本明細書に引用される特許文献及び非特許文献の全ての開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本明細書では、用語「発明」又は「開示された発明」は、限定的なものではなく、請求項に定義され、又は本明細書に記載される本発明のいずれにも全般的に当てはまる。これらの用語は、本明細書において互換的に使用される。
用語「ポリα−1,3−グルカン」、「α−1,3−グルカンポリマー」、及び「グルカンポリマー」は、本明細書において互換的に使用される。ポリα−1,3−グルカンは、グリコシド連結により互いに結合しているグルコースモノマー単位を含むポリマーであって、少なくとも約50%のグリコシド連結がα−1,3−グリコシド連結であるポリマーである。ポリα−1,3−グルカンは、多糖の1種である。ポリα−1,3−グルカンの構造は、以下の通り表すことができる。
本明細書においてポリα−1,3−グルカンエステル化合物の調製に利用できるポリα−1,3−グルカンは、化学的方法を利用して調製できる。或いは、それは、ポリα−1,3−グルカンを産生する真菌などの種々の生物からの抽出により調製できる。さらに別法としては、例えば、米国特許第7,000,000号明細書並びに米国特許出願公開第2013/0244288号明細書及び同第2013/0244287号明細書(全て参照により本明細書に組み込まれる)に記載の通り、ポリα−1,3−グルカンは、1種以上のグルコシルトランスフェラーゼ(gtf)酵素(例えば、gtfJ)を利用してスクロースから酵素的に製造できる。
用語「グルコシルトランスフェラーゼ酵素」、「gtf酵素」、「gtf酵素触媒」、「gtf」、及び「グルカンスクラーゼ」は、本明細書において互換的に使用される。本明細書でのgtf酵素の活性は、スクロース基質の反応を触媒して、生成物であるポリα−1,3−グルカン及びフルクトースを生じる。gtf反応の他の生成物(副生成物)は、グルコース(グルコースが、グルコシル−gtf酵素中間複合体から加水分解される場合)、種々の可溶性オリゴ糖(DP2〜DP7)、及びロイクロース(グルコシル−gtf酵素中間複合体のグルコースがフルクトースに結合している場合)を含み得る。ロイクロースは、α−1,5連結により結合しているグルコースとフルクトースから構成される二糖である。野生型形態のグルコシルトランスフェラーゼ酵素は、一般的に(N末端からC末端の方向に)、シグナルペプチド、可変ドメイン、触媒ドメイン、及びグルカン結合ドメインを含む。本明細書でのgtfは、CAZy(Carbohydrate−Active EnZymes)データベース(Cantarel et al.,Nucleic Acids Res.37:D233−238,2009)に従って、グリコシドヒドロラーゼファミリー70(GH70)に分類される。
本明細書においてポリα−1,3−グルカンエステル化合物を調製するのに使用されるポリα−1,3−グルカンのグルコースモノマー単位の間の、α−1,3であるグリコシド連結のパーセンテージは、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%(又は50%と100%の間の任意の整数値)である。したがって、そのような実施形態において、ポリα−1,3−グルカンは、約50%未満、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、又は0%(又は0%と50%の間の任意の整数値)のα−1,3でないグリコシド連結を有する。
本明細書でのポリα−1,3−グルカンエステル化合物を製造するのに使用されるポリα−1,3−グルカンは、好ましくは直鎖/非分岐型である。特定の実施形態において、ポリα−1,3−グルカンは、分岐点が全くないか、又は、ポリマー中のグリコシド連結のパーセントとして約10%未満、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、若しくは1%の分岐点を有する。分岐点の例には、ムタンポリマーに存在するものなどのα−1,6分岐点がある。
用語「グリコシド連結」及び「グリコシド結合」は本明細書において互換的に使用され、炭水化物(糖)分子を、別の炭水化物などの別の基に結合させる共有結合の種類を指す。本明細書での用語「α−1,3−グリコシド連結」は、α−D−グルコース分子を、隣接するα−D−グルコース環の炭素1及び3を介して互いに結合させる共有結合の種類を指す。この連結は、先に与えられたポリα−1,3−グルカン構造中に示されている。本明細書では、「α−D−グルコース」は、「グルコース」と称される。
用語「ポリα−1,3−グルカンエステル化合物」、「ポリα−1,3−グルカンエステル」、及び「ポリα−1,3−グルカンエステル誘導体」は本明細書において互換的に使用される。本明細書でのポリα−1,3−グルカンエステル化合物は、構造:
により表すことができる。
この構造の式に関して、nは少なくとも6でよく、各Rは、独立に、水素原子(H)でも、有機基でもよい。本明細書でのポリα−1,3−グルカンエステル化合物は、約0.05〜約3.0の置換度を有する。
本明細書に開示されるポリα−1,3−グルカンエステル化合物は、合成の人工化合物である。
ポリα−1,3−グルカンエステル化合物は、基礎構造−CG−O−CO−C−を含むことに基づいて、本明細書において「エステル」と呼ばれ、「−CG−」はポリα−1,3−グルカンエステル化合物のグルコースモノマー単位の炭素2、4、又は6を表し、「−CO−C−」はアシル基に含まれる。
本明細書での「アシル基」基は、例えば、アセチル基(−CO−CH3)、プロピオニル基(−CO−CH2−CH3)、ブチリル基(−CO−CH2−CH2−CH3)、ペンタノイル基(−CO−CH2−CH2−CH2−CH3)、ヘキサノイル基(−CO−CH2−CH2−CH2−CH2−CH3)、ヘプタノイル基(−CO−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH3)、又はオクタノイル基(−CO−CH2−CH2−
CH2−CH2−CH2−CH2−CH3)であり得る。アシル基のカルボニル基(−CO−)は、ポリα−1,3−グルカンエステル化合物のグルコースモノマー単位の炭素2、4、又は6にエステル結合している。
命名法に関して、ポリα−1,3−グルカンエステル化合物は、化合物中のアシル基に対応する有機酸に言及することにより本明細書において引用することができる。例えば、アセチル基を含むエステル化合物はポリα−1,3−グルカンアセテートと称することができ、プロピオニル基を含むエステル化合物はポリα−1,3−グルカンプロピオネートと称することができ、ブチリル基を含むエステル化合物はポリα−1,3−グルカンブチレートと称することができる。しかし、この命名法は、本明細書でのポリα−1,3−グルカンエステル化合物を酸自体と称するものではない。
本明細書での「ポリα−1,3−グルカントリアセテート」は、アセチル基による置換度が2.75以上であるポリα−1,3−グルカンエステル化合物を指す。
用語「ポリα−1,3−グルカンモノエステル」及び「モノエステル」は本明細書において互換的に使用される。ポリα−1,3−グルカンモノエステルは、1種類のみのアシル基を含む。そのようなモノエステルの例は、ポリα−1,3−グルカンアセテート(アセチル基を含む)及びポリα−1,3−グルカンプロピオネート(プロピオニル基を含む)である。
用語「ポリα−1,3−グルカン混合エステル」及び「混合エステル」は本明細書において互換的に使用される。ポリα−1,3−グルカン混合エステルは、2種類以上のアシル基を含む。そのような混合エステルの例は、ポリα−1,3−グルカンアセテートプロピオネート(アセチル基及びプロピオニル基を含む)及びポリα−1,3−グルカンアセテートブチレート(アセチル基及びブチリル基を含む)である。
用語「反応物」、「反応組成物」、及び「エステル化反応物」は本明細書において互換的に使用され、ポリα−1,3−グルカン、少なくとも1種の酸触媒、少なくとも1種の酸無水物、及び少なくとも1種の有機酸を含む反応物を指す。反応物は実質的に無水である。反応物は、ポリα−1,3−グルカンのグルコース単位の1つ以上のヒドロキシル基の、少なくとも酸無水物からのアシル基によるエステル化に好適な条件(例えば、時間、温度)下におかれ、それによりポリα−1,3−グルカンエステル化合物が生じる。
用語「実質的に無水」及び「無水」は本明細書において互換的に使用される。実質的に無水な条件は、約1.5wt%又は2.0wt%未満の水がある条件である。そのような条件は、例えば、反応物又は反応成分を特徴づけ得る。
本明細書では、「酸交換された」ポリα−1,3−グルカンは、酸により処理されて、ポリα−1,3−グルカンから水が除去されている。酸交換されたポリα−1,3−グルカンを製造するための酸交換プロセスは、グルカンが酸(例えば、有機酸)の中に置かれ、次いで酸から除去される1つ以上の処理を含み得る。
本明細書での用語「酸触媒」は、エステル化反応の進行を加速させる任意の酸を指す。酸触媒の例は硫酸(H2SO4)及び過塩素酸(HClO4)などの無機酸である。
本明細書での用語「酸無水物」は、同じ酸素原子に結合した2つのアシル基を有する有機化合物を指す。典型的には、本明細書での酸無水物は式(R−CO)2Oを有し、Rは飽和直鎖炭素鎖(7つまでの炭素原子)である。酸無水物の例は無水酢酸[(CH3−CO)2O]、プロピオン酸無水物[(CH3−CH2−CO)2O]、及び酪酸無水物[
(CH3−CH2−CH2−CO)2O]である。
用語「有機酸」及び「カルボン酸」は本明細書において互換的に使用される。有機酸は式R−COOHを有し、Rは有機基でありCOOHはカルボキシル基である。本明細書でのR基は、典型的には飽和直鎖炭素鎖(7つまでの炭素原子)である。有機酸の例は、酢酸(CH3−COOH)、プロピオン酸(CH3−CH2−COOH)、及び酪酸(CH3−CH2−CH2−COOH)である。
本明細書での用語「置換度」(DoS)は、ポリα−1,3−グルカンエステル化合物の各モノマー単位(グルコース)中で置換されたヒドロキシル基の平均数を指す。ポリα−1,3−グルカンの各モノマー単位には3つのヒドロキシル基があるため、本明細書でのポリα−1,3−グルカンエステル化合物のDoSは3以下になり得る。
本明細書での「接触させること」は、例えば、溶解、混合、振とう、又は均質化など、当技術分野で公知であるどのような手段によっても実施できる。3種以上の反応成分が互いに接触する場合、そのような接触は、全て一度にも、段階的にも(例えば、2つの成分を混合してから第三の成分を混合する)実施できる。
本明細書でのポリα−1,3−グルカン及びポリα−1,3−グルカンエステル化合物の「分子量」は、数平均分子量(Mn)としても、重量平均分子量(Mw)としても表すことができる。或いは、分子量は、ダルトン、グラム/モル、DPw(重量平均重合度)、又はDPn(数平均重合度)としても表すことができる。これらの分子量測定値を計算するために、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、又はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの様々な手段が当技術分野で公知である。
用語「体積によるパーセント」、「体積パーセント」、「vol%」、及び「v/v%」は本明細書において互換的に使用される。溶液中の溶質の体積によるパーセントは、式:[(溶質の体積)/(溶液の体積)]×100%を利用して決定できる。
用語「重量によるパーセント」、「重量パーセンテージ(wt%)」、及び「重量−重量パーセンテージ(%w/w)」は本明細書において互換的に使用される。重量によるパーセントは、組成物、混合物、又は溶液中に含まれる質量基準の物質のパーセンテージを指す。
用語「増加した」、「増大した」、及び「向上した」は本明細書において互換的に使用される。これらの用語は、例えば、増加した量又は活性が比較される量又は活性より、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%、又は200%(又は1%と200%の間の任意の整数)多い量又は活性を指すことがある。
開示された発明の実施形態は、構造:
により表されるポリα−1,3−グルカンエステル化合物を含む組成物に関する。
この構造の式に関して、nは少なくとも6でよく、各Rは、独立に、Hでもアシル基でもよい。さらに、ポリα−1,3−グルカンエステル化合物は、約0.05〜約3.0の置換度を有する。
ポリα−1,3−グルカンエステル化合物の式における各R基は、独立に、Hでもアシル基でもよい。本明細書のアシル基は、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、又はオクタノイル基でよい。そのため、アシル基は、2〜8つの炭素の鎖を含み得る。この鎖は、好ましくは、分岐を全く持たない。
本明細書に開示される特定の実施形態におけるポリα−1,3−グルカンエステル化合物は、1種類のアシル基を含み得る。例えば、上記式中のグルコース基にエステル結合した1つ以上のR基はプロピオニル基でよい。そのため、この特定の例におけるR基は、独立に、水素及びプロピオニル基であろう。別の例としては、上記式中のグルコース基にエステル結合した1つ以上のR基はアセチル基でよい。そのため、この特定の例におけるR基は、独立に、水素及びアセチル基であろう。本明細書のポリα−1,3−グルカンエステル化合物の特定の実施形態は、2.75以上のアセチル基によるDoSを有さない。
或いは、本明細書に開示されるポリα−1,3−グルカンエステル化合物は、2つ以上の異なる種類のアシル基を含み得る。そのような化合物の例は、(i)アセチル基とプロピオニル基(ポリα−1,3−グルカンアセテートプロピオネート、R基が、独立に、H、アセチル、又はプロピオニルである場合)、又は(ii)アセチル基とブチリル基(ポリα−1,3−グルカンアセテートブチレート、R基が、独立に、H、アセチル、又はブチリルである場合)など、2つの異なるアシル基を含む。
ポリα−1,3−グルカンエステル化合物は、約0.05〜約3.0の置換度(DoS)を有する。或いは、本明細書に開示されるポリα−1,3−グルカンエステル化合物のDoSは、約0.2〜約2.0になり得る。さらに或いは、DoSは、少なくとも約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、又は3.0になり得る。本明細書に開示されるポリα−1,3−グルカンエステル化合物が約0.05〜約3.0の置換度を有するため、化合物のR基が水素のみにはなり得ないことが当業者には理解されるであろう。
DoS値を引用する代わりに、本明細書のポリα−1,3−グルカンエステル化合物中の1つ以上のアシル基のwt%が言及されることがある。例えば、ポリα−1,3−グルカンエステル化合物中のアシル基のwt%は、少なくとも約0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、又は60%になり得る。
ポリα−1,3−グルカンエステル化合物のグルコースモノマー単位の間の、α−1,3であるグリコシド連結のパーセンテージは、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%(又は50%と100%の間の任意の整数)である。したがって、そのような実施形態において、化合物は、約50%未満、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、又は0%(又は0%と50%の間の任意の整数値)のα−1,3でないグリコシド連結を有する。
本明細書に開示されるポリα−1,3−グルカンエステル化合物の骨格は、好ましくは直鎖/非分岐型である。特定の実施形態において、化合物は、分岐点を全く持たないか、又は、ポリマー中のグリコシド連結のパーセントとして約10%未満、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、若しくは1%の分岐点を有する。分岐点の例には、α−1,6分岐点がある。
特定の実施形態におけるポリα−1,3−グルカンエステル化合物の式は、少なくとも6のn値を有し得る。或いは、nは、少なくとも10、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、又は4000(又は10と4000の間の任意の整数)の値を有し得る。
本明細書に開示されるポリα−1,3−グルカンエステル化合物の分子量は、数平均分子量(Mn)としても、重量平均分子量(Mw)としても測定できる。或いは、分子量は、ダルトン又はグラム/モルとして測定できる。化合物のポリα−1,3−グルカンポリマー成分のDPw(重量平均重合度)又はDPn(数平均重合度)に言及することが有用なこともある。
本明細書に開示されるポリα−1,3−グルカンエステル化合物のMn又はMwは、少なくとも約1000になり得る。或いは、Mn又はMwは、少なくとも約1000〜約600000になり得る。さらに或いは、Mn又はMwは、例えば、少なくとも約10000、25000、50000、75000、100000、125000、150000、175000、200000、225000、250000、275000、又は300000(又は10000と300000の間の任意の整数)になり得る。
特定の実施形態におけるポリα−1,3−グルカンエステルは、最高約2.00、2.05、2.10、2.15、2.20、2.25、2.30、2.35、2.40、2.45、2.50、2.55、2.60、2.65、2.70、2.75、2.80、2.85、2.90、2.95、又は3.00のアセチル基によるDoSを有し得る。そのため、例えば、アセチル基によるDoSは、最高約2.00〜2.40、2.00〜2.50、又は2.00〜2.65になり得る。他の例としては、アセチル基によるDoSは、約0.05〜約2.60、約0.05〜約2.70、約1.2〜約2.60、又は約1.2〜約2.70になり得る。そのようなポリα−1,3−グルカンエステルは、モノエステルのことも、混合エステルのこともある。
特定の実施形態におけるポリα−1,3−グルカンエステルは、最高約30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、又は55%のプロピオニル基のwt%を有し得る。そのようなポリα−1,3−グルカンエステルは、モノエステルのことも、混合エステルのこともある。混合エステルに関して、ポリα−1,3−グルカンアセテートプロピオネートは、例えば、最高で約0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%のアセチル基のwt%及び先に列記されたプロピオニルwt%のいずれかによるプロピオニル基のwt%を有し得る。
特定の実施形態におけるポリα−1,3−グルカンエステルは、最高で約8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、又は60%のブチリル基のwt%を有し得る。他の実施形態におけるポリα−1,3−グルカンエステルは、最高で約0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.05、1.10、1.15、又は1.20のブチリル基によるDoSを有し得る。そのようなポリα−1,3−グルカンエステルは、モノエステルのことも、混合エステルのこともある。混合エステルに関して、ポリα−1,3−グルカンアセテートブチレートは、例えば、最高で約0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、又は36%のアセチル基のwt%及び先に列記されたブチリルwt%のいずれかによるブチリル基のwt%を有し得る。
開示された発明は、ポリα−1,3−グルカンエステル化合物を製造する方法にも関する。この方法は、ポリα−1,3−グルカンを、実質的に無水である反応物中で、少なくとも1種の酸触媒、少なくとも1種の酸無水物、及び少なくとも1種の有機酸と接触させることを含み、酸無水物から誘導されたアシル基がポリα−1,3−グルカンにエステル化されて、それにより構造:
(式中、
(i)nは少なくとも6であり、
(ii)各Rは、独立に、H又はアシル基であり、且つ
(iii)化合物は、約0.05〜約3.0の置換度を有する)
により表されるポリα−1,3−グルカンエステル化合物を製造する。この方法により製造されたポリα−1,3−グルカンエステルは、任意選択で単離できる。
ポリα−1,3−グルカンは、少なくとも1種の酸触媒、少なくとも1種の酸無水物、及び少なくとも1種の有機酸と、実質的に無水である反応物中で接触する。本明細書での実質的に無水な反応物は、水を全く含まないか、又は約0.05未満、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、若しくは2.0wt%の水を含む。実質的に無水な条件は、実質的に無水である反応成分を使用することにより得ることができる。実質的に無水ではない反応成分を反応物の調製に使用できるが、最終的な反応調合物が実質的に無水であるような量でのみ使用できる。
開示されたエステル化反応に使用できるポリα−1,3−グルカンの酵素的に製造された調合物は、典型的には水を含む。このポリα−1,3−グルカンは酸交換されて水が除去され、それによりグルカンを実質的に無水にすることができる。特定の実施形態において、ポリα−1,3−グルカンを、接触工程(a)の前に、有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸)により酸交換して、ポリα−1,3−グルカンから水を除くことができる。本明細書の酸交換プロセスは、ポリα−1,3−グルカンを水中で沸騰させ、任意の物理的手段(例えば、濾過、デカンテーション、及び/又は乾燥)により水のほとんどを除去し、グルカンを有機酸の中に入れて、次いで、有機酸を濾過及び/又はデカンテーションにより除くことを含み得る。有機酸による処理はグルカンを酸中で撹拌することを含み得るが、1回、2回、又はそれより多い回数実施できる。各処理に使用される有機酸の量は、例えば、処理されるポリα−1,3−グルカンの量の少なくとも約2〜20倍、又は2〜10倍になり得る。
ポリα−1,3−グルカンは、少なくとも1種の酸触媒と、開示された反応物中で接触する。酸触媒は、特定の実施形態において、無機酸でよい。本明細書の反応物に含まれ得る無機酸触媒の例は、硫酸及び過塩素酸である。無機酸触媒の他の例には、塩化水素酸、リン酸、硝酸、ホウ酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、スルホン酸、任意の鉱酸、及びこれらの任意の組み合わせがある。本明細書の酸触媒は、典型的には、濃縮された(例えば、純度>95%、96%、97%、98%、又は99%)及び/又は実質的に無水の形態で商業的に得ることができる。例えば、本明細書の反応物に使用するための硫酸は、少なくとも純度約95〜98%であり得る。或いは、酸触媒は、酢酸などの有機酸により溶解された状態で提供され得る。そのような溶液の例は、酢酸中の過塩素酸(0.1N)である。反応物中の酸触媒の量は、例えば、少なくとも約0.005、0.0075、0.01、0.025、0.05、0.075、0.1、0.25、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、又は2.0wt%になり得る。
ポリα−1,3−グルカンは、開示された反応物中で少なくとも1種の酸無水物に接触する。本明細書の反応物に含まれ得る酸無水物の例には、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、ペンタン酸無水物、ヘキサン酸無水物、ヘプタン酸無水物、オクタン酸無水物、及び無水フタル酸がある。これらの任意の組み合わせも本明細書の反応物に使用できる(例えば、無水酢酸とプロピオン酸無水物、無水酢酸と酪酸無水物、プロピオン酸無水物と酪酸無水物)。本明細書の酸無水物は、典型的には、濃縮された形態(例えば、純度>95%、96%、97%、98%、又は99%)及び/又は実質的に無水の形態で商業的に得ることができる。例えば、本明細書での反応に使用するための無水酢酸、プロピオン酸無水物、及び/又は酪酸無水物は、少なくとも純度約97%、98%、又は99%であり得る。反応物中の酸無水物の量は、例えば、少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、又は70wt%(又は10wt%と70wt%の間の任意の整数値)になり得る。特定の実施形態において、反応物中の無水酢酸の量は少なくとも約20〜45wt%であり得る。他の実施形態において、プロピオン酸無水物又は酪酸無水物の量は、少なくとも約40〜50wt%であり得る。
ポリα−1,3−グルカンは、開示された反応物中で少なくとも1種の有機酸と接触する。本明細書の反応物に含まれ得る有機酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、及びフタル酸がある。反応物中の有機酸の量は、例えば、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、又は80wt%(又は5wt%と80wt%の間の任意の整数値)であり得る。
典型的には、本明細書の反応物で使用される1種以上の酸無水物は、望まれるエステル化の種類に基づいて選択される。例としては、ポリα−1,3−グルカンとアセチル基、プロピオニル基、及び/又はブチリル基のエステル化が望まれる場合、それに応じて、それぞれ無水酢酸、プロピオン酸無水物、及び/又は酪酸無水物が反応物に含まれる。選択された酸無水物は、開示されるエステル化プロセスにおける主なアシル基源である。とはいえ、エステル化のためのアシル基は、反応物に含まれる1種以上の有機酸からも誘導できる。例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、及びオクタノイル基は、それぞれ、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、及びオクタン酸から誘導できる。特定の酸無水物を含む反応物は、典型的には、その酸無水物に対応する有機酸も含む。
開示される反応物の特定の実施形態において、酸無水物は、無水酢酸、プロピオン酸無水物、又は酪酸無水物の1つ以上であり;有機酸は、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸の1つ以上である。例えば、(i)無水酢酸と酢酸を使用してポリα−1,3−グルカンアセテートを調製できる;(ii)プロピオン酸無水物とプロピオン酸を使用してポリα−1,3−グルカンプロピオネートを調製できる;(iii)酪酸無水物と酪酸を使用してポリα−1,3−グルカンブチレートを調製できる;(iv)プロピオン酸無水物と、プロピオン酸と、無水酢酸と、任意選択で酢酸を使用してポリα−1,3−グルカンアセテートプロピオネートを調製できる;(v)プロピオン酸無水物と、プロピオン酸と、酢酸を使用してポリα−1,3−グルカンアセテートプロピオネートを調製できる;(vi)酪酸無水物と、酪酸と、無水酢酸と、任意選択で酢酸を使用してポリα−1,3−グルカンアセテートブチレートを調製できる;(vii)酪酸無水物と、酪酸と、酢酸を使用してポリα−1,3−グルカンアセテートブチレートを調製できる。プロピオン酸又は酪酸と共に酢酸を含む反応物において、酢酸の量は、例えば、約5〜10、5〜20、又は5〜30wt%であり得る。
混合エステル(例えば、ポリα−1,3−グルカンアセテートプロピオネート、ポリα−1,3−グルカンアセテートブチレート)を製造するための反応物は、典型的には、より高いDoSが望ましいアシル基を有する酸無水物をより多く、より低いDoSが望ましい酸無水物及び/又は対応する有機酸をより少なく含む。例えば、アセチル基に比べてプロピオニル基のより高いDoSを有するポリα−1,3−グルカンアセテートプロピオネートを製造するには、無水酢酸及び/又は酢酸の量に比べてより多くのプロピオン酸無水物が反応物に含まれる。混合エステル中のDoSは、酸触媒をすでに含んでいる反応物に酸無水物が加えられる順序によっても調節できる。例えば、ポリα−1,3−グルカンアセテートプロピオネートを製造するための調合物を調製する際に、プロピオン酸無水物が無水酢酸より前に(すでに酸触媒を含んでいる調合物に)加えられる場合、プロピオニル基のより高いDoSを期待できる。
本明細書の反応物のために選択される酸無水物は、酸交換されたポリα−1,3−グルカンの調製に使用される有機酸に対応してよい。例えば、反応物がプロピオン酸無水物を含む場合、酸交換プロセスはプロピオン酸で実施することができる。或いは、本明細書の反応物のために選択される酸無水物は、酸交換されたポリα−1,3−グルカンの調製に使用される有機酸と異なってよい。例えば、反応物がプロピオン酸無水物を含む場合、酸交換プロセスは酢酸で実施できる。
本明細書の反応物は、ポリα−1,3−グルカン、酸触媒、酸無水物、及び有機酸の他に、成分を含み得る。例えば、塩化メチレンなどの1種以上の有機溶媒が反応物に含まれ得る。塩化メチレンなどの有機溶媒は、例えば、約30〜40wt%で反応物中(例えば、グルカントリアセテートを製造する)に含まれ得る。
本明細書の反応物の成分は、任意の順序で加えることができる。例えば、ポリα−1,3−グルカンと、酸触媒と、有機酸を最初に混合し、その後に酸無水物を混合物に加えることができる。別の例としては、酸無水物と有機酸を最初に混合し、その後にポリα−1,3−グルカンと酸触媒を混合物に加えることができる。さらに別の例として、酸触媒と有機酸を最初に混合し、その後にポリα−1,3−グルカンと酸無水物を混合物に加えることができる。特定の実施形態において、ポリα−1,3−グルカンと別の成分(例えば、酸触媒又は酸無水物)は、連続的な順序で、他の反応成分を含む混合物に加えられる。
本明細書の反応物を調製する様々な段階の間に冷却を適用できる。用語「冷却(cool)」及び「冷却(chill)」は本明細書において互換的に使用され、反応物又は混合物の温度をより低い温度に下げることを指す。冷却は、氷浴又は工業的な冷却システムなどの、当技術分野で公知である任意の手段によって実施できる。反応物を調製する工程(a)は、反応物を、その調製後に(すなわち、ポリα−1,3−グルカン、酸触媒、酸無水物、及び有機酸の全てを含む)、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20℃など、又は約12〜18℃に冷却することを含み得る。或いは、工程(a)は、ポリα−1,3−グルカン、酸触媒、及び有機酸を含む混合物を(例えば、上記温度のいずれかに)冷却し、次いで酸無水物を、冷却した混合物に加えることを含み得る。さらに或いは、工程(a)は、酸無水物及び有機酸を含む混合物を(例えば、上記温度のいずれかに)冷却し、次いでポリα−1,3−グルカン及び酸触媒を、冷却した混合物に加えることを含み得る。さらに或いは、工程(a)は、酸触媒及び有機酸を含む混合物を(例えば、上記温度のいずれかに)冷却し、次いでポリα−1,3−グルカン及び酸無水物を、冷却した混合物に加えることを含み得る。反応物は、任意選択で、その初期の調製の後、上記のより低い温度点のいずれかで、約1〜10分間保つことができる。
次いで、反応物を、(i)直接熱を加えることなく周囲温度条件下におくことができ、且つ/又は(ii)当技術分野で公知である任意の手段(例えば、水浴、工業用ヒーター、又は電気ヒーター)を利用して直接加熱することができる。周囲温度条件は、例えば、最長で約30、60、120、240、360、又は480分間(又は30分と480分の間の任意の整数値)維持することができる。或いは、周囲温度条件は、最長で、約24、48、又は72時間維持することができる。本明細書での用語「周囲温度」は、約15〜30℃又は20〜25℃(又は15℃と30℃の間の任意の整数)の温度を指す。反応物加熱は、例えば、最高で約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、又は80℃(又は30℃と80℃の間の任意の整数値)、約30〜60℃、又は約30〜50℃になり得る。そのような加熱は、望まれる場合、段階的に実施できる。例えば、反応物を最初に約35℃に加熱して、次いで、約39〜50℃に加熱できる。最高反応温度(例えば、約36〜43℃)を適用して、ポリα−1,3−グルカンプロピオネート、ポリα−1,3−グルカンアセテートプロピオネート、又はポリα−1,3−グルカンアセテートブチレートを製造する場合など、特定の実施形態において、ポリα−1,3−グルカンエステル分子量の過度な低下を防ぐことができる。上記温度のいずれかに加熱した後の温度を、例えば、約20〜30、20〜40、20〜60分間、又は最長約40、60、80、100、120、又は140分間保つことができる。加熱が段階的に実施される場合、最初の温度点を、例えば、約20〜40分間保つことができる。反応物が、直接熱をかけることなく周囲温度条件下に置かれる実施形態において、望まれる場合、その後に反応物を、上記の温度及び期間のいずれにも加熱できる。反応物は、上記の温度処理(周囲温度及び/又は加熱)のいずれかの後で、典型的には、固体の物質を全く含まないが、粘性を帯びることがある。
反応物を、上記温度処理(周囲温度及び/又は加熱)のいずれの後でも、任意選択で冷却できる。例えば、反応物を、約18、19、20、21、22、23、24、若しくは25℃、約20〜30℃、又は約20〜40℃に冷却できる。60〜80℃に加熱された反応物は、典型的には約35〜45℃に冷却できる。冷却した時の反応物の温度は、例えば、約5〜10分間維持できる。
任意選択で、本明細書の反応物を、不活性ガス(例えば、窒素)の下に維持できる。本明細書では、用語「不活性ガス」は、本明細書での反応物を調製するために開示されたものなど、1組の所与の条件の下で化学反応を受けない気体を指す。
反応物を、上記の温度処理(周囲温度及び/又は加熱)及び冷却処理のいずれの後でも、任意選択でクエンチできる。反応物のクエンチは、酸、塩基、又は特定の塩を反応物に加えることにより達成できる。反応物をクエンチするのに有用な様々な酸、塩基、及び塩には、酢酸(例えば、約50〜70wt%)、任意の他の鉱酸又は有機酸(例えば、約50〜70wt%)、酢酸マグネシウム(例えば、約20〜25wt%)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせがあるが、これらに限定されない。ポリα−1,3−グルカンアセテートを製造する特定の実施形態において、反応物は、酢酸(例えば、約50又は70wt%)又は酢酸マグネシウム(例えば、約20〜25wt%)によりクエンチされる。
クエンチされた反応物は、任意選択で、約40℃〜150℃に、最長48時間加熱できる。例えば、ポリα−1,3−グルカンアセテートを製造するプロセスなどにおいて、クエンチされた反応物を、約100℃に、最長で約20〜40分(例えば、25〜30分)間加熱できる。任意選択で、水を反応物(クエンチされている、又はクエンチされていない)に加えてよく、次いでそれが約40℃〜150℃(例えば、約100℃)に、最長で約20〜40分(例えば、25〜30分)間加熱されて、加水分解によりアシル基のDoSを低下させる。そのような加熱/水処理工程は、ポリα−1,3−グルカンアセテートを製造するプロセスにおいてDoSを低下させるのに有用なことがある。
本明細書の反応により製造されるポリα−1,3−グルカンエステル化合物は、ポリα−1,3−グルカンエステル化合物にとって非溶媒である作用剤を使用して、沈殿させることができる。例えば、脱イオン水及び/又はメタノールを、ポリα−1,3−グルカンエステル化合物を沈殿させるのに充分な量で反応溶液に加えることができる。本明細書での沈殿は、エア駆動ブレンダーなど、当技術分野で公知である任意の手段により、反応溶液と非溶媒を混合することをさらに含み得る。
沈殿したポリα−1,3−グルカンエステル化合物を、水で2回以上洗浄し、それに続いて、炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム)溶液(例えば、約5wt%)中での洗浄により、任意選択で中和できる。次いで、中性pHが得られるまで、エステル化合物を、1回、2回、又は3回以上水により洗浄できる。或いは、沈殿したポリα−1,3−グルカンエステル化合物を水及び塩基で(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、又は水酸化カリウムなどの希釈したアルカリ水酸化物)洗浄して中性pHを達成でき、任意選択で、それに続いて水により洗浄できる。本明細書での用語「中性pH」は、実質的に酸性でも塩基性でもないpH(例えば、約6〜8、又は約6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、7.0、7.2、7.4、7.6、7.8、若しくは8.0のpH)を指す。
開示される反応物中に製造されるポリα−1,3−グルカンエステルを単離できる。上記の沈殿プロセスは単離プロセスの一工程になり得る。単離は、中和及び/又は洗浄工程の前又は後に、漏斗、遠心分離機、プレスフィルター、又は当技術分野で公知である、固体から液体を除去できる任意の他の方法若しくは装置を利用して、沈殿した生成物と共に実施できる。単離されたポリα−1,3−グルカンエステル生成物は、真空乾燥、風乾(例えば、約16〜35℃)、又は凍結乾燥など、当技術分野で公知である任意の方法を利用して乾燥させることができる。
上記エステル化反応のいずれも、ポリα−1,3−グルカンエステル生成物をさらなる修飾の出発物質として利用して繰り返すことができる。この手法は、アシル基のDoSを増加させるのに、且つ/又は1つ以上の異なるアシル基をエステル生成物に付加するのに好適になり得る。
ポリα−1,3−グルカンエステル生成物の構造、分子量、及びDoSは、NMR分光法及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)など、当技術分野で公知である種々の生理化学的分析を利用して確認できる。
本明細書のポリα−1,3−グルカンエステル化合物を調製するために使用されるポリα−1,3−グルカンのグルコースモノマー単位の間の、α−1,3であるグリコシド連結のパーセンテージは、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%(又は50%と100%の間の任意の整数値)である。したがって、そのような実施形態において、ポリα−1,3−グルカンは、約50%未満、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、又は0%(又は0%と50%の間の任意の整数値)のα−1,3でないグリコシド連結を有する。
本明細書のポリα−1,3−グルカンエステル化合物を調製するのに使用されるポリα−1,3−グルカンは、好ましくは、直鎖/非分岐型である。特定の実施形態において、ポリα−1,3−グルカンは分岐点を全く有さないか、又はポリマー中のグリコシド連結のパーセントとして約10%未満、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%の分岐点を有する。分岐点の例にはα−1,6分岐点がある。
本明細書のポリα−1,3−グルカンエステル化合物を調製するのに使用されるポリα−1,3−グルカンのMn又はMwは、少なくとも約500〜約300000になり得る。さらに或いは、Mn又はMwは、例えば、少なくとも約10000、25000、50000、75000、100000、125000、150000、175000、200000、225000、250000、275000、又は300000(又は10000と300000の間の任意の整数)になり得る。
ポリα−1,3−グルカントリアセテートを使用して、0.05〜2.70のDoSを有するポリα−1,3−グルカンアセテートを製造するプロセスが本明細書に開示される。このプロセスに使用されるトリアセテートは、例えば、上記プロセスのいずれによっても製造できる。このプロセスは、ポリα−1,3−グルカントリアセテートを酢酸及び水と接触させて、調合物を形成すること、及び約3〜10kg/cm2の蒸気圧力を調合物に加えてその温度を約260℃まで上げることを含む。このプロセスは、0.05〜2.70のDoSを有するポリα−1,3−グルカンアセテートを製造する。そのようなDoSの低下は、ポリα−1,3−グルカントリアセテートのアセチル基の一部の加水分解から生じる。この方法により製造されたポリα−1,3−グルカンアセテートは、任意選択で単離できる。
ポリα−1,3−グルカントリアセテートは、任意選択で洗浄できるか、且つ/又はこのプロセスでの使用の前に中性pHを有する。ポリα−1,3−グルカントリアセテートは、最初にグルカントリアセテートを酢酸に溶解させ、次いでこの溶液に水を加えることにより、酢酸及び水と接触させることができる。特定の実施形態において、調合物中の酢酸の量は、約75、80、85、又は90wt%であってよく、調合物中の水の量は、最高で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10wt%であってよい。
次いで、ポリα−1,3−グルカントリアセテート、酢酸、及び水を含む調合物は、約3〜10kg/cm2の蒸気圧力に曝され、その温度を約260℃まで上げる。この工程は、任意選択で、パーリアクター、オートクレーブ、又は当技術分野で公知である任意の他の圧力容器などの圧力容器中で実施できる。例えば、約4、5、又は6kg/cm2の蒸気圧力を利用して、調合物の温度を約140〜160℃(例えば、150℃)に上げることができる。この上昇した温度を、約30、40、50、60、又は70分間保つことができ、その後、加える圧力を、約7、8、又は9kg/cm2にさらに増加させることができる。この上昇した圧力に達した後、温度を周囲温度に冷却できる。
0.05〜2.70のDoSを有するポリα−1,3−グルカンアセテートは、先に開示された沈殿工程、洗浄工程、及び単離工程のいずれを利用しても、圧力処理/熱処理された調合物から単離できる。
先に記載された様々な方法を利用して形成されたポリα−1,3−グルカンエステルを使用して、様々な種類のフィルムを調製できる。開示された方法に従って調製されたポリα−1,3−グルカンエステルを1種以上の溶媒に溶解させて、ポリα−1,3−グルカンエステルの溶液を与えることができる。本明細書では、用語「ポリα−1,3−グルカンエステルの溶液」は、1種以上の溶媒に溶解したポリα−1,3−グルカンエステルを指す。この目的に有用な溶媒には、塩化メチレン(ジクロロメタン)、メタノール、クロロホルム、テトラクロロエタン、ギ酸、酢酸、ニトロベンゼン、ブロモホルム、ピリジン、ジオキサン、エタノール、アセトン、アルコール類、モノクロロベンゼン、ベンゼン、及びトルエンなどの芳香族化合物、酢酸エチル及び酢酸プロピルなどのエステル、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、及びエチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル、又はこれらの組み合わせがあるが、これらに限定されない。一実施形態において、ポリα−1,3−グルカンアセテートをアセトンに溶解させて、ポリα−1,3−グルカンアセテートの溶液が調製される。次いで、この溶液を表面に適用して、溶媒を蒸発させると、所望の厚さのフィルムが形成される。この用途に好適な表面は、ガラス、Teflon(登録商標)、プラスチック、又は様々な種類の基材であり得るが、これらに限定されない。上述の溶液からフィルムを作る方法は当技術分野で周知であり、溶液流涎、スピンコート、溶射、及び通常の噴霧があるが、これらに限定されない。一実施形態において、ポリα−1,3−グルカンエステルの溶液は、ガラス板上に流涎される。
ポリα−1,3−グルカンエステルフィルムの引裂抵抗、引張強度、及び温度安定性は、当技術分野で周知である方法により測定できる。本明細書では、用語「引裂抵抗」は、引裂きの作用にどの程度フィルムが耐えられるかの尺度と定義される。本明細書での用語「引張強度」は、材料が引裂きなしに耐えられる最大の張力を指す。本明細書に開示されるポリα−1,3−グルカンエステルフィルムの好適な引裂抵抗は、少なくとも0.1gf/milであり得る。開示された発明に好適なフィルムの引張強度は、少なくとも4kgf/mm2であり得る。一実施形態において、ポリα−1,3−グルカンジアセテートフィルムの引裂抵抗は2〜2.4gf/milであり、引張強度は3.97〜4.8kgf/mm2である。別の実施形態において、引裂抵抗は1.4〜3.1gf/milであり、引張強度は4.98〜6.44kgf/mm2である。
ポリα−1,3−グルカンエステルフィルムの曇り度及び透過率は、当技術分野で周知である方法により決定できる。本明細書では、用語「曇り度」は、入射光の方向から2.5度を超えて逸れた光のパーセンテージを指す。低い曇り度値は、より良い透明度に相当する。本明細書での用語「透過率」は、フィルムを通過する明示された波長の入射光の率を指す。この用途においてポリα−1,3−グルカンアセテートフィルムに好適なフィルムは、最高で20%の曇り度及び少なくとも80%の透過率を有し得る。一実施形態において、曇り度は6.2%であり、透過率は94.6%である。
フィルムが製造される速度は、弱溶媒、例えば、メタノール及びシクロヘキサン、エタノール及びn−ブタノール、又は多量のメタノール若しくはエタノールを、塩化メチレンに加えてポリα−1,3−グルカンエステル溶液に加えて、凝固速度を加速することにより、増加させることができる。フィルムの表面温度及び収縮パーセンテージを制御することにより、面配向度及び結晶化度を制御できる。
開示された発明は、以下の実施例においてさらに定義される。これらの実施例が、本発明の特定の好ましい態様を示すものの、説明のためにのみ与えられることを理解されたい。上記の議論及びこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的な特徴を確かめることができ、その趣旨及び範囲から逸脱せずに、本発明の種々の変更形態及び改良形態を行って、それを種々の用途及び条件に適合させることができる。
略語
「mL」はミリリットルであり;「g」はグラムであり;「DI水」は脱イオン水であり;「μL」はマイクロリットルであり;「℃」はセルシウス度であり;「mg」はミリグラムであり;「TFA」はトリフルオロ酢酸であり;「Hz」はヘルツであり;「MHz」はメガヘルツであり;「ppm」は百万分率であり;「HFIP」はヘキサフルオロ−2−プロパノールであり;「TFA−d」は重水素化トリフルオロ酢酸であり、「kgf」はキログラム重である。
材料
硫酸、酢酸、及び炭酸水素ナトリウムは、EMD Chemicals(Billerica,MA)から得た。無水酢酸は、Acros Organics(Pittsburgh,PA)から得た。酪酸、酪酸無水物、プロピオン酸無水物、及び酢酸中の0.1N過塩素酸は、Sigma Aldrich(St.Louis,MO)から得た。プロピオン酸は、JT Baker(Center Valley,PA)から得た。酢酸マグネシウムは、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から得た。特記されない限り、本明細書で使用した酸及び無水物は全て、水を含まなかったか、又は実質的に水を含まなかった。
ポリα−1,3−グルカンの調製
ポリα−1,3−グルカンは、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2013/0244288号明細書に記載の通り、gtfJ酵素調合物を使用して調製した。
ポリα−1,3−グルカンアセテート誘導体の置換度を決定するための1H核磁気共鳴(NMR)法
ポリα−1,3−グルカンアセテートエステル誘導体の置換度(DoS)を、1H NMRを利用して決定した。およそ20mgの誘導体試料を、化学天秤上でバイアルに量り入れた。バイアルを天秤から取り出し、0.7mLのTFA−dをバイアルに加えた。磁気撹拌子をバイアルに加え、固体試料が溶解するまで混合物を撹拌した。次いで、重水素化ベンゼン(C6D6)0.3mLをバイアルに加え、TFA−dが与えるであろうよりも良好なNMRロックシグナルを与えた。ガラスピペットを使用して、溶液の一部0.8mLを5mmのNMRチューブに移した。定量的な1H NMRスペクトルを、5mm Autoswitchable Quadプローブを備えたAgilent VNMRS 400 MHz NMR分光計を利用して取得した。スペクトル周波数399.945MHzで、スペクトルウィンドウ6410.3Hz、取得時間1.278秒、並びにパルス間の遅延10秒及び124パルスを利用して、スペクトルを得た。時間ドメインデータを、0.78Hzの指数関数的乗算(exponential multiplication)を利用して変換した。
得られたスペクトルの2つの領域:7つのポリα−1,3−グルカンプロトンの積分を与える3.1ppm〜6.0ppm及び3つのアセチルプロトンの積分を与える1.4ppm〜2.7ppmを積分した。アセチル化の程度を、アセチルプロトン積分面積の三分の一を、ポリα−1,3−グルカンプロトン積分面積の七分の一で割って計算した。
ポリα−1,3−グルカンプロピオネート誘導体の置換度を決定するための1H NMR法
ポリα−1,3−グルカンプロピオネートエステル誘導体のDoSを、1H NMRを利用して決定した。およそ20mgの誘導体試料を、化学天秤上のバイアルに量り入れた。バイアルを天秤から取り出し、0.7mLのTFA−dをバイアルに加えた。磁気撹拌子をバイアルに加えて、固体試料が溶解するまで混合物を撹拌した。次いで、重水素化ベンゼン(C6D6)0.3mLをバイアルに加えて、TFA−dが与えるであろうよりも良好なNMRロックシグナルを与えた。ガラスピペットを使用して、溶液の一部0.8mLを5mmのNMRチューブに移した。定量的な1H NMRスペクトルを、5mm Autoswitchable Quadプローブを備えたAgilent VNMRS 400 MHz NMR分光計を利用して取得した。スペクトル周波数399.945MHzで、スペクトルウィンドウ6410.3Hz、取得時間1.278秒、並びにパルス間の遅延10秒及び32パルスを利用して、スペクトルを得た。時間ドメインデータを、1.0Hzの指数関数的ラインブロードニング(line broadening)を利用して変換し、ベンゼン溶媒ピークを7.15ppmに設定した。
ポリα−1,3−グルカンプロピオネート試料では、得られたスペクトルの3つの領域:7つのポリα−1,3−グルカンプロトンの積分を与える3.3ppm〜6.0ppm;プロピオニル基のメチレン基プラスアセチル基のメチル基の積分を与える1.9ppm〜2.7ppm;及びプロピオニル基のメチル基の積分を与える0.8ppm〜1.3ppmを積分した。
プロピオニル基によるDoSを、プロピオニル基のメチル基の積分値を3で割って計算した。次いで、プロピオニル基のメチレン基の積分値を、プロピオニル基のメチル基の積分値に0.666をかけて計算した。次いで、この値を、プロピオニル基のメチレン基プラスアセチル基のメチル基の領域の積分から引くことにより、アセチル基のメチル基の積分値を与えた。
ポリα−1,3−グルカン混合エステル誘導体の置換度を決定するための1H NMR法
ポリα−1,3−グルカン混合エステル誘導体のDoSを、1H NMRを利用して決定した。およそ20mgの誘導体試料を化学天秤上のバイアルに量り入れた。バイアルを天秤から取り出し、0.7mLのTFA−dをバイアルに加えた。磁気撹拌子をバイアルに加えて、固体試料が溶解するまで混合物を撹拌した。次いで、重水素化ベンゼン(C6D6)0.3mLをバイアルに加えて、TFA−dが与えるであろうよりも良好なNMRロックシグナルを与えた。ガラスピペットを使用して、溶液の一部0.8mLを5mmのNMRチューブに移した。定量的な1H NMRスペクトルを、5mm Autoswitchable Quadプローブを備えたAgilent VNMRS 400 MHz NMR分光計を利用して取得した。スペクトル周波数399.945MHzで、スペクトルウィンドウ6410.3Hz、取得時間1.278秒、並びにパルス間の遅延10秒及び32パルスを利用して、スペクトルを得た。時間ドメインデータを、1.0Hzの指数関数的ラインブロードニングを利用して変換し、ベンゼン溶媒ピークを7.15ppmに設定した。
ポリα−1,3−グルカンアセテートプロピオネート試料では、得られたスペクトルの3つの領域:7つのポリα−1,3−グルカンプロトンの積分を与える3.3ppm〜6.0ppm;プロピオニル基のメチレン基プラスアセチル基のメチル基の積分を与える1.9ppm〜2.7ppm;及びプロピオニル基のメチル基の積分を与える0.8ppm〜1.3ppmを積分した。
グルカン上のプロピオニル基によるDoSを、プロピオニル基のメチル基の積分値を3で割ることにより計算した。次いで、プロピオニル基のメチレン基の積分値を、プロピオニル基のメチル基の積分値に0.666をかけて計算した。次いで、この値を、プロピオニル基のメチレン基プラスアセチル基のメチル基の領域の積分から引いて、アセチル基のメチル基の積分値を与えた。最後に、アセチル基積分値を3で割って、アセチル化の程度を得た。
ポリα−1,3−グルカンアセテートブチレート試料では、得られたスペクトルの3つの領域:7つのポリα−1,3−グルカンプロトンの積分を与える3.3ppm〜6.0ppm;ブチリル基のカルボニル基のαにあるメチレン基プラスアセチル基のメチル基の積分を与える1.9ppm〜2.6ppm;及びブチリル基のメチル基の積分を与える0.6ppm〜1.0ppmを積分した。
グルカン上のブチリル基によるDoSを、ブチリル基のメチル基の積分値を3で割ることにより計算した。次いで、ブチリル基のメチレン基の積分値を、ブチリル基のメチル基の積分値に0.666をかけて計算した。次いで、この値を、ブチリル基のメチレン基プラスアセチル基のメチル基の領域の積分から引いて、アセチル基のメチル基の積分値を与えた。最後に、アセチル基積分値を3で割って、アセチル化の程度を得た。
重合度の決定
重合度(DP)をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により決定した。ポリα−1,3−グルカンエステルを、45℃で4時間振とうしながらHFIPに溶解させた(2mg/mL)。利用したクロマトグラフシステムは、3つのオンライン検出器:Watersの示差屈折計2410、Wyatt Technologies(Santa Barbara,CA)のマルチアングル光散乱光度計Heleos(商標)8+、及びWyatt Technologiesの示差毛細管粘度計(differential capillary viscometer)ViscoStar(商標)と接続している、Waters Corporation(Milford,MA)のAlliance(商標)2695分離モジュールであった。SECに使用したカラムは、2つのShodex(Showa Denko America,New York)GPC HFIP−806M(商標)スチレン−ジビニルベンゼンカラム及び1つのShodex GPC HFIP−804M(商標)スチレン−ジビニルベンゼンカラムであった。移動相は、0.01Mトリフルオロ酢酸ナトリウムを含む再蒸留されたHFIPであった。利用したクロマトグラム条件は、カラム及び検出器区画で50℃、試料及び注入器区画で40℃、0.5mL/分の流量、及び100μLの注入体積であった。データ整理に使用したソフトウェアパッケージは、WyattのAstraバージョン6であった(カラム較正のついた三重検出法(triple detection method))。
実施例1
酸交換されたポリα−1,3−グルカンの調製
この実施例は、ポリα−1,3−グルカンのエステル誘導体の製造に使用できる、酸交換されたポリα−1,3−グルカンの製造を説明する。
10gのポリα−1,3−グルカンを、150mLのDI水と共に250mLガラスビーカー中に入れることにより、酸交換されたポリα−1,3−グルカンを調製した。この混合物をホットプレート上で1時間沸騰させ、その後ポリα−1,3−グルカンを真空濾過により回収した。次いで、ポリα−1,3−グルカンを、100mLの氷酢酸と共に室温で撹拌し、それに続いて真空濾過を行う2つの酸交換工程に付して、酸交換されたポリα−1,3−グルカンを製造した。
他の形態の酸交換されたポリα−1,3−グルカンも、上記プロセスに従い、酢酸の代りにプロピオン酸又は酪酸を使用して調製した。
これらの技法により調製した酸交換されたポリα−1,3−グルカンを、以下の実施例のいくつかに使用して、種々のポリα−1,3−グルカンエステル誘導体を調製した。酸交換プロセスはポリα−1,3−グルカンから水を除くため、酸交換されたポリα−1,3−グルカンを、酸無水物を含むエステル化反応物に導入しても、酸無水物と反応し得る水は導入されない。
実施例2
ポリα−1,3−グルカンアセテートの調製
この実施例は、グルカンエステル誘導体、ポリα−1,3−グルカンアセテートの製造を説明する。
酢酸を使用して実施例1で調製した酸交換されたポリα−1,3−グルカン(10g)を、磁気撹拌子、熱電対、及び冷却器を備えた500mL丸底フラスコ中で、180mLの酢酸及び1.84gの硫酸を含む混合物に加えた。この混合物を周囲温度で1分間撹拌し、その後無水酢酸(50mL)を混合物に加えた。反応を30分間周囲温度で進行させ、次いで35℃の水浴中で20分間加熱し、それに続いて30分間50℃に加熱した。得られた反応調合物は、固体を全く含んでいなかった。次いで、反応物を水浴から外し、15分間冷却して42℃にした。次いで、反応物を25mLの70%酢酸でクエンチし、40分間撹拌した。エア駆動ブレンダー及びDI水を使用して、ポリα−1,3−グルカンアセテートを沈殿させた。固体を水で2回30分間洗浄し、それに続いて5%炭酸水素ナトリウムで1回洗浄した。次いで、ポリα−1,3−グルカンアセテートの固体を、最後に、中性pHを達成するまで、水で洗浄した(2回の水洗浄)。固体を真空濾過により回収し、真空下で乾燥させ、NMR及びSECにより特性化した。この方法は、DoSが2.3でありMnが29170であるポリα−1,3−グルカンアセテートを生じた。
このように、エステル誘導体、ポリα−1,3−グルカンアセテートを調製し、単離した。
実施例3
ポリα−1,3−グルカンアセテートの追加の調製
この実施例は、種々の反応条件を利用した、グルカンエステル誘導体、ポリα−1,3−グルカンアセテートの製造を説明する。
酸交換されたポリα−1,3−グルカンを、酢酸を使用して実施例1の通り調製した。180mLの酢酸と0.08gの濃硫酸の混合物を、磁気撹拌子及び熱電対を備えた500mL丸底フラスコ中で調製した。この混合物を18℃に冷却した。酸交換されたポリα−1,3−グルカン(10g)を、冷却された混合物にゆっくりと加え、1分間撹拌した。次いで、無水酢酸(50mL)を混合物に加えた。反応を、加熱せずに10分間進行させ、次いで、35℃の水浴で20分間加熱した。得られた反応物は、固体を全く含まず、氷浴を使用して7分かけて22℃に冷却した。次いで、反応物を25mLの70%酢酸でクエンチし、40分間撹拌した。実施例2に記載の通り、ポリα−1,3−グルカンアセテートを沈殿させ、洗浄し、分析した。このプロセスは、DoSが2.41でありMnが73960であるポリα−1,3−グルカンアセテートを生じた。
異なる濃度の試薬を使用して、異なるエステル生成物が形成できた。以下の表1は、上記のプロセスに類似であるが、表に示される特定の変更を有するプロセスを利用して合成した異なるポリα−1,3−グルカンアセテートエステルを示す。表1の結果は、反応条件及び反応物中に使用したポリα−1,3−グルカン出発物質の分子量を変えることにより、エステル生成物中のアセチル基によるDoS並びに生成物の分子量を変えられることを示す。
このように、種々の形態のエステル誘導体、ポリα−1,3−グルカンアセテートを調製し、単離した。
実施例4
ポリα−1,3−グルカンアセテートの追加の調製
この実施例は、加水分解工程を有する、ポリα−1,3−グルカンアセテートの製造プロセスを説明する。
酢酸を使用して実施例1の通り調製した酸交換されたポリα−1,3−グルカン(28g)を、93.4mLの酢酸及び2.24gの濃硫酸を含む混合物に加え、混合した。この混合物を、オーバーヘッドスターラー及び熱電対を備えた1Lジャケット付き反応容器に加え、再循環浴を使用して12℃に冷却した。次いで、反応混合物を1分間撹拌してから、無水酢酸(89mL)を加えた。42℃に設定した再循環浴を使用して反応物を40分間加熱した。この段階の反応物は、固体を全く含まず、過剰な水と共に15.25g(24%)の酢酸マグネシウムでクエンチし、硫酸含量を2%に低下させた。次いで、反応物を25分かけて100℃に加熱し、その後、この温度で2時間撹拌した。24%酢酸マグネシウムを5%過剰に(6.1g)加えて、反応物を完全にクエンチした。実施例2の通りに、ポリα−1,3−グルカンアセテートを沈殿させ、洗浄し、分析した。このプロセスは、DoSが2.58であるポリα−1,3−グルカンアセテートを生じた。
このように、加水分解工程を組み込んだ方法を利用して、エステル誘導体、ポリα−1,3−グルカンアセテートを調製した。
実施例5
ポリα−1,3−グルカントリアセテートの加水分解によるポリα−1,3−グルカンアセテートの調製
この実施例は、一部分、ポリα−1,3−グルカントリアセテートの加水分解によるポリα−1,3−グルカンアセテートの調製を説明する。
ポリα−1,3−グルカントリアセテートを、最初に以下の通り調製した。
酢酸(384mL)、無水酢酸(990mL)、及び塩化メチレン(890mL)を混合した。この調合物を、オーバーヘッドスターラー及び熱電対を備えた4Lガラス反応容器に加え、12℃に冷却した。酢酸を使用して実施例1で調製した酸交換されたポリα−1,3−グルカン(130g)を、冷却された混合物にゆっくりと加え、1分間撹拌した。次いで、酢酸(180mL)中の過塩素酸(0.1N)を加えた。反応を周囲温度で3時間35分進行させた。反応物は、固体を全く含まず、メタノールを含むエア駆動ブレンダーに加えて、ポリα−1,3−グルカントリアセテートを沈殿させた。このように形成されたポリα−1,3−グルカントリアセテートの固体を、メタノールで30分間洗浄し、それに続いて、脱イオン(DI)水で2回洗浄し、5%炭酸水素ナトリウムで1回洗浄した。次いで、ポリα−1,3−グルカントリアセテートの固体を、最後に、中性のpHを達成するまで水で洗浄し(2回の水洗浄)、真空濾過により回収し、真空下で乾燥させ、NMR及びSECにより特性化した。製造されたポリα−1,3−グルカントリアセテートは、3.0のDoS及び132300のMnを有した。
先に製造されたポリα−1,3−グルカントリアセテートを、最初に80mLの酢酸に溶かすことにより、加水分解のために準備した。次いで、DI水(4mL)をこの調合物に加え、完全に混合するまで磁気撹拌子を使用して撹拌した。次いで、調合物を、パーリアクター(Parr Instrument Company,Moline,IL)に移した。5kg/cm2の圧力の蒸気を反応器に吹き込み、温度を12分で150℃に上げた。調合物をこの温度で50分間保った。次いで、圧力を5kg/cm2から8.37kg/cm2に増加させ、その後反応容器を周囲温度に冷却した。反応器から回収した調合物は黄色であった。しかし、DI水を加えると、ポリα−1,3−グルカンアセテートの白色固体が沈殿した。このポリα−1,3−グルカンアセテートを、実施例2の通り、真空濾過を利用して単離し、洗浄し、分析した。このプロセスは、DoSが2.4でありMnが44200であるポリα−1,3−グルカンアセテートを生じた。
このように、DoSが2.75未満であるポリα−1,3−グルカンアセテートを、ポリα−1,3−グルカントリアセテートから調製した。
実施例6
ポリα−1,3−グルカンプロピオネートの調製
この実施例は、グルカンエステル誘導体、ポリα−1,3−グルカンプロピオネートの製造を説明する。
酸交換されたポリα−1,3−グルカン(119130のMn)を、プロピオン酸を酢酸の代りに使用した以外実施例1に記載の通り調製した。プロピオン酸(8mL)及び硫酸(0.03g)を、250mL丸底フラスコ中で混合し、18℃に冷却した。酸交換されたポリα−1,3−グルカン(2g)を、冷却された混合物にゆっくりと加え、1分間撹拌した。次いで、プロピオン酸無水物(10mL)をこの調合物に加え、その後0.6mLの氷酢酸を加えた。反応を、加熱しないで5分間進行させ、次いで42℃の水浴中で1時間45分加熱した。最高温度が43℃を超えないようにして、分子量の過度の低下を防いだ。得られた反応調合物は、固体を全く含まず、氷浴を使用して5分かけて20℃に冷却した。次いで、反応物を、4mLの50%酢酸水溶液でクエンチし、45分間撹拌した。エア駆動ブレンダー及びDI水を使用して、ポリα−1,3−グルカンプロピオネートを沈殿させた。固体を、30分間水で2回、それに続いて5%炭酸水素ナトリウムで1回洗浄した。次いで、ポリα−1,3−グルカンプロピオネートの固体を、中性pHを達成するまで、水で洗浄した(2回の水洗浄)。固体を真空濾過により回収し、真空下で乾燥させ、NMR及びSECにより特性化した。固体を、44.1wt%のプロピオニル基(0wt%アセチル基)及び59510のMnを有するポリα−1,3−グルカンプロピオネートであると確認した。
このように、エステル誘導体、ポリα−1,3−グルカンプロピオネートを調製し、単離した。
実施例7
ポリα−1,3−グルカンアセテートブチレートの調製
この実施例は、グルカン混合エステル誘導体、ポリα−1,3−グルカンアセテートブチレートの製造を説明する。
酢酸により実施例1で調製した酸交換されたポリα−1,3−グルカン(10g)を、磁気撹拌子、熱電対、及び冷却器を備えた500mL丸底フラスコ中で、21mLの氷酢酸、20mLの酪酸、及び0.09gの硫酸を含む混合物に加えた。氷浴を使用して混合物を18℃に冷却し、1分間撹拌してから、酪酸無水物(39mL)をフラスコに加えた。反応を、加熱なしで10分間進行させ、次いで、35℃の水浴中で80分間加熱し、それに続いて39℃に30分間加熱したが、達した最高温度は39℃であり生成物分子量の過度な低下を防いだ。得られた粘性を帯びた溶液は固体を全く含まず、氷浴を使用して溶液を20℃に10分間冷却した。次いで、反応物を20mLの50%酢酸水溶液でクエンチし、40分間撹拌した。エア駆動ブレンダー及びDI水を使用して、固体のポリα−1,3−グルカンアセテートブチレートを沈殿させた。固体を、水で2回30分間洗浄し、それに続いて5%炭酸水素ナトリウムで洗浄した。次いで、このように得られた固体を、最後に、中性pHを達成するまでDI水で洗浄した(2回の水洗浄)。固体を真空濾過により回収し、真空下で乾燥させ、NMR及びSECにより特性化した。このプロセスは、1.0のブチリルDoS、1.3のアセチルDoS、及び66340の数平均分子量(Mn)を有するポリα−1,3−グルカンアセテートブチレート混合エステルを生じた。
異なる濃度の試薬を使用して、異なる混合エステル生成物が形成できた。以下の表2は、上記のプロセスに類似であるが、表に示される特定の変更を有するプロセスを利用して合成した異なるポリα−1,3−グルカンアセテートブチレートエステルを示す。表2の結果は、反応条件及び反応物中に使用したポリα−1,3−グルカン出発物質の分子量を変えることにより、混合エステル生成物中のアセチル基及びブチリル基の量並びに生成物の分子量を変えられることを示す。
このように、種々の形態の混合エステル誘導体、ポリα−1,3−グルカンアセテートブチレートを調製し、単離した。
実施例8
ポリα−1,3−グルカンアセテートプロピオネートの調製
この実施例は、グルカン混合エステル誘導体、ポリα−1,3−グルカンアセテートプロピオネートの製造を説明する。
酢酸を使用して実施例1に記載の通り、酸交換されたポリα−1,3−グルカンを調製した。35mLのプロピオン酸と0.09gの硫酸の混合物を、500mL丸底フラスコ中で調製し、18℃に冷却した。酸交換されたポリα−1,3−グルカンの固体(10g)を、冷却された混合物にゆっくりと加え、1分間撹拌した。次いで、プロピオン酸無水物(50mL)を加え、その後5mLの氷酢酸を加えた。反応を、加熱なしに10分間進行させ、次いで、30℃の水浴中で1時間加熱し、それに続いて34℃に10分間加熱した。最高温度が36℃を超えないようにして、生成物分子量の過度な低下を防いだ。このように得られた溶液は固体を全く含まず、溶液を氷浴中で20℃に5分間冷却した。次いで、反応物を、20mLの50%酢酸水溶液でクエンチし、40分間撹拌した。エア駆動ブレンダー及びDI水を使用して、ポリα−1,3−グルカンアセテートプロピオネートを沈殿させた。固体のポリα−1,3−グルカンアセテートプロピオネート生成物を、2回水で30分間洗浄し、それに続いて5%炭酸水素ナトリウムで1回洗浄した。次いで、中性pHを達成するまで、固体を水で洗浄した(2回の水洗浄)。固体を真空濾過により回収し、真空下で乾燥させ、NMR及びSECにより特性化した。作られた固体を、17.6wt%のアセチル基及び32.9wt%のプロピオニル基を含み、64030のMnを有するポリα−1,3−グルカンアセテートプロピオネートであると確認した。
異なる濃度の試薬を使用して、異なる混合エステル生成物が形成できた。以下の表3は、上記のプロセスに類似であるが、表に示される特定の変更を有するプロセスを利用して合成した異なるポリα−1,3−グルカンアセテートプロピオネートエステルを示す。表3の結果は、反応条件及び反応物中に使用したポリα−1,3−グルカン出発物質の分子量を変えることにより、混合エステル生成物中のアセチル基及びプロピオニル基の量並びに生成物の分子量を変えられることを示す。
このように、種々の形態の混合エステル誘導体、ポリα−1,3−グルカンアセテートプロピオネートを調製し、単離した。
実施例9
硫酸を触媒として使用するポリα−1,3−グルカントリアセテートの調製
この実施例は、反応物中で硫酸を触媒として使用するポリα−1,3−グルカントリアセテートの製造を説明する。
酸交換されたポリα−1,3−グルカンを、酢酸を使用して実施例1に記載の通り調製した。180mLの酢酸と触媒としての1.84gの濃硫酸を含む混合物を、オーバーヘッドスターラー及び熱電対を備えた500mL丸底フラスコ中で調製した。酸交換されたポリα−1,3−グルカン(10g)をゆっくりと混合物に加え、窒素下で1分間撹拌した。この混合物を、氷浴を使用して約18℃に冷却した。無水酢酸(50mL)を反応物に加え、次いで45分かけて80℃に加熱して、この温度で30分間反応させた。反応物は、固体を全く含まず、氷浴を使用して5分かけて40℃に冷却した。次いで、反応物を25mLの70%酢酸でクエンチし、30分間撹拌した。エア駆動ブレンダー(Waring,Torrington,CT)及びDI水を使用して、ポリα−1,3−グルカントリアセテートを沈殿させた。固体のポリα−1,3−グルカントリアセテート生成物を、水で30分間2回洗浄し、それに続いて5%炭酸水素ナトリウムで洗浄した。次いで、固体を、中性pHを達成するまで水で洗浄した(2回の水洗浄)。固体を真空濾過により回収し、真空下で乾燥させ、NMR及びSECにより特性化した。このプロセスは、3.1のDoS及び5130のMnを有する7.8gのポリα−1,3−グルカントリアセテートを生じた。3.0を超えるDoS読取り値は、おそらく、NMR測定プロセスに典型的な積分のばらつきを反映している。
表4は、上記のプロセスに類似であるが、表に示される特定の変更を有するプロセスを利用して合成した異なる分子量のポリα−1,3−グルカントリアセテートエステルを示す。表4の結果は、反応条件及び反応物中に使用したポリα−1,3−グルカン出発物質の分子量を変えることにより、生成物の分子量を変えられることを示す。
このように、種々の形態のポリα−1,3−グルカントリアセテートを、硫酸を触媒として使用して反応物中で調製し、単離した。
実施例10
過塩素酸を触媒として使用するポリα−1,3−グルカントリアセテートの調製
この実施例は、反応物中で過塩素酸を触媒として使用するポリα−1,3−グルカントリアセテートの製造を説明する。
酸交換されたポリα−1,3−グルカンを、酢酸を使用して実施例1に記載の通り調製した。384mLの酢酸、990mLの無水酢酸、及び890mLの塩化メチレンの混合物を、オーバーヘッドスターラー及び熱電対を備えた4Lガラス反応容器中で調製し、12℃に冷却した。酸交換されたポリα−1,3−グルカン(130g)を、冷却された混合物にゆっくりと加え、1分間撹拌した。次いで、酢酸(180mL)中の過塩素酸(0.1N)を混合物に加えた。反応を、周囲温度で3時間35分進行させた。得られた反応物は固体を全く含まず、反応物を、メタノールを含むエア駆動ブレンダーに加え、ポリα−1,3−グルカントリアセテートを沈殿させた。ポリα−1,3−グルカントリアセテートの固体を、30分間メタノールで洗浄し、それに続いてDI水で2回、5%炭酸水素ナトリウムで1回洗浄した。次いで、ポリα−1,3−グルカントリアセテートを、中性pHを達成するまで水で洗浄した(2回の水洗浄)。固体を真空濾過により回収し、真空下で乾燥させ、NMR及びSECにより特性化した。このプロセスは、3.2のDoS及び132300のMnを有する221.5gのポリα−1,3−グルカントリアセテートを生じた。3.0を超えるDoS読取り値は、おそらく、NMR測定プロセスに典型的な積分のばらつきを反映している。
表5は、上記のプロセスに類似であるが、表に示される特定の変更を有するプロセスを利用して合成した異なる分子量のポリα−1,3−グルカントリアセテートエステルを示す。表5の結果は、反応条件及び反応に使用したポリα−1,3−グルカン出発物質の分子量を変えることにより、生成物の分子量を変えられることを示す。
このように、種々の形態のポリα−1,3−グルカントリアセテートを、過塩素酸を触媒として使用する反応物中で調製し、単離した。
実施例11
ポリα−1,3−グルカンアセテートを使用するフィルムの調製
実施例2の通り調製したポリα−1,3−グルカンアセテートを、10wt%混合物でアセトンに溶解させて溶液をつくった。次いで、溶液を、フィルム流涎機により清浄なガラス板上に流涎し、溶媒を蒸発乾固させて、フィルムを与えた。フィルムをガラスから外し、DI水ですすいだ。表6は、ポリα−1,3−グルカンアセテートの2つの異なる試料を使用して調製した2つの異なるポリα−1,3−グルカンアセテートフィルムの性質を示す。
実施例12
ポリα−1,3−グルカンアセテートフィルムの光学的分析
実施例11で調製したポリα−1,3−グルカンアセテートフィルムの試料を、色及び曇り度に関して分析した。収集したスペクトルは、ASTM E1164−09aと一致した。1nmインターバルでスペクトルバンド幅(SBW)=1、及び波長範囲=830〜360nm。表7は、この試験の結果を示す。
実施例13
ポリα−1,3−グルカントリアセテートフィルムの調製
ポリα−1,3−グルカントリアセテートを実施例10に記載の通り調製した。ポリα−1,3−グルカントリアセテートの10wt%溶液を、その10gを90gの塩化メチレン:メタノール(11.5:1v/v)に溶解させて調製した。次いで、この溶液を、Gardner Knife(Gardner Lab Inc.,Bethesda,MD)により清浄なガラス板上に流涎した。溶媒を蒸発乾固させた。溶媒蒸発後に製造されたフィルムをガラスから外し、DI水ですすいだ。表8は、この方法を利用して製造したポリα−1,3−グルカントリアセテートフィルムの引張及び引裂データをまとめる。構成要素グルカンエステルのMn及びDoSの変動が、製造されたフィルムに異なる物性を与えることが分かる。
実施例14
ポリα−1,3−グルカントリアセテートフィルムの熱分析
実施例13で調製したポリα−1,3−グルカントリアセテートフィルムを、MDSC及びTGAを利用して分析した。MDSC測定は、5〜6mgのフィルムを使って、加熱速度3℃/分、変調の振幅0.48℃、及び変調期間60秒で、0℃から出発して、N2中でQ1000TA装置を利用して実施した。
TGA実験は、N2下で周囲温度から800℃で、Q500TA装置を利用して実施した。
表9に与える情報は、先に開示した方法により調製したポリα−1,3−グルカントリアセテートフィルムの熱安定性/熱分解を示す。表9は、MDSC及びTGA測定から得たデータをまとめるものである。構成要素グルカンエステルのMn及びDoSの変動が、製造されたフィルムに異なる物性を与えることが分かる。
実施例15
ポリα−1,3−グルカントリアセテートフィルムの光学的分析
実施例13で調製したポリα−1,3−グルカントリアセテートフィルムを、色及び曇り度に関して分析した。スペクトルは、ASTM E1164−09aに合うように、1nmインターバルで1のスペクトルバンド幅(SBW)及び830〜360nmの波長範囲を利用して収集した。ポリα−1,3−グルカントリアセテートフィルムの光学的測定の結果を表10に示す。