JP6454008B2 - 変異型シャペロニン複合体を利用した細胞内への局所的薬物送達システム用ナノカプセル - Google Patents

変異型シャペロニン複合体を利用した細胞内への局所的薬物送達システム用ナノカプセル Download PDF

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Description

本発明は、変異型シャペロニン複合体を利用した細胞内への局所送達を可能とする薬物送達システム用ナノカプセルに係る発明に関する。
現在常法として用いられる投薬手段としては、経皮投与、静脈投与、経口投与等の手段を挙げることができるが、いずれも体内循環しながら全身投与がされるため局所的な薬効を期待することができない。そのため、十分な薬効を得るために高濃度投与等が必要となる場合では、対象以外の臓器や組織への副作用等の問題が生じる危険性が危惧される場合が多い。
そこで、製薬及び医薬等に関する技術分野においては、次世代の投薬方法として、薬物送達システム(DDS)に関する研究が精力的に取り組まれ、目的の細胞にだけ到達する局所性及び細胞膜透過等の技術開発が盛んに行われている。
薬物送達システム用に用いられるキャリアとしては、細胞のエンドサイトーシス機能を利用して、薬剤を封入したリポソームを取り込ませる研究例が多く行われている(非特許文献1)。リポソームをDDSキャリアとして使用するためには、膜受容体へ結合するリガンド、細胞表面に露呈するタンパク質を認識する抗体を備えるなど、細胞に認識させる部分はタンパク質に担わせる手段が挙げられる。
しかし、薬物送達キャリアは、毛細血管を通過できるサイズであり且つ均一な大きさで あることが望ましいところ、リポソームは粒径を均一に調整することが困難であるという課題がある。また、受容体を認識担体として結合すると粒径が大きくなり毛細血管の通過等の点で問題が生じる可能性がある。更に、効率的な受容体結合も簡単ではない。
また、リポソームに内包させた薬物等の局所送達には、リポソーム自体の構造上の工夫及び超音波発生機等の特定装置を使用した開閉制御手段が必要となり(例えば、非特許文献2)、容易な開閉制御が困難である。
また、リポソームに抗体等の表面修飾を行う操作が煩雑であるという課題も存在する。
そのため、リポソームをDDSキャリアとして利用して局所性及び細胞透過性を具備した薬物送達に応用するためには、リポソームに代わるDDSキャリアの技術開発が求められている。
シャペロニン複合体(GroEL/GroES複合体)は、直径4〜8nm程度(大腸菌野生型では約5nm)の空洞を有し且つ水溶液中で安定且つ均一な立体構造をとるナノカプセル状のタンパク質となる。また、タンパク質であるため、ペプチド等の付加や結合も容易である。
そのため、シャペロニン複合体は、リポソームに代わるDDSキャリア候補として注目されている分子である。
ここで、シャペロニンは、基質タンパク質の正しいフォールディングを介助するいわゆる分子シャペロンの1種である。シャペロニンファミリーは、分子量50〜60kDaのタンパク質であり、リング状の複合体構造をとり、ATP依存的に基質タンパク質のフォールディングを介助するという共通の特徴を有している。シャペロニンの中でも、GroELは大腸菌が有するシャペロニンであり、ATPとGroES依存的にタンパク質のフォールディングを介助することが明らかにされている。
シャペロニンGroELは、GroELサブユニットの7量体が1つのリングを構成し、このリングがさらに背中合わせに2つ重なった状態の合計で14量体の構造をしている。また、ひとつのGroELサブユニットはATP結合部位を含む赤道ドメインと、基質タンパク質とGroESの結合部位を含む頂点ドメインと、その両ドメインをつなぐ中間ドメインとから構成されている。
基質タンパク質のフォールディングにおいては、まずシャペロニンGroELサブユニットで構成されたリングの「入り口」に基質タンパク質が結合し、リングを構成するシャペロニンGroELサブユニットに7つのATPがそれぞれ結合すると、シャペロニンGroELの構造変化が起こって補因子であるGroESがGroELに結合可能となる。次いで、GroESがGroELに結合すると、基質タンパク質がリングの空洞内に落とし込まれ、シャペロニン複合体を形成する。シャペロニン複合体ではリングの空洞内で落とし込まれた基質タンパク質のフォールディングが進行する。次いでリング内のATPが加水分解されるとGroESが解離し、それと同時にリング内のフォールディングされた基質タンパク質も解離する。
通常の野生型GroELでは、ATPの加水分解の時間は約8秒であり、短時間で被内包物が放出されてしまうという欠点があり、そのままでは薬物送達キャリアとして採用できない。
そこで、シャペロニン複合体の構成ユニットであるGroELに注目して、GroELサブユニット7量体をチューブ状に組み合わせた複合体を構成し、その内部で薬物等の被内包物を封入する技術が報告されている(非特許文献3)。ここで、非特許文献3には、通常のタンパク質と同様にシャペロニン構成ユニットであるGroELで構成される複合体構造はそのままでは細胞膜透過が困難であることが報告されており、ボロン酸誘導体でタンパク質表面を修飾することによりGroELで構成される複合体構造の細胞膜透過を達成する技術が報告されている。
しかし、非特許文献3に係る技術では、原理的に細胞内の高ATP濃度に反応することでGroELチューブを構成するリングどうしが脱離し、被内包物を細胞内に放出することを基本原理としている。そのため、細胞透過の「直後に」当該チューブからの薬物放出が起こってしまい、核等の特定の細胞内小器官に局所的薬物送達を行うことが原理的に不可能な技術である。この点、核酸医薬を細胞内に局所的に到達可能とするDDS技術への応用には不向きな技術と認められる。また、当該技術では、細胞膜透過のためにボロン酸誘導体での表面修飾処理という余剰な処理工程が必要となるという課題もある。
このように、シャペロニンをDDSキャリア用途に応用する研究は発展途上の分野であり、細胞内小器官(特に核内)への内容物送達の実用化に十分な検討がなされていない。
以上に示したように、薬物等の被内包物を保持可能なタンパク質性のナノカプセルに関する技術であって、簡易な手法により細胞内に導入可能であり且つ内包物を細胞内に局所的に到達可能とする技術の開発が期待されているところ、実用化可能な技術は開発されていない。
Patel L. N. et al., Cell Penetrating Peptides: Intracellular Pathways and Pharmaceutical Perspectives, Pharmaceutical Research (2007), 24(11), 1977-1992 薬学雑誌130(11)p1489−1496 2010年 Biswas S. et al., Biomolecular robotics for chemomechanically driven guest delivery fuelled by intracellular ATP, Nat. Chem. (2013), 5(7), 613-20 Essential 細胞生物学 原書第3版 p389 Tsukazaki et al., Structure and function of a protein export-enhancing membrane component SecDF, Nature, 474 (7350), 235-238, 2013
本発明は上記従来技術の事情に鑑みてなされたものであり、その課題とする処は、薬物等の被内包物を保持可能なタンパク質性のナノカプセルに関する技術であって、簡易な手法により細胞内に導入可能であり且つ内包物を細胞内に局所的に到達させることを可能とする技術を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を見出して本発明を想到するに至った。
(1)本発明者らは、GroELサブユニットとして、「ATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体」を含む変異型シャペロニン複合体を用いることによって、ナノカプセルであるシャペロニン複合体そのものが内包物を保持したまま細胞内に取り込まれることを見出した。
ここで注目すべき点は、Biswas et al. 2013(非特許文献3)に記載のように、GroELサブユニットで構成される複合体構造はそのままでは細胞膜を透過できないという報告があるにも関わらず、ATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体を採用して当該変異サブユニットとGroES活性を有するサブユニットを含むシャペロニン複合体を形成させることによって、細胞膜透過性選択ペプチド等の付加がないシャペロニン複合体においても、シャペロニン複合体の細胞膜透過能が確認された点である。即ち、本発明者らは、当該GroELサブユニット変異体を含む変異型シャペロニン複合体に被内包物を内包させた場合、特別な表面処理や分子修飾等の処理等を行うことなく、上記した内包物を保持した状態のまま変異型シャペロニン複合体が細胞質透過性を発揮することを見出した。これはBiswas et al. 2013(非特許文献3)の記載から想定される技術常識とは反対の知見である。
更に言及すべき点は、通常の野生型GroELは、ATPの加水分解の時間は約8秒という短時間でGroESと被内包物の解離が起こってしまうことから、野生型のGroEL/GroES複合体を用いただけでは当該知見を得ることができない点である。この点、本発明者らがATP加水分解活性低下型のGroEL変異体を採用することを上記阻害事由下において着想して具現化可能であることを実験で示すことによって初めて得られた知見である。
また、通常のタンパク質(例えば、GFP等)のような高分子がそのままでは細胞膜を通過できない点は、当該技術分野における周知技術である(例えば、非特許文献4参照)。また、タンパク質が膜を透過するためには、特別な膜タンパク構造と特定シグナルが必要と考えられている(例えば、非特許文献5参照)。これらの点から明らかなように、当該知見は、細胞膜透過に関する当該技術分野における複数の阻害事由存在下にも関わらずに得られた知見であり、創作困難性を有していた点と認められる。
(2)次いで、本発明者らは、GroESサブユニットとして、「核移行シグナルペプチド(細胞内小器官局在化を可能とするペプチド)が付加されたGroES活性を有するサブユニット」を用いて、上記ATP加水分解活性低下型GroEL変異体を含むシャペロニン複合体を合成することによって、細胞内に取り込まれたシャペロニン複合体を細胞核に局所的に到達可能となることを見出した。
本発明に関する主たる技術的特徴は、上記(1)に係る知見に基づいて、ATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体及びGroES活性を有するサブユニットを含んでなる変異型シャペロニン複合体を薬物送達システムキャリアとして用いることによって、細胞膜透過を実現して細胞内への局所的薬物送達が可能となる点を見出したことにより想到された。
また、本発明に関する更なる技術的特徴は、上記(2)に係る知見に基づいて細胞内小器官への局所的薬物送達がより効率的に実現可能となる点を見出したことにより想到された。
本発明は、具体的には以下に係る発明に関する。
[項1]
リング構造を構成するGroELサブユニットとしてATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体を含み、且つ、頂上部分を構成するサブユニットとしてGroES活性を有するサブユニットを含んでなる変異型シャペロニン複合体を、細胞内への局所的薬物送達システム用ナノカプセルの薬理成分内包用キャリア素材として含んでなることを特徴とする、薬物送達システム用ナノカプセル。
[項2]
前記ATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体が、
(a−1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるGroELサブユニット変異体、
(a−2)配列番号1に記載のアミノ酸配列中、第398番目のアラニン以外の1若しくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、シャペロニン複合体を形成した際に解離半減期遅延型のシャペロニン活性を有するGroELサブユニット変異体、又は、
(a−3)前記(a−1)又は(a−2)に記載のアミノ酸配列を含んでなるアミノ酸配列からなり、シャペロニン複合体を形成した際に解離半減期遅延型のシャペロニン活性を有するGroELサブユニット変異体、
である、項1に記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
[項3]
前記ATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体が、
(b−1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるGroELサブユニット変異体、
(b−2)配列番号2に記載のアミノ酸配列中、第52番目及び第398番目のアラニン以外の1若しくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、シャペロニン複合体を形成した際に解離半減期遅延型のシャペロニン活性を有するGroELサブユニット変異体、又は、
(b−3)前記(b−1)又は(b−2)に記載のアミノ酸配列を含んでなるアミノ酸配列からなり、シャペロニン複合体を形成した際に解離半減期遅延型のシャペロニン活性を有するGroELサブユニット変異体、
である、項1に記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
[項4]
前記GroES活性を有するサブユニットが、
(c−1)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるGroESサブユニット、
(c−2)配列番号8に記載のアミノ酸配列中、1若しくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、配列番号8に記載のアミノ酸配列に対して70%以上の配列相同性を示す領域を有する、シャペロニン複合体の形成においてGroES活性を有するGroESサブユニット、
(c−3)前記(c−1)又は(c−2)に記載のアミノ酸配列を含んでなるアミノ酸配列からなり、シャペロニン複合体の形成においてGroES活性を有するGroESサブユニット、
(d−1)配列番号11に記載のアミノ酸配列からなるGp31サブユニット、
(d−2)配列番号11に記載のアミノ酸配列中、1若しくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、配列番号11に記載のアミノ酸配列に対して70%以上の配列相同性を示す領域を有する、シャペロニン複合体の形成においてGroES活性を有するGp31サブユニット、又は、
(d−3)前記(d−1)又は(d−2)に記載のアミノ酸配列を含んでなるアミノ酸配列からなり、シャペロニン複合体の形成においてGroES活性を有するGp31サブユニット、
である、項1〜3のいずれかに記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
[項5]
前記GroES活性を有するサブユニットが細胞内小器官局在化ペプチド付加型又は挿入型のGroES活性を有するサブユニットである、項1〜4のいずれかに記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
[項6]
細胞内小器官への局所的薬物送達システム用ナノカプセルである、項5に記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
[項7]
前記細胞内小器官局在化ペプチドが核移行シグナルペプチドである、項5に記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
[項8]
細胞核への局所的薬物送達システム用ナノカプセルである、項7に記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
[項9]
前記ATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体が、外来性の細胞膜移行選択配列を含むペプチドの付加又は挿入がないものであって、且つ、細胞膜透過のための分子修飾が施されていないものである、項1〜8のいずれかに記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
[項10]
前記ATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体が、
(b−1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるGroELサブユニット変異体、
(b−2)配列番号2に記載のアミノ酸配列中、第52番目及び第398番目のアラニン以外の1若しくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、シャペロニン複合体を形成した際に解離半減期遅延型のシャペロニン活性を有するGroELサブユニット変異体、又は、
(b−3)前記(b−1)又は(b−2)に記載のアミノ酸配列を含んでなるアミノ酸配列からなり、シャペロニン複合体を形成した際に解離半減期遅延型のシャペロニン活性を有するGroELサブユニット変異体、
であり、;
前記ATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体が、外来性の細胞膜移行選択配列を含むペプチドの付加又は挿入がないものであって、且つ、細胞膜透過のための分子修飾が施されていないものであり、;
前記GroES活性を有するサブユニットが、
(c−1)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるGroESサブユニット、
(c−2)配列番号8に記載のアミノ酸配列中、1若しくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、配列番号8に記載のアミノ酸配列に対して70%以上の配列相同性を示す領域を有する、シャペロニン複合体の形成においてGroES活性を有するGroESサブユニット、又は、
(c−3)前記(c−1)又は(c−2)に記載のアミノ酸配列を含んでなるアミノ酸配列からなり、シャペロニン複合体の形成においてGroES活性を有するGroESサブユニット、
であり、;
前記GroES活性を有するサブユニットが、
細胞内小器官局在化ペプチド付加型又は挿入型のGroES活性を有するサブユニットであって、前記細胞内小器官局在化ペプチドが核移行シグナルペプチドである、;
ことを特徴とする、項1に記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
[項11]
細胞核への局所的薬物送達システム用ナノカプセルである、項10に記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
[項12]
変異型シャペロニン複合体に係るリング構造を構成するGroELサブユニットについて、
(e−1)全部がATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体である、又は、
(e−2)半数以上がATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体であって、シャペロニン複合体として解離半減期遅延型のシャペロニン活性を有するものである、
項1〜11のいずれかに記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
[項13]
ATP又はATP代替化合物を含んでなる、項1〜12のいずれかに記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
[項14]
前記変異型シャペロニン複合体に係るリング構造内に薬理成分を内包してなる、項1〜13のいずれかに記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
[項15]
前記薬理成分が核酸、ペプチド、タンパク質、これらの修飾体若しくは誘導体、又はこれらを含むものである、項14に記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
[項16]
項1〜15のいずれかに記載の薬物送達システム用ナノカプセルを用いることを特徴とする、細胞内に局所的に薬理成分を送達する方法。
[項17]
項1〜15のいずれかに記載の薬物送達システム用ナノカプセルをin vivo又はin vitro条件下の細胞に対して投与する工程を含むことを特徴とする、細胞内に局所的に薬理成分を送達する方法。
[項18]
項14又は15のいずれかに記載の薬物送達システム用ナノカプセルを含んでなる医薬剤。
本発明は、薬物等の被内包物を保持可能なタンパク質性のナノカプセルに関する技術であって、簡易な手法により細胞内に導入可能であり且つ内包物を細胞内に局所的に到達させることを可能とする技術を提供することを可能とする。
これにより本発明では、例えば、毛細血管の通過においても問題なく使用可能な均一なサイズのナノカプセルであって、タンパク質性であるため抗体等の付加修飾が容易であり、細胞膜透過及び細胞内局所送達を可能とするDDSキャリアを提供することを可能とする。
シャペロニンの作用機構モデルを示す概念図である。
実施例1にて調製したGroES−NAS発現ベクターについて、AhRシグナル配列挿入部位及びGroES遺伝子付近の構造を模式的に示す図である。XbaI、NcоI、及びNdeIは、ベクター上での制限酵素認識部位を示す。
実施例1にて調製したGroES−NAS発現ベクターについて、AhRシグナル配列挿入部位及びGroES遺伝子付近の塩基配列及びアミノ酸配列を示す図である。図中において、白色ボックスで囲んだアミノ酸配列はAhRシグナル配列を示す。灰色ボックスで囲んだアミノ酸配列はGro−WTに相当する配列を示す。破線で示した部分は、それぞれNcоI又はNdeIの制限酵素認識部位を示す。
実施例1において調製したGroES−NASについて、SDS−PAGEに供して得たゲル写真像図(左図)及び抗GroES抗体を用いたウェスタンブロットに供して得たシグナル像図(右図)である。レーン1:少量培養IPTG誘導なしでの試料。レーン2:少量培養IPTG誘導ありでの試料。レーン3:大量培養IPTG誘導ありでの試料。レーン4:野生型であるGroES−WT(精製タンパク質)。
実施例1において調製した変異型シャペロニン複合体について、透過型電子顕微鏡(TEM)にて分子構造を撮影した写真像図である。(A)弾丸型複合体を示す画像図である。写真中のスケールバーは50nmを示す。(B)フットボール型複合体を示す画像図である。写真中のスケールバーは100nmを示す。
実施例2において、GFPを蛍光標識したシャペロニン複合体に内包させてCHL細胞に添加し、蛍光顕微鏡にて経時変化を撮影した結果を示す写真像図である。各写真のスケールバーは、20μmを示す。Sample2−1:試料2−1の経時変化を撮影した一連の画像図。Sample2−2:試料2−2の経時変化を撮影した一連の画像図。
実施例2の試料2−2について、CHL細胞培養後48時間経過時に蛍光顕微鏡画像を用いて作成した三次元スタック断面画像である。(A):蛍光顕微鏡観察画像。(B):正面斜視からのスタック断面画像。図中において、(B)における断層面は(A)における白破線部での横断面を示す。
実施例3(1)において調製した蛍光標識DNAをPAGEに供して得たゲル写真像図である。レーン1:pUC19(鋳型DNA)のEtBr染色像。レーン2:蛍光標識せずに増幅合成したDNAのEtBr染色像。レーン3:蛍光標識して増幅合成したDNAのEtBr染色像。レーン1’:pUC19(鋳型DNA)の励起光460nm/蛍光515nm filter 蛍光検出像。レーン2’:蛍光標識せずに増幅合成したDNAの励起光460nm/蛍光515nm filter 蛍光検出像。レーン3’:蛍光標識して増幅合成したDNAの励起光460nm/蛍光515nm filter 蛍光検出像。
実施例3(4)で蛍光標識DNA吸着金ナノ粒子を内包したAhR付加型GroESを含む変異型シャペロニン複合体(試料3−1)をCHL培養細胞に添加して培養した場合において、定点タイムラプス解析による蛍光検出結果を示した写真像図である。図中において上段は励起光466nm/蛍光525nm蛍光像及びDIC透過像の合成画像を示し、下段はDIC透過像を示す。各写真像の上に示した数字は試料投与時からの経過時間を示す。破線で示した円は蛍光シグナルが観察された細胞における細胞核の位置を示す。写真像の撮影倍率は80倍であり、各写真像の一辺は255μmに相当する。
図9の励起光466nm/蛍光525nm蛍光像及びDIC透過像の合成画像について、蛍光シグナルが検出された細胞付近を階調反転及び拡大して示した写真像である。
実施例3(4)で蛍光標識DNA吸着金ナノ粒子を内包した野生型GroESを含む変異型シャペロニン複合体(試料3−2)をCHL培養細胞に添加して培養した場合において、定点タイムラプス解析による蛍光検出結果を示した写真像図である。図の構成等に関する説明は図9と同様である。
図11の励起光466nm/蛍光525nm蛍光像及びDIC透過像の合成画像について、蛍光シグナルが検出された細胞付近を階調反転及び拡大して示した写真像である。
実施例3(4)で蛍光標識DNA吸着金ナノ粒子(試料3−3)のみをCHL培養細胞に添加した場合において、定点タイムラプス解析による蛍光検出結果を示した写真像図である。図の構成等に関する説明は図9と同様である。
実施例3(4)で試料投与せずにCHL培養細胞を培養した場合において、定点タイムラプス解析による蛍光検出結果を示した写真像図である。図の構成等に関する説明は図9と同様である。
本出願は、2015年5月16日に日本国に本出願人により出願された特願2015−100586に基づく優先権主張を伴う出願であり、その全内容は参照により本出願に組み込まれる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明は、変異型シャペロニン複合体を利用した細胞内への局所送達を可能とする薬物送達システム用ナノカプセルに係る発明に関する。なお、本明細書中において「細胞内小器官」及び「細胞小器官」の用語は、本願に係る優先日における本願発明に関する技術分野の技術常識が示すように「オルガネラ(organelle)」を指す用語として用いられた用語である。
1.変異型シャペロニン複合体
本発明は、リング構造を構成するGroELサブユニットとしてATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体を含み、且つ、頂上部分を構成するサブユニットとしてGroES活性を有するサブユニットを含んでなる変異型シャペロニン複合体を、細胞内への局所的薬物送達システム用ナノカプセルの薬理成分内包用キャリア素材として利用する技術に関するものである。
本明細書において「シャペロニン複合体」とは、GroELサブユニットとGroES活性を有するサブユニットを主たる構成要素とする、リング状の複合体構造を有するナノカプセル状タンパク質を指す。
GroELサブユニットは7量体のリング構造を形成し、リング構造が背中合わせに結合すると14量体のダブルリング構造となる。頂上キャップ構造としてGroES活性を有するサブユニットが結合することで、直径4〜8nm程度(大腸菌野生型では約5nm)の閉鎖的な空洞を有し、且つ水溶液中で安定且つ均一な立体構造をとる。
一つのGroELサブユニットは、ATP結合部位を含む赤道ドメインと、基質タンパク質とGroES活性を有するサブユニットの結合部位を含む頂点ドメインと、その両ドメインをつなぐ中間ドメインとから構成されている。リングを構成するシャペロニンGroELサブユニットに7つのATP(ATP代替化合物を含む)がそれぞれ結合すると、シャペロニンGroELの構造変化が起こって補因子であるGroES活性を有するサブユニットがGroELに結合可能となる。
次いで、GroES活性を有するサブユニットがGroELに結合すると、基質タンパク質(被内包物)がリングの空洞内に落とし込まれ、シャペロニン複合体を形成する。シャペロニン複合体ではリングの空洞内で落とし込まれた基質タンパク質のフォールディングが進行する。
リング内のATP(ATP代替化合物を含む)が加水分解されると、GroES活性を有するサブユニットが解離し、それと同時にリング内のフォールディングされた基質タンパク質も解離する。
本発明に係るシャペロニン複合体は、ダブルリング構造であるGroEL14量体にGroES活性を有するサブユニット(7量体)1分子が結合した「弾丸型複合体」が通常の構造体であるところ、ダブルリング構造であるGroEL14量体にGroES活性を有するサブユニット(7量体)2分子が結合した「フットボール型複合体」も、本発明に係るシャペロニン複合体に含まれる。
また、フットボール型複合体がスプリットした状態であるシングルリング構造の複合体も、本発明に係るシャペロニン複合体に含まれる。また、リング界面に変異を有することによってダブルリング形成が阻害されたSR変異体(GroEL変異体の一種)をサブユニットとする複合体についても、本発明に係るシャペロニン複合体に含まれる。
本願において「シャペロニン活性」とは、基質タンパク質の正しいフォールディングに際して、ATP依存的(ATP代替化合物を含む)に基質タンパク質のフォールディングを介助する活性を指す。特に、大腸菌由来のGroELは、ATPとGroES依存的にタンパク質のフォールディングを介助する機構が明らかにされている。
本願において「アミノ酸の置換」としては、次のような例が挙げられる。一般にタンパク質の機能を維持するためには、置換後のアミノ酸は、置換前のアミノ酸と類似の性質を有するアミノ酸であることが好ましい。
このようなアミノ酸の置換は、保存的置換と呼ばれている。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe、Trpは、共に非極性アミノ酸に分類されるため、互いに似た性質を有する。また、非荷電性としては、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glnが挙げられる。また、酸性アミノ酸としては、Asp及びGluが挙げられる。また、塩基性アミノ酸としては、Lys、Arg、Hisが挙げられる。これらの各グループ内のアミノ酸置換は好ましく許容される。
[ATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体]
本発明に係る変異型シャペロニン複合体は、GroELサブユニットとして「ATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体」を含んでなるものである。
本発明におけるシャペロニン複合体の細胞内への透過作用は、当該GroELサブユニット変異体がGroES活性を有するサブユニットともに、解離半減期が大幅に遅延した安定したシャペロニン複合体(ナノカプセル状の構造体)となることによって実現されるものである。シャペロニン複合体は、高分子タンパク質であり且つ親水性分子であるため、細胞への透過作用が発揮された点は驚くべき知見である。
また、本発明における細胞内での局所的な被内包物(薬物等)放出機能は、当該GroELサブユニット変異体の解離半減期の遅延作用により実現されるものである。ここで、本明細書中のシャペロニン複合体の「解離」とは、複合体を構成していたGroES活性を有するサブユニットがGroELサブユニットのリング構造から解離する反応を指す。シャペロニン複合体のリング構造内に被内包物が内包されている場合、当該解離反応の際に複合体の外部に放出される。
ここで、加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体とは、野生型GroELに対してATP加水分解活性(ATP代替化合物を含む)が低下した変異型タンパク質を指す。当該ATP加水分解活性が低下することによりシャペロニン複合体のGroES活性を有するサブユニットとの解離反応時間に遅延が生じ、結果として複合体形成が長時間維持される機能が発揮される。
野生型GroELでのATPの加水分解の時間が約8秒と極めて短時間であるため、GroES活性を有するサブユニットと被内包物の解離反応が即座に起こってしまう。そのため、野生型のGroELにて形成したシャペロニン複合体では、そのままでは薬物送達システム用のキャリア素材として採用することは不適である。
本発明に係る変異型シャペロニン複合体としては、好ましくはリング構造を構成するGroELサブユニット7量体の全部がATP加水分解活性低下型を示すサブユニット変異体であることが望ましい。また、リング構造を構成するGroELサブユニットとして半数以上、好ましくは5/7以上、より好ましくは6/7以上、がATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体である場合、シャペロニン複合体に係る複合体形成の長時間維持が可能となり好適である。
この点、本発明に係る変異型シャペロニン複合体の製造工程において、通常の大腸菌でのタンパク質発現系を利用する場合、大腸菌自体が有する野生型GroELサブユニットが若干混在した場合であっても、得られたシャペロニン複合体に係る複合体形成を長時間維持する機能は十分に発揮されるものとなる(特許第5540367号公報、Koike-Takeshita et al., J. Biol. Chem. 2014)。
また、本発明に係る変異型シャペロニン複合体としては、ダブルリング構造を有するGroELサブユニット14量体の複合体であることが好適であるが、シングルリング構造のGroELサブユニット7量体の複合体であっても良い。好ましくは、被内包物効率の点でGroELサブユニット14量体のフットボール型複合体が好適である。
本発明に係るATP加水分解活性低下型サブユニットとしては、野生型GroELに対してATP加水分解活性が低下したサブユニットであれば良いが、好ましくは、GroEL(D398A)変異型サブユニットを挙げることができる。
GroEL(D398A)変異型サブユニットは、具体的には、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質を指すものである。また、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含んでなり、シャペロニン複合体を形成した際に解離半減期遅延型のシャペロニン活性を有するものも当該変異型サブユニットに含まれる。
当該GroEL(D398A)サブユニットでは、野生型GroELのアミノ酸配列のうちの398番のアスパラギン酸(D)がアラニン(A)に置換されたGroEL変異体である。野生型GroELでのATP加水分解を含む反応サイクル時間が約8秒であるところ、当該変異体ではシャペロニン複合体における解離半減期が30〜60分となる(Rye et al., Cell, Vol.97, 1999)。
また、本発明に係るATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体としては、配列番号1に記載のアミノ酸配列中、第398番目のアラニン以外の1若しくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、シャペロニン活性を有するGroELサブユニット変異体、好ましくはシャペロニン活性を有し且つシャペロニン複合体における解離半減期が20分以上、好ましくは30分以上、より好ましくは30〜120分、さらに好ましくは30〜60分となるGroELサブユニット変異体についても同様に用いることができる。大腸菌以外のバクテリア由来のGroEL様サブユニット又はその変異体で、当該条件を満たすタンパク質もここに含まれる。
ここで、配列番号1のアミノ酸配列のうち第398番目以外のアラニン以外の変異に関する範囲としては、好適には配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して、配列相同性にて70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列相同性を示す領域を有するものであることが好適である。
また、当該第398番目のアラニン以外の位置におけるアミノ酸の置換、欠失、もしくは付加した変異部位の数としては、好ましくは100以下、より好ましくは50以下であり、さらに好ましくは25以下、特に好ましくは10以下が好適である。
また、これら配列番号1の変異アミノ酸配列を含んでなり、シャペロニン複合体を形成した際に解離半減期遅延型のシャペロニン活性を有するものも当該サブユニット変異体に含まれる。
本発明に係るATP加水分解活性低下型サブユニットとしては、さらに好ましくは、GroEL(D52,398A)変異型サブユニットを用いることが好適である。
GroEL(D52,398A)変異型サブユニットとして具体的には、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質を指すものである。また、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含んでなり、シャペロニン複合体を形成した際に解離半減期遅延型のシャペロニン活性を有するものも当該変異型サブユニットに含まれる。
当該GroEL(D52,398A)サブユニットでは、GroEL(D398A)サブユニットにおいて第52番目のアスパラギン酸(D)がアラニン(A)に置換されたGroEL変異体であり、ATPの加水分解活性が著しく低下した性質を有する。
GroEL(D52,398A)サブユニットではシャペロニン複合体における解離半減期が約6日という著しく長い時間を示す。これは、GroEL(D398A)サブユニットの約150〜300倍という飛躍的に高い値である(特許第5540367号公報、Koike-Takeshita et al., J. Biol. Chem. 2014)。
ここで、GroELにおける第52番目のアラニンへの変異置換が相乗的にATP加水分解活性を低下させるという知見は、本発明者らが初めて見出した知見である。
また、本発明に係るATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体としては、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列中、第52番目及び第398番目のアラニン以外の1若しくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、シャペロニン活性を有するGroELサブユニット変異体、好ましくはシャペロニン活性を有し且つシャペロニン複合体における解離半減期が2日以上、好ましくは5日以上、より好ましくは5〜7日、さらに好ましくは6日程度となるGroELサブユニット変異体についても同様に用いることができる。大腸菌以外のバクテリア由来のGroEL様サブユニット又はその変異体で、当該条件を満たすタンパク質もここに含まれる。
ここで、配列番号2のアミノ酸配列のうち第52番目及び第398番目以外のアラニン以外の変異に関する範囲としては、好適には配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して、配列相同性にて70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列相同性を示す領域を有するものであることが好適である。
また、第52番目及び第398番目のアラニン以外の位置におけるアミノ酸の置換、欠失、もしくは付加した変異部位の数としては、好ましくは100以下、より好ましくは50以下であり、さらに好ましくは25以下、特に好ましくは10以下が好適である。
また、これら配列番号2の変異アミノ酸配列を含んでなり、シャペロニン複合体を形成した際に解離半減期遅延型のシャペロニン活性を有するものも当該サブユニット変異体に含まれる。
ATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体を調製する手法としては、野生型GroELに変異を導入することで調製することが可能である。
変異導入方法としては、通常用いられる方法を特に制限なく用いることができる。例えば、PCRを用いる方法や、部位特異的突然変異導入キット(例えば、Stratagene社製等)等の遺伝子工学的手法を用いることができる。
なお、導入する変異としては、上記したATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体の機能が担保される限りであればシャペロニン活性やATP加水分解活性に影響が少ない変異、ニュートラルな中立的変異、本発明のGroELサブユニット変異体に別途の機能を追加する変異、等を許容して含むものであっても良い。
本発明に係るATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体としては、外来性の細胞膜移行選択配列を含むペプチドの付加又は挿入がないもの、及び/又は、細胞膜透過のための分子修飾を施したものを採用することを除外するものではないが、形成される複合体の全体の立体構造に影響によるシャペロニン活性が低下又は欠失しやすさを考慮するとGroELサブユニットへのペプチド付加等や分子修飾を施した態様は好適ではない。
即ち、本発明に係るATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体としては、当該サブユニット変異体を含むシャペロニン複合体自体が優れた細胞膜透過能を有することから、外来性の細胞膜移行選択配列を含むペプチドの付加又は挿入がないものであって、且つ、細胞膜透過のための分子修飾を施さないものであることが好適である。当該態様は上記した複合体全体の立体構造等への影響を回避できることに加えて、余剰工程による複合体調製の煩雑化と費用増大が回避される点でも好適である。
ここで本明細書中「細胞膜移行選択配列」とは、選択的に細胞膜を透過する機能を発揮するアミノ酸配列を指すものであるが、具体的には細胞膜透過性ペプチド(CPP:Cell-Penetrating Peptide)が有するアミノ酸配列等を挙げることができる。詳しくは、細胞自体の生理機構であるマクロピノサイトーシスやエンドサイトーシス等を介して細胞に損傷を与えることなく非侵襲的に細胞内に取り込まれる性質を発揮するアミノ酸配列、を挙げることができる。なお、ここで「外来性」という用語はGroELサブユニット以外のアミノ酸配列を指す用語として用いている。
また、本明細書中「細胞膜透過のための分子修飾」とは、細胞に損傷を与えることなく非侵襲的に細胞内に取り込まれる性質を発揮する分子修飾であれば特に制限はないが、例えばボロン酸誘導体の付加等を挙げることができる。
[GroES活性を有するサブユニット]
本発明に係る変異型シャペロニン複合体は、頂上部分を構成するサブユニットとしてGroES活性を有するサブユニットを含んでなるものである。
GroES活性を有するサブユニットの本体(細胞内小器官局在化ペプチドを除いた領域)は、GroELとの結合能を有しシャペロニン複合体の頂上部分を構成するサブユニットであって、複合体が分子シャペロン活性を発揮するために補助因子として機能する領域である。GroES活性を有するサブユニットは、通常は7量体で1分子を構成しGroELリング構造の補助因子として機能する。
本発明における「GroES活性」とは、GroELとの結合能を有することでシャペロニン複合体の頂上部分を形成する機能を奏し、複合体が分子シャペロン活性を発揮するために補助因子として機能する活性を指すものである。
当該GroES活性を有するサブユニット本体としては、上記機能及び活性を奏するGroES様のタンパク質であれば如何なるタンパク質を用いることができる。例えば、大腸菌由来のGroES、大腸菌以外のバクテリア由来のGroES相同タンパク質、ファージ由来のGroES様の立体構造及び類似機能を有するタンパク質、更には、これらのタンパク質由来の変異タンパク質なども好適に用いることができる。
本発明において、GroES活性を有するサブユニットの本体(細胞内小器官局在化ペプチドを除いた領域)としては、具体的には、野生型のGroESサブユニットを用いることができる。ここで、野生型GroESサブユニットとは、配列表の配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質を指すものである。また、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含んでなり、シャペロニン複合体の形成において上記したGroES活性を有するものも当該サブユニットに含まれる。
また、配列番号8に記載のアミノ酸配列中、1若しくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるサブユニット変異体であって、当該サブユニット変異体をシャペロニン複合体の構成サブユニットとなってシャペロニン複合体の形成において上記したGroES活性を有するものも同様に用いることができる。大腸菌以外のバクテリア由来のGroES様サブユニット又はその変異体で、当該条件を満たすタンパク質もここに含まれる。
ここで、配列番号8のアミノ酸配列の変異に関する範囲として、好適には、配列番号8に記載のアミノ酸配列に対して、配列相同性にて70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列相同性を示す領域を有するものであることが好適である。
また、配列番号8のアミノ酸の置換、欠失、もしくは付加した変異部位の数としては、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下が好適である。
また、配列番号8に対して変異を有するアミノ酸配列を含んでなり、シャペロニン複合体の形成において上記したGroES活性を有するものも当該サブユニットに含まれる。
また、GroES活性を有するサブユニットの本体(細胞内小器官局在化ペプチドを除いた領域)としては、野生型のT4ファージ由来であるGp31サブユニットを用いることもできる。ここで、Gp31サブユニットは、GroESと類似する立体構造を示すタンパク質であり、GroELとシャペロニン複合体を形成しGroES活性を発揮する分子として報告されているタンパク質である。なお、当該知見は当該技術分野における学術雑誌にて報告されている(Hunt et al., Cell 90, 2, (1997) 361-371)。
Gp31サブユニットは、具体的には配列表の配列番号11に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質を指すものである。また、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含んでなり、シャペロニン複合体の形成において上記したGroES活性を有するものも当該サブユニットに含まれる。
また、配列番号11に記載のアミノ酸配列中、1若しくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるGp31サブユニット変異体であって、当該サブユニット変異体をシャペロニン複合体の構成サブユニットとなってシャペロニン複合体の形成において上記したGroES活性を有するものも同様に用いることができる。T4ファージ以外のファージ由来のGp31様サブユニット又はその変異体で、当該条件を満たすタンパク質もここに含まれる。
ここで、配列番号11のアミノ酸配列の変異に関する範囲として、好適には、配列番号11に記載のアミノ酸配列に対して、配列相同性にて70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列相同性を示す領域を有するものであることが好適である。
また、配列番号11のアミノ酸の置換、欠失、もしくは付加した変異部位の数としては、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下が好適である。
また、配列番号11に対して変異を有するアミノ酸配列を含んでなり、シャペロニン複合体の形成において上記したGroES活性を有するものも当該サブユニットに含まれる。
本発明に係る変異シャペロニン複合体を構成するGroESサブユニットとしては、好ましくは「細胞内小器官局在化ペプチドが付加又は挿入されたGroES活性を有するサブユニット」であることが好適である。
当該態様でのGroESサブユニットは、シャペロニン複合体を細胞内小器官への局在化機能を有するペプチドを付加したGroES活性を有するサブユニットとなる。当該特徴により、本発明に係る変異型シャペロニン複合体では、細胞内への局所的薬物送達作用が実現されるものである。
本発明において「細胞内小器官局在化ペプチド」とは、具体的には、シャペロニン複合体を特定細胞内小器官に移送して局在化させる機能を有するペプチドを指す。当該ペプチドとしては、具体的には、(i)シグナルペプチド、(ii)特定タンパク質との結合能を有するペプチド、などを挙げることができる。
なお、上記したGroELサブユニット変異体にペプチドを付加又は挿入した場合、形成される複合体の全体の立体構造に影響を与えやすくシャペロニン活性が低下又は欠失しやすくなるため好適でない。
(i)本発明に係る細胞内小器官局在化ペプチドとしては、シグナルペプチドを用いることが好適である。ここで、シグナルペプチドとは、数アミノ酸〜数十アミノ酸残基(3〜60アミノ酸残基程度)からなる特定のアミノ酸配列からなるペプチドであって、局在シグナルや移行シグナル等と呼ばれるペプチドである。
本発明においては、シグナルペプチドが有するシグナル配列によって細胞内におけるタンパク質の局在化及び輸送を指示する機能が発揮されるものであれば、公知の如何なるシグナルペプチドを用いることが可能である。
本発明では、任意の細胞内小器官への移行を可能とするシグナルペプチドを採用することが可能である。例えば、核移行、ミトコンドリアマトリクス移行、小胞体移行、ペルオキシソーム移行、色素体移行などを可能とするシグナル配列を含むペプチドを用いることが可能である。
特に、核移行シグナル配列は、核局在シグナル配列(NLS)、核小体移行配列(NOS)等があり、これらを採用した場合、シャペロニン複合体を細胞核付近又は核内に移行して効率的に局在させることが可能となる。即ち、核移行を可能とするシグナル配列を含む核移行シグナルペプチドを採用する態様では、本発明に係るシャペロニン複合体を細胞核付近又は核内へ局在化及び輸送することが可能となる。ここで核移行シグナル配列としては、核付近又は核内へ局在化及び輸送が達成されるものであれば特に制限はないが、例えばAhR(Aryl Hydrocarbon Receptor)などのシグナル配列等を挙げることができる。
(ii)また、本発明に係る細胞内小器官局在化ペプチドとしては、特定の細胞内小器官に局在するタンパク質と特異的結合能を有するペプチドを用いることができる。
このようなペプチドとしては、例えば、リガンド分子として機能して所望の細胞内小器官に局在するレセプターと結合するペプチドを用いることができる。
また、所望の細胞内小器官に局在するタンパク質に対して、分子特異的に相互作用及び結合する機能を有し二量体形成又は多量体形成に関与するペプチドを用いることも可能である。
上記(i)及び(ii)に記載の細胞内小器官局在化ペプチドは、GroES活性を有するサブユニットの本体に対して所望のペプチド配列を1つ含むものであれば良いが、2以上のペプチドを採用することもできる。
本発明に係るシャペロニン複合体においては、細胞内小器官局在化ペプチドを「付加」する位置としては、GroES活性を有するサブユニットのN端側及び/又はC端側に付加することが可能である。好ましくはGroES活性を有するサブユニットのN端側に付加することが好適である。また、付加の際には、立体構造や機能等に悪影響を与えない限り、リンカー領域となるペプチドを介在させることも可能である。
また、N端とC端以外にも、GroES活性を有するサブユニットの立体構造や機能等に悪影響を与えない場合、当該サブユニットタンパク質内にペプチド配列を「挿入」する形態とすることも可能である。
なお、細胞内小器官局在化ペプチドの付加は、GroEL(リング構造を形成するサブユニット)のN端及びC端に付加することは不適である。GroELのN端及びC端はリング構造の内部に突出しているため、上記ペプチドを付加したとしてもその作用効果は原理的に期待できない。
GroES活性を有するサブユニットへの細胞内小器官局在化ペプチドの付加又は挿入は、通常の融合タンパク質合成手法により行うことが可能である。
例えば、遺伝子工学的手法により、GroES−細胞内小器官局在化ペプチドの融合タンパク質発現用のコンストラクトを構築し、発現ベクターによって大腸菌等により融合タンパク質を合成することができる。また、化学的手法により、重合させて合成タンパク質として調製することも可能である。
本発明に係る変異型シャペロニン複合体としては、GroES活性を有するサブユニット7量体のうちの1つが細胞内小器官局在化ペプチド付加型又は挿入型のサブユニットであれば、被内包物の細胞内局所送達を実現することが好適となる。
本発明に係る変異型シャペロニン複合体としては、GroES活性を有するサブユニットとして細胞内小器官局在化ペプチド付加型又は挿入型のサブユニットを複数(2以上)含むものであっても良いが、当該サブユニットを1つしか含まないものであってもシャペロニン複合体の被内包物の細胞内局所送達効果は十分に発揮されるものとなる。
また、本発明に係る変異型シャペロニン複合体の製造工程において、通常の大腸菌でのタンパク質発現系を利用する場合、大腸菌自体が有する野生型GroESサブユニットが混在した場合であっても、得られたシャペロニン複合体の被内包物の細胞内局所送達効果は十分に発揮されるものとなる。
なお、本発明において、好ましくはGroES活性を有するサブユニット7量体の半数以上、より好ましくは5/7以上、さらに好ましくは6/7以上、特に好ましくは全部が、細胞内小器官局在化ペプチド付加型又は挿入型のサブユニットであることがより好適である。
[ATP等]
本発明に係るシャペロニン複合体としては、ATP又はATP代替化合物を含んでなる複合体であることが好適である。
本発明に係るシャペロニン複合体においては、特にATPを用いることが好適であるが、ATP代替化合物を用いることも可能である。ここで、ATP代替化合物としては、GroELサブユニット変異体のATP結合部位に結合可能で、シャペロニンGroEL変異体の構造変化を引き起こすことが可能な化合物であれば特に制限はない。
ATP代替化合物としては、例えば、ADP、ADPとフッ化ベリリウムの付加物、ADPとフッ化アルミニウムの付加物、ADPとフッ化ガリウムの付加物等を挙げることができる(J. Biol. Chem., 279, 45737-45743 (2004)、J. Mol. Biol., 2003 May 23; 329(1): 121-34.)。また、ATP代替化合物としては、GroELのATP加水分解部位で加水分解されない化合物(例えば、ADPとフッ化ベリリウムの付加物等)を用いることで、さらに長時間にわたって被内包物が内包されたシャペロニン複合体を維持することができる。
[その他の構成素材等]
本発明に係るシャペロニン複合体としては、その他にシャペロニン複合体が薬物送達システムキャリアとしての機能を向上させる様々な構成素材を含んでなる形態を採用することができる。
例えば、金属イオン(好ましくはマグネシウムイオン)や、金属ナノ粒子(FePt、CdS、CdSe、SiО、Au等)をさらに含むことにより、より効率的に被内包物をシャペロニン変異体内に内包させることができる(特開2013−199457号公報)。
また、本発明に係るシャペロニン複合体としては、臓器や特定細胞への指向性を担保するため、ATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体やGroES活性を有するサブユニットの表面に抗体等の修飾を行うことが可能である。
また、本発明に係るATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体やGroES活性を有するサブユニットとしては、上記したシャペロニン活性やATP加水分解に関する遅延活性が機能担保される限り、糖鎖や蛍光物質が付加されたものや、リン酸化やメチル化等の官能基置換等の分子修飾がされたものも含まれる。
[変異型シャペロニン複合体の調製]
本発明の変異型シャペロニン複合体は、GroELサブユニット変異体を含むGroELサブユニットの集合から、通常の条件下、例えばATP依存的(Nature, 1990 Nov 22; 348(6299): 339-42)に形成させて調製(製造、生産等)することができる。
具体的には、緩衝液中にてGroELサブユニット変異体を含むGroELサブユニットと被内包物(薬理成分等)を混合し、次いで、GroES活性を有するサブユニット及びATP(ATP代替化合物を含む)と接触するように混合する工程を挙げることができる。また、所望に応じて、金属イオン、金属ナノ粒子等を混合させて内包させることも可能である(特開2013−199457号公報)。
本発明においては、シャペロニン変異体のATP加水分解活性が低下しているため、被内包物(薬理成分等)を内包したシャペロニン複合体の状態を長時間維持することが可能となる。
2.薬物送達システム用ナノカプセル
本発明に係る変異型シャペロニン複合体は、薬物等の被内包物を保持可能なタンパク質性のナノカプセルとして利用することが可能である。即ち、細胞内への局所送達のための薬物送達システム用ナノカプセルとして利用することが可能となる。当該ナノカプセルは、本発明に係る変異型シャペロニン複合体を薬物送達のためのキャリア素材として含んでなるものである。
本発明に係る変異型シャペロニン複合体は、そのリング構造内に薬理成分を内包可能なキャリア素材とすることが可能である。即ち、本発明に係る変異型シャペロニン複合体は、薬理成分内包用キャリア素材として含んでなる薬物送達システム用ナノカプセルとすることが可能である。
本発明に係るナノカプセルは、上記した変異型シャペロニン複合体の性質によって細胞内への局所的薬物送達システム用ナノカプセルとして利用することが可能である。特にGroES活性を有するサブユニットに細胞内小器官局在化ペプチドが付加又は挿入された態様では、細胞内小器官への局所的薬物送達システム用ナノカプセルとして好適に利用することが可能となる。更にGroES活性を有するサブユニットに核移行シグナルペプチドが付加又は挿入された態様では、細胞核への局所的薬物送達システム用ナノカプセルとして好適に利用することが可能となる。
本発明に係る変異型シャペロニン複合体は、そのカプセル状構造の空洞内に薬理成分を内包してなる複合体として形成させて製造することが可能である。即ち、本発明に係る変異型シャペロニン複合体は、そのリング構造内に薬理成分を内包してなるナノカプセルの形態とすることが可能である。当該形態においては薬理成分を内包したタンパク質性のナノカプセルとなるため医薬剤として好適に利用することが可能となる。
本発明における被内包物(薬理成分等)は、シャペロニン変異体に内包可能なものであれば、原理的には既知の薬理成分となる如何なる化合物を対象とすることができる。特に、癌、脳神経、遺伝子疾患の薬理成分を内包させることで、有効な薬物送達システム用キャリアナノカプセルとして好適に利用することができる。
具体的な薬理成分としては、例えば、核酸(DNA、RNA等)、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、多糖類、これらの誘導体や修飾体などを内包させることができる。核酸としては特に制限はないが、例えばプラスミド、発現ベクター、核酸オリゴ、siRNA(small interfering RNA)、miRNA(micro RNA)、ゲノム編集用のガイドRNA、核酸アプタマー等を内包させることができる。また、タンパク質やペプチドとしては特に制限はないが、例えば抗体を内包させることも可能である。
また、薬理成分の態様としては、上記薬理成分を含むものを同様に内包することができる。詳しくは薬理成分を含む混合物や組成物、薬理成分と金属ナノ粒子等の担体との吸着体や結合体等を採用することも可能である。
また、有機合成した医薬化合物、ナノクリスタル(ナノ結晶化した化合物)、デンドリマーナノ粒子、などを内包させることも可能である。
なお、核酸等の低分子を内包させる場合、カチオン性の担体を用いることが好適である。カチオン性担体としては、例えば、正電荷に帯電した高分子ポリマーであるポリエチレンイミン(PEI)、キトサン、ポリL−リシン(PLL、poly-L-lysine)などを挙げることができる。また、カチオン性担体としては、金属ナノ粒子の表面をカチオン性分子で表面修飾したものを用いることも可能である。
また本発明における被内包物は、シャペロニン変異体に内包されることから、例えば、タンパク質の場合、120kDa以下、好ましくは90kDa以下、さらに好ましくは60kDa以下の大きさであることが望ましい。
本発明に係る薬物送達システム用ナノカプセルは核酸を内包させた態様においては核酸治療又は遺伝子治療の分野において好適に利用されることが期待される。本発明に係る薬物送達システム用ナノカプセルは細胞質中に局在する細胞内小器官への薬物送達に利用することも可能であるが、特に細胞核への局所的薬物送達システム用ナノカプセルとして利用することが期待される。
本発明に係る薬物送達システム用ナノカプセルは、変異型シャペロニン複合体に含まれるATP(又はATP代替化合物)の加水分解に伴って、徐々に(例えば、半減期である数十分〜数日で)被内包物を放出させることができる。このようなシャペロニン複合体の徐放性は、細胞内への局所的薬物送達キャリアとして極めて好適な性質である。
また、本発明に係る薬物送達システム用ナノカプセルにおいては、任意のタイミングで被内包物を放出させることもできる。具体的にはシャペロニン複合体を構成する金属イオン(好ましくは、マグネシウムイオン)の濃度を、通常用いられる方法(例えば、金属キレート化合物を用いる方法)で低下させることでシャペロニン複合体から被内包物を放出させることができる。
本発明に係る薬物送達システム用ナノカプセルは、原理的には変異型シャペロニン複合体が細胞膜を透過可能な細胞であれば如何なる細胞に対して用いることも可能である。広くは、細胞小器官を有する真核生物の細胞であれば対象細胞とすることができるが、好ましくは細胞壁等を有さない動物細胞、より好ましくは脊椎動物の細胞に対して好適に用いることが可能である。特には、本発明では、哺乳類細胞に対して好適に用いることが可能である。
また、本発明に係る薬物送達システム用ナノカプセルは、血管投与、皮下投与、腸管投与、経口投与、経皮投与等のin vivoでの投与態様だけでなく、培養細胞等へのin vitroでの投与態様への利用も可能である。例えば、in vitroでの投与形態の場合、細胞核に確実に内包物を到達させることが可能であることから、多能性幹細胞等に適用することで再生医療等に利用することも可能である。また、人工的に作製した多能性細胞である体細胞由来ES細胞やiPS細胞に対しても好適に適用対象とすることが可能である。また、iPS細胞調製時においても、山中因子(Oct3/4、Sox2、Klf4、及びc−Myc)等を導入する際に好適に利用することが可能である。
また、細胞核に確実に内包物を到達可能な利点は、研究目的の遺伝子導入用キャリアとしても有益に利用可能である。例えば、ゲノム編集技術やRNAi用のキャリアとしても好適に利用可能である。
本発明においては、上記した本発明に係る薬物送達システム用ナノカプセルを用いることによって、細胞内へ局所的に薬理成分を送達する方法(細胞内への局所的な薬物送達方法)の実現が可能となる。詳しくは、上記したin vivo又はin vitro条件下の細胞に対して本発明に係る薬物送達システム用ナノカプセルを投与する工程を行うことによって、被内包物である薬理成分を細胞内へ局所的に送達する方法の実現が可能となる。
更に本発明においては、上記した本発明に係る薬物送達システム用ナノカプセルの態様に応じて、細胞質中に局在する細胞内小器官へ局所的に薬理成分を送達する方法の効率的な実現が可能となる。また上記した本発明に係る薬物送達システム用ナノカプセルの態様に応じて、細胞核へ局所的に薬理成分を送達する方法の効率的な実現が可能となる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。
[実施例1]『GroES−NASを含むシャペロニン複合体の調製』
核移行シグナルペプチドをN端に付与したGroES変異サブユニットを含むシャペロニン複合体を調製した。
(1)マウスAhRシグナル配列オリゴマーの増幅
GroESのN末端に融合するマウスAryl Hydrocarbon Receptor(AhR)シグナル配列であるアミノ酸残基12番目から38番目まで(配列番号7に記載のアミノ酸配列)をコードする塩基配列に対して、5’側に制限酵素NcoIサイト及び3’側にNdeIサイトを付加した96塩基対のオリゴマーの表鎖(配列番号3)及び裏鎖(配列番号4)を合成した。
また、当該制限酵素サイトを付加したマウスAhRシグナル配列オリゴマーを増幅するため、配列番号5及び6に記載の塩基配列からなるPCRプライマーを合成した。
上記マウスAhRシグナル配列オリゴマーの表鎖(配列番号3)及び裏鎖(配列番号4)を等量混合し、増幅用プライマー(配列番号5及び6)、合成酵素、dNTPsと共にGeneAmp(R) PCR System 9700(Applied Bioscience)で95℃にて5分間予備加熱後、95℃30秒→55℃30秒→72℃30秒を25サイクル行い、72℃7分反応した。
pT7Blueベクター(Takara)に増幅済みオリゴマーを挿入して、TAクローニングを行い、コンピテントセルE.coli DH5αを形質転換してLB/Amp/IPTG/X−galプレートで培養し、ブルーホワイトセレクションにより24クローンを採取した。
このうち12クローンをLB/Amp培地で培養して集菌後、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)でプラスミド抽出し、制限酵素NcoI及びNdeI(Takara)で一夜処理後、70℃10分加熱処理して酵素を失活させた。
4%アガロースゲルで電気泳動を行い、予想された90塩基長及び160塩基長の切断分子量を確認した。
(2)GroES−NAS発現ベクターの構築
上記調製したNdeI及びNcoI制限酵素処理済みのマウスAhRシグナル配列オリゴマーをアガロースゲルにて電気泳動し、目的分子量のDNA断片をゲルごと切り出し、Wizard SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega, Cat. # A9282)で抽出した。また、NdeI及びNcoI制限酵素処理済みのGroES N−end His−Tag/pET21(b)+vectorについても同様にして、アガロースゲルにて電気泳動し、目的分子量のDNA断片をゲルごと切り出して抽出した。なお、本明細書中の「pET21(b)+」は「pET−21b(+)」と同一ベクターを指す名称として記載したものである。
得られたマウスAhRシグナル配列オリゴマーをGroES/pET21(b)+vectorに挿入し、コンピテントセルBL21(DE3)を形質転換し、培養集菌後にプラスミドを抽出した。抽出プラスミドをNdeI及びNcoI制限酵素処理し、アガロース電気泳動により、100塩基対付近に目的断片を確認した。
T7 Universal Primer、T7 P(24) Primer、T7F Bgl II I UpFs1 Primer、T7 Reverse Primerを用い、抽出プラスミドを各プライマー、BigDye(R)(Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit ABI)、Sequencing Buffer(ABI)と共に96℃1分予備加熱後、96℃10秒→50℃5秒→60℃4分を25サイクル行って増幅した。Performa Gel Filtration Cartridges(Edge Bio)で精製した。
反応溶液を真空乾燥後、HiDiホルムアミドで溶解し、Genetic Analyzer 3130 (ABI)で塩基配列を解析した。T7 Universal Primer、T7P (24) Primer により5’側からの配列を解読し、目的とするマウスAhRシグナル配列オリゴマーがGroES/pET21(b)+vectorに挿入されていることを確認した(図3、配列番号10)。
調製したコンストラクト構造(以下、GroES−NAS/pET21(b)+vector又はGroES−NAS発現ベクターという場合がある。)におけるシグナル配列及びGroESコード領域と対応アミノ酸を図3(配列番号9及び10)に示す。
(3)GroES−NAS融合タンパク質の発現と精製
上記発現ベクターを用いてGroES−NASを発現させ、融合タンパク質の調製を行った。
GroES−NAS/pET21(b)+vectorで形質転換したBL21(DE3)をLB培地で培養し、OD=0.8でIPTG誘導を行い、集菌後に超音波破砕した。破砕液の遠心上清を試料に供して、CBB染色と抗GroES抗体によるウェスタンブロットにより、融合タンパク質の発現を確認した(図4)。
次いで、大量培養にてGroES−NAS発現ベクター/BL21(DE3)を集菌した後、1mM EDTAを含む20mM Tris(pH8.0)中で超遠音波破砕し、40,000rpmで30分遠心した上清が20%飽和硫安溶液となるように硫酸アンモニウムを加えた。再度超遠心した上清を、Butyl TOYOPEARL M650(TOSOH)に適用し、20→0%硫安勾配により分画した。
得られたGroES−NAS溶出画分をMWCO 6000−8000の透析膜に入れ、1mM EDTAを含む25mMクエン酸緩衝液(pH4.3)で透析した。透析試料の遠心上清をSP−TOYOPEARL M650(TOSOH)に適用し、0→1M NaCl勾配によりGroES−NASを溶出した。溶出画分をUltracel(R)−15(MWCO 10K)(Merck Millipore)を用いた限外濾過により濃縮した。
(4)GroEL(D52,398A)変異体の調製
ATP加水分解活性低下型変異体であるGroEL(D52,398A)変異体は、特許第5540367号明細書の実施例に記載の方法に従って調製した。ここで、調製した(D52,398A)変異体は、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質である。
(5)シャペロニン複合体の調製
上記調製したGroES−NASタンパク質を用い、100mM KCl、5mM MgClを含む20mM HEPES/KOH(pH7.5)(HKM Buffer)の緩衝溶液中で1μM GroEL/2μM GroES−NAS/1mM ATPの比率でのシャペロニン複合体の調製を行った。ここでGroELとしては、上記調製したGroEL(D52,398A)変異体を用いた。
また、野生型であるGroES−WTタンパク質についても、上記と同様にしてシャペロニン複合体を調製した。
GroES−WT(野生型)を用いて調製したシャペロニン複合体を試料1−1、GroES−NAS(シグナルペプチド付加型)を用いて調製したシャペロニン複合体を試料1−2とした。得られた各調製試料(試料1−1、試料1−2)を、6% Native−PAGE、透過型電子顕微鏡を用いて観察しシャペロニン複合体の合成を確認した。
(6)TEMによる分子構造観察
調製した変異型シャペロニン複合体について、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて分子構造を観察した。
0.25μM GroEL(D52,398A)変異体、0.5μM GroES−NAS、及び1mM ATPとなるようにHKM Buffer中で混合し、1時間以上氷冷した。
次いで、イオンコーターで親水化処理したコロジオン支持膜400mesh銅グリッド(U1006−400/EM Japan)を準備した。
当該グリッドに、0.1μMシャペロニン複合体となるように超純水で希釈した試料液3μlを30秒保持して濾紙で吸い取った。そして、超純水6μlを載せて直ちに吸い取り、1%リンダングステン酸(pH4.0)6μlを30秒のせてネガティブ染色した。当該処理後のグリッドを、デシケーターで12時間以上乾燥させた。
透過型電子顕微鏡JEM1400Plus(日本電子)にて加速電圧80kVで試料を観察し、明視野をCCDカメラで撮影した。結果を図5に示した。
その結果、GroES−NASを含む変異型シャペロニン複合体について、ダブルリング構造を有するシャペロニン複合体が形成されていることが確認した。
詳しくは、図5(A)に示すように、GroES−NAS7量体1分子及びダブルリング構造(GroEL14量体)を有する「弾丸型」の分子構造を有するシャペロニン複合体が形成されていることを確認した。また、図5(B)に示すように、GroES−NAS7量体2分子及びダブルリング構造(GroEL14量体)を有する「フットボール型」の分子構造を有するシャペロニン複合体が形成されていることを確認した。
[実施例2]『哺乳類細胞へのシャペロニン複合体導入』
被内包物を包含させたシャペロニン複合体を用いた哺乳類細胞への導入試験を行うことで、実施例1にて調製したシャペロニン複合体が有する細胞膜透過性及び細胞内局所送達作用を検証した。
(1)GFP内包シャペロニン複合体の調製
シャペロニン複合体の各構成タンパク質を蛍光標識し、被内包物としてGFPを取り込ませたシャペロニン複合体をCHL細胞へ添加した後、蛍光共焦点顕微鏡を用いて経時観察を行った。
GroES−NAS及びGroES−WTをCy3(GE Healthcare)で蛍光標識し、GroEL(D52,398A)をCy5(GE Healthcare)で蛍光標識した後、NAP5ゲル濾過カラム(GE Healthcare)を用いて標識タンパク質を分取した。
次いで、60℃15分加熱変性させたGFPタンパク質をGroELに取り込ませ、2μM GroEL/4μM GroES/4μM GFP/1mM ATPの比率でのシャペロニン複合体の調製を行った。ここでGroELとしては、ATP加水分解活性低下型変異体であるGroEL(D52,398A)変異体(配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質)を用いた。
GroES−WT(野生型)を用いて調製したシャペロニン複合体を試料2−1、GroES−NAS(シグナルペプチド付加型)を用いて調製したシャペロニン複合体を試料2−2とした。
(2)チャイニーズハムスター(CHL)細胞へのシャペロニン複合体導入
上記シャペロニン複合体(試料2−1、試料2−2)を調製した後、10×HKM Buf.を1/10容積加え、0.22μmメンブレンフィルターで濾過滅菌した。
CHL細胞をφ6cmディッシュにMEM培地と共に播種し、細胞が30%コンフルエントのときに、シャペロニン複合体をGroEL換算で終濃度0.05μMとなるように添加した。そして、37℃5%CO条件にて培養した。
GroES−WT(野生型)を含むシャペロニン複合体を添加して培養した試験(試料2−1)、GroES−NAS(シグナルペプチド付加型)を含むシャペロニン複合体を添加して培養した試験(試料2−2)、それぞれの培養状態について蛍光共焦点顕微鏡FL1000(OLYMPUS)を用いて、三重励起にて細胞の経時変化を観察した。経時観察の結果を示す蛍光顕微鏡写真像図を図6に示した。
その結果、図に示すように、GroES−WT(野生型)を含むシャペロニン複合体を添加して培養した試験(試料2−1)では、GFP(緑色)、GroEL(白色)、及びGroES(赤色)を示す各蛍光シグナルが細胞質内で観察された。
ここで、GFP等タンパク質は細胞膜透過性を示さない。また、GroELサブユニットにて構成される複合体構造はそのままでは細胞膜透過性を有さないことが報告されている(Biswas et al. 2013)。従って、シャペロニン複合体を構成する各タンパク質が細胞質内にて観察されたという結果は、Biswas et al. 2013(非特許文献3)の記載から想定される技術常識とは反対の知見である。
当該結果は、ATP加水分解活性低下型のGroEL(D52,398A)サブユニット変異体の作用によって複合体形成が長時間維持され、これによって細胞膜透過が発揮される構造が長時間維持されて達成されたものと認められた。なお、当該結果はシャペロニン複合体の構造自体に細胞膜透過活性があることを初めて示す知見である。なお、野生型GroELサブユニットの複合体を形成させた場合、複合体の解離半減期が数秒という極めて短時間であるため、複合体構造を細胞内局所送達に必要な時間維持できず内包物の細胞内送達を行うことができないと認められる。
ここで、GroES−WT(野生型)を含むシャペロニン複合体を添加して培養した試験(試料2−1)では、各蛍光シグナルの観察は細胞質内のみであり、72時間の培養後でも核内へ到達したことを示す蛍光シグナルは得られなかった。また、培地や細胞質の影響で複合体自体が不安定なためか被内包物であるGFPがやや早い時間で放出されてしまう傾向が見られた。
また、GroES−NAS(シグナルペプチド付加型)を含むシャペロニン複合体を添加して培養した試験(試料2−2)では、GFP(緑色)、GroEL(白色)、及びGroES(赤色)を示す各蛍光シグナルが細胞質内で観察された。さらに、薄黄色のシグナル(Cy3、GFP、及びCy5の蛍光が、同じ地点で三重に重複したシグナル)が核内において検出された。特に48時間以降では、核内での薄黄色シグナルが多数観察された。
詳細な観察結果から、12〜24時間で細胞質に到達し、36〜48時間で核内に到達していると認められた。
Figure 0006454008
(3)スタック断面像
試料2−2における上記導入試験での48時間経過時の蛍光顕微鏡観察において、0.1μmスライス間隔にて100枚の断面を撮影し、三次元スタック断面像を作成した。
図7に係る立体画像が示すように、薄黄色のシグナルが核内において多数検出されていることから、核内においてシャペロニン複合体が被内包物であるGFPを保持していることが三次元立体画像中においても確認された。
(4)結論
以上の解析結果から、GroEL(D52,398A)の変異型シャペロニン複合体に被内包物を内包させることによって、細胞膜を透過して細胞質に非内包物を送達可能であることが確認された。そして、核移行シグナルペプチド付加型GroESを含むGroEL(D52,398A)の変異型シャペロニン複合体を用いることによって、細胞核の核内に被内包物を分解させることなく送達可能なことが実証された。
[実施例3]『核酸内包変異型シャペロニン複合体を用いた細胞核への局所送達』
核酸を包含させた変異型シャペロニン複合体を用いて哺乳類細胞への導入試験を行うことによって細胞核への核酸送達が可能かを検証した。
(1)蛍光標識DNAの作製
0.13μg/μL 鋳型遺伝子pUC19ベクター(1μL)、100μM M13M4プライマー(0.5μL)、AmpliTaq Gold 360 Master Mix(25μL)、ChromaTide(R) Alexa Fluor(R) 488-5-dUTP(Molecular Probes, Cat.#C-11397)(3.3μL)、滅菌水(20.2μL)の組成となるように反応液50μLを滅菌マイクロチューブ内に調製した。ここで、ChromaTide(R) Alexa Fluor(R) 488-5-dUTP(Molecular Probe, Cat.#C-11397)は励起光に対して緑色蛍光を発する蛍光標識dUTPである。また各dNTPは本反応系に適した濃度となる量が予めAmpliTaq Gold 360 Master Mixに含まれている。
上記調製した混合液について、2720 Thermal Cycler(Applied Biosystems)を用いて95℃で1分間予備加熱した後、95℃30秒→52℃30秒→72℃30分の工程を40サイクル行い、72℃で7分間保持した。反応終了後、得られた反応液を4℃に保存した。
また、電気泳動用の比較試料として蛍光標識dUTPを添加しないことを除いては上記と同様にして増幅反応を行った。
反応溶液に、終濃度0.2%となるようにドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液を混合し、2720 Thermal Cycler(Applied Biosystems)を用いて98℃5分→25℃10分の加熱によるSDS処理を行った。
500μLの滅菌水で膨潤させたマイクロチューブ型樹脂カラム(Performa DTR Gel Filtration Cartridges, Edge Bio, Cat.#4050167)を800×gで3分間遠心し、当該樹脂カラムを滅菌マイクロチューブの内側にセットした。ここにSDS処理した反応液50μLをカラム内の樹脂にアプライ充填し、800×gで3分間遠心して未反応物を除去した。カラムからの精製溶出液を卓上バキュームローター(MicroVac MV-100, トミー精工)を用いて加熱乾燥させ、滅菌水50μLで再度溶解し−25℃にて遮光保存した。
得られた増幅DNAを4.0%PAGEに供し、レーン1には鋳型であるpUC19を、レーン2には蛍光標識せずに増幅合成したDNAを、レーン3には蛍光標識して増幅合成した蛍光標識DNAをアプライして電気泳動した。電気泳動後、励起光460nm/蛍光515nm filter(515nm以上の波長を透過させるフィルター)を用いて緑色蛍光の検出を行った。その後EtBr染色を行って増幅DNAの確認を行った。撮影したゲル写真像の結果を図8に示す。
その結果、上記サイクル反応によってpUC19を鋳型として蛍光標識されたDNA断片が増幅合成され、精製回収されていることが確認された(図8:レーン3)。ここで、蛍光標識DNAは1本鎖DNAであるが、鋳型との会合又は立体構造形成によってEtBrインターカレートによる染色像が確認された。
そして、図8のレーン3’の蛍光シグナルが示すように、当該蛍光標識DNAは励起光に対して緑色蛍光を発するDNA断片であることが確認された(図8:レーン3’)。一方、蛍光標識せずに増幅合成したDNAでは緑色蛍光は検出されなかった(図8:レーン2’)。
(2)金ナノ粒子への蛍光標識DNAの吸着
平均粒径2nmの金ナノ粒子懸濁液(Spherical Gold Nanoparticles, Nanopartz Cat.# A-11-2.2)500μLを滅菌マイクロチューブに分取し、上記(1)で調製した蛍光標識DNA溶液10μLを加えて、恒温振とう器(Eppendorf ThermoMixer (R) C)を用いて25℃500rpmで一夜混合した。
得られた懸濁液に終濃度0.3M酢酸ナトリウム及び90%エタノールとなるように各試薬を加え、転倒混和後、卓上遠心機にて14,500rpmで5分間遠心した。上清除去後、沈殿物を滅菌水50μLで再懸濁して蛍光標識DNA吸着金ナノ粒子の懸濁液を得た。
(3)蛍光標識DNA吸着金ナノ粒子を内包したシャペロニン複合体の調製
HKM Buffer(20mM HEPES/KOH(pH7.5),100mM KCl,5mM MgCl)の緩衝液中に、GroEL(D52,398A)変異体を加え、上記(2)で調製した蛍光標識DNA吸着金ナノ粒子懸濁液を添加し、1分間ピペッティングにより混和した。
当該混合液にGroES−NAS(AhR付加型)及びATPを加えて、終濃度0.5μM GroEL(D52,398A)/1.0μM GroES−NAS/蛍光標識DNA吸着金ナノ粒子(金ナノ粒子換算にて0.02mg/mL)/1mM ATPの比率での変異型シャペロニン複合体を調製した。当該シャペロニン複合体を試料3−1とした。
また、上記混合液にGroES−WT(野生型)及びATPを加えて、終濃度0.5μM GroEL(D52,398A)/1.0μM GroES−WT/蛍光標識DNA吸着金ナノ粒子(金ナノ粒子換算にて0.02mg/mL)/1mM ATPの比率での変異型シャペロニン複合体を調製した。当該シャペロニン複合体を試料3−2とした。
なお、本実施例で用いたGroEL(D52,398A)変異体、GroES−NAS、及びGroES−WTの各タンパク質は、実施例1に記載の方法と同様にして調製したものを用いた。
得られた蛍光標識DNA吸着金ナノ粒子を内包したシャペロニン複合体を含む溶液は、遠心式フィルターユニット(Amicon Ultra-0.5 mL Centrifugal Filters 100KDa, Merck Cat.#UFC5100BK)及びHKM Bufferを用いた限外濾過により余剰物を除去した。当該遠心式フィルターによる限外濾過は卓上遠心機での4,000rpmの遠心により行い、濾過膜から逆遠心操作により精製濃縮液を回収した。得られた溶液は4℃にて遮光保存した。
(4)CHL細胞への投与試験
ノンコートの35mmガラスボトムディッシュ(IWAKI)に10個のCHL細胞(チャイニーズハムスター肺由来線維芽細胞)を播種し、37℃及びCO濃度5%に設定したCOインキュベーター内にて一日培養することによって、50%コンフルエントの状態に培養した。ここに、上記(3)にて調製した蛍光標識DNA吸着金ナノ粒子を内包した変異型シャペロニン複合体を、GroEL濃度換算にて終濃度0.01μMとなるように添加した(試料3−1、試料3−2)。
一方、比較試験としては、上記(2)にて調製した蛍光標識DNA吸着金ナノ粒子の懸濁液(試料3−3)を金ナノ粒子換算にて終濃度0.0004mg/mLとなるように添加して同様にして培養を行った。当該比較試験における蛍光標識DNA吸着金ナノ粒子の濃度は本実施試験(試料3−1、試料3−2)と同濃度に調整した濃度である。
試料投与後、ガラスボトムディッシュを37℃及びCO濃度5%に設定したCOインキュベーター内にて3時間の静置培養を行った後、培地交換により投与試料を除去した。その後37℃及びCO濃度5%条件下のインキュベーター顕微鏡(LCV110-DSU, Olympus)内に当該ガラスボトムディッシュを配置して2時間静置培養した。ここでインキュベーター顕微鏡としては、GFP用蛍光キューブ(Semrock GFP-4050B)、蛍光観察用光源(U-HGLGPS, Olympus)、−65℃冷却CCDカメラ(浜松ホトニクス)、及び画像解析ソフト(MetaMorph)を搭載したものを用いた。上記GFP用蛍光キューブは、励起フィルター(FF01-466/40-25)、ダイクロックミラー(FF495-Di03-25x36)、及び蛍光フィルター(FF03-525/50-25)等を構成物品として含んでなる励起光466nm/蛍光525nmの蛍光フィルターセットである。
1ディッシュあたり3カ所の観察定点を設定し、DIC透過像(露出時間150ミリ秒)及び励起光466nm/蛍光525nm蛍光像(露出時間200m秒)を倍率×80にて3時間ごとに撮影し、試料投与後経過時点での定点画像を取得した。なお、静置培養中の細胞は遊走状態を継続していたため観察時点に定点位置にいた細胞を撮影した。
一方、対照試験として試料を投与しなかったことを除いては上記と同様の操作により静置培養を行い、同様のタイミングにて培地交換やインキュベーター内での静置培養を行って定点画像を撮影した。なお、対照試験における時間経過の始点は他の試料投与試験の投与時に起算時として経過時間を計測した。
(5)画像解析
撮影したDIC透過像及び蛍光像について、画像解析ソフト(MetaMorph)を用いて重複画像を合成した。ここで、上記(1)で調製した蛍光標識DNAの存在は、画像中において蛍光シグナルとして検出することが可能となる。DIC透過像及び蛍光像の合成画像を図9〜14に示した。なお、蛍光シグナルが観察された箇所については、図10及び図12に階調反転した拡大像として示した。
その結果、図9及び図10に示すように蛍光標識DNA吸着金ナノ粒子を内包したGroES−NAS(AhR付加型GroES)を含む変異型シャペロニン複合体(試料3−1)を添加した場合、添加後8時間経過時において細胞質内にて蛍光標識DNA由来の蛍光シグナルが検出された。また添加後11〜14時間経過時には細胞核内において複数の蛍光シグナルが検出された。
ここで、タイムラプス解析にて経時的に検出された蛍光シグナルの検出位置は、変異型シャペロニン複合体の内包物を検出していると認められ、当該内包物到達地点は時間経過と伴に細胞質から細胞核に近づき、試料添加後11〜14時間経過時には核内に到達していると認められた。投与したGroEL(D52,398A)の変異型シャペロニン複合体の解離半減期が約6日であることを考慮すると、添加した大部分の複合体は核内到達後のタイミングにて内包物を維持していることが推測された。
この結果から、AhR付加型GroESを含む変異型シャペロニン複合体を用いることによって、核酸を分解させることなく核内へ局所送達することが可能であることが実証された。
また、図11及び12に示すように、蛍光標識DNA吸着金ナノ粒子を内包したGroES−WT(野生型GroES)を含む変異型シャペロニン複合体(試料3−2)を添加した場合、添加後5〜11時間経過時において細胞質内にて蛍光標識DNA由来の蛍光シグナルが検出されたが、核内における蛍光シグナルは検出されなかった。
この結果から、野生型GroESを含む変異型シャペロニン複合体を用いた場合、核内への局所送達が可能であることまでは示されなかった。但し、GroEL(D52,398A)の変異型シャペロニン複合体を用いることによって細胞膜を透過した細胞質内に被内包物を送達可能であるという結果は、細胞内への局所送達が可能であったことを示す好適な結果であった。
一方、図13に示すように比較試験である蛍光標識DNA吸着金ナノ粒子(試料3−3)のみを添加した場合では、細胞質及び核内のいずれにおいても蛍光標識DNAに由来する蛍光シグナルは検出されなかった。金ナノ粒子は凝集状態であり細胞内への取り込みが行われなかったためと推測された。
(6)結論
以上の解析結果から、GroEL(D52,398A)の変異型シャペロニン複合体に核酸分子を内包させることによって、細胞膜を透過して細胞質に核酸分子を送達可能であることが確認された。そして、核移行シグナルペプチド付加型GroESを含むGroEL(D52,398A)の変異型シャペロニン複合体を用いることによって、細胞核の核内に核酸分子を分解させることなく送達可能となることが実証された。
Figure 0006454008
本発明に係る技術は、タンパク質性の生体由来ナノカプセルとして細胞内への局所的薬物送達システムにおける要素技術となることが期待される。特に、製薬業界において注目されている核酸医薬に関する細胞内局所的DDSキャリア技術として重要な要素技術となることが期待される。
1: 細胞核
2: GFP、Cy5、及びCy3が三重重複して薄黄色となった蛍光シグナル
3: 蛍光標識DNAに由来する蛍光シグナル
11: 弾丸型シャペロニン複合体
12: フットボール型シャペロニン複合体

Claims (15)

  1. リング構造を構成するGroELサブユニットとしてATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体を含み、且つ、頂上部分を構成するサブユニットとしてGroES活性を有するサブユニットを含んでなる変異型シャペロニン複合体を、細胞内への局所的薬物送達システム用ナノカプセルの薬理成分内包用キャリア素材として含んでなることを特徴とする、薬物送達システム用ナノカプセルであって、
    前記ATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体が、外来性の細胞膜移行選択配列を含むペプチドの付加又は挿入がないものであって、且つ、細胞膜透過のための分子修飾が施されていないものである、前記薬物送達システム用ナノカプセル
  2. 前記ATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体が、
    (a−1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるGroELサブユニット変異体、
    (a−2)配列番号1に記載のアミノ酸配列中、第398番目のアラニン以外の1若しくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、シャペロニン複合体を形成した際に解離半減期遅延型のシャペロニン活性を有するGroELサブユニット変異体、又は、
    (a−3)前記(a−1)又は(a−2)に記載のアミノ酸配列を含んでなるアミノ酸配列からなり、シャペロニン複合体を形成した際に解離半減期遅延型のシャペロニン活性を有するGroELサブユニット変異体、
    である、請求項1に記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
  3. 前記ATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体が、
    (b−1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるGroELサブユニット変異体、
    (b−2)配列番号2に記載のアミノ酸配列中、第52番目及び第398番目のアラニン以外の1若しくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、シャペロニン複合体を形成した際に解離半減期遅延型のシャペロニン活性を有するGroELサブユニット変異体、又は、
    (b−3)前記(b−1)又は(b−2)に記載のアミノ酸配列を含んでなるアミノ酸配列からなり、シャペロニン複合体を形成した際に解離半減期遅延型のシャペロニン活性を有するGroELサブユニット変異体、
    である、請求項1に記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
  4. 前記GroES活性を有するサブユニットが、
    (c−1)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるGroESサブユニット、
    (c−2)配列番号8に記載のアミノ酸配列中、1若しくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、配列番号8に記載のアミノ酸配列に対して70%以上の配列相同性を示す領域を有する、シャペロニン複合体の形成においてGroES活性を有するGroESサブユニット、
    (c−3)前記(c−1)又は(c−2)に記載のアミノ酸配列を含んでなるアミノ酸配列からなり、シャペロニン複合体の形成においてGroES活性を有するGroESサブユニット、
    (d−1)配列番号11に記載のアミノ酸配列からなるGp31サブユニット、
    (d−2)配列番号11に記載のアミノ酸配列中、1若しくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、配列番号11に記載のアミノ酸配列に対して70%以上の配列相同性を示す領域を有する、シャペロニン複合体の形成においてGroES活性を有するGp31サブユニット、又は、
    (d−3)前記(d−1)又は(d−2)に記載のアミノ酸配列を含んでなるアミノ酸配列からなり、シャペロニン複合体の形成においてGroES活性を有するGp31サブユニット、
    である、請求項1〜3のいずれかに記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
  5. 前記GroES活性を有するサブユニットが細胞内小器官局在化ペプチド付加型又は挿入型のGroES活性を有するサブユニットである、請求項1〜4のいずれかに記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
  6. 細胞内小器官への局所的薬物送達システム用ナノカプセルである、請求項5に記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
  7. 前記細胞内小器官局在化ペプチドが核移行シグナルペプチドである、請求項5に記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
  8. 細胞核への局所的薬物送達システム用ナノカプセルである、請求項7に記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
  9. 前記ATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体が、
    (b−1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるGroELサブユニット変異体、
    (b−2)配列番号2に記載のアミノ酸配列中、第52番目及び第398番目のアラニン以外の1若しくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、シャペロニン複合体を形成した際に解離半減期遅延型のシャペロニン活性を有するGroELサブユニット変異体、又は、
    (b−3)前記(b−1)又は(b−2)に記載のアミノ酸配列を含んでなるアミノ酸配列からなり、シャペロニン複合体を形成した際に解離半減期遅延型のシャペロニン活性を有するGroELサブユニット変異体、
    であり、;
    前記ATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体が、外来性の細胞膜移行選択配列を含むペプチドの付加又は挿入がないものであって、且つ、細胞膜透過のための分子修飾が施されていないものであり、;
    前記GroES活性を有するサブユニットが、
    (c−1)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるGroESサブユニット、
    (c−2)配列番号8に記載のアミノ酸配列中、1若しくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、配列番号8に記載のアミノ酸配列に対して70%以上の配列相同性を示す領域を有する、シャペロニン複合体の形成においてGroES活性を有するGroESサブユニット、又は、
    (c−3)前記(c−1)又は(c−2)に記載のアミノ酸配列を含んでなるアミノ酸配列からなり、シャペロニン複合体の形成においてGroES活性を有するGroESサブユニット、
    であり、;
    前記GroES活性を有するサブユニットが、
    細胞内小器官局在化ペプチド付加型又は挿入型のGroES活性を有するサブユニットであって、前記細胞内小器官局在化ペプチドが核移行シグナルペプチドである、;
    ことを特徴とする、請求項1に記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
  10. 細胞核への局所的薬物送達システム用ナノカプセルである、請求項に記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
  11. 変異型シャペロニン複合体に係るリング構造を構成するGroELサブユニットについて、
    (e−1)全部がATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体である、又は、
    (e−2)半数以上がATP加水分解活性低下型GroELサブユニット変異体であって、シャペロニン複合体として解離半減期遅延型のシャペロニン活性を有するものである、
    請求項1〜10のいずれかに記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
  12. ATP又はATP代替化合物を含んでなる、請求項1〜11のいずれかに記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
  13. 前記変異型シャペロニン複合体に係るリング構造内に薬理成分を内包してなる、請求項1〜12のいずれかに記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
  14. 前記薬理成分が核酸、ペプチド、タンパク質、これらの修飾体若しくは誘導体、又はこれらを含むものである、請求項13に記載の薬物送達システム用ナノカプセル。
  15. 請求項13又は14のいずれかに記載の薬物送達システム用ナノカプセルを含んでなる医薬剤。
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