JP6454372B2 - 表面保護フィルム - Google Patents

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本発明は、被着体(保護対象物)に貼り付けられてその表面を保護する表面保護フィルムに関する。
表面保護フィルム(表面保護シートともいう。)は、一般に、フィルム状の基材(支持体)上に粘着剤が設けられた構成を有する。かかる保護フィルムは、上記粘着剤を介して被着体に貼り合わされ、これにより加工時、搬送時等の傷や汚れから該被着体を保護する目的で用いられる。例えば、液晶ディスプレイパネルの製造において液晶セルに貼り合わされる偏光板は、いったんロール形態に製造された後、このロールから巻き出して、液晶セルの形状に応じた所望のサイズにカットして用いられる。ここで、偏光板が中間工程において搬送ロール等と擦れて傷つくことを防止するために、該偏光板の片面または両面(典型的には片面)に表面保護フィルムを貼り合わせる対策がとられている。表面保護フィルムに関する技術文献として特許文献1および2が挙げられる。特許文献3は、粘着テープ等の粘着層を保護する保護シート(粘着テープ等の使用時には剥離される。)の粘着層接触面に塗付される離型剤に関する技術文献である。
特開2009−107329号公報 特開2011−20348号公報 特開平9−324172号公報
このような表面保護フィルムとしては、該フィルムを貼り付けたまま被着体(例えば偏光板)の外観検査を行い得るという観点から、透明性を有するものが好ましく用いられる。近年、上記外観検査のしやすさや検査精度等の観点から、表面保護フィルムの外観品位に対する要求レベルが高くなってきており、例えば、表面保護フィルムの背面(被着体に貼り付けられる面とは反対側の面)に擦過傷がつきにくい性質が求められている。表面保護フィルムに擦過傷が存在すると、その傷が被着体の傷なのか、あるいは表面保護フィルムの傷なのかが、表面保護フィルムを貼り付けた状態のままでは判断できないためである。
表面保護フィルムの背面に擦過傷がつきにくくする手法の一つとして、該背面に硬質の表面層(トップコート層)を設ける手法が挙げられる。かかるトップコート層は、典型的には、基材の背面にコーティング材を塗付して乾燥および硬化させることにより形成される。上記トップコート層が適度な滑り性を有することは、より高い耐擦過性(耐スクラッチ性)を実現する上で有利である。上記滑り性によって、トップコート層が擦られた場合に加わり得る応力を該トップコート層の表面に沿って受け流すことができるためである。トップコート層に滑り性を付与するための添加剤(滑剤)としては、一般に、シリコーン系滑剤(例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等のシリコーン化合物)、フッ素系滑剤等が用いられている。
しかし本発明者は、シリコーン系滑剤が添加されたトップコート層を有する基材は、その保存条件によっては(例えば、高温多湿条件下に保持されると)、外観が白っぽくなる事象(白化)を生じやすいことを見出した。表面保護フィルムの基材が白化すると、該表面保護フィルムを透しての被着体表面の視認性が低下する。このため、表面保護フィルムを貼り付けたまま被着体の外観検査を行う場合の検査精度が低下してしまう。
そこで本発明は、滑り性付与成分を含有し、かつ白化しにくいトップコート層を有する基材を備えた表面保護フィルムを提供することを目的とする。
ここに開示される表面保護フィルムは、第一面および第二面を有する基材と、前記基材の前記第一面(背面)に設けられたトップコート層とを備える。該表面保護フィルムは、典型的には、前記基材の前記第二面(前面)に設けられた粘着剤層をさらに備える。前記トップコート層は、滑り剤(滑り性付与成分)としてのワックスと、バインダとしてのポリエステル樹脂とを含む。ここで、前記ワックスは、高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルである。
このように、滑り剤として特定のワックス(すなわち、高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル)を含有し、そのバインダとしてポリエステル樹脂を含有するトップコート層によると、高温多湿条件下においても該トップコート層の白化を効果的に抑制することができる。かかるトップコート層を背面に有する基材は、滑り剤を含有するので耐スクラッチ性が良く、しかも耐白化性に優れたものとなり得る。したがって、上記基材を備えた表面保護フィルムは、より外観品位の高いものとなり得る。
ここに開示される表面保護フィルムの典型的な態様では、上記基材が樹脂フィルムである。例えば、ポリエステルを主成分(50質量%よりも多く含まれる成分)とする樹脂材料からなる樹脂フィルム(ポリエステル樹脂フィルム)を好ましく採用し得る。かかる基材を備えた表面保護フィルムは、該基材の背面とトップコート層との密着性に優れたものとなり得る。このことは、表面保護フィルムの耐スクラッチ性を高める上で有利である。
ここに開示される表面保護フィルムは、前記トップコート層が帯電防止成分を含有する態様で好ましく実施され得る。かかる表面保護フィルムでは、上記トップコート層を利用して、該表面保護フィルムに耐スクラッチ性および帯電防止性の両方を付与することができる。したがって、帯電防止のために独自の層(帯電防止層)が設けられた構成(例えば、基材背面とトップコート層との間に帯電防止層が配置された構成)とは異なり、表面保護フィルムを構成する層の数を増やすことなく該表面保護フィルムに帯電防止性を付与し、あるいはその帯電防止性を高めることができる。このことは、表面保護フィルム越しに被着体の外観検査を行う場合における被着体表面の視認性向上等の観点から有利である。また、表面保護フィルムの生産性の観点からも好ましい。
前記粘着剤層を構成する粘着剤の一好適例として、アクリル系粘着剤が挙げられる。一般にアクリル系粘着剤は透明性に優れるため、上記構成によると、より被着体表面の視認性に優れた表面保護フィルムが実現され得る。
ここに開示される表面保護フィルムは、上記粘着剤層が帯電防止成分を含む態様で好ましく実施され得る。かかる構成の表面保護フィルムでは、上記粘着剤層を利用して表面保護フィルムに帯電防止性を付与することができる。したがって、表面保護フィルムを構成する層の数を増やすことなく、該表面保護フィルムに帯電防止性を付与し、あるいはその帯電防止性を高めることができる。
ここに開示される表面保護フィルムは、該フィルム越しに製品の外観検査を精度よく行い得ることから、特に、光学部品(例えば、偏光板、波長板等の液晶ディスプレイパネル構成要素として用いられる光学部品)に貼り付けられて該光学部品の加工時や搬送時にその表面を保護する表面保護フィルム(光学部品用表面保護フィルム)として好適である。
一実施態様に係る表面保護フィルムの使用形態を示す断面図である。 一実施態様に係る表面保護フィルムの使用前における形態を示す断面図である。 一実施態様に係る表面保護フィルムの剥離方法を示す断面図である。 背面剥離強度の測定方法を示す説明図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の表面保護フィルムのサイズや縮尺を正確に表したものではない。
本明細書中において、「滑り剤」とは、トップコート層に含有されることによって該トップコート層の滑り性を向上させる作用を発揮し得る成分をいう。トップコートの滑り性が向上したことは、例えば、該トップコート層の摩擦係数が低下したことにより把握され得る。また、トップコート層における「バインダ」とは、該トップコート層の成膜に寄与する基本成分をいう。また、「ポリエステル樹脂」とは、ポリエステル(モノマー間のエステル結合により形成された主鎖を有するポリマーをいう。)を主成分(典型的には、50質量%よりも多く含まれる成分)とする樹脂をいう。「アクリル系粘着剤」とは、アクリル系ポリマーをベースポリマー(該アクリル系粘着剤に含まれるポリマー成分のなかの主成分、すなわち50質量%よりも多く含まれる成分)とする粘着剤をいう。「アクリル系ポリマー」とは、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(以下、これを「アクリル系モノマー」ということがある。)を主構成単量体成分(モノマーの主成分、すなわちアクリル系ポリマーを構成するモノマーの総量のうち50質量%以上を占める成分)とするポリマーを指す。上記「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基を包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを包括的に指す意味である。本明細書中において、「アルキレンオキシド鎖」とは、オキシアルキレン単位(−OR−)およびオキシアルキレン単位が2単位以上連続した部分(すなわち、−(OR)−で表わされる構造部分。ただしn≧2。ポリアルキレンオキシド鎖としても把握され得る。)を包括的に指す用語である。
<表面保護フィルムの構成と使用形態>
ここに開示される表面保護フィルムの典型的な構成およびその使用形態の一例を図1に示す。表面保護フィルム1は、第一面12Aおよび第二面12Bを有する基材12と、第一面(背面)12A上に設けられたトップコート層14と、第二面(前面)12Bに設けられた粘着剤層20とを備える。本例における基材12は、透明な樹脂フィルム(例えばポリエステル樹脂フィルム)である。また、本例では、図1に示すように、第一面12A上にトップコート層14が直接(他の層を介在することなく)設けられている。粘着剤層20は、典型的には連続的に形成されるが、かかる形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成されていてもよい。表面保護フィルム1は、被着体(保護対象、例えば偏光板等の光学部品)50の表面に粘着剤層20の表面(粘着面、すなわち被着体への貼付面)20Aを貼り付けて使用される。使用前(すなわち、被着体への貼付前)の表面保護フィルム1は、典型的には図2に示すように、粘着剤層20の表面20Aが剥離ライナー30によって保護された形態であり得る。剥離ライナー30は、少なくともその粘着剤層20に対向する面が剥離面となっている。
被着体50を保護する役目を終えて不要となった表面保護フィルム1は、被着体50の表面から剥がして取り除かれ得る。被着体50の表面から表面保護フィルム1を除去する操作は、例えば図3に示すように、表面保護フィルム1の背面1A(トップコート層14の表面)に粘着テープ60を貼り付け、この粘着テープ(ピックアップテープ)60とともに表面保護フィルム1の少なくとも一部(典型的には、少なくとも外縁の一部)を被着体50の表面から持ち上げる操作を含む態様で好ましく実施することができる。このように、表面保護フィルム1の背面1Aに貼り付けられたピックアップテープ60を引っ張ることにより、背面1Aに対するピックアップテープ60の粘着力を利用して、被着体50から表面保護フィルム1を引き剥がす端緒を得ることができる。かかる態様によると、被着体50から表面保護フィルム1を除去する操作を効率よく行うことができる。例えば、表面保護フィルム1の背面1Aにピックアップテープ60を、図3に仮想線で示すように、その一端が表面保護フィルム1の外縁からはみ出すように貼り付ける。そして、図3に実線で示すように、ピックアップテープ60の上記一端を掴んで表面保護フィルム1をその外縁から内側へと折り返す(捲る)ように引っ張るとよい。なお、図3に示すように被着体50から表面保護フィルム1の外縁が剥がれた後、表面保護フィルム1の残りの部分を被着体50から剥離する操作は、引き続きピックアップテープ60を引っ張ることにより行ってもよく、あるいは表面保護フィルム1のうち既に被着体50から剥がれた部分を直接掴んで引っ張ることにより行ってもよい。
<基材>
ここに開示される表面保護フィルムの基材としては、樹脂フィルムを好ましく採用することができる。かかる樹脂フィルムは、各種の樹脂材料をフィルム形状に成形したものであり得る。上記樹脂材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性等のうち、1または2以上の特性に優れた樹脂フィルムを構成し得るものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース類;ポリカーボネート類;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー類;等を主成分(すなわち、50質量%よりも多く含まれる成分)とする樹脂材料から構成された透明(着色透明を包含する意味である。)な樹脂フィルムを、上記基材として好ましく用いることができる。上記樹脂フィルムを構成する樹脂材料の他の例としては、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のスチレン類;オレフィン類、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン−プロピレン共重合体等;ポリ塩化ビニル類;ナイロン6、ナイロン6,6、芳香族ポリアミド等のポリアミド類;等を主成分とするものが挙げられる。あるいは、ポリイミド類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリエーテルエーテルケトン類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリビニルアルコール類、ポリ塩化ビニリデン類、ポリビニルブチラール類、ポリアリレート類、ポリオキシメチレン類、エポキシ類、等を主成分とする樹脂材料から構成された樹脂フィルムを基材に用いてもよい。上記樹脂フィルムを構成する樹脂材料は、これらの2種以上のブレンド物であり得る。
上記基材用の樹脂フィルムとしては、透明性を有し、かつその光学特性(位相差等)の異方性が少ないものが好ましく採用される。一般に、上記異方性は少ないほど好ましい。特に、光学部品用表面保護フィルムの基材に用いられる樹脂フィルムにおいては、該樹脂フィルムの光学的異方性を少なくすることが有意義である。上記樹脂フィルムは、単層構造であってもよく、組成の異なる複数の層が積層された構造であってもよい。通常は、単層構造の樹脂フィルムが好ましく採用され得る。
上記樹脂フィルムの屈折率は、外観特性の観点から、通常は1.43〜1.6程度の範囲にあることが適当であり、1.45〜1.5程度の範囲にあることが好ましい。上記屈折率の値としては、メーカー公証値を採用することができる。公証値のない場合には、JIS K 7142 A法により測定された値を採用することができる。また、上記樹脂フィルムは、可視光波長領域における全光線透過率が70%〜99%程度の透明性を有することが好ましい。上記全光線透過率が80%〜97%(例えば85%〜95%)である透明樹脂フィルムがより好ましい。上記全光線透過率の値としては、メーカー公証値を採用することができる。公証値のない場合には、JIS K 7361−1に準拠して測定された値を採用することができる。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、上記基材として、ポリエステルを主成分(50質量%よりも多く含まれる成分)とする樹脂(ポリエステル樹脂)がフィルム状に成形された樹脂フィルム(ポリエステル樹脂フィルム)を用いる。例えば、上記ポリエステルが主としてPETである樹脂フィルム(PETフィルム)、主としてPENである樹脂フィルム(PENフィルム)、等を好ましく採用し得る。
上記基材を構成する樹脂材料には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止成分、可塑剤、着色剤(顔料、染料等)等の各種添加剤が配合されていてもよい。基材の第一面(背面、すなわちトップコート層が設けられる側の表面)には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗付等の、公知または慣用の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、例えば、基材背面とトップコート層との密着性を高めるための処理であり得る。基材背面にヒドロキシル基(−OH基)等の極性基が導入されるような表面処理を好ましく採用し得る。また、ここに開示される表面保護フィルムにおいて、基材の第二面(前面、すなわち粘着剤層が形成される側の表面)には、上記背面と同様の表面処理が施されていてもよい。かかる表面処理は、基材(支持体)と粘着剤層との密着性(粘着剤層の投錨性)を高めるための処理であり得る。
また、上記基材の厚さは、表面保護フィルムの用途、目的、使用形態等を考慮して適宜選択することができる。強度や取扱性等の作業性と、コストや外観検査性等との兼ね合いから、通常は、厚さ10μm〜200μm程度の基材が適当であり、好ましくは15μm〜100μm程度、より好ましくは20μm〜70μm程度である。
<バインダ>
ここに開示される表面保護フィルムは、上記基材の背面(第一面)にトップコート層を有する。このトップコート層は、バインダとしてのポリエステル樹脂と、滑り剤としてのワックスとを含む。上記ポリエステル樹脂は、ポリエステルを主成分(典型的には50質量%超、好ましくは75質量%以上、例えば90質量%以上を占める成分)として含む樹脂材料である。上記ポリエステルは、典型的には、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸類(典型的にはジカルボン酸類)およびその誘導体(当該多価カルボン酸の無水物、エステル化物、ハロゲン化物等)から選択される1種または2種以上の化合物(多価カルボン酸成分)と、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコール類(典型的にはジオール類)から選択される1種または2種以上の化合物(多価アルコール成分)とが縮合した構造を有する。
上記多価カルボン酸成分として採用し得る化合物の例としては、シュウ酸、マロン酸、ジフルオロマロン酸、アルキルマロン酸、コハク酸、テトラフルオロコハク酸、アルキルコハク酸、(±)−リンゴ酸、meso−酒石酸、イタコン酸、マレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、メチルフマル酸、アセチレンジカルボン酸、グルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、メチルグルタル酸、グルタコン酸、アジピン酸、ジチオアジピン酸、メチルアジピン酸、ジメチルアジピン酸、テトラメチルアジピン酸、メチレンアジピン酸、ムコン酸、ガラクタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、パーフルオロスベリン酸、3,3,6,6−テトラメチルスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、パーフルオロセバシン酸、ブラシル酸、ドデシルジカルボン酸、トリデシルジカルボン酸、テトラデシルジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸類;シクロアルキルジカルボン酸(例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸)、1,4−(2−ノルボルネン)ジカルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸(ハイミック酸)、アダマンタンジカルボン酸、スピロヘプタンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸類;フタル酸、イソフタル酸、ジチオイソフタル酸、メチルイソフタル酸、ジメチルイソフタル酸、クロロイソフタル酸、ジクロロイソフタル酸、テレフタル酸、メチルテレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、クロロテレフタル酸、ブロモテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オキソフルオレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニレンジカルボン酸、ジメチルビフェニレンジカルボン酸、4,4”−p−テレフェニレンジカルボン酸、4,4”−p−クワレルフェニルジカルボン酸、ビベンジルジカルボン酸、アゾベンゼンジカルボン酸、ホモフタル酸、フェニレン二酢酸、フェニレンジプロピオン酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジプロピオン酸、ビフェニル二酢酸、ビフェニルジプロピオン酸、3,3'−[4,4’−(メチレンジ−p−ビフェニレン)ジプロピオン酸、4,4’−ビベンジル二酢酸、3,3’(4,4’−ビベンジル)ジプロピオン酸、オキシジ−p−フェニレン二酢酸などの芳香族ジカルボン酸類;上述したいずれかの多価カルボン酸の酸無水物;上述したいずれかの多価カルボン酸のエステル(例えばアルキルエステル。モノエステル、ジエステル等であり得る。);上述したいずれかの多価カルボン酸に対応する酸ハロゲン化物(例えばジカルボン酸クロリド);等が挙げられる。
上記多価カルボン酸成分として採用し得る化合物の好適例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類およびその酸無水物;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ハイミック酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸類およびその酸無水物;ならびに上記ジカルボン酸類の低級アルキルエステル(例えば、炭素原子数1〜3のモノアルコールとのエステル)等が挙げられる。
一方、上記多価アルコール成分として採用し得る化合物の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、キシリレングリコール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA等のジオール類が挙げられる。他の例として、これらの化合物のアルキレンオキサイド付加物(例えば、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。
好ましい一態様では、上記ポリエステル樹脂が水分散性ポリエステルを含む(典型的には、該水分散性ポリエステルを主成分として含む)。かかる水分散性ポリエステルは、例えば、ポリマー中に親水性官能基(例えば、スルホン酸金属塩基、カルボキシル基、エーテル基、リン酸基などの親水性官能基等のうち1種または2種以上)を導入することにより水分散性を高めたポリエステルであり得る。ポリマー中に親水性官能基を導入する手法としては、親水性官能基を有する化合物を共重合させる方法、ポリエステルまたはその前駆体(例えば、多価カルボン酸成分、多価アルコール成分、それらのオリゴマー等)を変性して親水性官能基を生じさせる方法、等の公知の手法を適宜採用することができる。好ましい水分散性ポリエステルの一例として、親水性官能基を有する化合物が共重合されたポリエステル(共重合ポリエステル)が挙げられる。
ここに開示される技術において、トップコート層のバインダとして用いられるポリエステル樹脂は、飽和ポリエステルを主成分とするものであってもよく、不飽和ポリエステルを主成分とするものであってもよい。ここに開示される技術の好ましい一態様では、上記ポリエステル樹脂の主成分が飽和ポリエステルである。水分散性が付与された飽和ポリエステル(例えば、飽和共重合ポリエステル)を主成分とするポリエステル樹脂を好ましく採用し得る。
このようなポリエステル樹脂(水分散液の形態に調製されたものであり得る。)は、公知の方法により合成することができ、あるいは市販品を容易に入手することができる。
上記ポリエステル樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)として、例えば0.5×10〜15×10程度(好ましくは1×10〜6×10程度)であり得る。また、上記ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば0℃〜100℃(好ましくは10〜80℃)であり得る。
上記トップコート層は、ここに開示される表面保護フィルムの性能(例えば、透明性、耐スクラッチ性、耐白化性等の性能)を大きく損なわない限度で、バインダとして、ポリエステル樹脂以外の樹脂(例えば、アクリル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、アクリル−スチレン樹脂、アクリル−シリコーン樹脂、シリコーン樹脂、ポリシラザン樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂等から選択される1種または2種以上の樹脂)をさらに含有し得る。ここに開示される技術の好ましい一態様では、トップコート層のバインダが実質的にポリエステル樹脂のみからなる。例えば、該バインダに占めるポリエステル樹脂の割合が98〜100質量%であるトップコート層が好ましい。トップコート層全体に占めるバインダの割合は、例えば50〜95質量%とすることができ、通常は60〜90質量%とすることが適当である。
<滑り剤>
ここに開示される技術におけるトップコート層は、滑り剤として、高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル(以下「ワックスエステル」ともいう。)を含む。ここで、「高級脂肪酸」とは、炭素原子数が8以上(典型的には10以上、好ましくは10以上40以下)のカルボン酸(典型的には一価のカルボン酸)をいう。また、「高級アルコール」とは、炭素原子数が6以上(典型的には10以上、好ましくは10以上40以下)のアルコール(典型的には一価または二価のアルコール。好ましくは一価のアルコール)をいう。このようなワックスエステルと上記バインダ(ポリエステル樹脂)とを組み合わせて含む組成のトップコート層は、高温多湿条件に保持されても白化しにくい。したがって、かかるトップコート層を有する基材を備えた表面保護フィルムは、より外観品位の高いものとなり得る。
ここに開示される技術を実施するにあたり、上記構成のトップコート層により優れた耐白化性(例えば、高温多湿条件に保持されても白化しにくい性質)が実現される理由を明らかにする必要はないが、ひとつの可能性として以下の理由が考えられる。すなわち、従来使用されているシリコーン系滑剤は、トップコート層の表面にブリードすることにより該表面に滑り性を付与する機能を発揮するものと推察される。しかし、これらシリコーン系滑剤は、保存条件(温度、湿度、経時等)の違いによって上記ブリードの程度が変動しやすい。このため、例えば、通常の保存条件(例えば、25℃、50%RH)に保持された場合に表面保護フィルムの製造直後から比較的長期間(例えば約3ヶ月)に亘って適度な滑り性が得られるようにシリコーン系滑剤の使用量を設定すると、この表面保護フィルムが高温多湿条件(例えば、60℃、95%RH)で2週間保存された場合には、滑剤のブリードが過剰に進行してしまう。このように過剰にブリードしたシリコーン系滑剤は、トップコート層(ひいては表面保護フィルム)を白化させる。
ここに開示される技術では、滑り剤としてのワックスエステルと、トップコート層のバインダとしてのポリエステル樹脂という特定の組合せを採用する。かかる滑り剤とバインダとの組合せによると、上記ワックスエステルのトップコート層からのブリードの程度が保存条件の影響を受けにくい。このことによって表面保護フィルムの耐白化性が向上したものと考えられる。
上記ワックスエステルとしては、下記一般式(W)で表わされる化合物の1種または2種以上を好ましく採用し得る。
X−COO−Y (W)
ここで、上記式(W)中のXおよびYは、それぞれ独立に、炭素原子数10〜40(より好ましくは10〜35、さらに好ましくは14〜35、例えば20〜32)の炭化水素基から選択され得る。上記炭素原子数が小さすぎると、トップコート層に滑り性を付与する効果が不足しがちとなることがあり得る。上記炭化水素基は、飽和であっても不飽和であってもよい。通常は飽和炭化水素基であることが好ましい。また、該炭化水素基は、芳香族の環を含む構造であってもよく、かかる芳香環を含まない構造(脂肪族性炭化水素基)であってもよい。また、脂肪族性の環を含む構造の炭化水素基(脂環式炭化水素基)であってもよく、鎖状(直鎖状および分岐鎖状を包含する意味である。)の炭化水素基であってもよい。
ここに開示される技術における好ましいワックスエステルとして、上記式(W)におけるXおよびYが、それぞれ独立に、炭素原子数10〜40の鎖状アルキル基(より好ましくは直鎖状アルキル基)である化合物が例示される。かかる化合物の具体例としては、セロチン酸ミリシル(CH(CH24COO(CH29CH)、パルミチン酸ミリシル(CH(CH14COO(CH29CH)、パルミチン酸セチル(CH(CH14COO(CH15CH)、ステアリル酸ステアリル(CH(CH16COO(CH17CH)等が挙げられる。
上記ワックスエステルは、融点が50℃以上(より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上、例えば75℃以上)であることが好ましい。かかるワックスエステルによると、より高い耐白化性が実現され得る。また、上記ワックスエステルは、融点が100℃以下であることが好ましい。かかるワックスエステルは、滑り性を付与する効果が高いので、より耐スクラッチ性の高いトップコート層を形成し得る。上記ワックスエステルの融点が100℃以下であることは、該ワックスエステルの水分散液を調製しやすいという点からも好ましい。例えば、セロチン酸ミリシルを好ましく採用し得る。
上記トップコート層の原料としては、このようなワックスエステルを含有する天然ワックスを利用することができる。かかる天然ワックスとしては、不揮発分(NV)基準で、上記ワックスエステルの含有割合(2種以上のワックスエステルを含む場合にはそれらの含有割合の合計)が50質量%よりも多い(好ましくは65質量%以上、例えば75質量%以上である)ものを好ましく採用し得る。例えば、カルナバワックス(一般に、セロチン酸ミリシルを60質量%以上、好ましくは70質量%以上、典型的には80質量%以上の割合で含む。)、パームワックス等の植物性ワックス;蜜ロウ、鯨ロウ等の動物性ワックス;等の天然ワックスを用いることができる。使用する天然ワックスの融点は、通常、50℃以上(より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上、例えば75℃以上)であることが好ましい。また、上記トップコート層の原料としては、化学的に合成されたワックスエステルを用いてもよく、天然ワックスを精製して該ワックスエステルの純度を高めたものを用いてもよい。これらの原料は、単独で、あるいは適宜組み合わせて用いることができる。
トップコート層全体に占める滑り剤の割合は、5〜50質量%とすることができ、通常は10〜40質量%とすることが適当である。滑り剤の含有割合が少なすぎると、耐スクラッチ性が低下しやすくなる傾向にある。滑り剤の含有割合が多すぎると、耐白化性の向上効果が不足しやすくなることがあり得る。
ここに開示される技術は、その適用効果を大きく損なわない限度で、トップコート層が、上記ワックスエステルに加えて他の滑り剤を含む態様で実施され得る。かかる他の滑り剤の例としては、石油系ワックス(パラフィンワックス等)、鉱物系ワックス(モンタンワックス等)、高級脂肪酸(セロチン酸等)、中性脂肪(パルミチン酸トリグリセリド等)のような、ワックスエステル以外の各種ワックスが挙げられる。あるいは、上記ワックスエステルに加えて、一般的なシリコーン系滑剤、フッ素系滑剤等を補助的に含有させてもよい。ここに開示される技術は、かかるシリコーン系滑剤、フッ素系滑剤等を実質的に含有しない態様(例えば、これらの合計含有量がトップコート層全体の0.01質量%以下、もしくは検出限界以下である態様)で好ましく実施され得る。ただし、ここに開示される技術の適用効果を大きく損なわない限度において、滑剤とは別の目的で(例えば、後述するトップコート形成用コーティング材の消泡剤として)用いられるシリコーン系化合物の含有を排除するものではない。
ここに開示される技術におけるトップコート層は、必要に応じて、帯電防止成分、架橋剤、酸化防止剤、着色剤(顔料、染料等)、流動性調整剤(チクソトロピー剤、増粘剤等)、造膜助剤、界面活性剤(消泡剤、分散剤等)、防腐剤等の添加剤を含有し得る。
<トップコート層の帯電防止成分>
ここに開示される技術は、トップコート層が帯電防止成分を含有する態様で好ましく実施され得る。上記帯電防止成分は、表面保護フィルムの帯電を防止または抑制する作用を発揮し得る成分である。トップコート層に帯電防止成分を含有させる場合、その帯電防止成分としては、例えば、有機または無機の導電性物質、各種の帯電防止剤等を用いることができる。
上記有機導電性物質としては、4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1アミノ基、第2アミノ基、第3アミノ基等のカチオン性官能基を有するカチオン型帯電防止剤;スルホン酸塩や硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤;アルキルベタインおよびその誘導体、イミダゾリンおよびその誘導体、アラニンおよびその誘導体等の両性イオン型帯電防止剤;アミノアルコールおよびその誘導体、グリセリンおよびその誘導体、ポリエチレングリコールおよびその誘導体等のノニオン型帯電防止剤;上記カチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基(例えば、4級アンモニウム塩基)を有するモノマーを重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体;ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリエチレンイミン、アリルアミン系重合体等の導電性ポリマー;が挙げられる。このような帯電防止剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記無機導電性物質の例としては、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化亜鉛、インジウム、錫、アンチモン、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、ヨウ化銅、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)等が挙げられる。このような無機導電性物質は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記帯電防止剤の例としては、カチオン型帯電防止剤、アニオン型帯電防止剤、両性イオン型帯電防止剤、ノニオン型帯電防止剤、上記カチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基を有する単量体を重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体、等が挙げられる。
好ましい一態様では、上記トップコート層に用いられる帯電防止成分が有機導電性物質を含む。上記有機導電性物質としては、各種の導電性ポリマーを好ましく用いることができる。かかる構成によると、良好な帯電防止性と高い耐スクラッチ性とを両立させやすい。導電性ポリマーの例としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリエチレンイミン、アリルアミン系重合体等が挙げられる。このような導電性ポリマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、他の帯電防止成分(無機導電性物質、帯電防止剤等)と組み合わせて用いてもよい。導電性ポリマーの使用量は、トップコート層に含まれるバインダ100質量部に対して、例えば10〜200質量部とすることができ、通常は25〜150質量部(例えば40〜120質量部)とすることが適当である。導電性ポリマーの使用量が少なすぎると、帯電防止効果が小さくなる場合がある。導電性ポリマーの使用量が多すぎると、トップコート層における導電性ポリマーの相溶性が不足気味となって、該トップコート層の外観品位が低下したり、耐溶剤性が低下傾向となったりすることがあり得る。
ここに開示される技術において好ましく採用し得る導電性ポリマーとして、ポリチオフェンおよびポリアニリンが例示される。ポリチオフェンとしては、ポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」と表記する。)が40×10以下であるものが好ましく、30×10以下がより好ましい。ポリアニリンとしては、Mwが50×10以下であるものが好ましく、30×10以下がより好ましい。また、これら導電性ポリマーのMwは、通常は0.1×10以上であることが好ましく、より好ましくは0.5×10以上である。なお、本明細書中においてポリチオフェンとは、無置換または置換チオフェンの重合体をいう。ここに開示される技術における置換チオフェン重合体の一好適例として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が挙げられる。
トップコート層を形成する方法として、トップコート層形成用のコーティング材を基材に塗付して乾燥または硬化させる方法を採用する場合、該コーティング材の調製に用いる導電性ポリマーとしては、該導電性ポリマーが水に溶解または分散した形態のもの(導電性ポリマー水溶液)を好ましく使用し得る。かかる導電性ポリマー水溶液は、例えば、親水性官能基を有する導電性ポリマー(分子内に親水性官能基を有するモノマーを共重合させる等の手法により合成され得る。)を水に溶解または分散させることにより調製することができる。上記親水性官能基としては、スルホ基、アミノ基、アミド基、イミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ヒドラジノ基、カルボキシル基、四級アンモニウム基、硫酸エステル基(−O−SOH)、リン酸エステル基(例えば−O−PO(OH))等が例示される。かかる親水性官能基は塩を形成していてもよい。ポリチオフェン水溶液の市販品としては、ナガセケムテック社製の商品名「デナトロン」シリーズが例示される。また、ポリアニリンスルホン酸水溶液の市販品としては、三菱レイヨン社製の商品名「aqua−PASS」が例示される。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、上記コーティング材の調製にポリチオフェン水溶液を使用する。ポリスチレンスルホネート(PSS)を含むポリチオフェン水溶液(ポリチオフェンにPSSがドーパントとして添加された形態であり得る。)の使用が好ましい。かかる水溶液は、ポリチオフェン:PSSを1:1〜1:10の質量比で含有するものであり得る。上記水溶液におけるポリチオフェンとPSSとの合計含有量は、例えば1〜5質量%程度であり得る。このようなポリチオフェン水溶液の市販品としては、H.C.Stark社の商品名「ベイトロン(Baytron)」が例示される。
なお、上記のようにPSSを含むポリチオフェン水溶液を用いる場合には、ポリチオフェンとPSSとの合計量を、バインダ100質量部に対して5〜200質量部(通常は10〜100質量部、例えば25〜70質量部)とするとよい。
ここに開示されるトップコート層は、必要に応じて、導電性ポリマーと、他の1種または2種以上の帯電防止成分(導電性ポリマー以外の有機導電性物質、無機導電性物質、帯電防止剤など)とを共に含んでもよい。好ましい一態様では、上記トップコート層が、導電性ポリマー以外の帯電防止成分を実質的に含有しない。すなわち、ここに開示される技術は、上記トップコート層に含まれる帯電防止成分が実質的に導電性ポリマーのみからなる態様で好ましく実施され得る。
<架橋剤>
ここに開示される技術の好ましい一態様では、トップコート層が架橋剤を含有する。架橋剤としては、一般的な樹脂の架橋に用いられるメラミン系、イソシアネート系、エポキシ系等の架橋剤を適宜選択して用いることができる。かかる架橋剤を用いることにより、耐スクラッチ性の向上、耐溶剤性の向上、印字密着性の向上、摩擦係数の低下(すなわち、滑り性の向上)、のうち少なくとも1つの効果が実現され得る。好ましい一態様では、上記架橋剤がメラミン系架橋剤を含む。架橋剤が実質的にメラミン系架橋剤のみからなる(すなわち、メラミン系架橋剤以外の架橋剤を実質的に含有しない)トップコート層であってもよい。
<トップコート層の形成>
上記トップコート層は、上記樹脂成分および必要に応じて使用される添加剤が適当な溶媒に分散または溶解した液状組成物(トップコート層形成用のコーティング材)を基材に付与することを含む手法によって好適に形成され得る。例えば、上記コーティング材を基材の第一面に塗付して乾燥させ、必要に応じて硬化処理(熱処理、紫外線処理など)を行う手法を好ましく採用し得る。上記コーティング材のNVは、例えば5質量%以下(典型的には0.05〜5質量%)とすることができ、通常は1質量%以下(典型的には0.10〜1質量%)とすることが適当である。厚みの小さいトップコート層を形成する場合には、上記コーティング材のNVを例えば0.05〜0.50質量%(例えば0.10〜0.30質量%)とすることが好ましい。このように低NVのコーティング材を用いることにより、より均一なトップコート層が形成され得る。
上記トップコート層形成用コーティング材を構成する溶媒としては、トップコート層形成成分を安定して溶解または分散し得るものが好ましい。かかる溶媒は、有機溶剤、水、またはこれらの混合溶媒であり得る。上記有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル等のエステル類;メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテル類;n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等の脂肪族または脂環族アルコール類;アルキレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル)、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル等のグリコールエーテル類;等から選択される1種または2種以上を用いることができる。好ましい一態様では、上記コーティング材の溶媒が、水または水を主成分とする混合溶媒(例えば、水とエタノールとの混合溶媒)である。
<トップコート層の性状>
ここに開示される技術におけるトップコート層の厚さは、典型的には3nm〜500nm(好ましくは3nm〜100nm、例えば3nm〜60nm)である。トップコート層の厚さが大きすぎると、表面保護フィルムの透明性(光線透過性)が低下しやすくなる傾向にある。一方、トップコート層の厚みが小さすぎると、該トップコート層を均一に形成することが困難となり(例えば、トップコート層の厚みにおいて、場所による厚みのバラツキが大きくなり)、このため表面保護フィルムの外観にムラが生じやすくなることがあり得る。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、トップコート層の厚さが3nm以上30nm未満(例えば、3nm以上10nm未満)である。かかるトップコート層を備える表面保護フィルムは、より外観品位に優れたものとなり得る。このように外観品位に優れた表面保護フィルムによると、該フィルム越しに製品(被着体)の外観検査をより精度よく行うことができる。上記トップコート層の厚みが小さいことは、基材の特性(光学特性、寸法安定性等)に及ぼす影響が少ないという観点からも好ましい。
上記トップコート層の厚さは、該トップコート層の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察することにより把握することができる。例えば、目的の試料(トップコート層が形成された基材、該基材を備える表面保護フィルム等であり得る。)について、トップコート層を明瞭にする目的で重金属染色処理を行った後、樹脂包埋を行い、超薄切片法により試料断面のTEM観察を行って得られる結果を、ここに開示される技術におけるトップコート層の厚さとして好ましく採用することができる。TEMとしては、日立社製のTEM、型式「H−7650」等を用いることができる。後述する実施例では、加速電圧:100kV、倍率:60,000倍の条件で得られた断面画像について、二値化処理を行った後、視野内のサンプル長さでトップコートの断面積を除算することでトップコート層の厚さ(視野内の平均厚さ)を実測した。
なお、重金属染色を行わなくてもトップコート層を十分明瞭に観察し得る場合には、重金属染色処理を省略してもよい。あるいは、TEMにより把握される厚さと、各種の厚み検出装置(例えば、表面粗さ計、干渉厚み計、赤外分光測定機、各種X線回折装置等)による検出結果との相関につき、検量線を作成して計算を行うことにより、トップコート層の厚さを求めてもよい。
ここに開示される表面保護フィルムの好ましい一態様では、トップコート層の表面における測定される表面抵抗率が1012Ω以下(典型的には10Ω〜1012Ω)である。かかる表面抵抗率を示す表面保護フィルムは、例えば、液晶セルや半導体装置等のように静電気を嫌う物品の加工または搬送過程等において使用される表面保護フィルムとして好適に利用され得る。表面抵抗率が1011Ω以下(典型的には5×10Ω〜1011Ω、例えば10Ω〜1010Ω)の表面保護フィルムがより好ましい。上記表面抵抗率の値は、市販の絶縁抵抗測定装置を用いて、23℃、50%RHの雰囲気下で測定される表面抵抗の値から算出することができる。
トップコート層の摩擦係数は、0.4以下であることが好ましい。このように摩擦係数の低いトップコート層によると、該トップコート層に荷重(スクラッチ傷を生じさせるような荷重)が加わった場合に、その荷重をトップコート層の表面に沿って受け流し、該荷重による摩擦力を軽減することができる。このことによって、トップコート層の凝集破壊(トップコート層がその内部で破壊する損傷態様)や界面破壊(トップコート層が基材背面から剥がれる損傷態様)が起こりにくくなる。したがって、表面保護フィルムにスクラッチ傷を生じる事象をよりよく防止することができる。摩擦係数の下限は特に限定されないが、他の特性(外観品位、印字性等)とのバランスを考慮して、通常は摩擦係数を0.1以上(典型的には0.1以上0.4以下)とすることが適当であり、0.15以上(典型的には0.15以上0.4以下)とすることが好ましい。上記摩擦係数としては、例えば、23℃、50%RHの測定環境下において、トップコート層の表面を垂直荷重40mNで擦過して求められる値を採用することができる。上記ワックスエステル(滑り剤)の使用量は、上記の好ましい摩擦係数が実現されるように設定するとよい。上記摩擦係数の調整には、例えば、架橋剤の添加や成膜条件の調整によりトップコート層の架橋密度を高めることも有効である。
ここに開示される表面保護フィルムは、その背面(トップコート層の表面)が、油性インキにより(例えば、油性マーキングペンを用いて)容易に印字できる性質を有することが好ましい。かかる表面保護フィルムは、該表面保護フィルムを貼り付けた状態で行われる被着体(例えば光学部品)の加工や搬送等の過程において、保護対象たる被着体の識別番号等を上記表面保護フィルムに記載して表示するのに適している。したがって、外観品位に加えて印字性にも優れた表面保護フィルムが好ましい。例えば、溶剤がアルコール系であって顔料を含むタイプの油性インキに対して高い印字性を有することが好ましい。また、印字されたインキが擦れや転着により取れにくい(すなわち、印字密着性に優れる)ことが好ましい。ここに開示される表面保護フィルムは、また、印字を修正または消去する際に該印字をアルコール(例えばエチルアルコール)で拭き取っても外観に目立った変化を生じない程度の耐溶剤性を有することが好ましい。この耐溶剤性の程度は、例えば、後述する耐溶剤性評価により把握することができる。
ここに開示される技術におけるトップコート層は、滑り剤としてのワックスエステルを含有するので、該トップコート層の表面にさらなる剥離処理(例えば、シリコーン系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤等の公知の剥離処理剤を塗付して乾燥させる処理)を施さない態様においても、十分な滑り性(例えば、上述した好ましい摩擦係数)を実現し得る。このようにトップコート層の表面にさらなる剥離処理が施されていない態様は、剥離処理剤に起因する白化(例えば、加熱加湿条件下に保存されることによる白化)を未然に防止し得る等の点で好ましい。また、耐溶剤性の点からも有利である。
<粘着剤層>
ここに開示される表面保護フィルムは、基材の第二面に粘着剤層を備える。表面保護フィルムに適した特性(例えば、被着体に対する粘着力が高すぎないこと、該粘着力の経時上昇が少ないこと、被着体を汚染しないこと、等のうち1または2以上の特性)を有する粘着剤層が好ましい。該粘着剤層を構成する粘着剤の種類は特に限定されない。例えば、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系、シリコーン系、ポリアミド系、フッ素系等の、公知の各種粘着剤から選択される1種または2種以上を含んで構成された粘着剤層であり得る。
<アクリル系粘着剤>
好ましい一態様では、上記粘着剤層を構成する粘着剤がアクリル系粘着剤を含む。例えば、上記粘着剤層がアクリル系粘着剤により構成されている表面保護フィルムが好ましい。一般にアクリル系粘着剤は透明性に優れるため、上記構成によると、より被着体表面の視認性に優れた表面保護フィルムが実現され得る。
以下、上記粘着剤層がアクリル系粘着剤により構成されている表面保護フィルムを主な例として、ここに開示される技術をより詳しく説明するが、上記粘着剤層をアクリル系粘着剤からなるものに限定する意図ではない。
<アクリル系ポリマー>
上記アクリル系粘着剤のベースポリマーたるアクリル系ポリマーは、典型的には、アルキル(メタ)アクリレートを主構成単量体成分とするポリマーである。上記アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH=C(R)COOR (1)
ここで、上記式(1)中のRは、水素原子またはメチル基である。Rは、炭素原子数1〜20のアルキル基である(鎖状アルキル基および脂環式アルキル基を包含する意味である。)。粘着特性に優れた粘着剤が得られやすいことから、Rが炭素原子数2〜14(以下、このような炭素原子数の範囲をC2−14と表わすことがある。)の鎖状アルキル基(直鎖状アルキル基および分岐状アルキル基を包含する意味である。)であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。C2−14の鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、等が挙げられる。Rとして選択し得る脂環式アルキル基としては、シクロヘキシル基、イソボルニル基等が挙げられる。
好ましい一態様では、アクリル系ポリマーの合成に使用するモノマーの総量(以下「全原料モノマー」ともいう。)のうち50質量%以上(典型的には50〜99.9質量%)、より好ましくは70質量%以上(典型的には70〜99.9質量%)、例えば85質量%以上(典型的には85〜99.9質量%)が、上記式(1)におけるRがC2−14の鎖状アルキル(メタ)アクリレート(より好ましくはC4−10の鎖状アルキルアクリレート、例えばn−ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートの一方または両方)から選択される1種または2種以上により占められる。このようなモノマー組成から得られたアクリル系ポリマーによると、表面保護フィルム用途に適した粘着特性を示す粘着剤が形成されやすいので好ましい。
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーとしては、水酸基(−OH)を有するアクリル系モノマーが共重合されたものを好ましく用いることができる。かかる共重合組成(モノマー組成)は、特に、上記アクリル系ポリマーの合成方法として溶液重合法を用いる場合に好ましく採用され得る。水酸基を有するアクリル系モノマーの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。かかる水酸基含有アクリル系モノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。かかるモノマーが共重合されたアクリル系ポリマーは、表面保護フィルム用途に適した粘着特性を示す粘着剤を与えるものとなりやすいので好ましい。例えば、被着体に対する剥離力を低く制御することが容易となることから、再剥離性に優れた粘着剤が得られやすい。特に好ましい水酸基含有アクリル系モノマーとして、水酸基を含有する(メタ)アクリレート、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
このような水酸基含有アクリル系モノマーは、アクリル系ポリマーの合成に使用するモノマーの総量のうち凡そ0.1〜15質量%の範囲で使用されることが好ましく、凡そ0.2〜10質量%の範囲がより好ましく、凡そ0.3〜8質量%の範囲が特に好ましい。水酸基含有アクリル系モノマーの含有量が上記範囲よりも多すぎると、粘着剤の凝集力が大きくなりすぎて流動性が低くなり、被着体に対する濡れ性(密着性)が低下傾向となる場合がある。一方、水酸基含有アクリル系モノマーの含有量が上記範囲よりも少なすぎると、該モノマーの使用効果が十分に発揮され難くなる場合がある。
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーとしては、粘着性能のバランスをとりやすいことから、通常、ガラス転移温度(Tg)が凡そ0℃以下(典型的には−100℃〜0℃)のものが用いられる。Tgが凡そ−80℃〜−5℃の範囲にあるアクリル系ポリマーがより好ましい。Tgが上記範囲よりも高すぎると、常温付近での使用において初期接着性が不足しやすくなり、保護フィルムの貼り付け作業性が低下する場合がある。なお、アクリル系ポリマーのTgは、モノマー組成(すなわち、該ポリマーの合成に使用するモノマーの種類や使用量比を適宜変えることにより調整することができる。
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーには、本発明の効果を顕著に損なわない範囲で、上記以外のモノマー(その他モノマー)が共重合されていてもよい。かかるモノマーは、例えば、アクリル系ポリマーのTg調整、粘着性能(例えば剥離性)の調整等の目的で使用することができる。例えば、粘着剤の凝集力や耐熱性を向上させ得るモノマーとして、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。また、アクリル系ポリマーに架橋基点となり得る官能基を導入し、あるいは接着力の向上に寄与し得るモノマーとして、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルエーテル類等が挙げられる。
スルホン酸基含有モノマーとしては、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム等が例示される。
リン酸基含有モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートが例示される。
シアノ基含有モノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が例示される。
ビニルエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等が例示される。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、その他の置換スチレン等が例示される。
また、カルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が例示される。
酸無水物基含有モノマーとしては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、上記カルボキシル基含有モノマーの酸無水物体等が挙げられる。
アミド基含有モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等が例示される。
アミノ基含有モノマーとしては、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が例示される。
イミド基含有モノマーとしては、シクロへキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、N−シクロへキシルマレイミド、イタコンイミド等が例示される。
エポキシ基含有モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が例示される。
ビニルエーテル類としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等が例示される。
このような「その他モノマー」は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよいが、全体としての含有量は、アクリル系ポリマーの合成に使用するモノマーの総量のうち凡そ40質量%以下(典型的には、0.001〜40質量%)とすることが好ましく、凡そ30質量%以下(典型的には0.001〜30質量%)とすることがより好ましい。また、上記その他モノマーを含まないモノマー組成の(例えば、モノマーとしてC6−14アルキル(メタ)アクリレートのみを用いるか、あるいはC6−14アルキル(メタ)アクリレートと水酸基含有(メタ)アクリレートのみを用いてなる)アクリル系ポリマーであってもよい。
なお、アクリル系ポリマーの合成方法としてエマルション重合法を用い、かつ上記その他モノマーとしてカルボキシル基または酸無水物基を含有するアクリル系モノマーを用いる場合、上記カルボキシル基または酸無水物基を含有するアクリル系モノマーの使用量として、全原料モノマー(100質量%)の0.5〜15質量%の範囲を好ましく採用し得る。かかるモノマー組成のアクリル系ポリマーは、該アクリル系ポリマーをエマルション重合法により合成する際の重合安定性、該アクリル系ポリマーを含む粘着剤層を備えた表面保護フィルムにおける粘着力の経時安定性等の観点から好ましいものとなり得る。
また、アクリル系ポリマーの合成方法としてエマルション重合法を用いる場合における好ましいモノマー組成として、メチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、N,N−ジエチルアクリルアミドおよび酢酸ビニルのうち少なくとも1つのモノマーを含む組成を例示することができる。これらのモノマーの含有量(すなわち、メチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、N,N−ジエチルアクリルアミドおよび酢酸ビニルの含有量であり、これらのうち2種以上を含む場合にはその合計含有量)は、例えば、全原料モノマー(100質量%)の0.5〜15質量%とすることができ、より好ましくは1〜10質量%(例えば2〜5質量%)である。例えば、少なくともメチルメタクリレートを含有するモノマー組成(例えば、全原料モノマーの1〜10質量%、より好ましくは2〜5質量%のメチルメタクリレートを含有するモノマー組成)を好ましく採用し得る。
かかるモノマー組成を有するアクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、塊状重合法、懸濁重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として一般的に用いられる各種の重合方法を適用して該ポリマーを得ることができる。また、上記アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体、グラフト共重合体等であってもよい。生産性等の観点から、通常はランダム共重合体が好ましい。
<重合開始剤>
重合に用いる開始剤は、公知ないし慣用の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、アゾ系重合開始剤を好ましく使用し得る。アゾ系重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が挙げられる。
重合開始剤の他の例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、過酸化水素等の、過酸化物系開始剤;フェニル置換エタン等の、置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤が挙げられる。かかるレドックス系開始剤の例としては、過酸化物とアスコルビン酸との組み合わせ(過酸化水素水とアスコルビン酸との組み合わせ等)、過酸化物と鉄(II)塩との組み合わせ(過酸化水素水と鉄(II)塩との組み合わせ等)、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ、等が挙げられる。
このような重合開始剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全原料モノマー100質量部に対して0.005〜1質量部(典型的には0.01〜1質量部)程度の範囲から選択することができる。
<溶液重合法>
ここに開示される技術の好ましい一態様において、アクリル系ポリマーの合成手法として溶液重合法を好ましく採用することができる。かかる態様は、表面保護フィルムの透明性や粘着性能等の観点から有利なものとなり得る。溶液重合を行う際のモノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。重合温度は、使用するモノマーおよび溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃〜170℃(典型的には40℃〜140℃)程度とすることができる。
溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、公知ないし慣用の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);酢酸エチル、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;イソプロピルアルコール、1−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の低級アルコール類(例えば、炭素原子数1〜4の一価アルコール類);tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を用いることができる。全圧1気圧における沸点が20〜200℃(より好ましくは、25〜150℃)の範囲にある有機溶媒(混合溶媒であり得る。)の使用が好ましい。
かかる溶液重合によると、アクリル系ポリマーが有機溶媒に溶解した態様の重合反応液が得られる。ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーとしては、上記重合反応液または該反応液に適当な後処理を施したものを好ましく用いることができる。典型的には、後処理を施した後のアクリル系ポリマー含有溶液を適当な粘度(濃度)に調整して使用する。あるいは、溶液重合方法以外の重合方法(例えば、エマルション重合、光重合、バルク重合等)を利用してアクリル系ポリマーを合成し、該重合体を有機溶媒に溶解させて溶液状に調製したものを用いてもよい。
<エマルション重合法>
ここに開示される技術の他の好ましい一態様において、アクリル系ポリマーの合成手法としてエマルション重合法を好ましく採用することができる。かかる態様は、表面保護フィルムの製造に係る環境負荷の軽減、アクリル系ポリマーの合成に係る設備費や管理費の軽減等の観点から有利なものとなり得る。エマルション重合の態様は特に限定されず、従来公知の一般的なエマルション重合と同様の態様により、例えば公知の各種モノマー供給方法、重合条件(重合温度、重合時間、重合圧力等)、使用材料(重合開始剤、乳化剤等)を適宜採用して行うことができる。例えば、モノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に重合容器に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等のいずれも採用可能である。モノマー原料の一部または全部をあらかじめ水と混合して乳化し、その乳化液(すなわち、モノマー原料のエマルション)を反応容器内に供給してもよい。重合温度は、使用するモノマーの種類や重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば常温より高く100℃以下(典型的には40〜100℃、例えば40〜80℃)の範囲から選択することができる。
<乳化剤>
エマルション重合によるアクリル系ポリマーの合成において、典型的には乳化剤が用いられる。かかる乳化剤としては、特に制限されず、エマルション重合の分野において公知ないし慣用の各種乳化剤を適宜選択して用いることができる。例えば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤等を使用することができる。アニオン性乳化剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウム等が挙げられる。ノニオン性乳化剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。また、分子中にラジカル重合性官能基(反応性基)を有するラジカル重合性乳化剤(以下「反応性乳化剤」ともいう。)を用いてもよい。
上記反応性乳化剤は、分子中(一分子中)に少なくとも一つのラジカル重合性官能基を有する乳化剤である。上記ラジカル重合性官能基の種類は特に限定されず、例えばビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ビニルエーテル基(ビニルオキシ基)、アリルエーテル基(アリルオキシ基)等であり得る。かかる反応性乳化剤を用いることにより、被着体の汚染がより高度に防止され得る。重合安定性等の観点から、通常は、一分子中に含まれるラジカル重合性官能基の数が1である反応性乳化剤を好ましく採用し得る。
かかる反応性乳化剤は、アニオン性乳化剤にラジカル重合性官能基が導入された構造の乳化剤(以下「アニオン性反応性乳化剤」ともいう。)、ノニオン性乳化剤にラジカル重合性官能基が導入された構造の乳化剤(以下「ノニオン性反応性乳化剤」ともいう。)等であり得る。例えば、非イオン性の親水性基を有するアニオン性乳化剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウム等)にプロペニル基やアリルエーテル基等のラジカル重合性官能基が導入された構造の反応性乳化剤を用いることができる。
このような反応性乳化剤として、市販品を用いることも可能である。かかる市販品の例として、ADEKA社製の商品名「アデカリアソープSE−10N」、商品名「アデカリアソ−プSE−20N」、商品名「アデカリアソープSR−10」、商品名「アデカリアソープSR−20」;第一工業製薬社製の商品名「アクアロンHS−10」、商品名「アクアロンHS−05」;花王社製の商品名「ラテムルPD−104」;等が挙げられる。
これら乳化剤(ラジカル重合性官能基を有しない乳化剤と反応性乳化剤との双方を含む意味である。)は、適宜、単独または併用して用いられる。ラジカル重合性官能基を有しない乳化剤と反応性乳化剤とを適宜の割合で併用してもよい。乳化剤の配合割合は、全モノマー原料100質量部に対して、例えば、0.1〜10質量部とすることができ、通常は0.5〜5質量部程度とすることが適当である。かかる使用量によると、エマルションの安定性と表面保護フィルムの性能(例えば、被着体に対する低汚染性、粘着力の経時安定性等)とが高度に両立され得る。
上記重合(エマルション重合、溶液重合等)には、必要に応じて、従来公知の各種の連鎖移動剤(分子量調節剤あるいは重合度調節剤としても把握され得る。)を使用することができる。かかる連鎖移動剤は、例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類から選択される1種または2種以上であり得る。なかでも好ましい連鎖移動剤として、n−ドデシルメルカプタンおよびt−ドデシルメルカプタンが例示される。連鎖移動剤の使用量は、モノマー成分の総量100質量部に対して、例えば凡そ0.001〜0.5質量部程度とすることができる。好ましい一態様では、上記連鎖移動剤(例えばn−ドデシルメルカプタン)の使用量を、例えば凡そ0.02質量部以上(典型的には0.02〜0.1質量部、好ましくは0.03〜0.07質量部)程度とする。
エマルション重合により得られたアクリル系ポリマーの溶剤不溶分(溶剤不溶成分の割合;以下「ゲル分率」ともいう。)は、該アクリル系ポリマー全体(100質量%)の70質量%以上であることが好ましい。かかるゲル分率を示すアクリル系ポリマーによると、該アクリル系ポリマーを含む粘着剤層を備えた表面保護フィルムにおいて、より高い性能(例えば、被着体に対する低汚染性、粘着力の経時安定性等)が実現され得る。上記ゲル分率は、例えば、使用する材料(重合開始剤、乳化剤、原料モノマー、連鎖移動剤等)の種類や量、重合条件(例えば重合温度)等により制御し得る。ゲル分率の上限値は特に限定されないが、通常はゲル分率が99質量%以下のアクリル系ポリマーが好ましい。
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマー(重合方法を問わない。)は、GPCにより得られた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が10×10以上500×10以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは20×10以上400×10以下、さらに好ましくは30×10以上300×10以下である。
ここでMwとは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。より具体的には、GPC測定装置として商品名「HLC−8220GPC」(東ソー株式会社製)を用いて、ポリスチレン換算値により、次のGPCの測定条件で測定して求めることができる。
[GPCの測定条件]
サンプル濃度:0.2質量%(テトラヒドロフラン溶液)
サンプル注入量:10μL
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流量(流速):0.6mL/min
カラム温度(測定温度):40℃
カラム:
サンプルカラム:商品名「TSKguardcolumn SuperHZ−H」1本+商品名「TSKgel SuperHZM−H」2本」(東ソー株式会社製)
リファレンスカラム:商品名「TSKgel SuperH−RC」1本(東ソー株式会社製)
検出器:示差屈折計(RI)
アクリル系ポリマーのMwが小さすぎると、粘着剤の凝集力が不足して、被着体表面への糊残りを生じやすくなる場合がある。Mwが大きすぎると、粘着剤の流動性が低くなり、被着体に対する濡れ性(密着性)が不足しやすくなる場合がある。かかる濡れ性の不足は、被着体に貼り付けられた表面保護フィルムが使用中に(例えば、表面保護フィルムの場合には、引き続き保護機能を発揮することが望まれる段階で非意図的に)被着体から剥がれる事象を引き起こす要因となり得る。溶液重合法により得られたアクリル系ポリマーにおいては、そのMwが上述した好ましい範囲にあることが特に有意義である。
<粘着剤層の帯電防止成分>
ここに開示される表面保護フィルムは、上記粘着剤層が帯電防止成分を含む態様で好ましく実施され得る。上記帯電防止成分としては、トップコート層に含有させ得る帯電防止成分として上記で説明した材料のほか、イオン液体、アルカリ金属塩等が例示される。これらの帯電防止成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用しても良い。好ましい一態様では、上記粘着剤層に含有される帯電防止成分が、イオン液体およびアルカリ金属塩の少なくとも一方を含む。なお、ここで「イオン液体」(常温溶融塩と称されることもある。)とは、室温(25℃)で液状を呈するイオン性化合物をいう。
<イオン液体>
上記イオン液体としては、含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩および含リンオニウム塩のいずれか1種以上を好ましく用いることができる。好ましい一態様では、上記粘着剤層が、下記一般式(A)〜(E)のいずれかにより表される少なくとも1種の有機カチオン成分を有するイオン液体を含む。かかるイオン液体によると、特に帯電防止性能に優れた表面保護フィルムが実現され得る。
Figure 0006454372
ここで、上記式(A)中、Rは、炭素原子数4〜20の炭化水素基またはヘテロ原子を含む官能基を表す。RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素原子数1〜16の炭化水素基またはヘテロ原子を含む官能基を表す。ただし、窒素原子が2重結合を含む場合、Rはない。
上記式(B)中、Rは、炭素原子数2〜20の炭化水素基またはヘテロ原子を含む官能基を表す。R、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子もしくは炭素原子数1〜16の炭化水素基またはヘテロ原子を含む官能基を表す。
上記式(C)中、Rは、炭素原子数2〜20の炭化水素基またはヘテロ原子を含む官能基を表す。R、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子もしくは炭素原子数1〜16の炭化水素基またはヘテロ原子を含む官能基を表す。
上記式(D)中、Zは、窒素原子、硫黄原子、またはリン原子を表す。R、R、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭素原子数1〜20の炭化水素基もしくはヘテロ原子を含む官能基を表す。ただし、Zが硫黄原子の場合、Rはない。
上記式(E)中、Rは、炭素原子数1〜18の炭化水素基またはヘテロ原子を含む官能基を表す。
式(A)により表されるカチオンとしては、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン等が例示される。
ピリジニウムカチオンの具体例としては、1−メチルピリジニウム、1−エチルピリジニウム、1−プロピルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、1−ペンチルピリジニウム、1−へキシルピリジニウム、1−ヘプチルピリジニウム、1−オクチルピリジニウム、1−ノニルピリジニウム、1−デシルピリジニウム、1−アリルピリジニウム、1−プロピル−2−メチルピリジニウム、1−ブチル−2−メチルピリジニウム、1−ペンチル−2−メチルピリジニウム、1−ヘキシル−2−メチルピリジニウム、1−ヘプチル−2−メチルピリジニウム、1−オクチル−2−メチルピリジニウム、1−ノニル−2−メチルピリジニウム、1−デシル−2−メチルピリジニウム、1−プロピル−3−メチルピリジニウム、1−ブチル−3−メチルピリジニウム、1−ブチル−4−メチルピリジニウム、1−ペンチル−3−メチルピリジニウム、1−へキシル−3−メチルピリジニウム、1−ヘプチル−3−メチルピリジニウム、1−オクチル−3−メチルピリジニウム、1−オクチル−4−メチルピリジニウム、1−ノニル−3−メチルピリジニウム、1−デシル−3−メチルピリジニウム、1−プロピル−4−メチルピリジニウム、1−ペンチル−4−メチルピリジニウム、1−ヘキシル−4−メチルピリジニウム、1−ヘプチル−4−メチルピリジニウム、1−ノニル−4−メチルピリジニウム、1−デシル−4−メチルピリジニウム、1−ブチル−3,4−ジメチルピリジニウム等が挙げられる。
ピロリジニウムカチオンの具体例としては、1,1−ジメチルピロリジニウム、1−エチル−1−メチルピロリジニウム、1−メチル−1−プロピルピロリジニウム、1−メチル−1−ブチルピロリジニウム、1−メチル−1−ペンチルピロリジニウム、1−メチル−1−ヘキシルピロリジニウム、1−メチル−1−ヘプチルピロリジニウム、1−メチル−1−オクチルピロリジニウム、1−メチル−1−ノニルピロリジニウム、1−メチル−1−デシルピロリジニウム、1−メチル−1−メトキシエトキシエチルピロリジニウム、1−エチル−1−プロピルピロリジニウム、1−エチル−1−ブチルピロリジニウム、1−エチル−1−ペンチルピロリジニウム、1−エチル−1−ヘキシルピロリジニウム、1−エチル−1−ヘプチルピロリジニウム、1,1−ジプロピルピロリジニウム、1−プロピル−1−ブチルピロリジニウム、1,1−ジブチルピロリジニウム、ピロリジニウム−2−オン等が挙げられる。
ピペリジニウムカチオンの具体例としては、1−プロピルピペリジニウム、1−ペンチルピペリジニウム、1,1−ジメチルピペリジニウム、1−メチル−1−エチルピペリジニウム、1−メチル−1−プロピルピペリジニウム、1−メチル−1−ブチルピペリジニウム、1−メチル−1−ペンチルピペリジニウム、1−メチル−1−ヘキシルピペリジニウム、1−メチル−1−ヘプチルピペリジニウム、1−メチル−1−オクチルピペリジニウム、1−メチル−1−デシルピペリジニウム、1−メチル−1−メトキシエトキシエチルピペリジニウム、1−エチル−1−プロピルピペリジニウム、1−エチル−1−ブチルピペリジニウム、1−エチル−1−ペンチルピペリジニウム、1−エチル−1−ヘキシルピペリジニウム、1−エチル−1−ヘプチルピペリジニウム、1,1−ジプロピルピペリジニウム、1−プロピル−1−ブチルピペリジニウム、1−プロピル−1−ペンチルピペリジニウム、1−プロピル−1−ヘキシルピペリジニウム、1−プロピル−1−ヘプチルピペリジニウム、1,1−ジブチルピペリジニウム、1−ブチル−1−ペンチルピペリジニウム、1−ブチル−1−ヘキシルピペリジニウム、1−ブチル−1−ヘプチルピペリジニウム等が挙げられる。
ピロリン骨格を有するカチオンの具体例としては、2−メチル−1−ピロリン等が挙げられる。ピロール骨格を有するカチオンの具体例としては、1−エチル−2−フェニルインドール、1,2−ジメチルインドール、1−エチルカルバゾール等が挙げられる。
式(B)で表されるカチオンとしては、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン等が例示される。
イミダゾリウムカチオンの具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−メチル−3−エチルイミダゾリウム、1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ペンチル−3−メチルイミダゾリウム、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ノニル−3−メチルイミダゾリウム、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(2−メトキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム等が挙げられる。
テトラヒドロピリミジニウムカチオンの具体例としては、1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム等が挙げられる。
ジヒドロピリミジニウムカチオンの具体例としては、1,3−ジメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウム、1,3−ジメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウム、1,2,3,4−テトラメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウム、1,2,3,4−テトラメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウム等が挙げられる。
式(C)で表されるカチオンとしては、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオン等が例示される。
ピラゾリウムカチオンの具体例としては、1−メチルピラゾリウム、3−メチルピラゾリウム、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム、1−プロピル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム、1−ブチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム、1−(2−メトキシエチル)ピラゾリウム等が挙げられる。ピラゾリニウムカチオンの具体例としては、1−エチル−2−メチルピラゾリニウム等が挙げられる。
式(D)で表されるカチオンとしては、R、R、RおよびRが、同一または異なって、いずれも炭素原子数1〜20のアルキル基であるカチオンが例示される。かかるカチオンとして、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオンおよびテトラアルキルホスホニウムカチオンが例示される。式(D)で表されるカチオンの他の例として、上記アルキル基の一部がアルケニル基やアルコキシ基、さらにはエポキシ基に置換されたもの等が挙げられる。また、R、R、RおよびRのうち一つまたは二つ以上が芳香環や脂肪族環を含んでいてもよい。
式(D)で表わされるカチオンは、対称構造のカチオンであってもよく、非対称のカチオンであってもよい。対称構造のアンモニウムカチオンとしては、R、R、RおよびRが同一のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、のいずれか)であるテトラアルキルアンモニウムカチオンが例示される。
非対称アンモニウムカチオンの代表例としては、R、R、RおよびRのうち三つが同一であって残りの一つが異なるテトラアルキルアンモニウムカチオン、具体例としては、トリメチルエチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルブチルアンモニウム、トリメチルペンチルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム、トリメチルヘプチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルノニルアンモニウム、トリメチルデシルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、トリエチルブチルアンモニウム、トリエチルペンチルアンモニウム、トリエチルヘキシルアンモニウム、トリエチルヘプチルアンモニウム、トリエチルオクチルアンモニウム、トリエチルノニルアンモニウム、トリエチルデシルアンモニウム、トリプロピルメチルアンモニウム、トリプロピルエチルアンモニウム、トリプロピルブチルアンモニウム、トリプロピルペンチルアンモニウム、トリプロピルヘキシルアンモニウム、トリプロピルヘプチルアンモニウム、トリプロピルオクチルアンモニウム、トリプロピルノニルアンモニウム、トリプロピルデシルアンモニウム、トリブチルメチルアンモニウム、トリブチルエチルアンモニウム、トリブチルプロピルアンモニウム、トリブチルペンチルアンモニウム、トリブチルヘキシルアンモニウム、トリブチルヘプチルアンモニウム、トリペンチルメチルアンモニウム、トリペンチルエチルアンモニウム、トリペンチルプロピルアンモニウム、トリペンチルブチルアンモニウム、トリペンチルヘキシルアンモニウム、トリペンチルヘプチルアンモニウム、トリヘキシルメチルアンモニウム、トリヘキシルエチルアンモニウム、トリヘキシルプロピルアンモニウム、トリヘキシルブチルアンモニウム、トリヘキシルペンチルアンモニウム、トリヘキシルヘプチルアンモニウム、トリヘプチルメチルアンモニウム、トリヘプチルエチルアンモニウム、トリヘプチルプロピルアンモニウム、トリヘプチルブチルアンモニウム、トリヘプチルペンチルアンモニウム、トリヘプチルヘキシルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、トリオクチルエチルアンモニウム、トリオクチルプロピルアンモニウム、トリオクチルブチルアンモニウム、トリオクチルペンチルアンモニウム、トリオクチルヘキシルアンモニウム、トリオクチルヘプチルアンモニウム、トリオクチルドデシルアンモニウム、トリオクチルヘキサデシルアンモニウム、トリオクチルオクタデシルアンモニウム、トリノニルメチルアンモニウム、トリデシルメチルアンモニウム等の、非対称テトラアルキルアンモニウムカチオンが挙げられる。
非対称アンモニウムカチオンの他の例としては、ジメチルジエチルアンモニウム、ジメチルジプロピルアンモニウム、ジメチルジブチルアンモニウム、ジメチルジペンチルアンモニウム、ジメチルジヘキシルアンモニウム、ジメチルジヘプチルアンモニウム、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジノニルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム、ジプロピルジエチルアンモニウム、ジプロピルジブチルアンモニウム、ジプロピルジペンチルアンモニウム、ジプロピルジヘキシルアンモニウム、ジメチルエチルプロピルアンモニウム、ジメチルエチルブチルアンモニウム、ジメチルエチルペンチルアンモニウム、ジメチルエチルヘキシルアンモニウム、ジメチルエチルヘプチルアンモニウム、ジメチルエチルノニルアンモニウム、ジメチルプロピルブチルアンモニウム、ジメチルプロピルペンチルアンモニウム、ジメチルプロピルヘキシルアンモニウム、ジメチルプロピルヘプチルアンモニウム、ジメチルブチルヘキシルアンモニウム、ジメチルブチルヘプチルアンモニウム、ジメチルペンチルヘキシルアンモニウム、ジメチルヘキシルヘプチルアンモニウム、ジエチルメチルプロピルアンモニウム、ジエチルメチルペンチルアンモニウム、ジエチルメチルヘプチルアンモニウム、ジエチルプロピルペンチルアンモニウム、ジプロピルメチルエチルアンモニウム、ジプロピルメチルペンチルアンモニウム、ジプロピルブチルヘキシルアンモニウム、ジブチルメチルペンチルアンモニウム、ジブチルメチルヘキシルアンモニウム、メチルエチルプロピルブチルアンモニウム、メチルエチルプロピルペンチルアンモニウム、メチルエチルプロピルヘキシルアンモニウム等の、テトラアルキルアンモニウムカチオン;トリメチルシクロヘキシルアンモニウム等の、シクロアルキル基を含むアンモニウムカチオン;ジアリルジメチルアンモニウム、ジアリルジプロピルアンモニウム、ジアリルメチルヘキシルアンモニウム、ジアリルメチルオクチルアンモニウム等の、アルケニル基を含むアンモニウムカチオン;トリエチル(メトキシエトキシエチル)アンモニウム、ジメチルエチル(メトキシエトキシエチル)アンモニウム、ジメチルエチル(エトキシエトキシエチル)アンモニウム、ジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウム、ジエチルメチル(メトキシエトキシエチル)アンモニウム等の、アルコキシ基を含むアンモニウムカチオン;グリシジルトリメチルアンモニウム等の、エポキシ基を含むアンモニウムカチオン;等が挙げられる。
対称構造のスルホニウムカチオンとしては、R、RおよびRが同一のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、のいずれか)であるトリアルキルスルホニウムカチオンが例示される。非対称のスルホニウムカチオンとしては、ジメチルデシルスルホニウム、ジエチルメチルスルホニウム、ジブチルエチルスルホニウム等の、非対称トリアルキルスルホニウムカチオンが挙げられる。
対称構造のホスホニウムカチオンとしては、R、R、RおよびRが同一のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、のいずれか)であるテトラアルキルホスホニウムカチオンが例示される。非対称のホスホニウムカチオンとしては、R、R、RおよびRのうち三つが同一であって残りの一つが異なるテトラアルキルホスホニウムカチオン、具体例としては、トリメチルペンチルホスホニウム、トリメチルヘキシルホスホニウム、トリメチルヘプチルホスホニウム、トリメチルオクチルホスホニウム、トリメチルノニルホスホニウム、トリメチルデシルホスホニウム、トリエチルメチルホスホニウム、トリブチルエチルホスホニウム、トリブチル−(2−メトキシエチル)ホスホニウム、トリペンチルメチルホスホニウム、トリヘキシルメチルホスホニウム、トリヘプチルメチルホスホニウム、トリオクチルメチルホスホニウム、トリノニルメチルホスホニウム、トリデシルメチルホスホニウム等が挙げられる。非対称のホスホニウムカチオンの他の例として、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム、ジメチルジペンチルホスホニウム、ジメチルジヘキシルホスホニウム、ジメチルジヘプチルホスホニウム、ジメチルジオクチルホスホニウム、ジメチルジノニルホスホニウム、ジメチルジデシルホスホニウム等の、非対称テトラアルキルホスホニウムカチオン;トリメチル(メトキシエトキシエチル)ホスホニウム、ジメチルエチル(メトキシエトキシエチル)ホスホニウム等の、アルコキシ基を含むスルホニウムカチオン;が挙げられる。
式(D)で表されるカチオンの好適例として、上述のような非対称テトラアルキルアンモニウムカチオン、非対称トリアルキルスルホニウムカチオン、非対称テトラアルキルホスホニウムカチオンが挙げられる。
式(E)で表されるカチオンとしては、Rが炭素原子数1から18のアルキル基のいずれかであるスルホニウムカチオンが例示される。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、等が挙げられる。
上記イオン液体のアニオン成分は、ここに開示されるいずれかのカチオンとの塩がイオン液体になり得るものであればよく、特に限定されない。具体例としては、Cl、Br、I、AlCl 、AlCl 、BF 、PF 、ClO 、NO 、CHCOO、CFCOO、CHSO 、CFSO 、(FSO、(CFSO、(CFSO、AsF 、SbF 、NbF 、TaF 、F(HF) 、(CN)、CSO 、(CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)N、C19COO、(CHPO 、(CPO 、COSO 、C13OSO 、C17OSO 、CH(OCOSO 、C(CH)SO 、(CPF 、CHCH(OH)COO、および、下記式(F)で表されるアニオンが挙げられる。
Figure 0006454372
なかでも、疎水性のアニオン成分は、粘着剤表面にブリードしにくい傾向があり、低汚染性の観点から好ましく用いられる。また、フッ素原子を含むアニオン成分(例えば、パーフルオロアルキル基を含むアニオン成分)は、低融点のイオン性化合物が得られることから好ましく用いられる。かかるアニオン成分の好適例として、ビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミドアニオン(例えば、(CFSO、(CSO)、パーフルオロアルキルスルホニウムアニオン(例えば、CFSO )等の、フッ素含有アニオンが挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素原子数としては、通常、1〜3が好ましく、なかでも1または2が好ましい。
ここに開示される技術において用いられるイオン液体は、上記カチオン成分とアニオン成分との適宜の組み合わせであり得る。一例として、カチオン成分がピリジニウムカチオンである場合、上述したアニオン成分との具体的な組み合わせとしては、1−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−へキシルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−アリルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、等が挙げられる。上述した他のカチオンの各々についても同様に、ここに開示されるいずれかのアニオン成分との組み合わせに係るイオン液体を用いることができる。
このようなイオン液体は、市販のものを使用することができ、あるいは公知の方法により容易に合成することができる。イオン液体の合成方法は、目的とするイオン液体が得られるものであればよく、特に限定されない。一般的には、公知文献“イオン性液体 −開発の最前線と未来−”(シーエムシー出版発行)に記載されているような、ハロゲン化物法、水酸化物法、酸エステル法、錯形成法、および中和法等が用いられる。
イオン液体の配合量は、通常、アクリル系ポリマー100質量部に対して0.03〜3質量部の範囲とすることが適当であり、好ましくは0.05〜2.5質量部、より好ましくは0.1〜2質量部である。イオン液体の配合量が少なすぎると十分な帯電防止特性が得られず、多すぎると被着体を汚染しやすくなる傾向にある。
<アルカリ金属塩>
粘着剤層の帯電防止成分として用いられるアルカリ金属塩の典型例としては、リチウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。例えば、カチオン成分としてのLi、NaまたはKと、アニオン成分としてのCl、Br、I、BF−、PF 、SCN、ClO 、CFSO 、(FSO、(CFSO、(CSOまたは(CFSOとからなる金属塩を用いることができる。解離性が高いことから、リチウム塩の使用が好ましい。好ましい具体例としては、LiBr、LiI、LiBF、LiPF、LiSCN、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOC等のリチウム塩が挙げられる。なかでも特に、アニオン成分がビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミドアニオン、パーフルオロアルキルスルホニウムアニオン等のフッ素含有アニオンであるリチウム塩(例えば、Li(CFSON、Li(CSON、LiCFSO)が好ましい。このようなアルカリ金属塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アクリル系ポリマー100質量部に対するアルカリ金属塩(例えばリチウム塩)の配合量は、通常、1質量部未満とすることが適当であり、好ましくは0.01〜0.8質量部、より好ましくは0.01〜0.5質量部、さらに好ましくは0.02〜0.3質量部(例えば0.05〜0.2質量部)である。アルカリ金属塩の配合量が少なすぎると、十分な帯電防止性能が得られない場合がある。一方、アルカリ金属塩の配合量が多すぎると、被着体の汚染が生じやすくなる傾向にある。
<アルキレンオキシド化合物>
ここに開示される技術は、粘着剤層がアルキレンオキシド化合物を含有する態様で好ましく実施することができる。アルキレンオキシド化合物を含有する粘着剤層は、より再剥離性に優れたものとなり得る。また、かかる粘着剤層は、湿度の多い環境下に保存された場合にも吸湿しにくく、したがって該吸湿に起因する白化を起こしにくいものとなり得る。粘着剤層が白化すると、該粘着剤層を有する表面保護フィルムの外観検査特性(例えば、該表面保護フィルム越しに被着体の外観検査を行う場合における被着体表面の視認性向上)が低下する。したがって、かかる白化を起こしにくい上記態様の表面保護フィルムは、光学用の表面保護フィルム等として特に有用である。
上記アルキレンオキシド鎖は、例えば、上記アクリル系ポリマーに共重合されたアルキレンオキシド鎖含有モノマーの形態で含有され得る。あるいは、上記アクリル系ポリマーに配合された(すなわち、該アクリル系ポリマーと共重合されていない)アルキレンオキシド化合物の形態で含有されてもよい。ここに開示される技術は、例えば、上記粘着剤層が帯電防止成分(好ましくは、イオン液体およびアルカリ金属塩の一方または両方)を含み、かつアルキレンオキシド鎖を含む態様で好ましく実施され得る。
上記アルキレンオキシド鎖含有モノマーとしては、1分子中に、オキシアルキレン単位(アルキレンオキシド鎖)と、アクリル系モノマーと共重合可能な重合性官能基(アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基等)とを有するアルキレンオキシド化合物を用いることができる。ここで「アルキレンオキシド化合物」とは、オキシアルキレン単位の繰り返し数が1であるアルキレンオキシド化合物と、オキシアルキレン単位が2単位以上連続した部分を有する(すなわち、オキシアルキレン単位の繰り返し数が2以上である)アルキレンオキシド化合物との双方を包含する概念である。オキシアルキレン単位に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、例えば1〜6であり得る。このアルキレン基は、直鎖でもよく、分岐していてもよい。好適例としては、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、およびオキシブチレン基等が挙げられる。
好ましい一態様では、上記アルキレンオキシド鎖含有モノマーが、エチレンオキシド鎖を有するモノマーである。アルキレンオキシド鎖の一部にエチレンオキシド鎖を含むモノマーであってもよい。かかるモノマーが共重合されたアクリル系ポリマーをベースポリマーとして用いることにより、ベースポリマーと帯電防止成分との相溶性が向上し、被着体へのブリードが好適に抑制され、低汚染性の粘着剤組成物が得られる。
上記アルキレンオキシド鎖含有モノマーにおけるオキシアルキレン単位の平均付加モル数(繰り返し数)は、1〜50であることが好ましく、2〜40であることがより好ましい。平均付加モル数が1以上のアルキレンオキシド鎖含有モノマーを共重合させることにより、再剥離性の向上効果が効果的に発揮され得る。なお、オキシアルキレン鎖の末端は、水酸基のままであってもよく、他の官能基等により置換されていてもよい。
1分子中に(メタ)アクリロイル基とアルキレンオキシド鎖とを有するモノマーの具体例としては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール−ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
かかるアルキレンオキシド鎖含有モノマーは、反応性界面活性剤と称されるものであり得る。アルキレンオキシド鎖を含有する反応性界面活性剤の例としては、1分子中に上記重合性官能基(アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基等)とアルキレンオキシド鎖とを有するアニオン性反応性界面活性剤、ノニオン性反応性界面活性剤、カチオン性反応性界面活性剤等が挙げられる。上記アルキレンオキシド鎖を含有する反応性界面活性剤は、上述した反応性乳化剤であり得る。すなわち、上述した反応性乳化剤は、アルキレンオキシド鎖含有モノマーとしても把握され得る。かかる反応性乳化剤は、エマルション重合によりアクリル系ポリマーを合成する際の乳化剤として用いられることで該アクリル系ポリマーを含む粘着剤層に含まれてもよく、エマルション重合法以外の方法(例えば溶液重合法)によるアクリル系ポリマーの合成において他の原料モノマーと共重合されることで該アクリル系ポリマーを含む粘着剤層に含まれてもよい。
ここに開示されるアルキレンオキシド鎖含有モノマーとして使用し得る市販品の具体的としては、上述した市販の反応性乳化剤のほか、日油社製の商品名「ブレンマーPME−400」、同「ブレンマーPME−1000」、同「ブレンマー50POEP−800B」;花王社製の商品名「ラテムルPD−420」、同「ラテムルPD−430」、同「エマルゲン120」、同「エマルゲンA−90」;ADEKA社製の商品名「アデカリアソープER−10」、同「アデカリアソープNE−10」;日本乳化剤社製の商品名「ニューコール1008」;第一工業製薬社製の商品名「ノイゲンXL−100」;等が挙げられる。
上記アルキレンオキシド鎖含有モノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよいが、全体としての使用量は、アクリル系ポリマーの合成に使用するモノマーの総量のうち40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
上記アクリル系ポリマーに配合するアルキレンオキシド化合物としては、例えば、オキシアルキレン単位に含まれるアルキレン基の炭素原子数が1〜6(好ましくは1〜4、より好ましくは2〜4、例えば2〜3)である各種のアルキレンオキシド化合物を用いることができる。上記アルキレン基は、直鎖でもよく、分岐していてもよい。オキシアルキレン単位の平均付加モル数(繰り返し数)は、1〜50であることが好ましく、1〜40であることがより好ましい。
アルキレンオキシド化合物の具体例としては、ポリオキシアルキレンポリオール;ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンジアミン、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(好適例として、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが挙げられる。)、ポリオキシアルキレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルアリルエーテル等の非イオン性界面活性剤;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;その他、ポリアルキレンオキシド鎖を有するカチオン性界面活性剤や両イオン性界面活性剤、ポリアルキレンオキシド鎖を有するポリエーテルエステルおよびその誘導体、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、等が挙げられる。また、上述したアルキレンオキシド鎖含有モノマーを、アルキレンオキシド鎖含有化合物としてアクリル系ポリマーに配合してもよい。かかるアルキレンオキシド鎖含有化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ここに開示される技術において使用し得るアルキレンオキシド化合物の一好適例として、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、オキシプロピレン単位とオキシエチレン単位とを含む化合物(これら単位の配列は、ランダムであってもよく、ブロック状であってもよい。)等の、ポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。ジオール型、トリオール型、ヘキサオール型等のいずれの分子構造を有するものも使用可能である。例えば、ジオール型のポリオキシアルキレンポリオールを好ましく採用し得る。オキシプロピレン単位とオキシエチレン単位とを含む化合物の具体例としては、PPG−PEGのブロック共重合体、PPG−PEG−PPGのブロック共重合体、PEG−PPG−PEGのブロック共重合体等が挙げられる。他の好適例として、ポリオキシアルキレンポリオールの誘導体が挙げられる。例えば、末端がエーテル化されたポリオキシアルキレンポリオール(PPGモノアルキルエーテル、PEG−PPGモノアルキルエーテル等)、末端がアセチル化されたポリオキシアルキレンポリオール(末端アセチル化PPG等)を使用し得る。
好ましい一態様では、上記アルキレンオキシド化合物が、少なくとも一部にエチレンオキシド鎖を有する化合物である。かかる化合物(エチレンオキシド鎖含有化合物)を配合することにより、ベースポリマーと帯電防止成分との相溶性が向上し、被着体へのブリードが好適に抑制され、低汚染性の粘着剤組成物が得られる。上記エチレンオキシド鎖含有化合物としては、該化合物全体に占めるエチレンオキシド鎖の質量が5〜85質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜80質量%、さらに好ましくは5〜75質量%である。
上記アルキレンオキシド化合物としては、数平均分子量(Mn)が10000以下のものが適当であり、通常は200〜5000のものが好適に用いられる。Mnが10000よりも大きすぎると、アクリル系ポリマーとの相溶性が低下して粘着剤層が白化しやすくなる傾向にある。Mnが200よりも小さすぎると、該アルキレンオキシド化合物による汚染が生じやすくなることがあり得る。ここでMnとは、粘着剤組成物中に含まれる全てのアルキレンオキシド化合物についての数平均分子量を指す。上記Mnは、GPCにより得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。より具体的には、GPC測定装置として商品名「HLC−8220GPC」(東ソー株式会社製)を用いて、ポリスチレン換算値により、次のGPCの測定条件で測定して求めることができる。
[GPCの測定条件]
サンプル濃度:0.2質量%(THF溶液)
サンプル注入量:10μL
溶離液:THF
流量(流速):0.6mL/min
カラム温度(測定温度):40℃
カラム:
サンプルカラム:商品名「TSKguardcolumn SuperHZ−H」1本+商品名「TSKgel SuperHZM−H」2本」(東ソー株式会社製)
リファレンスカラム:商品名「TSKgel SuperH−RC」1本(東ソー株式会社製)
検出器:示差屈折計(RI)
ここに開示される技術における粘着剤層に上記アルキレンオキシド化合物を含有させる場合、その配合量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、例えば0.01〜40質量部とすることができ、好ましくは0.05〜30質量部、より好ましくは0.1〜20質量部である。アルキレンオキシド化合物の配合量を0.1〜10質量部としてもよく、さらに0.1〜5質量部(例えば0.1〜1質量部)としてもよい。配合量が少なすぎると添加効果が少なくなり、多すぎると該アルキレンオキシド化合物による汚染が生じやすくなることがあり得る。
ここに開示される技術は、上記アルキレンオキシド化合物として下記式(a)で表される化合物を、単独でまたは2種以上を混合して用いる態様で好ましく実施され得る。
O−(PO)−(EO)−(PO)−R (a)
なお、本明細書において、POはオキシプロピレン基[−CHCH(CH)O−]を表し、EOはオキシエチレン基[−CHCHO−]を表す。
上記式(a)中、RおよびRは、アルキル基(直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。)または水素原子を表す。RとRとは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。上記アルキル基の好適例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基(典型的には直鎖状アルキル基)が挙げられる。ここに開示される技術の好ましい一態様において、上記RおよびRがいずれも水素原子であるアルキレンオキシド化合物を好ましく採用し得る。
上記式(a)中のlおよびnは、それぞれ正数(典型的には1以上の整数)である。lおよびnがいずれも1〜100の範囲にあることが好ましく、より好ましくは10〜50(例えば10〜30)である。lとnとは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、上記式(a)中のmは正数(典型的には1以上の整数)であり、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜30(例えば1〜15)である。
上記式(a)において、EOとPOの付加形態(共重合形態)はブロック型である。すなわち、上記式(a)で表される化合物は、EOからなるブロック(例えばPEGブロック)の両側にPOからなるブロック(例えばPPGブロック)を有するトリブロック共重合体またはその誘導体である。
上記式(a)で表されるアルキレンオキシド化合物(以下「化合物(a)」ともいう。)の、化合物(a)の総質量に対するEOの総質量の割合[(EOの総質量)/(化合物(a)の総質量)×100](単位:質量%)は、特に限定されないが、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは10〜30質量%である。かかる構造の化合物(a)を用いる含む粘着剤組成物は、よりレベリング性の良いものとなり得る。粘着剤層のレベリング性が高いことは、表面保護フィルムの粘着特性や外観特性の観点から有利である。なお、上記「化合物(a)の総質量」とは、「粘着剤組成物中に含まれる全ての化合物(a)の質量の合計量」であり、「EOの総質量」とは、「粘着剤組成物中の全ての化合物(a)に含まれるEOの質量の合計量」である。以下、上記の「化合物(a)の総質量に対するEOの総質量の割合を、「エチレンオキシド含有率」または「EO含有率」ともいう。EO含有率の測定方法としては、例えば、核磁気共鳴(NMR)、クロマトグラフィーまたは飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)が挙げられる。
上記化合物(a)のMnは、特に限定されないが、1200〜4000が好ましく、より好ましくは1500〜3000である。Mnが上記範囲にある化合物(a)は、アクリル系ポリマーとの相溶性が良好である。したがって、かかる化合物(a)を含む粘着剤層を備えた表面粘着シートは、該粘着剤層の外観品質に優れ、かつ再剥離性に優れたものとなり得る。
ここで数平均分子量(Mn)とは、粘着剤組成物中に含まれる全ての化合物(a)についての数平均分子量を指す。上記数平均分子量(Mn)は、GPCにより測定して得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。
上記化合物(a)は、例えば、脂肪酸や高級アルコールにエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを反応させて得ることができる。また、エチレングリコールとプロピレングリコールとを反応させることにより得ることもできる。
上記化合物(a)としては、市販品を用いることも可能である。かかる市販品の具体例としては、ADEKA社製の商品名「アデカプルロニック 25R−1」、商品名「アデカプルロニック 25R−2」、商品名「アデカプルロニック 17R−2」、商品名「アデカプルロニック 17R−3」;BASFジャパン社製の商品名「プルロニックRPE」シリーズ;シグマ−アルドリッチ社製のポリ(エチレングリコール)−block−ポリ(プロピレングリコール)−block−ポリ(エチレングリコール)等が挙げられる。
ここに開示される技術における粘着剤層に化合物(a)を含有させる場合、その配合量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、例えば0.01〜3.0質量部とすることができ、通常は0.01〜2.0質量部とすることが適当であり、好ましくは0.02〜1.5質量部、より好ましくは0.02〜1.0質量部(例えば0.1〜0.5質量部)である。かかる配合量によると、粘着剤層の外観品質に優れ、かつ被着体の汚染防止性に優れた表面保護フィルムが実現され得る。
上記化合物(a)を含む粘着剤組成物(典型的には、溶剤型または水分散型の粘着剤組成物)の調製にあたっては、該化合物(a)を、溶媒を用いず化合物(a)のみの形態で使用する(例えば、アクリル系ポリマーを含む溶液または分散液に化合物(a)を配合する)ことが好ましい。あるいは、配合作業性を向上させる等の目的で、化合物(a)を適当な溶媒に分散または溶解させたものを用いてもよい。例えば、水分散型の粘着剤組成物の調製において、このように化合物(a)を適当な溶媒に分散または溶解させて使用する態様を好ましく採用し得る。上記溶媒の例としては、2−エチルヘキサノール、ブチルセルソルブ、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の有機溶媒が挙げられる。
<粘着剤組成物>
ここに開示される技術において、粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物の形態は特に限定されない。例えば、有機溶媒中に粘着成分を含む形態の粘着剤組成物(溶剤型粘着剤組成物)、粘着成分が水性溶媒に分散した形態の粘着剤組成物(水分散型粘着剤組成物、典型的には水性エマルション型粘着剤組成物)、粘着成分が水に溶解した形態の粘着剤組成物(水溶液型粘着剤組成物)、無溶剤型粘着剤組成物(例えば、紫外線や電子線等のような活性エネルギー線の照射により硬化するタイプの粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物)等であり得る。ここに開示される表面保護フィルムの好ましい一態様では、該表面保護フィルムが、溶剤型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える。上記溶剤型粘着剤組成物に含まれる有機溶媒は、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタンおよびイソプロピルアルコールのいずれかからなる単独溶媒であってもよく、これらのいずれかを主成分とする混合溶媒であってもよい。他の好ましい一態様では、該表面保護フィルムが、水分散型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える。
ここに開示される技術において、粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物(好ましくは、溶剤型または水分散型の粘着剤組成物)としては、該組成物に含まれるアクリル系ポリマーを適宜架橋させ得るように構成されたものを好ましく採用し得る。具体的な架橋手段としては、適当な官能基(水酸基、カルボキシル基等)を有するモノマーを共重合させることによりアクリル系ポリマーに架橋基点を導入しておき、その官能基と反応して架橋構造を形成し得る化合物(架橋剤)をアクリル系ポリマーに添加して反応させる方法を好ましく採用し得る。架橋剤としては、一般的なアクリル系ポリマーの架橋に用いられる各種材料、例えばイソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン系樹脂、アジリジン化合物等を用いることができる。このような架橋剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記架橋剤としては、被着体からの剥離力を適度な範囲に調整しやすいことから、イソシアネート化合物が特に好ましく用いられる。かかるイソシアネート化合物の例としては:トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;等が挙げられる。より具体的には:ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物;等を例示することができる。このようなイソシアネート化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、架橋剤として用いられるエポキシ化合物としては、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(三菱ガス化学社製、商品名「TETRAD−X」)、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製、商品名「TETRAD−C」)等が例示される。メラミン系樹脂としては、ヘキサメチロールメラミン等が例示される。アジリジン誘導体としては、市販品として、相互薬工社製の商品名「HDU」、同「TAZM」、同「TAZO」等が挙げられる。
架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマーの組成および構造(分子量等)や、表面保護フィルムの使用態様等に応じて適宜選択することができる。通常は、アクリル系ポリマー100質量部に対する架橋剤の使用量を凡そ0.01〜15質量部とすることが適当であり、凡そ0.1〜10質量部(例えば凡そ0.2〜5質量部)程度とすることが好ましい。架橋剤の使用量が少なすぎると、粘着剤の凝集力が不足し、被着体への糊残りを生じやすくなる場合がある。一方、架橋剤の使用量が多すぎると、粘着剤の凝集力が大き過ぎて流動性が低くなり、被着体に対する濡れ性が不足して剥がれの原因となる場合があり得る。
<アセチレンジオール化合物>
ここに開示される技術における粘着剤層には、また、アセチレンジオール化合物を含有させることができる。上記アセチレンジオール化合物を含む組成の粘着剤組成物は、よりレベリング性の良いものとなり得る。粘着剤層のレベリング性が高いことは、表面保護フィルムの粘着特性や外観特性(例えば、該表面保護フィルム越しに被着体の外観検査を行う場合における被着体表面の視認性)の観点から有利である。上記粘着剤層の形成にエマルション型の粘着剤組成物を用いる場合には、アセチレンジオール化合物を含有させることが特に有意義である。一般に、エマルション型の粘着剤組成物は、溶剤型の粘着剤組成物に比べてレベリング性が低くなる傾向にあるためである。
ここで「アセチレンジオール化合物」とは、分子内にアセチレン結合を有するジオールをいう。特に限定するものではないが、上記アセチレンジオール化合物としては、例えば、下記式(b1)で表される化合物、下記式(b2)で表される化合物等を好ましく採用することができる。以下、下記式(b1)で表されるアセチレンジオール化合物を「化合物(b1)」ということがある。また、下記式(b2)で表されるアセチレンジオール化合物を「化合物(b2)」ということがある。
上記アセチレンジオール化合物として、例えば、下記式(b1)で表される化合物を好ましく採用することができる。
Figure 0006454372
上記式(b1)中のR、R、RおよびRは、炭素原子数1〜20の有機基を表す。上記有機基は、炭化水素基であってもよく、ヘテロ原子を含む有機基(典型的には、炭素、水素およびヘテロ原子(酸素原子、窒素原子、硫黄原子等)を含む有機基)であってもよい。R、R、RおよびRは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
上記式(b1)中のR、R、RおよびRは、鎖状(直鎖状または分岐鎖状を包含する意味である。)および環状のいずれの構造であってもよい。通常は、R、R、RおよびRがいずれも鎖状の有機基(例えば、飽和または不飽和の鎖状炭化水素基)である化合物(b1)を好ましく採用し得る。RおよびRは、炭素原子数2〜10のアルキル基であることが好ましく、例えば、炭素原子数4の数の鎖状アルキル基(n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基またはイソブチル基)であることが好ましい。また、RおよびRは、炭素原子数1〜4のアルキル基であることが好ましく、例えば炭素原子数1または2のアルキル基(すなわち、メチル基またはエチル基)であることが好ましい。
上記式(b1)で表されるアセチレンジオール化合物(化合物(b1))の具体例としては、7,10−ジメチル−8−ヘキサデシン−7,10−ジオール、4,7−ジメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール等が挙げられる。
上記式(b1)で表されるアセチレンジオール化合物としては、市販品を用いることができる。かかる市販品の具体例としては、エアープロダクツ社製の商品名「サーフィノール104」シリーズが挙げられる。より具体的には、「サーフィノール104E」、「サーフィノール104H」、「サーフィノール104A」、「サーフィノール104BC」、「サーフィノール104DPM」、「サーフィノール104PA」、「サーフィノール104PG−50」等が挙げられる。
また、上記アセチレンジオール化合物として、例えば、下記式(b2)で表される化合物を好ましく採用することができる。
Figure 0006454372
上記式(b2)中のR、R、RおよびRは、炭素原子数1〜20の有機基を表す。上記有機基は、炭化水素基であってもよく、ヘテロ原子を含む有機基(典型的には、炭素、水素およびヘテロ原子(酸素原子、窒素原子、硫黄原子等)を含む有機基)であってもよい。R、R、RおよびRは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、上記式(b2)中のpおよびqは0以上の整数であり、pとqの和(p+q)は1以上である。なお、pが0の場合[−O−(CHCHO)H」は水酸基[−OH」であり、qについても同様である。
p+qが1〜20である化合物(b2)が好ましく、より好ましくは1〜9である。pとqとは同一の数であってもよく、異なる数であってもよい。pおよびqは、化合物(b2)のHLB値が13未満になるように調整されることが好ましい。
上記式(b2)中のR、R、RおよびRは、鎖状(直鎖状または分岐鎖状を包含する意味である。)および環状のいずれの構造であってもよい。通常は、R、R、RおよびRがいずれも鎖状の有機基(例えば、飽和または不飽和の鎖状炭化水素基)である化合物(b2)を好ましく採用し得る。RおよびRは、炭素原子数2〜10のアルキル基であることが好ましく、例えば、炭素原子数4の数の鎖状アルキル基(n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基またはイソブチル基)であることが好ましい。また、RおよびRは、炭素原子数1〜4のアルキル基であることが好ましく、例えば炭素原子数1または2のアルキル基(すなわち、メチル基またはエチル基)であることが好ましい。
上記式(b2)で表されるアセチレンジオール化合物(化合物(b2))の具体例としては、例えば、7,10−ジメチル−8−ヘキサデシン−7,10−ジオールのエチレンオキシド付加物、4,7−ジメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド付加物、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド付加物、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオールのエチレンオキシド付加物等が挙げられる。
上記式(b2)中のpおよびqは、化合物(b2)のHLB値が13未満になるように選択されることが好ましい。例えば、化合物(b2)がで表されるアセチレンジオール化合物が2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド付加物である場合には、pとqとの合計(p+q)は9以下が好ましい。
上記式(b2)で表されるアセチレンジオール化合物としては、市販品を用いることができる。かかる市販品の具体例としては、エアープロダクツ社製の商品名「サーフィノール400」シリーズが挙げられる。より具体的には、「サーフィノール420」、「サーフィノール440」等が挙げられる。
アセチレンジオール化合物(化合物(b1)、化合物(b2)その他のアセチレンジオール化合物であり得る。)を含む粘着剤組成物(典型的には、溶剤型または水分散型の粘着剤組成物)の調製にあたっては、該アセチレンジオール化合物を、溶媒を用いずアセチレンジオール化合物のみの形態で使用する(例えば、アクリル系ポリマーを含む溶液または分散液に上記アセチレンジオール化合物を配合する)ことが好ましい。あるいは、配合作業性を向上させる等の目的で、上記のアセチレンジオール化合物を適当な溶媒に分散または溶解させたものを用いてもよい。例えば、水分散型の粘着剤組成物の調製において、このようにアセチレンジオール化合物を適当な溶媒に分散または溶解させて使用する態様を好ましく採用し得る。上記溶媒の例としては、2−エチルヘキサノール、ブチルセルソルブ、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の有機溶媒が挙げられる。これらの溶媒の中でも、水分散性の観点から、エチレングリコール、プロピレングリコールが好ましく用いられる。なお、上記配合の際において、アセチレンジオール化合物を溶媒に分散または溶解したもの(100質量%)の溶媒含有率は、エチレングリコールを溶媒として用いる場合には40質量%未満(例えば15〜35質量%)が好ましく、プロピレングリコールを溶媒として用いる場合には70質量%未満(例えば20〜60質量%)が好ましい。
上記アセチレンジオール化合物(化合物(b1)、化合物(b2)その他のアセチレンジオール化合物であり得る。)としては、HLB値(以下、単に「HLB」と称する場合もある。)が例えば13未満のものを好ましく採用することができる。かかるHLBを示すアセチレンジオール化合物は、被着体に対する低汚染性に優れるので好ましい。かかる観点から、HLBが1〜10であるアセチレンジオール化合物の使用がより好ましく、さらに好ましくは3〜8(例えば3〜5)である。
なお、ここでいうHLB値は、GriffinによるHydrophile−Lipophile Balanceを指し、界面活性剤の水や油への親和性の程度を表す値である。HLB値の定義は、W.C.Griffin:J.SOC.Cosmetic,Chemists,1311(1949)や、高橋越民、難波義郎、小池基生、小林正雄 共著、「界面活性剤ハンドブック」、第3版、工学図書株式会社出版、昭和47年11月25日、p179〜182等に記載されている。
このようなアセチレンジオール化合物は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。アセチレンジオール化合物の配合量(2種以上を用いる場合にはそれらの合計配合量)は、アクリル系ポリマー100質量部に対して0.01〜10質量部とすることができ、好ましくは0.1〜7質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。かかる配合量によると、粘着剤層の外観品質と被着体に対する低汚染性とをより高度なレベルでバランスよく両立させた表面保護フィルムが実現され得る。
上記粘着剤組成物には、さらに、従来公知の各種添加剤を必要に応じて配合することができる。かかる添加剤の例としては、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、防腐剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリング剤等が挙げられる。また、アクリル系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤組成物において公知ないし慣用の粘着付与樹脂を配合してもよい。
<粘着剤層の形成方法>
ここに開示される技術における粘着剤層は、例えば、上記のような粘着剤組成物を基材フィルムの第二面に直接付与して乾燥または硬化させる方法(直接法)により形成することができる。あるいは、上記粘着剤組成物を剥離ライナーの表面(剥離面)に付与して乾燥または硬化させることで該表面上に粘着剤層を形成し、この粘着剤層を基材フィルムに貼り合わせて該粘着剤層を転写する方法(転写法)により形成してもよい。粘着剤層の投錨性の観点から、通常は上記直接法を好ましく採用し得る。粘着剤組成物の付与(典型的には塗付)に際しては、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、ダイコーターによるコート法等の、表面保護フィルムの分野において従来公知の各種方法を適宜採用することができる。粘着剤組成物の乾燥は、必要に応じて加熱下で(例えば、60℃〜150℃程度に加熱することにより)行うことができる。粘着剤組成物を硬化させる手段としては、紫外線、レーザー線、α線、β線、γ線、X線、電子線等を適宜採用することができる。特に限定するものではないが、粘着剤層の厚さは、例えば3μm〜100μm程度とすることができ、通常は5μm〜50μm程度(例えば10μm〜30μm程度)が好ましい。
ここに開示される表面保護フィルムは、必要に応じて、粘着面(粘着剤層のうち被着体に貼り付けられる側の面)を保護する目的で、該粘着面に剥離ライナーを貼り合わせた形態(剥離ライナー付き表面保護フィルムの形態)で提供され得る。剥離ライナーを構成する基材としては、紙、合成樹脂フィルム等を使用することができ、表面平滑性に優れる点から合成樹脂フィルムが好適に用いられる。例えば、剥離ライナーの基材として各種の樹脂フィルム(例えばポリエステルフィルム)を好ましく用いることができる。剥離ライナーの厚さは、例えば凡そ5μm〜200μmとすることができ、通常は凡そ10μm〜100μm程度が好ましい。剥離ライナーのうち粘着剤層に貼り合わされる面には、従来公知の離型剤(例えば、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系、脂肪酸アミド系等)あるいはシリカ粉等を用いて、離型または防汚処理が施されていてもよい。
<表面保護フィルムの性能>
好ましい一態様に係る表面保護フィルムは、23℃、50%RHの測定環境下において測定される剥離帯電圧が、被着体(偏光板)側、表面保護フィルム側ともに±1kV以内(より好ましくは±0.8kV以内、さらに好ましくは±0.7kV以内)となる帯電防止性能を示す。より好ましい一態様に係る表面保護フィルムは、23℃、25%RHの測定環境(低湿度環境)下において測定される剥離帯電圧が、被着体側、表面保護フィルム側ともに±1kV以内(より好ましくは±0.8kV以内、さらに好ましくは±0.7kV以内)となる帯電防止性能を示す。少なくとも表面保護フィルム側の剥離帯電圧が、50%RHの測定条件、25%RHの測定条件のいずれの場合にも±0.1kV以内である表面保護フィルムが好ましい。
ここに開示される表面保護フィルムは、基材、トップコート層および粘着剤層に加えて、さらに他の層を含む態様でも実施され得る。かかる「他の層」の配置としては、基材の第一面(背面)とトップコート層との間、基材の第二面(前面)と粘着剤層との間等が例示される。基材背面とトップコート層との間に配置される層は、例えば、帯電防止成分を含む層(帯電防止層)であり得る。基材前面と粘着剤層との間に配置される層は、例えば、上記第二面に対する粘着剤層の投錨性を高める下塗り層(アンカー層)、帯電防止層等であり得る。基材前面に帯電防止層が配置され、該帯電防止層の上にアンカー層が配置され、その上に粘着剤層が配置された構成の表面保護フィルムであってもよい。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、例えば図1に示すように、基材12の背面12Aにトップコート層14が直接設けられている。すなわち、基材背面12Aとトップコート層14との間に他の層(例えば帯電防止層)が介在しない。かかる構成によると、基材背面12Aとトップコート層14との間に他の層を介在した構成に比べて、基材背面12Aとトップコート層14との密着性を高めることができる。したがって、より耐スクラッチ性に優れた表面保護フィルムが実現されやすい。
ここに開示される表面保護フィルムは、例えば図3に示すように、被着体50に貼り付けられた表面保護フィルム1の背面(トップコート層14の表面)1Aに粘着テープ60を貼り付け、その粘着テープ(ピックアップテープ)60を引っ張って被着体50から表面保護フィルム1の少なくとも一部を持ち上げる操作(ピックアップ操作)を含む態様で好ましく使用(被着体表面から剥離)され得る。ピックアップテープ60としては、基材(好ましくは樹脂フィルム)64と、その片面に設けられた粘着剤層62とを備える片面粘着テープとして構成されたものを好ましく採用し得る。粘着剤層62を構成する粘着剤の種類は特に限定されない。例えば、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系、シリコーン系、ポリアミド系、フッ素系等の、公知の各種粘着剤から選択される1種または2種以上を含んで構成された粘着剤層62であり得る。粘着剤層62の厚さは、例えば3μm〜100μm程度とすることができ、通常は5μm〜50μm程度(例えば10μm〜30μm程度)が好ましい。
ここで、表面保護フィルム1の背面1Aに対するピックアップテープ60の粘着力(以下「背面剥離強度」ともいう。)が、その粘着剤層62を構成する粘着剤の種類によって大きく異なると、使用するピックアップテープ60の選択自由度が低くなることがあり得る。また、かかる背面剥離強度の相違は、ピックアップテープ60を用いて表面保護フィルム1を被着体50から除去する作業者を戸惑わせ、作業効率の低下や作業負荷の増大を招くことがあり得る。一方、一般的なピックアップテープは、入手容易性やコストの観点から、アクリル系粘着剤からなる粘着剤層(アクリル系粘着剤層)か、ゴム系粘着剤からなる粘着剤層(ゴム系粘着剤層)のいずれかを備える。したがって、これら代表的な2種類のピックアップテープが比較的近い背面剥離強度を示す表面保護フィルムが好ましい。ここに開示される技術に係るトップコート層は、滑り剤としてワックスエステルを含有する。かかる組成のトップコート層は、例えば上記ワックスエステルの代わりにシリコーン系滑剤を含む組成のトップコート層に比べて、ピックアップテープの粘着剤層の種類による背面剥離強度の違いが小さい(すなわち、背面剥離強度のピックアップテープ粘着剤依存性が小さい)傾向にあるので好ましい。
ピックアップテープの基材は、上記ピックアップ操作を行い得る強度および柔軟性を有するものであればよく、特に限定されない。例えば、表面保護フィルムの基材と同様の樹脂フィルムを好ましく採用し得る。あるいは、天然ゴム、ブチルゴム等からなるゴムシート;ポリウレタン、ポリクロロプレンゴム、ポリエチレン等を発泡させてなる発泡体シート;クラフト紙、クレープ紙、和紙等の紙;綿布、スフ布等の布;セルロース系不織布、ポリエステル不織布、ビニロン不織布等の不織布;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;これらの複合体;等を用いてもよい。ピックアップテープの基材の厚さは目的に応じて適宜選択できるが、一般的には概ね10μm〜500μm(典型的には10μm〜200μm)程度である。
好ましい一態様に係る表面保護フィルムでは、アクリル系粘着剤層を有するピックアップテープ(例えば、日東電工社製の商品名「No.31B」)の背面剥離強度をFa(N/20mm)とし、ゴム系粘着剤層を有するピックアップテープ(例えば、ニチバン社製の商品名「セロテープ(登録商標)」)の背面剥離強度をFr(N/20mm)とした場合に、|Fa−Fr|が1.5(N/20mm)以下であり、より好ましくは1.2(N/20mm)以下であり、例えば1.0(N/20mm)以下である。かかる特性を有する表面保護フィルムは、背面剥離強度のピックアップテープ粘着剤依存性が小さい。したがって、上記ピックアップ操作における使用感が良いので好ましい。
なお、上記背面剥離強度は、23℃、50%RHの測定条件下にて、表面保護フィルムの背面にピックアップテープを貼り付け、30分間放置した後、該背面から上記ピックアップテープを剥離速度0.3m/分、剥離角度180度の条件で剥離し、このときの剥離強度を測定することにより得られる。後述する実施例のように、測定に使用するピックアップテープの幅W1(mm)が20mmとは異なる場合には、その剥離強度に20/W1を乗じることにより、20mm幅における剥離強度に換算することができる。通常は、幅が10mm〜30mm(例えば15mm〜25mm)のピックアップテープを用いて背面剥離強度を測定することが好ましい。
上記背面剥離強度FaおよびFrは、いずれも3.0N/20mm以上であることが好ましく、より好ましくは4.0N/20mm以上(例えば5.0N/20mm以上)である。背面剥離強度が低すぎると、被着体表面から表面保護フィルムをピックアップできずに該表面保護フィルムの背面からピックアップテープが剥がれてしまうことがあり得る。背面剥離強度の上限は特に限定されない。通常は、Fa,Frがいずれも20N/20mm以下(例えば10N/20mm以下)であることが適当である。
好ましい一態様に係る表面保護フィルムは、上記背面剥離強度FaおよびFrのいずれか小さいほうの値(以下「(Fa,Fr)min」と表記することもある。単位はN/20mm。)と、該表面保護フィルムを被着体(典型的には偏光板。例えば、後述する実施例と同じ偏光板)に圧着して30分間放置した後、該被着体から剥離速度0.3m/分、剥離角度180°の条件で剥離して測定される剥離強度Fp(N/25mm)との関係が、次式:[(Fa,Fr)min/Fp]≧5;を満たすことが好ましい。(Fa,Fr)min/Fpが小さすぎると、被着体表面から表面保護フィルムをピックアップできずに該表面保護フィルムの背面からピックアップテープが剥がれてしまうことがあり得る。ピックアップ操作をより効率よく行うためには、(Fa,Fr)min/Fpが8以上(より好ましくは10以上、さらに好ましくは25以上、例えば50以上)であることが好ましい。(Fa,Fr)min/Fpの値の上限は特に制限されないが、通常は200以下とすることが適当である。
なお、上記剥離強度Fp(N/25mm)は、23℃、50%RHの測定条件下にて、適当な幅の長尺状に裁断した表面保護フィルム(試験片)の粘着面を被着体(例えば、プレーン偏光板)に貼り付け、30分間放置した後、剥離速度0.3m/分、剥離角度180°の条件で剥離し、このときの剥離強度を測定することにより得られる。測定に使用する表面保護フィルムの幅W2(mm)が25mmとは異なる場合には、その剥離強度に25/W2を乗じることにより、25mm幅における剥離強度に換算することができる。通常は、幅10mm〜30mm(例えば20mm〜30mm)の試験片を用いて剥離強度Fpを測定することが好ましい。
なお、この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
(1)第一面および第二面を有する基材と、
前記基材の前記第一面に設けられたトップコート層と、
を備えるトップコート付き基材であって、
前記トップコート層は、滑り剤としてのワックスと、バインダとしてのポリエステル樹脂とを含み、
ここで、前記ワックスが高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルである、トップコート付き基材。
(2)上記ワックスの融点が50℃以上100℃以下である、上記(1)に記載のトップコート付き基材。
(3)上記ワックスとして、下記一般式(W)で表わされる化合物を含む、上記(1)または(2)に記載のトップコート付き基材。
X−COO−Y (W)
(ここで、上記式(W)中のXおよびYは、それぞれ独立に、炭素原子数10〜40(より好ましくは10〜35、さらに好ましくは14〜35、例えば20〜32)の炭化水素基から選択され得る。)
(4)上記バインダが飽和ポリエステル樹脂を含む、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のトップコート付き基材。
(5)前記基材が透明なポリエステル樹脂フィルムである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のトップコート付き基材。
(6)上記トップコート層が、帯電防止成分として導電性ポリマーを含む、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のトップコート付き基材。
(7)上記基材の第一面上に上記トップコート層が直接形成されている、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のトップコート付き基材。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のトップコート付き基材を製造する方法であって、
水系媒体と上記バインダと上記ワックスとを含むコーティング材を用意することと、
上記基材の背面に上記コーティング材を塗付することと
を包含する、方法。
(9)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のトップコート付き基材と、上記基材の上記第二面に設けられた粘着剤層とを含む、表面保護フィルム。
(10)前記粘着剤層がアクリル系粘着剤を含有する、上記(8)または(9)に記載の表面保護フィルム。
(11)前記粘着剤層が、帯電防止成分としてイオン液体およびアルカリ金属塩の一方または両方を含む、上記(8)〜(10)のいずれかに記載の表面保護フィルム。
(12)光学部品の表面に貼り付けて用いられる、上記(8)〜(11)のいずれかに記載の表面保護フィルム。
(13)被着体の表面に上記(8)〜(11)のいずれかに記載の表面保護フィルムを貼り付けること;
その表面保護フィルムの背面(被着体表面に貼り付けられた側とは反対側の表面)に粘着テープ(ピックアップテープ)を貼り付けること;および、
上記粘着テープを引っ張ることにより、上記被着体に貼り付けられた上記表面保護フィルムの少なくとも一部を該被着体表面から持ち上げること;
を含む、被着体表面の保護方法。
以下、本発明に関連するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明中の「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。また、以下の説明中の各特性は、それぞれ次のようにして測定または評価した。
1.トップコート層の厚み測定
各例に係る表面保護フィルムにつき、重金属染色処理を行った後に樹脂包埋を行い、超薄切片法により、日立社製のTEM「H−7650」を用いて、加速電圧:100kV、倍率:60,000倍の条件で断面画像を得た。この断面画像の二値化処理を行った後、視野内のサンプル長さでトップコートの断面積を除算することにより、トップコート層の厚さ(視野内の平均厚さ)を実測した。
2.耐白化性評価
各例に係る表面保護フィルムの背面(トップコート層の表面)を、手袋をはめた試験者が1回強く擦り、その擦られた部分(擦過部)が周囲(非擦過部)と比べて透明に抜けるか否かを目視にて観察した。その結果、非擦過部と擦過部との透明性の違いが目視で確認できた場合には、白化が認められたと判定した。白化が顕著になると、透明な擦過部とその周囲(白化した非擦過部)とのコントラストが、よりはっきりする現象がみられる。
上記目視観察は、以下のとおり、暗室(反射法、透過法)および明室において行った。
(a)暗室での反射法による観察:外光を遮った室内(暗室)にて、各例に係る表面保護フィルムの背面(トップコート層の表面)から100cmの位置に100Wの蛍光灯(三菱電機株式会社製、商品名「ルピカライン」)を配置し、視点を変えながらサンプルの背面を目視観察した。
(b)暗室での透過法による観察:上記暗室にて、表面保護フィルムの前面(トップコートが設けられた側とは反対側の表面)から10cmの位置に上記蛍光灯を配置し、視点を変えながらサンプルの背面を目視観察した。
(c)明室での観察:外光の入る窓を有する室内(明室)にて、晴天の日中に、直射日光の当たらない窓際にてサンプルの背面を目視観察した。
これら3種類の条件下における観察結果を、以下の5段階で表記した。
0:いずれの観察条件においても白化は認められなかった(擦過部と非擦過部との透明性に違いは認められなかった)。
1:暗室での反射法による観察において僅かな白化が認められた。
2:暗室での透過法による観察において僅かな白化が認められた。
3:明室での観察において僅かな白化が認められた。
4:明室での観察において明らかな白化が認められた。
上記の耐白化性評価を、初期(作製後、50℃、15%RHの条件下に3日間保持したもの)および加温加湿後(作製後、50℃、15%RHの条件下に3日間保持し、さらに60℃、95%RHという高温多湿条件下に2週間保持したもの)の表面保護フィルムについて行った。
3.耐溶剤性評価
上記暗室において、各例に係る表面保護フィルムの背面(すなわち、トップコート層の表面)をエチルアルコールを染み込ませたウェス(布)で5回拭き、その背面の外観を目視観察した。その結果、エチルアルコールで拭いた部分と他の部分との間に外観上の相違が確認されなかった場合(エチルアルコールで拭いたことによる外観変化がみられなかった場合)には耐溶剤性「良」、拭きムラが確認された場合には耐溶剤性「不良」と評価した。
4.背面剥離強度測定
4−1.ピックアップテープの粘着剤による剥離力の違い(粘着剤依存性)
図4に示すように、各例に係る表面保護フィルム1を幅70mm、長さ100mmのサイズにカットし、この表面保護フィルム1の粘着面(粘着剤層が設けられた側)20Aを、両面粘着テープ130を用いてSUS304ステンレス板132上に固定した。
ポリエステルフィルム(基材)164上にアクリル系粘着剤162を有する片面粘着テープG1(日東電工社製、商品名「No.31B」、幅19mm)を100mmの長さにカットした。この粘着テープ160の粘着面162Aを、表面保護フィルム1の背面(すなわち、トップコート層14の表面)1Aに、0.25MPaの圧力、0.3m/分の速度で圧着した。これを23℃、50%RHの条件下に30分間放置した。その後、万能引張試験機を用いて、表面保護フィルム1の背面1Aから粘着テープ160を、剥離速度0.3m/分、剥離角度180度の条件で剥離し、このときの剥離強度[N/19mm]を測定した。
また、上記粘着テープG1に代えて、セロハンフィルム(基材)上に天然ゴム系粘着剤を有する片面粘着テープG2(ニチバン社製、商品名「セロテープ(登録商標)」、幅24mm)を使用して、同様に背面剥離強度[N/24mm]を測定した。
これらの測定値から、粘着テープG1についての20mm幅換算剥離強度Fa[N/20mm](すなわち、上記剥離強度[N/19mm]の値を20/19倍した値)と、粘着テープG2についての20mm幅換算剥離強度Fr[N/20mm](すなわち、上記剥離強度[N/24mm]の値を20/24倍した値)とを算出した。表1〜3には、これらFaおよびFrの値を示している。
さらに、これらの背面剥離強度から強度差|Fa−Fr|を算出し、その値が1.5[N/20mm]以下の場合には表面保護フィルムの使用感を「良」と評価し、1.5[N/20mm]を超える場合には使用感を「不良」と評価した。上記|Fa−Fr|の値を、使用感の評価結果とともに表1〜3に示した。
なお、両面粘着テープ130は、上記背面剥離強度をより的確に測定するために、表面保護フィルム1の背面1Aから粘着テープ160を剥離する際に該表面保護フィルム1が粘着テープ160に引っ張られてステンレス板132から浮き上がることを防止する目的で用いられるものであって、かかる目的に合うものを適宜選択して使用することができる。ここでは日東電工株式会社社製の商品名「No.500A」を使用した。
4−2.ピックアップテープの繰り返し使用に対する剥離強度維持性
(評価用両面粘着テープ片の作製)
不織布(基材)の両面にアクリル系粘着剤層を有する両面粘着テープG3(日東電工社製、商品名「No.512B」)を100mmの長さにカットした。その一方の粘着面(第一粘着面)に厚さ38μmのPETフィルムを貼り付けて裏打ちした。これを10mmの幅にカットして評価用の両面粘着テープ片を用意した。
(初期剥離強度測定)
上記両面粘着テープ片の他方の粘着面(第二粘着面)を、各例に係る表面保護フィルムの背面(すなわち、トップコート層の表面)に、0.25MPaの圧力、0.3m/分の速度で圧着した。これを23℃、50%RHの条件下に20分間放置した。その後、万能引張試験機を用いて、表面保護フィルムの背面から上記両面粘着テープ片を、剥離速度10m/分、剥離角度180度の条件で剥離し、このときの剥離強度(初期剥離強度)Fx[N/10mm]を測定した。
(繰返し圧着・剥離操作)
次いで、各例に係る表面保護フィルムの背面に、上記初期剥離強度測定後の両面粘着テープ片の第二粘着面を手で圧着する操作とそれをすぐに剥離する操作を繰り返した。このとき、表面保護フィルムの背面のうち両面粘着テープ片が貼り付けられる箇所は、1回毎に異ならせるようにした。なお、この繰返し圧着・剥離操作は、ひとつのピックアップテープを繰返し使用して多数枚の表面保護フィルムを被着体から剥離する態様を想定したものである。
(繰返し使用後剥離強度測定)
上記圧着・剥離操作を200回繰り返した後の両面粘着テープ片について、上記初期剥離強度測定と同様に、各例に係る表面保護フィルムの背面からの剥離強度を測定した。すなわち、上記200回圧着・剥離後の両面粘着テープ片の第二粘着面を、各例に係る表面保護フィルムの背面に、0.25MPaの圧力、0.3m/分の速度で圧着した。これを23℃、50%RHの条件下に20分間放置した後、万能引張試験機を用いて、表面保護フィルムの背面から上記両面粘着テープ片を、剥離速度10m/分、剥離角度180度の条件で剥離し、このときの剥離強度(200回繰返し使用後の剥離強度)Fy[N/10mm]を測定した。そして、初期剥離強度と200回圧着・剥離後の剥離強度との強度差(Fx−Fy)を算出した。
5.表面保護フィルムの剥離強度測定
被着体として、幅70mm、長さ100mmのプレーン偏光板(日東電工社製のTAC偏光板、SEG1425DU)を用意した。各例に係る表面保護フィルムを幅25mm、長さ100mmのサイズにカットし、その粘着面を上記偏光板に、0.25MPaの圧力、0.3m/分の速度で圧着した。これを23℃、50%RHの環境下に30分間放置した後、同環境下で万能引張試験機を用いて剥離速度0.3m/分、剥離角度180°の条件で上記偏光板から表面保護フィルムを剥離し、このときの剥離強度(低速剥離強度)Fp[N/25mm]を測定した。
また、剥離速度を30m/分とした点以外は上記と同様にして、剥離強度(高速剥離強度)[N/25mm]を測定した。
<例1>
(コーティング材の調製)
バインダとしてのポリエステル樹脂(バインダB1)を25%含む分散液A1(東洋紡株式会社製品、商品名「バイロナールMD−1480」(飽和共重合ポリエステル樹脂の水分散液);以下「バインダ分散液A1」ともいう。)を用意した。また、滑り剤としてのカルナバワックスの水分散液(以下「滑り剤分散液C1」ともいう。)を用意した。さらに、導電性ポリマーとしてのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)0.5%およびポリスチレンスルホネート(数平均分子量15万)(PSS)0.8%を含む水溶液(H.C.Stark社製品、商品名「Baytron P」;以下「導電性ポリマー水溶液D1」ともいう。)を用意した。
水とエタノールとの混合溶媒に、上記バインダ分散液A1を固形分量で100部と、上記滑り剤分散液C1を固形分量で30部と、上記導電性ポリマー水溶液D1を固形分量で50部と、メラミン系架橋剤とを加え、約20分間攪拌して十分に混合した。このようにして、NV約0.15%のコーティング材E1を調製した。
(トップコート層の形成)
一方の面(第一面)にコロナ処理が施された厚さ38μm、幅30cm、長さ40cmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。このPETフィルムのコロナ処理面に上記コーティング材E1をバーコーターで塗付し、130℃に2分間加熱して乾燥させた。このようにして、PETフィルムの第一面に厚さ10nmの透明なトップコート層を有する基材(トップコート付き基材)T1を作製した。
(粘着剤組成物F1の調製)
2−エチルヘキシルアクリレート100部、2−ヒドロキシエチルアクリレート4部、および重合溶媒としてトルエン200部を、三つ口フラスコに投入した。窒素ガスを導入しながら2時間攪拌して重合系内の酸素を除去した後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.15部を加え、70℃に昇温して6時間重合反応を行った。
このようにして得られたポリマー溶液(アクリル系ポリマーのトルエン溶液)F0に、その固形分100部に対して、アルキレンオキシド化合物としての数平均分子量(Mn)2000のジオール型ポリプロピレングリコール(PPG)(和光純薬工業社製)0.5部と、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)4.5部と、架橋触媒としてのジラウリン酸ジブチルスズ(1%酢酸エチル溶液)0.20部と、最終的なNVが25%となる分量のトルエンとを加え、常温(25℃)下で約1分間混合攪拌して、アクリル系粘着剤組成物F1を調製した。
(表面保護フィルムの作製)
PETフィルムの片面にシリコーン系剥離処理剤による剥離処理が施された離型シートを用意した。この離型シートの剥離面(上記剥離処理が施された面)上に上記粘着剤組成物F1を塗付し、乾燥させて、厚み20μmのアクリル系粘着剤層を形成した。その粘着剤層を上記トップコート付き基材T1の他方の面(第二面、すなわち上記トップコート層が設けられていない面)に貼り合わせた後、50℃、15%RHの環境下で3日間養生(エージング)して、本例に係る表面保護フィルムを得た。
<例2>
例1のトップコート付き基材T1の作製において、コーティング材E1の塗付量を調整することにより、PETフィルムの第一面に厚さ50nmのトップコート層を有する基材(トップコート付き基材)T2を得た。トップコート付き基材T1に代えてトップコート付き基材T2を用いた点以外は例1と同様にして、本例に係る表面保護フィルムを得た。
<例3>
例1により得られたポリマー溶液F0に、その固形分100部に対して、イソシアネート系架橋剤「コロネートL」2.5部と、架橋触媒としてのジラウリン酸ジブチルスズ(1%酢酸エチル溶液)0.10部と、イオン性液体(日本カーリット社製品、商品名「CIL−312」、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)0.3部と、最終的なNVが25%となる分量のトルエンとを加え、常温(25℃)下で約1分間混合攪拌して、アクリル系粘着剤組成物F2を調製した。粘着剤組成物F1に代えて粘着剤組成物F2を用いた点および粘着剤層の厚みを15μmに調整した点以外は例1と同様にして、本例に係る表面保護フィルムを得た。
<例4>
例1のトップコート付き基材T1に代えてトップコート付き基材T2を用いた点以外は例3と同様にして、本例に係る表面保護フィルムを作製した。
<例5>
例1により得られたポリマー溶液F0に、その固形分100部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHX」)4.0部と、架橋触媒としてのジラウリン酸ジブチルスズ(1%酢酸エチル溶液)0.20部と、最終的なNVが25%となる分量のトルエンとを加え、常温(25℃)下で約1分間混合攪拌して、アクリル系粘着剤組成物F3を調製した。すなわち、この粘着剤組成物F3の調製において、アルキレンオキシド化合物は使用しなかった。
例1のトップコート付き基材T1の作製において、コーティング材E1の塗付量を調整することにより、PETフィルムの第一面に厚さ14nmのトップコート層を有する基材(トップコート付き基材)T3を得た。
基材T1に代えて基材T3を用いた点および粘着剤組成物F1に代えて粘着剤組成物F3を用いた点以外は例1と同様にして、本例に係る表面保護フィルムを得た。
<例6>
(粘着剤組成物Fem11の調製)
水76部、2−エチルヘキシルアクリレート92部、メチルメタクリレート4部、アクリル酸4部および乳化剤としてのポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製の反応性乳化剤、商品名「アクアロンHS−1025」)3部を容器に入れ、ホモミキサーにより攪拌混合してモノマーエマルションを調製した。
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応器に、水40.5部、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム0.01部、および上記で調製したモノマーエマルションのうち10%にあたる量を添加し、攪拌しながら、75℃で1時間乳化重合した。その後、上記反応器に重合開始剤(過硫酸アンモニウム)0.07部を追加し、次いで、攪拌しながら、残りのモノマーエマルション(全モノマーエマルションの90%に相当する量)を3時間かけて添加した後、さらに3時間75℃に保持した。これを30℃まで冷却し、濃度10%のアンモニア水を加えてpH8に調整した。
このようにして得られたアクリル系ポリマーエマルションFem10(アクリル系ポリマーの水分散液;NV41%)に、その固形分100部(Fem10の有姿では244部)に対して、アルキレンオキシド化合物(ADEKA社製、商品名「アデカプルロニック 25R−1」、Mn2800)0.3部、非水溶性架橋剤であるエポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「TETRAD−C」、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ当量:110、官能基数:4)2.5部およびアセチレンジオール化合物(日信化学工業社製、商品名「サーフィノール420」)1.0部を添加し、攪拌機を用いて23℃、300rpmの条件で10分間攪拌混合した。このようにして水分散型アクリル系粘着剤組成物Fem11を調製した。
(表面保護フィルムの作製)
例1のトップコート付き基材T1の作製において、コーティング材E1の塗付量を調整することにより、PETフィルムの第一面に厚さ14nmのトップコート層を有する基材(トップコート付き基材)T3を得た。このトップコート付き基材T3の第二面(トップコート層に対する反対側の表面)に、上記で調製した粘着剤組成物Fem11を、テスター産業社製のアプリケータを用いて乾燥後の厚さが20μmとなるように塗付した。その塗付物を熱風循環式オーブンを用いて120℃で2分間乾燥させた後、50℃、15%RHの環境下で3日間養生(エージング)して、本例に係る表面保護フィルムを得た。
<例7>
例6の粘着剤組成物Fem11の調製において、アクリル系ポリマーエマルションFem10の固形分100部に対する非水溶性架橋剤「TETRAD−C」の使用量を3.0部に変更して、水分散型アクリル系粘着剤組成物Fem12を得た。粘着剤組成物Fem11に代えて粘着剤組成物Fem12を用いた点以外は例6と同様にして、本例に係る表面保護フィルムを得た。
<例8>
例6のアクリル系ポリマーエマルションFem10の作製において、乳化剤として「アクアロンHS−1025」に代えてアルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム(三洋化成工業社製、商品名「エレミノールJS−20」)3部を使用した。その他の点についてはFem10の作製と同様にして、アクリル系ポリマーエマルションFem20を得た。アクリル系ポリマーエマルションFem10に代えてFem20を用いた点以外は例6と同様にして、水分散型アクリル系粘着剤組成物Fem21を調製した。そして、水分散型アクリル系粘着剤組成物Fem11に代えて水分散型アクリル系粘着剤組成物Fem21を用いた点以外は例6と同様にして、本例に係る表面保護フィルムを得た。
<例9>
アクリル系ポリマーエマルションFem10に代えてFem20を用いた点以外は例7と同様にして、水分散型アクリル系粘着剤組成物Fem22を調製した。そして、水分散型アクリル系粘着剤組成物Fem12に代えて水分散型アクリル系粘着剤組成物Fem22を用いた点以外は例7と同様にして、本例に係る表面保護フィルムを得た。
<例10>
(コーティング材の調製)
反応器にトルエン25gを装入し、反応器内の温度を105℃まで上昇させた後、メチルメタクリレート30g、n−ブチルアクリレート10g、シクロヘキシルメタクリレート5g、AIBN0.2gを混合した溶液を、上記反応器に2時間かけて連続的に滴下した。滴下完了後、反応器内の温度を110〜115℃に調整し、同温度に3時間保持して共重合反応を行った。3時間経過後、トルエン4gとAIBN0.1gとの混合液を反応器に滴下し、同温度に1時間保持した。その後、反応器内の温度を90℃まで冷却し、トルエンを投入して希釈することにより、内容物のNVを5%に調整した。このようにして、バインダとしてのアクリル系ポリマー(バインダB2)をトルエン中に5%含む溶液(バインダ溶液A2)を用意した。
さらに、シリコーン系レベリング剤(東レ・ダウコーニング社製品、商品名「BY16−201」(ヒドロキシアルキル末端ジメチルシロキサン);以下、「滑り剤C2」ともいう。)と、PEDTとPSSを含むNV4.0%の導電性ポリマー水溶液(以下、「導電性ポリマー水溶液D2」ともいう。)とを用意した。
上記バインダ溶液A2を固形分量で50部と、上記滑り剤C2を固形分量で25部と、上記導電性ポリマー水溶液D2を固形分量で25部と、メラミン系架橋剤とに、最終的なNVが約0.15%となるように溶媒としてのエチレングリコールモノエチルエーテルを加えて、コーティング材E2を調製した。
(トップコート層の形成)
例1で用いたものと同じPETフィルムのコロナ処理面(第一面)に、上記コーティング材E2をバーコーターで塗付し、130℃に2分間加熱して乾燥させることにより、PETフィルムの第一面に厚さ10nmの透明なトップコート層を有する基材(トップコート付き基材)を作製した。
(粘着剤組成物F4の調製)
例1により得られたポリマー溶液F0に、その固形分100部に対して、イソシアネート系架橋剤「コロネートL」4.0部と、架橋触媒としてのジラウリン酸ジブチルスズ(1%酢酸エチル溶液)0.20部と、最終的なNVが20%となる分量のトルエンとを加え、常温(25℃)下で約1分間混合攪拌して、アクリル系粘着剤組成物F4を調製した。
(表面保護フィルムの作製)
PETフィルムの片面にシリコーン系剥離処理剤による剥離処理が施された離型シートを用意した。この離型シートの剥離面(剥離処理が施された面)上に、上記粘着剤組成物F4を塗付し、乾燥させて、厚み20μmのアクリル系粘着剤層を形成した。その粘着剤層を上記トップコート付き基材の他方の面(トップコート層が設けられていない面)に貼り合わせて、本例に係る表面保護フィルムを作製した。
<例11>
水−アルコール溶媒中に、カチオン性高分子からなる帯電防止剤(コニシ株式会社製、商品名「ボンディップ−P主剤」)と、硬化剤としてのエポキシ樹脂(コニシ株式会社製品、商品名「ボンディップ−P硬化剤」)とを、NV基準で100:46.7の質量比で含む溶液を用意した。この溶液を、例1で用いたものと同じPETフィルムのコロナ処理面(第一面)に塗付して乾燥させることにより、NV基準で0.06g/mのトップコート層を形成した。次いで、上記トップコート層の表面に、長鎖アルキルカルバメート系の剥離処理剤(一方社油脂工業株式会社製品、商品名「ピーロイル1010」)をNV基準で0.02g/mとなるように塗付して乾燥させることにより、トップコート層に滑り性を付与した。このようにして得られた基材を用いた点以外は例10と同様にして、本例に係る表面保護フィルムを作製した。
<例12>
例1により得られたポリマー溶液F0に、その固形分100部に対して、アルキレンオキシド化合物(ADEKA社製、商品名「アデカプルロニック 25R−1」)0.3部と、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHX」)2部と、架橋触媒としてのジラウリン酸ジブチルスズ(1%酢酸エチル溶液)0.20部と、最終的なNVが25%となる分量のトルエンとを加え、常温(25℃)下で約1分間混合攪拌して、アクリル系粘着剤組成物F5を調製した。粘着剤組成物F1に代えて粘着剤組成物F5を用いた点以外は例1と同様にして、本例に係る表面保護フィルムを得た。
<例13>
例1により得られたポリマー溶液F0に、その固形分100部に対して、アルキレンオキシド化合物(ADEKA社製、商品名「アデカプルロニック 25R−1」)0.3部と、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(キシダ化学社製)0.07部と、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHX」)2部と、架橋触媒としてのジラウリン酸ジブチルスズ(1%酢酸エチル溶液)0.20部と、最終的なNVが25%となる分量のトルエンとを加え、常温(25℃)下で約1分間混合攪拌して、アクリル系粘着剤組成物F6を調製した。粘着剤組成物F1に代えて粘着剤組成物F6を用いた点以外は例1と同様にして、本例に係る表面保護フィルムを得た。
<例14>
例6により得られたアクリル系ポリマーエマルションFem10(アクリル系ポリマーの水分散液;NV41%)に、その固形分100部(Fem10の有姿では244部)に対して、アルキレンオキシド化合物(ADEKA社製、商品名「アデカプルロニック 25R−1」)1.0部、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「TETRAD−C」)2.5部を添加し、攪拌機を用いて23℃、300rpmの条件で10分間攪拌混合した。このようにして水分散型アクリル系粘着剤組成物Fem13を調製した。粘着剤組成物Fem11に代えて粘着剤組成物Fem13を用いた点以外は例6と同様にして、本例に係る表面保護フィルムを得た。
各例に係る表面保護フィルムの概略構成と、これらを上述の方法により測定または評価した結果とを、表1〜3に示す。
Figure 0006454372
Figure 0006454372
Figure 0006454372
これらの表に示されるように、滑り剤としてワックスエステルを含み、かつバインダとしてポリエステル樹脂を含む例1〜9,12〜14のトップコート層は、いずれも、初期において優れた耐白化性を示し、60℃、95%RHという厳しい加熱加湿条件下に2週間保存した後における白化も僅かに認められる程度であった。また、これら例1〜9,12〜14に係るトップコート層は、いずれも良好な耐溶剤性を示した。さらに、例1〜9,12〜14に係る表面保護フィルムは、いずれも背面剥離強度のピックアップテープ粘着剤依存性が低く(具体的には、|Fa−Fr|<1.5、例1〜8,12〜14については|Fa−Fr|≦1.0であり)、使用感の良いものであった。また、(Fa,Fr)min/Fpの値はいずれも5以上(具体的には、50以上)であり、被着体に対する粘着力(剥離強度)と背面剥離強度とのバランスに優れていた。そして、例1〜9,12〜14に係る表面保護フィルムは、その背面に対して両面粘着テープ片の圧着および剥離を繰り返しても、該両面粘着テープ片の剥離強度の低下が少ないものであった。この結果は、これらの表面保護フィルムがピックアップテープの繰返し使用に適していることを示している。
一方、シリコーン系滑剤を含む例10のトップコート層は、例1〜9,12〜14と比べて、初期の耐白化性は同等であったが、加熱加湿後の耐白化性は明らかに劣っていた。これは、加熱加湿によりトップコート層の表面にシリコーン系滑剤が過剰にブリードしてその一部が油滴化し、上記油滴化したシリコーン系滑剤が上記耐白化性評価において擦りとられることによって耐白化性が低下したものと考えられる。エポキシ樹脂をバインダとする帯電防止層(滑り剤を含有しない。)の表面を長鎖アルキルカルバメート系の剥離処理剤で処理した例11では、加熱加湿により上記剥離剤が白化したものと考えられる。また、例10、例11のトップコート層は、いずれも、|Fa−Fr|が1.5以上であり、背面剥離強度のピックアップテープ粘着剤依存性の高いものであった。これらのトップコート層は耐溶剤性も低かった。また、例11の表面保護フィルムは、Frの値が0.8N/20mmと低く、ゴム系粘着剤によるピックアップが困難なものであった。また、例10の表面保護フィルムは、その背面に両面粘着テープ片を繰返し圧着・剥離した場合に、該両面粘着テープ片の剥離強度が例1〜9,12〜14に比べて明らかに大きく低下することが確認された。
ここに開示される表面保護フィルムは、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等の構成要素として用いられる光学部材の製造時、搬送時等に該光学部材を保護する用途に好適である。特に、液晶ディスプレイパネル用の偏光板(偏光フィルム)、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、光拡散シート、反射シート等の光学部材に適用される表面保護フィルムとして有用である。
1 :表面保護フィルム
1A:表面(背面)
12 :基材
12A:第一面(背面)
12B:第二面(前面)
14 :トップコート層
20 :粘着剤層
20A:表面(粘着面)
30 :剥離ライナー
50 :被着体
60 :粘着テープ(ピックアップテープ)
62 :粘着剤層
64 :基材
130 :両面粘着テープ
132 :ステンレス板
160 :粘着テープ
162 :粘着剤
162A:粘着面
164 :基材

Claims (6)

  1. 第一面および第二面を有する基材と、前記基材の前記第一面に設けられたトップコート層と、前記基材の前記第二面に設けられた粘着剤層と、を備える表面保護フィルムであって、
    前記トップコート層は、滑り剤としてのワックスと、バインダとしてのポリエステル樹脂とを含み、
    ここで、前記ワックスが高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルであり、
    前記ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸類ならびにその無水物、エステル化物およびハロゲン化物から選択される1種または2種以上の化合物と多価アルコール類との縮合物からなる、表面保護フィルム。
  2. 前記基材がポリエステル樹脂フィルムである、請求項1に記載の表面保護フィルム。
  3. 前記トップコート層が帯電防止成分を含有する、請求項1または2に記載の表面保護フィルム。
  4. 前記粘着剤層を構成する粘着剤がアクリル系粘着剤である、請求項1から3のいずれか一項に記載の表面保護フィルム。
  5. 前記粘着剤層が帯電防止成分を含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の表面保護フィルム。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載の表面保護フィルムが貼り付けられた光学部品。
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