以下、車両制御装置の実施形態について説明する。
(1)第1実施形態
図1から図8を参照しながら、第1実施形態の車両1について説明する。
(1−1)車両1の構成
図1のブロック図を参照して、第1実施形態の車両1の構成について説明する。図1に示すように、車両1は、モータジェネレータ10と、車軸21と、車輪22と、電源31と、インバータ32と、「車両制御装置」の一具体例であるECU40と、車速センサ50とを備える。
モータジェネレータ10は、車両1が力行している場合には、電源31から出力される電力を用いて駆動することで、車軸21に動力(つまり、力行に必要な動力)を供給する電動機として機能する。車軸21に伝達された動力は、車輪22を介して車両1を走行させるための動力となる。
モータジェネレータ10は、車両1が回生している場合には、電源31を充電するための発電機として機能する。具体的には、モータジェネレータ10は、車両1の運動エネルギーを電力エネルギーに変換する回生を行う。回生によって生成された電力エネルギーによって、電源31が充電される。加えて、モータジェネレータ10が回生を行っている場合には、車軸21には、回生に起因したブレーキトルク(以降、適宜“回生トルク”)Tが付与される。その結果、車両1を減速させるようにモータジェネレータ10が実質的に生成した回生ブレーキ力が車両1に付与される。
尚、車両1は、2つ以上のモータジェネレータ10を備えていてもよい。更に、車両1は、モータジェネレータ10に加えて、エンジンを備えていてもよい。
電源31は、電力の入力(つまり、充電)及び電力の出力(つまり、放電)を行うことが可能である。電源31は、例えば、電池及びキャパシタのうちの少なくとも一方を含む。
インバータ32は、車両1が力行している場合には、電源31から出力される電力(直流電力)を交流電力に変換する。その後、インバータ32は、交流電力に変換した電力を、モータジェネレータ10に供給する。インバータ32は、車両1が回生している場合には、モータジェネレータ10が発電した電力(交流電力)を直流電力に変換する。その後、インバータ32は、直流電力に変換した電力を、電源31に供給する。
ECU40は、車両1の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットである。ECU40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを含む。本実施形態では特に、ECU40は、モータジェネレータ10によって行われる回生を制御する回生制御動作を行う。
回生制御動作を行うために、ECU40は、「取得手段」の一具体例である車速取得部41と、格納部42と、「制御手段」の一具体例であるトルク指令算出部43とを備える。尚、車速取得部41、格納部42及びトルク指令算出部43の夫々の詳細については、後に詳述する(図2等参照)。
車速センサ50は、車両1の車速Vを検出する。車速センサ50は、検出した車速Vを、ECU40に通知する。
(1−2)回生制御動作の流れ
続いて、図2のフローチャートを参照しながら、第1実施形態の回生制御動作の流れについて説明する。尚、図2に示す回生制御動作は、車両1の走行中にECU40によって所定周期で繰り返し行われる。
図2に示すように、ECU40は、車両1が減速を開始したか否かを判定する(ステップS11)。例えば、ECU40は、これまでブレーキペダルを踏んでいなかったドライバがブレーキペダルを新たに踏んだ場合には、車両1が減速を開始したと判定してもよい。例えば、ECU40は、これまでアクセルペダルを踏んでいたドライバがアクセルペダルから足を離した場合には、車両1が減速を開始したと判定してもよい。車両1の自動運転制御をECU40が行っている場合には、ECU40は、自動運転制御の制御態様に基づいて、車両1が減速を開始したか否かを判定してもよい。
車両1が減速を開始していないと判定される場合には(ステップS11:No)、ECU40は、回生制御動作を終了する。他方で、車両1が減速を開始したと判定される場合には(ステップS11:Yes)、車速取得部41は、車速センサ50が検出した最新の車速Vを取得する(ステップS12)。
その後、トルク指令算出部43は、ステップS12で取得した車速Vに基づいて、最適回生トルクToを算出する(ステップS13)。最適回生トルクToは、車両1に付与するべき回生トルクTの目標値であって、回生の効率の最適化を図ることが可能な回生トルクTに相当する。本実施形態では、トルク指令算出部43は、車速Vと最適回生トルクToとの対応関係を示すトルクマップを用いて、最適回生トルクToを算出する。トルクマップは、メモリを含む格納部42に格納されている。
ここで、図3のグラフを参照しながら、トルクマップについて説明する。図3に示すように、トルクマップは、ある車速Vに対応する最適回生トルクToを特定可能なマップ(図3に示す例では、グラフ、数式又は関数等)である。本実施形態では、トルクマップは、車速Vが高くなるほど最適回生トルクToが大きくなるという対応関係を示す。トルクマップは、車速Vが第1車速域にある場合の最適回生トルクToが、車速Vが第2車速域(但し、第2車速域は第1車速域よりも遅い車速域である)にある場合の最適回生トルクToよりも大きくなるという対応関係を示す。
その結果、本実施形態では、最適回生トルクToを決定付ける要因としては、ブレーキペダルの踏み込み量等よりも、車速Vが優先的に用いられる。逆に言えば、ブレーキペダルの踏み込み量が異なる場合であっても、車速Vが同一であれば最適回生トルクToは、原則として同一になる。
再び図2において、その後、トルク指令値算出部43は、ステップS13で算出した最適回生トルクToが車両1に付与されるように、モータジェネレータ10(より具体的には、モータジェネレータ10を制御するインバータ32)を制御する(ステップ14)。
本実施形態では、車速Vに応じて定まる最適回生トルクToが付与されるため、最適回生トルクToのみがブレーキトルクとして車両1に付与される場合には、車両1を減速させるために必要なブレーキトルクが不足する可能性がある。この場合には、ブレーキトルクの不足量は、液圧ブレーキ等の液圧トルク等で補償されてもよい。或いは、最適回生トルクToのみがブレーキトルクとして車両1に付与される場合であっても、ブレーキトルクに対して最適回生トルクToが過剰となる可能性もある。この場合には、最適回生トルクTo未満の回生トルクTが車両1に付与されてもよい。但し、車両1がモータジェネレータ10とは異なる他のモータジェネレータ及びエンジンのうちの少なくとも一方を備える場合には、ブレーキトルクの過剰量は、他のモータジェネレータ及びエンジンのうちの少なくとも一方の出力によって相殺されてもよい。
その後、ECU40は、ステップS12からステップS14までの動作を、車両1の減速が完了するまで繰り返し行う(ステップS15)。尚、ここで言う「減速の完了」とは、「車両1の停止」のみならず、「車速Vが所望の完了速度になるまでの減速」をも意味する。
続いて、図4のタイミングチャートを参照しながら、車両1の減速が完了するまで付与される最適回生トルクToの一具体例について説明する。
図4の1段目のグラフに示すように、時刻t31において車両1が減速を開始したと判定されたものとする。この場合、図4の1段目のグラフに示すように、車速Vは、減速によって時間の経過と共に徐々に低下していく。その結果、時刻t32において、車両1が停止する(つまり、車速Vが完了速度(=ゼロ)になる)ものとする。この場合、図4の2段目のグラフに示すように、時刻t31において最適回生トルクToの算出及び車両1への付与が開始される。更に、最適回生トルクToは、車速Vの減少に合わせて、時間の経過と共に徐々に小さくなっていく。その結果、最適回生トルクToの付与は、車両1が停止する時刻t32に終了する。
この場合、図4の3段目のグラフに示すように、車速Vの低下に伴って車両1の運動エネルギーが徐々に低下していく。この際、運動エネルギーの少なくとも一部は、回生によって回収される。例えば、時刻t31から時刻t32まで行われた回生によって、時刻t31の時点でE1であった車両1の運動エネルギーのうちの一部のエネルギー分E2(但し、E2<E1)が回収される。この場合、回生の効率は、E2/E1という数式によって特定される値である。本実施形態では、E2/E1という数式によって特定される回生の効率の最適化を図る(具体的には、回生の効率を最大にする)ことが可能な最適回生トルクToが付与される。このため、最適回生トルクToとは異なる回生トルクTが付与される場合と比較して、ECU40は、効率良く回生を行うように車両1を制御することができる。従って、ECU40は、車両1が下り坂を下った後に上り坂を上がることになるという限られた状況とは異なる状況下で回生によって車両1が減速している場合においても、効率良く回生を行うように車両1を制御することができる。
ここで、図5から図8を参照しながら、図3に示すトルクマップを用いて算出される最適回生トルクToによって回生の効率の最適化を図ることができる理由について説明する。
図5(a)及び図5(b)は、夫々、車両1の走行に関連して生ずる損失(以降、“走行損失”と称する)を示す。走行損失は、車両1の空気抵抗による損失や、車輪22の転がり抵抗による損失や、車両1が走行する走行路の勾配抵抗による損失等を含む。図5(a)に示すように、走行損失は、車速Vが高くなるほど大きくなる。更に、走行損失は、車両1に付与される回生トルクTに依存して変動することはない。従って、図5(b)に示すように、ある2つの車速V51及びV52(V52<V51)に着目すると、車速VがV51となる場合の走行損失は、車速VがV52となる場合の走行損失よりも大きくなる。これは、空気抵抗による損失が車速Vの二乗に比例し、その結果、車速Vが高くなるほど走行損失が急激に大きくなっていくからである。
走行損失が相対的に大きい場合には、走行損失が相対的に小さい場合と比較して、車両1の運動エネルギーがより一層減少しやすい。従って、走行損失が大きくなるほど、車両1の運動エネルギーのうち回生によって回収可能なエネルギー量が小さくなってしまう。つまり、走行損失が大きくなるほど、回生の効率がより一層悪化する。このため、効率良い回生を行うためには、走行損失によって減少してしまう車両1の運動エネルギーを回生によってより多く且つより早く回収することが好ましい。ここで、回生トルクTが大きくなるほど、車両1の運動エネルギーを回生によってより多く且つより早く回収することができる。このため、走行損失による回生の効率の悪化を抑制するためには、回生トルクTをできるだけ大きくすることで、車両の運動エネルギーを相対的に早く且つ多く回収することが好ましいと言える。
一方で、図6(a)及び図6(b)は、回生に関連して生ずる損失(以降、“回生損失”と称する)を示す。回生損失は、モータジェネレータ10での電力変換に起因したモータ損失や、インバータ32での電力変換に起因したインバータ損失や、電源31での電力の入出力に起因した電源損失等を含む。図6(a)に示すように、回生損失は、車速Vが高くなるほど大きくなる。更に、回生損失は、車両1に付与される回生トルクTが大きくなるほど大きくなる。従って、図6(b)に示すように、ある2つの車速V61及びV62(V62<V61)に着目すると、同一の回生トルクTが付与されている状況下において、車速VがV61となる場合の回生損失は、車速VがV62となる場合の回生損失よりも大きくなる。これは、車速Vが高くなるほど車両1を減速させるために車両1に付与するべき回生トルクTが大きくなると共に、回生トルクTが大きくなるほど電源31、インバータ32及びモータジェネレータ10を流れる電流が大きくなるがゆえに当該電流の二乗に比例する回生損失が大きくなるからである。
ここで、回生トルクTをできるだけ大きくすることで、走行損失に起因した回生の効率の悪化を抑制可能なことは上述したとおりである。しかしながら、回生トルクTが大きくなるほど回生損失が大きくなることを考慮すれば、回生トルクTが相対的に大きなトルク値に常に固定されることが必ずしも好ましいとは限らない。そこで、本実施形態では、このような車速Vに依存して変動する走行損失及び回生損失の双方をバランスよく考慮して、回生の効率の最適化が図られる。具体的には、車速Vが相対的に高い場合には、回生損失も相対的に大きいものの、回生損失による回生の効率の悪化の影響以上に、走行損失による回生の効率の悪化の影響が大きい。従って、車速Vが相対的に高い場合には、車速Vが相対的に低い場合と比較して、回生損失による回生の効率の悪化の影響よりも走行損失による回生の効率の悪化の影響を優先的に抑制した方が、回生の効率の改善効果が高い。このため、車速Vが相対的に高い場合には、車速Vが相対的に低い場合と比較して、走行損失による回生の効率の悪化の影響を抑制するべく、回生トルクTが大きくなることが好ましい。一方で、車速Vが相対的に低い場合には、車速Vが相対的に高い場合と比較して、走行損失による回生の効率の悪化の影響がそれほど大きくなることはない。このため、車速Vが相対的に低い場合には、車速Vが相対的に高い場合と比較して、走行損失による回生の効率の悪化の影響よりも回生損失による回生の効率の悪化の影響を優先的に抑制した方が、回生の効率の改善効果が高い。このため、車速Vが相対的に低い場合には、車速Vが相対的に高い場合と比較して、回生損失による回生の効率の悪化の影響を抑制するべく、回生トルクTが小さくなることが好ましい。
その結果、回生の効率の最適化を図るためには、車速Vが高くなるほど回生トルクTが大きくなる(つまり、車速Vが低くなるほど回生トルクTが小さくなる)ことが好ましいことが分かる。以上の説明から、ECU40が、図3に示すトルクマップを用いて算出される最適回生トルクToによって回生の効率の最適化を図ることができることが分かる。
以上説明した回生の効率の最適化を図ることができる理由は、回生の効率を示す数式を用いた定量的な観点からも裏付け可能である。具体的には、図7に示すように、車両1に付与されるブレーキ力は、ある回生トルクTを付与する理想的なモータジェネレータ10が付与するブレーキ力D(=車速V×回生トルクT)に対して、走行損失に相当するブレーキ力Aを加算した値となる(尚、ここでは、説明の便宜上、液圧トルク等は無視する)。但し、上述した回生損失が現実には発生することを考慮すると、回生トルクTを付与する実際のモータジェネレータ10が付与するブレーキ力Cは、理想的なモータジェネレータ10が付与するブレーキ力Dから回生損失に相当するブレーキ力B(=β×T2、但し、βは所定の係数)を減算した値となる。つまり、実際のモータジェネレータ10が付与するブレーキ力Cは、C=V×T−β×T2という数式によって特定可能である。
車両1に付与されるブレーキ力は、車両1を減速させる(つまり、車両1の運動エネルギーを減らす)ために用いられる。実際のモータジェネレータ10が付与するブレーキ力Cは、車両1を減速させると共に回生に用いられる。従って、回生の効率は、車両1に付与されるブレーキ力に対する実際のモータジェネレータ10が付与するブレーキ力Cの比率から特定可能である。つまり、回生の効率Rは、R=C/(A+B+C)=(V×T−β×T2)/(V×T+A)という数式にて特定可能である。この数式を縦軸が効率Rを示し且つ横軸が回生トルクTを示すグラフ上でプロットすると、図8に示すように、当該数式は、ある回生トルクT(=最適回生トルクTo)において効率Rが最大となるグラフを示すことがわかる。尚、図8は、ある2つの車速V81及びV82(V82<V81)に対応するグラフを示す。そこで、この数式を回生トルクTについて微分すると共に、効率Rが最大となる(つまり、微分値がゼロとなる)回生トルクT(つまり、最適回生トルクTo)を求めると、To=K×(−A/V+((A2/V2)+A/β)1/2)という解が得られる(但し、Kは、所定の係数)。この解によって特定される最適回生トルクToは、車速Vが高くなるほど最適回生トルクToが大きくなることを示している。従って、定量的な観点から見ても、ECU40は、図3に示すトルクマップを用いて算出される最適回生トルクToによって回生の効率の最適化を図ることができることが分かる。
尚、上述したトルクマップは、図5(a)から図8に示した走行損失や回生損失等を考慮した上で、回生の効率化を図ることができるという観点から予め定められていることが好ましい。
(2)第2実施形態
続いて、図9から図11を参照しながら、第2実施形態の車両2について説明する。尚、第1実施形態の車両1と同一の構成(更には、動作)については、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。以下の第3実施形態以降についても同様である。
図9に示すように、車両2は、車両1と比較して、ECU40aがマップ補正部44aを更に備えているという点において異なっている。ECU40aは、図10に示す回生制御動作を行う。
具体的には、図10に示すように、第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、ECU40aは、車両1が減速を開始したか否かを判定し、車速センサ50が検出した最新の車速Vを取得し、最適回生トルクToを算出する(ステップS11からステップS13)。
その後、マップ補正部44aは、車両1がこの先走行するべき経路上の所望の目標位置に車両1が到達した時点での車速Vの目標値(以降、“目標車速”と称する)を取得する(ステップS21)。マップ補正部44aは、目標車速を特定可能な情報に基づいて、目標車速を取得してもよい。目標車速を特定可能な情報として、車両1のナビゲーションを行うためのナビ情報、ITS(Intelligent Transport Systems)に関連するITS情報及び他の車両との通信によって送受信される通信情報のうちの少なくとも一つに基づいて取得してもよい。ナビ情報は、例えば、車両1が走行するべき経路、信号の位置、一時停止が必要な位置、右折が必要な位置、左折が必要な位置、急カーブの位置、高速道路のインターチェンジの位置及び高速道路の料金所の位置等のうちの少なくとも一つを示す情報を含む。ITS情報は、ある位置に存在する信号の状態及び当該信号が赤信号になるタイミング等のうちの少なくとも一つを示す情報を含む。通信情報は、先行車両がブレーキをかけているか否かを示す情報及び先行車両との間の距離を示す情報等のうちの少なくとも一つを含む。これらの情報は、いずれも、ある特定の位置で車両1が停止又は減速する可能性があることを示唆する情報である。従って、目標車速を特定可能な情報は、ある特定の位置で車両1が停止又は減速する可能性があることを示唆する情報を含んでいてもよい。
例えば、車両1の経路上の第1位置に第1信号があることをナビ情報が示しており且つ車両1が第1位置に到達した時点で第1信号が赤になることをITS情報が示している場合には、車両1は、第1位置において停止する可能性が高い。この場合、マップ補正部44aは、目標位置を第1位置に設定し且つ目標車速をゼロに設定してもよい。
更に、マップ補正部44aは、ステップS13で算出した最適回生トルクToが付与された車両1が目標位置に到達した時点での車速Vを予測する(ステップS22)。尚、予測した車速Vを、以降“予測車速”と称する。
その後、マップ補正部44aは、予測車速が目標車速よりも高いか否か(ステップS23)及び予測車速が目標車速よりも低いか否かを判定する(ステップS24)。
予測車速が目標車速よりも高いと判定される場合には(ステップS23:Yes)、車両1が目標車速で目標位置に到達するためには、車両1の減速度をより大きくすることが好ましいと想定される。このため、予測車速が目標車速よりも高いと判定される場合には、予測車速が目標車速よりも高いと判定されない場合と比較して、マップ補正部44aは、各車速Vに対応する最適回生トルクToが増加するようにトルクマップを補正する。更に、上述したように、車速Vが高くなるほど走行損失が大きくなるがゆえに車速Vが高くなるほど最適回生トルクToが大きくなることを考慮すれば、車速Vが高くなるほど最適回生トルクToの増加量が大きくなるようにトルクマップが補正されれば、走行損失による回生の効率の悪化の影響がより効率的に抑制可能である。このため、マップ補正部44aは、車速Vが高くなるほど最適回生トルクToの増加量が大きくなるようにトルクマップを補正する。その結果、マップ補正部44aは、例えば、図11(a)に示すように、点線によって示されるデフォルトのトルクマップ(つまり、予測車速が目標車速よりも高いと判定されない場合に用いられるトルクマップ)を、実線で示す補正後のトルクマップに補正する。
予測車速が目標車速よりも低いと判定される場合には(ステップS23:No且つステップS24:Yes)、車両1が目標車速で目標位置に到達するためには、車両1の減速度をより小さくすることが好ましいと想定される。このため、予測車速が目標車速よりも低いと判定される場合には、予測車速が目標車速よりも低いと判定されない場合と比較して、マップ補正部44aは、各車速Vに対応する最適回生トルクToが減少するようにトルクマップを補正する。更に、上述したように、車速Vが低くなるほど走行損失による回生の効率の悪化の影響が小さくなり且つ回生トルクが小さくなるほど走行損失及び回生損失が小さくなることを考慮すれば、車速Vが低くなるほど最適回生トルクToの減少量が大きくなるようにトルクマップが補正されれば、走行損失及び走行損失による回生の効率の悪化の影響がより効率的に抑制可能である。このため、マップ補正部44aは、車速Vが低くなるほど最適回生トルクToの減少量が大きくなるようにトルクマップを補正する。その結果、マップ補正部44aは、例えば、図11(b)に示すように、点線によって示されるデフォルトのトルクマップ(つまり、予測車速が目標車速よりも低いと判定されない場合に用いられるトルクマップ)を、実線で示す補正後のトルクマップに補正する。
予測車速が目標車速と同一であると判定される場合には(ステップS23:No且つステップS24:No)、マップ補正部44aは、トルクマップを補正しなくてもよい。
その後、トルク指令値算出部43は、ステップS25又はS26で補正されたトルクマップ(或いは、ステップS25又はS26でトルクマップが補正されていない場合には、デフォルトのトルクマップ)を用いて、最適回生トルクToを算出する(ステップS27)。その後、トルク指令値算出部43は、ステップS27で算出した最適回生トルクToが車両1に付与されるように、モータジェネレータ10を制御する(ステップ14)。
第2実施形態のECU40aもまた、第1実施形態のECU40が享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。更に、第2実施形態のECU40aは、車両1が目標位置に目標車速で到達するという走行条件を満たしながらも効率良く回生を行うように車両1を制御することができる。
尚、上述の説明では、予測車速が目標車速よりも低いと判定される場合には、各車速Vに対応する最適回生トルクToが減少すると共に車速Vが低くなるほど最適回生トルクToの減少量が大きくなるようにトルクマップが補正される。しかしながら、図11(c)に示すように、マップ補正部44aは、ある車速V111以上の車速域のトルクマップを補正せず、ある車速V112(但し、V112<V111)以上且つある車速V111未満の車速域において車速Vが低くなるほど最適回生トルクToが小さくなり、ある車速V112未満の車速域において最適回生トルクToがゼロとなるように、トルクマップを補正してもよい。この場合には、車速Vが相対的に高い場合には車両1が回生によって減速するものの、車速Vが相対的に低い場合には車両1が惰性で走行することになる。従って、車両1が赤信号に近づく状況下で減速しているがゆえに近いうちに加速をすることが予測される状況において、回生による運動エネルギーの回収量をある程度確保しつつ、次の加速に備えて速度Vの過度な低下を抑制することができる。
また、予測車速が目標車速よりも高くなる状況は、目標位置に到達するまでに車両1が走行するべき走行距離(残りの走行距離)が短くなるほど発生しやすい。なぜならば、残りの走行距離が短くなるほど、回生によって車両1が減速する期間が短くなり、結果として、予測車速が高くなる可能性が高いからである。同様に、予測車速が目標車速よりも低くなる状況は、残りの走行距離が長くなるほど発生しやすい。なぜならば、残りの走行距離が長くなるほど、回生によって車両1が減速する期間が長くなり、結果として、予測車速が低くなる可能性が高いからである。従って、マップ補正部44aは、予測車速が目標車速よりも高くなるか否か及び予測車速が目標車速よりも低くなるか否かの判定結果に代えて、残り走行距離に基づいて、トルクマップを補正してもよい。例えば、残り走行距離が所定閾値よりも短い場合には、マップ補正部44aは、予測車速が目標車速よりも高くなると判定される場合と同様の態様でトルクマップを補正してもよい。例えば、残り走行距離が所定閾値よりも長い場合には、マップ補正部44aは、予測車速が目標車速よりも低くなると判定される場合と同様の態様でトルクマップを補正してもよい。
(3)第3実施形態
続いて、図12から図13を参照しながら、第3実施形態の車両3について説明する。図12に示すように、車両3は、車両1と比較して、ECU40bが走行距離算出部45b及びマップ選択部46bを備えているという点において異なっている。更に、車両3は、車両1と比較して、格納部42が複数のトルクマップを備えているという点において異なっている。ECU40bは、図13に示す回生制御動作を行う。
具体的には、図13に示すように、第3実施形態でも、第1実施形態と同様に、ECU40bは、車両1が減速を開始したか否かを判定し、車速センサ50が検出した最新の車速Vを取得する(ステップS11からステップS12)。
その後、走行距離算出部45bは、目標位置に到達するまでに車両1が走行するべき走行距離(残りの走行距離)を算出する(ステップS31)。その後、マップ選択部46bは、走行距離算出部45bが算出した残りの走行距離に基づいて、格納部42が格納する複数のトルクマップから最適回生トルクToを算出するために参照するべき一のトルクマップを選択する(ステップS32)。
第3実施形態では、格納部42は、複数のトルクマップとして、残りの走行距離が第A(1)距離未満となる場合に最適回生トルクToを算出するために参照するべき第1トルクマップと、残りの走行距離が第A(1)距離以上且つ第A(2)距離(但し、第A(2)距離>第A(1)距離)未満となる場合に最適回生トルクToを算出するために参照するべき第2トルクマップと、・・・、残りの走行距離が第A(i−1)距離以上且つ第A(i)距離(但し、第A(i)距離>第A(i−1)距離であり、iは、2以上の整数)未満となる場合に最適回生トルクToを算出するために参照するべき第iトルクマップと、残りの走行距離が第A(i)距離以上となる場合に最適回生トルクToを算出するために参照するべき第i+1トルクマップとを格納する。従って、マップ選択部46bは、走行距離算出部45bが算出した残りの走行距離に応じて、一のトルクマップを選択することができる。
各トルクマップは、回生中の車両1が各トルクマップに対応する残りの走行距離を走行する場合における回生の効率の最適化を図ることが可能な最適回生トルクToを、車速Vに対応付けて示す。例えば、複数のトルクマップは、第2実施形態におけるデフォルトのトルクマップ#1(例えば、図11(a)の点線のトルクマップ)と、当該デフォルトのトルクマップを各車速Vに対応する最適回生トルクToが増加するように補正することで得られるトルクマップ#2(例えば、図11(a)の実線のトルクマップ)と、当該デフォルトのトルクマップを各車速Vに対応する最適回生トルクToが減少するように補正することで得られるトルクマップ#3(例えば、図11(b)の実線のトルクマップ)とを含んでいてもよい。この場合、例えば、残り走行距離が第1閾値未満である場合には、マップ選択部46bは、トルクマップ#2を選択してもよい。例えば、残り走行距離が第1閾値以上且つ第2閾値(但し、第2閾値>第1閾値)未満である場合には、マップ選択部46bは、トルクマップ#1を選択してもよい。例えば、残り走行距離が第2閾値以上である場合には、マップ選択部46bは、トルクマップ#3を選択してもよい。
その後、トルク指令値算出部43は、ステップS32で選択されたトルクマップを用いて、最適回生トルクToを算出する(ステップS13)。その後、トルク指令値算出部43は、ステップS13で算出した最適回生トルクToが車両1に付与されるように、モータジェネレータ10を制御する(ステップ14)。
第3実施形態のECU40bもまた、第1実施形態のECU40が享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。更に、第3実施形態のECU40bは、第2実施形態のECU40aが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。というのも、第2実施形態における残り走行距離に基づくトルクマップの補正は、第3実施形態における残り走行距離に基づくトルクマップの選択(例えば、図11(a)及び図11(b)に示す2つのトルクマップからの一のトルクマップの選択)と等価であるからである。
(4)第4実施形態
続いて、図14から図15を参照しながら、第4実施形態の車両4について説明する。図14に示すように、車両4は、車両1と比較して、ECU40cが走行距離算出部45b、プロファイル選択部47c及び速度差算出部48cを備えているという点において異なっている。更に、車両4は、車両1と比較して、格納部42がトルクマップに代えて、複数の減速プロファイル(複数の車速マップ)を備えているという点において異なっている。ECU40cは、図15に示す回生制御動作を行う。
具体的には、図15に示すように、第4実施形態でも、第3実施形態と同様に、ECU40cは、車両1が減速を開始したか否かを判定し、車速センサ50が検出した最新の車速Vを取得し、目標位置に到達するまでに車両1が走行するべき走行距離(残りの走行距離)を算出する(ステップS11からステップS31)。
その後、プロファイル選択部47cは、走行距離算出部45bが算出した残りの走行距離に基づいて、格納部42が格納する複数の減速プロファイルから一の減速プロファイルを選択する(ステップS41)。
各減速プロファイルは、回生の効率の最適化を図りながら回生中の車両1を減速させることが可能な車速Vのプロファイル(推移)を規定する。従って、車両1は、ECU40cの制御下で、減速プロファイルが規定する車速Vで減速しながら回生する。特に、第4実施形態では、格納部42は、複数の減速プロファイルとして、第B(1)距離未満となる残りの走行距離を走行する車両1が回生によって減速する場合に回生の効率の最適化を図ることが可能な第1減速プロファイルと、第B(1)距離以上且つ第B(2)距離(但し、第B(2)距離>第B(1)距離)未満となる残りの走行距離を走行する車両1が回生によって減速する場合に回生の効率の最適化を図ることが可能な第2減速プロファイルと、・・・、第B(j−1)距離以上且つ第B(j)距離(但し、第B(j)距離>第B(j−1)距離であり、jは、2以上の整数)未満となる残りの走行距離を走行する車両1が回生によって減速する場合に回生の効率の最適化を図ることが可能な第j減速プロファイルと、第B(j)距離以上となる残りの走行距離を走行する車両1が回生によって減速する場合に回生の効率の最適化を図ることが可能な第j+1減速プロファイルとを格納する。従って、プロファイル選択部47cは、走行距離算出部45bが算出した残りの走行距離に応じて、一の減速プロファイルを選択することができる。
その後、速度算出部48cは、ステップS12で検出された車速VとステップS41で選択された減速プロファイルが規定する車速Vとの速度差を算出する(ステップS42)。つまり、速度算出部48cは、現在の実際の車速Vと減速プロファイルが規定する現在の理想的な車速Vとの速度差を算出する。
その後、トルク指令値算出部43は、ステップS42で算出された速度差がゼロになるように車両1に付与するべき回生トルクTを、最適回生トルクToとして算出する(ステップS42)。尚、回生トルクTを算出する動作は、速度差をゼロにするためのフィードバック制御に相当する。従って、トルク指令値算出部43は、PI演算等を用いて、回生トルクTを算出してもよい。その後、トルク指令値算出部43は、ステップS42で算出した最適回生トルクToが車両1に付与されるように、モータジェネレータ10を制御する(ステップ14)。その結果、車両1は、ステップS41で選択された減速プロファイルが規定する車速Vで減速しながら回生する。
第4実施形態のECU40cもまた、第1実施形態のECU40が享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。更に、第4実施形態のECU40cは、第3実施形態のECU40bが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。なぜならば、まず、最適回生トルクTo、現在の車速V及び残りの走行距離が判明していれば、車両1の減速の態様が演算等により算出可能である。このため、トルクマップが残りの走行距離に応じて選択可能であり且つ最適回生トルクToを示していることを考慮すれば、トルクマップは、実質的には、最適回生トルクToが車両1に付与された場合の車両1の減速の態様(例えば、減速中の車速Vの推移)を示しているとも言える。そうすると、第3実施形態における残り走行距離に基づくトルクマップの選択は、第4実施形態における残り走行距離に基づく減速プロファイルの選択と等価であるからである。
(5)第5実施形態
続いて、図16から図18を参照しながら、第5実施形態の車両5について説明する。図14に示すように、車両5は、車両1と比較して、ECU40dが表示制御部49dを備えているという点において異なっている。更に、車両5は、車両1と比較して、ディスプレイ60を備えているという点において異なっている。ECU40dは、図17に示す回生制御動作を行う。
具体的には、図17に示すように、第5実施形態でも、第1実施形態と同様に、ECU40dは、車両1が減速を開始したか否かを判定し、車速センサ50が検出した最新の車速Vを取得し、最適回生トルクToを算出する(ステップS11からステップS13)。
その後、表示制御部49dは、ステップS13で算出された最適回生トルクToを付与可能なブレーキ操作等をドライバに行わせるための指示画面を表示するように、ディスプレイ60を制御する(ステップS51)。その結果、ドライバのブレーキ操作等に起因して、最適回生トルクToが車両1に付与される。一方で、第5実施形態では、トルク指令算出部43は、最適回生トルクToが車両1に付与されるように、モータジェネレータ10を制御しなくてもよい。
指示画面は、例えば、図18に示すように、各車速Vに最適なブレーキ力(つまり、最適回生トルクToに応じたブレーキ力)を示すブレーキプロファイル上で、現在のブレーキ力を表示してもよい。指示画面は更に、過去のブレーキ力の推移を表示してもよい。図18に示す例では、現在のブレーキ力が最適なブレーキ力に対して不足している。従って、ドライバは、図18に示す指示画面を参照することで、ブレーキペダルを更に踏み込むブレーキ操作等を行う。その結果、最適なブレーキ力が車両1に付与され、回生の効率の最適化が図られる。
第5実施形態のECU40dもまた、第1実施形態のECU40が享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。更に、第5実施形態では、最適回生トルクToを付与可能なブレーキ操作等をドライバに行わせるための指示画面が表示される。従って、ドライバは、あくまでドライバ自身のブレーキ操作等で、回生の効率の最適化を図るように車両1を減速させることができる。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。