以下、図面を参照し、本発明の車両用表示システム、車両用表示方法、および車両用表示プログラムの実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態における車両用表示システム1の構成図である。車両用表示システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
車両用表示システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、ファインダ14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Micro-Processing Unit)60と、運転操作子80と、自動運転制御ユニット100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両用表示システム1が搭載される車両(以下、自車両Mと称する)の任意の箇所に一つまたは複数が取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウィンドウシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に一つまたは複数が取り付けられる。レーダ装置12は、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
ファインダ14は、照射光に対する散乱光を測定し、対象までの距離を検出するLIDAR(Light Detection and Ranging、或いはLaser Imaging Detection and Ranging)である。ファインダ14は、自車両Mの任意の箇所に一つまたは複数が取り付けられる。
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御ユニット100に出力する。
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi−Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、自車両Mの周辺に存在する他車両(周辺車両の一例)と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。図2は、HMI30の構成の一例を示す図である。図示の例のように、HMI30は、表示装置31と、スピーカ32と、操作スイッチ33とを備える。表示装置31は、「表示部」の一例であり、操作スイッチ33は、「受付部」の一例である。
表示装置31は、例えば、フロントウィンドウシールド31aと、ディスプレイ31bとを含むHUD(Head Up Display)である。フロントウィンドウシールド31aの手前側に設けられるディスプレイ31bは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、反射型液晶パネル、ホログラフィック光学素子などで構成されてよい。ディスプレイ31bによって表示される像は、フロントウィンドウシールド31aによって反射され、車両乗員(例えば運転席に着座した運転者)の眼に入射することで、車両の前方に画像が存在するかのように視認される。
また、表示装置31は、例えば、プロジェクトマッピングを用いて、フロントウィンドウシールド31a越しに、自車両Mの前方の道路に画像を表示してもよい。
また、表示装置31は、例えば、インストルメントパネルの各部、助手席や後部座席に対向する任意の箇所などに取り付けられる、LCDや有機EL(Electroluminescence)表示装置などを含んでいてもよい。
スピーカ32は、自動運転制御ユニット100の制御を受けて音声を出力する。
操作スイッチ33は、例えば、ステアリングホイールに設けられ、表示装置31による画像の表示に関して、種々の入力操作を受け付ける。入力操作には、例えば、自動運転制御ユニット100内に予め記憶された複数のコンテンツの中から、表示装置31に表示させるコンテンツを選択する操作などが含まれる。操作スイッチ33は、受け付けた入力操作に基づく操作入力信号を生成し、この信号を自動運転制御ユニット100に出力する。
ここで、図1の説明に戻る。車両センサ40は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。車両センサ40は、検出した情報(速度、加速度、角速度、方位等)を自動運転制御ユニット100に出力する。
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備え、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、入力キーなどを含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、ナビHMI52を用いて、GNSS受信機51により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、乗員により入力された目的地までの経路を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。経路決定部53により決定された経路は、MPU60に出力される。また、ナビゲーション装置50は、経路決定部53により決定された経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。なお、ナビゲーション装置50は、例えば、ユーザの保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。また、ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから返信された経路を取得してもよい。
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61として機能し、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。例えば、推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された経路において複数の車線が存在する場合、複数の車線の中から一つの推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、提供された経路において分岐箇所や合流箇所などが存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な走行経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。道路情報には、高速道路、有料道路、国道、都道府県道といった道路の種別を表す情報や、道路の車線数、各車線の幅員、道路の勾配、道路の位置(経度、緯度、高さを含む3次元座標)、車線のカーブの曲率、車線の合流および分岐箇所の位置、道路に設けられた標識等の情報が含まれる。第2地図情報62は、通信装置20を用いて他装置にアクセスすることにより、随時、アップデートされてよい。
運転操作子80は、例えば、アクセルペダルや、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイール等を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、自動運転制御ユニット100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一方または双方に出力される。
自動運転制御ユニット100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部140と、第3制御部150と、記憶部160とを備える。
第1制御部120、第2制御部140、および第3制御部150は、それぞれ、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することで実現される。また、以下に説明する第1制御部120、第2制御部140、および第3制御部150の構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
記憶部160は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)などにより実現される。記憶部160には、ファームウェアやアプリケーションプログラムなどの各種プログラムの他、コンテンツ情報161などの情報が記憶される。
図3は、コンテンツ情報161の一例を示す図である。例えば、コンテンツ情報161は、各コンテンツを識別可能なコンテンツIDに対して、そのコンテンツの内容が対応付けられた情報である。本実施形態におけるコンテンツとは、例えば、メール文章、書籍、マンガ、カラオケなどの歌詞、SNS(Social Networking Service)の会話内容などを含む。言い換えれば、コンテンツは、文章などを表す文字列を含むテキストであってもよいし、マンガのコマなどを表す画像であってもよい。例えば、テキストには、漢字やアルファベットなどの種々の文字のほか、数字や記号、メールの絵文字、SNSで使用されるスタンプが含まれてよい。マンガのコマなどを表す画像、またはテキストに含まれ得る絵文字やスタンプは、「絵図情報」の一例である。
第1制御部120は、例えば、外界認識部121と、自車位置認識部122と、行動計画生成部123とを備える。
外界認識部121は、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14から直接的に、或いは物体認識装置16を介して入力される情報に基づいて、周辺車両の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。周辺車両の位置は、その周辺車両の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、周辺車両の輪郭で表現された領域で表されてもよい。周辺車両の「状態」とは、周辺車両の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か等)を含んでもよい。また、外界認識部142は、周辺車両に加えて、ガードレールや電柱、駐車車両、歩行者、道路路面の標示、標識、その他の物体の位置を認識してもよい。
自車位置認識部122は、例えば、自車両Mが走行している車線(走行車線)、並びに走行車線に対する自車両Mの相対位置および姿勢を認識する。自車位置認識部122は、例えば、第2地図情報62から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。
そして、自車位置認識部122は、例えば、走行車線に対する自車両Mの位置や姿勢を認識する。図4は、自車位置認識部122により走行車線L1に対する自車両Mの相対位置および姿勢が認識される様子を示す図である。自車位置認識部122は、例えば、自車両Mの基準点(例えば重心)の走行車線中央CLからの乖離OS、および自車両Mの進行方向の走行車線中央CLを連ねた線に対してなす角度θを、走行車線L1に対する自車両Mの相対位置および姿勢として認識する。なお、これに代えて、自車位置認識部122は、自車線L1のいずれかの側端部に対する自車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。自車位置認識部122により認識される自車両Mの相対位置は、推奨車線決定部61および行動計画生成部123に提供される。
行動計画生成部123は、推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行するように、且つ、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自動運転において順次実行されるイベントを決定する。自動運転とは、自車両Mの加減速または操舵の少なくとも一方を、自動運転制御ユニット100が制御することをいう。イベントには、例えば、一定速度で同じ走行車線を走行する定速走行イベント、前走車両に追従する追従走行イベント、車線変更イベント、合流イベント、分岐イベント、緊急停止イベント、自動運転を終了して手動運転に切り替えるためのハンドオーバイベントなどがある。また、これらのイベントの実行中に、自車両Mの周辺状況(周辺車両や歩行者の存在、道路工事による車線狭窄など)に基づいて、回避のための行動が計画される場合もある。
行動計画生成部123は、自車両Mが将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとに将来の基準時刻を複数設定し、それらの基準時刻に到達すべき目標地点(軌道点)の集合として生成される。このため、軌道点同士の間隔が広い場合、その軌道点の間の区間を高速に走行することを示している。
図5は、推奨車線に基づいて目標軌道が生成される様子を示す図である。図示するように、推奨車線は、目的地までの経路に沿って走行するのに都合が良いように設定される。行動計画生成部123は、推奨車線の切り替わり地点の所定距離手前(イベントの種類に応じて決定されてよい)に差し掛かると、車線変更イベント、分岐イベント、合流イベントなどを起動する。各イベントの実行中に、障害物を回避する必要が生じた場合には、行動計画生成部123は、図示するように回避のための軌道を生成してもよいし、減速のための軌道を生成してよい。
行動計画生成部123は、例えば、目標軌道の候補を複数生成し、安全性と効率性の観点に基づいて、その時点での最適な目標軌道を選択する。
第2制御部140は、走行制御部141を備える。走行制御部141は、行動計画生成部123によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200並びにブレーキ装置210と、ステアリング装置220との一方または双方を制御する。
第3制御部150の説明に先立って、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220について説明する。
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECUとを備える。ECUは、走行制御部141から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、走行制御部141から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、走行制御部141から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、走行制御部141から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
第3制御部150は、例えば、コンテンツ表示領域設定部151と、表示内容制御部152とを備える。
以下、第3制御部150による一連の処理についてフローチャートを用いて説明する。図6は、第3制御部150による一連の処理の一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、例えば、走行制御部141によって、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220の一部または全部が制御されているときに所定の周期で繰り返し行われる。
まず、コンテンツ表示領域設定部151は、自車両Mが走行する道路の形態に基づいて、表示装置31にコンテンツを表示させる表示領域Rを、その表示装置31の表示対象に対して設定する(ステップS100)。表示対象とは、例えば、上述したフロントウィンドウシールド31aおよびディスプレイ31b、または道路である。道路の形態とは、例えば、道路の形状や、その道路の幅である。
図7は、表示領域Rの設定方法を説明するための図である。例えば、コンテンツ表示領域設定部151は、自車位置認識部122によって認識された道路区画線のうち、自車線L1を区画する二つの道路区画線CLから、自車線L1の形状および幅を求め、自車線を表す領域に重畳するように表示領域Rを設定する。このとき、表示領域Rの一部が、他車線に重畳されてもよい。
また、コンテンツ表示領域設定部151は、自車位置認識部122によって認識された道路区画線から自車線の形状および幅を求める他、MPU60において参照される第2地図情報62に基づいて、自車線の形状および幅を求めてもよい。例えば、コンテンツ表示領域設定部151は、第2地図情報62に含まれる車線の幅員や車線のカーブの曲率といった情報を参照して、自車線の形状および幅を求める。
また、コンテンツ表示領域設定部151は、表示領域Rを設定する際に、自車線の状況を考慮してもよい。図8は、自車線の状況に応じて表示領域Rを設定する様子を模式的に示す図である。図示の(a)のように、例えば、外界認識部121によって、自車線L1上に停止車両などの障害物が認識された場合、コンテンツ表示領域設定部151は、この障害物と、その障害物の周辺領域とを除いて表示領域Rを設定してよい。停止車両などの障害物は、「予め決められた対象物」の一例である。
また、図示の(b)のように、例えば、外界認識部121によって、自車線L1上において「スクールゾーン」などの規制標示が認識された場合、コンテンツ表示領域設定部151は、この標示と、その標示の周辺領域とを除いて表示領域Rを設定してよい。
なお、コンテンツ表示領域設定部151は、自車線に限られず、他車線に跨って表示領域Rを設定してもよい。すなわち、表示領域Rには、自車線および他車線が含まれてよい。この場合、コンテンツ表示領域設定部151は、他車線(例えば対向車線)を走行する周辺車両を障害物と見做し、この周辺車両と、その周辺車両の周辺領域を除くように表示領域Rを設定してよい。
次に、表示内容制御部152は、操作スイッチ33により出力される操作入力信号を参照して、乗員によって選択されたコンテンツが文章などの文字列を含むテキストであるか否かを判定する(ステップS102)。
乗員によって選択されたコンテンツがテキストである場合、表示内容制御部152は、例えば、テキストに含まれる文字列が表示領域R内に収まるように、文字列に制御コードを挿入する(ステップS104)。制御コードとは、表示装置31において利用される文字コードのうち、表示装置31に所定の動作をさせるためのコードである。なお、制御コードは、非表示文字として扱われ、フロントウィンドウシールド31aおよびディスプレイ31bなどの表示対象には表示されないものとする。
図9は、制御コードが挿入された文字列の一例を示す図である。図中に示す制御コード<A>は、改行コードを表し、<B>は、改ページを表している。本実施形態における改行とは、表示領域Rの車両幅方向(自車両Mの進行方向に略直交する方向)を行方向としたときに、文字列を表示する対象の行を、ある行から他の行に変えることをいう。他の行とは、例えば、ある行に隣り合う行であってもよいし、ある行から1行や2行といったように別の行を隔てた行であってもよい。また、本実施形態における改ページとは、表示領域R内に同時に表示する文字列の集合を、ある周期で別の文字列の集合に更新することをいう。言い換えれば、改ページは、あるテキストが示す文字列において、表示領域R内に同時に表示させる一連の文字列を、どこからどこまでなのかを区切ることをいう。
例えば、表示内容制御部152は、表示領域Rを行と列に区画して、各行において表示可能な最大文字数を導出する。例えば、表示内容制御部152は、表示予定の文字のサイズやフォントの種類に基づいて、表示領域R内の行方向において占有する文字の面積を導出する。表示予定の文字のサイズやフォントの種類は、予め決められていてもよいし、逐次HMI30やナビHMI52に対する乗員の操作に応じて決定されてもよい。
表示内容制御部152は、行ごとの表示領域Rの面積(行方向に関する面積)に対する、導出した文字の面積の比率から、当該行において表示可能な最大文字数を導出する。例えば、最大文字数は、上記比率が1を超えない範囲での文字数である。
そして、表示内容制御部152は、一つの行に表示させる文字列が、導出した最大文字数を超えた場合、その最大文字数を超えた文字の手前に制御コード<A>を挿入する。これによって、制御コード<A>以下の文字列は、他の行に表示されることになる。なお、表示内容制御部152は、最大文字数未満で制御コード<A>を挿入してもよい。例えば、文字列内に句読点、或いはこれに相当する文字(終止符やカンマなど)が含まれている場合、表示内容制御部152は、最大文字数未満であっても、その文字の後、或いは前に制御コード<A>を挿入してよい。
表示内容制御部152は、表示領域Rの最後の行において、最大文字数を超えるか否かを判定し、最大文字数を超える場合に、その最大文字数を超える文字の手前に制御コード<B>を挿入する。最後の行とは、例えば、車両進行方向に関して、自車両Mから遠ざかる側から近づく側に、意味が通るように順次文字列を表示する場合、表示領域Rに含まれる行のうち、最も自車両Mに近い側の行となる。
そして、表示内容制御部152は、適時制御コードを挿入した文字列の情報を表示装置31に出力することで、表示装置31に、制御コードに従って改行や改ページを行わせながら文字列を表示させる(ステップS106)。
図10は、制御コードが挿入された文字列を表示対象に表示させたときの様子を模式的に示す図である。図10に示す文字列は、図9に例示した制御コードを含む文字列である。図中(a)に示すように、例えば、時刻tiにおいて、「あ」から「て」までの文字列は、制御コード<A>が挿入された位置で改行されて表示される。また、「あ」から「て」までの文字列の後には、制御コード<B>が挿入されているため、図中(b)に示すように、時刻tiの次の表示周期の時刻ti+1では、「と」から「よ」までの文字列が表示される。このように、表示内容制御部152は、ある程度のまとまりで複数の文字列(改行で分けられた複数の文字列)を同時に表示させ、所定の周期で表示内容を逐次切り替えていくことで、書籍のような紙媒体においてページをめくるような感覚でコンテンツを乗員に見せることができる。なお、図中に示すsymは、制御コード<A>を模式的に示すものであり、実際には表示されなくてよい。
また、上述した制御コードはあくまでも一例であり、他の制御コードが文字列に挿入されてもよい。図11は、制御コードが挿入された文字列の他の例を示す図である。例えば、表示内容制御部152は、改行後の文の冒頭を字下げする制御コード<N>を文字列に挿入してもよい。Nは、何文字分字下げするのか表している。例えば、制御コード<N=3>の場合、文字の表示を開始する位置の基準となる線(以下、アウトラインと称する)から3文字分字下げすることを意味する。例えば、アウトラインは、上述した自車線を区画する道路区画線CLであってもよいし、HUDの最大画角を示す境界線、すなわちコンテンツを画像として投影したときの表示領域の外縁であってもよい。また、制御コードには、文字の大きさやフォント、行間、文字同士の間隔を変更するコードが含まれていてもよい。
また、表示内容制御部152は、ある表示周期で文字列を同時に切り替えるのではなく、改行で分けられた複数の文字列を表示領域R内でスクロール表示させてもよい。スクロール表示とは、例えば、表示対象であるフロントウィンドウシールド31aの上部から下部に向かってコンテンツを流れるように表示する態様をいう。
図12は、文字列をスクロール表示させたときの様子を模式的に示す図である。図示のように、表示内容制御部152は、表示装置31を制御して、時間が経過するのに応じて、文字列を表示領域R内で自車両Mから遠ざかる側から近づく側に移動するように表示させる。このとき、表示内容制御部152は、時間の経過に応じて、文字列を行単位で拡縮して表示させてよい。
表示内容制御部152は、上述した表示周期またはスクロール時の文字列の移動速度(以下、スクロール速度と称する)を、自車両Mの速度に応じて変更してよい。図13は、文字列を同時に切り替える表示周期と、自車両Mの速度との関係の一例を示す図である。図示のように、表示周期は、自車両Mの速度が増加するのに応じて、その時間が短くなるように設定される。また、表示周期の変化傾向は、操作スイッチ33によって受け付けられた設定操作に応じて変更されてよい。例えば、図示の例のように、表示周期は、「長め」「中程度」「短め」といったような三段階で設定されてよい。なお、これらの表示周期には、人間がコンテンツを認識できる程度の最低限の有余を与えるために下限時間Tthが設定されてよい。
図14は、スクロール速度と、自車両Mの速度との関係の一例を示す図である。図示のように、スクロール速度は、自車両Mの速度が増加するのに応じて、その速度が速くなるように設定される。また、スクロール速度の変化傾向は、表示周期と同様に、操作スイッチ33によって受け付けられた設定操作に応じて変更されてよい。また、スクロール速度には、人間がコンテンツを認識できる程度の最低限の有余を与えるために上限速度Vthが設定されてよい。
また、表示内容制御部152は、上述した自車両Mの速度に応じて、表示させるコンテンツの色や大きさ、フォントなどの表示態様を変更してよい。
図15は、自車両Mの速度に応じてコンテンツの表示態様を変更する様子を模式的に示す図である。例えば、表示内容制御部152は、次の表示周期に移り変わるまでの時間(次のコンテンツの内容に切り替わるまでの時間)に基づいて、ある表示周期において同時に表示させた複数の文字列のうち、乗員が読むべき行をハイライト(強調)して表示させる。図示の例では、時間の経過に応じて、最も自車両Mから遠い側の行、中段の行、最も自車両Mに近い側の行の順にハイライトされている。これによって、そのタイミングの時点で読んでおくべき目安となる文字列を乗員に認識させることができる。なお、図示の例では、コンテンツの表示態様は、行単位で変更されるものとしたがこれに限られず、列単位、すなわち一文字或いは数文字ずつ変更されてもよい。
図16は、車室内から見た外の風景の様子を模式的に示す図である。上述したように表示領域Rは、例えば、自車線の形態に合わせてフロントウィンドウシールド31a上に設定されるため、図示のように、車室内からフロントウィンドウシールド31a越しに、自車両Mの前方の風景を見た場合、この風景の一部と重なってコンテンツが表示されることになる。このとき、表示内容制御部152は、操作スイッチ33によって受け付けられた操作に応じて、表示させたコンテンツの一部または全部を変更してよい。
例えば、図示のように、操作スイッチ33がステアリングホイールの左右の両側にそれぞれ設けられている場合に、左側の操作スイッチ33が操作されると、表示内容制御部152は、「読み返し」処理を行う。「読み返し」とは、例えば、過去に表示したコンテンツを再度表示することをいう。また、「読み返し」は、表示周期を延長したり、スクロール速度を遅くしたりすることであってもよい。
一方、右側の操作スイッチ33が操作されると、表示内容制御部152は、「先送り」処理を行う。「先送り」とは、例えば、表示周期の経過やスクロールの完了を待たずにコンテンツを更新することをいう。また、「先送り」は、表示周期を短縮したり、スクロール速度を速くしたりすることであってもよい。
ここで、図6のフローチャートの説明に戻る。表示内容制御部152は、S102の処理において、乗員によって選択されたコンテンツがテキストでないと判定した場合、すなわちこのコンテンツがマンガのコマのような画像である場合、アフィン変換やホモグラフィ変換などの写像処理によって、画像を表示領域Rに合わせた形状に変形させる(ステップS108)。そして、表示内容制御部152は、形状変換した画像を表示装置31に表示させる(ステップS110)。
図17は、車室内から見た外の風景の様子を模式的に示す図である。図示の例のように、フロントウィンドウシールド31aに越しに、自車両Mの前方の風景を見た場合、この風景の一部と重なって写像変換された画像IMGが表示されることになる。
次に、表示内容制御部152は、行動計画生成部123により起動されるイベントがハンドオーバイベントであるか否かを判定する(ステップS112)。例えば、行動計画生成部123は、次の条件のうちいずれか一つが成立した場合に、ハンドオーバイベントを起動する。
(1)自車両Mが、予め設定された目的地付近に到達した。
(2)自車両Mの周辺環境が、自動運転を継続困難な環境である。
(3)運転操作子80に対して、所定量以上の操作がなされた(オーバーライド)。
行動計画生成部123は、ハンドオーバイベントを起動すると、まず、運転操作子80を操作するように要求する情報(ハンドオーバリクエスト)をHMI30に出力させ、運転操作子80に対して所定量以上の操作がなされた場合に、自動運転を終了して手動運転に切り替える。但し、上記(3)のオーバーライドの場合には、HMI30による、運転操作子80を操作するように要求する情報の出力は省略されてよく、行動計画生成部123は、代わりに手動運転に切り替わる旨の情報をHMI30に出力させてよい。所定量以上の操作とは、例えば、アクセルペダルに関して言えば、アクセル開度が閾値以上の状態が所定時間以上継続するような操作である。行動計画生成部123は、例えば、自動運転に係る制御ゲインを徐々に低下させ、最終的には運転操作子80の操作量が直接、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220に提供されるように制御する。その後は、自動運転制御ユニット100が制御に関与せず(信号の中継は行ってもよい)、運転操作子80の操作量に基づいて、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220が動作する手動運転が実行される。
上記のような条件のいずれか一つ以上が満たされる場合に、表示内容制御部152は、行動計画生成部123により起動されるイベントがハンドオーバイベントであると判定する。そして、表示内容制御部152は、表示装置31を制御して、フロントウィンドウシールド31aなどの表示対象に表示させたコンテンツを非表示にして(ステップS114)、本フローチャートの処理を終了する。
以上、説明した第1実施形態によれば、自車両Mの乗員から見て、自車両Mの進行方向前方の風景の一部に重なって視認可能なコンテンツを表示する表示装置31と、自車両Mの進行方向前方における道路の形態に基づいて、表示装置31がコンテンツを表示する表示領域を設定するコンテンツ表示領域設定部151と、を備えることにより、車両乗員は周囲の状況を把握しつつ、コンテンツを楽しむことができる。例えば、コンテンツが自車線の形態に合わせて表示されるため、車両乗員は、少なくとも自車線を除く周囲の状況を把握することができると共に、自車線がこの先どのように湾曲しているのか、自車線の幅がどの程度縮小されていくのか、といったことを把握しながらコンテンツを視認することができる。
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態では、風景に重なるようにコンテンツを表示するものとして説明したが、第2実施形態では、緊急情報を取得した場合に、コンテンツの表示よりも優先して緊急情報を表示する例について説明する。緊急情報とは、例えば、渋滞や事故の発生状況を示す道路交通状況や、行動計画生成部123により計画される回避のための行動(回避イベント)などを含む情報である。別の見方をすれば、緊急情報は、自車両Mの外部から提供される情報と、自車両Mの内部において生成される情報の二つに大別可能である。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と共通する機能等についての説明は省略する。
図18は、第2実施形態における車両用表示システム2の構成図である。車両用表示システム2は、上述した第1実施形態と同様に、カメラ10、レーダ装置12、ファインダ14、物体認識装置16、通信装置20、HMI30、車両センサ40、ナビゲーション装置50、MPU60、運転操作子80、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を備えると共に、自動運転制御ユニット100Aを備える。これらの装置や機器は、CAN通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、図18に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
通信装置20は、情報提供サーバ装置と通信を行う。情報提供サーバ装置は、例えば、道路の交通状況を監視し、道路ごとの交通状況を示す緊急情報を、車両に提供する。
自動運転制御ユニット100Aは、例えば、上述した第1制御部120および第2制御部140と、第3制御部150Aとを備える。これらの構成要素の一部または全部は、CPUなどのプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することで実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGAなどのハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
第3制御部150Aは、コンテンツ表示領域設定部151と、表示内容制御部152と、取得部153とを備える。
取得部153は、通信装置20の通信相手である情報提供サーバ装置から、緊急情報を取得したり、行動計画生成部123により生成された行動計画(イベント)のうち、回避イベントのような他のイベントに比して緊急の度合の高い特定のイベントを緊急情報として取得したりする。
表示内容制御部152は、取得部153により緊急情報が取得されると、乗員に選択されたコンテンツよりも優先して、緊急情報を示す文字列や画像を表示対象に表示させる。
図19は、緊急情報を優先して表示する様子を模式的に示す図である。例えば、時刻tiのタイミングで取得部153により緊急情報が取得された場合、表示内容制御部152は、時刻tiの次の時刻ti+1のタイミングで、緊急情報を示す文字列を割込み表示させる。割込み表示とは、例えば、現在表示されているコンテンツの間に緊急情報を示すコンテンツを表示する態様であってもよいし、現在表示されているコンテンツを一度非表示にし、新たに緊急情報を示すコンテンツを表示する態様であってもよい。
このとき、表示内容制御部152は、緊急情報によって示される緊急の度合(以下、緊急度と称する)に応じて、表示態様を変更してよい。緊急度とは、例えば、自車両Mが走行する道路の平均車速によって表されてよい。例えば、緊急情報が渋滞や事故などの発生を表す場合、平均車速が小さいほどより渋滞(混雑)していることを意味する。
図20は、緊急情報の緊急度と表示態様との関係を示す図である。図示のように、緊急情報の緊急度に対して、フォント、文字の大きさ、色、表示周期またはスクロール速度などの表示態様が予め決められている。これによって、例えば、表示内容制御部152は、より緊急度の大きい緊急情報ほど、文字を大きくしたり、背景となる道路の色に対してよりコントラスト比が大きくなる色(例えば赤色等)で文字を表示したり、スクロール速度を遅くしたりすることで、より確実に乗員に緊急情報の内容を認識させる。
また、表示内容制御部152は、緊急情報が示す渋滞や事故といった障害の種類に応じて、表示態様を変更してもよい。障害は、例えば、事故や、事故車、障害物、道路上の作業(清掃や工事等)、路面凍結、冠水などの種類を含む。
図21は、緊急情報が示す障害と表示態様との関係を示す図である。図示のように、障害の種類に対して、フォント、文字の大きさ、色、表示周期またはスクロール速度などの表示態様が予め決められている。これによって、乗員に、周囲の状況を把握させつつ緊急情報の内容を認識させることができる。
以上説明した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様に、車両乗員は周囲の状況を把握しつつ、コンテンツを楽しむことができる。
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。