーザ操作(押し下げ操作)に応答した電気信号をCPU47に出力する。なお、操作部38は、上記の押しボタン8に加えて、リューズ7やその他の操作手段(たとえば、タッチパネルや近接スイッチなど)を備えていてもよい。
平面表示パネル19は、特にそれに限定されないが、デジタル式の平面表示デバイスで構成され、現在の日時に加えて計時装置1で実行可能な種々の機能に係る情報表示を選択的にまたは並行して表示する。デジタル式の平面表示デバイスとしては、たとえば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)が代表である。また、この場合、表示ドライバ39には、当該LCDを駆動する液晶ドライバが用いられる。
表示ドライバ39は、CPU47から入力された制御信号に基づいて駆動信号(表示信号)を生成し、この駆動信号を平面表示パネル19に出力する。あるいは、平面表示パネル19は、デジタル式の平面表示デバイスに加えて、またはそれに代えて、一または複数の指針を備えていてもよい。この場合、モータ駆動回路28により駆動される不図示の第五のステッピングモータの回転により、当該指針が回転動作されて日時やステータス等の一部または全部をアナログ表示することが可能な構成になっていてもよい。
ROM45には、少なくとも初期点灯時間記憶部49および点灯オフセット時間記憶部50の二つの記憶領域が設けられており、また、RAM46には、少なくとも点灯オフセット時間指標記憶部51の記憶領域が設けられている。
なお、ROM45には、図示を略すが、さらに、基本プログラム(OS:Operating System)やその基本プログラムの動作に必要な各種データの記憶領域、およびその基本プログラム上で動作する所定の応用プログラム(たとえば、計時装置1の制御プログラム等)の記憶領域が設けられている。
CPU47は、ROM45から上記の基本プログラムや各種データおよび所定の応用プログラムなどを読み出し、それらのプログラムやデータをメモリ(RAM46やCPU47の内部メモリなど)の作業空間に展開して実行し、計時装置1の動作に必要な様々な機能をソフトウェア的に実現する。
上記の機能の第一は、時針15や分針14および秒針16の運針制御による時刻表示であり、第二は日車37の回転制御による日付表示であり、第三は機能針25の運針制御による機能表示であり、第四は平面表示パネル19の表示制御による情報表示であるが、この実施形態では、さらに、第五の機能として、必要に応じ、文字盤11を明るく照らし出す照明機能(以下、文字盤照明機能という)を実現する。
この文字盤照明機能は、図示のCPU47において、明暗判定部52、文字盤状態判定部53、照明点灯時間算出部54、照明点灯パルス出力部55および加速度判定部56の各部で示されている。なお、これらの各部はソフトウェア的に実現されるものであって、実体的な構成部としては存在しない概念的な機能ブロックである。
図3は、文字盤照明機能の概略動作フローを示す図である。
この図において、文字盤照明機能は、押しボタン8へのユーザ操作(押し下げ操作)に応答してその機能を開始する。
具体的に説明すると、CPU47は、押しボタン8へのユーザ操作に伴う信号を操作部38から取り込むと、まず、明暗判定部52を起動して周辺環境の明暗を判定する。
この明暗判定は、実施形態の場合、プレート12(ソーラーパネル)の発電量に基づいて行う。たとえば、所定の発電量以下であれば“暗環境”であると判定する。プレート12(ソーラーパネル)は暗環境検出手段を構成する。
たとえば、入射光量に応じて電気的特性(電気抵抗等)が変化する電子部品(フォトレジスタ、光依存性抵抗、光導電体、フォトセルなど)を暗環境検出手段として用いてもよい。
あるいは、このような物理的な手段を用いずに、たとえば、計時回路44で生成された日時の情報から季節ごとの夜間の時間帯(日没から日の出まで)を把握し、その時間帯にあっては暗環境にあると推定して判定するようにしてもよい。
明暗判定の結果、暗環境にないと判定された場合は、そのまま文字盤照明機能を終了するが、暗環境にあると判定された場合は、CPU47は、次に、文字盤状態判定部53を起動し、この文字盤状態判定部53により、現在の文字盤11の状態(文字盤11を構成する各部の、ある時点における有様。以下、単に「文字盤状態」という)が時刻を読み取りにくい特定の文字盤状態にあるか否かを判定する。
ここで、具体例は後述するが、「時刻を読み取りにくい特定の文字盤状態」とは端的にいえば、時刻の把握に欠かせない少なくとも時針15と分針14の二つの指針について、それら二つの指針が部分的または全体的に互いに重なり合ってしまい、もしくは、それら二つの指針の一方または双方が文字盤11を構成する各部、たとえば、プレート12の日付表示窓18や平面表示パネル19または機能表示部20などに部分的もしくは全体的に重なってしまい、これによって、時針15や分針14の位置を誤認する可能性が少なからずあり得る文字盤状態のことをいう。
「時刻を読み取りにくい特定の文字盤状態」にないと判定された場合、CPU47は、照明点灯時間算出部54を起動するとともに、ROM45の初期点灯時間記憶部49からあらかじめ定められた初期点灯時間(バッテリ41の消耗を考慮した短い時間であり、たとえば、1.5秒)を読み出す。次いで、CPU47は、照明点灯パルス出力部55を起動して、上記の初期点灯時間を照明点灯時間算出結果として照明点灯パルス出力部55に出力し、さらに、CPU47は、照明点灯パルス出力部55から初期点灯時間に対応したパルス列を照明駆動回路57に出力し、照明駆動回路57は、そのパルス列に対応した時間だけ継続して所定の明るさ(バッテリ41の消耗を考慮した必要最低限の明るさ)で四つのLED21〜24を点灯する。
一方、「時刻を読み取りにくい特定の文字盤状態」にあると判定された場合にも、CPU47は、照明点灯時間算出部54を起動するとともに、ROM45の初期点灯時間記憶部49からあらかじめ定められた初期点灯時間を読み出すが、この場合、照明点灯時間算出部54からの照明点灯時間算出結果が、「時刻を読み取りにくい特定の文字盤状態」にあると判定されなかった場合よりも長めに変更される点で相違する。
すなわち、「時刻を読み取りにくい特定の文字盤状態」にあると判定された場合、CPU47は、ROM45の初期点灯時間記憶部49からあらかじめ定められた初期点灯時間を読み出すとともに、ROM45の点灯オフセット時間記憶部50から点灯オフセット時間を読み出し、これらの初期点灯時間と点灯オフセット時間とを加味した点灯時間を、照明点灯時間算出結果として照明点灯パルス出力部55に出力する。そして、CPU47は、照明点灯パルス出力部55から初期点灯時間と点灯オフセット時間とを加味した点灯時間に対応したパルス列を照明駆動回路57に出力し、照明駆動回路57は、そのパルス列に対応した時間だけ継続して所定の明るさで四つのLED21〜24を点灯する。
以上説明したように、「時刻を読み取りにくい特定の文字盤状態」にあると判定されなかった場合、四つのLED21〜24は、初期点灯時間に相当する時間(この時間をTxとする)だけ所定の明るさで点灯する。
一方、「時刻を読み取りにくい特定の文字盤状態」にあると判定された場合、四つのLED21〜24は、初期点灯時間と点灯オフセット時間とを加味した時間(この時間をTyとする)だけ所定の明るさで点灯する。
これら二つの時間Tx、Tyは「Tx<Ty」の関係にある。Txは初期点灯時間に相当する時間、Tyは初期点灯時間と点灯オフセット時間とを加味した時間だからであり、少なくともTyは点灯オフセット時間の分だけTxよりも長くなるからである。
したがって、以上説明した文字盤照明機能によれば、「時刻を読み取りにくい特定の文字盤状態」にあると判定されなかった場合には、初期点灯時間だけ四つのLED21〜24を点灯させるので、バッテリ41の消耗を抑えることができる。
一方、「時刻を読み取りにくい特定の文字盤状態」にあると判定された場合には、初期点灯時間と点灯オフセット時間とを加味した時間だけ四つのLED21〜24を点灯させるので、文字盤11の照明時間を長目にすることができ、これによって、ユーザに対して文字盤11をじっくりと見つめさせる余裕を与えることができるようになる。
その結果、指針の位置把握がしやすくなり、時刻表示の見にくさを改善することができるという格別の効果が得られる。
図1および図2に記載の加速度判定部56について説明する。この加速度判定部56は、以上説明した文字盤照明機能の改良例のための追加要素である。この加速度判定部56は、暗環境が判定された際に、計時装置1に内蔵された加速度センサ48(図1参照)からの検出信号に基づいて、計時装置1の動きの大きさが所定値以上、つまり、「文字盤11の時刻を読み取りにくい程度に大きい」ものであるか否かを判定する。
そして、この改良例における照明点灯時間算出部54は、計時装置1の動きの大きさが「文字盤11の時刻を読み取りにくい程度に大きい」と判定されなかった場合には、前記のように、四つのLED21〜24の点灯時間を初期点灯時間に相当する時間または初期点灯時間と点灯オフセット時間とを加味した時間のいずれかに設定する一方、計時装置1の動きの大きさが「文字盤11の時刻を読み取りにくい程度に大きい」と判定された場合には、四つのLED21〜24の点灯時間を初期点灯時間と点灯オフセット時間とを加味した時間に設定する。
この改良例によれば、暗環境において、「時刻を読み取りにくい特定の文字盤状態」にあると判定された場合の文字盤11の照明時間を長くして時刻表示の視認性を改善できることに加え、さらに、計時装置1の動きの大きさが「文字盤11の時刻を読み取りにくい程度に大きい」と判定された場合、たとえば、運動中等のように計時装置1を装着したユーザが体を激しく動かしている場合にも、文字盤11の照明時間を長くして時刻表示の視認性を改善できるので、より一層、ユーザの使用状態に即した時刻表示の視認性改善効果を得ることができる。
図4は、特定の文字盤状態の様々な具体例を示す図である。
この図において、(a)は「時刻を読み取りにくい特定の文字盤状態」にない場合(以下、通常の状態という)を示す図である。この通常の状態においては、時針15と分針14が互いに重なり合っておらず、また、文字盤11を構成する各部(たとえば、日付表示窓18や平面表示パネル19または機能針25など)のいずれとも重なっていない。このため、仮に暗環境であっても初期点灯時間の文字盤照明により、時針15と分針14の位置関係を速やかに把握して時刻を読み取ることができる。
これに対して、(b)〜(e)に示す「時刻を読み取りにくい特定の文字盤状態」にある場合のいくつかの具体例(以下、第一の状態、第二の状態、第三の状態および第四の状態という)においては、時針15と分針14の位置関係を速やかに把握して時刻を読み取ることが難しくなる。
(b)に示す第一の状態は、時針15と分針14が部分的または全体的に重なり合っている状態である。この状態において、暗環境ではユーザは、時針15と分針14の重なり合いを即座に把握できず、多くの場合、文字盤11の全体を見渡しながら時針15または分針14を見つけ出そうとするので、初期点灯時間の文字盤照明では時間が足りなくなるおそれがある。つまり、文字盤11の全体を見渡している最中に照明が切れてしまうおそれがある。
他の例(c)〜(e)についても同様である。すなわち、(c)に示す第二の状態は、時針15と分針14のいずれか一方または双方(図では分針14)が機能針25と部分的または全体的に重なっている状態である。また、(d)に示す第三の状態は、時針15と分針14のいずれか一方または双方(図では時針15と分針14の双方)が平面表示パネル19の表示情報と部分的または全体的に重なっている状態である。また、(e)に示す第四の状態は、時針15と分針14のいずれか一方または双方(図では時針15)が日付表示窓18に表れている日付情報と部分的または全体的に重なっている状態である。
これらの第二の状態、第三の状態および第四の状態においても、前記の第一の状態と同様に、暗環境ではユーザは、時針15と分針14のいずれか一方または双方と文字盤11を構成する各部(第二の状態では機能針25、第三の状態では平面表示パネル19の表示情報、第四の状態では日付表示)との重なりを即座に把握できず、多くの場合、文字盤11の全体を見渡しながら時針15または分針14を見つけ出そうとするので、やはり、初期点灯時間の文字盤照明では時間が足りなくなるおそれがある。つまり、文字盤11の全体を見渡している最中に照明が切れてしまうおそれがある。
これに対して、実施形態の文字盤照明機能によれば、前記の第一の状態、第二の状態、第三の状態および第四の状態のいずれにおいても、照明時間を、初期点灯時間と点灯オフセット時間とを加味した時間まで長くすることができるので、文字盤11の全体を見渡している最中に照明が切れてしまうというおそれがない。
図5は、点灯オフセット時間記憶部50および点灯オフセット時間指標記憶部51の一例構成を示す図である。
この図において、(a)に示す点灯オフセット時間記憶部50は、暗環境オフセット時間(Ta)を記憶する第一記憶ユニット50aと、時針分針オフセット時間(Tb)を記憶する第二記憶ユニット50bと、機能針オフセット時間(Tc)を記憶する第三記憶ユニット50cと、表示情報オフセット時間(Td)を記憶する第四記憶ユニット50dと、日付情報オフセット時間(Te)を記憶する第五記憶ユニット50eと、加速度オフセット時間(Tf)を記憶する第六記憶ユニット50fと、を有する。
各オフセット時間(Ta〜Tf)には、各々のオフセット状態(暗環境オフセット状態、時針分針オフセット状態/図4の第一の状態、機能針オフセット状態/図4の第二の状態、表示情報オフセット状態/図4の第三の状態、日付情報オフセット状態/図4の第四の状態、加速度オフセット状態)において、それぞれ照明時間延長の基礎となる基準時間があらかじめ記憶されている。
また、(b)に示す点灯オフセット時間指標記憶部51は、暗環境オフセット時間指標(Ka)を書き換え可能に記憶する第一記憶ユニット51aと、時針分針オフセット時間指標(Kb)を書き換え可能に記憶する第二記憶ユニット51bと、機能針オフセット時間指標(Kc)を書き換え可能に記憶する第三記憶ユニット51cと、表示情報オフセット時間指標(Kd)を書き換え可能に記憶する第四記憶ユニット51dと、日付情報オフセット時間指標(Ke)を書き換え可能に記憶する第五記憶ユニット51eと、加速度オフセット時間指標(Kf)を書き換え可能に記憶する第六記憶ユニット51fと、を有する。
各オフセット時間指標(Ka〜Kf)には、各々のオフセット状態(暗環境オフセット状態、時針分針オフセット状態、機能針オフセット状態、表示情報オフセット状態、日付情報オフセット状態、加速度オフセット状態)の判定処理(図6のステップS18、ステップS20、ステップS22、ステップS24およびステップS26)の結果に応じ、それぞれ、前記の各オフセット時間(Ta〜Tf)に適用する適切な指標値がその都度記憶される。
図6および図7は、実施形態の応用プログラムの要部動作フローを示す図である。なお、この応用プログラムの実行主体は、図2に示すCPU47である。
図6および図7の処理を開始すると、まず、CPU47は、点灯オフセット時間指標(Ka〜Kf)のすべての記憶内容をクリア(たとえば、“0”をセット)して初期化する(ステップS10)。
次いで、ユーザによって照明ボタン(図1の押しボタン8)が押し下げ操作されたか否かを判定し(ステップS11)、押し下げ操作が判定されなかった場合には、傾斜センサ58の検出結果からユーザが計時装置1を所定方向(たとえば、手前)に傾けて文字盤11を見る姿勢に変更したか否かを判定する(ステップS12)。
そして、文字盤11を見る姿勢に変更していなければ、そのまま処理を終了する一方、文字盤11を見る姿勢に変更していれば、次に、暗環境検出手段(たとえば、一部または全部がソーラーパネルで構成されたプレート12)の出力に基づいて周囲が暗いか否か、つまり、暗環境であるか否かを判定する(ステップS13)。
暗環境が判定されなかった場合には、そのまま処理を終了し、一方、暗環境が判定された場合には、暗環境オフセット時間指標(Ka)に値をセットする(ステップS17)。
一方、ステップS11の判定結果がYESの場合、すなわち、ユーザによって照明ボタン(図1の押しボタン8)が押し下げ操作されたことが判定された場合にも、暗環境検出手段(たとえば、一部または全部がソーラーパネルで構成されたプレート12)の出力に基づいて周囲が暗いか否か、つまり、暗環境であるか否かを判定する(ステップS14)。
そして、暗環境が判定されなかった場合には、四つのLED21〜24の点灯時間に初期点灯時間をセット(ステップS15)した後、照明駆動回路57に制御信号を出力して、この照明駆動回路57により、四つのLED21〜24を駆動させ、四つのLED21〜24を初期点灯時間だけ点灯(ステップS16)させて処理を終了する。
また、暗環境が判定された場合には、前記と同様に暗環境オフセット時間指標(Ka)に値をセットする(ステップS17)。
次いで、時針15と分針14の一部または全部が互いに重なり合っている状態(図4の第一の状態)であるか否かを判定する(ステップS18)。この判定は現在時刻に基づいて行うことができる。たとえば、現在時刻が12:00の場合、時針15と分針14は互いに重なり合っている。また、他の様々な時刻においても時針15と分針14の一部または全部が互いに重なり合うことがある。したがって、それらの時刻をあらかじめテーブル等に保持しておき、現在時刻とこのテーブルとを照合して時針15と分針14の重なり状態を判定してもよい。
そして、時針15と分針14の重なりが判定された場合には、時針分針オフセット時間指標(Kb)に値をセットし(ステップS19)、一方、時針15と分針14の重なりが判定されなかった場合には、このステップS19をパスして先に進む。
次いで、時針15または分針14のいずれか一方または双方と機能針25とが重なっている状態(図4の第二の状態)であるか否かを判定する(ステップS20)。この判定は現在時刻と機能針25の現在の運針状態とに基づいて行うことができる。たとえば、現在時刻に対応する時針15と分針14のいずれか一方または双方が機能針25の現在の運針位置に一致している場合、時針15または分針14のいずれか一方または双方と機能針25とが重なっている。したがって、それらの時刻と機能針25の運針位置情報とをあらかじめテーブル等に保持しておき、現在時刻および機能針25の現在の運針位置とをこのテーブルと照合して、時針15または分針14と機能針25との重なり状態を判定してもよい。
そして、時針15または分針14のいずれか一方または双方と機能針25との重なりが判定された場合には、機能針オフセット時間指標(Kc)に値をセットし(ステップS21)、一方、時針15または分針14のいずれか一方または双方と機能針25との重なりが判定されなかった場合には、このステップS21をパスして先に進む。
次いで、時針15または分針14の一部が平面表示パネル19の表示情報に重なっている状態(図4の第三の状態)であるか否かを判定する(ステップS22)。この判定は現在時刻と平面表示パネル19の表示情報の位置とに基づいて行うことができる。たとえば、現在時刻に対応する時針15または分針14のいずれか一方または双方が平面表示パネル19の表示情報の領域に入っている場合、時針15または分針14のいずれか一方または双方と平面表示パネル19の表示情報の領域とが重なっている。したがって、それらの時刻と平面表示パネル19の表示情報の位置情報とをあらかじめテーブル等に保持しておき、現在時刻をこのテーブルと照合して、時針15または分針14と平面表示パネル19の表示情報との重なり状態を判定してもよい。
そして、時針15または分針14と平面表示パネル19の表示情報との重なりが判定された場合には、表示情報オフセット時間指標(Kd)に値をセットし(ステップS23)、一方、時針15または分針14と平面表示パネル19の表示情報との重なりが判定されなかった場合には、このステップS23をパスして先に進む。
次いで、時針15または分針14のいずれか一方または双方と日付表示窓18の日付情報とが重なっている状態(図4の第四の状態)であるか否かを判定する(ステップS24)。この判定は現在時刻と日付表示窓18の日付情報の位置とに基づいて行うことができる。たとえば、現在時刻に対応する時針15または分針14のいずれか一方または双方が日付表示窓18の日付情報の領域に入っている場合、時針15または分針14のいずれか一方または双方と日付表示窓18の日付情報の領域とが重なっている。したがって、それらの時刻と日付表示窓18の日付情報の領域の位置情報とをあらかじめテーブル等に保持しておき、現在時刻をこのテーブルと照合して、時針15または分針14と日付表示窓18の日付情報の領域との重なり状態を判定してもよい。
そして、時針15または分針14と日付表示窓18の日付情報との重なりが判定された場合には、日付情報オフセット時間指標(Ke)に値をセットし(ステップS25)、一方、時針15または分針14と日付表示窓18の日付情報との重なりが判定されなかった場合には、このステップS25をパスして先に進む。
次いで、加速度センサ48の検出信号に基づき計時装置1の動き(計時装置1を装着しているユーザの動き)を検出する(ステップS26)。そして、所定値よりも大きな動き(加速度)が検出された場合には、ユーザが移動しながら、または運動等、体を激しく動かしながら時刻を確認しようとしていると判断し、加速度オフセット時間指標(Kf)に値をセットし(ステップS27)、一方、動きが検出されなかった場合、または所定値以下の小さな動きしか検出されなかった場合には、このステップS27をパスして先に進む。
ここで、暗環境オフセット時間指標(Ka)、時針分針オフセット時間指標(Kb)、機能針オフセット時間指標(Kc)、表示情報オフセット時間指標(Kd)、日付情報オフセット時間指標(Ke)、加速度オフセット時間指標(Kf)にセットする値は、一定の値(たとえば、“1”)であってもよいが、動きが大きいほど時刻表示が見にくくなるので、動きの大きさに応じて適応的に変化する値をセットすることが望ましい。たとえば、小さな動きに対応した値を基準(たとえば、“1”)とするとともに、さらに動きが大きくなるにつれて段階的または線形的に大きくなる値(たとえば、1.1⇒1.2⇒1.3⇒1.4⇒以下、省略)を採用するようにしてもよい。
次に、六つのオフセット時間(Ta〜Tf)と六つのオフセット時間指標(Ka〜Kf)とに基づいて、点灯オフセット総時間を算出する(ステップS28)。点灯オフセット総時間は、たとえば、「(Ta×Ka)+(Tb×Kb)+(Tc×Kc)+(Td×Kd)+(Te×Ke)+(Tf×Kf)」で与えられる。たとえば、六つのオフセット時間指標(Ka〜Kf)のすべてが初期値(“0”)の場合、点灯オフセット総時間=0になる。または、六つのオフセット時間指標(Ka〜Kf)のすべてが最小値(“1”)の場合、点灯オフセット総時間=Ta+Tb+Tc+Td+Te+Tfになる。さらに、六つのオフセット時間指標(Ka〜Kf)が段階的または線形的に変化するものである場合、点灯オフセット総時間は、六つのオフセット時間指標(Ka〜Kf)のそれぞれの値の変化に応じて、段階的または線形的に変化する。たとえば、六つのオフセット時間指標(Ka〜Kf)のすべてが“1”から“1.2”に変化(20%増加)したとすると、点灯オフセット総時間も同様に20%増加する。
次いで、四つのLED21〜24の点灯時間を算出する(ステップS29)。点灯時間は、たとえば、初期点灯時間に上記の点灯オフセット総時間を加算した時間で与えられる。
そして、照明駆動回路57に制御信号を出力して、この照明駆動回路57により、四つのLED21〜24を駆動させ、四つのLED21〜24を、上記の点灯時間だけ点灯(ステップS16)させて処理を終了する。
図8は、実施形態の作用説明図である。
この図において、(a)に示すように、暗環境にない状態で照明ボタン(押しボタン8)が押し下げ操作されると、四つのLED21〜24は、あらかじめ定められた初期点灯時間だけ、所定の明るさで点灯する。
一方、(b)に示すように、暗環境にある状態で照明ボタン(押しボタン8)が押し下げ操作されると、四つのLED21〜24は、初期点灯時間に点灯オフセット総時間を加えた時間、所定の明るさで点灯する。
以上述べたように、実施形態によれば、(1)暗環境にない場合には、LED21〜24を初期点灯時間分点灯することにより、バッテリ41の消耗を抑制でき、(2)暗環境にある場合には、LED21〜24を初期点灯時間と点灯オフセット総時間の加算分点灯するため、時刻を確認しにくい様々な文字盤状態において、時刻表示の確認をしやすくすることができる。
いうまでもなく、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載された技術思想を逸脱しない限り、様々な変形例や発展例を包含することはもちろんである。
たとえば、発光素子はLEDに限らない。発光素子は電気エネルギーを光エネルギーに変換するものであればよく、Cds(Cadmium Sulfide)セルなどの他の発光素子であってもよいし、あるいは、文字盤11の一部(たとえば、プレート12の一部など)を構成するEL(Electro Luminescence)板などであってもよい。または、時針15や分針14などの指針に紫外線反応塗料を塗布するとともに、LED21〜24の代わりに紫外線発光素子を設けてもよい。紫外線発光素子も電気エネルギーを光エネルギーに変換する点で上記の発光素子に含まれる。
または、プレート12それ自体を導光板で構成したり、プレート12の表面に導光板を積層したりして、その導光板の端面から発光素子の光を入射させる構成にしてもよい。
また、各状態のオフセット時間(Ta、Tb、Tc、Td、TeおよびTf)またはオフセット時間指標(Ka、Kb、Kc、Kd、KeおよびKf)のそれぞれに、あらかじめ適切な重みづけをしておいてもよい。たとえば、ワールドタイム機能が特色である計時装置の場合には、ワールドタイム機能表示(一般的には子時計の時刻表示)が重要になるので、この子時計の時刻表示が見にくくなる状態(たとえば、時針15または分針14と子時計の指針とが重なる状態)に対応するオフセット時間またはオフセット時間指標に大きな重みづけをしておいてもよい。ワールドタイム機能の時刻表示を確認する際の照明時間をより長めに取ることができ、上記特色の計時装置の使い勝手を向上することができる。
実施の形態では、時刻表示が見にくくなる文字盤状態の一例として、日付情報や表示情報との重なりを挙げたが、これに限らず、たとえば、文字盤11のプレート12に印刷される標識との重なりであってもよい。たとえば、計時装置は通常、会社名や機種名または略称などの標識(文字やロゴまたはマーク)をプレート12に印刷しており、あるいは、計時装置の種類によっては、動物の絵やアニメのキャラクタまたは世界地図などの図形をプレート12に印刷しているものもある。これらの文字、ロゴ、マーク、絵、キャラクタまたは図形などを総称して「模様」ということにすると、これらの模様も時刻表示が見にくくなる原因になりえる。模様の一部に時針15や分針14が重なってしまうと、模様の濃淡や色の具合によっては時針15や分針14の位置関係、つまり時刻表示が見にくくなるからである。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、この発明は、これらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本件出願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
[1]付記1は、日時情報を表示する表示手段と、
前記表示手段を照明する照明手段と、
前記表示手段の示す情報に基づいて前記照明手段の照明時間を算出し、当該照明時間に応じて前記照明手段の照明動作を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする計時装置である。
[2]付記2は、前記表示手段は日時情報を示す複数の指針を備え、
前記制御手段は、前記表示手段の示す情報が前記複数の指針のうちの一の指針の一部または全体が他の一の指針と重なる場合に、前記照明時間を所定時間加算して算出することを特徴とする付記1に記載の計時装置である。
[3]付記3は、前記表示手段は、さらに、日時情報を示す複数の指針と、非日時情報を表示する非日時情報表示部と、を備え、
前記制御手段は、前記日時情報を示す指針と前記非日時情報表示部とが重なる場合に、前記照明時間を所定時間加算して算出することを特徴とする付記1又は付記2に記載の計時装置である。
[4]付記4は、前記表示手段は、さらに、日時情報を示す複数の指針と、日付情報を表示する日付情報表示部と、を備え、
前記制御手段は、前記日時情報を示す指針と前記日付情報表示部とが重なる場合に、前記照明時間を所定時間加算して算出することを特徴とする付記1又は付記2に記載の計時装置である。
[5]付記5は、前記表示手段には模様が付されており、
前記制御手段は、前記日時情報を示す指針と前記表示手段の模様とが重なる場合に、前記照明時間を所定時間加算して算出することを特徴とする付記1乃至付記4に記載の計時装置である。
[6]付記6は、さらに、前記計時装置に加えられる加速度を検出する加速度検出手段を備え、
前記制御手段は、前記加速度検出手段によって所定値以上の加速度が検出された場合に、前記照明手段を動作制御することを特徴とする付記1乃至付記5いずれかに記載の計時装置である。
[7]付記7は、さらに、前記計時装置の傾きを検出する傾き検出手段を備え、
前記制御手段は、前記傾き検出手段によって所定の傾きが検出された場合に、前記照明手段を動作制御することを特徴とする付記1乃至付記5いずれかに記載の計時装置である。