JP6474101B2 - パイピング現象評価方法及びパイピング現象評価装置 - Google Patents

パイピング現象評価方法及びパイピング現象評価装置 Download PDF

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Description

本発明は、基礎地盤の浸透破壊の防止技術に係り、特に基礎地盤に含まれる砂質土層で発生するパイピング現象を評価する方法及び装置に関する。
通常、生活区域に隣接する大きな河川には、生活区域を河川水の氾濫から守る堤防が築かれる。しかしこのような河川及び生活区域に跨る基礎地盤が内部に砂質土層を含むとき、水が河川側から砂質土層に浸透して徐々に河川から離れる方向へ移動する現象が生じる場合がある。そして水の移動に伴って砂質土層を構成する土粒子が移動することによって土粒子の結合状態が緩み、砂質土層の内部に局所的な空洞あるいは土粒子が疎の領域が形成される、いわゆるパイピング現象が生じる。
パイピング現象がある程度進行すると、砂質土層の内部に形成された空洞が拡大し、その後空洞がつぶれ、その結果基礎地盤の上に築かれた堤防の表面が陥没し、堤防が有すべき機能が損なわれる場合がある。よって河川堤防が新たに築かれる予定地域では、基礎地盤のパイピング現象の発生可能性を事前に評価する必要がある。また既に河川堤防が築かれた地域においても、既存の堤防の補修を行うべき区間を絞り込むために、基礎地盤のパイピング現象の発生可能性を評価することが求められる。
日本における河川堤防の浸透に対する安全性評価は、一般に「河川堤防設計指針」(国土交通省河川局治水課)によっている。この中で、基礎地盤のパイピング発生に対する評価方法は、土粒子が移動を始めると考えられる条件になるかどうかをテルツァーギの理論に基づいて解析的に求めることとしている。すなわち粘性土の被覆がない場合には堤防のり尻付近の局所動水勾配(i)が0.5(限界動水勾配(ic;一般に0.8〜1.0とされる)を安全側に設定)を上回るかどうかで評価する。また粘性土の被覆がある場合には粘性土塊の重量に対してその底面に働く水圧が上回るかどうかで評価する。尚本発明の対象は、粘性土の被覆がない条件でのパイピング発生に対する評価方法及び装置である。
また、こうした砂質土層で発生するパイピング現象の発生可能性を原位置にて評価する技術として、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1では、透水性地盤に削孔し、孔内の水位を徐々に低下させることにより、孔内外の動水勾配を増大させ、孔底で透水性地盤を構成する土が動き出す時点の動水勾配を演算して求める。
「河川堤防設計指針」の方法で求められる局所動水勾配や特許文献1で求められる動水勾配は、孔の底の土粒子が動き始める状態、すなわちボイリング発生時の動水勾配である。一方、実際のパイピング現象は、ボイリングが発生した後に、継続的に土砂の移動が起こって地盤中に連続する空洞あるいは土粒子が疎の領域が形成されるものである。すなわちボイリング発生時の動水勾配をもってパイピング現象の発生可能性の評価とすることは安全側の評価となる。
特開2005−002711号公報
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであって、基礎地盤の砂質土層で発生するパイピング現象を、パイピング現象の進行段階の実態に即して評価できるパイピング現象評価方法及びパイピング現象評価装置を提供することを目的とする。
本発明に係る基礎地盤のパイピング現象評価方法のある態様は、基礎地盤に含まれる砂質土層に注水孔及び揚水孔を削孔する工程と、注水孔に注水する処理及び揚水孔から孔内水を揚水する処理を並行させ、砂質土層を構成する土粒子を注水孔側から揚水孔側へ移動させる工程と、注水孔内の水位と、揚水孔内の水位と、注水孔と揚水孔の間隔とから、移動させる工程中に変化する、注水孔と揚水孔の間の動水勾配を求め、動水勾配の経時変化を演算する工程と、を含み、動水勾配を人為的に高めて前記砂質土層で発生するパイピング現象を進行させようとしたときに前記動水勾配が経時変化するかどうかによって、砂質土層で発生するパイピング現象を評価することを要旨とする。
また本発明に係る基礎地盤のパイピング現象評価装置のある態様は、基礎地盤に含まれる砂質土層に削孔された注水孔に注水する注水装置と、注水孔内の水位を測定する第1の水位計と、砂質土層に削孔された揚水孔の孔内水を揚水する揚水装置と、揚水孔内の水位を測定する第2の水位計と、注水と揚水とを並行して実施することにより砂質土層を構成する土粒子が注水孔側から揚水孔側へ移動する間に変化する注水孔と揚水孔との間の動水勾配の経時変化を、第1の水位計によって測定された水位と、第2の水位計によって測定された水位と、注水孔と揚水孔の間隔と、から演算する演算装置と、を備え、動水勾配の経時変化によって砂質土層で発生するパイピング現象を評価することを要旨とする。
本発明に係る基礎地盤のパイピング現象評価方法及びパイピング現象評価装置によれば、基礎地盤の砂質土層で発生するパイピング現象を、パイピング現象の進行段階の実態に即して評価できる。
本発明の実施形態に係るパイピング現象評価装置の構成を説明する模式図である。 本発明の実施形態に係る演算装置の構成を説明する模式図である。 本発明の実施形態に係る演算装置の演算手順を説明する図である。 本発明の実施形態に係るパイピング現象評価装置を用いたときの地下水及び土粒子の動きを説明する模式図である。 注水孔内及び揚水孔内の各水位の経時変化を示す図である。 隣り合う間隙水圧計間及び第4の間隙水圧計と揚水孔の間、並びに注水孔と揚水孔の間の平均動水勾配の経時変化を示す図である。 本発明の実施形態に係る透水性指標及び注水孔内の水位の経時変化を示す図である。
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。又、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」に、「右」が「左」になることは勿論である。
(装置構成)
本発明の実施形態に係るパイピング現象評価装置は、図1に示すように、基礎地盤に含まれる砂質土層Gに削孔された注水孔1内に設けられた注水管13に注水する注水装置3と、注水孔1内に設けられた注水管13と間隔dを設けて砂質土層Gに削孔された揚水孔2から孔内水を揚水する揚水装置4と、を備える。またパイピング現象評価装置は、注水管13内の水位を測定する第1の水位計7と、揚水孔2内の水位を測定する第2の水位計8と、を備える。またパイピング現象評価装置は、注水管13内の水位を注水孔1内の水位と見做した上で、注水孔1と揚水孔2との間の動水勾配の経時変化を、第1の水位計7によって測定された水位と、第2の水位計8によって測定された水位と、注水孔1内に設けられた注水管13と揚水孔2の間隔dとから演算する演算装置6を備える。パイピング現象評価装置は、注水と揚水とを並行して実施することにより、砂質土層Gを構成する土粒子が注水孔1側から揚水孔2側へ移動する間に変化する動水勾配の経時変化を演算装置6によって演算する。そして砂質土層Gにおいて進行するパイピング現象の進行段階毎に動水勾配を求めることで、砂質土層Gのパイピング現象を評価することができる。
またパイピング現象評価装置は、注水孔1内の水位が階段波状に次第に上昇するように、注水装置3及び第1の水位計7を制御する制御装置5を備える。またパイピング現象評価装置は、注水孔1と揚水孔2との間に設けられ、注水と揚水により砂質土層Gを構成する土粒子が注水孔1側から揚水孔2側へ移動する間に変化する水圧の空間分布の経時変化を測定する水圧変化測定手段9を備える。
注水装置3は、注水孔1内に設けられた注水管13に一端が連結された配管16と、配管16の途中に設けられ配管16に水を送り出す注水ポンプ17と、注水ポンプ17を介して配管16の他端に連結された注水用タンク18と、注水管13と注水ポンプ17との間の配管16に設けられたフローコントロール装置15と、を備える。注水用タンク18は注水孔1へ注水する水を一時的に蓄えるものである。またフローコントロール装置15は、注水管13へ送り出される水量を操作するものであり、例えば電磁弁等を用いて構成できる。フローコントロール装置15は制御装置5に接続され、注水孔1への単位時間毎の注水量のデータは、入力装置52を介して制御装置5に接続された記憶装置51に格納される。記憶装置51に格納された注水孔1への注水量のデータは、演算装置6によって後述する透水性指標の演算に用いられる。
揚水装置4は、一端が揚水孔2の孔内水の中に配置された揚水チューブ26と、揚水チューブ26の他端に連結された揚水用タンク28と、揚水チューブ26と揚水用タンク28との間に設けられ揚水孔2から水を汲み上げる揚水ポンプ27と、を備える。揚水用タンク28は揚水した水を一時的に蓄えるものである。揚水用タンク28は図示しない計量装置を有し、計量装置によって揚水孔2からの揚水量が経時的に測定される。
注水孔1はまず、例えばボーリング等により、底面が砂質土層Gの上面と略同じ高さとなるように削孔される。注水孔1内には、孔壁が崩落しないように筒状のケーシング管11が埋設される。ケーシング管11の寸法は、注水孔1の寸法に応じて適宜設定され、例えば長さは2〜3m程度、直径は約10cm程度に構成できる。注水孔1のケーシング管11の素材としては例えば鋼管を用いることができる。
ケーシング管11の内部には、更に有底の筒状の注水管13が挿し込まれて設けられる。注水管13は、底部側の下端部が砂質土層G内に位置するように、ケーシング管11の底面の深さよりも更に下側まで埋設される。注水管13の下端部の壁面には、複数の貫通孔からなる注水部13aが形成され、注水部13aは砂質土層G内で揚水孔2側に向かって開口している。注水管13は、図1に示すように、注水部13aの最上段の貫通孔の上端部の高さと、砂質土層Gの上面の高さとが略揃うように設けられている。
注水装置3から注水管13の内側に送り込まれた水は、注水部13aを介して砂質土層Gに注水される。尚、砂質土層Gに注水する方法としては、図1に示したように注水管13のみを用いて水を送り込む方法に限定されず、例えば図示を省略するが管状の注水試験機を注水管13の内側に別途挿し込んだ上で、この注水試験機を介して注水管13の内側に水を送り込むように構成してもよい。
注水管13は外壁面に取り付けられたパッカー14を有し、パッカー14は地上に配置された図示しないガス供給装置に接続されている。ガス供給装置から内部にガスが供給されパッカー14が注水管13の外壁面とケーシング管11の内壁面との間で膨らむことにより、注水管13が注水孔1内に圧迫固定されるように構成されている。
注水管13としては例えば鋼管を用いることができる。また注水管13の寸法は、注水孔1のケーシング管11の寸法及び砂質土層Gの地表からの深さに対応して、適宜構成される。例えば注水孔1を削孔する前にボーリングにより地質調査を行い、調査により判明した砂質土層Gの深さに基づいて、ケーシング管11及び注水管13の長さを設定することができる。尚、図1中で注水孔1は、底部に砂質土層Gの上面が位置するように配置されているが、この位置に限定されるものではなく、注水管13が注水孔1内で固定される限り、砂質土層Gの上面より上側の地層等に配置されてもよい。
また注水管13の内側の底部近傍には、注水孔1内の水位を経時的に測定する第1の水位計7が配置されている。第1の水位計7は、例えば公知の圧力センサ等を用いて構成できる。第1の水位計7は制御装置5に接続され、測定された注水孔1内の水位は制御装置5を介して記憶装置51に格納される。記憶装置51に格納された注水孔1内の水位のデータは、演算装置6によって動水勾配の演算及び後述する透水性指標の演算に用いられる。尚、注水管13の内側に、別途、挿入した注水試験機を介して注水する場合、注水試験機の先端に圧力センサを設け、砂質土層Gへの注水と同時に注水孔1内の水頭を測定し水位に換算させるように構成してもよい。
記憶装置51に格納された注水孔1内の水位のデータに基づいて、制御装置5は、注水孔1への注水量を制御する制御信号を生成し、生成した制御信号を注水装置3のフローコントロール装置15に送信する。制御装置5は、フローコントロール装置15を介して注水孔1への注水量を操作し、第1の水位計7から入力される注水孔1内の水位のデータを用いて、注水孔1内の水位が階段波状に次第に上昇するようにフィードバック制御する。
一方、揚水孔2は、注水孔1と同様にボーリング等により、図1に示すように、底面が砂質土層Gの上面と略同じ高さとなるように削孔される。すなわち揚水孔2の底には、砂質土層Gの上面が露出している。揚水孔2内には、孔壁が崩落しないように筒状のケーシング管12が埋設される。揚水孔2のケーシング管12としては、注水孔1側のケーシング管11と同様に、鋼管を用いることができる。また揚水孔2のケーシング管11の寸法は、注水孔1側のケーシング管11と同様に、揚水孔2の寸法に応じて適宜設定され、例えば長さは2〜3m程度、直径は約10cm程度に構成できる。図1に示すパイピング現象評価装置の場合、地下水位は、砂質土層Gと地面との間に存在する。また揚水孔2内には、目盛が付されたロッド型のスケール10が、揚水孔2のケーシング管12の内壁面に沿って挿し込まれている。揚水孔2のスケール10の砂質土層G側の先端は、揚水孔2の底の砂質土層Gの上面に接触するとともに、揚水孔2のスケール10の地上側の端部はケーシング管12の上端よりも高い位置に突出し、揚水孔2内の砂質土層Gの上面からケーシング管12の上端までの距離を測定可能なように構成されている。
揚水孔2のケーシング管12の内側には、第2の水位計8が設けられる。第2の水位計8は、例えば公知の圧力センサ等を用いて構成できる。第2の水位計8は演算装置6に接続され、測定された揚水孔2内の水位は演算装置6に備えられた記憶装置53に格納される。記憶装置53に格納された揚水孔2内の水位のデータは、演算装置6によって動水勾配の演算及び後述する透水性指標の演算に用いられる。
注水孔1内に設けられた注水管13と揚水孔2との縁間距離である間隔dは、適宜設定されてよいが、25cm以上50cm以下であることが好ましい。間隔dが25cm未満である場合、注水孔1と揚水孔2とが近接し過ぎて、パイピングの進行段階を自然状態に近似させて再現することが困難となる。また間隔dが50cmを超える場合、注水孔1と揚水孔2との間でパイピング状態が発生しにくくなる。
図1では砂質土層Gには、上面に対して垂直方向に突き刺さるように、水圧変化測定手段9を構成する第1の間隙水圧計31、第2の間隙水圧計32、第3の間隙水圧計33及び第4の間隙水圧計34が並列配置され、全部で4個の間隙水圧計が1セットを構成している。図1中では4個の間隙水圧計はいずれも棒状で模式的に表され、第1の間隙水圧計31、第2の間隙水圧計32、第3の間隙水圧計33及び第4の間隙水圧計34は、注水孔1と揚水孔2との間に所定間隔で設けられている。
図1に示すパイピング現象評価装置では、注水孔1内に設けられた注水管13と揚水孔2の間隔dは50cmとされている。第1の間隙水圧計31、第2の間隙水圧計32、第3の間隙水圧計33、第4の間隙水圧計34は、揚水孔2から注水孔1へ5cmの位置、揚水孔2から注水孔1へ12.5cmの位置、揚水孔2から注水孔1へ25cmの位置及び揚水孔2から注水孔1へ37.5cmの位置に、棒の下側の先鋭な端部側に設けられた図示しない各センサ部が位置するように砂質土層G内にそれぞれ設けられる。
空間的に異なる位置に配置された第1の間隙水圧計31、第2の間隙水圧計32、第3の間隙水圧計33及び、第4の間隙水圧計34は、砂質土層Gの局所的な間隙水圧をそれぞれ経時的に測定する。図示を省略しているが、第1の間隙水圧計31〜第4の間隙水圧計34はいずれも演算装置6に配線等を介して接続されており、センサ部で測定された間隙水圧は演算装置6に備えられた記憶装置53に格納される。記憶装置53に格納された間隙水圧のデータは、演算装置6によって動水勾配の演算に用いられる。
(動水勾配及び透水性指標の経時変化)
演算装置6は、図2に示すように、入力手段61、動水勾配演算手段62、透水性指標演算手段63及び表示手段64を備える。演算装置6は、例えばCPU、主記憶装置、副記憶装置、入出力装置及び表示装置等を備えるパーソナルコンピュータで構成することができ、専用のマイクロプロセッサ等で構成してもよい。演算装置6は制御装置5に接続されており、図3に示すように、ステップS11において、演算装置6の入力手段61が、第1の水位計7からの注水孔1内の水位の経時的な変化を、制御装置5を介して記憶装置51から取得し記憶装置53に入力して格納する。また演算装置6は、第2の水位計8と接続されており、第2の水位計8からの揚水孔2内の水位の経時的な変化を、記憶装置53に格納する。また演算装置6には、注水孔1内に設けられた注水管13と揚水孔2との間隔dが入力され、記憶装置53に格納される。
ステップS12において、演算装置6の動水勾配演算手段62は、注水孔1内に設けられた注水管13と揚水孔2の間の水位差及び間隔dを用いて、注水孔1と揚水孔2の間の動水勾配を経時的に演算する。尚、動水勾配は注水孔1と揚水孔2の2点間に限らず、注水孔1、第1の間隙水圧計31〜第4の間隙水圧計34および揚水孔2の任意の2点間の動水勾配を採用してもよい。
またステップS13において、演算装置6の透水性指標演算手段63は、制御装置5を介して入力される注水量を注水孔1内の水位上昇量(測定された水位と、実験開始時との水位の差)で除した商を、注水孔1側から揚水孔2側へ流れる土粒子の移動に伴って変化する、注水孔1と揚水孔2の間の「透水性指標」として経時的に演算する。「透水性指標」は、砂質土層Gを含む基礎地盤の注水孔1と揚水孔2との間全体の透水性の目当てをつけるために設定される。
ステップS14において、演算装置6の表示手段64が、演算して求められた動水勾配及び透水性指標の経時変化を出力装置54に表示させる。ここで土粒子が注水孔1と揚水孔2の間を移動する間、注水孔1と揚水孔2の間の砂質土層Gの透水性は、局所的には増大或いは減少するが、注水孔1と揚水孔2の間の一部分で土砂移動が起こっている限りにおいては、注水孔1と揚水孔2の間全体で見た砂質土層Gの透水性は大きく変化しない。一方、注水孔1と揚水孔2の区間全域にわたって連続的な土砂移動が発生すると、砂質土層Gの注水孔1と揚水孔2の間全体の透水性が変化し透水性指標の値が増大傾向に変化する。そのため、透水性指標の増大傾向が確認された時点をもって、注水孔1と揚水孔2の間がパイピング状態になったと判定することが可能である。
(パイピング現象評価方法)
次に、図4及び図5を用いて、本発明の実施形態に係るパイピング現象評価方法を説明する。まず、パイピング現象評価装置を構成する注水ポンプ17及び揚水ポンプ27を駆動させる前に、注水孔1内の水位と揚水孔2内の水位とが、図4(a)に示すように、同じ水位であることを確認する。このとき注水孔1と揚水孔2の間にはまだ水は流れておらず土粒子が移動しないため、注水孔1と揚水孔2の間の動水勾配の値は零となる。また第1の間隙水圧計31〜第4の間隙水圧計34の値にも大きなバラつきは生じず略一定であることを確認する。また、揚水孔2内で砂質土層Gの上面に接触させている、揚水孔2のスケール10を用いて、揚水孔2のケーシング管12の上端から砂質土層Gまでの距離を測定する。
次に、注水ポンプ17及び揚水ポンプ27を駆動させ、注水動作及び揚水動作を開始する。また注水装置3から送り出される注水量、第1の水位計7によって測定される注水孔1内の水位、4個の間隙水圧計31〜34からの各間隙水圧および第2の水位計によって測定される揚水孔2内の水位を経時的に取得し、逐次、制御装置5の記憶装置51あるいは演算装置6の記憶装置53に格納する。また揚水孔2内の水位が一定に保たれるように、揚水ポンプ27を操作して揚水量を制御する。
注水動作及び揚水動作の開始により、図1中の砂質土層G内の右向き矢印で示すように、注水孔1側から揚水孔2側へ水が流通する。また流通する水の圧力により土粒子が局所的に移動を開始する。このとき注水孔1側の注水動作と、揚水孔2側の揚水動作とを並行することにより、砂質土層Gにおいて注水孔1側から揚水孔2側へ向かう水の移動が促進される。
すなわち、本発明の実施形態に係る基礎地盤のパイピング現象評価方法は、図4(b)に示すように、注水孔1内の水位を上昇させるとともに揚水孔2内の水位を一定に保つことで、注水孔1と揚水孔2の間の水位差、すなわち動水勾配を人為的に高め、パイピングを進行させる。そして注水孔1と揚水孔2の間の透水性が増大するかどうかを測定する。
ここで注水孔1内の水位の経時的な変化を、図5中の太線の曲線iで示すとともに、揚水孔2内の水位の経時的な変化を、図5中の細線の曲線iiで示す。図5に示すように、注水動作は、注水孔1内の水位を一定時間同じ水位のレベルに保った後、階段波状に所定の高さまで水位を上昇させ、更に上昇後の水位を所定の時間一定のレベルに保った後、再びステップ関数状に所定の高さ水位を上昇させる操作を繰り返して階段波状に上昇させる。すなわち注水孔1内の水位は、時間の経過とともに階段波状に上昇する。注水孔1内の水位の段階的な上昇は、例えば、水位を10cm毎に逐次上昇させるとともに、上昇させた水位を3分間平坦なレベルに維持するように制御装置5を介して行うことができる。
注水孔1内の水位を保持する間、揚水孔2内の水面に気泡が発生した場合や、第1の間隙水圧計31〜第4の間隙水圧計34の中で間隙水圧の顕著な低下が測定された場合には、更に一定時間同じ水位を維持するように注水動作を制御する。そして砂質土層Gの注水孔1と揚水孔2の間全体の透水性に変化が生じるかどうかを確認する。
このとき揚水動作は、図5に示すように、揚水孔2内の水位を、地下水位である水位h0より低い所定の水位hdに予め設定して行われる。揚水孔2の底の砂質土層Gは、揚水孔2を削孔した後の経過時間に応じて、砂質土層Gの内圧上昇により揚水孔2の下端面より隆起することがある。この砂質土層Gの隆起量は、同じ対象区間内の砂質土層Gであっても、削孔する場所により異なる。また砂質土層Gの隆起量は、同じ場所であっても削孔後の経過時間により異なる可能性がある。砂質土層Gが隆起すると、注水孔1と揚水孔2の間の動水勾配の演算に誤差が生じ、透水性指標を正確に演算できず、例えば堤防の修繕が見込まれる複数の対策区間の間で、それぞれのパイピング現象に対する抵抗性を比較検討する際、同一条件で評価することが困難となる。そこで本発明の実施形態に係るパイピング現象評価方法では、下記の式(1)に基づいて設定された補正量ΔRを用いて、揚水開始時の揚水孔2内の水位を補正する。尚、砂質土層Gの隆起量Rは、揚水孔2のケーシング管12の長さと、揚水孔2のケーシング管12の上端と揚水孔2の砂質土層Gまでの距離との差分で定義される。
ΔR=R×(γsat−γ)/γ …(1)
R …砂質土層Gの揚水孔2の下端面からの隆起量
γsat …飽和条件下の土の単位体積重量
γ …水の単位体積重量
式(1)は、砂質土層Gの揚水孔2の下端面からの隆起量Rのうち、水浸されている土の単位体積重量の、水の単位体積重量に対する割合を計算するものであり、計算された割合に基づいて、揚水開始時の揚水孔2内の水位を設定する。ボイリング発生時、揚水孔2内部の飽和した土砂の重量と水の重量とに基づく内側の圧力と、揚水孔2の下端面における水頭に相当する外側の圧力とが釣り合っている。そこで式(1)を用いることにより、対象区間毎に砂質土層地盤の揚水孔2の下端面からの隆起量が異なっていても、揚水孔2の下端面の高さを基準位置として、ボイリングが発生する時点の揚水孔2内外の圧力差の釣り合いを考慮する。補正量ΔRを用いて揚水開始時の揚水孔2の孔内水の水位を、対象区間毎に設定することにより、揚水孔2の底の砂質土層Gが隆起した影響をキャンセルさせ、ボイリングが発生するまでに付加された水位を、すべての対象区間を通じて正規化することが可能となる。
砂質土層Gを構成する土粒子の移動に伴い、注水孔1と揚水孔2の間の砂質土層Gでは局所的に土粒子どうしが疎の領域と密の領域とが混在する状態、すなわち土粒子の結合状態の乱れが発生する。尚、注水孔1と揚水孔2の間を水が流通する間、土粒子は互いに接触及び離反を繰り返すため、疎の領域と密の領域との混在状態は固定的ではなく流動的である。そして揚水孔2の底部付近で砂質土層Gを構成する土粒子の疎の領域が拡大することにより空洞が形成されることがある。図4(c)には、揚水孔2の底の空洞Saと、この空洞Saから土砂が噴出した状態とが例示されている。
揚水孔2の底で土粒子の結合状態の乱れが発生すると、砂質土層Gは、揚水孔2の底においてボイリングが発生した状態と判定される。具体的には、注水動作及び揚水動作を開始した後、揚水孔2の底の砂質土層Gの硬さを、例えば揚水孔2内に設けられたスケール10を用いて把握することで判定できる。揚水孔2内のスケール10に対し、地上側から軽く荷重を負荷し、スケール10の先端が砂質土層Gに沈下するかどうかを、先端の反対側である地上側の端部の位置を目視で確認して行えばよい。尚、揚水孔2の底の砂質土層Gの硬さの把握に際しては、揚水孔2のスケール10の使用に限定されることなく、所定の長さを有する棒状の他の器具を用いて行ってもよい。
またボイリング発生時には、砂質土層Gの乱れの発生により、揚水孔2の底の砂質土層G内に閉じ込められていた空気が開放され、揚水孔2内の水面に現れる場合がある。よって例えば、図示しないカメラを揚水孔2内に配置し、揚水孔2内のスケール10の先端位置の沈下状態が観察されるとともに、カメラによって揚水孔2内の水面に気泡が観察された場合に、ボイリングが発生したと判定してもよい。スケール10の先端位置の沈下という条件とともに気泡の発生という条件を加えることにより、ボイリングが発生した時期を判定する際の判定精度を高めることができる。
更に、揚水孔2内の水面と砂質土層Gの上面との距離が比較的短い場合、例えば孔内水の深さが20cm程度である場合、ボイリング発生時の砂質土層Gの乱れにより、砂質土層Gから揚水孔2内の水面に向かって地下水が噴き出し、水面の一部が波打つ場合がある。よって揚水孔2内のスケール10の先端位置の沈下状態の観察とともに、揚水孔2内の水面に波打ち状態が観察された場合に、ボイリングが発生したと判定してもよい。スケール10の先端位置の沈下という条件とともに、揚水孔2内の水面の波打ちの有無の観察を加えることにより、ボイリングの発生時期の判定の精度を高めることができる。尚、スケール10の先端位置の沈下という条件に加える条件として、気泡の発生条件と水面の波打ち条件のうちいずれか一方又は両方を用いてよいのは勿論である。
ボイリング発生後、引き続き注水動作と揚水動作とを並行し、注水孔1と揚水孔2の間の動水勾配を増大させることにより土粒子の移動は更に促進され、砂質土層G内の空洞あるいは土粒子が疎の領域が側方に拡大する。このとき注水孔1と揚水孔2との間においては、土粒子が疎の領域と密の領域とが混在するが、注水孔1と揚水孔2の間を連通する空洞あるいは土粒子が疎の領域は未だ形成されていない。そのため注水孔1と揚水孔2の間の砂質土層Gにおいて局所的には透水性が変化している箇所が発生しているが、注水孔1と揚水孔2の間全体で見た場合の砂質土層Gの透水性は略一定に保たれる。すなわちボイリングが発生した後、注水孔1と揚水孔2の間で空洞あるいは土粒子が疎の領域が連通するまでの間は、注水孔1と揚水孔2の間全体ではダルシーの法則がおおむね成立していると見做すことが可能である。
図4(c)に示した状態の後、引き続き注水孔1と揚水孔2の間の動水勾配を増大させることにより、図4(d)に示すように、ある時点で注水孔1と揚水孔2の間の全区間にわたって空洞あるいは土粒子が疎の領域が連通、すなわちパイピングSが形成され、注水孔1と揚水孔2の間の砂質土層Gを含む基礎地盤がパイピング状態に到達し、パイピングSからの土粒子の噴出は増大する。パイピング状態に至ると、注水孔1と揚水孔2の間の透水性が一気に高まり、揚水孔2内に急激に水が入り込む。このとき揚水孔2内の水位を保つための揚水ポンプ27の動作制御が間に合わなければ、図4(d)に示すように、揚水孔2内の水位が急激に上昇する。
(パイピング現象評価方法)
次に、図1に示した本発明の実施形態に係るパイピング現象評価装置の動作の一例を、図5〜図7を参照して説明する。図5に示すように、時刻t=0から注水動作及び揚水動作を開始して、注水孔1と揚水孔2の間の水位差を拡大させ、動水勾配を経時的に演算した。注水孔1内の水位は、地下水位である水位h0を初期水位として開始後10cmずつ上昇させ、上昇させた水位を原則3分間維持するとともに、注水孔1と揚水孔2の間全体の透水性の急激な拡大が疑われる場合には、更に3分間ずつ現状の水位を保持した。また揚水孔2内の水位は、式(1)から得られた補正量ΔRを用いて、水位h0より所定の高さ分だけ低い水位hdとした。
また図6中の曲線I〜IVに示すように、時刻t=0以降の注水孔1と揚水孔2の間の異なる4箇所の間隙水圧の測定結果及び注水孔と揚水孔の水位の測定結果から、隣り合う間隙水圧計間及び第4の間隙水圧計と揚水孔の間、並びに注水孔と揚水孔の間の平均動水勾配をそれぞれ経時的に演算した。図6中、2点鎖線で示した曲線Iは揚水孔2から37.5cmの位置の第1の間隙水圧計31の値と揚水孔2から25cmの位置の第2の間隙水圧計32の値の差分を水頭換算しそれを2点間の距離で割ったもの(これを平均動水勾配という)の変化を示し、1点鎖線で示した曲線IIは揚水孔2から25cmの位置の第2の間隙水圧計32と揚水孔2から12.5cmの位置の第3の間隙水圧計33の値の差分を水頭換算しそれを2点間の距離で割ったものの値の変化を示す。また図6中、破線で示した曲線IIIは揚水孔2から12.5cmの位置の第3の間隙水圧計33と揚水孔2から5cmの位置の第4の間隙水圧計34の値の差分を水頭換算しそれを2点間の距離で割ったものの値の変化を示し、細い実線で示した曲線IVは揚水孔2から5cmの位置の第4の間隙水圧計34の値を水頭換算したものと揚水孔2の水位の差分を2点間の距離で割ったものの値の変化を示す。また太い実線で示した曲線Vは注水孔1と揚水孔2の水位の差分を2点間の間隔dで割ったものの変化を示す。
また図7に示すように、時刻t=0以降の透水性指標を経時的に演算した。図7中、太い実線で示した曲線iは、図5中に示した曲線iと同様に注水孔1の水位の変化を示す。また図7中、破線で示した曲線iiiは、注水孔1と揚水孔2の間全体の透水性指標の変化を示す。尚、図5〜図7で示したそれぞれの変化の軌跡は、いずれも測定データに基づく値の変化を概念的に表したものである。
図5の曲線iに示すとおり、時刻t=t1において注水孔1内の水位を1段階上昇させた後の水位h0+0.3mを維持する間に、時刻t=t1aにおいて図6中の曲線IVの値が低下した。しかしながら孔内カメラの映像や揚水孔2の底の砂質土層Gの硬さなどに変化は見られなかった。このことから、第4の間隙水圧計34と揚水孔2の間で局所的な物質の移動が起こったものの、揚水孔2の底でボイリングが発生するには至らなかったものと考えられる。尚、図7の曲線iiiに示す注水孔1と揚水孔2の間全体の透水性指標は上昇傾向を示すが、これは試験開始直後で注水量が安定していないことに起因するものと判断した。
図5の曲線iに示すとおり、時刻t=t2において注水孔1内の水位を1段階上昇させた後の水位h0+0.6mを維持する間に、時刻t=t2aにおいて揚水孔2のスケール10の先端が沈下し、揚水孔2の底の砂質土層Gの硬さが低下したことが確認された。また孔内カメラの映像で、揚水孔2の孔内水の水面に小さな気泡が発生し、揚水孔2のケーシング管12の内壁面に細かな気泡が付着する状態が観察された。また揚水孔2内の水に濁りは無く、図7に示すように、注水孔1と揚水孔2の間全体の透水性指標は略一定であった。よって時刻t=t2aにおいて砂質土層Gにボイリングが発生し、以降、空洞あるいは土粒子が疎の領域の側方への拡大が開始したと判定した。
図5の曲線iに示すとおり、時刻t=t3において注水孔1内の水位を1段階上昇させた後の水位h0+0.7mを維持する間に、時刻t=t3aにおいて図6中の曲線IVに示すように、揚水孔2から5cmの位置の第4の間隙水圧計34と揚水孔2との間の平均動水勾配の値は急速に低下し始め、t=t4を経過した後に0(零)付近に到達した。このことから、ボイリングの影響が揚水孔2から5cm離れた範囲まで拡大したと考えることができる。
次に、図5の曲線iに示すように、時刻t=t4において注水孔1内の水位を1段階上昇させた後の水位h0+0.8mを一定のレベルに維持する間に、揚水孔2内の水中に濁りが観察された。そのため注水孔1内の水位を上昇させることなく、9分間同じ水位を維持した。しかしその間、揚水孔2内の水位は一定のレベルに保たれるとともに、図6の曲線I〜曲線IVに示すように、各区間の平均動水勾配は若干の上下動があるものの大きな変化はなく、また図7の曲線iiiに示す透水性指標は安定していたことから、砂質土層Gを含む基礎地盤はパイピング状態に未だ至っていないと判定した。その後、時刻t=t5において注水孔1内の水位を上昇させた。
次に、図5に示すように、時刻t=t6において注水孔1内の水位を1段階上昇させた後の水位h0+1.1mを一定のレベルに維持する間に、時刻t=t6aにおいて図6中の曲線IIIの値が低下した。それに引き続き時刻t=t6bにおいて、図5の曲線iiに示すとおり、揚水孔2の孔内水の水位の一時的な上昇が測定された。その直後の時刻t=t6cにおいて図6中の曲線IIの値が低下した。さらには時刻t=t6dにおいて図6中の曲線Iの値が低下した。そのため注水孔1内の水位を上昇させることなく、図5及び図7に示すように、時刻t=t7まで同じ水位を維持した。しかし、揚水孔2内の水位は再び元の水位hdに復帰した。また図7の曲線iiiに示すように、注水孔1と揚水孔2の間全体の透水性指標は安定していた。
そのため砂質土層Gを含む基礎地盤は、内部で空洞あるいは土粒子が疎の領域が側方へ拡大している段階であると判定した。すなわち時刻t=t6aにおいて第4と第3の間隙水圧計の間で、続いて時刻t=t6cにおいて第3と第2の間隙水圧計の間で、続いて時刻t=t6dにおいて第2と第1の間隙水圧計の間で、と逐次破壊が発生し、それぞれの区間で透水性が一時的に変化する程度の比較的大きな空洞あるいは土粒子が疎の領域が一時的に形成されたものの、図7の曲線iiiが安定していることで示されるように、注水孔1と揚水孔2の間の全域にわたる空洞あるいは土粒子が疎の領域の連通には至っていないと判定した。その後、時刻t=t7において注水孔1内の水位を上昇させた。
次に、時刻t=t8において注水孔1内の水位を水位h0+1.4mに上昇させたところ、図7の曲線iiiに示すように、時刻t=t0以降、略一定であった透水性指標の値が、曲線iで示す注水孔1の水位を一定にしているにもかかわらず透水性指標が継続的に上昇傾向を示した。その後、時刻t=t9において注水孔1の水位を水位h0+1.5mに上昇させたところ、図7の曲線iiiに示すように引き続き透水性指標が継続的に上昇傾向を示した。その後時刻t=t9aにおいて図6の曲線IIIが大きく低下した。引き続いて時刻t=t10において、図5の曲線iiに示すように揚水孔2内の水位が1m以上急激に上昇したことから注水孔と揚水孔の間の空洞が完全に形成されたと判断し、注水を停止した。
図7の曲線iiiに示す透水性指標の継続的な上昇傾向は、ダルシーの法則が満足されず、継続的な破壊と空洞あるいは物質が疎の領域が拡大していることを推測させる。このことによって、砂質土層Gを含む基礎地盤がパイピング状態に到達したと判定した。
上記したパイピング現象評価装置の動作の一例における基礎地盤のパイピングの進行段階をまとめた結果を表1に示す。
Figure 0006474101
表1に示すように、砂質土層Gを含む基礎地盤は動水勾配が1.2である場合にボイリングが発生するというパイピング現象の進行状況が確認できる。このとき基礎地盤中の砂質土層Gにおいてパイピングを進行させる浸透破壊に対する耐性を「パイピング抵抗性」と定義すれば、動水勾配の値を用いた場合、基礎地盤は、ボイリングに対しては動水勾配1.2までの負荷に抗し得るパイピング抵抗性を有すると評価できる。
また砂質土層Gを含む基礎地盤は、ボイリング発生後、経時的に動水勾配は増大し、最終的に動水勾配が2.8である場合にパイピング状態に到達するというパイピング現象の進行状況が確認できる。すなわち基礎地盤は、パイピング状態への到達に対しては動水勾配2.8までの負荷に抗し得るパイピング抵抗性を有すると評価できる。
尚、ボイリング発生時の評価基準として用いられることが多い国土交通省の堤防基礎地盤の浸透破壊に対する安全性照査基準では、被覆土が無い場合の砂質土層Gの局所動水勾配の照査基準値は、理論値約1.0に安全を見て0.5に設定されている。本発明のパイピング現象評価装置の動作の一例で得られたボイリング発生時の値1.2は理論値に近い値であり、照査基準値は、かなり安全サイド寄りの値といえる。
本発明の実施形態に係る基礎地盤のパイピング現象評価方法によれば、注水孔1と揚水孔2との間に水を流通させることにより、砂質土層Gを構成する土粒子を、注水孔1側から揚水孔2側へ、注水孔1と揚水孔2の間でパイピング状態が形成されるまで移動させる。そして土粒子の移動中に変化する注水孔1と揚水孔2の間の動水勾配を連続的に演算して求め、求められた動水勾配の値を、砂質土層Gを含む基礎地盤のパイピング現象の進行状況を説明する値として評価する。すなわち、砂質土層Gにおいて進行するパイピング現象の進行段階毎に動水勾配を求めることで、砂質土層Gを含む基礎地盤のパイピングのし易さを評価する。そのため水の浸透に対する基礎地盤のパイピング現象(パイピングのし易さ)を、局所的な土粒子の移動開始時点の動水勾配を用いて評価するのではなく、パイピングの進行段階の実態に即して評価することが可能となる。よってパイピング対策を施す地域における複数の対象区間の絞り込みや優先順位付けを、従来よりも実態に即して行うことができる。
尚、本発明の実施形態に係るパイピング現象評価装置では、動水勾配の変化に、水圧変化測定手段9からの出力を加えて基礎地盤のパイピングのし易さを評価したが、これに限定されず、動水勾配の変化のみを用いても、パイピングのし易さを評価することは可能である。しかし、動水勾配の変化と水圧変化測定手段9からの出力とを両方考慮することにより、パイピングのし易さの評価精度をより高めることができる。
本発明は上記のとおり開示した実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施形態及び運用技術が明らかになると考えられるべきである。例えば、本発明の実施形態ではパイピング抵抗性を示すものとして動水勾配の値を代表して用いたが、他のパラメータがパイピング抵抗性として用いられてもよい。すなわち本発明は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むとともに、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
本発明は、河川堤防の基礎地盤のパイピング対策の必要性の精査や優先順位付けに広く利用できる。
1 注水孔
2 揚水孔
3 注水装置
4 揚水装置
5 制御装置
6 演算装置
7 第1の水位計
8 第2の水位計
9 水圧変化測定手段
d 間隔
G 砂質土層

Claims (11)

  1. 基礎地盤に含まれる砂質土層に注水孔及び揚水孔を削孔する工程と、
    前記注水孔に注水する処理及び前記揚水孔から孔内水を揚水する処理を並行させ、前記砂質土層を構成する土粒子を前記注水孔側から前記揚水孔側へ移動させる工程と、
    前記注水孔内の水位と、前記揚水孔内の水位と、前記注水孔と前記揚水孔の間隔とから、前記移動させる工程中に変化する、前記注水孔と前記揚水孔の間の動水勾配を求め、前記動水勾配の経時変化を演算する工程と、を含み、
    前記動水勾配を人為的に高めて前記砂質土層で発生するパイピング現象を進行させようとしたときに前記動水勾配が経時変化するかどうかによって、前記砂質土層で発生するパイピング現象を評価することを特徴とするパイピング現象評価方法。
  2. 前記注水する処理は、前記注水孔内の水位が階段波状に次第に上昇するように行うことを特徴とする請求項1に記載のパイピング現象評価方法。
  3. 前記揚水する処理は、前記揚水孔内の水位を一定のレベルに保つように行うことを特徴とする請求項2に記載のパイピング現象評価方法。
  4. 前記注水孔と前記揚水孔の間の複数の地点の水圧のそれぞれの経時変化を測定する工程を更に含み、
    該経時変化を前記パイピング現象の評価に用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のパイピング現象評価方法。
  5. 前記揚水する処理は、揚水開始時に前記揚水孔の底の前記砂質土層が前記揚水孔の下端面より隆起している場合、前記揚水孔内の水位を、前記砂質土層の前記下端面からの隆起量に基づいて設定された高さ分だけ地下水位より低下させた水位に保つように行うステップを更に含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のパイピング現象評価方法。
  6. 前記移動させる工程中に、前記注水孔への注水量を前記注水孔の水位で除した商を透水性指標として演算するステップと、
    前記演算された透水性指標が増大傾向に転じた時点を、前記基礎地盤がパイピング状態に至った時点と判定するステップと、を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のパイピング現象評価方法。
  7. 前記揚水孔の底の前記砂質土層の硬さを測定する工程と、
    前記測定された前記砂質土層の硬さが低下した時点を、前記砂質土層にボイリングが発生した時点として判定する工程と、
    を更に含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のパイピング現象評価方法。
  8. 基礎地盤に含まれる砂質土層に削孔された注水孔に注水する注水装置と、
    前記注水孔内の水位を測定する第1の水位計と、
    前記砂質土層に削孔された揚水孔の孔内水を揚水する揚水装置と、
    前記揚水孔内の水位を測定する第2の水位計と、
    前記注水と前記揚水とを並行して実施することにより前記砂質土層を構成する土粒子が前記注水孔側から前記揚水孔側へ移動する間に変化する前記注水孔と前記揚水孔との間の動水勾配の経時変化を、前記第1の水位計によって測定された水位と、前記第2の水位計によって測定された水位と、前記注水孔と前記揚水孔の間隔と、から演算する演算装置と、を備え、
    前記動水勾配の経時変化によって前記砂質土層で発生するパイピング現象を評価するパイピング現象評価装置。
  9. 前記注水孔内の水位が階段波状に次第に上昇するように、前記注水装置及び前記第1の水位計を制御する制御装置を、更に備えることを特徴とする請求項8に記載のパイピング現象評価装置。
  10. 前記注水孔と前記揚水孔との間に設けられ、前記注水と前記揚水により前記砂質土層を構成する土粒子が前記注水孔側から前記揚水孔側へ移動する間に変化する水圧の空間分布の経時変化を測定する水圧変化測定手段と、を更に備え、
    該水圧変化測定手段からの出力を用いて前記砂質土層で発生するパイピング現象を評価することを特徴とする請求項8又は9に記載のパイピング現象評価装置。
  11. 前記水圧変化測定手段は、前記注水孔と前記揚水孔の間に配置された複数の間隙水圧計を有することを特徴とする請求項10に記載のパイピング現象評価装置。
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