JP6482287B2 - 圧電材料、圧電素子および圧力センサ - Google Patents

圧電材料、圧電素子および圧力センサ Download PDF

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Description

本発明は、圧電材料、圧電素子および圧力センサに関する。
特許文献1には、ゲーレン石(CaAlSiO)の単結晶を圧電材料として使用すること、及び、同材料を圧電素子に用いた圧力センサが開示されている。そして、同材料は室温から800℃以上の高温環境まで、圧電定数の温度安定性に優れ、かつ高い電気抵抗率を維持することが示されている。
特開2014−011327号公報
ゲーレナイト(ゲーレン石)の単結晶は、高温においても圧電特性を示すため、高温域での圧電素子としての利用が見込まれる。しかしながら、本発明の発明者の知見によれば、ゲーレナイト単結晶はへき開に対する強度が十分でないことから、へき開面に沿って過大なせん断応力が作用するようなある種の用途に対しては、へき開を生じる等、その使用が不適当となることが懸念される。
そのような用途としては、例えば、内燃機関における燃焼圧センサが挙げられる。燃焼圧センサにおいては、圧電素子に高い圧力が作用するため、高温に耐え、なおかつ、よりへき開強度の高い圧電材料が用いられることが望ましい。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、高温環境下でも圧電特性を示すとともに、高いへき開強度を有する圧電材料と、この圧電材料を使用する圧電素子および圧力センサを提供することである。
上記課題を解決すべく本出願において開示される発明は種々の側面を有しており、それら側面の代表的なものの概要は以下のとおりである。
(1)ゲーレナイト単結晶において、Ca原子の一部を、原子価が二価でかつ8配位をとる原子で置換したことを特徴とする圧電材料。
(2)(1)において、前記原子価が二価でかつ8配位をとる原子は、Sr,Ba,Eu,Dy,Sm,Mnから選ばれる少なくとも一種である圧電材料。
(3)(2)において、前記原子価が二価でかつ8配位をとる原子はSrである圧電材料。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の圧電材料を用いた圧電素子であって、へき開面と主応力方向が成す角度が45°±15°以内である、圧電素子。
(5)(4)に記載の圧電素子を、圧力の作用方向が前記主応力の作用方向となるように配置した圧力センサ。
(6)(4)に記載の圧電素子を、圧力の作用方向が前記主応力の作用方向と直交するように配置した圧力センサ。
上記(1)〜(3)の側面によれば、高温環境下でも圧電特性を示すとともに、ゲーレナイト単結晶に比して高いへき開強度を有する圧電材料が得られる。
上記(4)の側面によれば、感度の高いセンサ用圧電素子が得られる。
上記(5)及び(6)の側面によれば、高温環境下で使用可能であり、かつ、高圧環境下でも測定の可能な圧力センサが得られる。
本発明の実施形態に係る圧電材料を用いた圧電素子の構成例を示す模式図である。 ゲーレナイト単結晶の一軸圧縮試験の測定結果を示したグラフである。 本発明の実施形態に係る単結晶の一軸圧縮試験の測定結果を示したグラフである。 第一の例に係る圧力センサを示す概略断面図である。 第二の例に係る圧力センサを示す概略断面図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る圧電材料を用いた圧電素子1の構成例を示す模式図である。圧電素子1は、圧電材料により形成される圧電体10と、圧電体表面に設けられた1対の電極20と、を有している。なお、本実施形態では、図1に示した方向にXYZで示す直交座標軸をとるものとする。なお、ここで示したXYZ座標系は、圧電素子1の説明のため便宜上設定したものであり、その各軸は、単結晶である圧電体10についての結晶軸(いわゆるabc軸)とは必ずしも一致しない。
本実施形態における圧電体10は直方体形状であり、例えばチョクラルスキー法により作成した単結晶インゴットを、所望の結晶方位が得られる角度でカットすることにより得られる。
本実施形態における圧電体10を構成する圧電材料は、ゲーレナイト単結晶のCa原子の一部を特定の原子により置換したものであり、その基本的な性質はゲーレナイト単結晶のそれと類似している。すなわち、本実施形態における圧電材料は、圧電材料の(001)面にせん断応力を加えることにより当該(001)面内においてせん断応力方向aに対して垂直方向bに、分極による表面電荷が生じるという性質を有している。圧電体10は、その結晶方位が、作用すると想定される応力に対し、できるだけ大きな分極を生じるような向きにカットされる。
図1に示すように、圧電体10に対して、Z方向が主応力方向となるように圧縮又は引張りが作用する場合、最大せん断応力は主応力方向(Z軸方向)に対し45°の面に現れる。このため、圧電体10では、(001)面と主応力方向のなす角度αは45°に近い角度、例えば、45°±15°以内とされ、好ましくは、45°±10°以内、より好ましくは45°±5°以内とする。(001)面と主応力方向のなす角度αをこのような範囲内とすることにより、応力に対して生じる分極が大きくなる。このため、検出感度の高い圧電素子1を得ることができる。
そして、前述したように、分極は(001)面内においてせん断応力方向aに対して垂直方向bに生じる。図1においては、X方向及び−X方向を向く面に分極が生じる。このため、分極を取り出すための電極20がX方向及び−X方向を向く面に形成される。
電極20には、それぞれリード線21が取り付けられている。これにより、電極20に生じた電荷、又は電極20間に生じた電圧は外部の機器により検知される。
電極20及びリード線21は、導電性を有するいかなる材料で形成されてもよいが、高温環境下の使用を考慮すると、高温耐性を有するものが良い。具体的には、1000℃以上の耐熱性を有する金属又は合金が望ましく、例えば、Pt若しくはPt含有合金、又はインコネル等のNi含有合金等を好適に用いることができる。
ところで、ゲーレナイトは化学式(CaAl(AlSi)O)で表され、その結晶において、(001)面は、Ca原子が面上に配列される面となっている。そして、この(001)面は、せん断応力が作用することにより分極を生じる面であると同時に、へき開面でもある。(001)面にへき開強度を超えるせん断応力が作用すると、この面にそって割れが生じる。
すなわち、図1に示すように、主応力σの方向に対する(001)面の角度αが最大せん断応力を生じる45°前後である場合、許容し得る最大せん断応力は、へき開面におけるへき開強度に制限される。このため、圧電素子1により測定可能な最大応力もまた、へき開強度により制限されることとなる。
そこで、本発明の発明者は、ゲーレナイト単結晶におけるCa原子の一部を特定の原子に置換することにより、ゲーレナイト単結晶の脆弱なCa面にひずみを加えることによって(001)面のへき開強度を高めた。本実施形態の圧電体10は、これにより高圧耐性が増大したものである。
ゲーレナイト単結晶におけるCa原子と置換し得る原子は、ゲーレナイト単結晶中におけるCa原子と類似の性質を有する原子であり、原子価が二価でかつ8配位をとるものである。より具体的には、Sr、Ba、Eu,Dy,Sm及びMnから選ばれる少なくとも一種の原子により置換されることが望ましい。ここで示した例では、原子数比で、ゲーレナイト単結晶中のCa原子の50%をSr原子で置換したものである。
本実施形態における圧電体10の強度の向上について、図2A及び図2Bを参照しつつ説明する。図2Aは、ゲーレナイト単結晶の一軸圧縮試験の測定結果を示したグラフであり、図2Bは、本発明の実施形態に係る単結晶の一軸圧縮試験の測定結果を示したグラフである。
図2Aに示した測定に用いたサンプルは単なるゲーレナイト(CaAl(AlSi)O)単結晶であり、図2Bに示した測定に用いたサンプルは、上述した通りの、原子数比で、ゲーレナイト単結晶中のCa原子の50%をSr原子で置換したもの(CaSrAlSiO)の単結晶である。
図2A、図2Bに示すサンプルはそれぞれ、へき開面である(001)面が圧縮方向(主応力方向)に対し45°となるように、一辺2mmの立方体にカットされたものである。また、図2A及び図2Bにおいて、×印で示した位置は、サンプルにへき開による破壊が生じた位置である。
図2Aに示すように、ゲーレナイト(CaAl(AlSi)O)単結晶では、圧縮応力が165MPaに達した時点で破壊が生じた。これに対し、図2Bに示すように、原子数比で、ゲーレナイト単結晶中のCa原子の50%をSr原子で置換したもの(CaSrAlSiO)では、圧縮応力が217MPaに達した時点で破壊が生じており、単純なゲーレナイト単結晶に比して、約32%の強度の向上が生じていることが分かる。
このように、ゲーレナイト単結晶において、Ca原子の一部を、原子価が二価でかつ8配位をとる原子に置換することにより、より高いへき開強度を有する圧電材料が得られる。
そして、そのようにして得られた圧電材料は、ゲーレナイト単結晶と類似の性状を示すため、高温に対する耐性も期待できる。
さらに、かかる圧電材料を用いた圧電素子1は、高温環境下での使用が可能であり、なおかつ、高圧に対する耐性を有する。特に、圧電素子1をセンサ用圧電素子として用いることにより、高温環境下で使用でき、高圧測定可能な圧力センサが得られる。もちろん、圧電素子1は圧力センサ以外のセンサや、センサ以外の用途に用いることも可能である。
次いで、本実施形態にかかる圧電素子1を用いた圧力センサの例を図3及び図4を参照して説明する。
図3は、第一の例に係る圧力センサ100を示す概略断面図である。圧力センサ100は、圧力の作用する方向が、圧電素子1に作用する主応力の作用方向となるように配置した例である。圧力センサ100は、図示したように、ハウジング101の先端に圧電素子1を収容した構造を有している。
ハウジング101は全体として中空筒状の形状を有しており、図中上側となる先端部分に圧電素子1を収容する収容空間102を有している。また、図中下側となる後端部分は開口しており、圧電素子1のリード線21にアクセス可能となっている。さらに、ハウジング101の側面には雄ネジ103が設けられており、圧力を測定したい空間の側面に設けた雌ネジ穴に機密に取り付け可能となっている。
収容空間102の先端側は、ハウジング101に設けられたダイアフラム104により封鎖されている。このため、圧力センサ100に作用し、測定対象となる圧力Pは、ダイアフラム104の面に垂直に作用する。ダイアフラム104は弾性を有する薄膜であり、圧力Pにより変形して圧電素子1の先端側の面を押圧し、圧力Pを伝達する。
一方、圧電素子1の他の面はハウジング101により囲まれており、測定対象となる圧力Pは作用しない。このため、圧電素子1には、図示するように(最大)主応力σとなる一軸圧縮応力が、圧力Pの作用する方向に作用することとなる。
前述したように、圧電体10は、その(001)面が主応力方向に対し角度αだけ傾いた向きとなるようにカットされる。このため、圧力センサ100は、測定感度が高く、高温耐性を有し、且つ、高圧測定が可能である。
なお、圧力センサ100が高温耐性を備えるためには、ハウジング101もまた、高温耐性を持つ材料で形成することが望ましく、インコネル等の耐熱合金やセラミック材料又はそれらの組み合わせとしてよい。
図4は、第二の例に係る圧力センサ200を示す概略断面図である。圧力センサ200は、圧力の作用する方向が、圧電素子1に作用する主応力の作用方向と直交する向きとなるように配置した例であり、図示したように、ハウジング201の先端に圧電素子1を取り付けた構造をしている。
ハウジング201は中空の圧力室202を有している。ハウジング201は、雄ネジ203を用いて、圧力を測定したい空間と圧力室202が機密に内通するように取り付け可能となっている。
また、圧力室202の先端面はダイアフラム204となっており、圧力室202内の圧力に応じて弾性変形するようになっている。そして、圧電素子1は、ダイアフラム204の変形に倣って変形することで応力が作用し、分極を生じる。なお、圧電素子1には圧力室202内の圧力Pは直接作用しない。圧電素子1は圧力室202の外側に配置されているため、圧電素子1からリード線21へのアクセスは容易である。
この例では、ダイアフラム204の面に垂直に圧力Pが作用することにより、ダイアフラム204が外側(図4では下向き)に膨らむように変形する。この変形の中立面がダイアフラム204の内部にある場合、圧電素子1の圧電体10には、図中主応力σとして示す面内方向の引張り応力が生じる。すなわち、この場合の圧電素子1には、圧力Pの作用する方向と直交する方向に(最大)主応力σとなる引張り応力が作用することとなる。
この例でも先の例と同様に、圧電体10は、その(001)面が主応力方向に対し角度αだけ傾いた向きとなるようにカットされる。このため、圧力センサ100は、高い測定感度と高温耐性とを有し、且つ、高圧測定が可能となる。ハウジング201が高温耐性を持つ材料で形成されることが望ましい点もまた先の例と同様である。
以上説明した実施形態に示した具体的な構成は例示として示したものであり、本明細書にて開示される発明をこれら具体例の構成そのものに限定するものではない。当業者はこれら開示された実施形態に種々の変形、例えば、各部材あるいはその部分の形状や数、配置等を適宜変更したり、例示された実施形態を互いに組み合わせたりしてもよい。本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。
1 圧電素子、10 圧電体、20 電極、21 リード線、100 圧力センサ、101 ハウジング、102 収容空間、103 雄ネジ、104 ダイアフラム、200 圧力センサ、201 ハウジング、202 圧力室、203 雄ネジ、204 ダイアフラム。

Claims (4)

  1. ゲーレナイト単結晶において、
    Ca原子の一部を、原子価が二価でかつ8配位をとる原子であるSrで置換したことを特徴とする圧電材料。
  2. 請求項1に記載の圧電材料を用いた圧電素子であって、
    へき開面と主応力の作用方向が成す角度が45°±15°以内である、圧電素子。
  3. 請求項に記載の圧電素子を、圧力の作用方向が前記主応力の作用方向となるように配置した圧力センサ。
  4. 請求項に記載の圧電素子を、圧力の作用方向が前記主応力の作用方向と直交するように配置した圧力センサ。
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