本発明の一実施形態に係る非接触通信システムの構成例を示す図である。
本発明の一実施形態に係る非接触給電システムの他の構成例を示す図である。
図1および図2に示す受信装置の構成例をより詳細に示す図である。
通信距離と受信装置の誘起電圧との関係を示す図である。
結合係数と受信装置の誘起電圧との関係を示す図である。
通信距離と結合係数との関係を示す図である。
共振回路の共振周波数とインピーダンスとの関係を示す図である。
負荷抵抗と共振回路のQ値との関係を示す図である。
負荷抵抗と受信装置の誘起電圧との関係を示す図である。
負荷抵抗と受信装置の受信電力との関係を示す図である。
負荷抵抗と受信電力の変化の傾きとの関係を示す図である。
負荷抵抗と受信電力の変化の傾きとの関係を示す図である。
図3に示す受信装置の動作の一例を示すフローチャートである。
通信距離と誘起電圧との関係を示す図である。
通信距離と誘起電圧との関係を示す図である。
図3に示す受信装置の動作の別の一例を示すフローチャートである。
図3に示す受信装置の動作のさらに別の一例を示すフローチャートである。
図3に示すRX端子の受信信号のタイミングチャートである。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはもちろんである。
図1は、本発明の一実施形態に係る非接触通信システム1の構成例を示す図である。本実施形態に係る非接触通信システム1は、磁気的結合を利用した非接触通信により、データの授受を行うシステム、あるいは、WPCでリリースされた標準規格Qiなどで規定された非接触給電を行うシステムに適用されるものである。図1において、各ブロック間における情報の入出力に関する配線を実線矢印で示し、電力の供給に関する配線を破線矢印で示す。
図1に示す非接触通信システム1は、送信装置10と、受信装置20とを備え、非接触通信により、送信装置10と受信装置20との間でデータの授受を行う送受信システムである。
送信装置10は、受信装置20に対して非接触通信によりデータを読み書きする機能を有するR/W装置である。受信装置20は、送信装置10からデータを受信し、受信したデータに応じて動作する、いわゆるカードモードで動作する装置である。受信装置20の具体例としては、非接触ICカード、ICタグ、非接触通信機能を備えた携帯電話、スマートフォンなどの電子機器などがある。
次に、送信装置10および受信装置20の構成について説明する。
まず、送信装置10の構成について説明する。
図1に示す送信装置10は、変調部11と、送信信号部12と、アンテナ部13と、送信制御部14と、復調部15と、システム制御部16とを備える。
変調部11は、システム制御部16から出力された送信データにより所定のキャリア周波数(例えば、13.56MHz)のキャリア信号を変調して送信信号部12に出力する。
送信信号部12は、変調部11から出力されたキャリア信号をアンテナ部13に出力する。
アンテナ部13は、アンテナコイルおよび共振コンデンサを備える共振回路(不図示)を備え、送信信号部12の出力に応じて、磁気的結合を利用した非接触通信により、受信装置20に信号(データ)を送信する。また、アンテナ部13は、受信装置20から信号を受信し、受信した信号を復調部15に出力する。
送信制御部14は、システム制御部16の制御に従い、アンテナ部13の共振回路の共振周波数を調整する信号を生成し、生成した信号を送信信号部12に出力する。送信信号部12は、送信制御部14からの出力信号に応じて、アンテナ部13の共振回路の共振周波数を調整する。
復調部15は、アンテナ部13から出力された信号(受信信号)を復調してシステム制御部16に出力する。より具体的には、送信信号部12によってアンテナ部13を介して受信装置20に送信された信号は、受信装置20の負荷変調により変調されて送信装置10に送信される。受信装置20からの信号はアンテナ部13により受信され、復調部15は、アンテナ部13の受信信号を復調してシステム制御部16に出力する。
システム制御部16は、送信装置10全体の動作を制御する。例えば、システム制御部16は、外部からの指令信号に対応した送信データを生成し、生成した送信データを変調部11に出力する。また、システム制御部16は、外部からの指令や内蔵するプログラムなどに従い、変調部11および送信制御部14を制御する。また、システム制御部16は、復調部15から出力された信号に従い、外部とのデータの送受信など所定の処理を行う。
次に、受信装置20の構成について説明する。
図1に示す受信装置20は、アンテナ部21と、復調部22と、整流部23と、電圧測定部24と、記憶部25と、受信制御部26と、システム制御部27と、バッテリー28とを備える。
アンテナ部21は、アンテナコイル(アンテナ)および共振コンデンサを備える共振回路(図1においては不図示)を備え、磁気的結合を利用した非接触通信により、送信装置10から送信されてきた信号を受信する。そして、アンテナ部21は、受信した信号を、復調部22および整流部23に出力する。また、アンテナ部21は、受信制御部26の制御に従い、送信装置10に信号を送信する。
復調部22は、アンテナ部21から出力された信号を復調して受信制御部26に出力する。
整流部23は、例えば、整流用ダイオードおよび整流用コンデンサからなる整流回路で構成され、アンテナ部21で受信した信号(交流電力)を直流電力に整流して電圧測定部24に出力する。
電圧測定部24は、整流部23から出力された信号(直流信号)の電圧(誘起電圧)を測定し、測定結果を受信制御部26に出力する。
記憶部25は、送信装置10と受信装置20との間の距離(通信距離)に応じてアンテナ部21のアンテナ特性(共振回路の共振周波数やQ値)を制御するための設定値などを記憶する。
受信制御部26は、通信距離を推定し、推定した通信距離に応じてアンテナ部21のアンテナ特性(共振回路の周波数特性やQ値)を制御して、通信時におけるアンテナ部21のアンテナ特性の最適化を図る。
具体的には、受信制御部26は、整流部23(整流回路)に接続する、図1においては不図示の抵抗(負荷抵抗)の抵抗値を変化させるためのLoad信号を負荷抵抗に出力し、その変化の前後での受信電力の変化に応じて通信距離を推定する。整流部23に接続する抵抗(負荷抵抗)の抵抗値を変化させると、詳細は後述するように、アンテナ部21の備える共振回路のQ値が変化する。受信制御部26は、アンテナ部21の備える共振回路のQ値を変化させ、その変化の前後の受信電力の変化に応じて通信距離を推定する。なお、受信制御部26は、電圧測定部24により測定された誘起電圧と負荷抵抗の抵抗値とに基づき受信電力を算出する。
そして、受信制御部26は、推定した通信距離に対応して記憶部25に記憶されている設定値に従い、アンテナ部21が備える可変容量のコンデンサの静電容量を制御するための制御電圧Biasをアンテナ部21に出力する。アンテナ部21が備える可変容量のコンデンサの静電容量を変化させることで、共振回路の共振周波数が変化する。また、受信制御部26は、アンテナ部21のアンテナに電気的に接続する抵抗の抵抗値を変化させることで、共振回路のQ値を変化させる。
なお、受信制御部26は、上述した通信距離の推定の際に、必要に応じて、アンテナ部21のアンテナに接続する抵抗の抵抗値を変化させるために、Load信号をアンテナ部21に出力することがある。
また、受信制御部26は、復調部22から出力された信号をシステム制御部27に出力する。また、受信制御部26は、システム制御部27の制御に従い、送信装置10から送信されてきた信号への応答信号をアンテナ部21に送信させる。応答信号のアンテナ部21による送信は、アンテナ部21のアンテナに電気的に接続する抵抗の抵抗値を変化させる負荷変調により行われる。
システム制御部27は、受信制御部26から出力された信号の内容に応じて必要な処理を行う。また、システム制御部27は、外部からの指令や内蔵するプログラムなどに従い、受信制御部26を制御する。
バッテリー28は、システム制御部27を動作させるため電力をシステム制御部27に供給する。
図1においては、非接触通信システム1が、送信装置10と受信装置20との間でデータの授受が行われる送受信システムである例を用いて説明したが、これに限られるものではない。上述したように、非接触通信システム1は、非接触給電を行うシステムに適用することもできる。以下では、非接触通信システム1が、送信装置10から受信装置20に非接触給電が行われる非接触給電システムである場合の構成例を、図2を参照して説明する。図2において、各ブロック間において情報の入出力に関する配線を実線矢印で示し、電力の供給に関する配線を破線矢印で示す。
非接触通信システム1が、非接触給電システムである場合にも、送信装置10と受信装置20との間でデータの授受は行われるので、この点は、図1に示す非接触通信システム1と同様である。したがって、図2において、図1と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。ただし、図1に示す非接触通信システム1と図2に示す非接触通信システム1とでは、使用する周波数、電圧、電流などには違いがあるが、これは、各システムの機能を果たすための設定条件の相違に起因するものである。
図2に示す非接触通信システム1は、図1に示す非接触通信システム1と比較して、受信装置20に充電制御部29を追加した点が異なる。
充電制御部29は、外部電源2や整流部23から電力(直流電力)が供給され、供給された電力によりバッテリー28を充電したり、復調部22や受信制御部26などに電力を供給したりする。また、充電制御部29は、外部電源2から電力供給を受けるモードであるか、整流部23から電力供給を受けるモードであるかを区別するためのモード信号をシステム制御部27に出力する。
図2に示す非接触通信システム1における給電方式としては、電磁誘導や磁界共鳴などの方式が適用可能であり、給電方式は特に限定されない。例えば、給電方式として、Qiフォーマットとして知られる電磁誘導方式を用いた場合、送信装置10(例えば、給電送信パッド)に受信装置20(例えば、携帯電話デバイス)を載置することで給電が行われる。この場合、送信装置10に受信装置20を載置する位置が略一定であれば、通信距離は略一定となる。しかしながら、通常、送信装置10および受信装置20がそれぞれ、非接触通信のための共振回路を備えており、載置する位置のずれや給電される機器の機種などに応じて、共振周波数がずれてしまうことがある。
具体的には、通常、送信装置10のアンテナ部13(一次側アンテナ部)および受信装置20のアンテナ部21(二次側アンテナ部)は、効率的な伝送を行うために、キャリア周波数で共振するように共振回路の共振周波数が調整されている。一般に、エネルギー効率は、電磁誘導結合の結合係数kとアンテナのQ値との掛け算により決まるため、大きなkおよび高いQ値であることが望ましい。しかしながら、共振回路のQ値を高くすると、定数のばらつきにより共振周波数が大きくずれてしまうため、高精度の部品を使うか、共振周波数を調整する必要がある。
したがって、図2に示す非接触通信システム1においても、通信特性の改善を図るためには、通信距離に応じて、受信装置20のアンテナ部21のアンテナ特性を制御する必要がある。
なお、通常、非接触通信においては、送信装置10のアンテナが設けられた面と受信装置20のアンテナが設けられた面とを対向させるようにして、通信が行われる。ここで、送信装置10と受信装置20とが対向する方向をZ方向とし、Z方向と直交する方向をX方向およびY方向とすると、送信装置10のアンテナコイルの中心と受信装置20のアンテナコイルの中心との間のZ方向の間隔だけでなく、X方向の間隔およびY方向の間隔も通信特性に影響を与える。したがって、本実施形態における通信距離とは、送信装置10のアンテナコイルの中心のX,Y,Z方向の位置と受信装置20のアンテナコイルの中心のX,Y,Z方向の位置との間の距離を指すものである。
上述したように、非接触給電の場合、送信装置10上に受信装置20が載置されるため、受信装置20の機種が同じであれば、Z方向の距離は同じとなる。しかし、受信装置20の載置位置がX方向あるいはY方向にずれると、通信距離が変化するため、上述したように、通信距離に応じて受信装置20のアンテナ部21のアンテナ特性を制御する必要がある。
図3は、受信装置20の構成例をより詳細に示す図である。図3は、受信装置20がモバイル用NFC LSI(Large Scale Integration)を備えたスマートフォンである場合の構成例を示している。なお、図3においては、図1および図2に示す受信装置20の各構成のうち、本発明とは直接的には関係しない構成、例えば、バッテリー28および充電制御部29などは記載を省略している。
図3に示す受信装置20は、アンテナ部21と、LSI30とを備える。
アンテナ部21は、アンテナコイルL1と、抵抗R1〜R5と、可変容量のコンデンサC1と、固定容量のコンデンサC2〜C4,C7とを備える。
アンテナコイルL1は、アンテナ211を構成する。抵抗R1は、アンテナコイルL1の内部抵抗を示しており、実際には部品としては存在しないが、計算上必要なため、図3に示す回路図に示している。抵抗R1がアンテナコイルL1(アンテナ211)のQ値を決定するためである。したがって、アンテナコイルL1は、一端が抵抗R2の一端と接続され、他端が抵抗R3の一端と接続される。
抵抗R2は、一端がアンテナコイルL1と接続され、他端がコンデンサC1の一端、コンデンサC2の一端およびコンデンサC3の一端と接続される。抵抗R3は、一端がアンテナコイルL1の他端と接続され、他端がコンデンサC1の他端およびコンデンサC7の一端と接続される。コンデンサC1は、一端が抵抗R2の他端、コンデンサC2の一端およびコンデンサC3の一端と接続され、他端が抵抗R3の他端およびコンデンサC7の一端と接続される。また、コンデンサC1は、LSI30のBIAS端子と接続されており、BIAS端子を介して制御電圧Biasが入力される。コンデンサC1は、制御電圧Biasの電圧値に応じて静電容量が変化する。コンデンサC2は、一端が抵抗R2の他端、コンデンサC1の一端およびコンデンサC3の一端と接続され、他端がLSI30のTX1端子と接続される。コンデンサC7は、一端が抵抗R3の他端およびコンデンサC1の他端と接続され、他端がLSI30のTX2端子と接続される。なお、コンデンサC7は、コンデンサC2と同じ静電容量を有する。
このように、アンテナ部21は、内部抵抗R1を含むアンテナコイルL1に抵抗R2を介してコンデンサC2が直列に接続され、アンテナコイルL1に抵抗R3を介してコンデンサC7が直列に接続され、また、アンテナコイルL1にコンデンサC1が並列に接続された共振回路(直並列共振回路)212を備える。なお、抵抗R2,R3は、アンテナ211のQ値を下げるために挿入されたダンプ抵抗である。
コンデンサC3は、一端が抵抗R2の他端、コンデンサC1の一端およびコンデンサC2の一端と接続され、他端が抵抗R4の一端と接続される。抵抗R4は、一端がコンデンサC3の他端と接続され、他端が抵抗R5の一端およびLSI30のRX端子と接続される。抵抗R5は、一端が抵抗R4の他端およびRX端子と接続され、他端がコンデンサC4の一端と接続される。コンデンサC4は、一端が抵抗R5の他端と接続され、他端がグランドに接続される。コンデンサC3,C4および抵抗R4,R5は、分圧回路を構成し、この分圧回路により、アンテナ211の受信信号(RF信号)が分圧されて、RX端子に入力される。
LSI30は、復調部22と、電圧測定部24と、記憶部25と、制御部31と、ダイオードD1と、可変抵抗である抵抗R6,R7と、コンデンサC5,C6とを備える。制御部31は、図1および図2に示す受信制御部26およびシステム制御部27に相当するものである。
LSI30のRX端子は復調部22およびダイオードD1に接続され、アンテナ部21の受信信号は、復調部22およびダイオードD1に入力される。復調部22は、RX端子から入力された信号を復調して制御部31に出力する。
ダイオードD1は、一端(アノード)がRX端子と接続され、他端(カソード)が電圧測定部24、コンデンサC5の一端および抵抗R6の一端と接続される。コンデンサC5は、一端が電圧測定部24、ダイオードD1の他端および抵抗R6の一端と接続され、他端がグランドに接続される。ダイオードD1およびコンデンサC5は、平滑回路を構成し、RX端子から出力されたアンテナ部21の受信信号(RF信号)を整流する(直流信号に変換する)ものであり、図1および図2における整流部23に相当する。電圧測定部24は、整流部23から出力された直流信号の電圧(誘起電圧)を測定し、測定結果を制御部31に出力する。抵抗R6は、整流部23に接続された負荷抵抗であり、一端がダイオードD1の他端およびコンデンサC5の一端と接続され、他端がグランドに接続される。上述したように、抵抗R6は、可変抵抗であり、制御部31から出力されるLoad信号に応じて、抵抗値が変化する。抵抗R6を可変抵抗とすることで、小さな信号が大きな信号まで受信可能な高ダイナミックレンジ化を図ることができる。また、最適な受電電力を得ることができる。
抵抗R7は、一端がコンデンサC6の一端およびTX1端子に接続され、他端がコンデンサC6の他端およびTX2端子に接続されている。抵抗R7は、制御部31から出力されたLoad Mod信号に応じて抵抗値が変化する。
記憶部25は、通信距離に対応して、その通信距離に適したアンテナ部21のアンテナ特性が得られる設定値を記憶している。記憶部25が記憶する設定値としては、コンデンサC1の静電容量、アンテナ211に電気的に接続する抵抗R7の抵抗値などがある。
制御部31は、アンテナ部21のアンテナ特性を制御するセンシングモード時には、抵抗R6(負荷抵抗RL)にLoad信号を出力して、負荷抵抗RLの抵抗値を変化させる。負荷抵抗RLは、抵抗やコンデンサなどを介してアンテナ211と電気的に接続されており、負荷抵抗RLの抵抗値を変化させることで、共振回路212のQ値が変化する。
制御部31は、負荷抵抗RLの抵抗値の変化(共振回路212のQ値の変化)の前後で電圧測定部24により測定された誘起電圧と負荷抵抗RLの抵抗値とに基づき受信電力を計算する。また、制御部31は、受信電力の変化の傾き(極性)から通信距離を推定し、推定した通信距離に対応して記憶部25に記憶されている設定値を読み出す。そして、制御部31は、読み出した設定値に従い、アンテナ部21のアンテナ特性を制御する。
例えば、制御部31は、設定値に示されるコンデンサC1の静電容量が得られるような制御電圧Biasを、BIAS端子を介してコンデンサC1に出力する。また、制御部31は、抵抗R7の抵抗値が設定値に示される抵抗値となるようなLoad Mod信号を抵抗R7に出力する。なお、制御部31は、D/Aコンバータ(不図示)を備えており、D/Aコンバータによる制御電圧Biasを出力する。
上述したように、共振回路212は、コンデンサC2,C7がアンテナコイルL1に直列に接続され、コンデンサC1がアンテナコイルL1に並列に接続された構成である。また、上述したように、コンデンサC7は、コンデンサC2と同じ静電容量を有している。したがって、共振回路212の共振周波数ωは、以下の式(1)で表わされる。ただし、共振周波数ω=2×π×fであり、正しくは、fが周波周であり、ωは角周波数である。
ω=1/√(L1×(C1+C2/2)) ・・・式(1)
また、コンデンサC1は、制御電圧Biasの電圧値に応じて静電容量が変化するため、コンデンサC1の静電容量の変化に応じて共振回路212の共振周波数ωも変化する。そのため、共振回路212の共振周波数を通信距離に適した値とすることができる。
また、抵抗R7は、抵抗やコンデンサを介して電気的にアンテナ211と接続されており、コンデンサC1とアンテナコイルL1とは、抵抗R7を介して並列に接続されている。したがって、コンデンサC1のQ値(Qc1)は、ω0=2×π×13.56MHzとして、以下の式(2)で表わされる。
Qc1=ω0C1×R7 ・・・式(2)
また、共振回路212のQ値(Q)は、以下の式(3)で表わされる。
1/Q=1/QL+1/Qc1 ・・・式(3)
式(3)において、QLは、アンテナ211のQ値であり、QL=ω0L1/R1である。したがって、共振回路212のQ値は、抵抗R7の抵抗値で変化する。例えば、抵抗R7の抵抗値を小さくすれば、共振回路212のQ値を上げることができる。したがって、抵抗R7の抵抗値が通信距離に応じた設定値となるようなLoad Mod信号を抵抗R7に出力することで、共振回路212のQ値を通信距離に適した値とすることができる。
このように、通信距離を推定し、推定した通信距離に応じてアンテナ211のアンテナ特性(共振回路212の共振周波数やQ値)を制御することで、通信距離に関わらず、通信特性の改善を図ることができる。
送信装置10と通信を行う通信モード(カードモード)では、制御部31は、復調部22から信号が出力されると、その信号から送信装置10の要求内容を把握し、要求内容に対する応答信号により受信信号を変調して、アンテナ部21により送信装置10に送信させる。
具体的には、制御部31は、応答信号に応じて受信信号を変調(負荷変調)するためにLoad Mod信号を抵抗R7に出力する。上述したように、抵抗R7は、Load Mod信号に応じて抵抗値が変化し、抵抗R7の抵抗値に応じて受信信号が分圧される。これにより、アンテナコイルL1に流れる電流が変化し、その変化により、送信装置10により応答信号が受信される。したがって、Load Mod信号により抵抗R7の抵抗値を変更することで、受信信号を変調することができる。コンデンサC6は、TX1端子よびTX2端子の内部容量を示しており、基本動作への影響は無視できるものである。
このように、抵抗R7は、応答信号を送信装置10に送信するための負荷変調用の抵抗であり、例えば、ON/OFFの2つ値に相当する抵抗を有するものである。しかしながら、上述したように、抵抗R7の抵抗値を変化させることで、共振回路212のQ値を制御することもできる。共振回路212のQ値の制御に抵抗R7を用いる場合、所望のQ値に対応して、ON/OFFの2つの値に相当する抵抗値も変更すればよい。また、抵抗R7に並列に抵抗を接続し、その抵抗を共振回路212のQ値の制御に用いてもよい。
なお、通信距離の推定、あるいは、推定した通信距離に応じたアンテナ部21のアンテナ特性の制御の際に、共振回路212のQ値を変化させる方法は、上述した抵抗R6あるいは抵抗R7の抵抗値を変化させる方法に限られるものではない。例えば、アンテナ211に直接的に接続された抵抗R2および抵抗R3の少なくとも一方を可変抵抗とし、その可変抵抗を変化させることでも、共振回路212のQ値を変化させることができる。すなわち、アンテナ211に直接または間接に接続する、つまり、アンテナ211に電気的に接続する抵抗の抵抗値を変化させることで、共振回路212のQ値を変化させることができる。
また、図3においては、Load信号は、抵抗R6に対して出力され、LSI30内に閉じた信号として示されている。ただし、これに限られるものではなく、例えば、上述したように、アンテナ部21が備える抵抗R2あるいは抵抗R3の抵抗値を変化させることで、共振回路212のQ値を制御する場合には、図1および図2に示すように、抵抗R2および抵抗R3の抵抗値を制御するために、Load信号がアンテナ部21に出力される。
次に、本発明における通信距離の推定の原理について説明する。
図4Aは、通信距離と受信装置20の誘起電圧(受信直流電圧)との関係を示す図である。図4Aにおいて、横軸は通信距離を示し、縦軸は誘起電圧を示す。また、図4Bは、結合係数kと受信装置20の誘起電圧との関係を示す図である。図4Bにおいて、横軸は結合係数kを示し、縦軸は誘起電圧を示す。図4A,4Bにおいては、負荷抵抗RLの抵抗値を180Ωから1800Ωの間で変化させている。
結合係数kは0〜1の値をとり、アンテナサイズ、通信距離などにより変化する変数である。通信距離と結合係数kとの関係の一例を図5に示す。図5に示すように、通信距離が大きくなるほど、反比例的に結合係数kは小さくなる。ただし、図5に示す例では、アンテナサイズや通信距離が理想的な状態ではない例を示しており、この状態では、通信距離がゼロであっても、結合係数kは1にはならない。
図4Aに示すように、通信距離が0から増加していくと、通信距離の増加に応じて誘起電圧も増加する。そして、通信距離がある距離に達すると誘起電圧は最大となり、その後は、通信距離の増加に応じて誘起電圧は減少するという特性がある。この特性は、負荷抵抗RLの抵抗値の大小にかかわりなく同じである。ただし、負荷抵抗RLの抵抗値に応じて、誘起電圧の大きさは異なり、負荷抵抗RLの抵抗値が大きいほど、誘起電圧は大きくなる。
また、誘起電圧が最大となる通信距離は負荷抵抗RLの抵抗値により変化し、負荷抵抗RLの抵抗値が小さいほど、より近い距離で誘起電圧が最大となる。図4Aに示す例では、負荷抵抗RLの抵抗値が1800Ωである場合には、通信距離が約18mmで誘起電圧が最大となるのに対し、負荷抵抗RLの抵抗値が180Ωである場合には、通信距離が約5mmで誘起電圧が最大となる。
一般に、受信装置の受電効率は、結合係数kとQ値(送信装置10のアンテナ部13が備える共振回路のQ値と受信装置20が備える共振回路212のQ値との積の平方根)との積(kQ)に比例し、kQが大きいほど効率のよい通信が可能である。受信装置20の誘起電圧が最大となるのは、送信装置10の共振回路のインピーダンスと受信装置20の共振回路のインピーダンスとがマッチングしたときと考えられ、kQ=1となる距離である。上述したように、受電電力が最大となるのは、kQ=1の状態、つまり、マッチングが取れた状態である。このとき、効率は、原理的に送信電力の50%を超えることはない。効率を上げるためには、kQを上げればよいが、kQを上げると、受電電力は下がってしまう。したがって、必要な電力を得るためには、送信電力を上げる必要がある。
上述したように、負荷抵抗RLの抵抗値を変化させることで、共振回路212のQ値が変化する。例えば、負荷抵抗RLの抵抗値を小さくすると、Q値が小さくなる(後述する図6B)。その結果、図5に示す通信距離と結合係数kとの関係からも分かるように、誘起電圧が最大となる通信距離は小さくなる(近距離側にシフトする)。
また、図4Bに示すように、負荷抵抗RLの抵抗値の大小にかかわらず、誘起電圧は、ある結合係数kで最大となる。ただし、負荷抵抗RLの抵抗値が小さくなるに従い、誘起電圧は、なだらかに増加および減少する。また、負荷抵抗RLの抵抗値が小さいほど、誘起電圧は小さく、また、誘起電圧が最大となる結合係数kは大きくなる。
図6Aは、アンテナ211のQ値が68である場合の、共振回路212の共振周波数とインピーダンスとの関係を示す図である。図6Aにおいて、横軸は共振周波数を示し、縦軸はインピーダンスを示す。また、図6Aにおいては、負荷抵抗RLの抵抗値を82Ωから10kΩまで変化させている。図6Bは、アンテナ211のQ値が68である場合の、負荷抵抗RLと共振回路212のQ値との関係を示す図である。図6Bにおいて、横軸は負荷抵抗RLを示し、縦軸はQ値を示す。
図6Aに示すように、負荷抵抗RLの抵抗値が大きいほど、共振特性は鋭くなり、また、センター周波数が上がる。また、負荷抵抗RLの抵抗値が大きくなるほど、インピーダンスも大きくなる。また、図6Bに示すように、負荷抵抗RLの抵抗値が大きいほど、Q値も大きくなる。すなわち、負荷抵抗RLの抵抗値が大きいほど、Q値が大きくなり、共振周波数も上がる。また、負荷抵抗RLの抵抗値を小さいほど、Q値が小さくなり、共振周波数も下がる。
図7Aは、負荷抵抗RLと誘起電圧との関係を示す図であり、図7Bは、負荷抵抗RLと受信電力との関係を示す図である。図7Aにおいて、横軸は負荷抵抗RLを示し、縦軸は誘起電圧を示す。また、図7Bにおいて、横軸は負荷抵抗RLを示し、縦軸は受信電力を示す。図7Aおよび図7Bにおいては、通信距離を0から50mmまで変化させている。
図7Aに示すように、通信距離が大きい場合(図7Aの例では、通信距離が40mm〜50mmである場合)には、誘起電圧は、負荷抵抗RLの増加に応じて略直線的に増加している。通信距離が小さくなると、その直線性が悪くなり、誘起電圧の増加は、2次曲線で近似されるような緩やかなものとなっている。つまり、負荷抵抗RLの抵抗値の変化に対して、誘起電圧の増加の直線性が高い場合は通信距離が大きく、誘起電圧の増加の直線性が低くなるに従って、通信距離が近くなることが分かる。このように、負荷抵抗RLの抵抗値の変化、すなわち共振回路212のQ値の変化に起因する誘起電圧の変化は、通信距離に依存していることが分かる。このような依存性は、図7Bに示す受信電力ではより明確となる。
図7Bに示すように、通信距離が大きい場合(図7Bの例では、通信距離が40mm〜50mmである場合)には、受信電力は、負荷抵抗RLの増加に応じて略直線的に増加している。通信距離が小さくなると、その直線性が低下し、受信電力の増加は、2次曲線で近似されるような緩やかなものとなる。ここで、図7Aと図7Bとを比較すると、通信距離の増加に応じた直線性の低下は、図7Aに示す誘起電圧よりも図7Bに示す受信電力の方がより顕著となっている。
さらに通信距離が小さくなると(図7Bの例では、通信距離が10mm以下になると)、受信電力は、負荷抵抗RLの抵抗値が大きくなるにつれて、減少している。このように、通信距離が小さい場合には、受信電力の変化の傾きがプラスからマイナスに転じている。つまり、kQ<1の場合(通信距離が大きい場合)には、Qを大きくすると(負荷抵抗RLの抵抗値を大きくすると)、Qの増加に伴って受信電力は増加するために、傾きはプラスになる。一方、kQ>1の場合(通信距離が小さい場合)には、Qを大きくすると、受信電力は減少するために、傾きはマイナスとなる。
したがって、負荷抵抗RLの抵抗値の変化、すなわち、共振回路212のQ値の変化に起因する受信装置20の受信電力(および誘起電圧)の変化は、通信距離に依存していることが分かる。このことから、負荷抵抗RLの抵抗値の変化(共振回路212のQ値の変化)に起因する受信電力の変化に基づいて、通信距離を推定することができることが分かる。ここで、通信距離を推定するために、負荷抵抗RLの抵抗値、すなわち、共振回路212のQ値を変化させる場合に、Q値が大きくなる方向に変化させるか、Q値が小さくする方向に変化させるかという二通りの方法が考えられる。以下では、Q値を大きくする方向に変化させるものとして説明する。
なお、以下では、受信電力の変化の傾きとして、以下に示す式(4)に従って計算される傾き1と、式(5)に従って計算される傾き2という、2つの傾きを考える。式(4)および式(5)において、RL(n)およびP(RL_n)はそれぞれ、ある時点nにおける負荷抵抗RLの抵抗値と、その時点における受信電力とを示す。
図8Aは、負荷抵抗RLと受信電力の変化の傾き1との関係を示す図である。図8Aにおいて、横軸は負荷抵抗RLを示し、縦軸は傾き1を示す。図8Bは、負荷抵抗RLと受信電力の変化の傾き2との関係を示す図である。図8Bにおいて、横軸は負荷抵抗RLを示し、縦軸は傾き2を示す。図8Aおよび図8Bにおいては、通信距離を0から50mmの間で変化させている。
図8Aに示すように、共振回路212のQ値を大きくした(負荷抵抗RLの抵抗値を大きくした)時の電力の増減、つまり、傾き(傾き1)は、通信距離が大きい場合には(図8Aの例では、通信距離が35mm〜50mmの場合には)、符号がプラスで(つまり、電力が増加する)、その値は小さく、また、負荷抵抗RLに対して略直線的に右肩下がりとなっている。しかし、通信距離が短くなるにつれて、負荷抵抗RLの抵抗値が小さい領域では傾き1は大きくなり、また、傾き1の変化の直線性が悪くなっている。
負荷抵抗RLの抵抗値が1200Ωである場合に着目すると、通信距離が50mmから小さくなっていくと、傾き1の値は増加していくが、通信距離が30mmで飽和する。そして、通信距離が30mmである場合と、通信距離が25mmである場合とでは、傾き1の値は略同等となっている。さらに、通信距離が25mmより小さくなっていくと、傾き1の値は小さくなっていく。
例えば、通信距離が15mmである場合には、通信距離が50mmである場合よりも傾き1の値は小さく、略ゼロとなっている。さらに、通信距離が10mmである場合には、通信距離が15mmである場合と比べて、傾き1の値は、絶対値は略同等だが、極性はマイナスに転じている。すなわち、通信距離の減少に伴って受信電力が減少している。このことは、図4Aにおいて、負荷抵抗RLの抵抗値が1200Ωである場合に、通信距離が15mmである場合に誘起電圧が最大となり、通信距離が10mmになると誘起電圧が減少していることと一致している。
同様に、負荷抵抗RLの抵抗値が820Ωである場合に着目すると、図8Aにおいては、通信距離が10mmで傾き1は略ゼロとなり、通信距離が5mmで極性がマイナスに転じている。一方、図4Aにおいては、通信距離が約12mmで誘起電圧が最大となり、通信距離が10mmで誘起電圧が減少している。図8Aから電圧が減少する通信距離を推定すると5mmとなり、図4Aとは僅かにずれが生じた。
これに対し、図8Bにおいては、負荷抵抗RLの抵抗値が820Ωである場合に、通信距離が10mmで傾き2が略ゼロとなり、また、傾き2の値がプラスからマイナスに転じる通信距離は10mmから15mmの間となっており、図4Aに示す特性と一致している。
図8Aに示す傾き1と図8Bに示す傾き2との違いは、受信電力の差を計算する際に、負荷抵抗RLの抵抗値の変化が小さい2点間の値を使用するか(図8A)、負荷抵抗RLの抵抗値の変化が大きい2点間の値を使用するか(図8B)の違いである。
したがって、本発明において、通信距離を正確に推定するためには、負荷抵抗RLの抵抗値が抵抗値RAである場合、および、負荷抵抗RLの抵抗値が抵抗値RAよりも大きいRBである場合それぞれにおいて(すなわち、共振回路212のQ値が、抵抗値RAに対応するQ値(第1のQ値)および抵抗値RBに対応するQ値(第2のQ値)である場合それぞれにおいて)、受信電力を測定し、測定された受信電力の差異を計算することが好ましい。さらに、本発明において、通信距離の正確な推定のためには、抵抗値RAは、受信装置20が通常の通信を行う(カードモードで動作する)場合の受信電力が得られる値(通常の通信時に設定されるQ値が得られる値)とし、抵抗値RBは、できるだけ大きい値である、すなわち、抵抗値RAと抵抗値RBとの差ができるだけ大きいことが好ましい。
なお、共振回路212のQ値を下げる(抵抗値RBを抵抗値RAよりも小さくする)方法により、通信距離を推定することも可能である。また、Q値が上げる方法とQ値を下げる方法とを組み合わせ、Q値を上げた場合の電力差およびQ値を下げた場合の電力差を計算することで、より大きな負荷抵抗RLの抵抗値の変化量で通信距離を推定することも可能である。ただし、Q値を下げる場合には注意が必要である。この理由について、図7Aを参照して説明する。
図7Aに示すように、負荷抵抗RLの抵抗値を大きくする(Q値を大きくする)場合、どの通信距離、どの抵抗値でも誘起電圧は増加している。そのため、通信距離の推定のために負荷抵抗を変化させても、電圧低下により受信装置20が機能しなくなるおそれはない。
一方、負荷抵抗RLの抵抗値を小さくする(Q値を小さくする)場合、誘起電圧が低下してしまうため、設定によっては、受信装置20が正常に動作するのに必要な電圧(例えば、LSIの動作に必要な2〜2.5V)を維持できなくおそれがある。そのため、Q値を上げる方が、通信距離を安全に推定することができる。
次に、図3に示す受信装置20の動作について説明する。
図9は、受信装置20の動作の一例を示すフローチャートである。
制御部31は、センシングモードを開始すると、アンテナ部21のアンテナ特性、例えば、共振回路212の共振周波数やQ値などを、予め定められた初期値に設定する(ステップS101)。
次に、制御部31は、負荷抵抗RLの抵抗値を抵抗値RAに設定する(ステップS102)。上述したように、抵抗値RAは、共振回路212のQ値が、受信装置20がカードモードで正常に動作する際のQ値となるような値である。
電圧測定部24は、抵抗値RAでの誘起電圧VAを測定し、測定結果を制御部31に出力する。制御部31は、電圧測定部24により測定された誘起電圧VAと、抵抗値RAとから受信電力PA(=VA2/RA)(第1の受信電力)を計算し(ステップS103)、記憶部25に記憶させる。
次に、制御部31は、負荷抵抗RLの抵抗値を抵抗値RB(RB>RA)に設定する(ステップS104)。すなわち、制御部31は、共振回路212のQ値を増加させる。
電圧測定部24は、抵抗値RBでの誘起電圧VBを測定し、測定結果を制御部31に出力する。制御部31は、電圧測定部24により測定された誘起電圧VBと、抵抗値RBとから受信電力PB(=VB2/RB)(第2の受信電力)を計算し(ステップS105)、記憶部25に記憶させる。
次に、制御部31は、記憶部25に記憶されている受信電力PAと受信電力PBとの差(傾きΔ)を計算する(ステップS106)。
次に、制御部31は、計算した傾きΔがゼロより大きいか否か(傾きΔが正の値であるか否か)を判定する(ステップS107)。
図8Bに示したように、通信距離が短い場合(図8Bの例では、通信距離が0〜10mmである場合)、傾きΔは概ね、ゼロ以下となる。したがって、制御部31は、傾きΔがゼロ以下であると判定した場合には(ステップS107:No)、通信距離が短い(kQ>1)と推定する。そして、制御部31は、記憶部25に記憶されている、通信距離が近距離(第2の距離)である場合(通信距離がkQ>1の範囲に含まれる場合)に対応する設定値(近距離用パラメータ)を読み出し、読み出した近距離用パラメータに従い、アンテナ部21のアンテナ特性、例えば、共振回路212の共振周波数やQ値を制御する(ステップS108)。
近距離用の設定の具体例としては、例えば、共振回路212のQ値を初期値(抵抗値RAの場合のQ値)よりも下げる、共振回路212の共振周波数を13.56MHzよりも大きくするなどがある。
一方、図8Bに示したように、通信距離が長い場合(例えば、通信距離が15mm以上である場合)、傾きΔはゼロより大きくなる。したがって、制御部31は、傾きΔがゼロより大きいと判定した場合には(ステップS107:Yes)、通信距離が長いと推定する。そして、制御部31は、記憶部25に記憶されている、通信距離が遠距離(第1の距離)である場合(通信距離がkQ<1の範囲に含まれる場合)に対応する設定値(遠距離用パラメータ)を読み出し、読み出した遠距離用パラメータに従い、アンテナ部21のアンテナ特性、例えば、共振回路212の共振周波数やQ値を制御する(ステップS109)。
遠距離用の設定の具体例としては、例えば、共振回路212のQ値を初期値(抵抗値RAの場合のQ値)よりも上げる、共振回路212の共振周波数を13.56MHzよりも小さくするなどがある。ただし、遠距離用の設定の場合には、負荷抵抗RLの抵抗値も考慮してアンテナ部21のアンテナ特性を制御するのが望ましい。
図10Aおよび図10Bは、共振回路212の共振周波数による誘起電圧の変化を示す図である。図10Aは、負荷抵抗RLの抵抗値が820Ωである場合(Q値が低い場合)を示し、図10Bは、負荷抵抗RLの抵抗値が1800Ω(Q値が高い場合)を示している。なお、図10Aおよび図10Bにおいては、アンテナL値(共振周波数)を0.9〜1.1で変化させている。
図10Aに示すように、負荷抵抗RLの抵抗値が820Ωである場合、遠距離(例えば、通信距離が50〜60mm)においては、アンテナL値が高いほど、すなわち、共振周波数が低いほど、誘起電圧が高くなる。
一方、図10Bに示すよう、負荷抵抗RLの抵抗値が1800Ωである場合、遠距離(例えば、通信距離が50〜60mm)においては、アンテナL値が1.0である場合が最も誘起電圧が高く、次いで、アンテナL値が0.9である場合、アンテナL値が1.1の場合という順になっている。これは、負荷抵抗RLの抵抗値が大きい場合には、遠距離においては、共振回路212の共振周波数を初期値(例えば、13.56MHz)よりも少し高めに設定した方が、負荷抵抗RLを含めた状態での共振条件が最適条件となるためである。具体的には、例えば、共振回路212の共振周波数を、アンテナL値が0.9である場合に相当する14.2MHzとした場合、共振回路212の共振周波数を13.56MHzとした場合よりも、誘起電圧が大きくなっている。このように、誘起電圧が最大となる共振周波数は、負荷抵抗RLの抵抗値によっても変化する。したがって、遠距離用の設定の場合には、負荷抵抗RLの抵抗値も考慮してアンテナ部21のアンテナ特性を制御するのが望ましく、例えば、受信装置20の機種ごとに最適化すればよい。
図9を再び参照すると、制御部31は、近距離用パラメータあるいは遠距離用パラメータに従いアンテナ部21のアンテナ特性を制御した後、通信モードへ移行する。
図9においては、制御部31は、通信距離を近距離と遠距離とに分けて、アンテナ部21のアンテナ特性を制御する例を用いて説明したが、これに限られるものではない。
制御部31は、kQ=1あるいはkQが1の近傍の値である場合(以下では、まとめてkQ=1の場合とする)には、通信距離が中距離であるとして判定し、中距離用パラメータに従い、アンテナ部21のアンテナ特性を制御してもよい。以下では、制御部31が、通信距離が、近距離か、中距離か、あるいは長距離かの判定を行う場合の受信装置20の動作について、図11に示すフローチャートを参照して説明する。図11において、図9と同様の処理については同じ符号を付し、説明を省略する。
なお、図11においては、記憶部25は、制御部31が、kQ=1であるか否かを判定するための閾値Δthを記憶しているものとする。閾値Δthは、受信電力の変化の傾きに関する閾値であり、図8Bに示すように、0よりも若干小さい値である。より詳細には、閾値Δthは、負の値であって、受信電力が最大となるあるいは略最大と見なせるような傾きの値である。また、記憶部25は、通信距離が中距離(例えば、15mm)である場合に適したアンテナ部21のアンテナ特性が得られる設定値である中距離用パラメータを記憶している。なお、図7、8に示したように、負荷抵抗RLの変化の大きさにより閾値Δthは影響を受けるが、その値は概ね−0.000003となる。最適パワー点をより正確に見積もるためには、この値の半分の−0.0000015とするのが好適である。
制御部31は、計算した傾きΔがゼロ以下であると判定すると(ステップS107:No)、傾きΔが記憶部25に記憶されている閾値Δthより大きいか否かを判定する(ステップS201)。
制御部31は、傾きΔが閾値Δth以下であると判定した場合には(ステップS201:No)、ステップS108の処理に進む。すなわち、制御部31は、近距離用パラメータに従い、アンテナ部21のアンテナ特性を制御する。
傾きΔが閾値Δthより大きい場合には、傾きΔはゼロであるか、あるいは、ゼロに非常に近い値である。この場合、kQ=1であると判定することができるため、制御部31は、傾きΔが閾値Δthより大きいと判定した場合には(ステップS201:Yes)、通信距離が中距離である(kQ=1)と推定する。そして、制御部31は、記憶部25に記憶されている、通信距離が中距離(第3の距離)である場合に対応する設定値(中距離用パラメータ)を読み出し、読み出した中距離用パラメータに従い、アンテナ部21のアンテナ特性を制御する。
上述したように、閾値Δthは、ゼロより小さく、受信電力が最大となるあるいは略最大と見なせるような傾きの値である。したがって、傾きΔがゼロより小さく、かつ、傾きΔが負の値である閾値Δthよりも大きい場合には、通信距離が中距離である(kQ=1)と推定することができる。
このように、傾きΔが閾値Δthより大きいか否かを判定することにより、通信距離が近距離であるか、中距離であるか、遠距離であるかを推定することができ、より細やかに通信距離に応じてアンテナ部21のアンテナ特性を制御することができる。その結果、通信特性の改善を図ることができる。なお、本実施形態においては、閾値Δthを負の値とし、受信電力の変化が、ゼロ以下であり、閾値Δth(例えば、−0.0000015)より大きい範囲に含まれる場合に、通信距離が中距離であるとしているが、これに限られるものではない。例えば、受信電力の変化が、0.0000015より小さく、−0.0000015より大きい範囲に含まれる場合に、通信距離が中距離であるとしてもよい。
図12は、受信装置20の動作のさらに別の一例を示すフローチャートである。図12において、図11と同様の処理については同じ符号を付し、説明を省略する。なお、図12に示す動作は、ワイヤレス給電のように、負荷電流を制御システムに好適なものである。
制御部31は、傾きΔを計算すると(ステップS106)、計算した傾きΔがゼロより小さいか否かを判定する(ステップS301)。
制御部31は、傾きΔがゼロ以上であると判定した場合には(ステップS301:No)、抵抗値RAを所定値ΔRだけ上げて(ステップS302)、ステップS102の処理に戻る。制御部31は、ステップS102からステップS302までの処理を、傾きΔがゼロより小さいと判定するまで繰り返す。傾きΔがゼロ以上である場合、kQ<1である。そこで、傾きΔがゼロ以上である場合には、抵抗値RAを上げることで、共振回路212のQ値を上げ、kQを1に近づけることができる。
制御部31は、傾きΔがゼロより小さいと判定すると、傾きΔが閾値Δthより大きいか否かを判定する(ステップS303)。
制御部31は、傾きΔが閾値Δth以下であると判定した場合には(ステップS303:No)、抵抗値RAを所定値ΔRだけ下げて(ステップS303)、ステップS102の処理に戻る。制御部31は、ステップS102からステップS304までの処理を、傾きΔが閾値Δthより小さいと判定するまで繰り返す。傾きΔが閾値Δth以下である場合、kQ>1である。そこで、傾きΔが閾値Δth以下である場合には、抵抗値RAを下げることで、共振回路212のQ値を下げ、kQを1に近づけることができる。
制御部31は、傾きΔが閾値Δthより小さいと判定すると(ステップS303:Yes)、kQ=1となったと判定し、通信モードに移行する。
傾きΔがゼロより小さく、かつ、傾きΔが閾値Δthよりも大きい状態は、kQ=1である状態である。このように、kQ=1となるまで抵抗値RAを変化させることで、誘起電圧が最大となるkQ=1の状態で常に通信を行うことができるので、通信特性の改善を図ることができる。なお、上述したように、負荷抵抗RLの抵抗値を変化させることで、共振回路212のQ値も変化し、その結果、アンテナ部21のアンテナ特性も変化する。したがって、図12においても、制御部31は、受信電力の変化に応じて、アンテナ部21のアンテナ特性を変化させることになる。
図13は、図3に示すRX端子の受信信号のタイミングチャートである。図13において、横軸は時間経過を示し、縦軸はRX端子の受信信号の強度を示す。なお、図13においては、図9に示す動作において、遠距離用パラメータが設定された場合のタイミングチャートを示すものとする。
受信装置20がセンシングモードに移行すると(センシング期間が開始すると)、アンテナ特性が初期値に設定され(例えば、共振回路212の共振周波数が13.56MHz、負荷抵抗RL=1800Ω)に設定され、その後、負荷抵抗RLの抵抗値として抵抗値RAが設定される(ステップS101およびS102)。ここで、抵抗値RAは、負荷抵抗RLの抵抗値の初期値(1800Ω)と同じであるとする。
次に、抵抗値RAでの受信電力PAが計算される(ステップS103)。
次に、負荷抵抗RLの抵抗値として抵抗値RB(RB>RA)が設定される(ステップS104)。抵抗値RBは抵抗値RAよりも大きいため、RX端子の受信信号の強度は、抵抗値RAが設定されている場合よりも大きくなる。なお、上述したように、抵抗値RBと抵抗値RAとの差はなるべく大きい方が、正確な通信距離の推定が可能となる。そのため、LSI30は、通信距離の推定のための省電力モードを有していることが望ましい。
次に、抵抗値RBでの受信電力PBが計算される(ステップS105)。
その後、受信電力PAと受信電力PBとの差(傾きΔ)が計算され、傾きΔに応じて通信距離が推定され、推定された通信距離に応じてアンテナ部21にアンテナ特性が設定される(ステップS109)。ここで、通信距離が遠距離であると推定された場合には、例えば、共振周波数は初期値よりも高く(例えば、14.2MHz)し、負荷抵抗RLの抵抗値は初期値(抵抗値RA)とするような制御が行われる
上述したセンシング期間が終了した後、受信装置20は通常モードに移行する(通信期間が開始する)。センシング期間は、例えば、50μs〜100μs程度の期間である。
このように本実施形態によれば、受信装置20は、非接触通信により送信装置10から電力を受電するアンテナ211を含む共振回路212を備えたアンテナ部21と、共振回路212のQ値を変化させ、Q値の変化の前後の受信電力の変化に応じて、アンテナ部21のアンテナ特性を制御する制御部31とを備える。
通信距離(近距離であるか(kQ>1)、中距離であるか(kQ=1)、遠距離であるか(KQ<1))に応じて、Q値の変化に応じた受信電力の変化の傾きΔが異なるため、Q値の変化の前後の受信電力の変化に応じて、通信距離を推定することができる。そして、推定した通信距離に応じて、アンテナ部21のアンテナ特性を制御することで、通信距離に応じたアンテナ特性の最適化を図ることができ、通信距離に関わらず、通信特性の改善を図ることができる。
また、本実施形態においては、傾きΔの極性により通信距離を推定するため、判定が容易で、通信距離を推定するための複雑な構成や処理が不要であるため、コストの増加を抑制することができる。
また、本実施形態においては、受信装置20の誘起電圧と、負荷抵抗RLの抵抗値(あるいは、負荷抵抗RLを流れる電流(負荷電流IL))とを検出するだけで、通信距離を推定することができるので、モニタ対象が少なくて済み、コストの増加を抑制することができる。また、本発明をLSIに実装する場合に、LSIに追加するピンの数の増加を抑制することができる。
また、本実施形態においては、アンテナ211に接続する抵抗の抵抗値を変化させることで、共振回路212のQ値を変化させるため、共振回路212のQ値を変化させるための複雑な構成や処理が不要であるため、コストの増加を抑制することができる。
本発明を図面および実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形または修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。