JP6473237B2 - イオン化装置およびそれを有する質量分析計 - Google Patents

イオン化装置およびそれを有する質量分析計 Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本願は、2014年12月16日付けのドイツ特許出願DE 10 2014 226 039.6の優先権を主張し、その開示全体を参照により本願の内容とする。
本発明は、イオン化装置、およびそのようなイオン化装置を有する質量分析計に関する。
質量分析では、高温フィラメントまたはグローワイヤを用いるイオン化(電子イオン化)のための標準的なプロセスを補完することが可能な、または応用例に応じてそれらに取って代わることが可能な、イオン化しようとするガス(下記でアナライトと称されることもある)をイオン化するための新規な手法が必要とされている。標準的なイオン化の欠点は、最大2000℃の高温であるフィラメントの高い周囲温度と、典型的には約70eVのイオン化エネルギーであり、このイオン化エネルギーは、大抵の応用例にとって、特に有機化学(たとえば、生命科学)において高すぎるものであり、フラグメントの生成、ならびに典型的には約10-4mbarを超える高い作業圧力の場合、フィラメントの「溶落ち」に通じる可能性があるフィラメントの非常に高い脆弱性に通じる。
DE 10 2007 043 333 A1は、低温大気プラズマ源内で生成される1次プラズマビームが、小さい直径を有する条件付けまたは検査対象のキャビティ内で生成されることになる2次プラズマビームのための点火源として使用される、構成要素を処理および検査するための方法を開示している。そのために、貴ガスが、構成要素のキャビティを通って1次プラズマ源の方向に案内される。ここで、1次プラズマ源によって点火される2次プラズマは、処理または検査対象の構成要素のキャビティ内で貴ガスのガス流方向に逆らって伝播する。
本発明の目的は、ガスの効率的なイオン化を可能にするイオン化装置およびイオン化装置を有する質量分析計を提供することである。
この目的は、1次プラズマ領域内でイオン化ガスの(電荷中性)準安定粒子および/またはイオンを生成するためのプラズマ生成装置と、2次プラズマ領域内でグロー放電を生成するためのフィールド生成装置と、イオン化しようとするガスを2次プラズマ領域内に供給するための入口と、イオン化ガスの準安定粒子および/またはイオンを2次プラズマ領域内に供給するためのさらなる入口とを備えるイオン化装置によって達成される。グロー放電の空間範囲について述べるとき、グロー放電は、下記でしばしばグロー放電ゾーンとも称される。本願の趣旨内で、2次プラズマ領域は、(2次)プラズマが形成されるグロー放電ゾーンそれ自体だけでなく、イオン化装置のハウジング内に形成され、たとえばグロー放電を生成するために電界を印加することができるグロー放電ゾーン周りの空間をも示す(下記参照)。
典型的には、マイクロプラズマ、特に典型的には約200℃未満の温度でのいわゆる「低温」マイクロプラズマが、プラズマ生成装置の1次プラズマ領域内で生成される。すなわち、プラズマを生成するためのフィラメントがなしですまされる。プラズマ生成装置は、特に、イオン化ガスの主に電荷中性準安定粒子または分子を、たとえば準安定貴ガス分子の形態、特に準安定ヘリウム分子の形態で生成するように構成され得る。第1に、これは、典型的には約20eVの領域内にあるエネルギーで、イオン化しようとするガス(アナライト)の穏やかなイオン化を可能にし、第2に、そのようなプラズマ生成装置はまた、高いアナライト圧力で非常にしっかりと確実に動作する。
イオン化ガスの準安定粒子/分子および/またはイオンは、2次プラズマ領域に、そのさらなる入口またはアパーチャを介して供給される。イオン化ガスの準安定粒子/分子および/またはイオンは、グロー放電ゾーン内でさらなる入口を介して供給することができるが、グロー放電ゾーンの外側の位置で、たとえば電界が典型的にはグロー放電を点火するための点火経路として印加される領域内で、イオン化ガスの準安定粒子/分子および/またはイオンを2次プラズマ領域に供給することも可能である(下記参照)。同様に、イオン化しようとするガスも、(第1の)入口の適切なアパーチャを介して2次プラズマ領域に供給される。イオン化しようとするガスの分子の一部は、イオン化ガスの準安定粒子/分子によってまたはイオンによって、電荷交換イオン化を介して、または衝突プロセスを介してイオン化される。
2次プラズマ領域内でフィールド生成装置によって生成されるグロー放電を介して、イオン化しようとするガスの追加の分子が特に効率的にイオン化される。グロー放電を生成するために、適切な(ガス)圧力が2次プラズマ領域内で設定される(下記参照)。2次プラズマ領域内でグロー放電を生成するために有利なものは、イオン化しようとするガスの、イオン化ガスのイオンとのまたは準安定粒子との衝突電離中に自由電子が作り出されることであり、この自由電子は、カスケード増倍またはアバランシェ効果により、アナライトガス内でより多くの自由電子を、グロー放電ゾーンの方向にそれらの経路上で連続して生成し、グロー放電ゾーン内で特に高いイオン化効率を可能にする。換言すれば、このプロセスにより、非常に高い電子密度がグロー放電ゾーン内にあることになる。
一実施形態では、フィールド生成装置は、2次プラズマ領域内でグロー放電を生成するために入口とさらなる入口との間に電界を生成するように構成される。電界は、入口からさらなる入口の領域に進む電子を加速するための加速経路または点火経路を形成する。2次プラズマ領域内でグロー放電ゾーンの方向に加速された電子は、高い運動エネルギーを有し、したがってイオン化しようとするガスの追加の分子を特に効率的にイオン化することができる。さらなる入口、より具体的にはさらなる入口のアパーチャを通って延びるさらなる入口の中心軸は、入口、より具体的には入口の中心軸に対して、したがってイオン化しようとするガスの伝播方向に、ある角度で、たとえば90°の角度で位置合わせされることが好ましい。入口の中心軸とさらなる入口の中心軸は、2次プラズマ領域内で、概してグロー放電ゾーン内またはグロー放電ゾーンの近傍で交差する。
一発展形態では、フィールド生成装置は、電界を生成するために、電圧源と、2つの電極とを有する。プラズマを生成するための点火経路または加速経路を形成する電界は、カソードとして働く第1の電極と、アノードとして働く第2の電極との間に電圧を印加することによって生成される。グロー放電ゾーンに向かって電子を加速するために、アノードとして働く電極は、典型的には、カソードとして働く電極よりグロー放電ゾーンに近くなるように配置される。電極間に印加される電圧は、典型的には、プラズマを点火するのに十分な点火電圧に対応する、すなわち、イオン化しようとするガスの分子のイオン化によってさらなる電子が生成され、それらのさらなる電子も同様に加速され、イオン化しようとするガスのさらなる分子をイオン化することが可能なカスケード増倍またはアバランシェ効果を可能にするほど大きくなるように選択される。
プラズマを点火するために必要とされる電圧は、電極間の所与の距離、および電極間の領域内の所与のガス圧力について、パッシェンの法則またはタウンゼントの式から決定することができる。ガス圧力と電極間の距離の積は、典型的には、イオン化しようとするそれぞれのガスについていわゆるパッシェンミニマムに達するように、すなわち、最小可能な点火電圧を選択することができるように選択される。
さらなる発展形態では、電界を生成するために、入口は第1の電極(カソード)を形成し、さらなる入口は、第2の電極(アノード)を形成する。このようにして、入口とさらなる入口との間の経路全体を、プラズマを点火するための加速経路としてまたは点火経路として使用することができる。任意選択で、電界を生成するために、入口およびさらなる入口から空間的に分離して配置される電極を使用することも可能であることを理解されたい。さらなる入口を第2の電極として使用する代わりに、またはそれに加えて、さらなる出口を、ガス、イオン化ガスの準安定粒子、および/またはイオン化ガスのイオンを2次プラズマ領域から送り出すために使用することも可能である。具体的には、間に2次プラズマ領域が形成されるさらなる入口とさらなる出口は、共に、電界を生成するために第2の電極として働くことができる。
さらなる発展形態では、電圧源は、第1の電極と第2の電極の間で50Vと5000Vの間の電圧を生成するように構成される。さらに上述のように、グロー放電またはプラズマを生成するために必要とされる点火電圧は、典型的には、電極間の固定された所定の距離、点火経路に沿ったガス圧力、およびイオン化しようとするガスに、特にそれぞれのガス原子またはガス分子のイオン化エネルギー、および平均自由行程長に依存する。後者は、とりわけ、ガス原子のサイズおよびその密度、ならびに温度に依存する。前述の領域内の電圧は、グロー放電を生成するのに概して十分なものである。
さらなる実施形態では、イオン化装置は、イオン化装置からイオン化されたガスを排出するための出口を備える。出口は、典型的には、入口から離れたグロー放電ゾーンの2次プラズマ領域の側に配置される。イオン化装置によって生成されるイオンまたはイオンビームは、たとえば質量分析計内で、イオン化されたガスを分析するように働くことができる。
しかし、イオン化装置によって生成されるイオンまたはイオンビームを、他の応用例に、たとえば電子ビームまたはイオンビームが検査対象の物体(試料)を走査する電子ビームまたはイオンビーム顕微鏡検査で(たとえば、ヘリウムイオン顕微鏡で)使用することも可能である。最初の場合には、たとえば検査対象の物体にて後方散乱されたイオン化装置の電子が、イオン化しようとするガス、たとえば貴ガス、特にヘリウム、または水蒸気と共に入口を介して供給されることが可能である。検出器(たとえば、光電増幅器または電荷増幅器)を、イオン化装置の出力に、たとえば接地電位または接地電位に近い低電位で下流に配置することができる。したがって、たとえばイオン化装置内でのイオン化しようとするガスの陽イオンの飛行よりはるかに長くなるように選択することができる電子の飛行の適切な設計の場合、驚くべきことに、後続の「低速の」イオン検出にもかかわらず、高い平均移動度を達成することが可能である。換言すれば、高い検出効率を、それに対応する試料からの後方散乱電子の高い信号帯域幅と共に、接地電位で動作する従来の検出器エレクトロニクスを使用して達成することができる。この場合、イオン化装置内の加速経路または点火経路は、電子によって生成される電子流を増幅するように、または電子流によって生成されるイオンをますます生成するように働く。電子流の利得は、点火経路の長さによって設定され得る。
2次プラズマ領域内の比較的高い圧力の結果として、出口を通過するイオンは、ほとんど運動エネルギーをもたず(低温プラズマ)、これは、出口の下流に配置されたイオン移送装置にとって有利であり、効率的なイオン移送を可能にする。出口は、イオン化されたガスおよび/またはイオン移送経路の圧力を低減するための単一(任意選択で複数)の圧力段を形成することができ、検出器または質量分析器がその下流に配置される。
さらなる実施形態では、フィールド生成装置は、さらなる入口と出口の間にさらなる電界を生成するように構成される。さらなる電界は、典型的には、電子のための点火経路を形成する電界に対して反対になるように導かれる。追加の電界により、2次プラズマ領域内で生成される正に帯電されたイオンが2次プラズマ領域から出口に、またはそこに形成されたアパーチャに加速され、イオン化装置を離れる。イオン化しようとするガスの大抵のイオンは、自由電子の密度がそこで最大であるため、点火経路の端部で、またはグロー放電ゾーン内で生成されるので、したがってイオンの大部分を出口を介してイオン化装置から排出することができる。
(第1の)電界を生成するために使用される第2の電極(カソード)もまた、さらなる電界を生成するために使用することができる。この電界は、この電極に、また出口の近傍に配置されるさらなる電極に電圧を印加することによって生成することができる。電圧突抜けのために使用される電圧は、サイズの点でほぼ同程度の大きさの点火電圧を有することができるが、さらに上述のように、突抜け電圧は、点火電圧に対して反対の符号を有する。
一発展形態では、出口は、さらなる電界を生成するためのさらなる電極を形成する。この場合、イオン化されたガスのイオンは、特に単純な形で出口に向かって加速され得る。好ましくは、さらなる電極を形成する出口は、接地される、すなわちグランド電位(0V)で配置される。この場合、検出器は、たとえばイオン化装置を電子顕微鏡またはイオン顕微鏡内で使用するとき、グランド電位にあることができ、これは、単純かつ強力な増幅器設計を(たとえば、荷電増幅器またはフォトダイオード増幅器の形態で)実現するのに有利であると判明している。また、イオン化装置を質量分析計内で使用するとき、出口をグランド電位にすることが有利となり得る。
さらなる有利な実施形態では、イオン化装置の入口、2次プラズマ領域、および出口は、共通の見通し線に沿って配置される。これは、イオン化装置のコンパクトな配置を実現するのに有利である。しかし、分子ビームが使用される場合と異なり、見通し線に沿った配置は、本イオン化装置にとって必須ではない。一定のイオン収量を実現するためには、実質的に一定の静圧(中間圧力)が、2次プラズマ領域内、理想的には入口と出口の間の見通し線に沿った空間全体内で優勢である場合、有利であることが判明している。
一発展形態では、イオン化装置はさらに、イオン化しようとするガスもしくはすでに一部イオン化されたガス、イオン化ガスの準安定粒子および/またはイオン化ガスのイオンを2次プラズマ領域から送り出すためのさらなる出口を有する送出し装置を備える。さらなる出口は、過剰なガスを2次プラズマ領域から送り出すように働く。このようにして、2次プラズマ領域内で実質的に一定の圧力を生成することが可能であり、この圧力は、実質的にアナライトガス分子によって引き起こされる。実質的に一定のイオン収量の生成は、実質的に一定の圧力によって確保され得る。さらに上述のように、さらなる出口を有する送出し装置もまた、さらなる入口の代わりに、またはそれに加えて、入口とグロー放電ゾーンの間で電界を生成するための第2の電極として働く。
一発展形態では、さらなる入口およびさらなる出口は、さらなる見通し線に沿って配置される。具体的には、さらなる見通し線は、入口と出口の間の見通し線に対して直角に配置することができる。2次プラズマ領域、典型的にはグロー放電ゾーンは、さらなる入口とさらなる出口の間に形成される。この場合、さらなる入口およびさらなる出口は、電子を加速するための、または入口とグロー放電ゾーンの間でプラズマを生成するための電界を形成するために同じ電位にされる(第2の)電極として働くことができる。
さらなる実施形態では、フィールド生成装置は、2次プラズマ領域内で少なくとも1つの磁界を生成するように構成される。2次プラズマ領域内で印加される磁界、特に時間依存性の磁界は、たとえば「電子サイクロトロン共鳴」(ECR)効果によって、または「誘導結合プラズマ」(ICP効果)によってイオン化を増幅することができる。たとえば、プラズマに対して適切に作用する、または後者を増幅する時間依存性の電界は、時間依存性の磁界を使用することによって生成することができる。イオン化磁界は、1つもしくは複数の永久磁石を介して、または1つもしくは複数のコイルを介して結合させることができ、これは、たとえばコイルと同じ位置で印加することができる。磁界(電磁界)は、2次プラズマ領域内で、そこで増幅された、または目標を定めた形でイオン化に影響を及ぼすことができるように優勢でなければならない。
また、プラズマまたはグロー放電ゾーンは、少なくとも1つの磁界を用いてイオン化装置内で、たとえば、これらがイオン化しようとするガスのための入口に、または他の開口(アパーチャ)に、たとえば出口の方向に目標を定めて変位されるおかげで、または、イオン化装置内の特定の領域内で、そこでイオン化しようとするガスの分子を可能な最も高い効率でイオン化するために、または出口への、および任意選択で出口に隣接する測定セルへのイオン搬送を可能な最も効率的な形で設計するために、これらが集中されるおかげで、目標を定めて変位することができる。この手順を異なるアナライトのために目標を定めて使用し、イオン化効率を高めることもできる。すなわち、イオン化しようとするガスのタイプに応じて、その少なくとも1つの磁界に影響を及ぼす、またはその磁界を修正することができる。時間依存性のイオン化磁界もまた、アナライトの測定手順中に、測定セル内で、または検出器内で目標を定めて修正または移動させることができ、これは、イオン化を増大する、またはイオンの測定セル内へのより効率的な搬送をもたらすことがある。
さらに上述のように、特に交番磁界の形態での少なくとも1つの磁界は、イオン化効率を高めるために、または後者に目標を定めて影響を及ぼすために、所望の形態で生成することができる。一発展形態では、フィールド生成装置は、見通し線に沿って、またはさらなる見通し線に沿って位置合わせされる磁界、すなわち見通し線に沿って、またはさらなる見通し線に沿って延び、そこで対称軸を有する磁界を生成するように構成される。
さらなる実施形態では、イオン化装置は、イオン化しようとするガスを2次プラズマ領域内に供給する前にイオン化しようとするガスを処理するために、イオン化装置の1次入口と入口との間に配置されるチャンバをさらに備える。イオン化しようとするガスは、そのガスが入口から2次プラズマ領域内に排出される前にチャンバ内で処理することができる。イオン化しようとするガスは、様々な方法で処理することができる。
たとえば、チャンバ内ではイオン化しようとするガスが圧力低下され得る。すなわち、チャンバは、イオン化装置の外側の(真空)環境内で1次環境圧力を低減するために、たとえば差動的にポンピングされるチャンバとして、またはバルブを介してポンピングされる(律動的に送られる)チャンバとして働き、この環境圧力は、たとえば約1バールと200バールの間程度のものとすることができる。1次環境圧力に応じて、チャンバ内の圧力低下は、より小さいアナライト圧力でイオン化を実施することができるように、単純な圧力段を介して、または直列で配置された複数の圧力段を介してもたらすことができる。第1に、これはイオン化中およびイオン化後、アナライトの大きな化学反応性を低減し、第2に、不変のイオン化条件を確保する。
また、1次入口の上流に配置された(真空)環境から入るイオン化しようとするガスの温度が、チャンバに隣接する入口内で固定された所定の最大動作温度を超えないことを確実にするために、チャンバ内に熱デカップリングがあることができる。熱デカップリングは、断熱(金属/セラミック移行)、受動冷却(たとえば、冷却体による対流)、能動冷却(たとえば、空冷または水冷)などによってもたらすことができる。
それに加えて、または代替として、イオン化しようとするガスを2次プラズマ領域に供給するのに適した組成に変換するために、チャンバ内で外来ガス抑制、粒子フィルタリング、および/または粒子処理を実施することも可能である。粒子処理または粒子フィルタリングは、たとえば機械的または磁気的に実施することができる。
さらなる実施形態では、1次プラズマ領域内の圧力が2次プラズマ領域内の圧力より大きい。これは、1次プラズマ領域からのイオン化ガスの準安定粒子および/またはイオンをさらなる入口を通じて2次プラズマ領域に移送することができ、この目的のためにポンプなどを提供することは必要でないので有利である。
有利な発展形態では、1次プラズマ領域内の圧力は、100mbarと1000mbarの間にある。そのような圧力が優勢であるプラズマ生成装置は、一般にフィラメント(加熱カソード)を有していない。なぜなら、たとえばタングステンまたはイリジウム製であるフィラメントが、一般に、約10-4mbar未満の圧力より下方でしか使用可能でなく、耐用年数が短いからである。さらに、加熱カソードまたはフィラメントを使用するとき、たとえば約2000℃を超える非常に高い温度が一般に生成される。
上記で指定されている圧力範囲内で動作するプラズマ生成装置を使用すると、イオン化ガスの1次プラズマ(マイクロプラズマ)を、加熱カソードによるものとは異なるようにして−たとえば、下記でさらに述べるようにして生成することが可能である。そのようなプラズマ生成装置は、異なる圧力でさえ、非常に確実に動作する。いわゆる「低温プラズマ」が10℃〜200℃の比較的低い温度で生成される場合、主に1次プラズマ領域内で電荷中性準安定分子を生成することが可能であり、これらの準安定分子は、1次プラズマ領域から2次プラズマ領域に放出される。イオン化ガスは、低いガス静圧を2次プラズマ領域内で設定することができるようにプラズマ生成装置によって直ちに再び送り出される。
さらなる発展形態では、2次プラズマ領域内の圧力は、0.5mbarと10mbarの間にある。そのような(静)圧力レベルは、2次プラズマを生成するために有利であると判明している。さらに上述のように、2次プラズマ領域内の圧力は、実質的にアナライトによって生成される。送出し装置は、過剰なガス、特に過剰なアナライトガスを2次プラズマ領域から送り出し、したがって実質的に一定の圧力を2次プラズマ領域内で生成するように働く。
(実質的に)一定の圧力を2次プラズマ領域内で生成するために、開ループおよび/または閉ループ制御装置をイオン化装置内に配置することができる。開ループおよび/または閉ループ制御装置は、入口に配置された、たとえばマイクロ秒ピエゾ駆動のマイクロバルブの形態での(マイクロ)バルブを、たとえば作動させることができる。たとえば、圧力調節は、(マイクロ)バルブの複数の開動作によって、たとえばガスパルス幅変調によって、2次プラズマ領域の差動的送出しと組み合わせて達成することができる。一般に、2次プラズマ領域内の圧力を設定点値に調節するために、1次プラズマ領域内、2次プラズマ領域内、および/または送出し装置の領域内の圧力を測定するための少なくとも1つの圧力センサが開ループおよび/または閉ループ制御装置に割り当てられる。
さらなる実施形態では、プラズマ生成装置のイオン化ガスは、(好ましくは純粋な)貴ガス、特に小さい分子サイズを有するヘリウムである。Ar、Kr、または酸素(O2)など他のイオン化ガス、たとえば貴ガスの使用もまた可能である。たとえば、プロセス条件を適切に選択した場合、アナライトの穏やかなイオン化を可能にする実質的に準安定のヘリウム分子を1次プラズマ領域内で形成することができる。プラズマ生成装置は、律動的に送られるプラズマ動作を可能にするために、チョッパを備えてもよい。しかし、本明細書に記載の応用例では、一般に、イオン化ガスの準安定粒子および/またはイオンの実質的に一定の体積流量が2次プラズマ領域に供給される場合、有利である。貴ガスをイオン化ガスとして使用するとき、特にヘリウムをイオン化ガスとして使用するとき、生成されるイオンの部分に対する生成される準安定粒子(たとえば、準安定ヘリウム分子)の部分が特に高くなる。たとえば、ヘリウムを使用するとき、生成される準安定粒子の数は、生成されるイオンの数より104または105倍大きくなる可能性があり、その結果、プラズマ生成装置は、事実上、1次プラズマ領域内で準安定粒子のみ生成する(すなわち、事実上、イオンなし)。
さらなる実施形態では、プラズマ生成装置は、コロナ放電プラズマ生成装置および誘電体バリア放電プラズマ生成装置を含むグループから選択される。具体的には、プラズマ生成装置は、大気圧プラズマ源として構成することができ、すなわち、約100mbarと1barの間の、さらに上記で指定されている圧力範囲内の圧力が装置内で優勢となり得る。たとえば、大気圧プラズマを生成する目的のためにコロナ放電を生成するために、無線周波数放電を2つの電極間で点火させることができる。電極の一方は、プラズマ生成装置の内部に配置することができ、一方、第2の電極は、イオン化ガスの準安定粒子および/またはイオンを2次プラズマ領域内に供給するためにハウジングまたはさらなる入口を形成する。さらなる入口は、典型的には、準安定粒子および/またはイオンを2次プラズマ領域内に供給するために開口(アパーチャ)を有する。
さらに上述のように、たとえばヘリウムをイオン化ガスとして使用することができるが、異なる圧力で、他のガスでの動作もまた可能である。プラズマ生成装置から流出する、たとえばヘリウムの形態でのイオン化ガスの量は、プラズマ生成装置内、およびプラズマ生成装置の外側、たとえば2次プラズマ領域内の圧力条件によって、またさらなる入口の開口(アパーチャ)の直径によって指定される。開口(アパーチャ)の直径は、たとえば、1μmと100μmの間の範囲内にあることができるが、他の直径も可能である。
上述のプラズマ生成装置は、無線周波数誘電体バリア放電を生成するように修正され得る。このタイプの励起では、複数の火花放電の形態でプラズマを生成し、したがって電極間に位置するガス流をイオン化するために、誘電体バリアとして働く(薄い)誘電体が、電極間に位置する。
非導電性構成要素、特に誘電構成要素を使用し、プラズマを特定の体積に制限することもできる。たとえば、対応するアパーチャを有するさらなる非導電性ストップ、特に誘電体ストップを、第1の電極と、第2の電極の開口(アパーチャ)との間に配置することができる。しかし、これはプラズマ生成装置の基本機能にとって必須ではない。非導電性材料、特に誘電材料によるプラズマ生成装置内のプラズマのさらなる境界も同様に有利となり得る。
イオン化ガスまたはイオン化ガス混合物をイオン化するために、無線周波数プラズマの代わりに、プラズマ生成装置内で中間周波数プラズマまたはDCプラズマを生成することも可能であり、同様に「低温プラズマ」を上記で指定されている圧力範囲内で生成することができる。
また、プラズマ生成装置が、イオン化ガスをイオン化するためにUV放射を生成するためのUV放射源を有することも可能である。この場合、光強度損失を回避することができ、UV放射による非常に効率的なイオン化を達成することができるように、イオン化ガスをもイオン化されるプラズマ生成装置のチャンバ内でUV放射を直接生成してもよい。具体的には、UV放射源、たとえばUVランプによって生成されるUV放射をチャンバ内に、窓を通じて案内する必要はなく、放射強度における損失に関連付けられることになる偏向装置によらなくてもよい。さらに、従来のUVランプは、一般に、短い耐用年数しかなく、比較的大きい。
非常に穏やかなイオン化をUV放射によってもたらすことができる。なぜなら、その比較的大きな有効断面積により、たとえば約18〜24eVの比較的低いイオン化エネルギーを有するイオンまたは準安定粒子は、たとえば70eVでのたとえば電子衝突電離の場合(下記参照)より著しく良好なイオン化効率を有するからである。
イオンを生成するためのさらなる選択肢は、たとえば「低温」電子銃の形態での1つまたは複数の電界エミッタまたは電界エミッタアレイを、電子衝突電離を実施するためのイオン化装置として使用することからなる。フィラメントとは対照的に、電界エミッタは、ほとんど無制限の耐用年数を有し、したがってフィラメントより著しく長く使用することができる。これは、特に酸化雰囲気内(たとえば、酸素雰囲気内)での使用の場合、または、たとえば約10-4mbar超に圧力が予期せず増大する場合に有利である。さらに、カソードまたはフィラメントを加熱することとは対照的に、電界エミッタは低い温度を有し、その結果、フィラメントの場合に生じる温度問題を電界エミッタの使用によって完全に解決することができる。電界エミッタは、集束された、または有向電子ビームを生成するように構成され得る。加速された電子の運動エネルギーを設定する、または変えることを可能としてもよい。
プラズマによって生成される準安定粒子またはイオン、おそらくはプラズマ、その反応生成物、および放射、たとえばUV放射によって生成されるさらなる粒子、ならびにプラズマそれ自体は、開口(アパーチャ)を通ってプラズマ生成装置またはさらなる入口を離れ、2次プラズマ領域内でアナライトをイオン化することができる。したがって、典型的なイオン化機構は、衝突誘導イオン化、イオンと天然粒子の間の電荷交換、準安定粒子によるイオン化、化学イオン化、光イオン化、特にUV放射によるイオン化などである。
本発明のさらなる態様は、さらに上述のようなイオン化装置と、イオン化されたガスの質量分析のためにイオン化装置の出口の下流に配置された検出器とを備える質量分析計に関する。検出器は、出口にすぐ隣接することができるが、イオン移送装置および/または1つまたは複数の圧力段が出口と検出器の間に配置されることも可能である。さらに上述のように、本明細書に記載のイオン化装置は、質量分析計での使用に制限されず、たとえば電子ビーム顕微鏡検査において電子もしくは電子流を検出するためにイオンを生成するために、またはイオンビーム顕微鏡検査のためのイオンビームを生成するために、他の応用例にも適用することができることが有利である。
本発明のさらなる特徴および利点は、本発明に不可欠な詳細を示す図面内の図に基づいて、本発明の例示的な実施形態の以下の説明から、また特許請求の範囲から明らかになる。個々の特徴は、それら自体で、または本発明の一変形形態において共に任意の組合せでそれぞれ実現することができる。
例示的な実施形態が、概略図に示されており、後続の説明において述べられる。
1次プラズマ領域内でプラズマを生成するためのプラズマ生成装置を有し、2次プラズマ領域内でグロー放電またはプラズマを生成するための加速経路を有するイオン化装置の概略図である。 イオン化しようとするガスを処理するための追加のチャンバを有し、2次プラズマ領域内で磁界を生成するためのフィールド生成装置を有する、図1aと同様の図である。 コロナ放電プラズマ生成装置の形態での、図1a、図1bからのプラズマ生成装置の例示的な実施形態の図である。 ガス圧力および電極間隔の関数としての、プラズマの点火電圧のパッシェン曲線の図である。 イオン化装置内で生成されるイオン化しようとするガスのイオンのシミュレーションによる軌道の概略図である。
等価の、または機能的に等価の構成要素に対して、同一の符号が図面の以下の説明において使用される。
図1aは、イオン化しようとするガス3を供給するための入口2を備えるイオン化装置1を概略的に示し、前記ガスは、環境圧力puが優勢である、図1aにはそれ以上詳細に示されていない環境に由来する。入口2と下記の(さらなる)入口および出口は内部を有するハウジングまたはハウジング部を意味するものと理解され、その内部では、ガス−この場合、イオン化しようとするガス3−が周囲から遮蔽されて供給される。イオン化装置1それ自体が、その内部を環境から分離するためにハウジング(ここでは図示せず)を有することを理解されたい。
また、イオン化装置1は、さらなる入口5内に収容されるプラズマ生成装置4を備える。プラズマ生成装置4は、図2と共に下記でより詳細に述べるように、たとえばヘリウムの形態で存在し得るイオン化ガス6の準安定粒子6aおよび/またはイオン6bを生成するように働く。
図2は、さらなる入口5を示し、さらなる入口5は、図の例では実質的に(円形の)円筒形実施形態を有し、その平坦な端部側壁には、開口(アパーチャ)5aが形成され、そこをイオン化ガス6の準安定粒子6aおよび/またはイオン6bが通過することができる。図の例では、プラズマ生成装置4は、コロナ放電プラズマ生成装置として構成され、さらなる入口5の内部で中央に配置された棒状電極7を有する。さらなる入口5は、プラズマ生成装置4のさらなる電極を形成し、プラズマ生成装置4は、ロッド電極7と電極として働くさらなる入口5との間で交番する無線周波数電界を生成するためにRF電圧源8を有する。
プラズマは、1次プラズマ領域9内で、直接さらなる入口5の開口(アパーチャ)5aにて、プラズマ生成装置4により生成することができ、その結果、イオン化ガス6の準安定粒子6aおよび/またはイオン6bを直接、すなわちイオン輸送装置なしで、さらなる入口5の開口(アパーチャ)5aを通じて2次プラズマ領域10に供給することができる。プラズマ生成装置4は、必ずしもさらなる入口5内で一体化される必要はなく、たとえばイオン光学系などの形態での好適なイオン輸送装置が、準安定粒子6aおよび/またはイオン6bを輸送するために存在する限り、さらなる入口5から空間的に分離されて配置することもできることを理解されたい。
イオン化ガス6は、特にヘリウムとすることができるが、他の貴ガス、たとえばArもしくはKr、または他のガス、たとえば酸素(O2)もまた、イオン化ガス6として働くことができる。具体的には、ヘリウムをイオン化ガス6として使用することは、典型的には約20eVの領域にあるエネルギーで、イオン化しようとするガス(アナライト)の穏やかなイオン化を可能にする。ここでの有利な効果は、ヘリウムをイオン化ガス6として使用するとき、生成される準安定粒子6a(準安定ヘリウム分子)の部分が、生成されるヘリウムイオン6bの部分より著しく大きく(約104または105倍)なることである。
図2と共に述べるプラズマ生成装置4では、1次プラズマ領域9内の(静)圧力p1は、典型的には約100mbarと1000mbarの間にあり、そのため、図のプラズマ生成装置4は、大気圧プラズマ生成装置とも呼ばれる。1次プラズマ領域9内の静圧p1は、さらなる入口5の外側に位置する2次プラズマ領域10内の静圧pより大きい。2次プラズマ領域10内の(静)圧力pのための典型的な値は、約0.5mbarと約10mbarの間にある。単位時間当たり排出される準安定ヘリウム粒子またはヘリウム分子の数は、プラズマ生成装置4内、または1次プラズマ領域9内および2次プラズマ領域10内の圧力条件によって、ならびにさらなる入口5のアパーチャ5aの直径Dによって決定される。たとえば、アパーチャ直径Dは、約1μmと100μmの間の値範囲内にあるものとすることができるが、アパーチャ直径Dは、より大きくてもより小さくてもよい。また、プラズマ生成装置4は、ポンプ装置(ここでは図示せず)を有することができ、ポンプ装置は、2次プラズマ領域10、および2次プラズマ領域10内に設定された1次プラズマ領域9内より低い(ガス)圧力pに達しないようにイオン化ガス6、たとえばヘリウムを直ちに再び送り出す。
図2に示されているプラズマ生成装置4の特殊性は、さらなるストップ11がさらなる入口5の平坦な端部側に配置され、そこにアパーチャ5aが形成されており、そのさらなるストップは、非導電性、たとえば誘電材料から製造され、プラズマまたは1次プラズマ領域9をさらなる入口5の内部に実質的に制限するように働くことである。非導電性、より具体的には誘電材料製のさらなる構成要素を、入口5の内部、またはプラズマ生成装置4内に配置することもでき、1次プラズマのための、または1次プラズマ領域9のための制限として使用することができることを理解されたい。
図2に示されているプラズマ生成装置4の代わりに、イオン化装置1内の異なるタイプのプラズマ生成装置4、たとえばUV放射によって、または異なる方法でプラズマを生成してもよいプラズマ生成装置4を使用することも可能である。プラズマ生成装置4が比較的大きな静圧で(マイクロ)プラズマを生成することができる場合、および前記装置が約200℃以下にある温度で「低温プラズマ」を生成するように構成されている場合、有利であることが判明している。
さらなる入口5を通じて2次プラズマ領域10に供給される準安定粒子もしくは粒子6aおよび/またはイオン6bは、入口2によって供給されたイオン化しようとするガス3をイオン化するように働き、このイオン化しようとするガスもまた、下記でアナライトと呼ばれる。イオン化しようとするガス3の分子の少なくとも一部(ガスとは、本願の趣旨内でガス混合物をも意味するものと理解される)が、イオン化ガス6の準安定粒子6aおよび/またはイオン6bによって2次プラズマ領域10内でイオン化され、その結果、イオン化しようとするガス3のイオン3a’(下記でイオン化されたガス3a’とも呼ばれる)が2次プラズマ領域10内で生成される。イオン化しようとするガス3の分子は、たとえば電荷交換イオン化、衝突誘導イオン化などによってイオン化ガス6の準安定粒子6aまたはイオン6bによりイオン化することができる。
1次プラズマ領域9から供給される準安定粒子6aおよび/またはイオン6bによるガス3のイオン化に加えて、2次プラズマ領域10内で、グロー放電12またはグロー放電ゾーン(図1a、図1b参照)、すなわち2次プラズマ領域10内の(2次)プラズマのものによって、ガス3のイオン化されたものが生成される。ここでは、自由電子が2次プラズマ領域10内で形成されるようにガス3の分子の少なくとも一部が衝突プロセスによってイオン化される場合、有利であることが判明している。2次プラズマ領域10内でグロー放電12を生成するために、イオン化装置1は、図の例では入口2とさらなる入口5およびさらなる出口14との間でグロー放電12を生成するために電界Eを生成するように構成されるフィールド生成装置13を有し、さらなる出口14は、イオン化しようとするガス3の伝播の方向(X方向)に対して直交する方向(Y方向)でさらなる入口5と同じ高さで配置される。そのために、フィールド生成装置13は電圧源15を有し、電圧源15は、第1の電極(カソード)として働く入口2と、さらなる入口5とに、またさらなる出口14に接続される。さらなる入口5およびさらなる出口14は、同じ電位にあり、したがって第2の電極5、14(アノード)を形成する。電圧源15は、入口2からの電子をグロー放電ゾーン12の方向に、すなわちさらなる入口5の、またはさらなる出口14の方向に加速する方向で電界Eを生成するように構成される。ここでは、電子は、X方向に延びる加速点火経路dに沿って、すなわちイオン化しようとするガス3の伝播方向に沿って加速される。
点火経路dの長さは、入口2と、さらなる入口5の、そのアパーチャ5aを通って中心に延びる中心軸との間の距離、および入口2と、さらなる出口14の、その開口(アパーチャ)14aを通って中心に延びる中心軸との間の距離に対応する。たとえば、点火経路dの長さは、約10mmと数センチメートルとの間にあるものとすることができる。電圧源15を用いて生成される電圧Vおよび入口2とさらなる入口5またはさらなる出口14との間の中間空間内の(準静的)圧力pは、典型的には一定の長さの点火経路dの場合、いわゆるパッシェンミニマムVM、すなわちイオン化しようとする所与のガス種について点火電圧Vのための最低可能な値にほぼ達するように選択される(図3参照)。点火経路に沿って自由電子のカスケード増倍があり、それらの自由電子は、電界Eの臨界(正)電界強度が2次プラズマ領域10内で超えられるようにイオン化ガス6によるイオン化中に生成され、その臨界電界強度は、グロー放電12またはグロー放電ゾーンの形成に必要とされる。典型的には、グロー放電12を生成するために必要とされ、電圧源15によって供給される電圧Vは、約50Vと約5000Vの間にある。電圧源15は、イオン化装置1をイオン化しようとする異なるガス3またはガス種に適合させるために電圧Vを設定するように構成することができることを理解されたい。
2次プラズマ領域10内のグロー放電12は、イオン化しようとするガス3の追加の分子の特に効率的なイオン化に通じる(下記でイオン3aまたはイオン化されたガス3aと呼ばれる)。イオン化ガス6によってイオン化されるガス3a’は、出口16、より具体的にはそこに形成されたアパーチャ16aに、グロー放電12によってイオン化されたガス3aと共に供給される。図1aに示されている例では、イオン化されたガス3a、3a’の質量分析検査のために構成された検出器17が出口16に隣接する。検出器17と共に、イオン化装置1は、質量分析計20を形成する。
イオン化されたガス3a、3a’を出口16に変位させるために、フィールド生成装置13は、第1の電極としてのさらなる入口5およびさらなる出口14と、さらなる(第2の)電極として働く出口16との間にさらなる電界E’を生成するように構成される。さらなる電界E’は、イオン化しようとするガス3の伝播方向(X方向)で(第1の)電界Eに対して反対に導かれる。電圧源15は、さらなる入口5およびさらなる出口14と、出口16との間にさらなる電圧V’を印加することによってさらなる電界E’を生成するように働く。イオン化されたガス3a、3a’の正に帯電されたイオンは、さらなる電界E’によって出口16に向かって加速される。ここで、イオン3a、3a’は、たとえば約10mmとすることができるさらなる加速経路d’に沿って加速される。イオン化されたガス3a、3a’の最も多くの部分が、カスケード増倍経路の端部で、すなわちグロー放電ゾーン12内で、そこに存在する自由電子の最大密度のために生成されるので、大抵のイオン化されたガス3a、3a’は、出口16に向かって流し出され得る。
可能な限り一定であるイオン流を検出器17に供給するために、2次プラズマ領域10内で、または入口2と、さらなる入口5およびさらなる出口14との間の点火経路dに沿って、圧力pを可能な限り一定に保つことが有利である。これを達成するために、さらなる出口14は、制御可能なバルブ18を介して送出し装置19(真空ポンプ)に接続され、送出し装置19は、イオン化しようとするガス3、およびイオン化ガス6の準安定粒子6aおよび/またはイオン6bを2次プラズマ領域10から送り出すように働く。バルブ18および送出し装置19は、開ループおよび閉ループ制御装置21に接続され、開ループおよび閉ループ制御装置21は、2次プラズマ領域10内の圧力pを一定の設定点値に調節する。
これを達成するために、開ループおよび閉ループ制御装置21は、2次プラズマ領域10内の圧力pを直接、またはおそらくは間接的に決定することを可能にする1つまたは複数のセンサ(ここでは図示せず)、特に圧力センサに接続され得る。また、開ループおよび閉ループ制御装置21は、イオン化しようとするそれぞれのガス種に適合された点火電圧Vが、電界Eを生成するために生成され、または適切に適合された突抜け電圧V’がさらなる電界E’を生成するために生成されるようにフィールド生成装置13を作動させるように働く。
図1aに示されているイオン化装置1では、入口2の開口(アパーチャ)2aの中心、2次プラズマ領域10、またはグロー放電ゾーン12を通って延びる入口2の中心軸と、出口16のアパーチャ16aの中心を通って延びる出口16の中心軸が共通の見通し線22に沿って配置される場合、有利であることが判明している。また、さらなる入口5のアパーチャ5aの中心、2次プラズマ領域10、またはグロー放電ゾーン12を通って延びるさらなる入口5の中心軸と、さらなる出口14のアパーチャ14aの中心を通って延びるさらなる出口14の中心軸がさらなる共通の見通し線23に沿って配置される場合、有利であることが判明している。さらなる共通の見通し線23は(第1の)共通の見通し線に対して直交して延びる場合、有利である。なぜなら、この場合、さらなる入口5およびさらなる出口14が、イオン化しようとするガス3の伝播方向に対して直交する方向(Y方向)で配置されるからである。
図1bは、実質的に図1aに示されているように構成されるイオン化装置1を有する質量分析計20を示す。図1aに示されている例とは対照的に、イオン化しようとするガス3を入口2の前で、したがって2次プラズマ領域10の前で処理するように働くチャンバ25が、イオン化しようとするガス3のための入口2と、イオン化しようとするガス3がイオン化装置1内に入るための1次入口24(アパーチャ24aを有する)との間に配置される。イオン化しようとするガス3は、チャンバ25内で様々な方法で処理することができる。
たとえば、チャンバ25内でイオン化しようとするガスの圧力低下があり得る。すなわち、チャンバ25は、イオン化装置1の外側の環境内で1次圧力puを低減するために、たとえば差動的にポンピングされる圧力段として、または−図1bに示されているように−バルブ26を介してポンピングされる(律動的に送られる)圧力段として働き、この1次圧力puは、たとえば約1barと200barの間程度のものとすることができる。1次圧力puに応じて、チャンバ25内の圧力低下は、イオン化しようとするガス3のより小さい圧力pでのイオン化を実施することができるように、単一の圧力段によりもたらすことができ、またはチャンバ25内で直列に配置された複数の圧力段によってもたらされてもよい。
また、1次入口24の上流に配置された環境から入るイオン化しようとするガス3の温度が、チャンバ25に隣接する(2次)入口2内で固定された所定の最大動作温度を超えないことを確実にするために、チャンバ25内に熱デカップリングがあることができる。熱デカップリングは、断熱(金属/セラミック移行)、受動冷却(たとえば、冷却体による対流)、能動冷却(たとえば、空冷または水冷)などによってもたらすことができる。
それに加えて、または代替として、イオン化しようとするガス3を2次プラズマ領域10に供給するのに適した組成に変換するために、チャンバ内25で外来ガス抑制、粒子フィルタリング、および/または粒子処理を実施することも可能である。粒子処理または粒子フィルタリングは、たとえば機械的または磁気的に実施することができる。
図1bに示されている例示的な実施形態では、フィールド生成装置13はさらに、2次プラズマ領域10内で第1および第2の時間依存性の磁界M1、M2を生成するように構成される。図の例では、フィールド生成装置13は、第1の見通し線22に沿って位置合わせされる第1の磁界M1を生成するように構成される。すなわち、第1の磁界M1の対称軸は、見通し線22に沿って(X方向で)延びる。フィールド生成装置13は、第1の磁界M1を生成するために第1および第2のコイル27a、27bを有する。フィールド生成装置13は、さらなる見通し線23に沿って位置合わせされる第2の磁界M2を生成するようにも構成される。すなわち、第2の磁界M2の対称軸は、さらなる見通し線23に沿って(Y方向で)延びる。フィールド生成装置13は、第2の磁界M2を生成するために2つのさらなるコイル28a、28bを有する。フィールド生成装置13は、2次プラズマ領域10内に存在する磁界M1、M2に適切に影響を及ぼすために、コイル27a、27bを通じて、またさらなるコイル28a、28bを通じて電流を設定するように、または開ループおよび閉ループ制御装置21を介してこれを制御/調節するように構成される。磁界M1、M2は、図1bに示されているものとは異なる位置合わせを有することもできることを理解されたい。また、フィールド生成装置13は、時間変化磁界の生成に加えて、または代替として、2次プラズマ領域10内で1つまたは複数の時間一定磁界を生成するように構成されてもよい。そのために、フィールド生成装置13は、1つまたは複数の永久磁石を有することができる。
磁界M1、M2は、たとえば「電子サイクロトロン共鳴」(ECR)効果によって、または「誘導結合プラズマ」(ICP効果)によって、2次プラズマ領域10内でイオン化を増幅することができる。時間依存性の磁界M1、M2を生成することによって、プラズマを増幅する2次プラズマ領域10内の時間依存性の電界を生成することが可能である。それぞれのイオン化磁界M1、M2は、コイル27a、27bによって、またはさらなるコイル28a、28bによって生成することができる。典型的には、2次プラズマ領域10内でグロー放電12を生成するためのフィールド生成装置13は、電界Eまたはさらなる電界E’を生成するために、図1aに示されている電圧源15をさらに有する。
プラズマ、より具体的にはグロー放電ゾーン12は、イオン化装置1内で、1つまたは複数の磁界M1、M2を用いて、目標を定めて変位させることもできる。たとえば、第1の磁界M1、または第1の磁界M1の磁界強度の最大は、入口2の方向で、イオン化しようとするガス3の分子がそこで最も高い可能な効率でイオン化されるようにグロー放電12をも変位させるために、コイル27a、27bを通る適切な電流により、入口2の方向で見通し線22に沿ってシフトさせることができる。出口16の方向に第1の磁界M1を変位させることは、可能な限り効率的な出口16への、および出口16に隣接する検出器17へのイオン化されたガス3a、3a’の搬送を設計するように働くことができる。
第1の磁界M1(また、第2の磁界M2の)変位は、イオン化しようとするガス3またはイオン化しようとするガス種がイオン化装置1または開ループおよび閉ループ制御装置21にとって既知である限り、これらに基づいてもたらすことができる。時間依存性の磁界または磁界M1、M2もまた、検出器17内でのイオン化されたガス3a、3a’の測定プロセス中、目標を定めて修正または移動させ、イオン化効率の増大および/または検出器17内のイオン化されたガス3a、3a’のより効率的な搬送をもたらすことができる。
図4は、加速経路dに沿ってカスケード増倍によって、またはグロー放電12によって生成されるイオン化しようとするガス3のイオン3aの、ならびにイオン化ガス6の準安定粒子6aおよび/またはイオン6b(図4には図示せず)との電荷交換または衝突電離によって生成されるイオン化しようとするガス3のイオン3a’のシミュレーションによる軌道を示す。物事を単純にするために、入口2は、0Vの電位でY方向に延びる平坦な格子状の電極としてシミュレーションされた。さらなる入口5およびさらなる出口14は、+1kVの電位でY方向に延びる格子状(穴)の電極としてシミュレーションされた。出口16もまた、0Vの電位でY方向に延びる格子状(穴)の電極としてシミュレーションされた。接地または出口16の電位を0Vに設定することは、この場合、検出器17をもグランド電位にすることができるので、有利であることが判明している。しかし、出口16の電位は、たとえば−100以下の領域内の他の(正または負の)値をとることができることを理解されたい。シミュレーションによる電極の範囲は、図4に破線の矩形によって示されている。
図4から明確にわかるように、カスケード増倍により、自由電子30の数が、入口2から進んでグロー放電ゾーン12の方向で著しく増大し、その結果、イオン化しようとするガス3の多数のイオン3aがそこで生成され、これらのイオンは、さらなる電界E’により出口16の方向で加速される。加速経路dに沿ってすでにイオン化されており、電界Eによって、その正電荷により入口2の方向に加速され、したがって検出器17内での分析に使用可能でないイオン化しようとするガス3のイオン3bの軌道も同様に、図4内で識別することができる。イオン化しようとするガス3のイオン3a、3a’は、出口16へ加速され、検出器17内で共に分析される。
上記のイオン化装置1の使用は、質量分析計20だけに制限されず、イオン化装置1によって生成されるイオン3a、3a’はまた、イオン3a、3a’またはイオンビームが必要とされる他の装置、たとえば電子ビーム顕微鏡またはイオンビーム顕微鏡において有効に使用することができる。たとえば、電子ビーム顕微鏡における検査対象の物体で散乱される電子を、入口2を介して、イオン化しようとするガス3、たとえばヘリウムまたは水蒸気と共にイオン化装置1内に導入することができる。入口2を介して供給される電子は、点火経路dに沿って、イオン化しようとするガス3をイオン化するように働き、プロセス内で生成されるイオン化しようとするガス3のイオン3aの数は、イオン化装置1内に入る電子の数、または電子流に依存する。イオン3a、3a’によって生成される電流またはイオン3a、3a’によって生成される電荷を測定するために、たとえばグランド電位にある、またはグランド電位に近い低電位にある検出器17(たとえば、光電増幅器または電荷増幅器)を、イオン化装置1の出力の下流に配置することができる。ここでは、イオン化装置1内の加速または点火経路dは、電子によって生成され検出器17によって検出されるイオン流を増幅するように働く。イオン化装置1によって生成される利得は、点火経路dの長さ、およびイオン化ガス6の供給される準安定粒子6aまたはイオン6bの数によって設定または調整することができる。

Claims (19)

  1. 1次プラズマ領域(9)内でイオン化ガス(6)の準安定粒子(6a)および/またはイオン(6b)を生成するためのプラズマ生成装置(4)と、
    2次プラズマ領域(10)内でグロー放電(12)を生成するためのフィールド生成装置(13)と、
    イオン化しようとするガス(3)を前記2次プラズマ領域(10)内に供給するための入口(2)と、
    前記イオン化ガス(6)の前記準安定粒子(6a)および/または前記イオン(6b)を前記2次プラズマ領域(10)内に供給するためのさらなる入口(5)と
    を備えるイオン化装置(1)であって、
    前記ガス(3)、前記イオン化ガス(6)の前記準安定粒子(6a)および/または前記イオン化ガス(6)の前記イオン(6b)を前記2次プラズマ領域(10)から送り出すためのさらなる出口(14)を有する送出し装置(19)をさらに備え、
    前記さらなる入口(5)および前記さらなる出口(14)は、さらなる見通し線(23)に沿って配置される、イオン化装置。
  2. 前記フィールド生成装置(13)が、前記2次プラズマ領域(10)内で前記グロー放電(12)を生成するために前記入口(2)と前記さらなる入口(5)との間に電界(E)を生成するように構成される、請求項1に記載のイオン化装置。
  3. 前記フィールド生成装置(13)が、前記電界(E)を生成するために、電圧源(15)と、2つの電極(2;5,14)とを有する、請求項2に記載のイオン化装置。
  4. 前記電界(E)を生成するために、前記入口(2)が第1の電極を形成し、前記さらなる入口が第2の電極を形成する、請求項3に記載のイオン化装置。
  5. 前記電圧源(15)が、前記第1の電極(2)と前記第2の電極(5、14)の間で50Vと5000Vの間の電圧(V)を生成するように構成される、請求項3または4に記載のイオン化装置。
  6. 前記イオン化装置(1)からイオン化されたガス(3a、3a’)を排出するための出口(16)をさらに備える、請求項1から5までのいずれか1項に記載のイオン化装置。
  7. 前記フィールド生成装置(13)が、前記さらなる入口(5)と前記出口(16)の間にさらなる電界(E’)を生成するように構成される、請求項6に記載のイオン化装置。
  8. 前記出口(16)が、前記さらなる電界(E’)を生成するためのさらなる電極を形成する、請求項7に記載のイオン化装置。
  9. 前記イオン化装置(1)の前記入口(2)、前記2次プラズマ領域(10)、および前記出口(16)が、見通し線(22)に沿って配置される、請求項6から8までのいずれか1項に記載のイオン化装置。
  10. 前記フィールド生成装置(13)が、前記2次プラズマ領域(10)内で前記さらなる見通し線(23)に沿って位置合わせされる磁界(M1、M2)を生成するように構成される、請求項に記載のイオン化装置。
  11. 前記フィールド生成装置(13)が、前記2次プラズマ領域(10)内で少なくとも1つの磁界(M1、M2)を生成するように構成される、請求項1から10までのいずれか1項に記載のイオン化装置。
  12. 前記フィールド生成装置(13)が、前記見通し線(22)に沿って位置合わせされる磁界(M1、M2)を生成するように構成される、請求項11に記載のイオン化装置。
  13. 前記イオン化しようとするガス(3)を前記2次プラズマ領域(10)内に供給する前に前記イオン化しようとするガス(3)を処理するために、前記イオン化装置(1)の1次入口(24)と前記入口(2)との間に配置されるチャンバ(25)をさらに備える、請求項1から12までのいずれか1項に記載のイオン化装置。
  14. 前記1次プラズマ領域(9)内の圧力(p)が前記2次プラズマ領域(10)内の圧力(p1)より大きい、請求項1から13までのいずれか1項に記載のイオン化装置。
  15. 前記1次プラズマ領域(9)内の前記圧力(p1)が、100mbarと1000mbarの間にある、請求項14に記載のイオン化装置。
  16. 前記2次プラズマ領域(10)内の前記圧力(p)が、0.5mbarと10mbarの間にある、請求項14または15に記載のイオン化装置。
  17. 前記プラズマ生成装置(4)の前記イオン化ガス(6)が貴ガスである、請求項1から16までのいずれか1項に記載のイオン化装置。
  18. 前記プラズマ生成装置(4)が、コロナ放電プラズマ生成装置および誘電体バリア放電プラズマ生成装置を含むグループから選択される、請求項1から17までのいずれか1項に記載のイオン化装置。
  19. 請求項1から18までのいずれか1項に記載のイオン化装置(1)と、イオン化されたガス(3a、3a’)の質量分析のために前記イオン化装置(1)の出口(16)の下流に配置された検出器(17)と
    を備える質量分析計(20)。
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