以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
図1は、第1実施形態に係るスイッチング装置の回路図である。第1実施形態に係るスイッチング装置100は、例えば電力変換装置を構成するインバータ回路の一部に用いられる。電力変換装置は、例えば直流電源の直流を交流に変換しつつ、負荷に出力する装置である。スイッチング装置100をインバータ回路に適用する場合には、図1に示すスイッチング装置100は、上アーム又は下アームの回路に相当する。なお、スイッチング装置100は、ACDCの電力変換装置に限らず、他の電力変換装置に適用されてもよく、また電力変換装置に限らず他の装置に適用されてもよい。
図1に示すように、スイッチング装置100は、スイッチング素子1、プッシュプル回路2、駆動電源3A、信号発生器4、コンデンサ5A、およびダイオード6Aを備えている。また、スイッチング素子1は、スイッチング装置100の主回路Mを構成している。
スイッチング素子1としては、MOSFETやIGBTなどのトランジスタが挙げられる。スイッチング素子1として、Si、SiC、GaNなどのワイドバンドギャップ半導体材料を用いた、逆耐圧機能のないユニポーラまたはバイポーラ構造をもつ素子を用いることができる。
また、主回路Mにおいては、還流動作を実現するために、スイッチング素子1の導通方向とは逆方向に、還流ダイオードを並列に接続する構成としてもよい。さらに、主回路Mを、スイッチング素子1およびダイオードをそれぞれ複数並列に接続した回路としてもよい。これにより、主回路Mの電流経路に大電流を流すことができるため、主回路Mの容量を高めることができる。
プッシュプル回路2は、NPN型のトランジスタである第1トランジスタ21と、PNP型のトランジスタである第2トランジスタ22とを有する。第1トランジスタ21は、ベースが信号発生器4に接続され、コレクタが駆動電源3Aに接続され、エミッタが第2トランジスタ22のエミッタおよびスイッチング素子1のゲートに接続されている。また、第2トランジスタ22は、ベースが信号発生器4に接続され、エミッタが第1トランジスタ21のエミッタおよびスイッチング素子1のゲートに接続され、コレクタが駆動電源3A、信号発信機4、およびスイッチング素子1のソースに接続されている。なお、第1トランジスタ21および第2トランジスタ22は、バイポーラ構造を有する素子に限らず、ユニポーラ構造を有する素子を用いることもできる。
駆動電源3Aは、出力電圧を変更可能な電源である。駆動電源3Aは、第1トランジスタ21を介して、スイッチング素子1のゲートと接続している。これにより、駆動電源3Aは、第1トランジスタ21がオン状態である場合に、第1トランジスタ21を介して、スイッチング素子1のゲートに電流を供給することができる。
信号発生器4は、スイッチング素子1のオン、オフを切り換えるスイッチング信号を発生し、当該スイッチング信号を第1トランジスタ21および第2トランジスタ22にそれぞれ出力する。
具体的には、信号発生器4は、スイッチング素子1をオン状態に切り替える場合には、第2トランジスタ22がオフ状態である場合に、スイッチング信号のオン信号として、第1トランジスタ21のベースに電流を出力する。これにより、第1トランジスタのベース電圧が上昇し、第1トランジスタ21はオフ状態からオン状態へと変化する。そして、第1トランジスタ21のエミッタ−コレクタ間の通電が行われ、第1トランジスタ21を介して、駆動電源3Aからスイッチング素子1のゲートに電流が流される。その結果、スイッチング素子1のゲート電圧が上昇し、スイッチング素子1をオフ状態からオン状態に変化させるターンオン動作が行われる。
また、信号発生器4は、スイッチング素子1をオフ状態に切り替える場合には、第1トランジスタ21のベースへの電流の供給を停止する。これにより、第1トランジスタ21がオフ状態に変化し、駆動電源3Aからスイッチング素子1のゲートへの電流の供給が停止する。また、信号発生器4は、スイッチング信号のオフ信号として、第2トランジスタ22のベース電位がエミッタ電位よりも低くなるように、第2トランジスタ22に負方向の電流を出力する。これにより、第2トランジスタ22がオフ状態からオン状態へと変化し、スイッチング素子1のゲート電流が、第2トランジスタ22のエミッタ−コレクタ間を流れる。その結果、スイッチング素子1のゲート電圧が低下し、スイッチング素子1がオン状態からオフ状態へと変化するターンオフ動作が行われる。
また、本実施形態では、スイッチング素子1のゲートと、第2トランジスタ22のベースとの間に、コンデンサ5Aとダイオード6Aとが直列に接続されている。
コンデンサ5Aは、スイッチング素子1のゲートと、ダイオード6Aのアノードとにそれぞれ接続している。スイッチング素子1のターンオフ時には、スイッチング素子1のゲート電位が第2トランジスタ22のベース電位よりも高くなるため、スイッチング素子1のゲート電流は、コンデンサ5Aに出力され、コンデンサ5Aの充電に用いられる。また、コンデンサ5Aの充電が行われるまでの間、コンデンサ5Aから、第2トランジスタ22のベースに電流が流れる。なお、図示していないが、コンデンサ5Aに、コンデンサ5Aで充電した電荷を放電するための放電回路を設けることができ、第2トランジスタ22のターンオン後に、コンデンサ5Aに充電された電荷を放電することもできる。
ダイオード6Aは、コンデンサ5Aから第2トランジスタ22のベースへの電流を流す整流作用をもつ素子である。ダイオード6Aのアノードはコンデンサ5Aに接続しており、ダイオード6Aのカソードは第2トランジスタ22のベースに接続している。これにより、ダイオード6Aは、スイッチング素子1のゲート電位が第2トランジスタ22のベース電位よりも高い場合、すなわち、スイッチング素子1のターンオフ時に、コンデンサ5Aから第2トランジスタ22のベースに電流を流す。
次に、本実施形態に係るスイッチング装置100の回路動作を、図2を用いて説明する。図2は、スイッチング素子1のターンオフ時のゲート電圧の一例を示すタイムチャートである。
スイッチング素子1には、オン、オフを切り換える閾値電圧(Vth)が予め設定されている。スイッチング素子1のゲート電圧が閾値電圧Vth以上である場合には、スイッチング素子1はオン状態になり、ゲート電圧が閾値電圧Vth未満である場合には、スイッチング素子1はオフ状態になる。
時間0から時間t1までは、信号発信器4により、第1トランジスタ21がオン状態、第2トランジスタ22がオフ状態に制御されている。これにより、第1トランジスタ21を介して、駆動電源3Aからスイッチング素子1にゲート電流が供給され、スイッチング素子1のゲート電圧はVgH(>VgL)となる。この場合、ゲート電圧(VgH)は閾値電圧(Vth)より高くなり、スイッチング素子1はオン状態となる。
時間t1の時点で、信号発生器4により、第1トランジスタ21および第2トランジスタ22のオン、オフ状態の切り替えが行われる。すなわち、信号発生器4は、第1トランジスタ21のベースへの電流の供給を停止することで、第1トランジスタ21をオフ状態に変化させる。これにより、駆動電源3Aからスイッチング素子1のゲートへの電流の供給が停止される。また、信号発生器4は、第2トランジスタ22のベース電位が低下するように、第2トランジスタ22のベースに負方向の電流を出力する。これにより、第2トランジスタ22のベース電位がスイッチング素子1のゲート電位よりも低くなり、スイッチング素子1のゲート電流がコンデンサ5Aおよび第2トランジスタ22のエミッタに出力される。
ここで、時刻t1において、信号発信器4により第2トランジスタ22のベースに負方向の電流が出力された場合でも、第2トランジスタ22のベース電圧が所定の閾値未満となり、第2トランジスタ22がオフ状態からオン状態へと変化するまでには、所定のターンオン時間がかかる。そのため、信号発信機4から第2トランジスタ22に負方向の電流が出力された直後は、第2トランジスタ22のエミッタ−コレクタ間の通電は行われず、スイッチング素子1のゲート電流を、第2トランジスタ22を介して、第2トランジスタ22のコレクタ側に流すことはできない。
これに対して、時刻t1において、スイッチング素子1のゲート電流がコンデンサ5Aに出力されると、コンデンサ5Aは、第2トランジスタ22がオン状態に変化する前から、スイッチング素子1のゲート電流をコンデンサ5Aの充電に用いる。これにより、図2に示すように、スイッチング素子1のターンオンの初期(たとえば、図2中の期間T1)において、スイッチング素子1のゲート電圧を急峻に下降させることができる。そして、ゲート電圧(Vg)が閾値電圧(Vth)未満となり、スイッチング素子1がオフ状態となる。このように、本実施形態に係るスイッチング装置100は、スイッチング素子1のターンオフの初期において、スイッチング素子1のゲート電流をコンデンサ5Aの充電に用いることで、スイッチング素子1のゲート電圧を急峻に下降させることができ、スイッチング素子1のスイッチング損失を低減させることができる。
また、コンデンサ5Aの充電が行われるターンオフの初期T1では、ダイオード6Aを介して、コンデンサ5Aから第2トランジスタ22のベースに電流が流れる。そのため、信号発信器4により第2トランジスタ22のベースに負方向の電流が出力されていても、コンデンサ5Aから第2トランジスタ22のベースに出力される電流により、第2トランジスタ22のベース電位の低下が抑制される。その結果、スイッチング素子1のターンオフの初期では、スイッチング素子1のゲート電流の、第2トランジスタ22のエミッタ−コレクタ間の通電が抑制される。
また、ターンオフの終期(たとえば、図2に示す期間T2)では、コンデンサ5Aの充電が進み、ダイオード6Aを介してコンデンサ5Aから第2トランジスタ22のベースに出力される電流が徐々に減少する。一方、スイッチング素子1のターンオフの終期T2では、信号発信器4から第2トランジスタ22のベースに出力された負方向の電流により、第2トランジスタ22のベース電位が徐々に低下し、スイッチング素子1のゲート電流が第2トランジスタ22のエミッタ−コレクタ間を徐々に流れるようになる。これにより、スイッチング素子1のターンオフの終期T2では、図2に示すように、スイッチング素子1のゲート電圧が緩やかに下降し、その結果、スイッチング素子1のターンオフ時におけるサージ電圧の発生を抑制することができる。
なお、図2は、スイッチング素子1のゲート電圧の一例を示す図であり、これに限定されるものではない。また、スイッチング素子1のターンオフの初期T1および後期T2の長さ(ゲート電圧の変化速度)も、図2に示す例に限定されるものではない。
以上のように、第1実施形態に係るスイッチング装置100は、スイッチング素子1を有する主回路Mと、スイッチング素子1のゲートに電気的に接続する第1トランジスタ21および第2トランジスタ22を有するプッシュプル回路2と、第1トランジスタ21のベースおよび第2トランジスタ22のベースに電気的に接続し、第1トランジスタ21および第2トランジスタ22を制御することで、スイッチング素子1のスイッチング動作を制御する制御装置4と、を備えている。そして、スイッチング素子1のゲートと第2トランジスタ22のベースとの間に、コンデンサ5Aおよびダイオード6Aが直列に接続されている。これにより、第1実施形態では、スイッチング素子1のターンオフの初期T1からスイッチング素子1のゲート電流をコンデンサ5Aの充電に用いることができるため、図2に示すように、スイッチング素子1のターンオフの初期T1において、スイッチング素子1のゲート電圧を急峻に下降させることができ、スイッチング素子1のターンオフ時におけるスイッチング損失を低減させることができる。
また、スイッチング素子1のターンオフの終期T2では、コンデンサ5Aの充電が進み、コンデンサ5Aからダイオード6Aを介して第2トランジスタ22のベースに出力される電流が減少する。一方、信号発信器4から第2トランジスタ22のベースに出力される負方向の電流により、第2トランジスタ22のベース電圧は徐々に低下し、第2トランジスタ22のエミッタ−コレクタ間の通電が徐々に行われる。その結果、スイッチング素子1のターンオフの終期T2では、図2に示すように、スイッチング素子1のゲート電圧は緩やかに下降し、スイッチング素子1のターンオフ時におけるサージ電圧の発生を抑制することができる。
《第2実施形態》
次に、第2実施形態に係るスイッチング装置を説明する。図3は、第2実施形態に係るスイッチング装置100aのブロック図である。図3に示すように、第2実施形態では、コンデンサ5Aおよびダイオード6Aに代えて、スイッチング素子1のゲートと第1トランジスタ21のベースとの間に、コンデンサ5Bおよびダイオード6Bが直列に接続していること以外は、第1実施形態に係るスイッチング装置100と同じ構成を有する。
コンデンサ5Bは、スイッチング素子1のゲートと、ダイオード6Bのカソードとにそれぞれ接続している。また、ダイオード6Bは、アノードが第1トランジスタ21のベースおよび信号発信機4に接続しており、カソードがコンデンサ5Bに接続している。
スイッチング素子1のターンオン時には、信号発信器4から第1トランジスタ21のベースに電流が出力される。これにより、第1トランジスタ21のベース電圧が高くなり、第1トランジスタ21のコレクタ−エミッタ間の通電が行われる。その結果、第1トランジスタ21を介して、駆動電源3Aからスイッチング素子1のゲートに電流が供給される。
また、信号発信器4から第1トランジスタ21のベースに電流が出力されると、第1トランジスタ21のベース電位がスイッチング素子1のゲート電位よりも高くなる。これにより、信号発信器4から出力された電流は、ダイオード6Bを介して、コンデンサ5Bに入力される。また、コンデンサ5Bは、第1トランジスタ21のベース電位がスイッチング素子1のゲート電位よりも高い場合に、コンデンサ5Bが充電するまでの間、コンデンサ5Bの容量に応じた電流を、スイッチング素子1のゲートに流す。
ここで、信号発信器4から第1トランジスタ21のベースに電流を出力し、第1トランジスタ21がオフ状態からオン状態に変化するまでに、所定のターンオン時間がかかる。一方、コンデンサ5Bは、第1トランジスタ21のベース電位がスイッチング素子1のゲート電位よりも高くなると、第1トランジスタ21がオン状態に変化する前から、スイッチング素子1のゲートに電流を流すことができる。このように、スイッチング素子1のゲートと第1トランジスタ21のベースとの間に、コンデンサ5Bおよびダイオード6Bを直列に配置することで、スイッチング素子1のターンオン時の初期において、スイッチング素子1に電流を迅速に供給することができ、スイッチング素子1のゲート電圧を急峻に上昇させることができる。その結果、スイッチング素子1のターンオン時のスイッチング損失を低減することができる。
また、スイッチング素子1のターンオン時の終期では、コンデンサ5Bの充電が進み、コンデンサ5Bからスイッチング素子1のゲートに出力される電流は徐々に減少する。一方、第1トランジスタ21のベース電位は徐々に上昇し、第1トランジスタ21がオフ状態からオン状態へと徐々に変化する。その結果、駆動電源3Aから第1トランジスタ21を介してスイッチング素子1のゲートに電流が緩やかに流れ、スイッチング素子1のターンオン時の終期において、スイッチング素子1のゲート電圧を緩やかに上昇させることができる。これにより、スイッチング素子1のターンオン時におけるサージ電圧の発生を抑制することができる。
以上のように、第2実施形態に係るスイッチング装置100aは、スイッチング素子1のゲートと第1トランジスタ21のベースとの間に、コンデンサ5Bおよびダイオード6Bを直列に接続している。これにより、第2実施形態では、スイッチング素子1のターンオン時の初期において、コンデンサ5Bからスイッチング素子1のゲートに電流を供給することができ、スイッチング素子1のターンオン時のスイッチング損失を低減することができる。また、第2実施形態では、スイッチング素子1のターンオン時の終期においては、コンデンサ5Bの充電が進み、コンデンサ5Bからスイッチング素子1のゲートに出力される電流は減少する。一方で、信号発信器4から出力された電流により、第1トランジスタ21のベース電圧は徐々に上昇する。これにより、駆動電源3Aからスイッチング素子1のゲートに流れる電流が徐々に増え、スイッチング素子1のゲート電圧を緩やかに上昇させることができる。その結果、スイッチング素子1のターンオン時におけるサージ電圧の発生を抑制することができる。
《第3実施形態》
次に、第3実施形態に係るスイッチング装置を説明する。図4は、第3実施形態に係るスイッチング装置100bのブロック図である。第3実施形態では、第1実施形態と同様に、スイッチング素子1のゲートと第2トランジスタ22のベースとの間に、コンデンサ5Aおよびダイオード6Aが直列に接続されており、また、第2実施形態と同様に、スイッチング素子1のゲートと第1トランジスタ21のベースとの間に、コンデンサ5Bおよびダイオード6Bが直列に接続されていること以外は、第1実施形態に係るスイッチング装置100と同じ構成を有する。
すなわち、第3実施形態では、第1実施形態と同様に、スイッチング素子1のゲートと第2トランジスタ22のベースとの間に、コンデンサ5Aおよびダイオード6Aが直列に接続されている。これにより、スイッチング素子1のターンオフの初期では、第2トランジスタ22がオン状態に変化する前から、コンデンサ5Aの容量に応じた電流が、コンデンサ5Aから第2トランジスタ22のベースに流される。その結果、スイッチング素子1のターンオンの初期において、スイッチング素子1のゲート電圧を急峻に下降させることができ、スイッチング素子1のターンオフによるスイッチング損失を低減することができる。
また、スイッチング素子1のターンオフ時の終期では、コンデンサ5Aの充電が進み、コンデンサ5Aから第2トランジスタ22のベースに出力される電流が減少する。一方、信号発信器4から出力される負方向の電流により、第2トランジスタ22のベース電位は徐々に低くなり、第2トランジスタ22のエミッタ−コレクタ間の通電が徐々に行われる。これにより、スイッチング素子1のゲート電流が、第2トランジスタ22のエミッタ−コレクタ間を通り、第2トランジスタ22のコレクタ側へと流される。その結果、スイッチング素子1のターンオフ時の終期では、スイッチング素子1のゲート電圧が緩やかに低下し、スイッチング素子1のターンオフ時のサージ電圧の発生を抑制することができる。
さらに、第3実施形態では、第2実施形態と同様に、スイッチング素子1のゲートと第1トランジスタ21のベースとの間に、コンデンサ5Bおよびダイオード6Bが直列に接続されている。これにより、スイッチング素子1のターンオンの初期においては、第1トランジスタ21がオン状態に変化する前から、コンデンサ5Bからスイッチング素子1のゲートに電流を供給することができる。その結果、スイッチング素子1のゲート電圧を急峻に上昇させることができ、スイッチング素子1のターンオン時におけるスイッチング損失を低減することができる。
また、スイッチング素子1のターンオンの終期においては、コンデンサ5Bの充電が進み、コンデンサ5Bからスイッチング素子1のゲートに出力される電流は徐々に減少する。一方、信号発信器4から出力された電流により、第1トランジスタ21のベース電位は徐々に上昇し、第1トランジスタ21がオフ状態からオン状態へと徐々に変化する。これにより、駆動電源3Aからスイッチング素子1のゲートに電流が緩やかに流れ、スイッチング素子1のゲート電圧を緩やかに上昇させることができる。その結果、スイッチング素子1のターンオン時におけるサージ電圧を低減することができる。
《第4実施形態》
次に、第4実施形態に係るスイッチング装置を説明する。図5は、第4実施形態に係るスイッチング装置100cのブロック図である。第4実施形態では、図5に示すように、第1トランジスタ21のベースと信号発信器4との間の配線71、および、第2トランジスタ22のベースと信号発信器4との間の配線72を結合していること以外は、第1実施形態に係るスイッチング装置100と同じ構成を有する。
このように、第4実施形態では、第1トランジスタ21のベースと信号発信器4との間の配線71、および、第2トランジスタ22のベースと信号発信器4との間の配線72を結合している。そして、スイッチング素子1のターンオン時には、第1トランジスタ21のベース電圧を上昇させるために、信号発信器4によりベース電流が出力される。信号発信器4により出力された電流は、配線71を介して、第1トランジスタ21のベースに出力され、第1トランジスタ21のターンオン動作が行われる。そして、第1トランジスタ21がターンオンすることで、第1トランジスタ21を介して、駆動電源3Aからスイッチング素子1のゲートに電流が供給され、スイッチング素子1のターンオン動作が行われる。なお、信号発信器4から電流が出力されると、第2トランジスタ22のベース電圧が高くなるため、第2トランジスタ22のターンオフが促進され、第2トランジスタ22のターンオフ時間を短くすることができる。
また、スイッチング素子1のターンオフ時には、第2トランジスタ22のベース電圧を低下させるために、信号発信器4により負方向の電流が出力される。信号発信器4により出力された負方向の電流は、配線72を介して、第2トランジスタ22のベースに出力され、第2トランジスタ22のターンオン動作が行われる。そして、第2トランジスタ22がターンオンすることで、スイッチング素子1のゲート電流が、第2トランジスタ22を介して、第2トランジスタ22のコレクタ側へと流され、スイッチング素子1のターンオフ動作が行われる。なお、信号発信器4から負方向の電流が出力されると、第1トランジスタ21のベース電圧が低くなるため、第1トランジスタ21のターンオフが促進され、第1トランジスタ21のターンオフ時間を短くすることができる。
さらに、第4実施形態では、第1実施形態と同様に、スイッチング素子1のゲートと第2トランジスタ22のベースとの間に、コンデンサ5Aおよびダイオード6Aを直列に接続している。そのため、第1実施形態と同様に、スイッチング素子1のターンオフの初期には、スイッチング素子1のゲート電圧を急峻に下降させることができ、スイッチング素子1のスイッチング損失を低減させることができる。また、スイッチング素子1のターンオフの終期では、スイッチング素子1のゲート電圧を緩やかに下降させることができ、その結果、スイッチング素子1のターンオフ時におけるサージ電圧の発生を抑制することができる。
以上のように、第4実施形態に係るスイッチング装置100cは、第1トランジスタ21のベースと信号発信器4との間の配線71、および、第2トランジスタ22のベースと信号発信器4との間の配線72を結合することで、第1実施形態の効果に加えて、信号発信器1から出力するスイッチング信号を1つに纏めることができるため、スイッチング装置100cのコスト低減を図ることができる。
《第5実施形態》
次に、第5実施形態に係るスイッチング装置を説明する。図6は、第5実施形態に係るスイッチング装置100dのブロック図である。第5実施形態では、図6に示すように、第1トランジスタ21のベースと信号発信器4との間の配線71、および、第2トランジスタ22のベースと信号発信器4との間の配線72を結合していること以外は、第2実施形態に係るスイッチング装置100aと同じ構成を有する。
図6に示すように、第5実施形態では、第1トランジスタ21のベースと信号発信器4との間の配線71、および、第2トランジスタ22のベースと信号発信器4との間の配線72を結合している。これにより、第5実施形態では、スイッチング素子1のターンオン時には、配線71を介して、信号発信器4から第1トランジスタ21のベースに電流が出力され、第1トランジスタ21のターンオン動作が行われる。そして、第1トランジスタ21がターンオンすることで、第1トランジスタ21を介して、駆動電源3Aからスイッチング素子1のゲートに電流が供給され、スイッチング素子1のターンオン動作が行われる。また、信号発信器4から電流が出力されると、第2トランジスタ22のベース電圧が高くなるため、第2トランジスタ22のターンオフが促進され、第2トランジスタ22のターンオフ時間を短くすることができる。
また、スイッチング素子1のターンオフ時には、配線72を介して、信号発信器4から第2トランジスタ22のベースに負方向の電流が出力され、第2トランジスタ22のターンオン動作が行われる。そして、第2トランジスタ22がターンオンすることで、第2トランジスタ22を介して、スイッチング素子1のゲートから第2トランジスタ22のコレクタ側に電流が流れ、スイッチング素子1のターンオフ動作が行われる。また、信号発信器4から負方向の電流が出力されると、第1トランジスタ21のベース電圧が低くなるため、第1トランジスタ21のターンオフが促進され、第1トランジスタ21のターンオフ時間を短くすることができる。
さらに、第5実施形態では、第2実施形態と同様に、スイッチング素子1のゲートと第1トランジスタ21のベースとの間に、コンデンサ5Bおよびダイオード6Bを直列に接続している。これにより、第2実施形態と同様に、スイッチング素子1のターンオンの初期には、スイッチング素子1のゲート電圧を急峻に上昇させることができるため、スイッチング素子1のターンオン時におけるスイッチング素子1のスイッチング損失を低減させることができる。また、スイッチング素子1のターンオンの終期では、スイッチング素子1のゲート電圧を緩やかに上昇させることができるため、スイッチング素子1のターンオン時におけるサージ電圧の発生を抑制することができる。
以上のように、第5実施形態に係るスイッチング装置100dは、第1トランジスタ21のベースと信号発信器4との間の配線71、および、第2トランジスタ22のベースと信号発信器4との間の配線72を結合している。これにより、第5実施形態では、第2実施形態の効果に加えて、信号発信器1から出力するスイッチング信号を1つに纏めることができるため、スイッチング装置100dのコスト低減を図ることができる。
《第6実施形態》
次に、第6実施形態に係るスイッチング装置を説明する。図7は、第6実施形態に係るスイッチング装置100eのブロック図である。第6実施形態では、図7に示すように、第1トランジスタ21のベースと信号発信器4との間の配線71、および、第2トランジスタ22のベースと信号発信器4との間の配線72を結合していること以外は、第3実施形態に係るスイッチング装置100bと同じ構成を有する。
図7に示すように、第6実施形態では、第1トランジスタ21のベースと信号発信器4との間の配線71、および、第2トランジスタ22のベースと信号発信器4との間の配線72を結合している。これにより、第6実施形態では、スイッチング素子1のターンオン時には、配線71を介して、信号発信器4から第1トランジスタ21に電流が出力され、第1トランジスタ21のターンオン動作が行われる。そして、第1トランジスタ21がターンオンすることで、第1トランジスタ21を介して、駆動電源3Aからスイッチング素子1のゲートに電流が供給され、スイッチング素子1のターンオン動作が行われる。なお、信号発信器4から電流が出力されると、第2トランジスタ22のベース電圧は高くなるため、第2トランジスタ22のターンオフが促進され、第2トランジスタ22のターンオフ時間を短くすることができる。
また、スイッチング素子1のターンオフ時には、配線72を介して、信号発信器4から第2トランジスタ22に負方向の電流が出力され、第2トランジスタ22のターンオン動作が行われる。そして、第2トランジスタ22がターンオンすることで、第2トランジスタ22を介して、スイッチング素子1のゲートから第2トランジスタ22のコレクタ側に電流が流れることで、スイッチング素子1のターンオフ動作が行われる。なお、信号発信器4から負方向の電流が出力されると、第1トランジスタ21のベース電圧は低くなるため、第1トランジスタ21のターンオフが促進され、第1トランジスタ21のターンオフ時間を短くすることができる。
さらに、第5実施形態では、第3実施形態と同様に、スイッチング素子1のゲートと第2トランジスタ22のベースとの間に、コンデンサ5Aおよびダイオード6Aが直列に接続されており、スイッチング素子1のゲートと第1トランジスタ21のベースとの間に、コンデンサ5Bおよびダイオード6Bが直列に接続されている。
そのため、スイッチング素子1のターンオフの初期では、スイッチング素子1のゲート電流をコンデンサ5Aの充電に用いることで、スイッチング素子1のゲート電圧を急峻に下降させることができ、スイッチング素子1のターンオフ時におけるスイッチング損失を低減することができる。また、スイッチング素子1のターンオフの終期では、コンデンサ5Aから第2トランジスタ22のベースに出力される電流が減少するとともに、信号発信器4から第2トランジスタ22のベースに負方向の電流が出力される。これにより、第2トランジスタ22のベース電圧が低下し、スイッチング素子1のゲート電流が第2トランジスタ22のコレクタ側に徐々に流れる。その結果、スイッチング素子1のターンオフの終期において、スイッチング素子1のゲート電圧を緩やかに下降させることができ、スイッチング素子1のターンオフ時におけるサージ電圧の発生を抑制することができる。
なお、本実施形態では、ダイオード6Bのアノードと第1トランジスタ21のベースとを電気的に接続しているため、スイッチング素子1のターンオフ時に、コンデンサ5Bから出力された電流はダイオード6Bを通過することができない。そのため、スイッチング素子1のターンオフ時に、コンデンサ5Bおよびダイオード6Bを介して、スイッチング素子1のゲート電流は流れない。
また、スイッチング素子1のターンオンの初期では、信号発信器4により出力された電流が、ダイオード6Bを介してコンデンサ5Bに入力されるとともに、コンデンサ5Bからスイッチング素子1のゲートに電流が流れる。これにより、スイッチング素子1のターンオンの初期において、スイッチング素子1のゲート電圧を急峻に上昇させることができ、スイッチング素子1のターンオン時におけるスイッチング損失を低減することができる。また、スイッチング素子1のターンオンの終期では、コンデンサ5Bからスイッチング素子1へと出力される電流は減少する一方、第1トランジスタ21を介して、駆動電源3Aからスイッチング素子1のゲートに電流が徐々に供給される。これにより、スイッチング素子1のゲート電圧を緩やかに上昇させることができるため、スイッチング素子1のターンオン時におけるサージ電圧の発生を抑制することができる。
なお、本実施形態では、ダイオード6Aのカソードと第2トランジスタ22のベースとを電気的に接続しているため、スイッチング素子1のターンオン時に、信号発信器4により出力された電流はダイオード6Aを通過することができない。そのため、スイッチング素子1のターンオン時に、コンデンサ5Aおよびダイオード6Aを介して、スイッチング素子1のゲートに電流は流れない。
以上のように、第6実施形態では、第1トランジスタ21のベースと信号発信器4との間の配線71、および、第2トランジスタ22のベースと信号発信器4との間の配線72を結合している。これにより、第6実施形態では、第3実施形態の効果に加えて、信号発信器1から出力するスイッチング信号を1つに纏めることができ、スイッチング装置100eのコスト低減を図ることができる。
《第7実施形態》
次に、第7実施形態に係るスイッチング装置を説明する。図8は、第7実施形態に係るスイッチング装置100fのブロック図である。第7実施形態では、図8に示すように、駆動電源3Bを有すること以外は、第3実施形態に係るスイッチング装置100bと同じ構成を有する。
駆動電源3Bは、駆動電源3Aと同じく、出力電圧を変更可能な電源である。駆動電源3Bは、第2トランジスタ22のコレクタに接続している。駆動電源3Bは、スイッチング素子1のターンオフ時に、第2トランジスタ22のコレクタ電圧を制御することで、スイッチング素子1のゲート電流の第2トランジスタ22のエミッタ−コレクタ間の通電を制御し、これにより、スイッチング素子1のゲート電圧を調整することができる。たとえば、駆動電源3Bは、第2トランジスタ22のコレクタ電圧が低下するように動作することで、スイッチング素子1のゲート電流の第2トランジスタ22のエミッタ−コレクタ間の通電を促進することができ、これにより、スイッチング素子1のゲート電圧の低下を促進することができる。
以上のように、第7実施形態では、第2トランジスタ22のコレクタに接続する駆動電源3Bを有する。これにより、第7実施形態では、第3実施形態の効果に加えて、スイッチング素子1のターンオフ時に、第2トランジスタ22を介して、スイッチング素子1のゲート電圧をより確実に低下させることができ、スイッチング素子1のターンオフ時に、スイッチング素子1が誤ってターンオンしてしまうことを有効に防止することができる。
《第8実施形態》
次に、第8実施形態に係るスイッチング装置を説明する。図9は、第8実施形態に係るスイッチング装置100gのブロック図である。第8実施形態では、図9に示すように、抵抗7A〜7Dおよびダイオード6C,6Dを有すること以外は、第7実施形態に係るスイッチング装置100fと同じ構成を有する。
抵抗7Aは、スイッチング素子1のゲートとコンデンサ5Aとの間に接続されている。抵抗7Aの抵抗値を適宜設計することで、スイッチング素子1のターンオフ時に、スイッチング素子1のゲートからコンデンサ5Aへと流れるゲート電流を調整することができる。これにより、スイッチング素子1のターンオフの初期における、スイッチング素子1のゲート電圧の変化速度(下降速度)を調整することができる。
抵抗7Bは、コンデンサ5Bとスイッチング素子1のゲートとの間に接続されている。抵抗7Bの抵抗値を適宜設定することで、スイッチング素子1のターンオン時に、コンデンサ5Bからスイッチング素子1のゲートへと流れる電流を調整することができる。これにより、スイッチング素子1のターンオンの初期における、スイッチング素子1のゲート電圧の変化速度(上昇速度)を調整することができる。
抵抗7Cおよびダイオード6Cは、スイッチング素子1のゲートと第2トランジスタ22のエミッタとの間に直列に接続されている。具体的には、抵抗7Cは、スイッチング素子1のゲートとダイオード6Cのアノードとにそれぞれ接続されている。また、ダイオード6Cは、アノードが抵抗7Cと接続しており、カソードが第2トランジスタ22のエミッタに接続している。これにより、スイッチング素子1のターンオフの終期において、スイッチング素子1のゲートから、第2トランジスタ22のコレクタ−エミッタ間を流れるゲート電流を調整することができる。その結果、スイッチング素子1のターンオフの終期における、スイッチング素子1のゲート電圧の変化速度(下降速度)を調整することができる。
抵抗7Dおよびダイオード6Dは、第1トランジスタ21のエミッタとスイッチング素子1のゲートとの間に直列に接続されている。また、抵抗7Dおよびダイオード6Dは、抵抗7Cおよびダイオード6Cの導通方向とは逆方向に、抵抗7Cおよびダイオード6Cに並行して接続されている。
抵抗7Dは、ダイオード6Dのカソードとスイッチング素子1のゲートとにそれぞれ接続されている。また、ダイオード6Dは、アノードが第1トランジスタ21のエミッタと接続しており、カソードがコンデンサ7Dに接続している。これにより、スイッチング素子1のターンオンの終期において、駆動電源3Aから、第1トランジスタ21のコレクタ−エミッタ間を流れ、スイッチング素子1のゲートへと流れる電流を調整することができる。その結果、スイッチング素子1のターンオンの終期における、スイッチング素子1のゲート電圧の変化速度(上昇速度)を調整することができる。
また、第8実施形態においては、抵抗7A,7Bの抵抗値は、抵抗7C,7Dの抵抗値よりも大きくなるように、各抵抗7A〜7Dの抵抗値が設計されている。これにより、スイッチング素子1のターンオフの初期またはターンオンの初期におけるゲート電圧をより急峻に変化させることができ、あるいは、スイッチング素子1のターンオフの終期またはターンオンの終期におけるゲート電圧をより緩やかに変化させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
上述した実施形態では、スイッチング素子1のゲートと第2トランジスタ22のベースとの間に、コンデンサ5Aおよびダイオード6Aを直列に接続する構成、または、スイッチング素子1のゲートと第1トランジスタ21のベースとの間に、コンデンサ5Bおよびダイオード6Bを直列に接続する構成を例示したが、コンデンサ5A,5Bおよびダイオード6A,6Bに代えて、スイッチ回路を接続する構成としてもよい。