JP6484505B2 - 凹凸パターンを転写するための転写ロール、及びその転写ロールを有するフィルム部材の製造装置 - Google Patents

凹凸パターンを転写するための転写ロール、及びその転写ロールを有するフィルム部材の製造装置

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本発明は、インプリント法により凹凸パターンを転写するための転写ロール、及び凹凸パターンを有するフィルム部材の製造装置に関する。
半導体集積回路のような微細な凹凸パターンを形成する方法として、リソグラフィ法以外に、ナノインプリント法が知られている。ナノインプリント法は、樹脂をモールド(型)と基板で挟み込むことで、モールドから基板上にナノメートルオーダーのパターンを転写することができる技術であり、使用材料によって、熱ナノインプリント法、光ナノインプリント法などが検討されている。このうち、光ナノインプリント法は、i)硬化性樹脂層の塗布、ii)硬化性樹脂層へのモールドの押圧、iii)硬化性樹脂層の光硬化及びiv)硬化性樹脂層からのモールドの剥離の四工程からなり、このような単純なプロセスでナノサイズの加工を実現できる点で優れている。特に、光照射により硬化する光硬化性樹脂を用いるためパターン転写工程にかかる時間が短く、高スループットが期待できる。このため、半導体デバイスのみならず、有機EL素子やLEDなどの光学部材、MEMS、バイオチップなど多くの分野で実用化が期待されている。
本出願人は、特許文献1において、フィルム状モールドのように可撓性のあるモールドを用いて、基板に凹凸パターンを転写し、有機EL素子用の回折格子基板の凹凸パターンを製造する方法を開示している。また、本出願人は、特許文献1において、ロール状の金属モールドの凹凸パターンを、フィルム基材上に塗布した硬化性樹脂に転写することで、フィルム状モールドをロールプロセスにて製造することができることを開示している。ロール状の金属モールドを形成する方法としては、例えば特許文献2及び特許文献3において板状の金属モールド又はフィルム状モールドをロール型の母材に取り付けることが記載されている。
WO2013/065384 特開2003−25431号公報 特開2014−091251号公報
インプリント用のモールドは一般的に、凹凸パターンが形成された領域(パターン領域)がその周囲の凹凸パターンが形成されていない領域に対して凸に(高く)なっている。このようなモールドをロール型の母材に取り付けて得られた転写ロールを用いてロールプロセスにて凹凸パターンの転写を行う場合、被転写材料を転写ロールに押し付けたときに、パターン領域の外周の段差において被転写材料と転写ロールの間に空気が入り込みやすい。ロール型の母材に直接凹凸パターンを形成することにより得た転写ロールにおいても、凹凸パターンの形成されたパターン領域が周囲の領域に対して凸になっていることが一般的であるため、被転写材料を転写ロールに押し付けたときに、パターン領域の外周の段差において被転写材料と転写ロールの間に空気が入り込みやすい。被転写材料と転写ロールの間に空気が入り込むと、その空気に含まれる酸素により被転写材料の硬化が阻害されるため、未硬化の被転写材料が転写ロールの表面に残留することがある。ロールプロセスでは、転写ロールに対して連続的に被転写材料を供給して凹凸パターンの転写を行うため、転写ロールの表面に残留した被転写材料が蓄積し、転写不良を引き起こす可能性がある。
そこで、本発明の目的は、被転写材料と転写ロールの間の空気のかみ込みに起因する転写不良を防止することができる、凹凸パターンを転写するための転写ロール、及び凹凸パターンを有するフィルム部材の製造装置を提供することにある。
本発明の第1の態様に従えば、凹凸パターンを転写するための転写ロールであって、
転写ロールの外周面上に形成された、前記凹凸パターンを有する第1領域と、
前記第1領域の外側の第2領域とを備え、
前記凹凸パターンの凹部の表面の高さが前記第2領域の表面の高さより高く、
前記第1領域と前記第2領域を連結する領域が傾斜しており、
前記傾斜した領域が前記第2領域から前記第1領域に向かって凹状円弧状に立ち上がっている転写ロールが提供される。
前記転写ロールは温度調節機構を有してよい。
本発明の第2の態様に従えば、凹凸パターンを有するフィルム部材の製造装置であって、
フィルム基材上に凹凸形成材料の膜を形成する膜形成部と、
第1の態様の転写ロールを備え、前記凹凸パターンを前記膜に転写する転写部と、
前記膜形成部から前記転写部に向かって前記フィルム基材を連続的に搬送する搬送部とを備えるフィルム部材の製造装置が提供される。
前記フィルム部材の製造装置において、前記転写部がさらに、前記フィルム基材を前記転写ロールに付勢する押圧ロールを備えてよい。
前記フィルム部材の製造装置において、前記転写部がさらに、前記転写ロールから前記フィルム基材を剥離する剥離ロールを備えてよい。
前記フィルム部材の製造装置において、前記転写部がさらに、前記凹凸パターンが転写された前記膜を硬化する硬化装置を備えてよい。
前記フィルム部材の製造装置において、前記搬送部が、前記フィルム基材を繰り出すフィルム繰り出しロールと、前記フィルム基材を巻き取るフィルム巻き取りロールを備えてよい。
本発明の転写ロールは、外周面において、凹凸パターンが形成された第1領域とパターン領域の外側の第2領域との間に、第1領域が第2領域に対して凸になるように設けられた傾斜領域が形成されている。傾斜領域は第2領域から第1領域に向かって凹状円弧状に立ち上がるように傾斜しており、傾斜領域と第2領域はならだかに連結しているため、転写ロールに凹凸形成材料(被転写材料)を押し付けたときに凹凸形成材料と傾斜領域が隙間なく密着する。それゆえ、転写ロールと凹凸形成材料の間に空気が混入しないため、転写不良を防止することができる。したがって、本発明の転写ロール及びそれを用いたフィルム部材の製造装置により、凹凸パターンを有するフィルム部材を歩留り良く製造することができる。本発明の製造装置により製造される凹凸パターンを有するフィルム部材は、有機ELなどの各種デバイスに用いられる基板の製造にきわめて有効である。
図1(a)は実施形態の転写ロールの概略斜視図であり、図1(b)は転写ロールの概略断面図の例であり、図1(c)は転写ロールの概略断面図の別の例である。 図2(a)、(b)は実施形態の転写ロールのパターン形成領域及び傾斜領域の概略断面図である。 図3(a)〜(e)は、凹凸パターンを有する薄板状モールドを製造する方法の例の各工程を概念的に示す図である。 図4(a)〜(f)は、凹凸パターンを有する薄板状モールドを製造する方法の別の例の各工程を概念的に示す図である。 図5(a)〜(c)は、凹凸パターンを有する薄板状モールドを製造する方法のさらに別の例の各工程を概念的に示す図である。 図6(a)は転写ロールの凹凸パターンをフィルム基材に転写する様子を概念的に示した断面図であり、図6(b)は、図6(a)の押圧ロール付近を拡大した概略断面図であり、転写ロールの傾斜領域が押圧ロールに対向しているときの様子を示し、図6(c)は、転写ロールのパターン領域が押圧ロールに対向している時点において転写ロールの軸に平行な面で転写ロール及び押圧ロールを切断した概略断面図を示し、図6(d)は、図6(a)の剥離ロール付近を拡大した概略断面図であり、転写ロールの傾斜領域が剥離ロールに対向しているときの様子を示す。 図7は、凹凸パターンを有するフィルム部材の製造装置の実施形態を概念的に示す図である。 図8は、凹凸パターンを有するフィルム部材の製造装置の実施形態における検出装置及び制御部の一例を示す概念図である。 図9は、帯状のフィルム部材の凹凸パターンを基板に転写する様子の一例を概念的に示す図である。
以下、本発明の凹凸パターンを転写するための転写ロール、その転写ロールを用いたフィルム部材の製造装置、及びその製造装置を用いたフィルム部材の製造方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。
[転写ロール]
実施形態の転写ロール90の概略斜視図を図1(a)に示し、転写ロール90の軸に垂直な面で切断した転写ロール90の概略断面図を図1(b)に示す。転写ロール90は、外周面に凹凸パターン90pを有するロール状(円柱状、円筒状)のモールドである。凹凸パターン90pは、転写ロール90の外周面の第1領域(パターン領域)90uに形成されている。パターン領域90uの外側の第2領域90sには凹凸パターンが形成されていない。ここで、凹凸パターン90pを有する第1領域90uを形成する都合上、凹凸パターン90pの凹部の表面は第2領域90sよりも高くなっている。パターン領域90uの外縁と第2領域90sの外縁は、傾斜した領域(傾斜領域)90tによって連結されている。すなわち、パターン領域90uの外周は、パターン領域90uから第2領域90sに向かって傾斜している傾斜領域90tによって囲まれており、それによって、パターン領域90uは第2領域90sよりも転写ロール90の半径方向に向かって突出している。傾斜領域90tは第2領域90sから第1領域に向かって凹状円弧状に立ち上がっており、傾斜領域90tと第2領域90sはならだかに連結している。このため第1領域90uの外縁と第2領域90sの外縁が急な段差を形成することがない。
図2(a)に示すように、傾斜領域90tの傾斜面98は、全体が凹状円弧状に傾斜した面98aであってよい。あるいは、図2(b)に示すように、傾斜領域90tの傾斜面98は、第2領域90sから立ち上がる部分のみが凹状円弧状に傾斜した面98aであり、それ以外の部分が直線状に傾斜した面98bであってもよい。直線状に傾斜した面98bに代えて、稜線、角部、頂点、溝等が形成されていない任意の曲面としてもよい。すなわち、本願において「傾斜した領域(傾斜領域)」とは、全体が直線的に傾斜した領域を意味するものではない。
第2領域90sの表面からパターン領域90uの凹凸パターン90の凸部の表面までの高さH1(図2(a)参照)は、1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。H1が100μmを超える場合、被転写材料の膜厚分布が悪化、または、被転写材料を押し付ける際に空気が混入し欠陥となる場合がある。また、被転写材料の硬化が酸素阻害を受ける場合は空気混入部分が未硬化となり、連続製造の安定性に影響を及ぼすことになる。一方、H1が1μm未満となるような転写ロールは製造が難しい。また、第2領域90sの表面からパターン領域90uの凹凸パターン90の凹部の表面までの高さH2(図2(a)参照)は、通常5μm〜100μmの範囲内である。
図1(a)、(b)に示した転写ロール90は、2つのパターン領域90uを有するが、転写ロールは1つのパターン領域を有してもよいし、複数のパターン領域を有してもよい。転写ロールが複数のパターン領域を有する場合、図1(b)に示すようにパターン領域90uが転写ロール90の円周方向に並んで配置されていてもよいし、転写ロールの軸方向に並んで配置されていてもよいし、転写ロールの外周面上にランダムに配置されていてもよい。
転写ロール90は、さらに、温度調節を行うための機構を有してもよい。例えば、転写ロール90内に管を設け、この管に温水、冷却水等の流体を通すことにより、加熱又は冷却を行うことができる。転写ロール90が加熱機構を有する場合、後述するように転写ロール90の凹凸パターン90pをフィルム基材上に形成した凹凸形成材料の膜に転写するときに、凹凸形成材料膜を加熱して凹凸形成材料膜の硬化を促進することができる。また転写ロール90が冷却機構を有する場合は、凹凸形成材料膜が硬化する時に発生した熱を吸収することができる。
転写ロール90は、駆動軸90dを有し、モータ等の駆動装置により軸を中心として回転駆動することができる。転写ロール90の寸法は製造するフィルム部材の寸法等に応じて適宜設定することができ、例えば、直径を50〜1000mm、軸方向の長さを50〜3000mmにし得る。
パターン領域90uの形状及び寸法は、製造するフィルム部材において凹凸パターンを形成する領域の形状(外形)及び寸法等に応じて適宜設計することができる。例えば、パターン領域90uは、円形、略円形、多角形、矩形等の任意の形状を有してよい。
転写ロール90は、図1(b)に示すように、円柱状の基体ロール90aの外周面に突出したパターン領域90uが直接(一体)形成され、そのパターン領域90u上に凹凸パターン90pが形成されていてよい。あるいは、図1(c)に示す転写ロール90Aのように、薄板状モールド90bが円柱状の基体ロール90aの外周面に巻回して貼りつけられており、該薄板状モールド90bが、凹凸パターン90pが形成されたパターン領域90u及びパターン領域90uを取り囲むように形成された傾斜領域90tを有していてもよい。この場合、転写ロール90Aの第2領域90sは、薄板状モールド90bのパターン領域90u及び傾斜領域90t以外の領域90v、並びに、基体ロール90aの薄板状モールド90bに覆われていない領域90wから構成される。薄板状モールド90bは両面テープ等を用いて基体ロール90aの外周面に貼りつけられてよい。この場合、パターン領域90uの凹凸パターン90pの凹部の表面は、薄板状モールド90bのパターン領域90u及び傾斜領域90t以外の領域90vの表面よりも高さが高い。
基体ロール90aの材料としては例えば鉄、銅、チタン、ステンレス、アルミ等を用いることができる。また、基体ロール90aは、一例として直径を50〜1000mm、軸方向の長さを50〜3000mmにし得る。
薄板状モールド90bとしては、例えば、後述する方法で製造される金属製または樹脂製のモールドを用いることができる。薄板状モールド90bは、円形、略円形、多角形、矩形等の任意の形状及び寸法を有してよい。
パターン領域90uには、必要に応じて離型処理が施されていてよい。パターン領域90uの凹凸パターン90pは、製造するフィルム部材の用途により、マイクロレンズアレイ構造や光拡散や回折等の機能を有する構造など、任意のパターンにし得る。例えば、凹凸のピッチが均一ではなく、凹凸の向きに指向性がないような不規則な凹凸パターンにしてよい。例えば、フィルム部材を可視光の回折や散乱の用途に用いる光学基板の製造に用いる場合には、凹凸の平均ピッチとしては、100〜1500nmの範囲にすることができ、200〜1200nmの範囲であることがより好ましい。同様な用途においては、凹凸の深さ分布の平均値(平均高さ)は、20〜200nmの範囲であることが好ましく、30〜150nmの範囲であることがより好ましい。凹凸深さの標準偏差は、10〜100nmの範囲であることが好ましく、15〜75nmの範囲であることがより好ましい。また、凹凸パターン90pが光の屈折を利用して立体表示を認識させるためのレンズアレイ構造を有する場合、凹凸の深さ分布の平均値(平均高さ)は、0.01〜100μmの範囲であることが好ましく、0.1〜10μmの範囲であることがより好ましい。凹凸の平均ピッチとしては、1〜1000μmの範囲であることが好ましく、10〜500μmの範囲であることがより好ましい。
このような凹凸パターンから散乱及び/または回折される光は、単一のまたは狭い帯域の波長の光ではなく、比較的広域の波長帯を有し、散乱光及び/または回折される光は指向性がなく、あらゆる方向に向かう。但し、「不規則な凹凸パターン」には、表面の凹凸の形状を解析して得られる凹凸解析画像に2次元高速フーリエ変換処理を施して得られるフーリエ変換像が円もしくは円環状の模様を示すような、すなわち、上記凹凸の向きの指向性はないものの凹凸のピッチの分布は有するような疑似周期構造を含む。このような疑似周期構造を有する部材は、その凹凸ピッチの分布が可視光線を回折する限り、LED、有機EL素子のような発光素子などに使用される部材や太陽電池の透明導電性基板などに用いられる部材、又はそれらの製造に用いられる部材として好適である。
凹凸パターン90pを有する薄板状モールド90bを製造する方法を図3(a)〜(e)、図4(a)〜(f)及び図5(a)〜(c)を参照しながら説明する。
最初に薄板状モールドの凹凸パターンを形成するための母型パターンの作製を行う。母型の凹凸パターンは、例えば、本出願人らによるWO2012/096368号に記載されたブロック共重合体の加熱による自己組織化(ミクロ相分離)を利用する方法(以下、適宜「BCP(Block Copolymer)熱アニール法」という)や、WO2013/161454号に記載されたブロック共重合体の溶媒雰囲気下における自己組織化を利用する方法(以下、適宜「BCP溶媒アニール法」という)、又は、WO2011/007878A1に開示されたポリマー膜上の蒸着膜を加熱・冷却することによりポリマー表面の皺による凹凸を形成する方法(以下、適宜「BKL(Buckling)法」という)を用いて形成することが好適である。BCP熱アニール法、BCP溶媒アニール法及びBKL法に代えて、フォトリソグラフィ法で形成してもよい。そのほか、例えば、切削加工法、電子線直接描画法、粒子線ビーム加工法及び操作プローブ加工法等の微細加工法、並びに微粒子の自己組織化を使用した微細加工法によっても、母型の凹凸パターンを作製することができる。BCP熱アニール法及びBCP溶媒アニール法でパターンを形成する場合、パターンを形成する材料は任意の材料を使用することができるが、ポリスチレンのようなスチレン系ポリマー、ポリメチルメタクリレートのようなポリアルキルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリビニルピリジン、及びポリ乳酸からなる群から選択される2種の組合せからなるブロック共重合体が好適である。また、溶媒アニール処理により得られた凹凸パターンに対して、エキシマUV光などの紫外線に代表されるエネルギー線を照射することによるエッチングや、RIE(反応性イオンエッチング)、ICPエッチング等のようなドライエッチング法によるエッチングを行ってもよい。またそのようなエッチングを行った凹凸パターンに対して、加熱処理を施してもよい。
パターンの母型をBCP熱アニール法、BCP溶媒アニール法又はBKL法等により形成した後、図3(a)に示すように、電鋳法などにより母型20の凹凸パターン90p上に第1金属層91を形成する。最初に、電鋳処理のための導電層となるシード層を、無電解めっき、スパッタまたは蒸着等によりパターンを有する母型上に形成することができる。シード層は、後続の電鋳工程における電流密度を均一にして後続の電鋳工程により堆積される金属層の厚みを一定にするために10nm以上が好ましい。シード層の材料として、例えば、ニッケル、銅、金、銀、白金、チタン、コバルト、錫、亜鉛、クロム、金・コバルト合金、金・ニッケル合金、ホウ素・ニッケル合金、はんだ、銅・ニッケル・クロム合金、錫ニッケル合金、ニッケル・パラジウム合金、ニッケル・コバルト・リン合金、またはそれらの合金などを用いることができる。次に、シード層上に電鋳(電界めっき)により金属層を堆積させる。電鋳により堆積させる金属層の材料として、シード層として用いることができる上記金属種のいずれかを用いることができる。形成した第1金属層91の厚みは、例えば、シード層の厚みを含めて全体で10〜3000μmの厚さにすることができる。第1金属層91は、後続のモールドの形成のための鍛造加工及び洗浄などの処理の容易性からすれば、適度な硬度及び厚みを有することが望ましい。
上記のようにして得られたシード層を含む第1金属層91を、図3(b)に示すように凹凸パターン90pを有する母型20から剥離して金属基板92を得る。剥離は物理的に行っても構わないし、母型20において凹凸パターン90pを形成している材料を、それらを溶解する有機溶媒、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムなどを用いて溶解して除去してもよい。金属基板92を母型20から剥離するときに、残留している材料成分を洗浄にて除去することができる。洗浄方法としては、界面活性剤などを用いた湿式洗浄や紫外線やプラズマを使用した乾式洗浄を用いることができる。また、例えば、粘着剤や接着剤を用いて残留している材料成分を付着除去するなどしてもよい。こうして、母型20から凹凸パターン90pが転写された金属基板(金属モールド)92が得られる。
次に、図3(c)に示すように、この金属モールド92に鍛造等の加工を施すことで、凹凸パターン90pの形成面側を凸にする。さらに、図3(d)に示すように、金属モールド92の微細パターン90pを有する側の面を保護樹脂層27で被覆し、これと反対側の面に電鋳法等により第2金属層93を堆積する。そして、第2金属層93が堆積された側の面が平坦になるように研磨処理を施す。その後、保護樹脂層27を除去する。それにより、図3(e)に示すように、凹凸パターン90pが形成されたパターン領域(第1領域)90u及び傾斜領域90tを有する薄板状モールド90bが得られる。薄板状モールド90bにおいて、パターン領域90uは周囲に対して凸になっている。
以上のような薄板状モールド90bの製造方法においては、母型20の凹凸パターン90pが転写された金属基板92から薄板状モールド90bを製造しているが、以下に図4(a)〜(f)を参照して説明するように、一旦、母型20の凹凸パターン90pが転写された金属基板92を形成し、該金属基板92から更に微細パターン90pを転写する工程が含まれていてもよい。
図4(a)に示すように、母型から転写された凹凸パターン90pを有する金属基板92が準備される。この金属基板92は、図3(b)に示す電鋳法等により形成した金属基板92と同様のものである。次に、図4(b)に示すように、凹凸パターン90pの形成面側が凹となるように、金属基板92に鍛造等の加工を施す。そして、図4(c)に示すように、凹となった金属基板92の凹凸パターン90pの形成面に、保護レジスト28を設ける。また、この形成面の反対側の面には電鋳法等により第3金属層94を堆積し、その後に、第3金属層94が堆積された側の面が平坦になるように研磨処理する。次に、図4(d)に示すように、金属基板92から保護レジスト28を除去することで、金属基板92及び第3金属層94からなるレプリカ95が得られる。レプリカ95の凹部には凹凸パターン90pが形成されている。なお、レプリカ95の凹部に離型処理を行ってもよい。そして、図4(e)に示すように、レプリカ95の凹部に硬化性樹脂96を充填し、この硬化性樹脂96上にフラットプレート26を配置する。次いで、この硬化性樹脂96を硬化させた後、図4(f)に示すようにフラットプレート26及びレプリカ95を硬化性樹脂96から除去する。それにより、図4(f)に示すように、凹凸パターン90pが形成されたパターン領域(第1領域)90u及び傾斜領域90tを有する薄板状モールド90bが得られる。薄板状モールド90bにおいて、パターン領域90uは周囲に対して凸になっている。
なお、硬化性樹脂96としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。熱可塑性樹脂からなる薄板状モールド90bは、そのガラス転移温度を下回る温度の範囲で好適に使用することができる。
また、薄板状モールド90bは以下のような方法によっても製造することができる。図5(a)に示すように金属等からなる板材97を用意し、次いで、図5(b)に示すように板材97の表面に切削加工法等により傾斜面98を形成する。それにより板材97の表面に上に傾斜領域90tと、傾斜領域90tに囲まれ且つ周囲に対して凸になった第1領域90uが形成される。さらに、図5(c)に示すように第1領域90u上に切削加工法、電子線直接描画法、粒子線ビーム加工法及び操作プローブ加工法等の微細加工法、並びに微粒子の自己組織化を使用した微細加工法等により凹凸パターン90pを形成する。それにより薄板状モールド90bが得られる。
板材97の代わりに基体ロール90aを用い、上記の板材97を用いた方法と同様にして基体ロール90aの外周面に傾斜面98及び凹凸パターン90pを形成してもよい。それにより図1(a)、(b)に示すような転写ロール90を形成することができる。
転写ロール90の凹凸パターン90pをフィルム基材80に転写する方法を図6(a)〜(d)を参照しながら説明する。図6(a)は、転写ロール90及びフィルム基材80等を転写ロール90の軸に垂直な面で切断した概略断面図である。転写ロール90の凹凸パターン90pをフィルム基材80に転写するためには、図6(a)に示すように、押圧ロール74及び剥離ロール76を用いることが好ましい。
押圧ロール74及び剥離ロール76の外周面は、ゴム等の柔軟性(弾性)のある材料から構成される。例えば、ポリオルガノシロキサン、架橋型ポリオルガノシロキサン、ポリオルガノシロキサン/ポリカーボネート共重合体、ポリオルガノシロキサン/ポリフェニレン共重合体、ポリオルガノシロキサン/ポリスチレン共重合体、ポリトリメチルシリルプロピン、ポリ4メチルペンテンなどのシリコーンゴム、またはシリコーンゴムと他の材料との混合物もしくは共重合体を用いることができる。
押圧ロールの半径をR1とし、転写ロール90の傾斜領域90tの凹状円弧面の曲率半径R2とすると、R1が5mm以上であり、且つ、0.5≦R1/R2≦50であることが好ましい。押圧ロール74の半径が5mm未満であると、凹凸パターン90pをフィルム基材80に転写する間に押圧ロール74が折れたり撓んだりする可能性があり、転写不良の原因となり得る。R1/R2が0.5より小さい場合、傾斜領域90tの凹状円弧面の形成が困難である。R1/R2が50を超える場合、後述するように、フィルム基材80上の凹凸形成材料の膜84と転写ロール90の間に空気が混入しやすくなる傾向があり、転写不良の原因となり得る。
図6(a)に示すように、凹凸形成材料の膜84が形成されたフィルム基材80を図6(a)中の矢印で示した方向に搬送し、フィルム基材80を押圧ロール74と転写ロール90の間に挟み込む。押圧ロール74は、フィルム基材80の裏面(凹凸形成材料の膜84が形成された面の反対側の面)からフィルム基材80を転写ロール90に向かって付勢する。それによりフィルム基材80上の凹凸形成材料の膜84は押圧ロール74の正面またはその近傍で転写ロール90に接する。フィルム基材80は、転写ロール90の約半周分を巻回され、転写ロール90の回転に伴って搬送される。この間に、押圧ロール74の下流側且つ剥離ロール76より上流側に設けられたUV照射光源85によりUV光をフィルム基材80上の凹凸形成材料の膜84に照射する。それにより凹凸形成材料の膜84が硬化する。UV照射光源85の代わりに加熱ヒータのような凹凸形成材料の塗膜84を硬化させるための装置を備えてもよい。また、転写ロール90が加熱機構を有する場合、加熱機構により凹凸形成材料の膜84を加熱して凹凸形成材料の膜84の硬化を促進してもよい。また転写ロール90が冷却機構を有する場合は、冷却機構により凹凸形成材料の膜84が硬化する時に発生した熱を吸収してもよい。次いで、硬化した凹凸形成材料の膜84a及びフィルム基材80を、剥離ロール76と転写ロール90の間に挟み込む。剥離ロール76は、フィルム基材80の裏面からフィルム基材80を転写ロール90に向かって付勢する。さらに、剥離ロール76によって付勢されたフィルム基材80を、転写ロール90の外周に沿って転写ロール90から離間する方向に搬送し、それによりフィルム基材80及び凹凸形成材料の膜84aを転写ロール90から剥離する。以上により、転写ロールの凹凸パターン90pが転写されたフィルム部材80aが得られる。
図6(b)に、図6(a)の押圧ロール74付近を拡大した概略断面図を示す。図6(b)において、転写ロール90の傾斜領域90tが押圧ロール74に対向しており、押圧ロール74と転写ロール90に挟まれた位置において凹凸形成材料の膜84が傾斜領域90tに接触している。上述の様に、傾斜領域90tは第2領域90sから第1領域に向かって凹状円弧状に立ち上がっており、傾斜領域90tと第2領域90sはならだかに連結している。そのため、押圧ロール74によってフィルム基材80を転写ロール90に向かって付勢することで、凹凸形成材料の膜84と傾斜領域90tを隙間なく密着させることができる。特に、押圧ロール74の半径R1と傾斜領域90tの円弧面の曲率半径R2の比(R1/R2)が50以下の場合、押圧ロール74が傾斜領域90tの円弧面に沿ってフィルム基材80を押圧できるため、凹凸形成材料の膜84と傾斜領域90tの間に空気が混入しにくい。R1/R2が50を超えると、押圧ロール74が傾斜領域90tの円弧面に沿って(追従して)フィルム基材80を押圧することが難しいため、凹凸形成材料の膜84と傾斜領域90tの間に空気が混入しやすい傾向がある。凹凸形成材料の膜84と傾斜領域90tの間に混入した空気は、凹凸形成材料の膜84の硬化を阻害することがあるため、転写不良の原因となる。
図6(b)は、転写ロール90の回転方向におけるパターン領域90uの前端に隣接する傾斜領域90tに凹凸形成材料の膜84が接触する時の様子を示しているが、転写ロール90の回転方向におけるパターン領域90uの後端に隣接する傾斜領域90tにおいても同様に、凹凸形成材料の膜84と隙間なく密着させることができる。
転写ロール90のパターン領域90uが押圧ロール74に対向している時点において、転写ロール90の軸に平行な面(図6(a)のXZ面)で転写ロール90及び押圧ロール74を切断した概略断面図を図6(c)に示す。押圧ロール74と転写ロール90に挟まれた位置において、凹凸形成材料の膜84がパターン領域90uに接触している。押圧ロール74の外周面が柔軟性のある材料から構成されていること、及び傾斜領域90tと第2領域90sがならだかに連結していることにより、押圧ロール74を転写ロール90に押し付けると、押圧ロール74が転写ロール90の形状に追従するように弾性変形するため、凹凸形成材料の膜84と傾斜領域90tを隙間なく密着させることができる。それゆえ、凹凸形成材料の膜84と傾斜領域90tの間に空気が混入しないため、転写不良を防止することができる。
さらに、図6(d)に、図6(a)の剥離ロール76付近を拡大した概略断面図を示す。図6(a)において、転写ロール90の傾斜領域90tが剥離ロール76に対向しており、剥離ロール76と転写ロール90に挟まれた位置において硬化した凹凸形成材料の膜84aが傾斜領域90tから剥離されている。上述の様に、傾斜領域90tは第2領域90sから第1領域に向かって凹状円弧状に立ち上がっており、傾斜領域90tと第2領域90sはならだかに連結している。そのため、フィルム基材80が転写ロール90から剥離される時のフィルム基材80と転写ロール90のなす角度(剥離角度)θが急激に変化しない。すなわち、剥離角度θの変化率が小さい。フィルム基材80が転写ロール90の第2領域90sから剥離されるときの剥離角度θは0度となるが、それに続いて傾斜領域90tから剥離されるときは、傾斜領域90tが第2領域90sから凹状円弧状に立ち上がっているため、剥離角度θが小さな変化率で0度から徐々に増加する。そのため、フィルム基材80の転写ロール90からの剥離をほぼ一定の速度で行うことができる。仮に傾斜領域90tが第2領域90sから凹状円弧状に立ち上がっていない場合、すなわち、例えば傾斜領域90tの全体が平面状の斜面により構成される場合等は、フィルム基材80が第2領域90sから剥離された後、傾斜領域90tから剥離され始める時に、剥離角度θが急激に変化し、それに伴って剥離速度が変化する可能性がある。それにより、凹凸形成材料の膜84が転写ロール90上に残留する等の剥離不良が生じる可能性がある。本実施形態の転写ロール90はフィルム基材80の転写ロール90からの剥離をほぼ一定の速度で行うことができるため、このような剥離不良の発生を防止することができる。
また、傾斜領域90tと第2領域90sがならだかに連結しているため、剥離ロール76によりフィルム基材80を傾斜領域90tの円弧面に沿って(追従して)付勢することができる。剥離ロール76の半径R3と傾斜領域90tの円弧面の曲率半径R2の比(R3/R2)が50以下であってもよく、その場合、剥離ロール76により傾斜領域90tの円弧面に沿ってフィルム基材80を付勢することが容易になる。
[フィルム部材の製造装置]
上記実施形態の転写ロール90を用いたフィルム部材の製造装置について説明する。フィルム部材の製造装置100は、図7に示すように、主に、フィルム基材80を連続的に送り出すフィルム搬送部120と、フィルム搬送部120により送り出されたフィルム基材80上に凹凸形成材料の膜84を形成する膜形成部140と、膜形成部140の下流側に位置し凹凸形成材料の膜84に凹凸パターンを転写する転写部160とを備える。さらに、フィルム部材の製造装置100は、転写部160の動きを検出する検出装置190と、フィルム搬送部120及び膜形成部140を制御する制御部180とを備えてもよい(図8参照)。実施形態のフィルム部材の製造装置100により、凹凸パターンが付された凹凸形成材料の膜84aを備えるフィルム基材(以下、フィルム部材という)80aが製造される。以下に、各部の構造の詳細について説明する。
<フィルム搬送部>
フィルム搬送部120は、図7に示すように、主に、帯状のフィルム基材80を繰り出す繰り出しロール72と、転写部160の下流に設けられてフィルム部材80aを巻き取る巻き取りロール87と、フィルム基材80及びフィルム部材80aを搬送方向に搬送するための搬送ロール78を有する。繰り出しロール72と巻き取りロール87は、それらを着脱可能にする支持台(不図示)に回転可能に取り付けられている。繰り出しロール72と巻き取りロール87の回転駆動によりフィルム基材80を搬送方向に搬送することができる。
フィルム基材80は、搬送しながら連続的な処理を可能とするために帯状あるいは長尺状の形状を有する。フィルム基材80として、例えば、シリコーン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド(PI)、ポリアリレートのような有機材料で形成される。フィルム基材80とその表面に形成される凹凸形成材料膜との密着性を高めるために、フィルム基材80は表面に易接着処理が施されてもよい。フィルム基材80の寸法は、適宜設定することができるが、例えば、フィルム基材80の幅を50〜3000mm、厚みを1〜500μmにし得る。
<膜形成部>
膜形成部140において、フィルム基材80上に凹凸形成材料を塗布して凹凸形成材料の膜84を形成する。膜形成部140は、例えば、グラビアコート法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法等の各種コート方法により塗布を行うための機構を備える。例えばグラビアコート法による塗布を行う場合、図7に示すように、膜形成部140は、塗布ロール40及び凹凸形成材料が貯留されている容器82を備える。塗布ロール40は、フィルム基材80の表面(凹凸形成材料を塗布する面)に接触するとともに容器82に貯留された液体状の凹凸形成材料に一部が浸漬した状態で回転する。塗布ロール40を凹凸形成材料に浸漬しながら回転すると、塗布ロール40の外周面(側面)に凹凸形成材料が付着する。塗布ロール40に付着した凹凸形成材料がフィルム基材80に接触することにより、フィルム基材80上に凹凸形成材料の膜84が形成される。
塗布ロール40の寸法は、適宜設定することができる。フィルム基材80の左右の端部から凹凸形成材料がはみ出してフィルム基材80の裏面へ回り込むことを防止する観点から、塗布ロールの塗布面の回転軸方向の長さは、フィルム基材80の幅より小さくしてよい。
なお、膜形成部140において、間欠的に凹凸形成材料をフィルム基材80上に塗布し、フィルム基材80上に複数の凹凸形成材料の膜84を形成してもよい。例えば、転写部160において転写ロール90のパターン領域90u及び傾斜領域90t並びにそれらの近傍に対向することになるフィルム基材80の領域のみに凹凸形成材料の膜84を形成してよい。その場合、フィルム基材80の全面に凹凸形成材料の膜84を形成する場合と比べて、凹凸形成材料の使用量を抑えることができる。
凹凸形成材料の間欠的な塗布は任意の方法で行うことができる。例えば、グラビアコート法により塗布を行う場合は、フィルム基材80の搬送路を変位させることができる機構を設け、フィルム基材80を所定のタイミングで塗布ロール40から離間させたり接触させたりすることによって、複数の凹凸形成材料の膜84を形成することができる。また、ダイコート法により塗布を行う場合は、所定のタイミングでダイに圧力を加えたり遮断したりすることにより、ダイから間欠的に凹凸形成材料が吐出され、複数の凹凸形成材料の膜を形成することができる。
<転写部>
転写部160は、図7に示されるように、転写ロール90、並びにそれに対向する押圧ロール(ニップロール)74及び剥離ロール76を備える。
この実施形態において、転写部160の上流側と下流側の搬送ロール78は、フィルム基材80が転写ロール90のほぼ半周分に巻きつけられるように配置されている。フィルム基材80は、押圧ロール74の正面またはその近傍で転写ロール90に接し、転写ロール90の約半周分を巻回した後、剥離ロール76の正面またはその近傍で転写ロール90から剥離される。それにより転写ロール90の凹凸パターンが転写されたフィルム部材80aが得られる。また、この実施形態において、押圧ロール74の下流側且つ剥離ロール76の上流側にUV照射光源85を備える。UV照射光源85の代わりに加熱ヒータのような凹凸形成材料の膜84を硬化させるための装置を備えてもよい。
<検出装置>
フィルム部材の製造装置は、図8に示すように、転写ロール90の回転角度を検出する検出装置190を備えてもよい。例えば上述の様に膜形成部140において、凹凸形成材料をフィルム基材80上に間欠的に塗布し、転写部160において転写ロール90のパターン領域90u及び傾斜領域90t並びにそれらの近傍に対向することになるフィルム基材80の領域のみに凹凸形成材料の膜84を形成する場合、検出装置190によって転写ロール90の回転角度を検出することが好ましい。検出装置190は、回転角度として例えば傾斜領域90t及び/又はパターン領域90uの位置を検出してよい。例えば、図8に示すように、転写ロール90の駆動軸90dにおいて、転写ロール90の回転方向におけるパターン領域90uの先端(前端)及び終端(後端)の位置に対応する位置に反射板99を設け、光学センサ62の光照射部から照射した光を光学センサ62の受光部で受光することで、反射板99の位置すなわち凸領域90tの位置を検出するとともに、転写ロール90の回転速度等の転写ロールの回転情報を取得することができる。また、サーボモータ又はエンコーダ等を使用することによっても、傾斜領域90t及び/又はパターン領域90uの位置を検出し、転写ロール90の回転角度、回転速度等の転写ロールの回転情報を取得することができる。
<制御部>
さらに、膜形成部140において凹凸形成材料をフィルム基材80上に間欠的に塗布する場合、図8に示すように、フィルム部材の製造装置は、計算及び制御を行うコンピュータ64を備える制御部180を有してもよい。検出装置190で検出した傾斜領域90t及び/又はパターン領域90uの位置及び取得した転写ロール90の回転速度等の情報、傾斜領域90t及びパターン領域90uの寸法及び形状、塗布ロール40から転写ロール90までのフィルム基材80の距離及び搬送速度等に基づいて、転写部160において転写ロール90の傾斜領域90t及びパターン領域90uに対向することになるフィルム基材80の位置を計算する。その計算結果に基づいて、膜形成部140で形成した複数の凹凸形成材料の膜84の各々が、転写部160において転写ロール90の傾斜領域90t及びパターン領域90uに重ね合われられるように、フィルム基材80の凹凸形成材料の膜84を形成する領域と凹凸形成材料の膜84を形成しない領域の形成位置を算出する。その算出結果に基づいて、膜形成部140における塗布開始及び塗布停止のタイミングを制御する。
フィルム部材製造装置100には、さらに、繰り出しロール72から繰り出されたフィルム基材80及び巻き取りロール87に巻き取られる前のフィルム部材80aをそれぞれ除電するための除電器が設けられていてもよい。
フィルム部材製造装置100は、さらに、膜形成部140で形成された凹凸形成材料の膜84の厚さや状態を観察する検査装置や、転写ロール90から剥離された後の凹凸形成材料の膜84aの凹凸パターンを観察する検査装置などを備えることができる。
上述の様に、実施形態のフィルム部材の製造装置100で用いられている転写ロール90において、パターン領域90uを取り囲んでいる傾斜領域90tが、さらにそれを取り囲む第2領域90sからパターン領域90uに向かって凹状円弧状に立ち上がっており、傾斜領域90tと第2領域90sがならだかに連結している。そのため、転写部160において凹凸形成材料の膜84と傾斜領域90tを隙間なく密着させることができ、凹凸パターン90pの転写不良が防止される。さらに、転写部160におけるフィルム基材80の転写ロール90からの剥離をほぼ一定の速度で行うことができため、剥離不良の発生を防止することができる。それゆえ、本実施形態のフィルム部材の製造装置100は、凹凸パターンを有するフィルム部材を歩留りよく製造することができる。
[凹凸パターンを有するフィルム部材の製造方法]
次に、上記のフィルム部材製造装置100を用いてフィルム部材を製造する方法について、図7を参照しながら説明する。
<膜形成工程>
まず、搬送部120による搬送を開始し、フィルム基材80を繰り出しロール72から搬送ロール78を介して膜形成部140へ送り出す。
膜形成部140において、フィルム基材80上に所定の厚みの凹凸形成材料の膜84を形成する。
凹凸形成材料としては、光硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が使用でき、例えば、エポキシ系、アクリル系、メタクリル系、ビニルエーテル系、オキセタン系、ウレタン系、メラミン系、ウレア系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、フェノール系、架橋型液晶系、フッ素系、シリコーン系、ポリアミド系、等のモノマー、オリゴマー、ポリマー等の各種樹脂が挙げられる。
無機材料は耐熱性に優れることから、凹凸形成材料として無機材料の前駆体溶液を用いてよく、特に、シリカ、Ti(TiO等)系の材料やITO(インジウム・スズ・オキサイド)系の材料、ZnO、ZrO、Al、TiO、ZnS、ZrO、BaTiO、SrTiO等の前駆体溶液を使用し得る。ゾルゲル法によりフィルム基材上に無機材料からなる凹凸パターン層を形成する場合、前駆体として金属アルコキシドを用いる。例えば、シリカからなる凹凸パターン層を形成する場合は、シリカの前駆体として、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシランに代表されるテトラアルコキシドモノマーや、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン(MTES)、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、トリルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシランに代表されるトリアルコキシドモノマー、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−i−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−t−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−i−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−t−ブトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン、ジプロピルジイソプロポキシシラン、ジプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジプロピルジ−i−ブトキシシラン、ジプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジプロピルジ−t−ブトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジプロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−i−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−t−ブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−i−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−t−ブトキシシラン等のジアルコキシシランに代表されるジアルコキシドモノマーを用いることができる。さらに、アルキル基の炭素数がC4〜C18であるアルキルトリアルコキシシランやジアルキルジアルコキシシランを用いることもできる。ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するモノマー、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有するモノマー、p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基を有するモノマー、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリル基を有するモノマー、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル基を有するモノマー、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するモノマー、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基を有するモノマー、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するモノマー、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を有するモノマー、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するモノマー、これらモノマーを少量重合したポリマー、前記材料の一部に官能基やポリマーを導入したことを特徴とする複合材料などの金属アルコキシドを用いてもよい。また、これらの化合物のアルキル基やフェニル基の一部、あるいは全部がフッ素で置換されていてもよい。さらに、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレート、オキシ塩化物、塩化物や、それらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。金属種としては、Si以外にTi、Sn、Al、Zn、Zr、Inなどや、これらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。上記酸化金属の前駆体を適宜混合したものを用いることもできる。また、これらの材料中に界面活性剤を加えることで、メソポーラス化された凹凸形成材料膜を形成してもよい。さらに、シリカの前駆体として、分子中にシリカと親和性、反応性を有する加水分解基および撥水性を有する有機官能基を有するシランカップリング剤を用いることができる。例えば、n−オクチルトリエトキシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等のシランモノマー、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のビニルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン等のサルファーシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、これらモノマーを重合したポリマー等が挙げられる。
凹凸形成材料としてTEOSとMTESの混合物を用いる場合には、それらの混合比は、例えばモル比で1:1にすることができる。この凹凸形成材料は、加水分解及び重縮合反応を行わせることによって非晶質シリカを生成する。合成条件として溶液のpHを調整するために、塩酸等の酸またはアンモニア等のアルカリを添加する。pHは4以下もしくは10以上が好ましい。また、加水分解を行うために水を加えてもよい。加える水の量は、金属アルコキシド種に対してモル比で1.5倍以上にすることができる。
無機材料の前駆体溶液の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ブタノール等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類、ブトキシエチルエーテル、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノール、ベンジルオキシエタノール等のエーテルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、フェノール、クロロフェノール等のフェノール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、二硫化炭素等の含ヘテロ元素化合物、水、およびこれらの混合溶媒が挙げられる。特に、エタノールおよびイソプロピルアルコールが好ましく、またそれらに水を混合したものも好ましい。
無機材料の前駆体溶液の添加物としては、粘度調整のためのポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコールや、溶液安定剤であるトリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、アセチルアセトンなどのβジケトン、βケトエステル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキサンなどを用いることが出来る。また、前駆体溶液の添加物として、エキシマUV光等紫外線に代表されるエネルギー線などの光を照射することによって酸やアルカリを発生する材料を用いることができる。このような材料を添加することにより、光を照射することよって前駆体溶液を硬化させることができるようになる。
形成する凹凸形成材料の膜84の厚みは0.5〜500μmの範囲内であることが好ましい。厚みが前記下限未満では、凹凸形成材料の表面に形成される凹凸の高さが不十分となり易く、前記上限を超えると、硬化時に生じる凹凸形成材料の体積変化の影響が大きくなり凹凸形状が良好に形成できなくなる可能性がある。
<転写工程>
次いで、凹凸形成材料の膜84が形成されたフィルム基材80は、膜形成部140の下流の搬送ロール78上に掛け渡されて搬送され、転写部160の転写ロール90及び押圧ロール74へ向かう。押圧ロール74の直下に搬送されたフィルム基材80は、転写ロール90の凹凸パターンに対向して重ね合わされる。転写ロール90に重ね合わせられたフィルム基材80は、フィルム基材80の裏面から転写ロール90に向かって押圧ロール(ニップロール)74で押圧され、転写ロール90の凹凸パターン90pが凹凸形成材料膜84に転写される(図6(a)〜(c)参照)。
押圧ロール74により凹凸パターン90pが転写されたフィルム基材80に、転写ロール90を押し付けたままの状態でUV照射光源85からのUV光を照射し、それにより凹凸形成材料膜84の硬化を促進させてよい。凹凸形成材料を硬化させる条件としては、凹凸形成材料として使用する材料の種類により異なるが、例えば、加熱により凹凸形成材料を硬化させる場合は硬化温度が室温〜250℃の範囲内であり、硬化時間が0.5分〜3時間の範囲内であることが好ましい。また、紫外線や電子線のようなエネルギー線を照射することで硬化させる方法でもよく、その場合には、照射量は20mJ/cm〜5J/cmの範囲内であることが好ましい。図6(a)、図7に示した例においては、転写ロール90の下方に配置したUV照射光源85により凹凸形成材料の膜84にUV光を照射することができる。転写ロール90が加熱機構を有している場合は、それにより凹凸形成材料の膜を加熱して、凹凸形成材料の膜の硬化を促進してもよい。また転写ロール90が冷却機構を有する場合は、冷却機構により凹凸形成材料の膜84が硬化する時に発生した熱を吸収してもよい。
硬化した凹凸形成材料の膜84aを有するフィルム基材(フィルム部材80a)を、転写ロール90の外周に沿って進路を変更させ、次いで転写ロール90から離間する方向に搬送して転写ロール90から剥離する。この後、フィルム部材80aを巻き取りロール87に巻き取る。フィルム部材80aを転写ロール90から剥離する方法としては、機械的な剥離法に限定されず、任意の知られた方法を採用することができる。例えば図7においては、硬化後の凹凸形成材料の膜(凹凸パターン層)84aを有するフィルム部材80aを押圧ロール74の下流側で転写ロール90と剥離ロール76の間に挟み込み、さらにフィルム部材80aを転写ロール90から離間する方向に搬送することにより、フィルム部材80aを転写ロール90から剥離できる。こうして、フィルム基材80上に凹凸が形成された硬化した凹凸パターン層84aを有するフィルム部材80aを得ることができる。
[凹凸構造層を備える基板の製造方法]
さらに、上記のような方法及び製造装置を用いて製造されたフィルム部材をフィルム状モールドとして用いることで、フィルム部材の凹凸パターンが転写された凹凸構造層を備える基板を製造することができる。この方法について、詳細を以下に説明する。
フィルム状モールドの凹凸パターンが転写された凹凸構造層をゾルゲル法により形成するため、最初に無機材料の前駆体溶液を調製する。凹凸構造層は、耐熱性に優れることから無機材料から形成されることが好ましく、特に、シリカ、Ti系の材料やITO(インジウム・スズ・オキサイド)系の材料、ZnO、ZrO、Al等から形成されてよい。無機材料の前駆体として用いる金属アルコキシド、並びに前駆体溶液の調製に用いられる溶媒及び添加物としては、上述の帯状のフィルム部材の製造方法の実施形態において、凹凸形成材料として用いることができる金属アルコキシド(前駆体)、溶媒、及び添加物として例示したものと同様のものを使用することができる。
調製した無機材料の前駆体溶液を基板上に塗布する。基板として、ガラスや石英、シリコン基板等の無機材料からなる基板やポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド(PI)、ポリアリレート等の樹脂基板を用い得る。基板は透明でも不透明でもよい。この基板から得られた凹凸パターン基板を有機EL素子の製造に用いるのであれば、基板は耐熱性、UV光等に対する耐光性を備える基板が望ましい。この観点から、基板として、ガラスや石英、シリコン基板等の無機材料からなる基板がより好ましい。特に、基板が無機材料から形成されると、基板と凹凸構造層との間で屈折率の差が少なく、光学基板内での意図しない屈折や反射を防止することができるので好ましい。基板上には密着性を向上させるために、表面処理や易接着層を設けるなどをしてもよいし、水分や酸素等の気体の浸入を防ぐ目的で、ガスバリア層を設けるなどしてもよい。また、基板は、凹凸構造層を形成する面とは反対側の面に、集光、光拡散等の種々の光学機能を有する光学機能層が形成されていてもよい。前駆体溶液の塗布方法として、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法などの任意の塗布方法を使用することができるが、比較的大面積の基板に前駆体溶液を均一に塗布可能であること、前駆体溶液がゲル化する前に素早く塗布を完了させることができることからすれば、バーコート法、ダイコート法及びスピンコート法が好ましい。なお、後の工程で無機材料からなる所望の凹凸パターンが形成されるため基板の表面(表面処理や易接着層がある場合にはそれらも含めて)は平坦でよく、基板自体は所望の凹凸パターンを有さない。塗布する前駆体溶液の膜厚は、例えば100〜500nmにしてよい。
前駆体溶液の塗布後、塗膜(以下、適宜、「前駆体膜」とも言う)中の溶媒を蒸発させるために基板を大気中もしくは減圧下で保持してもよい。この保持時間が短いと、塗膜の粘度が低くなりすぎて、後続の押圧工程において凹凸パターンの転写ができず、保持時間が長すぎると、前駆体の重合反応が進み塗膜の粘度が高くなりすぎて、押圧工程において凹凸パターンの転写ができなくなる。また、前駆体溶液を塗布後、溶媒の蒸発の進行とともに前駆体の重合反応も進行し、前駆体溶液の粘度などの物性も短時間で変化する。凹凸パターン形成の安定性の観点から、パターン転写が良好にできる乾燥時間範囲が十分広いことが望ましく、これは乾燥温度(保持温度)、乾燥圧力、前駆体の材料種、前駆体の材料種の混合比、前駆体溶液調製時に使用する溶媒量(前駆体の濃度)等によって調整することができる。
次いで、上述の方法及び製造装置で製造されたフィルム部材を凹凸パターン転写用のフィルム状モールドとして用いて、フィルム状モールドの凹凸パターンを前駆体膜に転写することで、凹凸構造層を形成する。この際、押圧ロールを用いてモールドを前駆体膜に押し付けてもよい。押圧ロールを用いたロールプロセスでは、プレス式と比較して、モールドと塗膜とが接する時間が短いため、モールドや基板及び基板を設置するステージなどの熱膨張係数の差によるパターンくずれを防ぐことができること、前駆体溶液中の溶媒の突沸によってパターン中にガスの気泡が発生したり、ガス痕が残ったりすることを防止することができること、基板(塗膜)と線接触するため、転写圧力及び剥離力を小さくでき、大面積化に対応し易いこと、押圧時に気泡をかみ込むことがないなどの利点を有する。また、モールドを押し付けながら基板を加熱してもよい。押圧ロールを用いてモールドを前駆体膜に押し付ける例として、図9に示すように押圧ロール122とその直下に搬送されている基板10との間にフィルム状モールド80aを送り込むことでフィルム状モールド80aの凹凸パターンを基板10上の前駆体膜12に転写することができる。すなわち、フィルム状モールド80aを押圧ロール122により前駆体膜12に押し付ける際に、フィルム状モールド80aと基板10を同期して搬送しながらフィルム状モールド80aを基板10上の前駆体膜12の表面に被覆する。この際、押圧ロール122をフィルム状モールド80aの裏面(凹凸パターンが形成された面と反対側の面)に押しつけながら回転させることで、フィルム状モールド80aと基板10が進行しながら密着する。なお、帯状のフィルム状モールド80aを押圧ロール122に向かって送り込むには、帯状のフィルム状モールド80aが巻き付けられたフィルムロールからそのままフィルム状モールド80aを繰り出して用いるのが便利である。
前駆体膜にモールドを押し付けた後、前駆体膜を仮焼成してもよい。仮焼成することにより前駆体が無機材料に転化して塗膜が硬化し、凹凸パターンが固化し、剥離の際に崩れにくくする。仮焼成を行う場合は、大気中で40〜150℃の温度で加熱することが好ましい。なお、仮焼成は必ずしも行う必要はない。
モールドの押圧または前駆体膜の仮焼成の後、塗膜(前駆体膜、または前駆体膜を転化することにより形成された無機材料膜)からモールドを剥離する。モールドの剥離方法として公知の剥離方法を採用することができる。加熱しながらモールドを剥離してもよく、それにより塗膜から発生するガスを逃がし、塗膜内に気泡が発生することを防ぐことができる。ロールプロセスを使用する場合、プレス式で用いるプレート状モールドに比べて剥離力は小さくてよく、塗膜がモールドに残留することなく容易にモールドを塗膜から剥離することができる。特に、塗膜を加熱しながら押圧するので反応が進行し易く、押圧直後にモールドは塗膜から剥離し易くなる。さらに、モールドの剥離性の向上のために、剥離ロールを使用してもよい。図9に示すように剥離ロール123を押圧ロール122の下流側に設け、剥離ロール123によりフィルム状モールド80aを塗膜12に付勢しながら回転支持することで、フィルム状モールド80aが塗膜12に付着された状態を押圧ロール122と剥離ロール123の間の距離だけ(一定時間)維持することができる。そして、剥離ロール123の下流側でフィルム状モールド80aを剥離ロール123の上方に引き上げるようにフィルム状モールド80aの進路を変更することでフィルム状モールド80aは凹凸が形成された塗膜12から引き剥がされる。なお、フィルム状モールド80aが塗膜12に付着されている期間に前述の塗膜12の仮焼成や加熱を行ってもよい。なお、剥離ロール123を使用する場合には、例えば40〜150℃に加熱しながら剥離することによりモールド80aの剥離を一層容易にすることができる。
凹凸が形成された塗膜(凹凸構造層)からモールドを剥離した後、凹凸構造層を硬化してもよく、こうして凹凸構造層を形成する。本焼成により凹凸構造層を硬化させてよい。本焼成により凹凸構造層を構成するシリカ(アモルファスシリカ)中に含まれている水酸基などが脱離して凹凸構造層がより強固となる。本焼成は、200〜1200℃の温度で、5分〜6時間程度行うのが良い。こうして凹凸構造層がさらに硬化して、モールドの凹凸パターンに対応する凹凸パターンを有する基板、すなわち、平坦な基板上に無機材料からなる凹凸構造層が直接形成された基板が得られる。この時、凹凸構造層がシリカからなる場合、焼成温度、焼成時間に応じて非晶質または結晶質、または非晶質と結晶質の混合状態となる。また、紫外線などの光を照射することによって酸やアルカリを発生する材料を添加した場合には、凹凸パターンの転写の際に、凹凸構造層に例えば紫外線やエキシマUV等のエネルギー線を照射することによって凹凸構造層を硬化させてもよい。
なお、凹凸構造層の表面に疎水化処理を行ってもよい。疎水化処理の方法は知られている方法を用いればよく、例えば、シリカ表面であれば、ジメチルジクロルシラン、トリメチルアルコキシシラン等で疎水化処理することもできるし、ヘキサメチルジシラザンなどのトリメチルシリル化剤とシリコーンオイルで疎水化処理する方法を用いてもよいし、超臨界二酸化炭素を用いた金属酸化物粉末の表面処理方法を用いてもよい。凹凸構造層の表面を疎水性にすることにより、本製造方法により製造した凹凸パターン基板を有機EL素子等のデバイスの製造に用いる場合に、製造工程において基板から水分を容易に除去できるため、有機EL素子におけるダークスポットのような欠陥の発生や、デバイスの劣化を防止することができる。
また、凹凸構造層の材料として無機材料を用いたが、上述の無機材料のほか、硬化性樹脂材料を用いてもよい。硬化性樹脂としては、例えば、光硬化および熱硬化、湿気硬化型、化学硬化型(二液混合)等の樹脂を用いることができる。具体的にはエポキシ系、アクリル系、メタクリル系、ビニルエーテル系、オキセタン系、ウレタン系、メラミン系、ウレア系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、フェノール系、架橋型液晶系、フッ素系、シリコーン系、ポリアミド系、等のモノマー、オリゴマー、ポリマー等の各種樹脂が挙げられる。また、凹凸構造層の表面に、水分や酸素等の気体の侵入を防ぐ目的で、ガスバリア層を設けてもよい。
硬化性樹脂を用いて凹凸構造層を形成する場合、例えば、硬化性樹脂を基板に塗布した後、塗布した硬化性樹脂層に微細な凹凸パターンを有するモールドを押し付けつつ塗膜を硬化させることによって、硬化性樹脂層にモールドの凹凸パターンを転写することができる。硬化性樹脂は有機溶剤で希釈してから塗布してもよい。この場合に用いる有機溶剤としては硬化前の樹脂を溶解するものを選択して使用することができる。例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)などのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、などのケトン系溶剤等の公知のものから選択できる。硬化性樹脂を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法、カーテンコート法、インクジェット法、スパッタ法等の各種コート方法を採用することができる。硬化性樹脂を硬化させる条件としては、使用する樹脂の種類により異なるが、例えば、硬化温度が室温〜250℃の範囲内であり、硬化時間が0.5分〜3時間の範囲内であることが好ましい。また、紫外線や電子線のようなエネルギー線を照射することで硬化させる方法でもよく、その場合には、照射量は20mJ/cm〜5J/cmの範囲内であることが好ましい。
また、凹凸構造層の材料としてシランカップリング剤を用いてもよい。それにより、製造された凹凸パターン(凹凸構造)を有する基板を用いて有機EL素子を製造する場合、凹凸構造層とその上に形成される電極などの層との間の密着性を向上させることができ、有機EL素子の製造工程における洗浄工程や高温処理工程での耐性が向上する。凹凸構造層に用いられるシランカップリング剤は、その種類が特に制限されるものではないが、例えばRSiX(Rは、ビニル基、グリシドキシ基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基およびメルカプト基から選ばれる少なくとも1種を含む有機官能基であり、Xは、ハロゲン元素またはアルコキシル基である)で示される有機化合物を用いることができる。シランカップリング剤を塗布する方法としては例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法,カーテンコート法、インクジェット法、スパッタ法等の各種コート方法を採用することができる。その後、各材料に応じて適正な条件で乾燥させることにより硬化した膜を得ることができる。例えば、100〜150℃で15〜90分間加熱乾燥してもよい。
凹凸構造層の材料は、無機材料または硬化性樹脂材料に紫外線吸収材料を含有させたものであってもよい。紫外線吸収材料は、紫外線を吸収し光エネルギーを熱のような無害な形に変換することにより、膜の劣化を抑制する作用がある。紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等を使用できる。
以上、本発明の実施形態を説明してきたが、本発明の転写ロール、凹凸パターンを有するフィルム部材の製造装置は上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内で適宜改変することができる。本発明のフィルム部材の製造装置は上記の実施形態の構成に限定されず、搬送ロールの等の各種要素の配置が本願の図面に示された配置と異なっていてもよい。また、本発明の製造装置によって製造される凹凸パターンを有するフィルム部材は、種々の用途に使用することができ、例えば、有機EL素子、マイクロレンズアレイ、ナノプリズムアレイ、光導波路、LEDなどの光学素子、レンズなどの光学部品、太陽電池、反射防止フィルム、半導体チップ、パターンドメディア、データストレージ、電子ペーパー、LSIなどの製造、製紙、食品製造、免疫分析チップ、細胞培養シートなどのバイオ分野等における用途で使用される部材及びその製造にも使用することができる。
本発明の転写ロール及びそれを用いたフィルム部材の製造装置は、転写不良や剥離不良なく凹凸パターンの転写を行うことができるため、凹凸パターンを有するフィルム部材を効率的に製造することができる。本発明の転写ロール及び製造装置を用いて製造された帯状のフィルム部材は、有機EL素子や太陽電池等の種々の用途に好適に使用することができ、またそれらの用途に用いられる基板の製造にも好適に用いることができる。
40 塗布ロール
62 光学センサ
74 押圧ロール、 76 剥離ロール
80 フィルム基材、80a フィルム部材
84 凹凸形成材料の膜、
90 転写ロール、90a 基体ロール、90b 薄板状モールド
90p 凹凸パターン、90s 第2領域、90t 傾斜領域
90u 第1領域
100 フィルム部材製造装置、120 搬送部
140 膜形成部、160 転写部、180 制御部、190 検出装置

Claims (7)

  1. 押圧ロールに対向して配置された、凹凸パターンを転写するための前記転写ロールであって、
    前記転写ロールの外周面上に形成された、前記凹凸パターンを有する第1領域と、
    前記第1領域の外側の第2領域とを備え、
    前記凹凸パターンの凹部の表面の高さが前記第2領域の表面の高さより高く、
    前記第1領域と前記第2領域を連結する領域が傾斜しており、
    前記傾斜した領域が前記第2領域から第1領域に向かって凹状円弧状に立ち上がっており、
    前記押圧ロールの半径R1と前記傾斜した領域の円弧面の曲率半径R2の比R1/R2が50以下である転写ロール。
  2. 温度調節機構を有する請求項1に記載の転写ロール。
  3. 凹凸パターンを有するフィルム部材の製造装置であって、
    フィルム基材上に凹凸形成材料の膜を形成する膜形成部と、
    請求項1又は2に記載の前記転写ロールを備え、前記凹凸パターンを前記膜に転写する転写部と、
    前記膜形成部から前記転写部に向かって前記フィルム基材を連続的に搬送する搬送部とを備えるフィルム部材の製造装置。
  4. 前記転写部がさらに、前記フィルム基材を前記転写ロールに付勢する前記押圧ロールを備えることを特徴とする請求項3に記載のフィルム部材の製造装置。
  5. 前記転写部がさらに、前記転写ロールから前記フィルム基材を剥離する剥離ロールを備えることを特徴とする請求項3又は4に記載のフィルム部材の製造装置。
  6. 前記転写部がさらに、前記凹凸パターンが転写された前記膜を硬化する硬化装置を備える請求項3〜5のいずれか一項に記載のフィルム部材の製造装置。
  7. 前記搬送部が、前記フィルム基材を繰り出すフィルム繰り出しロールと、前記フィルム基材を巻き取るフィルム巻き取りロールを備える請求項3〜6のいずれか一項に記載のフィルム部材の製造装置。
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