JP6492598B2 - カーボンナノチューブの製造方法 - Google Patents

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本発明は、カーボンナノチューブの製造方法に関する。
カーボンナノチューブは、グラフェンシートを筒状に巻いた構造を有し、アスペクト比の非常に大きい一次元構造を有する材料である(例えば、非特許文献1を参照)。カーボンナノチューブは、優れた機械的強度、優れた柔軟性、及び、優れた半導体的又は金属的導電性を有し、更に化学的にも非常に安定な性質を持つことが知られている。カーボンナノチューブの製造方法としては、アーク放電法、レーザー蒸発法、化学気相成長法(以下、「CVD法」(Chemical Vapor Deposition Method)という)等が報告されている。特にCVD法は、大量合成、連続合成、高純度化に適した合成方法として注目されている合成法である(例えば、非特許文献2を参照)。
カーボンナノチューブの中でも、特に単層カーボンナノチューブ(以下、「SWCNT」(Single-walled carbon nanotube)という)は、巻き方及びその直径に応じて金属的性質又は半導体的性質を示すことが確認されており、電気電子素子等への応用が期待されている。SWCNTの合成には、触媒を用いてナノチューブを成長させる触媒CVD法(例えば、非特許文献3を参照)が主流となっている。この触媒CVD法は、金属のナノ粒子を触媒とする。そして、気体の炭素源を供給しながら、高温で炭素源を熱分解し、触媒である金属のナノ粒子からナノチューブを成長させる。
S.Iijima,Nature 354, 56 (1991). 齋藤理一郎、篠原久典 共編 「カーボンナノチューブの基礎と応用」培風館、2004年 H. Dai,A. G. Rinzler, P. Nikolaev, A. Thess, D. T. Colbert, and R.E. Smalley, Chem.Phys. Lett. 260, 471 (1996).
触媒CVD法において、炭素源としてアセチレンを用いる場合、アセチレンが低濃度であると、カーボンナノチューブの成長は可能であるものの原料供給量が少ないために大量生産に適さず、また、長尺のカーボンナノチューブを得るのに時間がかかる。一方で、アセチレンを高濃度にすると、アモルファス(非晶質)カーボンが触媒表面に付着して触媒の炭化失活を助長し、カーボンナノチューブの成長が停止してしまうため、やはり長尺のカーボンナノチューブが得られない。触媒の炭化失活を抑制する手段として、水を微量に添加する方法が知られているが、水の添加量の厳密な制御が必要となるため、カーボンナノチューブの成長が不均一になりやすいという問題がある。また、生産性を高めるために、アセチレンとともに水の添加量を増やした場合には、結晶性が大幅に低下するといった問題がある。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、アセチレンを高濃度に供給した場合でも触媒失活を有効に抑えることができ、結晶性が高く長尺なカーボンナノチューブを効率的に製造することができる、カーボンナノチューブの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、アセチレンと、該アセチレンからカーボンナノチューブを生成するための触媒と、該触媒を担持する支持体と、を使用して、流動層反応器内で上記支持体を加熱しながら、上記支持体上に上記カーボンナノチューブを合成するカーボンナノチューブの製造方法であって、上記アセチレン、二酸化炭素及びキャリアガスを含む原料ガスを、上記流動層反応器内に10cm/s以上の線流速で供給することで、上記支持体上に上記カーボンナノチューブを合成する合成工程を有し、上記原料ガス中の上記アセチレンの濃度が5体積%未満であり、且つ、上記二酸化炭素の濃度が0.1体積%以上40体積%未満である、カーボンナノチューブの製造方法を提供する。
かかる製造方法によれば、アセチレン、二酸化炭素及びキャリアガスを含み、且つアセチレン及び二酸化炭素の濃度が上記範囲内に制御された原料ガスを用い、当該原料ガスを上記範囲の線流速で供給することにより、アセチレンを高濃度(但し5体積%未満)に供給した場合でも触媒失活を有効に抑えることができ、結晶性が高く長尺なカーボンナノチューブを効率的に製造することができる。かかる効果が得られる理由について、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、触媒失活を抑制するために、従来のように水を用いた場合と二酸化炭素を用いた場合とを比較すると、触媒失活を起こすアモルファスカーボンとの間で、水を用いた場合は下記式(C)の反応が生じるのに対し、二酸化炭素を用いた場合は下記式(A)の反応が生じ、また、一部では、下記式(B)の反応を経た後に下記式(C)の反応が生じる。
CO+C→2CO …(A)
CO+H→CO+HO …(B)
O+C→H+CO …(C)
ここで、水は反応性が高いため、アモルファスカーボンのみならず、結晶性のカーボンナノチューブ中のカーボンとも式(C)の反応が起こり、カーボンナノチューブの収量及び結晶性の低下を招くこととなる。これに対し、二酸化炭素は水と比較して反応性が低いため、結晶性のカーボンナノチューブ中のカーボンとは反応し難く、アモルファスカーボンを中心に式(A)の反応が起こる。また、二酸化炭素を用いた場合、式(C)の反応は式(B)の反応を経由する必要があるため反応確率は減少する。したがって、二酸化炭素を用いた場合、水を用いた場合よりも、カーボンナノチューブの収量及び結晶性の低下を抑制しつつアモルファスカーボンを中心に除去することができる。更に、原料ガスの線流速を10cm/s以上に高めて流動層反応器によりカーボンナノチューブの合成を行うことにより、式(B)の反応を経由する式(C)の反応の発生を更に抑えることができるとともに、カーボンナノチューブの収量も増え、結晶性が高く長尺なカーボンナノチューブを短時間で効率的に製造することが可能となる。
また、触媒失活を抑制するために水を供給する場合、その供給量が少ないためにバブリングが用いられる。しかし、反応器内の圧力が変動する場合に供給量にばらつきが生じ、合成が不安定となる。これに対し、二酸化炭素は、バブリングではなくガスとして供給することから、供給量のばらつきが少なく、また、アモルファスカーボンとの反応性がマイルドであるため原料ガス中の含有量を多くすることもでき、結晶性が高く長尺なカーボンナノチューブの安定した製造を可能とする。
本発明のカーボンナノチューブの製造方法において、上記原料ガス中の上記アセチレンの濃度が0.1体積%以上であることが好ましい。これにより、結晶性が高く長尺なカーボンナノチューブをより効率的に製造することができる。
本発明のカーボンナノチューブの製造方法において、上記原料ガスが、上記キャリアガスとして水素ガスを含むことが好ましい。これにより、アセチレンガス同士が反応器内の気相中で反応してスス及びアモルファスカーボンが発生することを抑制することが可能となる。かかる効果が得られるのは、C→2C+Hの反応に対して、H分圧を増やすことで平衡を左に戻す働きが生じるためである。
本発明のカーボンナノチューブの製造方法において、上記触媒が、上記支持体上に形成された触媒担体層を介して上記支持体に担持されていることが好ましい。これにより、触媒は触媒担体層によって支持体に固定されるため、触媒を長時間流動層内に保持できることから長尺のカーボンナノチューブを合成することができる。また、合成されたカーボンナノチューブを分離回収する際に、カーボンナノチューブを触媒から分離することができる。
本発明によれば、アセチレンを高濃度に供給した場合でも触媒失活を有効に抑えることができ、結晶性が高く長尺なカーボンナノチューブを効率的に製造することができる、カーボンナノチューブの製造方法を提供することができる。
カーボンナノチューブの製造方法の一実施形態を示す図である。 カーボンナノチューブの製造に用いるカーボンナノチューブ製造装置の一実施形態の全体構成を概念的に示す模式図である。 カーボンナノチューブの製造に用いる流動層反応器の一実施形態の要部を示す模式図である。 実施例1で得られたカーボンナノチューブのラマンスペクトルである。 実施例4で得られたカーボンナノチューブのラマンスペクトルである。 比較例2で得られたカーボンナノチューブのラマンスペクトルである。
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
本実施形態のカーボンナノチューブの製造方法は、流動層反応器内で、触媒を担持した支持体に原料ガスを供給することで、支持体上にカーボンナノチューブを合成する合成工程を含む方法である。図1は、カーボンナノチューブの製造方法の一実施形態を示す図である。図1に示すように、カーボンナノチューブの製造方法は、触媒担持工程(S1)、触媒還元工程(S2)、カーボンナノチューブ合成工程(S3)、カーボンナノチューブ分離工程(S4)、及びビーズ焼成工程(S5)を順に行う。また、これらの工程を1サイクルとして、複数回繰り返し行うこともできる。
触媒担持工程(S1)は、粒状の支持体にカーボンナノチューブ合成用の触媒を担持させる工程である。本実施形態では、反応管に触媒ガスを供給することにより支持体上に触媒を担持させるCVD法により触媒担持工程(S1)を行う。なお、粒状の支持体は、粒状体又はビーズともいう。この触媒担持工程(S1)では、支持体上に第一触媒ガスを流通させることで、支持体上に触媒担体層を形成する第一触媒担持工程と、支持体上に第二触媒ガスを流通させることで、触媒担体層上に触媒を担持させる第二触媒担持工程と、を行う。なお、以下の説明では、特に「第一触媒ガス」と「第二触媒ガス」とを区別する場合を除き、「第一触媒ガス」及び「第二触媒ガス」を総称して「触媒ガス」という。
支持体は、耐熱性を有する粒子状の耐熱性ビーズで構成されている。支持体の材質としては、Si、Al、Mg、Zr、Ti、O、N、C、Mo、Ta及びWからなる群より選ばれる1種以上の元素を含むことが好ましい。具体的な材質としては、SiO、Al及びMgO等の酸化物、SiN及びAlN等の窒化物、並びに、SiC等の炭化物などが挙げられる。また、Al−SiOのような複合酸化物であってもよい。
支持体の直径は、100〜2000μmであることが好ましく、200〜2000μmであることがより好ましい。支持体の直径が100μm以上であると、反応管内に支持体が安定的に保持されて効率的に流動しやすい傾向があり、また、同一の反応管内で支持体とカーボンナノチューブとを分離しやすい傾向がある。一方、支持体の直径が2000μm以下であると、支持体が流動しやすくなる傾向がある。
第一触媒ガスは、支持体上に触媒担体を担持させて触媒担体層を形成するためのガスであり、例えば、触媒担体層を形成する触媒担体の前駆体とキャリアガスとから構成されるものである。
第一触媒ガスによって形成する触媒担体としては、Si、Al、Mg、O、C、Mo及びNの中から選択される1以上の元素を含むものがよい。中でも特に、触媒担体の前駆体は、SiO、Al又はMgO等の酸化物、Si又はAlN等の窒化物、或いは、SiC等の炭化物を含む触媒担体層を形成するものであるとよい。また、触媒担体の前駆体は、Al−SiOの複合酸化物を含む触媒担体層を形成するものであってもよい。特に、触媒担体の前駆体は、触媒粒子の安定性の観点から、Alからなる触媒担体層を形成するものであることが好ましい。触媒の前駆体として具体的には、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムsec−ブトキシド等のアルコキシド、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム、塩化アルミニウムなどが挙げられる。
支持体上に形成される触媒担体層の平均厚みは、1nm〜100nmであることが好ましく、1nm〜50nmであることがより好ましい。触媒担体層の厚みが1nm以上であると、触媒粒子が触媒担体層に安定的に担持され、オストワルトライプニング(Ostwald ripening)が発生しにくく、カーボンナノチューブが長尺成長しやすくなる傾向がある。一方、触媒担体層の厚みが100nm以下であると、合成中に触媒粒子が触媒担体層に取り込まれにくく、カーボンナノチューブが長尺成長しやすくなる傾向がある。
第一触媒ガスに含まれるキャリアガスとしては、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスが好ましい。また、キャリアガスとして水素ガスを用いてもよい。
第一触媒担持工程において、反応管内への第一触媒ガスの供給速度は特に限定されないが、線流速で15cm/s〜50cm/sであることが好ましく、20cm/s〜40cm/sであることがより好ましい。
第二触媒ガスは、支持体上にカーボンナノチューブ合成用の触媒を担持させるためのガスであり、例えば、カーボンナノチューブ合成用触媒を形成する触媒の前駆体とキャリアガスとから構成されるものである。
第二触媒ガスに含まれる触媒の前駆体としては、一般にカーボンナノチューブの合成に用いられる金属を含む気体であることが好ましく、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、W及びAuの中から選択される1以上の元素を含むものがよい。中でも特に、炭素の固溶量が大きいFe、Co及びNiの中から選択される1以上の元素を含むものが好ましく、更にメタロセン等の有機金属蒸気が好ましい。
支持体上に担持される触媒の直径は、0.2nm〜2000nmであることが好ましく、10nm〜1000nmであることがより好ましい。触媒の直径は、原子間力顕微鏡(AFM)により測定することができる。
触媒担体層と触媒との組み合わせとしては、カーボンナノチューブの生産性の観点から、触媒担体層がAlであり、触媒がFeであることが好ましい。また、直径が小さいカーボンナノチューブを効率的に得る観点からは、触媒担体層がAlであり、触媒がCoであることが好ましい。
第二触媒ガスに含まれるキャリアガスとしては、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスが好ましい。また、上記不活性ガスに酸素を添加したガスをキャリアガスとして用いてもよい。また、第二触媒ガスには、当該第二触媒ガスの使用量低減の観点から、水分(HO)を添加してもよい。
第二触媒担持工程において、反応管内への第二触媒ガスの供給速度は特に限定されないが、線流速で10cm/s〜100cm/sであることが好ましく、10cm/s〜50cm/sであることがより好ましい。供給速度が10cm/s以上であると、支持体上に触媒を均一に担持しやすい傾向がある。また、供給速度が100cm/s以下であると、反応管内に支持体を安定的に保持しやすい傾向がある。
触媒還元工程(S2)は、還元ガスにより触媒担体層に担持された触媒を加熱還元して微小化する工程である。なお、微小化された触媒を触媒粒子ともいう。還元ガスは、例えば、水素ガス等の気体状態の還元剤と、キャリアガスとしてのアルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスとから構成されるものである。また、還元ガスには、バブリングの安定性の観点から、水分(HO)を添加してもよい。
触媒還元工程(S2)において、反応管内への還元ガスの供給速度は特に限定されないが、線流速で1.0cm/s〜50cm/sであることが好ましく、3.3cm/s〜33cm/sであることがより好ましい。
カーボンナノチューブ合成工程(S3)は、支持体上に原料ガスを流通させることで、触媒粒子上にカーボンナノチューブを合成させる工程である。
原料ガスは、アセチレン、二酸化炭素及びキャリアガスを含む混合ガスである。アセチレンは、カーボンナノチューブを合成するための炭素源であり、反応器内に気体状態で供給される。また、アセチレンは、反応器内で生成させてもよい。
原料ガスに含まれるキャリアガスとしては、カーボンナノチューブの生成に影響を与えないアルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスを好適に使用することができる。また、キャリアガスとして水素ガスを用いてもよい。
二酸化炭素は、カーボンナノチューブの合成中に触媒粒子の表面に生成するアモルファスカーボンを除去して触媒失活を防ぎ、結果として結晶性が高く長尺なカーボンナノチューブの合成に寄与する。また、二酸化炭素は水と比較して高濃度に供給することができるため、水のように供給量を微量に制御する必要がなく、アセチレンを高濃度にした場合であっても触媒失活を有効に抑えることができ、結晶性が高く長尺なカーボンナノチューブの大量生産に好適な条件を提供することができる。
原料ガスにおける二酸化炭素の含有量(濃度)は、原料ガスの全体積を基準として0.1体積%以上40体積%未満であることが必要である。二酸化炭素の含有量が0.1体積%以上であることで、アセチレンを高濃度に供給した場合でも触媒失活を有効に抑えることができ、結晶性が高く長尺なカーボンナノチューブを効率的に製造することができる。一方、二酸化炭素の含有量が40体積%未満であることで、カーボンナノチューブの結晶性が低下することを抑制することができる。原料ガスにおける二酸化炭素の含有量は、アセチレンによる触媒失活を均一に抑制する観点から、3体積%以上であることが好ましく、5体積%以上であることがより好ましい。また、原料ガスにおける二酸化炭素の含有量は、30体積%以下であることが好ましい。
カーボンナノチューブ合成工程(S3)は流動層反応器内で行われる。合成時には、流動層反応器内への原料ガスの供給により支持体が吹き上げられて流動化する。この状態において原料ガスが支持体上を流通し、アセチレンと触媒とが接触して支持体上にカーボンナノチューブが成長する。このときの原料ガスの供給速度は、線流速で10cm/s以上であることが必要である。線流速が10cm/s以上であることで、結晶性が高く長尺なカーボンナノチューブを短時間で効率的に製造することができる。より結晶性が高くより長尺なカーボンナノチューブをより短時間でより効率的に製造する観点から、原料ガスの線流速は11cm/s以上であることが好ましい。一方、支持体同士の衝突によるカーボンナノチューブの剥離抑制の観点から、原料ガスの線流速は20cm/s以下であることが好ましく、15cm/s以下であることがより好ましい。
原料ガスにおけるアセチレンの含有量(濃度)は、原料ガスの全体積を基準として5体積%未満であることが必要であり、0.1体積%以上5体積%未満であることが好ましく、0.1体積%〜4体積%であることがより好ましく、0.2体積%〜4体積%であることが更に好ましく、0.5体積%〜3体積%であることが特に好ましい。アセチレンの含有量が0.1体積%以上であると、結晶性が高く長尺なカーボンナノチューブをより効率的に製造することができる。一方、アセチレンの含有量が5体積%未満であると、長尺なカーボンナノチューブをより効率的に製造することができる。
また、原料ガスにおいて、アセチレンと二酸化炭素との分圧比(アセチレン/二酸化炭素)は0.2〜50であることが好ましく、0.5〜40であることがより好ましく、0.5〜30であることが更に好ましい。アセチレンと二酸化炭素との分圧比を上記範囲内に調節することにより、結晶性が高く長尺なカーボンナノチューブをより短時間でより効率的に製造することができる。
原料ガスは、上記キャリアガスとして水素ガスを含むことが好ましい。原料ガスが水素ガスを含むことにより、アセチレンの重合を抑制し、触媒粒子を失活させるアモルファスカーボンの発生を抑制しやすい傾向がある。原料ガス中の水素ガスの含有量は、原料ガスの全体積を基準として0.1体積%〜80体積%であることが好ましく、1.0体積%〜50体積%であることがより好ましく、5.0体積%〜30体積%であることが更に好ましい。水素ガスの含有量を上記範囲内に調節することにより、長尺なカーボンナノチューブが得られやすい。
カーボンナノチューブ分離工程(S4)は、カーボンナノチューブが合成された支持体上に分離ガスを流通させることで、支持体からカーボンナノチューブを分離させ、分離したカーボンナノチューブを回収する工程である。分離ガスは、例えば、キャリアガスから構成されるものである。分離ガスを構成するキャリアガスとしては、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスが好ましい。また、キャリアガスとして水素ガスを用いてもよい。また、カーボンナノチューブの分離を促進するために、水分(HO)、酸素等を分離ガスに添加してもよい。
カーボンナノチューブ分離工程(S4)において、反応管内への分離ガスの供給速度は、支持体からカーボンナノチューブを分離できる速度であれば特に限定されないが、線流速で10cm/s〜200cm/sであることが好ましく、20cm/s〜100cm/sであることがより好ましい。
ビーズ焼成工程(S5)は、カーボンナノチューブが分離された支持体を焼成して、触媒を不活化する工程である。焼成は、支持体上に酸素とキャリアガスとを含む酸化性ガスを流通させながら、支持体を加熱することで行う。酸化性ガスを構成するキャリアガスとしては、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスが好ましい。また、キャリアガスとして水素ガスを用いてもよい。
ビーズ焼成工程(S5)において、反応管内への酸化性ガスの供給速度は特に限定されないが、線流速で0.1cm/s〜200cm/sであることが好ましく、0.1cm/s〜100cm/sであることがより好ましい。
次に、カーボンナノチューブの製造に用いるカーボンナノチューブ製造装置及びそれを用いたカーボンナノチューブの製造方法について説明する。
図2は、カーボンナノチューブの製造に用いるカーボンナノチューブ製造装置の一実施形態の全体構成を概念的に示す模式図である。図2に示すように、カーボンナノチューブ製造装置1は、反応管2と、マスフローにより反応管2に供給するキャリアガス等の各種ガスを送り出すガス供給源3と、反応管2とガス供給源3との間の経路に配置されてキャリアガスに水分(HO)を含ませるバブラ4と、反応管2とガス供給源3との間の経路に配置されてキャリアガスに触媒の前駆体を含ませて第一触媒ガスを生成する第一触媒容器5と、ガス供給源3と反応管2との間の経路に配置されてキャリアガスに触媒の前駆体を含ませて第二触媒ガスを生成する第二触媒容器6と、反応管2からカーボンナノチューブを回収するカーボンナノチューブ回収器7と、カーボンナノチューブ回収器7からガスを排出する排気部8と、を備えている。
反応管2は、触媒担持工程(S1)、触媒還元工程(S2)、カーボンナノチューブ合成工程(S3)、カーボンナノチューブ分離工程(S4)、及びビーズ焼成工程(S5)の各工程に用いる反応管である。本実施形態において、カーボンナノチューブ合成工程(S3)では、反応管2として流動層反応器20を用いる。カーボンナノチューブ合成工程(S3)以外の工程で使用する反応管2は特に限定されず、カーボンナノチューブ合成工程(S3)と同じ反応管を用いてもよく、少なくとも一部の工程でカーボンナノチューブ合成工程(S3)と異なる他の反応管を用いてもよい。なお、本実施形態では、S1〜S5の全ての工程で同じ流動層反応器20を用いることとする。
図3はカーボンナノチューブの製造に用いる流動層反応器20の一実施形態の要部を示す模式図である。図3に示すように、流動層反応器20は、管部21と、分散板22と、加熱部23と、を備える。管部21は、直線状に形成されており、支持体が充填され、下方から触媒ガス、還元ガス、原料ガス、分離ガス又は酸化性ガス等の各種の供給ガスが供給されるものである。
管部21は、製造容易性の観点から上下方向において径(外径及び内径)が同一であることが好ましいが、上下方向において径が異なっていてもよい。管部21の材質としては、耐熱性のある材質であれば特に制限されないが、加熱部23からの放射熱を利用して支持体及び供給ガスを加熱する観点からは、石英等の透明な材質のものを用いることが好ましい。
分散板22は、管部21における反応領域Aの下端に配置され、管部21に充填される支持体を保持し、供給ガスを通過させるものである。反応領域Aとは、管部21に供給された供給ガスを、熱分解等により支持体上で反応させる領域である。分散板22としては、如何なるものを用いてもよく、例えば、複数の孔が形成された目皿又は多孔質板を用いることができる。なお、分散板22は、支持体を保持するものであることから、孔の内径が管部21に投入される支持体の外径よりも小さいものが用いられる。
加熱部23は、管部21の反応領域Aを覆う加熱装置であり、管部21に充填された支持体を加熱するとともに、管部21の反応領域Aに供給されたキャリアガス及び触媒ガスを加熱するものである。加熱部23としては、如何なる加熱装置を用いてもよく、例えば、電気炉を用いることができる。
また、加熱部23は、反応領域Aのみを覆うものであってもよいが、反応領域Aを超えて分散板22よりも少し下方までの領域を覆うものであってもよい。つまり、加熱部23は、管部21に充填された支持体及び反応領域Aに供給された供給ガスを加熱する他、反応領域Aに供給される直前から供給ガスを加熱するものであってもよい。この場合、反応領域Aに供給される供給ガスが、管部21に充填された触媒原料の分解温度よりも低くなるように、加熱部23の下端位置を設定する。
次に、上記流動層反応器20を備えるカーボンナノチューブ製造装置1を用いた触媒担持工程(S1)について説明する。
触媒担持工程(S1)では、まず、流動層反応器20の管部21に支持体を充填し、下方から第一触媒ガスを供給して支持体上に第一触媒ガスを流通させることで、支持体上に触媒担体層を形成する第一触媒担持工程を行う。
第一触媒担持工程(S1)では、第一触媒容器5にキャリアガスを供給し、触媒の前駆体を含む第一触媒ガスを生成して、この第一触媒ガスを流動層反応器20に供給する。また、第一触媒ガスは、第一触媒容器5を経由せずに流動層反応器20に直接供給するキャリアガスを含んでいてもよい。
流動層反応器20に供給された第一触媒ガスは、分散板22を通過して反応領域Aに供給され、反応領域Aを上昇していく。一方、第一触媒ガスの供給を行いながら、加熱部23により管部21の反応領域Aを加熱し、支持体の加熱を行う。このとき、加熱部23の加熱温度は、支持体の表面温度が、第一触媒ガス中の触媒の前駆体が熱分解する温度になるように設定する。加熱部23の加熱温度(設定温度)は、第一触媒ガスに含まれる触媒の前駆体に応じて適宜調整されるが、通常700℃〜900℃であり、好ましくは750〜850℃である。
支持体は、加熱部23により加熱された状態に保持され、分散板22を通過した第一触媒ガスにより吹き上げられて流動化する。そして、このような状態の中、第一触媒ガス中の触媒の前駆体が支持体上で熱分解することにより、支持体上に触媒担体層が形成される。第一触媒担持工程を、支持体を流動化させた状態で行うことにより、支持体上に万遍なく触媒担体層を形成することができる。
以上の第一触媒担持工程が終了すると、次に、支持体上に第二触媒ガスを流通させることで触媒担体層上に触媒を担持させる第二触媒担持工程を行う。
第二触媒担持工程では、反応領域Aに供給するガスを第一触媒ガスから第二触媒ガスに切り替える。つまり、第二触媒担持工程では、加熱部23による加熱を維持しながら、第二触媒容器6にキャリアガスを供給し、触媒の前駆体を含む第二触媒ガスを生成して、この第二触媒ガスを流動層反応器20に供給する。また、第二触媒ガスは、第二触媒容器6を経由せずに流動層反応器20に直接供給するキャリアガスを含んでいてもよい。更に、第二触媒担持工程では、第二触媒ガスに水分(HO)を含ませることが好ましい。水分は、キャリアガスをバブラ4に供給して水分を含有させ、水分を含有するキャリアガスとして流動層反応器20に供給することができる。
第一触媒担持工程と同様に、流動層反応器20に供給された第二触媒ガスは、分散板22を通過して反応領域Aに供給され、反応領域Aを上昇していく。一方、第二触媒ガスの供給を行いながら、加熱部23により管部21の反応領域Aを加熱し、支持体の加熱を行う。このとき、加熱部23の加熱温度は、支持体の表面温度が、第二触媒ガス中の触媒の前駆体が熱分解する温度になるように設定する。加熱部23の加熱温度(設定温度)は、第二触媒ガスに含まれる触媒の前駆体に応じて適宜調整されるが、通常20℃〜250℃であり、好ましくは20℃〜150℃である。
支持体は、加熱部23により加熱された状態に保持され、分散板22を通過した第二触媒ガスにより吹き上げられて流動化する。そして、このような状態の中、第二触媒ガス中の触媒の前駆体が支持体に形成された触媒担体層上で熱分解することにより、支持体に形成された触媒担体層上に触媒が担持される。第二触媒担持工程を、支持体を流動化させた状態で行うことにより、支持体に形成された触媒担体層上に万遍なく触媒を担持させることができる。
次に、触媒還元工程(S2)を行う。触媒還元工程(S2)では、反応領域Aに供給するガスを第二触媒ガスから還元ガスに切り替える。つまり、触媒還元工程(S2)では、加熱部23による加熱を維持しながら、流動層反応器20に還元ガスを供給し、支持体に担持された触媒の加熱還元を行う。また、触媒還元工程(S2)では、還元ガスに水分(HO)を含ませることが好ましい。還元ガスに水分を含ませる場合、第二触媒担持工程と同様に、バブラ4を経由して水分を含有させたキャリアガスを流動層反応器20に供給する。
触媒還元工程(S2)において、加熱部23の加熱温度は、支持体の表面温度が、還元ガスにより触媒が還元される温度になるように設定する。加熱部23の加熱温度(設定温度)は、使用する還元ガス及び触媒に応じて適宜調整されるが、通常450℃〜1000℃であり、好ましくは600℃〜900℃である。
支持体は、加熱部23により加熱された状態に保持され、分散板22を通過した還元ガスにより吹き上げられて流動化する。そして、このような状態の中、還元ガスが支持体上を流通し、支持体上に担持された触媒を還元する。触媒還元工程(S2)を、支持体を流動化させた状態で行うことにより、万遍なく触媒を還元することができる。
次に、カーボンナノチューブ合成工程(S3)を行う。カーボンナノチューブ合成工程(S3)では、反応領域Aに供給するガスを還元ガスから原料ガスに切り替える。つまり、カーボンナノチューブ合成工程(S3)では、加熱部23による加熱を維持しながら、流動層反応器20に原料ガスを供給し、支持体上にカーボンナノチューブを合成する。
カーボンナノチューブ合成工程(S3)において、加熱部23の加熱温度は、支持体の表面温度が、原料ガス中の炭素源が熱分解してカーボンナノチューブが生成する温度になるように設定する。加熱部23の加熱温度(設定温度)は、使用する炭素源及び触媒に応じて適宜調整されるが、通常600℃〜1200℃であり、好ましくは750〜850℃である。
支持体は、加熱部23により加熱された状態に保持され、分散板22を通過した原料ガスにより吹き上げられて流動化する。そして、このような状態の中、原料ガスが支持体上を流通し、支持体上でカーボンナノチューブが成長する。カーボンナノチューブ合成工程(S3)を、支持体を流動化させた状態で行うことにより、結晶性が高く長尺なカーボンナノチューブを短時間で効率的に合成することができる。
次に、カーボンナノチューブ分離工程(S4)を行う。カーボンナノチューブ分離工程(S4)では、反応領域Aに供給するガスを原料ガスから分離ガスに切り替える。つまり、カーボンナノチューブ分離工程(S4)では、加熱部23による加熱を維持しながら、流動層反応器20に分離ガスを供給し、支持体上に成長したカーボンナノチューブを支持体から分離する。なお、支持体に担持された触媒は、触媒担体層によって支持体に固定されているため、カーボンナノチューブは触媒から分離されることとなる。
カーボンナノチューブ分離工程(S4)において、加熱部23の加熱温度は、支持体の表面温度が、650℃以上になるように設定する。加熱部23の加熱温度(設定温度)は、通常650℃〜1000℃であり、好ましくは650℃〜900℃である。
支持体は、加熱部23により加熱された状態に保持され、分散板22を通過した分離ガスにより吹き上げられて流動化する。そして、このような状態の中、分離ガスが支持体上を流通し、支持体上に成長したカーボンナノチューブが分離される。カーボンナノチューブ分離工程(S4)を、支持体を流動化させた状態で行うことにより、カーボンナノチューブの分離を効率よく行うことができる。
次に、ビーズ焼成工程(S5)を行う。ビーズ焼成工程(S5)では、反応領域Aに供給するガスを分離ガスから酸化性ガスに切り替える。つまり、ビーズ焼成工程(S5)では、加熱部23による加熱を維持しながら、流動層反応器20に酸化性ガスを供給し、支持体に担持された触媒を酸化して触媒を不活化する。
ビーズ焼成工程(S5)において、加熱部23の加熱温度は、支持体の表面温度が、触媒が酸化されて不活化する温度になるように設定する。加熱部23の加熱温度(設定温度)は、使用する触媒に応じて適宜調整されるが、通常650℃〜1000℃であり、好ましくは700℃〜900℃である。
支持体は、加熱部23により加熱された状態に保持され、分散板22を通過した酸化性ガスにより吹き上げられて流動化する。そして、このような状態の中、酸化性ガスが支持体上を流通し、支持体表面の炭素が反応する。ビーズ焼成工程(S5)を、支持体を流動化させた状態で行うことにより、万遍なく焼成することができ炭素成分を除去できる。
カーボンナノチューブの長さは、300μm以上であることが好ましい。カーボンナノチューブの長さは、合成時間に依存するが、触媒失活が起こった場合には長時間合成しても十分な長さが得られない。本実施形態によれば、300μm以上の長尺のカーボンナノチューブを短時間で効率的に製造することができる。
カーボンナノチューブは、単層のものであってもよく、複数の層から構成されるものであってもよい。カーボンナノチューブは、1層以上10層以下の層から構成されるとよい。本実施形態のカーボナノチューブの製造方法は、各種構造のカーボンナノチューブの製造が可能であるが、SWCNTの製造に適した方法である。また、本実施形態のカーボンナノチューブの製造方法では、触媒の大きさ、成分を制御することで、各種構造のカーボンナノチューブの製造が可能である。従来の製造方法では、SWCNTを効率よく生産することが困難であったが、本実施形態のカーボンナノチューブの製造方法によれば、SWCNTの生産効率を飛躍的に向上させることができる。
合成されたカーボンナノチューブの結晶性については、ラマン分光を用いることで評価することができる。ラマン分光を用いた測定では、グラファイト構造に起因するGバンドが1590cm−1付近に観察され、結晶欠陥に起因するDバンドが1340cm−1付近に観察される。結晶性の高いカーボンナノチューブはDバンドが低く、逆にGバンドは高いピークをもつ。つまり、以下の式(1)で定義されるGバンドとDバンドとの強度比(G/D比)の値が高いほど、結晶性が高い。そして、結晶性が高いほど、カーボンナノチューブの導電性向上が期待できる。本実施形態のカーボンナノチューブの製造方法によればG/D比が高いカーボンナノチューブを効率的に製造することができる。
G/D比=(G−Bg)/(D−Bg) …(1)
ここで、「G」はGバンドのピークトップ値を示し、「D」はDバンドのピークトップ値を示し、「Bg」はバックグラウンド補正値であって600cm−1から1000cm−1までの平均値を示す。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、支持体が、粒子状であるものとして説明したが、その具体的な形状、寸法等は適宜設定することができる。
また、上記実施形態では、触媒担持工程において、支持体上に触媒担体層を形成する第一触媒担持工程と、触媒担体層上に触媒を担持させる第二触媒担持工程と、を行うものとして説明したが、何れか一方のみであってもよい。例えば、事前に支持体に触媒担体層を形成しておき、触媒担体層が形成された支持体を管部に投入するようにすれば、第一触媒担持工程は行わなくてもよい。また、触媒担体層が無くても支持体に触媒が担持する場合は、第一触媒担持工程は行わなくてもよい。
また、上記実施形態では、第一触媒担持工程、第二触媒担持工程、触媒還元工程(S2)、カーボンナノチューブ合成工程(S3)、カーボンナノチューブ分離工程(S4)、及びビーズ焼成工程(S5)を連続して行うものとして説明したが、これらの工程は必ずしも連続して行わなくてもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
実施例1では、図1に示すように、触媒担持工程(S1)、触媒還元工程(S2)、カーボンナノチューブ合成工程(S3)、カーボンナノチューブ分離工程(S4)、及びビーズ焼成工程(S5)を行った。
反応管としては、図3に示す流動層反応器20を用いた。流動層反応器20は、上下方向に直線状に延びる内径25mmの石英製の管部21と、貫通孔の形成された分散板22とから構成され、その下端からガスを供給し、上端からガスを排出する構造となっている。また、加熱部23は、管部21の下端付近から所定高さ位置までの区間の周囲を覆い、管部21の反応領域Aを加熱する加熱装置である。加熱部23は、S1からS5のすべての工程において、設定温度を820℃とした。流動層反応器20の中には、支持体として直径500μmのアルミナビーズを40g投入した。このとき、分散板22上のビーズの高さは30mmであった。
触媒担持工程(S1)では、第一触媒担持工程と第二触媒担持工程とを行った。なお、以下に示す各種の供給ガスの流量(sccm:Standard Cubic Centimeter per Minutes)は、いずれも1atm(101.325kPa)、0℃での数値である。
第一触媒担持工程では、支持体上にAlの触媒担体層を形成するために、Alが充填されたAl触媒容器(第一触媒容器5(図2参照))にキャリアガスを通すことで、Alを触媒の前駆体とする前駆体ガスを生成した。触媒の前駆体であるAlとして、アルミニウムイソプロポキシドを用いた。Al触媒容器の温度は、130℃に設定した。Al触媒容器には、キャリアガスとして流量が150sccmのArを供給し、Al触媒容器から管部21に、流量が150sccmのArが供給されるようにした。また、管部21には他のガスとして、Al触媒容器を介さずに直接、流量が8,000sccmのArと、流量が2,000sccmのOと、により構成されるキャリアガスを供給した。管部21にキャリアガス及び前駆体ガスからなる第一触媒ガスを60秒間供給し、支持体を流動させながら支持体上にAlの触媒担体層を形成した。形成した触媒担体層は、主としてAlで構成される層であった。なお、触媒担体層には、Alよりも酸素の比率が低い酸化アルミニウムも含まれ得る。
第二触媒担持工程では、触媒担体層上にFeの触媒を担持させるために、Feが充填されたFe触媒容器(第二触媒容器6(図2参照))にキャリアガスを通すことで、Feを触媒の前駆体とする前駆体ガスを生成した。触媒の前駆体であるFeとして、フェロセンを用いた。Fe触媒容器の温度は、120℃に設定した。Fe触媒容器には、キャリアガスとして流量が50sccmのArを供給し、Fe触媒容器から管部21に、流量が50sccmのArが供給されるようにした。また、管部21には他のガスとして、Fe触媒容器を介さずに直接、流量が8,000sccmのArと、流量が2,000sccmのOと、HOと、により構成されるキャリアガスを供給した。HOは、Arを使ってバブリングを行うことで供給し、第二触媒ガス中の濃度が400ppmv(parts per million volume)となるようにした。ここで、HOは、乾燥状態のArを使って恒温槽中(25℃前後)でバブリングして供給し、恒温槽温度の水蒸気圧に基づいて第二触媒ガス中の濃度を算出した。管部21にキャリアガス及び前駆体ガスからなる第二触媒ガスを60秒間供給し、支持体を流動させながら支持体に形成された触媒担体層上にFeの触媒粒子を担持させた。
触媒還元工程(S2)では、流量が2,300sccmのArと、流量が900sccmのHと、濃度が600ppmvのHOと、で構成される還元ガスを用いた。HOは、Arを使ってバブリングを行うことで供給した。管部21に還元ガスを供給して触媒担体層上に担持されたFeの触媒を加熱還元する時間は10分間とした。
カーボンナノチューブ合成工程(S3)では、流量が2,300sccmのArと、流量が900sccmのHと、流量が100sccmのCOと、流量が33sccmのCと、で構成される原料ガスを用いた。ガスの総流量は3,333sccmであり、流動層反応器20には1cm当たり11.3cm/sの線流速のガスを流した。また、管部21に原料ガスを供給して触媒粒子上にカーボンナノチューブを合成させる時間は10分間とした。
評価及び観察のために、カーボンナノチューブ合成工程(S3)後に流動層反応器20を一旦冷却し、走査型電子顕微鏡(SEM)によりビーズを観察した結果、ビーズの表面には長さ(CNT長さ)300μmを超える長尺のカーボンナノチューブが成長していることが確認された。その後、加熱部23の温度を再び820℃に設定し、以下の工程を行った。
カーボンナノチューブ分離工程(S4)では、管部21に供給するArの流量を5,000sccmから10,000sccm程度まで徐々に増やし、数分間カーボンナノチューブの分離を行った。
ビーズ焼成工程(S5)では、管部21に流量が3,000sccmのArと、流量が1,000sccmのOとを供給しながら、支持体の焼成を10分間行った。
[実施例2〜5及び比較例1〜6]
実施例2〜5及び比較例1〜6では、カーボンナノチューブ合成工程(S3)において、原料ガスを構成するAr、H、CO及びCの流量を、表1に示す流量に変更した以外は実施例1と同一条件で、カーボンナノチューブの合成を行った。なお、比較例2では、COの代わりにHOを供給した。比較例2において、HOは、Arを使ってバブリングを行うことで供給し、反応管中の濃度が600ppmvとなるようにした。また、実施例2〜5及び比較例1〜6では、実施例1と同様に、カーボンナノチューブ合成工程(S3)後にビーズを観察し、ビーズ表面から成長したカーボンナノチューブの長さを測定した。この測定結果を、CNT長さとして表1に示した。
(結晶性の評価)
ラマン分光器(HORIBA社製、商品名:HR−800)を用い、ラマン分光法により、合成したカーボンナノチューブの結晶性について評価した。測定波長は488nmとした。測定の結果、実施例1〜5、比較例2及び比較例4で得られたカーボンナノチューブでは、図4〜図6に示されるように、1590cm−1付近にグラファイト構造に起因するGバンドを、1340cm−1付近には結晶欠陥に起因するDバンドを観察することができた。ここで、図4は実施例1で得られたカーボンナノチューブのラマンスペクトルであり、図5は実施例4で得られたカーボンナノチューブのラマンスペクトルであり、図6は比較例2で得られたカーボンナノチューブのラマンスペクトルである。結晶性を表すG/D比は、GバンドとDバンドの強度比から求められ、この値が高いほど結晶性が高いことを意味する。この結果を表1に示した。なお、比較例1、3、5及び6では、ビーズ表面から成長したカーボンナノチューブの長さが不十分であり、カーボンナノチューブ分離工程(S4)でカーボンナノチューブを回収できず、結晶性の評価を行うことができなかった。

表1に示したように、実施例1〜5では、長尺で結晶性の高いカーボンナノチューブを合成できることが確認された。一方、比較例1、3、5及び6では、長尺のカーボンナノチューブを合成することができず、比較例2及び比較例4では、結晶性の高いカーボンナノチューブを合成することができなかった。また、比較例2及び比較例4では、ビーズ表面から成長したカーボンナノチューブの長さが不安定でバラツキが多く、均一な長さのカーボンナノチューブを合成することができなかった。
1…カーボンナノチューブ製造装置、2…反応管、3…ガス供給源、4…バブラ、5…第一触媒容器、6…第二触媒容器、7…カーボンナノチューブ回収器、8…排気部、20…流動層反応器、21…管部、22…分散板、23…加熱部、A…反応領域。

Claims (4)

  1. アセチレンと、該アセチレンからカーボンナノチューブを生成するための触媒と、該触媒を担持する支持体と、を使用して、流動層反応器内で前記支持体を加熱しながら、前記支持体上に前記カーボンナノチューブを合成するカーボンナノチューブの製造方法であって、
    前記アセチレン、二酸化炭素及びキャリアガスを含む原料ガスを、前記流動層反応器内に11cm/s以上の線流速で供給することで、前記支持体上に前記カーボンナノチューブを合成する合成工程を有し、
    前記原料ガス中の前記アセチレンの濃度が5体積%未満であり、且つ、前記二酸化炭素の濃度が0.1体積%以上40体積%未満である、カーボンナノチューブの製造方法。
  2. 前記原料ガス中の前記アセチレンの濃度が0.1体積%以上である、請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  3. 前記原料ガスが、前記キャリアガスとして水素ガスを含む、請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  4. 前記触媒が、前記支持体上に形成された触媒担体層を介して前記支持体に担持されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
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