以下、図面等を用いて本発明を実施するための形態を説明する。尚、本発明を実施するための形態としては、様々な形態(様々な構成や、様々な材料)がある。しかし、複数の柱状晶(以下、第一の結晶相と呼ぶ)と、複数の第一の結晶相のそれぞれの側面を覆う結晶相(以下、第二の結晶相と呼ぶ)とを備え、第一の結晶相のそれぞれがペロブスカイト型酸化物材料を有し、第二の結晶相がアルミナを有する点は共通する。また、第一の結晶相のそれぞれを構成する材料は、第二の結晶相を構成する材料よりも屈折率が高く、高屈折率相である第一の結晶相内で発生した光のうち、低屈折率である第二の結晶相との界面で全反射する条件を満たす角度で入射した光は全反射される。その結果、全反射された光は第一の結晶相内を導波しながら進む。第一の結晶相は柱状晶であるため、光の導波は、柱状晶の延伸方向に向けて行われる。換言すると、シンチレータ結晶体内で生じた光の少なくとも一部は、第一の結晶相内に閉じ込められながら、広がることなく、第一の結晶相の延伸方向に向けて進行するといえる。一度度全反射された光は、構造欠陥や柱の大きな曲がりがない限り、第一の結晶相からは漏れずに導波される。
以下、各実施形態について説明をする。各実施形態では、このような相分離シンチレータ結晶体において、発光強度が大きく、且つ、残光も少ないシンチレータ結晶体の組成について説明する。
(実施形態1)
本実施形態では、第一の結晶相が、GdとTbを共に含有するペロブスカイト型酸化物材料を有するシンチレータ結晶体について説明をする。
[シンチレータ結晶体の構成]
図1に本実施形態のシンチレータ結晶体19の模式図を示す。
本実施形態のシンチレータ結晶体19は、複数の第一の結晶相11と、第一の結晶相11の側面を覆う第二の結晶相12とを有する相分離構造を有する。第一の結晶相11を構成する柱状晶の形状は、円柱形に限らず、種々の形状から構成され、例えば多角形を構成してもよい。また、第一の結晶相の直径13は、300nm以上30μm以下の範囲内であることが好ましい。すなわち、発生した光は、第一の結晶相11と第二の結晶相12との界面で反射しながら光検出器に到達するが、この時、光の波長よりも構造周期が小さい場合は光が反射せずに透過してしまう成分が多くなってしまう。そのため、第一の結晶相11の直径は発生する光の波長よりも大きいことが望ましい。本実施形態のシンチレータは、300nmからの紫外域に発光を有し、この光を光検出器で検出することもあるため、第一の結晶相11の直径は300nm以上であることが望ましい。また、第一の結晶相の直径13が光検出器の1画素よりも大きくなってしまうと、1画素内に光を閉じ込める効果が低下してしまうため、第一の結晶相の直径13の上限値は1画素のサイズよりも小さいことが望ましい。ここで、1画素のサイズは任意の大きさのものを用いることが可能である。本実施形態では、画素サイズが大きい場合には30μm角の画素サイズを有する光検出器を用いる場合があるため、第一の結晶相の直径13が30μm以下であることが望ましい。一方、第一の結晶相の最近接距離14は、第一の結晶相の直径13に対応して決定される。第一の結晶相の最近接距離14が大きい程、第一の結晶相の占有体積が小さくなってしまう。一方、最近接距離14が小さ過ぎると、隣接する第一の結晶相がくっついてしまい、柱状構造を維持できずラメラ状構造となってしまう。よって第一の結晶相の占有体積が30%以上60%以下とすることが好ましい。この場合、第一の結晶相の直径14の最近接距離14に対する比率は、およそ60%以上80%以下となる。例えば、第一の結晶相の直径13が上限値の30μmである場合は、第一の結晶相の最近接距離14がおよそ38μm〜50μmであることが望ましい。また第一の結晶相の直径13が下限値の300nmである場合は、第一の結晶相の最近接距離14がおよそ380μm〜500nmであることが望ましい。以上より、第一の結晶相11の直径は、300nm以上30μm以下の範囲内であることが好ましく、空隙の最近接距離14の平均距離は380nm以上50μm以下の範囲内であることが好ましい。
ただし、本実施形態のシンチレータ結晶体19と検出器とを組み合わせた場合、こうした光検出器の受光部領域上に複数の第一の結晶相が対向して配置されるような画素サイズの光検出器をシンチレータ結晶体とを組み合わせることが好ましい。ここで、第一の結晶相の最近接距離14とは、隣り合う第一の結晶相の中心線を最短距離で結ぶ直線の距離をいう。例えば、受光部領域が正方で一辺が20μmであった場合、第一の結晶相の直径5μm、第一の結晶相の最近接距離の平均値8μmの構造サイズを有するシンチレータ結晶体を組み合わせると、1つの画素毎に第一の結晶相が10程度配置される。このように、受光部領域の大きさに応じて、受光部領域の大きさよりも小さい構造サイズを有するシンチレータ結晶体19を組み合わせることが好ましい。また、シンチレータ結晶体19の構造サイズは、シンチレータ結晶体19を構成する材料の選択や製造条件で決定されるものであり、それについては後述する。尚、光検出器として光検出器アレイを用いても良い。本発明及び本明細書では、光検出器アレイは光検出器の一種とみなす。
さらに、シンチレータ結晶体の厚さ15に関しては、製法にも依存するが、任意の厚さに調整することが可能である。実質的には、第一の結晶相は、第一の結晶相の第1の面17と第1の面と異なる第2の面18とを結ぶ方向(柱状晶の延伸方向16)に沿って連続していることが好ましい。しかしながら、第一の結晶相が、途中で途切れたり、枝分かれしたり、複数の結晶相が一体化したり、結晶相の直径が変化したり、しても良い。また、図中では、第1の面17と第2の面18とは対向しているが、対向していなくても良い。その場合、シンチレータ結晶体19で発生した光は、第1の面17もしくは、第2の面18へ導波される。但し、第1の面17と第2の面18とは、複数の第一の結晶相が露出し、且つ、第1の結晶相の2つの配列方向と交わる面とする。第1の面17と第2の面18とが対向する場合、第一の結晶相は直線的に連続していることが好ましいが、非直線部分が含まれていても良い。以下で述べる凝固界面の方向を適宜制御することで、第一の結晶相の延伸方向を決めることができる。
図1に示すような、複数の第一の結晶相11と第二の結晶相12とが分離した相分離構造を有するシンチレータ結晶体19は、複数の第一の結晶相と第二の結晶相との共晶体である。共晶により形成される相分離構造のことを、本明細書では共晶相分離構造と呼ぶ。共晶相分離構造を有するシンチレータ結晶体を取得するためには、第一の結晶相の材料と第二の結晶相の材料とを共晶組成近傍で混合し、一方向凝固を行うことで製造することができる。ペロブスカイト型酸化物材料とアルミナの共晶組成比は、46:54(mol%)であるため、第一の結晶相と第二の結晶相との組成比は、上記共晶組成比から±5mol%の範囲(つまり、41:59〜51:49(mol%)。但し、本明細書及び本発明において〜は、その左右の値を含むものとする。つまりこの場合、41:59と51:49(mol%)を含む。)にあることが好ましい。
上述のように、本実施形態において、複数の第一の結晶相のそれぞれは、GdとTbを共に含有するペロブスカイト型酸化物材料である。また、該第二の結晶相はアルミナ(Al2O3)である。ここで、シンチレータ結晶体の総物質量(第一と第二の結晶相の物質量の総量)に含まれるGd、Al及びTbの元素比率をそれぞれa、b、cとすると、元素比率が(a、b、c)=(0.174、0.795、0.031)、(0.207、0.756、0.037)、(0.213、0.775、0.012)、(0.194、0.795、0.011)を頂点とする三元組成図で囲まれる範囲にあると、発光量であるLightYield(LY)値が大きくなることが分かった。この組成範囲は、図2(a)に示される三元組成図で、A1、A2、A3、A4を頂点とする斜線領域の範囲で表わされる。更に、元素比率が(a、b、c)=(0.174、0.795、0.031)、(0.207、0.756、0.037)、(0.212、0.770、0.018)、(0.189、0.795、0.016)を頂点とする三元組成図で囲まれる範囲にあると、LY値が大きく、且つ、残像の原因となる残光レベルが小さくなることが分かった。この組成範囲は、図2(a)に示される三元組成図で、A1、A2、A5、A7を頂点とする範囲で表わされる。
これら2つの範囲は、Gdを含むペロブスカイト型酸化物材料とアルミナとの共晶相分離構造を有するシンチレータ結晶体にTbを添加すると、Tbが選択的にペロブスカイト型酸化物材料の相に取り込まれるという新たな知見に基づいて見出した範囲である。つまり、上記組成範囲において、第一の結晶相は、ペロブスカイト型酸化物材料であるGdAlO3のGdサイトの一部がTbで置換されたペロブスカイト型酸化物材料を構成している。置換したTb3+が発光中心として機能し、放射線の照射によってf−f遷移による発光を示す。上記組成範囲におけるLY値の最大値は約54,000であり、上記組成範囲(A1〜A4で囲まれる範囲)では、最大LY値のおよそ90%のLY値となる48,000以上が得られると考えられる。加えて、A1、A2、A5、A7で囲まれる組成範囲において、200ミリ秒後の残光レベルが0.5%以下になると考えられる。即ち、LY値が約48,000以上、かつ残光レベルが0.5%以下となる好ましい組成範囲として、上記組成範囲が規定される。この組成範囲で上記LY値と残光レベルが得られると考えられる理由については実施例1で詳細に説明をする。
第一の結晶相のそれぞれには、上記材料以外の材料が添加されてもよい。例えばCe3+が、第一の結晶相に対して0.001mol%以上1.0mol%以下添加されていてもよい。Ce3+を添加しない場合は、結晶育成の雰囲気によって、結晶が褐色に着色し、Tb3+の発光が吸収されて発光量が10%程度減衰してしまうことがある。一方で、Ce3+を0.001mol%以上微量添加することで結晶の着色が低減され、再吸収無く発光が取り出されるようになる為、発光量の低減を防ぐことができる。加えて、上記範囲のCe3+を微量添加することで、Tb3+のみで置換した場合に比べて、残光を0.3%程度に低減することが可能となる。しかしながら、Ce3+の添加量が多すぎるとペロブスカイト型酸化物材料の構造に影響を与える。ペロブスカイト型をとらない不純物の場合、1.0mol%以下であれば、結晶構造にほとんど影響を与えないため、Ce3+の添加量は1.0mol%以下であることが好ましい。
さらには、第一の結晶相はペロブスカイト型酸化物材料を構成するのであれば、Gdの一部が他の希土類元素(Y、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Dy、Ho、Er、Tm、Yb)で置換されていてもよい。Gdの一部が置換されている場合であっても、Gd、Al及びTbの元素比率が上記範囲内にあれば、LY値と残光レベルに与える影響は少ないと考えられる。同様に、第二の結晶相に、Gdやその他の希土類元素が添加されていてもよい。
本実施形態のように、GdAlO3のGdサイトがTb、で置換されたペロブスカイト型酸化物材料を第一の結晶相の材料に用いた場合、第一の結晶相のそれぞれは、放射線の照射によって励起され、発光を示す。第二の結晶相より高い屈折率を有する第一の結晶相のみが発光することが好ましいが、第一と第二の双方の結晶相が発光してもよい。
本実施形態の一方向性に沿って伸びる第一の結晶相を有する相分離構造のシンチレータ結晶体に関する重要な特性として、光を導波するということが挙げられる。本実施形態では第一の結晶相11がペロブスカイト型酸化物材料であり、第二の結晶相12を構成するアルミナ(Al2O3)に対して相対的に高い屈折率を有する。上記の第一の結晶相11と第二の結晶相12とを構成する材料系について、それらの屈折率および屈折率比(第二の結晶相の屈折率/第一の結晶相の屈折率)は1よりも小さくなる。
スネルの法則によれば、屈折率の異なる材質間では、光が高屈折率媒質から低屈折率媒質へある角度で入射すると、全反射が生じ、それより低角で入射すると、反射と屈折が生じる。したがって、本実施形態の相分離構造を有するシンチレータ結晶体において、屈折率比が生じているということは、光が高屈折率媒質から低屈折率媒質へ入射するときに生じる全反射により、光が広がらない状況があるということを示している。つまり、高屈折率媒質内を伝播する光が屈折や反射を繰り返し、低屈折率媒質に比べて高屈折率媒質の方が光を閉じ込めて伝播することになる。したがって、屈折率比(=低屈折率の結晶相の屈折率/高屈折率の結晶相の屈折率)が1より小さいことが望まれる。また、全反射条件のみを考慮すれば、屈折率比が小さいほど光は広がり難いことを表している。柱状晶をなす第一の結晶相が高屈折率であるために、第一の結晶相で発生した光は柱状晶の側面を埋めるマトリックスである第二の結晶相との界面で全反射を生じ、第一の結晶相の柱状内を伝播する。
このように、本実施形態の相分離構造を有するシンチレータ結晶体は、一方向性を有する複数の第一の結晶相の延伸方向に沿って光を導波させ、その延伸方向に垂直な方向に沿った散乱や反射のような光を導波させない特性を備えることが特徴である。よって、従来のように単結晶群から構成されるシンチレータに隔壁を設けることなく光のクロストークを軽減することができる。
[シンチレータ結晶体の製造]
本実施形態のシンチレータ結晶体を製造する方法は、所望の材料系を最適組成にて一方向性を持たせて熔融凝固する方法であればいずれの方法でも製造が可能である。特に、以下で述べるように、試料の固液界面がヒーターおよび/または試料の移動方向に垂直な面に沿って平らになるように試料の温度勾配を制御することが要求され、30℃/mm程度またはそれ以上の温度勾配があることが好ましい。ただし、結晶相内の結晶への熱応力によるクラックのような欠陥の発生を解消するために、本実施形態の各実施形態のシンチレータ結晶体の相分離構造の形成に支障のない範囲で温度勾配を低下させてもよい。また、すでにシンチレータ結晶体となった部分を溶融しない程度に再加熱してクラックのような欠陥の発生抑制・消滅をすることを行うことも望ましい。また、本実施形態のシンチレータ結晶体の相分離構造の共晶組織が形成可能な組成範囲は、前述のように共晶組成±5mol%である。この組成範囲と温度勾配と以下に述べる凝固速度との間には材料系固有の相間関係が成り立ち、いわゆるCoupled Eutectic Zoneと称される範疇で本実施形態のシンチレータ結晶体は製造されることが好ましい。
例えば、チョクラルスキー法のように融液からの結晶を育成する方法により製造可能である。さらに、フローティングゾーン法でも製造可能である。ブリッジマン法においては、凝固速度は試料の固液界面がヒーターおよび/または試料の移動方向に垂直な面に沿ってなるべく平面になるように設定されなければならないが、凝固時の試料と外部との熱のやり取りは試料側面からが主である。そのため、凝固速度は試料の直径に依存する。つまり、試料の直径が大きければ上記の熱のやり取りに時間がかかり、その場合に凝固速度を低速にしなければ、固液界面はかなり湾曲し、試料のほとんどの領域で第一の結晶相11である柱状晶が一方向に沿って非直線的に形成されることになる。これは、柱状晶の成長方向が固液界面にほぼ垂直であるからである。さらに、試料サイズに対して凝固速度がより速い場合には、固液界面が平坦でないだけでなく平滑に保つことができない。その結果、ヒーターおよび/または試料の移動方向に沿って微視的な起伏が生じ、樹枝状結晶の発生を伴う状況に至るので、こうした問題も避けることが重要である。従って、十分に固液界面の温度勾配を設定すると同時に、凝固速度を850mm/h以下で行うことが好ましい。
また、シンチレータ結晶体の第一の結晶相11の直径や第一の結晶相の最近接距離の周期の平均値は、凝固速度に依存し、特に最近接距離の周期に関しては次式の相関があるとされる。周期をλとし、凝固速度をvとすれば、λ2・v=一定である。したがって、所望の周期を設定すれば、必然的に凝固速度が制限される関係である。しかしながら、上記のように製法上の制限として固液界面を平坦かつ平滑に制御できる凝固速度を考慮し、周期λの平均値の範囲は380nm以上50μm以下の範囲となる。また、それに対応して、第一の結晶相の直径は300nm以上30μm以下の範囲となる。ここで、第一の結晶相の直径とは円形ではない場合も含まれ、例えば、不定形であればその最短直径が上記範囲に含まれるということである。また、多数の第一の結晶相の最長直径と最短直径との比から算出される平均比が10以下であることが好ましい。平均比が10よりも大きい場合では、ラメラ構造とするのが適切である。しかし、複数の第一の結晶相のうちのいくつかの比が10よりも大きい値であるとしても平均比が10以下であれば許容範囲である。また、製造条件上、2相の材料系の組成比がモル換算で1:1に近いほどラメラ構造を形成しやすいため、ラメラ構造を構成しないような製造条件や添加材料を選択することが好ましい。
次に、試料の原材料の仕込み組成について述べる。上述のように、本実施形態のシンチレータ結晶体におけるペロブスカイト型酸化物材料とアルミナの組成比は46:54(mol%)±5mol%である。しかしながら、仕込み組成に関してはこの範囲を逸脱しても構わない。つまり、試料全体を熔融した状態から一方向凝固させると、育成初期に共晶組成から逸脱している物質が先に析出することになり、その結果、残留する融液が共晶組成となるからである。そのため、育成初期に共晶組成から逸脱した物質を成長させ、融液が共晶組成になってから再度成長させることも好ましい。シンチレータ結晶体の製造後に不要部分は切り離せばよい。
尚、シンチレータ結晶体の組成は、例えば、100μm×100μmの範囲をSEMで組成分析することにより測定することができる。よって仕込み組成が上述の範囲を逸脱していても、シンチレータ結晶体自体の組成が上述の範囲にあれば所望のLY値や残光レベルが得られる。
[シンチレータ結晶体の利用]
本実施形態の相分離構造を有するシンチレータ結晶体は、光検出器と組み合わせることで医療用・産業用・高エネルギー物理用・宇宙用の放射線検出器として用いることが可能である。特に、本実施形態のシンチレータ結晶体は隔壁を設けずとも光の導波機能を有しているために、光検出器に向けて特定の方向に光を導波する必要がある状況に適用することが好ましい。また、隔壁形成が必要なX線CT装置での使用や、X線フラットパネルディテクタ(FPD)のCsI針状結晶の代替使用においても有効である。この場合、光検出器の受光感度特性に適合するように、シンチレータ結晶体の発光波長を、発光相への他材料の添加や発光中心物質の添加をすることで、調整することも可能である。
シンチレータ結晶体は、第1の面又は第2の面(つまり、複数の第一の結晶相が露出し、且つ、第一の結晶相の2つの配列方向と交差する面)が光検出器に対向するように配置される。このとき、第1面と第2の面とが対向する面であれば、複数の第一の結晶相が光検出器に対して概ね垂直に対向するように配置される。さらに、光検出器と本実施形態のシンチレータ結晶体との間には、保護層や反射防止のような機能を有した膜や層が配置され、これを介して接合または配置することが好ましい。
(実施形態2)
本実施形態では、第一の結晶相が、GdとEuを共に含有するペロブスカイト型酸化物材料を有するシンチレータ結晶体について説明をする。
本実施形態は、第一の結晶相のGdサイトの一部がTbではなく、Euで置換されている点が実施形態1と異なるが、その他の点は実施形態1と共通であるため、実施形態1と異なる点について説明をする。
また、本実施形態の第一の結晶相は、GdとEuを共に含有するペロブスカイト型酸化物材料である。また、第二の結晶相は、実施形態1と同様にアルミナである。加えて、シンチレータ結晶体の総物質量(第一の結晶相と第二の結晶相の物質量の総量)に含まれるGd、Al及びEuの元素比率をそれぞれd、e、fとすると、その値が(d、e、f)=(0.189、0.795、0.016)、(0.235、0.745、0.020)、(0.250、0.745、0.005)、(0.201、0.795、0.004)を頂点とする三元組成図で囲まれる範囲にある。この組成範囲は、図2(b)に示される三元組成図で、B1、B2、B3、B4を頂点とする斜線領域の範囲で表わされる。
更に、元素比率が(d、e、f)=(0.189、0.795、0.016)、(0.195、0.795、0.010)、(0.235、0.745、0.020)、(0.242、0.745、0.013)を頂点とする三元組成図で囲まれる範囲にあると、LY値が大きく、且つ、残像の原因となる残光レベルが小さくなることが分かった。この組成範囲は、図2(b)に示される三元組成図で、B1、B2、B8、B9を頂点とする範囲で表わされる。
この範囲は、Gdを含むペロブスカイト型酸化物材料とアルミナとの共晶相分離構造を有するシンチレータ結晶体にEuを添加すると、Euが選択的にペロブスカイト型酸化物材料の相に取り込まれるという新たな知見に基づいて見出した範囲である。つまり、上記組成範囲において、第一の結晶相は、ペロブスカイト型酸化物材料であるGdAlO3のGdサイトがEuで置換されたペロブスカイト型酸化物材料を構成する。この時、置換したEu3+が発光中心として機能し、放射線の照射によってf−f遷移による発光を示す。特に本実施形態では、上記組成範囲において、放射線照射による発光量であるLightYield値が大きく、残像の原因となる残光レベルが小さくなる最適な範囲となることを見出した。
B1〜B4を頂点とする組成範囲におけるLY値の最大値は約43,000であり、上記組成範囲では、最大LY値のおよそ90%のLY値となる38,500以上が得られると考えられる。一方、残光については、B1、B2、B8、B9を頂点とする組成範囲において、200ミリ秒後の残光レベルが0.5%以下になると考えられる。この組成範囲で上記LY値と残光レベルが得られると考えられる理由については実施例2で詳細に説明をする。
尚、Ce3+が、第一の結晶相に対して0.001mol%以上1.0mol%以下添加されると、結晶の着色による発光量の低下を低減できたり、残光レベルをより低くすることができたりするため好ましいことは、実施形態1と同様である。
さらには、第一の結晶相はペロブスカイト型酸化物材料を構成するのであれば、Gdの一部が他の希土類元素で置換されていてもよく、第二の結晶相に希土類元素が添加されていてもよいことも、実施形態1と同様である。
本実施例では、実施形態1のより具体的な例について説明する。
本実施例では、図2(a)の点線1上の組成について検討した結果を示す。点線1は、ペロブスカイト型酸化物材料とアルミナの組成比が46:54(mol%)である組成を表わしている。即ち、点線上のシンチレータ結晶体の組成は0<x<1として一般式[Gd1−xTbxAlO3]0.46[Al2O3]0.54として表わすことができる。特にGd、Al及びTbの元素比率に着目し、それぞれの元素比率をa、b、c(a+b+c=1)とすると、上述の通り、Tbは選択的にGdのサイトを置換するため、GdとTbの総和は一定となる。ペロブスカイト型酸化物材料:アルミナの組成比=46:54(mol%)の場合、GdとTbの総和がa+c=0.23であるのに対して、Alはb=0.77となる。よってそれぞれの比率は(Gd、Al、Tb)=(0.230−c、0.770、c)と表わすことができる。
そこでまず、(a、b、c)=(0.229、0.770、0.001)、(0.227、0.770、0.003)、(0.225、0.770、0.005)、(0.220、0.770、0.010)、(0.218、0.770、0.012)、(0.212、0.770、0.018)、(0.203、0.770、0.027)、(0.196、0.770、0.034)、(0.184、0.770、0.046)となるようにGd2O3とAl2O3とTb4O7の粉末を評量し、十分に混合した。この粉末をIrるつぼに入れて、誘導加熱によりるつぼを1700℃まで加熱して試料全体が溶解した後30分保持してから、36mm/hの速度で試料を育成した。このようにして作製したシンチレータ結晶体を1mm厚に切り出し、(a、b、c)=(0.218、0.770、0.012)となる試料の凝固方向に垂直な面を走査型電子顕微鏡(SEM)、光学顕微鏡、及びX線励起による発光スペクトルの評価を行った。
図3(a)にSEMによる成長方向断面の構造観察結果を示す。SEMによる組成分析よると、GdとTbを共に含有するペロブスカイト型酸化物材料が柱状晶の相(第一の相)を構成しており、この柱状晶が複数、Al2O3のマトリックス相(第二の相)に埋め込まれた構造となっていた。シリンダーの構造周期の平均値は約1.15μmであり、直径の平均値は約830nmであった。第一の結晶相の材料(GdとTbを共に含有するペロブスカイト型酸化物材料)の屈折率nが2.05、第二の結晶相の材料(Al2O3)の屈折率nが1.75である。
図4(a)に凝固方向に垂直な面の光学顕微鏡の透過像を示す。光は屈折率の高いシリンダー相を導光する為、光ファイバーのような導光特性を示し、シリンダー側が明るいスポットとして観察され、光伝播の異方性を確認することができた。
図5(a)にX線励起による発光スペクトルを示す。シリンダーを形成する第一の結晶相において、発光中心として機能するTb3+からのf−f遷移による鋭い緑色発光ピークを示し、シンチレータとして機能することが確認できた。一方、第二の結晶相であるAl2O3からの発光は観察されなかった。第一の結晶相で発生した光のうち、全反射の臨界角を満たすように放出された光はシリンダー内を導波する。一方、シリンダー中を全反射せずにマトリックス側に漏れた光は、屈折を受けながら結晶中を広がる光となる。
図6(a)にTb比率cとLightYield(LY)値との関係を示す。LYとは1MeVの放射線1フォトンがシンチレータに入射した際に発生する光のフォトン数(photons/MeV)で表わされる発光量の絶対値を表す値である。LYはセシウム137からの662keVのガンマ線を用いて生成された全光量を光電子増倍管で検出することで測定した。上記9つの試料のうち、Tbの元素比率がc=0.018、あるいはc=0.027である場合に、発光量が最大となり、そのLY値は約54,000であった。最大LY値のおよそ90%であるLY=48,000以上となる組成範囲をシンチレータの好ましい組成とすると、c=0.012〜0.034の範囲が好ましい範囲である。
加えて、シンチレータは残光が小さいことが好ましい。図7(a)にTbの元素比率cと200ミリ秒後の残光レベルの値との関係を示す。Tbの元素比率が増加すると残光は減少し、Tbの元素比率がc=0.018以上になると、残光レベルが0.5%以下となった。
以上より、a+c=0.23、b=0.77の場合、0.012≦c≦0.034であれば、LY値が約48,000以上得られることが分かった。この時のGd、Al及びTbの元素比率(a、b、c)は、図2(a)に示すA8:(0.218、0.770、0.012)からA6:(0.196、0.770、0.034)の組成となる。更に、0.018≦c≦0.034であれば、LY値が約48,000以上、かつ残光レベルが0.5%以下となり、高発光量と低残光を共に満たすため好ましい。この時のGd、Al及びTbの元素比率(a、b、c)は、図2(a)に示すA5:(0.212、0.770、0.018)からA6:(0.196、0.770、0.034)の組成となる。
以上のように、第一の結晶相としてGdとTbを共に含有するペロブスカイト型酸化物材料を用い、第二の結晶相としてアルミナ(Al2O3)を用いた、高発光量と低残光を共に満たす相分離シンチレータ結晶体を得られたことが確認できた。
上述のように、ペロブスカイト型酸化物材料とアルミナとの組成比は、46:54の±5mol%の範囲内にあればよい。ペロブスカイト型酸化物材料とアルミナとの組成比がこの範囲内であり、ペロブスカイト型酸化物材料とTbとの比率が、(0.23−0.012):0.012〜(0.23−0.034):0.034であれば、A6〜A8の組成の試料と同等のLY値が得られると考えられる。更に、ペロブスカイト型酸化物材料とTbとの比率が、(0.23−0.018):0.018〜(0.23−0.034):0.034であれば、A5〜A6の組成の試料と同等のLY値と残光レベルが得られると考えられる。
ペロブスカイト型酸化物材料とアルミナとの組成比が41:59(mol%)の場合、GdとTbの総和がa+c=0.205であるのに対して、Alはb=0.795となる。よってそれぞれの比率は(Gd、Al、Tb)=(0.205−c、0.795、c)と表わすことができる。a+c=0.205で、a:c=(0.23−0.012):0.012のとき、a=0.194、c=0.011である。また、a+c=0.205で、a:c=(0.23−0.034):0.034のとき、a=0.174、c=0.031である。この時のGd、Al及びTbの元素比率(a、b、c)は、図2(a)に示すA1:(0.174、0.795、0.031)からA4:(0.194、0.795、0.011)の組成となり、この範囲で、A6〜A8と同等のLY値が得られると考えられる。また、a:c=(0.23−0.018):0.018のとき、a=0.189、c=0.016であり、A1:(0.174、0.795、0.031)からA7:(0.189、0.795、0.016)の組成範囲で、A6〜A5と同等のLY値と残光レベルが得られると考えられる。
ペロブスカイト型酸化物材料とアルミナとの組成比が51:49(mol%)の場合、GdとTbの総和がa+c=0.255であるのに対して、Alはb=0.745となる。a+c=0.255で、a:c=(0.23−0.012):0.012のとき、a=0.242、c=0.013である。また、a+c=0.255で、a:c=(0.23−0.034):0.034のとき、a=0.217、c=0.038である。この時のGd、Al及びTbの元素比率(a、b、c)は、図2(a)に示すA11:(0.217、0.745、0.038)からA9:(0.242、0.756、0.013)の組成となり、この範囲で、A6〜A8と同等のLY値が得られると考えられる。また、a:c=(0.23−0.018):0.018のとき、a=0.235、c=0.020であり、A11:(0.217、0.745、0.038)からA10:(0.235、0.745、0.020)の組成範囲で、A6〜A8と同等のLY値と残光レベルが得られると考えられる。
以上のことから、Gd、Al及びTbの元素比率が上記A1、A2、A3、A4の4つの頂点で囲まれる範囲内にあれば、A6〜A8と同等のLY値が得られると考えられる。また、Gd、Al及びTbの元素比率が上記A1、A2、A5、A7の4つの頂点で囲まれる範囲内にあれば、A6〜A5と同等のLY値と残光レベルが得られると考えられるため、より好ましい。
尚、三元組成図において囲まれる範囲内とは、境界線上のことを含むものとし、例えば、A5はA1〜A4を頂点として囲まれる範囲内にあるものとする。
本実施例では、実施形態1のより具体的な例について説明をする。本実施例は、第一の結晶相にTbだけでなく、Ceを添加する点が実施例1と異なる。
まず、Gd、Al及びTbの元素比率(a、b、c)=(0.218、0.770、0.012)の組成に対して、Ce3+の濃度が第一の結晶相に対して0.01mol%、あるいは0.2mol%となるように、Gd2O3とAl2O3とTb4O7とCeO2の粉末をそれぞれ評量し、十分に混合した。また、比較の為Ce3+を添加していない原料も準備した。この粉末をIrるつぼに入れて、誘導加熱によりるつぼを1700℃まで加熱して試料全体が溶解した後30分保持してから、36mm/hの速度で試料を育成した。このようにして作製したシンチレータ結晶体を1mm厚に切り出し、X線励起による発光評価を行った。
図8に作製した試料の残光を示す。Ce3+未添加試料の200ミリ秒後の残光は、0.45%であった。一方、Ce3+の添加により残光は低減され、200ミリ秒後の残光は、Ce3+の濃度が第一の結晶相に対して0.01mol%添加、及び0.2mol%添加した試料では0.3%となった。このように、発光中心の第二元素としてCe3+を微量共添加することで残光を低減することが可能である。このような残光が低減される効果は、Ce3+の添加量が0.001mol%から1.0mol%の範囲で添加された場合に得られた。
また、Ce3+を微量添加した試料では、結晶の着色がない試料を作製でき、シンチレータ結晶内で発光した光の再吸収による発光量の低減を防ぐことができた。以上より、Ce3+を添加することは、残光を低減するだけでなく、結晶の着色による発光量の低下を防ぐことにも寄与する。
以上から、第一の結晶相としてCe3+が添加されたGdとTbを共に含有するペロブスカイト型酸化物材料を用い、第二の結晶相としてアルミナ(Al2O3)を用いた相分離シンチレータ結晶体が、発光強度が大きく、残光レベルが小さいことが確認できた。
本実施例では、実施形態2のより具体的な例について説明をする。
本実施例では、図2(b)の点線2上の組成について検討した結果を示す。点線2は、ペロブスカイト型酸化物材料とアルミナの組成比が46:54(mol%)である組成を表わしている。即ち、点線上のシンチレータ結晶体の組成は0<y<1として一般式[Gd1−yEuyAlO3]0.46[Al2O3]0.54として表わすことができる。特にGd、Al及びEuの元素比率に着目し、それぞれの元素比率をd、e、f(d+e+f=1)とすると、上述の通り、Euは選択的にGdのサイトを置換するため、GdとEuの総和は一定となる。ペロブスカイト型酸化物材料:アルミナの組成比=46:54(mol%)の場合、GdとTbの総和がd+f=0.23であるのに対して、Alはe=0.77となる。よってそれぞれの比率は(Gd、Al、Eu)=(0.230−f、0.770、f)と表わすことができる。
そこでまず、(d+e+f)=(0.228、0.770、0.002)、(0.227、0.770、0.004)、(0.225、0.770、0.005)、(0.223、0.770、0.007)、(0.221、0.770、0.009)、(0.219、0.770、0.011)、(0.214、0.770、0.016)、(0.207、0.770、0.023)、(0.184、0.770、0.046)、となるようにGd2O3とAl2O3とEu2O3の粉末を評量し、十分に混合した。この粉末をIrるつぼに入れて、誘導加熱によりるつぼを1700℃まで加熱して試料全体が溶解した後30分保持してから、36mm/hの速度で試料を育成した。このようにして作製したシンチレータ結晶体を1mm厚に切り出し、(d、e、f)=(0.214、0.770、0.016)となる試料の凝固方向に垂直な面を走査型電子顕微鏡(SEM)、光学顕微鏡、及びX線励起による発光スペクトルの評価を行った。
図3(b)にSEMによる成長方向断面の構造観察結果を示す。SEMによる組成分析よると、GdとEuを共に含有するペロブスカイト型酸化物材料が柱状晶の相(第一の相)を構成しており、この柱状晶が複数、Al2O3のマトリックス相(第二の相)に埋め込まれた構造となっていた。シリンダーの構造周期の平均値は約1.16μmであり、直径の平均値は約835nmであった。第一の結晶相の材料(GdとEuを共に含有するペロブスカイト型酸化物材料)の屈折率nが2.05、第二の結晶相の材料(Al2O3)の屈折率nが1.75である。
図4(b)に凝固方向に垂直な面の光学顕微鏡の透過像を示す。光は屈折率の高いシリンダー相を導光する為、光ファイバーのような導光特性を示し、シリンダー側が明るいスポットとして観察され、光伝播の異方性を確認することができた。
図5(b)にX線励起による発光スペクトルを示す。シリンダーを形成する第一の結晶相において、発光中心として機能するEu3+からのf−f遷移による鋭い赤色発光ピークを示し、シンチレータとして機能することが確認できた。一方、第二の結晶相であるAl2O3からの発光は観察されなかった。第一の結晶相で発生した光のうち、全反射の臨界角を満たすように放出された光はシリンダー内を導波する。一方、シリンダー中を全反射せずにマトリックス側に漏れた光は、屈折を受けながら結晶中を広がる光となる。
図6(b)にEu比率fとLightYield値との関係を示す。Euの元素比率がf=0.005〜0.012の範囲である場合に、発光量が最大となり、そのLY値は約43,000であった。ここで、最大LY値のおよそ90%のLY値となるLY=38,500以上となる組成範囲をシンチレータとして機能する好ましい組成とすると、f=0.004〜0.018の範囲が好ましい範囲である。
加えて、シンチレータは残光が小さいことが好ましい。図7(b)にEuの元素比率fと200ミリ秒後の残光レベルの値との関係を示す。Euの元素比率が増加すると残光は減少し、Euの元素比率がc=0.011以上になると、残光レベルが0.5%以下となった。
以上より、d+f=0.23、e=0.77の場合、0.004≦f≦0.018であれば、LY値が約38,500以上となることが分かった。この時のGd、Al及びEuの元素比率(d、e、f)は、図2(b)に示すB5:(0.226、0.770、0.004)〜B6:(0.212、0.770、0.018)の組成となる。更に、0.011≦f≦0.018であれば、LY値が約38,500以上、かつ残光レベルが0.5%以下となり、高発光量と低残光を共に満たすため好ましい。この時のGd、Al及びEuの元素比率(d、e、f)は、図2(b)に示すB7:(0.219、0.770、0.011)〜B6:(0.212、0.770、0.018)の組成となる。
以上のように、第一の結晶相としてGdとEuを共に含有するペロブスカイト型酸化物材料を用い、第二の結晶相としてアルミナ(Al2O3)を用いた、本実施形態の高発光量と低残光を共に満たす相分離シンチレータ結晶体が得られたことが確認できた。
上述のように、ペロブスカイト型酸化物材料とアルミナとの組成比は、46:54の±5mol%の範囲内にあればよい。ペロブスカイト型酸化物材料とアルミナとの組成比がこの範囲内であり、ペロブスカイト型酸化物材料とEuとの比率が、(0.23−0.004):0.004〜(0.23−0.016):0.016であれば、B7〜B8の組成の試料と同等のLY値が得られると考えられる。更に、ペロブスカイト型酸化物材料とEuとの比率が、0.23−0.011:0.011〜0.23−0.0164:0.016であれば、B5〜B6の組成の試料と同等のLY値と残光レベルが得られると考えられる。
ペロブスカイト型酸化物材料とアルミナとの組成比が41:59(mol%)の場合、(Gd、Al、Eu)=(0.205−f、0.795、f)と表わすことができる。d+f=0.205なので、d:f=(0.23−0.004):0.004のとき、d=0.201、c=0.004である。また、d:f=(0.23−0.016):0.016のとき、d=0.189、f=0.016である。この時のGd、Al及びEuの元素比率(d、e、f)は、図2(b)に示すB1:(0.189、0.795、0.016)からB4:(0.201、0.795、0.004)の組成となり、この範囲で、B6〜B7と同等のLY値が得られると考えられる。また、d:f=(0.23−0.011):0.011のとき、d=0.195、f=0.010であり、B1:(0.189、0.795、0.016)からB8:(0.195、0.795、0.010)の組成範囲で、B6〜B7と同等のLY値と残光レベルが得られると考えられる。
ペロブスカイト型酸化物材料とアルミナとの組成比が51:49(mol%)の場合、GdとEuの総和がd+f=0.255であるのに対して、Alはe=0.745となる。d+f=0.255で、d:f=(0.23−0.004):0.004のとき、d=0.250、f=0.005である。また、d:f=(0.23−0.016):0.016のとき、d=0.235、f=0.020である。この時のGd、Al及びEuの元素比率(d、e、f)は、図2(b)に示すB2:(0.235、0.745、0.020)からB3:(0.250、0.745、0.005)の組成となり、この範囲で、B6〜B5と同等のLY値が得られると考えられる。また、d:f=(0.23−0.011):0.011のとき、d=0.242、f=0.013であり、B2:(0.235、0.745、0.020)からB9:(0.242、0.745、0.013)の組成範囲で、B6〜B5と同等のLY値と残光レベルが得られると考えられる。
以上のことから、Gd、Al及びEuの元素比率が上記B1、B2,B3、B4の4つの頂点で囲まれる範囲内にあれば、B6〜B8と同等のLY値が得られると考えられる。また、Gd、Al及びEuの元素比率が上記B1,B2,B8,B9の4つの頂点で囲まれる範囲内にあれば、B6〜B5と同等のLY値と残光レベルが得られると考えられるため、より好ましい。
本実施例は、実施例1で作製したシンチレータ結晶体を用いた放射線検出器とその検出器の撮像結果について説明をする。
図9に、本実施形態の放射線検出器90の断面模式図を示す。本実施形態の実施例1で製造したシンチレータ結晶体をそれぞれ厚さを1mmに切り出して研磨し、試料とした。このシンチレータ結晶体19を、基板93上にアレイ状に配列した画素92を複数有する光検出器91上に、柱状晶が概ね垂直に対向されるように設置し、放射線検出器90を構成した。シンチレータ結晶体19は、互いに同一面上に位置しない第一の面17と第二の面18とを有する。シンチレータ結晶体19は、光検出器の画素92に第一の面17が対向するように配置し、放射線検出器90とした。
X線源としてタングステン管球を用い、60kV、1mA、Alフィルター無しの条件で得られるX線を用い、50μm厚の鉛の10(ラインペア/mm)のラインテストパターンの撮像を行った。X線は、上記シンチレータ結晶体19の複数の第一の相の略中心軸に平行に照射した。光検出器として、画素ピッチが5.2μmのCMOSセンサを用いて計測を行った。図10に撮像結果を示す。10(ラインペア/mm)のパターンを明瞭に解像できており、そのContrast Transfer Function(CTF)値を、ライン撮像領域の明部(Imax)と暗部(Imin)としてCTF=(Imax−Imin)/(Imax+Imin)として定義した場合、CTF=0.59と高いコントラストを得ることができた。
比較の為、放射線検出器用シンチレータとして広く用いられているCsIの針状結晶について同様の評価を行ったところ、150μm厚であっても、10(ラインペア/mm)のCTF値は0.23であった。よって、本実施例のシンチレータの方がCTF値が高いことが確認できた。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。