本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下に記載の実施形態により本発明が限定されるものではない。以下の実施形態では、1種類のデバイスを製造するための各種の処理を、基板に対して連続して施す、いわゆる、ロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式に用いる露光装置として説明する。また、以下においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。一例として、水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。
図1は、実施形態に係る基板処理装置(露光装置)の全体構成を示す模式図である。図2は、図1における照明領域及び投影領域の配置を示す模式図である。図3は、図1の基板処理装置(露光装置)に適用される投影光学系の構成を示す模式図である。図1に示すように、基板処理装置11は、露光装置(処理部)EXと、シート基板の搬送装置(以下、適宜、搬送装置と称する)9とを含む。露光装置EXは、搬送装置9により基板P(シート、フィルム等)を供給されている。例えば、図示しない供給ロールから引き出された可撓性(フレキシブル)の長尺のシートの基板Pが、順次、前工程用の基板処理装置を経て、基板処理装置(露光装置)11で処理され、搬送装置9により後工程用の基板処理装置に送出された後に、回収ロールに巻き上げられるデバイス製造システムがある。このように、基板処理装置11は、デバイス製造システム(フレキシブル・ディスプレイの製造ライン)の一部として使用され得る。
基板処理装置11としての露光装置EXは、いわゆる走査露光装置であり、円筒マスクDMの回転と可撓性の基板Pの送りとを同期して駆動させつつ、円筒マスクDMに形成されているパターンの像を、投影倍率が等倍(×1)の投影光学系PL(PL1〜PL6)を介して基板Pに投影する。なお、図1に示す露光装置EXは、XYZ直交座標系のY軸を、円筒マスクDMを構成する第1ドラム部材21の回転中心線AX1と平行に設定している。同様に、基板Pの長尺方向の一部を円筒状に指示する円筒部材としての第2ドラム部材22の回転中心線AX2は、XYZ直交座標系のY軸と平行に設定されている。
図1に示すように、露光装置EXは、マスク保持装置12、照明機構IU、投影光学系PL及び制御装置14を備える。露光装置EXは、マスク保持装置12に保持された円筒マスクDMを回転移動(旋回移動)させるとともに、搬送装置9によって基板Pを搬送する。照明機構IUとともにマスク保持装置12に保持された円筒マスクDMの一部(照明領域IR)を、照明光束EL1によって均一な明るさで照明する。投影光学系PLは、円筒マスクDM上の照明領域IRにおけるパターンの像を、搬送装置9によって搬送されている基板Pの一部(投影領域PA)に投影する。円筒マスクDMの移動に伴って、照明領域IRに配置される円筒マスクDM上の部位が変化する。また基板Pの移動に伴って、投影領域PAに配置される基板P上の部位が変化する。このようにすることで、円筒マスクDMの表面に形成された所定のパターン(マスクパターン)の像が、投影光学系PL(PL1〜PL6)を介して基板Pの円筒状の表面に投影される。制御装置14は、露光装置EXの各部を制御し、各部に処理を実行させる。また、本実施形態において、制御装置14は、搬送装置9を制御する。
制御装置14は、上述したデバイス製造システムの複数の基板処理装置を統括して制御する上位制御装置の一部又は全部であってもよい。また、制御装置14は、上位制御装置に制御され、かつ上位制御装置とは別の装置であってもよい。制御装置14は、例えば、コンピュータシステムを含む。コンピュータシステムは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、各種メモリーやOS(Operating System)及び周辺機器等のハードウェアを含む。基板処理装置11の各部の動作シーケンス及びパラメータ等は、コンピュータプログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータシステムが読み出して実行することによって、各種処理が行われる。
コンピュータシステムは、インターネット又はイントラネットシステムに接続可能な場合、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含む。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体及びコンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置を含む。コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にコンピュータプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含む。また、コンピュータプログラムは、基板処理装置11の機能の一部を実現するためのものでもよく、基板処理装置11の機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものでもよい。上位制御装置は、制御装置14と同様に、コンピュータシステムを利用して実現することができる。
図1に示すように、マスク保持装置12は、円筒マスクDMを保持する第1ドラム部材21、第1ドラム部材21を支持するガイドローラ23、制御装置14の制御指令により第1駆動部26が第1ドラム部材21を駆動する駆動ローラ24及び第1ドラム部材21の位置を検出する第1検出器25を備える。
第1ドラム部材21は、所定の軸となる回転中心線AX1(以下、適宜第1中心軸AX1ともいう)から一定の半径で湾曲した曲面を有する円筒部材であって、回転中心線AX1の周りを回転する。第1ドラム部材21は、円筒マスクDMの照明領域IRが配置される第1面P1を有し、その第1面P1は、線分(母線)を、この線分に平行な第1中心軸AX1周りに回転して形成される円筒面である。円筒面は、例えば、円筒の外周面又は円柱の外周面等である。第1ドラム部材21は、例えばガラス又は石英等で製造され、一定の肉厚を有する円筒状であり、その外周面(円筒面)が第1面P1となる。すなわち、本実施形態において、円筒マスクDMの照明領域IRは、回転中心線AX1から一定の半径r1を持つ円筒面状に湾曲している。このように、第1ドラム部材21は、回転中心線AX1から一定半径で湾曲した曲面(所定曲率の円筒面)を有している。
円筒マスクDMは、例えば平坦性が高い短冊状の極薄ガラス板(例えば厚さ100μm〜500μm)の一方の面に、クロム等の遮光層でパターンを形成した透過型の平面状シートマスクとして作成される。マスク保持装置12は、極薄ガラス板による円筒マスクDMを第1ドラム部材21の外周面の曲面に倣って湾曲させ、この曲面に巻き付けた(貼り付けた)状態で使用される。円筒マスクDMは、パターンが形成されていないパターン非形成領域を有し、パターン非形成領域が第1ドラム部材21に取り付けられている。円筒マスクDMは、第1ドラム部材21に対して取り付け及び取り外しが可能である。
なお、円筒マスクDMを極薄ガラス板で構成し、その円筒マスクDMを透明円筒母材による第1ドラム部材21に巻き付ける代わりに、第1ドラム部材21を、石英等の透明円筒母材で製造し、その外周面に直接クロム等の遮光層によるマスクパターンを描画形成してもよい。この場合も、第1ドラム部材21が円筒マスクDMのパターンの支持部材として機能する。
第1検出器25は、第1ドラム部材21の回転位置を光学的に検出するもので、例えばロータリーエンコーダ等で構成される。エンコーダはアブソリュート形式であってもインクリメント形式であってもよい。第1検出器25は、検出した第1ドラム部材21の回転位置を示す情報、例えば、後述するエンコーダヘッドからの2相信号等を制御装置14に出力する。電動モーター等のアクチュエータを含む第1駆動部26は、制御装置14から入力される制御信号に従って、駆動ローラ24を回転させるためのトルク及び回転速度を調整する。制御装置14は、第1検出器25による検出結果に基づいて第1駆動部26を制御することによって、第1ドラム部材21の回転位置を制御する。そして、制御装置14は、第1ドラム部材21に保持されている円筒マスクDMの回転位置と回転速度の一方又は双方を制御する。
搬送装置9は、駆動ローラDR4、第1ガイド部材31、基板Pの投影領域PAが配置される第2面P2を形成する第2ドラム部材22、第2ガイド部材33、駆動ローラDR4、DR5、第2検出器35及び第2駆動部36を備える。
本実施形態において、基板Pの搬送経路の上流、すなわち、基板Pの搬送(移動)方向とは反対側から駆動ローラDR4へ搬送されてきた基板Pは、駆動ローラDR4を経由して第1ガイド部材31へ搬送される。第1ガイド部材31を経由した基板Pは、半径r2の円筒状又は円柱状の第2ドラム部材22の表面に支持されて、第2ガイド部材33へ搬送される。第2ガイド部材33を経由した基板Pは、搬送経路の下流へ搬送される。なお、第2ドラム部材22の回転中心線AX2と、駆動ローラDR4、DR5の各回転中心線とは、いずれもY軸と平行になるように設定される。
第1ガイド部材31及び第2ガイド部材33は、例えば、基板Pの搬送方向に移動することによって、搬送経路において基板Pに働く搬送方向のテンション等を調整する。また、第1ガイド部材31(及び駆動ローラDR4)と第2ガイド部材33(及び駆動ローラDR5)とは、例えば、基板Pの幅方向(基板Pの搬送方向と直交する方向であり、Y方向)に移動可能とすることによって、第2ドラム部材22の外周に巻き付く基板PのY方向の位置等を調整することができる。なお、搬送装置9は、投影光学系PLの投影領域PAに沿って基板Pを搬送可能であればよく、搬送装置9の構成は適宜変更することができる。
第2ドラム部材22は、所定の軸となる回転中心線AX2(以下、適宜第2中心軸AX2ともいう)から一定の半径で湾曲した曲面(所定曲率の円筒面)を有する円筒部材であって、第2中心軸AX2の周りを回転する回転ドラムである。第2ドラム部材22は、第2面(支持面)P2を形成する。第2面P2は、投影光学系PLからの結像光束が投射される基板Pの一部分であって、投影領域PAを含む部分を円弧状(円筒状)に支持する。本実施形態において、第2ドラム部材22は、搬送装置9の一部であるとともに、露光対象の基板Pを支持する支持部材(基板ステージ)を兼ねている。すなわち、第2ドラム部材22は、露光装置EXの一部であってもよい。このように、第2ドラム部材22は、その回転中心線AX2(第2中心軸AX2)の周りに回転可能であり、基板Pは、第2ドラム部材22上の外周面(円筒面)に倣って円筒面状に湾曲し、湾曲した基板Pの一部に投影領域PAが配置される。このため、基板Pは、半径r2の円筒面のうちの投影領域PAを含む周面部分では旋回移動することになる。
本実施形態において、第2ドラム部材22は、電動モーター等のアクチュエータを含む第2駆動部36から供給されるトルクによって回転する。第2検出器35は、例えばロータリーエンコーダ等で構成され、第2ドラム部材22の回転位置を光学的に検出する。第2検出器35は、検出した第2ドラム部材22の回転位置を示す情報(例えば、後述するエンコーダヘッドEN1、EN2、EN3、EN4、EN5からの2相信号等)を制御装置14に出力する。第2駆動部36は、制御装置14から供給される制御信号に従って、第2ドラム部材22を回転させるトルク及び回転速度を調整する。制御装置14は、第2検出器35による検出結果に基づいて第2駆動部36を制御することによって、第2ドラム部材22の回転位置を制御し、第1ドラム部材21(円筒マスクDM)と第2ドラム部材22とを同期移動(同期回転)させる。なお、第2検出器35の詳細については後述する。
露光装置EXは、いわゆるマルチレンズ方式の投影光学系PLを搭載することを想定した露光装置である。投影光学系PLは、円筒マスクDMのパターンにおける一部の像を投影する複数の投影モジュールを備える。例えば、図1では、円筒マスクDMの回転中心線AX1と第2ドラム部材22の第2中心軸AX2とを含み、YZ平面と平行な中心面P3に対して左側(基板Pの搬送方向とは反対側)に3台の投影モジュール(投影光学系)PL1、PL3、PL5がY方向に一定間隔で配置され、中心面P3の右側(基板Pの搬送方向側)にも3つの投影モジュール(投影光学系)PL2、PL4、PL6がY方向に一定間隔で配置される。
このようなマルチレンズ方式の露光装置EXでは、複数の投影モジュールPL1〜PL6によって露光された領域(投影領域PA1〜PA6)のY方向における端部を走査によって互いに重ね合わせることによって、所望のパターンの全体像を投影する。このような露光装置EXは、円筒マスクDM上のパターンのY方向における寸法が大きくなり、必然的にY方向の幅が大きな基板Pを扱う必要性が生じた場合でも、投影モジュールPLと、投影モジュールPLに対応する照明機構IU側のモジュールとをY方向に増設するだけでよいので、容易に表示パネルサイズ(基板Pの幅)の大型化に対応できるという利点がある。
なお、露光装置EXは、マルチレンズ方式でなくてもよい。例えば、基板Pの幅方向の寸法がある程度小さい場合等に、露光装置EXは、1台の投影モジュールによってパターンの全幅の像を基板Pに投影してもよい。また、複数の投影モジュールPL1〜PL6は、それぞれ、1個のデバイスに対応するパターンを投影してもよい。すなわち、露光装置EXは、複数個のデバイス用のパターンを、複数の投影モジュールによって並行して投影してもよい。
照明機構IUは、光源装置13及び照明光学系を備える。照明光学系は、複数の投影モジュールPL1〜PL6の各々に対応してY軸方向に並んだ複数(例えば6つ)の照明モジュールILを備える。光源装置13は、例えば水銀ランプ等のランプ光源、レーザーダイオード、発光ダイオード(LED)等の固体光源又は気体レーザ光源を含む。光源装置が射出する照明光は、例えばランプ光源から射出される輝線(g線、h線、i線)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)等である。光源装置13から射出された照明光は、照度分布が均一化されて、例えば光ファイバー等の導光部材を介して、複数の照明モジュールILに振り分けられる。
複数の照明モジュールILのそれぞれは、レンズ等の複数の光学部材を含む。本実施形態において、光源装置13から出射して複数の照明モジュールILのいずれかを通る光を照明光束EL1と称する。複数の照明モジュールILのそれぞれは、例えばインテグレータ光学系、ロッドレンズ、フライアイレンズ等を含み、均一な照度分布の照明光束EL1によって照明領域IRを照明する。本実施形態において、複数の照明モジュールILは、円筒マスクDMの内側に配置されている。複数の照明モジュールILのそれぞれは、円筒マスクDMの内側から円筒マスクDMの外周面に形成されたマスクパターンの各照明領域IRを照明する。
図2は、本実施形態における照明領域IR及び投影領域PAの配置を示す図である。なお、図2には、第1ドラム部材21に配置された円筒マスクDM上の照明領域IRを−Z側から見た平面図(図2中の左側の図)と、第2ドラム部材22に配置された基板P上の投影領域PAを+Z側から見た平面図(図2中の右側の図)とが図示されている。図2中の符号Xsは、第1ドラム部材21(円筒マスクDM)又は第2ドラム部材22の回転方向(移動方向)を示す。
複数の照明モジュールILは、それぞれ、円筒マスクDM上の第1から第6照明領域IR1〜IR6を照明する。例えば、第1照明モジュールILは、第1照明領域IR1を照明し、第2照明モジュールILは第2照明領域IR2を照明する。
第1照明領域IR1は、Y方向に細長い台形状の領域として説明するが、投影光学系(投影モジュール)PLのように、中間像面を形成する投影光学系の場合は、その中間像の位置に台形開口を有する視野絞り板を配置できる。このため、第1照明領域IR1は、その台形開口を包含する長方形の領域としてもよい。第3照明領域IR3及び第5照明領域IR5は、それぞれ、第1照明領域IR1と同様の形状の領域であり、Y軸方向に一定間隔を空けて配置されている。また、第2照明領域IR2は、中心面P3に関して第1照明領域IR1と対称的な台形状(又は長方形)の領域である。第4照明領域IR4及び第6照明領域IR6は、それぞれ、第2照明領域IR2と同様の形状の領域であり、Y軸方向に一定間隔を空けて配置されている。
図2に示すように、第1から第6照明領域IR1〜IR6のそれぞれは、第1面P1の周方向に沿って見た場合に、Y軸方向に隣り合う台形状の照明領域の斜辺部の三角部が重なるように(オーバーラップするように)配置されている。そのため、例えば、第1ドラム部材21の回転によって第1照明領域IR1を通過する円筒マスクDM上の第1領域A1は、第1ドラム部材21の回転によって第2照明領域IR2を通過する円筒マスクDM上の第2領域A2と一部重複する。
本実施形態において、円筒マスクDMは、パターンが形成されているパターン形成領域A3と、パターンが形成されていないパターン非形成領域A4とを含む。パターン非形成領域A4は、パターン形成領域A3を枠状に囲むように配置されており、照明光束EL1を遮光する特性を有する。円筒マスクDMのパターン形成領域A3は、第1ドラム部材21の回転にともなって移動方向Xsに移動し、パターン形成領域A3のうちのY軸方向における各部分領域は、第1から第6照明領域IR1〜IR6のいずれかを通過する。すなわち、第1〜第6照明領域IR1〜IR6は、パターン形成領域A3のY軸方向の全幅をカバーするように配置されている。
図1に示すように、Y軸方向に並ぶ複数の投影モジュールPL1〜PL6のそれぞれは、第1〜第6照明モジュールILのそれぞれと1対1で対応しており、対応する照明モジュールILによって照明される照明領域IR内に現れる円筒マスクDMの部分的なパターンの像を、基板P上の各投影領域PAに投影する。例えば、第1投影モジュールPL1は、第1照明モジュールILに対応し、第1照明モジュールILによって照明される第1照明領域IR1(図2参照)における円筒マスクDMのパターンの像を、基板P上の第1投影領域PA1に投影する。第3投影モジュールPL3、第5投影モジュールPL5は、それぞれ、第3〜第5照明モジュールILと対応している。第3投影モジュールPL3及び第5投影モジュールPL5は、Y軸方向から見ると、第1投影モジュールPL1と重なる位置に配置されている。
また、第2投影モジュールPL2は、第2照明モジュールILに対応し、第2照明モジュールILによって照明される第2照明領域IR2(図2参照)における円筒マスクDMのパターンの像を、基板P上の第2投影領域PA2に投影する。第2投影モジュールPL2は、Y軸方向から見ると、第1投影モジュールPL1に対して中心面P3を挟んで対称的な位置に配置されている。
第4投影モジュールPL4、第6投影モジュールPL6は、それぞれ、第4、第6照明モジュールILと対応して配置され、第4投影モジュールPL4及び第6投影モジュールPL6は、Y軸方向から見て、第2投影モジュールPL2と重なる位置に配置されている。このような配置により、奇数番の第1投影領域PA1、第3投影領域PA3及び第5投影領域PA5は、中心面P3から−X方向に一定量ずれて、Y軸方向に一列に並んで配置される。偶数番の第2投影領域PA2、第4投影領域PA4及び第6投影領域PA6は、中心面P3から+X方向に一定量ずれて、Y軸方向に一列に並んで配置される。
本実施形態において、照明機構IUの各照明モジュールILから円筒マスクDM上の各照明領域IR1〜IR6に達する光を照明光束EL1とする。また、各照明領域IR1〜IR6中に現れる円筒マスクDMのパターンに応じた強度分布変調を受けて各投影モジュールPL1〜PL6に入射して各投影領域PA1〜PA6に達する光を、結像光束EL2とする。そして、各投影領域PA1〜PA6に達する結像光束EL2のうち、投影領域PA1〜PA6の各中心点を通る主光線は、図1に示すように、第2ドラム部材22の第2中心軸AX2から見て、中心面P3を挟んで周方向で角度θの位置(特定位置)にそれぞれ配置される。
第1から第6投影領域PA1〜PA6のそれぞれは、第2中心軸AX2に平行な方向において隣り合う投影領域(奇数番目と偶数番目)同士の端部(台形の三角部分)が、第2面P2の周方向において重なるように配置されている。そのため、例えば、第2ドラム部材22の回転によって第1投影領域PA1を通過する基板P上の第3領域A5は、第2ドラム部材22の回転によって第2投影領域PA2を通過する基板P上の第4領域A6と一部重複する。第1投影領域PA1と第2投影領域PA2は、第3領域A5と第4領域A6が重複する領域での露光量が、重複しない領域の露光量と実質的に同一となるように、それぞれの形状等が設定されている。
次に、本実施形態の投影光学系PLの詳細構成について図3を参照して説明する。なお、本実施形態において、第2投影モジュールPL2〜第5投影モジュールPL5のそれぞれは、第1投影モジュールPL1と同様の構成である。このため、投影光学系PLを代表して、第1投影モジュールPL1の構成について説明し、第2投影モジュールPL2〜第5投影モジュールPL5のそれぞれの説明は省略する。
図3に示す第1投影モジュールPL1は、第1照明領域IR1に配置された円筒マスクDMのパターンの像を中間像面P7に結像する第1光学系41と、第1光学系41が形成した中間像の少なくとも一部を基板Pの第1投影領域PA1に再結像する第2光学系42と、中間像が形成される中間像面P7に配置された第1視野絞り43とを備える。
また、第1投影モジュールPL1は、フォーカス補正光学部材44、像シフト補正光学部材45、ローテーション補正機構46及び倍率補正用光学部材47を備えている。フォーカス補正光学部材44は、基板P上に形成されるマスクのパターン像(以下、投影像という)のフォーカス状態を微調整するフォーカス調整装置である。また、像シフト補正光学部材45は、投影像を像面内で微少に横シフトさせるシフト調整装置である。倍率補正用光学部材47は、投影像の倍率を微少補正するシフト調整装置である。ローテーション補正機構46は、投影像を像面内で微少回転させるシフト調整装置である。
円筒マスクDMのパターンからの結像光束EL2は、第1照明領域IR1から法線方向(D1)に出射し、フォーカス補正光学部材44を通って像シフト補正光学部材45に入射する。像シフト補正光学部材45を透過した結像光束EL2は、第1光学系41の要素である第1偏向部材50の第1反射面(平面鏡)p4で反射され、第1レンズ群51を通って瞳位置に配置される第1凹面鏡52で反射され、再び第1レンズ群51を通って第1偏向部材50の第2反射面(平面鏡)p5で反射されて、第1視野絞り43に入射する。第1視野絞り43を通った結像光束EL2は、第2光学系42の要素である第2偏向部材57の第3反射面(平面鏡)p8で反射され、第2レンズ群58を通って瞳位置に配置される第2凹面鏡59で反射され、再び第2レンズ群58を通って第2偏向部材57の第4反射面(平面鏡)p9で反射されて、倍率補正用光学部材47に入射する。倍率補正用光学部材47から出射した結像光束EL2は、基板P上の第1投影領域PA1に入射し、第1照明領域IR1内に現れるパターンの像が第1投影領域PA1に等倍(×1)で投影される。
図1に示す円筒マスクDMの半径をr1とし、第2ドラム部材22に巻き付いた基板Pの円筒状の表面における半径をr2として、半径r1と半径r2とを等しくした場合、各投影モジュールPL1〜PL6のマスク側における結像光束EL2の主光線は、円筒マスクDMの中心軸AX1を通るように傾けられる。その傾き角は、基板P側における結像光束EL2の主光線の傾き角度θ(中心面P3に対して±θ)と同じになる。
上述した傾き角度θを与えるため、図3に示した、光軸AX3に対する第1偏向部材50の第1反射面p4の角度θ1を45°よりもΔθ1だけ小さくし、光軸AX4に対する第2偏向部材57の第4反射面p9の角度θ4を45°よりもΔθ4だけ小さくする。Δθ1とΔθ4とは、図1中に示した角度θに対して、Δθ1=Δθ4=θ/2の関係に設定される。
図4は、図1の基板処理装置(露光装置)に適用される第2ドラム部材22(回転ドラム)の斜視図である。図5は、図1の基板処理装置(露光装置)に適用される検出プローブと読み取り装置との関係を説明するための斜視図である。図6は、実施形態に係るエンコーダスケール円盤と読み取り装置との位置を、回転中心線AX2と直交するXZ面内で見た説明図である。なお、図4においては、便宜上、第2から第4投影領域PA2〜PA4のみを図示し、第1、第5、第6投影領域PA1、PA5、PA6の図示を省略している。
図1に示す第2検出器35は、第2ドラム部材22の位置(より具体的には回転位置)を光学的に検出するものであって、図4から図6に示すようにスケール部材としての高真円度のエンコーダスケール円盤(円盤)SDと、読み取り部としてのエンコーダヘッドEN1、EN2、EN3、EN4、EN5を含む。
エンコーダスケール円盤SDは、第2ドラム部材22の回転軸STと直交する第2ドラム部材22の一方の端部に固定されている。このため、エンコーダスケール円盤SDは、回転中心線AX2周りに回転軸STとともに一体的に回転する。エンコーダスケール円盤SDは、第2ドラム部材22の両方の端部に固定されていてもよい。すなわち、エンコーダスケール円盤SDは、第2ドラム部材22の少なくとも一方の端部に固定されていればよい。
エンコーダスケール円盤SDの外周面には、第2ドラム部材22(円筒部材)の周方向における位置又は位置変化量を検出するための位置検出用の目盛としてのスケール(刻線)GPが複数刻設されている。以下において、スケールGPを、適宜、目盛GPと称する。エンコーダスケール円盤SDの、スケールGPが刻設されている部分は、スケール部である。複数の目盛GPは、第2ドラム部材22が回転する方向に沿って、例えば20μmピッチの格子線が環状に配列され、かつ第2ドラム部材22とともに回転軸ST(第2中心軸AX2)の周囲を回転する。
エンコーダヘッドEN1、EN2、EN3、EN4、EN5は、回転軸ST(第2回転中心線AX2)から見て目盛GPの周囲に、目盛GPと一定のギャップで対向して配置される。各エンコーダヘッドEN1〜EN5は、目盛GPに計測ビームを投射し、目盛GPで反射したビーム(回折光)を光電検出する非接触式のセンサーである。また、各エンコーダヘッドEN1〜EN5は、第2ドラム部材22の回転軸ST(第2回転中心線AX2)から見ると、スケール円盤SDの周方向において、互いに異なる方位(角度位置)に配置されている。
各エンコーダヘッドEN1〜EN5は、目盛GPの接線方向(XZ面内)における変位の変動に対して計測感度(検出感度)を有する読み取り装置である。図4に示すように、各エンコーダヘッドEN1〜EN5の設置方位(回転中心線AX2を中心としたXZ面内での角度方向)を設置方位線Le1、Le2、Le3、Le4、Le5で表す場合、図6に示すように、設置方位線Le1、Le2が、中心面P3に対して角度±θ°になるように、エンコーダヘッドEN1、EN2が配置される。なお、本実施形態では、一例として角度θは15°とするが、これに限定されるものではない。
図3に示す投影モジュールPL1〜PL6は、基板Pを被処理物体とし、基板Pにパターン像となる光束を照射して露光処理を施す処理部でもある。このことから、露光装置EXは、奇数番の投影モジュールPL1、PL3、PL5からなる第1処理部と、偶数番の投影モジュールPL2、PL4、PL6からなる第2処理部とを備え、基板Pに対して第1処理部と第2処理部の各々からの結像光束EL2の主光線(例えば、投影領域PAの中心点を通る主光線)が、XZ面内で見たときに、基板Pに垂直に入射する。そのように、主光線が基板Pに入射する位置を、基板Pに処理(ここでは結像光束の照射)を施す特定位置とする。
特定位置は、第2ドラム部材22の第2中心軸AX2から見て、第2ドラム部材22の外周面に支持された基板Pにおいて、中心面P3から周方向に角度±θの位置に設定されている。図4及び図6に示すように、エンコーダヘッドEN1の設置方位線Le1は、奇数番目の投影モジュールPL1、PL3、PL5の各投影領域(投影視野)PA1、PA3、PA5の中心点を通る主光線の中心面P3に対する傾き角度θと一致するように配置される。同様に、エンコーダヘッドEN2の設置方位線Le2は、偶数番目の投影モジュールPL2、PL4、PL6の各投影領域(投影視野)PA2、PA4、PA6の中心点を通る主光線の中心面P3に対する傾き角度θと一致するように配置される。このため、エンコーダヘッドEN1、EN2は、各特定位置と第2中心軸AX2とを結ぶ方向に位置する目盛GP上の目盛を読み取ることになる。
エンコーダヘッドEN4は、エンコーダヘッドEN1よりも基板Pの搬送方向の上流側、つまり露光位置(投影領域)の手前に配置されている。そして、エンコーダヘッドEN4は、設置方位線Le4上に配置される。設置方位線Le4は、エンコーダヘッドEN1の設置方位線Le1を、基板Pの搬送方向の上流側に向かって回転中心線AX2の軸周りにほぼ90°回転した位置にある。また、エンコーダヘッドEN5は、設置方位線Le5上に配置される。設置方位線Le5は、エンコーダヘッドEN2の設置方位線Le2を、基板Pの搬送方向の上流側に向かって回転中心線AX2の軸周りにほぼ90°回転した位置にある。
先に例示したように、奇数番の投影領域PA1、PA3、PA5の中心を通る結像光束EL2の主光線と、偶数番の投影領域PA2、PA4、PA6の中心を通る結像光束EL2の主光線との中心面P3に対する傾き角度±θを15°とした場合、設置方位線Le1と設置方位線Le2とのXZ面内での開き角は30°となる。そのため、設置方位線Le4と設置方位線Le5とのXZ面内での開き角も、ほぼ30°となる。
エンコーダヘッドEN4及びEN5を上述したように配置することで、目盛GPを読み取るエンコーダヘッドEN4、EN5が配置される設置方位線Le4、Le5の方向が、XZ面内かつ回転中心線AX2から見たときに、基板Pに対して結像光束EL2の主光線が基板Pの特定位置に入射する方向とほぼ直交することになる。このため、回転軸STを支持する軸受(ベアリング)の僅かなガタ(2μm〜3μm程度)によって第2ドラム部材22がZ方向にシフトした場合でも、このシフトによって投影領域PA1〜PA6内で発生し得る結像光束EL2に沿う方向に関する位置誤差を、エンコーダヘッドEN1、EN2によって高精度に計測することができる。
また、エンコーダヘッドEN3は、設置方位線Le3上に配置される。設置方位線Le3は、エンコーダヘッドEN2の設置方位線Le2が回転中心線AX2の軸周りにほぼ120°回転し、かつエンコーダヘッドEN4の設置方位線Le4が回転中心線AX2の軸周りに、設置方位線Le2の回転方向とは反対方向にほぼ120°回転した位置に設定される。すなわち、XZ面内で見たとき、回転中心線AX2から延びる3本の設置方位線Le2、Le3、Le4は、ほぼ120°の間隔で設定される。
スケール部材であるエンコーダスケール円盤SDは、例えば、低熱膨張率の金属、ガラス又はセラミックス等を母材とする。エンコーダスケール円盤SDは、計測の分解能を高めるために、なるべく大きな直径(例えば直径20cm以上)になるように作られる。図4では、第2ドラム部材22の直径に対してエンコーダスケール円盤SDの直径は小さく図示されているが、第2ドラム部材22の外周面のうち、基板Pが巻き付けられる外周面の直径と、エンコーダスケール円盤SDの目盛GPの直径とを揃える(ほぼ一致させる)ことで、いわゆる、計測アッベ誤差をさらに小さくすることができる。
エンコーダスケール円盤SDの周方向に刻設される目盛GPの最小ピッチは、エンコーダスケール円盤SDを加工する目盛刻線装置等の性能によって制限されている。このため、エンコーダスケール円盤SDの直径を大きくすれば、それに応じて最小ピッチに対応した角度計測分解能を高めることができる。目盛GPを読み取るエンコーダヘッドEN1、EN2が配置される設置方位線Le1、Le2の方向を、回転中心線AX2から見たときに、基板Pに対して結像光束EL2の主光線が基板Pに入射する方向と同一にすることにより、例えば、回転軸STを支持する軸受(ベアリング)の僅かなガタ(2μm〜3μm程度)によって第2ドラム部材22がX方向にシフトした場合でも、このシフトによって投影領域PA1〜PA6内で発生し得る基板Pの送り方向(Xs)に関する位置誤差を、エンコーダヘッドEN1、EN2によって高精度に計測することが可能となる。
図5に示すように、第2ドラム部材22の曲面に支持される基板Pの一部分に、図1に示す投影光学系PLにより投影されたマスクパターンの一部分の像と基板Pとを相対的に位置合せ(アライメント)するために、基板Pに予め形成されたアライメントマーク等を検出する複数のアライメント顕微鏡AMG1、AMG2が設けられている。アライメント顕微鏡AMG1、AMG2は、第2ドラム部材22の周囲に配置されるパターン検出装置である。アライメント顕微鏡AMG1、AMG2は、基板P上に離散又は連続して形成された特定パターンを検出するための検出プローブである。この検出プローブによる検出領域は、上述した特定位置よりも基板Pの搬送方向の上流側に配置される。
図5に示すように、アライメント顕微鏡AMG1、AMG2は、Y軸方向(基板Pの幅方向)に一列に並んだ複数(例えば4つ)の検出プローブを有している。アライメント顕微鏡AMG1、AMG2は、第2ドラム部材22のY軸方向における両側端の検出プローブで、基板Pの幅方向における両端付近に形成されたアライメントマークを常時観察又は検出することができる。そして、アライメント顕微鏡AMG1、AMG2は、第2ドラム部材22のY軸方向(基板Pの幅方向)における両側端以外の検出プローブで、例えば、基板P上に長尺方向に沿って複数形成される表示パネルのパターン形成領域の間における余白部等に形成されるアライメントマークを観察又は検出することができる。
図5に示すように、アライメント顕微鏡AMG1、AMG2による基板P上の各観察領域の中心(検出中心)を通り、第2中心軸AX2と直交する線を観察方位線AM1、AM2とする。この場合、4つのアライメント顕微鏡AMG1の各観察方位線AM1はY軸方向に平行に並び、同様に、4つのアライメント顕微鏡AMG2の各観察方位線AM2はY軸方向に平行に並ぶ。
図5及び図6に示すように、XZ面内で見たとき、エンコーダヘッドEN4の設置方位線Le4は、4つのアライメント顕微鏡AMG1の各観察方位線AM1と同じ方位に設定される。また、エンコーダヘッドEN5の設置方位線Le5は、4つのアライメント顕微鏡AMG2の各観察方位線AM2と同じ方位に設定される。
このように、アライメント顕微鏡AMG1、AMG2の各検出プローブは、第2中心軸AX2から見て第2ドラム部材22の周囲に配置される。そして、アライメント顕微鏡AMG1、AMG2の検出プローブは、エンコーダヘッドEN4、EN5が配置された位置と第2中心軸AX2とを結ぶ方向(設置方位線Le4、Le5)が、第2中心軸AX2とアライメント顕微鏡AMG1、AMG2の検出中心とを結ぶ方向と一致するよう配置されている。なお、アライメント顕微鏡AMG1、AMG2の各観察領域(検出中心)に対応したエンコーダヘッドEN4、EN5及び投影モジュールPL1〜PL6の各投影領域PA1〜PA6に対応したエンコーダEN1、EN2が配置される回転中心線AX2周り方向の位置は、図6に示す、基板Pが第2ドラム部材22に接触し始めるシート進入領域IAと、第2ドラム部材22から基板Pが外れるシート離脱領域OAとの間に設定される。
アライメント顕微鏡AMG1、AMG2は、露光位置(投影領域PA)の手前に配置されている。アライメント顕微鏡AMG1、AMG2は、例えば、基板PのY方向の端部付近に形成されたアライメントマーク(数十μm〜数百μm角内の領域に形成)の像を、基板Pが所定速度で送られている状態で、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子等により高速に画像検出(サンプリング)するものである。そのサンプリングが行われた瞬間に、制御装置14は、エンコーダヘッドEN4によって逐次計測されるエンコーダスケール円盤SDの回転角度位置を記憶(ラッチ)することにより、基板P上のマーク位置と第2ドラム部材22の回転角度位置との対応関係が求められる。
アライメント顕微鏡AMG1で検出したマークを、後続のアライメント顕微鏡AMG2でも検出するようにすると、基板Pの伸縮や第2ドラム部材22上での僅かな滑りを計測することもできる。アライメント顕微鏡AMG1がマークをサンプリングしたときに、エンコーダヘッドEN4によって計測される角度位置Φa1と、アライメント顕微鏡AMG2が同じマークをサンプリングしたときに、エンコーダヘッドEN5によって計測される角度位置Φa2とを記憶する。
なお、2つのエンコーダヘッドEN4、EN5(及びEN1、EN2、EN3)の各々に接続されて、角度位置に対応した計測値を出力するアップダウンカウンター(計数器)は、例えば、スケール円盤SDの外周面に刻設された原点マーク(不図示)が特定のエンコーダヘッド(EN1〜EN5のいずれか1つ)によって検出された瞬間又は任意の時間に、同時にゼロリセットされているものとする。このようにして求めた角度位置Φa1とΦa2の差分値を、予め精密に較正されている2つのアライメント顕微鏡AMG1、AMG2の設置方位線Le4、Le5の開き角Φ0と比較する。そして、差分値(Φa1−Φa2)と開き角Φ0との間に誤差が生じている場合は、シート進入領域IAとシート離脱領域OAとの間で、基板Pが第2ドラム部材22上で僅かに滑っている又は送り方向(周方向)に伸縮している可能性がある。
一般に、パターニング時の位置誤差は、基板P上に形成されるデバイスパターンの微細度及び重ね合わせ精度に応じて決まるが、例えば、下地のパターン層に対して10μm幅の線条パターンを正確に重ね合わせ露光するためには、その数分の一以下の誤差、すなわち、基板P上の寸法に換算して、±2μm程度の位置誤差しか許されないことになる。このような高精度な計測を実現するためには、各アライメント顕微鏡AMG1、AMG2によるマーク画像の計測方向(XZ面内における第2ドラム部材22の外周接線方向)と、各エンコーダヘッドEN4、EN5の計測方向(XZ面内での目盛GPの外周接線方向)とを、許容角度誤差内で揃えておく必要がある。
上述したように、エンコーダヘッドEN4、EN5は、アライメント顕微鏡AMG1、AMG2による基板P上のアライメントマークの計測方向(第2ドラム部材22の円周面の接線方向)と一致するように配置されている。このため、アライメント顕微鏡AMG1、AMG2による基板P(マーク)の位置検出時(画像サンプリング時)に、第2ドラム部材22(エンコーダスケール円盤SD)が、XZ面内において設置方位線Le4又はLe5と直交した周方向(接線方向)にシフトした場合でも、第2ドラム部材22のシフトを加味した高精度な位置計測が可能となる。
また、目盛GPの目盛ピッチが常に一定であれば、回転に速度ムラがないとして、エンコーダヘッドEN1、EN2、EN3、EN4、EN5の各読み値の変化間隔(カウンターへのアップダウンパルスの発生時間)は一定となる。しかし、エンコーダスケール円盤SDを第2ドラム部材22に取り付ける際におけるエンコーダスケール円盤SDの変形、エンコーダヘッドEN1、EN2、EN3、EN4、EN5を取り付ける際の位置(チルト)誤差、エンコーダスケール円盤SDの製造時の精度、取り付け時の偏心等といった影響等によって、目盛GPには固有の誤差(目盛自体のピッチ誤差、偏心及び変形等によるピッチムラ等)が生じ得る。また、目盛GPには、基板処理装置11の運転中等における温度変化に起因するエンコーダスケール円盤SDの伸縮等のように、常時変動する要素による固有誤差も生じ得る。本実施形態では、上述したような原因で発生する目盛GPの固有誤差に伴う計測誤差を求める。そして、得られた計測誤差に基づいて目盛GPの固有誤差分を補正するための補正マップ(補正量データ)を作成し、複数のエンコーダヘッドEN1〜EN5の各読み取り値(実計測値)を、補正マップに基づいて補正し、目盛GPの固有誤差による計測誤差分を相殺又は低減した計測を行うようにする。
本実施形態において、目盛GPの目盛のピッチ誤差及びピッチムラ等に起因する計測誤差の補正マップ作成は、円筒部材としての第2ドラム部材22と同軸に取り付けられた状態のスケール円盤SDの外周に配置された複数のエンコーダヘッドの実計測値に基づいて実行される。ここでは、第1読み取り部としてのエンコーダヘッドEN4と、第2読み取り部としてのエンコーダヘッドEN5と、補正部及びマップ作成部としての制御装置14とによって、補正マップが作成される。本実施形態では、便宜上、エンコーダヘッドEN4を第1読み取り部とし、エンコーダヘッドEN5を第2読み取り部とするが、第1読み取り部及び第2読み取り部は、予め取り付け角度間隔が判っている少なくとも2ヶ所のエンコーダヘッドであればよい。
補正部としての制御装置14は、エンコーダヘッドEN4による読み取り値(カウンターによる計数値m4とする)とエンコーダヘッドEN5よる読み取り値(カウンターによる計数値m5とする)との差分値(m4−m5)、又はエンコーダヘッドEN4とエンコーダヘッドEN5との角度間隔に対応した既定値(例えばその間の目盛の本数に対応した値で、K45とする)から差分値(m4−m5)を引いた差分値(K45−m4−m5)に基づいて、目盛GPの一周分にわたって発生している目盛のピッチ誤差を、例えば目盛GPの原点位置からの所定角度位置毎に求める。そして、制御装置14は、目盛GPの一周分の目盛ピッチ誤差のデータを補正マップとして記憶するとともに、その補正マップに基づいて、エンコーダヘッドEN4の読み取り値、エンコーダヘッドEN5の読み取り値又は他のエンコーダヘッドEN1〜EN3の各読み取り値を補正する。
図7は、目盛GPの目盛を模式的に表した拡大図である。図8は、目盛GPとエンコーダヘッドEN4、EN5との位置関係を示す模式図である。図7に示すように、目盛GPの目盛は、例えば、立ち上がり部GPaと立ち下がり部GPbとを有する凸部GPtと、隣接する凸部GPtの間の凹部GPUとの繰り返しで構成される。本実施形態においては、1つの凸部GPtと1つの凹部GPUとが目盛GPの一単位、すなわち目盛の1ピッチであるとする。説明を簡単にするため、各エンコーダヘッドEN1〜EN5は、目盛の立ち上がり部GPaを読み取ったとき、アップパルスUを出力し、立ち下がり部GPbを読み取ったときにダウンパルスDを出力するものとする。
目盛GPの目盛は、その立ち上がり部GPaから隣接する目盛GPの立ち上がり部GPaまでの距離SS1又はその立ち下がり部GPbから隣接する目盛の立ち下がり部GPbまでの距離SS2が、目盛同士のピッチ(間隔)になる。エンコーダスケール円盤SDの設計時に定められた目盛ピッチをSSとすると、目盛GPが正確に製造されていれば、目盛GP上のどの部分においても、距離SS1又はSS2は目盛ピッチSSと一致してくる。
そのため、目盛GPが図7の矢印Rで示す方向に移動したとき、エンコーダヘッドENが出力するパルスで見れば、2個のアップパルスUと1個のダウンパルスUとが出力された場合、あるいは2個のダウンパルスDと1個のアップパルスUとが出力された場合に、エンコーダスケール円盤SD(図6参照)の外周面(目盛GP)が目盛ピッチSS分だけ移動(回転)したことになる。エンコーダヘッドENが出力するパルスの種類を区別しなければ、3個のパルスが検出される度に、エンコーダスケール円盤SDの外周部が目盛ピッチSS分だけ移動したことになる。
なお、実際のエンコーダ計測では、エンコーダヘッドから2相信号(sin波、cos波)を発生させ、この2相信号に基づいて、目盛ピッチSSをさらに細分化するような内挿信号処理が行われる。このため、デジタルカウンタによって実際に計数されるアップパルスU及びダウンパルスDは、目盛ピッチSSを数分の一〜数十分の一に等分した位置毎に発生する。
図8は、スケール円盤SDの外周部に設けられた目盛GPの複数の目盛を直線的に並べて模式的に表したものである。図8では、エンコーダスケール円盤SDの外周部に設けられた目盛GPが矢印Rで示す方向へ移動するものとする。第1読み取り部としてのエンコーダヘッドEN4と、第2読み取り部としてのエンコーダヘッドEN5とが、目盛GPの移動方向に向かってこの順序で配置されている。2個のエンコーダヘッドEN4、EN5は、目盛GPから見ると、相対的に、目盛GPの移動方向とは反対方向に移動する。
図6に示したように、一対のエンコーダヘッドEN4、EN5は、エンコーダヘッドEN4と第2中心軸AX2とを結ぶ線(設置方位線Le4)とエンコーダヘッドEN5と第2中心軸AX2とを結ぶ線(設置方位線Le5)とのなす中心角(エンコーダ取付角度)がθsである。また、図8に示すように、一対のエンコーダヘッドEN4、EN5がエンコーダスケール円盤SDの表面で目盛GPを読み取る位置の、目盛GPの周長方向における直線距離(ヘッド間距離)はXSである。
一対のエンコーダヘッドEN4、EN5は、基板処理装置11のフレーム等に取り付けられると、エンコーダ取付角度θs及びヘッド間距離XSは一定である。上述したように、エンコーダスケール円盤SDの変形、エンコーダスケール円盤SDの製造時の精度、取り付け時の偏心、温度変化に起因するエンコーダスケール円盤SDの伸縮等によって、目盛ピッチSSはエンコーダスケール円盤SDの周方向において、必ずしも一定ではない。例えば、極めて模式的に説明すると、図8に示すように、目盛GP上の領域a、c、dにおいては、1つのエンコーダ取付角度θs及び1つのヘッド間距離XSの間に立ち上がり部GPaと立ち下がり部GPbとを一組として、3個の目盛GPが存在する。しかしながら、領域bは2.5個、領域eは6個の目盛GPが存在する。
図8に示す例では、目盛ピッチSSが設計値の場合、例えば、1つのエンコーダ取付角度θs及び1つのヘッド間距離XSの間には、規定数(この例では3個)の目盛GPが存在するものとする。実際には、上述した目盛GPの誤差要因によって、1つのエンコーダ取付角度θs及び1つのヘッド間距離XSの間に存在する目盛GPの数は、前述した規定数から増減してしまう。図8中の領域aは、目盛ピッチがSSaであるが、領域bでは目盛GPの数が規定数よりも少ないため、領域bの目盛ピッチSSbは、領域aの目盛ピッチSSaよりも大きくなる。また、領域eは目盛GPの数が規定数よりも多いため、領域eの目盛ピッチSSeは、目盛ピッチSSaよりも小さくなる。
例えば、設計上の目盛ピッチSSが100であり、設計上のヘッド間距離XSが300であるとする。図8の領域a、c、dは、エンコーダヘッドEN4、EN5が目盛GPを読み取った各値(カウンターによる計数)に基づいて算出される実ヘッド間距離Xは300である。これは設計上のヘッド間距離XSと一致する。これに対して、図8の領域bは、エンコーダヘッドEN4、EN5が読み取った各値(カウンターによる計数値)に基づいて算出される実ヘッド間距離Xが250となり、領域eは、エンコーダヘッドEN4、EN5の読み取り値(カウンターによる計数値)に基づく実ヘッド間距離Xが600となる。
このように、設計上のヘッド間距離XSと実ヘッド間距離Xとの違いは、目盛GPの目盛ピッチ誤差に起因するものである。一対のエンコーダヘッドEN4、EN5を装置に固定した後、装置を一定温度の環境中に設置すれば、ヘッド間距離XSは変化しない。このため、例えば、エンコーダヘッドEN4、EN5の固定後におけるヘッド間距離XSを基準として、エンコーダヘッドEN4、EN5の読み取り値から求められる目盛GPの目盛ピッチ誤差のマップ(1周360°の角度位置毎の誤差量又は誤差の補正量)を作成する。そのマップの作成後は、エンコーダヘッドEN4、EN5(又は他のヘッドEN1〜EN3)によるスケールGPの読み取り値(カウンターの計数値)に基づいて、その角度位置に対応した誤差量又は補正量をマップから呼び出して逐次補正すれば、スケールGPの周長方向の移動距離誤差をリアルタイムに補正することができる。
実際の目盛ピッチ誤差及び目盛GPの移動距離誤差を補正する場合、例えば、目盛GPに誤差がない場合の目盛ピッチSS、設計上のヘッド間距離XS及び実ヘッド間距離Xを用い、さらに目盛GPに誤差が発生した場合における実際の目盛ピッチ(実目盛ピッチ)SSrは、例えば式(1)から求められる。実目盛ピッチSSrを用いることにより、目盛GPの誤差を補正し、結果として目盛GPの移動距離の誤差を補正することもできる。
SSr=SS×XS/X・・(1)
また、一対のエンコーダヘッドEN4、EN5が読み取った、ヘッド間距離XSの間に存在する目盛GPの数(計測目盛線)NSに基づいて目盛GPの誤差を補正し、目盛GPの移動距離誤差を補正してもよい。ヘッド間距離XSの間に存在する目盛線の数NSは、一対のエンコーダヘッドEN4、EN5から得られるアップパルスU及びダウンパルスDのカウンターによる計数値によって求めることもできる。計測目盛線NSを用いた場合、実目盛ピッチSSrは、ヘッド間距離XSを含む式(2)で求めることができる。
SSr=XS/NS・・(2)
目盛ピッチの誤差及び目盛GPの移動距離の誤差は、円筒部材の位置検出装置が有する補正部としての制御装置14が、例えば、式(1)又は式(2)を用いた演算によって、一対のエンコーダヘッドEN4、EN5の読み取り値に対する補正量として適用する。このため、制御装置14を備える円筒部材の位置検出装置及び基板処理装置11は、目盛GPが設けられるエンコーダスケール円盤SDの変形等によって目盛ピッチSSに誤差が生じても、誤差マップ又は補正マップを使うことで、ほぼリアルタイムにその誤差を補正することができるので、エンコーダスケール円盤SD及び第2ドラム部材22について、精度のよい位置計測(周方向における位置計測)が実現できる。次に、目盛ピッチの誤差及び移動距離の誤差の補正について説明する。
図9は、スケールの目盛ピッチ誤差を補正する手順を示すフローチャートである。図10は、外周面に目盛を有するスケール円盤SDとエンコーダヘッドEN4、EN5との関係を示す図である。図11は、補正マップの一例を示す図である。目盛GPの目盛ピッチ誤差を補正する場合、図10に示すように、一対のエンコーダヘッドEN4、EN5のヘッド間距離XSを予め計測しておき、制御装置14が有する記憶部に記憶させる。ヘッド間距離XSは、一対のエンコーダヘッドEN4、EN5がエンコーダスケール円盤SDの外周面で目盛GPを読み取る位置で求められる。一対のエンコーダヘッドEN4、EN5が目盛GPを読み取る位置は、エンコーダスケール円盤SDが真円であり、かつ回転中心線AX2に対してエンコーダスケール円盤SDが偏心していない状態での位置とすることができる。この場合、図10に示すように、回転中心線AX2からエンコーダスケール円盤SDの設計値の半径(中心から外周面までの距離)raで湾曲した曲面Pd(目盛GPの目盛面)上で、一対のエンコーダヘッドEN4、EN5のヘッド間距離XSが計測される。図10に示す例において、エンコーダスケール円盤SDの目盛GPは、矢印Rで示す方向、すなわち、エンコーダヘッドEN4からエンコーダヘッドEN5に向かって回転(旋回)する。
図9に示すように、ステップS101において、図1に示す基板処理装置11の処理が開始されていない場合(ステップS101、No)、目盛GP等の補正は実行しない。ステップS101において、基板処理装置11の処理が開始され、スケール円盤SDが安定に回転している場合(ステップS101、Yes)、ステップS102において、制御装置14は、所定のタイミングでエンコーダヘッドEN4、EN5からこれらの読み取り値(カウンターの計数値)を取得する。所定のタイミングで取得とは、例えば、エンコーダスケール円盤SDの目盛GPが回転中心線AX2を中心として所定の角度α(度)だけ回転する毎に、制御装置14がエンコーダヘッドEN4、EN5の各読み取り値を取得すること、すなわち各カウンターの計数値をラッチして記憶することをいう。以下、角度αを、適宜、回転角度αということもある。エンコーダスケール円盤SDが等角速度(等周速度)で回転している場合、所定の時間t毎に制御装置14が両方のエンコーダヘッドEN4、EN5の各読み取り値を取得してもよい。この例において、α(度)は、360の約数が好ましいが、角度αはこれに限定されるものではない。角度αは、目盛ピッチ誤差の傾向(誤差の振れ幅や周方向の変化率)に応じて決められる。
エンコーダスケール円盤SDが等角速度で回転している場合、制御装置14は、時間t毎に両方のエンコーダヘッドEN4、EN5からこれらの読み取り値を取得する。制御装置14が、所定の角度α毎に両方のエンコーダヘッドEN4、EN5からこれらの読み取り値を取得する場合、例えば、エンコーダスケール円盤SDの回転角度検出手段を用意する。そして、制御装置14は、エンコーダスケール円盤SDが角度αだけ回転したことを回転角度検出手段が検出したタイミング毎に、両方のエンコーダヘッドEN4、EN5からこれらの読み取り値を取得する。また、両方のエンコーダヘッドEN4、EN5のいずれか一方を回転角度検出手段としても用いてもよい。例えば、エンコーダヘッドEN4を回転角度検出手段として用いた場合、制御装置14は、エンコーダスケール円盤SDが角度αだけ回転したことをエンコーダヘッドEN4が検出したタイミング毎に、両方のエンコーダヘッドEN4、EN5からこれらの読み取り値を取得する。エンコーダスケール円盤SDが角度αだけ回転したことは、例えば、エンコーダヘッドEN4が、回転角度αに相当する目盛GPの数を検出し、これに対応するパルス数を出力することで検出できる。
次に、ステップS103に進み、制御装置14は、ステップS102で取得した読み取り値に基づき、目盛GPの補正値としての実目盛ピッチSSrを求める。例えば、上述した式(2)を用いて実目盛ピッチSSrを求める場合、制御装置14は、エンコーダヘッドEN4、EN5の読み取り値から、計測スケール数NSを求める。計測スケール数NSは、エンコーダヘッドEN4による目盛GPの数の読み取り値NSaと、エンコーダヘッドEN5による目盛GPの数の読み取り値NSbとの差分(NSa−NSb)である。そして、制御装置14は、自身の記憶部に記憶したヘッド間距離XSを読み出して、式(2)から実目盛ピッチSSrを求める。実目盛ピッチSSrが、角度α(度)の範囲における目盛GPの間隔の補正値となる。なお、上述した式(2)を用いて実目盛ピッチSSrを求める場合は、計測スケール数NSと目盛GPに誤差がない場合の目盛ピッチSSとの積から計測エンコーダ間距離Xを求め、ヘッド間距離XS、目盛ピッチSS及び計測エンコーダ間距離Xから計測スケール数NSを求めればよい。
計測スケール数NSは、例えば、次のようにして求めることができる。エンコーダスケール円盤SDが有する複数の目盛GPの基準となる位置(スケール基準位置)GPbを、エンコーダヘッドEN4が読み取ったとき、制御装置14は、エンコーダヘッドEN4をリセット(エンコーダヘッドEN4のZ相による0点リセット)してから、エンコーダヘッドEN4が検出した目盛GPの数を計数する。次に、エンコーダヘッドEN5がスケール基準位置GPbを読み取ったとき、制御装置14は、エンコーダヘッドEN5をリセット(エンコーダヘッドEN5のZ相による0点リセット)する。そして、制御装置14は、エンコーダヘッドEN5が0にリセットされたときにおけるエンコーダヘッドEN4の目盛GPの数を取得し、エンコーダヘッドEN5がスケール基準位置GPbを読み取ったときにおける目盛GPの数、すなわち0との差分を求める。この差分が、計測スケール数NSである。これ以降において、制御装置14は、エンコーダヘッドEN4、EN5による目盛GPの計数を継続するとともに、所定の角度α又は所定の時間t毎に両方のエンコーダヘッドEN4、EN5の読み取り値の計数値(目盛GPの計数値)を取得し、その差分を求め、これを所定の角度α又は所定の時間tにおける計測スケール数NSとする。この例において、エンコーダスケール円盤SDが1周すると、スケール基準位置GPbは元の位置に戻るが、このとき、エンコーダヘッドEN4、EN5の各々に接続されたカウンターはリセットしなくてもよいし、リセットしてもよい。
ステップS103で、ある角度αにおける実目盛ピッチSSr(目盛GPの補正値に相当)が求められたら、ステップS104において、制御装置14は、その角度αと対応付けて図11に示す補正マップTBcに記述する。例えば、補正マップTBcのNo.2には、角度2×αと、それに対応する実目盛ピッチSSr2(=XS/NS2)とが記述される。補正マップTBcは、制御装置14の記憶部に記憶されている。制御装置14は、複数の目盛GPの全周(エンコーダスケール円盤SDの全周)にわたって実目盛ピッチSSrを求める。制御装置14は、基板処理装置11の処理中において、エンコーダヘッドEN4とエンコーダヘッドEN5との少なくとも一方が検出したエンコーダスケール円盤SDの角度に対応した補正値、すなわち実目盛ピッチSSrを補正マップTBcから読み出して、目盛GPの誤差を補正する。図6に示すように、基板処理装置11が3以上のエンコーダヘッドEN1、EN2、EN3、EN4、EN5を有する場合、制御装置14は、エンコーダヘッドEN4、EN5以外についても、補正マップTBcを用いて目盛GPの誤差を補正してもよい。次に、ステップS105に進み、基板処理装置11の処理が終了していない場合には(ステップS105、No)、制御装置14は、ステップS102〜ステップS104を継続し、基板処理装置11の処理が終了した場合には(ステップS105、Yes)、制御装置14は、目盛GP等の補正を終了する。
上記例では、基板処理装置11の処理中、すなわち、処理部が基板に対して所定の処理(例えば、露光処理)を施しているときに、制御装置14は、複数の目盛GPの間隔が見かけ上、一定になるように補正する。このようにすることで、基板処理装置11の稼働中に発生した目盛GPの誤差、すなわち読み取りスケール間隔の誤差をリアルタイムで補正できるので、基板処理装置11の処理の精度が向上する。
円盤SDが1周、すなわち、エンコーダヘッドEN4の位置にあったスケール基準位置GPbがエンコーダヘッドEN4の位置に戻ってくると、全周分の目盛GPの補正値として、実目盛ピッチSSrが求められる。制御装置14は、以後も円盤SDが1周する毎に同様に目盛GPを補正してもよいし、円盤SDが1周した後は目盛GPの補正を終了し、所定のタイミング(例えば、所定時間が経過した後又は所定の温度変化があった場合等)で目盛GPの補正を再開してもよい。前者のようにすると、補正マップTBcを随時更新するため、エンコーダスケール円盤SD及び目盛GPの短時間における変形又は寸法変化等にも迅速に対応できる。後者のようにすると、補正マップTBcの更新頻度を抑制できるので、その分、制御装置14のハードウェア資源を有効に利用できる。
制御装置14がエンコーダヘッドEN4、EN5からこれらの読み取り値を取得する際に、取得のタイミングが短いほど又はエンコーダヘッドEN4、EN5の間隔が小さいほど、目盛GPの補正精度が向上する。エンコーダヘッドEN4、EN5の間隔は、エンコーダヘッドEN4、EN5の大きさ及びその他の部品配置との兼ね合い等から、ある程度の制約を受ける。このため、エンコーダヘッドEN4、EN5からこれらの読み取り値を取得する際のタイミングを短くする方が、汎用性は高くなるという利点がある。
図12、図13は、一対のエンコーダヘッドからこれらの読み取り値を取得する際のタイミングを示す概念図である。上述した例では、エンコーダスケール円盤SDの複数の目盛GPが回転中心線AX2を中心として所定の回転角度α(度)だけ回転する毎に、制御装置14がエンコーダヘッドEN4、EN5からこれらの読み取り値を取得した。このときの回転角度α(度)を、360の約数とした場合、エンコーダスケール円盤SDが複数回転している間、エンコーダヘッドEN4、EN5は毎周同じ位置を読み取ることになる(図12参照)。この場合、目盛GPの補正精度を向上させるためには、所定の回転角度αを小さくする必要があるが、装置の制約等から無闇に回転角度αを小さくすることはできない。
本実施形態において、複数の目盛GPを有するエンコーダスケール円盤SDが回転体(連続体)なので、必ずしも1周毎の周期性を担保しないでも、エンコーダヘッドEN4、EN5を用いて連続的に測定が可能である。このため、例えば、回転角度α(度)を360度の約数とならない数とすることにより、エンコーダスケール円盤SDが複数回転した場合における、エンコーダヘッドEN4、EN5の読取位置の周期性を崩すことができる。特に、α(度)を360度の約数とならない数かつ素数とすることにより、前述した周期性をより効果的に崩すことができる。その結果、所定の回転角度αが大きくても、複数の目盛GP(エンコーダスケール円盤SD)が周回を重ねる毎に発生するズレ量が微小となるため、結果としてエンコーダヘッドEN4、EN5による目盛GPの測定間隔を小さくすることができる(図13参照)。
例えば、角度αを10度〜35度程度の間で360度の約数とならない値とするのがよいが、360/αの値が小数点以下1桁〜4桁程度、好ましくは小数点以下1桁〜4桁で割り切れるような値としてもよい。一例として、角度αを11度、17度、19度、23度等の素数とした場合、360/αは小数点以下4桁でも割り切れない。一方、角度αを12.5度、16度、25度、28.8度のいずれかにした場合、360/αは小数点以下1桁で割り切れる。角度αを19.2度、32.0度とした場合、360/αは小数点以下2桁で割り切れる。角度αを12.8度とした場合、360/αは小数点以下3桁で割り切れる。さらに角度αを25.6度とした場合、360/αは小数点以下4桁で割り切れる。なお、回転角度αが10度〜35度の間で、約数(360/αが整数)となる角度は、10度、12度、14.4度、15度、18度、20度、22.5度、24度、30度である。また、回転角度αは1度〜10度の範囲であっても構わないが、360/αが整数となるような約数を避ける場合、回転角度αは7度、9度となる。なお、必要とする誤差補正の分解能によっては、回転角度αを1度未満、例えば0.5度毎にエンコーダヘッドEN4、EN5の各々による読み取り値の差分を求めて、ピッチ誤差のマップを作成してもよい。
図14は、スケールの誤差を補正する手順を示すフローチャートである。図14に示す例は、エンコーダスケール円盤SDの複数の目盛GPが回転中心線AX2を中心として所定の角度α(度)だけ回転する毎に一対のエンコーダヘッドEN4、EN5がこれらを読み取る場合において、回転角度αを360の約数でない素数とした場合の処理手順を示している。この例において、回転角度αは、例えば、7度、11度等とすることができる。
ステップS201〜ステップS204は、α(度)を360の約数とした上述の例におけるステップS101〜ステップS104と同様なので、説明を省略する。ステップS205において、制御装置14は、補正値を求め始めてからエンコーダスケール円盤SDが規定の回転数まで回転していない場合(ステップS205、No)、ステップS202〜ステップS205を繰り返す。ステップS205において、制御装置14は、補正値を求め始めてからエンコーダスケール円盤SDが規定の回転数まで回転した場合(ステップS205、Yes)、ステップS206に進む。ステップS206は、α(度)を360の約数とした上述の例におけるステップS105と同様なので説明を省略する。ステップS205における規定の回転数は2回転以上であればよいが、規定の回転数が大きくなるに従って、目盛GPの補正精度を向上させる効果は小さくなる。このため、2回転以上の適切な範囲で規定の回転数を設定することが好ましい。
次に、エンコーダヘッドEN4、EN5の配置について説明する。図6に示すように、第1読み取り部としてのエンコーダヘッドEN4及び第2読み取り部としてのエンコーダヘッドEN5は、処理部としての露光装置EX(図1参照)よりも円筒部材としての第2ドラム部材22の回転方向とは反対側に配置されることが好ましい。より具体的には、第2ドラム部材22に支持された基板Pが露光装置EXによって露光処理される部分よりも、第2ドラム部材22の回転方向とは反対側に配置されることが好ましい。すなわち、第2ドラム部材22に支持された基板Pが露光装置EXによって露光処理される部分よりも前の二箇所で目盛GPを読み取り、補正値を求める。図6に示す例において、第2ドラム部材22の回転方向は、エンコーダヘッドEN4からエンコーダヘッドEN5へ向かう方向である。エンコーダヘッドEN4、EN5をこのように配置することで、目盛GPが補正された後における第2ドラム部材22の周方向における位置情報を用いて処理(この例では露光処理)の制御にフィードバックすることができるので、処理の精度が向上する。
本実施形態においては、エンコーダヘッドEN4、EN5の両方を基板Pが露光装置EXによって露光処理される部分よりも、第2ドラム部材22の回転方向とは反対側に配置しているが、一方を露光処理される部分に配置してもよい。例えば、エンコーダヘッドEN5を第1読み取り部とし、エンコーダヘッドEN1を第2読み取り部とし、両者の読み取り値の差分に基づいて目盛GPの補正値を求めてもよい。
また、本実施形態では、アライメント顕微鏡AMG1、AMG2は、エンコーダヘッドEN4、EN5に対応した位置に配置されているので、基板Pの表面における変化をアライメント顕微鏡AMG1、AMG2で計測することにより、処理位置における基板Pの変化を予測して、処理時に補正することもできる。さらに、エンコーダヘッドEN4、EN5に加え、これらとは異なる位置、例えば、処理位置に配置されているエンコーダヘッドEN1、EN2の少なくとも一方を用いて、回転中心線AX2の振れ(回転中心線AX2と直交する方向における動き)、真円度(形状歪み)又は第2ドラム部材22の偏心等を計測し、その計測値に基づいて処理の補正をすることもできる。
回転中心線AX2の振れ又は第2ドラム部材22の偏心等を計測する場合、処理位置(露光処理の位置)に対してエンコーダヘッドEN4、EN5とは反対側に配置されている第3読み取り部としてのエンコーダヘッドEN3(図6参照)を、エンコーダヘッドEN4、EN5とともに用いることが好ましい。このようにすると、処理位置の前後で、回転中心線AX2の振れ等の計測結果を比較し、中間値を回転中心線AX2の振れに対する補正値とすることができる。また、処理位置を挟んで前後に配置されたエンコーダヘッドEN4、EN5とエンコーダヘッドEN3とを用いて回転中心線AX2の振れ等を計測し、その計測値に基づいて補正することにより、回転中心線AX2の振れ等を補正する際の精度が向上する。エンコーダヘッドEN3を第3読み取り部として用いる場合、エンコーダヘッドEN5と回転中心線AX2とを結ぶ直線(設置方位線Le5)とエンコーダヘッドEN3と回転中心線AX2とを結ぶ直線(設置方位線Le3)とのなす角度は、図6に示す210度に限定されるものではなく、エンコーダヘッドEN3が処理位置側にあってもよい。
第1読み取り部としてのエンコーダヘッドEN4及び第2読み取り部としてのエンコーダヘッドEN5に加え、第3読み取り部としてのエンコーダヘッドEN3を用いる場合、エンコーダスケール円盤SDの周方向におけるエンコーダヘッドEN4とエンコーダヘッドEN5との間隔は、エンコーダヘッドEN5とエンコーダヘッドEN3との間隔よりも小さいことが好ましい。エンコーダヘッドEN4とエンコーダヘッドEN5との間隔を狭くすることで、目盛GPの補正精度を向上させることができる。また、エンコーダヘッドEN5とエンコーダヘッドEN3との間隔を広くすることで、第2ドラム部材22の偏心等を検出する際の感度を向上させることができる。
次に、第1読み取り部としてのエンコーダヘッドEN4と第2読み取り部としてのエンコーダヘッドEN5とを配置する間隔について説明する。エンコーダヘッドEN4とエンコーダヘッドEN5とは、エンコーダヘッドEN4と回転中心線AX2とを結ぶ線(設置方位線Le4)とエンコーダヘッドEN5と回転中心線AX2とを結ぶ線(設置方位線Le5)とのなす中心角であるエンコーダ取付角度θsが、90度、180度及び270度以外の角度となるように配置されることが好ましい。このようにすることで、2個のエンコーダヘッドEN4、EN5で、回転中心線AX2の振れ又は第2ドラム部材22の偏心等を検出することもできる。さらに、エンコーダ取付角度θsは、45度以内が好ましく、かつ120度、240度以外の角度となることが好ましい。このようにすることで、2個のエンコーダヘッドEN4、EN5で、回転中心線AX2の振れ又は第2ドラム部材22の偏心等を検出しつつ、目盛GPの補正精度も向上する。次に、基板処理装置11がエンコーダスケール円盤SDの真円度を調整する機構を有している場合について説明する。
図15及び図16は、エンコーダスケール円盤の真円度を調整する真円度調整機構を説明するための説明図である。上述した図4及び図5では、第2ドラム部材22の直径に対してエンコーダスケール円盤SDの直径は小さく図示されているが、第2ドラム部材22の外周面のうち、基板Pが巻き付けられる外周面の直径と、エンコーダスケール円盤SDの目盛GPの直径とを揃える(ほぼ一致させる)ことが好ましい。このようにすることで、いわゆる、計測アッベ誤差をさらに小さくすることができる。この場合、露光装置EXは、図13に示すようなエンコーダスケール円盤SDの真円度を調整する真円度調整機構Csを備えることが好ましい。
スケール部材であるエンコーダスケール円盤SDは円環状の部材である。目盛GPを外周面に有するエンコーダスケール円盤SDは、第2ドラム部材22の第2中心軸AX2と直交する第2ドラム部材22の少なくとも一方の端部に固定されている。エンコーダスケール円盤SDは、第2中心軸AX2の周方向に沿ってエンコーダスケール円盤SDに設けられた溝Scを、溝Scと同半径でかつ第2中心軸AX2の周方向に沿って第2ドラム部材22に設けられた溝Dcに対向させている。そして、エンコーダスケール円盤SDは、溝Scと溝Dcとの間に転動体(例えば、球)等の軸受部材SBを介在させている。
真円度調整機構Csは、エンコーダスケール円盤SDの内周側に備えられ、調整部材60と、押圧部材PPとを含む。そして、真円度調整機構Csは、例えば設置方位線Le4と平行な方向である、第2中心軸AX2から目盛GPに向かう方向の押圧力を可変できる押圧機構を、回転中心線AX2を中心とする周方向に所定のピッチで複数(例えば、8箇所)備えている。調整部材60は、押圧部材PPを挿通し、エンコーダスケール円盤SDの雌ネジ部FP3及び第2ドラム部材22の雌ネジ部FP4にねじ込まれる雄ねじ部61と、押圧部材PPに接触するヘッド部62とを有する。押圧部材PPは、エンコーダスケール円盤SDの端部に周方向に沿ってエンコーダスケール円盤SDよりも半径の小さい円環状の固定板である。エンコーダスケール円盤SDは、第2ドラム部材22の周方向に向かって、複数の締結部材、すなわち雄ねじ部61及びヘッド部62を含む調整部材60によって、第2ドラム部材22の少なくとも一方の端部に固定される。
設置方位線Le4をエンコーダスケール円盤SDの内周側に延長した先には、エンコーダスケール円盤SDの内周側、かつ第2中心軸AX2と平行かつ第2中心軸AX2を含む断面において傾斜面FP2が形成されている。傾斜面FP2は、第2中心軸AX2に近づくにつれて、第2中心軸AX2と平行な方向の厚みが薄くなるような傾斜面である。押圧部材PPには、第2中心軸AX2に近づくにつれて第2中心軸AX2と平行な方向の厚みが厚くなるような傾斜面FP1が形成されている。そして、押圧部材PPは、エンコーダスケール円盤SDに対して、傾斜面FP2と傾斜面FP1とが対向するように調整部材60で固定されている。
真円度調整機構Csは、調整部材60の雄ねじ部61をエンコーダスケール円盤SDの雌ネジ部FP3にねじ込むことにより、押圧部材PPの傾斜面FP1の押圧力が傾斜面FP2に伝達され、エンコーダスケール円盤SDの内側から外周側に向けて微少量弾性変形する。逆に、雄ねじ部61を反対側に回転させることにより、押圧部材PPの傾斜面FP1の抑制された押圧力が傾斜面FP2に伝達され、エンコーダスケール円盤SDの外周側から内側に向けて微少量弾性変形する。
真円度調整機構Csは、回転中心線AX2を中心とする周方向に所定のピッチで複数備える調整部材60において、雄ねじ部61を操作することにより、目盛GPの周方向の径を微少量調整することができる。また、真円度調整機構Csは、上述した設置方位線Le1〜Le5上にある目盛GPを微小変形させることができるので、目盛GPの周方向の径を高精度に調整することができる。従って、エンコーダスケール円盤SDの真円度に応じて、適切な位置の調整部材60を操作することにより、エンコーダスケール円盤SDの目盛GPの真円度を高めたり、回転中心線AX2に対する微少偏心誤差を低減させたりして、第2ドラム部材22に対する回転方向の位置検出精度を向上させることができる。なお、真円度調整機構Csが調整する調整量は、エンコーダスケール円盤SDの直径又は調整部材60の半径位置によって異なるが、最大でも数μm程度である。
図16に示すように、エンコーダスケール円盤SDは、8個の調整部材60によって第2ドラム部材22に固定されている。この場合、第1読み取り部としてのエンコーダヘッドEN4と第2読み取り部としてのエンコーダヘッドEN5とは、エンコーダヘッドEN4と第2中心軸AX2とエンコーダヘッドEN5との中心角であるエンコーダ取付角度θsが、隣接する調整部材60と第2中心軸AX2とがなす中心角βよりも小さくなるように配置されることが好ましい。
エンコーダスケール円盤SDは、調整部材60によって第2ドラム部材22に固定されるので、調整部材60の近傍では変形が発生する可能性がある。上述したように、θs<βとすることで、エンコーダヘッドEN4、EN5は、隣接する調整部材60間における変形に起因する目盛GPの誤差を確実に検出することができる。その結果、目盛GPの補正精度が向上する。次に、基板処理装置(露光装置)の変形例を説明する。
(基板処理装置(露光装置)の第1変形例)
図17は、基板処理装置(露光装置)の第1変形例を示す模式図である。図18は、基板処理装置(露光装置)の第1変形例に係るエンコーダスケール円盤を回転中心線方向に見た、読み取り装置の位置を説明するための説明図である。上述した実施形態においては、基板Pを支持する第2ドラム部材22の周方向における位置を検出する場合を例とした。これに限定されるものではなく、本変形例の露光装置EX1のように、円筒マスクDMを保持する第1ドラム部材21の周方向における位置を検出する場合も、一対のエンコーダヘッドを用いて第1ドラム部材21の周方向における位置を検出するための目盛GP(目盛)の誤差を補正することができる。
露光装置EX1が有するエンコーダスケール円盤SDは、第2ドラム部材22の回転軸AX2と直交する第2ドラム部材22の両端部に固定されている。目盛GPは、両方のエンコーダスケール円盤SDの外周面に設けられている。このため、目盛GPは、第2ドラム部材22の両端部に配置されている。それぞれの目盛GPを読み取るエンコーダヘッドEN1〜EN5は、第2ドラム部材22の両端部側にそれぞれ配置されている。
上述した実施形態で説明した第1検出器25(図1参照)は、第1ドラム部材21の回転位置を光学的に検出するものであって、高真円度のエンコーダスケール円盤(スケール部材)SDと、読み取り装置であるエンコーダヘッドEH1、EH2、EH3、EH4、EH5を含む。エンコーダスケール円盤SDは、第1ドラム部材21の回転軸と直交する第1ドラム部材21の少なくとも1つの端部(図16では両端部)に固定されている。このため、エンコーダスケール円盤SDは、回転中心線AX1周りに回転軸STとともに一体的に回転する。エンコーダスケール円盤SDの外周面には、目盛GPMが刻設されている。エンコーダヘッドEH1、EH2、EH3、EH4、EH5は、回転軸STMから見て目盛GPの周囲に配置されている。エンコーダヘッドEH1、EH2、EH3、EH4、EH5は、目盛GPMと対向配置され、目盛GPMを非接触で読み取ることができる。また、エンコーダヘッドEH1、EH2、EH3、EH4、EH5は、第1ドラム部材21の周方向の異なる位置に配置されている。第1ドラム部材21は、エンコーダヘッドEH4からエンコーダヘッドEH5に向かって回転する。
エンコーダヘッドEH1、EH2、EH3、EH4、EH5は、目盛GPMの接線方向(XZ面内)における変位の変動に対して計測感度(検出感度)を有する読み取り装置である。図17に示すように、エンコーダヘッドEH1、EH2の設置方位(回転中心線AX1を中心としたXZ面内での角度方向)を設置方位線Le11、Le12で表すと、この設置方位線Le11、Le12が、中心面P3に対して角度±θ°になるように、各エンコーダヘッドEH1、EH2を配置する。そして、設置方位線Le11、Le12は、図1に示す照明光束EL1の回転中心線AX1を中心としたXZ面内での角度方向と一致している。ここで、処理部である照明機構IUは、被処理物体である円筒マスクDM上の所定のパターン(マスクパターン)に照明光束EL1を透過させる処理を行う。これにより、投影光学系PLは、円筒マスクDM上の照明領域IRにおけるパターンの像を、搬送装置によって搬送されている基板Pの一部(投影領域PA)に投影することができる。
エンコーダヘッドEH4は、第1ドラム部材21の中心面P3に対して回転方向の後方側に向かってエンコーダヘッドEH1の設置方位線Le11を回転中心線AX1の軸周りに、ほぼ90°回転した設置方位線Le14上に設定される。また、エンコーダヘッドEH5は、第1ドラム部材21の中心面P3に対して回転方向の後方側に向かってエンコーダヘッドEH2の設置方位線Le12を回転中心線AX1の軸周りにほぼ90°回転した設置方位線Le15上に設定される。ここで、ほぼ90°とは、90°±γとする場合、γの範囲は、上述した実施形態と同一である。
また、エンコーダヘッドEH3は、エンコーダヘッドEH2の設置方位線Le12を回転中心線AX1の軸周りにほぼ120°回転し、かつエンコーダヘッドEH4を回転中心線AX1の軸周りにほぼ120°回転した設置方位線Le13上に設定される。本実施形態における第1ドラム部材21の周囲に配置されたエンコーダヘッドEH1、EH2、EH3、EH4、EH5の配置は、上述した実施形態における、第2ドラム部材22の周囲に配置されたエンコーダヘッドEN1、EN2、EN3、EN4、EN5と、鏡像反転した関係にある。
上述したように、露光装置EX1は、円筒部材である第2ドラム部材22と、目盛GPと、露光装置EX1の処理部である投影モジュールPL1〜PL6と、目盛GPを読み取る第1読み取り装置であるエンコーダヘッドEN4、EN5と、目盛GPを読み取る第2読み取り装置であるエンコーダヘッドEN1、EN2と、を備える。
第1ドラム部材21は、所定の軸である第1中心軸AX1から一定半径で湾曲した曲面を有し、かつ第1中心軸AX1周りを回転する。目盛GPMは、第1ドラム部材21の周方向に沿って環状に配列され、かつ第1ドラム部材21とともに第1中心軸AX1の周囲を回転する。露光装置EX1の処理部である照明機構IUは、第2中心軸AX2から見て第1ドラム部材21の内部に配置され、第1ドラム部材21の周方向のうち特定位置における曲面にある基板P(被処理物体)に対して2つの照明光束EL1を透過させる処理を行う。そして、エンコーダヘッドEH4、EH5は、第1中心軸AX1から見て目盛GPMの周囲に配置され、かつ第1中心軸AX1を中心に、前述した特定位置を第1中心軸AX1周りにほぼ90度回転した位置に配置され、目盛GPMを読み取る。エンコーダヘッドEH1、EH2は、前述した特定位置の目盛GPMを読み取る。そして、露光装置EX1は、エンコーダヘッドEH4、EH5の読み取り値に基づき、第1ドラム部材21に取り付けられているエンコーダスケール円盤SDの外周部に設けられる目盛GPMの誤差(ピッチ誤差)を補正する。このため、露光装置EX1は、精度よく第1ドラム部材21の周方向における位置を計測し、第2ドラム部材22の曲面にある被処理物体、つまり基板Pに処理を施すことができる。上述したように、本実施形態において、エンコーダヘッドEH4、EH5の読み取り値に基づき誤差が補正される場合、具体的には露光装置EXの制御装置14は、エンコーダヘッドEH4の読み取り値とエンコーダヘッドEH5の読み取り値との差分に基づき、ピッチ誤差を補正する。しかしながら、第1ドラム部材21の目盛GPMの周囲に、エンコーダヘッドEH4、EH5のいずれかと近い設置角度で他のエンコーダヘッドが設けられる場合は、エンコーダヘッドEH4、EH5の両読み取り値の直接的な差分計算に限らず、エンコーダヘッドEH4、EH5と他のエンコーダヘッドとの3つのエンコーダヘッドの各読み取り値に基づく演算によってピッチ誤差を求めることも可能である。3つのエンコーダヘッドによるピッチ誤差の計測については、後で詳細に説明する。
(基板処理装置(露光装置)の第2変形例)
図19は、基板処理装置(露光装置)の第2変形例の全体構成を示す模式図である。露光装置EX2は、図示しない光源装置が、円筒マスクDMに照明される照明光束EL1を出射する。光源装置の光源から出射された照明光束EL1を照明モジュールILに導き、照明光学系が複数設けられている場合、光源からの照明光束EL1を複数に分離し、複数の照明光束EL1を複数の照明モジュールILに導く。
光源装置から出射された照明光束EL1は、偏光ビームスプリッタSP1、SP2に入射する。偏光ビームスプリッタSP1、SP2では、照明光束EL1の分離によるエネルギーロスを抑制するため、入射された照明光束EL1がすべて反射するような光束にすることが好ましい。ここで、偏光ビームスプリッタSP1、SP2は、S偏光の直線偏光となる光束を反射し、P偏光の直線偏光となる光束を透過する。このため、光源装置は、偏光ビームスプリッタSP1、SP2に入射する照明光束EL1が直線偏光(S偏光)の光束となる照明光束EL1を第1ドラム部材21に出射する。これにより、光源装置は、波長及び位相が揃った照明光束EL1を出射する。
偏光ビームスプリッタSP1、SP2は、光源からの照明光束EL1を反射する一方で、円筒マスクDMで反射された投影光束EL2を透過している。換言すれば、照明光学モジュールILMからの照明光束EL1は、偏光ビームスプリッタSP1、SP2に反射光束として入射し、円筒マスクDMからの投影光束EL2は、偏光ビームスプリッタSP1、SP2に透過光束として入射する。
このように処理部である照明モジュールILは、被処理物体である円筒マスクDM上の所定のパターン(マスクパターン)に照明光束EL1を反射させる処理を行う。これにより、投影光学系PLは、円筒マスクDM上の照明領域IRにおけるパターンの像を、搬送装置によって搬送されている基板Pの一部(投影領域)に投影することができる。
このような円筒マスクDMの曲面の表面に照明光束EL1を反射させる所定のパターン(マスクパターン)を設ける場合、このマスクパターンとともに、曲面に目盛GPmを設けることもできる。この目盛GPmをマスクパターンと同時に形成した場合には、マスクパターンと同じ精度で目盛GPmが形成される。このため、目盛GPmを検出する曲面検出プローブGS1、GS2で、目盛GPmのマークの像を高速かつ高精度にサンプリングすることができる。このサンプリングが行われた瞬間に、第1ドラム部材21の回転角度位置と目盛GPmとの対応関係が求められ、逐次計測される第1ドラム部材21の回転角度位置を記憶することができる。
円筒マスクDM側のエンコーダヘッドEH4、EH5は、目盛GPmを読み取る。そして、露光装置EX2は、エンコーダヘッドEH4、EH5の読み取り値の差分に基づき、円筒マスクDMの表面に設けられている目盛GPmの誤差を補正する。このため、露光装置EX2は、精度よく円筒マスクDMの周方向における位置を計測し、第2ドラム部材22の曲面にある基板Pに処理を施すことができる。
第2ドラム部材22側のエンコーダヘッドEN4、EN5は、第2ドラム部材22に取り付けられたエンコーダスケール円盤SDの目盛GPdを読み取る。そして、露光装置EX2は、エンコーダヘッドEN4、EN5の読み取り値の差分に基づき、エンコーダスケール円盤SDの表面に設けられている目盛GPdの誤差を補正する。このため、露光装置EX2は、精度よく第2ドラム部材22の周方向における位置を計測し、第2ドラム部材22の曲面にある基板Pに処理を施すことができる。
(基板処理装置(露光装置)の第3変形例)
図20は、基板処理装置(露光装置)の第3変形例の全体構成を示す模式図である。露光装置EX3は、図示しない光源装置からの露光用ビームを入射するポリゴン走査ユニットPO1、PO2を備え、ポリゴン走査ユニットPOが基板P上の1次元の走査ラインに沿って強度変調されるスポット光を走査する。基板処理装置が有する露光装置EX3は、円筒マスクDMがなくても特定位置における基板Pに露光光を照射し、所定のパターンを描画することができる。
露光装置EX3の第2ドラム部材22側のエンコーダヘッドEN4、EN5は、第2ドラム部材22に取り付けられたエンコーダスケール円盤SDの目盛GPdを読み取る。そして、露光装置EX2は、エンコーダヘッドEN4、EN5の読み取り値の差分に基づき、エンコーダスケール円盤SDの表面に設けられている目盛GPdの誤差を補正する。このため、露光装置EX2は、精度よく第2ドラム部材22の周方向における位置を計測し、第2ドラム部材22の曲面にある基板Pに処理を施すことができる。
図20(及び図19)のように、第2ドラム部材22側のエンコーダヘッドEN4、EN5は、周方向に2列のアライメント顕微鏡AMG1、AMG2が配置されるために、その各々に対応して配置された。しかしながら、アライメント顕微鏡AMG1、AMG2のうち、例えばアライメント顕微鏡AMG2(及び対応するエンコーダヘッドEN5)のみしか配置されない場合もある。そのような場合でも、エンコーダヘッドEN4を設けておくのがよい。アライメント顕微鏡AMG2(及び対応するエンコーダヘッドEN5)のみしか配置されず、その近傍に回転角度αでエンコーダヘッドEN4が設置できない場合、露光位置に対応して配置したエンコーダヘッドEN1、EN2を用いて、スケール円盤SDのスケールGPdのピッチ誤差や偏心等の誤差マップを作成してもよい。
さらに、2つのエンコーダヘッドEN4、EN5を使って求めたスケールGPdのピッチ誤差及び偏心等の少なくとも1つの誤差マップと、2つのエンコーダヘッドEN1、EN2を使って求めたスケールGPdのピッチ誤差及び偏心等の少なくとも一つの誤差マップとを比較して、両方の誤差マップに大きな違いが存在するか否かを検証し、許容値以上の違いが生じているときは、誤差マップを再度作成し直すことで、誤差マップの精度及び信頼性を向上させることができる。
(基板処理装置(露光装置)の第4変形例)
図21は、基板処理装置(露光装置)の第4変形例の全体構成を示す模式図である。露光装置EX4は、いわゆるプロキシミティ露光を基板Pに施す基板処理装置である。露光装置EX4は、円筒マスクDMと、第2ドラム部材22との隙間を微小に設定して、照明機構IUが直接基板Pに照明光束EL1を照射し、非接触露光する。本実施形態において、第2ドラム部材22は、電動モーター等のアクチュエータを含む第2駆動部36から供給されるトルクによって回転する。第2駆動部36の回転方向と逆周りとなるように、例えば磁気歯車で連結された駆動ローラMGGが第1ドラム部材21を駆動する。第2駆動部36は、第2ドラム部材22を回転するとともに、駆動ローラMGGと第1ドラム部材21とを回転させ、第1ドラム部材21(円筒マスクDM)と第2ドラム部材22とを同期移動(同期回転)させる。
また、露光装置EX4は、基板Pに対して結像光束EL2の主光線が基板Pに入射する特定位置の目盛GPの位置PX6を検出するエンコーダヘッドEN6を備えている。ここで、第2ドラム部材22の外周面のうち基板Pが巻き付けられる外周面の直径と、エンコーダスケール円盤SDの目盛GPの直径とを揃えているので、位置PX6は、第2中心軸AX2から見て上述した特定位置と一致する。そして、エンコーダヘッドEN7は、基板Pの送り方向の後方側に向かってエンコーダヘッドEN6の設置方位線Le6を回転中心線AX2の軸周りに、ほぼ90°回転した設置方位線Le7上に設定される。
露光装置EX4は、例えば、エンコーダヘッドEN3を第1読み取り部とし、エンコーダヘッドEN7を第2読み取り部とする。エンコーダヘッドEN3、EN7は、第2ドラム部材22に取り付けられたエンコーダスケール円盤SDの目盛GPdを読み取る。制御装置14は、エンコーダヘッドEN3、EN7の読み取り値の差分に基づき、エンコーダスケール円盤SDの表面に設けられている目盛GPdの誤差を補正する。このため、露光装置EX4は、精度よく第2ドラム部材22の周方向における位置を計測し、第2ドラム部材22の曲面にある基板Pに処理を施すことができる。エンコーダヘッドEN3、EN7は、エンコーダヘッドEN3と第2中心軸AX2とを結ぶ線(設置方位線Le3)とエンコーダヘッドEN7と第2中心軸AX2とを結ぶ線(設置方位線Le7)とのなすエンコーダ取付角度θsを90度未満、好ましくは45度以下としてもよい。
上述した実施形態及び基板処理装置(露光装置)の第1変形例〜第4変形例は、基板処理装置として露光装置を例示している。基板処理装置としては、露光装置に限られず、処理部がインクジェットのインク滴下装置により被処理物体である基板Pにパターンを印刷する装置であってもよい。また、処理部は、検査装置であってもよい。
ところで、先の図7、図8を用いたエンコーダヘッドEN4、EN5による目盛GPの読み取り動作の説明では、目盛GPの1つの目盛の立ち上がり部GPaを読み取ったとき、アップパルスUを出力し、立ち下がり部GPbを読み取ったときにダウンパルスDを出力するものとし、隣接した2つの立ち上がり部GPa間の間隔、又は隣接した立ち下がり部GPb間の間隔を、目盛GPのピッチSSとした。しかしながら、実際のエンコーダ計測システムは、例えば、特開平9−196702号公報に開示されているように、信号発生部(エンコーダヘッド)から出力される2相信号(90度の位相差を持つ正弦波信号及び余弦波信号)を、内挿回路やコンパレータ等によって、目盛GPの実寸のピッチSSを数分の一〜数十分の一に細分化した間隔でアップパルスU及びダウンパルスDを発生するように構成される。
図22は、先の図4〜6、図10及び図16〜21の各々で示したエンコーダヘッドEN1〜EN7、EH1〜EH5による目盛GP(GPd、GPM)の実際の読み取り動作を簡単に説明するための信号波形図である。図22に示されるように、エンコーダヘッドEN1〜EN7、EH1〜EH5の各々は、90度の位相差を有する2つの計測信号(ここでは矩形波で表す)EcA、EcBを出力する。計測信号EcA、EcBの1周期は目盛GPのピッチSSの1/nに対応している。n(整数)はエンコーダヘッド内の光学的な読み取り形態によって異なるが、例えば、1、2、4、8、・・・等の倍数系列のいずれかの値に設定される。通常のエンコーダ計測システムでは、スケール円盤SDが順方向に回転し、目盛GPがエンコーダヘッドに対して常に一方向に移動している間は、計測信号EcA、EcBに基づいて内挿化されたアップパルス信号EcUが生成され続ける。スケール円盤SDが逆転した場合は、その時点から、計測信号EcA、EcBに基づいて内挿化されたダウンパルス信号が生成され続ける。
図22では、計測信号EcA、EcBの1周期を8分割した間隔でパルスを発生するようなアップパルス信号EcU(又はダウンパルス信号EcD)を送出する処理回路が使われる。計数器としてのアップダウンカウンターは、アップパルス信号EcUが入力されるときは、そのパルス数を逐次カウントアップし、ダウンパルス信号EcDが入力されるときは、そのパルス数を逐次カウントダウンする。ここで、例えば、計測信号EcA、EcBの1周期が、目盛GPの実寸のピッチSSの1/8に対応するものとすると、アップダウンカウンターは、スケール円盤SD(目盛GP)のスケール面が順方向に1ピッチSSだけ移動する間、アップパルス信号EcUの64パルス分を計数することになる。従って、目盛GPのピッチSSが20μmの場合、アップダウンカウンターによる1ピッチ分の計数値の増分は64になり、エンコーダ計測システムとしての計測分解能(信号EcUの1パルス当りの移動量)は、0.3125μm(20μm/64)となる。このように、エンコーダ計測システムとしての計測分解能は、目盛GPのピッチSSの実寸を数分の一〜数十分の一程度に内挿補間して微細化されるため、ピッチSSの誤差は、その内挿補間の程度に応じた精度で求められる。
なお、スケール円盤SDのスケール面の周長距離(直径×π)を有限の目盛本数(格子本数)で割った値とする場合、実際の目盛GPのピッチSSの実寸は20μmに対して端数を伴う場合もある。これに対して、計測分解能が切りのよい値(例えば、0.25μm)になるようにピッチSSを設定し、そのピッチSSでスケール円盤SDのスケール面の周長距離が所定精度内で割り切れるように、スケール面の直径を設定するようにしてもよい。
ところで、スケール円盤SD等のスケール面には、目盛GPとともに、スケール円盤SDの1回転の原点となる原点マークが刻設されており、エンコーダヘッドEN1〜EN7の各々は、その原点マークを検出すると、その瞬間に原点信号(パルス)EcZを出力する。アップダウンカウンターは、原点信号EcZに応答して、それまでの計数値をゼロにリセットしてから、再びアップパルス信号EcU(又はダウンパルス信号EcD)のパルス数の計数を継続する。従って、エンコーダヘッドEN1〜EN7の各々に対応して設けられるアップダウンカウンターの各々は、原点信号EcZを受けた瞬間を基準(ゼロ点)として、アップパルス信号EcU(又はダウンパルス信号EcD)のパルス数を加算(又は減算)している。
以上のことから、例えば、エンコーダヘッドEN4とエンコーダヘッドEN5との各々による計測値の差分によって目盛GPのピッチ誤差を求める際は、スケール円盤SD(第2ドラム部材22)が図11〜図13で説明したように、角度αだけ回転する度に、エンコーダヘッドEN4に対応したアップダウンカウンターの計数値と、エンコーダヘッドEN5に対応したアップダウンカウンターの計数値との差分をデジタル的に演算するだけでよい。また、角度αは、エンコーダヘッドEN4とエンコーダヘッドEN5とのいずれか一方(あるいは他の1つのエンコーダヘッドでもよい)に対応したアップダウンカウンターの計数値が、角度α分に対応した一定値だけ増加(又は減少)したか否かを判定することで検知できる。
(変形例1)
以上の実施形態及び変形例では、エンコーダ計測システムを構成する目盛GPは、回転体としてのスケール円盤SD及び第2ドラム部材22の少なくとも一方の円筒状の外周面に刻設されていた。しかしながら、スケール円盤SD及び第2ドラム部材22の少なくとも一方の回転中心線AX2と垂直な側端面に、円周方向に沿って所定ピッチで目盛GPを形成してもよい。図23は、そのようにスケール円盤SDの側端面に目盛GPを形成する場合の構成を、先の図6と同様に回転中心線AX2が延びる方向(Y軸方向)から見た図であり、図24は、図23の構成を、設置方位線Le4と回転中心線AX2とを含む面で破断したA−A’矢視断面図である。
図23において、リング状のスケール円盤SDは、第2ドラム部材22の側端面の8箇所に、調整部材(ネジ)60で取り付けられている。調整部材(ネジ)60の取り付け角度βは、ここでは45°になる。スケール円盤SDのXZ面と平行な側面には、回転中心線AX2から半径raの円周上に沿って、一定ピッチSSの目盛GPと原点マークZsとが形成されている。エンコーダヘッドEN4、EN5は、図24に示されるように、目盛GPと一定のギャップで対向するようにY軸方向に向けて配置される。図23に示されるように、エンコーダヘッドEN4の読取位置RP4は、半径ra上であって、且つ設置方位線Le4上に設定される。エンコーダヘッドEN5の読取位置RP5は、半径ra上であって、且つ設置方位線Le5上に設定される。半径raは、図24に示されるように、第2ドラム部材22の基板Pを密着支持する外周面22sの半径である。従って、リング状のスケール円盤SDの最大径は、半径raよりも少し大きく設定される。このように、スケール円盤SDとエンコーダヘッドEN4、EN5とを配置することで、計測時のアッベ誤差を最小にすることができる。図23及び図24のリング状のスケール円盤SDに対する他のエンコーダヘッド(EN1〜EN3、EN6〜EN7)も、ヘッドEN4、EN5と同様に計測のアッベ条件を満たすように配置される。
(変形例2)
以上の実施形態及び変形例では、目盛GPのピッチ誤差の計測のために、互いに近くに配置された2つのエンコーダヘッド(例えばエンコーダヘッドEN4、EN5)の各々の計測値の差分値を、スケール円盤SD(第2ドラム部材22)が角度α(α<θs)だけ回転する度に記憶して、スケール円盤SDの全周分のピッチ誤差に関するマップを作成するとした。その場合、マップの精度を高めるためには、2つのエンコーダヘッド(例えばエンコーダヘッドEN4、EN5)の各々のスケール面上での読取位置(図23中のRP4、RP5に相当)が成す角度θsをできる限り小さくすることが好ましい。しかしながら、エンコーダヘッドEN4、EN5の外形形状及び寸法、又はアライメント顕微鏡AMG1、AMG2の配置によって決まる設置方位線Le4、Le5間の角度によって、角度θsを十分に小さくできないことがある。
そこで、変形例2では、例えば、先の実施形態においてピッチ誤差計測に使用された2つのエンコーダヘッドEN4、EN5とともに、その近くに配置されるエンコーダヘッドEN1(又はEN2)を加えた3つ以上のエンコーダヘッドの各々による計測値を使って、ピッチ誤差マップをさらに微細化する。図25は、先の図6と同様に、スケール円盤SD(ここではリング状)とエンコーダヘッドEN1、EN2、EN4、EN5との配置をXZ面内で見た図であり、ここでは、スケール円盤SDの外周面に沿って、目盛GPと原点マークZsが形成されている。また、スケール円盤SDは、周方向の16ヶ所で調整部材(ネジ)60で第2ドラム部材22の側端面に固定されているものとする。従って、調整部材(ネジ)60の取付け角度βは、22.5°となる。
図25に示されるように、奇数番の露光位置に対応した設置方位線Le1上に読取位置が設定されるエンコーダヘッドEN1と、偶数番の露光位置に対応した設置方位線Le2上に読取位置が設定されるエンコーダヘッドEN2とは、XZ面内では、中心面P3に対して角度±θで配置される。また、エンコーダヘッドEN4、EN5の各々の読取位置を通る設置方位線Le4、Le5がなす角度θsは、θs>βの関係になっている。さらに、エンコーダヘッドEN1の読取位置を通る設置方位線Le1と、エンコーダヘッドEN4の読取位置を通る設置方位線Le4とのなす角度をθqとする。また、エンコーダヘッドEN1、EN2、EN4、EN5の各々に対応して設けられるアップダウンカウンターの計数値を、それぞれCm1、Cm2、Cm4、Cm5とする。
図25に示されるスケール円盤SD(第2ドラム部材22)が、XZ面内で時計周りに回転する場合、スケール円盤SDのスケール面に形成された原点マークZsは、エンコーダヘッドEN4、EN5、EN1、EN2の順番で、各読取位置を横切っていく。従って、原点マークZsがエンコーダヘッドEN4の読取位置を横切った瞬間に、対応するアップダウンカウンターの計数値Cm4がゼロリセットされ、原点マークZsがエンコーダヘッドEN5の読取位置を横切った瞬間に、対応するアップダウンカウンターの計数値Cm5がゼロリセットされ、原点マークZsがエンコーダヘッドEN1の読取位置を横切った瞬間に、対応するアップダウンカウンターの計数値Cm1がゼロリセットされ、原点マークZsがエンコーダヘッドEN2の読取位置を横切った瞬間に、対応するアップダウンカウンターの計数値Cm2がゼロリセットされる。スケール円盤SDが時計周りに回転する場合、4つのアップダウンカウンターの全てがゼロリセットされた後の各計数値Cm1、Cm2、Cm4、Cm5は、常にCm2<Cm1<Cm5<Cm4の関係になっている。
そこで、3つのエンコーダヘッドEN1(計数値Cm1)、EN4(計数値Cm4)、及びEN5(計数値Cm5)を用いてピッチ誤差を求めて、誤差マップ(補正マップ)を作成する場合は、スケール円盤SD(第2ドラム部材22)が一定角度α(α<β<θs)だけ回転する度に、以下の式(1)によって、単位角度α毎のピッチ誤差に関連した計測値ΔMsを求める。この計測値ΔMsは、先の図11中に示された目盛GPの本数NSに相当するものであるが、実際は、図22に示されるアップパルス(又はダウンパルス)EcUのパルスの計数値となる。
ΔMs=(Cm4+Cm1)/2−Cm5 ・・・式(1)
この式(1)において、(Cm4+Cm1)/2の計算値は、図25に示されるように、エンコーダヘッドEN4の読取位置RP4とエンコーダヘッドEN1の読取位置RP1との中間点となる角度位置に設定される仮想的な設置方位線Leiに、エンコーダヘッドの読取位置RPiが設定されたときに得られると予想される計数値を表している。従って、式(1)又は後述する(2)で得られる計測値ΔMsは、仮想的なエンコーダヘッドによる読取位置RPiでの計数値Cmi(計算上の値)と、エンコーダヘッドEN5の読取位置RP5での計数値Cm5との差分となる。その計測値ΔMsを単位角度α毎に、360度分求めることによって、スケール円盤SD等のスケール(目盛GP)のピッチ誤差マップ、あるいはピッチ誤差補正マップが作成できる。
ところで、図25に示されるような配置の場合、原点マークZsがエンコーダヘッドEN4の読取位置RP4とエンコーダヘッドEN1の読取位置RP1との間を通過している期間では、計数値Cm4や計測値Cm5がゼロリセットされた後なので、3つの計数値Cm1、Cm4、Cm5の連続性が担保されない可能性がある。その期間では、計数値Cm1、Cm4、Cm5(絶対値)の大小関係が、Cm4<Cm1<Cm5、あるいはCm5<Cm4<Cm1になっている。そこで、ゼロリセット時から次のゼロリセット時までの間にアップダウンカウンターで計数される最大の計数値(固定値)をCmfとし、角度α毎に、各エンコーダヘッドEN1、EN4、EN5に対応した計数値Cm1、Cm4、Cm5を読み込む際に、原点マークZsがエンコーダヘッドEN4の読取位置RP4とエンコーダヘッドEN5の読取位置RP5との間にあるときは、アップダウンカウンターの計数値Cm4に最大計数値Cmfを加えた新たな計数値Cm4’を、式(1)中の計数値Cm4の代わりに用いればよい。同様に、原点マークZsがエンコーダヘッドEN5の読取位置RP5とエンコーダヘッドEN1の読取位置RP1との間にあるときは、アップダウンカウンターの計数値Cm4、Cm5の各々に最大計数値Cmfを加えた新たな計数値Cm4’、Cm5’を、式(1)中の計数値Cm4、Cm5の代わりに用いればよい。
変形例2の場合、第1読み取り部は、2つのエンコーダヘッドEN1、EN4(あるいは1つのエンコーダヘッドEN5)を含んで構成され、第2読み取り部は、1つのエンコーダヘッドEN5(あるいは2つのエンコーダヘッドEN1、EN4)を含んで構成される。以上の構成において、角度θsと角度θqを適当な関係に設定すると、仮想的な読取位置RPiと読取位置RP5とがなす角度を、調整部材(ネジ)60の取付け角度β(図25では22.5°)よりも小さくすることができ、調整部材60による真円度、偏心等の調整後に残留するスケール円盤SDのスケール面の僅かな変形によるピッチ誤差(ピッチムラ)を、角度β以下のスパンで詳細に計測することができる。
また、以上のようにスケール面上に仮想的な読取位置RPiを設定する方法では、例えば、図25に示される2つのエンコーダヘッドEN4、EN1の各読取位置RP4、RP1の中間点に設定される仮想的な第1の読取位置RPiで求まる計算上の計数値と、2つのエンコーダヘッドEN5、EN2の各読取位置RP5、RP2の中間点に設定される仮想的な第2の読取位置RPiで求まる計算上の計数値との差分によって、ピッチ誤差を求めてもよい。その場合の単位角度α毎の計測値ΔMsは、以下の式(2)によって計算される。
ΔMs=(Cm4+Cm1)/2−(Cm5+Cm2)/2 ・・・式(2)
(デバイス製造方法)
図26は、実施形態に係る基板処理装置(露光装置)を用いてデバイスを製造するデバイス製造方法の手順を示すフローチャートである。このデバイス製造方法では、まず、例えば有機EL等の自発光素子による表示パネルの機能・性能設計を行い、必要な回路パターンや配線パターンをCAD等で設計する(ステップS201)。次いで、CAD等で設計された各種レイヤー毎のパターンに基づいて、必要なレイヤー分の円筒マスクDMを製作する(ステップS202)。また、表示パネルの基材となる可撓性の基板P(樹脂フィルム、金属箔膜、プラスチック等)が巻かれた供給用ロールFR1を準備しておく(ステップS203)。なお、このステップS203で用意しておくロール状の基板Pは、必要に応じてその表面を改質したもの、下地層(例えばインプリント方式による微小凹凸)を事前形成したもの、光感応性の機能膜や透明膜(絶縁材料)を予めラミネートしたもの、でもよい。
次いで、基板P上に表示パネルデバイスを構成する電極や配線、絶縁膜、TFT(薄膜半導体)等によって構成されるバックプレーン層を形成するとともに、そのバックプレーンに積層されるように、有機EL等の自発光素子による発光層(表示画素部)が形成される(ステップS204)。このステップS204には、先の各実施形態で説明した露光装置EX、EX2、EX3、EX4を用いて、フォトレジスト層を露光する従来のフォトリソグラフィ工程も含まれるが、フォトレジストの代わりに感光性シランカップリング材を塗布した基板Pをパターン露光して表面に親撥水性によるパターンを形成する露光工程、光感応性の触媒層をパターン露光し無電解メッキ法によって金属膜のパターン(配線、電極等)を形成する湿式工程又は銀ナノ粒子を含有した導電性インク等によってパターンを描画する印刷工程、等による処理も含まれる。
次いで、ロール方式で長尺の基板P上に連続的に製造される表示パネルデバイス毎に、基板Pをダイシングしたり、各表示パネルデバイスの表面に、保護フィルム(対環境バリア層)やカラーフィルターシート等を貼り合せたりして、デバイスを組み立てる(ステップS205)。次いで、表示パネルデバイスが正常に機能するか、所望の性能や特性を満たしているかの検査工程が行われる(ステップS206)。以上のようにして、表示パネル(フレキシブル・ディスプレイ)を製造することができる。
上記実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型のレチクルを用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6778257号明細書に記載されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する可変成形のレチクル(電子レチクル、アクティブレチクル、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれる)を用いてもよい。また、非発光型画像表示素子を備える可変成形のレチクルに代えて、自発光型画像表示素子を含むパターン形成装置を備えるようにしてもよい。
また、上記実施形態の露光装置は、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度及び光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、露光装置の組立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムを組み合わせて露光装置に組み立てる工程は、各種サブシステム相互の機械的接続、電気回路の配線接続及び気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組立工程の前に、各サブシステム個々の組立工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組立工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
また、上記実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の置換又は変更を行うこともできる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態で引用した露光装置等に関するすべての公開公報及び米国特許の記載を援用して本明細書の記載の一部とする。このように、上記実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態及び運用技術等は、すべて本発明の範囲に含まれる。