以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
[1.構成]
本発明の一実施形態に係る生体信号処理装置、コンピュータに実行させるためのプログラム、同プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、及び生体信号処理方法について説明する。本実施形態では、体動検出手段として検体の加速度を検出する加速度センサを用いた生体信号処理装置を具体例として説明する。
[1−1.生体信号処理装置の全体構成]
図1及び図2を参照しながら、本実施形態に係る生体信号処理装置1の機能構成及びハードウェア構成について説明する。ここで、図1は、本実施形態に係る生体信号処理装置1の機能構成例を示すブロック図である。図2は、本実施形態に係る生体信号処理装置1のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、生体信号処理装置1は、脈波センサ12、AD変換器13、脈波センサインターフェース14、情報処理装置21、外部メモリ84を備えている。情報処理装置21は、例えば、検出された信号を処理するためのモバイル端末機としての携帯情報端末(スマートフォン)によって構成されている。情報処理装置21は、加速度センサ32、AD変換器33、CPU(Central Processing Unit;中央処理装置)41、メモリ81、タッチパネルディスプレイ82を備える。なお、脈波センサインターフェース14を、「脈波センサI/F14」ともいう。
図1に示すように、生体信号処理装置1を機能的に表すと、脈波信号取得部(脈波信号取得手段)11、と情報処理装置21とを備えて構成される。情報処理装置21は、体動信号取得部(体動信号取得手段)31、信号処理部41、記憶部81、表示部82、及び操作部83を備えて構成される。信号処理部41は、情報処理装置21内部のCPU41で演算処理される機能部位であり、各機能は個別のプログラムとして構成されている。なお、本実施形態における信号処理部41は、直流成分除去手段、積分処理手段、高周波成分除去手段、窓関数処理手段、脈波周波数解析手段、高調波減衰手段、絶対値化手段、リサンプリング手段、体動周波数解析手段、周波数変換手段、重合処理手段、体動成分減衰手段、重み付け手段、ピーク検出手段、及び心拍数算出手段として機能するものである。
生体信号処理装置1は、運動している検体から検出された生体信号を処理する。本実施形態では、生体信号処理装置1が、生体信号として脈波及び体動を検出して、脈波を表す脈波信号、及び体動を表す体動信号を処理する場合について説明する。本実施形態に係る生体信号処理装置1は、生体信号を処理して、検体の心拍数を検出するものであるから、心拍数検出装置1ということができる。同様に、本実施形態に係る生体信号処理プログラムは、心拍数検出プログラムということができる。また、本実施形態に係る生体信号処理方法は、心拍数検出方法ということができる。
[1−2.生体信号処理装置の各部構成]
<脈波センサ>
脈波センサ12は、評価対象となる検体の脈波を検出して、脈波信号を出力するセンシングユニットである。脈波とは、心臓の拍動(心拍)により血液が大動脈に押し出された際に、血管内に発生した圧力変化が血管内に伝わって行く波動のことである。さらに、検体が運動する際には、血管内に体の動きに応じた圧力変化が生じることで、脈波には体動に由来する体動成分が加わる。すなわち、脈波センサ12によって検出される脈波には、心拍に由来する心拍成分と、体動成分とが含まれている。本実施形態では、脈波センサ12を指の先に装着して、この指の位置において、脈波センサ12が指から脈波を検出する。
脈波センサ12は、例えば、発光部として発光ダイオードを用い、受光部としてフォトダイオードやフォトトランジスタを用いて、透過光または反射光から脈波を検出する、光電式の測定器を利用することができる。または、検体の動脈上に圧電素子を押し付けて脈波を検出する、圧電式の測定器を利用することができる。または、血管の脈動に伴う皮膚または鼓膜部分の振動によって生じる空気の振動を検出できるマイクロホンを用いて、マイクロホンと振動源とを閉じた状態にして脈波を検出する測定器を利用してもよい。
脈波センサ12は、脈波信号をアナログデータとして検出して、AD変換器13に脈波信号を出力する。AD変換器13は、入力された脈波信号をデジタルデータに変換する。本実施形態では、脈波信号のサンプリング周波数を1kHzとしている。
デジタルデータに変換された脈波信号は、Bluetooth(登録商標)を利用して、脈波センサI/F14に無線信号として送信される。
脈波センサI/F14は、脈波センサ12及びAD変換器13と情報処理装置21との情報をやりとりするユニットである。脈波センサI/F14は、Bluetoothの受信部を備えるUSB(Universal Serial Bus)シリアルインターフェースである。脈波センサI/F14は、AD変換器13からの脈波信号を受信したら、情報処理装置21に備えられた図示しないUSBポート及びバスを介して、情報処理装置21内のCPU41に脈波信号を出力する。情報処理装置21では、デジタルデータに変換された脈波信号が、信号処理部41の直流成分除去部51に入力される。
上述したように、脈波センサ12は、脈波検出手段として機能する。また、AD変換器13は、脈波信号変換手段として機能する。さらに、図1に示すように、脈波信号取得部11は、脈波検出部(脈波検出手段)12、脈波信号変換部(脈波信号変換手段)13、及び脈波センサI/F14を備えて構成される。脈波信号取得部11は、検体の脈波を表す時系列の脈波信号を取得して、必要に応じて信号処理部41によって処理が可能な形に脈波信号の変換を行い、信号処理部41へ出力する機能部である。
<加速度センサ>
加速度センサ32は、検体の体の動き(体動)を検出して、体動信号を出力するセンシングユニットである。本実施形態では、加速度センサ32が、体動信号として加速度信号を検出している。加速度センサ32は情報処理装置21の内部に設けられており、検体の動きに伴う情報処理装置21のX軸、Y軸、Z軸の3軸の加速度を検出する。加速度センサ32は、加速度を検出する検出素子として、例えば、電極間の静電容量の変化を検出するもの、ピエゾ抵抗素子のひずみ抵抗の変化を検出するもの、熱気流の対流の変化を検出するものを利用することができる。本実施形態では、検体が、加速度センサ32が内蔵された情報処理装置21を、胸ポケットの位置に装着する。加速度センサ32は、この胸ポケットの位置において、情報処理装置21の加速度変化を体動として検出する。
加速度センサ32は、体動信号をアナログデータとして検出して、AD変換器33に体動信号を出力する。AD変換器33は、入力された体動信号をデジタルデータに変換する。本実施形態では、体動信号のサンプリング周波数を50Hzとしている。
デジタルデータに変換された体動信号は、情報処理装置21に備えられた図示しないバスを介して、信号処理部41(CPU41)の絶対値化部61に入力される。
上述したように、加速度センサ32は、体動検出手段として機能する。また、AD変換器33は、体動信号変換手段として機能する。さらに、図1に示すように、体動信号取得部31は、体動検出部(体動検出手段)32、及び体動信号変換部(体動信号変換手段)33を備えて構成される。体動信号取得部31は、検体の体動を表す時系列の体動信号を取得して、必要に応じて信号処理部41によって処理が可能な形に体動信号の変換を行い、信号処理部41へ出力する機能部である。
<メモリ>
メモリ81は、種々のデータやプログラムを格納する記憶部(記憶手段)81である。メモリ81は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリや、ROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、またはHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Device)によって実現される。
メモリ81は、脈波信号及び体動信号の波形データ、検出されたピークの周波数、並びに算出された心拍数を格納する。
また、メモリ81は、CPU41に実行させることで、後述する直流成分除去部51,63、積分処理部52、高周波成分除去部53,64、窓関数処理部54,65、脈波周波数解析部55、高調波減衰部56、絶対値化部61、リサンプリング部62、体動周波数解析部66、周波数変換部67、重合処理部68、体動成分減衰部71、重み付け部72、ピーク検出部73、及び心拍数算出部74としてそれぞれ機能させる、直流成分除去用プログラム、積分処理用プログラム、高周波成分除去用プログラム、窓関数処理用プログラム、脈波周波数解析用プログラム、高調波減衰用プログラム、絶対値化用プログラム、リサンプリング用プログラム、体動周波数解析用プログラム、周波数変換用プログラム、重合処理用プログラム、体動成分減衰用プログラム、重み付け用プログラム、ピーク検出用プログラム、及び拍数算出用プログラムを予め保存する。これらのプログラムをあわせて、本件のプログラム(生体信号処理プログラム)と称する。
<タッチパネルディスプレイ>
ディスプレイ82(83)は、信号処理されたデータを表示する表示部82としての機能と、情報処理装置21を操作するための操作情報を入力するための操作部83としての機能とを併せ持つ。タッチパネルディスプレイ82の液晶表示画面は、表示部82として機能する。また、タッチパネルディスプレイ82には、情報処理装置21に所定の動作の実行を命令するための各種ボタンの画像が表示される。このボタンを操作者がタッチ操作することにより、タッチパネルディスプレイ82が操作部83として機能する。操作者はタッチパネルディスプレイ82を操作して、情報処理装置21及び生体信号処理装置1に各種機能を実行するよう動作させる。
タッチパネルディスプレイ82は、算出された心拍数の値を表示する。また、図4に例示するように、タッチパネルディスプレイ82は、検出した脈波信号の波形を表示する(符号A1)。さらに、タッチパネルディスプレイ82は、検出した脈波信号に対してローパスフィルター処理を行なった波形(符号B1)、検出した体動信号の波形(符号C1)、脈波信号に対して周波数解析を行なった脈波スペクトル(符号D1)、体動信号に対して周波数解析を行なった体動スペクトルと2分の1の周波数領域に周波数変換した変換スペクトルとを重ね合わせた重合スペクトル(符号E1)、脈波スペクトルに対して、高調波の減衰と体動成分の減衰と重み付けとを行なった重み付けスペクトル(符号F1)を表示する。
なお、図4では、符号A1,B1,C1を付した波形は、横軸を0秒〜4000ミリ秒の時間、縦軸を信号の強度として表示している。また、符号D1,E1,F1を付したスペクトルは、横軸を心拍数、縦軸をスペクトル強度(パワー)の対数表示として表示している。具体的には、表示されている横軸の数値を10で割った値が、スペクトルの横軸を表す心拍数(pulse/min)となる。また、表示されている縦軸の数字を10で割った値が、スペクトルの縦軸を表すデシベル値(dB)となる。ただし、スペクトルどうしの比較のために、スペクトルの位置を適宜縦方向にシフトして表示している。このため、各スペクトルにおいて、最大のポイントを0dBと読み替えるものとする。例えば、符号D1を付したスペクトルでは最大値が1000の所にあるため、800で−20dB、400で−60dBと読み替える。なお、スペクトルの横軸は、1分間あたり0〜400回の心拍数を表しているが、これを心拍の1秒毎の周波数として捉える場合には、0〜6.667Hzの周波数を表示しているといえる。これらのグラフの説明は、以降の図5〜図7についても同様である。
<CPU>
CPU41は、種々の制御や演算を行なう処理装置であり、メモリ81に格納された本件のプログラムを読み出して実行することにより、種々の機能を実現する。そして、CPU41が、これらのプログラムを実行することにより、図1で示すように、直流成分除去部51,63、積分処理部52、高周波成分除去部53,64、窓関数処理部54,65、脈波周波数解析部55、高調波減衰部56、絶対値化部61、リサンプリング部62、体動周波数解析部66、周波数変換部67、重合処理部68、体動成分減衰部71、重み付け部72、ピーク検出部73、及び心拍数算出部74としてそれぞれ機能する。
本件のプログラムは、例えばフレキシブルディスク、CD(CD−ROM,CD−R,CD−RW等)、DVD(DVD−ROM,DVD−RAM,DVD−R,DVD+R,DVD−RW,DVD+RW,HD DVD等)、ブルーレイディスク、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク等の、コンピュータ読取可能な記録媒体(例えば、外部メモリ84)に記録された形態で提供される。そして、情報処理装置21はその記録媒体からプログラムを読み取って内部記憶装置(例えば、メモリ81)または外部記憶装置に転送し格納して用いる。または、それらのプログラムを、例えば磁気ディスク,光ディスク,光磁気ディスク等の図示しない記憶装置(記録媒体)に記録しておき、その記憶装置から通信経路を介して情報処理装置21に提供するようにしてもよい。
なお、本実施形態において、コンピュータとは、ハードウェアとオペレーティングシステムとを含む概念であり、オペレーティングシステムの制御の下で動作するハードウェアを意味している。又、オペレーティングシステムが不要でアプリケーションプログラム単独でハードウェアを動作させるような場合には、そのハードウェア自体がコンピュータに相当する。ハードウェアは、少なくとも、CPU等のマイクロプロセッサと、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムを読み取るための手段とを備えている。
<外部メモリ>
外部メモリ84は、情報処理装置21へ、脈波信号及び体動信号の波形データを読み出すことができる。また、外部メモリ84は、情報処理装置21から、脈波信号及び体動信号の波形データ、検出されたピークの周波数、並びに算出された心拍数を書き込むことができる。さらに、この外部メモリ84には、本件のプログラムを記録することもできる。この場合、これらのプログラムを必要に応じて、外部メモリ84から読み出して、生体信号処理装置1に読み出すことが出来るようになっている。
[1−3.信号処理部]
図1に示すように、信号処理部41は、直流成分除去部(直流成分除去手段)51,63、積分処理部(積分処理手段)52、高周波成分除去部(高周波成分除去手段)53,64、窓関数処理部(窓関数処理手段)54,65、脈波周波数解析部(脈波周波数解析手段)55、高調波減衰部(高調波減衰手段)56、絶対値化部(絶対値化手段)61、リサンプリング部(リサンプリング手段)62、体動周波数解析部(体動周波数解析手段)66、周波数変換部(周波数変換手段)67、重合処理部(重合処理手段)68、体動成分減衰部(体動成分減衰手段)71、重み付け部(重み付け手段)72、ピーク検出部(ピーク検出手段)73、及び心拍数算出部(心拍数算出手段)74を備えて構成される。
<直流成分除去部(1)>
直流成分除去部51は、脈波信号取得部11から入力された脈波信号に対して、脈波信号に含まれるDC(直流)成分除去のためにハイパスフィルター処理を行う。例えば、心拍数30に相当する0.5Hz以下をカットする12dB/Octでのハイパスフィルター処理を行う。
<積分処理部>
積分処理部52は、脈波信号に対して、加速度脈波から速度脈波へ、速度脈波から容積脈波へと変換するために積分処理を行う。脈波信号取得部11により取得された脈波信号が、想定する波形である微分波形となるように、必要に応じて1回積分、または2回積分を行なう。1回の積分は、カットオフ周波数を0.5Hzとした6dB/Octのローパスフィルター処理をかけることで行う。また、この積分処理をする場合には、信号の振幅を維持するために、適宜増幅処理を行う。なお、ここでいう「想定する波形である微分波形」とは、いわゆる速度脈波である。速度脈波とは、光電式の脈波系により検出される、血管の容量変化を捕らえた容量脈波を、1回微分した波形をいう。
<高周波成分除去部(1)>
高周波成分除去部53は、脈波信号に対して、高周波のノイズ成分を低減して脈波成分を通過させるためにローパスフィルター処理を行なう。例えば、カットオフ周波数を3.5Hzとした12dB/Octでのローパスフィルター処理を行う。なお、このカットオフ周波数は、心拍数210に相当している。
<窓関数処理部(1)>
窓関数処理部54は、脈波信号に対して、後述する脈波周波数解析部55による周波数解析を行う準備として、所定範囲のデータに窓関数をかける処理を行う。窓関数としては、例えば、ハミング窓、ハニング窓、ブラックマン窓、カイザー窓等を利用することができる。本実施形態では、窓関数としてハミング窓を使用して、16.384秒分に相当する、過去16384サンプルのデータを切り出す。
<脈波周波数解析部>
脈波周波数解析部55は、脈波信号に対して周波数解析を施して、周波数領域の脈波のスペクトルに変換する。周波数解析としては、例えば、FFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ解析)、MEM(Maximum Entropy Method;最大エントロピー法)、もしくは自己相関解析、中でもAR(Auto-regressive;自己回帰法)を用いることができる。または、広義にはWavelet法を用いることができる。本実施形態では、窓関数処理部54におけるサンプル数に対応して16834点のFFTを行い、脈波信号のパワースペクトルを得る。脈波信号の周波数解析脈により得られるスペクトルを、脈波スペクトルと称する。
<高調波減衰部>
高調波減衰部56は、脈動性信号に対して、後述するピーク検出部73によるスペクトルピーク検出時に高調波を検出する事を避けるために高調波成分のキャンセル処理を行う。高調波成分のキャンセル処理は、ある周波数に対して2倍、3倍、またはそれ以上の整数倍の周波数にスペクトルピークがある場合に、脈波スペクトルからこの整数倍のピーク、中でも2倍または3倍のピークを相殺するものである。これにより、脈波信号に含まれる2次または3次高調波成分を減衰させる。
高調波成分のキャンセル処理は、脈波スペクトルのデータを2倍の周波数、または3倍の周波数にシフトし、これに所定の割合を掛けたものを元の脈波スペクトルから減算する事により行う。具体的に、脈波スペクトルのデータのシフトは、少なくとも心拍成分が含まれる周波数領域を、2倍または3倍の周波数領域に拡張する処理により行うことができる。または、基本波にあたるスペクトルピークの周波数のピーク部分を、2倍または3倍の周波数に単純平行移動する処理により行うことができる。または、横軸を対数化して、基本波にあたるスペクトルピークのピーク部分を、2倍または3倍の周波数に平行移動する処理により行うことができる。
シフトしたピークにかける割合は、例えば0%より大きく300%までの範囲で行うことができる。中でも、50%、100%、200%、300%の割合で行うことができる。このときの割合が100%の場合にはシフトしたピーク部分の成分をそのまま差し引くことになる。一方、割合が50%の場合には、シフトしたピーク部分の成分のパワーを半分にしたものを差し引くことになる。また、200%、300%の場合には、シフトしたピーク部分の成分のパワーを2倍、3倍にしたものを差し引くことになる。
<絶対値化部>
絶対値化部61は、体動信号の絶対値化を行う。加速度センサ32はXYZの3軸の出力を持つため、各軸のデータをそれぞれ二乗して合算したものの平方根を取ることにより絶対値化を行なう。すなわち、各軸のデータをそれぞれx,y,zとすると、sqrt(x*x + y*y + z*z)を求めることにより、体動信号が絶対値として得られる。
<リサンプリング部>
リサンプリング部62は、脈波信号のサンプリング周期と体動信号のサンプリング周期とが異なる場合に、加速信号を脈波信号と同様の処理を行えるように、リサンプリングを行なう。例えば、脈波信号のサンプリング周波数が1kHzであって、加速度センサ32のサンプリング周波数が50Hzである場合には、体動信号を1kHz周期でリサンプリングする。
<直流成分除去部(2)>
直流成分除去部63は、体動信号に対してハイパスフィルター処理を行う。直流成分除去部63によるハイパスフィルター処理は、直流成分除去部51と同様にして行うことができる。
<高周波成分除去部(2)>
高周波成分除去部64は、体動信号に対してローパスフィルター処理を行なう。高周波成分除去部64によるローパスフィルター処理は、高周波成分除去部53と同様に行うことができる。
<窓関数処理部(2)>
窓関数処理部65は、体動信号に対して窓関数をかける処理を行う。窓関数処理部65による窓関数をかける処理は、窓関数処理部54と同様に行うことができる。本実施形態では、窓関数としてハミング窓を使用して、16.384秒分に相当する、過去16384サンプルのデータを切り出す。
<体動周波数解析部>
体動周波数解析部66は、体動信号に対して周波数解析を施して、周波数領域の体動のスペクトルに変換する。体動周波数解析部66による周波数解析は、脈波周波数解析部55と同様に行うことができる。本実施形態では、窓関数処理部65におけるサンプル数に対応して16834点のFFTを行い、体動信号のパワースペクトルを得る。体動信号の周波数解析脈波により得られるスペクトルを、体動スペクトルと称する。
<周波数変換部>
周波数変換部67は、体動周波数解析部66で得られた体動スペクトルを、体動が検出された位置応じて所望の周波数領域のスペクトルに変換する周波数変換を行い、変換スペクトルを得る。変換スペクトルは、体動スペクトルが所望の周波数領域に変換されて、体動スペクトルに含まれていたピークが、体動の検出位置と周波数変換とに対応した所定の周波数の位置に現れるスペクトルである。
周波数変換は、体動信号の検出位置に応じて、体動スペクトルを所望の周波数領域のスペクトルに変換することにより行う。具体的には、体動信号が、体幹または体幹周辺の位置で検出された体動を表す信号である場合には、体動スペクトルを2分の1の周波数領域に圧縮したスペクトルに変換する、分周処理を行う。または、体動信号が、体肢の位置で検出された体動を表す信号である場合には、体動のスペクトルを2倍の周波数領域に伸張したスペクトルに変換する、逓倍処理を行う。
分周処理は、体動スペクトル全体を2分の1の周波数領域に圧縮する。言い換えれば体動スペクトルを1オクターブ下の周波数にシフトすることにより行う。この場合、変換スペクトルは、体動スペクトルが2分の1の周波数領域に圧縮されて、体動スペクトルに含まれていたピークが2分の1の周波数の位置に現れる、分周スペクトルとなる。
逓倍処理は、体動スペクトル全体を2倍の周波数領域に伸張する。言い換えれば体動スペクトルを1オクターブ上の周波数にシフトすることにより行う。この場合、変換スペクトルは、体動スペクトルが2倍の周波数領域に伸張されて、体動スペクトルに含まれていたピークが2倍の周波数の位置に現れる、逓倍スペクトルとなる。
このとき、分周処理及び逓倍処理においては、体動スペクトルにおいて、少なくとも心拍成分が含まれる周波数領域について圧縮または伸張を行うようにしてもよい。
<重合処理部>
重合処理部68は、周波数変換部67で得られた体動の変換スペクトルと、体動周波数解析部66で得られた体動スペクトルとを重ね合わせる重合処理を行い、重合スペクトルを得る。重合スペクトルは、変換スペクトルと体動スペクトルとが重ね合わせられて、体動スペクトルに含まれるピークと、体動スペクトルに含まれるピークを2分の1または2倍の周波数にしたピークとがともに現れるスペクトルである。
重合処理は、変換スペクトルと体動スペクトルとを重ね合わせて、それぞれのスペクトルから同じ周波数においてパワー(スペクトル強度)が大きい値を示す方のスペクトルのパワーを取ることで、二つのスペクトルのパワーの大きい方からなるスペクトルを作成することにより行う。または、重合処理は、変換スペクトルと体動スペクトルとを重ね合わせて、それぞれのスペクトルの同じ周波数におけるパワーを加算したものの平均値を取ることで、二つのスペクトルのパワーの平均値からなるスペクトルを作成することにより行ってもよい。なお、先に説明した大きい値をとる処理の方が、体動信号の変化を感度良く取ることができ、体動スペクトル及び変換スペクトルに含まれるピークを保持することができるため、後述する体動成分の減衰への効果が高くなるために好ましい。
<体動成分減衰部>
体動成分減衰部71は、重合スペクトルを対照データとして、高調波減衰部56で得られた脈波のスペクトルから、重合処理部68で得られた重合スペクトルのピーク部分の周波数に相当する成分を減衰させる減衰処理を行い、減衰スペクトルを得る。減衰スペクトルは、脈波スペクトルに現れる体動成分のピークが抑制されたスペクトルである。
具体的には、まず、重合スペクトルのパワースペクトルから、パワーの平均値を算出する。次に、重合スペクトルのパワースペクトルにおいて、パワーの値が平均値より高いピークを、体動ピーク部分と判断する。さらに、脈波のスペクトルにおいて、体動ピーク部分の周波数に相当する周波数成分から、重合スペクトルの体動ピーク部分の周波数成分に所定の割合を掛けたものを差し引くことにより行う。体動スペクトルの周波数成分にかける割合は、0%より大きく100%までの範囲で行うことができる。このときの割合が100%の場合には重合スペクトルに現れる体動ピーク部分の周波数成分をそのまま差し引くことになる。一方、割合が0%に近い場合には、体動スペクトルに現れる周波数成分のパワーを小さくしたものを差し引くことになる。
<重み付け部>
重み付け部72は、体動成分減衰部71で得られた減衰スペクトルに対して、過去の検出により得られた心拍数に対応する周波数を中心点として、この中心点の周波数から離れるにつれてスペクトル強度が減少する重み付けを行ない、重み付けスペクトルを得る。重み付けスペクトルは、過去に検出されたピークから離れた周波数成分が抑制されて、過去に検出されたピーク付近の周波数成分が相対的に強調されたスペクトルである。
中心点は、過去に得られた心拍数に対応する周波数であるが、この周波数は、過去にピーク検出部73によって検出されたピークの周波数を用いることができる。重み付け部72は、記憶部81に記録されている、過去のピーク検出によって得られた周波数を読み出して重み付けを行なう。重み付けを行なうことにより、過去に検出されたピークの両側の周波数成分を減衰させることで、過去に検出されたピークに追従することを、ロックするという。
過去の検出により得られた周波数の中でも、直近のものが検体の現時点での心拍数を反映することから、前回の心拍数の測定の際にピーク検出部73によって検出された最大のピークの周波数を用いることが好ましい。なお、測定を始めた初回の場合であって、過去の検出により得られたデータがない場合には、重み付けによる処理を省いて、ピーク検出部73による最大ピーク検出を行えばよい。
重み付けは、中心点から高周波数領域に向けてローパスフィルター処理をかけて、中心点から低周端数領域に向けてハイパスフィルター処理をかけることにより行う。または、中心点を中心周波数とした、バンドパスフィルタ処理をかけることによって行ってもよい。重み付けのフィルタの係数は、例えば、6dB/Oct、12dB/Oct、18dB/Octのスロープで行なう。この重み付けの係数は、計測結果の最大のピークに対するロックの強さをあらわす。重み付けの係数が高いほど、過去に検出されたピークを中心として両側の周波数成分が大きく減衰されることになるため、不測のノイズ成分による計測結果の変動を抑えることができる。一方、重み付けの係数が低い場合には、仮に心拍に由来する周波数成分以外ピークにロックした場合であっても、心拍に由来するピークが最大となった際には、本来の心拍に由来するピークにロックするように復帰しやすくなる。
<ピーク検出部>
ピーク検出部73は、重み付け部72で得られた脈波のスペクトルからパワーが最大のピークを検出する。最大のピークの検出は、重み付けされた脈波のスペクトルから、パワースペクトルのパワーが最大値を示すピークを抽出することにより行なう。このとき、平静時と運動時とでは心拍数が変動するが、通常、心拍に由来する心拍成分のピークは、0.5〜3.5Hzの範囲内に現れる。このため、最大のピークの検出は、0.5〜3.5Hzの範囲において行うようにしてもよい。さらに、ピーク検出部73は、この最大ピークの周波数を得る。
<心拍数算出部>
心拍数算出部74は、ピーク検出部73で検出された最大のピークの周波数から心拍数を算出する。最大のピークの周波数(Hz)に対して60を乗ずることで、1分間あたりの心拍の数を表す心拍数を得ることができる。また、心拍数算出部74は、算出された心拍数を記憶部81または表示部82に出力する。
[2.動作]
以下、図3及び図4を参照しながら、本実施形態に係る生体信号処理装置1による処理や動作について説明する。ここでは、検体がランニングしている場合において、脈波センサ12を手の指先に、生体信号処理装置1を胸ポケットに装着して、脈波を指の位置で測定して、加速度を胸ポケットの位置で測定して、心拍数の検出を行なった場合の動作について説明する。
図4は、この場合の結果を表すグラフである。図4では、検出した脈波信号の波形に符号A1、検出した脈波信号に対してローパスフィルター処理を行なった波形に符号B1、検出した体動信号の波形に符号C1、脈波信号に対して周波数解析を行なった脈波スペクトルに符号D1、体動信号に対して周波数解析を行なった体動スペクトルと2分の1の周波数領域に周波数変換した体動スペクトルとを重ね合わせた重合スペクトルに符号E1、脈波スペクトルに対して、高調波の減衰と体動成分の減衰と重み付けとを行なった重み付けスペクトルに符号F1を付して表している。
検体が運動をする場合には、一定の体の動きを繰り返すことで、体動に周期が現れる。例えばウォーキングやランニングをする場合には、左右のいずれかの脚を踏み出すとともに、脚の動きにあわせて両腕を前後に振る運動を周期的に行う。このとき、片方の脚を踏み出してから着地して再び踏み出すまでの動きを体動の1セットとして、この1セットに要する時間を体動の周期とする。この1セットにおける脚または腕の前後動の周期に応じた周波数、すなわち1セットが単位時間当たりに繰り返される回数を、体動の1倍の周波数、または単に、体動の周波数という。なお、上記の1セットに要する時間は、ウォーキングまたはランニングの場合では、二歩分の時間に相当する。
図3に示すフローチャート(ステップS11〜S17、S21〜29、S31〜34)に従って、本実施形態に係る生体信号処理装置1による処理の流れについて説明する。生体信号処理装置1は、脈波信号及び体動信号を取得して心拍数の算出及び表示を行なうまでを1サイクルとする処理を行う。また、生体信号処理装置1は、1サイクルにおける、同じ時間領域の脈波信号と体動信号についての処理を行う。さらに、生体信号処理装置1は、この1サイクルの処理を所定の単位時間ごとに繰り返し行うことで、単位時間おきの心拍数を得る。ここでは、1秒おきに心拍数を得る場合における、1サイクルの処理の流れを説明する。
まず、生体信号処理装置1は、脈波信号取得部11によって脈波信号を取得する(ステップS11、脈波信号取得ステップ)。本実施形態では、脈波センサ12として、マイクロホンと振動源とを閉じた状態にして脈波を検出する測定器を利用して、検体の脈波を検出する。AD変換器13により1kHzのサンプリング周期でデジタルデータに変換された脈波信号が、脈波センサI/F14を介して直流成分除去部51へと入力される。このときの脈波信号の波形は、図4に符号A1を付して表される。検体が運動している状態の脈波を指先の位置で検出することで、脈波センサ12は、心拍に由来する成分に加えて、体動に由来するノイズ成分が加わった脈波を検出する。
直流成分除去部51は、脈波信号取得部11から入力された脈波信号に対して、ハイパスフィルター処理を行う(ステップS12、直流成分除去ステップ)。ハイパスフィルター処理によって直流成分が低減された脈波信号は、積分処理部52へと入力される。
積分処理部52は、直流成分除去部51から入力された脈波信号に対して、速度脈波となるように積分処理を行う(ステップS13、積分処理ステップ)。なお、本実施形態では、脈波信号が、想定する波形である速度脈波として得られているため、積分処理を行っていない。積分処理によって速度脈波となった脈波信号は、高周波成分除去部53へと入力される。
高周波成分除去部53は、積分処理部52から入力された脈波信号に対して、ローパスフィルター処理を行なう(ステップS14、高周波成分除去ステップ)。ローパスフィルター処理によって高周波のノイズ成分が除去された脈波信号は、窓関数処理部54へと入力される。このときの脈波信号の波形は、図4に符号B1を付して表される。
窓関数処理部54は、高周波成分除去部53から入力された脈波信号に対して、窓関数をかける(ステップS15、窓関数処理ステップ)。本実施形態では、ハミング窓を用いて、16.384秒分に相当する16384サンプルのデータを切り出す。なお、生体信号処理装置1による処理を1サイクル行う毎に、1024サンプル単位(約1秒)ずつデータの範囲を後に測定したデータにずらして切り出しを行なうことによって、約1秒ごとの間隔でデータを切り出して、後述する周波数解析を行う。これにより、窓関数によって切り出されたデータに対する、窓関数処理ステップ以降の処理は、約1秒ごとのデータに対して行うことになり、1秒ごとの心拍数が算出される。窓関数によって切り出された脈波信号のデータは、脈波周波数解析部55へと入力される。
脈波周波数解析部55は、窓関数処理部54から入力された脈波信号に対して、周波数解析を行なう(ステップS16、脈波周波数解析ステップ)。本実施形態では、16384点のFFTをかける。周波数解析によって、脈波信号は周波数領域の脈波スペクトルに変換されて、高調波減衰部56へと入力される。このときの脈波スペクトルは、図4に符号D1を付して表される。本実施形態では検体がランニングしている状態の脈波を指先の位置で検出することで、脈波スペクトルには、心拍に由来する心拍成分のピークd12と、体動に由来する体動成分のピークd11,d13とが含まれる。中でも、体動成分のピークとしては、運動による体の動きに対応して、体動の周波数の1倍の位置にピークd11と、体動の周波数の2倍の位置にピークd13とが現れる。
高調波減衰部56は、脈波周波数解析部55から入力された脈波スペクトルに対して、高調波の減衰を行う(ステップS17、高調波減衰ステップ)。本実施形態では、脈波スペクトルのデータを2倍の周波数、および3倍の周波数にシフトし、これに50%を掛けたものを元の脈波スペクトルから減算する。高調波の減衰によって、2次または3次高調波成分が減衰された脈波スペクトルは、体動成分減衰部71へと入力される。
生体信号処理装置1は、体動信号取得部31によって体動信号を取得する(ステップS21、体動信号取得ステップ)。本実施形態では、XYZ3軸の加速度センサ32により検体の加速度を検出する。AD変換器33により50Hzのサンプリング周期でデジタルデータに変換された体動信号が、絶対値化部61へと入力される。このときの体動信号の波形は、図4に符号C1を付して表される。本実施形態では検体が運動している状態の加速度を胸ポケットの位置で検出することで、加速度センサ32は、両脚の動きによる加速度変化が合わさった体動を検出する。
絶対値化部61は、体動信号取得部31から入力された体動信号に対して、絶対値化を行なう(ステップS22、絶対値化ステップ)。本実施形態では、XYZ3軸のデータをそれぞれ二乗して合算したものの平方根をとることで、3軸分の加速度が得られる。絶対値化された体動信号は、リサンプリング部62へと入力される。
リサンプリング部62は、絶対値化部61から入力された体動信号に対して、リサンプリングを行なう(ステップS23、リサンプリングステップ)。本実施形態では、脈波センサ12のサンプリング周波数1kHzにあわせて、1kHz周期でリサンプリングする。リサンプリングされた体動信号は、直流成分除去部63へと入力される。
直流成分除去部63は、リサンプリング部62から入力された体動信号に対して、ハイパスフィルター処理を行う(ステップS24、直流成分除去ステップ)。ハイパスフィルター処理によって直流成分が低減された体動信号は、高周波成分除去部64へと入力される。
高周波成分除去部64は、直流成分除去部63から入力された体動信号に対して、ローパスフィルター処理を行なう(ステップS25、高周波成分除去ステップ)。ローパスフィルター処理によって高周波のノイズ成分が除去された体動信号は、窓関数処理部65へと入力される。
窓関数処理部65は、高周波成分除去部64から入力された体動信号に対して、窓関数をかける(ステップS26、窓関数処理ステップ)。本実施形態では、ハミング窓を用いて、16.384秒分に相当する16384サンプルのデータを切り出す。窓関数によって切り出された体動信号のデータは、体動周波数解析部66へと入力される。
体動周波数解析部66は、窓関数処理部65から入力された体動信号に対して、周波数解析を行なう(ステップS27、体動周波数解析ステップ)。本実施形態では、16384点のFFTをかける。周波数解析によって、体動信号は周波数領域の体動スペクトルに変換されて、周波数変換部67と重合処理部68へと入力される。このとき、本実施形態では検体がランニングしている状態の加速度を胸の位置で検出することで、体動スペクトルには、両足分の動きに由来して、主に体動の周波数の2倍の位置に体動成分のピークが現れる。
周波数変換部67は、体動周波数解析部66から入力された体動スペクトルに対して、周波数変換を行う(ステップS28、周波数変換ステップ)。本実施形態では、体動のスペクトルを2分の1の周波数領域に圧縮したスペクトルに変換する、分周処理を行う。周波数変換部67によって、体動スペクトルは2分の1の周波数領域に圧縮された分周スペクトルに変換されて、重合処理部68へと入力される。このとき、加速度センサ32によって体動の2倍の周波数で検出された体動成分は周波数が2分の1となることで、分周スペクトルでは体動の周波数の1倍の位置にピークが現れる。
重合処理部68は、体動周波数解析部66から入力された体動スペクトルと、周波数変換部67から入力された分周スペクトルとに対して重合処理を行う(ステップS29、重合処理ステップ)。重合処理によって、体動スペクトルと分周スペクトルとが重ね合わせられた重合スペクトルとなり、体動成分減衰部71へと入力される。このときの重合スペクトルは、図4に符号E1を付して表される。重合スペクトルには、体動の周波数の1倍の位置にピークe11が、体動の周波数の2倍の位置にピークe12が含まれる
体動成分減衰部71は、高調波減衰部56から入力された脈波のスペクトルと、重合処理部68から入力された重合スペクトルとに基づいて、脈波のスペクトルから体動成分の減衰を行なう(ステップS31、体動成分減衰ステップ)。まず、体動成分減衰部71は、重合スペクトルにおいて、パワーの値が平均値より高いピークe11及びピークe12を、体動ピーク部分と判断する。さらに、脈波スペクトルにおいて、ピークe11の周波数に相当するピークd11の周波数成分のパワーから、重合スペクトルのピークe11の周波数成分のパワーを50%にしたものを差し引く。同様に、脈波スペクトルにおいて、ピークe12の周波数に相当するピークd13の周波数成分のパワーから、重合スペクトルのピークe12の周波数成分のパワーを50%にしたものを差し引く。体動成分の減衰によって、脈波のスペクトルは体動成分が減衰された減衰スペクトルとなり、重み付け部72へと入力される。
重み付け部72は、記憶部81から過去に算出された心拍数を読み出して、体動成分減衰部71から入力された減衰スペクトルに対して、重み付けを行なう(ステップS32、重み付けステップ)。本実施形態では、前回の心拍数の検出の際にピーク検出部73によって検出された、ピークc12の位置の最大のピークの周波数を中心点として、12dB/Octのスロープで重み付けを行なう。重み付けによって、中心点の両側の周波数成分が減衰された重み付けスペクトルとなり、ピーク検出部73へと入力される。このときの重み付けスペクトルは、図4に符号F1を付して表される。ピークd11は、体動成分減衰ステップに続いて重み付けを受けることでパワーが減少して、ピークf11となる。同様に、d13は、体動成分減衰ステップに続いて重み付けを受けることでパワーが減少して、f13となる。一方、ピークd12は、ピークf11及びピークf13のパワーが減少していることで、最大のパワーを有するピークf12となる。
ピーク検出部73では、重み付け部72から入力された重み付けスペクトルに対して、最大ピークの検出を行なう(ステップS33、ピーク検出ステップ)。ここでは、図4に示すように、重み付けスペクトルの中で最大のパワーを示す、心拍成分のピークf12を最大ピークとして検出する。検出された最大ピークの周波数は、心拍数算出部74に入力される。
心拍数算出部74では、ピーク検出部73から入力された周波数から心拍数を算出する(ステップS34、心拍数算出ステップ)。このとき、心拍数算出部74は、算出された心拍数を記憶部81に出力して、記憶部81が心拍数を記録する。
さらに、算出された心拍数は表示部82に入力されて、表示部82は心拍数の表示を行なう(ステップS35)。
上述したように、生体信号処理装置1は、ステップS11〜S17、S21〜29、S31〜34の処理を1サイクルとして繰り返して、1秒ごとに心拍数の算出を行う。このとき、前回のサイクルにおいてピーク検出部73によって検出されたピークの周波数を中心として重み付けを行う。
[3.作用]
検体が一定の周期で運動をする場合には、脈波には体動の周期に応じた周波数の体動成分が含まれる。また、検体の運動に対応して、脈波スペクトルには体動の周波数成分のピークが現れる。このとき、検体の心拍数または運動の周期によっては、体動の周波数成分が、脈波スペクトルの心拍成分の近傍に現れることがある。また、体動に由来するピークが、心拍に由来するピークよりも大きいパワーを示すピークとして検出されることがある。
ここで、脈波スペクトルの一例として、図4に示すように、符号D1を付して表される、手の指先で検出された脈波の脈波スペクトルには、体動の1倍の周波数の位置にピークd11が、体動の2倍の周波数の位置にピークd13が現れる。脈波スペクトルに、体動の1倍の周波数の位置のピークと、体動の2倍の周波数の位置のピークとが現れる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。ピークd11は、片方の脚の動きによって、体動の1セット中に生じた変化が身体を伝わり、体動の1倍の周波数で検出されたものと考えられる。一方、ピークd13は、両方の脚の動きによって、体動の1セット中に生じた二歩分の変化が身体を伝わり、体動の2倍の周波数で検出されたものであると考えられる。このとき、体動により生じた変化は、例えば、血管内に生じた圧力変化が血管を伝わることや、生体に含まれる水分の流体的な膨らみまたは振動が影響を及ぼすことによって、脈波に1倍または2倍の周波数で体動成分が検出されたと推測される。このようにして、一定の周期で運動している検体から検出される脈波には、体動の1倍の周波数成分と、体動の2倍の周波数成分とがともに含まれることになる。また、脈波スペクトルでは、体動の1倍の周波数成分のピークと、体動の2倍の周波数成分のピークとが、略同程度のパワーで現れることがある。
これに対して、一定の周期で運動している検体から検出される体動は、次の通りとなる。まず、ランニングの際の胸の位置の動きは、主にランニングによる脚の動きが胸に伝わることで生じる加速度変化として検出される。このとき、胸の位置では、左右の両足の加速度変化が合わさることで、二歩分の加速度変化が検出される。このため、胸の位置で検出される体動の周波数は、脚の動きを1セットとした体動の周波数の2倍となる。これにより、加速度センサ32を胸に装着した場合に検出される体動信号には、体動の2倍の周波数成分が含まれる。また、体動スペクトルには、主に体動の2倍の周波数にピークが現れる。胸以外においても、体幹または体幹周辺の位置で検出される体動信号には同様に、体動の2倍の周波数成分が含まれる。また、体幹の位置において検出される体動の体動スペクトルには同様に、主に体動の2倍の周波数にピークが現れる。なお、体幹とは、頭及び胴体、すなわち、頭部、頚部、肩部、胸部、腹部、腰部をあわせたものをいう。体幹周辺とは、体幹に隣接して左右両足の動きの影響を受ける部位をいい、上腕、及び大腿をいう。
一方、ランニングの際の指の位置の動きは、主に腕振りにより生じる加速度変化として検出される。このとき、腕振りと脚の前後動とは同期したタイミングで動くことから、指の位置で検出される加速度は、片脚の加速度と同様の変化を示すようになる。このため、指の位置で検出される体動の周波数は、脚の動きを1セットとした体動の周波数と略一致する。これにより、加速度センサ32を指に装着した場合に検出される体動信号には、体動の1倍の周波数成分が含まれる。また、体動スペクトルには、主に体動の1倍の周波数にピークが現れる。指以外においても、体肢の位置で検出される体動信号には同様に、体動の1倍の周波数成分が含まれる。なお、体肢とは、手足、すなわち、手、手首、前腕、肘、及び上腕(二の腕)を含む腕、並びに、足、足首、小腿(脛)、膝、大腿(腿)を含む脚をあわせたものをいう。中でも、体幹周辺の位置を除いた、手、手首、前腕、及び肘の位置において検出される体動の体動スペクトルには、主に体動の1倍の周波数にピークが現れる。
上述の通り、加速度の検出を体幹または体幹周辺の位置で行った場合の体動信号には、体動の2倍の周波数成分が含まれる。また、加速度の検出を体幹の位置で行った場合の体動スペクトルには、主に体動の2倍の周波数にピークが現れる。このため、仮に、この体動スペクトルをそのまま参照データとするときには、脈波スペクトルから、体動の2倍の周波数成分を減衰させることができるが、体動の1倍の周波数成分を十分に減衰させることができない場合がある。
一方、加速度の検出を体肢の位置で行った場合の体動信号には、体動の1倍の周波数成分が含まれる。また、加速度の検出を手、手首、前腕、または肘の位置で行った場合の体動スペクトルには、主に体動の1倍の周波数の位置にピークが現れる。このため、仮に、この体動スペクトルをそのまま参照データとするときには、脈波スペクトルから体動の1倍の周波数成分を減衰させることができるが、体動の2倍の周波数成分を十分に減衰させることができない場合がある。
本実施形態に係る生体信号処理装置1は、分周処理によって、体幹または体幹周辺の位置で検出された、体動の2倍の周波数の位置に現れる体動成分のピークを有する体動スペクトルから、体動の1倍の周波数の位置に体動成分のピークを有する分周スペクトルを得る。さらには、この分周スペクトルを利用して減衰処理を行うことで、体動が体幹または体幹周辺の位置で検出された場合であっても、脈波スペクトルから、体動の1倍の周波数の位置に現れる体動成分のピークを抑制することができる。
また、本実施形態に係る生体信号処理装置1は、逓倍処理によって、体肢の位置で検出された、体動の1倍の周波数の位置に現れる体動成分のピークを有する体動スペクトルから、体動の2倍の周波数の位置に体動成分のピークを有する逓倍スペクトルを得る。さらには、この逓倍スペクトルを利用して減衰処理を行うことで、体動が体肢の位置で検出された場合であっても、脈波スペクトルから、体動の2倍の周波数の位置に現れる体動成分のピークを抑制することができる。
したがって、本実施形態に係る生体信号処理装置1は、ある決まった時間で一定周期の繰り返しの運動をしている検体から脈波を検出するとともに、体動を、体幹または体幹周辺の位置で、繰り返し運動の2倍の周波数で検出する場合に好適に利用することができる。または、本実施形態に係る生体信号処理装置1は、ある決まった時間で一定周期の繰り返しの運動をしている検体から脈波を検出するとともに、体動を、体肢の位置で、繰り返し運動の1倍の周波数で検出する場合に好適に利用することができる。このとき、生体信号処理装置1によれば、体動スペクトルを、体動の検出位置に応じて所望の周波数領域のスペクトルに変換することで、脈波スペクトルから体動成分を抑制して、心拍数を検出することが可能となる。
上述した一定周期の繰り返し運動とは、体の動きが単位時間当たりに繰り返される回数(周波数)が一定となるようにして行われる運動をいう。中でも、体幹または体幹周辺の位置で、体の動きの2倍の周波数の体動成分を検出して、体肢の位置で、体の動きの1倍の周波数の体動成分を検出する運動をいう。このような一定周期の繰り返しの運動とは、例えば、ランニング、ウォーキング、またはクロールもしくは背泳等の水泳が挙げられる。この他にも、ステップウォークのように、その場で足踏みや昇降をするような運動にも利用することができる。
また、ある決まった時間とは、窓関数をかけることで切り出されて周波数解析を受ける、所定の時間幅のことをいう。少なくともこの所定の時間幅の間の脈波信号及び体動信号に周波数解析を施した際に、周波数ごとの周波数成分に分解したスペクトルを得ることができる程度に一定周期の繰り返しの運動を行っていればよい。または、この所定の時間幅の間において、一定周期の繰り返しの運動を行っていることが好ましい。
なお、生体信号処理装置1では、脈波の検出位置と体動の検出位置とが同じであっても、脈波の検出位置と体動の検出位置とが異なっていても、上記の通り、体動スペクトルを、体動の検出位置に応じて所望の周波数領域のスペクトルに変換する。このため、脈波スペクトルから体動成分を抑制して、心拍数を検出することができる。
次に、図4及び図5を参照して、生体信号処理装置1による作用を説明する。
図5は、検体がランニングしている場合において、脈波センサ12を手の指先に、生体信号処理装置1を胸ポケットに装着して、脈波を指の位置で、加速度を胸ポケットの位置で測定して、仮に、周波数変換及び重合処理を行なわずに心拍数の検出を試みた場合のグラフである。なお、この場合、体動周波数解析部66により得られた体動スペクトルを用いて、体動成分減衰部71により脈波スペクトルから減衰処理を行なっている。
図5では、図4と同様に、脈波信号の波形に符号A2、ローパスフィルター処理を行なった脈波信号の波形に符号B2、体動信号の波形に符号C2、脈波スペクトルに符号D2、重み付けスペクトルに符号F2を付して表している。また、体動信号に対して周波数解析を行なった体動スペクトルに符号E2を付して表している。この場合、脈波の検出は本実施形態の場合と同様に行っているから、図5では、図4と同様に、脈波スペクトルには、心拍に由来する心拍成分のピークd22と、体動の周波数の1倍と2倍の位置にピークd21,d23とが現れる。
図5に示すように、加速度を胸ポケットの位置で測定した場合には、符号E2を付して表される体動スペクトルには、体動の周波数の2倍の位置に体動成分のピークe22が現れる。また、このとき、体動の周波数の1倍の位置のピークe21はパワーが平均値より低く、体動ピーク部分と判断されない程度のパワーとなっている。
なお、図5に符号E2を付して表される体動スペクトルは、周波数変換と重合処理を行わない場合の体動スペクトルであるから、上記の実施形態における体動周波数解析ステップにより得られるスペクトルに相当する。図5から、生体信号処理装置1を胸ポケットの位置に装着した場合に得られる体動スペクトルは、体動の2倍の周波数の成分が大きく、体動の1倍の周波数の成分の影響が小さいことが分かる。
周波数変換及び重合処理を行なわずに、符号E2を付して表される体動スペクトルを対照データとして脈波スペクトルから体動成分の減衰と重み付けを行なった場合には、符号F2を付して表される重み付けスペクトルが得られる。
このとき、体動成分のピークe22は体動ピーク部分と判断されることにより、脈波スペクトルに含まれる体動成分のピークd23が、ピークe22の周波数に相当する周波数成分として、減衰処理を受ける。さらに、重み付けを受けることによって、ピークd23は、ピークf23にまでパワーが減少する。一方、体動成分のピークe21は体動ピーク部分と判断されないために、脈波スペクトルに含まれる体動成分のピークd21の周波数に相当する周波数の体動ピーク部分が、体動スペクトルに存在しないことになる。このため、ピークd21は減衰処理を受けずに、重み付けだけを受けたことで、パワーがほとんど減少していないピークf21となっている。
また、脈波スペクトルに含まれる心拍成分のピークd22は、重み付けによりパワーが減衰したピークf22となる。これにより、ピークf21は、ピークf22よりもスペクトル強度が大きく、また重み付けスペクトルの中でパワーが最大のピークとなる。したがって、心拍成分のピークf22ではなく、体動成分のピークf21が、最大値を示すピークとして検出されることになる。この結果、体動成分のピークf21から心拍数の算出がなされることで、本来の心拍に基づいた心拍数が算出されないことになる。
以上、図5を参照して説明したように、仮に、周波数変換及び重合処理を行なわずに心拍数の検出を試みた場合には、胸の位置で検出された体動を利用して減衰処理を行っても、脈波に含まれる体動の1倍の周波数成分の影響を抑制することが困難である。
一方、周波数変換及び重合処理を行う本実施形態に係る生体信号処理装置1によれば、図4に示すように、符号E1を付して表される重合スペクトルを対照データとして、体動成分の減衰を行なう。この場合、重合スペクトルには、体動の1倍と2倍の周波数の位置に体動成分のピークe11,e12が含まれ、これらのピークが体動ピーク部分と判断される。したがって、符号D1で示される脈波スペクトルの体動の1倍と2倍の周波数成分のピークd11,d13は、ピークe11,e12を基にして減衰処理を受けるとともに、重み付けを受けることで、重み付けスペクトルではピークf11,f13となってパワーが減少する。これにより、心拍成分のピークf12が最大のピークとなることで、心拍に由来するピークを、最大のピークとして正しく検出することができる。この結果、心拍成分のピークf12から本来の心拍数を検出することが可能となる。
[4.効果]
(1)本実施形態によれば、体動のスペクトルを、該体動が検出された位置に応じて所望所望の周波数領域のスペクトルに変換した変換スペクトルを得て、脈波スペクトルから変換スペクトルの体動ピーク部分の周波数に相当する成分を減衰させる。これにより、運動している検体から脈波を検出する際に、体動の検出位置に応じて、脈波に含まれる体動成分を減衰させることができる。このため、検出された生体信号から、脈波に含まれる体動ノイズの影響を軽減することができる。
(2)本実施形態によれば、体動信号が、体幹または体幹周辺の位置で検出された体動を表す信号であって、体動のスペクトルを2分の1の周波数領域に圧縮したスペクトルに変換した変換スペクトルを得る。これにより、体動信号に体動の2倍の周波数の体動成分が含まれて、体動の1倍の周波数の体動成分のパワーが弱い場合であっても、脈波信号に含まれる体動の1倍の周波数の体動成分のピークを減衰させることができる。
(3)本実施形態によれば、体動信号が、体肢の位置で検出された体動を表す信号であって、体動のスペクトルを2倍の周波数領域に伸張したスペクトルに変換した変換スペクトルを得る。これにより、体動信号に体動の1倍の周波数の体動成分が含まれて、体動の2倍の周波数の体動成分のパワーが弱い場合であっても、脈波信号に含まれる体動の2倍の周波数の体動成分のピークを減衰させることができる。
(4)さらに、本実施形態によれば、変換スペクトルを体動のスペクトルと重ね合わせて重合スペクトルを得て、脈波のスペクトルから体動の重合スペクトルの体動ピーク部分の周波数に相当する成分を減衰させる。これにより、重合スペクトルは、体動スペクトルに含まれる周波数成分と、変換スペクトルに含まれる周波数成分とが合わさることにより、体動の1倍と2倍の周波数の位置にそれぞれ体動成分のピークを有することになる。よって、脈波スペクトルに含まれる、体動の1倍と2倍の周波数の位置に現れる体動成分のピークを減衰させることができる。
(5)また、本実施形態によれば、体動成分を減衰させた脈波スペクトルから、最大のピークを検出する。これにより、心拍に由来するピークを検出して、本来の心拍数を算出することが可能となる。
(6)また、本実施形態によれば、体動成分を減衰させた脈波スペクトルに対して、前回の検出により得られた心拍数に対応する周波数を中心点とした重み付けを行なう。検体が運動をしていても心拍数は急激には変化しないことから、本来検出されるべき心拍数に由来する周波数成分のピークは、前回に検出されたピークと近い位置に現れると予測される。そこで、重み付けにより、前回に検出されたピークの両側の周波数成分を減衰させることで、心拍に由来するピークにロックして、ノイズ成分の影響を抑えることができる。よって、例えば体動によって脈波スペクトルに突発的なピークが表れた場合であっても、この突発的なピークの影響を抑制して、心拍に由来するピークを検出することができる。
[5.その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形、変更してすることが可能である。
[5−1.変形例]
上記の実施形態の変形例として、脈波センサ12を指先に装着して、脈波センサ12が指先から脈波を検出するとともに、情報処理装置21を二の腕の位置に装着して、二の腕の位置で加速度センサ32が体動を検出する場合について、図6、図7を参照して説明する。図6では、上記の実施形態と同様に、体動スペクトルに分周処理及び重合処理を行った場合のグラフを示している。一方、図7では、仮に、分周処理及び重合処理を行なわずに心拍数の検出を試みた場合のグラフを示している。なお、この場合、体動周波数解析部66により得られた体動スペクトルを用いて、体動成分減衰部71により脈波スペクトルから体動成分の減衰を行なっている。
図6では、図4と同様に、脈波信号の波形に符号A3、ローパスフィルター処理を行なった脈波信号の波形に符号B3、体動信号の波形に符号C3、脈波スペクトルに符号D3、重合スペクトルに符号E3、重み付けスペクトルに符号F3を付して表している。
図7では、図5と同様に、脈波信号の波形に符号A4、ローパスフィルター処理を行なった脈波信号の波形に符号B4、体動信号の波形に符号C4、脈波スペクトルに符号D4、重み付けスペクトルに符号F4を付して表している。また、体動信号に対して周波数解析を行なった体動スペクトルに符号E4を付して表している。
脈波の検出は上記の実施形態の場合と同様であるから、図6に示すように、図4と同様に、脈波スペクトルには、心拍に由来する心拍成分のピークd32と、体動の1倍と2倍の周波数の位置にピークd31,d33とが現れる。また、図7も同様に、脈波スペクトルには、心拍に由来する心拍成分のピークd42と、体動の1倍と2倍の周波数の位置にピークd41,d43とが現れる。
一方、図7に示すように、加速度を二の腕の位置で測定した場合には、符号E4を付して表される体動スペクトルに、体動の2倍の周波数の位置に体動成分のピークe42が現れる。また、体動の1倍の周波数の位置にピークe41が現れる。このとき、ピークe41は、例えば加速度を指先の位置で測定した場合よりもパワーが小さくなるものの、図5との対比から分かるように、加速度を胸の位置で測定した場合よりはパワーの大きなピークとして得られる。この例では、ピークe41は、パワーが体動スペクトルの平均値より高く、体動ピーク部分と判断される程度のパワーとなっている。ここで、図7の体動スペクトルは、分周処理と重合処理を行わない場合の体動スペクトルであるから、生体信号処理装置1を二の腕の位置に装着した場合に得られる体動スペクトルは、体動の1倍の周波数の体動成分の影響が、指先の位置の場合よりは小さく、胸の位置の場合よりは大きいことが分かる。
加速度を二の腕の位置で測定して、分周処理及び重合処理を行なわずに心拍数の検出を試みた場合のスペクトルは図7に示される。この場合、符号E4を付して表される体動スペクトルを対照データとして、符号D4を付して表される脈波スペクトルから体動成分の減衰と重み付けを行なうことで、符号F4を付して表される重み付けスペクトルが得られる。このとき、脈波スペクトルに含まれる体動成分のピークd43は、体動成分のピークe42を基にして減衰されるとともに、重み付けを受けることで、重み付けスペクトルではピークf43にまでパワーが減少する。一方、脈波スペクトルに含まれる体動成分のピークd41も、体動成分のピークe41を基にして減衰されるとともに、重み付けを受けることで、重み付けスペクトルではピークf41にまでパワーが減少する。これにより、心拍成分のピークf42が最大のピークとなることで、正しい心拍ピークを検出することができる。
一方、加速度を二の腕の位置で測定して、分周処理及び重合処理を行い、心拍数の検出を行った場合のスペクトルは図6に示される。この場合、符号E3を付して表される体動の重合スペクトルを対照データとして、符号D3を付して表される脈波スペクトルから体動成分の減衰と重み付けを行なうことで、符号F3を付して表される重み付けスペクトルが得られる。この場合、重合スペクトルには、体動の1倍と2倍の周波数の位置に体動成分のピークe31,e32が含まれる。したがって、符号D3で示される脈波スペクトルの体動成分のピークd31,d33は、ピークe31,e32を基にして減衰を受けるとともに、重み付けを受けることで、重み付けスペクトルではピークf31,f33となり、パワーが減少する。これにより、心拍成分のピークf32が最大のピークとなることで、正しい心拍ピークを検出することができる。
上述したように、生体信号処理装置1によれば、脈波センサ12が指先から脈波を検出するとともに、体幹周辺の位置である、二の腕の位置で加速度センサ32が体動を検出する場合についても、正しい心拍ピークを検出することができる。なお、上述の変形例では、分周処理を行わない場合であっても正しい心拍ピークを検出することができたが、これは、体幹周辺の位置では、左右の両足からの影響を受けて主に体動の2倍の周波数にピークが現れるが、腕振りまたは脚振りに起因して体動の1倍の周波数にもピークが現れることによる。
しかしながら、検体の運動状態または体動の検出位置によっては、体動スペクトルにおいて体動の1倍の周波数の位置に現れる、体動の1倍の周波数成分のピークが小さくなる場合がある。中でも体幹の中心に近づくほど、この傾向が強くなる。この場合には、図5を参照して説明した場合と同様に、脈波スペクトルに含まれる体動の1倍の周波数の位置に現れる体動成分のピークが減衰を受けないことになる。すなわち、周波数変換を行わない場合には、体動成分のピークを誤って検出することが起こるケースがある。よって、体幹または体幹周辺の位置で体動を検出する場合には、分周処理を行う必要がある。
[5−2.信号の検出位置について]
上記の実施形態では、脈波を指先の位置で検出して、加速度を胸ポケットの位置で検出した場合について説明した。また、上記の変形例では、脈波を指先の位置で検出して、加速度を二の腕の位置で検出した場合について説明した。脈波センサ12及び加速度センサ32の装着、及び脈波と体動の検出位置はこれに限定されない。例えば、脈波は、指の付け根もしくは関節位置、腕、外耳道、耳珠、耳垂等の外耳、または頭部から検出してもよい。加速度は、指、腕、頭部、肩部、腹部、腰部、脚の位置から検出してもよい。
上記の実施形態や変形例で説明したように、脈波または体動の検出位置によって、検出される信号が変化する。中でも、体動信号に、体動の1倍の周波数の体動成分が含まれるか、または体動の2倍の周波数の体動成分が含まれるか、またはこれらの体動成分のパワーの大きさ及びバランスが変わる。
例えば、上記の実施形態で説明した胸部を含む体幹の位置で体動を検出した場合には、体動信号に、主に体動の2倍の周波数の体動成分が含まれる。このように、体幹の位置で、体動の変化を繰り返し運動の2倍の周波数で検出する場合には、生体信号処理装置1の分周処理によって、脈波に含まれる体動の1倍の周波数の体動成分を抑制することができる。
一方、手首のように、体肢の位置で体動を検出した場合には、腕振りの影響により、体動信号に、主に体動の1倍の周波数の体動成分が含まれる。中でも、指の先の位置で体動を検出した場合には、体動の1倍の周波数の体動成分が中心となる。このように、体肢の位置で、体動の変化を繰り返し運動の1倍の周波数で検出する場合には、生体信号処理装置1の逓倍処理によって、脈波に含まれる体動の2倍の周波数の体動成分を抑制することができる。
また、上述の例で変形説明した、体肢の体幹周辺となる二の腕の位置で体動を検出した場合には、主に体動の2倍の周波数の体動成分が含まれるが、腕振りの影響により、体幹の位置と比べて体動の1倍の周波数の体動成分が大きくなる。すなわち、腕の体幹に近い位置では、体幹の位置と体肢の位置との中間的な影響を受ける。このため、二の腕の位置では、体動の変化を繰り返し運動の2倍の周波数で検出するとの観点からは、生体信号処理装置1の分周処理によって、脈波に含まれる体動の1倍の周波数の体動成分を抑制することができる。これに対して、体動の変化を繰り返し運動の1倍の周波数で検出するとの観点からは、生体信号処理装置1の逓倍処理によって、脈波に含まれる体動の2倍の周波数の体動成分を抑制することができる。
またさらに、脚、中でも体幹周辺となる大腿の位置で体動を検出した場合には、片足の動きが検出されるため、主に体動の1倍の周波数の体動成分が含まれるが、逆側の足からの動きが伝播してくることにより、指の先の位置と比べて体動の2倍の周波数の体動成分が大きくなる。すなわち、脚の体幹に近い位置でも、体幹の位置と体肢の位置との中間的な影響を受ける。このため、大腿の位置では、体動の変化を繰り返し運動の1倍の周波数で検出するとの観点からは、生体信号処理装置1の逓倍処理によって、脈波に含まれる体動の2倍の周波数の体動成分を抑制することができる。これに対して、体動の変化を繰り返し運動の2倍の周波数で検出するとの観点からは、生体信号処理装置1の分周処理によって、脈波に含まれる体動の1倍の周波数の体動成分を抑制することができる。
また、検出位置によっては、脈波に含まれる体動成分の影響の大きさが変化する。例えば、脈波を外耳やこめかみ等の、体幹から検出した場合には、上記の実施形態の指先で検出した場合と比べて、振動源となる脚から近いために脈波スペクトルに現れる体動成分のピークが大きくなる。このため、脈波を体幹から検出した場合には、体動成分減衰部71による体動ピーク部分の周波数に相当する周波数成分に掛ける割合を、指先の場合よりも大きくすることが好ましい。上記の実施形態では、体動スペクトルの周波数成分にかける割合を、0%より大きく100%までの範囲で行う場合について説明したが、脈波を体幹から検出した場合には、例えば、0%より大きく300%までの範囲で行うようにしてもよい。
[5−3.装置の構成について]
上記の実施形態では、情報処理装置21としてスマートフォンを例示したが、情報処理装置21はこれに限るものではない。例えば、タブレット型の端末(タブレットPC)、デスクトップパソコン、ノートパソコン等、またはその他の測定機器、表示機器にも適用できる。
また、上記の実施形態では、表示部82及び操作部83としてタッチパネルディスプレイ82を例示して説明したが、情報処理装置21に接続される液晶ディスプレイ、CRT等を表示部82として利用してもよく、または、測定結果もしくは信号処理の結果をプリンタ、オシロスコープ、又はペンレコーダ等の波形表示器に出力して波形の表示を行ってもよい。また、情報処理装置21に設けられた物理キー(ハードウェアキー)により操作部83を構成してもよく、情報処理装置21に接続されるキーボードもしくはマウス等を操作部83として利用してもよい。
また、上記の実施形態では、加速度センサ32のXYZの3軸の加速度を利用する場合について説明したが、これに限定されない。情報処理装置21と検体との装着関係及び位置関係によらずに体動を検出するためには、鉛直方向,水平前後方向及び水平左右方向の、直交する三方向へ作用する加速度を検出するために、3軸の加速度センサを用いるのが好ましいが、測定対象や目的に合わせて1軸、2軸、3軸のもののいずれかを任意に用いてよい。また、3軸の加速度を検出して、このうち1軸または2軸の加速度のみを信号処理に使用するようにしてもよい。中でも、体動による変化が大きな信号として検出されることから、検体の地面に対する鉛直方向、すなわち重力方向の変化の加速度を利用することが好ましい。または、信号強度の強い順に、1軸または2軸の加速度を信号処理に使用するようにしてもよい。
また、上記の実施形態では、体動信号取得手段31として、体動検出部32が加速度センサ32である場合について説明したが、体動信号取得手段31はこれに限定されない。例えば、体動検出部32として、角速度を検出するジャイロセンサ、磁場または生体の磁気を検出する磁気センサ、気圧を検出する圧力センサ、近接センサ、回転ベクトルセンサ、または光センサを用いることができる。
このとき、加速度センサ32であれば、体の動きによる情報処理装置21の加速度の変化を体動として得るものであったが、加速度センサ32以外の場合は、検出される信号を適宜変換して、体動として得るようにしてもよい。例えば、ジャイロセンサであれば、ジャイロからの周波数成分を体動として利用できる。磁気センサであれば、地磁気の変化または生体の磁気をセンスして、体動として利用できる。圧力センサであれば、体の動きによる振動時に、気圧変化として振動成分を取得して、これを体動として利用できる。近接センサであれば、対象物との近接や、距離または回転にのる体動を利用できる。回転ベクトルセンサであれば、回転に出てくる振動を体動として利用できる。光センサであれば、反射光または透過光を利用して、生体表面または生体内の振動を体動として利用できる。
[5−4.信号処理について]
上記の実施形態では、信号処理部41における処理機能がプログラムとして構成されたものを例示したが、この機能の実現手段はプログラムに限定されない。例えば、信号処理部41を、ROM,RAM,CPU等を内蔵したワンチップマイコンとして構成してもよいし、あるいは、デジタル回路やアナログ回路といった電子回路として形成してもよい。
上記の実施形態では、本件の生体信号処理プログラムが、各ステップを実行する個々のプログラムにより構成されている場合について説明したが、本件のプログラムは、個々のプログラムが組み合わされた一つのプログラムとして構成されていてもよい。または、個々のプログラムが組み合わされて複合したプログラムとなり、さらにこの複合したプログラムが一つのプログラムとして構成されていてもよい。
上記の実施形態では、脈波信号取得部11が、脈波検出部12と脈波信号変換部13により、検体から脈波を検出してデジタルデータに変換された脈波信号を取得する場合について説明した。また、体動信号取得部31が、体動検出部32と体動信号変換部33により、検体から加速度を検出してデジタルデータに変換された体動信号を取得する場合について説明した。脈波信号及び体動信号は、メモリ81または外部メモリ84に保存された脈波信号または体動信号のデータを読み出すことで取得してもよい。
上記の実施形態では、直流成分除去部51,63における直流成分の除去、高周波成分除去部53,64における高周波のノイズ成分の低減、高調波減衰部56における高調波成分のキャンセル処理について説明した。これらの処理は、各成分を完全に除くことを要するものではなく、心拍数に由来するピークを検出できる程度に各成分を低減するものであればよい。
上記の実施形態では、積分処理部52が、脈波信号に対して、速度脈波となるように積分処理を行う場合について説明した。脈波信号に対する処理は積分処理に限定されず、取得された脈波信号に応じて、微分処理を行うようにしてもよい。例えば、脈波センサ12として、光電式の測定器を使用した場合には、脈波信号は容積脈波として取得される。この場合には、脈波信号に対して微分処理を行うことで、速度脈波を得るようにしてもよい。
上記の実施形態の動作の説明では、脈波センサ12として、マイクロホンと振動源とを閉じた状態にして脈波を検出する測定器を利用して、脈波信号を速度脈波として取得して、積分処理及び微分処理を行っていない場合について説明した。これは、いわゆるクローズドキャビティを形成して脈波を検出する場合に相当する。これに対して、脈波センサ12として、例えば、イヤホン(ヘッドホン)を利用して、マイクロホンと振動源とをほぼ閉じた状態にして脈波を検出する場合には、脈波信号が加速度脈波として取得される。この場合には、積分処理部52が、脈波信号に対して1回の積分処理を行えばよい。
上記の実施形態では、窓関数処理部54,65が、16.384秒分に相当する16384サンプルのデータを切り出して、1024サンプル単位で約1秒間隔で処理を行う場合について説明した。情報処理装置21による処理はこれに限定されず、窓関数処理部54,65が切り出すサンプルの幅を大きくして、より長い時間のサンプルデータを基に周波数解析を行うようにしてもよい。または、窓関数処理部54,65が切り出すサンプルの幅を小さくして、より短い時間のサンプルデータを基に周波数解析を行うようにしてもよい。また、窓関数処理部54,65が切り出しを行う時間の間隔を長くまたは短く変更してもよい。
上記の実施形態では、体動成分減衰部71による減衰処理について、体動ピーク部分の周波数に相当する脈波のスペクトルの周波数成分から、重合スペクトルの体動ピーク部分の周波数成分を差し引くことにより行う場合について説明した。体動成分減衰部71による減衰処理はこれに限定されず、例えば、脈波のスペクトルにおいて、体動ピーク部分の周波数に相当する脈波のスペクトルの周波数成分を、所定の割合だけ減衰させることで行なってもよい。
上記の実施形態では、心拍数算出部74が、ピーク検出部73で検出された最大のピークの周波数から心拍数を算出する場合について説明した。心拍数算出部74は、直近及び過去に算出された複数の心拍数の算出値の移動平均をとり、この移動平均値を心拍数として出力するようにしてもよい。これにより、過去の心拍数を含めた時系列の値が平滑化されて、より安定した心拍数を得ることが可能となる。このとき、脈波信号にノイズ成分が含まれて、心拍成分以外のピークを最大のピークとして一時的に検出して、突発的に心拍数が変動した場合であっても、安定した心拍数を出力することができる。
上記の実施形態では、信号処理部41における一連の処理について説明したが、順番を入れ替え、あるいは一部を省略してもよい。例えば、高周波成分除去部53,64によるローパスフィルター処理を省いてもよい。また、高調波減衰部56による高調波成分のキャンセル処理を省いてもよい。また、重合処理部68による重合処理を省いてもよい。また、重み付け部72による重み付けを省いてもよい。
重合処理部68による重合処理を省く場合には、体動成分減衰部71は、周波数変換部67で得られる変換スペクトルを対照データとして、脈波のスペクトルから体動成分を減衰させればよい。
体動信号が体幹または体幹周辺の位置で検出された体動を表す信号である場合には、重合処理部68による処理を省いても、脈波スペクトルに現れる体動の2倍の周波数の周波数成分のピークが小さい場合には、心拍に由来するピークを検出することができる。またこの場合には、重合処理部68による重合処理を省いても、重み付け部72による重み付けを行なうことにより、脈波スペクトルに現れる体動の2倍の周波数の体動成分の影響を抑制することで、心拍に由来するピークを検出することができる。
または、体動信号が体肢の位置で検出された体動を表す信号である場合には、重合処理部68による処理を省いても、脈波スペクトルに現れる体動の1倍の周波数の周波数成分のピークが小さい場合には、心拍に由来するピークを検出することができる。またこの場合には、重合処理部68による重合処理を省いても、重み付け部72による重み付けを行なうことにより、脈波スペクトルに現れる体動の1倍の周波数の体動成分の影響を抑制することで、心拍に由来するピークを検出することができる。
重み付け部72による重み付けを省く場合には、体動成分減衰部71で得られる減衰スペクトルから最大のピークを検出すればよい。重み付け部72による処理を省いても、脈波スペクトルに現れる体動の1倍または2倍の周波数の周波数成分のピークが小さい場合には、心拍に由来するピークを検出することができる。または、重み付け部72による処理を省いても、体動成分減衰部71による減衰処理を行うことにより、脈波スペクトルに現れる体動の1倍または2倍の周波数の周波数成分の影響を抑制することで、心拍に由来するピークを検出することができる。
[5−5.生体信号の処理について]
上記の実施形態では、生体信号処理装置1は脈波信号及び体動信号を処理して、ピーク検出部73が、パワーが最大のピークを検出して、心拍数算出部74が、最大のピークの周波数から心拍数を算出する場合について説明した。生体信号処理装置1による生体信号の処理はこれに限られず、例えば、体動成分減衰部71で得られた減衰スペクトル、または重み付け部72で得られた脈波のスペクトルに対して、逆FFT解析を行って脈波形を得て、この脈波形を表示するようにしてもよい。これにより、体動ノイズの影響を軽減した脈波の波形の評価を行うことができる。
[5−6.脈波信号及び体動信号の直接処理について]
上記の実施形態では、脈波信号及び体動信号を周波数解析して、脈波スペクトル及び体動スペクトルを得て、これらのスペクトルを用いて信号処理を行う場合について説明した。脈波信号から体動信号の減衰は、脈波センサ12及び加速度センサ32の装着位置を同じにして、センサ間のマッチングを行うことでセンサ製造時の性能のばらつきを調整することで、脈波信号及び体動信号の段階で直接減衰させることができる。このとき、周波数解析を行わずに、波形の段階で直接減算することが可能となる。