本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態にかかる照明光学装置を備えた露光装置の構成を概略的に示す図である。図1において、感光性基板であるウェハWの法線方向に沿ってZ軸を、ウェハWの面内において図1の紙面に平行な方向にY軸を、ウェハWの面内において図1の紙面に垂直な方向にX軸をそれぞれ設定している。第1実施形態の露光装置は、露光光(照明光)を供給するための光源1を備えている。
光源1として、たとえば248nmの波長の光を供給するKrFエキシマレーザ光源や193nmの波長の光を供給するArFエキシマレーザ光源などを用いることができる。光源1からZ方向に沿って射出されたほぼ平行な光束は、X方向に沿って細長く延びた矩形状の断面を有し、一対のレンズからなるビームエキスパンダー2に入射する。各レンズは、図1の紙面内(YZ平面内)において負の屈折力および正の屈折力をそれぞれ有する。したがって、ビームエキスパンダー2に入射した光束は、図1の紙面内において拡大され、所定の矩形状の断面を有する光束に整形される。
整形光学系としてのビームエキスパンダー2を介したほぼ平行な光束は、折り曲げミラーでY方向に偏向された後、回折光学素子3を介して、アフォーカルレンズ(リレー光学系)4に入射する。一般に、回折光学素子は、基板に露光光(照明光)の波長程度のピッチを有する段差を形成することによって構成され、入射ビームを所望の角度に回折する作用を有する。具体的には、回折光学素子3は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、そのファーフィールド(またはフラウンホーファー回折領域)に、たとえば光軸AXを中心とする円形状の光強度分布と光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布とからなる3つの円形状の光強度分布を形成する機能を有する。
一方、アフォーカルレンズ4は、その前側焦点位置と回折光学素子3の位置とがほぼ一致し且つその後側焦点位置と図中破線で示す所定面5の位置とがほぼ一致するように設定されたアフォーカル系(無焦点光学系)である。したがって、回折光学素子3に入射したほぼ平行光束は、アフォーカルレンズ4の瞳面に3つの円形状の光強度分布を形成した後、ほぼ平行光束となってアフォーカルレンズ4から射出される。なお、アフォーカルレンズ4の前側レンズ群4aと後側レンズ群4bとの間の光路中において瞳またはその近傍には、アキシコン系としてのプリズム対6が配置されているが、その詳細な構成および作用については後述する。
回折光学素子3は、照明光路に対して挿脱自在に構成され、そのファーフィールドに異なる光強度分布を形成する他の回折光学素子と交換可能に構成されている。同様に、プリズム対6は、照明光路に対して挿脱自在に構成され、構成および作用の異なる他のプリズム対と交換可能に構成されている。以下、説明を簡単にするために、プリズム対6の作用を無視して、第1実施形態の基本的な構成および作用を説明する。アフォーカルレンズ4を介した光束は、ズームレンズ(変倍光学系)7を介して、マイクロレンズアレイ8に入射する。
ここで、所定面6の位置はズームレンズ7の前側焦点位置の近傍に配置され、マイクロレンズアレイ8の入射面はズームレンズ7の後側焦点位置の近傍に配置されている。換言すると、ズームレンズ7は、所定面6とマイクロレンズアレイ8の入射面とを実質的にフーリエ変換の関係に配置し、ひいてはアフォーカルレンズ4の瞳面とマイクロレンズアレイ8の入射面とを光学的にほぼ共役に配置している。したがって、マイクロレンズアレイ8の入射面上には、アフォーカルレンズ4の瞳面と同様に、光軸AXを中心とする円形状の照野と光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の照野とからなる3つの円形状の照野が形成される。3つの円形状の照野の全体形状は、ズームレンズ7の焦点距離に依存して相似的に変化する。
マイクロレンズアレイ8は、縦横に且つ稠密に配列された多数の正屈折力を有する微小レンズからなる光学素子である。一般に、マイクロレンズアレイは、たとえば平行平面板にエッチング処理を施して微小レンズ群を形成することによって構成される。ここで、マイクロレンズアレイを構成する各微小レンズは、フライアイレンズを構成する各レンズエレメントよりも微小である。また、マイクロレンズアレイは、互いに隔絶されたレンズエレメントからなるフライアイレンズとは異なり、多数の微小レンズ(微小屈折面)が互いに隔絶されることなく一体的に形成されている。しかしながら、正屈折力を有するレンズ要素が縦横に配置されている点でマイクロレンズアレイはフライアイレンズと同じ波面分割型のオプティカルインテグレータである。
マイクロレンズアレイ8を構成する各微小レンズは、マスクM上において形成すべき照野の形状(ひいてはウェハW上において形成すべき露光領域の形状)と相似な矩形状の断面を有する。マイクロレンズアレイ8に入射した光束は多数の微小レンズにより二次元的に分割され、その後側焦点面(ひいては照明瞳面またはその近傍)には、マイクロレンズアレイ8への入射光束によって形成される照野とほぼ同じ光強度分布を有する二次光源、図2(a)に示すように、光軸AXを中心とする円形状の光強度分布(実質的な面光源)30aと光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布(実質的な面光源)30bとからなるZ方向3極状の二次光源が形成される。
マイクロレンズアレイ8の後側焦点面に形成されたZ方向3極状の二次光源(一般的には照明光学装置の瞳面またはその近傍に形成された所定の光強度分布)からの光束は、コンデンサー光学系9を介した後、マスクブラインド10を重畳的に照明する。こうして、照明視野絞りとしてのマスクブラインド10には、マイクロレンズアレイ8を構成する各微小レンズの形状と焦点距離とに応じた矩形状の照野が形成される。マスクブラインド10の矩形状の開口部(光透過部)を介した光束は、結像光学系11の集光作用を受けた後、所定のパターンが形成されたマスクMを重畳的に照明する。
こうして、結像光学系11は、マスクブラインド10の矩形状開口部の像をマスクM上に形成することになる。マスクMのパターンを透過した光束は、投影光学系PLを介して、感光性基板であるウェハW上にマスクパターンの像を形成する。こうして、投影光学系PLの光軸AXと直交する平面(XY平面)内においてウェハWを二次元的に駆動制御しながら一括露光またはスキャン露光を行うことにより、ウェハWの各露光領域にはマスクMのパターンが逐次露光される。
以上のように、回折光学素子3、アフォーカルレンズ4、ズームレンズ7およびマイクロレンズアレイ8は、照明光学装置(1〜11)の瞳面またはその近傍に、光軸AXを含む中心領域に位置する光強度分布すなわち光軸AXを中心とする円形状の面光源30aと、光軸AXから間隔を隔てた複数の周辺領域に位置する光強度分布すなわち光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の面光源30bとを有する照明瞳分布を形成するための照明瞳形成手段を構成している。また、回折光学素子3は、入射する光束を、光軸AXを中心とする円形状の面光源30aに対応する中心光束と、光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の面光源30bにそれぞれ対応する複数の周辺光束とに変換するための光束変換素子を構成している。
図3は、アフォーカルレンズの前側レンズ群と後側レンズ群との間の光路中に配置されたプリズム対の構成および動作を概略的に示す図である。プリズム対6は、図3に示すように、光源側から順に、光源側に平面を向け且つマスク側に凹状断面の屈折面を向けた第1プリズム部材6aと、マスク側に平面を向け且つ光源側に凸状断面の屈折面を向けた第2プリズム部材6bとにより構成されている。そして、第1プリズム部材6aの凹状断面の屈折面と第2プリズム部材6bの凸状断面の屈折面とは、互いに当接可能なように相補的に形成されている。
さらに具体的には、第1プリズム部材6aの凹状断面の屈折面は、光軸AXと直交する平面状の中央部6cと、光軸AXを中心とする円錐体の側面に対応する周辺円錐部6dとを有する。同様に、第2プリズム部材6bの凸状断面の屈折面は、光軸AXと直交する平面状の中央部6eと、光軸AXを中心とする円錐体の側面に対応する周辺円錐部6fとを有する。また、第1プリズム部材6aおよび第2プリズム部材6bのうち少なくとも一方の部材が光軸AXに沿って移動可能に構成され、第1プリズム部材6aの凹状断面の屈折面と第2プリズム部材6bの凸状断面の屈折面との間隔が可変に構成されている。
プリズム対6では、図3に示すように、Z方向3極状の二次光源のうち光軸AXを中心とする円形状の中心面光源30aを形成する中心光束31aが、第1プリズム部材6aの中央部6cおよび第2プリズム部材6bの中央部6eを通過する。一方、Z方向3極状の二次光源のうち、光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の周辺面光源30bを形成する2つの周辺光束31bは、第1プリズム部材6aの周辺円錐部6dおよび第2プリズム部材6bの周辺円錐部6fを通過する。
ここで、第1プリズム部材6aの凹状屈折面と第2プリズム部材6bの凸状屈折面とが互いに当接している状態では、中心光束31aおよび2つの周辺光束31bに対してプリズム対6は平行平面板として機能し、形成されるZ方向3極状の二次光源に及ぼす影響はない。しかしながら、第1プリズム部材6aの凹状屈折面と第2プリズム部材6bの凸状屈折面とを離間させると、中心光束31aに対してプリズム対6は影響を及ぼさないが、2つの周辺光束31bに対してプリズム対6はいわゆるビームエキスパンダーとして機能する。
図4は、Z方向3極状の二次光源に対するプリズム対の作用を説明する図である。図4に示すように、Z方向3極状の二次光源を構成する2つの円形状の周辺面光源32bは、プリズム対6の間隔を零から所定の値まで拡大させることにより、光軸AXを中心とした円の径方向に沿って外方へ移動するとともに、その形状が円形状から楕円形状に変化する。すなわち、変化前の円形状の周辺面光源32bの中心点と変化後の楕円形状の周辺面光源33bの中心点とを結ぶ線分は光軸AXを通り、中心点の移動距離はプリズム対6の間隔に依存する。
さらに、変化前の円形状の周辺面光源32bを光軸AXから見込む角度(光軸AXから周辺面光源32bへの一対の接線がなす角度)と、変化後の楕円形状の周辺面光源33bを光軸AXから見込む角度とが等しい。そして、変化前の円形状の周辺面光源32bの直径すなわち光軸AXとして2つの周辺面光源32bに外接する円の半径と内接する円の半径との差と、光軸AXとして変化後の楕円形状の周辺面光源33bに外接する円の半径と内接する円の半径との差とが等しい。このように、円形状の周辺面光源32bはプリズム対6の間隔に依存して周方向に変化するが、径方向には変化しない。一方、Z方向3極状の二次光源を構成する円形状の中心面光源32aは、プリズム対6の間隔を零から所定の値まで拡大させても影響を受けない。
したがって、プリズム対6の間隔を零から所定の値まで拡大させると、Z方向3極状の二次光源を構成する2つの円形状の周辺面光源32bの位置および大きさが、Z方向3極状の二次光源を構成する円形状の中心面光源32aとは独立して変化する。換言すれば、プリズム対6は、瞳面またはその近傍に形成されて光軸AXから間隔を隔てた複数の周辺領域に位置する光強度分布(2つの周辺面光源32b)の位置および大きさを、瞳面またはその近傍に形成されて光軸AXを含む中心領域に位置する光強度分布(中心面光源32a)とは独立して変更するための領域変更手段を構成している。
図5は、Z方向3極状の二次光源に対するズームレンズの作用を説明する図である。図5に示すように、ズームレンズ7の焦点距離が変化すると、光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円形状の周辺面光源32bは、円形状を維持したまま光軸AXを中心とした円の径方向に沿って移動する。そして、変化前の周辺面光源32bの中心点と変化後の周辺面光源34bの中心点とを結ぶ線分は光軸AXを通り、中心点の移動距離および移動の向きはズームレンズ7の焦点距離の変化に依存する。
また、変化前の周辺面光源32bを光軸AXから見込む角度と、変化後の周辺面光源34bを光軸AXから見込む角度とが等しい。一方、ズームレンズ7の焦点距離の変化に際して、光軸AXを中心とする円形状の中心面光源32aの中心点は移動しないが、その大きさが変化する。具体的には、変化前の中心面光源32aの直径と変化後の中心面光源34aの直径との比は、変化前の周辺面光源32bの直径と変化後の周辺面光源34bの直径との比と同じである。こうして、ズームレンズ7の焦点距離を変化させることにより、3極状の二次光源の全体形状を相似的に変化させることができる。
なお、Z方向3極照明用の回折光学素子3に代えて、X方向3極照明用の回折光学素子を照明光路中に設定することによって、X方向3極照明を行うことができる。X方向3極照明用の回折光学素子は、平行光束が入射した場合に、そのファーフィールドに、たとえば光軸AXを中心とする円形状の光強度分布と光軸AXを中心としてX方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布とからなる3つの円形状の光強度分布を形成する機能を有する。したがって、X方向3極照明用の回折光学素子を介した光束は、図2(b)に示すように、光軸AXを中心とする円形状の光強度分布(中心面光源)30aと光軸AXを中心としてX方向に間隔を隔てた2つの円形状の光強度分布(周辺面光源)30cとからなるX方向3極状の二次光源を形成する。
そして、図6に示すように、プリズム対6の間隔を零から所定の値まで拡大させると、図4のZ方向3極照明の場合と同様に、X方向3極状の二次光源を構成する2つの円形状の周辺面光源32cの位置および大きさが、X方向3極状の二次光源を構成する円形状の中心面光源32aとは独立して変化する。すなわち、円形状の周辺面光源32cは、プリズム対6の間隔に依存して、その中心位置が径方向に移動し、その大きさが周方向にだけ変化して、楕円形状の周辺面光源33cになる。一方、円形状の中心面光源32aは、プリズム対6の間隔が変化しても、その中心位置および大きさは変化しない。
また、図7に示すように、ズームレンズ7の焦点距離を変化させると、図5のZ方向3極照明の場合と同様に、円形状の中心面光源32aと2つの円形状の周辺面光源32cとからなるX方向3極状の二次光源の全体形状は相似的に変化する。すなわち、円形状の周辺面光源32cは、ズームレンズ7の焦点距離の変化に依存して、その中心位置が径方向に移動し、その大きさが相似的に変化して、円形状の周辺面光源34cになる。一方、円形状の中心面光源32aは、ズームレンズ7の焦点距離の変化に依存して、その大きさが相似的に変化して円形状の中心面光源34aになるが、その中心位置は変化しない。
また、Z方向3極照明用の回折光学素子3に代えて、5極照明用の回折光学素子を照明光路中に設定することによって、5極照明を行うことができる。5極照明用の回折光学素子は、平行光束が入射した場合に、そのファーフィールドに、たとえば光軸AXを中心とする円形状の光強度分布と、光軸AXを中心としてX方向に沿った辺およびZ方向に沿った辺を有する正方形(または長方形)の各頂点の位置に配置された4つの円形状の光強度分布とからなる5つの円形状の光強度分布を形成する機能を有する。したがって、5極照明用の回折光学素子を介した光束は、図8(a)に示すように、光軸AXを中心とする円形状の光強度分布(中心面光源)30aと、光軸AXを中心としてX方向に沿った辺およびZ方向に沿った辺を有する正方形の各頂点の位置に配置された4つの円形状の光強度分布(周辺面光源)30dとからなる5極状の二次光源を形成する。
そして、図9に示すように、プリズム対6の間隔を零から所定の値まで拡大させると、図4のZ方向3極照明や図6のX方向3極照明の場合と同様に、5極状の二次光源を構成する4つの円形状の周辺面光源32dの位置および大きさが、5極状の二次光源を構成する円形状の中心面光源32aとは独立して変化する。すなわち、円形状の周辺面光源32dは、プリズム対6の間隔に依存して、その中心位置が径方向に移動し、その大きさが周方向にだけ変化して、楕円形状の周辺面光源33dになる。一方、円形状の中心面光源32aは、プリズム対6の間隔が変化しても、その中心位置および大きさは変化しない。
また、図10に示すように、ズームレンズ7の焦点距離を変化させると、図5のZ方向3極照明や図7のX方向3極照明の場合と同様に、円形状の中心面光源32aと4つの円形状の周辺面光源32dとからなる5極状の二次光源の全体形状は相似的に変化する。すなわち、円形状の周辺面光源32dは、ズームレンズ7の焦点距離の変化に依存して、その中心位置が径方向に移動し、その大きさが相似的に変化して、円形状の周辺面光源34dになる。一方、円形状の中心面光源32aは、ズームレンズ7の焦点距離の変化に依存して、その大きさが相似的に変化して円形状の中心面光源34aになるが、その中心位置は変化しない。
また、Z方向3極照明用の回折光学素子3に代えて、9極照明用の回折光学素子を照明光路中に設定することによって、9極照明を行うことができる。9極照明用の回折光学素子は、平行光束が入射した場合に、そのファーフィールドに、たとえば光軸AXを中心とする円形状の光強度分布と、光軸AXを中心としてX方向に沿った辺およびZ方向に沿った辺を有する第1正方形(または第1長方形)の各頂点の位置に配置された4つの円形状の光強度分布と、光軸AXを中心としてX方向に沿った辺およびZ方向に沿った辺を有し且つ第1正方形(または第1長方形)を包囲する第2正方形(または第2長方形)の各頂点の位置に配置された4つの円形状の光強度分布とからなる5つの円形状の光強度分布を形成する機能を有する。
したがって、9極照明用の回折光学素子を介した光束は、図8(b)に示すように、光軸AXを中心とする円形状の光強度分布(中心面光源)30aと、光軸AXを中心としてX方向に沿った辺およびZ方向に沿った辺を有する第1正方形の各頂点の位置に配置された4つの円形状の光強度分布(内側周辺面光源)30eと、光軸AXを中心としてX方向に沿った辺およびZ方向に沿った辺を有し且つ第1正方形を包囲する第2正方形の各頂点の位置に配置された4つの円形状の光強度分布(外側周辺面光源)30fとからなる9極状の二次光源を形成する。
この場合、図示を省略するが、プリズム対6の間隔を零から所定の値まで拡大させると、図9の5極照明の場合と同様に、9極状の二次光源を構成する4つの円形状の内側周辺面光源および4つの円形状の外側周辺面光源の位置および大きさが、9極状の二次光源を構成する円形状の中心面光源とは独立して変化する。すなわち、円形状の内側周辺面光源および外側周辺面光源は、プリズム対6の間隔に依存して、その中心位置が径方向に移動し、その大きさが周方向にだけ変化して、楕円形状の内側周辺面光源および外側周辺面光源になる。一方、円形状の中心面光源は、プリズム対6の間隔が変化しても、その中心位置および大きさは変化しない。
また、ズームレンズ7の焦点距離を変化させると、図10の5極照明の場合と同様に、円形状の中心面光源と4つの円形状の内側周辺面光源と4つの円形状の外側周辺面光源とからなる9極状の二次光源の全体形状は相似的に変化する。すなわち、円形状の内側周辺面光源および外側周辺面光源は、ズームレンズ7の焦点距離の変化に依存して、その中心位置が径方向に移動し、その大きさが相似的に変化して、円形状の内側周辺面光源および外側周辺面光源になる。一方、円形状の中心面光源は、ズームレンズ7の焦点距離の変化に依存して、その大きさが相似的に変化して円形状の中心面光源になるが、その中心位置は変化しない。
なお、上述の説明では、9極照明に際して、図2に示すように屈折面が1つの周辺円錐部(6d,6f)を有する1段式のプリズム対6を用いている。しかしながら、9極照明に際して、図11に示すように屈折面が2つの周辺円錐部を有する2段式のプリズム対60を用いることもできる。図11を参照すると、2段式プリズム対60は、光源側から順に、光源側に平面を向け且つマスク側に凹状断面の屈折面を向けた第1プリズム部材60aと、マスク側に平面を向け且つ光源側に凸状断面の屈折面を向けた第2プリズム部材60bとにより構成されている。そして、第1プリズム部材60aの凹状断面の屈折面と第2プリズム部材60bの凸状断面の屈折面とは、互いに当接可能なように相補的に形成されている。
さらに具体的には、第1プリズム部材60aの凹状断面の屈折面は、光軸AXと直交する平面状の中央部60cと、光軸AXを中心とする第1円錐体の側面に対応する内側周辺円錐部60dと、光軸AXを中心とし且つ第1円錐体よりも小さな頂角を有する第2円錐体の側面に対応する外側周辺円錐部60eとを有する。同様に、第2プリズム部材60bの凸状断面の屈折面は、光軸AXと直交する平面状の中央部60fと、光軸AXを中心とする第1円錐体の側面に対応する内側周辺円錐部60gと、光軸AXを中心とし且つ第1円錐体よりも小さな頂角を有する第2円錐体の側面に対応する外側周辺円錐部60hとを有する。また、第1プリズム部材60aおよび第2プリズム部材60bのうち少なくとも一方の部材が光軸AXに沿って移動可能に構成され、第1プリズム部材60aの凹状断面の屈折面と第2プリズム部材60bの凸状断面の屈折面との間隔が可変に構成されている。
2段式プリズム対60では、図11に示すように、9極状の二次光源のうち光軸AXを中心とする円形状の中心面光源30aを形成する中心光束31aが、第1プリズム部材60aの中央部60cおよび第2プリズム部材60bの中央部60fを通過する。また、9極状の二次光源のうち、光軸AXを中心とした第1正方形の各頂点の位置に配置された4つの内側周辺面光源30eを形成する4つの内側周辺光束31eは、第1プリズム部材60aの内側周辺円錐部60dおよび第2プリズム部材60bの周辺円錐部60gを通過する。また、9極状の二次光源のうち、光軸AXを中心とした第2正方形の各頂点の位置に配置された4つの外側周辺面光源30fを形成する4つの外側周辺光束31fは、第1プリズム部材60aの外側周辺円錐部60eおよび第2プリズム部材60bの周辺円錐部60hを通過する。
ここで、第1プリズム部材60aの凹状屈折面と第2プリズム部材60bの凸状屈折面とが互いに当接している状態では、中心光束31a、4つの内側周辺光束31eおよび4つの外側周辺光束31fに対して2段式プリズム対60は平行平面板として機能し、形成される9極状の二次光源に及ぼす影響はない。しかしながら、第1プリズム部材60aの凹状屈折面と第2プリズム部材60bの凸状屈折面とを離間させると、中心光束31aに対して2段式プリズム対60は影響を及ぼさないが、4つの内側周辺光束31eおよび4つの外側周辺光束31fに対して2段式プリズム対60はいわゆるビームエキスパンダーとして機能する。
図12は、9極状の二次光源に対する2段式プリズム対の作用を説明する図である。ただし、図12では、図面の明瞭化のために、9極状の二次光源のうち、中心面光源32a、1つの内側周辺面光源32e、および1つの外側周辺面光源32fだけを示している。図12に示すように、内側周辺面光源32eおよび外側周辺面光源32fは、2段式プリズム対60の間隔を零から所定の値まで拡大させることにより、光軸AXを中心とした円の径方向に沿って外方へ移動するとともに、その形状が円形状から楕円形状に変化する。すなわち、変化前の円形状の内側周辺面光源32eおよび外側周辺面光源32fの中心点と変化後の楕円形状の内側周辺面光源33eおよび外側周辺面光源33fの中心点とを結ぶ線分は光軸AXを通り、中心点の移動距離は2段式プリズム対60の間隔に依存する。
ここで、2段式プリズム対60の場合には、変化前の円形状の外側周辺面光源32fから変化後の楕円形状の外側周辺面光源33fへの移動距離の方が、変化前の円形状の内側周辺面光源32eから変化後の楕円形状の内側周辺面光源33eへの移動距離よりも大きくなり、その移動距離の差は2段式プリズム対60の間隔に依存して変化する。さらに、変化前の円形状の内側周辺面光源32eを光軸AXから見込む角度(光軸AXから内側周辺面光源32eへの一対の接線がなす角度)と、変化後の楕円形状の内側周辺面光源33eを光軸AXから見込む角度とが等しい。
同様に、変化前の円形状の外側周辺面光源32fを光軸AXから見込む角度(光軸AXから外側周辺面光源32fへの一対の接線がなす角度)と、変化後の楕円形状の外側周辺面光源33fを光軸AXから見込む角度とが等しい。ここで、変化前の円形状の内側周辺面光源32eと変化前の円形状の外側周辺面光源32fとが同じ大きさを有する場合、変化前の円形状の内側周辺面光源32eを光軸AXから見込む角度の方が、変化前の円形状の外側周辺面光源32fを光軸AXから見込む角度よりも大きくなる。
そして、変化前の円形状の内側周辺面光源32eの直径すなわち光軸AXとして4つの内側周辺面光源32eに外接する円の半径と内接する円の半径との差と、光軸AXとして変化後の楕円形状の内側周辺面光源33eに外接する円の半径と内接する円の半径との差とが等しい。同様に、変化前の円形状の外側周辺面光源32fの直径すなわち光軸AXとして4つの外側周辺面光源32fに外接する円の半径と内接する円の半径との差と、光軸AXとして変化後の楕円形状の外側周辺面光源33fに外接する円の半径と内接する円の半径との差とが等しい。一方、9極状の二次光源を構成する円形状の中心面光源32aは、2段式プリズム対60の間隔を零から所定の値まで拡大させても影響を受けない。
以上のように、第1実施形態では、領域変更手段としてのプリズム対6(または2段式プリズム対60)の作用により、瞳面またはその近傍に形成されて光軸AXから間隔を隔てた複数の周辺領域に位置する光強度分布(周辺面光源)の位置および大きさを、光軸AXを含む中心領域に位置する光強度分布(中心面光源)とは独立して変更することができる。その結果、第1実施形態では、たとえば中心面光源とは独立して変更される複数の周辺面光源の位置および大きさに関して多様性に富んだ(すなわち瞳面またはその近傍に形成される光強度分布に関して多様性に富んだ)3極照明、5極照明および9極照明を実現することができる。
なお、上述の第1実施形態では、光軸AXを中心とする円形状の中心面光源と光軸AXに関して対称に配置された複数の円形状の周辺面光源とからなる二次光源を形成している。しかしながら、各面光源の形状および位置はこれに限定されることなく、一般に、光軸AXを含む中心領域に位置する光強度分布と光軸AXから間隔を隔てた複数の周辺領域に位置する光強度分布とを有する二次光源(照明瞳分布)を形成することができる。
また、上述の第1実施形態では、光軸AXを含む中心面光源と光軸AXから間隔を隔てた各周辺面光源とがほぼ同じ大きさを有する二次光源を形成している。しかしながら、これに限定されることなく、所望の特性を有する回折光学素子を照明光路に設定することにより、各周辺面光源よりも中心面光源を実質的に大きくしたり、各周辺面光源よりも中心面光源を実質的に小さくしたりする変形例も可能である。この場合、中央部の面積が異なる1つまたは複数のプリズム対を交換可能に備えていることが好ましい。
具体的には、各周辺面光源よりも中心面光源を実質的に小さく設定する場合には、図12(a)に示すような中央部の面積が比較的小さいプリズム対を用いることができる。また、各周辺面光源よりも中心面光源を実質的に大きく設定する場合には、図12(b)に示すような中央部の面積が比較的大きいプリズム対を用いることができる。なお、図12には1段式プリズム対の例だけを示しているが、必要に応じて、中央部の面積が異なる1つまたは複数の2段式プリズム対を交換可能に備えていることが好ましい。
図14は、本発明の第2実施形態にかかる照明光学装置を備えた露光装置の構成を概略的に示す図である。また、図15は、第2実施形態の要部構成を概略的に示す図である。なお、図14および図15では、照明光学装置がZ方向3極照明の状態に設定されている。第2実施形態は、第1実施形態と類似の構成を有する。しかしながら、第2実施形態では、プリズム対6の光源側に1/4波長板12および1/2波長板13が付設され、プリズム対6のマスク側に1/2波長板14および偏角プリズム組立体15が付設されている点が第1実施形態と相違している。以下、第1実施形態との相違点に着目して第2実施形態を説明する。
図14および図15を参照すると、第2実施形態では、アフォーカルレンズ4の前側レンズ群4aとプリズム対6との間の光路中において、光源側から順に、光軸AXを中心として結晶光学軸が回転自在に構成された1/4波長板12と、光軸AXを中心として結晶光学軸が回転自在に構成された1/2波長板13とが配置されている。ここで、1/4波長板12は、入射する楕円偏光の光を直線偏光の光に変換する機能を有する。また、1/2波長板13は、入射する直線偏光の光を、所定の方向に偏光面を有する直線偏光の光に変換する機能を有する。
光源1としてKrFエキシマレーザ光源やArFエキシマレーザ光源を用いる場合、光源1からはほぼ直線偏光の光が供給される。また、光源1と回折光学素子3との間の光路中には、裏面反射鏡としての直角プリズムが複数個配置されるのが通常である。一般に、裏面反射鏡としての直角プリズムに直線偏光が入射する場合、入射する直線偏光の偏光面がP偏光面またはS偏光面に一致していないと、直角プリズムでの全反射により直線偏光が楕円偏光に変わる。
第2実施形態では、たとえば直角プリズムに起因して楕円偏光が回折光学素子3に入射することがあっても、入射する楕円偏光の特性に応じて1/4波長板12の結晶光学軸を設定することにより、後続する1/2波長板13に直線偏光が入射する。また、1/2波長板13に入射した直線偏光の光は、その結晶光学軸の方向に応じて、任意の方向に偏光面を有する直線偏光の光に変換される。こうして、1/4波長板12と1/2波長板13との協働作用により、任意の方向に偏光面を有する直線偏光の光がプリズム対6へ導かれる。なお、1/4波長板12を1/2波長板13のマスク側に配置しても光学的に等価な効果が得られる。
また、第2実施形態では、プリズム対6とアフォーカルレンズ4の後側レンズ群4bとの間において、光軸AXから間隔を隔てた2つの周辺面光源30bを形成する2つの周辺光束31bの光路中には、光軸AXを中心として結晶光学軸が回転自在に構成された輪帯状の1/2波長板14が配置されている。さらに、プリズム対6とアフォーカルレンズ4の後側レンズ群4bとの間において、光軸AXを含む中心面光源30aを形成する中心光束31aの光路中には、くさび形状の水晶プリズム15aと、この水晶プリズム15aと相補的な形状を有するくさび形状の石英プリズム15bとにより一体的に構成された偏角プリズム組立体15が配置されている。
偏角プリズム組立体15は、光軸AXを中心として回転可能に構成されている。また、偏角プリズム組立体15では、水晶プリズム15aの頂点方向と石英プリズム15bの頂点方向とが逆向きに設定され、水晶プリズム15aによる偏角作用を石英プリズム15bが補償(補正)するように構成されている。偏角プリズム組立体15では、入射する直線偏光の偏光面に対して水晶プリズム15aの結晶光学軸の方向が45度の角度をなすように設定することにより、偏角プリズム組立体15からの射出光が実質的に非偏光状態の光に変換される。一方、入射する直線偏光の偏光面に対して水晶プリズム15aの結晶光学軸の方向が0度または90度の角度をなすように設定すると、入射した直線偏光の偏光面が変化することなくそのまま偏角プリズム組立体15を通過する。
こうして、1/2波長板14は、光軸AXから間隔を隔てた2つの周辺面光源30bヘ向かう直線偏光の光束の偏光面を必要に応じて変化させるための位相部材を構成している。具体的には、1/2波長板14の結晶光学軸を所要の角度位置に設定することにより、2つの周辺面光源30bに達する光の偏光状態を、任意の方向に偏光面を有する直線偏光状態に設定することができる。
また、偏角プリズム組立体15は、光軸AXを含む中心面光源30aヘ向かう直線偏光の光束を必要に応じて非偏光化するための偏光解消素子を構成している。具体的には、偏角プリズム組立体15における水晶プリズム15aの結晶光学軸を所要の角度位置に設定することにより、中心面光源30aに達する光の偏光状態を、直線偏光状態と非偏光状態との間で切り換えることができる。あるいは、偏角プリズム組立体15を光路に対して挿脱自在に構成し、偏角プリズム組立体15を光路中に設定することにより非偏光状態を実現したり、偏角プリズム組立体15を光路から退避させることにより光量損失を回避しつつ直線偏光状態を実現したりすることもできる。以下、具体的に、第2実施形態の3極照明、5極照明および9極照明における周辺面光源および中心面光源の偏光状態の設定例を説明する。
図16は、第2実施形態の3極照明における周辺面光源および中心面光源の偏光状態の設定例を説明する図である。Z方向3極照明またはX方向3極照明の場合、図16に示すように、マスクに形成されたライン・アンド・スペース・パターン51のピッチ方向に沿って光軸AXを中心として間隔を隔てた2つの周辺面光源41bを形成し、この2つの周辺面光源41bを通過する光束の偏光状態を、たとえばパターン51のピッチ方向と直交する方向に偏光面(図中両方向矢印で示す)を有する直線偏光状態に設定する。また、光軸AXを中心とした中心面光源41aを通過する光束の偏光状態を、たとえば非偏光状態に設定する。
この場合、ライン・アンド・スペース・パターン51に適した2極照明(2つの周辺面光源41bからの光束によるマスクの照明)と、孤立パターン52に適した小σ照明(中心面光源41aからの光束によるマスクの照明)との組み合わせからなる3極照明により、投影光学系の結像性能の向上を図りつつ忠実なパターン転写を実現することができる。なお、3極照明において、中心面光源41aを通過する光束の偏光状態を、所望する方向に偏光面を有する直線偏光状態に設定することもできる。また、2つの周辺面光源41bを通過する光束の偏光状態を、所望する方向に偏光面を有する直線偏光状態に設定することもできる。
図17は、第2実施形態の5極照明における周辺面光源および中心面光源の偏光状態の設定例を説明する図である。5極照明の場合、図17に示すように、マスクに形成されたライン・アンド・スペース・パターン51のピッチ方向に沿った辺を有する正方形(または長方形)の各頂点の位置に4つの周辺面光源41dを形成し、この4つの周辺面光源41dを通過する光束の偏光状態を、たとえばパターン51のピッチ方向と直交する方向に偏光面(図中両方向矢印で示す)を有する直線偏光状態に設定する。また、光軸AXを中心とした中心面光源41aを通過する光束の偏光状態を、たとえば非偏光状態に設定する。
この場合、ライン・アンド・スペース・パターン51に適した4極照明(4つの周辺面光源41dからの光束によるマスクの照明)と、孤立パターン52に適した小σ照明(中心面光源41aからの光束によるマスクの照明)との組み合わせからなる5極照明により、投影光学系の結像性能の向上を図りつつ忠実なパターン転写を実現することができる。なお、5極照明において、中心面光源41aを通過する光束の偏光状態を、所望する方向に偏光面を有する直線偏光状態に設定することもできる。また、4つの周辺面光源41dを通過する光束の偏光状態を、所望する方向に偏光面を有する直線偏光状態に設定することもできる。特に、4つの周辺面光源41dを通過する光束の偏光状態を、たとえば周辺面光源41dの間隔方向と45度の角度をなす方向に偏光面を有する直線偏光状態に設定することもできる。
また、各周辺面光源41dを通過する光束の偏光状態を、それぞれ所望する方向に偏光面を有する直線偏光状態に設定することもできる。典型的には、図18に示すように、4つの周辺面光源のうち、光軸AXを挟んで対向する一方の対の周辺面光源41d1および41d3を通過する光束の偏光状態を、周辺面光源41d1と41d3との間隔方向と45度の角度をなす同一方向に偏光面を有する直線偏光状態に設定し、光軸AXを挟んで対向する他方の対の周辺面光源41d2および41d4を通過する光束の偏光状態を、周辺面光源41d1および41d3を通過する直線偏光の偏光面方向と直交する方向に偏光面を有する直線偏光状態に設定することもできる。ただし、図18に示す偏光状態を実現するには、図15に示す輪帯状の1/2波長板14に代えて、一方の対の周辺面光源41d1および41d3に向かう光束の光路中に第1の1/2波長板を設けると共に、他方の対の周辺面光源41d2および41d4に向かう光束の光路中に第2の1/2波長板を設ける必要がある。
図19は、第2実施形態の9極照明における周辺面光源および中心面光源の偏光状態の設定例を説明する図である。9極照明の場合、図19に示すように、マスクに形成されたライン・アンド・スペース・パターン51aのピッチ方向に沿った辺を有する正方形(または長方形)の各頂点の位置に4つの内側周辺面光源41eを形成し、この4つの内側周辺面光源41eを通過する光束の偏光状態を、たとえばパターン51aのピッチ方向と直交する方向に偏光面(図中両方向矢印で示す)を有する直線偏光状態に設定する。また、4つの外側周辺面光源41fを通過する光束の偏光状態を、4つの内側周辺面光源41eを通過する直線偏光の偏光面方向と直交する方向に偏光面(図中両方向矢印で示す)を有する直線偏光状態に設定する。
また、光軸AXを中心とした中心面光源41aを通過する光束の偏光状態を、たとえば非偏光状態に設定する。この場合、ライン・アンド・スペース・パターン51aに適した4極照明(4つの内側周辺面光源41eからの光束によるマスクの照明)と、パターン51aよりも微細で且つパターン51aのピッチ方向と直交するピッチ方向を有するライン・アンド・スペース・パターン51bに適した4極照明(4つの外側周辺面光源41fからの光束によるマスクの照明)と、孤立パターン52に適した小σ照明(中心面光源41aからの光束によるマスクの照明)との組み合わせからなる9極照明により、投影光学系の結像性能の向上を図りつつ忠実なパターン転写を実現することができる。
なお、9極照明において、中心面光源41aを通過する光束の偏光状態を、所望する方向に偏光面を有する直線偏光状態に設定することもできる。また、4つの内側周辺面光源41eを通過する光束の偏光状態、および4つの外側周辺面光源41fを通過する光束の偏光状態を、それぞれ所望する方向に偏光面を有する直線偏光状態に設定することもできる。特に、4つの内側周辺面光源41eを通過する光束の偏光状態および4つの外側周辺面光源41fを通過する光束の偏光状態を、たとえば周辺面光源の間隔方向と45度の角度をなす方向に偏光面を有する直線偏光状態に設定することもできる。
典型的には、図20に示すように、4つの内側周辺面光源のうち、光軸AXを挟んで対向する一方の対の内側周辺面光源41e1および41e3を通過する光束の偏光状態を、内側周辺面光源41e1と41e3との間隔方向と45度の角度をなす同一方向に偏光面を有する直線偏光状態に設定し、光軸AXを挟んで対向する他方の対の内側周辺面光源41e2および41e4を通過する光束の偏光状態を、内側周辺面光源41e1および41e3を通過する直線偏光の偏光面方向と直交する方向に偏光面を有する直線偏光状態に設定することもできる。
同様に、4つの外側周辺面光源のうち、光軸AXを挟んで対向する一方の対の外側周辺面光源41f1および41f3を通過する光束の偏光状態を、外側周辺面光源41f1と41f3との間隔方向と45度の角度をなす同一方向に偏光面を有する直線偏光状態に設定し、光軸AXを挟んで対向する他方の対の外側周辺面光源41f2および41f4を通過する光束の偏光状態を、外側周辺面光源41f1および41f3を通過する直線偏光の偏光面方向と直交する方向に偏光面を有する直線偏光状態に設定することもできる。
ただし、図19に示す偏光状態を実現するには、図21に示すように、図15に示すプリズム対6に代えて2段式プリズム対60を配置し(あるいはプリズム対6をそのまま用いて)、図15に示す輪帯状の1/2波長板14に代えて、内側周辺面光源41eに向かう光束31eの光路中に光軸AXを中心として回転可能な第1の輪帯状の1/2波長板14aを設けると共に、外側周辺面光源41fに向かう光束31fの光路中に光軸AXを中心として回転可能な第2の輪帯状の1/2波長板14bを設ける必要がある。
あるいは、図22に示すように、図21の第1の輪帯状の1/2波長板14aに代えて、中心面光源41aに向かう光束31aおよび内側周辺面光源41eに向かう光束31eの光路中に光軸AXを中心として回転可能な第1の円形状の1/2波長板14cを設けると共に、図21の第2の輪帯状の1/2波長板14bに代えて、中心面光源41aに向かう光束31a、内側周辺面光源41eに向かう光束31eおよび外側周辺面光源41fに向かう光束31fの光路中に光軸AXを中心として回転可能な第2の円形状の1/2波長板14dを設ける構成も可能である。
図22の構成では、内側周辺面光源41eを通過する光束の偏光状態および外側周辺面光源41fを通過する光束の偏光状態を、ともに横偏光状態または縦偏光状態に設定することができる。また、内側周辺面光源41eを通過する光束の偏光状態を横偏光状態に設定し、外側周辺面光源41fを通過する光束の偏光状態を縦偏光状態に設定することもできる。また、内側周辺面光源41eを通過する光束の偏光状態を縦偏光状態に設定し、外側周辺面光源41fを通過する光束の偏光状態を横偏光状態に設定することもできる。
一方、図20に示す偏光状態を実現するには、図15に示すプリズム対6に代えて2段式プリズム対60を配置し(あるいはプリズム対6をそのまま用いて)、図15に示す輪帯状の1/2波長板14に代えて、一方の対の内側周辺面光源41e1および41e3に向かう光束の光路中に第1の1/2波長板を設け、他方の対の内側周辺面光源41e2および41e4に向かう光束の光路中に第2の1/2波長板を設け、一方の対の外側周辺面光源41f1および41f3に向かう光束の光路中に第3の1/2波長板を設け、他方の対の外側周辺面光源41f2および41f4に向かう光束の光路中に第4の1/2波長板を設ける必要がある。
以上のように、第2実施形態では、1/2波長板14および偏角プリズム組立体15は、光軸AXを中心とした中心面光源(一般には瞳面またはその近傍において光軸を含む中心領域としての第1領域)を通過する光束を非偏光状態に設定すると共に、光軸AXから間隔を隔てた周辺面光源(一般には瞳面またはその近傍において光軸から間隔を隔てた1つまたは複数の周辺領域としての第2領域)を通過する光束を直線偏光状態(一般には偏光状態)に設定するための偏光設定手段を構成している。
また、別の観点によれば、1/2波長板14および偏角プリズム組立体15は、光軸AXから間隔を隔てた周辺面光源(一般には瞳面またはその近傍において光軸から間隔を隔てた1つまたは複数の周辺領域としての第2領域)を通過する光束の偏光状態を、光軸AXを中心とした中心面光源(一般には瞳面またはその近傍において光軸を含む中心領域としての第1領域)を通過する光束の偏光状態とは独立に変更するための偏光状態変更手段を構成している。この偏光状態変更手段(14,15)は、たとえば光軸AXを中心とした中心面光源(第1領域)を通過する光束の状態を非偏光状態と直線偏光状態との間で変更する。
また、この偏光状態変更手段(14,15)は、たとえば光軸AXから間隔を隔てた周辺面光源(第2領域)を通過する光束の偏光状態を互いに異なる方向に偏光面を有する2つの直線偏光状態の間で変更する。その結果、第2実施形態では、周辺面光源の位置および大きさに関して多様性に富んだ3極照明、5極照明および9極照明を実現することができるという第1実施形態の効果に加えて、周辺面光源および中心面光源の偏光状態(非偏光状態を含む)に関して多様性に富んだ3極照明、5極照明および9極照明を実現することができる。
なお、上述の第2実施形態において、Z方向3極照明用の回折光学素子3に代えて輪帯照明用の回折光学素子を照明光路中に設定するとともに、プリズム対6に代えて屈折面が平面状の中央部を有することなく1つの円錐部だけを有するプリズム対(以下、「円錐プリズム対」という)を用いることによって、輪帯照明を行うことができる。輪帯照明用の回折光学素子は、平行光束が入射した場合に、そのファーフィールドに、たとえば光軸AXを中心とする円形状の光強度分布を形成する機能を有する。
したがって、輪帯照明用の回折光学素子を介した光束は、アフォーカルレンズ4の瞳面に、光軸AXを中心とする円形状の光強度分布を形成する。そして、円錐プリズム対の間隔に応じて、マイクロレンズアレイ8の入射面には光軸AXを中心とする輪帯状の照野が形成される。その結果、マイクロレンズアレイ8の後側焦点面(照明光学装置の瞳面またはその近傍)には、図23(a)に示すように、光軸AXを中心とする輪帯状の実質的な面光源35が形成される。
通常、輪帯状の面光源を通過する光束は、その全体に亘って一定の偏光状態(非偏光状態を含む)を有する。これに対し、図23(a)に示す輪帯状の面光源35は、光軸AXを中心とする円の周方向に沿って複数(図23では8つ)の領域35a〜35hを有し、各領域35a〜35hを通過する光束の偏光状態が、各領域35a〜35hの中心において上記円にほぼ接する方向に沿った偏光面(図中両方向矢印で示す)を有する直線偏光状態に設定されている。
図23(a)に示す偏光状態を実現するには、図15に示す輪帯状の1/2波長板14および偏角プリズム組立体15に代えて、たとえば図23(b)に示す位相部材組立体16を光路中に設定する必要がある。ここで、位相部材16は、輪帯状の面光源35を構成する8つの領域35a〜35hに対応する8つの位相部材16a〜16hを有し、各位相部材16a〜16hは入射する直線偏光の光の偏光面を必要に応じて変化させる。具体的には、図中水平方向に偏光面を有する直線偏光すなわち横偏光の光が位相部材16に入射する場合、位相部材16aおよび16eは図中水平方向に対して0度の角度をなす方向に結晶光学軸を有する1/2波長板により形成されている。
また、位相部材16cおよび16gは図中水平方向に対して45度の角度をなす方向に結晶光学軸を有する1/2波長板により形成されている。また、位相部材16bおよび16fは図中水平方向に対して反時計廻りに22.5度の角度をなす方向に結晶光学軸を有する1/2波長板により形成されている。また、位相部材16dおよび16hは図中水平方向に対して時計廻りに22.5度の角度をなす方向に結晶光学軸を有する1/2波長板により形成されている。
この構成により、マスクMまたはウェハW上に照射される光をS偏光を主成分とする偏光状態に設定することが可能である。なお、位相部材組立体16よりもウェハW側の光学系(照明光学系や投影光学系)が偏光収差(リターデーション)を有している場合には、この偏光収差(リターデーション)に起因して偏光方向が変わることがある。この場合には、これらの光学系の偏光収差の影響を考慮した上で、位相部材組立体16により偏光面を変化させる状態を設定すれば良い。また、位相部材組立体16よりもウェハW側の光学系(照明光学系や投影光学系)中に反射部材が配置されている場合、当該反射部材において反射光が偏光方向ごとに位相差を有することがある。この場合においても、反射面の偏光特性に起因する光束の位相差を考慮した上で、位相部材組立体16により偏光面を変化させる状態を設定すれば良い。ここで、上述の事項は、図23に示した変形例だけではなく、第1実施形態および第2実施形態にも適用することができる。なお、図23に示した変形例において、円周方向に偏光面を持つ輪帯状の面光源35に加えて、光軸AXを中心とする円形状の中心面光源を形成するようにしても良い。
上述の実施形態にかかる露光装置では、照明光学装置によってマスク(レチクル)を照明し(照明工程)、投影光学系を用いてマスクに形成された転写用のパターンを感光性基板に露光する(露光工程)ことにより、マイクロデバイス(半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等)を製造することができる。以下、上述の実施形態の露光装置を用いて感光性基板としてのウェハ等に所定の回路パターンを形成することによって、マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法の一例につき図24のフローチャートを参照して説明する。
先ず、図24のステップ301において、1ロットのウェハ上に金属膜が蒸着される。次のステップ302において、そのlロットのウェハ上の金属膜上にフォトレジストが塗布される。その後、ステップ303において、上述の実施形態の露光装置を用いて、マスク上のパターンの像がその投影光学系を介して、その1ロットのウェハ上の各ショット領域に順次露光転写される。その後、ステップ304において、その1ロットのウェハ上のフォトレジストの現像が行われた後、ステップ305において、その1ロットのウェハ上でレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことによって、マスク上のパターンに対応する回路パターンが、各ウェハ上の各ショット領域に形成される。その後、更に上のレイヤの回路パターンの形成等を行うことによって、半導体素子等のデバイスが製造される。上述の半導体デバイス製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する半導体デバイスをスループット良く得ることができる。
また、上述の実施形態の露光装置では、プレート(ガラス基板)上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得ることもできる。以下、図25のフローチャートを参照して、このときの手法の一例につき説明する。図25において、パターン形成工程401では、上述の実施形態の露光装置を用いてマスクのパターンを感光性基板(レジストが塗布されたガラス基板等)に転写露光する、所謂光リソグラフィー工程が実行される。この光リソグラフィー工程によって、感光性基板上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レジスト剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成され、次のカラーフィルター形成工程402へ移行する。
次に、カラーフィルター形成工程402では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列されたり、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルターの組を複数水平走査線方向に配列したカラーフィルターを形成する。そして、カラーフィルター形成工程402の後に、セル組み立て工程403が実行される。セル組み立て工程403では、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板、およびカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルター等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。
セル組み立て工程403では、例えば、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルターとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。その後、モジュール組み立て工程404にて、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。上述の液晶表示素子の製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する液晶表示素子をスループット良く得ることができる。
なお、上述の実施形態では、露光光としてKrFエキシマレーザ光(波長:248nm)やArFエキシマレーザ光(波長:193nm)を用いているが、これに限定されることなく、他の適当なレーザ光源、たとえば波長157nmのレーザ光を供給するF2レー
ザ光源などに対して本発明を適用することもできる。さらに、上述の実施形態では、照明光学装置を備えた投影露光装置を例にとって本発明を説明したが、マスク以外の被照射面を照明するための一般的な照明光学装置に本発明を適用することができることは明らかである。
また、上述の実施形態において、投影光学系と感光性基板との間の光路中を1.1よりも大きな屈折率を有する媒体(典型的には液体)で満たす手法、所謂液浸法を適用しても良い。この場合、投影光学系と感光性基板との間の光路中に液体を満たす手法としては、国際公開番号WO99/49504号公報に開示されているような局所的に液体を満たす手法や、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる手法や、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する手法などを採用することができる。
なお、液体としては、露光光に対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系や基板表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なものを用いることが好ましく、たとえばKrFエキシマレーザ光やArFエキシマレーザ光を露光光とする場合には、液体として純水、脱イオン水を用いることができる。また、露光光としてF2レーザ
光を用いる場合は、液体としてはF2レーザ光を透過可能な例えばフッ素系オイルや過フ
ッ化ポリエーテル(PFPE)等のフッ素系の液体を用いればよい。