JP6467342B2 - 製紙用シュープレスベルト - Google Patents

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Description

本発明は、製紙用シュープレス装置に利用される製紙用シュープレスベルト(以下シュープレスベルトということがある)に関する。更に詳しくは、シュープレスベルトの熱硬化性ポリウレタン樹脂層の改良に関する。
製紙用シュープレス装置1は、図5に示すように、プレスロール2とシュー6との間に、ループ状のシュープレスベルト3を介在させたシュープレス機構を用い、プレスロール2とシュー6とで、形成されるプレス部において、フェルト4と湿紙5を通過させて脱水を行っている。
また、シュープレスベルト3は、図4に示すように、補強基材16と熱硬化性ポリウレタン22とが一体化され、フェルト側層表面から深さ方向に、プレス下で湿紙5及びフェルト4から脱水された水を受容する水受容部17(図4では排水溝)が形成されており、上記のプレス時に湿紙5及びフェルト4から脱水された水を水受容部17に保持し、更には保持した水をシュープレスベルト自身の回転によりプレス部の系外に排出するようになっている。従って、シュープレスベルト3には、プレスロール2とシュー6による垂直方向の押圧力や、シュープレス領域におけるシュープレスベルトの摩擦、屈曲疲労に対して耐クラック性、耐屈曲疲労性、耐摩耗性、耐層間剥離性等の機械的特性を改善することが要求されている。
このような理由から、シュープレスベルト3の熱硬化性ポリウレタンを形成する樹脂材料について種々の改良がなされている。
例えば、補強基材と熱硬化性ポリウレタンとが一体化してなり、前記補強基材が前記ポリウレタン中に埋設され、外周面及び内周面が前記ポリウレタンで構成された製紙用ベルトにおいて、外周面を構成するポリウレタンは、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、末端に活性水素基を有する硬化剤と、を含む組成物から形成され、前記組成物は、前記硬化剤の活性水素基(H)と前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)との当量比(H/NCO)の値が、1<H/NCO<1.15となる割合で前記ウレタンプレポリマーと前記硬化剤とが混合されたものである、製紙用ベルトが提案されている(特許文献1、2及び3参照)。
また、補強基材と熱硬化性ポリウレタンとが一体化してなり、前記補強基材が前記ポリウレタン中に埋設され、前記ポリウレタンは、内側のポリウレタンと、この内側のポリウレタンの外周面に接着した外側のポリウレタンとを含む製紙用ベルトにおいて、前記内側のポリウレタン及び前記外側のポリウレタンは、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、末端に活性水素基を有する硬化剤とを含む組成物からそれぞれ形成され、前記内側のポリウレタンを形成する組成物は、硬化剤の活性水素基(H)とウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)との当量比(H/NCO)が0.85≦H/NCO<1となる割合でウレタンプレポリマーと硬化剤とが混合されたものであり、前記外側のポリウレタンを形成する組成物は、前記当量比(H/NCO)の値が1<H/NCO<1.15となる割合でウレタンプレポリマーと硬化剤とが混合されたものである、製紙用ベルトが提案されている(特許文献1、2及び3参照)。
更に、基体と、ポリウレタンとからなる製紙機械用ベルトにおいて、前記ポリウレタンは、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、ジメチルチオトルエンジアミンを含有する硬化剤とにより構成され、前記硬化剤の活性水素基と、前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基との当量比が0.9〜1.10であることを特徴とする、製紙機械用ベルトが提案されている(特許文献4参照)
特開2002−146694号公報 特開2005−120571号公報 特開2006−225839号公報 特開2004−52204号公報
前記特許文献1乃至3に記載される製紙用ベルトは、外周面を構成するポリウレタンにおいて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、末端に活性水素基を有する硬化剤とを含む組成物から形成され、前記組成物は、前記硬化剤の活性水素基(H)と前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)との当量比(H/NCO)の値が、1<H/NCO<1.15となる割合で前記ウレタンプレポリマーと前記硬化剤とが混合されたものであるから、クラックが製紙用ベルトにたとえ発生したとしても、発生したクラックが進展することを抑制することができるとされている。
また、内側のポリウレタンを形成する組成物は、硬化剤の活性水素基(H)とウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)との当量比(H/NCO)が0.85≦H/NCO<1となる割合でウレタンプレポリマーと硬化剤とが混合されたものであり、且つ、外側のポリウレタンを形成する組成物は、当量比(H/NCO)の値が1<H/NCO<1.15となる割合でウレタンプレポリマーと硬化剤とが混合されたものであるから、補強基材とポリウレタンとの間における層間剥離の発生を抑制することができるとされている。
一方、製紙用シュープレスベルトの外周面は、耐摩耗性についても重要機能として要求され、前記特許文献1乃至3に記載される当量比(H/NCO)を1<H/NCO<1.15にした製紙用ベルトは、耐クラック性は優れるものの、耐摩耗性が劣る。
近年、紙の生産性向上に起因した運転速度の高速化やプレス部の高圧化等に伴い、シュープレスベルトの使用環境は益々過酷なものとなってきており、耐クラック性、クラック進展性および耐摩耗性を両立させた製紙用シュープレスベルトが求められている。
本発明は、耐クラック性、耐摩耗性、耐層間剥離性、耐屈曲疲労性の機械的特性を向上させ、特にシュープレスベルト表面の耐摩耗性並びに水受容部の底部領域における耐クラック性が向上されたシュープレスベルトを提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、シュープレスベルトの熱硬化性ポリウレタン樹脂層を改良したもので、具体的には、以下の技術を基礎とする。
(1)補強基材と少なくともフェルト側層を有する熱硬化性ポリウレタンとが一体化してなり、前記フェルト側層に、フェルト側表面から深さ方向にニップ下で湿紙及びフェルトから脱水された水を受容するための水受容部が形成された、製紙用シュープレスベルトにおいて、前記フェルト側層は、少なくとも、フェルト接触面を有する第1樹脂層と前記水受容部の底部領域を有する第2樹脂層を備え、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層は、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、末端に活性水素基を有する硬化剤とを含む組成物から形成され、前記硬化剤の活性水素基(H)と前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)との当量比(H/NCO)の値が、前記第1樹脂層の当量比よりも前記第2樹脂層の当量比の方が大きいことを特徴とする、製紙用シュープレスベルト。
(2)前記水受容部が排水溝であることを特徴とする、(1)に記載の製紙用シュープレスベルト。
(3)前記第1樹脂層の当量比と前記第2樹脂層の当量比の差が0.02以上であることを特徴とする、(1)乃至(2)のいずれか一項に記載の製紙用シュープレスベルト。
(4)前記第1樹脂層の当量比と前記第2樹脂層の当量比の差が0.04以上であることを特徴とする、(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の製紙用シュープレスベルト。
(5)前記第1樹脂層の熱硬化性ポリウレタンの当量比(H/NCO)の値が、0.80〜1.15であることを特徴とする、(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の製紙用シュープレスベルト。
(6)前記第1樹脂層の熱硬化性ポリウレタンの当量比(N/NCO)の値が、0.80〜0.99であることを特徴とする、(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の製紙用シュープレスベルト。
(7)前記第2樹脂層と前記第2樹脂層のフェルト側に隣接する樹脂層の境界面が、前記水受容部断面の底部から前記水受容部の深さの10%以上に存在することを特徴とする、(1)乃至(6)のいずれか一項に記載の製紙用シュープレスベルト。
(8)前記第1樹脂層と前記第2樹脂層のウレタンプレポリマー及び硬化剤が同一の材料からなることを特徴とする、(1)乃至(7)のいずれか一項に記載のシュープレスベルト。
本発明のシュープレスベルトによると、水受容部を有する第2樹脂層のポリウレタンの当量比を、フェルト接触面を有する第1樹脂層のポリウレタンの当量比よりも大きくすることで、第1樹脂層のフェルト接触面の摩耗現象を回避できるとともに、水受容部の底部やコーナー部からのクラックの発生及び成長を抑制することができるので、シュープレスベルトの耐久性が著しく向上するという効果を奏する。
また、隣接する樹脂層の当量比について、1を境界に大きいものと小さいものを設定する、例えば第1樹脂層の当量比を1以下とし、第2樹脂層の当量比を1よりも大きく設定することで、第2樹脂層の余剰活性水素基(H)が第1樹脂層の余剰イソシアネート基(H/NCO)と強く結合することにより、第1樹脂層と第2樹脂層の接着を強力なものとし、層間剥離を防止することができる。
図1は、本発明による製紙用シュープレスベルトの一例を示す部分断面図である。 図2は、本発明による製紙用シュープレスベルトの他の例を示す部分断面図である。 図3は、本発明による製紙用シュープレスベルトの更に他の例を示す部分断面図である。 図4は、従来の製紙用シュープレスベルトの部分断面図である。 図5は、製紙用シュープレス装置の概略図である。 図6は、屈曲疲労試験機の概略図である。
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は本発明のシュープレスベルト3の一例を示す部分断面図である。
シュープレスベルト3は、無端状の帯体をなす、環状のベルトである。また、帯体の2つの主面は、それぞれシュープレスベルト3が形成する環の外周面または内周面を構成している。そして、シュープレスベルト3は、その使用時において、その内周面側にシューが配置され、一方で、外周面側においてフェルト4を担持する。
当該シュープレスベルト3は、補強基材16と熱硬化性ポリウレタンとが一体化してなり、前記補強基材16が前記ポリウレタン中に埋設されている。前記ポリウレタンはフェルト側層(外周層)15を備え、前記フェルト側層15には、フェルト側表面からフェルト側層15の深さ方向にニップ下で湿紙及びフェルトから脱水された水を受容するための水受容部(図1では排水溝17)が形成されている。そして、前記フェルト側層15は、フェルト接触面(外周面)を有する第1樹脂層11と、前記水受容部17の底部領域18を有する第2樹脂層12と、を有している。また、前記ポリウレタンはシュー側層(内周層)20を備え、前記シュー側層20は、シュー接触面(内周面)を有するシュー側樹脂層21から形成されている。なお、図1に示される本発明のシュープレスベルト3は、前記補強基材16がシュー側層20に埋設されているが、前記補強繊維基材16が埋設される位置は特に限定されない。
補強基材16としては例えば織布を使用することができる。前記特許文献1乃至特許文献4に記載された織布は勿論のこと、他の文献に記載された補強基材も使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維の5000dtexマルチフィラメント撚糸を経糸及び緯糸として、経糸が緯糸で挟まれ、緯糸と経糸の交差部がポリウレタン接着により接合されてなる格子状素材のものを使用することもできる。
補強基材16に用いる繊維素材としては、ポリエチレンテレフタレートの代わりに、アラミド繊維、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6等のポリアミド繊維を使用してもよい。また、経糸と緯糸で素材の異なる繊維を使用してもよいし、経糸と緯糸の太さを5000dtex及び7000dtex等と異なって使用してもよい。
第1樹脂層11及び第2樹脂層12を有するフェルト側層15並びにシュー側層20は、ポリウレタンから形成されており、即ち、末端にイソシアネート基(NCO)を有するウレタンプレポリマーと、末端に活性水素基(H)を有する硬化剤とを含む組成物から形成されている。ここで、前記活性水素基(H)と前記イソシアネート基(NCO)との当量比(H/NCO、化学量論量に基づく当量比)の値は、第1樹脂層11の当量比よりも第2樹脂層12の当量比の方が大きくなるように各樹脂層を積層している。
なお、第1樹脂層11の当量比よりも第2樹脂層12の当量比の方が大きいものであればよいが、第1樹脂層11の当量比と前記第2樹脂層12の当量比の差は、0.02以上であることが好ましく、0.04以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましい。
また、第1樹脂層11の当量比は、特に限定されないが、例えば、0.80〜1.15であることが好ましく、0.8〜1.0であることがより好ましく、0.80〜0.99であることがさらに好ましい。これにより、フェルト側表面に、摩耗が発生することをより確実に抑制することができる。また、第2樹脂層12の当量比は、特に限定されないが、例えば、0.9以上であることが好ましく、0.95〜1.15であることがより好ましい。これにより、水受容部の底部領域18においてクラックが発生することをより確実に抑制することができる。
末端にイソシアネート基(NCO)を有するウレタンプレポリマーを得るためのフェニレンイソシアネート誘導体としては、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、m−キシレンジイソシアネート(m−XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)などが挙げられる。これらは単独でも、または2種以上を混合しても用いることができる。
上述した中でも、第1樹脂層11の形成に用いられるフェニレンイソシアネート誘導体としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)またはp−フェニレンジイソシアネート(PPDI)を用いることが好ましい。これにより、フェルト側表面において摩耗が発生することをより確実に抑制することができる。
また、上述した中でも、第2樹脂層12の形成に用いられるフェニレンイソシアネート誘導体としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)またはp−フェニレンジイソシアネート(PPDI)を用いることが好ましい。これにより、水受容部の底部領域18においてクラックが発生することをより確実に抑制することができる。
末端にイソシアネート基(NCO)を有するウレタンプレポリマーを得るためのポリオールは、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールの中から選択される。ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)などが挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、例えばポリカプロラクトンエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキセンアジペートなどが挙げられる。これらは単独でも、または2種以上を混合もしくは重合させて用いることができ、更にこれらの変性体も用いることができる。
上述した中でも、第1樹脂層11の形成に用いられるポリオールとしては、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)を用いることがより好ましい。
また、上述した中でも、第2樹脂層12の形成に用いられるポリオールとしては、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)を用いることが好ましい。これらにより、ポリエステルポリオールに比べ耐加水分解性が優れる。
末端に活性水素基(H)を有する硬化剤として、例えば脂肪族ジオール化合物、芳香族ポリアミン化合物等を使用することができる。脂肪族ジオール化合物としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリブチレングリコール等から選択される化合物である。芳香族ポリアミン化合物としては、メチレンジアニリン、4,4’−メチレン−ビス−(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−メチレン−ビス−(2−エチル−6−メチル−アニリン)、4,4’−メチレン−ビス−(2−イソプロピル−6−メチルアニリン)、4,4’−ビス(2−ブチルアミノ)ジフェニルメタン、フェニレンジアミン、メチレン−ビス−(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス−(2−クロロ−6−エチルアニリン)、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオール)エタン、N,N’−ジアルキル−p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジイソプロピルアニリン)及びジメチルチオトルエンジアミン等から選択される化合物である。そして上記硬化剤は単独でも、2種以上を混合してもよい。
上述した中でも、第1樹脂層11の形成に用いられる硬化剤としては、1,4−ブタンジオールまたはジメチルチオトルエンジアミンを用いることが好ましい。これにより、フェルト側表面において摩耗が発生することをより確実に抑制することができる。
また、上述した中でも、第2樹脂層12の形成に用いられる硬化剤としては、1,4−ブタンジオールまたはジメチルチオトルエンジアミンを用いることが好ましい。これにより、水受容部の底部領域18においてクラックが発生することをより確実に抑制することができる。
第1樹脂層11は、例えば、フェニレンイソシアネート誘導体としてのトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)またはp−フェニレンジイソシアネート(PPDI)と、ポリオールとしてのポリテトラメチレングリコール(PTMG)と、硬化剤としての1,4−ブタンジオールまたはジメチルチオトルエンジアミンとを用いて形成されるポリウレタンで構成されることができる。このような場合、第1樹脂層11の当量比は、0.80〜1.15であることが好ましく、0.8〜1.0であることがより好ましく、0.80〜0.99であることがさらに好ましい。これにより、フェルト側表面において摩耗が発生することをより確実に抑制することができる。
第2樹脂層12は、例えば、フェニレンイソシアネート誘導体としてトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)またはp−フェニレンジイソシアネート(PPDI)と、ポリオールとしてのポリテトラメチレングリコール(PTMG)、硬化剤としての1,4−ブタンジオールまたはジメチルチオトルエンジアミンとを用いて形成されるポリウレタンで構成されることができる。このような場合、第2樹脂層12の当量比は、0.9以上であることが好ましく、0.95〜1.15であることがより好ましい。これにより、水受容部の底部領域18においてクラックが発生することをより確実に抑制することができる。
また、第1樹脂層11を構成するポリウレタンの構成材料と、第2樹脂層12を構成するポリウレタンの構成材料とは、少なくとも1種以上が共通していることが好ましく、全ての構成材料において共通していることが好ましい。より具体的には、第1樹脂層11と第2樹脂層12を構成するウレタンプレポリマーおよび硬化剤はそれぞれ少なくともそれらの一部が、好ましくはすべてが、同一の材料からなることが好ましい。特に、第1樹脂層11及び第2樹脂層12のフェニレンイソシアネート誘導体及びポリオール及び硬化剤は、それぞれ同一の材料を選択することが好ましい。こうすることで、製造時の樹脂の準備作業や樹脂管理作業といった製造負荷をかけることなく、即ち製造コストをかけることなく、フェルト側表面において摩耗が発生することをより確実に抑制することができ、水受容部の底部領域18においてクラックが発生することをより確実に抑制することができるシュープレスベルトを製造することができる。
また、第1樹脂層11または第2樹脂層12を構成するポリウレタンの構成材料は、共通しない構成成分、例えば、第1樹脂層11に含まれるが第2樹脂層12に含まれない構成材料、および/または第2樹脂層12に含まれるが第1樹脂層11に含まれない構成材料を含んでいてもよい。しかしながら、このような共通しない構成成分の含有量は、第1樹脂層11または第2樹脂層12を構成するポリウレタン中、10重量%未満であることが好ましく、5重量%未満であることがより好ましい。
なお、このように、第1樹脂層11を構成するポリウレタンの構成材料と、第2樹脂層12を構成するポリウレタンの構成材料とを共通とした場合であっても、各層中の構成材料の配合比を変更することにより、第1樹脂層11における活性水素基(H)と前記イソシアネート基(NCO)との当量比と、第2の樹脂層12における当量比とを異ならせることが可能である。具体的には、例えば各層の形成時において、ウレタンプレポリマーと硬化剤との配合比を適宜調節(選択)することにより、前記当量比を所望のものとすることができる。
フェルト側層15には、フェルト側表面から深さ方向にニップ下で湿紙及びフェルトから脱水された水を受容するための水受容部(図1では排水溝17)が形成されている。なお、ここでニップとは、例えば図5に示すような製紙用シュープレス装置1において、湿紙5およびフェルト4がプレスロール2とシュー6により押圧される部分をいう。水受容部17は、フェルト側表面に形成される凹部である。そして、水受容部17は、ニップ下においてフェルト4および湿紙5が押圧された際に放出される水を、凹部に受容する。一方で、水受容部17は、ニップを通過後、水を外部に排出する。図1では、複数の排水溝17が、シュープレスベルト3の走行方向(MD)に対して平行になるように配置している。この水受容部17は、シュープレスベルト3の走行方向(MD方向)または機械横断方向(CMD方向)に対して、連続的に配置してもよく、非連続的に配置してもよい。また、図1では水受容部17の断面形状について矩形状を示したが、水受容部17の断面形状については特に限定されず、U字状、台形状等とすることができ、更に、水受容部の任意の断面における巾、深さについては特に限定はされない。例えば、図1に例示する排水溝17であれば、溝深さを0.5mm〜2.0mm、溝幅を0.5mm〜1.5mm、溝本数を5〜15本/インチと設定することができる。
第1樹脂層11と第2樹脂層12の境界面は、少なくとも排水溝17の底部領域18が第2樹脂層に含まれるように配置する。こうすることで、第1樹脂層11のポリウレタンは低当量比であるから、フェルト接触表面の耐摩耗性が向上し、第2樹脂層12のポリウレタンは高当量比であるから、排水溝17の底部領域18における耐クラック性、耐クラック成長性が向上する。当該境界面は、排水溝17の深さ方向に対して任意の位置に設定することができるが、例えば、シュープレスベルトのフェルト接触表面の摩耗が著しい使用環境下においては、第1樹脂層11の厚みを厚くし、即ち水受容部断面の底部から水受容部の深さの70%以下、あるいは50%以下と設定することもできる。
第2樹脂層12とシュー側層20の境界面の位置は特に限定されない。図1では当該境界面が補強基材16の上部に位置し、補強基材16がシュー側層に埋設されている。当該境界面は、補強基材16の内部に位置してもよいし、補強基材16の下部に位置し、補強基材16がフェルト側層15に埋設されてもよい。図1に例示されるシュープレスベルト3の第1樹脂層11、第2樹脂層12及びシュー側層20の厚みは、それぞれ0.2〜1.8mm、0.2〜4.0mm、1.0〜4.0mmと設定することができる。
図1に例示されるシュープレスベルト3を製造する一例について説明する。まず、離型剤を表面に塗布したマンドレルに、所望するシュー側樹脂層21の厚みが形成されるように、補強基材16をマンドレル表面から浮かせて配置し、補強基材16の表面からウレタンプレポリマーと硬化剤の混合物を塗布・含浸・貫通させ、前硬化させることで、補強基材16がシュー側樹脂層21に埋設されたシュー側層20を形成させる。この場合の補強基材16は、比較的樹脂の透過量が大きいものを使用する。次にシュー側層20の表面に第2樹脂層12を積層し、前硬化させ、更に第2樹脂層12の表面に第1樹脂層11を積層し、後硬化させることで、補強基材16、第1樹脂層11、第2樹脂層12、シュー側層20とを一体化させる。最後に第1樹脂層11のフェルト接触表面を研磨し、切削加工等によって排水溝17を形成させ、マンドレル製法によるシュープレスベルト3を完成させる。
別の製造例として、まず、軸方向に平行に配置された2本のロール間にエンドレス状の補強基材16を展張し、補強基材の表面からウレタンプレポリマーと硬化剤の混合物を塗布・含浸・積層させ、前硬化させる。これを表裏反転させ再度2本のロール間に展張させ、補強基材16がシュー側樹脂層21に埋設されたシュー側層20を形成させる。この場合の補強基材16は、比較的樹脂の透過量が小さいものを使用する。次にシュー側層20の表面に第2樹脂層12を積層し、前硬化させ、更に第2樹脂層12の表面に第1樹脂層11を積層し、後硬化させることで、補強基材16、第1樹脂層11、第2樹脂層12、シュー側層20とを一体化させる。最後に第1樹脂層11のフェルト接触表面を研磨し、切削加工等によって排水溝17を形成させ、2本ロール製法によるシュープレスベルト3を完成させる。
硬化条件としては、いずれの製造方法であっても、前硬化を50〜140℃、0.5〜2時間、後硬化を50〜140℃、2〜20時間とすることができる。
図2は本発明のシュープレスベルト3の別の一例を示す部分断面図で、図1に例示されるシュープレスベルト3の第1樹脂層11と第2樹脂層12の間に更に別の第3樹脂層13が設けられたものである。なお、第3樹脂層13は2層以上の複数層とすることも可能である。
図3は本発明のシュープレスベルト3の更に別の一例を示す部分断面図で、図1に例示されるシュープレスベルト3のシュー側層20について、シュー側樹脂層21と第4樹脂層14とが設けられたものである。なお、第4樹脂層14は2層以上の複数層とすることも可能である。
第3樹脂層13及び第4樹脂層14は、第1樹脂層11、第2樹脂層12及びシュー側樹脂層21と同様に、上記列挙された、フェニレンイソシアネート誘導体、ポリオール、からなるウレタンプレポリマーと硬化剤を使用することができ、当量比は任意に設定することができる。
以上、本発明について図示の実施形態に基づき詳細に説明したが、本発明は上述した態様のみに限定されない。例えば、図示の実施形態では、水受容部が排水溝であるものとして説明したが、水受容部は、フェルト側表面においてフェルト側層の深さ方向に形成された孔であってもよい。
実施例1〜4、比較例1。
図1に例示されるシュープレスベルトを2本ロール製法で製作した。
補強基材は何れも共通の織布を使用し、第1樹脂層、第2樹脂層、シュー側層の各ポリウレタンは、トリレンジイソシアネート(TDI)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)からなるウレタンプレポリマー(NCO%=6.02)とジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)とを反応させた。第1樹脂層、第2樹脂層の当量比は表1記載のとおりで、硬化条件は100℃、16時間とした。各樹脂層の厚みは、第1樹脂層厚み0.8mm、第2樹脂層厚み1.0mm、シュー側層厚み3.4mmとした。排水溝については、溝幅0.8mm、溝深さ1.0mm、溝本数10本/インチとした。
Figure 0006467342
得られたシュープレスベルトについて、フェルト接触面の摩耗試験ならびに屈曲疲労試験を行った。摩耗試験は、特開2006−144139号公報の図4示す装置を用い、ベルトサンプルをプレスボードの下部に取り付け、その下の面(測定対象面)に、外周に摩擦子を備える回転ロールを押し付けながら回転させた。このとき、回転ロールによる圧力を6.6kg/cm、回転ロールの回転速度100m/分とし、45秒間回転させた。回転後に、ベルトサンプルの厚み減少量(比較例1を100としたときの相対摩耗量)を測定した。結果を表1に記載する。
屈曲疲労試験は、図6に示す装置を用いて、20℃、相対湿度52%の雰囲気下、次の条件で排水溝底部領域からクラックが発生するかの確認試験を行った。試験片31には幅方向に平行に排水溝を配置し、試験片のサイズは幅60mm、つかみ具間長さ70mmとした。下部のつかみ具32aに円弧状の往復運動を与えることにより、上部つかみ具32b及び試験片も円弧状に往復し、受棒33で試験片が屈曲され疲労されるようにした。円弧の中心から下部つかみ具の先端までの距離は168mm、下部つかみ具の移動距離は161mm、往復速度162往復/分とした。上部つかみ具の重さは400gとした。この条件で屈曲を繰返し、排水溝底部領域からのクラックが発生するまでの時間を測定した。結果を表1に記載する。
表1から分かるように、フェルト接触面を有する第1樹脂層と排水溝底部領域を有する第2樹脂層のポリウレタン当量比について、第1樹脂層の当量比よりも第2樹脂層の当量比が大きくなるようにすることで、フェルト接触面の耐摩耗性が向上し、排水溝の底部領域の耐クラック性が向上していることが確認できる。
1 製紙用シュープレス装置
2 プレスロール
3 シュープレスベルト
4 フェルト
5 湿紙
6 シュー
11 第1樹脂層
12 第2樹脂層
13 第3樹脂層
14 第4樹脂層
15 フェルト側層
16 補強基材
17 水受容部(排水溝)
18 溝底部領域
20 シュー側層
21 シュー側樹脂層
22 熱硬化性ポリウレタン
31 シュープレスベルト試験片
32a 下部つかみ具
32b 上部つかみ具
33 受棒

Claims (7)

  1. 補強基材と少なくともフェルト側層を有する熱硬化性ポリウレタンとが一体化してなり、前記フェルト側層に、フェルト側表面から深さ方向にニップ下で湿紙及びフェルトから脱水された水を受容するための水受容部が形成された、製紙用シュープレスベルトにおいて、前記フェルト側層は、少なくとも、フェルト接触面を有する第1樹脂層と前記水受容部の底部領域を有する第2樹脂層を備え、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層は、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、末端に活性水素基を有する硬化剤とを含む組成物から形成され、前記硬化剤の活性水素基(H)と前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)との当量比(H/NCO)の値が、前記第1樹脂層の当量比よりも前記第2樹脂層の当量比の方が大きく、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層のウレタンプレポリマー及び硬化剤が同一の材料からなることを特徴とする、製紙用シュープレスベルト。
  2. 前記水受容部が排水溝であることを特徴とする、請求項1に記載の製紙用シュープレスベルト。
  3. 前記第1樹脂層の当量比と前記第2樹脂層の当量比の差が0.02以上であることを特徴とする、請求項1乃至2のいずれか一項に記載の製紙用シュープレスベルト。
  4. 前記第1樹脂層の当量比と前記第2樹脂層の当量比の差が0.04以上であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製紙用シュープレスベルト
  5. 前記第1樹脂層の熱硬化性ポリウレタンの当量比(H/NCO)の値が、0.80〜1.15であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の製紙用シュープレスベルト。
  6. 前記第1樹脂層の熱硬化性ポリウレタンの当量比(N/NCO)の値が、0.80〜0.99であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の製紙用シュープレスベルト。
  7. 前記第2樹脂層と前記第2樹脂層のフェルト側に隣接する樹脂層の境界面が、前記水受容部断面の底部から前記水受容部の深さの10%以上に存在することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の製紙用シュープレスベルト。
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