以下に、本願発明を画像形成装置の一例であるタンデム型カラーデジタルプリンター(以下、プリンターと称する)に適用した実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明で必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば「左右」「上下」等)を用いる場合は、図1において紙面に直交した方向を正面視とし、この方向を基準にしている。これらの用語は説明の便宜のために用いたものであり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。
(1).プリンターの概要
まず始めに、図1を参照しながら、プリンター1の概要を説明する。図1に示すように、実施形態のプリンター1は、その筺体2内に、大別して画像プロセス装置3、給紙装置4、及び定着装置5等を備えている。詳細は図示していないが、プリンター1は、例えばLANといったネットワークに接続されていて、外部端末(図示省略)からの印刷指令を受け付けると、当該指令に基づいて印刷を実行するように構成されている。
筺体2内の中央部に位置する画像プロセス装置3は、像坦持体の一例である感光体13上に形成されたトナー像を記録材Pに転写する役割を担うものであり、中間転写ベルト6、及びイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色に対応する計4つの作像部7等を備えている。なお、図1では説明の便宜上、各作像部7に、再現色に応じて符号Y,M,C,Kを添えている。
中間転写ベルト6は、導電性を有する素材からなる無端状のものであり、筺体2内の中央部右側に位置する駆動ローラー8と、同じく中央部左側に位置する従動ローラー9とに巻き掛けられている。この場合、駆動モーター(図示省略)からの動力伝達にて、駆動ローラー8を図1の反時計方向に回転駆動させることにより、中間転写ベルト6は図1の反時計方向に回転する。
中間転写ベルト6のうち駆動ローラー8に巻き掛けられた部分の外周側には、二次転写ローラー10が配置されている。二次転写ローラー10は、中間転写ベルト6に当接していて、中間転写ベルト6と二次転写ローラー10との間(当接部分)が二次転写領域である二次転写ニップ部11になっている。二次転写ローラー10は、中間転写ベルト6の回転に伴って、又は二次転写ニップ部11に挟持搬送される記録材Pの移動に伴って図1の時計方向に回転する。
中間転写ベルト6のうち従動ローラー9に巻き掛けられた部分の外周側には、転写ベルトクリーナー12が配置されている。転写ベルトクリーナー12は、中間転写ベルト6上に残留する未転写トナーを除去するためのものであり、中間転写ベルト6に当接している。
4つの作像部7は、中間転写ベルト6の下方において、図1の左からイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に、中間転写ベルト6に沿って並べて配置されている。各作像部7は、図1の時計方向に回転駆動する像坦持体の一例としての感光体13を備えている。感光体13の周囲には、図1における時計回りの回転方向に沿って順に、帯電器14、現像部15、一次転写ローラー16、及び感光体クリーナー17が配置されている。
感光体13は負帯電性のものであり、感光体モーター(図示省略)からの動力伝達にて、図1の時計方向に回転駆動するように構成されている。帯電器14はローラー帯電式のものであり、当該帯電器14には、帯電用電源(図示省略)から所定のタイミングにて感光体帯電のための電圧が印加される。現像部15は、負の極性を呈するトナーを利用して、感光体13上に形成された静電潜像を反転現像にて顕在化させるものである。
一次転写ローラー16は中間転写ベルト6の内周側に位置していて、中間転写ベルト6を挟んで、対応する作像部7の感光体13に対峙している。一次転写ローラー16も、中間転写ベルト6の回転に伴って図1の反時計方向に回転する。中間転写ベルト6と一次転写ローラー16との間(当接部分)は、一次転写領域である一次転写ニップ部18になっている。感光体クリーナー17は、感光体13上に残留する未転写トナーを除去するためのものであり、感光体13に当接している。
4つの作像部7の下方には露光部19が配置されている。露光部19は、外部端末等からの画像情報に基づき、レーザービームにて各感光体13に静電潜像を形成するものである。
中間転写ベルト6の上方には、各現像部15に供給されるトナーを収容するホッパー20が配置されている。なお、図1では説明の便宜上、各ホッパー20にも、再現色に応じて符号Y,M,C,Kを添えている。
画像プロセス装置3の下方に位置する給紙装置4は、記録材Pを収容する複数段(実施形態では2段)の給紙カセット21,22、給紙カセット21,22内の記録材Pを1枚ずつ繰り出す繰り出しローラー23,24、及び繰り出された記録材Pを所定のタイミングにて二次転写ニップ部11(二次転写領域)に搬送する一対のレジストローラー25等を備えている。
各給紙カセット21,22は筺体2の下部に着脱可能に配置されている。各給紙カセット21,22内の記録材Pは、対応する繰り出しローラー23,24の回転にて、最上部のものから1枚ずつ搬送経路30に送り出される。
実施形態のプリンター1はいわゆるA3対応機であり、各給紙カセット21,22には、最大でA3サイズの記録材Pを、定着装置5に短辺側から進入する縦送りの姿勢で収容することが可能である。この場合、A3縦の記録材Pの通紙幅(記録材Pの搬送方向Yに直交する方向の記録材P寸法)は297mm、搬送方向長さは420mmとなる。
実施形態の給紙装置4は、A4サイズ以下の同一サイズの記録材Pを縦送り及び横送り可能に収容できる構成である。この場合、上段の給紙カセット21には、A4サイズの記録材Pが、定着装置5に短辺側から進入する縦送りの姿勢で収容されている一方、下段の給紙カセット22には、A4サイズの記録材Pが、定着装置5に長辺側から進入する横送りの姿勢で収容されている。
従って、上段の給紙カセット21からA4縦の記録材Pを繰り出すか、下段の給紙カセットからA4横の記録材Pを繰り出すかによって、給紙装置4からA4サイズの記録材Pを縦送りしたり横送りしたりできる。換言すると、給紙装置4から向きの異なるA4サイズの記録材Pを給紙できる。
なお、A4縦の記録材Pの通紙幅は210mm、搬送方向長さは297mmとなり、A4横の記録材Pの通紙幅は297mm、搬送方向長さは210mmとなる。言うまでもないが、給紙装置4の各給紙カセット21,22には、A4サイズ以下の規格の記録材Pであれば、縦送り及び横送りのどちらの姿勢でも収容できる。これら記録材Pのサイズに関する説明は、本願発明に適用可能な記録材Pの種類を限定する意図ではない。
実施形態における各給紙カセット21,22内の記録材Pは、中央基準線を基準にして矢印Y方向に搬送するセンター基準でセットされている。このため、画像プロセス装置3での転写処理や定着装置5での定着処理(詳細は後述する)も、センター基準で実行される。
搬送経路30は、給紙装置4の各給紙カセット21,22から、両レジストローラー25間のニップ部、及び画像プロセス装置3における二次転写ニップ部11(二次転写領域)を経て、定着装置5における定着ニップ部35(詳細は後述する)に至る。そして、搬送経路30は、定着ニップ部35から一対の排出ローラー26を介して筺体2上面の排紙トレイ27にまで延びている。
詳細は後述するが、画像プロセス装置3における二次転写ローラー10の上方に位置する定着装置5は、記録材Pの搬送方向Yに直交する方向(以下、通紙幅方向という)に長い加熱ローラー32、及び、加熱ローラー32と平行状に延びる加圧ローラー34を備えている。図1では右側に加熱ローラー32が、左側に加圧ローラー34が位置している。加圧ローラー34は、加熱ローラー32に当接していて、加熱ローラー32と加圧ローラー34との間(当接部分)が定着領域である定着ニップ部35になっている。
この場合、加圧ローラー34が図1の反時計方向に回転駆動すると、当該加圧ローラー34の回転に伴って、又は定着ニップ部35に挟持搬送される記録材Pの移動に伴って、加熱ローラー32が図1の時計方向に回転する。実施形態における両ローラー32,34の通紙幅方向の長さは、定着ニップ部35にA4サイズ以下の規格の記録材Pを縦横いずれの方向にも通紙し得るような長さになっている。
(2).プリンターの画像形成動作
次に、プリンター1における画像形成動作の一例について簡単に説明する。プリンター1は、1色のトナー(例えばブラック)を用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードと、4色のトナーを用いてカラー画像を形成するカラーモードとの間で切り換え可能に構成されている。
例えばカラーモードの場合はまず、画像プロセス装置3の各作像部7において、所定の速度で回転駆動する感光体13の外周面が帯電器14にて帯電される。次いで、帯電された感光体13の外周面に、外部端末からの画像情報に応じたレーザービームが露光部19から投射され、静電潜像が形成される。そして、静電潜像は、現像部15から供給されるトナーにて反転現像されて顕在化し、各色のトナー像となる。
各感光体13の外周面に形成された各色のトナー像は、感光体13の回転にて一次転写ニップ部18に到達すると、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順で、感光体13から中間転写ベルト6の外周面に転写(一次転写)されて重ねられる。中間転写ベルト6に転写されず感光体13の外周面に残った未転写トナーは、感光体13の回転を利用して感光体クリーナー17にて掻き取られ、感光体13上から取り除かれる。
重ね合わされた4色のトナー像は、中間転写ベルト6の回転にて二次転写ニップ部11に移動する。このとき、重ね合わされた4色のトナー像の移動タイミングに合わせて、外部端末等の指令に基づき選択された給紙カセット21,22から、記録材Pが二次転写ニップ部11に搬送される。そして、記録材Pが二次転写ニップ部11を通過することにより、重ね合された4色のトナー像が記録材Pに一括して転写(二次転写)される。なお、二次転写後に中間転写ベルト6の外周面に残った未転写トナーは、転写ベルトクリーナー12にて掻き取られ、中間転写ベルト6上から取り除かれる。その後、各感光体13及び中間転写ベルト6の回転駆動が停止する。
4色のトナー像が二次転写された記録材P(未定着トナー像を乗せた記録材P)は、搬送経路30を通って定着装置5の定着ニップ部35に搬送される。そして、記録材Pが定着ニップ部35を通過して加熱及び加圧され、未定着トナー像が記録材Pに定着する。その後、記録材Pは一対の排出ローラー26の回転にて排紙トレイ27上に排出されることになる。
(3).定着装置及びその周辺の詳細構造
次に、図2〜図4を参照しながら、定着装置5及びその周辺の詳細構造について説明する。前述の通り、定着装置5は、互いに通紙幅方向に延びて圧接した状態で回転可能な加熱ローラー32及び加圧ローラー34を備えている。これら両ローラー32,34により一対の回転部材が構成されている。
加熱ローラー32のローラー本体は金属製であり、その表面は離型層としてのPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等にて被覆されている。離型層の存在により、記録材Pが加熱ローラー32から円滑に分離することになる(記録材Pの加熱ローラー32に対する離型性が担保されている)。加圧ローラー34のローラー本体も金属製であり、その表面はシリコーンゴム等の弾性層を介してPFAチューブにて被覆されている。
加熱ローラー32の内部には、加熱ローラー32を加熱する熱源としてのヒーターランプ36が配置されている。ヒーターランプ36は、例えばハロゲンランプである。ヒーターランプ36は、中央基準線を中心として通紙幅方向両側に等距離だけ延びている。
加熱ローラー32の中央(中央基準線に対応する位置)の上には、当該箇所の表面温度を検出する接触型の温度センサ37が配置されている。
なお、搬送経路30のうち定着ニップ部35より搬送下流側には、定着ニップ部35を通過した記録材Pを加熱ローラー32から分離させつつ一対の排出ローラー26に向けて案内するための分離爪42が配置されている。一方、搬送経路30のうち定着ニップ部35より搬送上流側には、記録材Pを安定した姿勢で定着ニップ部35に向けて案内する定着前ガイド45が配置されている。
(4).印刷制御
図4に示すように、温度センサ37は制御手段としてのコントローラー50に電気的に接続されている。コントローラー50は、各種演算処理を実行するCPU51の他、制御プログラムやデータを記憶させるためのROM52、制御プログラムやデータを一時的に記憶させるためのRAM53、記録材Pの印刷枚数を計測するカウンター54と、及びセンサやアクチュエーター等との間でデータのやり取りをするための入出力インターフェイス等を備えている。
コントローラー50の入力インターフェイスには、前述の通り温度センサ37が電気的に接続されている。コントローラー50の出力インターフェイスには、ヒーターランプ36への電力供給を入り切りするランプ駆動回路46、上段の給紙カセット21に対応した繰り出しローラー23を回転駆動させる上繰り出しモーター28のモーター駆動回路48、及び、下段の給紙カセット22に対応した繰り出しローラー24を回転駆動させる下繰り出しモーター29のモーター駆動回路49等が電気的に接続されている。ランプ駆動回路46には、電力供給用の交流電源部55が電気的に接続されている。実施形態のランプ駆動回路46としては、ソリッドステートリレー(SSR)が採用されている。
コントローラー50は、外部端末等の指令を受け付けると、ランプ駆動回路46を駆動させ、交流電源部55からヒーターランプ36に電力を供給する。温度センサ37によって検出される加熱ローラー32の表面温度が設定温度(定着処理を実行可能な状態での加熱ローラー32の表面温度)に達すると、ランプ駆動回路46の駆動にてヒーターランプ36への電力供給を調節し、加熱ローラー32の表面温度を設定温度付近に維持する。これに合わせて、コントローラー50は、下繰り出しモーター29のモーター駆動回路49または上繰り出しモーター28のモーター駆動回路48を作動させ、下段の給紙カセット22内にあるA4横の記録材Pまたは上段の給紙カセット21内にあるA4縦の記録材Pを予定印刷枚数だけ繰り出して定着装置5の定着ニップ部35を通過させ、印刷を完了させる。
(5).ヒーターランプの種々の実施例
次に、ヒーターランプ36の種々の実施例について図面を参照しながら説明する。
<第1実施例>
まず、ヒーターランプ36の第1実施例について説明する。図5は、ヒーターランプ36の第1実施例の構成を模式的に示した図である。ヒーターランプ36は、ガラス管70の内部に、通電によって発熱するコイル状のフィラメント71を備えている。フィラメント71の両端部は、それぞれ、ガラス管70のシール部に設けられているモリブデン薄箔72a,72bを介してガラス管70外部の接合板73a,73bに電気的に接続されている。接合板73a,73bには、それぞれ、給電線61a,61bが接続されている。給電線61a,61bは、ランプ駆動回路46を介して交流電源部55に電気的に接続されている。
フィラメント71とモリブデン薄箔72a,72bとの間には、それぞれ、分岐点74a,74bが設けられている。そして、これらの分岐点74a,74bからフィラメント71の途中の接点76a,76bまでをそれぞれ結ぶようなショートカット経路が形成されている。なお、分岐点74a,74bおよび接点76a,76bには、任意の材料および任意の形状の導体を用いてもよい。
第1実施例では、分岐点74a,74bと接点76a,76bとが、それぞれ、スレーター絶縁体751a,751bで接続されている。スレーター絶縁体は、所定温度(スレーター絶縁体の種類によって異なる)よりも高温のときにのみ導体として機能する導電性変化部材の一例である。第1実施例では、スレーター絶縁体751a,751bとして、特性変化温度が140℃であるスレーター絶縁体(すなわち、140℃よりも高温のときにのみ導体として機能するスレーター絶縁体)を利用するものとする。なお、この「140℃」という温度は、単に説明のために便宜的に設定した値にすぎず、実際には、種々の条件を考慮して、より適切な特性変化温度のスレーター絶縁体を利用すべきであることは言うまでもない。他の実施例についても同様である。
フィラメント71の長さ(すなわち、フィラメント71の両端部の間の距離)は、給紙カセット22から繰り出されたA4横の記録材Pを均一に加熱し得るように、A4横の記録材Pの通紙幅297mmより若干長くなっている。また、接点76aと接点76bの間の距離は、A4縦の記録材Pの通紙幅210mmより若干長くなっている。
記録材Pに印字する場合には、コントローラー50の制御によってヒーターランプ36が通電されて、フィラメント71から発熱する。A4横の記録材P(すなわち、大サイズの記録材P)に連続的に印字する場合には、定着ニップ部35を通過する記録材Pによる冷却効果のため、スレーター絶縁体751a,751bの少なくとも一部(特に、図5におけるスレーター絶縁体751aの左端部およびスレーター絶縁体751bの右端部)の温度は140℃を超えず、その部分は絶縁体として機能することになる。その結果、ショートカット経路には通電しないため、フィラメント71は全領域にわたって発熱する。
一方、A4縦の記録材P(すなわち、小サイズの記録材P)に連続的に印字する場合には、記録材Pによる冷却効果は、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域でしか得られない。そのため、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域の外側の領域の温度は、A4横の場合よりも高温になり、スレーター絶縁体751a,751bの温度は、全ての部分において140℃を超え、スレーター絶縁体751a,751bの全ての部分が導体として機能することになる。その結果、ショートカット経路に通電するようになり、フィラメント71の端部領域(ここでは、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域の外側の領域)からの発熱が自動的に抑制される。よって、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域についてはフィラメント71からの発熱を維持しつつ、加熱ローラー32の端部領域の過度な温度上昇を防止することができる。
なお、本実施形態のプリンター1では、センター基準が採用されているため、図5に示すように、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域よりも左側の端部領域と右側の端部領域のそれぞれにショートカット経路を設けている。しかしながら、片側基準が採用されている場合には、基準線から遠い側の端部領域のみにショートカット経路を設ければよい。
なお、第1実施例では、端部領域に1対のショートカット経路を設けているが、これに限らず、複数対のショートカット経路を設けるようにしてもよい(例えば、後述する第2実施例を参照)。また、第1実施例では、ショートカット経路の分岐点74a,74bと接点76a,76bとを結ぶようにスレーター絶縁体751a,751bをそれぞれ配置しているが、これに限らず、スレーター絶縁体は、ショートカット経路の少なくとも一部に設ければよい(例えば、後述する第3〜第4実施例を参照)。また、第1実施例では、ガラス管70の内部にショートカット経路の分岐点74a,74bを設けているが、これに限らず、ガラス管70の内部にショートカット経路の分岐点を設けてもよい(例えば、後述する第5実施例を参照)。また、第1実施例では、フィラメント71に接触しないようにスレーター絶縁体751a,751bを配置しているが、これに限らず、フィラメント71に接触するようにスレーター絶縁体751a,751bを配置してもよい(例えば、後述する第6実施例を参照)。
<第2実施例>
次に、ヒーターランプ36の第2実施例について説明する。図6は、ヒーターランプ36の第2実施例の構成を模式的に示した図である。なお、第2実施例において第1実施例と同一の構成には、同一の参照符号を付し、説明を省略する。
第2実施例では、分岐点74a,74bから接点76a,76bまでをそれぞれ結ぶショートカット経路(以下、第1ショートカット経路と称す)に加えて、分岐点74a,74bからフィラメント71の途中の接点76c,76dまでをそれぞれ結ぶような第2ショートカット経路が設けられている。第2ショートカットでは、分岐点74a,74bと接点76c,76dとが、それぞれ、スレーター絶縁体752a,752bで接続されている。
第2実施例では、第1ショートカット経路のスレーター絶縁体751a,751bとしては、特性変化温度が180℃であるスレーター絶縁体(すなわち、180℃よりも高温のときにのみ導体として機能するスレーター絶縁体)を利用し、第2ショートカット経路のスレーター絶縁体752a,752bとしては、特性変化温度が140℃であるスレーター絶縁体を利用するものとする。
接点76cと接点76dの間の距離は、B5横の記録材Pの通紙幅257mmより若干長くなっている。
A4横の記録材P(すなわち、大サイズの記録材P)に連続的に印字する場合には、定着ニップ部35を通過する記録材Pによる冷却効果のため、スレーター絶縁体751a,751bの少なくとも一部(特に、図6におけるスレーター絶縁体751aの左端部およびスレーター絶縁体751bの右端部)の温度は180℃(特性変化温度)を超えず、その部分は絶縁体として機能することになる。同様に、スレーター絶縁体752a,752bの少なくとも一部(特に、図6におけるスレーター絶縁体752aの左端部およびスレーター絶縁体752bの右端部)の温度は140℃(特性変化温度)を超えず、その部分は絶縁体として機能することになる。その結果、第1ショートカット経路にも第2ショートカット経路にも通電しないため、フィラメント71は全領域にわたって発熱する。
一方、B5横の記録材P(すなわち、中サイズの記録材P)に連続的に印字する場合には、記録材Pによる冷却効果は、B5横の記録材Pに対応する通紙領域でしか得られない。そのため、B5横の記録材Pに対応する通紙領域の外側の領域の温度は、A4横の場合よりも高温になり、スレーター絶縁体752a,752bの温度は、全ての部分において140℃(特性変化温度)を超え、スレーター絶縁体752a,752bの全ての部分が導体として機能することになる。ただし、スレーター絶縁体751a,751bの少なくとも一部(特に、図6におけるスレーター絶縁体751aの左端部およびスレーター絶縁体751bの右端部)の温度は180℃(特性変化温度)を超えず、その部分は絶縁体として機能することになる。その結果、第2ショートカット経路にのみ通電するようになり、フィラメント71の端部領域(ここでは、B5横の記録材Pに対応する通紙領域の外側の領域)からの発熱が自動的に抑制される。よって、B5横の記録材Pに対応する通紙領域についてはフィラメント71からの発熱を維持しつつ、加熱ローラー32の端部領域の過度な温度上昇を防止することができる。
さらに、A4縦の記録材P(すなわち、小サイズの記録材P)に連続的に印字する場合には、記録材Pによる冷却効果は、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域でしか得られない。そのため、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域の外側の領域の温度は、B5横の場合よりも高温になり、スレーター絶縁体751a,751bの温度は、全ての部分において180℃(特性変化温度)を超え、スレーター絶縁体751a,751bの全ての部分が導体として機能することになる。その結果、第1ショートカット経路に通電するようになり、フィラメント71の端部領域(ここでは、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域の外側の領域)からの発熱が自動的に抑制される。よって、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域についてはフィラメント71からの発熱を維持しつつ、加熱ローラー32の端部領域の過度な温度上昇を防止することができる。
<第3実施例>
次に、ヒーターランプ36の第3実施例について説明する。図7は、ヒーターランプ36の第3実施例の構成を模式的に示した図である。なお、第3実施例において第1実施例と同一の構成には、同一の参照符号を付し、説明を省略する。
第1実施例では、ショートカット経路において、分岐点と接点とを結ぶ部分にスレーター絶縁体が用いられていたが、第3実施例では、図7に示すように、分岐点にスレーター絶縁体753a,753bが用いられる。スレーター絶縁体753a,753bから接点76c,76dまでは、それぞれ導線(以下、ショートカット導線と称す)で結ばれている。フィラメント71の両端部からモリブデン薄箔72a,72bに延びる導線(以下、フィラメント導線と称す)は、スレーター絶縁体753a,753bを貫通している。ただし、フィラメント導線とショートカット導線とは、スレーター絶縁体753a,753bによって隔てられている。また、ショートカット導線は、接点76a,76b以外ではフィラメント71に接触しないように配置されている。
第3実施例では、スレーター絶縁体753a,753bとして、特性変化温度が140℃であるスレーター絶縁体を利用するものとする。
A4横の記録材P(すなわち、大サイズの記録材P)に連続的に印字する場合には、定着ニップ部35を通過する記録材Pによる冷却効果のため、スレーター絶縁体753a,753bの温度は140℃(特性変化温度)を超えず、絶縁体として機能することになる。その結果、ショートカット経路には通電しないため、フィラメント71は全領域にわたって発熱する。
一方、A4縦の記録材P(すなわち、小サイズの記録材P)に連続的に印字する場合には、記録材Pによる冷却効果は、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域でしか得られない。そのため、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域の外側の領域の温度は、A4横の場合よりも高温になり、スレーター絶縁体753a,753bの温度は140℃(特性変化温度)を超え、スレーター絶縁体753a,753bが導体として機能することになる。その結果、ショートカット経路に通電するようになり、フィラメント71の端部領域(ここでは、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域の外側の領域)からの発熱が自動的に抑制される。よって、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域についてはフィラメント71からの発熱を維持しつつ、加熱ローラー32の端部領域の過度な温度上昇を防止することができる。
第3実施例によれば、第1実施例に比べて、スレーター絶縁体の使用量を減らすことができ、定着装置をより低コストで実現することができる。
<第4実施例>
次に、ヒーターランプ36の第4実施例について説明する。図8は、ヒーターランプ36の第4実施例の構成を模式的に示した図である。なお、第4実施例において第1実施例と同一の構成には、同一の参照符号を付し、説明を省略する。
第1実施例では、ショートカット経路において、分岐点と接点とを結ぶ部分の全体にわたってスレーター絶縁体が用いられていたが、第4実施例では、図8に示すように、分岐点と接点とを結ぶショートカット導線の途中にスレーター絶縁体754a,754bが挿入されている。ショートカット導線は、接点76a,76b以外ではフィラメント71に接触しないように配置されている。
第4実施例では、スレーター絶縁体754a,754bとして、特性変化温度が500℃という高温のスレーター絶縁体を利用するものとする。これは、スレーター絶縁体754a,754bがフィラメント71の近傍に配置されるため、特性変化温度が高いスレーター絶縁体を利用しなければ、A4横の記録材P(すなわち、大サイズの記録材P)に連続的に印字する場合においても導体として機能してしまい、ショートカット経路に通電してしまうからである。
A4横の記録材P(すなわち、大サイズの記録材P)に連続的に印字する場合には、定着ニップ部35を通過する記録材Pによる冷却効果のため、スレーター絶縁体754a,754bの温度は500℃(特性変化温度)を超えず、絶縁体として機能することになる。その結果、ショートカット経路には通電しないため、フィラメント71は全領域にわたって発熱する。
一方、A4縦の記録材P(すなわち、小サイズの記録材P)に連続的に印字する場合には、記録材Pによる冷却効果は、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域でしか得られない。そのため、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域の外側の領域の温度は、A4横の場合よりも高温になり、スレーター絶縁体754a,754bの温度は500℃(特性変化温度)を超え、スレーター絶縁体754a,754bが導体として機能することになる。その結果、ショートカット経路に通電するようになり、フィラメント71の端部領域(ここでは、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域の外側の領域)からの発熱が自動的に抑制される。よって、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域についてはフィラメント71からの発熱を維持しつつ、加熱ローラー32の端部領域の過度な温度上昇を防止することができる。
第4実施例によれば、第1実施例に比べて、スレーター絶縁体の使用量を減らすことができ、定着装置をより低コストで実現することができる。また、分岐部74a,74bと接点76a,76bとの間の任意の位置にスレーター絶縁体754a,754bを挿入することができるので、例えば、A4横の記録材P(すなわち、大サイズの記録材P)に連続的に印字する場合と、A4縦の記録材P(すなわち、小サイズの記録材P)に連続的に印字する場合とで、最も温度差が大きくなるような位置にスレーター絶縁体754a,754bを挿入することができる。また、例えば、より容易に入手可能な特性変化温度のスレーター絶縁体754a,754bを利用しやすくなる。
なお、スレーター絶縁体は、所定の特性変化温度を境として絶縁体から導電体へと瞬時に変化するものではなく、温度上昇とともに徐々に電気抵抗が低くなっていく特性がある。よって、ある温度帯においては、スレーター絶縁体は半導体として機能する。例えば、第4実施例において、スレーター絶縁体754a,754bが半導体として機能する場合には、フィラメント71の端部領域(ここでは、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域の外側の領域)とショートカット経路の双方に同時に通電することになるが、ショートカット経路にも通電される分だけ、フィラメント71の端部領域からの発熱は抑制される。
上記のようなスレーター絶縁体の特性を利用することによって、第2実施例のように中サイズの記録材P用のショートカット経路を別途設けなくても、中サイズの記録材Pに、ある程度対応することが可能である。例えば、第4実施例において、300℃以下では絶縁体として機能し、300〜400℃では半導体として機能し、400℃以上では導体として機能するようなスレーター絶縁体754a,754bを利用する場合を例として説明する。A4横の記録材P(すなわち、大サイズの記録材P)に連続的に印字する場合には、スレーター絶縁体754a,754bの温度は300℃になるため、スレーター絶縁体754a,754bは絶縁体として機能し、フィラメント71は全領域にわたって発熱する。B5横の記録材P(すなわち、中サイズの記録材P)に連続的に印字する場合には、スレーター絶縁体754a,754bの温度は350℃になるため、フィラメント71の端部領域(ここでは、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域の外側の領域)からの発熱が半分程度に抑制される。A4縦の記録材P(すなわち、小サイズの記録材P)に連続的に印字する場合には、スレーター絶縁体754a,754bの温度は400℃になるため、フィラメント71の端部領域(ここでは、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域の外側の領域)からの発熱が完全に抑制される。
<第5実施例>
次に、ヒーターランプ36の第5実施例について説明する。図9は、ヒーターランプ36の第5実施例の構成を模式的に示した図である。なお、第5実施例において第1実施例と同一の構成には、同一の参照符号を付し、説明を省略する。
第3実施例および第4実施例では、ガラス管70の内部にスレーター絶縁体が配置されていたが、第5実施例では、図9に示すように、ガラス管70の外部にスレーター絶縁体755a,755bが配置されている。スレーター絶縁体755a,755bは、接合板73a,73bにそれぞれ接合されており、スレーター絶縁体755a,755bと接点76a,76bとの間はショートカット導線でそれぞれ結ばれている。接合板73a,73bとショートカット導線とは、それぞれ、スレーター絶縁体755a,755bで隔てられている。ショートカット導線は、接点76a,76b以外ではフィラメント71に接触しないように配置されている。また、ショートカット導線は、フィラメント導線やモリブデン薄箔72a,72bとも電気的に接続されないようにして配置されている。例えば、シール部においてショートカット導線とモリブデン薄箔72a,72bとが電気的に接続されるのを防止するために、ショートカット導線とモリブデン薄箔72a,72bとの間にそれぞれ絶縁体を挟むようにしてもよい。
第5実施例では、スレーター絶縁体755a,755bとして、特性変化温度が80℃という低温のスレーター絶縁体を利用するものとする。これは、スレーター絶縁体755a,755bがフィラメント71から離れて配置されるため、特性変化温度が低いスレーター絶縁体を利用しなければ、A4縦の記録材P(すなわち、小サイズの記録材P)に連続的に印字する場合においても絶縁体として機能してしまい、ショートカット経路に通電しなくなってしまうからである。
A4横の記録材P(すなわち、大サイズの記録材P)に連続的に印字する場合には、定着ニップ部35を通過する記録材Pによる冷却効果のため、スレーター絶縁体755a,755bの温度は80℃(特性変化温度)を超えず、絶縁体として機能することになる。その結果、ショートカット経路には通電しないため、フィラメント71は全領域にわたって発熱する。
一方、A4縦の記録材P(すなわち、小サイズの記録材P)に連続的に印字する場合には、記録材Pによる冷却効果は、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域でしか得られない。そのため、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域の外側の領域の温度は、A4横の場合よりも高温になり、スレーター絶縁体755a,755bの温度は80℃(特性変化温度)を超え、スレーター絶縁体755a,755bが導体として機能することになる。その結果、ショートカット経路に通電するようになり、フィラメント71の端部領域(ここでは、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域の外側の領域)からの発熱が自動的に抑制される。よって、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域についてはフィラメント71からの発熱を維持しつつ、加熱ローラー32の端部領域の過度な温度上昇を防止することができる。
第5実施例によれば、第1実施例に比べて、スレーター絶縁体の使用量を減らすことができ、定着装置をより低コストで実現することができる。また、スレーター絶縁体755a、755bをガラス管70の外部に配置するため、例えばガラス管70の径が小さい場合であっても、容易にスレーター絶縁体755a、755bを配置することができる。
<第6実施例>
次に、ヒーターランプ36の第6実施例について説明する。図10は、ヒーターランプ36の第6実施例の構成を模式的に示した図である。なお、第6実施例において第1実施例と同一の構成には、同一の参照符号を付し、説明を省略する。
第1実施例では、フィラメント71に接触しないようにスレーター絶縁体751a,751bを配置していたが、第6実施例では、図10に示すように、フィラメント71に接触するようにスレーター絶縁体756a,756bが配置されている。具体的には、分岐点74a,74bからA4縦の記録材P(すなわち、小サイズの記録材P)に対応する通紙領域の両端まで延びるようにスレーター絶縁体751a,751bがそれぞれ配置されており、これらのスレーター絶縁体751a,751bにフィラメント71がコイル状に巻き付けられている。
このように、第6実施例では、スレーター絶縁体751a,751bによって、分岐点74a,74bからA4縦の記録材P(すなわち、小サイズの記録材P)に対応する通紙領域の両端までをそれぞれ結ぶようなショートカット経路が形成されるとともに、スレーター絶縁体751a,751bをフィラメント71の芯金(位置決め部材)としても利用している。スレーター絶縁体751a,751bはフィラメント71よりも剛性が高いので、このように構成することによって、フィラメントの位置を安定させることができる。また、スレーター絶縁体751a,751bとフィラメント71との接触面積も大きくなるので、スレーター絶縁体751a,751bとフィラメント71との間の電気的な接続も安定させることができる。また、コイル状のフィラメント71の内側にスレーター絶縁体751a,751bが配置されるので、フィラメント71から放射された光がスレーター絶縁体751a,751bで遮られることがないという利点もある。
第6実施例では、スレーター絶縁体756a,756bとして、特性変化温度が1000℃という非常に高温のスレーター絶縁体を利用するものとする。これは、スレーター絶縁体756a,756bがフィラメント71に接触するように配置されるため、特性変化温度が非常に高いスレーター絶縁体を利用しなければ、A4横の記録材P(すなわち、大サイズの記録材P)に連続的に印字する場合においても導体として機能してしまい、ショートカット経路に通電してしまうからである。
A4横の記録材P(すなわち、大サイズの記録材P)に連続的に印字する場合には、定着ニップ部35を通過する記録材Pによる冷却効果のため、少なくともA4横の記録材Pに対応する通紙領域におけるスレーター絶縁体756a,756bの温度は1000℃(特性変化温度)を超えず、絶縁体として機能することになる。その結果、ショートカット経路には通電しないため、フィラメント71は全領域にわたって発熱する。
一方、A4縦の記録材P(すなわち、小サイズの記録材P)に連続的に印字する場合には、記録材Pによる冷却効果は、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域でしか得られない。そのため、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域の外側の領域の温度は、A4横の場合よりも高温になり、スレーター絶縁体754a,754bの温度は1000℃(特性変化温度)を超え、スレーター絶縁体754a,754bが導体として機能することになる。その結果、ショートカット経路に通電するようになり、フィラメント71の端部領域(ここでは、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域の外側の領域)からの発熱が自動的に抑制される。よって、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域についてはフィラメント71からの発熱を維持しつつ、加熱ローラー32の端部領域の過度な温度上昇を防止することができる。
<他の実施例>
なお、第1〜第6の実施例では、加熱ローラー32の内部にヒーターランプが1本だけ配置されていたが、加熱ローラー32の内部に複数のヒーターランプが配置されている場合にもスレーター絶縁体を利用することができる。
例えば、図11に示す例では、A4縦の記録材Pに対応する相対的に短いフィラメント711を配置した第1ヒーターランプ361と、A4横の記録材Pに対応する相対的に長いフィラメント712を配置した第2ヒーターランプ362の、2本のヒーターランプが加熱ローラー32の内部に配置される。第1ヒーターランプ361と第2ヒーターランプ362は、共通の電源(交流電源部55)に対して並列に接続される。第1ヒーターランプ361の両端から延びるフィラメント導線上の所定位置にはスレーター絶縁体757a,757bがそれぞれ挿入されている。
A4横の記録材P(すなわち、大サイズの記録材P)に連続的に印字する場合には、定着ニップ部35を通過する記録材Pによる冷却効果のため、スレーター絶縁体757a,757bの温度は特性変化温度を超えず、絶縁体として機能することになる。その結果、第1ヒーターランプ361には通電しないため、第2ヒーターランプ362は全領域にわたって発熱する。一方、A4縦の記録材P(すなわち、小サイズの記録材P)に連続的に印字する場合には、記録材Pによる冷却効果は、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域でしか得られない。そのため、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域の外側の領域の温度は、A4横の場合よりも高温になり、スレーター絶縁体757a,757bの温度は特性変化温度を超え、スレーター絶縁体757a,757bが導体として機能することになる。その結果、第2ヒーターランプ362に加えて第1ヒーターランプ361にも通電するようになる。第1ヒーターランプ361と第2ヒーターランプ362とは共通の電源に並列に接続されているため、第1ヒーターランプ361にも通電するようになると、第2ヒーターランプからの発熱が抑制される。よって、第1ヒーターランプ361と第2ヒーターランプ362を全体として見ると、端部領域からの発熱が自動的に抑制される。よって、A4縦の記録材Pに対応する通紙領域についてはフィラメント71からの発熱を維持しつつ、加熱ローラー32の端部領域の過度な温度上昇を防止することができる。
また、第1〜第6の実施例では、フィラメントの端部よりも外側に位置する分岐点からフィラメントの途中の接点までを電気的に接続するようなショートカット経路(すなわち、フィラメントの一部分のみをショートカットするようなショートカット経路)を形成していたが、フィラメントの全体をショートカットするようなショートカット経路にもスレーター絶縁体を利用することができる。
例えば、図12に示す例では、分岐点74aと分岐点74bとがスレーター絶縁体758で接続されている。通常時は、スレーター絶縁体758の少なくとも一部(特に、図11におけるスレーター絶縁体758の両端部)の温度は特性変化温度を超えず、その部分は絶縁体として機能することになる。その結果、ショートカット経路には通電しないため、フィラメント71は発熱する。一方、ヒーターランプ36の端部領域の温度が過度に上昇した場合には、スレーター絶縁体758の温度は、全ての部分において特性変化温度を超え、スレーター絶縁体758の全ての部分が導体として機能することになる。その結果、フィラメント71からの発熱が自動的に抑制される。よって、加熱ローラー32の端部領域の過度な温度上昇を防止することができる。
また例えば、図13に示す例では、分岐点にスレーター絶縁体759が用いられており、スレーター絶縁体759と給電線61b上の別の分岐点とがショートカット導線で接続されている。通常時は、スレーター絶縁体759の温度は特性変化温度を超えず、その部分は絶縁体として機能することになる。その結果、ショートカット経路には通電しないため、フィラメント71は発熱する。一方、ヒーターランプ36の端部領域の温度が過度に上昇した場合には、スレーター絶縁体759の温度は特性変化温度を超え、スレーター絶縁体759が導体として機能することになる。その結果、フィラメント71からの発熱が自動的に抑制される。よって、加熱ローラー32の端部領域の過度な温度上昇を防止することができる。
(5).その他
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。前述の実施形態では、画像形成装置としてプリンターを例にして説明したが、これに限らず、複写機、プリンター、ファクシミリ又はこれらの機能を複合的に備えた複合機等であってもよい。
その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。