JP6451532B2 - ガラス繊維強化プラスチック製設備の保全評価方法 - Google Patents

ガラス繊維強化プラスチック製設備の保全評価方法 Download PDF

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本発明は、ガラス繊維強化プラスチック製設備の保全評価方法に関する。
ガラス繊維強化プラスチック材(Glass Fiber Reinforced Plastics:GFRP)は、汎用性の高い素材であり、機械的な強度は鉄鋼材料の1/10程度であるが、密度が1/5程度と軽量であることから、耐酸・耐薬品性を必要とし、かつ、セラミック・鉄複合材等に比べて軽量な条件で、化学設備に供することが可能である。一般的なGFRPであっても、80℃前後の温度であれば素材の変質は少ないため、塩酸・硫酸などの液体状の酸性物質の貯蔵に好適に用いられる。
また、導入される酸性物質の温度が80℃を大きく超える場合(例えば、350℃程度の二酸化硫黄含有ガス等が導入される場合)においても、GFRP製設備に導入された後に直ちに循環冷却水がフラッシュされることを前提に、耐酸性の付与されたGFRPが設備の内面側に対応する表面上に積層された積層構造のGFRPが、設備の素材として用いられることがある。
一方で、優れた耐酸・耐薬品性を有する素材であるGFRPは、鉄鋼材料のような金属材料とは異なり、一様な減肉などを示さないため、「劣化」という状態を把握することが困難である。例えば、ガラス繊維強化プラスチック製耐食貯槽について規定しているJIS K7012:2013においても、定量的な基準値は存在しておらず、また、変色、膨れ、剥離等のように、GFRPの劣化には様々な要素が考えられる。そのため、どのような状態であれば補修や修繕で対応可能であり、どのような指標が得られた場合には設備の全面的な更新が必要であるかを判定することは、極めて困難である。そのため、従来、ガラス繊維強化プラスチック材の劣化を判定するための方法が、各種提案されている。
例えば、以下の特許文献1には、プラスチック積層品に対しても適用可能な積層品の劣化診断方法として、着目する材料における引張強度、曲げ強度、膨張係数等といった機械的な特性値と強度との関係を予め求めておいた上で、積層品全体の硬度を測定し、積層品の劣化を診断する方法が提案されている。
また、以下の特許文献2には、繊維強化複合材の劣化診断方法として、疑似的に劣化条件を課した繊維強化プラスチック(FRP)を超音波診断し、底面まで到達した反射波が繊維と樹脂の剥離によって生じた欠陥により散乱・減衰することを利用して、劣化を診断する方法が提案されている。
特開平6−331523号公報 特開2008−96340号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示されている方法を、内部に耐酸性の付与されたGFRPが積層された積層型のGFRPに対して適用する場合には、以下のような点が問題となる。すなわち、積層型のGFRPでは、耐酸性を有する層(以下、「耐酸層」ともいう。)の下層には、機械強度を担保するために、ある程度の厚みを有する強化層が設けられている。しかしながら、耐酸層が酸性物質によって侵された後には酸性物質の侵入による膨れ(ブリスター)の発生やガラス繊維自体の劣化が生じるため、強化層が急速に劣化してしまう。酸性物質による侵食速度は速いため、上記特許文献1において主な対象品として着目している紙・フェノール積層品とは異なり、GFRP製設備全体が強度低下に至るまでに、内部に位置する耐酸層は完全に機能喪失に至る可能性が極めて高くなる。従って、上記特許文献1に開示の方法は、高温の酸性物質に曝されるGFRP製設備には適用することはできない。
また、上記特許文献2では、FRPの欠陥要因を加温による繊維と樹脂の剥離に限定しており、かつ、試験材全体を加熱した条件としている。この場合には、酸性物質の浸透により内部からのみ進行する劣化、及び、ガラス繊維の切断を伴う劣化は、単純な樹脂剥離によるブリスターのみに集約することが出来ず、反射波の散乱影響を見間違える可能性がある。また、酸性物質を伴う侵食劣化は、樹脂を大きな体積で欠落させ、ガラス繊維を露出するまでに達することがあるが、上記特許文献2の方法のみでは、板厚減少により強い反射波が返るため、劣化と評価されない場合がある。
このように、従来のGFRPの劣化評価方法では、60〜90℃という高温状態にある酸性物質を取り扱うGFRP製設備の劣化を正確に評価することは出来ないという状況にある。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、60〜90℃という高温状態にある酸性物質を取り扱うGFRP製設備の劣化を正確に評価することが可能な、ガラス繊維強化プラスチック製設備の保全評価方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、60〜90℃の範囲にある酸性物質を取り扱い、当該酸性物質が保持される内面側の表面に耐酸性を有する層が設けられた2層構造のガラス繊維強化プラスチック材で形成された、ガラス繊維強化プラスチック製設備の保全評価方法であって、前記ガラス繊維強化プラスチック製設備の稼働中に、当該設備の外部から赤外線サーモグラフィ測定を行い、前記赤外線サーモグラフィ測定により得られた前記設備の温度分布において、相対的に温度が低くなっている低温部の位置と、相対的に温度が高くなっている高温部の位置と、をそれぞれ複数箇所特定し、複数の前記低温部での平均温度と、複数の前記高温部での平均温度と、の差が、3℃以下となった場合に、前記ガラス繊維強化プラスチック材が劣化したと判断する、ガラス繊維強化プラスチック製設備の保全評価方法が提供される。
前記低温部の位置が特定できない場合に、前記設備の温度分布において、前記赤外線サーモグラフィ測定の測定範囲全域で温度の標準偏差を算出し、算出した前記標準偏差が1.5以下である場合に、前記ガラス繊維強化プラスチック材が劣化したと判断することが好ましい。
前記ガラス繊維強化プラスチック製設備の稼働中に、前記赤外線サーモグラフィ測定の結果に基づき前記ガラス繊維強化プラスチック材が劣化したと判断される箇所について、当該設備の外部から超音波測定を更に行い、前記超音波測定の測定結果において、前記ガラス繊維による反射波が観測されるガラス繊維反射領域と、前記ガラス繊維強化プラスチック材の厚みに対応する位置からの反射波が観測される厚み反射領域と、をそれぞれ特定し、前記ガラス繊維反射領域、又は、前記厚み反射領域の少なくとも何れかにおいて、前記反射波の観測されない領域の長さが測定を行った長さの30%以上である場合に、前記ガラス繊維強化プラスチック材が厚み方向全体で劣化したと判断することが好ましい。
前記ガラス繊維強化プラスチック製設備の停止時に、前記耐酸性を有する層のバーコル硬度を測定し、得られた前記バーコル硬度が15以下である場合に、少なくとも前記耐酸性を有する層の張り替えが必要であると判断してもよい。
以上説明したように本発明によれば、60〜90℃という高温状態にある酸性物質を取り扱うGFRP製設備の劣化を正確に評価することが可能となる。
高温耐酸対応ガラス繊維強化プラスチック製設備の一例を模式的に示した説明図である。 高温耐酸対応ガラス繊維強化プラスチックの層構造を模式的に示した説明図である。 同実施形態に係る高温耐酸対応ガラス繊維強化プラスチック製設備の赤外線サーモグラフィ測定結果の一例を示した説明図である。 同実施形態に係る高温耐酸対応ガラス繊維強化プラスチック製設備の赤外線サーモグラフィ測定結果の一例を示した説明図である。 ガラス繊維強化プラスチックの構造の一例を模式的に示した説明図である。 同実施形態に係る高温耐酸対応ガラス繊維強化プラスチック製設備の赤外線サーモグラフィ測定結果の一例を模式的に示した説明図である。 同実施形態に係る高温耐酸対応ガラス繊維強化プラスチック製設備の赤外線サーモグラフィ測定結果の一例を模式的に示した説明図である。 同実施形態に係る高温耐酸対応ガラス繊維強化プラスチック製設備の超音波測定結果の一例を示した説明図である。 同実施形態に係る高温耐酸対応ガラス繊維強化プラスチック製設備の超音波測定結果の一例を示した説明図である。 同実施形態に係る高温耐酸対応ガラス繊維強化プラスチック製設備の超音波測定結果の一例を模式的に示した説明図である。 同実施形態に係る高温耐酸対応ガラス繊維強化プラスチック製設備の超音波測定結果の一例を模式的に示した説明図である。 同実施形態に係る高温耐酸対応ガラス繊維強化プラスチック製設備の保全評価方法の流れの一例を示した流れ図である。 同実施形態に係る高温耐酸対応ガラス繊維強化プラスチック製設備の保全評価方法の流れの一例を示した流れ図である。 同実施形態に係る高温耐酸対応ガラス繊維強化プラスチック製設備の保全評価方法の別の一例を説明するための説明図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(積層構造を有するGFRPとその劣化について)
本発明の実施形態に係るガラス繊維強化プラスチック製設備の保全評価方法について説明するに先立ち、本発明の実施形態で着目する積層構造を有するGFRPとその劣化について、以下で詳細に説明する。
先だって説明したように、GFRPは、優れた耐酸・耐薬品性を有し、軽量な条件で化学設備に供することが可能であることから、汎用的な部材として広く用いられている。以下で詳述する本発明の実施形態では、60〜90℃という高温状態にある酸性物質が取り扱われる設備の素材としてGFRPが用いられる場合に、かかるGFRPの劣化を評価する方法に着目している。
このような設備の例として、例えば図1に模式的に示したような、酸性物質含有ガスの冷却吸収設備を挙げることができる。図1は、高温耐酸対応ガラス繊維強化プラスチック製設備の一例を模式的に示した説明図である。
図1では、酸性物質である二酸化硫黄含有ガスが導入されるガス処理・硫酸製造設備を例に挙げて、図示を行っている。この設備では、約350℃という高温で二酸化硫黄含有ガスが第1冷却塔101に導入されるが、図1に示したように、直ちに循環冷却水がフラッシュされることを前提として、操業温度が最高90℃の塔として設定される。この第1冷却塔101において、フラッシュされた循環冷却水は、ポンプ105によって第1冷却塔101から引き抜かれて、循環利用される。冷却された二酸化硫黄含有ガスは、第1冷却塔101の上部から第2冷却塔103へと導入される。この第2冷却塔103においても、直ちに循環冷却水がフラッシュされることで、二酸化硫黄含有ガスが冷却される。二酸化硫黄含有ガスは、50℃以下の低温となるまで冷却されて、排ガスが第2冷却塔103の上部から排出され、後工程で処理される。フラッシュされた循環冷却水は、ポンプ105によって第2冷却塔103から引き抜かれ、循環水クーラー107によって冷却された後に、循環利用される。
図1に示したようなガス処理・硫酸製造設備の第1冷却塔101及び第2冷却塔103は、冷却されることで硫酸が生成される二酸化硫黄含有ガスを取り扱うために、GFRPを材料に用いる。また、第1冷却塔101に導入された後の二酸化硫黄含有ガスの温度は、設定温度で約90℃であり、第2冷却塔103に導入された後の二酸化硫黄含有ガスの温度は、設定温度で約70℃と、GFRPが用いられる環境としては、高温の状態が設定されている。そのため、冷却塔の内面側となるGFRPの表面には、高温耐酸性を付与するために、耐酸性の付与されたGFRPの層が内張りされている。
図2は、高温耐酸対応ガラス繊維強化プラスチックの層構造を模式的に示した説明図である。図2に模式的に示したように、このような冷却塔で用いられるGFRPは、外壁側(大気側)から約4/5程度の厚みまでは、汎用のGFRPを用いた層(GFRP層)が強化層として設けられている。また、内壁側(酸性物質側)に位置するGFRPの表面には、硫酸酸性のミスト・ベーパーに対応して、ガラス繊維・樹脂マトリックスともに耐酸性の付与されたGFRP樹脂が、耐酸性GFRP層として全体の約1/5程度の厚みでライニングされている。
しかしながら、図2に示したような耐酸性GFRP層を設けた2層構造の高温耐酸対応GFRPを用いた場合であっても、図1に示した第1冷却塔101への二酸化硫黄含有ガスの導入部分等は、高温耐酸対応GFRPの損傷が顕著な部位となる。
ここで、クラッド鋼のような一般鋼を用いた積層金属材により冷却塔を製造した場合には、内部耐酸金属が劣化すると、非常に短期間に、強度材である一般鋼が腐食減肉して、貫通に至ってしまう。しかしながら、図2に示したような、耐酸性の内部被覆が存在するGFRPの場合、耐酸性の内部被覆における耐酸機能の低下が、直ちにGFRPの剥離や消失となる場合は少ない。また、強化層として用いられる汎用的なGFRPもある程度の耐酸性を有しており、かつ、機能低下が生じているものの厚みを有している強化層によって、熱負荷も遮断される。そのため、積層金属材の場合とは異なり、高温耐酸対応GFRPを用いた場合には、劣化によって直ちに貫通穴が生じたり、強度低下が起こったりすることはない。
更に、図2に示したような高温耐酸仕様の2層構造のGFRPを用いる、図1に示したような環境下では、劣化要因である酸性物質の侵入方向は、内壁側から外壁側に向かう向きに限られる。そのため、図2に示したような高温耐酸仕様の2層構造のGFRPを用いた場合、劣化の度合いを外部からの測定で把握することは、困難となる。
例えば、GFRPの酸劣化に最も有用な指標であるバーコル硬度を、設備の内面(内壁側の面)及び外面(外壁側の面)の双方で測定した場合、内面側のバーコル硬度がほぼ完全劣化と判断される状況にあっても、外面側のバーコル硬度は、新品に相当するような硬度を示していることが多い。このような状態で「内面から外面に至る」サンプルを採取して機械強度を測定したとしても、外面の健全な強化層により合格相当の数値が出て、劣化を見落とす懸念がある。
また、バーコル硬度は、測定対象物に測定器を直接接触させてしか測定できないため、設備の稼働中には、耐酸性GFRP層の測定を行うことができない。また、バーコル硬度の測定は、局所的に行われるものであるため、広い範囲を一括して評価することは出来ない。また、バーコル硬度の測定後は、設備の壁面に孔が空くため、樹脂を補てんする復旧作業も必要となる。
そのため、高温状態にある酸性物質を取り扱う、耐酸層が内張りされたGFRP製の塔槽類において、設備の劣化程度を判定する有効な方法が希求されている状況にある。
そこで、本発明者は、高温・強酸性の操業条件でありながら、長期連続運転を前提とし、設備停止・点検期間が十分にとれないようなGFRP製設備に対して、稼働中であっても高温耐酸対応GFRP製設備の劣化を評価することが可能な方法について鋭意検討を行った結果、以下で説明するような方法に想到した。
(実施形態)
<高温耐酸対応GFRP製設備の保全評価方法について>
以下では、本発明の実施形態に係る高温耐酸対応GFRP製設備の保全評価方法について、かかる保全評価方法に想到するまでに得られた知見を提示しつつ、図3A〜図8Bを参照しながら詳細に説明する。
図3A及び図3Bは、本実施形態に係る高温耐酸対応ガラス繊維強化プラスチック製設備の赤外線サーモグラフィ測定結果の一例を示した説明図である。図4は、ガラス繊維強化プラスチックの構造の一例を模式的に示した説明図である。図5A及び図5Bは、本実施形態に係る高温耐酸対応ガラス繊維強化プラスチック製設備の赤外線サーモグラフィ測定結果の一例を模式的に示した説明図である。図6A及び図6Bは、本実施形態に係る高温耐酸対応ガラス繊維強化プラスチック製設備の超音波測定結果の一例を示した説明図である。図7A及び図7Bは、本実施形態に係る高温耐酸対応ガラス繊維強化プラスチック製設備の超音波測定結果の一例を模式的に示した説明図である。図8A及び図8Bは、本実施形態に係る高温耐酸対応ガラス繊維強化プラスチック製設備の保全評価方法の流れの一例を示した流れ図である。
[温度特徴量に基づくGFRPの劣化判定]
設備が稼働中であっても可能な非破壊検査として、例えば、赤外線を用いた赤外線サーモグラフィ検査が知られている。従来、赤外線サーモグラフィ検査は、主に異物や膨張により、本来の材料とは異なる熱透過や反射を示す状態を検知するために用いられてきている。従来の赤外線サーモグラフィ検査は、検査対象物を透過する赤外線の状態を測定するために、塔槽類の内部に光源を配置したり、外部から間欠光源を照射したりすることで、実施されている。しかしながら、このような赤外線サーモグラフィは、材質の厚みが均一であり、かつ、繊維配置も規則性が高い、炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics:CFRP)製の設備に有用な方法であり、厚みが不均一で、また、繊維組成や繊維配置にもばらつきの多い、図2に示したような2層構造のGRFP製設備の劣化判定には不適であった。
しかしながら、赤外線サーモグラフィは、測定に使用する赤外線カメラの視野内であれば、広い範囲を一括評価可能であり、また、温度データは所望の点ごとに測定・表示が可能であることで、迅速な評価が可能な方法である。そのため、本発明者は、GRFP製設備に対しても赤外線サーモグラフィを適用できる測定評価法を考案した。
本実施形態で着目するGFRP製設備には、高温状態にある酸性物質が導入され、例えば図1に示した設備では、第1冷却塔101の外壁の表面温度が60〜65℃程度となっており、第2冷却塔103の外壁の表面温度が40〜45℃程度となっている。冷却塔の外壁における表面温度が上記のような値を示すということは、設備内に保持される酸性物質が十分に高温であることを示している。本実施形態で着目するようなGFRP製設備では、設備内に保持される流体が十分に高温であるため、従来のように外部光源を設置することなく、赤外線サーモグラフィの測定が可能となる。
図3Aは、図1に示した第1冷却塔101における二酸化硫黄含有ガスの導入部分の近傍を施設の稼働中に赤外線カメラにより撮像することで得られた、赤外線サーモグラフィの測定結果であり、図3Bは、図1に示した第2冷却塔103における二酸化硫黄含有ガスの導入部分の近傍を施設の稼働中に赤外線カメラにより撮像することで得られた、赤外線サーモグラフィの測定結果である。
図3A及び図3Bにおいて、画像の色調が薄い部分ほど温度が高いことを表わし、色調が濃い部分ほど温度が低いことを表わす。また、図3A及び図3Bにおいて、画像の縦方向が冷却塔の高さ方向に対応しており、画像の横方向が、冷却塔の周方向に対応している。なお、図3A及び図3Bともに、画像の下方に円弧状の黒い部分が写っているが、これは、冷却塔の保守・点検のために作業員が出入りするための出入口である。
図3A及び図3Bともに、赤外線サーモグラフィの撮像画像には、相対的に温度が高い状態にある高温部と、相対的に温度の低い状態にある低温部と、が存在していることがわかる。また、より高温の状態にある第1冷却塔101を撮像した図3Aの赤外線サーモグラフィの撮像画像に顕著であるが、高温部のみが集まっている部分(図3Aにおける図中左側の部分)と、高温部と低温部とが混在している部分(図3Aにおける図中右側の部分)と、が存在している。また、図3Bにおいても、図3Bにおける図中左側下方の部分のように、高温部のみが集まっている部分と、図3Bにおける中央部分のように、高温部と低温部とが混在している部分が存在している。
ここで、図3A及び図3Bを注視すると、高温部と低温部とが混在している部分は、縦横に走る筋状の模様となっており、縦横に走る筋の交点に当たる位置が、更に温度が低い状態にあることが明らかとなった。このような縦横に走る筋が観測されることについて、検討したところ、縦横に走る筋は、図4に模式的に示したようなGFRPの構造に由来しているものと推定された。
すなわち、GFRPは、図4に模式的に示したように、樹脂マトリックス中に、網目状に設けられたガラス繊維が保持されたような構造を有している。ガラス繊維は、耐熱性を示す素材であるため、ガラス繊維に対応する部分では、周囲の樹脂マトリックスと比べて内壁側から外壁側へと伝わる熱量は小さくなる。従って、複数のガラス繊維が交差している交差部では、必然的に外壁側へと伝わる熱量はより小さくなり、図3A及び図3Bに示したような、より温度の低い点(以下、「クールスポット」と称する。)が現れると考えられる。
一方で、図3A及び図3Bを注視すると、高温部のみが集まっている部分では、縦横に走る筋は薄く、上記のようなクールスポットもはっきりと認識できないことがわかる。
以上のような考察から、本発明者は、以下のような知見を得た。すなわち、GFRP(特に、内壁側の耐酸性GFRP層)が健全な状態にあれば、耐熱性を有するガラス繊維によって高温の酸性物質からの放射熱は遮断され、赤外線サーモグラフィで測定される温度は低くなる一方で、樹脂マトリックスに対応する位置では、遮断される熱量は相対的に高くなり、高温部と低温部とで、ある程度の温度差が生じることとなる。一方で、GFRP(特に、内壁側の耐酸性GFRP層)の劣化が生じると、ガラス繊維によって遮断される熱量も小さくなっていき、劣化の進行に伴って高温部と低温部との温度差も小さくなると考えられる。
図5Aは、図3Aに示した赤外線サーモグラフィの撮像画像における「縦横に走る筋」の様子を模式的に示したものであり、図5Bは、図3Bに示した赤外線サーモグラフィの撮像画像における「縦横に走る筋」の様子を模式的に示したものである。
本発明者は、上記知見に基づき、図5Aにおける、高温部と低温部の混在する部分に対応する領域Aと、高温部のみが集まっている部分に対応する領域Bと、について、それぞれの領域で6点の温度を測定した。なお、領域Aでは、高温部として、最も高温を示す部分から順に3点を選択するとともに、低温部として、最も低温を示す部分から順に3点を選択し、これら計6点について、温度を測定し、領域Bにおいては、高温部6点の温度を測定した。同様に、図5Bにおける、高温部と低温部の混在する部分に対応する領域Cについて、高温部3点と低温部3点の6点について温度を測定した。
得られた温度の測定結果を利用して、各領域について、高温部の平均温度と、低温部の平均温度と、の差を算出した。その結果、高温部と低温部とが混在する部分に対応する領域A及び領域Cでは、内部に保持されている酸性物質の温度が異なるにも関わらず、高温部の平均温度と低温部の平均温度の温度差は、それぞれ、4.33℃、4.30℃となった。それに対し、高温部のみが集まっている部分に対応する領域Bでは、高温部の平均温度と低温部の平均温度の温度差は、0.37℃であった。また、同様の操業条件を有する他のGFRP設備について、同様の検証を行ったところ、上記のような温度差は、同様の傾向を示した。
このような知見から、本発明者は、ガラス繊維に起因して熱遮蔽された、と判定するには、3℃超過の温度差があればよいことに想到した。上記の知見から、高温部と低温部とが混在する部分は、GFRPが健全な状態にあると考えられる部分である。従って、本実施形態に係るGFRP製設備の保全評価方法によれば、(1)GFRP製設備の稼働中に、設備の外部から赤外線サーモグラフィ測定を行い、(2)赤外線サーモグラフィ測定により得られた設備の温度分布において、相対的に温度が低くなっている低温部の位置と、相対的に温度が高くなっている高温部の位置と、をそれぞれ複数箇所特定し、(3)複数の低温部での平均温度と、複数の高温部での平均温度と、の差が、3℃以下となった場合に、GFRPが劣化したと判断可能であることが判明した。
また、図3A及び図3Bに示したような赤外線サーモグラフィの測定結果において、高温部、低温部によらず、全測定点の温度の標準偏差を算出した。すると、高温部と低温部とが混在する部分に対応する領域A及び領域Cでは、温度の標準偏差がそれぞれ2.18、2.64となったのに対し、高温部のみが集まった部分に対応する領域Bでは、温度の標準偏差が0.23となった。また、同様の操業条件を有する他のGFRP設備について、同様の検証を行ったところ、上記のような温度の標準偏差は、同様の傾向を示した。
このような知見から、本発明者は、ガラス繊維に起因して熱遮蔽された、と判定するには、温度の標準偏差が1.5超過であればよいことに想到した。そこで、本実施形態に係るGFRP製設備の保全評価方法によれば、低温部の位置が特定できない場合であっても、設備の温度分布において、赤外線サーモグラフィ測定の測定範囲全域で温度の標準偏差を算出し、算出した標準偏差が1.5以下である場合に、GFRPが劣化したと判断可能であることが判明した。
このように、本実施形態に係るGFRP製設備の保全評価方法では、設備の内部に保持されている酸性物質が高温であることを利用して、赤外線サーモグラフィの測定結果から、高温部と低温部との平均温度の差や、温度の標準偏差といった温度特徴量を算出し、かかる温度特徴量に基づいてGFRPの劣化を判断することが可能となる。
なお、赤外線サーモグラフィの測定に用いられる赤外線カメラ等の測定機器は、特に限定されるものではなく、公知の様々な測定機器を利用することが可能である。
[超音波特徴量に基づくGFRPの劣化判定]
赤外線サーモグラフィでガラス繊維の劣化が判断しづらい理由としては、ガラス繊維の溶融や消失は考えにくく、ガラス繊維からの樹脂の剥離や、樹脂の剥離部分における膨張などによると考えられる。このようなガラス繊維に生じている現象を適正に把握するためには、フェーズドアレイ超音波探傷器などの公知の超音波測定器を利用することが有用である。一方で、超音波測定は、赤外線サーモグラフィとは異なり、広い範囲を一括して測定できる方法ではないため、超音波測定の適用方法に検討の余地がある。
そこで、本発明者は、超音波測定を上記のような赤外線サーモグラフィと併用し、平均温度差や温度の標準偏差といった上記のような温度特徴量に基づき「劣化」と判定された箇所を集中して超音波測定することで、超音波測定の実施効率を向上させるだけでなく、GFRPのような不均質素材での適用が困難な減衰率等の指標に依らずとも、GFRPの劣化を判定可能な方法を考案した。
図6Aは、図3Aにおいて、高温部と低温部とが混在している部分(すなわち、GFRPが劣化していないと判断される部分)の超音波測定を実施した結果であり、図6Bは、図3Aにおいて、高温部のみが集中している部分(すなわち、GFRPが劣化していると判断される部分)の超音波測定を実施した結果である。
図6A及び図6Bにおいて、図中の縦方向が冷却塔の厚み方向に対応し、図中の下方向がGFRPの内壁側に対応し、図中の上方向がGFRPの外壁側に対応している。また、図中の横方向は、超音波測定器を走査した方向であって、冷却塔の周方向に対応している。図6A及び図6Bにおいて、色調の濃い部分ほど、強い反射波が観測されている場所を意味しており、色調の薄い部分ほど、弱い反射波が観測されている場所を意味している。
上記特許文献2に開示されているような超音波を用いた方法では、対象であるFRPが均質である他に、加熱負荷を全面に付与したサンプルを測定するものであり、本実施形態で着目しているような、耐酸性GFRP層が設けられている内壁側からのみ、熱や酸の負荷がかかる状況では、定量性を確保することは極めて困難となる。しかしながら、上記のような赤外線サーモグラフィにおいて、高温部と低温部とが混在する部分と、高温部のみが集中している部分とは、明らかに異なる反射波の状況を示すことが明らかとなった。
図6Aを参照すると、高温部と低温部とが混在している部分では、図中に実線で囲った領域のように、2つの大きな反射波が観測されていることがわかる。このうち、図の下方に位置する強反射領域は、GFRPの底面(すなわち、GFRP製設備の内表面)に対応する位置からの反射波が観測されていると考えられる。また、図の上方に位置する強反射領域は、GFRPに含まれるガラス繊維による反射波が観測されていると考えられる。以下では、GFRPの底面からの反射波が観測される領域を、GRFPの厚みに相当する位置からの反射波が観測される領域ということで「厚み反射領域」と称することとし、ガラス繊維による反射波が観測される領域を、「ガラス繊維反射領域」と称することとする。
一方で、高温部のみが集中している部分を超音波測定した図6Bでは、ガラス繊維反射領域や、厚み反射領域において、強い反射波が観測される領域は、図中に実線で囲った領域のように分布しており、また、反射波の信号が乱れて反射波を確認できない領域が存在していることがわかる。
図7Aは、図6Aに示した超音波測定結果におけるガラス繊維反射領域と厚み反射領域の反射波強度の様子を模式的に示したものであり、図7Bは、図6Bに示した超音波測定結果におけるガラス繊維反射領域と厚み反射領域の反射波強度の様子を模式的に示したものである。いま、図7Aに示したように、超音波測定を実施した長さをLと表わすこととし、着目しているライン(超音波測定の走査方向に対して平行なライン)において反射波が確認できない部位(以下、「欠落部」と称する。)のそれぞれの長さをLと表わすこととする。
図6A及び図7Aにおいて、厚み反射領域において、ある着目したラインにおける全測定長Lに対する、欠落部の長さLの和ΣLの割合(以下では、「欠落率」と称する。)を算出すると、厚み反射領域ではほぼ0%であり、ガラス繊維領域では約10%であった。一方、図6B及び図7Bにおいて、同様にして欠落率を算出すると、厚み反射領域では約70%であり、ガラス繊維反射領域では約40%であった。また、同様の操業条件を有する他のGFRP設備について、同様の検証を行ったところ、上記のような欠落率の値は、同様の傾向を示した。
先だって説明したようなGFRPの劣化形態から考えて、上記のような欠落部は、劣化によって、高温の酸性物質の気体や液体がGFRP内に侵入してきた結果、樹脂マトリックス内に気泡が発生したり、層の剥離が生じたりするなどして、超音波が散乱・減衰した結果生じたものと考えられる。従って、本発明者は、上記のような欠落率をGFRPの劣化判定に利用可能であると考えた。
図6B及び図7Bで得られたような知見から、本発明者は、ガラス繊維反射領域、又は、厚み反射領域の少なくとも何れかにおいて、欠落率が30%以上であった場合に、GFRPが劣化したと判断できることに想到した。そこで、本実施形態に係るGFRP製設備の保全評価方法によれば、ガラス繊維反射領域、又は、厚み反射領域の少なくとも何れかにおいて、欠落率が30%以上である場合に、GFRPが厚み方向全体で劣化したと判断可能であることが判明した。
このように、本実施形態に係るGFRP製設備の保全評価方法では、赤外線サーモグラフィの測定結果から劣化が生じていると判断される部位について更に超音波測定を行い、超音波測定結果から得られる欠落率という超音波特徴量に着目することで、劣化がGFRPの厚み方向全体で生じているか否かを判断することが可能となる。
なお、超音波測定に用いられるフェーズドアレイ超音波探傷器等の測定機器は、特に限定されるものではなく、公知の様々な測定機器を利用することが可能である。
[GFRP製設備の保全評価方法の流れの一例]
本実施形態に係るGFRP製設備の保全評価方法は、以上説明したように、広い範囲の領域を一括して測定することが可能な赤外線サーモグラフィの測定結果に着目し、高温部と低温部とが混在し、温度差が大きいところほど、GFRPの劣化は生じていないという本発明者によって新たに得られた知見に基づき、温度特徴量によってGFRPの劣化が判断される。その上で、GFRPが劣化していると判断される部位について、局所的な測定を行うことが可能な超音波測定を実施し、測定結果から得られる超音波特徴量に基づき、GFRPの劣化が厚み全体にわたっているか否かを判断することができる。
このようなGFRP製設備の保全評価方法の流れの一例を、図8A及び図8Bに示した。本実施形態に係るGFRP製設備の保全評価方法では、まず、対象となるGFRP製設備の稼働中に、設備の外側から赤外線サーモグラフィを測定する(ステップS101)。続いて、得られた赤外線サーモグラフィの測定結果を利用して、高温部と低温部との間の平均温度差や、測定全域における温度の標準偏差等といった、温度特徴量を算出する(ステップS103)。その後、得られた温度特徴量が、上記のような閾値以下であるか否かの判断を行う(ステップS105)。
温度特徴量が閾値超過である場合には、着目しているGFRP製設備では、GFRPの劣化は、赤外線サーモグラフィで測定される程度には生じていないと判断することができる。そのため、この段階で、GFRP製設備の保全評価方法を終了しても良いが、図8AにおけるステップS107〜ステップS115に示したように、念のために更なる超音波測定を実施してもよい。
すなわち、対象となるGFRP製設備の稼働中に、赤外線サーモグラフィの測定結果において、念のために確認をしておきたい部位を特定し、設備の外側から超音波測定を実施する(ステップS107)。続いて、得られた超音波測定結果から、欠落率という超音波特徴量を算出する(ステップS109)。その後、得られた超音波特徴量が、上記のような閾値以上であるか否かの判断を行う(ステップS111)。
超音波特徴量である欠落率が閾値未満である場合には、GFRPは正常であると判断することができる(ステップS113)。一方で、超音波特徴量である欠落率が閾値以上である場合には、GFRPは正常であると判断できるものの、定期的な観察が必要であると判断することができる(ステップS115)。
一方、ステップS105において、温度特徴量が閾値以下である場合には、着目しているGFRP製設備において、GFRPの劣化が生じていると判断することができる。そこで、劣化の進行度合いを更に検査するために、ステップS117〜ステップS125に示したように、赤外線サーモグラフィの測定結果において、劣化が生じていると判断された部位に対して、超音波測定が実施される。
この場合、対象となるGFRP製設備の稼働中に、赤外線サーモグラフィの測定結果において劣化が生じている部位を特定し、設備の外側から超音波測定を実施する(ステップS117)。続いて、得られた超音波測定結果から、欠落率という超音波特徴量を算出する(ステップS119)。その後、得られた超音波特徴量が、上記のような閾値以上であるか否かの判断を行う(ステップS121)。
超音波特徴量である欠落率が閾値未満である場合には、GFRPの一部に劣化が始まっていると判断することができる(ステップS123)。一方で、超音波特徴量である欠落率が閾値以上である場合には、GFRPは厚み全体に劣化が生じていると判断することができる(ステップS125)。
このように、本実施形態に係るGFRP製設備の保全評価方法では、GFRPの劣化が2つの非破壊検査で裏付けされることで、解体・破壊検査を実施しなくとも、設備の補修や更新に関する判定を行うことが可能である。
なお、上記のようなGFRP製設備の保全評価方法は、赤外線サーモグラフィの測定結果及び超音波測定結果を利用して、設備の管理者自身が測定結果を処理した上で、電卓やコンピュータ等を利用して特徴量を算出し、管理者自身が判定を行っても良い。また、上記のようなGFRP製設備の保全評価方法は、赤外線サーモグラフィの測定結果及び超音波測定結果が入力される、パーソナルコンピュータやビジネスコンピュータや各種サーバ等といった様々な情報処理装置により、全て実施されてもよい。
GFRP製設備の保全評価方法が各種の情報処理装置により実施される場合には、かかる情報処理装置では、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)といったハードウェア資源が互いに連携することで、測定結果を表わすデータの取得機能、温度特徴量の算出機能、超音波特徴量の算出機能、劣化の有無を評価する評価機能といった、GFRP製設備の保全評価方法に関する様々な機能が実現される。これらの機能が互いに連携することで、着目しているGFRP製設備について、劣化の有無が自動的に判断され、その結果が、ディスプレイ等を介して視覚的に外部へと出力されたり、印刷物として外部へと出力されたり、様々な他の情報処理装置へデータとして出力されたりする。
[変形例]
図2に示したような2層構造を有するGFRPでは、まず、内壁側に位置する耐酸性GFRP層が劣化し、高温状態にある酸の液体や気体が侵入することで劣化が進行していき、最後には、耐酸性GFRP層の外壁側に位置しているGFRP層が劣化していく。そのため、以上説明したような2種類の非破壊検査を利用した保全評価方法により耐酸性GFRP層の劣化をいち早く検知し、耐酸性GFRP層を張り替えるなどして設備の健全さを保持していれば、GFRP層の劣化を長期にわたって抑制できる可能性が高い。しかしながら、耐酸性GRFP層にのみ生じている劣化を判定するには、上記のような2つの非破壊検査を複合しても困難であり、設備が停止している際に実施するバーコル硬度測定に依らざるをえない。
バーコル硬度は、GFRPの品質管理で多く使用される測定方法であり、所定の形状を有する圧子を測定対象とするものに押しつけ、その最大値を測定する方法であり、得られる硬度は、押し込み硬度の一種である。このバーコル硬度は、公知のバーコル硬度計を利用することで測定可能である。
一般的に、GFRP製設備における通常製造時のバーコル硬度基準値は30程度であり、安全を考慮して、バーコル硬度が40〜45となるように製造されることが多い。そのため、測定したバーコル硬度の値が15以下であれば、耐酸性GFRP層が劣化し、補修が必要であると判断することができ、測定したバーコル硬度の値が5以下であれば、耐酸性GFRP層の張り替えが必須であると判断することができる。
バーコル硬度の測定は、設備を停止することで行われる開放検査であり、かかる開放検査の実施時期は、設備の運転状況に応じて決まるため、周期が定まっていない場合がある。その場合であっても、上記のような2種類の非破壊検査に基づく保全評価方法を定期的に実施して、設備の現況を随時把握することで、バーコル硬度測定のような開放検査や、その結果による耐酸性GFRP層の更新を計画することができる。そのため、結果として非破壊検査で検知されるGFRP層の劣化そのものを長期的に抑制することが可能となり、保全効果としてフィードバックが期待できる。
また、上記のような2種類の非破壊検査と、バーコル硬度測定とを組み合わせることで、より複雑な保全評価方法を実現することが可能となる。図9は、本実施形態に係る高温耐酸対応GFRP製設備の保全評価方法の別の一例を説明するための説明図である。
図9に示した保全評価方法では、赤外線サーモグラフィ測定及び超音波測定という2種類の非破壊検査で分類されうる4種類の状況を、内壁側に位置する耐酸性GFRP層(耐酸層)のバーコル硬度測定結果に応じて更に2つに分類し、計8種類の状況を考慮している。
すなわち、温度特徴量が閾値超過であり、超音波特徴量である欠落率が閾値未満であり、かつ、バーコル硬度が15超過である場合には、GFRPは正常であり、設備を継続して使用可能であると判断することができる。一方、温度特徴量が閾値超過であり、超音波特徴量である欠落率が閾値未満であり、かつ、バーコル硬度が15以下ある場合には、耐酸性GFRP層(耐酸層)のみが劣化したと判断することができ、耐酸層の張り替えを検討すればよい。
温度特徴量が閾値超過であり、超音波特徴量である欠落率が閾値以上であり、かつ、バーコル硬度が15超過である場合には、GFRPは正常であるものの、定期観察が必要であると判断することができる。一方、温度特徴量が閾値超過であり、超音波特徴量である欠落率が閾値以上であり、かつ、バーコル硬度が15以下ある場合には、耐酸性GFRP層(耐酸層)のみが劣化したと判断することができ、耐酸層の張り替えを検討すればよい。
また、温度特徴量が閾値以下であり、超音波特徴量である欠落率が閾値未満であり、かつ、バーコル硬度が15超過である場合には、GFRPの劣化が開始したと判断することができ、設備の継続使用は可能であるものの、定期観察が必要であると判断することができる。一方、温度特徴量が閾値以下であり、超音波特徴量である欠落率が閾値未満であり、かつ、バーコル硬度が15以下ある場合には、GFRP層に劣化が生じていると判断し、設備の全面更新を検討すればよい。
更に、温度特徴量が閾値以下であり、超音波特徴量である欠落率が閾値以上であり、かつ、バーコル硬度が15超過である場合には、高温状態にある酸性物質以外の要因でGFRPが劣化したと判断することができる。この場合においても、設備の機械的な強度の低下が想定されるが、劣化部位に対してバンドを巻きつけるなど、強度補強対策を検討すればよい。一方、温度特徴量が閾値以下であり、超音波特徴量である欠落率が閾値以上であり、かつ、バーコル硬度が15以下ある場合には、GFRP層に劣化が生じていると判断し、設備の全面更新を検討すればよい。
以上、本実施形態に係る高温耐酸対応GFRP製設備の保全評価方法の別の一例について、簡単に説明した。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
101 第1冷却塔
103 第2冷却塔
105 ポンプ
107 循環水クーラー

Claims (4)

  1. 60〜90℃の範囲にある酸性物質を取り扱い、当該酸性物質が保持される内面側の表面に耐酸性を有する層が設けられた2層構造のガラス繊維強化プラスチック材で形成された、ガラス繊維強化プラスチック製設備の保全評価方法であって、
    前記ガラス繊維強化プラスチック製設備の稼働中に、当該設備の外部から赤外線サーモグラフィ測定を行い、
    前記赤外線サーモグラフィ測定により得られた前記設備の温度分布において、相対的に温度が低くなっている低温部の位置と、相対的に温度が高くなっている高温部の位置と、をそれぞれ複数箇所特定し、
    複数の前記低温部での平均温度と、複数の前記高温部での平均温度と、の差が、3℃以下となった場合に、前記ガラス繊維強化プラスチック材が劣化したと判断する、ガラス繊維強化プラスチック製設備の保全評価方法。
  2. 前記低温部の位置が特定できない場合に、前記設備の温度分布において、前記赤外線サーモグラフィ測定の測定範囲全域で温度の標準偏差を算出し、
    算出した前記標準偏差が1.5以下である場合に、前記ガラス繊維強化プラスチック材が劣化したと判断する、請求項1に記載のガラス繊維強化プラスチック製設備の保全評価方法。
  3. 前記ガラス繊維強化プラスチック製設備の稼働中に、前記赤外線サーモグラフィ測定の結果に基づき前記ガラス繊維強化プラスチック材が劣化したと判断される箇所について、当該設備の外部から超音波測定を更に行い、
    前記超音波測定の測定結果において、前記ガラス繊維による反射波が観測されるガラス繊維反射領域と、前記ガラス繊維強化プラスチック材の厚みに対応する位置からの反射波が観測される厚み反射領域と、をそれぞれ特定し、
    前記ガラス繊維反射領域、又は、前記厚み反射領域の少なくとも何れかにおいて、前記反射波の観測されない領域の長さが測定を行った長さの30%以上である場合に、前記ガラス繊維強化プラスチック材が厚み方向全体で劣化したと判断する、請求項1又は2に記載のガラス繊維強化プラスチック製設備の保全評価方法。
  4. 前記ガラス繊維強化プラスチック製設備の停止時に、前記耐酸性を有する層のバーコル硬度を測定し、
    得られた前記バーコル硬度が15以下である場合に、少なくとも前記耐酸性を有する層の張り替えが必要であると判断する、請求項1〜3の何れか1項に記載のガラス繊維強化プラスチック製設備の保全評価方法。
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