JP6464970B2 - オキサジリジン化合物の製造方法 - Google Patents
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例えば、Davisらによれば、スルホニルイミン類を基質として、これをメタクロロ過安息香酸(m-CPBA)により酸化する方法(非特許文献3参照)や、OXONE(商品名)と呼ばれる三重塩からなる過硫酸塩化合物により酸化する方法(非特許文献4参照)が知られている。
(1)pHが11以上14以下の条件下において、下記一般式(1)
(2)前記イミン類の酸化は、塩化物塩の存在下で行なわれることを特徴とする(1)に記載のオキサジリジン化合物の製造方法。
(3)前記塩化物塩が、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化カルシウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする(2)に記載のオキサジリジン化合物の製造方法。
本発明のオキサジリジン化合物の製造方法において、基質としてのイミン類としては、上記一般式(1)で表されるイミン類である。
ここで、式中の保護基Aは、反応系の他の化合物とは反応性を有さず、反応系に影響を与えないながらも確実にイミン骨格を安定化できるものであればいずれも使用可能であり、例えば、p-トルエンスルホニル基(Ts)、ベンゼンスルホニル基が挙げられるが、p-トルエンスルホニル基(Ts)が好ましい。
このうち、高純度の結晶で取り扱いが良く、水溶液よりも保存時の分解が少なくてより安定な次亜塩素酸ソーダ5水和物(NaOCl・5H2O)を用いることが好ましい。そして、次亜塩素酸ソーダ5水和物の中でも、有効塩素濃度が39質量%以上、好ましくは約42質量%であって、高純度の結晶であるのがよい。有効塩素濃度が39質量%より低くなると保存中にその水分により液状化し次亜塩素酸ソーダの分解が進む虞がある。このような次亜塩素酸ソーダ5水和物(NaOCl・5H2O)は、公知の方法により製造することができる。
なお、実施例に用いた次亜塩素酸ソーダ5水和物を水に溶解させた水溶液にすると有効塩素濃度10〜30%の範囲でpH10〜11程度になる。
[合成例1]
以下の[化学式1]の通り、前述の一般式(1)のイミン類(A1)を合成した。
先ず、ベンズアルデヒド 2.04mL(20mmol)を300mLナスフラスコに入れ、また、これにギ酸(HCOOH)30mLとH2O30mLとを添加して溶解させた。さらに、ナスフラスコ中にp−トルエンスルフィン酸ナトリウム(p-TsNa、1.0eq、20mmol)とp−トルエンスルホンアミド(p-TsNH2、1.0eq、20mmol)とを加えて、室温下で反応させた。
反応開始から12時間後、吸引ろ過で析出物を回収し、H2Oで2回洗浄した後に、n-ペンタンで洗浄した。得られた析出物を別の500mLナスフラスコに入れ、これにジクロロメタン(CH2Cl2)200mLを添加した。次いで、これに飽和炭酸水素ナトリウム(sat. NaHCO3)水溶液140mLを添加して反応させた。10分程度攪拌した後、溶液を500mL分液漏斗に移し、有機相を分液した。水相からジクロロメタン抽出(50mL×5回)を行い、先の有機相に加え、有機相に固体の炭酸水素ナトリウムを加えて乾燥させた。その後、ろ過で炭酸水素ナトリウムを取り除き、ろ液をロータリーエバポレーターで留去し、イミン類(A1)(N-Benzylidene-4-methylbenzene sulfonamide)を白色固体で得た(2.70g、収率52%)。同定は、核磁気共鳴分析分析(1H-NMR、13C-NMR)、質量分析(MS)、赤外吸収分析(IR)、及び融点測定により行なった。
なお、分析機器としては、以下を用いた。
1H(13C) NMR: 日本電子株式会社製 JNM-ECX400
MS: 株式会社島津製作所製 GCMS-QP1100EX
Mp: 株式会社ヤナコ機器開発研究所製 微量融点測定装置 MP-J3
IR: 日本分光株式会社製 FT/IR-6100型
HPLC: 株式会社島津製作所製 LC-2010AHT〔カラム:CAPCELL PAC C18(TYPE UG120、5μm、4.6mmφ、250mm)、溶離液:アセトニトリル/H2O、検出波長:254nm〕
1H-NMR(CDCl3)δ: 2.44(3H, s)、7.35(2H, d, J=8.4 Hz)、7.49(2H, t, J=8.0 Hz)、7.62(1H, t, J=7.8 Hz)、7.89-7.94(4H, m)、9.04(1H, s)
13C-NMR(CDCl3)δ: 21.6、128.1-129.8、131.3、134.9、144.6、170.1
IR(neat)cm-1: 1600、1318、1156、1087、783、676、543、483
MS(m/z): 259(M+)、155(M+-C7H6N)、104(M+-C7H7O2S)、91(M+-C7H6O2NS)
mp:96〜102℃
[実施例1]
下記の[化学式2]の通り反応させて、オキサジリジン化合物(B1)を得た。
50mLナスフラスコに、次亜塩素酸ソーダ5水和物の粉末結晶(ニッケイジアソー5水塩、有効塩素濃度42%)1.9743g(12mmol、基質に対して12当量)を入れ、H2O 5.5mLに溶解し次亜塩素酸ソーダ水溶液とした。pHメーターで水溶液のpHを確認しつつ、12.5M水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを14としたのち、0℃に冷却した。別途用意した30mLフラスコに前記合成例1で得られたイミン類(A1、0.2590g、1mmol)を入れ、含水アセトニトリル5mLを加えて溶解した。このアセトニトリル溶液を次亜塩素酸ソーダ水溶液に添加し、0℃で10分間撹拌した。10分経過後、反応液を室温にし、さらに20分間撹拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC、展開溶媒Hexane:AcOEt=3:1、ヨウ素呈色)で原料のA1(Rf=0.45)が消失したことを確認後、系内にH2O(50mL)を加えて、AcOEtで抽出(30mL×3回)した。分液した有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相に無水硫酸マグネシウムを入れて脱水乾燥し、その後、ろ過操作でそれを取り除き、ろ液をロータリーエバポレーターで留去することで、オキサジリジン化合物(B1)(3-Phenyl-2-tosyl-1,2-oxaziridine)を白色固体で得た。なお、副生成物として、ベンズアルデヒド(C)も得られた。
NMRにより、B1とCとの比を求めた。結果を以下の表1にまとめて記載する。なお、同定は、上記合成例1と同様の方法を用いて行なった。
1H-NMR(CDCl3)δ:2.43(3H, s)、5.38(1H, s)、7.33〜7.42(7H, m)、7.86(2H, d, J=8.4Hz)
13C-NMR(CDCl3)δ:20.8、28.7、75.3、127.2、127.7、128.4、129.0、129.5、130.4、145.4
IR(neat)cm-1:2924、2856、1596、1351、1170、1087、807、712、569、543、421
MS(m/z):259(M+-O)、155(M+-C7H6ON)、91(M+-C7H6O3NS)
mp:87〜92℃
前記実施例1において、酸化剤として次亜塩素酸ソーダ5水和物に代えて、市販の12%次亜塩素酸ソーダ水溶液(ニッケイジアソー、有効塩素濃度12%)6.1〜7.4mL(NaOCl、12mmol、基質に対して12当量)を使用し、12.5M水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH14とした以外は、実施例1と同様の方法でオキサジリジン化合物(B1)を合成した。実施例1と同様に、NMRにてB1とCとの比を求めた。結果を以下の表1にまとめて記載する。
前記実施例1において、pHの調整を次亜塩素酸ソーダ水溶液に12.5M水酸化ナトリウム水溶液を滴下することによりpHを13とした以外は、実施例1と同様の方法でオキサジリジン化合物(B1)を合成した。実施例1と同様に、NMRにてB1とCとの比を求めた。結果を以下の表1にまとめて記載する。
前記実施例2において、pHの調整を次亜塩素酸ソーダ水溶液に12.5M水酸化ナトリウム水溶液を滴下することによりpHを13とした以外は、実施例2と同様の方法でオキサジリジン化合物(B1)を合成した。実施例2と同様に、NMRにてB1とCとの比を求めた。結果を以下の表1にまとめて記載する。
前記実施例1において、pHの調整を次亜塩素酸ソーダ水溶液に12.5M水酸化ナトリウム水溶液を滴下することによりpHを12とした以外は、実施例1と同様の方法でオキサジリジン化合物(B1)を合成した。実施例1と同様に、NMRにてB1とCとの比を求めた。結果を以下の表1にまとめて記載する。
前記実施例2において、pHの調整を次亜塩素酸ソーダ水溶液に37%塩酸を滴下することによりpHを12とした以外は、実施例2と同様の方法でオキサジリジン化合物(B1)を合成した。実施例2と同様に、NMRにてB1とCとの比を求めた。結果を以下の表1にまとめて記載する。
前記実施例1において、pHの調整を次亜塩素酸ソーダ水溶液に37%塩酸を滴下することによりpHを11とした以外は、実施例1と同様の方法でオキサジリジン化合物(B1)を合成した。実施例1と同様に、NMRにてB1とCとの比を求めた。結果を以下の表1にまとめて記載する。
前記実施例2において、pHの調整を次亜塩素酸ソーダ水溶液に35%塩酸を滴下することによりpHを11とした以外は、実施例2と同様の方法でオキサジリジン化合物(B1)を合成した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析にてB1とCとの比を求めた。結果を以下の表1にまとめて記載する。
前記実施例1において、pHの調整を次亜塩素酸ソーダ水溶液に35%塩酸を滴下することによりpHを10.5とした以外は、実施例1と同様の方法でオキサジリジン化合物(B1)を合成した。実施例8と同様に、HPLC分析にてB1とCとの比を求めた。結果を以下の表1にまとめて記載する。
この比較例1においては、オキサジリジン化合物(B1)は得られず、その代わりに安息香酸(オキサジリジン化合物B1の分解物と考えられる。)が得られた。
前記実施例2において、pHの調整を次亜塩素酸ソーダ水溶液に35%塩酸を滴下することによりpHを10.5とした以外は、実施例2と同様の方法でオキサジリジン化合物(B1)を合成した。実施例8と同様に、HPLC分析にてB1とCとの比を求めた。結果を以下の表1にまとめて記載する。
この比較例1においては、オキサジリジン化合物(B1)は得られず、その代わりに安息香酸(オキサジリジン化合物B1の分解物と考えられる。)が得られた。
前記実施例1において、pHの調整を次亜塩素酸ソーダ水溶液に37%塩酸を滴下することによりpHを10とした以外は、実施例1と同様の方法でオキサジリジン化合物(B1)を合成した。実施例1と同様に、NMRにてB1とCとの比を求めた。結果を以下の表1にまとめて記載する。
この比較例3においては、オキサジリジン化合物(B1)は得られず、その代わりに安息香酸(オキサジリジン化合物B1の分解物と考えられる。)が得られた。
前記実施例2において、pHの調整を次亜塩素酸ソーダ水溶液に37%塩酸を滴下することによりpHを10とした以外は、実施例2と同様の方法でオキサジリジン化合物(B1)を合成した。実施例2と同様に、NMRにてB1とCとの比を求めた。結果を以下の表1にまとめて記載する。
この比較例4においては、オキサジリジン化合物(B1)は得られず、その代わりに安息香酸(オキサジリジン化合物B1の分解物と考えられる。)が得られた。
前記実施例1において、pHの調整を次亜塩素酸ソーダ水溶液に37%塩酸を滴下することによりpHを8とした以外は、実施例1と同様の方法でオキサジリジン化合物(B1)を合成した。実施例1と同様に、NMRにてB1とCとの比を求めた。結果を以下の表1にまとめて記載する。
この比較例5においては、オキサジリジン化合物(B1)は得られず、その代わりに安息香酸(オキサジリジン化合物B1の分解物と考えられる。)が得られた。
前記実施例2において、pHの調整を次亜塩素酸ソーダ水溶液に37%塩酸を滴下することによりpHを8とした以外は、実施例2と同様の方法でオキサジリジン化合物(B1)を合成した。実施例2と同様に、NMRにてB1とCとの比を求めた。結果を以下の表1にまとめて記載する。
この比較例6においては、オキサジリジン化合物(B1)は得られず、その代わりに安息香酸(オキサジリジン化合物B1の分解物と考えられる。)が得られた。
[実施例9]
50mLナスフラスコにNaCl 0.7016g(12mmol、基質に対して12当量)、次亜塩素酸ソーダ5水和物の粉末結晶(ニッケイジアソー5水塩、有効塩素濃度42%)1.976g(12mmol、基質に対して12当量)を入れ、H2O 5.5mLに溶解し次亜塩素酸ソーダ水溶液とした。pHメーターで水溶液のpHを確認しつつ、12.5M水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを13.02としたのち、0℃に冷却した。別途用意した30mLフラスコに前記合成例1で得られたイミン類(A1、0.2590g、1mmol)を入れ、含水アセトニトリル5mLを加えて溶解した。このアセトニトリル溶液を次亜塩素酸ソーダ水溶液に添加し、0℃で10分間撹拌した。10分経過後、反応液を室温にし、さらに20分間撹拌した。 薄層クロマトグラフィー(TLC、展開溶媒Hexane:AcOEt=3:1、ヨウ素呈色)で原料のA1(Rf=0.45)が消失したことを確認後、系内にH2O(50mL)を加えて、AcOEtで抽出(30mL×3回)した。分液した有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相に無水硫酸マグネシウムを入れて脱水乾燥し、その後、ろ過操作でそれを取り除き、ろ液をロータリーエバポレーターで留去することで、粗生成物0.2479gを得た。カラムクロマトグラフィー(シリカゲルmesh 40〜50μm、カラムφ=2cm、展開溶媒Hexane:AcOEt=20:1およびHexane:AcOEt=10:1)によって精製し、オキサジリジン化合物(B1)(3-Phenyl-2-tosyl-1,2-oxaziridine)を白色固体として0.2422g(0.88mmol)、単離収率88%で得た。
なお、同定は上記実施例1と同様に行ない、単離収率は以下の[数式1]に基づいて算出した。
50mLナスフラスコに、次亜塩素酸ソーダ5水和物の粉末結晶(ニッケイジアソー5水塩、有効塩素濃度42%)1.974g(12mmol、基質に対して12当量)を入れ、H2O 5.5mLに溶解し次亜塩素酸ソーダ水溶液とした。pHメーターで水溶液のpHを確認しつつ、12.5M水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを13.06としたのち、0℃に冷却した。別途用意した30mLフラスコに前記合成例1で得られたイミン類(A1、0.2596g、1mmol)を入れ、含水アセトニトリル5mLを加えて溶解した。このアセトニトリル溶液を次亜塩素酸ソーダ水溶液に添加し、0℃で10分間撹拌した。10分経過後、反応液を室温にし、さらに20分間撹拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC、展開溶媒Hexane:AcOEt=3:1、ヨウ素呈色)で原料のA1(Rf=0.45)が消失したことを確認後、系内にH2O(50mL)を加えて、AcOEtで抽出(30mL×3回)した。分液した有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相に無水硫酸マグネシウムを入れて脱水乾燥し、その後、ろ過操作でそれを取り除き、ろ液をロータリーエバポレーターで留去することで、粗生成物0.2750gを得た。カラムクロマトグラフィー(シリカゲルmesh 40〜50μm、カラムφ=2cm、展開溶媒Hexane:AcOEt=20:1およびHexane:AcOEt=10:1)によって精製し、オキサジリジン化合物(B1)(3-Phenyl-2-tosyl-1,2-oxaziridine)を白色固体として0.1893g(0.69mmol)、単離収率69%で得た。
なお、同定は、上記合成例1と同様に行ない、単離収率は以下の[数式1]に基づいて算出した。
Claims (3)
- pHが11以上14以下の条件下において、下記一般式(1)
- 前記イミン類の酸化は、塩化物塩の存在下で行なわれることを特徴とする請求項1に記載のオキサジリジン化合物の製造方法。
- 前記塩化物塩が、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化カルシウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項2に記載のオキサジリジン化合物の製造方法。
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