以下に図面を参照して、本発明にかかる光学装置の実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態)
(実施の形態にかかる光学装置によるリフレッシュ電圧の印加)
図1は、実施の形態にかかる光学装置によるリフレッシュ電圧の印加の一例を示す図である。図1に示すように、実施の形態にかかる光学装置100は、液晶駆動領域111〜116を備える。液晶駆動領域111〜116のそれぞれは、印加された駆動電圧に応じてレーザ光を変調可能である。
たとえば、液晶駆動領域111は、液晶駆動領域111へレーザ光が照射され、かつ液晶駆動領域111へ駆動電圧が印加されている場合に、照射されたレーザ光の偏光状態を、印加された駆動電圧に応じて変化させる。また、液晶駆動領域112は、液晶駆動領域112へレーザ光が照射され、かつ液晶駆動領域112へ駆動電圧が印加されている場合に、照射されたレーザ光の偏光状態を、印加された駆動電圧に応じて変化させる。液晶駆動領域113〜116についても同様である。
液晶駆動領域111〜116へ印加される駆動電圧は、極性の偏りを有する駆動電圧である。極性の偏りとは、たとえば、正電圧と負電圧が均等ではなく、電圧値の時間平均が0[V]とならない特性である。
光学装置100は、液晶駆動領域111〜116のうちの、レーザ光が照射され、かつ駆動電圧が印加される液晶駆動領域(以下、「使用領域」と称する。)を切り替える。たとえば、液晶駆動領域111〜116における使用領域を一定時間ごとに切り替える。具体的には、光学装置100は、まず液晶駆動領域111を一定時間だけ使用領域に設定し、つぎに液晶駆動領域112を一定時間だけ使用領域に設定し、つぎに液晶駆動領域113を一定時間だけ使用領域に設定し、つぎに液晶駆動領域114を一定時間だけ使用領域に設定し、つぎに液晶駆動領域115を一定時間だけ使用領域に設定し、つぎに液晶駆動領域116を一定時間だけ使用領域に設定し、つぎに液晶駆動領域111を一定時間だけ使用領域に設定する。以降、光学装置100は、同様に液晶駆動領域111〜116における使用領域を一定時間ごとに切り替える。
一定時間の長さは、たとえば、液晶駆動領域111〜116の耐久性および光学装置100の運用状況に応じて適宜設定することができる。たとえば、一定時間が長すぎると、液晶駆動領域が使用領域になっている間に劣化し、光学特性が劣化してしまう。一方、一定時間が短すぎると、使用領域の切り替えが頻発し、光学装置100の運用に支障が出る場合がある。したがって、一定時間の長さは、光学装置100の運用に支障が出ない範囲で短く設定することが望ましい。
図1においては、光学装置100が、液晶駆動領域111〜116における使用領域を、液晶駆動領域111,112,113の順に切り替える様子を示している。ただし、液晶駆動領域111〜116における使用領域の切り替え方法は、図1に示した例に限らず、各種の切り替え方法とすることができる。たとえば、光学装置100は、液晶駆動領域111,116,112,115,113,114の順に使用領域を切り替えてもよいし、液晶駆動領域111,114,113,116,112,115の順に使用領域を切り替えてもよいし、ランダムな順に使用領域を切替えてもよい。
このように、光学装置100は、使用可能な液晶駆動領域を複数に分けて、レーザ光を照射する使用領域を切り替えることで、一定の液晶駆動領域にレーザ光を長時間照射することによる液晶駆動領域の劣化を遅らせ、光学装置100の寿命を延ばすことができる。
液晶駆動領域111〜116における使用領域の切り替えは、たとえば、液晶駆動領域111〜116が形成された基板(液晶パネル)と、液晶駆動領域111〜116へレーザ光を照射する光学系(たとえばレーザ光源)と、の少なくともいずれかを移動させるアクチュエータを制御することによって行うことができる。また、光学装置100は、使用領域を切り替えるごとに、液晶駆動領域111〜116のうちの駆動電圧を供給する液晶駆動領域も変更する。
また、液晶駆動領域111〜116における使用領域の切り替えは、たとえば、光学装置100によるレーザ光の変調が後段の装置での光処理に影響がない期間(たとえばアイドル期間)に行うことができる。または、液晶駆動領域111〜116における使用領域の切り替えは、現在の使用領域の光学特性の劣化が検出された場合に行われるようにしてもよい。
また、光学装置100は、液晶駆動領域111〜116のうちの、過去に使用領域となり現在は使用領域でない液晶駆動領域にリフレッシュ電圧を印加する(リフレッシュ電圧印加)。リフレッシュ電圧は、液晶駆動領域に印加される駆動電圧とは極性の偏りが異なる補正電圧であり、リセット電圧と呼んでもよい。過去とは、リフレッシュ電圧を印加する時点より前の期間である。使用領域でない液晶駆動領域(不使用領域)とは、たとえばレーザ光が照射されていない液晶駆動領域である。使用領域でない液晶駆動領域に対しては駆動電圧の印加は不要であるが、これから使用する液晶駆動領域の状態を確実に正常な状態(初期状態)にしておく意味で、使用領域でない液晶駆動領域に対して駆動電圧が印加されていてもよい。
図1においては、光学装置100が、使用領域を変更した際に、直前に使用領域であった液晶駆動領域にリフレッシュ電圧を印加する場合について説明する。具体的には、光学装置100は、液晶駆動領域112が使用領域である期間に、液晶駆動領域112の前に使用領域であった液晶駆動領域111にリフレッシュ電圧を印加している(図1の中段)。また、光学装置100は、液晶駆動領域113が使用領域である期間に、液晶駆動領域113の前に使用領域であった液晶駆動領域112にリフレッシュ電圧を印加している(図1の下段)。
図2は、実施の形態にかかる光学装置によるリフレッシュ電圧の印加の他の例を示す図である。図2において、図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図2においては、光学装置100が、使用領域を変更した際に、現在は使用領域でない各液晶駆動領域にリフレッシュ電圧を印加する場合について説明する。
具体的には、光学装置100は、液晶駆動領域112が使用領域である期間に、現在は使用領域ではない液晶駆動領域111,113〜116にリフレッシュ電圧を印加している(図2の中段)。また、光学装置100は、液晶駆動領域113が使用領域である期間に、現在は使用領域ではない液晶駆動領域111,112,114〜116にリフレッシュ電圧を印加している(図2の下段)。
ただし、光学装置100によるリフレッシュ電圧の印加方法は、図1,図2に示した印加方法に限らず、各種の印加方法とすることができる。たとえば、光学装置100は、液晶駆動領域111〜116のうちの次に使用領域となる液晶駆動領域にリフレッシュ電圧を印加してもよい。
また、図1,図2においては、光学装置100が液晶駆動領域111〜116を備える場合について説明したが、光学装置100が備える複数の液晶駆動領域は液晶駆動領域111〜116に限らない。たとえば、光学装置100が備える複数の液晶駆動領域は、2〜5個または7個以上の液晶駆動領域であってもよい。また、光学装置100が備える複数の液晶駆動領域のそれぞれは、四角形に限らず、三角形、五角形、六角形、円形等、各種の形状とすることができる。また、光学装置100が備える複数の液晶駆動領域は、一体的に形成されたものでなくてもよく、たとえば複数の液晶セルを並べたものであってもよい。
このように、光学装置100によれば、液晶駆動領域111〜116のうちの過去に使用領域となり現在は使用領域でない液晶駆動領域にリフレッシュ電圧を印加することで、極性が偏った駆動電圧の印加によって生じた液晶駆動領域のイオンの偏りを解消し、液晶駆動領域111〜116の光学特性(たとえば変調特性)の劣化を抑制することができる。このため、光学装置100や、光学装置100を適用した装置(たとえば図3に示す光記録装置300)の寿命を延ばすことができる。
また、液晶駆動領域111〜116のうちの使用領域によってレーザ光の変調を行いつつ、液晶駆動領域111〜116のうちの不使用領域のリフレッシュを行うことができるため、液晶駆動領域のリフレッシュによる光学装置100の動作遅延を回避することができる。
(実施の形態にかかる光学装置を適用した光記録装置)
図3は、実施の形態にかかる光学装置を適用した光記録装置の一例を示す図である。図3において、図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図1に示した光学装置100は、たとえば図3に示す光記録装置300に適用することができる。
光記録装置300は、光源301と、コリメートレンズ302と、液晶セル303と、PBSプリズム304と、ビームエキスパンダ306と、位相マスク307と、リレーレンズ308と、PBSプリズム309と、空間光変調器310と、リレーレンズ311a,311bと、空間フィルタ312と、対物レンズ313と、ミラー314と、ミラー315と、ガルバノミラー316と、スキャナレンズ317と、光情報記録媒体318と、1/4波長板319と、ガルバノミラー320と、撮像素子321と、制御回路322と、アクチュエータ323と、を備える。
光記録装置300は、空間光変調器310により空間的に変調した信号光を光情報記録媒体318に照射することで光情報記録媒体318に情報を記録する。また、光記録装置300は、光情報記録媒体318に参照光を照射することで得られる再生光を撮像素子321によって電気信号に変換することで情報を読み出す。
光源301は、レーザ光をコリメートレンズ302へ出射する。光源301から出射されるレーザ光は、たとえば所定の直線偏光の連続光とすることができる。光源301には、たとえばLD(Laser Diode:レーザダイオード)を用いることができる。コリメートレンズ302は、光源301から出射されたレーザ光を所定のビーム径のレーザ光にコリメートし、コリメートしたレーザ光を液晶セル303へ出射する。
液晶セル303、PBSプリズム304および制御回路322は、空間光変調器310から光情報記録媒体318(所定箇所)への信号光の照射を制御する光学装置(液晶シャッタ)305を構成する。図1に示した光学装置100は、たとえば液晶セル303および制御回路322に適用することができる。この場合に、図1に示した液晶駆動領域111〜116は液晶セル303に適用することができる。また、液晶駆動領域111〜116における使用領域を切り替える切替部は制御回路322およびアクチュエータ323により実現することができる。また、液晶駆動領域111〜116のうちの使用領域でない液晶駆動領域にリフレッシュ電圧を印加する印加部は制御回路322により実現することができる。
液晶セル303は、制御回路322から供給される駆動電圧に応じて、コリメートレンズ302から出射されるレーザ光の偏光状態を調整する。たとえば、液晶セル303は、光情報記録媒体318への情報の記録時には、レーザ光の偏光状態を、P偏光およびS偏光を含む偏光状態とする。
また、液晶セル303は、光情報記録媒体318からの情報の再生時には、レーザ光の偏光状態をS偏光とする。液晶セル303は、偏光状態を調整したレーザ光をPBSプリズム304へ出射する。液晶セル303には、たとえばFLC(Ferroelectric Liquid Crystal:強誘電性液晶)を用いることができる。ただし、液晶セル303にはFLCに限らず、ネマティック液晶など各種の液晶セルを用いることができる。
PBSプリズム304は、液晶セル303から出射されたP偏光のレーザ光を透過させて、信号光としてビームエキスパンダ306へ出射するPBS(Polarization Beam Splitters:偏光ビームスプリッタ)である。また、PBSプリズム304は、液晶セル303から出射されたS偏光のレーザ光を反射させて、参照光としてミラー314へ出射する。これにより、光情報記録媒体318への情報の記録時には、P偏光の信号光がビームエキスパンダ306へ出射される。また、光情報記録媒体318からの情報の再生時には、S偏光の参照光がミラー314へ出射される。
ビームエキスパンダ306は、PBSプリズム304から出射された信号光のビーム経を所定のビーム経に拡張し、ビーム経を拡張した信号光を位相マスク307へ出射する。ビームエキスパンダ306から位相マスク307へ出射された信号光は、位相マスク307およびリレーレンズ308を介してPBSプリズム309へ出射される。
PBSプリズム309は、リレーレンズ308から出射されたP偏光の信号光を透過させて空間光変調器310へ出射する。また、PBSプリズム309は、空間光変調器310から出射された信号光を反射させてリレーレンズ311aへ出射する。PBSプリズム309からリレーレンズ311aへ出射された信号光は、リレーレンズ311a、空間フィルタ312の開口部、リレーレンズ311bおよび対物レンズ313を介して光情報記録媒体318へ出射される。
空間光変調器310は、PBSプリズム309から出射された信号光を変調情報に基づいて空間的に変調する。たとえば、空間光変調器310は、制御回路322から書き込まれた2次元画像データ(変調情報)に基づく変調を行う。そして、空間光変調器310は、変調した信号光をPBSプリズム309へ出射する。
空間光変調器310には、たとえばLCOS(Liquid Crystal On Silicon:液晶オンシリコン)を用いることができる。また、空間光変調器310には、マイクロデバイスミラーなどのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械素子)デバイスを用いてもよい。
PBSプリズム304からミラー314へ出射された参照光は、ミラー314,315を介してガルバノミラー316へ出射される。ガルバノミラー316は、ミラー315から出射された参照光を可変の角度で反射させてスキャナレンズ317へ出射する。ガルバノミラー316の角度制御は、たとえば制御回路322によって行うことができる。スキャナレンズ317は、ガルバノミラー316から出射された参照光を光情報記録媒体318へ出射する。
光情報記録媒体318には、たとえば、ニオブ酸リチウムなどのフォトリフラクティブ結晶や、感光性樹脂材料(フォトポリマ)など、各種の光情報記録媒体を用いることができる。また、光情報記録媒体318は、たとえば制御回路322からの制御によって変位可能であってもよい。
情報の記録時において、光情報記録媒体318には、対物レンズ313から出射された信号光と、スキャナレンズ317から出射された参照光と、が互いに重なりあうように入射する。これにより、光情報記録媒体318に干渉縞パターンが形成され、光情報記録媒体318は形成された干渉縞パターンをホログラムとして記録する。また、ガルバノミラー316の角度制御により、光情報記録媒体318に対する参照光の入射角度を変化させることで角度多重記録を行うことができる。本実施の形態では、このホログラムを「ページ」と呼び、ページが角度多重化されている記録領域のことを「ブック」と呼ぶ。
情報の再生時において、光情報記録媒体318には、スキャナレンズ317から出射された参照光が入射する。1/4波長板319は、スキャナレンズ317から出射され光情報記録媒体318を透過した参照光を通過させてガルバノミラー320へ出射する。
ガルバノミラー320は、1/4波長板319から出射された参照光を可変の角度で反射させる。ガルバノミラー320の角度制御は、たとえば制御回路322によって行うことができる。このとき、ガルバノミラー320の角度制御がガルバノミラー316の角度制御と連動して行われることで、ガルバノミラー320において参照光が略垂直に反射し、参照光が1/4波長板319へ折り返される。
したがって、スキャナレンズ317から出射され光情報記録媒体318を透過した参照光は、1/4波長板319を2回通過することによってS偏光からP偏光に変換され、光情報記録媒体318へ出射される。これにより、光情報記録媒体318に記録された情報に応じた再生光がP偏光の回折光として対物レンズ313へ出射される。
光情報記録媒体318から対物レンズ313へ出射された再生光は、リレーレンズ311b、空間フィルタ312およびリレーレンズ311aを介してPBSプリズム309へ出射される。このとき、リレーレンズ311a,311bの間の空間フィルタ312の開口部によって、再生対象ブックからの回折光である再生光のみがPBSプリズム309へ透過する。
PBSプリズム309は、リレーレンズ311a,311bから出射されたP偏光の再生光を透過させて撮像素子321へ出射する。
撮像素子321は、PBSプリズム309から出射された再生光を電気信号に変換する。これにより、光情報記録媒体318に記録された情報を示す電気信号が得られる。撮像素子321は、変換した電気信号を制御回路322へ出力する。撮像素子321には、たとえばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)等の固体撮像素子を用いることができる。
制御回路322は、光情報記録媒体318への情報の記録時や光情報記録媒体318からの情報の再生時において、空間光変調器310や光学装置(液晶シャッタ)305などの制御を行う。たとえば、制御回路322は、光情報記録媒体318からの情報の再生時に、PBSプリズム304から参照光のみが出射されるように、液晶セル303に駆動電圧を供給する。また、制御回路322は、光情報記録媒体318からの情報の再生時に、撮像素子321から出力された電気信号を再生データとして外部へ出力する。
また、制御回路322は、光情報記録媒体318への情報の記録時に、記録対象の情報(変調情報)を空間光変調器310に書き込むとともに、PBSプリズム304から信号光および参照光が出射されるように、液晶セル303に駆動電圧を供給する。ただし、制御回路322は、光情報記録媒体318に対する情報の記録時であっても、空間光変調器310に対する情報の書き込み時には、PBSプリズム304から信号光が出射されないように、液晶セル303に駆動電圧を供給する。
また、制御回路322は、光情報記録媒体318への情報の記録時に、ガルバノミラー316の角度制御を行うことで、記録対象のブックなどを制御する。また、制御回路322は、光情報記録媒体318からの情報の再生時に、ガルバノミラー316,320の角度制御を行うことで、再生対象のブックなどを制御する。なお、図3においては、制御回路322とガルバノミラー316,320との接続関係は図示を省略している。また、制御回路322は、対物レンズ313に対する光情報記録媒体318の位置を変化させることによって、記録対象のブックの移動を行ってもよい。
また、制御回路322は、アクチュエータ323を制御することにより、たとえば図1,図2に示したように液晶セル303の液晶駆動領域111〜116における使用領域を切り替える。また、制御回路322は、液晶セル303の液晶駆動領域111〜116における使用領域に、光学装置(液晶シャッタ)305のオープンおよびクローズを切り替える。
アクチュエータ323は、制御回路322からの制御によって液晶セル303を移動させることができる。アクチュエータ323による液晶セル303の移動方向は、たとえば図3における縦方向および奥行き方向である。液晶セル303を移動させることにより、液晶セル303の液晶駆動領域111〜116のうちの、コリメートレンズ302から出射されたレーザ光が照射される使用領域を切り替えることができる。アクチュエータ323には、モータなどの各種のアクチュエータを用いることができる。
光学装置100を光記録装置300に適用することにより、光学装置(液晶シャッタ)305における長期間のレーザ照射による光学特性(コントラストや光利用効率)の低下をリフレッシュにより抑制することができる。これにより、光情報記録媒体318への情報の記録および光情報記録媒体318からの情報の再生における精度の低下を抑制することができる。また、光学装置100による情報の記録時や再生時であってもリフレッシュを行うことができるため、リフレッシュによる記録や再生の遅延を防止することができる。
(実施の形態にかかる光学装置の液晶駆動領域へ印加される駆動電圧の波形)
図4は、実施の形態にかかる光学装置の液晶駆動領域へ印加される駆動電圧の波形の一例を示す図である。図4において、横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示す。駆動電圧410は、実施の形態にかかる光学装置100の液晶駆動領域111〜116における使用領域へ印加される駆動電圧の波形である。また、図4に示す例では、図3に示したように光学装置100を光学装置(液晶シャッタ)305に適用する場合について説明する。すなわち、図3に示した制御回路322は、図3に示した液晶セル303に適用された液晶駆動領域111〜116における使用領域へ駆動電圧410を印加する。
V1[V]は、光学装置(液晶シャッタ)305をオープン(オン)にする場合に液晶駆動領域111〜116における使用領域へ印加される正の駆動電圧である。−V2[V]は、光学装置(液晶シャッタ)305をクローズ(オフ)にする場合に液晶駆動領域111〜116における使用領域へ印加される負の駆動電圧である。
図4に示す例では、制御回路322は、光学装置(液晶シャッタ)305をオープンする際には駆動電圧410をV1[V]とし、光学装置(液晶シャッタ)305をクローズする際には駆動電圧410を−V2[V]とする。また、図4に示す例では、光学装置(液晶シャッタ)305のオープンの際の駆動電圧410の大きさ(V1)が、光学装置(液晶シャッタ)305のクローズの際の駆動電圧410の大きさ(V2)より小さい。
したがって、たとえば光学装置(液晶シャッタ)305におけるオープンの期間の長さとクローズの期間の長さが同じであるとすると、駆動電圧410は、平均電圧が負になる、すなわち極性が負に偏った駆動電圧である。このため、駆動電圧410を長時間連続して一定の液晶駆動領域に印加すると、液晶駆動領域の液晶層にイオンの偏りが生じてしまい(液晶ドリフト現象)、その液晶駆動領域を劣化させる。
また、図4に示す例ではV1<V2であるが、V1>V2であってもよい。この場合は、たとえば光学装置(液晶シャッタ)305におけるオープンの期間の長さとクローズの期間の長さが同じであるとすると、駆動電圧410は、平均電圧が正になる、すなわち極性が正に偏った駆動電圧である。このため、駆動電圧410を長時間連続して一定の液晶駆動領域に印加すると、液晶駆動領域の液晶層にイオンの偏りが生じてしまい(液晶ドリフト現象)、その液晶駆動領域を劣化させる。
図5は、実施の形態にかかる光学装置の液晶駆動領域へ印加される駆動電圧の波形の他の例を示す図である。図5において、図4に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図5に示すように、光学装置(液晶シャッタ)305のオープンの際の駆動電圧410(V1)の大きさが、光学装置(液晶シャッタ)305のクローズの際の駆動電圧410(−V2)の大きさと同じであっても(V1=V2)、光学装置(液晶シャッタ)305におけるオープンの期間の長さとクローズの期間の長さが異なる場合は、駆動電圧410は極性が正または負に偏った駆動電圧となり、液晶駆動領域を劣化させる。
図5に示す例では、光学装置(液晶シャッタ)305におけるオープンの期間の長さが、光学装置(液晶シャッタ)305におけるクローズの期間より短い。したがって、駆動電圧410は、平均電圧が負になる、すなわち極性が負に偏った駆動電圧である。また、光学装置(液晶シャッタ)305におけるオープンの期間の長さが、光学装置(液晶シャッタ)305におけるクローズの期間より長い場合も有り得る。この場合は、駆動電圧410は、平均電圧が正になる、すなわち極性が正に偏った駆動電圧である。
また、図4に示すようにオープンの場合とクローズの場合で駆動電圧410の大きさが異なり、かつ、図5に示すようにオープンの期間の長さとクローズの期間の長さが異なるようにしてもよい。
このように、駆動電圧410の極性が偏っている場合に、駆動電圧410を長時間連続して一定の液晶駆動領域に印加すると、その液晶駆動領域を劣化させる。これに対して、光学装置100は、液晶駆動領域111〜116のうちの使用領域でない液晶駆動領域(不使用領域)にリフレッシュ電圧を印加することにより、このような液晶駆動領域の劣化を抑制する。
(実施の形態にかかる光学装置の液晶駆動領域へ印加されるリフレッシュ電圧の波形の例)
図6〜図8は、実施の形態にかかる光学装置の液晶駆動領域へ印加されるリフレッシュ電圧の波形の例を示す図である。図6〜図8において、横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示す。リフレッシュ電圧610は、実施の形態にかかる光学装置100の液晶駆動領域111〜116における不使用領域へ印加されるリフレッシュ電圧の波形である。
図6〜図8においては、たとえば図4,図5に示した例のように、液晶駆動領域111〜116における使用領域に印加される駆動電圧410の平均電圧が負である場合について説明する。この場合は、リフレッシュ電圧610は、たとえば、図6〜図8に示すように、平均電圧が正であるリフレッシュ電圧とする。
たとえば、リフレッシュ電圧610は、図6に示すように単純な矩形波としてもよいし、図7に示すように複数の矩形波としてもよいし、図8に示すように階段状の波形としてもよい。また、図6〜図8に示す例ではリフレッシュ電圧610は0以上の電圧値のみとしたが、平均電圧値が正となれば、リフレッシュ電圧610は負の電圧値となる部分を含んでいてもよい。
一方で、液晶駆動領域111〜116における使用領域に印加される駆動電圧410の平均電圧が正である場合は、リフレッシュ電圧610は、たとえば、平均電圧が負であるリフレッシュ電圧とする。
たとえば、駆動電圧410の極性の偏りが実験やシミュレーション等により予め判明している場合には、リフレッシュ電圧610として、予め判明している駆動電圧410とは極性の偏りが反対の電圧波形を設定することができる。
駆動電圧410の極性の偏りが予め判明していない場合も有り得る。この場合に、制御回路322は、たとえば、液晶駆動領域111〜116のうちのリフレッシュ電圧610を印加する対象領域に対して過去に印加された駆動電圧410の極性の偏りに応じて、対象領域に印加するリフレッシュ電圧610を生成してもよい。これにより、駆動電圧410の極性の偏りが予め判明していない場合であっても、駆動電圧410の極性が正に偏っていた場合は極性が負に偏ったリフレッシュ電圧610を印加し、駆動電圧410の極性が負に偏っていた場合は極性が正に偏ったリフレッシュ電圧610を印加することができる。
たとえば、制御回路322は、対象領域に対して過去に印加した駆動電圧410の平均電圧を記憶する。そして、制御回路322は、記憶した平均電圧に応じて、対象領域に対して印加するリフレッシュ電圧610の平均電圧を調整する。リフレッシュ電圧610の平均電圧の調整は、たとえば、リフレッシュ電圧610における電圧の大きさ(振幅)の調整、リフレッシュ電圧610における矩形波等の時間長や回数の調整、またはこれらの組み合わせによって行うことができる。
図9は、実施の形態にかかる光学装置の液晶駆動領域へ印加されるリフレッシュ電圧の波形の他の例を示す図である。図9において、図6〜図8に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図6〜図8においてはリフレッシュ電圧610の平均電圧値を正または負に偏らせる場合について説明したが、リフレッシュ電圧610の波形はこれに限らない。
たとえば、リフレッシュ電圧610は、図9に示すように、正電圧と負電圧を交互に繰り返す振幅波形であってもよい。この場合のリフレッシュ電圧610の平均電圧は、たとえば0[V]である。また、たとえば図4,図5に示したように駆動電圧410の平均電圧が負である場合は、リフレッシュ電圧610(振幅波形)の平均電圧は正の値であってもよい。一方、駆動電圧410の平均電圧が正である場合は、リフレッシュ電圧610(振幅波形)の平均電圧は負の値であってもよい。
このように、リフレッシュ電圧610に振幅波形を用いることで、たとえば駆動電圧410の極性の偏りが予め判明していない場合であっても、駆動電圧410の印加によるイオンの偏りを補償し、液晶駆動領域の劣化を抑制することができる。図6〜図9に示したように、リフレッシュ電圧610は、駆動電圧410と極性の偏りが異なることにより、駆動電圧410の印加による液晶駆動領域のイオンの偏りを補償する補正電圧であればよい。これにより、極性が偏った駆動電圧410によって偏った液晶駆動領域の配向状態を回復させ、液晶駆動領域の光学特性の劣化を抑制することができる。
また、制御回路322は、リフレッシュ電圧を印加する対象領域に対して過去に印加された駆動電圧に応じて、対象領域に対して印加するリフレッシュ電圧610(振幅波形)の振幅および時間長の少なくともいずれかを調整してもよい。たとえば、制御回路322は、リフレッシュ電圧を印加する対象領域に対して過去に印加された駆動電圧の平均電圧の絶対値が大きいほど、リフレッシュ電圧610(振幅波形)の振幅を大きくする。または、制御回路322は、リフレッシュ電圧を印加する対象領域に対して過去に印加された駆動電圧の平均電圧の絶対値が大きいほど、リフレッシュ電圧610(振幅波形)を印加する時間を長くする。これにより、駆動電圧による液晶駆動領域のイオンの偏りの程度に応じたリフレッシュ電圧を印加し、液晶駆動領域のイオンの偏りを補償するとともに、リフレッシュ電圧の印加し過ぎによる消費電力の増加を抑制することができる。
(実施の形態にかかる光学装置の複数の液晶駆動領域)
図10〜図13は、実施の形態にかかる光学装置の複数の液晶駆動領域の一例を示す図である。図10に示す下側基板1000は、実施の形態にかかる光学装置100の液晶駆動領域111〜116を構成する基板の1つである。下側基板1000は、透明基板1010に透明電極1021〜1024を形成することによって構成されている。透明電極1022,1023は、それぞれ液晶駆動領域を形成する電極面を有する。
図11に示す上側基板1100は、実施の形態にかかる光学装置100の液晶駆動領域111〜116を構成する基板の1つであって、図10に示した下側基板1000と対になる基板である。上側基板1100は、透明基板1110に透明電極1121,1122を形成することによって構成されている。透明電極1121,1122は、それぞれ図10に示した透明電極1022,1023と対応して液晶駆動領域を形成する電極面を有する。
図12は、図10に示した下側基板1000と、図11に示した上側基板1100と、の組み立てを示している。図12に示すように、透明電極1121,1122がそれぞれ透明電極1022,1023と対応するように下側基板1000および上側基板1100が組み立てられる。
図13は、下側基板1000および上側基板1100を組み立てることによって構成された液晶パネル1300を示す。液晶パネル1300は、透明電極1022および透明電極1121によって形成される液晶駆動領域と、透明電極1023および透明電極1122によって形成される液晶駆動領域と、を有する2分割の液晶パネルである。
図13に示すように、下側基板1000および上側基板1100の間の空間の外周部分にはシール材1310が設けられる。シール材1310は導電粒子入りのシール材である。また、下側基板1000および上側基板1100の間の空間におけるシール材1310の内側には液晶層(不図示)が設けられる。
また、下側基板1000における透明電極1021〜1024の各端部は、上側基板1100と重なっていない領域(図の下側)に露出しており、この透明電極1021〜1024の各端部がFPC(Flexible Printed Circuits:フレキシブルプリント基板)等との接続端子となる。たとえば液晶パネル1300を図3に示した液晶セル303に用いる場合に、制御回路322は、透明電極1021〜1024の各端部を介して液晶パネル1300へ駆動電圧やリフレッシュ電圧を印加する。
図14〜図17は、実施の形態にかかる光学装置の複数の液晶駆動領域の他の例を示す図である。図14に示す下側基板1400は、実施の形態にかかる光学装置100の液晶駆動領域を構成する基板の1つである。下側基板1400は、透明基板1410に透明電極1411〜1424を形成することによって構成されている。透明電極1413,1415,1418,1419,1421,1423,1424は、それぞれ液晶駆動領域を形成する電極面を有する。
図15に示す上側基板1500は、実施の形態にかかる光学装置100の液晶駆動領域を構成する基板の1つであって、図14に示した下側基板1400と対になる基板である。上側基板1500は、透明基板1510に透明電極1521〜1527を形成することによって構成されている。透明電極1521〜1527は、それぞれ図14に示した透明電極1413,1424,1423,1421,1418,1415,1419と対応して液晶駆動領域を形成する電極面を有する。
図16は、図14に示した下側基板1400と、図15に示した上側基板1500と、の組み立てを示している。図16に示すように、透明電極1521〜1527がそれぞれ透明電極1413,1424,1423,1421,1418,1415,1419と対応するように下側基板1400および上側基板1500が組み立てられる。
図17は、下側基板1400および上側基板1500を組み立てることによって構成された液晶パネル1700を示す。液晶パネル1700は、透明電極1413,1415,1418,1419,1421,1423,1424および透明電極1521〜1527によって形成される7個の液晶駆動領域を有する7分割の液晶パネルである。
図17に示すように、下側基板1400および上側基板1500の間における7個の液晶駆動領域を囲むようにシール材1710が設けられる。また、下側基板1400および上側基板1500の間の空間のうちシール材1710の内側には液晶層(不図示)が設けられる。また、下側基板1400における透明電極1411〜1424の各端部は、上側基板1500と重なっていない領域(図の下側)に露出しており、この透明電極1411〜1424の各端部がFPC等との接続端子となる。たとえば液晶パネル1700を図3に示した液晶セル303に用いる場合に、制御回路322は、透明電極1411〜1424の各端部を介して液晶パネル1700へ駆動電圧やリフレッシュ電圧を印加する。
たとえば図16,図17に示した構成のように、レーザ光が照射されている液晶駆動領域と照射されていない液晶駆動領域で、別の電圧波形を印加可能なように電極を分割しておく。具体的には、液晶駆動領域(液晶素子)に対してレーザ光を照射する1領域ごとにパターンを分割し、パターンごとに個別に電圧波形を印加できるようにしておく。これにより、複数の液晶駆動領域のうちの駆動電圧を印加する使用領域を切り替えるとともに、複数の液晶駆動領域のうちの不使用領域にリフレッシュ電圧を印加することが可能になる。
このように、実施の形態にかかる光学装置100によれば、複数の液晶駆動領域のうちの過去に使用領域となり現在は使用領域でない液晶駆動領域にリフレッシュ電圧(補正電圧)を印加することで、極性が偏った駆動電圧の印加によって生じた液晶駆動領域のイオンの偏りを解消し、偏光ドリフト現象による液晶駆動領域の光学特性(たとえば変調特性)の劣化を抑制することができる。また、光学装置100によるレーザ光の変調を行いつつ液晶駆動領域のリフレッシュを行うことができるため、液晶駆動領域のリフレッシュによる光学装置100の動作遅延を回避することができる。
以上説明したように、光学装置によれば、駆動電圧の極性の偏りによる液晶駆動領域の光学特性の劣化を抑制することができる。
なお、実施の形態にかかる光学装置として、図3に示した液晶セル303、PBSプリズム304および制御回路322により実現される光学装置(液晶シャッタ)305について説明したが、実施の形態にかかる光学装置はこのような構成に限らない。たとえば、実施の形態にかかる光学装置は、たとえば図1に示した液晶駆動領域111〜116と、液晶駆動領域111〜116のうちの使用領域によって変調されたレーザ光のうちの所定方向の偏光成分のみを所定箇所へ出射する偏光子と、の組み合わせを含む構成とすることができる。このような偏光子には、図3に示したPBSプリズム304に限らず、たとえばスリットによって実現される偏光板などを用いてもよい。