JP6457880B2 - 空気入りタイヤの製造方法および空気入りタイヤ - Google Patents

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本発明は、一対のビード部と、ビード部の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部と、サイドウォール部の各々のタイヤ径方向外側端に連なって踏面を構成するトレッド部とを備えた未加硫の生タイヤを、金型内で加熱加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法、および該製造方法により製造された空気入りタイヤに関する。
ゴム製品である空気入りタイヤを製造する場合、その加硫工程はもっとも時間を要する工程となるため、加硫工程の時間短縮の努力が現在でも行われている。その一方で、加硫工程においてゴム部の加硫が不十分であると、ゴムの加硫反応により発生したエアが加硫ゴム内に残存し、かかる残存エアは製品段階でのタイヤ故障の原因となる場合がある。したがって、通常のタイヤ生産の現場では、季節要因などにより、例えば原料である未加硫の生タイヤの温度、金型内温度、雰囲気温度などがばらつく点を考慮し、加硫工程での全ばらつきを加味した安全時間(余裕時間)を加算して加硫工程に要する時間を設定している。
しかしながら、安全時間の設定はタイヤの生産性向上の観点からは好ましくなく、タイヤ毎に加硫終了時を決定し、効率良く加硫工程を実行することが望まれていた。
下記特許文献1には、加硫工程が進行している間に加硫試料のインピーダンスを測定し、加硫試料の高分子抵抗値Rpの増加速度が急激に緩慢になる時点を最適の加硫停止時間とする、加硫試料の実時間加硫調節方法が記載されている。しかしながら、この方法では、加硫試料に対するインピーダンス測定を、2個の電極の間に加硫試料を挟んで測定する必要があり、しかもタイヤは通常、複合材料の積層体であるため、この方法をタイヤ加硫時のタイヤに応用することは困難である。
特開2003−211459号公報
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイヤ毎に加硫工程の終了時点を確実に決定することにより、加硫時間を短縮し、生産性を著しく向上した空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち本発明は、一対のビード部と、前記ビード部の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部と、前記サイドウォール部の各々のタイヤ径方向外側端に連なって踏面を構成するトレッド部とを備えた未加硫の生タイヤを、金型内で加熱加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法であって、前記加硫工程が、前記生タイヤの加硫最遅部にひずみゲージを埋設する第1段階と、加硫中の前記生タイヤのひずみ量を前記ひずみゲージにより測定する第2段階と、得られた測定値に基づき、前記生タイヤのひずみ量と加硫時間との関係を示す加硫ひずみ曲線を求めることにより、前記加硫ひずみ曲線の勾配(dy/dx)を算出する第3段階とを少なくとも有し、前記加硫工程開始後に前記ひずみ量が極大値を経由して極小値となった後、(dy/dx)が±0.5以内となった時点で前記加硫工程を終了することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法、に関する。
本発明は、空気入りタイヤの加硫工程に特徴があり、第1〜第3段階を少なくとも有する。まず、一対のビード部と、ビード部の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部と、サイドウォール部の各々のタイヤ径方向外側端に連なって踏面を構成するトレッド部とを備えた未加硫の生タイヤの加硫最遅部に、ひずみゲージを埋設し(第1段階)、タイヤ加硫中、加硫最遅部におけるひずみ量をひずみゲージにより測定する(第2段階)。次いで、得られた測定値に基づき、生タイヤのひずみ量と加硫時間との関係を示す加硫ひずみ曲線を求めることにより、加硫ひずみ曲線の勾配(dy/dx)を算出する(第3段階)。そして、算出した加硫ひずみ曲線の勾配(dy/dx)は、加硫時間経過とともに、極大値を経由して極小値を示した後、加硫進行に伴いゼロに収束する傾向があるため、(dy/dx)が±0.5以内となった時点で加硫工程を終了する。これにより、空気入りタイヤの加硫工程において、容易に加硫終点を見極めることができる。その結果、余分な安全時間の設定が不要となり、空気入りタイヤの生産性を高めることができる。
上記空気入りタイヤの製造方法において、前記加硫最遅部が、前記トレッド部のショルダー部であることが好ましい。これにより、空気入りタイヤの加硫終点をより確実に見極めることが可能となり、空気入りタイヤの生産性をさらに高めることができる。
また、本発明は、前記記載の製造方法により製造された空気入りタイヤに関する。
本発明に係るタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図 タイヤの加硫に用いる金型を概念的に示す断面図 本発明の一実施形態における加硫ひずみ曲線を示すグラフの一例
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1に示した生タイヤ9は、一対のビード部1と、ビード部1の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、サイドウォール部2の各々のタイヤ径方向外側端に連なって踏面を構成するトレッド部3とを備えた空気入りタイヤである。ビード部1には、環状のビードコア1aが配されている。
カーカス層4は、トレッド部3からサイドウォール部2を経てビード部1に至り、その端部がビードコア1aを介して折り返されている。カーカス層4は、少なくとも一枚のカーカスプライによって構成される。カーカスプライは、タイヤ周方向に対して略90°の角度で延びるカーカスコードをトッピングゴムで被覆して形成されている。
ベルト層5は、トレッド部3でカーカス層4の外側に貼り合わされ、トレッドゴム6により外側から覆われている。ベルト層5は、複数枚(本実施形態では二枚)のベルトプライによって構成される。各ベルトプライは、タイヤ周方向に対して傾斜して延びるベルトコードをトッピングゴムで被覆して形成され、該ベルトコードがプライ間で互いに逆向きに交差するように積層されている。
トレッドゴム6は、1層のみで構成しても良く、タイヤ径方向内側のベーストレッドと、その外周側に位置するキャップトレッドとを有する、所謂キャップベース構造で構成しても良い。
図1に示した生タイヤ9は、未加硫状態の生タイヤであり、後述する加硫工程において、製品タイヤの形状にシェーピングされる(図2参照)とともに、そのトレッド表面には種々のトレッドパターンが形成される。
生タイヤ9の加硫成形では、図2に示すような金型10が用いられる。この金型10には、生タイヤ9が未加硫状態のままセットされ、その金型10内の生タイヤ9に加熱加圧を施すことで加硫工程が行われる。
金型10は、生タイヤ9の踏面に接するトレッド型部11と、下方を向いたタイヤ外面に接する下型部12と、上方を向いたタイヤ外面に接する上型部13とを備える。これらは、周囲に設置された開閉機構(不図示)によって、型締め状態と金型開放状態との間で変位自在に構成され、かかる開閉機構の構造は周知である。また、金型10には、電気ヒータや蒸気ジャケットなどの熱源を有するプラテン板(不図示)が設けられており、これによって各型部の加熱が行われる。
金型10の中心部には、タイヤと同軸状に中心機構14が設けられ、これの周囲にトレッド型部11、下型部12および上型部13が設置されている。中心機構14は、ゴム袋状のブラダー15と、タイヤ軸方向に延びるセンターポスト16とを有し、センターポスト16には、ブラダー15の端部を把持する上部クランプ17と下部クランプ18が設けられている。
中心機構14には、ブラダー15内への加熱媒体の供給を行うための媒体供給路21が上下に延設され、その媒体供給路21の上端に噴出し口22が形成されている。媒体供給路21には、加熱媒体供給源23から供給された加熱媒体や、加圧媒体供給源26から供給された加圧媒体が流れる供給配管24が接続されている。加熱媒体は、バルブ25の開閉操作に応じて供給され、加圧媒体は、バルブ28の開閉操作に応じて供給される。
また、中心機構14には、ブラダー15内の加熱媒体と加圧媒体とが混合された高温高圧流体を排出するための媒体排出路31が上下に延設され、その媒体排出路31の上端に回収口32が形成されている。媒体排出路31には、高温高圧流体が流れる排出配管34が接続され、その開閉を操作するブローバルブ33を排出配管34に設けている。ポンプ35は、媒体排出路31を通る高温高圧流体が媒体供給路21を経由してブラダー15の内部に再供給されるように、高温高圧流体を強制循環させる手法を用いても構わない。
以下、本発明の製造方法における加硫工程について具体的に説明する。
まず、図2のように金型10内に生タイヤ9をセットし、膨張させたブラダー15によって生タイヤ9を金型10の内面形状近くまでシェーピングする。これにより、生タイヤ9は、ブラダー15によって保持され、トレッド型部11、下型部12および上型部13の各々に宛がわれる。この時点で、生タイヤ9の加硫最遅部にひずみゲージを埋設する(第1段階)。加硫最遅部とは、タイヤの加硫が最も進行し難い部位を意味し、通常はトレッド部3のショルダー部を意味する。特にショルダー部の中でも、加硫後のトレッド部3の内表面の法線に沿って測定される、トレッド部3の厚みが最大になる位置を加硫最遅部とすることが好ましい。加硫最遅部は、ショルダー部以外に、例えばビード部1となるよう設計することも可能である。いずれにせよ、本発明においては、加硫最遅部におけるひずみ量を測定するため、ひずみゲージを生タイヤ9の加硫最遅部に埋設する。埋設方法としては、例えばひずみゲージを金型10のショルダー部に対応する位置に配設し、金型10に生タイヤ9が宛がわれる際、ひずみゲージが生タイヤ9内に押し込まれつつ埋設されるように設計することが考えられる。このように生タイヤ9内に埋設されたひずみゲージにより、加硫工程時にはひずみ量を測定し、加硫工程終了時には金型10からタイヤを脱型する際に加硫最遅部からひずみゲージを同時に抜き取れば良い。
続いて、金型10を加熱してタイヤ9をタイヤ外面側から加熱する外側加熱と、金型10内のブラダー15に高温の加熱媒体を供給してタイヤ9をタイヤ内面側から加熱する内側加熱とからなる加熱を行い、生タイヤ9の加硫を実行する。金型10は、上記の蒸気ジャケットなどにより予め加熱されていて、これにより外側加熱が行われる。内側加熱は、タイヤ9のシェーピング後に、媒体供給路21を通じてブラダー15内に加熱媒体を供給することで行われる。加熱媒体を所定時間供給した後、引き続いてブラダー15内に加圧媒体を供給し、タイヤ9を高圧で加圧する。加熱媒体としては、例えばスチームや高温水が使用され、加圧媒体としては、例えば窒素ガスなどの不活性ガスやスチームが使用される。この加硫中の生タイヤ9のひずみ量をひずみゲージにより測定する(第2段階)。後述のとおり、測定値は例えば横軸を加硫時間、縦軸をひずみ量としてプロットすることが可能で、タイヤ毎に容易に加硫状態を確認することができる。
得られた測定値に基づき、生タイヤ9のひずみ量と加硫時間との関係を示す加硫ひずみ曲線を求めることにより、加硫ひずみ曲線の勾配(dy/dx)を算出する(第3段階)。図3は横軸xを加硫時間(分)、縦軸yをひずみゲージで測定したひずみ量(μST)としたときの加硫ひずみ曲線Aを示す。なお、グラフ中、曲線Bはひずみ量測定時のタイヤ最遅部のタイヤ内部温度を示す。加硫ひずみ曲線Aは、初期段階、特に金型10の型締めが完了した時点(生タイヤ9が配置され、完全に金型10が閉じた時点)近辺で極大値を示す(グラフ中”ma”)。そして、加硫工程中、金型10およびブラダー15により加熱され、タイヤ最遅部のタイヤ内部温度が徐々に上昇することで加硫が進行するに伴い、タイヤ最遅部におけるひずみ量が徐々に低下し、極小値を示す(グラフ中”mi”)。
加硫工程開始後にひずみ量が極大値を経由して極小値となった後、算出した加硫ひずみ曲線の勾配(dy/dx)は加硫時間経過とともに(加硫進行に伴い)、ゼロに収束する傾向があるため、(dy/dx)が±0.5以内となった時点で加硫工程を終了することにより、容易に加硫終点を見極めることができる。その結果、余分な安全時間の設定が不要となり、空気入りタイヤの生産性を高めることができる。
加硫工程終了後は、金型10を解放状態としつつ、金型10内に配設したひずみゲージを加硫済タイヤから抜き取る。その結果、タイヤ毎に加硫終点を見極め、加硫時間を短縮しつつ空気入りタイヤを製造することができる。
なお、金型10の型締め完了時点までは、ひずみゲージで測定したひずみ量が不安定となり、ノイズに似た極大値および極小値が発生することがある。しかしながら、本発明においては、金型10の型締めが完了した時点近辺で示す極大値に着目し、この極大値の後に検出される極小値を検出後に、加硫ひずみ曲線の勾配(dy/dx)が±0.5となる時点を加硫工程の終点とするものとする。
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
実施例1、比較例1〜2
本発明の構成と効果を具体的に示すため、図2に記載の加硫金型10を用いて、サンプルタイヤ(タイヤサイズ:275/70R22.5)の加硫を実施した。その際、外部計測器に接続されたひずみゲージを金型10内であって、空気入りタイヤのショルダー部に対応する位置に配設した。空気入りタイヤのショルダー部を含むトレッド部には、当業者に公知のゴム配合のものを使用した。比較例1では、従来の製造方法に従い、加硫工程での全ばらつきを加味した安全時間を10分間設定して空気入りタイヤを製造した。比較例2では、加硫工程において前記第1〜第3段階を実施しつつも、ひずみ量が極小値を示した直後であって、(dy/dx)が0.7となった時点で加硫を終了した。一方、実施例1では、ひずみ量が極大値を経由して極小値となった後、(dy/dx)が±0.5以内となった時点で加硫工程を終了した。
比較例1の加硫時間を100としたときの加硫時間を表1に示す。指数が小さいほど、空気入りタイヤの生産性に優れることを意味する。また、比較例1〜2および実施例1で製造された空気入りタイヤの加硫最遅部を切断し、エアの有無を評価した。エアが残存する場合、加硫が不十分で製品不良に相当する。結果を表1に示す。
Figure 0006457880
表1の結果から、実施例1の空気入りタイヤは加硫時間が短縮されながらも、残存エアが無く、加硫が最適に行われていることが分かる。一方、比較例2の空気入りタイヤはタイヤ内にエアが残存するため、加硫が不十分であることが分かる。

Claims (2)

  1. 一対のビード部と、前記ビード部の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部と、前記サイドウォール部の各々のタイヤ径方向外側端に連なって踏面を構成するトレッド部とを備えた未加硫の生タイヤを、金型内で加熱加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法であって、
    前記加硫工程が、前記生タイヤの加硫最遅部にひずみゲージを埋設する第1段階と、加硫中の前記生タイヤのひずみ量を前記ひずみゲージにより測定する第2段階と、得られた測定値に基づき、前記生タイヤのひずみ量と加硫時間との関係を示す加硫ひずみ曲線を求めることにより、前記加硫ひずみ曲線の勾配(dy/dx)を算出する第3段階とを少なくとも有し、
    前記加硫工程開始後に前記ひずみ量が極大値を経由して極小値となった後、(dy/dx)が±0.5以内となった時点で前記加硫工程を終了することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
  2. 前記加硫最遅部が、前記トレッド部のショルダー部である請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
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