まず、本願発明者らがなした発明は以下のとおりである。
本願の第1の発明にかかる器具判定装置は、供給管を流れる流体の流量値を取得する流量計と、前記流量計によって取得された流量値及びその流量変化特性と、予め定められた少なくとも1つの器具の器具特徴とに基づいて、前記供給管に接続されて使用されている器具を識別する器具識別手段と、前記器具識別手段によって識別された器具の情報、および、使用開始時または最大使用時の前記器具の固有流量を記憶する記憶手段と、前記器具識別手段による前記器具の識別に応答してタイマのカウントを開始する計時手段と、前記計時手段による前記タイマのカウント中に、前記流量計によって取得された前記流量値の変化量と前記記憶手段に記憶された前記固有流量との関係を示す情報を算出する算出手段と、前記関係を示す情報が所定の範囲内に入っており、かつ、前記流量値の変化パターンが所定の条件を満たす場合には、前記タイマのカウントをリセットする要求を出力する変化検出手段とを備え、前記タイマのカウントが所定時間を経過した時点で予め定められた処理を行う。
本願の第2の発明にかかる器具判定装置は、前記器具判定装置に、前記流量値の変化量と前記固有流量との関係を示す前記情報が前記所定の範囲内に入っているか否かを判定する判定手段をさらに備えて構成されている。
本願の第3の発明にかかる器具判定装置は、前記器具判定装置の前記変化検出手段が、前記流量値の変化パターンがステップ状の変化を示しているときには、前記タイマのカウントをリセットする要求を出力するよう構成されている。
本願の第4の発明にかかる器具判定装置は、前記器具判定装置の前記算出手段が、前記流量値の変化量と前記記憶手段に記憶された前記固有流量との比率の関係を示す比率情報を算出するよう構成されている。
本願の第5の発明にかかる器具判定装置は、前記器具判定装置の前記計時手段が、前記タイマのカウントが所定時間を経過した時点で、前記器具の運転が停止されたことを示す情報を前記記憶手段に記憶させるよう構成されている。
本願の第6の発明にかかる器具判定装置は、前記器具判定装置の前記変化検出手段が、初期値に対応する第1の値、および前記第1の値と異なる第2の値のいずれかを保持することが可能なカウンタを有しており、前記変化検出手段が、前記流量値の変化パターンがステップ状の変化を示したときには、前記カウンタを前記第1の値から前記第2の値に変更するよう構成されている。
本願の第7の発明にかかる器具判定装置は、前記器具判定装置の前記タイマのカウントが所定時間を経過し、かつ前記カウンタが前記第1の値を示しているときは、前記計時手段が、前記器具の運転が停止されたことを示す情報を前記記憶手段に記憶させるよう構成されている。
本願の第8の発明にかかる器具判定装置では、前記タイマのカウントが所定時間を経過し、かつ前記カウンタが前記第2の値を示しているときは、前記変化検出手段は、前記タイマのカウントをリセットする要求を出力するよう構成されている。
本願の第9の発明にかかる器具判定装置は、前記変化検出手段が、前記タイマのカウントをリセットする要求を出力した後、または、前記器具の運転が停止されたことを示す情報が前記記憶手段に記憶された後、前記カウンタをリセットするよう構成されている。
本願の第10の発明にかかる器具判定装置は、上述のいずれかの器具判定装置に、前記供給管を流れる流体を遮断する遮断器と、運転監視手段とをさらに備え、前記運転監視手段は、前記記憶手段に、前記器具の運転が停止されたことを示す情報が記憶され、かつ、前記器具に関する流体の流量値を前記流量計が継続的に取得していることを検出したときは、前記遮断器に前記供給管を閉塞する指令を送信するよう構成されている。
本願の第11の発明にかかる器具判定装置は、上述のいずれかの器具判定装置において、前記流体としてガスを用いるよう構成されている。
以下、添付の図面を参照しながら、本発明にかかる器具判定装置の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態では、器具判定装置の例として、ガス器具を判定する機能および判定したガス器具が使用するガスを正確に監視することが可能なガスメータを挙げ、その処理を説明する。図面において、同じ構成要素には同じ参照符号を付し、既に説明した構成要素については再度の説明を省略する。なお、本発明は、以下で説明する実施の形態によって限定されることはない。ガスは流体の一例であり、ガス以外の流体、たとえば水、液体酸素、液体水素などの液体、水素などの気体であっても本願発明を適用することができる。
(実施形態1)
図1は、本実施形態によるガスメータ100の構成例を示す。
ガスメータ100は内部配管aを備えており、内部配管aを介してガス供給管b1とガス供給管b2とを連結している。下流側のガス供給管b2には、各顧客宅内に設置された1台以上のガス器具(図示せず)が接続されている。
ガスメータ100は、瞬時流量計測器2、流量演算手段3、遮断器4、運転監視手段5、器具識別手段11、器具情報記憶手段12、点火流量記憶手段13、継続監視計時手段14、ステップ変化検出手段15、比率算出手段16、および比率判定手段17を有している。
瞬時流量計測器2および遮断器4は、内部配管aの経路中に設けられている。
瞬時流量計測器2は、超音波信号を用いて内部配管a内のガス流により生じる伝搬時間差を求め、ガスの瞬時流量を検出する。詳細は後述する。
流量演算手段3は、瞬時流量計測器2により検出された瞬時流量を基に、瞬時流量を積算してガス流量を算出する。ガス流量の単位は、たとえば毎時当たりの容積(リットル)である。この瞬時流量計測器2及び流量演算手段3により流量値を計測する機能を実現する。瞬時流量計測器2及び流量演算手段3をまとめて「流量計10」と呼ぶことがある。なお、流量計10は内部配管aを流れるガス流量値を計測できればよく、瞬時流量を求めることは必須ではない。なお、内部配管aを流れるガスの流量値は、ガス供給管b1を流れるガスのガス流量値と同じである。
器具識別手段11は、流量演算手段3より算出された流量値及びその流量変化特性と、予め定められた少なくとも1つのガス器具の器具特徴とに基づいて、ガス供給管b2に接続されて使用されているガス器具を識別する。処理の具体的な説明は後述する。あわせて器具識別手段11は、流量演算手段3より算出された流量値のうちの最大流量を、そのガス器具の最大流量として特定する。器具識別手段11は、器具識別の結果を器具情報記憶手段12に出力すると共に、その器具の点火時または最大時の流量を点火流量記憶手段13に出力する。
器具情報記憶手段12は、現在使用されている器具の情報を記憶する。
点火流量記憶手段13は、器具識別手段11により識別された際の器具の点火時または最大時の流量を記憶する。
継続監視計時手段14は、器具識別手段11により特定の器具が識別された場合のみ、継続監視タイマTkのカウント値をインクリメントする。一定時間経過した場合には、該当器具が停止されたとみなすことができるとして、継続監視計時手段14は器具情報記憶手段12に器具停止情報を出力する。
ステップ変化検出手段15は、流量演算手段3より算出された流量値及びその流量変化特性から、流量のステップ変化を監視する。なお、ステップ変化の条件は変更できる設定であってもよい。ステップ変化検出手段15は、流量のステップ変化を検出すると、継続監視計時手段14にタイマリセット要求を出力する。
比率算出手段16は、変化流量値と点火流量記憶手段13に記憶された流量値との比率Xを算出する。
比率判定手段17は、比率算出手段16により算出された流量比率Xが所定の範囲内にあるか否かを判定する。なお、所定の範囲は変更できる設定であってもよい。
なお、本実施の形態1における瞬時流量計測器2は、超音波方式で流量を計測するが、これは一例である。フルイディック方式などの短時間に一定サイクルで連続計測可能であれば他の方式を用いてもよい。なお「短時間」とは、ガスメータ100の仕様上必要とされる監視間隔以下の時間を意味する。
遮断器4は、運転監視手段5からの指示に基づいて内部配管aを閉塞する。これにより、下流のガス供給管b2に位置するガス器具へのガスの供給を遮断する。
瞬時流量計測器2及び流量演算手段3の動作について、超音波方式を例にして説明するが、上述のように本発明はこの方式に限定されない。
図2は、瞬時流量計測器2の概略構成図である。
瞬時流量計測器2は、内部配管aに連通する矩形断面を持つ計測流路30を有する。計測流路30の相対向する流路壁の上流側と下流側には、一対の超音波送受信器31、32が配置されている。これらの超音波送受信器31、32は、超音波伝播経路が計測流路30を流動するガス流を斜めに横切るように設定され、交互に超音波を送受信させることによって、ガス流に対して順方向と逆方向に超音波の伝搬をおこなう。なお、ガス流の方向は図2中の矢印によって示されている。
このとき、超音波送受信器31、32間の距離、すなわち測定距離をL、ガス流に対する超音波伝播経路の角度をφ、超音波送受信器31、32の上流から下流への超音波伝播時間をt1、下流から上流への超音波伝播時間をt2、音速をCとすると、流速Vは以下の式により求められる。
超音波送受信器31から送信された超音波が超音波送受信器32に到達するまでの伝搬時間t1は、下式にて示される。
t1 = L /(C+Vcosφ) (1)
また、超音波送受信器32から送信された超音波が超音波送受信器31に到達するまでの伝搬時間t2は、下式にて示される。
t2 = L /(C−Vcosφ) (2)
式(1)と式(2)から流体の音速Cを消去すると、下式が得られる。
V =( L /(2cosφ)) × ((1/t1)−(1/t2)) (3)
この流速Vと計測流路30の断面積とからガス流の瞬時流量を算出する。瞬時流量の計測の時間間隔は、超音波の送受信が可能な範囲で設定できる。この瞬時流量に基づいて、流量演算手段3が1時間当たりの流量を算出することになる。
一般的に、使用するガス器具によって起動時や制御によりガス流量の変化する時間が異なるため、計測時間間隔を小さくすることは、器具識別を瞬時に行うためには有利となるが、計測時間間隔を短くすると、電池により駆動しているガスメータ等では、電池の消耗が大きくなる。また、計測時間間隔が従来のガスメータで使用している膜式方式と同等の2桁オーダーの秒数間隔になると、流量変化の差分を見て判断することが困難になる。
本実施の形態では、ガス器具が使われていないときは、2秒間隔の周期的な瞬時流量の計測を行い、その差分値をとってガス器具の起動を識別する。ただし電池の消耗等を問題しない場合には、計測時間間隔を更に短くすることも可能である。例えば、1秒間隔でもよいし、0.5秒間隔でもよい。さらに、ガス器具起動後は、計測精度を上げるために計測時間間隔を短くするなどの制御を行ってもよい。
次に、器具識別手段11の動作を詳述する。
図3は、ガス器具の流量値の変化パターンの例を示す。横軸は時間(秒)を表し、縦軸はガス流量(リットル/時)を表す。
器具識別手段11は、所定期間毎にガス流量値を求め、その変化パターン、およびガス流量値を利用してガス器具を識別している。具体的には、器具識別手段11は、1秒ごとに16秒間、流量演算手段3からガス流量値を取得する。その結果、中間安定段階(図3の3〜5秒)と、安定段階(6秒以降)とが存在すると判定すると、器具識別手段11は、各段階の流量値に基づいてガス器具を識別する。中間安定流量は緩点火流量に相当し、また安定流量は点火直後の安定した流量に相当する。
たとえば器具識別手段11は、3回分の計測値の平均値が第1の範囲内に入っている場合には中間安定段階であると判定し、6回分の計測値の平均値が第2の範囲内に入っている場合には安定段階であると判定する。
器具識別手段11は、中間安定段階および安定段階の両方の条件を満たすと判定すると、中間安定段階のガス流量値、安定段階のガス流量値、および予め定められた少なくとも1つのガス器具の器具特徴に基づいて、ガス供給管b2に接続されて使用されているガス器具を識別する。
たとえば器具識別手段11は、家庭用ファンヒータの器具特徴として、中間安定段階のガス流量値=150リットル/時、安定段階のガス流量値=200リットル/時という情報が予め記述されたテーブルを内部バッファ(図示せず)に格納している。器具識別手段11は、テーブルを参照して、図3に示す中間安定段階のガス流量値および安定段階のガス流量値から、使用が開始されたガス器具は、家庭用ファンヒータであると識別することができる。
なお、図3には、ガス流量の最小値が0(リットル/時)と示されているが、これは理解の便宜のためである。既にガス器具が使用されている状況下で、新たに上述した家庭用ファンヒータの使用が開始される場合もある。そのような場合には、それまで定常的に流れていたガスの流量値を全体の流量値から減算して、図3に示す変化量および変化パターンを取得すればよい。
なお、同じ家庭用ファンヒータに分類されるガス器具であっても、暖房能力の違いで器具特徴が異なることがあり得る。よって上述したテーブルには分類可能なガス器具毎の器具特徴が記述されればよい。なお、後述するステップ変化の変化量もまた、ガス器具に応じて異なり得る。
他の構成要素の処理は、図4に示すガスメータ100の処理に関連して説明する。
図4は、ガスメータ100の処理の手順を示すフローチャートである。ガスメータ100の処理は流量検出時から開始される。
ステップS1において、継続監視計時手段14は継続監視中か否か判定する。継続監視中であれば処理はステップS8に移行し、継続監視中でなければ処理はステップS2に移行する。継続監視中か否かは、継続監視タイマTkが稼働中か否かで判断すればよい。
以下ではまず継続監視計時手段14が稼働していないとして説明する。
ステップS2において、瞬時流量計測器2および流量演算手段3は、ガス流量の有無の判定を行う。ガス流量があれば処理はステップS3に移行する。
ステップS3において、器具識別手段11は図3を参照しながら説明した器具識別処理を行い、ステップS4において、器具情報記憶手段12は器具識別手段11によって行われた器具識別の結果を器具情報として記憶する。またステップS5において、点火流量記憶手段13は、固有流量を記憶する。「固有流量」とは、その器具固有の流量を表しており、器具識別時の点火流量または最大流量を表す。本実施形態では点火流量を一例として挙げ、「点火流量Qmax」と記述する。その後処理はステップS6に移行する。
ステップS6において、器具識別手段11は、識別結果が特定器具か否かの判定を行う。「特定器具」とは、ガス流量の継続的監視が必要な、予め定められた器具である。たとえば上述したガスファンヒータは、消し忘れが生じたときのために流量を監視する必要がある。そのため、ガスファンヒータは特定器具として予め定められ得る。
特定器具であれば処理はステップS7に移行し、特定器具でなければ処理はステップS12に移行する。
ステップS7において、継続監視計時手段14は継続監視タイマTkをスタートさせる。流量が相対的に大きい器具が使用されている期間中は、継続監視タイマTkを一時停止させてもよい。たとえば、給湯器のような、ファンヒータより流量値が大きいガス器具は使用中の流量変化が大きく、ステップ変化の検出が困難な場合もある。そこで、そのような器具が使用されていることが検出された場合には、継続監視タイマTkを一時停止させ、ステップ変化の監視を一時中断してもよい。
次に、処理はステップS12に進む。ステップS12において、継続監視計時手段14は継続監視タイマTkのカウント値が一定値Tsを超えたか否かを判定する。図4のステップS12における「Tk」は便宜的にカウント値を示している。一定値Tsは、予め定められた時間に対応するカウント値である。経過している場合には処理はステップS13に移行し、そうでない場合には処理は終了する。継続監視計時手段14がカウントを開始した直後には後者に該当する。
処理は再びステップS1から開始される。継続監視計時手段14がカウントを開始しているため、ステップS1の処理はステップS8に進む。
ステップS8において、比率算出手段16は、ステップS5において記憶した器具識別時の点火流量Qmaxと、流量変化ΔQとの関係を示す情報を算出する。ここでいう「関係を示す情報」とは、本実施形態では、比率Xをいう。比率算出手段16は、X=ΔQ/Qmaxによって比率Xを算出する。その後、処理はステップS9に移行する。
図5は、流量変化ΔQを示す。2回目以降のステップS1の実行時には、それまでガス流量が存在していたことが前提とされるため、流量変化ΔQを検出することができる。本実施形態では、比率算出手段16は、予め定められた閾値を超える変化があった場合に流量変化ΔQを検出するとしている。たとえば比率算出手段16は、流量値41から流量値42への変化、および流量値43から流量値44への変化は、閾値を超えないため流量変化ΔQとして検出しない。一方、比率算出手段16は、流量値42から流量値43への変化は閾値を超えるとして流量変化ΔQとして検出する。
または、比率算出手段16は、N個の流量値を1組とし、各組の代表値同士から流量変化ΔQを求めてもよい。たとえば、流量値Qi(i:1〜Nの整数)の平均値をQave1とし、流量値Qj(j:2〜N+1の整数)の平均値をQave2とする。このとき、流量変化を以下のように定義する。
流量変化=|Qave1−Qave2| (4)
上述した流量変化が閾値を超える場合には、|Qave1−Qave2|をΔQとして検出する。上述の「N」として3以上の整数を採用すると、流量変化をより確実に検出可能である。たとえばN=3の例で検討する。1組の計測値の中に、図5に示す上側の計測点(流量値42の計測点まで)が2個または3個含まれる場合には、その組の平均値は上側の計測点により近くなる。一方、1組に含まれる計測値を時系列に沿って1つずつずらした結果、1組の計測値の中に、図5に示す下側の計測点(流量値43の計測点以降)が2個または3個含まれることになった場合には、その組の平均値は下側の計測点により近くなる。代表値の差が比較的大きいため、閾値を設定して流量変化を検出することは容易である。
再び図4を参照する。ステップS9において、比率判定手段17は、比率Xが所定の範囲内であるか否かを判定する。所定の範囲内とは、本実施形態ではたとえば0.1<X<0.2(すなわち10%から20%までの範囲内)である。所定範囲内の変化であれば処理はステップS10に移行し、そうでなければ処理はステップS12に移行する。
ステップS10において、ステップ変化検出手段15は、ステップ変化が生じているか否かを判定する。この処理は、流量値の変化パターンがステップ変化条件を満たすか否かの判定を意味する。「ステップ変化条件」とは、流量値がステップ状に変化していると判断できる条件を言う。
たとえば上述した図5はステップ変化条件を満たす例を示している。ステップ変化検出手段15は、連続する4つの流量値を利用してステップ変化条件が満たされているか否かを判定する。図5の一点鎖線の枠に囲まれた4つの流量値に注目すると、流量値41から流量値42へは変化がなく、および流量値43から流量値44へも変化がない。そして、その間の、流量値42から流量値43の間では流量変化ΔQが生じている。結果として、流量値41から44までの間では、ステップ状に流量が変化している。このようなステップ状の流量変化をしていると言えるか否かがステップ変化条件として規定される。なお、上述した「変化がない」ことには、2つの流量値が完全に一致することのみならず、数%程度の範囲内に入っている場合も包含される。
再び図4を参照する。ステップS10において、ステップ変化が生じているときには、ステップ変化検出手段15は、継続監視計時手段14のカウントをリセットする要求を出力し、処理はステップS11に移行する。一方、ステップ変化が生じていないときには、処理はステップS2に移行し、再びステップS2以降の処理が実行される。
ステップS11において、継続監視計時手段14は、カウントをリセットするステップ変化検出手段15からの要求の受信に応答して、継続監視タイマTkをリセットする。その後、処理はステップS12に進む。継続監視計時手段14がリセットされた直後のステップS13の処理では、継続監視計時手段14が一定時間を経過していないため、処理は終了する。
ステップS12において、継続監視計時手段14の継続監視タイマTkのカウント値が一定値Tsを超えた場合には、該当するガス器具がオフされたと見なすことができる。継続監視計時手段14は、そのガス器具が停止されたことを示す器具停止情報を器具情報記憶手段12に送り、記憶させる。流量値が所定閾値以下になった場合も同様に該当ガス器具がオフされたと見なすことができる。
なお、ステップS12で該当するガス器具がオフされたと見なすことにより、たとえばガス漏れやガス器具の消し忘れを検出してガスを遮断する処理にも活用することができる。ガス漏れ時等には、ステップ変化が生じないが、ガスが供給され続けている状況が発生しているからである。図1に示すガスメータ100には、遮断器4および運転監視手段5が設けられている。運転監視手段5は、器具情報記憶手段12に器具停止情報が記述されており、かつ流量演算手段3により、停止したガス器具に関して特定されるガス流量が継続して検出される場合には、内部配管aを遮断することにより、該当するガス器具に供給されるガスを止めてもよい。
なお、ガスメータ100としては通常、ガスの供給を遮断するために遮断器4および運転監視手段5が設けられているが、ガス器具がオフされたことを器具情報記憶手段12に保持する目的で足りる場合にはこれらは必須ではない。
このように、器具識別手段11が特定器具であると判定すると継続監視タイマTkがスタートし、ステップ変化検出手段15が所定時間内にステップ変化を検出した場合は、継続監視タイマTkをリセットして再びステップ変化の出現を監視する。図6は、2つの異なるガス器具について、継続監視タイマとステップ変化量との関係を示す。ガス器具ごとに異なる点火流量QAmaxおよびQBmaxが規定されている。さらに、それぞれのガス器具について、比率Xが所定の範囲内であるかどうかが判定され、さらに、ステップ変化条件が満たされているかどうかが判定される。全ての条件が満たされたと判定されると、継続監視タイマTkがリセットされる。
以上のように、本実施の形態においては、器具使用後のステップ変化を監視することで、正確な器具使用状況を把握することができる。
なお、器具ごとによってステップ変化の条件を変える設定としてもよい。例えば、ファンヒータの場合、点火する際は最大流量で着火する構成となっており、着火後は所定時間経過後に温度調整用の制御動作が行われる。この温度調整用の制御動作は、最大から最少までを複数段階の流量値によって制御する構成であり、緩やかな流量変化や階段状の流量変化が発生する。このような流量変化を検出し得るステップ変化の条件を設定してもよい。
(実施形態2)
本実施形態は、図1に示す遮断器4および運転監視手段5の処理に関する。これらは、実施形態1による処理(図4)の前に動作する。なお、本実施形態にかかるガスメータの構成は、図1に示すガスメータ100と同じである。したがって、本実施形態にかかるガスメータの構成として、図1に示すガスメータ100を参照しながら説明する。
図7は、本実施の形態における器具識別の動作手順を示すフローチャートである。図7から明らかなように、図7の処理が行われた後、図4に示すフローチャートの処理が行われる。
図1に示す運転監視手段5は、流量区分に応じた継続使用時間を監視し、異常時に遮断器4に遮断信号を出力する。この処理は、保安精度を高めるために行われている。「流量区分」とは、ガス器具の最大流量ごとに定められる区分である。流量区分に応じて、ガス器具が継続して使用された場合に許容される最長の使用時間が、法令、規格などによって予め決められている。
たとえば、運転監視手段5は、最大流量と流量区分とが対応付けられたテーブルAと、流量区分と最長の使用時間とが対応付けられたテーブルBとを保持している。実施の形態1において説明したように、器具識別手段11は、識別したガス器具の最大流量を特定している。ガス器具の最大流量が特定されると、運転監視手段5はテーブルAを参照して流量区分を特定し、テーブルBを参照して最長の使用時間を特定する。運転監視手段5は、継続使用時間が最長の使用時間を超えたか否かを監視することになる。
なお、ガスメータ100の運転が開始され、ガス流量が検出されると、器具識別手段11はその時点で利用されているガス器具を識別する。よって、その流量区分も特定される。
図7に示すフローチャートを説明する。
ステップS21において、流量演算手段3はガス流量を検出したか否かを判定する。ガス流量を検出すると処理はステップS22に移行する。
ステップS22において、器具識別手段11はガス器具を識別する。ガス器具の識別が完了すると、継続監視計時手段14は継続使用時間のカウントアップを行い、処理はステップS23に移行する。
ステップS23において、流量演算手段3は、ガスの継続使用時間が、既に識別されたガス機器の流量区分の継続安全使用時間以内であるか否か判定する。該当流量区分の継続安全使用時間は、たとえば家庭用、業務用などの流量区分に応じて予め定められた、継続的に使用しても安全であると判断される時間である。継続安全使用時間は、たとえば2時間であってもよいし、5時間であってもよい。継続安全使用時間以内であるならば処理は図4のステップS1に移行し、以後の説明は省略する。一方、継続安全使用時間以内でないならば処理はステップS24に移行する。
ステップS24において、器具識別手段11は、既に識別されていたガス器具が、予め定められた所定器具であるか否かを判定する。所定器具である場合には処理はステップS25に移行し、所定器具でない場合には処理はステップS26に移行する。「所定器具」は、たとえばガスコンロ、ファンヒータ、給湯器である。
ステップS25において、運転監視手段5は継続安全使用時間の設定値を上限値に変更し、継続安全使用時間の学習を行う。ここでいう「学習」とは、ガスメータ100がガス器具の遮断流量値を決定する処理を言う。
運転監視手段5は、継続安全使用時間の設定値を上限値(最大値)に変更するのみでもよい。ただし本実施形態では、たとえばファンヒータが利用されていない場合には、運転監視手段5は継続安全使用時間の設定値を最大値ではなく、それよりも小さい値を継続安全使用時間の設定値として利用する。運転監視手段5が、ファンヒータの利用頻度を特定し、その結果に基づいてガス器具の遮断流量値を最大値よりも低い値に決定する処理が学習である。
ステップS26において、運転監視手段5は遮断器4に内部配管aを閉塞する指令の送信(遮断出力)を行う。
このように、運転監視手段5は、ガス器具に応じた継続安全使用時間を監視することで、保安精度を高めることができる。
以上のように、本実施の形態においては、正確な器具使用状況を把握するだけでなく、ガス器具に応じた保安機能を設定することで、不要遮断を減らし高精度にガス器具の運転状況を監視することができる。
図7に示す処理では、運転監視手段5は、継続使用時間が、継続安全使用時間内であるか否かを判定した。しかしながら、使用時間に代えて、流量値を用いることも可能である。具体的には、図7のステップS22、S23、S25を以下のように変更すればよい。
すなわち図7のステップS22において、流量演算手段3は、継続使用流量の累積値を計算する。そしてステップS23において、流量演算手段3は、継続的に使用している流量値が、継続的に使用しても安全であると予め定められた流量値(継続安全使用流量値)以内であるかどうかを判定すればよい。さらに、ステップS25において、運転監視手段5は、継続安全使用量の上限を設定すればよい。
なお、継続安全使用時間を上限値に設定する処理は1度のみ実行されればよい。繰り返し上限値に設定されることを回避して安全を担保するためである。流量が一旦ゼロに戻り、再度ステップS24で所定器具であると判定された場合には、上限値に設定することが可能になる。
上述の処理で、「所定器具」は、予め定められた流量区分で、かつ、予め定められた器具である、という条件に変更してもよい。器具毎に柔軟に適用するためである。
(実施形態3)
図8は、本実施形態によるガスメータ200の構成例を示す。図8に示す構成が図1と相違する点は、図8のガスメータ200には、図1に示される遮断器4および運転監視手段5が設けられておらず、また流量積算手段20が設けられていることである。
流量積算手段20は、ガス器具ごとにガス流量値を積算する。これは、ガス器具毎に流量を管理することを意味し、ガスメータとしての機能を高めていると言える。
図9は、本実施の形態における器具識別の動作手順を示すフローチャートである。図9において、図4と同一動作を示す手順には同一番号を付し説明は省略する。
以下では、図1と相違するステップであるステップS31〜S34を説明する。
ステップS31において、器具識別手段11は使用器具が所定器具であるか否かを判定する。所定器具である場合は、ステップS32に移行し、所定器具でない場合は、ステップS1に移行する。ステップS32において、流量積算手段20は該当器具の器具流量を積算する。
また、ステップS6において、器具識別の結果が特定器具の場合は、ステップS33に移行し、流量演算手段3は、点火流量Qmaxを器具流量として登録する。
また、ステップS34において、該当器具のステップ変化が現れたときは、ステップ変化検出手段15は、器具流量の更新を行う。
このように、流量積算手段20は、特定ガス器具の流量値を積算することで、ガスメータとしての機能を高めている。
以上のように、本実施の形態においては、正確な器具使用状況を把握するだけでなく、ガス器具に応じた積算機能を付与することで、様々なサービスを展開できるような高機能なガスメータを提供することができる。
次に、図10を参照しながら、実施の形態1に係る処理の変形例を説明する。
図10は、図4に示すフローチャートの変形例を示す。図10の処理は、図7中の遷移先である図4に代えて採用することができる。また、図10において図4と相違する処理を、図9に反映させてもよい。
図10と図4との間で相違する処理は、図4のステップS11に代えてステップS41を設け、さらにステップS42〜S44を追加したことである。以下、ステップS41〜S44の処理を説明する。図4および図10において同じステップ番号が付された処理の説明は省略する。
ステップS41では、ステップ変化検出手段15がステップ変化カウンタをインクリメントする。ステップ変化カウンタとは、たとえばステップ変化検出手段15がレジスタ等の記憶手段(図示せず)を用いて実現するカウンタである。ステップ変化カウンタの初期値は0である。ステップ変化検出手段15は、ステップS10におけるステップ変化を検出したタイミングで、たとえば1ずつインクリメントする。よって、ステップ変化カウンタが0でない値を示している場合には、ステップS10のステップ変化があったことを示す。
ステップS42において、ステップ変化検出手段15は、ステップ変化カウンタの値が0か否かを判定する。0の場合には処理はステップS13に進む。0ではない場合には処理はステップS43に進む。
ステップS43において、継続監視計時手段14は、カウントをリセットするステップ変化検出手段15からの要求の受信に応答して、継続監視タイマTkをリセットする。その後処理はステップS44に進む。
ステップS44は、ステップS13の処理の後、およびステップS43の処理の後に行われる。ステップS13は、ガス器具がオフと判定され、ガス器具の運転が停止されたことを示す情報が器具情報記憶手段12に記憶される処理である。ステップS43の処理は、ステップ変化検出手段15が継続監視計時手段14に対して継続監視タイマTkのカウントをリセットする要求を出力する処理である。
ステップS44において、ステップ変化検出手段15はステップ変化カウンタをリセットする。これによりステップ変化カウンタには初期値である0が設定される。なお、ステップS13はステップ変化カウンタが0の場合に行われる処理であるから、ステップS13の後にステップS44を設けず、ステップS43の後にのみステップS44を実行してもよい。
なお、ステップ変化カウンタの初期値が0であること、および1ずつインクリメントされることは一例に過ぎない。ステップ変化カウンタは、初期値と、初期値とは異なる値とを保持できればよい。
図10の処理によれば、タイマ一定時間経過前にステップ変化を検出できた場合、一定時間経過までステップ変化を監視しないよう動作させることも可能である。これにより、処理が軽減される。
図11は、ガスメータ100のハードウェア構成例を示す。ガスメータ100は、中央演算回路(CPU)110と、メモリ120と、流量計10と、遮断器4とを有している。なお、ガスメータ200に関しては、遮断器4を省略し、流量積算手段20に対応する処理をたとえばCPU110が行えばよい。以下、ガスメータ100を例に挙げて説明する。
CPU110は、メモリ120に格納されたコンピュータプログラム122を実行する。コンピュータプログラム122は、図4に示す処理が記述されている。CPU110は、ある時点では器具識別手段11として動作し、異なる時点ではステップ変化検出手段15として動作する。上述した他の手段についても同様である。またはCPU110は、見かけ上同時に上述の複数の手段として動作し得る。つまり、CPU110は、図1に示す運転監視手段5、器具識別手段11、継続監視計時手段14、ステップ変化検出手段15、比率算出手段16、比率判定手段17として動作し得る。なお、流量演算手段3(図1)は流量計10に含めているが、CPU110およびコンピュータプログラム122によって実現されてもよい。
メモリ120は、たとえばRAMであり、器具情報記憶手段12および点火流量記憶手段13に対応する。メモリ120は、器具情報および点火流量の情報を格納する。メモリ120は、器具特徴を記述したテーブルを格納していてもよい。なお、たとえば2つのメモリ120を設け、それぞれに器具情報および点火流量の情報を保存してもよい。