以下、本発明にかかる空気調和装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。尚、本発明にかかる空気調和装置の実施形態の具体的な構成は、下記の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
(1)第1実施形態
<構成>
図1は、本発明の第1実施形態にかかる空気調和装置1の概略構成図である。次に、空気調和装置1の全体構成について説明する。
−全体−
空気調和装置1は、回路構成の観点から見ると、熱源側回路20を循環する冷媒と熱交換を行う熱搬送媒体が循環する利用側回路40を有しており、利用側回路40が有する利用側熱交換器42a、42bにおける熱搬送媒体の熱交換によって空調を行う装置である。ここで、熱源側回路20は、昇圧、放熱、減圧、蒸発の行程を行いながら冷媒が循環する蒸気圧縮式(直膨式)の冷凍サイクルを構成している。また、利用側回路40は、熱源側回路20から得た熱(冷熱や温熱)を利用側熱交換器42a、42bに搬送しながら熱搬送媒体が循環する熱搬送サイクルを構成している。このように、空気調和装置1では、二次回路方式が採用されている。
また、空気調和装置1は、ユニット構成の観点から見ると、主として、熱源ユニット2と、利用ユニット4a、4bとが接続されることによって構成されている。ここで、熱源ユニット2は、ビル等の建物外に設けられており、利用ユニット4a、4bは、その建物内に設けられている。そして、熱源ユニット2と利用ユニット4a、4bとは、熱搬送媒体が流れる送り側熱搬送媒体連絡管6及び戻り側熱搬送媒体連絡管7を介して接続されている。すなわち、空気調和装置1では、冷媒が循環する熱源側回路20が熱源ユニット2に設けられており、熱搬送媒体が循環する利用側回路40が送り側熱搬送媒体連絡管6及び戻り側熱搬送媒体連絡管7を介して熱源ユニット2及び利用ユニット4a、4bにまたがって設けられている。このように、空気調和装置1では、互いに離れた場所に設置される室外側(ここでは、熱源ユニット2)と室内側(ここでは、利用ユニット4a、4b)との接続を、熱搬送媒体が流れる熱搬送媒体連絡管6、7を介して行うようにしており、冷媒が循環する熱源側回路20が室外側(ここでは、熱源ユニット2)だけに収まるようにしている。
また、ここでは、建物内の複数の空間の空調を行うことができるように、利用ユニット4a、4bが複数(ここでは、2台)設けられており、空調として冷房及び暖房を行うことができるように、熱源側回路20における冷媒の流れ方向を切り換えるための冷媒切換機構23が熱源側回路20に設けられている。ここで、冷房は、熱源側回路20から利用側回路40に冷熱を搬送し利用側熱交換器42a、42bにおける熱搬送媒体の吸熱によって冷熱を利用する空調であり、暖房は、熱源側回路20から利用側回路40に温熱を搬送し利用側熱交換器42a、42bにおける熱搬送媒体の放熱によって温熱を利用する空調である。尚、利用ユニットの台数は、2台に限定されるものではなく、3台以上であってもよい。次に、空気調和装置1の詳細構成について説明する。
−熱源ユニット−
熱源ユニット2は、上記のように、室外に設置されており、利用側回路40の一部及び熱源側回路20を構成している。熱源ユニット2は、主として、圧縮機21と、冷媒切換機構23と、熱源側熱交換器24と、膨張機構25と、媒体−冷媒熱交換器26と、循環ポンプ29とを有している。そして、圧縮機21、冷媒切換機構23、熱源側熱交換器24、膨張機構25及び媒体−冷媒熱交換器26が接続されることによって構成された冷媒が循環する回路が熱源側回路20である。また、媒体−冷媒熱交換器26及び循環ポンプ29が熱搬送媒体連絡管6、7を介して利用側流量調節機構41a、41b及び利用側熱交換器42a、42bに接続されることによって構成された熱搬送媒体が循環する回路が利用側回路40である。
圧縮機21は、冷凍サイクルの低圧の冷媒を高圧になるまで昇圧して冷媒を循環させるための機器である。ここでは、圧縮機21は、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示せず)をインバータにより周波数(回転数)制御可能な圧縮機用モータ22によって回転駆動する構造となっている。すなわち、圧縮機21は、周波数(回転数)を変化させることで運転容量を制御することが可能に構成されている。圧縮機21は、吸入側及び吐出側がともに冷媒切換機構23に接続されている。
冷媒切換機構23は、熱源側回路20における冷媒の流れの方向を切り換えるための機構である。冷媒切換機構23は、冷房時には、熱源側熱交換器24を圧縮機21において昇圧された冷媒の放熱器として機能させ、かつ、媒体−冷媒熱交換器26を熱源側熱交換器24において放熱した冷媒の蒸発器として機能させる冷房サイクル状態への切り換えを行う。すなわち、冷媒切換機構23は、冷房時には、圧縮機21の吐出側と熱源側熱交換器24のガス側とが接続される(図1の冷媒切換機構23の実線を参照)。しかも、圧縮機21の吸入側と媒体−冷媒熱交換器26のガス側とが接続される(図1の冷媒切換機構23の実線を参照)。また、冷媒切換機構23は、暖房時には、熱源側熱交換器24を媒体−冷媒熱交換器26において放熱した冷媒の蒸発器として機能させ、かつ、媒体−冷媒熱交換器26を圧縮機21において昇圧された冷媒の放熱器として機能させる暖房サイクル状態への切り換えを行う。すなわち、冷媒切換機構23は、暖房時には、圧縮機21の吐出側と媒体−冷媒熱交換器26のガス側とが接続される(図1の冷媒切換機構23の破線を参照)。しかも、圧縮機21の吸入側と熱源側熱交換器24のガス側とが接続される(図1の冷媒切換機構23の破線を参照)。尚、ここでは、冷媒切換機構23として四路切換弁が使用されているが、複数の弁を組み合わせた回路構成にすること等によって、四路切換弁と同様の機能を果たせるように構成してもよい。
熱源側熱交換器24は、冷房時には室外空気を冷却源として圧縮機21において昇圧された冷媒の放熱器として機能し、暖房時には室外空気を加熱源として膨張機構25において減圧された冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。熱源側熱交換器24は、液側が膨張機構25に接続されており、ガス側が冷媒切換機構23に接続されている。ここで、熱源ユニット2は、熱源ユニット2内に室外空気を吸入して、熱源側熱交換器24において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための室外ファン27を有している。すなわち、熱源ユニット2は、熱源側熱交換器24を流れる冷媒の冷却源又は加熱源としての室外空気を熱源側熱交換器24に供給するファンとして、室外ファン27を有している。ここでは、室外ファン27として、室外ファン用モータ28によって駆動されるプロペラファン等が使用されている。
膨張機構25は、冷房時には熱源側熱交換器24において放熱した冷凍サイクルの高圧の冷媒を冷凍サイクルの低圧まで減圧し、暖房時には媒体−冷媒熱交換器26において放熱した冷凍サイクルの高圧の冷媒を冷凍サイクルの低圧まで減圧するための機構である。膨張機構25は、一端が熱源側熱交換器24の液側に接続されており、他端が媒体−冷媒熱交換器26のガス側に接続されている。ここでは、膨張機構25として電動膨張弁が使用されている。
媒体−冷媒熱交換器26は、熱源側回路20を循環する冷媒と利用側回路40を循環する熱搬送媒体との熱交換を行う熱交換器である。媒体−冷媒熱交換器26は、冷房時には、膨張機構25において減圧された冷媒と利用側熱交換器42a、42bにおいて吸熱した熱搬送媒体との熱交換によって、冷媒の蒸発器として、かつ、熱搬送媒体の放熱器として機能する。また、媒体−冷媒熱交換器26は、暖房時には、圧縮機21において昇圧された冷媒と利用側熱交換器42a、42bにおいて放熱した熱搬送媒体との熱交換によって、冷媒の放熱器として、かつ、熱搬送媒体の吸熱器として機能する。媒体−冷媒熱交換器26の冷媒が流れる部分は、液側が膨張機構25に接続されており、ガス側が冷媒切換機構23に接続されている。また、媒体−冷媒熱交換器26の熱搬送媒体が流れる部分は、入口側が循環ポンプ29の吐出側に接続されており、出口側が送り側熱搬送媒体連絡管6に接続されている。このように、熱源側回路20と利用側回路40とが、媒体−冷媒熱交換器26を有している。
循環ポンプ29は、熱搬送媒体を昇圧して熱搬送媒体を循環させるための機器である。ここでは、循環ポンプ29は、遠心式や容積式等のポンプ要素をポンプ用モータ30によって駆動する構造となっている。循環ポンプ29は、吸入側が戻り側熱搬送媒体連絡管7に接続されており、吐出側が媒体−冷媒熱交換器26の入口側に接続されている。尚、循環ポンプ29は、遠心式や容積式等の機械式のポンプに限定されるものではなく、特許文献1のような加減圧動作による構成を使用してもよい。また、循環ポンプ29の接続位置は、媒体−冷媒熱交換器26の入口側に限定されるものではなく、媒体−冷媒熱交換器26の出口側に接続されていてもよい。この場合には、媒体−冷媒熱交換器26の熱搬送媒体が流れる部分は、入口側が戻り側熱搬送媒体連絡管7に接続され、出口側が循環ポンプ29の吐出側に接続されることになる。
−利用ユニット−
利用ユニット4a、4bは、上記のように、室内に設置されており、利用側回路40の一部を構成している。利用ユニット4aは、主として、利用側流量調節機構41aと、利用側熱交換器42aとを有している。また、利用ユニット4aと同様に、利用ユニット4bは、主として、利用側流量調節機構41bと、利用側熱交換器42bとを有している。そして、利用側流量調節機構41a、41b及び利用側熱交換器42a、42bが熱搬送媒体連絡管6、7を介して循環ポンプ29及び媒体−冷媒熱交換器26に接続されることによって構成された熱搬送媒体が循環する回路が利用側回路40である。尚、利用ユニット4bは、利用ユニット4aと同様の構成を有するため、以下の説明では、利用ユニット4aの構成だけを説明し、利用ユニット4bの構成については、利用ユニット4aの各部を示す符号の添字「a」を添字「b」に読み替えることで説明を省略する。
利用側流量調節機構41aは、利用側熱交換器42aを流れる熱搬送媒体の流量を調節するための機構である。利用側流量調節機構41aは、一端が送り側熱搬送媒体連絡管6に接続されており、他端が利用側熱交換器42aの入口側に接続されている。ここでは、利用側流量調節機構41aとして流量調節弁が使用されている。尚、利用側流量調節機構41aの接続位置は、利用側熱交換器42aの入口側に限定されるものではなく、利用側熱交換器42aの出口側に接続されていてもよい。
利用側熱交換器42aは、冷房時には熱搬送媒体の吸熱器として機能して室内空気を冷却し、暖房時には熱搬送媒体の放熱器として機能して室内空気を加熱する熱交換器である。利用側熱交換器42aは、入口側が利用側流量調節機構41aに接続されており、出口側が戻り側熱搬送媒体連絡管7に接続されている。ここで、利用ユニット4aは、利用ユニット4a内に室内空気を吸入して、利用側熱交換器42aにおいて熱搬送媒体と熱交換させた後に、供給空気として室内に供給するための室内ファン45aを有している。すなわち、利用ユニット4aは、利用側熱交換器42aを流れる熱搬送媒体の吸熱源又は放熱源としての室内空気を利用側熱交換器42aに供給するファンとして、室内ファン45aを有している。ここでは、室内ファン45aとして、室内ファン用モータ46aによって駆動される遠心ファンや多翼ファン等が使用されている。
−制御部−
空気調和装置1は、熱源側回路20及び利用側回路40を含む熱源ユニット2及び利用ユニット4a、4bを構成する各部の動作を制御する制御部10を有している。制御部10は、熱源ユニット2及び利用ユニット4a、4bの各部の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有している。尚、ここでは、便宜上、制御部10が熱源ユニット2に設けられているものとして図示しているが、実際の制御部10は、熱源ユニット2や利用ユニット4a、4bの制御基板間を通信接続すること等によって構成されている。空調としての冷房や暖房のような各種動作は、制御部10によって行われる。
−熱搬送媒体−
上記のような二次回路方式の空気調和装置1に使用する熱搬送媒体としては、利用側回路の熱搬送能力を向上させるために、相転移に伴って得られる潜熱を利用することが可能な物質を含む熱搬送媒体を使用することが好ましい。
しかし、特許文献1のように、熱搬送媒体に含まれる物質が液体−固体相転移を行うものである場合には、物質の体積変化が発生するため、利用側回路40において圧力変化が発生することになる。このため、液体−固体相転移を行う物質を含む熱搬送媒体を使用する場合には、上記に説明した利用側回路40の構成に加えて、圧力変化を吸収するためのバッファータンク等をさらに追加する必要があり、その結果、利用側回路40が複雑化することになる。
そこで、ここでは、熱搬送媒体として、電子のもつ自由度に関する相転移である電子相転移を行う物質である電子相転移物質を含むスラリーを使用している。ここで、電子相転移とは、特許文献2にも記載されているように、電子のもつ自由度である、軌道の自由度、又は、電荷・スピン・軌道の自由度のうち少なくとも2つ以上を含む複自由度の相転移のことである。そして、この電子相転移は、固体状態で発生する相転移(固体−固体相転移)であり、相転移に伴って潜熱を得ることができ、相転移時の体積変化が固体−液体相転移に比べて小さいという特性がある。
このような電子相転移物質としては、VO2(二酸化バナジウム)やVO2(二酸化バナジウム)のV(バナジウム)の一部をW(タングステン)等で置換したもののように、種々の物質がある。そして、冷房や暖房のような空調用途では、0℃〜50℃程度の温度範囲内で電子相転移を行う電子相転移物質を使用することが好ましい。例えば、V0.99W0.01O2(電子相転移温度:42℃〜44℃)、V0.977W0.023O2(電子相転移温度:10℃〜11℃)、V0.98Ta0.02O2(電子相転移温度:48℃〜49℃)、V0.92Ta0.08O2(電子相転移温度:3℃〜4℃)、V0.95Nb0.05O2(電子相転移温度:15℃〜16℃)、V0.975Ru0.025O2(電子相転移温度:36℃〜37℃)、V0.97Mo0.03O2(電子相転移温度:33℃〜34℃)、LiMn2O4(電子相転移温度:21℃)、LiVS2(電子相転移温度:40℃)、TbBaFe2O5(電子相転移温度:12℃)、DyBaFe2O5(電子相転移温度:21℃)、HoBaFe2O5(電子相転移温度:23℃)、YBaFe2O5(電子相転移温度:37℃)、DyBaCo2O5.54(電子相転移温度:45℃)、HoBaCo2O5.48(電子相転移温度:31℃)、YBaCo2O5.49(電子相転移温度:24℃)を使用することができる。
そして、ここでは、上記のような電子相転移を行う物質である電子相転移物質を水や水溶液、油等の液媒体に多量に混入させたスラリーを熱搬送媒体としている。
また、ここでは、熱搬送媒体が、第1電子相転移温度で電子相転移を行う第1電子相転移物質と、第1電子相転移温度よりも高い第2電子相転移温度で電子相転移を行う第2電子相転移物質と、を含むようにしている。すなわち、第1電子相転移物質及び第2電子相転移物質の両方を混合して液媒体に混入させた熱搬送媒体を使用するようにしている。ここで、第1電子相転移物質としては、冷房に適した温度(0℃〜20℃程度)である第1電子相転移温度で電子相転移を行う物質、例えば、V0.977W0.023O2(電子相転移温度:10℃〜11℃)、V0.92Ta0.08O2(電子相転移温度:3℃〜4℃)、V0.95Nb0.05O2(電子相転移温度:15℃〜16℃)、TbBaFe2O5(電子相転移温度:12℃)等を選択することが好ましい。また、第2電子相転移物質としては、暖房に適した温度(30℃〜50℃程度)である第2電子相転移温度で電子相転移を行う物質、例えば、V0.99W0.01O2(電子相転移温度:42℃〜44℃)、V0.98Ta0.02O2(電子相転移温度:48℃〜49℃)、V0.975Ru0.025O2(電子相転移温度:36℃〜37℃)、V0.97Mo0.03O2(電子相転移温度:33℃〜34℃)、LiVS2(電子相転移温度:40℃)、YBaFe2O5(電子相転移温度:37℃)、DyBaCo2O5.54(電子相転移温度:45℃)、HoBaCo2O5.48(電子相転移温度:31℃)等を選択することが好ましい。
<動作>
図2は、空気調和装置1の冷房時の冷媒及び熱搬送媒体の流れを示す図であり、図3は、空気調和装置1の暖房時の冷媒及び熱搬送媒体の流れを示す図である。次に、空気調和装置1の動作(空調としての冷房及び暖房)について説明する。
−冷房−
冷房時には、冷媒切換機構23が冷房サイクル状態(図2の実線で示される状態)に切り換えられる。
熱源ユニット2に設けられた熱源側回路20において、冷凍サイクルの低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルの高圧になるまで昇圧された後に吐出される。圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、冷媒切換機構23を通じて、熱源側熱交換器24に送られる。熱源側熱交換器24に送られた高圧のガス冷媒は、熱源側熱交換器24において、室外ファン27によって冷却源として供給される室外空気と熱交換を行って放熱して、高圧の液冷媒になる。熱源側熱交換器24において放熱した高圧の液冷媒は、膨張機構25において冷凍サイクルの低圧まで減圧されて、低圧の気液二相状態の冷媒になる。膨張機構25において減圧された低圧の気液二相状態の冷媒は、媒体−冷媒熱交換器26に送られる。媒体−冷媒熱交換器26に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、媒体−冷媒熱交換器26において、循環ポンプ29によって利用側回路40を循環する熱搬送媒体と熱交換を行って蒸発して、低圧のガス冷媒になる。媒体−冷媒熱交換器26において蒸発した低圧のガス冷媒は、冷媒切換機構23を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。
一方、熱搬送媒体連絡管6、7を介して熱源ユニット2及び利用ユニット4a、4bにまたがって設けられた利用側回路40において、熱搬送媒体は、上記のように、媒体−冷媒熱交換器26において、熱源側回路20を循環する冷媒の蒸発によって放熱する。このとき、熱搬送媒体においては、液媒体の温度低下が発生し、第1電子相転移温度において第1電子相転移物質の相転移(冷熱蓄積)が発生する。媒体−冷媒熱交換器26において温度低下及び冷熱蓄積した熱搬送媒体は、送り側熱搬送媒体連絡管6を通じて、熱源ユニット2から利用ユニット4a、4bに送られる。利用ユニット4a、4bに送られた温度低下及び冷熱蓄積した熱搬送媒体は、利用側流量調節機構41a、41bにおいて流量調節されて、利用側熱交換器42a、42bに送られる。利用側熱交換器42a、42bに送られた温度低下及び冷熱蓄積した熱搬送媒体は、利用側熱交換器42a、42bにおいて、室内ファン45a、45bによって吸熱源として供給される室内空気と熱交換を行って吸熱する。これにより、室内空気は冷却され、その後に、室内に供給されることで冷房が行われる。このとき、熱搬送媒体においては、液媒体の温度上昇が発生し、第1電子相転移温度において第1電子相転移物質の相転移(冷熱放出)が発生する。利用側熱交換器42a、42bにおいて温度上昇及び冷熱放出した熱搬送媒体は、戻り側熱搬送媒体連絡管7を通じて、利用ユニット4a、4bから熱源ユニット2に送られ、再び、循環ポンプ29に吸入される。
このように、第1電子相転移物質の電子相転移による潜熱を利用して熱源側回路20から利用側回路40への冷熱の搬送が行われることで、空調としての冷房が行われる。
−暖房−
暖房時には、冷媒切換機構23が暖房サイクル状態(図3の破線で示される状態)に切り換えられる。
熱源ユニット2に設けられた熱源側回路20において、冷凍サイクルの低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルの高圧になるまで昇圧された後に吐出される。圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、冷媒切換機構23を通じて、媒体−冷媒熱交換器26に送られる。媒体−冷媒熱交換器26に送られた高圧のガス冷媒は、媒体−冷媒熱交換器26において、循環ポンプ29によって利用側回路40を循環する熱搬送媒体と熱交換を行って放熱して、高圧の液冷媒になる。媒体−冷媒熱交換器26において放熱した高圧の液冷媒は、膨張機構25において冷凍サイクルの低圧まで減圧されて、低圧の気液二相状態の冷媒になる。膨張機構25において減圧された低圧の気液二相状態の冷媒は、熱源側熱交換器24に送られる。熱源側熱交換器24に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、熱源側熱交換器24において、室外ファン27によって加熱源として供給される室外空気と熱交換を行って蒸発して、低圧のガス冷媒になる。熱源側熱交換器24において、蒸発した低圧のガス冷媒は、冷媒切換機構23を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。
一方、熱搬送媒体連絡管6、7を介して熱源ユニット2及び利用ユニット4a、4bにまたがって設けられた利用側回路40において、熱搬送媒体は、上記のように、媒体−冷媒熱交換器26において、熱源側回路20を循環する冷媒の放熱によって吸熱する。このとき、熱搬送媒体においては、液媒体の温度上昇が発生し、第2電子相転移温度において第2電子相転移物質の相転移(温熱蓄積)が発生する。媒体−冷媒熱交換器26において温度上昇及び温熱蓄積した熱搬送媒体は、送り側熱搬送媒体連絡管6を通じて、熱源ユニット2から利用ユニット4a、4bに送られる。利用ユニット4a、4bに送られた温度上昇及び温熱蓄積した熱搬送媒体は、利用側流量調節機構41a、41bにおいて流量調節されて、利用側熱交換器42a、42bに送られる。利用側熱交換器42a、42bに送られた温度上昇及び温熱蓄積した熱搬送媒体は、利用側熱交換器42a、42bにおいて、室内ファン45a、45bによって放熱源として供給される室内空気と熱交換を行って放熱する。これにより、室内空気は加熱され、その後に、室内に供給されることで暖房が行われる。このとき、熱搬送媒体においては、液媒体の温度低下が発生し、第2電子相転移温度において第2電子相転移物質の相転移(温熱放出)が発生する。利用側熱交換器42a、42bにおいて温度低下及び温熱放出した熱搬送媒体は、戻り側熱搬送媒体連絡管7を通じて、利用ユニット4a、4bから熱源ユニット2に送られ、再び、循環ポンプ29に吸入される。
このように、第2電子相転移物質の電子相転移による潜熱を利用して熱源側回路20から利用側回路40への温熱の搬送が行われることで、空調としての暖房が行われる。
<特徴>
次に、空気調和装置1の特徴について説明する。
−A−
ここでは、上記のように、二次回路方式を採用するとともに、熱搬送媒体として電子相転移を行う物質である電子相転移物質を含むスラリーを使用している。
このため、ここでは、熱源側回路20を循環する冷媒と利用側回路40を循環する熱搬送媒体とが熱交換することによって、熱搬送媒体において液媒体の温度変化及び電子相転移物質の相転移が発生する。そして、利用側熱交換器42a、42bにおける熱搬送媒体の熱交換によって、上記とは逆方向の熱搬送媒体において液媒体の温度変化及び電子相転移物質の相転移(但し、熱源側回路20を循環する熱源側冷媒と利用側回路40を循環する熱搬送媒体との熱交換とは逆の温度変化及び相転移)が発生することになる。すなわち、ここでは、電子相転移物質の電子相転移による潜熱を利用して熱源側回路20から利用側回路40への熱搬送が行われる。しかも、電子相転移時における電子相転移物質の体積変化が小さいため、利用側回路40における圧力変化も抑えられる。
これにより、ここでは、圧力変化を吸収するための構成の追加による利用側回路40の複雑化を避けつつ、利用側回路40の熱搬送能力の向上を図ることができる。
−B−
また、ここでは、上記のように、空調として冷房及び暖房があり、冷房時には熱源側回路20から利用側回路40へ冷熱の搬送が行われ、暖房時には熱源側回路20から利用側回路40へ温熱の搬送が行われる。ここで、冷房時には、熱源側回路20を循環する冷媒と利用側回路40を循環する熱搬送媒体とが熱交換することによって、利用側回路40を循環する熱搬送媒体の放熱が行われ、このとき、熱搬送媒体において、液媒体の温度低下が発生し、第1電子相転移温度において第1電子相転移物質の相転移(冷熱蓄積)が発生する。そして、利用側熱交換器42a、42bにおける熱搬送媒体の熱交換によって、熱搬送媒体において、液媒体の温度上昇が発生し、第1電子相転移温度において第1電子相転移物質の相転移(冷熱放出)が発生することになる。また、暖房時には、熱源側回路20を循環する冷媒と利用側回路40を循環する熱搬送媒体とが熱交換することによって、利用側回路40を循環する熱搬送媒体の吸熱が行われ、このとき、熱搬送媒体において、液媒体の温度上昇が発生し、第2電子相転移温度において第2電子相転移物質の相転移(温熱蓄積)が発生する。そして、利用側熱交換器42a、42bにおける熱搬送媒体の熱交換によって、熱搬送媒体において、液媒体の温度低下が発生し、第2電子相転移温度において第2電子相転移物質の相転移(温熱放出)が発生することになる。すなわち、冷房時には、冷房に適した第1電子相転移物質の電子相転移による潜熱を利用して熱源側回路20から利用側回路40への冷熱の搬送が行われ、暖房時には、暖房に適した第2電子相転移物質の電子相転移による潜熱を利用して熱源側回路20から利用側回路40への温熱の搬送が行われる。
これにより、ここでは、冷房及び暖房のいずれにおいても、利用側回路40の熱搬送能力の向上を図ることができる。
<変形例>
上記の構成においては、空調として冷房及び暖房を行えるように、熱源側回路20に冷媒切換機構23を設けるとともに、熱搬送媒体に冷房に適した第1電子相転移物質及び暖房に適した第2電子相転移物質を含む構成を採用している。しかし、空調として冷房のみ又は暖房のみを行う構成でよい場合には、第1実施形態の構成において、熱源側回路20から冷媒切換機構23を省略するとともに、熱搬送媒体に第1電子相転移物質だけ又は第2電子相転移物質だけを含むようにしてもよい。
(2)第2実施形態
<構成>
上記の第1実施形態(図1〜図3参照)においては、空調として冷房及び暖房を行うにあたり、第1電子相転移物質及び第2電子相転移物質の両方を混合して液媒体に混入させた熱搬送媒体を使用している。このため、冷房時には、冷房時に電子相転移を行う第1電子相転移物質だけでなく、冷房時に電子相転移を行わない第2電子相転移物質も利用側回路を循環し、熱搬送媒体の単位流量当たりでは、冷熱の搬送能力を十分に向上できないことになる。また、暖房時には、暖房時に電子相転移を行う第2電子相転移物質だけでなく、暖房時に電子相転移を行わない第1電子相転移物質も利用側回路を循環するため、熱搬送媒体の単位流量当たりでは、温熱の搬送能力を十分に向上できないおそれがある。このように、第1電子相転移物質及び第2電子相転移物質の両方を混合して液媒体に混入させた熱搬送媒体を使用すると、熱搬送媒体の単位流量当たりでは、熱搬送能力を十分に向上できないおそれがある。また、熱搬送媒体を循環させるための循環ポンプ等の動力も増大することになる。
そこで、本実施形態の空気調和装置では、熱搬送媒体を、第1電子相転移物質を含む第1熱搬送媒体と、第2電子相転移物質を含む第2熱搬送媒体と、を有するものとし、そして、利用側回路を、冷房時に第1熱搬送媒体だけを循環させ、暖房時に第2熱搬送媒体だけを循環させることができるように構成している。
次に、本実施形態の空気調和装置101の全体構成について、図4を用いて説明する。ここで、図4は、本発明の第2実施形態にかかる空気調和装置101の概略構成図である。
−全体−
空気調和装置101は、回路構成の観点から見ると、熱源側回路20を循環する冷媒と熱交換を行う熱搬送媒体が循環する利用側回路40、50を有しており、利用側回路40、50が有する利用側熱交換器42a、42b、44a、44bにおける熱搬送媒体の熱交換によって空調を行う装置である。ここで、熱源側回路20は、昇圧、放熱、減圧、蒸発の行程を行いながら冷媒が循環する蒸気圧縮式(直膨式)の冷凍サイクルを構成している。また、利用側回路40、50は、熱源側回路20から得た熱(冷熱や温熱)を利用側熱交換器42a、42b、44a、44bに搬送しながら熱搬送媒体が循環する熱搬送サイクルを構成している。このように、空気調和装置101では、第1実施形態の空気調和装置1と同様に、二次回路方式が採用されている。但し、空気調和装置101は、利用側回路として2つの利用側回路40、50を有する点で、第1実施形態の空気調和装置1と異なっている。
また、空気調和装置101は、ユニット構成の観点から見ると、主として、熱源ユニット2と、利用ユニット4a、4bとが接続されることによって構成されている。ここで、熱源ユニット2は、ビル等の建物外に設けられており、利用ユニット4a、4bは、その建物内に設けられている。そして、熱源ユニット2と利用ユニット4a、4bとは、熱搬送媒体が流れる送り側熱搬送媒体連絡管6、8及び戻り側熱搬送媒体連絡管7、9を介して接続されている。すなわち、空気調和装置101では、冷媒が循環する熱源側回路20が熱源ユニット2に設けられており、熱搬送媒体が循環する利用側回路40、50が送り側熱搬送媒体連絡管6、8及び戻り側熱搬送媒体連絡管7、9を介して熱源ユニット2及び利用ユニット4a、4bにまたがって設けられている。このように、空気調和装置101では、第1実施形態の空気調和装置1と同様に、互いに離れた場所に設置される室外側(ここでは、熱源ユニット2)と室内側(ここでは、利用ユニット4a、4b)との接続を、熱搬送媒体が流れる熱搬送媒体連絡管6〜9を介して行うようにしており、冷媒が循環する熱源側回路20が室外側(ここでは、熱源ユニット2)だけに収まるようにしている。但し、空気調和装置101は、利用側回路として2つの利用側回路40、50を有しているため、熱搬送媒体連絡管として、第1利用側回路40用の第1熱搬送媒体連絡管6、7と第2利用側回路50用の第2熱搬送媒体連絡管8、9を有している点で、第1実施形態の空気調和装置1と異なっている。
また、ここでは、建物内の複数の空間の空調を行うことができるように、利用ユニット4a、4bが複数(ここでは、2台)設けられており、空調として冷房及び暖房を行うことができるように、熱源側回路20における冷媒の流れ方向を切り換えるための冷媒切換機構23が熱源側回路20に設けられている。この点は、第1実施形態の空気調和装置1と同様である。ここで、冷房は、熱源側回路20から第1利用側回路40に冷熱を搬送し第1利用側熱交換器42a、42bにおける熱搬送媒体(第1熱搬送媒体)の吸熱によって冷熱を利用する空調であり、暖房は、熱源側回路20から第2利用側回路50に温熱を搬送し第2利用側熱交換器44a、44bにおける熱搬送媒体(第2熱搬送媒体)の放熱によって温熱を利用する空調である。このため、空気調和装置101では、利用側回路が冷房用の第1利用側回路40と暖房用の第2利用側回路50とに分かれており、利用ユニット4a、4bが冷房用の第1利用側熱交換器42a、42b及び暖房用の第2利用側熱交換器44a、44bを有している点が、第1実施形態の空気調和装置1とは異なっている。尚、利用ユニットの台数は、2台に限定されるものではなく、3台以上であってもよい。次に、空気調和装置101の詳細構成について説明する。
−熱源ユニット−
熱源ユニット2は、上記のように、室外に設置されており、利用側回路40、50の一部及び熱源側回路20を構成している。熱源ユニット2は、主として、圧縮機21と、冷媒切換機構23と、熱源側熱交換器24と、膨張機構25と、第1媒体−冷媒熱交換器26と、第2媒体−冷媒熱交換器31と、第1循環ポンプ29と、第2循環ポンプ32とを有している。そして、圧縮機21、冷媒切換機構23、熱源側熱交換器24、膨張機構25及び媒体−冷媒熱交換器26、31が接続されることによって構成された冷媒が循環する回路が熱源側回路20である。また、第1媒体−冷媒熱交換器26及び第1循環ポンプ29が第1熱搬送媒体連絡管6、7を介して第1利用側流量調節機構41a、41b及び第1利用側熱交換器42a、42bに接続されることによって構成された熱搬送媒体(第1熱搬送媒体)が循環する回路が第1利用側回路40である。また、第2媒体−冷媒熱交換器31及び第2循環ポンプ32が第2熱搬送媒体連絡管8、9を介して第2利用側流量調節機構43a、43b及び第2利用側熱交換器44a、44bに接続されることによって構成された熱搬送媒体(第2熱搬送媒体)が循環する回路が第2利用側回路50である。以下に熱源ユニット2を構成する各種機器の構成を説明するが、圧縮機21、熱源側熱交換器24及び室外ファン27の構成については、第1実施形態の空気調和装置1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
冷媒切換機構23は、熱源側回路20における冷媒の流れの方向を切り換えるための機構である。冷媒切換機構23は、冷房時には、熱源側熱交換器24を圧縮機21において昇圧された冷媒の放熱器として機能させ、かつ、第1媒体−冷媒熱交換器26を熱源側熱交換器24において放熱した冷媒の蒸発器として機能させる冷房サイクル状態への切り換えを行う。すなわち、冷媒切換機構23は、冷房時には、圧縮機21の吐出側と熱源側熱交換器24のガス側とが接続される(図4の冷媒切換機構23の実線を参照)。しかも、第2媒体−冷媒熱交換器31を介して圧縮機21の吸入側と第1媒体−冷媒熱交換器26のガス側とが接続される(図4の冷媒切換機構23の実線を参照)。また、冷媒切換機構23は、暖房時には、熱源側熱交換器24を第2媒体−冷媒熱交換器31において放熱した冷媒の蒸発器として機能させ、かつ、第2媒体−冷媒熱交換器31を圧縮機21において昇圧された冷媒の放熱器として機能させる暖房サイクル状態への切り換えを行う。すなわち、冷媒切換機構23は、暖房時には、圧縮機21の吐出側と第2媒体−冷媒熱交換器31のガス側とが接続される(図4の冷媒切換機構23の破線を参照)。しかも、圧縮機21の吸入側と熱源側熱交換器24のガス側とが接続される(図4の冷媒切換機構23の破線を参照)。尚、ここでは、冷媒切換機構23として四路切換弁が使用されているが、複数の弁を組み合わせた回路構成にすること等によって、四路切換弁と同様の機能を果たせるように構成してもよい。
膨張機構25は、冷房時には熱源側熱交換器24において放熱した冷凍サイクルの高圧の冷媒を冷凍サイクルの低圧まで減圧し、暖房時には第2媒体−冷媒熱交換器31において放熱した冷凍サイクルの高圧の冷媒を冷凍サイクルの低圧まで減圧するための機構である。膨張機構25は、一端が熱源側熱交換器24の液側に接続されており、他端が第1媒体−冷媒熱交換器26のガス側に接続されている。ここでは、膨張機構25として電動膨張弁が使用されている。
第1媒体−冷媒熱交換器26は、熱源側回路20を循環する冷媒と第1利用側回路40を循環する熱搬送媒体(第1熱搬送媒体)との熱交換を行う熱交換器である。第1媒体−冷媒熱交換器26は、冷房時に、膨張機構25において減圧された冷媒と第1利用側熱交換器42a、42bにおいて吸熱した熱搬送媒体(第1熱搬送媒体)との熱交換によって、冷媒の蒸発器として、かつ、熱搬送媒体(第1熱搬送媒体)の放熱器として機能する。第1媒体−冷媒熱交換器26の冷媒が流れる部分は、液側が膨張機構25に接続されており、ガス側が第2媒体−冷媒熱交換器31を介して冷媒切換機構23に接続されている。また、第1媒体−冷媒熱交換器26の熱搬送媒体(第1熱搬送媒体)が流れる部分は、入口側が第1循環ポンプ29の吐出側に接続されており、出口側が第1送り側熱搬送媒体連絡管6に接続されている。このように、熱源側回路20と第1利用側回路40とが、第1媒体−冷媒熱交換器26を有している。
第2媒体−冷媒熱交換器31は、熱源側回路20を循環する冷媒と第2利用側回路50を循環する熱搬送媒体(第2熱搬送媒体)との熱交換を行う熱交換器である。第2媒体−冷媒熱交換器31は、暖房時に、圧縮機21において昇圧された冷媒と第2利用側熱交換器44a、44bにおいて放熱した熱搬送媒体(第2熱搬送媒体)との熱交換によって、冷媒の放熱器として、かつ、熱搬送媒体(第2熱搬送媒体)の吸熱器として機能する。第2媒体−冷媒熱交換器31の冷媒が流れる部分は、液側が第1媒体−冷媒熱交換器26を介して膨張機構25に接続されており、ガス側が冷媒切換機構23に接続されている。また、第2媒体−冷媒熱交換器31の熱搬送媒体(第2熱搬送媒体)が流れる部分は、入口側が第2循環ポンプ32の吐出側に接続されており、出口側が第2送り側熱搬送媒体連絡管8に接続されている。このように、熱源側回路20と第2利用側回路50とが、第2媒体−冷媒熱交換器31を有している。
第1循環ポンプ29は、熱搬送媒体を昇圧して熱搬送媒体(第1熱搬送媒体)を循環させるための機器である。ここでは、第1循環ポンプ29は、遠心式や容積式等のポンプ要素を第1ポンプ用モータ30によって駆動する構造となっている。第1循環ポンプ29は、吸入側が第1戻り側熱搬送媒体連絡管7に接続されており、吐出側が第1媒体−冷媒熱交換器26の入口側に接続されている。尚、第1循環ポンプ29は、遠心式や容積式等の機械式のポンプに限定されるものではなく、特許文献1のような加減圧動作による構成を使用してもよい。また、第1循環ポンプ29の接続位置は、第1媒体−冷媒熱交換器26の入口側に限定されるものではなく、第1媒体−冷媒熱交換器26の出口側に接続されていてもよい。この場合には、第1媒体−冷媒熱交換器26の熱搬送媒体(第1熱搬送媒体)が流れる部分は、入口側が第1戻り側熱搬送媒体連絡管7に接続され、出口側が第1循環ポンプ29の吐出側に接続されることになる。
第2循環ポンプ32は、熱搬送媒体を昇圧して熱搬送媒体(第2熱搬送媒体)を循環させるための機器である。ここでは、第2循環ポンプ32は、遠心式や容積式等のポンプ要素を第2ポンプ用モータ33によって駆動する構造となっている。第2循環ポンプ32は、吸入側が第2戻り側熱搬送媒体連絡管9に接続されており、吐出側が第2媒体−冷媒熱交換器31の入口側に接続されている。尚、第2循環ポンプ32は、遠心式や容積式等の機械式のポンプに限定されるものではなく、特許文献1のような加減圧動作による構成を使用してもよい。また、第2循環ポンプ32の接続位置は、第2媒体−冷媒熱交換器31の入口側に限定されるものではなく、第2媒体−冷媒熱交換器31の出口側に接続されていてもよい。この場合には、第2媒体−冷媒熱交換器32の熱搬送媒体(第2熱搬送媒体)が流れる部分は、入口側が第2戻り側熱搬送媒体連絡管9に接続され、出口側が第2循環ポンプ32の吐出側に接続されることになる。
−利用ユニット−
利用ユニット4a、4bは、上記のように、室内に設置されており、利用側回路40、50の一部を構成している。利用ユニット4aは、主として、第1利用側流量調節機構41aと、第1利用側熱交換器42aと、第2利用側流量調節機構43aと、第2利用側熱交換器44aとを有している。また、利用ユニット4aと同様に、利用ユニット4bは、主として、第1利用側流量調節機構41bと、第1利用側熱交換器42bと、第2利用側流量調節機構43bと、第2利用側熱交換器44bとを有している。そして、第1利用側流量調節機構41a、41b及び第1利用側熱交換器42a、42bが第1熱搬送媒体連絡管6、7を介して第1循環ポンプ29及び第1媒体−冷媒熱交換器26に接続されることによって構成された熱搬送媒体(第1熱搬送媒体)が循環する回路が第1利用側回路40である。また、第2利用側流量調節機構43a、43b及び第2利用側熱交換器44a、44bが第2熱搬送媒体連絡管8、9を介して第2循環ポンプ32及び第2媒体−冷媒熱交換器31に接続されることによって構成された熱搬送媒体(第2熱搬送媒体)が循環する回路が第2利用側回路50である。尚、利用ユニット4bは、利用ユニット4aと同様の構成を有するため、以下の説明では、利用ユニット4aの構成だけを説明し、利用ユニット4bの構成については、利用ユニット4aの各部を示す符号の添字「a」を添字「b」に読み替えることで説明を省略する。
第1利用側流量調節機構41aは、第1利用側熱交換器42aを流れる熱搬送媒体(第1熱搬送媒体)の流量を調節するための機構である。第1利用側流量調節機構41aは、一端が第1送り側熱搬送媒体連絡管6に接続されており、他端が第1利用側熱交換器42aの入口側に接続されている。ここでは、第1利用側流量調節機構41aとして流量調節弁が使用されている。尚、第1利用側流量調節機構41aの接続位置は、第1利用側熱交換器42aの入口側に限定されるものではなく、第1利用側熱交換器42aの出口側に接続されていてもよい。
第2利用側流量調節機構43aは、第2利用側熱交換器44aを流れる熱搬送媒体(第2熱搬送媒体)の流量を調節するための機構である。第2利用側流量調節機構43aは、一端が第2送り側熱搬送媒体連絡管8に接続されており、他端が第2利用側熱交換器44aの入口側に接続されている。ここでは、第2利用側流量調節機構43aとして流量調節弁が使用されている。尚、第2利用側流量調節機構43aの接続位置は、第2利用側熱交換器44aの入口側に限定されるものではなく、第2利用側熱交換器44aの出口側に接続されていてもよい。
第1利用側熱交換器42aは、冷房時に熱搬送媒体(第1熱搬送媒体)の吸熱器として機能して室内空気を冷却する熱交換器である。第1利用側熱交換器42aは、入口側が第1利用側流量調節機構41aに接続されており、出口側が第1戻り側熱搬送媒体連絡管7に接続されている。ここで、利用ユニット4aは、利用ユニット4a内に室内空気を吸入して、第1利用側熱交換器42aにおいて熱搬送媒体(第1熱搬送媒体)と熱交換させた後に、供給空気として室内に供給するための室内ファン45aを有している。すなわち、利用ユニット4aは、第1利用側熱交換器42aを流れる熱搬送媒体(第1熱搬送媒体)の吸熱源としての室内空気を第1利用側熱交換器42aに供給するファンとして、室内ファン45aを有している。ここでは、室内ファン45aとして、室内ファン用モータ46aによって駆動される遠心ファンや多翼ファン等が使用されている。
第2利用側熱交換器44aは、暖房時に熱搬送媒体(第2熱搬送媒体)の放熱器として機能して室内空気を加熱する熱交換器である。第2利用側熱交換器44aは、入口側が第2利用側流量調節機構43aに接続されており、出口側が第2戻り側熱搬送媒体連絡管9に接続されている。ここで、第1利用側熱交換器42aを流れる熱搬送媒体(第1熱搬送媒体)の吸熱源としての室内空気を第1利用側熱交換器42aに供給する室内ファン45aが、利用ユニット4a内に室内空気を吸入して、第2利用側熱交換器44aにおいて熱搬送媒体(第2熱搬送媒体)と熱交換させた後に、供給空気として室内に供給するためのファンとしても機能するようになっている。利用ユニット4aは、第1利用側熱交換器42aを流れる熱搬送媒体(第1熱搬送媒体)の吸熱源又は第2利用側熱交換器44aを流れる熱搬送媒体(第2熱搬送媒体)の放熱源としての室内空気を利用側熱交換器42a、44aに供給するファンとして、室内ファン45aを有しているのである。
−制御部−
空気調和装置101は、熱源側回路20及び利用側回路40、50を含む熱源ユニット2及び利用ユニット4a、4bを構成する各部の動作を制御する制御部10を有している。制御部10は、熱源ユニット2及び利用ユニット4a、4bの各部の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有している。尚、ここでは、便宜上、制御部10が熱源ユニット2に設けられているものとして図示しているが、実際の制御部10は、熱源ユニット2や利用ユニット4a、4bの制御基板間を通信接続すること等によって構成されている。空調としての冷房や暖房のような各種動作は、制御部10によって行われる。
このように、本実施形態の空気調和装置101では、利用側回路を冷房用の第1利用側回路40と暖房用の第2利用側回路50という2つの回路に分けた二次回路方式を採用している。
−熱搬送媒体−
上記のような二次回路方式の空気調和装置101に使用する熱搬送媒体として、第1電子相転移物質や第2電子相転移物質を水や水溶液、油等の液媒体に多量に混入させたスラリーを熱搬送媒体(第1熱搬送媒体、第2熱搬送媒体)としている。このように、空気調和装置101では、第1実施形態の空気調和装置1と同様に、第1電子相転移物質や第2電子相転移物質を水や水溶液、油等の液媒体に多量に混入させたスラリーを熱搬送媒体とするものである。但し、空気調和装置101は、第1電子相転移物質及び第2電子相転移物質の両方を混合して液媒体に混入させた熱搬送媒体を使用するのではなく、第1電子相転移物質を含む第1熱搬送媒体と第2電子相転移物質を含む第2熱搬送媒体という2つの熱搬送媒体に分けるようにしている点が、第1実施形態の空気調和装置1とは異なっている。そして、空気調和装置101では、冷房用の第1利用側回路40用の熱搬送媒体として第1熱搬送媒体を使用し、暖房用の第2利用側回路50用の熱搬送媒体として第2熱搬送媒体を使用するようにしているのである。
尚、電子相転移物質の特性や種類については、冷房用の第1電子相転移物質や暖房用の第2電子相転移物質の選択も含めて、第1実施形態の空気調和装置1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
<動作>
図5は、空気調和装置101の冷房時の冷媒及び熱搬送媒体の流れを示す図であり、図6は、空気調和装置101の暖房時の冷媒及び熱搬送媒体の流れを示す図である。次に、空気調和装置101の動作(空調としての冷房及び暖房)について説明する。
−冷房−
冷房時には、冷媒切換機構23が冷房サイクル状態(図5の実線で示される状態)に切り換えられる。また、第2循環ポンプ32を停止させて第2熱搬送媒体が第2利用側回路50を循環しない状態にする。
熱源ユニット2に設けられた熱源側回路20において、冷凍サイクルの低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルの高圧になるまで昇圧された後に吐出される。圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、冷媒切換機構23を通じて、熱源側熱交換器24に送られる。熱源側熱交換器24に送られた高圧のガス冷媒は、熱源側熱交換器24において、室外ファン27によって冷却源として供給される室外空気と熱交換を行って放熱して、高圧の液冷媒になる。熱源側熱交換器24において放熱した高圧の液冷媒は、膨張機構25において冷凍サイクルの低圧まで減圧されて、低圧の気液二相状態の冷媒になる。膨張機構25において減圧された低圧の気液二相状態の冷媒は、第1媒体−冷媒熱交換器26に送られる。第1媒体−冷媒熱交換器26に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、第1媒体−冷媒熱交換器26において、第1循環ポンプ29によって第1利用側回路40を循環する第1熱搬送媒体と熱交換を行って蒸発して、低圧のガス冷媒になる。第1媒体−冷媒熱交換器26において蒸発した低圧のガス冷媒は、第2媒体−冷媒熱交換器31及び冷媒切換機構23を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。
一方、第1熱搬送媒体連絡管6、7を介して熱源ユニット2及び利用ユニット4a、4bにまたがって設けられた第1利用側回路40において、第1熱搬送媒体は、上記のように、第1媒体−冷媒熱交換器26において、熱源側回路20を循環する冷媒の蒸発によって放熱する。このとき、第1熱搬送媒体においては、液媒体の温度低下が発生し、第1電子相転移温度において第1電子相転移物質の相転移(冷熱蓄積)が発生する。第1媒体−冷媒熱交換器26において温度低下及び冷熱蓄積した第1熱搬送媒体は、第1送り側熱搬送媒体連絡管6を通じて、熱源ユニット2から利用ユニット4a、4bに送られる。利用ユニット4a、4bに送られた温度低下及び冷熱蓄積した第1熱搬送媒体は、第1利用側流量調節機構41a、41bにおいて流量調節されて、第1利用側熱交換器42a、42bに送られる。第1利用側熱交換器42a、42bに送られた温度低下及び冷熱蓄積した第1熱搬送媒体は、第1利用側熱交換器42a、42bにおいて、室内ファン45a、45bによって吸熱源として供給される室内空気と熱交換を行って吸熱する。これにより、室内空気は冷却され、その後に、室内に供給されることで冷房が行われる。このとき、第1熱搬送媒体においては、液媒体の温度上昇が発生し、第1電子相転移温度において第1電子相転移物質の相転移(冷熱放出)が発生する。第1利用側熱交換器42a、42bにおいて温度上昇及び冷熱放出した第1熱搬送媒体は、第1戻り側熱搬送媒体連絡管7を通じて、利用ユニット4a、4bから熱源ユニット2に送られ、再び、第1循環ポンプ29に吸入される。
このように、第1電子相転移物質の電子相転移による潜熱を利用して熱源側回路20から第1利用側回路40への冷熱の搬送が行われることで、空調としての冷房が行われる。
−暖房−
暖房時には、冷媒切換機構23が暖房サイクル状態(図6の実線で示される状態)に切り換えられる。また、第1循環ポンプ29を停止させて第1熱搬送媒体が第1利用側回路40を循環しない状態にする。
熱源ユニット2に設けられた熱源側回路20において、冷凍サイクルの低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルの高圧になるまで昇圧された後に吐出される。圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、冷媒切換機構23を通じて、第2媒体−冷媒熱交換器31に送られる。第2媒体−冷媒熱交換器31に送られた高圧のガス冷媒は、第2媒体−冷媒熱交換器31において、第2循環ポンプ32によって第2利用側回路50を循環する第2熱搬送媒体と熱交換を行って放熱して、高圧の液冷媒になる。第2媒体−冷媒熱交換器31において放熱した高圧の液冷媒は、第1媒体−冷媒熱交換器26を通じて膨張機構25に送られ、膨張機構25において冷凍サイクルの低圧まで減圧されて、低圧の気液二相状態の冷媒になる。膨張機構25において減圧された低圧の気液二相状態の冷媒は、熱源側熱交換器24に送られる。熱源側熱交換器24に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、熱源側熱交換器24において、室外ファン27によって加熱源として供給される室外空気と熱交換を行って蒸発して、低圧のガス冷媒になる。熱源側熱交換器24において、蒸発した低圧のガス冷媒は、冷媒切換機構23を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。
一方、第2熱搬送媒体連絡管8、9を介して熱源ユニット2及び利用ユニット4a、4bにまたがって設けられた第2利用側回路50において、第2熱搬送媒体は、上記のように、第2媒体−冷媒熱交換器31において、熱源側回路20を循環する冷媒の放熱によって吸熱する。このとき、第2熱搬送媒体においては、液媒体の温度上昇が発生し、第2電子相転移温度において第2電子相転移物質の相転移(温熱蓄積)が発生する。第2媒体−冷媒熱交換器31において温度上昇及び温熱蓄積した第2熱搬送媒体は、第2送り側熱搬送媒体連絡管8を通じて、熱源ユニット2から利用ユニット4a、4bに送られる。利用ユニット4a、4bに送られた温度上昇及び温熱蓄積した第2熱搬送媒体は、第2利用側流量調節機構43a、43bにおいて流量調節されて、第2利用側熱交換器44a、44bに送られる。第2利用側熱交換器44a、44bに送られた温度上昇及び温熱蓄積した第2熱搬送媒体は、第2利用側熱交換器44a、44bにおいて、室内ファン45a、45bによって放熱源として供給される室内空気と熱交換を行って放熱する。これにより、室内空気は加熱され、その後に、室内に供給されることで暖房が行われる。このとき、第2熱搬送媒体においては、液媒体の温度低下が発生し、第2電子相転移温度において第2電子相転移物質の相転移(温熱放出)が発生する。第2利用側熱交換器44a、44bにおいて温度低下及び温熱放出した第2熱搬送媒体は、第2戻り側熱搬送媒体連絡管9を通じて、利用ユニット4a、4bから熱源ユニット2に送られ、再び、第2循環ポンプ32に吸入される。
このように、第2電子相転移物質の電子相転移による潜熱を利用して熱源側回路20から第2利用側回路50への温熱の搬送が行われることで、空調としての暖房が行われる。
<特徴>
次に、空気調和装置101の特徴について説明する。
−A−
ここでは、第1実施形態の空気調和装置1と同様に、二次回路方式を採用するとともに、熱搬送媒体として電子相転移を行う物質である電子相転移物質を含むスラリーを使用している。
これにより、ここでは、圧力変化を吸収するための構成の追加による利用側回路40、50の複雑化を避けつつ、利用側回路40、50の熱搬送能力の向上を図ることができる。
−B−
また、ここでは、第1実施形態と同様に、空調として冷房及び暖房があり、冷房時には熱源側回路20から第1利用側回路40へ冷熱の搬送が行われ、暖房時には熱源側回路20から第2利用側回路50へ温熱の搬送が行われる。
これにより、ここでは、冷房及び暖房のいずれにおいても、利用側回路40、50の熱搬送能力の向上を図ることができる。
−C−
また、ここでは、上記のように、熱搬送媒体が、第1電子相転移物質を含む第1熱搬送媒体と、第2電子相転移物質を含む第2熱搬送媒体と、を有しており、そして、利用側回路が、冷房時に第1熱搬送媒体だけを循環させ、暖房時に第2熱搬送媒体だけを循環させることができるように構成されている。具体的には、利用側回路が、第1熱搬送媒体だけが循環する第1利用側回路40と、第2熱搬送媒体だけが循環する第2利用側回路50と、を有している。そして、第1利用側回路40は、冷房時に第1熱搬送媒体の吸熱を行う利用側熱交換器である第1利用側熱交換器42a、42bを有しており、第2利用側回路50は、暖房時に第2熱搬送媒体の吸熱を行う利用側熱交換器である第2利用側熱交換器44a、44bを有している。すなわち、利用側回路を冷房用と暖房用とで別回路に分けた回路構成とし、冷房用の第1利用側回路40において、冷房時に電子相転移を行う第1電子相転移物質を含む第1熱搬送媒体を使用し、暖房用の第2利用側回路50において、暖房時に電子相転移を行う第2電子相転移物質を含む第2熱搬送媒体を使用するようにしている。
このため、ここでは、第1電子相転移物質及び第2電子相転移物質の両方を混合して液媒体に混入させた熱搬送媒体を使用した第1実施形態の空気調和装置1とは異なり、冷房時には、冷房時に電子相転移を行わない第2電子相転移物質を循環させずに済むようになる。また、暖房時には、暖房時に電子相転移を行わない第1電子相転移物質を循環させずに済むようになる。
これにより、ここでは、第1電子相転移物質及び第2電子相転移物質の両方を混合して液媒体に混入させた熱搬送媒体を使用した第1実施形態の空気調和装置1に比べて、冷房及び暖房のいずれにおいても、熱搬送媒体の単位流量当たりの熱搬送能力を十分に向上させることができる。また、熱搬送媒体を循環させるための循環ポンプ29、32の動力の増大も抑えることができる。
<変形例>
上記の構成においては、冷房時に冷媒が第1媒体−冷媒熱交換器26だけでなく第2媒体−冷媒熱交換器31も通過し、暖房時に冷媒が第2媒体−冷媒熱交換器31だけでなく第1媒体−冷媒熱交換器26も通過するような熱源側回路20を採用している。しかし、冷房時に冷媒が第1媒体−冷媒熱交換器26だけを通過するように第2媒体−冷媒熱交換器31をバイパスさせるためのバイパス管を設けたり、暖房時に冷媒が第2媒体−冷媒熱交換器31だけを通過するように第1媒体−冷媒熱交換器26をバイパスさせるためのバイパス管を設けるようにしてもよい。
(3)第3実施形態
<構成>
上記の第1実施形態(図1〜図3参照)においては、空調として冷房及び暖房を行うにあたり、第1電子相転移物質及び第2電子相転移物質の両方を混合して液媒体に混入させた熱搬送媒体を使用している。このため、冷房時には、冷房時に電子相転移を行う第1電子相転移物質だけでなく、冷房時に電子相転移を行わない第2電子相転移物質も利用側回路40を循環し、熱搬送媒体の単位流量当たりでは、冷熱の搬送能力を十分に向上できないことになる。また、暖房時には、暖房時に電子相転移を行う第2電子相転移物質だけでなく、暖房時に電子相転移を行わない第1電子相転移物質も利用側回路40を循環するため、熱搬送媒体の単位流量当たりでは、温熱の搬送能力を十分に向上できないおそれがある。このように、第1電子相転移物質及び第2電子相転移物質の両方を混合して液媒体に混入させた熱搬送媒体を使用すると、熱搬送媒体の単位流量当たりでは、熱搬送能力を十分に向上できないおそれがある。また、熱搬送媒体を循環させるための循環ポンプ29の動力も増大することになる。
そこで、本実施形態の空気調和装置では、熱搬送媒体を、第1電子相転移物質を含む第1熱搬送媒体と、第2電子相転移物質を含む第2熱搬送媒体と、を有するものとし、そして、利用側回路を、冷房時に第1熱搬送媒体だけを循環させ、暖房時に第2熱搬送媒体だけを循環させることができるように構成している。
次に、本実施形態の空気調和装置201の全体構成について、図7を用いて説明する。ここで、図7は、本発明の第3実施形態にかかる空気調和装置101の概略構成図である。
−全体−
空気調和装置201は、回路構成の観点から見ると、熱源側回路20を循環する冷媒と熱交換を行う熱搬送媒体が循環する利用側回路40を有しており、利用側回路40が有する利用側熱交換器42a、42bにおける熱搬送媒体の熱交換によって空調を行う装置である。ここで、熱源側回路20は、昇圧、放熱、減圧、蒸発の行程を行いながら冷媒が循環する蒸気圧縮式(直膨式)の冷凍サイクルを構成している。また、利用側回路40は、熱源側回路20から得た熱(冷熱や温熱)を利用側熱交換器42a、42bに搬送しながら熱搬送媒体が循環する熱搬送サイクルを構成している。このように、空気調和装置201では、第1実施形態の空気調和装置1と同様に、二次回路方式が採用されている。但し、空気調和装置201は、利用側回路40が、2つの熱搬送媒体タンク35、36等を有する点で、第1実施形態の空気調和装置1と異なっている。
また、空気調和装置201は、ユニット構成の観点から見ると、主として、熱源ユニット2と、利用ユニット4a、4bとが接続されることによって構成されている。ここで、熱源ユニット2は、ビル等の建物外に設けられており、利用ユニット4a、4bは、その建物内に設けられている。そして、熱源ユニット2と利用ユニット4a、4bとは、熱搬送媒体が流れる熱搬送媒体連絡管6、7を介して接続されている。すなわち、空気調和装置101では、冷媒が循環する熱源側回路20が熱源ユニット2に設けられており、熱搬送媒体が循環する利用側回路40が熱搬送媒体連絡管6、7を介して熱源ユニット2及び利用ユニット4a、4bにまたがって設けられている。このように、空気調和装置201では、第1実施形態の空気調和装置1と同様に、互いに離れた場所に設置される室外側(ここでは、熱源ユニット2)と室内側(ここでは、利用ユニット4a、4b)との接続を、熱搬送媒体が流れる熱搬送媒体連絡管6、7を介して行うようにしており、冷媒が循環する熱源側回路20が室外側(ここでは、熱源ユニット2)だけに収まるようにしている。
また、ここでは、建物内の複数の空間の空調を行うことができるように、利用ユニット4a、4bが複数(ここでは、2台)設けられており、空調として冷房及び暖房を行うことができるように、熱源側回路20における冷媒の流れ方向を切り換えるための冷媒切換機構23が熱源側回路20に設けられている。この点は、第1実施形態の空気調和装置1と同様である。ここで、冷房は、熱源側回路20から利用側回路40に冷熱を搬送し利用側熱交換器42a、42bにおける熱搬送媒体(第1熱搬送媒体)の吸熱によって冷熱を利用する空調であり、暖房は、熱源側回路20から利用側回路40に温熱を搬送し利用側熱交換器42a、42bにおける熱搬送媒体(第2熱搬送媒体)の放熱によって温熱を利用する空調である。このため、空気調和装置201では、利用側回路40が2つの熱搬送媒体タンク35、36等を有しており、第1熱搬送媒体と第2熱搬送媒体という2つの熱搬送媒体の使用を切り換えることができるようになっている点が、第1実施形態の空気調和装置1とは異なっている。尚、利用ユニットの台数は、2台に限定されるものではなく、3台以上であってもよい。次に、空気調和装置201の詳細構成について説明する。
−熱源ユニット−
熱源ユニット2は、上記のように、室外に設置されており、利用側回路40の一部及び熱源側回路20を構成している。熱源ユニット2は、主として、圧縮機21と、冷媒切換機構23と、熱源側熱交換器24と、膨張機構25と、媒体−冷媒熱交換器26と、循環ポンプ29と、第1熱搬送媒体タンク35と、第2熱搬送媒体タンク36と、媒体切換機構37と、第1媒体回収弁38と、第2媒体回収弁39とを有している。そして、圧縮機21、冷媒切換機構23、熱源側熱交換器24、膨張機構25及び媒体−冷媒熱交換器26が接続されることによって構成された冷媒が循環する回路が熱源側回路20である。また、媒体−冷媒熱交換器26、循環ポンプ29、媒体切換機構37、第1熱搬送媒体タンク35、第2熱搬送媒体タンク36、第1媒体回収弁38及び第2媒体回収弁39が熱搬送媒体連絡管6、7を介して利用側流量調節機構41a、41b及び利用側熱交換器42a、42bに接続されることによって構成された熱搬送媒体が循環する回路が利用側回路40である。以下に熱源ユニット2を構成する各種機器の構成を説明するが、圧縮機21、冷媒切換機構23、熱源側熱交換器24、膨張機構25及び室外ファン27の構成については、第1実施形態の空気調和装置1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
媒体−冷媒熱交換器26は、熱源側回路20を循環する冷媒と利用側回路40を循環する熱搬送媒体(第1熱搬送媒体、第2熱搬送媒体)との熱交換を行う熱交換器である。媒体−冷媒熱交換器26は、冷房時には、膨張機構25において減圧された冷媒と利用側熱交換器42a、42bにおいて吸熱した熱搬送媒体(第1熱搬送媒体)との熱交換によって、冷媒の蒸発器として、かつ、熱搬送媒体(第1熱搬送媒体)の放熱器として機能する。また、媒体−冷媒熱交換器26は、暖房時には、圧縮機21において昇圧された冷媒と利用側熱交換器42a、42bにおいて放熱した熱搬送媒体(第2熱搬送媒体)との熱交換によって、冷媒の放熱器として、かつ、熱搬送媒体(第2熱搬送媒体)の吸熱器として機能する。媒体−冷媒熱交換器26の冷媒が流れる部分は、液側が膨張機構25に接続されており、ガス側が冷媒切換機構23に接続されている。また、媒体−冷媒熱交換器26の熱搬送媒体(第1熱搬送媒体、第2熱搬送媒体)が流れる部分は、入口側が循環ポンプ29の吐出側に接続されており、出口側が送り側熱搬送媒体連絡管6に接続されている。このように、熱源側回路20と利用側回路40とが、媒体−冷媒熱交換器26を有している。
循環ポンプ29は、熱搬送媒体(第1熱搬送媒体、第2熱搬送媒体)を昇圧して熱搬送媒体(第1熱搬送媒体、第2熱搬送媒体)を循環させるための機器である。ここでは、循環ポンプ29は、遠心式や容積式等のポンプ要素をポンプ用モータ30によって駆動する構造となっている。循環ポンプ29は、吸入側が戻り側熱搬送媒体連絡管7に接続されており、媒体切換機構37、第1熱搬送媒体タンク35、第2熱搬送媒体タンク36、第1媒体回収弁38及び第2媒体回収弁39を介して、吐出側が媒体−冷媒熱交換器26の入口側に接続されている。尚、循環ポンプ29は、遠心式や容積式等の機械式のポンプに限定されるものではなく、特許文献1のような加減圧動作による構成を使用してもよい。
第1熱搬送媒体タンク35は、暖房時に第1熱搬送媒体を回収する容器である。第1熱搬送媒体タンク35は、利用側回路40に存在する第1熱搬送媒体をすべて収容できる容積を有している。第1熱搬送媒体タンク35は、入口側が媒体切換機構37を介して循環ポンプ29の吐出側に接続されており、出口側が第1媒体回収弁38を介して、媒体−冷媒熱交換器26に接続されている。
第2熱搬送媒体タンク36は、冷房時に第2熱搬送媒体を回収する容器である。第2熱搬送媒体タンク36は、利用側回路40に存在する第2熱搬送媒体をすべて収容できる容積を有している。第2熱搬送媒体タンク36は、入口側が媒体切換機構37を介して循環ポンプ29の吐出側に接続されており、出口側が第2媒体回収弁39を介して、媒体−冷媒熱交換器26に接続されている。
媒体切換機構37は、利用側回路40を循環する熱搬送媒体(第1熱搬送媒体、第2熱搬送媒体)を切り換えるための機構である。媒体切換機構37は、冷房時には、第2熱搬送媒体タンク36の入口側に熱搬送媒体(第1熱搬送媒体)を流入させない状態で、第1熱搬送媒体タンク35の入口側に熱搬送媒体(第1熱搬送媒体)を流す冷房サイクル状態への切換を行う。すなわち、媒体切換機構37は、冷房時には、循環ポンプ29の吐出側と第1熱搬送媒体タンク35の入口側とが接続される(図7の媒体切換機構37の実線を参照)。また、媒体切換機構37は、暖房時には、第1熱搬送媒体タンク35の入口側に熱搬送媒体(第2熱搬送媒体)を流入させない状態で、第2熱搬送媒体タンク36の入口側に熱搬送媒体(第2熱搬送媒体)を流す暖房サイクル状態への切換を行う。すなわち、媒体切換機構37は、暖房時には、循環ポンプ29の吐出側と第2熱搬送媒体タンク36の入口側とが接続される(図7の媒体切換機構37の破線を参照)。尚、ここでは、媒体切換機構37として三方弁が使用されているが、複数の弁を組み合わせた回路構成にすること等によって、三方弁と同様の機能を果たせる構成にしてもよい。
第1媒体回収弁38は、第1熱搬送媒体タンク35の出口側から第1熱搬送媒体を流出させるかどうかを制御するための弁である。第1媒体回収弁38は、一端が第1熱搬送媒体タンク35の出口側に接続されており、他端が媒体−冷媒熱交換器26の熱搬送媒体が流れる部分の入口側に接続されている。ここでは、第1媒体回収弁38として電磁弁等の開閉弁が使用されている。
第2媒体回収弁39は、第2熱搬送媒体タンク36の出口側から第2熱搬送媒体を流出させるかどうかを制御するための弁である。第2媒体回収弁39は、一端が第2熱搬送媒体タンク36の出口側に接続されており、他端が媒体−冷媒熱交換器26の熱搬送媒体が流れる部分の入口側に接続されている。ここでは、第2媒体回収弁39として電磁弁等の開閉弁が使用されている。
そして、2つの熱搬送媒体タンク35、36とこれらに付属する媒体切換機構37及び媒体回収弁38、39によって、暖房用の第2熱搬送媒体を第2熱搬送媒体タンク36に回収した状態で、冷房用の第1熱搬送媒体だけを循環させることができるようになっている。すなわち、冷房時には、媒体切換機構37を冷房サイクル状態(図7の実線で示される状態)に切り換えるとともに、第1媒体回収弁38を開状態、第2媒体回収弁39を閉状態にして、第1熱搬送媒体を循環させるようにするのである。また、暖房時には、暖房用の第2熱搬送媒体だけを循環させることができるようになっている。すなわち、暖房時には、媒体切換機構37を暖房サイクル状態(図7の破線で示される状態)に切り換えるとともに、第1媒体回収弁38を閉状態、第2媒体回収弁39を開状態にして、第2熱搬送媒体を循環させるようにするのである。
−利用ユニット−
利用ユニット4a、4bは、上記のように、室内に設置されており、利用側回路40の一部を構成している。利用ユニット4aは、主として、利用側流量調節機構41aと、利用側熱交換器42aとを有している。また、利用ユニット4aと同様に、利用ユニット4bは、主として、利用側流量調節機構41bと、利用側熱交換器42bとを有している。そして、利用側流量調節機構41a、41b及び利用側熱交換器42a、42bが熱搬送媒体連絡管6、7を介して循環ポンプ29及び媒体−冷媒熱交換器26に接続されることによって構成された熱搬送媒体が循環する回路が利用側回路40である。尚、利用ユニット4a、4bを構成する各種機器の構成は、熱搬送媒体として、冷房時に第1熱搬送媒体が流れ暖房時に第2熱搬送媒体が流れる点を除いては、第1実施形態の利用ユニット4a、4bと同様であるため、ここでは説明を省略する。
−制御部−
空気調和装置201は、熱源側回路20及び利用側回路40を含む熱源ユニット2及び利用ユニット4a、4bを構成する各部の動作を制御する制御部10を有している。制御部10は、熱源ユニット2及び利用ユニット4a、4bの各部の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有している。尚、ここでは、便宜上、制御部10が熱源ユニット2に設けられているものとして図示しているが、実際の制御部10は、熱源ユニット2や利用ユニット4a、4bの制御基板間を通信接続すること等によって構成されている。空調としての冷房や暖房のような各種動作(冷暖房切換を含む)は、制御部10によって行われる。
このように、本実施形態の空気調和装置201では、利用側回路40に、暖房時に第1熱搬送媒体を回収する第1熱搬送媒体タンク35と、冷房時に第2熱搬送媒体を回収する第2熱搬送媒体タンク36と、を設けた二次回路方式を採用している。
−熱搬送媒体−
上記のような二次回路方式の空気調和装置201に使用する熱搬送媒体として、第1電子相転移物質や第2電子相転移物質を水や水溶液、油等の液媒体に多量に混入させたスラリーを熱搬送媒体(第1熱搬送媒体、第2熱搬送媒体)としている。このように、空気調和装置201では、第1実施形態の空気調和装置1と同様に、第1電子相転移物質や第2電子相転移物質を水や水溶液、油等の液媒体に多量に混入させたスラリーを熱搬送媒体とするものである。但し、空気調和装置201は、第1電子相転移物質及び第2電子相転移物質の両方を混合して液媒体に混入させた熱搬送媒体を使用するのではなく、第1電子相転移物質を含む第1熱搬送媒体と第2電子相転移物質を含む第2熱搬送媒体という2つの熱搬送媒体に分けるようにしている点が、第1実施形態の空気調和装置1とは異なっている。そして、空気調和装置201では、冷房用の熱搬送媒体として第1熱搬送媒体を使用し、暖房用の熱搬送媒体として第2熱搬送媒体を使用するようにしているのである。
尚、電子相転移物質の特性や種類については、冷房用の第1電子相転移物質や暖房用の第2電子相転移物質の選択も含めて、第1実施形態の空気調和装置1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
<動作>
図8は、空気調和装置201の冷房時の冷媒及び熱搬送媒体の流れを示す図であり、図9は、空気調和装置201の暖房時の冷媒及び熱搬送媒体の流れを示す図である。図10は、図10は、空気調和装置201の冷暖房切換時の処理を示すフローチャートである。図11及び図12は、空気調和装置201の冷暖房切換時(熱搬送媒体の回収時)の熱搬送媒体の流れを示す図である。次に、空気調和装置201の動作(空調としての冷房及び暖房、並びに、冷暖房切換)について説明する。
−冷房−
冷房時には、冷媒切換機構23が冷房サイクル状態(図8の実線で示される状態)に切り換えられる。また、媒体切換機構37が冷房サイクル状態(図8の実線で示される状態)に切り換えられ、第1媒体回収弁38が開状態にされ、第2媒体回収弁39が閉状態にされることで、第2熱搬送媒体が第2熱搬送媒体タンク36に隔離されるとともに、第1熱搬送媒体だけが利用側回路40を循環するようになっている。
熱源ユニット2に設けられた熱源側回路20において、冷凍サイクルの低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルの高圧になるまで昇圧された後に吐出される。圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、冷媒切換機構23を通じて、熱源側熱交換器24に送られる。熱源側熱交換器24に送られた高圧のガス冷媒は、熱源側熱交換器24において、室外ファン27によって冷却源として供給される室外空気と熱交換を行って放熱して、高圧の液冷媒になる。熱源側熱交換器24において放熱した高圧の液冷媒は、膨張機構25において冷凍サイクルの低圧まで減圧されて、低圧の気液二相状態の冷媒になる。膨張機構25において減圧された低圧の気液二相状態の冷媒は、媒体−冷媒熱交換器26に送られる。媒体−冷媒熱交換器26に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、媒体−冷媒熱交換器26において、循環ポンプ29によって利用側回路40を循環する第1熱搬送媒体と熱交換を行って蒸発して、低圧のガス冷媒になる。媒体−冷媒熱交換器26において蒸発した低圧のガス冷媒は、冷媒切換機構23を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。
一方、熱搬送媒体連絡管6、7を介して熱源ユニット2及び利用ユニット4a、4bにまたがって設けられた利用側回路40において、第1熱搬送媒体は、上記のように、媒体−冷媒熱交換器26において、熱源側回路20を循環する冷媒の蒸発によって放熱する。このとき、第1熱搬送媒体においては、液媒体の温度低下が発生し、第1電子相転移温度において第1電子相転移物質の相転移(冷熱蓄積)が発生する。媒体−冷媒熱交換器26において温度低下及び冷熱蓄積した第1熱搬送媒体は、送り側熱搬送媒体連絡管6を通じて、熱源ユニット2から利用ユニット4a、4bに送られる。利用ユニット4a、4bに送られた温度低下及び冷熱蓄積した第1熱搬送媒体は、利用側流量調節機構41a、41bにおいて流量調節されて、利用側熱交換器42a、42bに送られる。利用側熱交換器42a、42bに送られた温度低下及び冷熱蓄積した熱搬送媒体は、利用側熱交換器42a、42bにおいて、室内ファン45a、45bによって吸熱源として供給される室内空気と熱交換を行って吸熱する。これにより、室内空気は冷却され、その後に、室内に供給されることで冷房が行われる。このとき、第1熱搬送媒体においては、液媒体の温度上昇が発生し、第1電子相転移温度において第1電子相転移物質の相転移(冷熱放出)が発生する。利用側熱交換器42a、42bにおいて温度上昇及び冷熱放出した第1熱搬送媒体は、戻り側熱搬送媒体連絡管7を通じて、利用ユニット4a、4bから熱源ユニット2に送られ、再び、循環ポンプ29に吸入される。そして、循環ポンプ29から吐出された第1熱搬送媒体は、媒体切換機構37、第1熱搬送媒体タンク35及び第1媒体回収弁38を通じて、再び、媒体−冷媒熱交換器26に送られる。
このように、第1電子相転移物質の電子相転移による潜熱を利用して熱源側回路20から利用側回路40への冷熱の搬送が行われることで、空調としての冷房が行われる。
−暖房−
暖房時には、冷媒切換機構23が暖房サイクル状態(図8の破線で示される状態)に切り換えられる。また、媒体切換機構37が暖房サイクル状態(図8の実線で示される状態)に切り換えられ、第2媒体回収弁38が開状態にされ、第1媒体回収弁39が閉状態にされることで、第1熱搬送媒体が第1熱搬送媒体タンク35に隔離されるとともに、第2熱搬送媒体だけが利用側回路40を循環するようになっている。
熱源ユニット2に設けられた熱源側回路20において、冷凍サイクルの低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルの高圧になるまで昇圧された後に吐出される。圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、冷媒切換機構23を通じて、媒体−冷媒熱交換器26に送られる。媒体−冷媒熱交換器26に送られた高圧のガス冷媒は、媒体−冷媒熱交換器26において、循環ポンプ29によって利用側回路40を循環する第2熱搬送媒体と熱交換を行って放熱して、高圧の液冷媒になる。媒体−冷媒熱交換器26において放熱した高圧の液冷媒は、膨張機構25において冷凍サイクルの低圧まで減圧されて、低圧の気液二相状態の冷媒になる。膨張機構25において減圧された低圧の気液二相状態の冷媒は、熱源側熱交換器24に送られる。熱源側熱交換器24に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、熱源側熱交換器24において、室外ファン27によって加熱源として供給される室外空気と熱交換を行って蒸発して、低圧のガス冷媒になる。熱源側熱交換器24において、蒸発した低圧のガス冷媒は、冷媒切換機構23を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。
一方、熱搬送媒体連絡管6、7を介して熱源ユニット2及び利用ユニット4a、4bにまたがって設けられた利用側回路40において、第2熱搬送媒体は、上記のように、媒体−冷媒熱交換器26において、熱源側回路20を循環する冷媒の放熱によって吸熱する。このとき、第2熱搬送媒体においては、液媒体の温度上昇が発生し、第2電子相転移温度において第2電子相転移物質の相転移(温熱蓄積)が発生する。媒体−冷媒熱交換器26において温度上昇及び温熱蓄積した熱搬送媒体は、送り側熱搬送媒体連絡管6を通じて、熱源ユニット2から利用ユニット4a、4bに送られる。利用ユニット4a、4bに送られた温度上昇及び温熱蓄積した第2熱搬送媒体は、利用側流量調節機構41a、41bにおいて流量調節されて、利用側熱交換器42a、42bに送られる。利用側熱交換器42a、42bに送られた温度上昇及び温熱蓄積した第2熱搬送媒体は、利用側熱交換器42a、42bにおいて、室内ファン45a、45bによって放熱源として供給される室内空気と熱交換を行って放熱する。これにより、室内空気は加熱され、その後に、室内に供給されることで暖房が行われる。このとき、第2熱搬送媒体においては、液媒体の温度低下が発生し、第2電子相転移温度において第2電子相転移物質の相転移(温熱放出)が発生する。利用側熱交換器42a、42bにおいて温度低下及び温熱放出した第2熱搬送媒体は、戻り側熱搬送媒体連絡管7を通じて、利用ユニット4a、4bから熱源ユニット2に送られ、再び、循環ポンプ29に吸入される。そして、循環ポンプ29から吐出された第2熱搬送媒体は、媒体切換機構37、第2熱搬送媒体タンク36及び第2媒体回収弁39を通じて、再び、媒体−冷媒熱交換器26に送られる。
このように、第2電子相転移物質の電子相転移による潜熱を利用して熱源側回路20から利用側回路40への温熱の搬送が行われることで、空調としての暖房が行われる。
−冷暖房切換−
利用側回路40に第1熱搬送媒体だけが循環する冷房から利用側回路40に第2熱搬送媒体だけが循環する暖房に切り換える際には、第1熱搬送媒体を第1熱搬送媒体タンク35に回収する動作が必要になる。また、利用側回路40に第2熱搬送媒体だけが循環する暖房から利用側回路40に第1熱搬送媒体だけが循環する冷房に切り換える際には、第2熱搬送媒体を第2熱搬送媒体タンク36に回収する動作が必要になる。このような冷暖房切換は、以下のようにして行われる。
まず、冷房から暖房に切り換える際について、図8〜図11を用いて説明する。冷房中の空気調和装置201(図8参照)に対して、リモコン等によって暖房への切り換え指令がなされると、ステップST1において、第1熱搬送媒体タンク35に第1熱搬送媒体を回収する動作を行う(図10参照)。具体的には、冷房時に開状態にされていた第1媒体回収弁38を閉状態にする。これにより、利用側回路40を循環する第1熱搬送媒体が第1熱搬送媒体タンク35に回収され始める(図11参照)。このとき、圧縮機21を停止させて熱源側回路20に冷媒が循環しない状態にしている。そして、所定の回収時間が経過する等の回収終了条件を満たすと、ステップST2において、第1熱搬送媒体タンク35を隔離することで暖房切換の準備を行う(図10参照)。具体的には、循環ポンプ29を停止させることで第1熱搬送媒体の回収を終了し、媒体切換機構37を冷房サイクル状態から暖房サイクル状態に切り換える。これにより、第1熱搬送媒体を回収した第1熱搬送媒体タンク35が隔離され、暖房切換の準備がなされる。その後、冷房時に閉状態にされていた第2媒体回収弁39を開状態にするとともに循環ポンプ29を起動することで、利用側回路40に第2熱搬送媒体が循環する状態にし、そして、冷媒切換機構23を暖房サイクル状態に切り換えて圧縮機21を起動することで、熱源側回路20に冷媒が循環する状態にする(図9参照)。このようにして、冷房から暖房への切り換えが行われる。
次に、暖房から冷房に切り換える際について、図8〜図10及び図12を用いて説明する。暖房中の空気調和装置201(図9参照)に対して、リモコン等によって冷房への切り換え指令がなされると、ステップST3において、第2熱搬送媒体タンク36に第2熱搬送媒体を回収する動作を行う(図10を参照)。具体的には、暖房時に開状態にされていた第2媒体回収弁39を閉状態にする。これにより、利用側回路40を循環する第2熱搬送媒体が第2熱搬送媒体タンク36に回収され始める(図12を参照)。このとき、圧縮機21を停止させて熱源側回路20に冷媒が循環しない状態にしている。そして、所定の回収時間が経過する等の回収終了条件を満たすと、ステップST4において、第2熱搬送媒体タンク36を隔離することで冷房切換の準備を行う(図10参照)。具体的には、循環ポンプ29を停止させることで第2熱搬送媒体の回収を終了し、媒体切換機構37を暖房サイクル状態から冷房サイクル状態に切り換える。これにより、第2熱搬送媒体を回収した第2熱搬送媒体タンク36が隔離され、冷房切換の準備がなされる。その後、暖房時に閉状態にされていた第1媒体回収弁38を開状態にするとともに循環ポンプ29を起動することで、利用側回路40に第1熱搬送媒体が循環する状態にし、そして、冷媒切換機構23を冷房サイクル状態に切り換えて圧縮機21を起動することで、熱源側回路20に冷媒が循環する状態にする(図8参照)。このようにして、暖房から冷房への切り換えが行われる。
<特徴>
次に、空気調和装置201の特徴について説明する。
−A−
ここでは、第1実施形態の空気調和装置1と同様に、二次回路方式を採用するとともに、熱搬送媒体として電子相転移を行う物質である電子相転移物質を含むスラリーを使用している。
これにより、ここでは、圧力変化を吸収するための構成の追加による利用側回路40の複雑化を避けつつ、利用側回路40の熱搬送能力の向上を図ることができる。
−B−
また、ここでは、第1実施形態と同様に、空調として冷房及び暖房があり、冷房時には熱源側回路20から利用側回路40へ冷熱の搬送が行われ、暖房時には熱源側回路20から利用側回路40へ温熱の搬送が行われる。
これにより、ここでは、冷房及び暖房のいずれにおいても、利用側回路40の熱搬送能力の向上を図ることができる。
−C−
また、ここでは、上記のように、熱搬送媒体が、第1電子相転移物質を含む第1熱搬送媒体と、第2電子相転移物質を含む第2熱搬送媒体と、を有しており、そして、利用側回路が、冷房時に第1熱搬送媒体だけを循環させ、暖房時に第2熱搬送媒体だけを循環させることができるように構成されている。具体的には、利用側回路40が、暖房時に第1熱搬送媒体を回収する第1熱搬送媒体タンク35と、冷房時に第2熱搬送媒体を回収する第2熱搬送媒体タンク36と、を有している。すなわち、利用側回路40に熱搬送媒体を回収する2つのタンク35、36を設け、冷房時には、暖房用の第2熱搬送媒体を第2熱搬送媒体タンク36に回収した状態で、冷房用の第1熱搬送媒体だけを循環させ、暖房時には、冷房用の第1熱搬送媒体を第1熱搬送媒体タンク35に回収した状態で、暖房用の第2熱搬送媒体だけを循環させるようにしている。
このため、ここでは、熱搬送媒体を、第1電子相転移物質を含む第1熱搬送媒体と第2電子相転移物質を含む第2熱搬送媒体とに分けて、冷房時に第1熱搬送媒体だけを循環させ、暖房時に第2熱搬送媒体だけを循環させるようにしているため、冷房時には、冷房時に電子相転移を行わない第2電子相転移物質を循環させずに済むようになる。また、暖房時には、暖房時に電子相転移を行わない第1電子相転移物質を循環させずに済むようになる。
これにより、ここでは、第1電子相転移物質及び第2電子相転移物質の両方を混合して液媒体に混入させた熱搬送媒体を使用した第1実施形態の空気調和装置1に比べて、冷房及び暖房のいずれにおいても、熱搬送媒体の単位流量当たりの熱搬送能力を十分に向上させることができる。また、熱搬送媒体を循環させるための循環ポンプ29の動力の増大も抑えることができる。
<変形例>
上記の構成においては、循環ポンプ29を媒体切換機構37の上流側に配置することで第1熱搬送媒体及び第2熱搬送媒体の両方に共通に設けられた利用側回路40を採用している。しかし、循環ポンプを冷房用と暖房用とに分けて、冷房用の循環ポンプを媒体切換機構37と第1熱搬送媒体タンク35との間に配置し、暖房用の循環ポンプを媒体切換機構37と第2熱搬送媒体タンク36との間に配置してもよい。