三次元構造デバイスの適用拡大によって、大量の回路パターンを正確かつ短時間で測定、或いは検査する必要性が高まっている。また、回路パターンの高密度化、複雑化は今後も継続する見込みである。
以下に説明する実施例では、主に、回路パターンの設計データを分析し、測定、或いは検査目的の回路パターンの部位が正確に検査できるような傾斜観察条件を自動的に設定し、検査することを目的とする半導体計測システムを説明する。
以下に説明する実施例によれば、非観察対象の回路パターンの遮蔽が無く、観察対象が良好に撮影できる観察点を電子デバイスの設計データから導出することで、傾斜撮影条件の正確かつ自動的な設定を実現できる。
以下、図面を用いて半導体計測システムの具体例について説明する。
図2は半導体計測システムの概要を示す図である。半導体計測システムは回路パターンの画像データを取得する走査型電子顕微鏡201(SCANNING ELECTRON MICROSCOPE:SEM)と画像データの分析によって回路パターンを検査する制御装置214と、SEMの撮影条件等を含む撮像レシピを電子デバイスの設計データ213やデバイス情報215を活用して作成する撮像レシピ作成装置212とで構成される。
SEM201は電子デバイスが製造されたウエハ等の試料203に電子線202を照射し,試料203から放出された電子を二次電子検出器204や反射電子検出器205,206で捕捉し,A/D変換器207でデジタル信号に変換する。デジタル信号は制御装置214に入力されてメモリ208に格納され,CPU209やASICやFPGA等の画像処理ハードウェア210で目的に応じた画像処理が行われ,回路パターンが検査される。
回路パターンの側壁部や回路パターンの低部を検査する場合は、傾斜用偏光器261を制御し、電子線に傾斜をつけて回路パターンの目的の部位に電子線を照射し、傾斜画像を取得する。傾斜用偏光器261を制御するための傾斜観察条件は撮像レシピ作成装置212で設定される。電子線傾斜経路262は傾斜用偏向器261によって偏向された電子線の経路を示している。
なお、回路パターンの側壁を撮影する手段としては、電子線の照射角を制御する方法(チルト制御)の他に、傾斜撮影条件に基づき、試料203を乗せたステージ260を傾斜させ、回路パターンの目的の部位に電子線を照射させる手段(ステージ制御)もある。本実施例では、電子線の照射点と回路パターンの観察点を示す傾斜観察条件を設計パターンの分析に基づいて設定するものであり、傾斜撮影の手段についてはこれを限定しない。但し、ステージを傾斜させる場合、対物レンズと試料との間に、相応の空間を設ける必要があり、試料と対物レンズとの距離(ワーキングディスタンス)が大きくなってしまうため、高分解能装置に適用する場合には、電子ビームを傾斜させることが望ましい。
電子ビームを傾斜するためには例えば、図16に例示するように、電子ビームの理想光軸1602(ビームを偏向しないときのビーム軌道)に対し、ビームを傾斜して照射するためのビーム傾斜用偏向器1604を設けることが考えられる。ビーム傾斜用偏向器1604は、対物レンズ1605の物点1603にて電子ビーム1601を偏向することによって、電子ビーム1601の試料1606への到達角度を変化させるためのものである。
ビーム傾斜用偏向器1604によって紙面右側に偏向された電子ビーム1601は、対物レンズ1605の振り戻し作用によって、再度理想光軸1602に向かって偏向される。物点1603を偏向支点とすることによって、偏向角θの大きさによらず、試料1606表面と理想光軸1602の交点に電子ビーム1601を照射することが可能となる。
更に、試料の照射対象個所が、ビームの理想光軸1602下にない場合には、図17に例示するように、ビームの走査位置(視野)を移動するための偏向器1701、1702を用いて、対物レンズ1605と理想光軸1602の交点1703を偏向支点として、視野位置を移動させると共に、その際のビームの照射状態を利用して、ビームの傾斜照射を行うようにしても良い。
図4を用いて傾斜観察条件を説明する。図4は試料400上の回路パターンの観察点402と傾斜撮影するために制御された電子線の照射位置401の相対関係を示した図である。図4(a)は試料を斜め方向から見た図、図4(b)は試料を真上から見た図、図4(c)は試料を真横から見た図である。傾斜撮影の際の重要なパラメータは観察方向404と傾斜角405であり、この2つのパラメータを傾斜観察条件とする。
観察方向は試料をどの方向から観察するかのパラメータであり、傾斜角度は試料をどの角度で観察するかのパラメータである。照射長403は照射位置401と観察点402の位置関係を示すものである。これら観察方向と傾斜角が適切に設定されないと、非検査対象の回路の遮蔽を受けて、正確な観察点の撮影及び検査が困難になる。
更に制御装置214は,入力手段を備えたディスプレイ211と接続され,ユーザに対して画像や検査結果等を表示するGUI(GRAPHICAL USER INTERFACE) 等の機能を有する。なお,制御装置214における制御の一部又は全てを,CPUや画像の蓄積が可能なメモリを搭載した電子計算機等に割り振って処理・制御することも可能である。
撮像レシピ作成装置212は,制御装置214にネットワークまたはバス等を介して接続され、ユーザが決定した所定の検査条件に基づき、検査に必要とされる電子デバイスの座標,検査位置決めに利用するパターンマッチング用のテンプレート,傾斜観察条件等の撮影条件を含む撮像レシピを電子デバイスの設計データ213、デバイス情報215を利用して作成する。
図5は、制御部214に内蔵される演算処理装置をより詳細に示した図である。図5に例示する半導体計測システムは、走査型電子顕微鏡本体501、走査電子顕微鏡本体を制御する制御装置504、制御装置504へ所定の動作プログラム(レシピ)に基づいて制御信号を伝達すると共に、走査電子顕微鏡の上面撮影や傾斜撮影によって得られた信号(二次電子や後方散乱電子等)からパターンの検査を実行する演算処理装置505、半導体デバイスの設計データが格納された設計データ記憶媒体515、設計データの作成やシミュレーションを用いた設計データの修正等を行う設計装置516、及び所定の半導体検査条件を入力したり、検査結果や撮影画像を出力したりする入出力装置517が含まれている。
演算処理装置505は、得られた画像からパターンを検査するためのデータ処理装置として機能する。制御装置504は、レシピ実行部506からの指示に基づいて、走査電子顕微鏡本体501内の試料ステージ260や傾斜角偏向器261を制御し、所望の位置への走査領域(視野)の位置づけを実行する。
制御装置504からは設定倍率や視野の大きさに応じた走査信号が走査偏向器502に供給される。走査偏向器502は、供給される信号に応じて、所望の大きさに視野の大きさ(倍率)を変化させる。
演算処理装置505に含まれる画像処理部507は、走査偏向器502の走査と同期して、検出器503による検出信号を配列することによって得られる画像を処理する画像処理部507を備えている。また、演算処理装置505には、必要な動作プログラムや画像データ、測定結果等が記憶されるメモリ509が内蔵されている。
また、演算処理装置505には、予め記憶されたテンプレートを用いて画像内の評価対象を特定するためのマッチング処理部510、画像の測定や欠陥を判定する画像解析部511が含まれている。
試料から放出された電子は、検出器503にて捕捉され、制御装置504に内蔵されたA/D変換器でデジタル信号に変換される。画像処理部207に内蔵されるCPU、ASIC、FPGA等の画像処理ハードウェアによって、目的に応じた画像処理が行われる。
演算処理装置505は、入出力装置517と接続され、当該入出力装置517に設けられた表示装置に、操作者に対して画像や検査結果等を表示するGUI(GRAPHICAL USER INTERFACE)等の機能を有する。また,入出力装置517は,検査に必要とされる電子デバイスの座標,位置決めに利用するパターンマッチング用のテンプレート、撮影条件等を含む撮像レシピを手動もしくは,電子デバイスの設計データ記憶媒体515に記憶された設計データや観察対象となるデバイスの情報を活用して作成する撮像レシピ作成装置としても機能する。
入出力装置517は、設計データに基づいて形成される線図画像の一部を切り出して、テンプレートとするテンプレート作成部を備えており、マッチング処理部510におけるテンプレートマッチングのテンプレートとして、メモリ509に登録される。テンプレートマッチングは、位置合わせの対象となる撮像画像と、テンプレートが一致する個所を、正規化相関法等を用いた一致度判定に基づいて特定する手法であり、マッチング処理部510は、一致度判定に基づいて、撮像画像の所望の位置を特定する。
なお、本実施例では、テンプレートと画像との一致の度合いを一致度や類似度という言葉で表現するが、両者の一致の程度を示す指標という意味では同じものである。また、不一致度や非類似度も一致度や類似度の一態様である。
また、画像処理部507には、SEMによって得られた信号を積算して積算画像を形成する画像積算部508が内蔵されている。電子を補足する検出器503が複数あるようなケースでは、複数の検出器によって得られた複数の信号を組み合わせた画像を作成する。これにより、検査の目的に応じた像を生成することができる。また、一つの検出器で得られた複数の画像を積算することで個々の画像に含まれるノイズを抑えた画像を生成できる。
図6は、半導体パターンの測定、或いは検査手順を示すフローチャートである。本実施例では、外観検査装置や半導体のプロセスシミュレーションの評価等で予め特定されたウエハ上の欠陥可能性部位の検査に半導体計測を適用する例を説明する。欠陥可能性部位とは、欠陥の発生が予測される部位である。
最初にオペレータがレシピ作成装置212を利用してウエハ上の回路パターンを撮影、検査するための検査条件を設定する(ステップ601)。検査条件とは,SEM201の撮影倍率や検査対象となる回路パターンの座標(以下、検査座標とする)、傾斜観察の有無等である。
次に設定された検査条件に基づき、撮影レシピを生成する(ステップ602)。撮影レシピはSEM201を制御するためのデータであり,検査オペレータが設定した検査条件や,撮影画像から検査位置を特定するためのテンプレート、回路パターンの観察点を傾斜撮影するための傾斜観察条件が定義される。次にレシピに基づき,SEM201で回路パターンを撮影し、位置決め用のテンプレートを用いてパターンマッチングを行って,撮影画像内の検査ポイントを特定する(ステップ603)。
次に回路パターンの寸法を計測したり、設計パターン等との形状乖離量を計測したり、欠陥の有無を検査したりする(ステップ604)。計測の対象となる画像は前述したように複数の検出器から得られた信号の組み合わせによって生成された画像でもよいし、一つの検出器から得られた画像の積算によって生成された画像でもよい。最後に回路パターンの検査結果をメモリ509に書き出す(605)。
以下、撮影レシピ生成(ステップ602)の詳細を説明する。図7は、撮影レシピ生成の手順を示すフローチャートであり、特にビーム傾斜照射時のビーム条件を設定する工程を示すものである。欠陥可能性部位の観察座標全てにおいて、701〜705の手順を実施する。最初に、試料上の観察座標情報を入力する(ステップ701)。次にSEMの撮影条件を設定する(ステップ702)。SEMの撮影条件とは、SEMの加速電圧や電流値等であり、所定のルールに基づいて観察点毎に代えても良いし、同一でも良い。次に撮影画像からの検査位置を特定するためのテンプレートを設定する(ステップ703)。次に傾斜撮影を行う場合は傾斜観察条件を設定する(ステップ704)。最後に701〜704の情報を撮影レシピに書き込む(ステップ705)。傾斜撮影の有無は観察対象毎にユーザが設定してもよいし、所定のルールに基づいて観察点毎に変えることもできる。例えば観察点の座標から、検査対象のデバイスの情報が参照できる場合は、FINFETの回路パターンのみ傾斜観察するといったルールが適用できる。また、検査対象のレイヤー情報が参照できる場合は、デバイスの1層〜3層目までの検査は必ず傾斜観察するといったルールも適用できる。さらに、側壁部に欠陥が生じやすい回路が存在している試料上の位置が参照できれば、その位置に相当する観察点は傾斜観察するといったルールも適用できる。
次に傾斜観察条件の設定手順を詳細に説明する。図1は傾斜観察条件の設定手順の一例を示すフローチャートである。
最初に観察点の座標情報と、その観察点を中心とした局所的な回路パターンの設計データと、そのデバイスに関する情報を入力する(ステップ101)。観察点の座標は試料面に対するx,y座標と高さ方向のz座標である。デバイスに関する情報とは、デバイスの高さの情報や、回路パターンの凹凸の情報、回路パターンの種類を識別するための情報等である。次に設計パターン等の情報を分析して傾斜観察の観察方向と傾斜角を決定する(ステップ102)。最後に傾斜角観察情報を撮影レシピ作成装置212や入出力装置517に出力する。
図3は設計データ上の設計パターン301と観察点302および傾斜観察条件(観察方向を示す角度303)の関係を示した図である。設計パターンを示す線分の境界が回路パターンの凹凸の境界に対応する。設計データのハッチング領域は回路パターンの溝(凹)の部分を示しており、その他の領域は突起(凸)している部分である。設計データは閉図形部と開図形部で構成されており、閉図形部=凹部、開図形部=凸部といった情報によって、設計データ上の溝部分を識別することができる。観察点302は回路パターンの入り組んだ部位にあり、傾斜撮影の観察方向303を適切に設定しないと目的の部位が正確に撮影できない。このようなケースで本実施例で説明するような手法は特に有効である。
図9は傾斜観察情報の分析手順の一例を示すフローチャートである。図8の設計データの例を利用して説明する。まず、予め設定されている観察点に隣接している設計パターンの溝の領域803に、電子線の照射長を考慮した仮想視点を設定する(ステップ901)。図8(a)のように観察点が回路パターンのコーナー部に存在する場合は、コーナーを中心として左右に伸びるエッジとの間隔804,805が均等になるように仮想視点802を設定する。また、図8(b)のように回路パターンの直線部に観察点806が隣接している場合は、回路パターンのエッジ方向に対し垂直方向に仮想視点807を設定する。
次に仮想視点と観察点を結ぶ直線上に他回路パターンの遮蔽があるか否かを判定する(ステップ902)。遮蔽の有無は図8(c)のように仮想視点が回路パターンの溝部に存在するか否かで簡易的に確認できる。すなわち、図8(a)(b)のように仮想視点が溝部に存在する場合は遮蔽が無く、図8(b)(d)のように仮想視点が非溝部に存在する場合は遮蔽が有るとみなす。ただし、図8(b)(d)のような仮想視点の位置でも、回路パターンの高さや、傾斜角によって回路パターンの遮蔽を受けない可能性はある。
回路パターンの高さ情報を活用して遮蔽状態の有無を詳細に確認する場合は、デバイスの高さ情報、電子線の観察角、照射長の情報を活用する。図8(d)を用いて具体例を説明する。観察点811に基づき設定した仮想視点812が回路パターンの非溝部819に設定された場合、非溝部のデバイスの高さ情報815と、電子線の観察角814、照射長に基づく仮想視点816、観察点818の高さ情報817の関係から遮蔽の有無を確認する。観察角814の場合は、仮想視点816と観察点818の間に回路パターンがかかり、遮蔽が発生する可能性があることが分かる。一方、観察角813の場合は、仮想視点816と観察点818の間に回路パターンがかからないため、遮蔽が発生しない可能性が高いことが分かる。
仮想視点で遮蔽が確認された場合の対策の選択肢は2つある。一つは図8(c)のように回路パターンの溝部に仮想視点を移動させ最終的な視点810を決定することである(ステップ905)。もう一つは図8(d)のように傾斜角度を変更して最終的な観察視点817を決定することである(ステップ904)。どちらの手段で観察視点を調整するかの選択はユーザの指示や所定のルールに従って自動的に行うことができる(ステップ903)。
例えば、遮蔽が確認された観察点は全て溝部に移動するモードや、遮蔽が確認された観察点は全て傾斜角を調整するといったモードをユーザに選択させることもできる。また、図8(a)で示した観察点と周辺の回路パターンとの間隔804,805に間隔長の制約を設け、観察点の溝部への移動によって、間隔長が制約よりも下回る場合は観察角を調整するといったルールで観察点を移動することもできる。これにより、遮蔽リスクの少ない傾斜画像の撮影が可能になる。
以上の手順による結果に基づき、傾斜角、観察方向を決定する(ステップ906)。
図10は設計データの三次元データを活用して傾斜観察条件を設定する手順を示すフローチャートである。最初に設計データ、観察点、デバイスの高さ情報、観察エリアのサイズを入力する(1001)。次に設計データとデバイスの高さ情報を用いて図11に示すような設計データの三次元モデル1101を作成する(ステップ1002)。次に観察点の座標情報(x、y、z)1102に基づき、三次元モデル内に観察エリア1103を設定する(ステップ1003)。観察エリアとは観察座標を中心とした局所領域である。観察エリアのサイズは例えば観察対象が欠陥の場合は、推測される欠陥の大きさを設定してもよいし、観察対象のサイズが不明の場合や、観察対象の位置が観察点からずれる可能性があると推測される場合は、それらを考慮した一定の大きさを設定することもできる。次に、図9の901で示した手順で三次元上の仮想観察点816を三次元モデル上に設定する(1004)。次に3次元空間上に設定された仮想視点を移動させながら、画面の切り出し、観察エリアの算出を指定された範囲で行う(ステップ1005〜1008)。指定された範囲とは、傾斜角度の範囲や、倍率調整の範囲など、SEMの撮影が可能な条件に基づいて決定される。
図11(a)の切り出し画面1104は、初期設定された仮想視点で切り出された画像である。また、図11(b)の切り出し画面1106は、仮想視点を移動した状態で切り出だされた画像である。このような仮想視点の移動と画像の切り出しを指定された範囲で実行する。次に切り出された各画像について、観察エリアの面積サイズを算出し、観察エリアの面積サイズが最も大きい仮想観察点での条件(観察方向、観察角)を傾斜観察条件として決定する(ステップ1009)。また、最大の面積サイズではなく、所定の閾値以上の面積サイズのビーム条件を選択するようにしても良い。
図11(a)の仮想視点での観察エリア1107と図11(b)の仮想視点での観察エリア1108を比較した場合、観察エリア1108の方が大きく、傾斜撮影画像を詳細解析する上で有利になる可能性が高い。このような観察対象がより大きく、詳細に観察できるようなルールに基づき傾斜観察条件を設定することで、検査の正確性を高めることができる。
このように、複数の仮想視点方向からの観察エリアの評価を伴うサーチを行うことによって、適正なビーム傾斜角度と照射方向を見極めることが可能となる。
図12は過去設定された傾斜観察条件を利用して検査対象の傾斜観察条件を設定する手順を示すフローチャートである。最初に設計データ、観察座標等を入力する(ステップ1201)。次にこれらの情報と傾斜観察条件の過去データを比較する(ステップ1202)。図13に過去の傾斜角参照データの例を示す。過去データには設計パターン、観察座標、傾斜観察条件が登録されているものとする。検査対象の観察座標と設計データとこれら過去データとのマッチングをとり、検査対象の観察座標や設計データと一致する管理Noを特定する。管理Noが特定された場合に、その傾斜観察条件を、検査に利用する(ステップ1025)。該当する管理Noが無い場合は図9や図10で説明した手順で傾斜観察条件を決定する(ステップ1204)。
図14(a)は検査対象の回路パターンの設計データと観察点1401を示したものであり、図14(b)、図14(c)は過去の検査において傾斜観察条件が設定された回路パターンの設計データと観察点1403,1404、観察視点1402,1405を示している。図14(a)と図14(b)図14(c)をそれぞれ比較し、設計データや観察点の座標が一致している場合にその観察視点等の傾斜観察条件を検査に利用する。図14の例では図14(a)と図14(c)が一致しているので、図14(c)の傾斜観察条件が図14(a)の検査に適用される。設計データの回路パターンの形状が一致しているか否かは正規化相関法等の公知技術を用いることによって、容易に判定できる。
図15は上述した検査に用いるデータの情報をディスプレイ211に表示する例を示している。この表示プログラムもCPU209で実行される。このディスプレイ211には設計データウィンドウ1501と傾斜撮影条件ウィンドウ1502が表示される。設計データウィンドウ1501には2次元の設計データやデバイスの高さ情報に基づき構成された三次元の設計データ1503、設定された観察座標からの切り出し画面1504、観察エリア1506、観察点1505等が表示される。傾斜観察条件ウィンドウ1502には観察座標、決定、もしくは仮想的に設定された傾斜角、観察方向、観察エリアのサイズ等が表示される。ユーザはこのウィンドウを活用することによって、傾斜撮影条件の適切な設定や、自動設定された傾斜撮影条件の確認を迅速に行うことができる。
以上、観察エリアの大きさを評価指標として、ビームの傾斜角や傾斜方向を見出すためのサーチを行う例について説明したが、予めビームの傾斜角度と傾斜方向を記憶したテンプレートを用意し、設計データ上の各座標について、当該テンプレートを回転させる回転サーチを行うことによって、所望のビーム傾斜条件での観察が可能な個所を特定する例について以下に説明する。
図27は、観察点を抽出するためのテンプレートの例を示す図である。例えば図27(a)のテンプレートは、それぞれ直交する3本の直線の交点に、観察点2701が設定されたテンプレートであり、3本の直線間の全ての平面に対して、45°の方向から観察を行うためのビームの傾斜角と照射方向の情報が併せて記憶されている。このようなテンプレートを用いて、設計データに基づいて構築されたパターンの三次元構造のエッジに沿って、当該テンプレートと同じ形状を検出するためのサーチを行い、所望の形状を持つ観察点が検出される。図28に例示するような形状のパターンの場合、パターンのエッジに沿って、テンプレート2701と同じ形状を探索すると、部分2802、2803、2804、2805を発見することができる。なお、部分2806も図27(a)と同じ形状であるが、視点がパターン2801の内部側となるため、検索の対象から除外する。
更に、部分2802、2803についても、仮想視点の方向が、パターンの下地側に位置することになるため、検索の対象から除外する。その結果、部分2804、2805が、観察点として抽出されることになる。
図29は、テンプレートを用いた観察点抽出工程を示すフローチャートである。サーチ開始後、エッジ上の開始点についてテンプレートと一致するか、一致度判定を行う(ステップ2901、2902)。なお、図27(a)に例示するようなテンプレートが有する3本の線分のそれぞれに識別情報を付加しておき、形状と共に、その識別情報が一致した点を、観察点として抽出するようにしても良い。この場合の識別情報とは、例えば、設計データに予め記憶されたパターン線分の識別情報等であり、テンプレートの識別情報と、設計データに基づいて構築された三次元モデルの各線分が持つ識別情報が一致したときに、当該部分を観察点として抽出する。
テンプレートと被サーチエッジが一致しない場合には、テンプレートを移動させ、サーチを継続する(ステップ2903)。テンプレートと三次元モデルの一致が認められたら、観察点に対し、所定のビーム傾斜角、照射方向によるビーム照射が可能か(観察点と仮想視点との間に、遮蔽物が存在しないか)を判定し、遮蔽物があると判断される場合には、テンプレートに登録された、或いは関連付けて記憶されたビーム条件での観察ができないため、更にテンプレートを移動させ、観察点候補の検出を継続する。例えば、図28の例では、部分2806は、仮想視点の方向がパターン内部となり、部分2802、2803は、仮想視点の位置が観察点よりパターン下地側となることから、いずれも観察点としては不適切であるため、観察点候補から除外する。また、部分2804、2805についても、所望の傾斜角/照射方向でビームを照射したときに、ビームがパターン2801に遮蔽されるか否かを判断し、遮蔽されるようであれば、観察点候補から除外する。
遮蔽物がないと判断された場合には、当該パターン位置を測定座標として設定し、テンプレートに関連付けて記憶されているビーム傾斜角/照射方向をビーム照射条件として、撮影レシピを作成する(ステップ2905、2906)。
以上のように三次元モデルをサーチすることによって、所望の観察条件と観察点の設定を自動で行うことが可能となる。なお、テンプレートに所望の傾斜角度範囲、照射方向範囲を設定しておき、当該範囲と観察が可能なビーム条件のアンドがとれる場合に、当該アンドがとれる傾斜角度と照射方向を設定するようにしても良い。
図27(b)(c)はテンプレートの他の例を示す図である。図27(b)はFin2702、ゲート2703、酸化膜2704からなるFin−FETであり、酸化膜2704とFin2702の境界に、観察点2701が設定されている。テンプレートを構成する各部位はそれぞれ識別情報を持っており、三次元モデルと形状が一致し、且つ複数の部位の識別情報がいずれも一致する三次元モデル内の部位をサーチするのに用いられる。また、図27(c)のテンプレートは、観察点2701を包囲する3つの面(2705、2706、2707)が識別情報を持ち、三次元モデルの中で形状と各面の識別情報が一致する部位の探索に用いられる。このように、形状、ビーム遮蔽の有無だけではなく、パターン、或いはパターン部位の識別情報も用いたサーチを行うことによって、より観察を希望する個所をより高度な情報に基づいて絞り込むことができる。
上述の実施例では、主に観察点(ビームを照射したい個所の位置情報)と、仮想視点情報(ビームの照射角度と照射方向)に関する情報を入力することによって、その設定された条件での観察が可能か否かの判定や、適正な照射角度や照射方向を求める例について説明した。より具体的には、仮想視点の設定により、ビーム照射角度と照射方向の2つの情報と、観察点の位置情報を併せた3つの情報の設定により、遮蔽の有無を判断し、必要に応じて自動的に光学条件を設定する例について説明した。一方、位置情報、ビームの角度情報、及びビームの照射方向情報の少なくとも2つを設定することによって、残りの1つの情報を求めたり、その設定条件で観察が可能か否かの可否判断を行うことも可能である。
以下に説明する実施例では、上記少なくとも2つの情報を情報設定部で設定することによって、その条件での観察が可能か否かの可否判断、或いは適正な条件設定を行うビーム条件設定装置、及び荷電粒子線装置について説明する。
図18は、ビーム傾斜時のビーム照射条件を入力するGUI画面の一例を示す図であり、このようなGUI画面は、撮影レシピ作成装置212や入出力装置517の表示装置に表示される。図18に例示するGUI画面には、パターン画像表示領域1801と、ビーム条件設定領域1802が設けられており、撮影レシピ作成装置212や入出力装置517では、これらの設定領域における条件設定に基づいて、ビーム条件を設定し、撮影レシピを作成する。ビーム条件設定領域1802には、パターン座標情報(Location)を入力するウィンドウ、所望の観察点(Observation Point)を入力するウィンドウ、パターンの種類(Pattern Type)を入力するウィンドウ、ビームの傾斜角(Tilt Angle)を入力するウィンドウ、及びビームの照射方向(Direction)を入力するウィンドウが設けられている。
撮影レシピ作成装置212は、入力された座標情報に基づいて、設計データ213の入力座標情報に相当する領域の情報を読み出し、パターン画像表示領域1801にレイアウトデータとして表示する。
実施例1では、所望の観察点の設定、及び仮想視点の設定によるビームの傾斜角と照射方向の3つの条件設定により、遮蔽エッジが有るか否か(観察に適したビーム条件であるか否か)を判定し、適正な条件に調整する例について説明したが、本実施例では、これらの内、少なくとも2つの情報設定に基づいて、その条件設定の評価、及び残り1つの条件算出を行う例について説明する。
まず、観察点とビーム傾斜角の設定を行う例について説明する。パターン画像表示領域1801には、端部が屈曲したパターン1803が表示されている。このような画像上で観察点1804、及びビーム傾斜角度を設定する。観察点はカーソル1811を用いてクロスカーソル1812を移動させることによって設定しても良いし、設定ウィンドウへの数値(座標)入力によって設定するようにしても良い。
更に、ビーム傾斜角は設定ウィンドウの数値、或いは数値範囲(角度)入力によって設定するようにしても良いし、仮想視点1808の位置(観察点1804との相対位置)によって設定するようにしても良い。この場合、観察点と仮想視点1808のレイアウトデータ上の距離lと、対物レンズのレンズ主面と試料表面間の距離Dに基づいて、arctan(D/l)を求めることによって、角度を算出するようにしても良い。
撮像レシピ作成装置212(ビーム照射条件設定装置)では、少なくともこの2つのパラメータの入力によって、設定された設定条件を評価する。例えば図18の例では、観察点1804とビーム傾斜角の設定により、観察可能な方向領域(境界線1802と1810の間の内角側領域)が表示されている。それ以外の領域は傾斜ビームがパターン1803に遮られて、観察点1804に到達できない照射方向範囲である。パターンの高さ情報は設計データに記憶されているので、設計データを参照することによって、傾斜ビーム軌道とパターン1803が干渉するか否かを判定することが可能となる。図18の例では、このパターンと傾斜ビームの干渉評価を、複数方向(例えば1°ごと、360°)について行うことによって、設定傾斜角で観察可能な角度範囲を求める。
また、ある範囲の数値を入力した場合には、所定のビーム傾斜角度範囲で、観察可能なビーム照射方向範囲を表示するようにすると良い。例えば、図18の例では、境界線1809と境界線1810に包囲された第1の範囲と、境界線1802と境界線1807に包囲された第2の範囲がある。第1の範囲におけるビーム傾斜可能範囲は、α°〜γ°の範囲であり、第2の範囲におけるビーム傾斜可能範囲はβ°〜γ°の範囲である(α>β>γの場合)。このような表示を行うことによって、所望のビーム傾斜角で見える範囲を特定することができ、結果として、適正なビーム条件設定を行うことが可能となる。
更に、観察点と照射方向を、それぞれ所望の観察点を入力するウィンドウや、ビームの照射方向を入力するウィンドウから入力することによって、照射可能なビーム傾斜角を演算、表示するようにしても良い。
観察点1804と仮想視点との間に形成される仮想直線であり、且つパターンのエッジに接する接線である直線のビーム光軸に対する相対角を演算し、当該角度を、ビームの傾斜角の限界角度として、傾斜角を入力するウィンドウに表示することによって、オペレータは、所望の照射方向について、傾斜可能な角度を認識することが可能となる。なお、仮想視点1813が示す照射方向では、傾斜ビームの照射はできないため、例えば図18に例示するように、ビーム照射点1814(傾斜ビームがパターンによって遮断される点)を表示装置に表示させることによって、設定したビーム条件では観察ができないことを、オペレータに認識させるようにしても良い。仮想視点1813の照射方向からでは明らかに観察点1804にビーム照射を行うことはできないので、角度の情報がなくても観察不可能な状態を示す×印の表示が可能となる。
ビーム照射点1814、1806は、表示装置上で、仮想視点の移動に伴って移動させ、且つ仮想視点と観察点間にパターンが存在しなくなったときは表示装置上から消失させることで、オペレータは感覚的にどの程度、ビーム条件を変更すれば、観察が可能となるのか(どの程度、仮想視点を移動させれば×印がなくなるのか)、目視で判断することが可能となる。ビーム照射点1806、1814の位置は、パターンの位置情報、形状情報、仮想視点の位置情報、及び観察点の位置情報から求めることができる。
撮影レシピ作成装置212は、上述のような仮想視点の評価結果に基づいて、ビームが観察点に至るまでに、他のパターンに遮蔽されない照射条件を求める。更に、求められた照射条件(例えば、観察点へのビーム照射が可能な傾斜範囲)の中から、所定の条件に基づいて、傾斜角度を自動決定するようにしても良い。この場合、例えば、観察を希望する角度や、観察可能な角度範囲の中で最も傾斜角度が大きい角度を選択するという希望条件を予め設定しておき、観察可能な傾斜範囲の中で、希望条件に最も合致する傾斜角度を選択することによって、観察に要する傾斜角度を自動的に決定するようにしても良い。このようにして決定されたビーム条件を、撮影レシピに登録することによって、撮影レシピの自動生成が可能となる。
また、ビーム条件設定領域1802から、ビーム傾斜角と照射方向を入力することによって、当該ビーム条件で観察可能な試料上の位置(観察点)を特定するようにしても良い。更にこの際に、観察したいパターン形状に関する情報を併せて入力することによって、観察点候補を絞り込むようにしても良い。この場合、図19に例示するようなテンプレートを用いて、レイアウトデータをサーチ(テンプレートマッチング処理)することによって、設定したビーム条件とパターン形状のアンドが取れる位置を観察位置、或いは観察位置候補として選択するようにしても良い。例えば、図19(c)のテンプレートを用いる場合は、図20に例示するように、テンプレート上に所望の観察点を予め設定しておき、テンプレートマッチングによって特定された位置にて、上記ビーム条件での観察が可能か否かを判定する。
図21は、レイアウトデータから、所望のビーム条件とパターン条件を持つ個所を自動選択する工程を示すフローチャートである。まず、撮像レシピ作成装置212等から、所望のパターン情報(形状、観察位置等)と、ビーム条件(ビームの傾斜角、照射方向)を設定する(ステップ2101、2102)。次に設定されたパターン情報(テンプレート)を用いて、レイアウトデータ上のサーチを行い、設定されたパターン情報を持つパターンを探索する(ステップ2103)。例えば、図20に例示するようなテンプレートを用いて、パターンサーチを行う場合、当該テンプレートとの相関値が所定値より大きいレイアウトデータ上の位置を特定する。
レイアウトデータ上に、所定のパターン、或いはパターン部位が存在する場合、当該パターンの観察点(例えば観察点2001)が設定されたビーム条件で観察可能か否かを判定(ステップ2104)し、設定された傾斜角や照射方向での観察が可能である場合には、当該部分を観察点として設定し、当該観察点の座標情報と共に、ビーム条件を撮像レシピとして登録する。
以上のような処理を所定のサーチ領域におけるサーチが終了するまで行うことによって、所望のパターン条件と所望のビーム条件での観察が可能なパターン、或いはパターン部位を特定することが可能となる。このような処理を自動で行うことによって、試料上に測定点が多数存在する場合において、その設定を容易に実現することが可能となる。