JP6492398B2 - 溶剤発色構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、溶剤発色構造体に関し、特に、特定の溶剤に浸漬した場合に発色する溶剤発色構造体に関する。
例えば、有価証券、証明書、ブランド品、電子機器、個人認証媒体等には、偽造が困難であることが望まれる。そのため、このような物品に、偽造防止効果に優れた光学素子を貼付することがある。
上記光学素子には、例えば、ホログラムや回折格子、矩形構造の干渉を利用した発色構造やサブ波長構造等の微細構造を備えたものがある。これらの微細構造は、解析することが困難であるため、上記微細構造を備えた光学素子は、優れた偽造防止効果を発揮し得る。
上記光学素子は、例えば、熱圧によって転写される転写箔の形態や、粘着シール層を有するステッカーの形態で製造され、偽造防止が必要な媒体に貼付される。
光学素子自体は、微細な凹凸形状によって形成されることから、光学素子自体の複製や偽造は困難である。しかしながら、光学素子自体はそのまま残し、転写箔やステッカーの基材から剥がして再利用する、いわゆる貼り替え偽造に対する防御策は別途必要であった。
上記防御策として、特許文献1には、有機溶媒等によって転写箔やステッカーを剥がそうとした場合に光学素子が壊れるように材料組成を調整した貼り替え防止の対策が施された光学素子が記載されている。
また、特許文献2には、有機溶媒に浸漬した場合に発色する材料を使用することで、溶剤浸漬した際の証拠(溶剤で転写箔やステッカーを剥がそうとした証拠)を残す方法が記載されている。
一方で、偽造防止が必要な媒体、例えばブランド品、電子機器、個人認証媒体等は、溶剤に浸漬しただけで光学素子が壊れてしまうと、例えばブランドや電子機器メーカーのロゴが壊れて白濁した状態となり、ブランドイメージ、企業イメージの低下につながるといった問題がある。また、個人認証媒体では、光学素子の白濁によって個人情報が確認し難い状態となり、認証不能となるといった問題がある。
特開2012−83477号公報 特開2011−149107号公報
上記の問題に対し、特許文献1に記載の構成では、有機溶媒の浸漬によって光学素子は部分的に破壊されて白濁するが、限られた表示スペースでは、その変化がわかり難いという課題がある。また、少ない表示スペースでは、複数の溶剤に対して発色させるために2種の溶剤発色体を設けることは困難である。
また、上記の問題に対し、特許文献2に記載されているように、有機溶媒に浸漬した場合に発色する材料(溶剤発色材料)を複数回塗布して設けることも考えられる。しかしながら、そもそも、染料を利用した溶剤発色材料を使用すると、高温環境化の保管や長期保管の際に経時で染料が樹脂中を浸透拡散してゆく、いわゆるマイグレーション(ブリードアウト)を生じることがある。このため、上記技術には、溶剤に浸漬していないにも関わらず発色する、いわゆる誤発色の懸念がある。加えて、複数回の溶剤発色材料の塗布による誤発色の懸念もある。具体的には、第一の溶剤に対して溶解し染料が発色する材料を塗布乾燥した後に、第二の溶剤に対して溶解し染料が発色する材料を塗布乾燥させる際に、重ね塗り過程における溶剤の浸透や乾燥熱によって、第一または第二の溶剤発色材料が製造工程内で発色してしまうという課題がある。
なお、特許文献2ではマイグレーション(ブリードアウト)の防止として紙のバリア層を表裏に設けている。しかしながら、紙のバリア層を表裏に貼ってしまうと光学効果が失われて、偽造防止の機能が果たせなくなる。また、材質によらずバリア層を表裏に設けると、溶剤浸漬時に溶剤が浸透し難くなることから発色が鈍くなったり、溶剤浸漬時に溶剤は浸透するがマイグレーション防止のバリア層として機能しなくなるといった相反が生じる。
つまり、特許文献1に記載の手法には、染料のマイグレーション(ブリードアウト)の懸念はないが、光学素子が白濁して(つまり、美観を損なうように壊れて)ブランドイメージの低下や認証不能が生じるといった課題がある。また、特許文献2に記載の手法には、染料のマイグレーション(ブリードアウト)が生じた場合に誤発色したり、複数の溶剤発色材料を重ね塗りすることができないといった課題がある。
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みて、特定の溶剤に浸漬した場合であっても光学素子が白濁する(美観を損なうように壊れる)のを防止することができるとともに、染料のマイグレーションによる誤発色が生じるのを防止することができる溶剤発色構造体を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、第一の凹凸構造を有する第一の反射層と、前記第一の反射層を支持する第一の支持層と、前記支持された前記第一の反射層上に形成された第一の表面樹脂層とを少なくとも備えた第一の領域と、第二の凹凸構造を有する第二の反射層と、前記第二の反射層を支持する第二の支持層と、前記支持された前記第二の反射層上に形成された第二の表面樹脂層とを少なくとも備えた第二の領域と、を有し、前記第一の凹凸構造と前記第二の凹凸構造とを、任意の角度で入射される白色光によって任意の同一方向に構造色を発する構造とし、前記第一の凹凸構造の発する第一の構造色の波長領域と、前記第二の凹凸構造の発する第二の構造色の波長領域とを、補色関係とし、前記第一の支持層と前記第一の表面樹脂層とを、第一の溶剤で溶解可能な層とし、前記第二の支持層と前記第二の表面樹脂層とを、前記第一の溶剤とは溶解度が異なる第二の溶剤で溶解可能な層としたことを特徴とする溶剤発色構造体である。
また、上記溶剤発色構造体において、前記第一の構造色の波長領域の一部と、前記第二の構造色の波長領域の一部とを、補色関係とし、前記第一の構造色と前記第二の構造色とが混合してなる構造色を白色光としてもよい。
また、上記溶剤発色構造体において、前記第一の凹凸構造と前記第二の凹凸構造とを、それぞれ複数の網点状に形成したこととしてもよい。
また、上記溶剤発色構造体において、前記第一の支持層を、前記第一の凹凸構造を備えた樹脂層とし、前記第一の反射層を、前記第一の凹凸構造上に形成した層とし、前記第二の支持層を、前記第二の凹凸構造を備えた樹脂層とし、前記第二の反射層を、前記第二の凹凸構造上に形成した層とし、前記第一の凹凸構造と前記第二の凹凸構造とを、前記第一の表面樹脂層と前記第二の表面樹脂層の表面に対して、任意の角度で入射される白色光によって任意の同一方向に構造色を発する構造としてもよい。
本発明の一態様であれば、第一の凹凸構造の発する第一の構造色の波長領域と、第二の凹凸構造の発する第二の構造色の波長領域とは、補色関係にある。また、第一の表面樹脂層及び第一の支持層を、第一の溶剤で溶解可能なものとしている。さらに、第二の表面樹脂層及び第二の支持層を、第一の溶剤とは溶解度が異なる第二の溶剤で溶解可能なものとしている。
このため、本発明の一態様に係る溶剤発色構造体を第一の溶剤に浸漬すると、第一の表面樹脂層及び第一の支持層は溶解するために第一の構造色は発せられず、第二の凹凸構造に起因する第二の構造色のみが発する。これとは逆に、本発明の一態様に係る溶剤発色構造体を第二の溶剤に浸漬すると、第二の表面樹脂層及び第二の支持層は溶解するために第二の構造色は発せられず、第一の凹凸構造に起因する第一の構造色のみが発する。したがって、溶剤浸漬によって光学素子が白濁する(美観を損なうように壊れる)のを防止することができる。
また、本発明の一態様であれば、溶剤によって発色する染料または顔料を使用する必要がない。このため、染料を利用した溶剤発色構造体に見られるマイグレーションによる誤発色が生じるのを防止することができる。
本発明の実施形態に係る溶剤発色構造体の構造を示す断面図である。 本発明の実施形態に係る溶剤発色構造体の溶剤浸漬前の光学効果を説明する図である。 本発明の実施形態に係る溶剤発色構造体の溶剤浸漬後の光学効果を説明する図である。
以下、本発明の実施形態に係る溶剤発色構造体及びその製造方法について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る溶剤発色構造体の構造を示す断面図である。この溶剤発色構造体1は、第一構造体(第一の領域)31と第二構造体(第二の領域)32とを少なくとも含んで構成される。
第一構造体31は、第一の凹凸構造(微細凹凸パターン)を備える微細凹凸反射層(第一の反射層)4を有し、これを図面上下方向から挟むように、微細凹凸表面樹脂層(第一の表面樹脂層)3、微細凹凸形成樹脂層(第一の支持層)2が配置されている。より詳しくは、微細凹凸形成樹脂層2は、第一の凹凸構造を備えている。そして、微細凹凸形成樹脂層2の第一の凹凸構造上には、微細凹凸反射層4が形成されている。また、第一の凹凸構造を備えた微細凹凸反射層4上には、微細凹凸表面樹脂層3が形成されている。ここで、上述の微細凹凸形成樹脂層2と微細凹凸表面樹脂層3とは、第一の溶剤で溶解可能となっている。
第二構造体32は、第二の凹凸構造(微細凹凸パターン)を備える微細凹凸反射層(第二の反射層)7を有し、これを図面上下方向から挟むように、微細凹凸表面樹脂層(第二の表面樹脂層)6、微細凹凸形成樹脂層(第二の支持層)5が配置されている。より詳しくは、微細凹凸形成樹脂層5は、第二の凹凸構造を備えている。そして、微細凹凸形成樹脂層5の第二の凹凸構造上には、微細凹凸反射層7が形成されている。また、第二の凹凸構造を備えた微細凹凸反射層7上には、微細凹凸表面樹脂層6が形成されている。ここで、上述の微細凹凸形成樹脂層5と微細凹凸表面樹脂層6とは、第一の溶剤とは溶解度(溶解パラメーター)が異なる第二の溶剤で溶解可能となっている。
なお、上述の第一構造体31と第二構造体32とは、それぞれ複数の網点状に形成されていてもよい。換言すると、上述の第一の凹凸構造と第二の凹凸構造とは、それぞれ複数の網点状に形成されていてもよい。
図2は、本発明の実施形態に係る溶剤発色構造体の溶剤浸漬前の光学効果を説明する図である。溶剤浸漬前の溶剤発色構造体1では、任意角度で微細凹凸表面樹脂層3、6の表面に入射した白色光(白色入射光)に対して、第一構造体31は第一構造色(第一の構造色)10を発し、第二構造体32は第二構造色(第二の構造色)20を発する。ここで、第一構造色10と第二構造色20は、微細凹凸表面樹脂層3、6の表面に対して、任意の同一方向に発する構造光である。
また、第一構造色10の波長領域と第二構造色20の波長領域の少なくとも一部は補色関係にある。このため、同角度で射出される第一構造色10と第二構造色20とが混合してなる構造色は、白色の構造色として確認される。
図3は、本発明の実施形態に係る溶剤発色構造体の溶剤浸漬後の光学効果を説明する図である。なお、図3は、溶剤発色構造体1を第二の溶剤に浸漬した場合を示すものである。第二の溶剤に浸漬した後の溶剤発色構造体1は、第二構造体32(具体的には、微細凹凸形成樹脂層5と微細凹凸表面樹脂層6)が溶解し、微細凹凸反射層7が消失または破壊されるために第二構造色20を発しなくなる。この場合、観察可能な構造色は、第一構造体31による第一構造色10のみである。
つまり、第二の溶剤浸漬前は、構造色(第一構造色10と第二構造色20)の混合により白色であるが、第二の溶剤に浸漬することで第一構造色10のみが観察可能となるため、溶剤浸漬による発色が得られる。
また、第一の溶剤に浸漬させた場合も同様に、第一構造体31(具体的には、微細凹凸形成樹脂層2と微細凹凸表面樹脂層3)が溶解し、微細凹凸反射層4が消失または破壊されるために、第一構造色10を発しなくなる。この場合、観察可能な構造色は、第二構造体32による第二構造色20のみとなる。
なお、溶解させる上記樹脂層の溶解パラメーター(例えば、溶解度)を選択することで、発色させる溶剤を自由に選択することが可能となる。
以下では、本実施形態に係る各層について詳しく説明する。
(微細凹凸形成樹脂層2、5)
微細凹凸形成樹脂層2、5は、各表面に微細凹凸パターン(より詳しくは、第一の凹凸構造、第二の凹凸構造)を備えた樹脂層である。また、微細凹凸形成樹脂層2、5は、特定の溶剤によって溶解する特性を有する層である。より詳しくは、例えば、微細凹凸形成樹脂層2は第一の溶剤のみで溶解する特性を有し、微細凹凸形成樹脂層5は第二の溶剤のみで溶解する特性を有するものである。また、微細凹凸形成樹脂層2、5は、第一の溶剤と第二の溶剤の両方に溶解する特性を有してもよい。ただし、微細凹凸形成樹脂層2、5が第一の溶剤と第二の溶剤の両方に溶解する場合には、微細凹凸形成樹脂層2、5の材質は共通でもよいが、微細凹凸表面樹脂層2、5の第一の溶剤と第二の溶剤に対する溶解パラメーター(または溶解度)が異なる必要がある。これによって、特定の溶剤で、第一構造体31と第二構造体32のどちらか一方が溶剤によって破壊され、所望する溶剤発色が得られる。
上述の微細凹凸パターンを連続的に備える樹脂成形物を大量複製する代表的な手法としては、例えば、プレス法、キャスティング法、フォトポリマー法等が挙げられる。これらの中でもフォトポリマー法(より詳しくは、2P法、感光性樹脂法)は、放射線硬化性樹脂をレリーフ型(微細凹凸パターンの複製用型)と平担な基材(プラスチックフィルム等)との間に流し込み、放射線で硬化させた後、この硬化膜を基板ごと複製用型から剥離する方法であるため、高精細な微細凹凸パターンを得ることができる。なお、上述の方法によって得られた微細凹凸パターンは、熱可塑樹脂を使用するプレス法やキャスト法に比べ微細凹凸パターンの成形精度が高い。また、更に新しい製造方法としては、常温で固体状若しくは高粘度状の光硬化性樹脂を使用して成形する方法や、離型材料を添加する方法もある。
微細凹凸形成樹脂層2、5に使用される材料の例としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂や、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加、架橋したウレタン樹脂や、メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂等の熱硬化性樹脂を単独もしくはこれらを複合して使用できる。また、これら以外の樹脂であっても、上述の微細凹凸パターンを形成可能であれば適宜使用してよい。
フォトポリマー法を用いる場合の微細凹凸形成樹脂層2、5の材料としては、例えば、エチレン性不飽和結合、またはエチレン性不飽和基をもつモノマー、オリゴマー、ポリマー等を使用することができる。モノマーとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。ポリマーとしては、例えば、ウレタン変性アクリル樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂が挙げられるがこの限りでない。
また、光カチオン重合を利用する場合の微細凹凸形成樹脂層2、5の材料として、例えば、エポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー、オキセタン骨格含有化合物、ビニルエーテル類を使用することができる。また、上記の光硬化性樹脂は、紫外線等の光によって硬化させる場合には、光重合開始剤を添加することができる。なお、樹脂に応じて、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、その併用型(ハイブリッド型)を選定することができる。
さらには、エチレン性不飽和結合、またはエチレン性不飽和基をもつモノマー、オリゴマー、ポリマー等を混合して使用することや、これらに予め反応基を設けておき、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、有機チタネート架橋材、有機ジルコニウム架橋剤、有機アルミネート等で互いに架橋することや、これらに予め反応基を設けておき、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、有機チタネート架橋材、有機ジルコニウム架橋剤、有機アルミネート等で、その他の樹脂骨格と架橋することも可能である。このような方法を用いれば、エチレン性不飽和結合、またはエチレン性不飽和基をもつポリマーであって、常温において固形で存在し、且つタックが少ないために成形性がよく原版汚れの少ないポリマーを得ることも可能である。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン系化合物、アントラキノン、メチルアントラキノン等のアントラキノン系化合物、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−アミノアセトフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン等のフェニルケトン系化合物、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、アシルホスフィンオキサイド、ミヒラーズケトン等を挙げることができる。
光カチオン重合可能な化合物を使用する場合の光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、混合配位子金属塩等を使用することができる。また、光ラジカル重合と光カチオン重合を併用する、いわゆるハイブリッド型材料の場合には、それぞれの重合開始剤を混合して使用することができ、また、例えば一種の開始剤で双方の重合を開始させる機能をもつ芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等を使用することができる。
光硬化性樹脂に対する光重合開始剤の配合は、材料によって適宜処方すればよいが、一般に0.1質量%〜15質量%の配合である。樹脂組成物には、さらに、光重合開始剤と組み合わせて増感色素を併用してもよい。また、必要に応じて、例えば、染料、顔料、各種添加剤(例えば、重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、タレ止め剤、付着向上剤、塗面改質剤、可塑剤、含窒素化合物など)、架橋剤(例えば、エポキシ樹脂など)等を含んでいてもよく、また、成形性向上のために非反応性の樹脂(前述の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を含む)を添加してもよい。
また、適用する製造方法において成型可能な程度の流動性を有することや、成型後の塗膜が所望する耐熱性や耐薬品性が得られることを考慮して、微細凹凸形成樹脂層2、5の材料を選択すればよい。
微細凹凸形成樹脂層2、5を形成する際には、例えばコーティング法を利用することができ、その場合には支持基材上に微細凹凸形成樹脂層2、5の材料をコーティングすればよい。特にウエットコーティングであれば低コストで塗工できる。また、塗工膜厚を調整するために溶媒で希釈したものを塗布乾燥してもよい。2種の溶解パラメーターを有する樹脂をパターンで塗り分けをした後に、位置あわせを行いながら微細凹凸パターンを形成することによって、本実施形態に係る微細凹凸形成樹脂層2、5が形成される。
上述の支持基材は、フィルム基材が好ましい。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)などのプラスチックフィルムを用いることができるが、微細凹凸パターンの成形時にかかる熱や圧、電磁波によって変形、変質の少ない材料を用いることが望ましい。なお、必要によっては紙や合成紙、プラスチック複層紙や樹脂含浸紙等を支持基材として用いてもよい。
微細凹凸形成樹脂層2、5の厚みは、0.1μm以上10μm以下の範囲で適宜設定すればよい。なお、微細凹凸形成樹脂層2、5の製造方法に依るが、塗膜が厚すぎる場合(つまり、膜厚が10μmを超える場合)には加工時の加圧による樹脂のはみ出しやシワの原因となり、厚みが極端に薄い場合(つまり、膜厚が0.1μm未満の場合)には流動性が乏しく、十分な成型ができない。
また、成形性は所望する微細凹凸パターンの形状によって変化するが、所望する凹凸深さの1〜10倍の膜厚を有する微細凹凸形成樹脂層2、5を設けることが好ましく、更に好ましくは3〜5倍である。
こうして得られた微細凹凸形成樹脂層2、5は、所望する光学素子のレリーフ形状が形成されているレリーフ原版と接触させた後、必要であれば熱、圧、電磁波を利用して、レリーフ原版の形状を微細凹凸形成樹脂層2、5の片側に形状転写させる。
また、レリーフ原版の作成方法については公知の方法を利用してよく、ロール状の原版であれば連続成型が可能である。
(上記以外の微細凹凸形成樹脂層2、5の作成方法)
上記以外の方法によっても、微細凹凸パターンを微細凹凸形成樹脂層2、5に設けることが可能である。例えば、球状微粒子を平面上に細密充填した単層粒子膜を活用してもよい。単層粒子膜は、粒径の均一な微粒子を配列することによって得られる膜である。例えば、粒子溶液の液中に浸漬した支持基材を一定速度で徐々に引き上げる方法(引き上げ法)によって単層粒子膜を得ることができる。また、微粒子を分散させた溶液にバインダー樹脂を添加した微粒子インキを単位面積当たりの厳密な塗布量によって印刷塗布し、支持基材に固定する方法(印刷法)によっても製造可能である。
また、熱可塑性の球状粒子による単層粒子膜を得た後に、熱プレス加工を施し、凸部を押し潰した状態に変形させることで、ボタン状の凸部が2次元平面上に細密充填された構造とすることも可能である。
更には、該均一粒径である不定形粒子を使用してもよい。このようにして得られた単層粒子膜は、粒子の2次元充填率に依存する周期構造を有するため、構造色を生じると共に不定形粒子形状に依存する散乱光を得ることも可能である。
なお、上述の単層粒子膜を利用して微細凹凸形成樹脂層2、5を形成する方法には、安定した凹凸形状(微細凹凸パターン)を生産性よく得ることができる利点がある。
(微細凹凸形成樹脂層2、5表面の凹凸構造による構造色)
微細凹凸形成樹脂層2、5表面の凹凸構造(つまり、微細凹凸パターンの形状)によって、構造色は変化する。凸部底面部の面積に対する凸部頂点部の面積の比(凸部頂点部部の面積/凸部底面部の面積)が、1.0未満である場合、つまり、特に凸部が傾斜した山形状や半球形状である場合は、深さ方向に屈折率が徐々に変化する傾斜構造と解釈することができ、凹凸構造による電磁波の吸収が生じる。電磁波の吸収は、傾斜構造の微妙な深さによって吸収波長が異なる。このため、構造によって吸収されない波長領域の光が反射、または散乱して構造色が生じる。
このような傾斜構造の他に、矩形構造によって深さ方向の干渉を利用した構造色を利用してもよい。
なお、上述の凹凸構造の深さは深いほど電磁波を吸収し、可視光吸収による黒色構造となる。鮮やかな構造色を得るためには、深さと周期との比率(深さ/周期比)が0.01以上0.5以下の範囲であることが好ましい。深さ/周期比が0.5を超える場合には、構造色が黒色となるため、鮮やかな色調の構造色が得られない。また、深さ/周期比が0.01未満の場合には、外的要因による変形(熱、圧など)によって構造色が変化、または消色してしまう恐れがある。
構造色の色調をコントロールする別の方法としては、構造色を有する反射性凹凸形状の上に任意の屈折率の化合物を塗布して凹凸を充填する方法がある。この方法により、屈折率に応じた色調の構造色を得ることができる。これは光学距離を屈折率で調整することによって構造色の色調が変化する現象を応用している。
この現象は、凹凸形状を満たす媒質の量や屈折率に依存して構造色の色調が変化するため、様々な色調にコントロールすることが可能である。
構造色の色調コントロールの方法は、様々な方法により可能である。例えば、充填する化合物の屈折率を変化させることや体積を変化させることでも、構造色の色調コントロールは可能である。これらの方法によると簡単に任意のパターンで任意の色調の構造色を作成することが可能である。
上記以外の構造色としては、例えば平面方向に対して可視光の波長以下の一定周期を有するサブ波長構造による回折光による構造色が挙げられる。サブ波長構造は一次回折光を幅広い視野角で得ることが可能であり、視認性がよいことから好ましい。
更には、微細な凹凸を利用した散乱構造を用いることで、構造色光量の調節や反射光量の調節が容易な微細凹凸パターンも作成可能である。凹凸構造による散乱機構としては、例えばレイリー散乱、ミー散乱、回折散乱等が例として挙げられる。
微細凹凸形成樹脂層2、5表面の凹凸構造は、凸部または凹部が2次元平面上に平方格子状または六方細密充填様に配列した構造が好ましい。この構造であれば、平行溝構造(波板構造)に対して等方性を有していることから、どの角度からの観察でも一定の構造色を確認することが可能であり、視認性がよい。また、上述の凹凸構造は、厳密な周期構造を必ずしも必要としない。ある程度の周期のバラツキは構造色の更なる等方性につながる。このような場合の周期のバラツキ(つまり、周期バラツキ)は、平均周期に対して10%程度であることが好ましく、この周期バラツキ自体が凹凸平面上で等方性を有する(ランダムである)ことが好ましい。
なお、本実施形態に係る構造色は、構造色平面に対する光源の入射角度と観察者の観察角度との組み合わせによって、構造色の波長領域や構造色の光量が変化してもよい。
(微細凹凸反射層4、7)
微細凹凸反射層4、7は、微細凹凸形成樹脂層2、5表面の凹凸構造の少なくとも一部を覆っており、電磁波を反射させることを特徴とする層である。後述の微細凹凸表面樹脂層3、6側から入射した光を、この微細凹凸反射層4、7で反射させる場合は、金属反射を利用してもよいし、微細凹凸表面樹脂層3、6の屈折率よりも高い高屈折率材料で微細凹凸反射層4、7を形成してもよい。微細凹凸表面樹脂層3、6の屈折率よりも高い高屈折率材料で微細凹凸反射層4、7を形成する場合、両層の屈折率の差は、0.2以上であることが好ましい。屈折率の差を0.2以上にすることで、微細凹凸表面樹脂層3、6と微細凹凸反射層4、7との界面で屈折及び反射が起こる。なお、微細凹凸反射層4、7の反射面は、構造による光学効果を強調することも可能である。
微細凹凸反射層4、7の材料としては、例えば、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、Agなどの金属材料の単体またはこれらの化合物等が挙げられる。
また、透明な微細凹凸反射層4、7として使用できる材料の例を以下に挙げる。以下に示す化学式または化合物名の後に続くカッコ内の数値は屈折率nを示す。セラミックスとしては、例えば、Sb(3.0)、Fe(2.7)、TiO(2.6)、CdS(2.6)、CeO(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl(2.3)、CdO(2.2)、Sb(5)、WO(5)、SiO(5)、Si(2.5)、In(2.0)、PbO(2.6)、Ta(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO(5)、MgO(1)、SiO(1.45)、Si(10)、MgF(4)、CeF(1)、CaF(1.3〜1.4)、AlF(1)、Al(1)、GaO(2)等が挙げられる。また、有機ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフルオロエチレン(1.35)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.60)等が挙げられるがこの限りでない。
上記材料の中から、実用に適した耐久性を有する材料を選択すればよい。上記材料によっては複数の材料を混合または積層してよい。
微細凹凸反射層4、7は、ウェットコーティング法を用いて形成してもよい。この場合、上記材料の微粒子、溶媒、また必要であればバインダーを添加した高輝度反射インキを使用し、例えば、インクジェット法、グラビア法、マイクログラビア法、ロールコート法、ディップコート法等の公知の印刷方法で塗布すればよい。
塗布するインキの量は、インキの乾燥後に微細凹凸形成樹脂層2、5表面の凹凸構造が埋らない程度であればよいが、凹凸深さに対して1/2以下の薄膜であることが好ましい。
また、使用する微粒子の粒径は、凹凸構造の周期または凹凸深さの1/5以下であることが好ましい。凹凸構造の周期または凹凸深さの1/5を超える粒径である場合には、所望する反射率が得られないことや、凹凸構造が埋まることにより構造色を生じなくなることがある。
また、微細凹凸反射層4、7は、ドライコーティング法を用いて形成してもよい。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等の公知の方法を適宜使用することができる。このような方法であれば、微細凹凸形成樹脂層2、5表面の凹凸構造を埋めることなく、均一な薄膜を設けることが可能であるため、好ましい。
透明な微細凹凸反射層4、7の透過率は、400nm〜800nmの波長領域での透過率が50%以上であり、この範囲であれば、微細凹凸反射層4、7の下に配置された情報、例えば顔写真、文字、パターン等の印刷情報が確認可能となるためである。
なお、本実施形態に係る溶剤発色構造体1は、微細凹凸反射層4、7側及び微細凹凸形成樹脂層2、5側の少なくともどちらか一方が視認可能であればよい。
また、透明な微細凹凸反射層4、7が設置された部分では、その反射層の下部に視認可能な情報を設けることができ、必要な情報と偽造防止構造を積層することが可能となる。これらの技術により、例えば、IDカードやパスポート等で使用可能な、偽造防止用オーバーシート等に応用することが可能である。
(微細凹凸表面樹脂層3、6)
微細凹凸表面樹脂層3、6は、微細凹凸反射層4、7上に形成された層である。ここで、上述の構造色の波長領域は、この微細凹凸表面樹脂層3、6の屈折率に依存して変化可能である。
微細凹凸表面樹脂層3、6は、特定の溶剤によって溶解する特性が必要であるが、第一の溶剤のみ、第二の溶剤のみ、または第一の溶剤と第二の溶剤の両方に溶解すればよい。第一の溶剤と第二の溶剤の両方に溶解する場合には、微細凹凸表面樹脂層3、6の材質は共通でもよいが、この場合、微細凹凸表面樹脂層3、6の各溶解パラメーター(または溶解度)が異なる必要がある。
微細凹凸表面樹脂層3、6は、液体状のインキを塗布、乾燥したものであってよい。例えば、有機化合物、無機化合物、有機無機複合材料等を溶媒に溶解したインキや、微粒子状に分散したディスパージョンを塗布、乾燥したものであってよい。有機化合物の例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等の単体、混合物、共重合物、2液硬化物等が例として挙げられるがこの限りでない。
無機化合物の例としては、エチルシリケート、プロピルシリケート、ブチルシリケート等の金属アルコキシド等が例として挙げられる。また、有機無機複合材料としては、例えば、上記の無機化合物及び有機化合物を共重合させた化合物が該当するがこの限りでない。また、これら材料は単体で使用しても、混合して使用してもよい。
微細凹凸表面樹脂層3、6中には、屈折率を調整するための有機または無機の微粒子を添加してもよい。有機の微粒子の例としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の粒子が例として挙げられるがこの限りでない。なお、これらの微粒子は、これらの単品や共重合品であってもよい。無機の微粒子の例としては、酸化アルミ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化錫、酸化銅、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ホルミウム、酸化ビスマス、酸化コバルト、ITOや金属等の微粒子が挙げられるがこの限りでない。なお、これらの微粒子は、単体で使用しても、混合して使用してもよい。
更には、有機無機複合の微粒子でもよい。この場合、混合材料による微粒子や、コアシェル構造粒子等が例として挙げられる。また、内部に空気やガスを有する中空粒子を使用してもよい。
上述の微粒子は、粒子による光散乱によって著しい散乱を生じさせないように、100nm以下のナノ粒子であることが好ましい。
また、微細凹凸表面樹脂層3、6は色材を含んでいてもよい。微細凹凸表面樹脂層3と微細凹凸表面樹脂層6のどちらか一方に色材を含むことによって、色材を利用した溶剤発色を行うことも可能である。色材の例としては、可視光の特定波長領域を吸収、反射する顔料が好ましく、マイグレーションの懸念がある染料は好ましくない。
微細凹凸表面樹脂層3、6を印刷方式によって形成する場合には、例えば、インクジェット印刷、グラビア印刷、マイクログラビア印刷、ロールコート印刷、フレキソ印刷等の方式等を用いることができる。そして、これらの方式を用いて、前述の液体状のインキを塗布、乾燥することで微細凹凸表面樹脂層3、6を形成してもよい。
なお、印刷によって、微細凹凸反射層4、7表面上に色調を調整するための層(色調調整層)を設けた場合には、実際には緩やかな塗膜の厚み変化が生じる。例えば、凹凸構造の凸部頂点では膜厚が薄く、凹部底面に近づくに連れて膜厚が増す。このため、塗布量によっては、凹部底面周辺の一部でのみ均一な厚みを有する微細凹凸表面樹脂層3、6となっていてもよい。
また、上述した印刷方式以外でも、例えば、転写方式やラミネート方式等を用いて微細凹凸表面樹脂層3、6を形成してもよい。
微細凹凸表面樹脂層3、6は、偽造防止媒体(溶剤発色構造体1)の最表層に成り得ることから、表面硬度が高く、磨耗性や擦傷性に優れた層であることが好ましい。微細凹凸表面樹脂層3、6の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、電離線硬化性樹脂、2液硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、シリコーン樹脂やフッ素樹脂等を含むハードコート材料等が挙げられ、更にはこれら材料にワックスや滑剤を添加してもよい。
また、同理由から、微細凹凸表面樹脂層3、6が微細凹凸形成樹脂層2、5や微細凹凸反射層4、7の凹凸構造を完全に充填し、それらを保護していることが好ましい。
以上、本実施形態に係る溶剤発色構造体1を構成する各層について詳細に説明してきたが、傷つき防止のために最表面に保護薄膜を設けることや、光学特性を向上させるために最表面に反射防止膜を設けることも可能である。なお、保護薄膜や反射防止膜は、公知のコーティング方法を使用することが可能である。
また、各層間の密着を向上させるために、例えば、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理を施すことや、接着アンカー層を追加してもよい。
更には、意匠性を向上させるべく、任意の層を着色することが可能である。
また、溶剤発色構造体1は、利便性を向上するために、支持基材と接着剤を設けて偽造防止シールの形態にすることが可能である。また、支持基材から転写する機能を有する偽造防止転写箔の形態として活用することも可能である。更には、フィルム支持体上に設けた溶剤発色構造体1を紙に漉き込んだセキュリティー用紙や、溶剤発色構造体1を鱗片状に砕いた顔料などの形態にすることも可能である。
(変形例)
上述の実施形態では、微細凹凸形成樹脂層2、5表面及び微細凹凸反射層4、7表面のそれぞれに凹凸構造が形成された溶剤発色構造体1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、微細凹凸形成樹脂層表面には凹凸構造が形成されておらず、微細凹凸反射層表面にのみ凹凸構造が形成された溶剤発色構造体であってもよい。この溶剤発色構造体であっても、第一構造体と第二構造体とに備わる各微細凹凸反射層が白色光を反射して第一構造色と第二構造色を発することができる。このため、変形例に係る溶剤発色構造体であっても、上述の溶剤発色構造体1と同様の作用効果を奏することができる。
以下、本実施形態の実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)
本実施形態に係る溶剤発色構造体1を製造するために、第一の凹凸構造を備える微細凹凸形成樹脂層2を形成するためのインキ組成物として下記の材料を用意した。
「微細凹凸形成樹脂層2を形成するためのインキ組成物」
下記3点を混合攪拌し、樹脂を溶解してインキを作成した。
・三菱レーヨン製アクリル樹脂「BR85」(トルエン可溶) 10.0重量部
・大成化学製ニトロセルロース「NC165」(トルエン可溶) 10.0重量部
・トルエン 80.0重量部
また、第二の凹凸構造を備える微細凹凸形成樹脂層5を形成するためのインキ組成物として下記の材料を用意した。
「微細凹凸形成樹脂層5を形成するためのインキ組成物」
下記2点を混合攪拌し、樹脂を溶解してインキを作成した。
・三菱レーヨン製アクリル樹脂「BR102」(エタノール可溶) 20.0重量部
・エタノール 80.0重量部
上述の微細凹凸形成樹脂層2、5表面に凹凸構造を形成する方法としては、キャスト法を利用した。より詳しくは、第一の凹凸構造を作成するためのキャストフィルムとして、半径180nmの半球が2次元配列されたハニカム微細凹凸構造が形成されたポリプロピレンフィルムを準備し、上記微細凹凸形成樹脂層2を形成するためインキ組成物を塗布、乾燥させることによって第一の凹凸構造を備える微細凹凸形成樹脂層2を作成した。
同様に、第二の凹凸構造を作成するためのキャストフィルムとして、半径320nmの半球が2次元配列されたハニカム微細凹凸構造が形成されたポリプロピレンフィルムを準備し、上記微細凹凸形成樹脂層5を形成するためのインキ組成物を塗布、乾燥させることによって第二の凹凸構造を備える微細凹凸形成樹脂層5を作成した。
こうして得られた第一の凹凸構造と第二の凹凸構造とをラミネート接着剤を塗布したPETフィルムへパターン転写した。転写したパターンは、2mm幅の第一の凹凸構造のラインと、2mm幅の第二の凹凸構造のラインが、同一平面上に交互に配置したものである。
その後、各凹凸構造上(つまり、微細凹凸形成樹脂層2、5の表面上)に500Åの膜厚でアルミ蒸着を行い、各凹凸構造上に微細凹凸反射層4、7を形成した。さらに、微細凹凸反射層4、7表面の各微細凹凸構造を覆うように、上記微細凹凸形成樹脂層2、5を形成するためのインキ組成物を塗布して微細凹凸表面樹脂層3、6を形成して溶剤発色構造体を得た。
(実施例2)
第一の凹凸構造を作成するためのキャストフィルムとして、周期0.35ミクロン深さ0.3ミクロンの矩形断面形状の回折格子が形成されたポリプロピレンフィルムを使用し、第二の凹凸構造を作成するためのキャストフィルムとして、周期0.45ミクロン深さ0.3ミクロンの矩形断面形状の回折格子が形成されたポリプロピレンフィルムを使用したこと以外は、実施例1と同様の工程によって溶剤発色構造体を得た。
(比較例1)
上記実施例の比較例である溶剤発色構造体を製造するために、溶剤発色のインキ組成物として下記の材料を用意した。
「比較例1の溶剤発色インキ組成物」
・株式会社クラレ製「PVA−HC」固形分10% 100重量部
・ランクセス(株)製「MACROLEX Red Violet R」
(平均粒径4μm、水不溶、有機溶剤可溶のアントラキノン系染料)0.001重量部
・日本化薬(株)製「Kayaset Flavine FN」
(平均粒径3μmの水不溶、有機溶剤可溶のピラリゾン系染料) 0.001重量部
上記のインキ組成物を19ミクロン膜厚のPETフィルムに対して、乾燥膜厚5μmで塗布乾燥させ、比較例1の溶剤発色構造体を得た。
(比較例2)
比較例2に係る溶剤脆性ホログラムを作成するために、ホログラム層のインキ組成物として下記の材料を用意した。
「ホログラム層のインキ組成物」
下記3点を混合攪拌し、樹脂を溶解してインキを作成した。
・三菱レーヨン製アクリル樹脂「BR85」(トルエン可溶) 2.0重量部
・大成化学製ニトロセルロース「NC165」(トルエン可溶) 18.0重量部
・トルエン 80.0重量部
ホログラム層表面の凹凸構造を形成する方法としては、キャスト法を利用した。より詳しくは、ホログラム層を作成するためのキャストフィルムとして、周期2ミクロン深さ0.5ミクロンのサインカーブ断面形状の回折格子が形成されたポリプロピレンフィルムを準備し、上記のホログラム層のインキ組成物を塗布、乾燥させることによってホログラム層を作成した。
こうして得られたホログラム層を、ラミネート接着剤を塗布したPETフィルムへパターン転写した。ホログラム層表面の凹凸構造に対して2mm幅の第一の凹凸構造のラインと、2mm幅の第二の凹凸構造のラインが同一平面上に交互に配置された溶剤脆性ホログラムを得た。その後、500Åの膜厚でアルミ蒸着を行い、微細凹凸反射層を設置し、凹凸形状を覆うように同ホログラム層インキ組成物を塗布乾燥させ、比較例2に係る溶剤脆性ホログラムを作成した。
(実施例及び比較例にて作成した溶剤発色構造体の評価方法)
[溶剤発色性評価試験]
各実施例及び各比較例で得られた溶剤発色構造体(または溶剤脆性ホログラム)のサンプル(3cm×3cm)をトルエンまたはエタノールにディッピングし、60秒経過した後の引き上げ、溶剤(トルエンまたはエタノール)を落とした後に常温乾燥させ、目視観察した。評価基準は下記の通りとして、「〇」を合格とした。なお、評価に用いる可視光は、自然光下、白熱電球による照明下のどちらでも同一の結果が得られることを確認した。
○:溶剤浸漬後に構造色による色調が認められる。
×:溶剤浸漬後に構造色による色調が全く認められない。
[加熱発色性評価試験]
加熱による発色の有無を評価するために、各実施例及び各比較例の溶剤発色構造体(または溶剤脆性ホログラム)を、120℃に加熱したオーブンに入れて5時間加熱した後、25℃まで自然冷却し、サンプルの両面を目視観察した。評価基準は下記の通りとして、「○」を合格とした。
○:発色が全く生じていない。
×:明らかに発色が生じている。
[ブリードアウト評価試験]
ロジン変性フェノール樹脂(商品名「F−7305」、大日本インキ化学工業(株)製造)34.5部、大豆油15部、亜麻仁油10部、アルキッド樹脂30部、トール油脂肪酸エステル10部及びアルミニウムキレート0.5部の合計100部を190℃で1時間加熱してワニスを調製した。オフセットインキ成分として当該ワニスを、各実施例及び各比較例の溶剤発色構造体の表面(比較例1は、溶剤発色インキの塗布面)に印刷適性試験機(商品名「PM−902PT」、(株)エスエムテー製)を利用してオフセット印刷(印刷速度2.0m/秒)による重ね塗りを行った。これを23℃・相対湿度50%の環境下で7日間放置した後、ブリードアウトの発生を目視評価した。評価基準は下記の通りとして、「○」を合格とした。
○:発色していない。
×:発色している。
上記評価方法を用いて、各実施例及び各比較例を評価し、結果を表1にまとめた。
Figure 0006492398
表1の通り、各実施例、各比較例ともに溶剤発色構造体の鮮やかな構造色による色調が発しており良好であった。しかしながら、比較例1は、加熱による発色やブリードアウトによる発色があり、発色の安定性に欠けた。また、比較例2は、加熱安定性やブリードアウト性は良好であったが、溶剤浸漬によって白濁した。
以上のように、各実施例は、各比較例に対して優位性があることが確認された。
特定の溶剤に浸漬した場合に光学素子は、白濁することがなく(美観を損ねる程度まで壊れることがなく)、また、染料のマイグレーションが生じることがなく、更には複数の溶剤発色を安定して設置可能な新規の溶剤発色構造体である。このため、本実施形態に係る溶剤発色構造体は、特に、有価証券やブランド品、証明書等の偽造を防止するために使用されるラベルや、転写箔、偽造防止用紙、偽造防止用インクの顔料等に使用することが可能である。また、光学素子を利用した偽造防止構造体のほか、IDカードやパスポートなどの個人認証用媒体における、溶剤による貼り替え防止対策として利用することが可能である。
1…溶剤発色構造体
2…微細凹凸形成樹脂層
3…微細凹凸表面樹脂層
4…微細凹凸反射層
5…微細凹凸形成樹脂層
6…微細凹凸表面樹脂層
7…微細凹凸反射層
10…第一構造色
20…第二構造色
31…第一構造体
32…第二構造体

Claims (5)

  1. 第一の凹凸構造を有する第一の反射層と、前記第一の反射層を支持する第一の支持層と、前記支持された前記第一の反射層上に形成された第一の表面樹脂層とを少なくとも備えた第一の領域と、
    第二の凹凸構造を有する第二の反射層と、前記第二の反射層を支持する第二の支持層と、前記支持された前記第二の反射層上に形成された第二の表面樹脂層とを少なくとも備えた第二の領域と、を有し、
    前記第一の凹凸構造と前記第二の凹凸構造とを、任意の角度で入射される白色光によって任意の同一方向に構造色を発する構造とし、
    前記第一の凹凸構造の発する第一の構造色の波長領域と、前記第二の凹凸構造の発する第二の構造色の波長領域とを、補色関係とし、
    前記第一の支持層と前記第一の表面樹脂層とを、第一の溶剤で溶解可能な層とし、
    前記第二の支持層と前記第二の表面樹脂層とを、前記第一の溶剤とは溶解度が異なる第二の溶剤で溶解可能な層とし、
    前記第一の凹凸構造と前記第二の凹凸構造の少なくとも一方の凹凸構造を、前記凹凸構造の深さと前記凹凸構造の周期との比率(深さ/周期)が0.01以上0.5以下の範囲内となるようにし
    前記第一の支持層と前記第二の支持層の少なくとも一方の支持層を、不定形粒子を含んだ単層粒子膜としたことを特徴とする溶剤発色構造体。
  2. 前記第一の構造色の波長領域の一部と、前記第二の構造色の波長領域の一部とを、補色関係とし、前記第一の構造色と前記第二の構造色とが混合してなる構造色を白色光としたことを特徴とする請求項1に記載の溶剤発色構造体。
  3. 前記第一の凹凸構造と前記第二の凹凸構造とを、それぞれ複数の網点状に形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶剤発色構造体。
  4. 前記第一の支持層を、前記第一の凹凸構造を備えた樹脂層とし、
    前記第一の反射層を、前記第一の凹凸構造上に形成した層とし、
    前記第二の支持層を、前記第二の凹凸構造を備えた樹脂層とし、
    前記第二の反射層を、前記第二の凹凸構造上に形成した層とし、
    前記第一の凹凸構造と前記第二の凹凸構造とを、前記第一の表面樹脂層と前記第二の表面樹脂層の表面に対して、任意の角度で入射される白色光によって任意の同一方向に構造色を発する構造としたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の溶剤発色構造体。
  5. 前記第一の凹凸構造と前記第二の凹凸構造の少なくとも一方の凹凸構造に備わる凸部または凹部を、2次元平面上に平方格子状または六方細密充填様に配列したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の溶剤発色構造体。
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