JP6464830B2 - 電気加温法を用いた土壌浄化方法のための井戸構造体 - Google Patents

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本発明は、電気加温法を用いた土壌浄化方法に係り、特に、それに用いられる電極に関する。
電気加温法を用いた土壌浄化方法では、汚染された対象土壌の地中に電極を挿入し、これら電極間に電流を流すことにより土壌を加温する。これにより、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ジクロロエチレン、トリクロロエタンをはじめとするVOC(揮発性有機化合物:Volatile Organic Compounds)などの汚染物質が土壌から脱離し、周囲の地下水中に溶出するため、この地下水を地上にくみ上げ、汚染水処理を行って汚染物質を脱離除去する。
電気加温法は汚染物質で汚染された土壌を掘削することなく地中にあるがままの状態で浄化するため、土壌の運搬作業が不要であり、その分の費用や手間が掛からず、さらに汚染物質を場外に持ち出さないので汚染の拡散を防ぐことができるというメリットがある。
本件出願人は、このような電気加温法を用いた土壌浄化方法の一つとして、電極と井戸枠から成る井戸構造体を用いた新たな方法を提案した(特許文献1)。この井戸構造体は、
a)土壌に含まれる地下水を取り込むための透水性を有する井戸枠と、
b)前記井戸枠の中に挿入された、前記井戸枠とは電気的に絶縁された電極と、
c)前記井戸枠に取り込まれる貯留水の水面下にその一端が位置するように前記井戸枠内に挿入された揚水管と、
d)前記井戸枠の中に挿入された、前記水面下において前記揚水管内に空気を送り込むための送気管と
を有する。このような井戸構造体を、油やVOC等の汚染物質が保持された土壌領域を囲む複数の井戸にそれぞれ設け、前記電極間に通電を行うことにより、ジュール熱でこれら複数本の井戸構造体で囲まれる土壌を加温する。土壌に付着したVOC等の汚染物質は加温により土壌から脱離し、その周辺の地下水に混入又は溶け込む。汚染物を含む地下水は前記井戸枠内に入り(貯留水となり)、揚水管中に送り込まれる空気と共にエアリフトポンプの原理により揚水管内を地上に引き揚げられる。なお、この方法(以下、これをエアリフト法と呼ぶ)においては、井戸枠自体を導電性のもので構成し、電極として作用させることも可能である。
エアリフト法では、井戸構造体が汚染物質回収用の井戸(回収井戸)を兼ねているため、電極を挿入するための井戸(電極井戸)と回収井戸を別々に設置していたそれ以前の方法と比較して、同一面積を浄化するための井戸の本数を少なくすることができるという利点がある。また、エアリフトポンプの原理を利用して汚染水を地上に汲み上げるため、ポンプを地下に置く必要がなく、各井戸の径を小さくすることができると共に、どのような深さからでも汚染水を汲み上げることができる等、様々な利点を持っている。
特開2014-231050号公報
VOC等の汚染物質は徐々に沈降してゆくことから、汚染地域において汚染物質は低深度よりも大深度の部分に偏在していることが多い。また、工場の操業等に起因する汚染の場合、除染対象地域は工場の建屋内となる。その場合、地表面付近や低深度の地中には金属製の設置物や埋設物等が存在(又は残存)しているのが一般的である。
これらの場合、従来のように単純に地中に棒状電極を挿入し、電極間に通電するだけでは除染の効率は必ずしも良くない。すなわち、汚染物質の深度分布を考慮すると、低深度の土壌を加温する電気エネルギーは、除染の観点からは無駄なエネルギーとなっている。また、金属設置物や埋設物等は土壌と比べて電気抵抗が極めて小さいことから、電極間にこれらが存在すると多くの電流がこれらを経由して流れ、除染対象たる土壌を加温することができないことになる。この場合にはまた、過電流による除染装置の損傷や、設置物・埋設物による電子機器への悪影響、不慮の感電事故等のおそれもある。
本発明が解決しようとする課題は、土壌加温のための電気エネルギーを効率よく利用することができるとともに、安全性の高い土壌浄化方法及び該方法用電極を提供することである。
前記課題を解決するために成された本発明に係る、電気加温法を用いた土壌浄化方法は、対象土壌に挿入する電極の一部の深度の部分の外周に非導電部を設けることを特徴とする。
このようにすることにより、その深度の部分の電極間には電流が流れないようにすることができる。従って、例えば、汚染物質が全く存在しない、或いはほとんど存在しないことが明かな深度の部分や、盛土等で汚染されていないことが予め分かっている深度の部分については、このような非導電部を設けることにより、無駄な電気エネルギーの消費を防止することができる。また、金属製設置物・埋設物等が存在する深度の部分にこのような非導電部を設けることにより、不要な過電流を防止し、必要な箇所への電気エネルギーの集中を図ることができる。さらには、周辺の電子機器への悪影響や感電事故等を防止することができる。
上記趣旨によれば、本発明に係る、電気加温法を用いた土壌浄化方法のための電極は、土壌に挿入する部分のうちの一部の深度の部分の外周に非導電部が設けられていることを特徴とする。
なお、このような非導電部を設ける部分は、1本の電極について1箇所であっても良いし、複数箇所であってもよい。
本発明は、従来の電気加温法で用いられていたような単純な電極について適用することもできるし、特許文献1に記載のような井戸構造体の電極について適用することもできる。特に、特許文献1には前記の通り、井戸枠自体を導電性のもので構成し、電極として作用させる構成も開示されているが、本発明はそのような電極についても適用することができる。この場合、VOCを含んだ地下水はエアリフト法で汲み上げても良いし、地上からの吸引により汲み上げても良い。
本発明に係る電気加温法を用いた土壌浄化方法及びそのための電極によれば、除染対象土壌の一部の深度の部分には加温用電流が流れないようにすることができる。従って、例えば、汚染物質が全く存在しない、或いはほとんど存在しないことが明かな深度の部分や、盛土等で汚染されていないことが予め分かっている深度の部分については、このような非導電部を設けることにより、無駄な電気エネルギーの消費を防止することができる。また、金属製設置物・埋設物等が存在する深度の部分にこのような非導電部を設けることにより、不要な過電流を防止し、必要な箇所への電気エネルギーの集中を図ることができる。さらには、周辺の電子機器への悪影響や感電事故等を防止することができる。
従来の電気加温法を用いた土壌浄化方法の不具合を説明するための図。 本発明の第1実施例である電気加温法を用いた土壌浄化方法の説明図。 第1実施例の電気加温法を用いた土壌浄化方法の効果を示すシミュレーション図であり、(a)は条件図、(b)は電流密度図。 本発明の第2実施例である電気加温法を用いた土壌浄化方法の説明図。 エアリフト法の井戸構造体の電極に本発明を適用した場合の説明図で、(a)は送気管が揚水管の外に設けられている場合の図、(b)は送気管が揚水管の中に設けられている場合の図。 エアリフト法の井戸構造体の井戸枠電極に本発明を適用した場合の説明図。 井戸枠電極の2つの例の外観図。
本発明の第1の実施例である、電気加温法を用いた土壌浄化方法を図2により説明する。本実施例の電気加温法を用いた土壌浄化方法では、土壌に挿入する電極23、24の上部の外周に非導電部23a、24aを設けておく。電極23、24における非導電部23a、24aの位置は、これら電極23、24を挿入すべき土壌12に挿入したとき、地表から、電極間の土壌12に存在する金属製の設置物15や埋設物16の存在位置よりも深い位置までをカバーするような位置としておく。
従来のように(図1)電極13、14をそのまま土壌12に挿入し、電極13、14間に電源11を接続して両電極13、14間に電圧を印加した場合には、多くの電流が設置物15や埋設物16を通じて流れてしまい、本来の目的である大深度の土壌12aにはあまり電流が流れないという問題があったが、本実施例の方法では、不要な部分での通電が防止され、必要な部分のみに通電を行うことができる。
この実施例の効果をシミュレーションにより確認した。シミュレーションの条件は図3(a)に示すとおりであり、20m立方の土壌の表面(GL)中央から、2本の径150mmの電極33、34を5mの間隔で深さ10mまで挿入し、各電極33、34の地表から深度3mまでの部分の外周を非導電部33a、34aで覆うこととした。そして、両電極33、34の間に深さ2mまで鉄板が埋設されていることとした。なお、土壌の比抵抗は15Ωmとした。シミュレーションの結果を図3(b)に示す。図3(b)において、電流密度が10A/m以上の部分を黒色で表している。本図に示すとおり、非導電部33a、34aで覆った部分(GL-3m)にはほとんど電流が流れず、それ以下の深度の土壌にのみ電流が供給されている。
本発明の第2の実施例である、電気加温法を用いた土壌浄化方法を図4により説明する。本実施例の電気加温法を用いた土壌浄化方法では、土壌に挿入する電極43、44の分離した2箇所の部分の外周に非導電部43a、43b、44a、44bを設けておく。このような電極43、44は、挿入すべき土壌12中の一部深度12b、12cにおいてVOC等の汚染物質が存在せず、その部分に電流を流すことが無駄であることが予め分かっている場合に有用である。
上記各実施例では電極或いは井戸構造体が2本だけの場合を示したが、3本以上の電極・井戸構造体を土壌中に挿入する場合も、それらの電極に同様の非導電部を設けることにより、同様の効果を得ることができる。
本発明を、エアリフト法に適用した実施例を図5(a)及び(b)により説明する。エアリフト法では、図5(a)及び(b)に示すような井戸構造体50を使用し、この井戸構造体50から土壌中に電流を流すとともに、この井戸構造体50から、加温により土壌から脱離した汚染物質を含む地下水を地上に引き上げる。
まず、図5(a)の例で井戸構造体50の説明を行う。井戸構造体50は、井戸枠51とその上下に設けられた井戸蓋52及び井戸底53、そして、井戸蓋52から井戸枠51の中に気密に挿入された電極54、揚水管55、送気管56、吸引管57等から構成される。
この電極54の一部に、本発明の趣旨に従い、非導電部54aを設けておく。
送気管56の先端は揚水管55の下端付近で揚水管55の側面に接続され、揚水管55内に空気を送給するようになっている。なお、図5(b)に示すように、送気管56を揚水管55の内部に挿入し、二重管構造としてもよい。
井戸枠51を鋼製とした場合には、電極54が井戸枠51と電気的に接触しないように、井戸蓋52と電極54の間には絶縁部材58を介装しておく。
図7(a)、(b)に示すように、井戸枠51の下方側面には多数のスリット59を形成し、土壌12に含まれている地下水を透過させるようにする。スリット59の幅は、土壌粒子が通過しない大きさとしておく。スリット59の長さや配置は、井戸枠51の強度が保持されれば任意であり、図7(a)、(b)に示すような態様に限られない。
送気管56の地上側には、空気を送るための送気ポンプ60を接続する。また、吸引管57の地上側には、吸引管57から空気(ガス)を吸引するための吸引ポンプ61を接続する。
このような井戸構造体50を、除染すべき土壌の周囲に掘削した複数の井戸の各所に設置する。地下水が含まれている土壌の深さまで掘削すると、土壌に含まれる地下水が水圧により井戸枠51内に侵入し、貯留水となる。この地下水の状態を予め調査しておくことにより、電極54、揚水管55、送気管56がこの貯留水の水面下に位置するように井戸構造体50の挿入深度を決定しておく。なお、井戸枠51が金属製である場合は特に問題はないが、井戸枠51が非金属製(絶縁体)である場合、隣接井戸の電極間の電流はスリット59を通してしか流れないため、井戸枠51に設けるスリット59も、予め調査の上、加温したい深さのところに設けておく。すなわち、電極54の非導電部54aで覆われていない部分に対応する深度にはスリット59を設けておくようにする。
これら井戸構造体50を土壌中に挿入した後、電極54間に電圧を印加すると、電圧は、井戸枠51内の貯留水、井戸間の土壌、隣接井戸構造体50の井戸枠51内の貯留水の間に印加される。これにより、まず、電流密度の高い、井戸枠51内の貯留水がジュール熱により加熱される。この貯留水の熱が周囲の土壌を加温するとともに、土壌12は電極間の電流によってもそれ自身でジュール発熱する。
こうして土壌12を加温すると、土壌粒子に吸着しているVOCが脱離するとともにその流動性が高まり、土壌12に含まれている地下水に混入する。この地下水は前記の通り井戸枠51内に侵入する。この井戸枠51内に侵入した地下水(貯留水)は、次のようにエアリフトポンプの原理により地上に汲み上げられる。
まず、送気ポンプ60により空気を送気管56に送る。送気管56の下方先端は、貯留水の水面下において揚水管55に接続しているため、空気は揚水管55に送り込まれる。送り込まれた空気は揚水管55内の貯留水に混入し、これにより、平均的に比重が軽くなった貯留水が、下方からの水圧(貯留水の揚程圧)により、井戸枠51内に立設された揚水管55の内部を押し上げられて浮上する。汲み上げる貯留水の量は、送気ポンプ60の出力により調整することができる。
井戸枠51の内部の貯留水を汲み上げていくと、その水位は一旦低下するが、土壌12中の地下水がその水圧で井戸枠51のスリット59を通過して侵入するため、井戸枠51内に貯留された貯留水の水位は回復する。このようにして、送気ポンプ60で送気を行っている間、VOCが混入した地下水(貯留水)を継続して回収することができる。
以上のとおり、本実施例では、各井戸が土壌(及び貯留水)加温のための電極井戸とVOC汚染水を回収する回収井戸の両方の機能を備える。したがって、電極井戸とは別の回収井戸を設ける必要がなく、井戸の本数を減らし、井戸掘削に掛かる費用ひいては土壌浄化に要するトータルのコストも下げることが可能となる。
さらに、エアリフトポンプの原理を利用していることで、以下のような効果も得られる。すなわち、貯留水に空気を送り込むことで貯留水が曝気され、その内部に混入していたVOCの一部が気化する。こうして気化したVOCは、揚水管55により地上に引き上げられる他、揚水管55の外部にも放出される。揚水管55中を貯留水と共に引き上げられたVOCガスは、地上で水と分離され、活性炭吸着等の排ガス処理装置へ送られ、無害化される。また、揚水管55の外部の井戸枠51内に放出されたVOCガスは、吸引ポンプ61により吸引管57を通して吸引され、同様に排ガス処理装置へ送られ無害化される。これらにより、VOCの回収効率を向上させることが可能となる。また、貯留水の温度が高いほどより多くのVOCが爆気によって気化するため、このような理由からも貯留水を加温するメリットがある。加えて、排ガス処理装置は、汲み上げたVOC汚染水を処理する水処理施設よりも安価なため、エアリフトポンプによるガス化促進は、処理のコスト削減メリットがある。
図5(a)(b)の井戸構造体50では井戸枠51の中に電極54を設けたが、図6に示すように、井戸枠71を金属製とし、井戸枠71を電極として用いることもできる。この井戸構造体70は、電極が無い他は、基本的な構造は、スリット79を有する点を含め、前記の井戸構造体50とほぼ同じである。ただ、電極を挿入しないため、井戸枠71(すなわち、掘削すべき井戸)の太さを小さくすることができる。また、非導電部は、基本的には井戸枠71の土壌に接する外周側の一部に設ければ良いが、地下水を通した通電も防止するためには、内周側にも設けておくことが望ましい。
上記実施例では、VOCを含んだ地下水はエアリフト法で汲み上げたが、地上に置いたポンプにより汲み上げても良い。
11…電源
12…土壌
13、14、23、24、33、34、43、44…電極
23a、24a、33a、34a、43a、43b、44a、44b…非導電部
50、70…井戸構造体
51、71…井戸枠
52…井戸蓋
53…井戸底
54…電極
54a…非導電部
55…揚水管
56…送気管
57…吸引管
58…絶縁部材
59、79…スリット
60…送気ポンプ
61…吸引ポンプ

Claims (6)

  1. 土壌に含まれる地下水を取り込むための透水性を有する井戸枠と、
    前記井戸枠の中に挿入された、前記井戸枠とは電気的に絶縁された電極と、
    前記井戸枠に取り込まれる貯留水の水面下にその一端が位置するように前記井戸枠内に挿入された揚水管と、
    前記井戸枠の中に挿入された、前記水面下において前記揚水管内に空気を送り込むための送気管と
    を備え、前記電極の前記水面下の部分のうちの一部の深度の部分の外周に非導電部が設けられていることを特徴とする、電気加温法を用いた土壌浄化方法のための井戸構造体。
  2. 導電性と、土壌に含まれる地下水を取り込むための透水性とを有する井戸枠と、
    前記井戸枠に取り込まれる貯留水の水面下にその一端が位置するように前記井戸枠内に挿入された揚水管と、
    前記井戸枠の中に挿入された、前記水面下において前記揚水管内に空気を送り込むための送気管と
    を備え、前記井戸枠の土壌に挿入する部分のうちの一部の深度の部分の外周に非導電部が設けられていることを特徴とする、電気加温法を用いた土壌浄化方法のための井戸構造体。
  3. 前記送気管が前記揚水管の外に設けられていることを特徴とする請求項又はに記載の、電気加温法を用いた土壌浄化方法のための井戸構造体。
  4. 前記送気管が前記揚水管の中に設けられ、前記揚水管と前記送気管が二重管構造となっていることを特徴とする請求項又はに記載の、電気加温法を用いた土壌浄化方法のための井戸構造体。
  5. 前記送気管の下端が封止され、側面に開口が設けられていることを特徴とする請求項に記載の、電気加温法を用いた土壌浄化方法のための井戸構造体。
  6. 導電性と、土壌に含まれる地下水を取り込むための透水性とを有する井戸枠と、
    前記井戸枠内の水を汲み上げるための手段と
    を備え、前記井戸枠の土壌に挿入する部分のうちの一部の深度の部分の外周に非導電部が設けられていることを特徴とする、電気加温法を用いた土壌浄化方法のための井戸構造体。
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