JP6461697B2 - 調質圧延方法、圧延液供給装置及び調質圧延設備 - Google Patents

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Description

本発明は、調質圧延方法、圧延液供給装置及び調質圧延設備に関する。
従来から、水と圧延油との混合液であるエマルジョン型圧延液を用いて被処理鋼板の調質圧延を行う湿式調質圧延方法が知られている。この湿式調質圧延方法によれば、約4%以上の圧下率で被処理鋼板の調質圧延(いわゆるHRT:Heavy Reduction Temper)を行うことが可能である。そのため、例えば缶用のブリキ原板を製造する場合、調質圧延時の圧下率を制御することにより、同一成分系を有する一枚の被処理鋼板(例えば焼鈍済みの冷延鋼板)から、テンパー度(硬さ)の異なる複数種のブリキ原板を製造することが可能となる。
例えば、下記特許文献1には、水、圧延油及び防錆剤を含有するエマルジョン型圧延液を用いて被処理鋼板(焼鈍済みの冷延鋼板)の調質圧延を行うことにより、優れた防錆性を有するブリキ原板を製造する技術が開示されている。また、下記特許文献1に開示された技術では、エマルジョン型圧延液に含まれる圧延油の濃度を調整することにより、HRT圧延時の圧下率に適したエマルジョン型圧延液と、2CR圧延時の圧下率に適したエマルジョン型圧延液とを得ている。
上記のように、従来では、エマルジョン型圧延液に含まれる圧延油の濃度を調整することにより、調質圧延時の圧下率に適したエマルジョン型圧延液を得ていた。言い換えれば、従来では、エマルジョン型圧延液の摩擦係数が調質圧延時の圧下率に適した値となるように、エマルジョン型圧延液に含まれる圧延油の濃度を調整していた。
特開平6−1992号公報
近年では、単一のブリキ原板製造ラインにおいて、単一成分を有する一枚の被処理鋼板(例えば焼鈍済みの冷延鋼板)から、テンパー度の異なる複数種のブリキ原板を製造することが要求されている。そのため、ブリキ原板の種類の数が増えるほど、調質圧延時の圧下率の制御範囲(つまり、エマルジョン型圧延液の摩擦係数の調整範囲)が拡大する。このような圧下率の制御範囲の拡大に対して、単一種の圧延油の濃度調整だけで対応することは困難である。
エマルジョン型圧延液の摩擦係数を調整する他の方法として、圧延油の種類を変更することが挙げられる。しかしながら、この方法を採用する場合、種類の異なる圧延油同士の混合に起因するコンタミネーションの発生を防止するために、製造ラインを一旦停止させた後、圧延油を交換する前に、圧延機と圧延油の輸送配管などを洗浄する必要がある。その結果、能率の低下を招くという問題が生じる。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、製造ラインを停止させることなく、被処理鋼板の圧下率の変化に応じて最適な調質圧延を連続的に行うことが可能な調質圧延方法、圧延液供給装置及び調質圧延設備を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決して係る目的を達成するために、以下の手段を採用する
(1)本発明の一態様に係る調質圧延方法は、摩擦係数の異なる複数の圧延液を予め用意する第1工程と、被処理鋼板の圧下率、板厚及び調質圧延後の目標硬さに応じて、前記複数の圧延液のうち1つを選択する第2工程と、前記第2工程で選択された前記圧延液を用いて前記被処理鋼板の調質圧延を行う第3工程とを有し、前記第1工程では、前記圧延液に含まれる1種の圧延油、水及び添加剤のうち、少なくとも前記添加剤の濃度が他の前記圧延液と異なるように、前記圧延液のそれぞれの前記添加剤の濃度を調整することにより、前記摩擦係数の異なる前記複数の圧延液を用意する。前記圧延油は、天然油脂を除く成分を含有し、前記成分として、炭素数が16〜20の脂肪酸及び2価ネオペンチル型アルコールからなり、且つ水酸基価が45〜55mgKOH/gであるエステルと、動粘度が5〜15mm /sである精製炭化水素と、ノニオン界面活性剤とを含有する。前記添加剤は、炭素数が2〜6であるアルカノールアミンと、脂肪族二塩基酸とを含有する。上記の被処理鋼板の調質圧延を行う第3工程において、被処理鋼板と接触する圧延ロールのロール径は、例えば直径300〜650mmとする。
(2)上記(1)に記載の調質圧延方法において、前記圧延液における前記圧延油の濃度が、前記水に対して0.005〜1.0体積%であり、前記圧延液における前記添加剤の濃度が、前記水に対して0.8体積%以下であり、前記2価ネオペンチル型エステル、前記精製炭化水素及び前記ノニオン系界面活性剤の合計含有量を100体積%と定義したとき、前記2価ネオペンチル型エステルの含有量が13〜18体積%、前記精製炭化水素の含有量が68〜81体積%、前記ノニオン系界面活性剤の含有量が6〜14体積%であり、前記アルカノールアミン及び前記脂肪族二塩基酸の合計含有量を100体積%と定義したとき、前記アルカノールアミンの含有量が58〜63体積%、前記脂肪族二塩基酸の含有量が37〜42体積%であってもよい。
(3)上記(1)または(2)のいずれか一項に記載の調質圧延方法が、前記被処理鋼板の調質圧延に使用された前記圧延液を回収して再利用する第4工程をさらに有していてもよい。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の調質圧延方法において、前記被処理鋼板の圧下率が3〜15%であり、前記被処理鋼板の板厚が0.10〜0.40mmであり、前記被処理鋼板の調質圧延後の硬さとして、HR30T硬さが47〜73であってもよい。
(5)上記(4)に記載の調質圧延方法において、前記被処理鋼板の調質圧延後のA破断率が90%以上であってもよい。
(6)本発明の一態様に係る圧延液供給装置は、被処理鋼板の調質圧延を行う圧延機に圧延液を供給する圧延液供給装置であって、前記圧延液を貯留する複数の圧延液タンクと、前記圧延液の原料である1種の圧延油、水及び添加剤を、前記複数の圧延液タンクのそれぞれに投入する原料投入装置と、前記被処理鋼板の圧下率、板厚及び調質圧延後の目標硬さに応じて前記複数の圧延液タンクのうち1つを送液元タンクとして選択し、前記送液元タンクに貯留されている前記圧延液を前記圧延機へ送液する送液装置とを備える。前記圧延油は、天然油脂を除く成分を含有し、前記成分として、炭素数が16〜20の脂肪酸及び2価ネオペンチル型アルコールからなり、且つ水酸基価が45〜55mgKOH/gであるエステルと、動粘度が5〜15mm /sである精製炭化水素と、ノニオン界面活性剤とを含有する。前記添加剤は、炭素数が2〜6であるアルカノールアミンと、脂肪族二塩基酸とを含有する。前記原料投入装置は、前記圧延液に含まれる前記原料のうち、少なくとも前記添加剤の濃度が他の前記圧延液と異なるように、前記圧延液タンクのそれぞれに対する前記各原料の投入量を制御することにより、摩擦係数の異なる前記圧延液を前記圧延液タンクのそれぞれに貯留させる。
(7)上記(6)に記載の圧延液供給装置において、前記圧延液における前記圧延油の濃度が、前記水に対して0.005〜1.0体積%であり、前記圧延液における前記添加剤の濃度が、前記水に対して0.8体積%以下であり、前記2価ネオペンチル型エステル、前記精製炭化水素及び前記ノニオン系界面活性剤の合計含有量を100体積%と定義したとき、前記2価ネオペンチル型エステルの含有量が13〜18体積%、前記精製炭化水素の含有量が68〜81体積%、前記ノニオン系界面活性剤の含有量が6〜14体積%であり、前記アルカノールアミン及び前記脂肪族二塩基酸の合計含有量を100体積%と定義したとき、前記アルカノールアミンの含有量が58〜63体積%、前記脂肪族二塩基酸の含有量が37〜42体積%であってもよい。
(8)上記(6)または(7)のいずれか一項に記載の圧延液供給装置が、前記圧延機から前記被処理鋼板の調質圧延に使用された前記圧延液を回収し、回収した前記圧延液を前記送液元タンクに戻す回収装置をさらに備えていてもよい。
(9)本発明の一態様に係る調質圧延設備は、被処理鋼板の調質圧延を行う圧延機と、前記圧延機に圧延液を供給する上記(6)〜(8)のいずれか一項に記載の圧延液供給装置とを備える。
本発明によれば、製造ラインを停止させることなく、被処理鋼板の圧下率の変化に応じて最適な調質圧延を連続的に行うことが可能である。その結果、製造効率の低下を防ぐことが可能である。
本発明の一実施形態に係る循環式調質圧延設備1の構成を示す図である。 添加剤を含有しない圧延液について、圧延油の濃度と圧延液の摩擦係数との関係を検証した結果を示す図である。 添加剤を含有する圧延液について、圧延油の濃度を0.02%一定とした条件下で、添加剤の濃度と圧延液の摩擦係数との関係を検証した結果を示す図である。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態における循環式の調質圧延設備1の概略構成図である。この調質圧延設備1は、例えば、焼鈍済みの冷延鋼板(錫めっき用鋼板や亜鉛めっき用鋼板)等の、0.10mm〜0.4mmの板厚を有する被処理鋼板Wを、3.0〜15.0%の圧下率で調質圧延(HRT圧延)することにより、同一成分系を有する一枚の被処理鋼板Wからテンパー度の異なる複数種のブリキ原板を製造する。
以下では、調質圧延設備1の構成を説明する前に、被処理鋼板Wの詳細について説明する。
製鋼工場の転炉、電気炉など通常の溶解炉で溶製された溶鋼を連続鋳造することでスラブが得られる。連続鋳造後、すぐにスラブの熱間圧延を行うDR圧延を採用してもよい。あるいは、スラブを一旦冷却して熱延加熱炉で再加熱した後にスラブの熱間圧延を行うCCR圧延を採用してもよい。CCR圧延を採用する場合、スラブの再加熱温度は1100℃以上が必要である。この温度ならばスラブ中の固溶N量が30ppm以上となるので、炭化物の析出が抑えられる。
スラブの成分は、質量%で、C:0.0005〜0.06%、Si:0.001〜0.03%、Mn:0.05〜0.6%、P:0.005〜0.025%、S:0.003〜0.02%、トータルAl:0.01〜0.05%、N:0.002〜0.013%を含有し、残部として鉄及び不純物を含有する。
特に、Nの添加によって炭化物の析出が抑えられる。また、Nは固溶Nを増やすために重要な成分要素である。また、スラブの成分が、質量%で、Ti:0.01〜0.04%と、B:0.001〜0.005%との少なくとも1種をさらに含有していてもよい。Ti及びBの少なくとも1種をスラブに加えることにより、安定的なHRT圧延に有用な、固溶Cおよび固溶Nを含まない極低炭素アルミキルド鋼板(以下、IF鋼板)を得ることができる。以下にスラブ成分を限定した理由を述べる。
<C:0.0005〜0.06%>
C含有量の下限は、固溶Cがほとんど存在しない0.0005%とする。固溶Cが微量で炭化物がなくとも安定的なHRT圧延を実施できる好ましいC含有量の下限は0.0005%であり、より好ましいC含有量の下限は0.005%である。一方、C含有量が多いほど、熱延処理、連続焼鈍処理及び過時効処理を実施した場合に、炭化物の析出量が多くなる。その結果、HRT圧延が不安定となるので、C含有量の上限は0.06%とする。好ましいC含有量の上限は0.04%であり、より好ましいC含有量の上限は0.02%である。
<Si:0.001〜0.03%>
Siは鋼板製造工程の熱処理によって鋼板表面に濃化して圧延性とメッキ性を低下させるので、Si含有量は少ないほど好ましいが、溶製コスト上昇を抑えるために、Si含有量の下限を0.001%とする。Si含有量の上限は0.03%としたが、Si含有量の増加による悪影響を考慮すれば、Si含有量の上限は0.02%が好ましく、0.01%がより好ましい。
<Mn:0.05〜0.6%>
Mnは不可避的に混入するSが誘発する熱延時の割れを防止するために添加する。鋼板に割れが生じれば圧延ロール疵や板破断などHRTを含む圧延作業に悪影響を与える。MnとSとの化合物であるMnSを析出させれば熱延割れが生じない。以下で説明するように、S含有量の上限は0.02%であるので、MnSを析出させることでSを無害化するために必要なMn含有量が下限となる。Sの無害化に必要なMn含有量の下限は0.05%であるが、好ましくは0.15%であり、より好ましくは0.3%である。割れ疵対策の観点から、Mn含有量の上限は0.6%である。この数値は、ASTM規格で規定されたブリキのMn含有量の上限に一致する。
<P:0.005〜0.025%>
Pは結晶組織を強化し、かつ結晶粒界に偏析して鋼板強度を上げ、延性を劣化させる。PはHRTを含む圧延作業においては板破断の一因になる強化元素であるので、P含有量は少ないことが好ましい。溶製コスト上昇を伴わない好ましいP含有量の下限は0.005%である。一方、P含有量が多いほど、圧延作業が困難になると共に鋼板耐食性を劣化させるので、P含有量の上限を0.025%とする。これらPの悪影響を減じるためには、P含有量の上限を0.02%とすることが好ましく、0.015%とすることがより好ましい。この0.015%という数値は、ASTM規格で規定された高耐食性ブリキ(Type−L)のP含有量の上限に一致する。
<S:0.003〜0.02%>
上記のように、Sは熱延時に発生する割れの原因となるので、S含有量の上限をMn含有量の下限(0.05%)より低い0.02%とする。Sの悪影響を減じるためには、S含有量の上限は0.02%が好ましく、0.01%がより好ましい。S含有量を0.003%未満にすると、特殊な溶製を必要とし溶製コスト上昇を招くので、S含有量の下限は0.003%である。
<トータルAl:0.01〜0.05%>
Al含有量は、後述するN含有量に関連して少ないほどよい。すなわち、製鋼において脱酸剤として溶鋼に添加されスラグとして除かれる量に初期添加量を制限することが極めて望ましい。そのため、Al含有量の下限は0.01%とする。一方、Al含有量が0.05%を超えると、熱延コイル中にsol.Alが偏在することに起因して窒化物析出に偏りが生じる。その結果、炭化物析出抑制に働く固溶N量がばらつき、HRT圧延が不安定になるので、Al含有量の上限を0.05%とする。未脱酸の回避とHRT圧延の安定化を両立するためには、Al含有量の上限は0.03%が好ましく、固溶N量のばらつきを抑制するためには、Al含有量の上限は0.02%が好ましい。
<N:0.002〜0.013%>
Nは炭化物析出を抑え、HRT圧延の安定化を実現する成分要素である。鋼中での存在形態は窒化物より固溶Nであることが好ましく、固溶N量が多いほど炭化物の析出が抑制される。炭化物析出の抑制効果を得るために、N含有量の下限は0.002%である。一方、Nを過剰に添加すると、固溶Nの形態でN時効を介して材質ばらつきが発生するので、N含有量の上限を0.013%とする。N含有量の好ましい上限は0.01%であり、より好ましい上限は0.007%である。
<Ti:0.01〜0.04%およびB:0.001〜0.005%>
TiおよびBは炭化物及び窒化物の生成を促進する元素である。Ti及びBを添加すると、TiN、TiC及びBNなどが析出されるので、固溶C及び固溶Nの量が大幅に削減される。Ti含有量が0.01%以上の場合に、炭化物及び窒化物の生成が強く促進される。そのため、固溶C及び固溶Nの量をゼロにするためには、Ti含有量の下限を0.01%とする。Ti含有量の下限は0.015%が好ましく、0.03%がより好ましい。一方、B含有量が0.001%以上の場合に、炭化物及び窒化物の生成が強く促進される。そのため、固溶C及び固溶Nの量をゼロにするためには、B含有量の下限を0.001%とする。B含有量の下限は0.0015%が好ましく、0.003%がより好ましい。Ti及びBを過剰に添加しても、炭化物及び窒化物の生成量が飽和するだけで特別な問題は発生しないが、材料コストの上昇を回避するために、Ti含有量の上限を0.04%、B含有量の上限を0.005%とする。
<上記以外の元素>
スラブが、上記の主要元素以外に、公知の表面処理用鋼板及びブリキ原板に一般的に含まれる成分元素を含有していても良い。例えば、スラブが、質量%で、Cr:0.10%以下、Cu:0.20%以下、Ni:0.15%以下、Mo:0.05%以下、Ca:0.01%以下、Nb、Zr、Vなどの1種または2種以上を0.3%以下、をさらに含有していてもよい。
上記のような成分を有するスラブが熱間圧延される。熱間圧延工程における仕上げ圧延出口温度はAr3変態点以上(例えば830〜930℃)である。仕上げ圧延出口温度がAr3点未満の場合、スラブが熱間圧延されることで得られる熱延鋼板の組織の一部が、熱延鋼板の長手方向及び幅方向の両方において不均一化する。特に、熱延鋼板の表層又は端部の結晶粒が粗大化すると、冷間圧延工程及びHRT圧延工程(調質圧延工程)で圧延安定性が低下するので、仕上げ圧延出口温度の下限を830℃とする。仕上げ圧延出口温度の好ましい下限は845℃であり、より好ましい下限は860℃である。仕上げ圧延出口温度の上限930℃はスケール疵の抑制によって決まる。仕上げ圧延出口温度が高温になるほど、スケール疵がブリキ原板に残りやすいので、仕上げ圧延出口温度の好ましい上限は890℃であり、より好ましい上限は870℃である。
上記のように、スラブが熱間圧延されることで得られる熱延鋼板は、コイル状に巻き取られる。巻取り温度は500〜700℃である。巻取り温度に依存して、熱延鋼板における炭化物の析出量が増減する。巻取り温度が500℃未満の場合、熱延鋼板に微細な炭化物が多く析出する。その結果、過時効処理のない連続焼鈍が実施されても固溶C量が減少して、HRT圧延が不安定となるので、巻取り温度の下限を500℃とする。巻取り温度の好ましい下限は550℃であり、より好ましい下限は600℃である。一方、巻取り温度が700℃超の場合、熱延鋼板における炭化物の析出量は少ない。しかしながら、粗大な炭化物が圧延の破断起点となって冷間圧延作業を阻害する懸念があるので、巻取り温度の上限を700℃とする。巻取り温度の好ましい上限は670℃であり、より好ましい上限は650℃である。
上記のような巻取り温度下でコイル状に巻き取られた熱延鋼板は、酸洗された後、一次圧延率85〜95%で冷間圧延される。熱延鋼板が冷間圧延されることで得られる冷延鋼板は、再結晶温度以上の600〜740℃で15〜60秒間、連続的に焼鈍される。焼鈍温度が600℃未満の場合、冷延鋼板に再結晶不足となる部分が多数発生する。その結果、冷延鋼板の強度にばらつきが生じて、HRT圧延が不安定となるので、焼鈍温度の下限は600℃とする。焼鈍温度の好ましい下限は630℃であり、より好ましい下限は660℃である。一方、焼鈍温度が740℃超の場合、炉内において冷延鋼板の軟化が著しくなり、炉内絞りや板破断が頻発するので、焼鈍温度の上限を740℃とする。焼鈍温度の好ましい上限は720℃であり、より好ましい上限は690℃である。再結晶不足を回避するために、均熱時間を15〜60秒とした。均熱時間の上限が60秒超の場合、生産性が低下する。均熱時間の好ましい上限は45秒であり、より好ましい上限は25秒である。
焼鈍済みの冷延鋼板は、その表面温度が焼鈍温度(600〜740℃)から室温になるまで冷却される。この冷却過程において、冷延鋼板の表面温度が過時効処理温度に相当する500℃から300℃になるまでの冷却時間は短いことが望ましい。この冷却時間が30秒以下であれば、結晶粒内への固溶C析出が抑えられる。この冷却時間は20秒以下が好ましく、10秒以下がより好ましい。
本実施形態では、上記のようなプロセスで得られた冷延鋼板が被処理鋼板Wとして用いられる。本実施形態に係る調質圧延設備1は、板厚0.10〜0.40mmの被処理鋼板Wを、3.0〜15.0%の圧下率で調質圧延(HRT圧延)することにより、上記成分を有する一枚の被処理鋼板Wからテンパー度の異なる複数種のブリキ原板(例えばHR30T硬さが47〜73であり、A破断率が90%以上であるブリキ原板)を製造する。
既に述べたように、圧下率の制御範囲(つまり、エマルジョン型圧延液の摩擦係数の調整範囲)の拡大に対して、単一種の圧延油の濃度調整だけで対応することは困難である。また、圧延油の種類を変更する方法を採用する場合、種類の異なる圧延油同士の混合に起因するコンタミネーションの発生を防止するために、製造ラインを一旦停止させた後、圧延油を交換する前に、圧延機と圧延油の輸送配管などを洗浄する必要がある。その結果、能率の低下を招くという問題が生じる。
本実施形態に係る調質圧延設備1では、エマルジョン型圧延液に含まれる圧延油の種類を替えることなく、エマルジョン型圧延液に含まれる添加剤の濃度調整によって、エマルジョン型圧延液の摩擦係数を圧下率に適した値に調整する。このような調質圧延設備1は、単一種の圧延油の濃度調整と比較して、特定の成分を有する添加剤の濃度調整の方が、エマルジョン型圧延液の摩擦係数を広範囲に調整できる(すなわち、広範囲な圧下率に対応できる)という知見に基づくものである。
以下、本実施形態に係る調質圧延設備1の構成について詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る調質圧延設備1は、エマルジョン型圧延液(以下、圧延液と略す)を用いて湿式調質圧延を行う圧延機10と、この圧延機10に圧延液を供給する圧延液供給装置20とを備えている。
圧延機10は、例えば4段式圧延機であり、被処理鋼板Wを挟んで対向配置された一対のワークロール11及び12と、これらワークロール11及び12を挟んで対向配置された一対のバックアップロール13及び14とを備えている。また、この圧延機10は、圧延液供給装置20から供給される圧延液を、被処理鋼板Wに向けて噴射する圧延液噴射装置15を備えている。圧延液噴射装置15から圧延液が噴射されながら、ワークロール11と12との間隙に被処理鋼板Wが送り込まれることにより、被処理鋼板Wの調質圧延が行われる。なお、圧延機10は、図示略の圧延制御装置によって制御されている。ワークロール11及び12は、被処理鋼板Wと接触する圧延ロールである。これらワークロール11及び12の直径は、例えば300〜650mmである。
圧延液供給装置20は、圧延液を圧延機10(詳細には圧延液噴射装置15)に供給する装置であり、圧延液を貯留する3つのタンク(第1圧延液タンク30、第2圧延液タンク40及び第3圧延液タンク50)と、原料投入装置60と、送液装置70と、回収装置80とを備えている。
第1圧延液タンク30は、第2圧延液タンク40及び第3圧延液タンク50に貯留される圧延液とは異なる摩擦係数を有する圧延液(以下、圧延液X)を貯留するタンクである。第2圧延液タンク40は、第1圧延液タンク30及び第3圧延液タンク50に貯留される圧延液とは異なる摩擦係数を有する圧延液(以下、圧延液Y)を貯留するタンクである。第3圧延液タンク50は、第1圧延液タンク30及び第2圧延液タンク40に貯留される圧延液とは異なる摩擦係数を有する圧延液(以下、圧延液Z)を貯留するタンクである。
なお、以下の説明において、圧延液を圧延液X、圧延液Y及び圧延液Zと区別する必要がない場合には、圧延液という用語に符号を付記しない。
原料投入装置60は、圧延液の原料である、1種の圧延油、水及び2種の添加剤を、第1圧延液タンク30、第2圧延液タンク40及び第3圧延液タンク50のそれぞれに投入する。この原料投入装置60は、圧延液に含まれる原料のうち、少なくとも添加剤の濃度が他の圧延液と異なるように、第1圧延液タンク30、第2圧延液タンク40及び第3圧延液タンク50のそれぞれに対する各原料の投入量を制御することにより、摩擦係数の異なる圧延液X、Y及びZを第1圧延液タンク30、第2圧延液タンク40及び第3圧延液タンク50のそれぞれに貯留させる。
なお、本実施形態において、添加剤の濃度調整には、添加剤の濃度をゼロにする(すなわち、添加剤の投入量をゼロにする)ことも含まれる。
圧延油は、天然油脂を除く成分を含有する。すなわち、本実施形態における圧延油は、天然油脂を含有しない。圧延油は、天然油脂を除く成分として、2価ネオペンチル型アルコールから選ばれる1種と、炭素数16〜20の脂肪酸から選ばれる1種とからなり、且つ45〜55mgKOH/gの水酸基価を有するエステル(2価ネオペンチル型エステル)を含有する。また、圧延油は、天然油脂を除く成分として、2価ネオペンチル型エステルに加えて、動粘度が5〜15mm/sである精製炭化水素と、ノニオン界面活性剤とをさらに含有する。
2価ネオペンチル型エステルは、天然油脂と異なり、アルコール部分が2価ネオペンチル型アルコールとなっている。そのため、2価ネオペンチル型エステルは、立体的に嵩高く酸化劣化による重合や加水分解を受けにくいので、表面品質が重要な湿式調質圧延には最適である。
一方、天然油脂は、一般にトリグリセライドの構造を有しているため、その構造に起因して、圧延中の加工熱や発生鉄粉等により酸化劣化による重合や加水分解を受けやすく、高分子生成物、脂肪酸及び脂肪酸セッケンなどの粘着性汚れを形成しやすい。従って、天然油脂は、表面品質が重要な湿式調質圧延には不適当であるため、本実施形態では、圧延油の組成成分として天然油脂を使用しない。なお、天然油脂とは、天然に存在する動植物から得られる油脂またはそれらを精製することで得られる油脂を指す。例えば、天然油脂として、牛脂、豚脂、鯨油、鮫油、パーム油、精製パーム油、ナタネ油、ひまし油、米油などが挙げられる。
2価ネオペンチル型アルコールとしては、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-エチルメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジプロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-メチルプロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-エチルプロピル-1,3-プロパンジオールから選ばれる1種が挙げられる。表面欠陥防止および圧延性向上の観点から、2価ネオペンチル型アルコールとして、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールを選択することが好ましい。
脂肪酸としては、炭素数が16〜20の飽和脂肪酸、またはモノエン系不飽和脂肪酸が挙げられる。より具体的には、脂肪酸として、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リシノール酸、アラキジン酸から選ばれる1種が挙げられる。表面欠陥防止および圧延性向上の観点から、脂肪酸としてステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸から1種を選択することが好ましい。
2価ネオペンチル型エステルは、表面欠陥防止の観点から、45〜55mgKOH/gの水酸基価を有することが好ましい。水酸基価が45mgKOH/g未満の場合、未反応水酸基が多くなるので、圧延油の潤滑性が不足する。水酸基価が55mgKOH/gを超える場合、エステル反応が過剰に進んでしまうので、圧延油の潤滑性が過剰となり、適切な摩擦係数が得られない。なお、ケン化価および水酸基価は、JIS K0070の規定に従って、中和滴定法で測定された値である。
湿式調質圧延において、表面欠陥防止および圧延性向上の観点から、2価ネオペンチル型エステルが圧延油の成分として適切である。しかしながら、圧延油の成分が2価ネオペンチル型エステルだけの場合、圧延油の潤滑性が過剰となるので、適切な摩擦係数が得られない。そこで、精製炭化水素を2価ネオペンチル型エステルと共に圧延油に配合することにより、圧延油の摩擦係数を最適範囲に導くことができる。
精製炭化水素としては、ナフテン系炭化水素およびパラフィン系炭化水素から選ばれる1種が挙げられるが、潤滑性向上の観点から、精製炭化水素としてパラフィン系炭化水素を選択することが好ましい。精製炭化水素の動粘度は、5〜15mm/sであることが好ましい。精製炭化水素の動粘度が5mm/s未満の場合、圧延油の摩擦係数が高くなりすぎて潤滑性が不足する。精製炭化水素の動粘度が15mm/sを超える場合、潤滑性が過剰となるので、適切な摩擦係数が得られない。なお、精製炭化水素の動粘度は、JIS K2283の規定に従って測定された値である。
ノニオン系界面活性剤としては、圧延液の安定性向上の観点から、エーテル系非イオン界面活性剤、及びエステル系非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上が挙げられる。より具体的には、ノニオン系界面活性剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリエチレングリコールラウリン酸エステル、ポリエチレングリコールオレイン酸エステル、及びポリエチレングリコールステアリン酸エステルから選ばれる1種以上が挙げられる。
水としては、防錆性向上および表面処理性向上の観点から、導電率が5μS/cm未満のイオン交換水が好適である。水の導電率が5μS/cm以上の場合、圧延液に含まれる無機物が局所電極を形成することに起因して、被処理鋼板Wの調質圧延によって得られるブリキ原板に腐食等の表面処理不良が生じる。なお、水の導電率は、堀場製作所製ES−51を用いて測定された値である。
調質圧延の安定性及びブリキ原板の洗浄性を考慮すると、水に対する圧延油の濃度は、0.005〜1.0体積%(以下、%)であることが好ましい。圧延油の濃度が0.005%未満の場合、圧延液の摩擦係数の変化が大きくなるので、調質圧延が不安定となる。圧延油の濃度が1.0%超の場合、圧延グリップ力が弱まるので、スリップが発生する。また、圧延油の濃度が高くなるほど、ブリキ原板の洗浄性が劣化する。従って、圧延油の濃度は、0.005〜0.1%であることが好ましく、0.005〜0.03%であることがより好ましい。なお、圧延油の濃度(体積パーセント濃度)は、圧延液に含まれる2価ネオペンチル型エステル、精製炭化水素及びノニオン系界面活性剤の合計体積(単位はリットル)を、圧延液の総体積(単位はリットル)で除算して得られる値である。
添加剤は、炭素数2〜6のアルカノールアミン及び脂肪族二塩基酸を含有する。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンから選ばれる1種以上が挙げられる。脂肪族二塩基酸としては、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、及びトリデカン二酸から選ばれる1種以上が挙げられる。脂肪族二塩基酸の炭素数は、8〜16であることが好ましい。
アルカノールアミン及び脂肪族二塩基酸を添加剤の成分とすることにより、被処理鋼板Wの調質圧延によって得られるブリキ原板の表面の防錆性を向上させることができる。また、圧延機10におけるワークロール11及び12と被処理鋼板Wのバイトとの間における冷間圧延油を適度に剥離させることができる。そして、アルカノールアミン及び脂肪族二塩基酸を含有する添加剤の濃度調整によって、圧延液の摩擦係数を最適範囲に導くことができる。
水に対する添加剤の濃度は、0.8体積%(以下、%)以下であることが好ましい。添加剤の濃度が0.8%を超える場合、圧延液の摩擦係数の変化量が飽和してしまうので、経済的ではない。また、添加剤の濃度が高くなるほど、圧延液の摩擦係数の変化量は小さくなる。従って、添加剤の濃度は、0.01〜0.8%であることが好ましく、0.2〜0.7%であることがより好ましい。なお、添加剤の濃度(体積パーセント濃度)は、圧延液に含まれるアルカノールアミン及び脂肪族二塩基酸の合計体積(単位はリットル)を、圧延液の総体積(単位はリットル)で除算して得られる値である。
圧延液中における圧延油としては、2価ネオペンチル型エステル、精製炭化水素及びノニオン系界面活性剤の合計含有量を100体積%と定義したとき、2価ネオペンチル型エステルの含有量は13〜18体積%、精製炭化水素の含有量は68〜81体積%、ノニオン系界面活性剤の含有量は6〜14体積%であることが好ましい。圧延液中の添加剤としては、アルカノールアミン及び脂肪族二塩基酸の合計含有量を100体積%と定義したとき、アルカノールアミンの含有量は58〜63体積%、脂肪族二塩基酸の含有量は37〜42体積%であることが好ましい。
2価ネオペンチル型エステルの含有量が13体積%未満の場合、圧延液の摩擦係数が高くなりすぎて潤滑性が不足する。2価ネオペンチル型エステルの含有量が18体積%を超える場合、潤滑性が過剰となるので、適切な摩擦係数が得られない。
精製炭化水素の含有量が68体積%未満の場合、潤滑性が過剰となるので、適切な摩擦係数が得られない。精製炭化水素の含有量が81体積%を超える場合、圧延液の摩擦係数が高くなりすぎて潤滑性が不足する。
ノニオン系界面活性剤の含有量が6体積%未満の場合、安定した圧延液が得られない。ノニオン系界面活性剤の含有量が14体積%を超える場合、圧延液が激しく泡立つので、操作性が悪くなる。
アルカノールアミンの含有量が58体積%未満の場合、潤滑性が過剰となるので、適切な摩擦係数が得られない。アルカノールアミンの含有量が63体積%を超える場合、圧延液の油分剥離が過剰になることに起因して、ブリキ原板に錆が発生する。
脂肪族二塩基酸の含有量が37体積%未満の場合、圧延液の油分剥離が過剰になることに起因して、ブリキ原板に錆が発生する。脂肪族二塩基酸の含有量が42体積%を超える場合、潤滑性が過剰となるので、適切な摩擦係数が得られない。
図2は、添加剤を含有しない圧延液について、圧延油の濃度と圧延液の摩擦係数との関係を検証した結果を示す図である。図3は、添加剤を含有する圧延液について、圧延油の濃度を0.02%一定とした条件下で、添加剤の濃度と圧延液の摩擦係数との関係を検証した結果を示す図である。なお、圧延液の摩擦係数は、「曽田式振り子型摩擦試験機」で測定した。測定条件として、測定温度を室温、初期振れ角度を0.5rad、振れ周期を1Hzにそれぞれ設定した。
図2に示すように、圧延液が添加剤を含有しない場合、単一種の圧延油の濃度を調整しても、圧延液の摩擦係数を広範囲に制御することは困難である。一方、図3に示すように、圧延液が添加剤を含有する場合、圧延油の濃度を一定にした条件下で添加剤の濃度を調整すると、圧延液の摩擦係数を広範囲に制御することが可能である。
本実施形態では、図3に示される検証結果に基づき、圧延液に含まれる圧延油の濃度が他の圧延液と同一となり、且つ添加剤の濃度が他の圧延液と異なるように、圧延液X、Y及びZのそれぞれの圧延油濃度を0.02%に固定し、添加剤濃度を0〜0.7%の範囲で調整することにより、摩擦係数の異なる圧延液X、Y及びZを用意する。
具体的には、製品の板厚および硬度は決まっており、材料となる被処理鋼板Wの成分と焼鈍処理方法とを考慮して調質圧延時の目標圧下率を決定する。調質圧延設備1において、目標圧下率を実現するために、圧延液の摩擦係数を決定する。そして、表1に示すように、第1圧延液タンク30に貯留される圧延液Xの摩擦係数が、目標圧下率15%、板厚0.20mm及びHR30T硬さ62での調質圧延に適した値0.17となるように、圧延液Xの圧延油濃度(0.02%)と添加剤濃度(0%)とが予め決定されている。
同様に、表1に示すように、第2圧延液タンク40に貯留される圧延液Yの摩擦係数が、目標圧下率9%、板厚0.20mm及びHR30T硬さ55での調質圧延に適した値0.25となるように、圧延液Yの圧延油濃度(0.02%)と添加剤濃度(0.3%)とが予め決定されている。また、表1に示すように、第3圧延液タンク50に貯留される圧延液Zの摩擦係数が、目標圧下率3%、板厚0.20mm及びHR30T硬さ47での調質圧延に適した値0.3となるように、圧延液Zの圧延油濃度(0.02%)と添加剤濃度(0.7%)とが予め決定されている。
Figure 0006461697
原料投入装置60は、表1に示すような情報に基づいて、圧延液X、Y及びZの圧延油濃度がそれぞれ0.02%となり、圧延液Xの添加剤濃度が0%に、圧延液Yの添加剤濃度が0.3%に、圧延液Zの添加剤濃度が0.7%になるように、第1圧延液タンク30、第2圧延液タンク40及び第3圧延液タンク50のそれぞれに対する各原料の投入量を制御することにより、圧延液Xの摩擦係数を0.17に、圧延液Yの摩擦係数を0.25に、圧延液Zの摩擦係数を0.3に、それぞれ調整する。以下、原料投入装置60の構成について詳細に説明する。
図1に示すように、原料投入装置60は、水を貯留する水タンク61、圧延油を貯留する圧延油タンク62、添加剤を貯留する第1添加剤タンク63及び第2添加剤タンク64を備えている。なお、本実施形態では、成分の異なる2種類の添加剤を貯留するために、2つの第1添加剤タンク63及び第2添加剤タンク64が設置される場合を例示したが、1種の添加剤で足りる場合には、1つの添加剤タンクが設置されていればよい。
また、原料投入装置60は、4本のX系統原料投入管65a、65b、65c及び65dと、4本のY系統原料投入管65e、65f、65g及び65hと、4本のZ系統原料投入管65i、65j、65k及び65mとを備えている。
また、原料投入装置60は、4つのX系統流量調整弁66a、66b、66c及び66dと、4つのY系統流量調整弁66e、66f、66g及び66hと、及び4つのZ系統流量調整弁66i、66j、66k及び66mとを備えている。
また、原料投入装置60は、4つのX系統流量計67a、67b、67c及び67dと、4つのY系統流量計67e、67f、67g及び67hと、4つのZ系統流量計67i、67j、67k及び67mとを備えている。
さらに、原料投入装置60は、第1圧延液タンク30、第2圧延液タンク40及び第3圧延液タンク50のそれぞれに対する各原料の投入量を制御する制御装置68を備えている。
なお、上記のような原料投入装置60の各構成要素において、X系統の構成要素は、第1圧延液タンク30(圧延液X)に関連する構成要素であり、Y系統の構成要素は、第2圧延液タンク40(圧延液Y)に関連する構成要素であり、また、Z系統の構成要素は、第3圧延液タンク50(圧延液Z)に関連する構成要素である。
X系統原料投入管65aは、水タンク61と第1圧延液タンク30とを接続する配管である。X系統原料投入管65bは、圧延油タンク62と第1圧延液タンク30とを接続する配管である。X系統原料投入管65cは、第1添加剤タンク63と第1圧延液タンク30とを接続する配管である。X系統原料投入管65dは、第2添加剤タンク64と第1圧延液タンク30とを接続する配管である。
Y系統原料投入管65eは、水タンク61と第2圧延液タンク40とを接続する配管である。Y系統原料投入管65fは、圧延油タンク62と第2圧延液タンク40とを接続する配管である。Y系統原料投入管65gは、第1添加剤タンク63と第2圧延液タンク40とを接続する配管である。Y系統原料投入管65hは、第2添加剤タンク64と第2圧延液タンク40とを接続する配管である。
Z系統原料投入管65iは、水タンク61と第3圧延液タンク50とを接続する配管である。Z系統原料投入管65jは、圧延油タンク62と第3圧延液タンク50とを接続する配管である。Z系統原料投入管65kは、第1添加剤タンク63と第3圧延液タンク50とを接続する配管である。Z系統原料投入管65mは、第2添加剤タンク64と第3圧延液タンク50とを接続する配管である。
X系統流量調整弁66aは、X系統原料投入管65aに介挿された例えば二方電磁弁である。X系統流量調整弁66bは、X系統原料投入管65bに介挿された例えば二方電磁弁である。X系統流量調整弁66cは、X系統原料投入管65cに介挿された例えば二方電磁弁である。X系統流量調整弁66dは、X系統原料投入管65dに介挿された例えば二方電磁弁である。これらX系統流量調整弁66a〜66dは、制御装置68と不図示の信号ケーブルを介して接続されており、制御装置68によって個別に開閉状態が制御される。
Y系流量調整弁66eは、Y系統原料投入管65eに介挿された例えば二方電磁弁である。Y系統流量調整弁66fは、Y系統原料投入管65fに介挿された例えば二方電磁弁である。Y系統流量調整弁66gは、Y系統原料投入管65gに介挿された例えば二方電磁弁である。Y系統流量調整弁66hは、Y系統原料投入管65hに介挿された例えば二方電磁弁である。これらY系統流量調整弁66e〜66hは、制御装置68と不図示の信号ケーブルを介して接続されており、制御装置68によって個別に開閉状態が制御される。
Z系統流量調整弁66iは、Z系統原料投入管65iに介挿された例えば二方電磁弁である。Z系統流量調整弁66jは、Z系統原料投入管65jに介挿された例えば二方電磁弁である。Z系統流量調整弁66kは、Z系統原料投入管65kに介挿された例えば二方電磁弁である。Z系統流量調整弁66mは、Z系統原料投入管65mに介挿された例えば二方電磁弁である。これらZ系統流量調整弁66i〜66mは、制御装置68と不図示の信号ケーブルを介して接続されており、制御装置68によって個別に開閉状態が制御される。
X系統流量計67aは、X系統原料投入管65a内を流れる水の流量を計測する。X系統流量計67bは、X系統原料投入管65b内を流れる圧延油の流量を計測する。X系統流量計67cは、X系統原料投入管65c内を流れる添加剤Aの流量を計測する。X系統流量計67dは、X系統原料投入管65d内を流れる添加剤Bの流量を計測する。これらX系統流量計67a〜67dは、制御装置68と不図示の信号ケーブルを介して接続されており、それぞれ流量計測結果を示す電気信号を制御装置68に出力する。
Y系統流量計67eは、Y系統原料投入管65e内を流れる水の流量を計測する。Y系統流量計67fは、Y系統原料投入管65fを流れる圧延油の流量を計測する。Y系統流量計67gは、Y系統原料投入管65g内を流れる添加剤Aの流量を計測する。Y系統流量計67hは、Y系統原料投入管65h内を流れる添加剤Bの流量を計測する。これらY系統流量計67e〜67hは、制御装置68と不図示の信号ケーブルを介して接続されており、それぞれ流量計測結果を示す電気信号を制御装置68に出力する。
Z系統流量計67iは、Z系統原料投入管65i内を流れる水の流量を計測する。Z系統流量計67jは、Z系統原料投入管65j内を流れる圧延油の流量を計測する。Z系統流量計67kは、Z系統原料投入管65k内を流れる添加剤Aの流量を計測する。Z系統流量計67mは、Z系統原料投入管65m内を流れる添加剤Bの流量を計測する。これらZ系統流量計67i〜67mは、制御装置68と不図示の信号ケーブルを介して接続されており、それぞれ流量計測結果を示す電気信号を制御装置68に出力する。
制御装置68は、表1に示すような情報を参照データとして記憶している。制御装置68は、参照データから得られる圧延液Xの圧延油濃度(0.02%)及び添加剤濃度(0%)と、各X系統流量計67a〜67dから得られる各原料の流量計測結果とに基づいて、各X系統流量調整弁66a〜66dの開閉状態を制御することにより、圧延液Xの摩擦係数が0.17となるように、第1圧延液タンク30に対する各原料の投入量を調整する。
また、制御装置68は、参照データから得られる圧延液Yの圧延油濃度(0.02%)及び添加剤濃度(0.3%)と、各Y系統流量計67e〜67hから得られる各原料の流量計測結果とに基づいて、各Y系統流量調整弁66e〜66hの開閉状態を制御することにより、圧延液Yの摩擦係数が0.25となるように、第2圧延液タンク40に対する各原料の投入量を調整する。
また、制御装置68は、参照データから得られる圧延液Zの圧延油濃度(0.02%)及び添加剤濃度(0.7%)と、各Z系統流量計67i〜67mから得られる各原料の流量計測結果とに基づいて、各Z系統流量調整弁66i〜66mの開閉状態を制御することにより、圧延液Zの摩擦係数が0.3となるように、第3圧延液タンク50に対する各原料の投入量を調整する。
送液装置70は、第1圧延液タンク30、第2圧延液タンク40及び第3圧延液タンク50のうち、被処理鋼板Wの目標圧下率に適した摩擦係数を有する圧延液が貯留された圧延液タンク(送液元タンク)から圧延機10へ圧延液を送液する。この送液装置70は、主送液管71、X系統送液管72a、Y系統送液管72b、Z系統送液管72c、X系統ポンプ73a、Y系統ポンプ73b、Z系統ポンプ73c、X系統逆止弁74a、Y系統逆止弁74b、Z系統逆止弁74c、及びフィルター75を備えている。
主送液管71は、一端が圧延機10の圧延液噴射装置15に接続され、他端がX系統送液管72a、Y系統送液管72b及びZ系統送液管72cに接続された配管である。X系統送液管72aは、第1圧延液タンク30と主送液管71とを接続する配管である。Y系統送液管72bは、第2圧延液タンク40と主送液管71とを接続する配管である。Z系統送液管72cは、第3圧延液タンク50と主送液管71とを接続する配管である。
X系統ポンプ73aは、X系統送液管72aの上流側に設けられており、第1圧延液タンク30から圧延液Xを吸い出してX系統送液管72aの下流側に送り出す。なお、このX系統ポンプ73aは、不図示の信号ケーブルを介して制御装置68と接続されており、X系統ポンプ73aの動作は制御装置68によって制御される。X系統逆止弁74aは、X系統送液管72aにおけるX系統ポンプ73aの下流側に設けられており、圧延液Xが第1圧延液タンク30に逆流することを防止する。
Y系統ポンプ73bは、Y系統送液管72bの上流側に設けられており、第2圧延液タンク40から圧延液Yを吸い出してY系統送液管72bの下流側に送り出す。なお、このY系統ポンプ73bは、不図示の信号ケーブルを介して制御装置68と接続されており、Y系統ポンプ73bの動作は制御装置68によって制御される。Y系統逆止弁74bは、Y系統送液管72bにおけるY系統ポンプ73bの下流側に設けられており、圧延液Yが第2圧延液タンク40に逆流することを防止する。
Z系統ポンプ73cは、Z系統送液管72cの上流側に設けられており、第3圧延液タンク50から圧延液Zを吸い出してZ系統送液管72cの下流側に送り出す。なお、このZ系統ポンプ73cは、不図示の信号ケーブルを介して制御装置68と接続されており、Z系統ポンプ73cの動作は制御装置68によって制御される。Z系統逆止弁74cは、Z系統送液管72cにおけるZ系統ポンプ73cの下流側に設けられており、圧延液Zが第3圧延液タンク50に逆流することを防止する。
フィルター75は、主送液管71の途中に介挿されており、主送液管71内を流れる圧延液から不純物を取り除く。
回収装置80は、圧延機10から使用済み圧延液を回収し、その使用済み圧延液を送液元タンクに戻す機能と、回収した使用済み圧延液を外部に排出する機能とを有している。具体的には、この回収装置80は、オイルパン81、第1回収管82、第2回収管83、排液管84、第1切替弁85、X系統回収管86a、Y系統回収管86b、Z系統回収管86c、第3回収管87、第2切替弁88及び第3切替弁89を備えている。
オイルパン81は、圧延機10から垂れ落ちる圧延液(つまり使用済みの圧延液)を溜め置くための容器である。第1回収管82は、一端がオイルパン81に接続され、他端が第1切替弁85の第1接続ポート85aに接続された配管である。第2回収管83は、一端が第1切替弁85の第2接続ポート85bに接続され、他端が第2切替弁88の第1接続ポート88aに接続された配管である。排液管84は、一端が第1切替弁85の第3接続ポート85cに接続され、他端が不図示の外部装置(例えば排液タンク等)に接続された配管である。
第1切替弁85は、例えば三方電磁弁であり、第1接続ポート85aと第2接続ポート85bとが連通する状態(回収モード)と、第1接続ポート85aと第3接続ポート85cとが連通する状態(排液モード)との2つの状態(モード)を切替え可能である。なお、第1切替弁85は、不図示の信号ケーブルを介して制御装置68と接続されており、第1切替弁85のモード切替動作は、制御装置68によって制御される。
X系統回収管86aは、一端が第1圧延液タンク30に接続され、他端が第2切替弁88の第2接続ポート88bに接続された配管である。Y系統回収管86bは、一端が第2圧延液タンク40に接続され、他端が第3切替弁89の第2接続ポート89bに接続された配管である。Z系統回収管86cは、一端が第3圧延液タンク50に接続され、他端が第3切替弁89の第3接続ポート89cに接続された配管である。第3回収管87は、一端が第2切替弁88の第3接続ポート88cに接続され、他端が第3切替弁89の第1接続ポート89aに接続された配管である。
第2切替弁88は、例えば三方電磁弁であり、第1接続ポート88aと第2接続ポート88bとが連通する状態(X系統回収モード)と、第1接続ポート88aと第3接続ポート88cとが連通する状態(YZ系等回収モード)との2つの状態(モード)を切替え可能である。なお、第2切替弁88は、不図示の信号ケーブルを介して制御装置68と接続されており、第2切替弁88のモード切替動作は、制御装置68によって制御される。
第3切替弁89は、例えば三方電磁弁であり、第1接続ポート89aと第2接続ポート89bとが連通する状態(Y系統回収モード)と、第1接続ポート89aと第3接続ポート89cとが連通する状態(Z系等回収モード)との2つの状態(モード)を切替え可能である。なお、第3切替弁89は、不図示の信号ケーブルを介して制御装置68と接続されており、第3切替弁89のモード切替動作は、制御装置68によって制御される。
この回収装置80において、第1切替弁85が回収モードにあり、且つ第2切替弁88がX系統回収モードにある場合、圧延機10から回収された使用済み圧延液は、第1圧延液タンク30に送られ、圧延液Xとして再利用される。
また、この回収装置80において、第1切替弁85が回収モードにあり、第2切替弁88がYZ系統回収モードにあり、且つ第3切替弁89がY系統回収モードにある場合、圧延機10から回収された使用済み圧延液は、第2圧延液タンク40に送られ、圧延液Yとして再利用される。
また、この回収装置80において、第1切替弁85が回収モードにあり、第2切替弁88がYZ系統回収モードにあり、且つ第3切替弁89がZ系統回収モードにある場合、圧延機10から回収された使用済み圧延液は、第3圧延液タンク50に送られ、圧延液Zとして再利用される。
さらに、この回収装置80において、第1切替弁85が排液モードにある場合、圧延機10から回収された使用済み圧延液は、排液管84を介して外部に排出される。
次に、上記のように構成された調質圧延設備1の動作について説明する。調質圧延設備1が以下のように動作することにより、本発明の調質圧延方法が実現される。
初期状態として、第1圧延液タンク30、第2圧延液タンク40及び第3圧延液タンク50の全てが完全に空の状態にあると想定する。また、この初期状態において、X系統ポンプ73a、Y系統ポンプ73b及びX系統ポンプ73cが動作停止状態にあると想定する。さらに、この初期状態において、X系統流量調整弁66a〜66dと、Y系統流量調整弁66e〜66hと、Z系統流量調整弁66i〜66mとが全て閉状態にあると想定する。
このような初期状態において、原料投入装置60の制御装置68は、圧延機10による被処理鋼板Wの調質圧延が開始される前に、摩擦係数の異なる圧延液X、Y及びZの準備動作を開始する。
まず、制御装置68は、参照データから得られる圧延液Xの圧延油濃度(0.02%)及び添加剤濃度(0%)と、各X系統流量計67a〜67dから得られる各原料の流量計測結果とに基づいて、各X系統流量調整弁66a〜66dの開閉状態を制御することにより、圧延液Xの摩擦係数が0.17となるように、第1圧延液タンク30に対する各原料の投入量を調整する。
具体的には、制御装置68は、参照データから得られる圧延液Xの圧延油濃度(0.02%)及び添加剤濃度(0%)に基づいて、第1圧延液タンク30に対する水、圧延油及び添加剤の目標投入量を決定する。圧延液Xの場合、添加剤の目標投入量はゼロになる。そして、制御装置68は、X系統流量調整弁66a及び66bのみを開状態に切替えて、第1圧延液タンク30に対する水及び圧延油の投入を開始する。制御装置68は、水及び圧延油の投入開始後、X系統流量計67a及び67bから得られる水及び圧延油の流量計測結果に基づいて、水及び圧延油の投入量の現在値を監視する。
制御装置68は、水の投入量の現在値が水の目標投入量と等しくなった時に、X系統流量調整弁66aを閉状態に切替える。また、制御装置68は、圧延油の投入量の現在値が圧延油の目標投入量と等しくなった時に、X系統流量調整弁66bを閉状態に切替える。これにより、第1圧延液タンク30には、摩擦係数0.17の圧延液Xが貯留される。
続いて、制御装置68は、参照データから得られる圧延液Yの圧延油濃度(0.02%)及び添加剤濃度(0.3%)と、各Y系統流量計67e〜67hから得られる各原料の流量計測結果とに基づいて、各Y系統流量調整弁66e〜66hの開閉状態を制御することにより、圧延液Yの摩擦係数が0.25となるように、第2圧延液タンク40に対する各原料の投入量を調整する。
具体的には、制御装置68は、参照データから得られる圧延液Yの圧延油濃度(0.02%)及び添加剤濃度(0.3%)に基づいて、第2圧延液タンク40に対する水、圧延油及び添加剤の目標投入量を決定する。そして、制御装置68は、Y系統流量調整弁66e〜66gを開状態に切替えて、第2圧延液タンク40に対する水、圧延油及び添加剤の投入を開始する。制御装置68は、水、圧延油及び添加剤の投入開始後、Y系統流量計67e〜67gから得られる水、圧延油及び添加剤の流量計測結果に基づいて、水、圧延油及び添加剤の投入量の現在値を監視する。
制御装置68は、水の投入量の現在値が水の目標投入量と等しくなった時に、Y系統流量調整弁66eを閉状態に切替える。また、制御装置68は、圧延油の投入量の現在値が圧延油の目標投入量と等しくなった時に、Y系統流量調整弁66fを閉状態に切替える。また、制御装置68は、添加剤の投入量の現在値が添加剤の目標投入量と等しくなった時に、Y系統流量調整弁66gを閉状態に切替える。これにより、第2圧延液タンク40には、摩擦係数0.25の圧延液Yが貯留される。
続いて、制御装置68は、参照データから得られる圧延液Zの圧延油濃度(0.02%)及び添加剤濃度(0.7%)と、各Z系統流量計67i〜67mから得られる各原料の流量計測結果とに基づいて、各Z系統流量調整弁66i〜66mの開閉状態を制御することにより、圧延液Zの摩擦係数が0.3となるように、第3圧延液タンク50に対する各原料の投入量を調整する。
具体的には、制御装置68は、参照データから得られる圧延液Zの圧延油濃度(0.02%)及び添加剤濃度(0.7%)に基づいて、第3圧延液タンク50に対する水、圧延油及び添加剤の目標投入量を決定する。そして、制御装置68は、Z系統流量調整弁66i〜66kを開状態に切替えて、第3圧延液タンク50に対する水、圧延油及び添加剤の投入を開始する。制御装置68は、水、圧延油及び添加剤の投入開始後、Z系統流量計67i〜67kから得られる水、圧延油及び添加剤の流量計測結果に基づいて、水、圧延油及び添加剤の投入量の現在値を監視する。
制御装置68は、水の投入量の現在値が水の目標投入量と等しくなった時に、Z系統流量調整弁66iを閉状態に切替える。また、制御装置68は、圧延油の投入量の現在値が圧延油の目標投入量と等しくなった時に、Z系統流量調整弁66jを閉状態に切替える。また、制御装置68は、添加剤の投入量の現在値が添加剤の目標投入量と等しくなった時に、Z系統流量調整弁66kを閉状態に切替える。これにより、第3圧延液タンク50には、摩擦係数0.3の圧延液Zが貯留される。
以上のような原料投入装置60の動作によって、摩擦係数の異なる3つの圧延液X、Y及びZが予め用意される(第1工程)。
上記のように、摩擦係数の異なる圧延液X、Y及びZの準備が完了すると、制御装置68は、圧延機10の圧延制御装置との通信によって、圧延液の準備が完了したことを圧延機10の圧延制御装置に通知すると共に、被処理鋼板Wの目標圧下率、板厚及び調質圧延後の目標硬さ(HR30T硬さ)を圧延機10の圧延制御装置から取得し、参照データを基にそれらの数値に適した摩擦係数の値を認識する。
そして、制御装置68は、第1圧延液タンク30、第2圧延液タンク40及び第3圧延液タンク50のうち、被処理鋼板Wの目標圧下率、板厚及び調質圧延後の目標硬さに適した摩擦係数を有する圧延液が貯留されている圧延液タンク(送液元タンク)に付設されたポンプを起動させる。
このような原料投入装置60の動作によって、被処理鋼板Wの目標圧下率、板厚及び調質圧延後の目標硬さ(HR30T硬さ)に応じて、摩擦係数の異なる3つの圧延液X、Y及びZのうち、1つの圧延液が選択される(第2工程)。以下では、被処理鋼板Wの目標圧下率が15%、板厚が0.20mm、調質圧延後の目標硬さ、すなわちHR30T硬さが62であり、圧延液Xを貯留する第1圧延液タンク30が送液元タンクとして選択された場合を想定する。
この場合、制御装置68は、X系統ポンプ73aを起動させて、第1圧延液タンク30から圧延機10への圧延液Xの送液を開始すると共に、回収装置80の第1切替弁85を回収モードに切替え、第2切替弁88をX系統回収モードに切替える。
一方、圧延機10の圧延制御装置は、制御装置68との通信によって、圧延液の準備が完了したことを認識すると、目標圧下率15%で被処理鋼板Wの調質圧延動作を行うように圧延機10を制御する。これにより、圧延液噴射装置15から被処理鋼板Wの目標圧下率に適した摩擦係数(0.17)を有する圧延液Xが噴射されながら、ワークロール11と12の間隙に被処理鋼板Wが送り込まれるので、被処理鋼板Wの調質圧延が良好に行われる。このように、上記第2工程で選択された圧延液Xを用いて被処理鋼板Wの調質圧延が行われる(第3工程)。なお、圧下率15%で被処理鋼板Wの調質圧延が行われることにより、HR30T硬度が62のブリキ原板が製造される(表1参照)。
この時、回収装置80の第1切替弁85は回収モードにあり、第2切替弁88はX系統回収モードにあるので、圧延機10から回収された使用済み圧延液は、送液元タンクである第1圧延液タンク30に送られ、調質圧延用の圧延液Xとして再利用される(第4工程)。なお、被処理鋼板Wの調質圧延中に、第1切替弁85を排液モードに切替えて、圧延機10から回収された使用済み圧延液を外部に排出してもよい。
圧延機10の圧延制御装置は、被処理鋼板Wの調質圧延が終了すると、制御装置68との通信によって、被処理鋼板Wの調質圧延が終了したことを制御装置68に通知する。一方、制御装置68は、圧延機10の圧延制御装置との通信によって、被処理鋼板Wの調質圧延が終了したことを認識すると、X系統ポンプ73aを停止させて、圧延機10への圧延液Xの供給を停止する。
続いて、制御装置68は、圧延機10の圧延制御装置との通信によって、被処理鋼板Wの調質圧延が新たに開始されることを圧延機10の圧延制御装置から通知されると、被処理鋼板Wの新たな目標圧下率、板厚及び調質圧延後の目標硬さ(HR30T硬さ)を圧延機10の圧延制御装置から取得し、参照データを基にそれらの数値に適した摩擦係数の値を新たに認識する。
そして、制御装置68は、新たに認識した摩擦係数を有する圧延液が貯留されている圧延液タンク(送液元タンク)に付設されたポンプを起動させる。以下では、被処理鋼板Wの目標圧下率が9%、板厚が0.20mm、調質圧延後の目標硬さ、すなわちHR30T硬さが55であり、圧延液Yを貯留する第2圧延液タンク40が新たな送液元タンクとして選択された場合を想定して説明する。
この場合、制御装置68は、Y系統ポンプ73bを起動させて、第2圧延液タンク40から圧延機10への圧延液Yの送液を開始すると共に、回収装置80の第2切替弁88をYZ系統回収モードに切替え、第3切替弁89をY系統回収モードに切替える。
一方、圧延機10の圧延制御装置は、制御装置68との通信によって、圧延液Yの送液が開始されたことを認識すると、新たな目標圧下率9%で被処理鋼板Wの調質圧延動作を行うように圧延機10を制御する。これにより、圧延液噴射装置15から被処理鋼板Wの目標圧下率に適した摩擦係数(0.25)を有する圧延液Yが噴射されながら、ワークロール11と12との間隙に被処理鋼板Wが送り込まれるので、被処理鋼板Wの調質圧延が良好に行われる。なお、圧下率9%で被処理鋼板Wの調質圧延が行われることにより、HR30T硬度が55のブリキ原板が製造される(表1参照)。
この時、回収装置80の第1切替弁85は回収モードにあり、第2切替弁88はYZ系統回収モードにあり、且つ第3切替弁89はY系統回収モードにあるので、圧延機10から回収された使用済み圧延液は、送液元タンクである第2圧延液タンク40に送られて、調質圧延用の圧延液Yとして再利用される。なお、被処理鋼板Wの調質圧延中に、第1切替弁85を排液モードに切替えて、圧延機10から回収された使用済み圧延液を外部に排出してもよい。
圧延機10の圧延制御装置は、被処理鋼板Wの調質圧延が終了すると、制御装置68との通信によって、被処理鋼板Wの調質圧延が終了したことを制御装置68に通知する。一方、制御装置68は、圧延機10の圧延制御装置との通信によって、被処理鋼板Wの調質圧延が終了したことを認識すると、Y系統ポンプ73bを停止させて、圧延機10への圧延液Yの供給を停止する。
続いて、制御装置68は、圧延機10の圧延制御装置との通信によって、被処理鋼板Wの調質圧延が新たに開始されることを圧延機10の圧延制御装置から通知されると、被処理鋼板Wの新たな目標圧下率、板厚及び調質圧延後の目標硬さ(HR30T硬さ)を圧延機10の圧延制御装置から取得し、参照データを基にそれらの数値に適した摩擦係数の値を新たに認識する。
そして、制御装置68は、新たに認識した摩擦係数を有する圧延液が貯留されている圧延液タンク(送液元タンク)に付設されたポンプを起動させる。以下では、被処理鋼板Wの目標圧下率が3%、板厚が0.20mm、調質圧延後の目標硬さ、すなわちHR30T硬さが47であり、圧延液Zを貯留する第3圧延液タンク50が新たな送液元タンクとして選択された場合を想定して説明する。
この場合、制御装置68は、Z系統ポンプ73cを起動させて、第3圧延液タンク50から圧延機10への圧延液Zの送液を開始すると共に、回収装置80の第2切替弁88をYZ系統回収モードに切替え、回収装置80の第3切替弁89をZ系統回収モードに切替える。
一方、圧延機10の圧延制御装置は、制御装置68との通信によって、圧延液Zの送液が開始されたことを認識すると、新たな目標圧下率3%で被処理鋼板Wの調質圧延動作を行うように圧延機10を制御する。これにより、圧延液噴射装置15から被処理鋼板Wの目標圧下率に適した摩擦係数(0.3)を有する圧延液Zが噴射されながら、ワークロール11と12との間隙に被処理鋼板Wが送り込まれるので、被処理鋼板Wの調質圧延が良好に行われる。なお、圧下率3%で被処理鋼板Wの調質圧延が行われることにより、HR30T硬度が47のブリキ原板が製造される(表1参照)。
この時、回収装置80の第1切替弁85は回収モードにあり、第2切替弁88はYZ系統回収モードにあり、且つ第3切替弁89はZ系統回収モードにあるので、圧延機10から回収された使用済み圧延液は、送液元タンクである第3圧延液タンク50に送られて、調質圧延用の圧延液Zとして再利用される。なお、被処理鋼板Wの調質圧延中に、第1切替弁85を排液モードに切替えて、圧延機10から回収された使用済み圧延液を外部に排出してもよい。
以上のように、本実施形態に係る調質圧延設備1では、3つの圧延液タンク(第1圧延液タンク30、第2圧延液タンク40及び第3圧延液タンク50)に、それぞれ摩擦係数の異なる圧延液(圧延液X、Y及びZ)を予め貯留しておき、被処理鋼板Wの目標圧下率、板厚及び調質圧延後の目標硬さに応じて送液元の圧延液タンク(送液元タンク)、つまり圧延機10に供給すべき圧延液を適切に切替えることができる。
既に述べたように、圧延油の種類を変更することで圧延液の摩擦係数を調整する方法を採用する場合、種類の異なる圧延油同士の混合に起因するコンタミネーションの発生を防止するために、製造ラインを一旦停止させた後、圧延油を交換する前に、圧延機と圧延油の輸送配管などを洗浄する必要がある。
しかしながら、本実施形態に係る調質圧延設備1では、圧延液に含まれる圧延油の種類を替えることなく、圧延液に含まれる添加剤の濃度調整によって、被処理鋼板Wの目標圧下率に適した摩擦係数を有する圧延液を複数(本実施形態では3つ)用意することができる。
従って、本実施形態によれば、被処理鋼板Wの目標圧下率が変化しても、圧延油の入れ替えを行うことなく(つまり圧延機10等の洗浄のために製造ラインを停止させることなく)、被処理鋼板Wの目標圧下率に適した摩擦係数を有する圧延液を選択的に使用して、被処理鋼板Wの調質圧延を連続的に行うことが可能である。その結果、能率の低下を防止できる。
また、本実施形態によれば、圧延機10から回収した使用済み圧延液を再利用可能な循環式の構成を採用しているので、圧延液の原料コストを抑えることができる。
なお、上記実施形態では、3つの圧延液タンク30、40及び50が設置されている場合を例示したが、摩擦係数の異なる圧延液の準備数に応じて圧延液タンクの設置数を適宜変更しても良い。
また、上記実施形態では、圧延液に含まれる圧延油の濃度が他の圧延液と同一となり、且つ添加剤の濃度が他の圧延液と異なるように、圧延液X、Y及びZのそれぞれの圧延油濃度及び添加剤濃度を調整することにより、摩擦係数の異なる圧延液X、Y及びZを用意する場合を例示した。この他、圧延液に含まれる圧延油の濃度と添加剤の濃度の両方が他の圧延液と異なるように、圧延液X、Y及びZのそれぞれの圧延油濃度及び添加剤濃度を調整してもよい。これによっても、摩擦係数の異なる圧延液X、Y及びZを用意することができる。
(圧延安定性の検証)
まず、本発明を実施して被処理鋼板の調質圧延を行った場合の圧延安定性について検証した。表2に示すように、試験例1〜8として、上記実施形態で説明した成分を有するスラブを用意した。
Figure 0006461697
試験例1〜8のそれぞれに対応するスラブに対して、上記実施形態で説明した製造条件下で、熱間圧延、冷間圧延及び焼鈍を実施することにより、試験例1〜8のそれぞれに対応する被処理鋼板(焼鈍済みの冷延鋼板)を得た。また、上記実施形態で説明したように、圧延液に含まれる添加剤濃度を調整することにより、摩擦係数0.12の圧延液と、摩擦係数0.25の圧延液と、摩擦係数0.38の圧延液とを用意した。
試験例1〜8のそれぞれに対応する被処理鋼板について、目標圧下率を3〜15%の範囲で制御しながら各圧延液を用いて調質圧延を実施し、圧延液の摩擦係数と目標圧下率との組合せに対する圧延安定性を検証した。圧延安定性の検証結果を表3に示す。表3において、圧下率の実測値が目標圧下率の±3%以内に収まった場合に、圧延安定性が良好(○)だと判定した。また、圧下率の実測値が目標圧下率の±3%以内に収まらなかった場合に、圧延安定性が悪い(×)と判定した。
Figure 0006461697
表3に示すように、試験例1〜8のそれぞれに対応する被処理鋼板について圧延安定性を検証した結果、摩擦係数の異なる3つの圧延液を使い分けることにより、3〜15%という広範囲な目標圧下率の全てに対して良好な圧延安定性が得られることが確認された。
(ブリキ原板の硬さ測定)
続いて、試験例1〜8のそれぞれに対応する被処理鋼板について、目標圧下率を3〜15%の範囲で制御しながら各圧延液を用いて調質圧延を実施することで得られるブリキ原板の硬さ(HR30T硬さ)を測定した。ブリキ原板の硬さは、JIS Z 2245の規定に従って測定した。硬さ測定位置としては、JIS G 3303の規定に従って、ブリキ原板の板幅方向における端部と中心部を選択した。硬さ測定前に、電気炉内でブリキ原板を200℃×20分間という条件下で時効処理した。
試験例1〜8のそれぞれに対応するブリキ原板の硬さ測定結果を表3に示す。硬さの代表値(表3の記載値)は、ブリキ原板の板幅方向における端部の硬さと中心部の硬さとの平均値である。表3に示すように、試験例1〜8に対応するブリキ原板の硬さは、47〜73の範囲内に含まれており、硬さのばらつきが少ないことが確認された。
(引張り試験片の破断位置の観察)
続いて、試験例1〜8のそれぞれに対応するブリキ原板(圧下率5%で製造されたブリキ原板)から引張り試験片を採取し、それらの引張り試験片を用いて引張り試験を実施した後、各引張り試験片の破断位置を観察した。なお、各ブリキ原板から、圧延方向に平行な引張り試験片を各10個ずつ採取し、JIS Z 2241の規定に従って引張り試験を行った。
試験例1〜8のそれぞれに対応するブリキ原板から採取した引張り試験片の引張り試験を実施した結果、全ての引張り試験片についてA破断率が90%以上となる(つまり、圧延安定性が良好である)ことが確認された。なお、A破断率とは、引張り試験片における評点間の中心位置から評点間距離の1/4以内の位置で破断が発生した率を意味する。
(防錆効果の検証)
続いて、添加剤の防錆効果をJIS K 2246の規定に従って検証した。被処理鋼板を添加剤配合のエマルジョン型圧延液に浸漬し、脱脂し、乾燥後、恒温高湿槽内に吊り下げたときの錆発生度が10日間で10%以内ならば防錆効果ありと判定する。本実施例で使用した圧延液の防錆効果を上記手法により検証した結果、錆発生度が8%以下となり、防錆効果があることが確認された。
本発明によれば、被処理鋼板の目標圧下率が変化しても、圧延液の入れ替えを行うことなく(つまり圧延機等の清掃のために製造ラインを止めることなく)、被処理鋼板の目標圧下率に適した摩擦係数を有する圧延液を選択的に使用して、被処理鋼板の調質圧延を連続的に行うことが可能である。従って、本発明を実施することにより、大きな産業上の効果を期待できる。
1…調質圧延設備、10…圧延機、20…圧延液供給装置、30…第1圧延液タンク、40…第2圧延液タンク、50…第3圧延液タンク、60…原料投入装置、70…送液装置、80…回収装置、W…被処理鋼板、X、Y、Z…圧延液

Claims (10)

  1. 摩擦係数の異なる複数の圧延液を予め用意する第1工程と、
    被処理鋼板の圧下率、板厚及び調質圧延後の目標硬さに応じて、前記複数の圧延液のうち1つを選択する第2工程と、
    前記第2工程で選択された前記圧延液を用いて前記被処理鋼板の調質圧延を行う第3工程と
    を有し、
    前記第1工程では、前記圧延液に含まれる1種の圧延油、水及び添加剤のうち、少なくとも前記添加剤の濃度が他の前記圧延液と異なるように、前記圧延液のそれぞれの前記添加剤の濃度を調整することにより、前記摩擦係数の異なる前記複数の圧延液を用意し、
    前記圧延油は、天然油脂を除く成分を含有し、前記成分として、
    炭素数が16〜20の脂肪酸及び2価ネオペンチル型アルコールからなり、且つ水酸基価が45〜55mgKOH/gであるエステルと、
    動粘度が5〜15mm /sである精製炭化水素と、
    ノニオン界面活性剤と
    を含有し、
    前記添加剤は、
    炭素数が2〜6であるアルカノールアミンと、
    脂肪族二塩基酸と
    を含有することを特徴とする調質圧延方法。
  2. 前記圧延液における前記圧延油の濃度は、前記水に対して0.005〜1.0体積%であり、
    前記圧延液における前記添加剤の濃度は、前記水に対して0.8体積%以下であり、
    前記2価ネオペンチル型エステル、前記精製炭化水素及び前記ノニオン系界面活性剤の合計含有量を100体積%と定義したとき、前記2価ネオペンチル型エステルの含有量は13〜18体積%、前記精製炭化水素の含有量は68〜81体積%、前記ノニオン系界面活性剤の含有量は6〜14体積%であり、
    前記アルカノールアミン及び前記脂肪族二塩基酸の合計含有量を100体積%と定義したとき、前記アルカノールアミンの含有量は58〜63体積%、前記脂肪族二塩基酸の含有量は37〜42体積%である
    ことを特徴とする請求項1に記載の調質圧延方法。
  3. 前記被処理鋼板の調質圧延に使用された前記圧延液を回収して再利用する第4工程をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の調質圧延方法。
  4. 前記被処理鋼板の圧下率は3〜15%であり、前記被処理鋼板の板厚は0.10〜0.40mmであり、前記被処理鋼板の調質圧延後の硬さとして、HR30T硬さが47〜73であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の調質圧延方法。
  5. 前記被処理鋼板の調質圧延後のA破断率が90%以上であることを特徴とする請求項4に記載の調質圧延方法。
  6. 被処理鋼板の調質圧延を行う圧延機に圧延液を供給する圧延液供給装置であって、
    前記圧延液を貯留する複数の圧延液タンクと、
    前記圧延液の原料である1種の圧延油、水及び添加剤を、前記複数の圧延液タンクのそれぞれに投入する原料投入装置と、
    前記被処理鋼板の圧下率、板厚及び調質圧延後の目標硬さに応じて前記複数の圧延液タンクのうち1つを送液元タンクとして選択し、前記送液元タンクに貯留されている前記圧延液を前記圧延機へ送液する送液装置と
    を備え、
    前記圧延油は、天然油脂を除く成分を含有し、前記成分として、
    炭素数が16〜20の脂肪酸及び2価ネオペンチル型アルコールからなり、且つ水酸基価が45〜55mgKOH/gであるエステルと、
    動粘度が5〜15mm /sである精製炭化水素と、
    ノニオン界面活性剤と
    を含有し、
    前記添加剤は、
    炭素数が2〜6であるアルカノールアミンと、
    脂肪族二塩基酸と
    を含有し、
    前記原料投入装置は、前記圧延液に含まれる前記原料のうち、少なくとも前記添加剤の濃度が他の前記圧延液と異なるように、前記圧延液タンクのそれぞれに対する前記各原料の投入量を制御することにより、摩擦係数の異なる前記圧延液を前記圧延液タンクのそれぞれに貯留させることを特徴とする圧延液供給装置。
  7. 前記圧延液における前記圧延油の濃度は、前記水に対して0.005〜1.0体積%であり、
    前記圧延液における前記添加剤の濃度は、前記水に対して0.8体積%以下であり、
    前記2価ネオペンチル型エステル、前記精製炭化水素及び前記ノニオン系界面活性剤の合計含有量を100体積%と定義したとき、前記2価ネオペンチル型エステルの含有量は13〜18体積%、前記精製炭化水素の含有量は68〜81体積%、前記ノニオン系界面活性剤の含有量は6〜14体積%であり、
    前記アルカノールアミン及び前記脂肪族二塩基酸の合計含有量を100体積%と定義したとき、前記アルカノールアミンの含有量は58〜63体積%、前記脂肪族二塩基酸の含有量は37〜42体積%である
    ことを特徴とする請求項6に記載の圧延液供給装置。
  8. 前記圧延機から前記被処理鋼板の調質圧延に使用された前記圧延液を回収し、回収した前記圧延液を前記送液元タンクに戻す回収装置をさらに備えることを特徴とする請求項6または7に記載の圧延液供給装置。
  9. 被処理鋼板の調質圧延を行う圧延機と、
    前記圧延機に圧延液を供給する請求項6〜8のいずれか一項に記載の圧延液供給装置と
    を備えることを特徴とする調質圧延設備。
  10. 前記圧延機は、前記被処理鋼板と接触する圧延ロールを備え、
    前記圧延ロールの直径が300〜650mmであることを特徴とする請求項9に記載の調質圧延設備。
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