ルータ機能を内蔵するIP−PBX装置は、種々提案されている。特許出願人が提供しているIP−PBX装置の製品によれば、内蔵するブロードバンドルータ機能を介して、1本の光回線で電話とインターネットを同時に利用することができる(例えば、非特許文献1参照)。
ところで、企業ネットワークのIP化の進展は、最初にデータ系、次に電話系と進むのが一般的である。そのため、多くの企業では、IP−PBX装置を導入する際に既にデータ系ネットワークが存在する。このとき、既設のデータ系ネットワークの資産を有効活用するために、既存データ系を包含したデータ・音声統合のネットワークを構築する場合には、IP−PBX装置が内蔵するルータ機能を使用せず、既存のルータを使用することも多い。例えば、IP−PBX装置は、企業ネットワークを構成する拠点毎に設置され、その拠点のLANを収容しているものである。
図3は、IP−PBX装置や既存ルータの内部構成と共に、既存ルータを使用したデータ・音声統合ネットワークのシステム構成を示すブロック図である。
図3において、IP−PBX装置1−4は、1又は複数(図3では2個の場合を示している)の回線終端装置1−3−1、1−3−2を介して、インターネット網1−1やIP電話サービス網1−2にアクセス可能となされている。回線終端装置1−3−1、1−3−2は、例えば、ONU(Optical Network Unit)である。インターネット網1−1、IP電話サービス網1−2及び回線終端装置1−3−1、1−3−2は、例えば、通信キャリアから提供される。
IP−PBX装置1−4は、1又は複数(図3では2個の場合を示している)のIP制御部1−5、1−6と、1つの主制御部1−7とを有する。IP制御部は、回線終端装置を介してインターネット網1−1やIP電話サービス網1−2へのアクセスを提供する制御部であり、同時にIP電話サービスを受ける数(外線の必要数)に応じた数だけ設けられている。例えば、1つの回線終端装置を介して同時に通話できる数が32通話の場合において、最大同時通話数を64とするためにはIP制御部は2つ必要となり、一方、インターネットアクセスのために必要なIP制御部は1つのみあれば良い。IP制御部が複数必要な場合に、例えば、2番目以降のIP制御部を増設IP制御部で対応するようにすれば、IP−PBX装置1−4を効率的に構成することができる。図3は、基本的なIP制御部(以下、単にIP制御部と呼ぶ)1−5に加えて、1つの増設IP制御部1−6を有する場合を示している。例えば、IP制御部1−5及び増設IP制御部1−6はそれぞれ、1つのボードとして構成されている。
IP制御部1−5は、WAN側回線収容部(図面上はWANと表記)1−5−a、LAN側第1回線収容部(図面上はLAN1と表記)1−5−b、LAN側第2回線収容部(図面上はLAN2と表記)1−5−cを有する。
WAN側回線収容部1−5−aは、インターネット網1−1やIP電話サービス網1−2と接続し得る回線終端装置1−3−1と接続しており、インターネット網1−1やIP電話サービス網1−2と通信するための処理を実行するものである。
LAN側第1回線収容部1−5−b及びLAN側第2回線収容部1−5−cはそれぞれ、IP−PBX装置配下のLAN側と通信するための処理を行うものであり、同様な構成を有するものである。既存ルータ1−12を利用する構成においては、LAN側第1回線収容部1−5−bは、例えば、既存ルータ1−12を介して、データ端末1−9−1〜1−9−M(Mは自然数)、IP電話端末1−10−1〜1−10−N(Nは自然数)及び保守制御端末1−11とIP通信するためのものである。既存ルータ1−12を利用する構成においては、LAN側第2回線収容部1−5−cは、例えば、後述する保守制御部1−5−fがインターネット網1−1にアクセスするために、既存ルータ1−12側とIP通信するためのものである。
図4では、主たる通信経路を示しているが、図示しない2要素間でパケットが授受されることがある。例えば、LAN側第1回線収容部1−5−b及びLAN側第2回線収容部1−5−c間でパケットが授受されることもある。この授受パケットは、OSI参照モデルのデータリンク層(第2層)のパケットであり、パケットの宛先に従ってLAN側第1回線収容部1−5−b及びLAN側第2回線収容部1−5−c間でパケットが中継転送される。
また、IP制御部1−5は、ブリッジ制御部1−5−d、IP電話制御部1−5−e及び保守制御部1−5−fを有する。
ブリッジ制御部1−5−dは、既存ルータ1−12とインターネット網1−1間をブリッジ接続するものである。ブリッジ制御部1−5−dは、既存ルータ1−12を利用するため、IP−PBX装置1−4が内蔵するルータ部をブリッジモードで動作させることにより、ブリッジ制御部として機能するものである。
IP電話制御部1−5−eは、IP電話端末1−10(1−10−1〜1−10−Nのいずれか1以上)にIP電話サービス網1−2に対するアクセスを提供するためのものである。
保守制御部1−5−fは、IP制御部1−5内の各部要素の管理や各部要素による構成の管理や内部状態の表示などを制御するものである。
増設IP制御部1−6は、上述したように、IP電話サービスの最大同時接続数を増やすために増設されたIP制御部である。図3では、増設IP制御部を1つのみ示しているが、2つ以上設けられていても良い。
増設IP制御部1−6は、WAN側回線収容部1−6−a、LAN側第1回線収容部1−6−b、LAN側第2回線収容部1−6−cを有する。
WAN側回線収容部1−6−aは、IP電話サービス網1−2と接続し得る回線終端装置1−3−2と接続しており、IP電話サービス網1−2と通信するための処理を実行するものである。
LAN側第1回線収容部1−6−b及びLAN側第2回線収容部1−6−cはそれぞれ、IP−PBX装置配下のLAN側と通信するための処理を行うものであり、同様な構成を有するものである。既存ルータ1−12を利用する構成においては、LAN側第1回線収容部1−6−bは、例えば、増設IP制御部1−6内の後述する保守制御部1−6−fがインターネット網1−1にアクセスするために、既存ルータ1−12側とIP通信するためのものである。LAN側第2回線収容部1−6−cは、例えば、既存ルータ1−12を利用する構成では適用されない(増設IP制御部1−6に組み込まれているため、適用されない場合でもLAN側第2回線収容部1−6−cが残っている)。
また、増設IP制御部1−6も、その内部には、IP制御部1−5と同様に、IP電話制御部1−6−e及び保守制御部1−6−fを有する。IP電話制御部1−6−eは、IP電話端末1−10に、IP電話サービス網1−2に対するアクセスを提供するためのものであり、保守制御部1−6−fは、増設IP制御部1−6内の各部要素の管理や各部要素による構成の管理や内部状態の表示などを制御するものである。なお、データ端末1−9(1−9−1〜1−9−M)がインターネット網1−1をアクセスするための機能は、IP制御部1−5が担当しているため、増設IP制御部1−6にはルータ部(ブリッジ制御部)は設けられていない。
主制御部1−7は、IP−PBX装置1−4の全体を制御するものであり、LAN側回線収容部(図面上はLANと表記)1−7−b及び保守制御部1−7−fを有する。
既存ルータ1−12を利用する構成においては、LAN側回線収容部1−7−bは、例えば、保守制御部1−7−fがインターネット網1−1にアクセスするために、既存ルータ1−12側とIP通信するためのものである。保守制御部1−7−fは、IP−PBX1−4の全体の各部要素の管理や各部要素による構成の管理や内部状態の表示などを制御するものである。
既存ルータ1−12は、IP−PBX装置1−4及び後述するL2スイッチ(レイヤ2スイッチ)1−8に接続され、ルータ機能を実行するものである。既存ルータ1−12は、WAN側回線収容部1−12−a、LAN側回線収容部1−12−b及びルータ部1−12−cを有する。
WAN側回線収容部1−12−aは、IP−PBX装置1−4を介してインターネット網1−1に接続するものである。LAN側回線収容部1−12−bは、L2スイッチ1−8を介してデータ端末1−9やIP電話端末1−10などとIP通信するためのものである。ルータ部1−12−cは、データ端末1−9やIP−PBX装置1−4内部にある保守制御部1−5−f、1−6−f及び1−7−fにインターネット網1−1へのアクセスを提供するものである。
L2スイッチ1−8は、データ端末1−9−1〜1−9−M、IP電話端末1−10−1〜1−10−N及び保守制御端末1−11を収容し、これら端末を既存ルータ1−12やIP−PBX装置1−4と接続するためのものである。
データ端末1−9−1〜1−9−Mは、IP通信を用いてインターネット網1−1にアクセス可能なパソコンなどのデータ端末であり、IP電話端末1−10−1〜1−10−Nは、IP通信を用いてIP電話サービス網1−2にアクセス可能なものであり、保守制御端末1−11は、例えば、パソコンに専用のアプリケーションを搭載し、IP−PBX装置1−4の構成管理や状態表示などを実施可能な端末である。
以下、既存ルータ1−12を使用した図3に示すシステムにおける種々の通信経路を簡単に説明する。なお、以下で説明する通信経路は、IP電話サービス網1−2側との通信では既存ルータ1−12を介さないが、インターネット網1−1側との通信では、当該IP−PBX装置側の通信エンドがどのようなものであっても既存ルータ1−12(LAN側回線収容部1−12−b、ルータ部1−12−c、WAN側回線収容部1−12−a)を介するものとなっている。
データ端末1−9は、L2スイッチ1−8、既存ルータ1−12、IP制御部内LAN側第1回線収容部1−5−b、IP制御部内ブリッジ制御部1−5−d、IP制御部内WAN側回線収容部1−5−a、回線終端装置1−3−1を介して、インターネット網1−1側と通信する(符号RT1参照)。
IP電話端末1−10は、L2スイッチ1−8、IP制御部内LAN側第2回線収容部1−5−c、IP制御部内IP電話制御部1−5−e、IP制御部内WAN側回線収容部1−5−a、回線終端装置1−3−1を介して、IP電話サービス網1−2側と通信する(符号RT2−1参照)。又は、IP電話端末1−10は、L2スイッチ1−8、増設IP制御部内LAN側第1回線収容部1−6−b、増設IP制御部内IP電話制御部1−6−e、増設IP制御部内WAN側回線収容部1−6−a、回線終端装置1−3−2を介して、IP電話サービス網1−2側と通信する(符号RT2−2参照)。
保守制御端末1−11は、L2スイッチ1−8、IP制御部1−5内のLAN側第2回線収容部1−5−cを介して、IP制御部1−5内の保守制御部1−5−fと通信する(符号RT3−1参照)。また、保守制御端末1−11は、L2スイッチ1−8、増設IP制御部1−6内のLAN側第1回線収容部1−6−bを介して、増設IP制御部1−6内の保守制御部1−6−fと通信する(符号RT3−2参照)。さらに、保守制御端末1−11は、L2スイッチ1−8、主制御部1−7内のLAN側回線収容部1−7−bを介して、主制御部1−7内の保守制御部1−7−fと通信する(符号RT3−3参照)。
IP制御部1−5内の保守制御部1−5−fは、IP制御部1−5内のLAN側第2回線収容部1−5−c、L2スイッチ1−8、既存ルータ1−12、IP制御部1−5内のLAN側第1回線収容部1−5−b、ブリッジ制御部1−5−d、WAN側回線収容部1−5−a、回線終端装置1−3−1を介して、インターネット網1−1側と通信する(符号RT4−1参照)。他の保守制御部1−6−fや1−7−fも同様に、L2スイッチ1−8及び既存ルータ1−12を経由する経路で、インターネット網1−1側と通信する(符号RT4−2、RT4−3参照)。
しかしながら、図3の構成では、IP−PBX装置1−4のIP制御部1−5内のLAN側第1回線収容部1−5−b及びLAN側第2回線収容部1−5−c間のパケットの転送が、OSI参照モデルのデータリンク層の処理としてパケットの行き先を判断するネットワーク中継機能に従って実行されるため、データ端末1−9(若しくはIP電話端末1−10)がDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)を用いて既存ルータ1−12のルータ部1−12−cからグローバルIPアドレスを取得する場合、既存ルータ1−12の種類によっては、IPアドレスを取得できないという問題があった。なお、既存ルータ1−12のルータ部1−12−cは、DHCPサーバ機能を担っている。
図4は、このような問題が発生しない種類の既存ルータ1−12を適用している場合の動作を示し、図5は、このような問題が発生する種類の既存ルータ1−12を適用している場合の動作を示している。以下、発生しない場合、発生する場合の順に動作の概要を説明する。
なお、既存ルータ1−12が特許出願人以外のメーカーによる製品の場合、既存ルータ1−12の内部構成(ソフトウェアを含む)の詳細は明らかではないが、実際上の現象から以下のように動作していると推測する。
あるデータ端末1−9が、インターネット網1−1側との通信を行うのに必要なIPアドレスを取得する際には、DHCP Requestパケットをブロードキャスト送信し(宛先がブロードキャスト)、このDHCP Requestパケットが入力されたL2スイッチ1−8は、入力されたポート以外の全てのポートからDHCP Requestパケットを送出させる(図中丸A)。
既存ルータ1−12内のルータ部1−12−cは、既存ルータ1−12内のLAN側回線収容部1−12−bが受信したDHCP Requestパケットの送信元のIPアドレスがLAN側のネットワークアドレスであるので、IPアドレスを払い出し、払い出したIPアドレスを含むDHCP ACKパケットを送信元のデータ端末1−9に返信する(図中丸B)。
一方、ブロードキャストされたDHCP Requestパケットを受信したIP制御部1−5内のLAN側第2回線収容部1−5−cは、受信したDHCP RequestパケットをLAN側第1回線収容部1−5−bに転送し、LAN側第1回線収容部1−5−bから既存ルータ1−12内のWAN側回線収容部1−12−aにDHCP Requestパケットが与えられる。WAN側回線収容部1−12−aが受信したDHCP Requestパケットは、その送信元のIPアドレスがWAN側のネットワークアドレスとは異なると共に、同様なDHCP RequestパケットがLAN側回線収容部1−12−bでも受信しているので、ルータ部1−12−cによって廃棄され、WAN側回線収容部1−12−aのDHCP Requestパケットの受信によってDHCP ACKパケットが返信されることはない。
既存ルータ1−12(のLAN側回線収容部1−12−b)からDHCP ACKパケットが返信されたデータ端末1−9は、DHCP ACKパケットを受信処理し、それ以後、DHCP ACKパケットに含まれている割り当てられたIPアドレスを用いてインターネット網1−1側と通信する。
次に、既存ルータ1−12からIPアドレスを取得できない場合の動作を、図5を参照しながら説明する。
あるデータ端末1−9が、インターネット網1−1側との通信を行うのに必要なIPアドレスを取得する際に、DHCP Requestパケットをブロードキャスト送信し、このDHCP Requestパケットが入力されたL2スイッチ1−8が、入力ポート以外の全てのポートからDHCP Requestパケットを送出させる点は、上述の場合と同様である(図中丸A)。
既存ルータ1−12内のLAN側回線収容部1−12−bでDHCP Requestパケットが受信され、また、既存ルータ1−12内のWAN側回線収容部1−12−aで、IP制御部1−5内のLAN側第2回線収容部1−5−c及びLAN側第1回線収容部1−5−bを順次介したDHCP Requestパケットが受信される。
ある種類の既存ルータ1−12は、このようなLAN側回線収容部1−12−b及びWAN側回線収容部1−12−aでDHCP Requestパケットを受信した場合、LAN側回線収容部1−12−bで受信されたDHCP Requestパケットを廃棄し、WAN側回線収容部1−12−aで受信されたDHCP Requestパケットに対しては、送信元のデータ端末1−9に対してIPアドレスを払い出せないことを通知するDHCP NAKパケットを返信するようになされている(図中丸C)。
DHCP NAKパケットを受信したデータ端末1−9は、DHCPによるアドレス取得が拒否されたと認識し、IP通信不可能な状態に陥ってしまう。
以上では、データ端末1−9が、DHCP Requestパケットをブロードキャスト送信してIPアドレスを取得する際の問題に言及したが、IP電話端末1−10がDHCP Requestパケットをブロードキャスト送信してIPアドレスを取得する際にも同様な問題が生じている。
そのため、複数のIP通信端末を収容している装置の外部に設けられたルータの種類に拘らず、IP通信端末が広域の外部ネットワークで適用するIPアドレスをルータから取得できるIP通信端末収容装置及びIP通信端末収容システムが望まれている。
第1の本発明は、複数のIP通信端末を広域側のIPネットワークに接続するIP通信端末収容装置において、(1)相互にパケットを転送可能な、ローカル側の回線を収容している第1及び第2のローカル側回線収容部と、(2)上記第1及び第2のローカル側回線収容部間のパケット転送を許容するか阻止するかが設定されているパケット転送方法設定部と、(3)上記第2のローカル側回線収容部がローカル側から受信して上記第1のローカル側回線収容部に転送し、上記第1のローカル側回線収容部がローカル側に送り出そうとするパケットの上記第2のローカル側回線収容部から上記第1のローカル側回線収容部へのパケット転送を、上記パケット転送方法設定部の設定内容に従い、許容又は阻止する転送制御部とを有することを特徴とする。
第2の本発明のIP通信端末収容システムは、(1)第1の本発明のIP通信端末収容装置と、(2)複数の上記IP通信端末が接続されたレイヤ2スイッチと、(3)ローカル側回線収容部と、広域側のIPネットワークにおけるIPアドレスの払出機能を有するルータ部と、広域側回線収容部とを有し、ローカル側回線収容部が上記レイヤ2スイッチに接続され、広域側回線収容部が、上記IP通信端末収容装置の上記第1のローカル側回線収容部に接続された装置外ルータとを備え、(4)上記IP通信端末収容装置の上記第2のローカル側回線収容部が上記レイヤ2スイッチに接続されていることを特徴とする。
本発明によれば、装置外ルータの種類に拘らず、IP通信端末が広域の外部ネットワークで適用するIPアドレスを装置外ルータから取得できるIP通信端末収容装置及びIP通信端末収容システムを実現できる。
(A)第1の実施形態
以下、本発明によるIP通信端末収容装置及びIP通信端末収容システムの第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。第1の実施形態のIP通信端末収容装置はIP−PBX装置である。第1の実施形態のIP通信端末収容システムは、第1の実施形態のIP−PBX装置に追加して装置外ルータを使用したデータ・音声統合ネットワークのシステム(以下、IP−PBXシステムと呼ぶ)である。
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態に係るIP−PBXシステムの構成を示すブロック図であり、既述した図3との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。
図1において、第1の実施形態のIP−PBXシステム10は、1又は複数(図1では2個の場合を示している)の回線終端装置1−3−1、1−3−2と、IP−PBX装置1A−4と、L2スイッチ1−8と、装置外ルータ1−12とを有し、データ端末1−9−1〜1−9−Mにインターネット網1−1に対するアクセスを提供すると共に、IP電話端末1−10−1〜1−10−NにIP電話サービス網1−2に対するアクセスを提供するものである。
なお、第1の実施形態のIP−PBXシステム10は、外部からIP−PBX装置1A−4内部の保守を実行できるように、保守制御端末1−11にも接続されている。
回線終端装置1−3−1、1−3−2及びL2スイッチ1−8は、図3を用いて説明したものと同様なものであり、その機能説明は省略する。
装置外ルータ1−12は、図3を用いた説明では既存ルータと呼んでいたものと同様なものである。第1の実施形態のIP−PBXシステム10を構築する際に、新規にルータを購入等をして、IP−PBX装置1A−4及びL2スイッチ1−8に接続しても良いものであるので、第1の実施形態のIP−PBXシステム10の説明においては「既存ルータ」ではなく、「装置外ルータ」と呼ぶこととした。
装置外ルータ1−12は、上述したように、IP−PBX装置1A−4を介してインターネット網1−1に接続するWAN側回線収容部1−12−aと、L2スイッチ1−8を介してデータ端末1−9やIP電話端末1−10などとIP通信するLAN側回線収容部1−12−bと、データ端末1−9やIP−PBX装置1A−4内部にある保守制御部1−5−f、1−6−f及び1−7−fにインターネット網1−1へのアクセスを提供するルータ部1−12−cとを有する。
IP−PBX装置1A−4は、1又は複数(図1では2個の場合を示している)のIP制御部1A−5、1−6と、1つの主制御部1−7とを有する。図1も、基本的なIP制御部1A−5に加え、増設されたIP制御部(増設IP制御部)1−6を有する場合を示している。増設IP制御部1−6及び主制御部1−7は、図3を用いて説明したものと同様なものであり、その内部構成や機能の説明は省略する。
第1の実施形態の場合、IP制御部1A−5が、図3におけるIP制御部1−5と異なっている。
第1の実施形態のIP制御部1A−5は、WAN側回線収容部1−5−a、LAN側第1回線収容部1−5−b、LAN側第2回線収容部1−5−c、ブリッジ制御部1−5−d、IP電話制御部1−5−e及び保守制御部1−5−fに加え、パケット経路切断指定スイッチ1−5−g及びLAN側収容部間転送制御部1−5−hを有する。
WAN側回線収容部1−5−a、LAN側第1回線収容部1−5−b、LAN側第2回線収容部1−5−c、ブリッジ制御部1−5−d、IP電話制御部1−5−e及び保守制御部1−5−fは、図3を用いて説明したものと同様なものであり、その機能説明は省略する。
なお、第1の実施形態においても、LAN側第1回線収容部1−5−b及びLAN側第2回線収容部1−5−cは、LAN側から与えられたデータリンク層(第2層)のパケットを、そのパケットの宛先を判断して転送を行うようになされており、適宜、LAN側第1回線収容部1−5−b及びLAN側第2回線収容部1−5−c間でもパケットを授受する。
第1の実施形態で新たに設けられたパケット経路切断指定スイッチ1−5−gは、LAN側第1回線収容部1−5−b及びLAN側第2回線収容部1−5−c間のパケットの転送経路を切断するか否かを指定するスイッチである。パケット経路切断指定スイッチ1−5−gは、ハードウェアスイッチであっても良く、ソフトウェアスイッチであっても良い。例えば、パケット経路切断指定スイッチ1−5−gとして、ディップスイッチ(Dual In−line Package switch)を適用することができ、ONがパケット転送経路の切断を、OFFがパケット転送経路の非切断を表すようにしても良い。また、保守制御端末1−11から保守制御部1−5−fへ、LAN側第1回線収容部1−5−b及びLAN側第2回線収容部1−5−c間のパケット転送経路の切断有無を表す保守データを与えて、IP制御部1A−5内に設けられたレジスタ等にその値を格納し、ソフトウェアスイッチとして動作させるようにしても良い。
LAN側第1回線収容部1−5−b及びLAN側第2回線収容部1−5−c間のパケット転送経路を切断することが絶対的に必要なのは、後述する動作の項で説明するように、装置外ルータ1−12として、上述した問題が生じていた種類のルータが接続された場合である。一方、装置外ルータ1−12として、上述した問題が生じていない種類のルータが接続された場合には、LAN側第1回線収容部1−5−b及びLAN側第2回線収容部1−5−c間のパケット転送経路を切断することは不要である。
しかしながら、IP−PBXシステム10の設置時において、装置外ルータ1−12の種類に応じて、パケット経路切断指定スイッチ1−5−gをONするかOFFするか判断することとすると、設置作業者が混乱する恐れがある。そこで、IP−PBX装置1A−4に追加して装置外ルータ1−12を使用したIP−PBXシステム10を設置する際には、パケット経路切断指定スイッチ1−5−gをON操作するように設置作業者に指導しておくことは好ましいことである。上述した問題が生じない種類のルータが装置外ルータ1−12として接続された場合において、LAN側第1回線収容部1−5−b及びLAN側第2回線収容部1−5−c間のパケット転送経路が切断されても何ら問題が生じることはない。
すなわち、パケット経路切断指定スイッチ1−5−gを、装置外ルータ1−12の有無を表すスイッチとみなして操作するようにしても良い。
パケット経路切断指定スイッチ1−5−gは、他の観点のスイッチと併用されるものであっても良い。例えば、装置外ルータ1−12とインターネット網1−1間をブリッジ接続するためのブリッジ制御部1−5−dは、IP−PBX装置1A−4が内蔵するルータ部をブリッジモードで動作させることにより、ブリッジ制御部として機能するものであるが、ブリッジモードを指示するためのスイッチ(ソフトウェアスイッチやフラグなど)を、パケット経路切断指定スイッチ1−5−gとして流用するようにしても良い。
また、第1の実施形態で新たに設けられたLAN側収容部間転送制御部1−5−hは、パケット経路切断指定スイッチ1−5−gの状態に応じて、IP制御部1A−5内のLAN側第1回線収容部1−5−b及びLAN側第2回線収容部1−5−c間のパケット転送経路を切断制御するものである。LAN側収容部間転送制御部1−5−hは、例えば、一定周期(例えば1秒)でパケット経路切断指定スイッチ1−5−gの状態を読み込み、パケット経路切断指定スイッチ1−5−gが非切断(言い換えると装置外ルータ無し)を表しているときにLAN側第1回線収容部1−5−b及びLAN側第2回線収容部1−5−c間のパケット転送を許可し、パケット経路切断指定スイッチ1−5−gが切断(装置外ルータ有り)を表しているときにLAN側第1回線収容部1−5−b及びLAN側第2回線収容部1−5−c間のパケット転送を阻止し(パケット転送経路を切断し)、パケットを廃棄する。
図1では、LAN側収容部間転送制御部1−5−hが、LAN側第1回線収容部1−5−b及びLAN側第2回線収容部1−5−cの外部に設けられている場合を示しているが、LAN側収容部間転送制御部1−5−hがLAN側第1回線収容部1−5−b又はLAN側第2回線収容部1−5−cの一部として設けられたものであっても良い。
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態に係るIP−PBXシステム10の動作を、図2を参照しながら説明する。以下では、図5を用いて説明した、データ端末1−9が装置外ルータ1−12からIPアドレスを取得できない問題が生じた場合に対応する動作と、そのための前処理時の動作とを説明する。先に、前処理時の動作を説明する。また、以下では、パケット経路切断指定スイッチ1−5−gがディップスイッチであるとして説明する。
システム設置者等のオペレータは、装置外ルータ1−12を適用しているため、IP−PBX装置1A−4の電源がOFFになっている状態において、パケット経路切断指定スイッチ1−5−gをON(切断;装置外ルータ有り)に設定し、その後、IP−PBX装置1A−4の電源をON操作する。電源のON操作により、IP−PBX装置1A−4が立ち上がると、IP制御部1A−5内のLAN側収容部間転送制御部1−5−hがパケット経路切断指定スイッチ1−5−gの状態を読み込み、それに応じた切断制御を実行する状態になる。また、これ以降、LAN側収容部間転送制御部1−5−hは、一定周期でパケット経路切断指定スイッチ1−5−gの状態を読み込み、切断制御を見直すこととなる。なお、電源ON時だけスイッチ状態を監視し、それ以降の周期的な見直しを実行しないものであっても良い。
ここでは、電源のON時の読み込みでも、それ以降の一定周期での読み込みでも、パケット経路切断指定スイッチ1−5−gがONに設定されているとする。そのため、パケット経路切断指定スイッチ1−5−gの状態を読み込んだLAN側収容部間転送制御部1−5−hは、LAN側第1回線収容部1−5−b及びLAN側第2回線収容部1−5−c間のパケット転送を阻止し(パケット転送経路を切断し)、パケットを廃棄する状態に制御する。
以上のような切断制御状態において、あるデータ端末1−9が、インターネット網1−1側との通信を行うのに必要なグローバルなIPアドレスを欲するようになったとする。この場合、データ端末1−9は、DHCP Requestパケットをブロードキャスト送信する。このDHCP Requestパケットが入力されたL2スイッチ1−8は、宛先がブロードキャスト送信を表しているので、入力されたポート以外の全てのポートからDHCP Requestパケットを送出させる(図2中丸A参照)。
装置外ルータ1−12内のLAN側回線収容部1−12−bは、L2スイッチ1−8から出力されたDHCP Requestパケットを受信し、DHCPサーバ機能を担っているルータ部1−12−cに受信した旨を通知する。
L2スイッチ1−8から出力されたDHCP Requestパケットを受信したIP制御部1−5内のLAN側第2回線収容部1−5−cは、LAN側第1回線収容部1−5−b側へDHCP Requestパケットを送出しようとするが、この第1の実施形態の場合、このようなDHCP RequestパケットはLAN側収容部間転送制御部1−5−hに与えられる。LAN側収容部間転送制御部1−5−hは、内部管理しているパケット経路切断指定スイッチ1−5−gの状態がONであるため、受信したDHCP Requestパケットを廃棄する。その結果、LAN側第1回線収容部1−5−bにはDHCP Requestパケットが与えられず、当然に、装置外ルータ1−12内のWAN側回線収容部1−12−aにも、DHCP Requestパケットは与えられない。
DHCPサーバ機能を担っているルータ部1−12−cは、LAN側回線収容部1−12−bだけがDHCP Requestパケットを受信したので、IPアドレスを払い出し、払い出したIPアドレスを含むDHCP ACKパケットを送信元のデータ端末1−9に返信する(図2中丸B)。
装置外ルータ1−12(のLAN側回線収容部1−12−b)からDHCP ACKパケットが返信されたデータ端末1−9は、DHCP ACKパケットを受信処理し、それ以後、DHCP ACKパケットに含まれている割り当てられたIPアドレスを用いてインターネット網1−1側と通信する。
装置外ルータ1−12が、データ端末1−9が装置外ルータ1−12からIPアドレスを取得できない問題が生じない種類のルータの場合であっても(図4参照)、システムの各部が上述の場合と同様に動作し、IPアドレスを要求したデータ端末1−9には、IPアドレスを含むDHCP ACKパケットが返信され、データ端末1−9は、DHCP ACKパケットに含まれている割り当てられたIPアドレスを用いてインターネット網1−1側と通信する。
詳述は避けるが、いずれかのIP電話端末1−10がIPアドレスを欲するため、DHCP Requestパケットをブロードキャスト送信したときにも、装置外ルータ1−12の種類を問わず、システムの各部が上述の場合と同様に動作し、IPアドレスを要求したIP電話端末1−10には、IPアドレスを含むDHCP ACKパケットが返信され、IP電話端末1−10は、DHCP ACKパケットに含まれている割り当てられたIPアドレスを用いてIP電話サービス網1−1側と通信する。
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、パケット経路切断指定スイッチを設け、L2スイッチから到来したDHCP Requestパケットを装置外ルータへ転送することを阻止できるようにしたので、どのような種類の装置外ルータが接続された場合でも、その装置外ルータが有するDHCPサーバ機能を適切に発揮させることができる。
DHCPサーバ機能をルータは、一般的に、LAN側からのみDHCP Requestパケットが到来することを前提として設計されている。すなわち、LAN側及びWAN側の双方からDHCP Requestパケットが到来することは設計者の想定外であり、このような想定外の事象が生じたときの動作は設計者の意図を超えており、DHCP ACKパケットが返信されるか否かは偶然的な要素による所が大きい。第1の実施形態によれば、LAN側及びWAN側の双方からDHCP Requestパケットが装置外ルータに与えられることを確実に防止でき、装置外ルータのDHCPサーバ機能を適切に発揮させることができる。
(B)他の実施形態
上述した第1の実施形態の説明においては種々変形実施形態に言及したが、さらに、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
上記では、データ端末及びIP電話端末の双方に対応できるIP−PBXシステムを示したが、データ端末又はIP電話端末の一方にのみ対応できるIP−PBXシステムに対しても本発明の技術思想を適用することができる。
上記では、IP制御部に装置外ルータが接続される場合を示したが、これに加え、若しくは、これに代え、増設IP制御部に装置外ルータが接続される場合にも本発明の技術思想を適用することができる。
上記では、データ端末やIP電話端末が有線でL2スイッチに接続されている場合を示したが、アクセスポイント等を介して、一部のデータ端末(無線データ端末)やIP電話端末(無線IP電話端末)がL2スイッチに接続されている場合にも本発明の技術思想を適用することができる。
上記では、IP−PBX装置1−4A、装置外ルータ1−12、L2スイッチ1−8が別体であるように説明したが、同一の筐体などに配置された一体化したものであっても良い。例えば、IP−PBX装置1−4Aの筐体の内部に予め装置外ルータ1−12とL2スイッチ1−8とを配置できる空間を用意しておき、その空間に該当する要素を配置するようにしても良い。
上記では、LAN側第1回線収容部1−5−b及びLAN側第2回線収容部1−5−c間のパケット転送の制御方法をオペレータが指定するものを示したが、IP−PBX装置が自動的に制御方法を設定するようにしても良い。例えば、LAN側の接続要素から機種情報を取込むモードを設けておき、取り込んだ機種情報を、予め格納しているルータの機種情報と照合して装置外ルータの接続を判別するようにしても良い。また例えば、IP制御部内に、装置外ルータの種類に応じて設定する要素がある場合、設定内容とルータ種類とを対応付けた予め格納されている情報に基づいて、接続されている装置外ルータの種類を捉えて、パケット転送の制御方法を自動的に設定するようにしても良い。
上記では、DHCP Requestパケット以外のパケットの転送をも阻止するように説明したが、転送しようとするパケットがDHCP Requestパケットであることを確認できた場合にのみ、転送制御を機能させるようにしても良い。
上記では、本発明の技術思想をIP−PBX装置やIP−PBXシステムに適用した場合を示したが、他のIP通信端末収容装置やIP通信端末収容システムに対しても、本発明の技術思想を適用することができる。例えば、IP通信機能を有する各種の装置(装置のIP通信部をここではIP通信端末と呼んでいる)を収容し、インターネット網との接続を実行させるホームゲートウェイ装置に対しても、本発明の技術思想を適用することができる。