JP6463029B2 - ヒト間葉系幹細胞を特異的に認識するモノクローナル抗体並びにこれを用いたヒト間葉系幹細胞の分離及び/または品質評価を行う方法 - Google Patents

ヒト間葉系幹細胞を特異的に認識するモノクローナル抗体並びにこれを用いたヒト間葉系幹細胞の分離及び/または品質評価を行う方法 Download PDF

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Description

本発明は、高品質なヒト間葉系幹細胞を特異的に認識するモノクローナル抗体、並びにこれを用いたヒト間葉系幹細胞の分離及び/または品質評価を行う方法に関する。
ヒト間葉系幹細胞の分離培養方法としては、非特許文献1で報告されている培養法が一般的に用いられる。しかし従来法で得た細胞集団には劣化した(分化・増殖・遊走能を失った)夾雑細胞が多数混入しており、この夾雑物が本来はポテンシャルを持つはずの細胞に影響し、さらなる品質の劣化をまねく要因となる。
かかる従来の実情に鑑みて、増殖能・分化能・遊走能が従来よりも優れたヒト間葉系幹細胞の分離培養方法を確立した(非特許文献2、3、特許文献1)。これらの非特許文献2、3及び特許文献1によれば、CD271(LNGFR)とCD90(Thy1)に対する抗体を用い、ヒト骨髄、胎盤絨毛膜、脂肪組織、末梢血、歯髄などよりLNGFR Thy1共陽性細胞を選別することでヒト間葉系幹細胞を濃縮することができる。
また選別したLNGFR Thy1共陽性細胞を単一細胞(クローン)培養し、増殖が速いロット(REC: Rapidly Expanding Clone)を選択することで、増殖能・分化能・遊走能にすぐれた高純度ヒト間葉系幹細胞を得ることが可能となった。
同方法で得た高純度ヒト間葉系幹細胞(REC)は従来法で得た間葉系幹細胞と比較し、増殖能・分化能・遊走能全てが1000倍以上の能力を持っていた。
上記ヒト間葉系幹細胞の分離培養方法の特徴によれば、単一細胞培養を行うことで夾雑細胞を含まない条件が形成され、細胞品質を維持した拡大培養が可能となる。特に遊走能を保持しているため、経静脈内投与が可能となり、骨・軟骨形成不全症等の重篤な全身性疾患への応用が期待できるようになった。
特開2009−60840号公報
Pittenger, M.F., Mackay, A.M., Beck, S.C., Jaiswal, R.K., Douglas, R., Mosca, J.D., Moorman, M.A., Simonetti, D.W., Craig, S., and Marshak, D.R. (1999). Multilineage potential of adult human mesenchymal stem cells. Science 284, 143-147. Mabuchi Y, Morikawa S, Harada S, Niibe K, Suzuki S, Renault-Mihara F, Houlihan DD, Akazawa C, Okano H, Matsuzaki Y. (2013). LNGFR+THY-1+VCAM-1hi+ Cells Reveal Functionally Distinct Subpopulations in Mesenchymal Stem Cells. Stem Cell Reports 1, 152-165. CGHアレイデータ Gene Expression Omnibus (GEO) (accession number: GSE34484)
背景で述べたLNGFR Thy1共陽性細胞をクローン培養する手法ではフローサイトメトリーを用いたクローンソーティングの工程が必須であり、やや汎用性に欠けるため、REC特異的マーカーを指標に簡便に分離する手法の開発が望まれた。
また不死化細胞株とは異なり、RECといえども継代培養を長期に繰り返すことによる細胞品質の劣化は避けられないが、現時点では品質劣化の明確な指標が存在しない。
本発明では、高品質ヒト間葉系幹細胞(REC)を特異的に認識する新規モノクローナル抗体、並びにこれを用いた高純度ヒト間葉系幹細胞(REC)の分離及び/または品質評価を行う方法を提供することを目的とする。
また、RECとそれ以外の劣化したクローン(MEC: Moderately Expanding Clone, SEC: Slowly Expanding Clone)とで遺伝子発現解析を行い、REC特異的遺伝子を選別した。さらに特異的遺伝子が発現する蛋白を認識する新規モノクローナル抗体の作製を目的とする。
安全で治療効果の高い間葉系幹細胞を安定的に供給するためには、1)簡便にRECを選別する手法を確立し、2)得られたRECを拡大培養する際に細胞性能を担保する品質基準となるマーカー遺伝子を選定する、などの必要がある。この目的でREC特異的な遺伝子を特定し、当該遺伝子がコードする蛋白に対するモノクローナル抗体の作製を行った。
本発明に係るヒト間葉系幹細胞を濃縮する方法の特徴は、ヒト間葉系幹細胞が含まれる細胞集団から、Fzd5またはRor2を発現している細胞を選別する工程を包含し、増殖の早いヒト間葉系幹細胞を分離選別することにある。
抗Fzd5抗体また抗Ror2抗体を用いて、増殖の早いヒト間葉系幹細胞を分離選別するとよい。また、骨髄から前記細胞集団を調製する工程を包含するとよい。前記細胞集団を調製する工程が、骨髄をコラゲナーゼで処理する工程を包含してもよい。さらに、フローサイトメトリーを用いて細胞を選別してもよい。
本発明に係るヒト間葉系幹細胞の品質を評価する方法の特徴は、濃縮されたヒト間葉系幹細胞集団においてFzd5またはRor2を強制発現させることにより増殖の早いヒト間葉系幹細胞を検出または定量することで、ヒト間葉系幹細胞の品質を評価することにある。
本発明は、増殖の早いヒト間葉系幹細胞を特異的に認識する抗Fzd5モノクローナル抗体及び増殖の早いヒト間葉系幹細胞を特異的に認識する抗Ror2モノクローナル抗体を含んでいる。
特定した2つの遺伝子(Fzd5, Ror2:詳細は後述)がコードする蛋白の発現はRECに特異的であり、品質が劣化した細胞集団では発現が認められない。またRECの未分化状態維持に必須の遺伝子であり、1)発現阻害により細胞性能の劣化が誘導される、2)遺伝子の強制発現により未分化状態が延長する、などの結果から単なるバイオマーカーではなく、細胞機能に密接に関与することが明らかとなった。
従って本発明の効果として、それぞれの抗原を認識するモノクローナル抗体を作製した。この抗体を用い、1)培養MSCからRECを取り出す技術への応用、2)細胞性能を担保する品質検査への応用、等が可能となる。
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
間葉系幹細胞(MSC)の多様な分化能を説明する図である。 高品質間葉系幹細胞(REC)の分離方法を示す図である。 REC, MEC, SECを様々なパラメータで比較した結果である。 通常法で分離したMSCと高品質MSC(REC)の細胞性能を比較した表と図である。 REC, MEC, SEC 各60クローンを個々に分化誘導し、クローン毎の分化能を比較した表である。 REC, MEC, SEC 各クローンの細胞老化および分裂期マーカー発現を比較した結果のグラフである。 REC, MEC, SECのコピー数変異(Copy Number Variations: CNV)比較の表である。 Ror2, Fzd5がREC特異的に発現することを示す図とグラフである。 Fzd5の阻害がRECの細胞性質の劣化を誘導することを示す図とグラフである。 Fzd5の強制発現がRECの未分化性を誘導することを示す写真とグラフである。 新規に作製した抗Fzd5モノクローナル抗体の染色性を示す写真とグラフである。 新規に作製した抗Ror2モノクローナル抗体の染色性を示す写真と図である。 RECを製造するための、2通りの工程を示した図である。 CD106をマーカーとして用いたRECの選択的分離を示すグラフである。 REC特異的抗体を用いた、培養MSCの品質評価を行う模式図である。 人工骨・軟骨・歯芽・皮膚等への誘導による再生医療への応用例を示す図である。 厚生省ヒト幹細胞臨床研究の成果を示す図とグラフである。
まず、各図を順次参照しながら、本発明の背景となった高品質MSC(REC)の概要を説明する。
[図1]間葉系幹細胞 (Mesenchymal Stem Cells : MSC) は細胞採取に伴う倫理的問題が少なく、骨・軟骨・脂肪などへの多様な分化能を持つことから、造血幹細胞に次いで臨床応用が盛んに行われている体性幹細胞の一つである。後述する比較的簡単な手技により分離できることから、主に試験管内で軟骨・骨などへ分化誘導後に局所へ移植するなど、バイオマテリアルの材料として広く用いられている。
[図2]高品質ヒト間葉系幹細胞REC
MSCは通常、骨髄単核細胞を培養皿上に播種し、2〜3週間培養後に出現する繊維芽細胞様の付着細胞(CFU-F)を回収するという方法で得る。
一方、我々はマウスおよびヒト骨髄中に存在するMSCを特異的に認識する抗体のスクリーニングを行い、フローサイトメトリー(FCM)を用いて直接分離後にクローン培養を行うことで、高品質なヒトMSCを分離する手法を開発した。
A)抗体染色後のFCM解析:ヒト骨髄(または脂肪・胎盤絨毛膜)より単核細胞を調製し、抗LNGFRおよび抗Thy1に対する抗体で染色した細胞をFCMで解析する。LNGFR Thy1共陽性細胞をLT細胞とする。
B)FCMにより96穴培養プレートの各ウェルにLT細胞を1個ずつ播種する(クローンソーティング)。
C)単一細胞培養2週間後に培養プレートを顕微鏡下で撮影し、コンフレントになったウェルを選別し、各ウェルに含まれる細胞をREC(Rapidly Expanding Cells)とする。遅れて増殖しているウェルMEC/SEC(Moderately/Slowly Expanding Cells)は破棄する。
[図3]RECとMEC/SECの細胞性能比較
REC, MEC, SECの細胞性能を様々なパラメータで比較した結果を示す。
A)ヒト骨髄単核細胞をLNGFRおよびThy1に対する抗体で染色後、FCM解析を行った結果である。楕円で囲まれた部分がLT細胞である。
B)LT細胞を96穴プレートに単一細胞分離(クローンソート)することの模式図である。
C)単一細胞培養後の細胞数を定期的に計測した結果を示すグラフである。RECはMEC/SECと比較し増殖速度が速く、約2週間で0.5−1×104個まで増殖する。0.5−1×104個は96穴プレートのウェルがコンフレントになる数である。
D)REC・MEC・SECを骨・脂肪へ分化誘導した後、骨・脂肪細胞に特異的な遺伝子発現を定量PCRにて計測した結果を示す。RECはMEC, SECと比較し、特に脂肪分化能が高いことが示された。
E)REC・MEC・SECを再度96穴プレートにクローンソート後、2次コロニーを形成したウェルの数を比較した結果のグラフである。2次コロニーの形成は未分化状態の目安とされる自己複製能の指標である。RECの約33%が2次コロニーを形成するのに対し、MEC/SECはごく僅かなコロニーしか形成されない。
F)Luc遺伝子発現ベクターを導入した以下の細胞集団、WBM(通常法で得たMSC、WBMはWhole Bone Marrowの略称である)、REC、MEC/SEC、および陰性対照群としてルシフェラーゼで標識していないWBM MSC(Luc(-) Cultured MSC)をそれぞれ免疫不全マウスに対し経静脈的に投与後に、Lucの基質であるルシフェリンを腹腔内投与し、ルシフェラーゼの発光を体外から検出できる装置(IVIS)を用いて、移植24時間後に観察した結果を示す。上段)グラフは各マウスにおけるLuc発光量を数値化し、WBM MSC移植した群を100%とした時の他の細胞を移植したマウスの発光比率(%)をプロットしたものである。下段)画像は各群のレシピエントマウスにおけるLucの発光をイメージ化したものである。いずれの結果からも、RECを移植したマウスは肺での発光量が極端に低いことから、RECは肺毛細血管にほとんどトラップされないのに対し、MEC/SECはWBM(通常上で得た培養MSC)とほぼ同等に補足され、肺中にとどまっていることがわかる。
以上の結果を総合すると、RECは増殖能・分化能・遊走能ともに優れた細胞集団であり、特に後述する難治疾患への全身投与が可能という点で、新鮮骨髄中のMSCに匹敵する遊走性を維持していることがポイントとなる。
[図4]通常MSCと高品質MSC(REC)の細胞性能比較
A)細胞形態・分化能・増殖能・遊走能など、細胞性能を表す各パラメータについて、通常法で得たMSCとRECとを比較した表である。
B)骨芽細胞・脂肪へ分化誘導後の細胞をALP染色(骨)およびOil-Red-O染色(脂肪)した画像である。いずれもグレーの色が濃いほど分化率が高い。RECは通常MSCと比較し骨・脂肪へ分化させやすい細胞集団である。
C)通常MSCと高品質MSC(REC)の増殖曲線比較:通常MSCは約3回のパッセージ後に分裂増殖が停止するが、RECは約3ヶ月間増殖能が維持され、1個の細胞から1×1012個まで未分化性を維持したまま培養増幅が可能である。
[図5]補完データ1:REC, MEC, SEC 各クローンの分化能
REC, MEC, SECをそれぞれ60クローン樹立し、各クローン毎に脂肪・軟骨・骨へ分化誘導を行った結果を示した表である。
各系統細胞を脂肪(A)、軟骨(C)、骨(O)と示す。また表中の数値は、各系統への分化を示した細胞の比率(a)と総数(b)を示す。
RECのうち約80%がACO、すなわち脂肪・軟骨・骨全ての系統への分化能を示し、残りの2割はAC又はAOいずれか2系統への分化能を示した。一方、MECとSECは脂肪、軟骨、骨いずれか一系統にしか分化できない、または分化能を全く示さないクローンがMECで20%、SECで約40%存在していた。
従って、RECは多分化能を持つMSCを主体とするのに対し、MEC/SECは限られた細胞系譜への分化能しか持たない前駆細胞を含む細胞集団と言える。
[図6]補完データ2:REC, MEC, SECのコピー数変異(Copy Number Variations: CNV)比較
6週間培養後のREC, MEC, SECよりゲノムDNAを抽出し、Array-based comparative genomic hybridization(CGHアレイ)によりCNVの比較を行った結果を示した表である。表の見方は以下の通りである。
A)Number of aberration:変異総数
B)Overlap CNVs(変異データベース CNV_20090312)と重複する既知の変異
C)Non-overlap CNVs ( = a - b ):培養後新規に形成されたコピー数異常の総数
細胞の安全性を担保する上ではNon-overlap CNVsが少ない、あるいは全くないことが理想である。RECには新規に形成されたコピー数異常が認められず、MEC/SECでは認められることから、ゲノムの安定性の面でもRECはMEC, SECより優れていることがわかる。
[図7]補完データ3:細胞老化・増殖に関与するマーカー遺伝子の発現比較
A)細胞老化の指標であるSA-β-gal陽性細胞頻度を定量化したグラフである。
B)同じく細胞老化の指標であるp16(INK4a)の発現を定量PCRにより解析した結果である。
C)分裂期にある細胞のマーカーであるKi67陽性細胞の頻度を定量化した結果である。RECの約20%が分裂期にあるが、MEC/SECは5%以下である。
以上の結果を総合すると、RECは以下の特長を持つ。
1.形態的に極めて均一な細胞集団である
2.細胞老化が見られない
3.分裂速度が早い
4.分化能(特に脂肪分化能)が高い
5.遊走能を維持している
RECはヒトMSCのうち最も未分化な細胞集団であり、骨髄中のMSCに最も近い性質を持つ。またMEC/SECあるいは通常法で得たMSCと比較し、高い分化・増殖・遊走能にすぐれた、新鮮かつ変異の少ない、細胞性能が保証された細胞集団であることが示された。
[図8] 未分化MSC(REC)特異的遺伝子Ror2, Fzd5の同定
REC, MEC, SECそれぞれで発現する遺伝子の発現レベルをDNAアレイ法により比較し、Wnt受容体の一つであるFzd5およびその共受容体であるRor2がREC特異的であることを確認した。
A)REC,MEC,SECそれぞれにおける定量的PCRによるRor2 mRNAの発現比較。
B)REC,MEC,SECそれぞれにおける定量的PCRによるFzd5 mRNAの発現比較。
C)ウエスタンブロッティング法によるFzd5蛋白発現の比較。
D)蛍光免疫染色法によるFzd5蛋白の細胞内局在比較。
E)複数の解析方法で評価した結果、Fzd5とRor2の発現がREC特異的であることが確認できた。従ってFzd5およびRor2はRECの細胞品質評価の指標として有効と考えられる。
[図9] Fzd5 のloss of functionによる細胞老化誘導
RNAインタフェレース法は対象とするmRNAに対し相補的な配列を持つ短いRNA(shRNA)を細胞内に導入し、対象とするmRNAを破壊することで目的遺伝子の機能を調べる手法である。Fzd5に対し相補的な配列を持つshRNA(shFZD5)によりFzd5 mRNAを破壊した場合のRECの細胞性質を対照群(shCTRL:Fzd5に対し相補的ではないランダム配列のshRNA)と比較した一連の実験結果を示す。
A)shFZD5またはshCTRLをそれぞれRECに導入した後、Fzd5 のmRNA量を定量的PCR法にて定量化したグラフである。対照群(shCTRL)における Fzd5 mRNA量を100とした場合、shFZD5を強制発現したRECではFzd5 のmRNA量が約40%に低下していた。
B)shFZD5またはshCTRLをそれぞれRECに導入した後、対照群の細胞数を1とした時のshFZD5強制発現群の細胞数を縦軸、shRNA導入後の日数を横軸にプロットしたグラフである。shFZD5を発現したRECは対照群と比較し、細胞数の急激な減少が認められ、Rzd5の阻害により増殖能の低下が誘導されることが示唆された。
C)shFZD5またはshCTRLをそれぞれRECに導入後、脂肪細胞へ分化誘導し、培養14日目にOil-Red-Oで脂肪滴を染色した画像である。対照群と比較しFzd5を阻害すると脂肪分化能の低下が認められた。
D)細胞老化の指標であるSA-β-gal活性は基質であるX-galを加えると青色に染色され検出できる。shFZD5またはshCTRLをそれぞれRECに導入後、x-gal染色を行った画像および各細胞集団におけるSA-β-gal活性を持つ細胞頻度をプロットしたグラフを示す。
E)細胞老化の指標であるp16(INK4a)のmRNA量を定量的PCR法により定量化したグラフである。対照群を100とした場合、shFZD5導入RECにおけるp16 mRNA量は約300であり、Fzd5の発現阻害により細胞老化が誘導されることが示された。
F)shFZD5またはshCTRLをそれぞれRECに導入後、各細胞集団に対し抗F-actin抗体にて細胞内染色を行いStress Fiberの形成を観察した画像、および同細胞集団それぞれに含まれる各細胞の面積(細胞サイズ)の平均値をプロットしたグラフを示す。
以上の結果から、RECにおけるFzd5の機能を阻害することにより、増殖能の低下、分化能の低下、細胞老化の誘導、Stress fiber形成による遊走性の低下と細胞サイズの増大が誘導され、MEC/SECと同じ性状に変化することから、Fzd5は単なるバイオマーカーではなく、RECの細胞性能の維持を担保する機能分子と考えられる。
[図10] Fzd5の gain of functionによる長期増殖能維持
Fzd5の全長cDNAをRECに強制発現することでFzd5 mRNAを恒常的に発現させたことによる細胞機能への影響を確認した。発現ベクターはFzd5 cDNAと蛍光蛋白GFP(Green Fluorescent Protein、緑色蛍光タンパク質)がタンデムに連なっており、Fzd5遺伝子導入細胞はGFPを同時に発現しているため蛍光顕微鏡を用いて導入した遺伝子の発現が確認できる。
A)蛍光顕微鏡によるGFP発現細胞の形態観察。Fzd5 cDNAとGFPを導入した細胞集団(Fzd5)とGFP遺伝子のみを導入した対照群(CTRL)の遺伝子導入後28日目の細胞形態を撮影した画像である。
対照群では図中矢印で示した細胞老化の特徴であるサイズの大きい多極性細胞が多数出現しているのに対し、Fzd5発現RECはほぼ全てが細胞質の小さい双極性の形態を維持していた。
B)対照群の細胞数を1とした時のFzd5発現RECの細胞数を縦軸、遺伝子導入後の日数を横軸にプロットしたグラフである。対照群と比較し、Fzd5を強制的に発現させたRECでは増殖能が長期的に維持されていた。
以上の結果から、Fzd5を介したWntシグナル刺激により、未分化性を維持した状態で長期的な培養増幅が可能になることが見込まれる。
[図11] ヒトFzd5に対する新規モノクローナル抗体の作製
ヒトFzd5抗原の細胞外領域を免疫原とし、ホストマウスを免疫後、常法に従いハイブリドーマを作製し、Fzd5遺伝子を発現させたBa/F3細胞でスクリーニングを行うことで、新規の抗Fzd5モノクローナル抗体(クローン名:6F5)を得た。
本抗体を用い様々な手法でFzd5蛋白が検出できるか否かの確認を行った。
A)Fzd5の細胞外領域を強制発現させたBa/F3細胞に対し、Biotin標識した6F5抗体で染色後、ストレプトアビジンPEで蛍光標識しフローサイトメトリーで解析を行い、PEの蛍光強度を横軸にプロットしたヒストグラムを示す。図中のグレーで示したヒストグラムは一次抗体を加えていない陰性コントロール、白抜きのヒストグラムは6F5で染色したサンプルのPE蛍光強度である。図中の横バーで示した領域がFzd5陽性細胞領域であり、数値は陽性率(%)を表す。
B)RECの異なる3クローンより細胞内蛋白を調製し、6F5を一次抗体としてFzd5蛋白を検出したウエスタンブロッティングの結果を示す。陰性コントロールとして、サル腎臓由来の細胞株COS7より調製した細胞内蛋白を用いた。
C)REC細胞に対し6F5-Biotinを一次抗体として染色後、ストレプトアビジン-Alexa555にて蛍光ラベル後に蛍光顕微鏡で観察、撮影した画像である。抗Fzd5抗体(6F5)はフローサイトメトリー、ウエスタンブロッティング、蛍光免疫染色の全てに利用可能であった。
[図12] ヒトRor2抗原に対する新規モノクローナル抗体の作製
ヒトRor2抗原を免疫原とし、新規に2種の抗Ror2抗体(クローン名:6F12, 7C9)を作製した。両クローンを用い、
A)RECに対し、1次抗体として6F12-Biotinおよび7C7-Biotinで染色後、SAV-PEで蛍光ラベルし、フローサイトメトリーを用いてPE蛍光の検出を行った。1次抗体を加えていない二次抗体のみのサンプルを陰性コントロールとする。図は縦軸にFITC蛍光(染色していないため全て陰性)、横軸にPE蛍光をプロットした2次元ドットプロットである。陰性コントロール群ではPE蛍光を発する細胞がほぼ含まれない領域(図中の台形で囲まれた部分:0.011%)がClone 6F12もしくはClone7C9で染色したサンプルにおいてPE蛍光を発現している細胞集団(それぞれ35.9%、69.3%)であった。
B)RECに対し7C9-Biotinを1次抗体として免疫染色を行い、Streptavidin-Alexa488で蛍光標識後にRor2蛋白の発現を蛍光顕微鏡にて観察・撮影した画像である。RECの大部分がRor2蛋白を発現していることが確認された。
C)新鮮骨髄細胞に対しLNGFR-APC, Thy1-FITC, Ror2-PE(それぞれの抗原に対するモノクローナル抗体)による3重染色を行い、フローサイトメトリー解析を行った結果を示す。左はLNGFRの発現を縦軸に、Thy-1の発現を横軸にプロットした図であり、四角内がヒトMSCが高頻度に含まれるLNGFR Thy1共陽性細胞集団である。右2つの図はLNGFR Thy1共陽性細胞集団のみを抽出後、横軸を細胞の大きさの指標であるFSC、縦軸にSAV-PEで標識した抗Ror2-Biotin抗体(6F12または7C9)のPE蛍光をプロットした図である。四角で囲った部分が陰性コントロールを元に作製したRor2陽性領域であり、数値は陽性率(%)を表す。Clone7C9を用いた場合、LNGFR Thy1共陽性細胞の92.3%がRor2陽性であり、LNGFR Thy1に代わるMCSの選別マーカーとして用いることが可能である。
[図13]同抗体を用いた、細胞品質の評価
通常法である付着培養を行ったヒトMSC(または継代培養を行ったREC)を回収し、次の工程を行う。
1.REC特異的なモノクローナル抗体(図11,12)で染色する。
2.フローサイトメトリーにて陽性細胞の頻度(含有%)を計測する。
3.蛍光顕微鏡下で陽性細胞の頻度(含有%)を計測する。
上記1の工程の後に工程2または工程3のいずれかを実施してもよく、また、上記1の工程の後に工程2及び工程3の双方を実施してもよい。
この手法により、その細胞集団にどれだけのRECが含まれているかを定量化することができるため、対象とするMSCがどの程度の分化・増殖・遊走能を持つか、細胞品質を評価することが可能である。
[図14]Fzd5, Ror2モノクローナル抗体を用いたRECの分離
RECを得るために現在行っているLNGFR Thy1共陽性細胞を単クローン培養する手法に代わり、REC特異的モノクローナル抗体を用いることで、培養MSCより高品質MSC (REC)を分離・製造することが可能である。
工程1として、現行の単クローン培養法を示す。
1)骨髄単核細胞を抗LNGFR、抗Thy1(抗CD106抗体を加える場合もある)で染色する
2)セルソータを用い、LNGFR陽性・Thy1陽性(かつCD106強陽性)細胞を96穴プレートにクローンソート(1ウェルに細胞1個ずつ播種すること)を行う
3)顕微鏡下で観察し、2週間後にコンフレントになったウェルに含まれる細胞をRECとし、遅れて増殖するウェルは破棄する
4)RECとして選別したウェルから細胞を回収する
5)以下は工程2と同様
工程2として、REC特異的抗体を用いた、培養MSCからのRECの分離方法を示す。
1)骨髄単核細胞を10−20%血清+bFGF添加培地(37℃、1−5% CO2)で約2週間培養する
2)付着細胞を回収し、RECマーカー(抗Fzd5・抗Ror2)に対するモノクローナル抗体で単一染色を行う
3)RECマーカー陽性細胞をセルソータで分離する
4)分離した細胞をRECとする
5)回収した細胞を凍結バイアルに封入し液体窒素中で保存する
6)凍結細胞したものを高品質ヒト間葉系幹細胞(製品)とする
7)ユーザーはバイアルに入った細胞を融解後、培養皿またはフラスコ上で拡大培養を行うことで、最終的に1×1010以上の高純度間葉系幹細胞を安定して使用することが可能である。
補足事項
・コンフレントとは培養容器表面の90%以上を培養細胞が覆っている状態である。
・セミコンフレントとは培養容器表面の70−80%を培養細胞が覆っている状態である。
・使用する培養器具のサイズおよび種類は細胞の増殖速度に応じ適宜変更可能である。
[図15]補完データ:CD106をマーカーとして用いたRECの選択的分離
Fzd5, Ror2の他、CD106の発現がRECに特異的であったことから、これがRECだけを分離するマーカーになりうるかを確認した(非特許文献2)。
A)LT細胞のバルク培養4週後および8週後のCD106のフローサイトメトリー解析。縦軸に死細胞のマーカーであるPIの蛍光強度、横軸にCD106抗体で染色した際の蛍光強度をプロットしている。図中の十字線は陰性コントロールとの境目であり、横線の上側は死細胞、縦線の右側がCD106陽性細胞である。図中の数字は4分画それぞれのパーセンテージを示す。
培養前は全細胞がCD106を発現しているが、培養4週後には54.9%に減少し、8週後には3.5%まで陽性細胞が減少した。したがって、培養期間が長くなるに従いCD106を発現する細胞の頻度は低下し、ほとんどの細胞が陰性となることが判明した。
B) A)で示した培養4週目および8週目の細胞集団からCD106陽性または陰性細胞をフローサイトメトリーによりそれぞれ分離後に、コロニーアッセイを行った結果のグラフである。各細胞集団(横軸)が形成したコロニー数を縦軸にプロットし比較すると、培養4週後、8週後いずれの細胞もCD106陰性と比較し陽性細胞集団で有意に高いコロニー形成率を示した。
以上の結果からCD106を指標とすることは、通常法で得た培養MSCよりRECに相当する細胞を選択する上で有用であることが確認された。RECに対しCD106よりも特異性の高いFzd5, Ror2を指標に細胞分離を行うことで、さらに効率よくRECが分離できることが期待できる。
[図16]人工骨・軟骨・歯芽・皮膚等への誘導による再生医療への応用例
通常MSCは遊走能を持たないため、局所への投与による機能的な治療法によらざるを得なかった。高品質MSCは遊走性を維持しており、経静脈内投与が可能である。従って新しい研究・治療戦略が可能となる。
特に骨軟骨形成不全等、予後不良の全身疾患に対する根治療法となりうる。また将来的に、ES/iPS細胞から誘導した機能細胞(神経・肝・心筋・膵等)を用いた細胞治療を行う際、慢性的な変性臓器へいきなり機能細胞を移植するよりも、あらかじめ間質細胞(支持細胞)の投与により組織の場(ニッシェ)を整えておけば機能細胞の生着率が向上する等、幅広い応用が期待できる。
[図17]全身性骨形成不全疾患に対し培養MSCを経静脈的に投与した臨床例
産総研と島根大学医学部附属病院が共同で行った2症例の臨床研究では、経静脈的に親をドナーとする骨髄移植を行った後、同じドナーからのMSCを複数回移植した。その結果、未治療であれば徐々に失われていく骨については、移植後6か月ごろから顕著に改善し、骨が全く消失していた部位の石灰化が全身で認められるまでに回復した(図17A)。また、呼吸障害については、移植後1〜2か月で呼吸機能が改善して、1例目は、呼吸器から離脱して、歩行訓練まで行える状態にまで改善した(図17B)。さらに骨の石灰化だけでなく、難治性移植片対宿主病(Graft Versus Host Disease ; GVHD)に対してもMSC移植が効果的であった(図17C)。
次に、本発明の内容を順次詳述する。
1.発明のバックグラウンド
(1)技術分野
バイオ・医薬・医用工学に関する。
(2) 従来技術に関する情報
間葉系幹細胞 (Mesenchymal Stem Cells ; MSC) は細胞採取に伴う倫理的問題が少なく、骨・軟骨・脂肪などへの多様な分化能を持つことから、造血幹細胞に次いで臨床応用が盛んに行われている体性幹細胞の一つである。比較的簡単な手技により分離できることから、主に試験管内で軟骨・骨などへ分化誘導後に局所へ移植するなど、バイオマテリアルの材料として広く用いられている(図1)。
MSCは通常、骨髄単核細胞を培養皿上に播種し、2〜3週間培養後に出現する繊維芽細胞様のコロニー形成細胞(CFU-F)を回収するという方法で得る(図2上段)。
(3)従来技術の問題点と発明が解決しようとしている課題
上記の手法で得たMSCには下記に記載する問題点が指摘されている。
1)純度:血球細胞や分化能が低い、もしくは完全に失った夾雑細胞の混入が避けられず、実際に分化・増殖能を持つ未分化細胞(本来のMSC)は約1−3/1×103という低頻度でしか含まれていない (Colter PNAS 2000)。
2)自己複製能:初代培養細胞であるMSCは増殖回数に限界があり、通常は3−4回のパッセージ後に増殖性を失う。またその際、分化能も著しく低下している。
3)遊走性:培養増幅中に細胞の形質変化が起こり、骨髄内では遊走性を維持していたMSCが試験管内で培養するうちにその能力を失ってしまう(Rombouts Leukemia 2003, Morikawa J.Exp.Med. 2009)。
通常法で得たMSCのうちそのほとんどが夾雑細胞であり、極めて不均一な細胞集団である。分化増殖遊走能を持たない不必要な細胞の混入は偶発的で、その頻度をコントロールすることは困難であるため、通常法で得たMSCはロット毎の品質にばらつきが生じ、実験精度に影響する等の問題が指摘されている。
安全かつ効果的な細胞治療を目的とした場合、従来から指標とされてきた増殖能と分化能ばかりではなく、細胞の均一性や遊走能も細胞品質の指標として考慮する必要があり、新たな細胞性能を担保するための指標の確立が求められている。
またES/iPS細胞とは異なり、未分化性を維持したまま無限に培養増幅させることができないため、細胞治療等に供するに必要な細胞数を確保するには毎回ドナーからの骨髄採取とその後の培養を行わざるを得ず、ドナー負担が重いことも指摘されている。
したがって、高品質(分化・増殖・遊走能が高い)かつ均一なMSCを得るための分離および大量培養技術が求められる。
以上の諸問題を解決することで、品質が保証されたヒトMSCを安定的に供給するシステムの確立が期待できる。
2.発明の内容
(1)発明の技術的手段とその作用
通常法で得たMSCと比較し、我々が確立した手法(図2下段)で得る高品質MSC(REC)の増殖能は極めて高く、さらに骨・脂肪分化能、および遊走性に顕著な差が見られる(図3B)。
従って本発明で我々が新規に明らかにしたRECにのみ発現する(特異的な)抗原蛋白は以下の用途に利用できる。
・MSCに求められる細胞性能(増殖・分化・遊走能)を担保する指標として用いる。
・通常法で培養したMSCからRECに該当する細胞を分離するための指標として用いる。
以上2点への応用が可能である。
(2)細胞性能を担保する指標
抗Fzd5モノクローナル抗体の新規作製とFzd5およびRor2の検出
Wnt受容体の一つであるFzd5とその共受容体であるRor2はREC特異的であり、それぞれの発現を検出し定量化すれば細胞性能の指標になりうる(図8A,B)。
新規に作製した抗Fzd5抗体は、フローサイトメトリー、ウエスタンブロッティング、蛍光免疫染色いずれの手法においてもFzd5蛋白の検出と定量化が可能である(図8C,D、図11)。
新規に作製した抗Ror2抗体を用いることで、A) フローサイトメトリー、B)蛍光免疫染色によりRor2蛋白の検出と定量化が可能である(図12A,B)。
さらに新規に作製した抗Ror2は骨髄中に含まれるMSCのマーカーとしても利用可能である(図12C)。
上記、新規モノクローナル抗体を用いることで、対象とする細胞集団中にどれだけのRECが含まれるかが定量でき、細胞品質を評価するための指標になりうる(図13)。
(3)不均一なMSCからのRECの分離
非特許文献2で示したように、REC を分離するにはヒト組織中に存在するLT細胞をクローン培養する工程が必須であったが、クローン分離が行える施設は限られており、汎用性に欠ける。そこで、夾雑細胞が混入した培養MSCからREC特異的マーカーを指標にRECのみを分離する手法に新規に作製したFzd5とRor2抗体が利用できる。この手法は簡便かつ汎用性が高く極めて有用である。
3.発明によって生じた特有な効果
これまで有効なマーカーが存在しないために、分離・評価方法が存在しなかったRECを分離すること、RECの含有量を評価することが可能となったこと、以上二点がこの発明によって生じた特有な効果である。
4.発明に関する先行技術
ヒト骨髄由来あるいは脂肪由来間葉系幹細胞の品質評価方法の開発は国内でも数カ所で行われている。細胞表層の糖鎖解析をはじめ、膜タンパク質、分泌性因子、遺伝子発現パターン等のデータは蓄積されているが、全て夾雑細胞の混入した培養MSCを対象とした指標であり、増殖・分化・遊走能を持つRECを評価する方法は未だ存在していない。
5.実用化に際しての技術的課題
誰もが簡便に評価することができるよう、全行程のマニュアル化および必要試薬をキット化することが必要であるが、技術的には特に課題は存在しない。
6.発明と競合する技術
5.先行技術の項に記載した通り、現在のところ競合する技術は存在しない。
7.実用化に関する有用性
新規に作製した高純度間葉系幹細胞に特化した染色性を示すモノクローナル抗体のうち、細胞分離に適した候補はナノ磁気微粒子と結合させることによって、間葉系幹細胞分離用試薬として製品化できる。また、分離した間葉系幹細胞の品質を検定するための細胞評価用の試薬として、蛍光物質結合抗体、細胞染色用試薬が実用化できる。
8.実用化に際して応用可能な分野
間葉系幹細胞は、従来行われてきたバイオマテリアルの材料として、あるいはその多分化能を生かし、重症筋無力症、慢性リウマチ症等への投与、さらには脊髄損傷、心・血管、慢性肝不全を始めとする重度の疾患治療に対する細胞治療を行う際に組織の場(ニッシェ)を整える支持細胞として共移植するなど、様々な応用が期待されている(図16)。特に、遊走性を維持しているRECを用いることにより、これまで治療法が存在しなかった低フォスファターゼ症をはじめとする全身性骨・軟骨疾患等の代謝性疾患、GVHDの治療など経静脈的に投与する必要のある全ての疾患に適用すれば、これまでにない治療効果が見込まれる。
上述における細胞集団を調製する工程は、骨髄をコラゲナーゼで処理する工程を包含してもよい。また、同工程は、G-CSF投与後の末梢血から細胞集団を調製するようにしてもよい。
本発明によれば、全身性疾患への治療に利用することができるヒト間葉系幹細胞を効率良く分離培養する技術を提供すること、および得られた細胞集団が移植に適しているか、薬効性を示すかの基準となる品質評価を行うことが可能になった。

Claims (4)

  1. 増殖の早いヒト間葉系幹細胞を濃縮する方法であって、
    抗Ror2抗体を用いて、ヒト間葉系幹細胞が含まれる細胞集団から、増殖の早いヒト間葉系幹細胞以外の他のヒト間葉系幹細胞と比べてRor2高発現している細胞を分離選別する工程を包含する、増殖の早いヒト間葉系幹細胞濃縮方法。
  2. 骨髄から前記細胞集団を調製する工程を包含することを特徴とする請求項に記載の増殖の早いヒト間葉系幹細胞濃縮方法。
  3. 前記細胞集団を調製する工程が、骨髄をコラゲナーゼで処理する工程を包含することを特徴とする請求項に記載の増殖の早いヒト間葉系幹細胞濃縮方法。
  4. フローサイトメトリーを用いて細胞を選別する請求項1〜のいずれかに記載の増殖の早いヒト間葉系幹細胞濃縮方法。
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