本発明の化合物は、下記一般式(1)に示される化合物に関する。
一般式(1)において、
X1〜X6はそれぞれ、水素、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン基、または重合性官能基を示し、同一であっても異なってもよく、X1〜X6のうち少なくとも1以上が重合性官能基を示す。
nは2〜8の整数を示し、かっこ内のフェニル基同士の結合位はいずれであってもよい。
Rは水素、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよい芳香族環式基、またはハロゲン基を示し、かっこ内のフェニル基内のRの数は限定されず、複数のフェニル基内で、それぞれが同一であっても異なってもよい。
Z1、Z2は置換基を有してもよい芳香族環式基を示す。Z1、Z2における置換基を有してもよい芳香族環式基の置換基としては、直鎖若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、アミノ基、ニトロ基、またはシアノ基を示す。
X1〜X6におけるアルキル基とは、直鎖でも分岐でもよく、炭素数1〜18のアルキル基であり、電荷輸送材料として用いる場合には、ガラス転移温度、立体障害等の観点から、炭素数1〜6であることが好ましい。
X1〜X6におけるアルコキシ基とは、直鎖でも分岐でもよく、炭素数1〜18のアルコキシ基であり、電荷輸送材料として用いる場合には、ガラス転移温度、立体障害の観点から、炭素数1〜6であることが好ましい。
X1〜X6におけるハロゲン基は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれであってもよいが、電荷輸送材料として用いる場合には、電気的安定性の観点から、フッ素基であることが好ましい。
X1〜X6における重合性官能基とは、熱、光、若しくは触媒等によって重合する官能基をいう。
重合性官能基を導入することによって、塗布成膜後に、熱、光、若しくは触媒によって分子同士が架橋し、有機溶剤に難溶の薄膜を形成することができる。熱、光、若しくは触媒によって重合する官能基としては、特に限定されないが、下記置換基群(9)から選ばれることが好ましい。
上記置換基群(9)のうち、X−2〜X−9、X−11〜X−14におけるA1は、メチレン基、窒素、酸素、硫黄、アリール基のいずれかを示す。
X−2〜X−5におけるA2は、水素、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基のいずれかを示す。
X−6〜X−8、X−13、およびX−14におけるA3は、メチレン基、窒素、酸素、硫黄、アリール基のいずれかを示す。
X−7におけるA4は、炭素数1〜4のアルキル基を示す。
X−9におけるA5は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、ハロゲン基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシル基のいずれかを示す。
X−11〜X−14におけるA6は、フッ素、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基を示す。
また、X−2〜X−9、X−11〜X−14におけるaは、0〜10の数を示す。
さらに、製膜性を向上させ、難溶化後の膜質を安定させるという観点からは、上記置換基群(9)のうち、X−1、X−7、またはX−8であることが好ましい。
化合物の中心骨格はフェニレン基であり、nは2〜8の整数を示し、かっこ内のフェニル基同士の結合位はいずれであってもよいが、合成のし易さの観点からは、nは2〜4が好ましく、具体的には、以下に示す一般式群(5)から選ばれるのが好ましい。
一般式(1)、または(2)のうちRは、水素、またはアルキル基を示し、同一フェニル内、または隣接するフェニルにおいて、置換基の数は限定されず、それぞれが同一であっても異なってもよいが、適切な立体障害を得るという観点からアルキル基は、炭素数1〜4であることが好ましい。
R(R1〜R8を含む)における置換基を有してもよいアルキル基は、直鎖状でも環状でもよい。直鎖状のアルキル基は、汎用の有機溶剤への溶解性、有機EL素子作成時の製膜性等の観点から、炭素数1〜18が好ましく、ガラス転移温度、立体障害等の観点から、炭素数1〜6がより好ましい。環状のアルキル基は、炭素数3〜18が好ましく、ガラス転移温度、立体障害等の観点から、炭素数3〜8が好ましい。環状のアルキル基は、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、またはビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基等の多環アルキル基が挙げられる。
Rにおける置換基を有してもよいアルコキシ基は、汎用の有機溶剤への溶解性、有機EL素子作製時の製膜性等の観点から、炭素数1〜18が好ましく、ガラス転移温度、立体障害等の観点から、炭素数1〜6がより好ましい。
Rにおける置換基を有してもよいアルキル基、および置換基を有してもよいアルコキシ基の置換基は、2以上置換してもよく、各々が異なってもよい。
置換基を有してもよいアルキル基、および置換基を有してもよいアルコキシ基の置換基としては、アルキル基、シアノ基、ハロゲン基が選ばれる。
置換基を有してもよいアルキル基、および置換基を有してもよいアルコキシ基の置換基として選ばれるアルキル基は、汎用の有機溶剤への溶解性、有機EL素子作製時の製膜性等の観点から、アルキル基またはアルコキシ基と、その置換基であるアルキル基を合計した炭素数が1〜18となるが好ましく、ガラス転移温度、立体障害等の観点から、合計した炭素数が1〜6となるのがより好ましい。置換基を有してもよいアルキル基の置換基としてアルキル基が選択される場合とは、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、1−エチルプロピル基、1−n−プロピルプロピル基、1−メチルブチル基、1−エチルブチル基、1−プロピルブチル基、1−n−ブチルブチル基、1−メチルペンチル基、1−エチルペンチル基、1−n−プロピルペンチル基、1−n−ペンチルペンチル基、1−メチルヘキシル基、1−エチルヘキシル基、1−n−プロピルヘキシル基、1−n−ブチルヘキシル基、1−n−ペンチルヘキシル基、1−n−ヘキシルヘキシル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘプチル基、1−n−プロピルヘプチル基、1−n−ブチルヘプチル基、1−n−ペンチルヘプチル基、1−n−ヘプチルヘプチル基、1−メチルオクチル基、1−エチルオクチル基、1−n−プロピルオクチル基、1−n−ブチルオクチル基、1−n−ペンチルオクチル基、1−n−ヘキシルオクチル基、1−n−ヘプチルオクチル基、1−n−オクチルオクチル基、1−メチルノニル基、1−エチルノニル基、1−n−プロピルノニル基、1−n−ブチルノニル基、1−n−ペンチルノニル基、1−n−ヘキシルノニル基、1−n−ヘプチルノニル基、1−n−オクチルノニル基、1−n−ノニルノニル基、1−メチルデシル基、iso−プロピル基、t−ブチル基、2−メチルブチル基、2−エチルブチル基、2−n−プロピルペンチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−n−プロピルヘキシル基、2−n−ブチルヘキシル基、2−メチルヘプチル基、2−エチルヘプチル基、2−n−プロピルヘプチル基、2−n−ブチルヘプチル基、2−n−ペンチルヘプチル基、2−メチルオクチル基、2−エチルオクチル基、2−n−プロピルオクチル基、2−n−ブチルオクチル基、2−n−ペンチルオクチル基、2−n−ヘキシルオクチル基、2−メチルノニル基、2−エチルノニル基、2−n−プロピルノニル基、2−n−ブチルノニル基、2−n−ペンチルノニル基、2−n−ヘキシルノニル基、2−n−ヘプチルノニル基、2−メチルデシル基、2,3−ジメチルブチル基、2,3,3−トリメチルブチル基、3−メチルブチル基、3−メチルペンチル基、3−エチルペンチル基、4−メチルペンチル基、4−エチルヘキシル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2,3,3,4−テトラメチルペンチル基、3−メチルヘキシル基、2,5−ジメチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、6−メチルヘプチル基、3,7−ジメチルオクチル基、6−メチルオクチル基、等が挙げられる。
置換基を有してもよいアルキル基、および置換基を有してもよいアルコキシ基の置換基として選ばれるハロゲン基は、合成のし易さの観点からフッ素基が好ましい。
Rにおける置換基を有してもよい芳香族環式基は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素と、置換基を有してもよい複素環基を示す。
このうち、芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜30のものが挙げられる。炭素数6〜30の芳香族炭化水素基としては、6π電子系、10π電子系、12π電子系、14π電子系のものが挙げられる。例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、テルフェニル基、アンスリル基、アズレニル基、フルオレニル基、ピレニル基、フェナンスリル基、ナフスリル基等が挙げられる。これらの芳香族炭化水素基の中でも、電気的特性、熱的安定性、立体障害、合成のし易さ等の観点から、フェニル基、ナフチル基が好ましく、特にフェニル基が好ましい。
また、複素環基としては、炭素数1〜30のものが挙げられる。炭素数1〜30の複素環基としては、具体的には、チエニル基、フリル基、ピロリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキゾリル基、ピリジル基、ピリダジル基、オキサジアゾリル基、イミダゾリル基、トリアジル基、チアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾセレナジアゾリル基、チエノ[2,3−b]チエニル基、チエノ[3,2−b]チエニル基、チエノ[3,4−b]チエニル基、9−オキソフルオレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾチオフェニル基、シラフルオレニル基、セレノフルオレニル基、キサンテニル基、フェナントロリル基、フェナジリル基、フェニキサジリル基等が挙げられる。
置換基を有してもよい芳香族環式基の置換基は、アルキル基、シアノ基、ハロゲン基のいずれかであり、2以上の置換基を有してもよく、各々が異なる置換基であってもよい。
置換基を有してもよい芳香族環式基の置換基として選ばれるアルキル基は、鎖状でも環状でもよく、汎用の有機溶剤への溶解性、有機EL素子作製時の製膜性等の観点から、炭素数1〜18が好ましく、ガラス転移温度、立体障害等の観点から、炭素数1〜6がより好ましい。
置換基を有してもよい芳香族環式基の置換基として選ばれるアルコキシ基は、汎用の有機溶剤への溶解性、有機EL素子作製時の製膜性等の観点から、炭素数1〜18が好ましく、ガラス転移温度、立体障害等の観点から、合成した炭素数1〜6がより好ましい。
置換基を有してもよい芳香族環式基の置換基として選ばれるハロゲン基は、電気的安定性の観点からフッ素基が好ましい。
なお、適切な置換基を有してもよい芳香族環式基を導入することにより、電気的特性、熱的安定性等を調整することができる。
Rにおけるハロゲン基は、フッ素基、塩素基、臭素基、ヨウ素基が挙げられ、このうち、合成のし易さ、および電気的安定性の観点からはフッ素基であることが好ましい。
Z1、Z2は置換基を有してもよい芳香族環式基を示す。芳香族環式基とは、芳香族炭化水素基、複素環基を示す。Z1、Z2における置換基を有してもよい芳香族環式基の置換基としては、直鎖若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、を示す。
Z1、Z2における芳香族炭化水素としては、炭素数6〜30のものが挙げられる。炭素数6〜30の芳香族炭化水素基としては、6π電子系、10π電子系、12π電子系、14π電子系のものが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、テルフェニル基、アンスリル基、アズレニル基、フルオレニル基、ピレニル基、フェナンスリル基、ナフスリル基等が挙げられる。このうち、電気的特性、熱的安定性、立体障害、合成のし易さ等の観点から、フェニル基、ナフチル基が好ましく、特にフェニル基が好ましい。
複素環基としては、正孔輸送層の電気的特性、熱安定性、ガラス転移温度などの物性的特性、および立体障害の効果の観点から、炭素数1〜30のものであることが好ましい。また、芳香族複素環基としては、具体的には、チエニル基、フリル基、ピロリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキゾリル基、ピリジル基、ピリダジル基、オキサジアゾリル基、イミダゾリル基、トリアジル基、チアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾセレナジアゾリル基、チエノ[2,3−b]チエニル基、チエノ[3,2−b]チエニル基、チエノ[3,4−b]チエニル基、9−オキソフルオレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾチオフェニル基、シラフルオレニル基、セレノフルオレニル基、キサンテニル基、フェナントロリル基、フェナジリル基、フェニキサジリル基等が挙げられる。芳香族複素環基としては、適切な電気的特性を有する正孔輸送層を形成できる正孔輸送層材料を得るために、特にジベンゾチオフェニル基が好ましい。
Z1、Z2における置換基を有してもよい芳香族環式基置換基の置換基としては、直鎖若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、を示す。
このうち、置換基を有してもよい芳香族環式基の置換基として選ばれるアルキル基は、鎖状でも環状でもよく、汎用の有機溶剤への溶解性、有機EL素子作製時の製膜性等の観点から、炭素数1〜18が好ましく、ガラス転移温度、立体障害等の観点から、炭素数1〜6がより好ましい。
置換基を有してもよい芳香族環式基の置換基として選ばれるアルコキシ基は、汎用の有機溶剤への溶解性、有機EL素子作製時の製膜性等の観点から、炭素数1〜18が好ましく、ガラス転移温度、立体障害等の観点から、炭素数1〜6がより好ましい。
置換基を有してもよい芳香族環式基の置換基として選ばれるハロゲン基は、合成のし易さ、電気的安定性の観点からフッ素基が好ましい。
(化合物の合成について)
(中心骨格の合成)
本発明の化合物の中間体である下記一般式(10)に示す化合物の代表的な合成手法について述べる。
このうち、置換基のないジハロゲン化ビフェニルは一般に入手することができる。ここで、HALとは、塩素、臭素、またはヨウ素のいずれかを示す(以下、同じ)。
一般式群(4)に示される化合物群のうち、本発明の化合物の中心骨格としてY−1が選ばれる場合、例えば、中間体として下記一般式(11)に示す化合物を用いることができる。
上記一般式(11)のうち、代表例として、下記一般式に示す化合物が挙げられる。
上記一般式(12)を合成するには、例えば、下記反応式(S1)に示す方法を用いることができる。Rには水素、アルキル基、アルコキシ基、芳香族環式基、など各種の置換基が選ばれる。
すなわち、オルトジブロモベンゼンから、ブロモベンゼンのボロン酸エステルを合成した後、オルトジブロモベンゼンとスズキカップリング反応を行い、2,2’−ジブロモビフェニルを合成する。その後、2,2’−ジブロモビフェニルにグリニャール試薬を反応させ、ブロモの位置に任意の置換基Rを導入し、その化合物をハロゲン化することで、目的とする上記一般式(17)に示す化合物を合成することができる。ただし、置換基Rがビフェニルに導入されると、ビフェニルの配向性が変化するため、ハロゲン化反応によりハロゲン化される位置は置換基Rの種類により異なる。
また、同様に、下記反応式(S2)に示すように、山本カップリング反応(例えば、Bull.Chem.Soc.Jpn.,1978,51,2091)を用いることもできる。
この場合もハロゲン化反応によりハロゲン化される位置は置換基Rの種類により異なる。
また、下記反応式(S3)に示す方法を用いることができる。
上記反応式(S3)に示す方法は、スズキカップリング反応を、ハロゲンの反応性の違いを利用して、位置選択的に反応させる方法である。
同様に、下記反応式(S4)に示すように、ハロゲンの置換位置を変更させたものを合成することもできる。
一般式群(4)に示される置換基群のうち、Y−2が選ばれる場合、例えば、下記一般式(25)に示す中間体を用いることができる。
上記一般式(25)では、例えば下記一般式群(26)に示す化合物が挙げられる。
上記一般式群(26)を合成する例としては、以下の方法(S5)、(S6)が挙げられ、これを応用することにより、その他の一般式化合物群も合成することができる。
一般式群(4)に示される置換基群のうち、Y−3が選ばれる場合、例えば、下記一般式(35)に示す中間体を用いることができる。
上記一般式(35)では、例えば下記一般式群(36)に示す化合物が挙げられる。
上記一般式群を合成する例としては、以下の方法(S7)が挙げられ、これを応用することにより、その他の一般式化合物群も合成することができる。
また、前記と同様に、出発物質を変更すれば、オルトフェニレンに導入されたクロロの位置を変更することができる。
さらに、下記反応式(S8)に示す反応を行うことにより、オルトフェニレンにブロモが導入された化合物を合成することができ、前記と同様の方法により、ブロモの結合位も任意の位置に変更することもできる。
以下、同様に一般式(1)または(2)においてnが5〜8の場合も以下に示す方法(S9)〜(S12)ように合成することができる。
(ジベンゾチオフェン誘導体の合成)
本発明の化合物の中間体である下記一般式(52)に示す化合物の代表的な合成手法について述べる。
一般式(52)に示される化合物は、ジベンゾチオフェン誘導体を一般的なハロゲン化反応を用いてハロゲン化し、続いて下記一般式(54)に示されるハロゲン化ジベンゾチオフェン誘導体と、下記一般式(55)に示されるアミノ基を有する芳香族炭化水素とのN−アリール化反応を行うことにより合成される。
ハロゲン化反応には、例えば、臭素、ヨウ素などのハロゲンを触媒存在下で直接反応させる方法や、ハロゲン化剤を用いる方法がある。ハロゲン化剤は、クロロ化剤、ブロモ化剤、ヨード化剤がある。クロロ化剤としては、例えば、N−クロロスクシンイミド(NCS)等が挙げられ、ブロモ化剤としては、例えば、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、ジブロモイソシアヌル酸(DBI)等が挙げられ、ヨード化剤としては、例えば、N−ヨードスクシンイミド(NIS)、1,3−ジョード−5,5’‐ジメチルヒルダントイン(DIH)等が挙げられる。
ハロゲンの置換位置が異なるハロゲン化ジベンゾチオフェンは、例えば以下に示す方法により合成することができる。
ジベンゾチオフェンの4位がハロゲン化された化合物を得るためには、例えば、下記反応式(S14)に示される方法が挙げられる。
すなわち、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジブロモエタン、又は1,2−ジヨードエタンなどのジハロゲン化エタンを用いて、アニオン化された炭素をハロゲン化することができ、この方法により、ジベンゾチオフェンの4位を優先的にハロゲン化することができる。
ジベンゾチオフェンの2位がハロゲン化された化合物を得るためには、例えば、下記反応式(S15)に示す方法が挙げられる。
例えば、ジベンゾチオフェンにハロゲン化剤の一種であるNBSを反応させることにより、ジベンゾチオフェンの2位が優先的にハロゲン化される。ハロゲン化剤の量を調整することにより、2以上のハロゲン基を導入することも可能である。
例えばJ.Org.Chem.,2006,71,6291に記載された方法を応用した下記反応式(S16)に示す方法や、Tetrahedron,2002,58,1709に記載された方法を応用した下記反応式(S17)に示す方法などを用いれば、1位や3位がハロゲン化されたジベンゾチオフェンや、その誘導体を合成することができる。
下記反応式(S18)に示すように、ハロゲン化ジベンゾチオフェンと、アミノ基が導入された芳香族環式基を、例えば、Buchwald−Hartwig反応(例えば、Org.Synth.,2002,78,23)、Ullmann反応(例えば、Angew.Chem.,Int.Ed.2003,42,5400)等を応用したN−アリール化反応を行うことで、上記一般式(S18)に記載の化合物を合成することができる。
なお、下記反応式(S19)に示すように、アミノ基が導入されたジベンゾチオフェン誘導体と、ハロゲン化された芳香族環式基を用いて、N−アリール化を行っても、上記一般式(52)の化合物を同様に合成することができる。
下記反応式(S20)に示すように、任意の場所にハロゲン化されたジベンゾチオフェンと、例えば、アルキルグリニャール試薬等を用いれば、ジベンゾチオフェンにアルキル基等を導入することができる。
下記反応式(S21)に示すように、スズキカップリング反応(例えば、Chem.Rev.,1995,95,2457)等を用いれば、ジベンゾチオフェンに芳香族環式基を導入することも可能である。また、ボロン酸誘導体は、Raが、水素、メチル、イソプロピル等、必要に応じて任意のボロン酸誘導体を選ぶことができる。
また、前記のJ.Org.Chem.,2006,71,6291に記載された方法を応用すれば、下記反応式(S22)に示す方法も可能である。
下記一般式(75)に示す、置換基Rを導入したジベンゾチオフェン誘導体も、上記反応を応用することにより合成することができる。
例えば、下記反応式(S23)に示される方法により、上記一般式(75)に示す化合物を合成することができる。
(重合性官能基の導入について)
前記一般式(1)に示される本発明の化合物は、X1〜X6のうち少なくとも1つが重合性官能基である。X5またはX6が重合性官能基である場合には、例えば、下記一般式(79)に示される化合物を中間体として用いることができる。
ここで、上記一般式(79)におけるXaは、重合性官能基の前駆体である。
下記反応式(S24)に示すように、上記一般式(79)に示す化合物と、一般式(78)に示す化合物とのN−アリール化反応を行い、中間体を合成することができる。
上記中間体(80)は、下記一般式(10)に示す中間体とのN−アリール化反応(S25)により、重合性官能基の前駆体を含む下記一般式(81)を合成することができる。
下記反応式(S26)に示すように、Xaを重合性官能基Xbに変換して、一般式(82)に示す本発明の化合物を合成することができる。
より具体的には、例えば、下記反応式(S27)〜(S29)に示す方法により、上記置換基に示す置換基を導入することができる。
なお、ここに示した方法は、例示であり、これに限定されるものではない。
(物性評価について)
化合物の純度の測定は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等により行うことができる。高速液体クロマトグラフィーは試料を導入した移動相に圧力をかけ、溶媒を高流速で移動相に通し、カラムで試料(混合物)を分離して、分離された試料を検出器で検出することにより、試料の純度を測定する方法である。
カラムには順相系、逆相系を用いることができる。順層系クロマトグラフィーは、固定相の極性が移動相の極性より高い分離系をいい、固定相にはアルミナ等が用いられ、移動相にはヘキサンなどの極性の小さい溶媒を用いることができる。逆相系クロマトグラフィーは、移動相の極性が固定相の極性より高い分離系をいい、固定相には疎水処理をしたシリカ等が用いられ、移動相には、メタノールやアセトニトリルなどの極性溶媒を用いることができる。
検出器は、試料の物性に応じて様々なものを用いることができる。例えば、吸光光度検出器(UV/VIS)、蛍光検出器(FLD)、質量分析装置(MS)等が挙げられる。
化合物の分子量の測定は、質量分析法(MS)により行うことができる。質量分析は、試料導入部から導入された試料に、真空中で高電圧をかけることで、試料をイオン化し、イオンを質量電荷比に応じて分離して、検出部で検出することにより行われる。
試料導入部は、ガスクロマトグラフィー(GC/MS)、高速液体クロマトグラフィー(LC/MS)、キャピラリー電気泳動(CE/MS)に直結することができ、MSを測定するとともに、純度の測定も行うことができる。なお、試料を直接イオン化する、ダイレクトインジェクション方式(DI/MS)も採用される場合がある。
イオン源には様々なイオン化の方式が採用される。例えば、電子イオン化法(EI)、高速原子衝突法(FAB)、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)、誘電結合プラズマ法(ICP)等が挙げられる。
化合物の同定には核磁気共鳴スペクトル(NMR)を用いることができる。NMR測定では、原子の結合状態などによって、化学シフトやカップリングの情報を知ることができるため、化合物固有のスペクトルを得ることができ、化合物を同定することができる。測定は、少量の試料を重溶媒に溶かし行われる。
化合物の熱安定性の評価は、示差走査熱量測定(DSC)により行うことができる。DSC測定は、試料が相転移や融解等の熱変化が生じた場合に、標準試料との熱量の差を検出することにより行われる。DSCでは、化合物の融点や、ガラス転移温度を知ることができる。
化合物の紫外可視吸収スペクトル(UV/VIS)、蛍光スペクトル(PL)、燐光スペクトルを測定することで、化合物特有のUV吸収波長、蛍光波長、燐光波長を知ることができるだけでなく、化合物のバンドギャップ、蛍光量子収率、T1エネルギー等の情報を知ることができる。
化合物のHOMOレベル、LUMOレベルは、サイクリックボルタンメトリー(CV)により測定することができる。また、HOMOレベルと同様の観念として、イオン化ポテンシャル(IP)測定も用いられる。
さらに、UV吸収波長から、光学的バンドギャップを求め、HOMOレベル(またはIP)から、LUMOレベル(またはEa)を計算で求める手法も用いられる。
(有機EL素子について)
本発明の有機EL素子は本発明の化合物を正孔輸送材料として用いることを特徴とする。
一般的に有機EL素子は、基板上に陽極、正孔注入層、正孔輸送層(電子阻止層)、発光層、電子輸送層(正孔阻止層)、電子注入層、陰極がこの位置関係で積層されて構成される。
有機EL素子は全てが有機物で形成される必要はなく、電極や正孔注入層、電子注入層等には無機材料が用いられる場合がある。
また、有機EL素子を形成する層のうち、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層のうちいずれかが省略される場合もある。
有機EL素子は、基板側から光を取り出すボトムエミッション型素子と、基板とは反対側から光を取り出すトップエミッション型があり、本発明の有機EL素子においては、どちらの方式をとることもできる。
基板に用いられる材料は、トップエミッション型素子とボトムエミッション型素子で異なる場合がある。ボトムエミッション型素子には、透明な基板が用いられる。一方、トップエミッション型では透明な基板だけでなく、不透明な基板を用いることもできる。
基板に用いられる材料は、石英ガラス、ソーダガラス、パイレックス等、各種のガラスを用いることができる。また、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエチレンテレフタレート等、各種のプラスチック基板を用いることもできる。さらに、これらを2種以上組み合わせて使用することもできる。
一般にボトムエミッション型素子の陽極には、透明導電材料が用いられる。また、トップエミッション型では、特に制限はないが、反射性の電極が用いられる場合がある。陽極の役割は、正孔注入層又は正孔輸送層に正孔を注入することである。このため、陽極には、仕事関数が比較的大きい各種金属材料や、各種合金等、陽極として機能する材料が用いられる。例えば、金、ヨウ化銅、酸化スズ、アルミニウムドープの酸化亜鉛(ZnO:Al)、インジウム酸化スズ(ITO)、インジウム酸化亜鉛(IZO)、フッ素酸化スズ(FTO)等が挙げられる。このうち、透明性や仕事関数の観点から、ITO、IZO、FTOが好ましい。
正孔注入層に用いられる材料は、陽極の仕事関数と正孔輸送層のIPの関係、電荷輸送特性等の観点から選ばれる。例えば、下記化学式(92)に示されるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)、下記一般式(93)に示される銅フタロシアニン(CuPc)、モリブデン酸化物(MoOx)、酸化バナジウム(V2O5)等が挙げられる。適切なIPと電荷輸送特性を有する化合物であれば、低分子、高分子問わず、各種の有機化合物、無機化合物を選択することができる。また、これらの材料を2種以上組み合わせて用いることもできる。
正孔輸送層には、本発明の化合物を用いることができる。該化合物は、スピロフルオレンの中心骨格と、アミノジベンゾフラン骨格を有することにより、広いバンドギャップ、適切なHOMO、LUMOレベルを有し、電気的安定性、熱的安定性に優れる。したがって、発光層内での電荷の再結合効率を高めることができ、より高い発光効率で、長寿命な有機EL素子を実現することができるため、好ましい。
本発明の化合物は単独で用いることもできるが、既存の正孔輸送性材料を1種又は2種以上混合して用いることもできるし、1層又は2層以上を積層して用いることもできる。正孔輸送性材料としては、例えば、下記一般式(94)に示されるDBTPB、下記一般式(95)に示されるα−NPD等の化合物が挙げられる。
発光層には、蛍光材料、または燐光材料を用いることができる。発光材料は、電荷輸送および再結合を行うホスト材料に、発光材料(ゲスト)を含有させて用いることもできる。
ホスト材料は、正孔輸送性および電子輸送性を有する両電荷輸送性の材料を用いることができる。また、本発明の正孔輸送性材料は電子阻止性能にも優れるため、ホスト材料に電子輸送性の材料を用いることもできる。
ゲスト材料として燐光材料が選ばれる場合は、ホスト材料のT1エネルギーがゲスト材料のT1エネルギーよりも高くなるように、ホスト材料を選択することが好ましい。また、本発明の化合物は優れた電子阻止性能を有するため、ホスト材料には、下記一般式(96)に示すBepp2等のような電子輸送性の化合物を用いることもできる。
発光材料はホスト材料からのエネルギー移動を有効に行うために、ホスト材料の発光波長とゲスト材料の吸収波長が重なることが好ましい。また、ゲスト材料が燐光材料の場合には、ホスト材料のT1エネルギーが、ゲスト材料のT1エネルギーよりも大きいことが好ましい。
発光材料は特に限定されないが、蛍光材料または燐光材料等から選ばれ、例えば、下記一般式(97)に示されるIr(mppy)3等が挙げられる。
電子輸送層に用いる材料としては、例えば、下記一般式(98)に示されるTPBI等を用いることができる。適切なLUMOレベルを有する電子輸送層を、発光層と陰極又は電子注入層との間に設けると、陰極又は電子注入層から電子輸送層への電子注入障壁を緩和し、さらに、電子輸送層から発光層への電子注入障壁を緩和することができる。また、該材料が適切なHOMOレベルを有すると、発光層で再結合せずに対極へ流出する正孔を阻止し、発光層内に正孔を閉じ込め、発光層内での再結合効率を高めることができる。ただし、電子注入障壁が問題とならず、さらに、発光層の電子輸送能が十分に高い場合には、電子輸送(正孔阻止)層を設ける必要はなく、当該層は省略される場合がある。
電子注入層に用いられる材料は、陰極の仕事関数と電子輸送層のLUMOレベル等の観点から選ばれる。電子輸送層を設けない場合には、発光材料又は後述するホスト材料のLUMOレベルを考慮して選ばれる。電子注入材料は有機化合物でも無機化合物でもよい。
電子注入層が、無機化合物からなるものである場合には、例えば、アルカリ金属や、アルカリ土類金属の他、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、炭酸セシウム等を用いることができる。
有機EL素子の陰極は、電子注入層又は電子輸送層に電子を注入する役割を担う。陰極には、仕事関数の比較的小さな各種金属材料、各種合金等、陰極として作用する材料が用いられる。例えば、アルミニウム、銀、マグネシウム、カルシウム、金、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、マグネシウムインジウム合金(MgIn)、銀合金等が挙げられる。
ボトムエミッション方式を採用する場合、陰極には、金属からなる不透明電極を用いることができる。また、陰極を反射電極とすることもできる。
トップエミッション方式を採用する場合、陰極には、ITO、IZO等の透明電極を用いることができる。ここで、ITOは仕事関数が大きいため、電子注入が困難となることに加え、ITO膜を形成するためには、スパッタ法やイオンビーム蒸着法が用いられるが、成膜時に電子輸送層等にダメージを与える可能性がある。そこで、電子注入を改善するとともに、成膜時の電子輸送層へのダメージを低減するために、電子輸送層と、ITOとの間に、マグネシウム層や銅フタロシアニン層を設けることもできる。
(合成例1)
下記化学式(103)に示す化合物を、下記合成経路(S30)により合成した。
下記化学式(101)に示される中間体を、以下に示す方法により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した300mLのシュレンク管に、上記化学式(99)に示される4‐ブロモジベンゾチオフェン(13.16g、50mmol)、上記化学式(100)に示されるアニリン(4.66g、50mmol)、酢酸パラジウム(225mg、1.0mmol)、トルエン(150mL)、トリ−t−ブチルホスフィン(202mg、1.0mmol)、及びt−ブトキシカリウム(5.61g、50mmol)を入れ、密閉した後に、100℃で7時間、攪拌した。その後、反応容器を室温付近まで放冷し、蓋を開け、そこに水(150mL)を入れた。内容物を分液ロートに移し、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=3/1)により精製し、目的とする上記化学式(101)に示される化合物を得た(収量10.7g、収率77.8%)。
1H−NMR、DMSO−d6、δ:6.85(t、J=7.3Hz、1H)、6.98(d、J=7.8Hz、8H)、7.23(t、J=8.3Hz、2H)、7.32(d、J=7.8Hz、1H)、7.45(t、J=7.8Hz、1H)、7.50−7.53(m、2H)、8.01−8.03(m、2H)、8.17(s、1H)、8.33−8.35(m、1H)
次いで、下記化学式(103)に示される化合物を、以下に示す方法により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した100mLのシュレンク管に、上記化学式(101)に示される化合物(2.11g8.0、mmol)、上記化学式(102)に示される4,4’−ジョード−2,2’−ジメチル−1,1’−ビフェニル(1.74g、4.0mmol)、酢酸パラジウム(36mg、0.16mmol)、トルエン(50mL)、トリ−t−ブチルホスフィン(32mg、0.16mmol)、及びt−ブトキシカリウム(0.90g、8.0mmol)を入れ、密閉した後に、100℃で10時間、攪拌した。その後、反応容器を室温付近まで放冷し、蓋を開け、そこに水(50mL)を入れた。内容物を分液ロートに移し、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=3/1)により精製し、目的とする上記化学式(103)に示される化合物を得た(収量2.40g、収率82.3%)。
HPLCによる純度測定は、以下に示す条件で行った。
カラム「InertSustain、C18、5μm、4.6mm×150mm(逆相系)」、溶離液「アセトニトリル:THF=90:10」、流速「1.0ml/min」、UV検出器「254nm」
化合物の同定は、質量分析にて分子イオンピークが目的物と一致したこと、および1H−NMRで行った。
1H−NMR、CDCl3 δ1.98(s、6H)、6.89−7.00(m、8H)、7.08(d、J=8.2Hz、4H)、7.22−7.00(m、4H)、7.31−7.45(m、8H)、7.7(d、J=7.3Hz、2H)、7.98(d、J=7.8Hz、2H)、8.13(d、J=7.3Hz、2H)。
(合成例2)
下記化学式(111)に示す化合物を、以下の合成経路(S31)により合成した。
下記化学式(106)に示される中間体を、以下に示す方法により合成した。
撹拌子を備えた四つ口フラスコに、アルゴン雰囲気下で上記化学式(104)に示される2−ブロモトルエン(11.97g、70.0mmol)のジエチルエーテル(140mL)溶液を調整し、−15℃まで冷却した。1.6M−n−ブチルリチウム(45mL、72mmol)を滴下した後、2時間撹拌した。その後、ホウ酸トリメチル(7.27g、70.0mmol)を加え、徐々に室温(rt)に昇温させながら、そのまま、20時間撹拌した。反応溶液に水を加え、反応を停止させた後、減圧下でエーテルおよびヘキサンを除去した。
反応容器に冷却管を取り付け、容器内を再びアルゴン置換した後、2−ブロモトルエン(11.97g、70.0mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.809g、0.7mmol)、炭酸カリウム(9.67g、70mmol)、トルエン(70mL)を加え、トルエンと水が同量になるようにさらに水を追加した。その後100℃で20時間撹拌した。反応液を分液ロートに移し、有機相と水相を分離し、エーテルで抽出作業を行った。有機相を炭酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過、濃縮を行い、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)にて、上記化学式(106)に示される化合物を単離した。目的物の同定はGCMSにて行った。収量は7.84g、収率は61%であった。
次いで、下記化学式(107)に示される中間体を、以下に示す方法により合成した。
撹拌子を備えた四つ口フラスコに滴下ロートを取り付け、容器内をアルゴン置換し、上記化学式(106)に示される2,2’−ジメチル−1,1’−ビフェニル(5.47g、30.0mmol)のジクロロメタン(90mL)溶液、および塩化ジルコニウム(0.35g、1.5mmol)を入れ、−15℃まで冷却した。滴下ロートにNBS(5.34g、30.0mmol)のDMF(30mL)溶液を入れ、少しずつ滴下した。全部滴下した後、徐々に昇温し、室温(rt)で48時間撹拌した。反応溶液に水を加えた後、減圧下でジクロロメタンを除去し、ジエチルエーテルで目的物を抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過、濃縮を行った後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=3/1)にて、上記化学式(107)に示される目的物を単離した。収量は5.09g、収率は65%であった。
次いで、下記化学式(109)に示される中間体を、以下に示す方法により合成した。
撹拌子を備えた150mLシュレンク管に、アルゴン雰囲気下で上記化学式(99)に示される4−ブロモジベンゾチオフェン5.79g(22.0mmol)、上記化学式(108)に示される4−クロロ−3−メチルアニリン3.74g(26.4mmol)、カリウム−tert−ブトキシド3.70g(33.0mmol)、酢酸パラジウム(II)99mg(0.44mmol)、脱水トルエン60mLを収め脱気した後、トリ−tert−ブチルホスフィン267mg(1.32mmol)を加え密栓し、100℃で10時間撹拌した。
室温まで冷却した後、反応混合物を水に注加し、塩化メチレンで抽出し、水洗を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去した。得られた粗生成物をヘキサン:塩化メチレン(4:1)を溶出液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。
以上の工程を行うことにより、上記化学式(109)に示される化合物を収量3.75g、収率53%で得た。化合物の同定は、質量分析にて分子イオンピークが目的物と一致することで行った。
次いで、上記化学式(110)に示される中間体を、以下に示す方法により合成した。
撹拌子を備えた200mLシュレンク管をアルゴン置換し、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)(10.0g、36.4mmol)、2,2’−ビピリジル(5.68g、36.4mmol)、およびTHF(100mL)を加え、45分間撹拌した。その後、さらに上記化学式(109)に示される化合物(2.59g、8.0mmol)のTHF(20mL)溶液を加え、65℃で24時間撹拌した。
その後、反応溶液に水を加え、ジクロロメタンで洗浄しながらセライトろ過を行った。得られたろ液をTHFが除去できる程度に濃縮し、その溶液からジクロロメタンで目的物を抽出した。得られた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過、濃縮を行った。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=1/1)にて、上記化学式(110)に示される目的物を単離した。収量は0.55g、収率は12%であった。
次いで、下記化学式(111)に示される化合物を、以下に示す方法により合成した。
攪拌子を備えたシュレンク管をアルゴン置換し、上記化学式(110)に示される化合物(0.5g、0.89mmol)、上記化学式(107)に示される化合物(0.56g、2.2mmol)、酢酸パラジウム(9mg、0.04mmol)、トルエン(50mL)、トリ‐t‐ブチルホスフィン(8mg、0.04mmol)、t−ブトキシカリウム(0.22g、2.0mmol)を入れ、100℃で6時間攪拌した。
その後、水を加え、反応を停止させ、ジエチルエーテルで抽出操作を行った。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過、濃縮の後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=2/1)により上記化学式(111)に示される目的物を単離した。
(合成例3)
下記化学式(115)に示す化合物を以下に示す合成経路(S32)により合成した。
下記化学式(114)に示される中間体を、以下に示す方法により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した200mLのシュレンク管に、上記化学式(112)に示される、3−ブロモクロロベンゼン(5.02g、20.0mmol)及びジエチルエーテル(50mL)を入れ、攪拌し、−15℃まで冷却した。そこに、1.6M−n−ブチルリチウム・ヘキサン溶液(13.0mL、20.5mmol)を滴下した。1時間攪拌した後、ホウ酸トリメチル(2.13g、20.5mmol)を加え、冷却バスを外して−15℃から室温まで昇温しつつ、18時間攪拌した。蒸留水(20mL)を少しずつ添加して、反応を停止させ、減圧下でジエチルエーテルおよびヘキサンを除去した。冷却管を取り付け、容器を再びアルゴン置換した後、蒸留水(30mL)、3−ブロモクロロベンゼン(5.23g、20.5mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.462g、0.40mmol)、炭酸カリウム(2.76g、20mmol)、およびトルエン(100mL)を加え、5時間還流した。室温まで冷却した後、内容物を分液ロートに移し、有機相と水相を分離させ、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)により精製し、目的とする上記化学式(114)に示される化合物を得た(収量4.14g、収率82.5%)
1H−NMR、DMSO−d6、δ:7.45−7.51(m、4H)、7.67(d、J=7.3Hz,2H)、7.77(s、2H)
次いで、下記化学式(115)に示される化合物を、以下に示す方法により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した100mLのシュレンク管に、上記化学式(101)に示される化合物(1.65g、6.0、mmol)、上記化学式(114)に示される化合物(0.753g、3.0mmol)、酢酸パラジウム(27mg、0.12mmol)、トルエン(40mL)、トリ−t−ブチルホスフィン(24mg、0.12mmol)、及びt−ブトキシカリウム(0.673g、6.0mmol)を入れ、密閉した後に、100℃で10時間、攪拌した。その後、反応容器を室温付近まで放冷し、蓋を開け、そこに水(40mL)を入れた。内容物を分液ロートに移し、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=3/1)により精製し、目的とする上記化学式(115)に示される化合物を得た(収量1.55g、収率55.4%)。
1H−NMR、DMSO−d6、δ:6.87−6.90(m、2H)、6.93−7.02(m、8H)、7.12(d、J=8.3Hz、2H)、7.20−7.24(m、4H)、7.27−7.31(m、4H)、7.47−7.54(m、6H)、7.89(dd、J=1.4Hz、6.4Hz、2H)、8.21(dd、J=0.9Hz、7.8Hz、2H)、8.36(dd、J=1.4Hz、6.4Hz、2H)
(合成例4)
下記化学式(119)に示す化合物を以下に示す合成経路(S33)により合成した。
下記化学式(118)に示される中間体を、以下に示す方法により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した200mLのシュレンク管に、上記化学式(116)に示される2−ブロモ−4−クロロトルエン(5.02g、20.0mmol)及びジエチルエーテル(50mL)を入れ、攪拌し、−15℃まで冷却した。そこに、1.6M−n−ブチルリチウム・ヘキサン溶液(13.0mL、20.5mmol)を滴下した。1時間攪拌した後、ホウ酸トリメチル(2.13g、20.5mmol)を加え、冷却バスを外して−15℃から室温まで昇温しつつ、18時間攪拌した。蒸留水(20mL)を少しずつ添加して、反応を停止させ、減圧下でジエチルエーテルおよびヘキサンを除去した。冷却管を取り付け、容器を再びアルゴン置換した後、蒸留水(30mL)、2−ブロモ−4−クロロトルエン(5.23g、20.5mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.462g、0.40mmol)、炭酸カリウム(2.76g、20mmol)、およびトルエン(100mL)を加え、5時間還流した。室温まで冷却した後、内容物を分液ロートに移し、有機相と水相を分離させ、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)により精製し、目的とする上記化学式(118)に示される化合物を得た(収量4.14g、収率82.4%)
1H−NMR、DMSO−d6、δ:1.98(s、6H)、7.14(s、2H)、7.35(d、J=1.8Hz、4H)
次いで、下記化学式(119)に示される化合物を、以下に示す方法により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した100mLのシュレンク管に、上記化学式(101)に示される化合物(1.65g、6.0、mmol)、上記化学式(118)に示される化合物(0.753g、3.0mmol)、酢酸パラジウム(27mg、0.12mmol)、トルエン(40mL)、トリ−t−ブチルホスフィン(24mg、0.12mmol)、及びt−ブトキシカリウム(0.673g、6.0mmol)を入れ、密閉した後に、100℃で10時間、攪拌した。その後、反応容器を室温付近まで放冷し、蓋を開け、そこに水(40mL)を入れた。内容物を分液ロートに移し、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=3/1)により精製し、目的とする上記化学式(119)に示される化合物を得た(収量1.85g、収率84.6%)。
1H−NMR、DMSO−d6、δ:1.88(s、6H)、6.59(d、J=2.7Hz、2H)、6.85(dd、J=2.3Hz、8.2Hz、2H)、6.92(d、J=7.3Hz、4H)、6.98(t、J=7.3Hz、2H)、7.13(d、J=8.2Hz、2H)、7.21−7.25(m、6H)、7.45−7.52(m、6H)、7.86(dd、J=1.8Hz、6.9Hz、2H)、8.19(d、J=7.8Hz、2H)、8.36(dd、J=1.4Hz、7.3Hz、2H)
(合成例5)
下記化学式(122)に示す化合物を以下に示す合成経路(S34)により合成した。
下記化学式(121)に示される中間体を、以下に示す方法により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した300mLの四つ口フラスコに、2,2’−ジブロモビフェニル(7.50g、24.0mmol)及びジエチルエーテル(100mL)を入れ、攪拌し、−15℃まで冷却した。そこに、1.6M−n−ブチルリチウム・ヘキサン溶液(30.0mL、48.0mmol)を滴下した。1時間攪拌した後、ホウ酸トリメチル(4.99g、48mmol)を加え、冷却バスを外して−15℃から室温まで昇温しつつ、18時間攪拌した。蒸留水(50mL)を少しずつ添加して、反応を停止させ、減圧下でジエチルエーテルおよびへキサンを除去した。冷却管を取り付け、容器を再びアルゴン置換した後、蒸留水(50mL)、m−ジブロモベンゼン(16.98g、72mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.555g、0.48mmol)、炭酸カリウム(6.634g、48mmol)、およびトルエン(100mL)を加え、5時間還流した。室温まで冷却した後、内容物を分液ロートに移し、有機相と水相を分離させ、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)により精製し、目的とする上記化合物(121)を得た(収量6.12g、収率53.9%)。
1H−NMR、CDCl3 δ:6.85(t、J=7.3Hz、6H)、6.89−7.00(m、8H)、7.08(d、J=8.2Hz、4H)、7.22−7.00(m、4H)、7.31−7.45(m、8H)、7.7(d、J=7.3Hz、2H)、7.98(d、J=7.8Hz、2H)、8.13(d、J=7.3Hz、2H)
次いで、下記化学式(122)に示される化合物を、以下に示す方法により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した100mLのシュレンク管に化学式(101)で示される化合物(3.30g、12.0mmol)、化学式(121)で示される化合物(1279g、6.0mmol)、酢酸パラジウム(27mg、0.12mmol)、トルエン(50mL)、トリ−t−ブチルホスフィン(24mg、0.12mmol)、及びt−ブトキシカリウム(1.35g、12.0mmol)を入れ、密閉した後に、100℃で7時間、攪拌した。その後、反応容器を室温付近まで放冷し、蓋を開け、そこに水(50mL)を入れた。内容物を分液ロートに移し、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=3/1)により精製し、目的とする上記化合物(122)を得た(収量4.98g、収率97.3%)
1H−NMR、CDCl3 δ:6.23(t、J=1.8Hz、2H)、6.53(d、J=7.8Hz、2H)、6.60(d、J=7.3Hz、4H)、6.74(d、J=9.6Hz、2H)、6.88−6.92(m、6H)、7.00−7.13(m、12H)、7.38(t、J=7.8Hz、2H)、743−7.50(m、4H)、7.84(d、J=7.3Hz、2H)、8.15(d、J=6.9Hz、2H)、8.33(d、J=6.9Hz、2H)
(合成例6)
下記化学式(124)に示す化合物を以下に示す合成経路(S35)により合成した。
下記化学式(123)に示される中間体を以下に示す方法により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した300mLの四つ口フラスコに、2,2’−ジブロモビフェニル(7.50g、24.0mmol)及びジエチルエーテル(100mL)を入れ、攪拌し、−15℃まで冷却した。そこに、1.6M−n−ブチルリチウム・ヘキサン溶液(30.0mL、48.0mmol)を滴下した。1時間攪拌した後、ホウ酸トリメチル(4.99g、48mmol)を加え、冷却バスを外して−15℃から室温まで昇温しつつ、18時間攪拌した。蒸留水(50mL)を少しずつ添加して、反応を停止させ、減圧下でジエチルエーテルおよびへキサンを除去した。冷却管を取り付け、容器を再びアルゴン置換した後、蒸留水(50mL)、p−ジブロモベンゼン(16.98g、72mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.555g、0.48mmol)、炭酸カリウム(6.634g、48mmol)、およびトルエン(100mL)を加え、5時間還流した。室温まで冷却した後、内容物を分液ロートに移し、有機相と水相を分離させ、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)により精製し、目的とする上記化合物(123)を得た(収量3.21g、収率28.9%)
1H−NMR、CDCl3 δ:6.51−6.54(m、4H)、7.18−7.19(m、2H)、7.23−7.26(m、4H)、7.37−7.45(m、6H)
次いで、下記化学式(124)に示される中間体を以下に示す方法により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した100mLのシュレンク管に化学式(101)で示される化合物(1.65g、6.0mmol)、化学式(123)で示される化合物(1.39g、3.0mmol)、酢酸パラジウム(13mg、0.06mmol)、トルエン(30mL)、トリ−t−ブチルホスフィン(12mg、0.06mmol)、及びt−ブトキシカリウム(1.35g、12.0mmol)を入れ、密閉した後に、100℃で7時間、攪拌した。その後、反応容器を室温付近まで放冷し、蓋を開け、そこに水(30mL)を入れた。内容物を分液ロートに移し、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=3/1)により精製し、目的とする上記化合物(124)を得た(収量2.12g、収率82.8%)。
1H−NMR、CDCl3 δ:6.51−6.57(m、8H)、6.85−6.92(m,6H)、7.12−7.21(m、8H)、7.33−7.41(m、8H)、7.85−7.87(m、2H)、8.11(dd、J=0.9Hz,J=7.8Hz、2H)、8.29−8.31(m、2H)
(合成例7)
下記化学式(127)に示す化合物を以下に示す合成経路(S35)により合成した。
下記化学式(126)に示される中間体を、以下に示す方法により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した300mLのシュレンク管に、上記化学式(125)に示される2‐ブロモジベンゾチオフェン(13.16g、50mmol)、上記化学式(100)に示されるアニリン(4.66g、50mmol)、酢酸パラジウム(225mg、1.0mmol)、トルエン(150mL)、トリ−t−ブチルホスフィン(202mg、1.0mmol)、及びt−ブトキシカリウム(5.61g、50mmol)を入れ、密閉した後に、100℃で18時間、攪拌した。その後、反応容器を室温付近まで放冷し、蓋を開け、そこに水(150mL)を入れた。内容物を分液ロートに移し、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=3/1)により精製し、目的とする上記化学式(126)に示される化合物を得た(収量7.85g、収率57.1%)。
化合物はMSスペクトルで同定した。
次いで、下記化学式(127)に示される化合物を、以下の方法により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した100mLのシュレンク管に、上記化学式(126)に示される化合物(2.11g8.0、mmol)、上記化学式(102)に示される4,4’−ジョード−2,2’−ジメチル−1,1’−ビフェニル(1.74g、4.0mmol)、酢酸パラジウム(36mg、0.16mmol)、トルエン(50mL)、トリ−t−ブチルホスフィン(32mg、0.16mmol)、及びt−ブトキシカリウム(0.90g、8.0mmol)を入れ、密閉した後に、100℃で10時間、攪拌した。その後、反応容器を室温付近まで放冷し、蓋を開け、そこに水(50mL)を入れた。内容物を分液ロートに移し、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=3/1)により精製し、目的とする上記化学式(127)に示される化合物を得た(収量2.32g、収率79.6%)
(合成例8)
下記化学式(128)に示す化合物を以下に示す合成経路(S37)により合成した。
下記化学式(128)に示される化合物を、以下に示す方法により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した100mLのシュレンク管に化学式(126)で示される化合物(1.58g、6.0mmol)、化学式(121)で示される化合物(1.39g、3.0mmol)、酢酸パラジウム(27mg、0.12mmol)、トルエン(50mL)、トリ−t−ブチルホスフィン(24mg、0.12mmol)、及びt−ブトキシカリウム(0.67g、6.0mmol)を入れ、密閉した後に、100℃で7時間、攪拌した。その後、反応容器を室温付近まで放冷し、蓋を開け、そこに水(50mL)を入れた。内容物を分液ロートに移し、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=3/1)により精製し、目的とする上記化合物(128)を得た(収量2.06g、収率80.5%)。
1H−NMR、CDCl3 δ:6.25(s、2H)、6.56(d、J=7.8Hz、2H)、6.66(d、J=8.2Hz、4H)、6.77−6.81(m、4H)、6.90(t、J=7.3Hz、2H)、7.96−6.99(m、2H)、7.06−7.17(m、12H)、7.38(t、J=7.4Hz、2H)、7.46(d、J=7.4Hz、2H)、7.96(d、J=1.8Hz、2H)、7.74(d、J=8.7Hz、2H)、7.97(d、J=7.8Hz、2H)、8.02(d、J=7.8Hz、2H)
下記化学式(134)に示す化合物を以下に示す合成経路(S38)により合成した。
下記化学式(130)に示される中間体を、以下に示す方法により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した200mLのシュレンク管に、前記化学式(99)に示される化合物4‐ブロモジベンゾチオフェン(12.10g、46mmol)、上記化学式(129)に示されるp‐メトキシアニリン(5.95g、48.3mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(421mg、0.46mmol)、トルエン(100mL)、トリ−t−ブチルホスフィン(93mg、0.46mmol)、及びt−ブトキシカリウム(7.74g、69mmol)を入れ、密閉した後に、60℃で12時間、攪拌した。その後、反応容器を室温付近まで放冷し、蓋を開け、そこに水(50mL)を入れた。内容物を分液ロートに移し、トルエン(200mL)と水(100mL)を加え、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘキサン/酢酸エチル=10/10/1)により精製し、目的とする上記化学式(130)に示される化合物を得た(収量9.61g、収率68.3%)。
次いで、下記化学式(132)に示される中間体を、以下に示す方法により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した100mLのシュレンク管に、前記化学式(130)に示される化合物(3.90g、12.8mmol)、上記化学式(131)に示される4,4−ジヨード−1,1−ビフェニル(2.55g、6.27mmol)、酢酸ジパラジウム(115mg、0.512mmol)、トルエン(40mL)、トリ−t−ブチルホスフィン(331mg、1.54mmol)、及びt−ブトキシカリウム(2.15g、19.2mmol)を入れ、密閉した後に、100℃で16時間、攪拌した。その後、反応容器を室温付近まで放冷し、蓋を開け、そこに水(20mL)を入れた。内容物を分液ロートに移し、トルエン200mLと水100mLを加え、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=3/2)により精製し、目的とする上記化学式(132)に示される化合物を得た(収量4.34g、収率90.1%)。
化合物はMSスペクトルで同定した。
次いで、下記化学式(133)に示される中間体を、以下に示す方法により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した100mLのシュレンク管に、前記化学式(132)に示される化合物(3.50g、4.6mmol)及びジクロロメタン(35mL)を入れ、攪拌し、−10℃まで冷却した。そこに、1.0M 三臭化ホウ素・ジクロロメタン溶液(16.1mL、16.1mmol)を滴下し、密栓した。冷却バスを外して−10℃から室温まで昇温しつつ、18時間攪拌した。反応混合物を冷水100mlにゆっくりと注加した後、分液ロートに移し、ジクロロメタン200mLを加え、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘキサン/酢酸エチル=2/2/1)により精製し、目的とする上記化学式(133)に示される化合物を得た(収量2.39g、収率71.0%)。
化合物はMSスペクトルで同定した。
次いで、下記化学式(134)に示される化合物を、以下に示す方法により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した100mLのシュレンク管に、前記化学式(133)に示される化合物(1.39g、1.9mmol)、炭酸カリウム(1.05g、7.6mmol)、及びジメチルスルホキシド(25mL)を入れ、攪拌し、4−(クロロロメチル)スチレン(0.8mL、5.7mmol)を滴下し、密閉した後に、65℃で6時間、攪拌した。その後、反応容器を室温付近まで放冷し、蓋を開け、そこに水(50mL)を入れた。内容物を液ロートに移し、ジエチルエーテル300mLを加え、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘキサン=2/1)により精製し、目的とする上記化学式(134)に示される化合物を得た(収量1.36g、収率74.3%)。
1H−NMR、DMSO−d6、δ:5.07(s、4H)、5.27(d、J=11.0Hz、2H)、5.84(d、J=17.9Hz、2H)、6.74(dd、J=6.9Hz、10.6Hz、2H)、6.86(d、J=8.7Hz、4H)、7.04(dd、J=9.2Hz、J=15.1Hz、8H)、7.29(d、J=7.8Hz、2H)、7.41−7.56(m、18H)、7.92(d、J=9.2Hz、2H)、8.20(d、J=7.8Hz、2H)、8.37(d、J=8.7Hz、2H)、
下記化学式(137)に示される化合物を以下に示す合成経路(S39)により合成した。
下記化学式(135)に示される中間体を、以下に示す方法により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した100mLのシュレンク管に、前記化学式(130)に示される化合物(2.46g、8.04mmol)、上記化学式(121)に示される化合物(1.78g、3.83mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(73.6mg、0.80mmol)、トルエン(40mL)、トリ−t−ブチルホスフィン(16.3mg、0.80mmol)、及びt−ブトキシカリウム(1.35g、12.1mmol)を入れ、密閉した後に、90℃で12時間、攪拌した。その後、反応容器を室温付近まで放冷し、蓋を開け、そこに水(20mL)を入れた。内容物を分液ロートに移し、トルエン200mLと水100mLを加え、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=3/2)により精製し、目的とする上記化学式(135)に示される化合物を得た(収量3.44g、収率98.3%)。
化合物はMSスペクトルで同定した。
次いで、下記化学式(136)に示される中間体を、以下に示す方法により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した100mLのシュレンク管に、前記化学式(135)に示される化合物(3.10g、3.4mmol)及びジクロロメタン(50mL)を入れ、攪拌し、−10℃まで冷却した。そこに、1.0M 三臭化ホウ素・ジクロロメタン溶液(11.6mL、11.6mmol)を滴下し、密栓した。冷却バスを外して−10℃から室温まで昇温しつつ、16時間攪拌した。反応混合物を冷水100mlにゆっくりと注加した後、分液ロートに移し、ジクロロメタン200mLを加え、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロエタン/ヘキサン/酢酸エチル=5/3/1)により精製し、目的とする上記化学式(136)に示される化合物を得た(収量2.94g、収率97.6%)。
化合物はMSスペクトルで同定した。
次いで、下記化学式(137)に示される化合物を、以下に示す方法により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した100mLのシュレンク管に、前記化学式(137)に示される化合物(2.65g、3.0mmol)、炭酸カリウム(1.66g、12.0mmol)、及びジメチルスルホキシド(45mL)を入れ、攪拌し、4−(クロロロメチル)スチレン(1.27mL、9.0mmol)を滴下し、密閉した後に、60℃で10時間、攪拌した。その後、反応容器を室温付近まで放冷し、蓋を開け、そこに水(40mL)を入れた。内容物を液ロートに移し、ジエチルエーテル400mLと水100mLを加え、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘキサン=2/1)により精製し、目的とする上記化学式(137)に示される化合物を得た(収量2.07g、収率61.7%)。
1H−NMR、DMSO−d6、δ:4.75(d、J=11.9Hz、2H)、4.93(d、J=11.9Hz、2H)、5.26(d、J=11.5Hz、2H)、5.83(d、J=16.9Hz、2H)、6.10(s、2H)、6.49−6.56(m、6H)、6.64(d、J=7.33Hz、2H)、6.70−6.77(m、6H)、6.82(d、J=7.79Hz、2H)、6.90(d、J=7.33Hz、2H)、7.05−7.14(m、6H)、7.21−7.34(m、8H)、7.41−7.48(m、8H)、7.80(d、J=9.2Hz、2H)、8.08(d、J=7.8Hz、2H)、8.28(d、J=6.9Hz、2H)
下記化学式(138)に示す化合物を以下に示す合成経路(S40)により合成した。
攪拌子を備え、アルゴン置換した100mLのシュレンク管に、前記化学式(136)に示される化合物(1.45g、1.7mmol)、炭酸カリウム(0.94g、6.8mmol)、及びジメチルスルホキシド(20mL)を入れ、攪拌し、3−(クロロメチル)−3−メチルオキセタン(0.615、5.1mmol)を滴下し、密閉した後に、65℃で5時間、攪拌した。その後、反応容器を室温付近まで放冷し、蓋を開け、そこに水(40mL)を入れた。内容物を液ロートに移し、シクロヘキシルペンチルエーテル200mLと水200mLを加え、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/酢酸エチル=10/1)により精製し、目的とする上記化学式(138)に示される化合物を得た(収量1.34g、収率75.2%)。
1H−NMR、DMSO−d6、δ:1.32(s、6H)、3.78(d、J=9.6Hz、2H)、3.90(d、J=9.6Hz、2H)、4.27(d、J=5.5Hz、4H)、4.41−4.44(m、4H)、6.11(s、2H)、6.55−6.58(m、6H)、6.62(d、J=7.8Hz、2H)、6.72(d、J=9.2Hz、4H)、6.84(d、J=7.8Hz、2H)、6.90(d、J=7.4Hz、2H)、7.06−7.22(m、8H)、7.35(t、J=7.8Hz、2H)、7.43−7.46(m、4H)、7.84−7.87(m、2H)、8.10(d、J=7.4Hz、2H)、8.30−8.32(m、2H)
(架橋重合の確認)
ガラス基板上にスピンコートで化合物の薄膜を形成し、加熱乾燥後、スピンコートに用いた溶剤で、薄膜を形成したガラス基板を洗浄した。洗浄前と洗浄後の薄膜の膜厚を比較し、残膜率を算出した。
比較例1として化合物(95)、比較例2として化合物(118)を用いた。
以下に示す実施例1〜3で合成した化合物について残膜率を算出した。。
比較例の化合物は高温で膜質が悪化してしまうため、50℃で30分間の加熱乾燥とした。一方、実施例1〜3の化合物は、高温でも膜質は悪化しないため、200℃で30分間加熱乾燥することができる。比較例1、2は、まったく不溶化せず、残膜率が0%であったのに対し、架橋させた実施例1〜3は、残膜率80%以上と、高い残膜率となった。これにより、実施例1〜3の化合物は、塗布法による積層製膜に耐え得る、不溶化性能を有することが確認された。
(ホールオンリー素子特性)
(比較例3)
陽極であるITOパターン基板上に、PEDOT:PSSをスピンコーターを用いて製膜し、加熱乾燥後、その上に比較例1で合成した化合物が膜厚30nmになるようにスピンコーターを用いて積層した。加熱乾燥後、陰極であるアルミニウムを真空蒸着法にて積層し、さらに、封止膜として、SiOを積層し、ホールオンリー素子を作製した。すなわち、素子構成は、ITO(150nm)/PEDOT:PSS(72nm)/比較例1(30nm)/Al(120nm)/SiO(150nm)である。
陽極であるITOパターン基板上に、PEDOT:PSSをスピンコーターを用いて製膜し、加熱乾燥後、その上に実施例1で合成した化合物が膜厚30nmになるようにスピンコーターを用いて積層した。加熱乾燥し、薄膜を架橋重合させた後、陰極であるアルミニウムを真空蒸着法にて積層し、さらに、封止膜として、SiOを積層し、ホールオンリー素子を作製した。すなわち、素子構成は、ITO(150nm)/PEDOT:PSS(72nm)/実施例1(30nm)/Al(120nm)/SiO(150nm)である。
作製した素子を、有機EL外部量子効率測定装置C9920−12(浜松ホトニクス社製)を用いて、電流密度−電圧(J−V)特性を調べた。
重合性基をもたない比較例1で合成した化合物を用いた比較例3の素子に比べ、重合性基をもたせた実施例1で合成した化合物を架橋重合させた実施例4の素子の方が、電流密度が格段に向上し(すなわち、より多くの正電荷を流し)、J−V曲線の立ち上がりも、より低電圧化していることが確認される。
(比較例4)
陽極であるITOパターン基板上に、PEDOT:PSSをスピンコーターを用いて製膜し、加熱乾燥後、その上に比較例2で合成した化合物が膜厚30nmになるようにスピンコーターを用いて積層した。加熱乾燥後、陰極であるアルミニウムを真空蒸着法にて積層し、さらに、封止膜として、SiOを積層し、ホールオンリー素子を作製した。すなわち、素子構成は、ITO(150nm)/PEDOT:PSS(72nm)/比較例2(30nm)/Al(120nm)/SiO(150nm)である。
陽極であるITOパターン基板上に、PEDOT:PSSをスピンコーターを用いて製膜し、加熱乾燥後、その上に実施例2で合成した化合物が膜厚30nmになるようにスピンコーターを用いて積層した。薄膜を架橋重合させた後、陰極であるアルミニウムを真空蒸着法にて積層し、さらに、封止膜として、SiOを積層し、ホールオンリー素子を作製した。すなわち、素子構成は、ITO(150nm)/PEDOT:PSS(72nm)/実施例2(30nm)/Al(120nm)/SiO(150nm)である。
陽極であるITOパターン基板上に、PEDOT:PSSをスピンコーターを用いて製膜し、加熱乾燥後、その上に実施例3で合成した化合物が膜厚30nmになるようにスピンコーターを用いて積層した。加熱乾燥し、薄膜を架橋重合させた後、陰極であるアルミニウムを真空蒸着法にて積層し、さらに、封止膜として、SiOを積層し、ホールオンリー素子を作製した。すなわち、素子構成は、ITO(150nm)/PEDOT:PSS(72nm)/実施例3(30nm)/Al(120nm)/SiO(150nm)である。
先の実施例4・比較例3の結果と同様、重合性基をもたない比較例2で合成した化合物を用いた比較例4の素子に比べ、重合性基をもつ実施例2および実施例3で合成した化合物を架橋重合させた実施例5および実施例6の素子の方が、全体的に電流密度が高いことが確認された。J−V曲線の立ち上がりは、3V付近では、比較例4の方が電流密度が高いものの、それ以降は実施例5および実施例6が大幅に逆転していることが分かる。
また、実施例5および実施例6は重合性基が異なるものの、同等レベルの特性を示した。
(比較例5)
実施例3で合成した化合物について、架橋しない場合のホールオンリー素子を作製した。
比較例5の素子と、実施例3で合成した化合物を架橋させたホールオンリー素子である実施例6の素子特性の変化を比較評価した。
架橋しない場合の素子に比べ、架橋した場合の素子の方がJ−V曲線の立ち上がりはより低電圧側で起こり、さらに、高電圧側での電流密度は架橋後の素子の方が大幅に向上していることが確認された。
以上の結果より、本発明の化合物は、製膜後の架橋により有機溶剤に対する溶解性が低くなり、塗布プロセスでの積層製膜が可能であることが確認された。また、架橋後の膜の電荷輸送性能は、架橋前の電荷輸送性能を格段に向上させることができる材料を提供することができることが確認された。