JP6592754B1 - Frpの劣化診断方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】FRPの劣化による機械的強度の低下の有無を、非破壊的、かつ、正確に検査し得るFRPの劣化診断方法を提供する。【解決手段】FRP対照サンプル3及びFRP劣化サンプル4について、パルス光源2aを熱源として光を照射し、赤外線サーモグラフィー1を使用して表面温度変化を測定する。その後、FRP対照サンプル及びFRP劣化サンプルについて機械的強度を測定する。FRPサンプルの表面昇温比と機械的強度との間には負の相関性があるため、FRP被験サンプルの表面昇温比を算出することにより、FRP被験サンプルの機械的強度を推定し、劣化の進行を診断することが可能となる。【選択図】図3

Description

本発明は、アクティブサーモグラフィを用いてFRP(繊維強化プラスチック/Fiber-Reinforced Plastics)の劣化を診断する方法に関する。
近年、非破壊検査技術の発展には目を見張るものがあるが、現場レベルで比較的容易に実施できる手法としては超音波探傷法が主流となっている。超音波探傷法は、ほとんどが接触式による試験であり、その測定範囲もプローブの大きさ程度ということになる。また、接触式ということで、プローブの接触面は平滑である必要があり、表面が平滑でない物体の検査には不向きである。
一方、赤外線カメラを利用するアクティブサーモグラフィも注目されている。アクティブサーモグラフィは、赤外線カメラにより被検体表面温度の時間変化を測定し、内部の損傷を検知する試験法である。健全部分と損傷部分では熱の移動に違いを生じるため、温度分布の違いとして内部損傷又は欠陥を検出する手法である。
アクティブサーモグラフィは、非接触方式の検査方法であり、赤外線カメラの撮影範囲が一度に検査できる領域となるため、超音波探傷法と比較して遥かに優位性が高いといえる非破壊検査手法である。
特許文献1は、下部赤外線ランプ及び上部赤外線ランプによって被検査体を裏面側及び表面側からそれぞれ加熱したときの被検査体表面の熱放射分布を赤外線カメラによって検出し、裏面側加熱と裏面側加熱の場合の熱放射分布の経時変化データをデータ処理手段によって比較し、両データの差又は比に基づいて層間剥離を特定することによる、積層体の欠陥検査方法を開示している。
特許文献2は、加熱照射装置と赤外線カメラを用いて肉厚を求め、これにより配管腐食劣化状態を診断するための赤外線配管診断方法を開示している。
特許文献3は、ベルトコンベアのフレーム構造部のような構造物の劣化度を診断する劣化度診断方法として、構造物に衝撃的な力を加え、加えられた衝撃による前記構造物の振動強度の時間波形を計測するステップと、計測された振動強度の時間波形から構造物の固有振動数を求めるステップと、求められた固有振動数から構造物に加わる応力レベルを求めるステップと、構造物に周期的な力を加え、加えられた力による熱弾性効果で生ずる構造物の温度変化を赤外線カメラで計測するステップと、計測された温度変化から構造物に加わる応力の分布を求めるステップと、求められた応力レベルおよび応力分布から構造物に加わる最大応力を算出するステップと、算出された最大応力から前記構造物の劣化度を診断するステップとを含む劣化診断方法を開示している。
特許文献4は、繊維強化複合材の劣化診断方法であって、該繊維複合材の表面から超音波を照射して、前記繊維複合材を通過した後の減衰後の超音波エコーの強度を測定し、該超音波エコーの減衰の大きさに基づいて、該繊維複合材の劣化の程度を判断する繊維強化複合材の劣化診断方法を開示している。
特開2005−164428号公報 特開2008−134221号公報 特開2008−232708号公報 特開2008−96340号公報
FRPは、貯水槽又は反応槽のような構造物の材質としてよく利用されている。FRPは、金属と異なり錆びることがないが、太陽光(紫外線)の照射、水との接触による加水分解又は上水道水中に含有される塩素等によって徐々に劣化が進行し、機械的強度が低下する。しかし、FRPは、表面の凹凸が顕著である製品も多く、超音波エコーによる探傷検査(劣化診断)には適さない材質である。
土木又は建築分野においては、ハンマー等を利用して建築物を叩いたときの音で劣化を診断する打音法が一般的であったが、近年では、赤外線サーモグラフィーを利用した劣化診断方法が推奨されてきている。しかし、土木又は建築分野における検査対象は、コンクリート製構造体であり、FRPを検査対象とした実用的な研究はなされていないのが現状である。
本発明は、FRPの劣化による機械的強度の低下の有無を、非破壊的、かつ、正確に検査し得るFRPの劣化診断方法の提供を目的とする。
本発明者は、構造物の材質として汎用されるFRPの劣化に伴う機械的強度の低下を、正確に診断し得る非破壊検査方法について鋭意検討を重ねた結果、新品のFRPと、劣化したFRPは、同じ条件で熱源としての光を照射された場合であっても、表面の温度変化が異なることが確認された。そして、本発明者は、劣化により機械的強度が低下しているFRPは、新品のFRPと比較して温度上昇が大きくなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
具体的に、本発明は、
FRP被験サンプル表面温度を赤外線カメラによって測定しながら、前記FRP被験サンプルにパルス光源から光を照射し、その後照射を停止し、前記FRP被験サンプルの表面温度変化を算出する工程Aと、
FRP対照サンプル表面温度を赤外線カメラによって測定しながら、前記FRP対照サンプルにパルス光源から光を照射し、その後照射を停止し、前記FRP対照サンプルの表面温度変化を算出する工程Bと、
前記FRP対照サンプルを劣化させたn枚(nは複数)のFRP劣化サンプルについて、前記工程Aと同様にして前記FRP劣化サンプルの表面温度変化を算出する工程Cと、
前記FRP被験サンプルの最大表面温度差ΔTSmaxと前記FRP対照サンプルの最大表面温度差ΔTBmaxとから表面昇温比ΔTSmax/ΔTBmax値を算出する工程Dと、
前記FRP劣化サンプルの最大表面温度差ΔTDmaxと前記FRP対照サンプルの最大表面温度差ΔTBmaxとから表面昇温比ΔTDmax/ΔTBmax値を算出する工程Eと、
n枚の前記FRP劣化サンプルと前記対照サンプルの機械的強度を測定する工程Fと、
前記表面昇温比ΔTDmax/ΔTBmax値と前記機械的強度との関係式を算出する工程Gと、
前記表面昇温比ΔT Smax /ΔTBmax値を前記関係式の表面昇温比として代入し、
算出される前記FRP被験サンプルの機械的強度が一定基準未満であれば、前記FRP被験サンプルは劣化が進行していると判断し、
算出される前記FRP被験サンプルの機械的強度が一定基準以上であれば、前記FRP被験サンプルは劣化が進行していないと判断する工程Hと、
を有する、FRPの劣化診断方法に関する。
FRPサンプルが劣化すると、劣化のない新品FRPサンプルよりも光の照射によって表面温度が上昇しやすい傾向がある。酸又はアルカリ浸漬のような方法によって化学的に劣化させたFRPサンプルは、新品のFRPと比較して曲げ強度のような機械的強度が低下するが、赤外線照射による温度上昇と機械的強度との間には、相関性が確認された。
FRPに使用されている樹脂及びガラス繊維の種類等によって、光の照射による温度上昇は影響される。そのため、本発明では、複数のFRP劣化サンプルを作成し、新品のFRPサンプル(FRP対照サンプル)との表面温度変化を測定し、複数のFRP劣化サンプル及びFRP対照サンプルについて、曲げ強度試験のような破壊試験(機械的強度試験)を行い、FRP劣化サンプルとFRP対照サンプルについて表面昇温比と機械的強度との関係式(近似式)を確認する。そうすれば、FRP被験サンプルの表面昇温比を近似式に代入することにより、FRP被験サンプルの機械的強度を判定することが可能である。
本発明において、工程A〜Hを順次実行する必要はない。例えば、新設されたFRP構造物を診断対象とする場合には、工程A、工程D及び工程Hは、すぐには実行できない。そのため、残りの工程を先に実行し、工程A、工程D及び工程Hを定期的に実行することが好ましい。一方、既設のFRP構造物を診断対象とする場合には、工程A、工程D及び工程Hをすぐに実行し得るため、FRPの劣化を早期に診断することが好ましい。
FRP被験サンプルは、機械的強度を予測すべき対象サンプルであり、通常は、貯水槽又は反応槽のような構造物の外表面の一部分となる。この場合、赤外線サーモグラフィーの測定対象として好適な部分について、本発明を実施する。すなわち、構造物の外表面に対して光を照射し、赤外線カメラを使用して外表面の温度変化を測定する。一方、FRP対照サンプル及びFRP劣化サンプルは、それぞれFRP被験サンプルと同じFRPの新品サンプル及び当該新品サンプルを化学的に劣化させたサンプルである。そして、FRP対照サンプル及びFRP劣化サンプルと同じ測定条件で、FRP構造物の外表面の一部分の温度変化を測定する。
FRP構造物の一部分が取り外し可能である場合には、測定誤差を小さくする観点からは、FRP対照サンプルとFRP被験サンプル(取り外された構造物一部分)とを並べ、同時に赤外線サーモグラフィーによって温度変化を観察することが好ましい。
FRP構造物は、定期的に劣化の有無を診断することが好ましい。そのため、FRP対照サンプル及びFRP劣化サンプルについて温度変化測定及び機械的強度を測定しておき、FRP被験サンプルの測定結果が機械的強度の許容範囲内であることを定期的に確認することが好ましい。
新設されるFRP構造物の場合、赤外線サーモグラフィーの測定対象として好適な部分について温度変化を測定し、当該部分について定期的に温度変化を測定することが好ましい。FRP劣化サンプルは、赤外線サーモグラフィーの測定対象として好適な部分と同一FRPの試験片サンプルを化学的に劣化させたサンプルとなる。一方、既設のFRP構造物の劣化の有無を本発明によって診断する場合には、赤外線サーモグラフィーの測定対象として好適な部分と同一FRPの試験片サンプルを対照サンプルとすることが好ましい。
本発明において、FRP劣化サンプル及びFRP対照サンプルの機械的強度は、公知の強度試験である曲げ試験、引張試験又は圧縮試験を採用し得る。
FRP対照サンプル及び60℃の1%水酸化ナトリウム水溶液に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルの外観写真を示す。 65℃の32%硫酸に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプル、60℃の10%硫酸に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプル及び60℃の37%塩酸に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルの外観写真を示す。 赤外線サーモグラフィーを利用した表面温度変化の測定における装置構成の一例を示す。 65℃で10%硫酸に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルと、FRP対照サンプルに対して5秒間フラッシュランプを照射した直後の赤外線サーモグラフィーを示す。 65℃で10%硫酸に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルと、FRP対照サンプルの表面温度変化を示すグラフである。 65℃で32%硫酸に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルと、FRP対照サンプルに対して5秒間フラッシュランプを照射した直後の赤外線サーモグラフィーを示す。 65℃で32%硫酸に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルと、FRP対照サンプルの表面温度変化を示すグラフである。 65℃で37%塩酸に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルと、FRP対照サンプルに対して5秒間フラッシュランプを照射した直後の赤外線サーモグラフィーを示す。 65℃で37%塩酸に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルと、FRP対照サンプルの表面温度変化を示すグラフである。 65℃で精製水に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルと、FRP対照サンプルの表面温度変化を示すグラフである。 60℃で10%塩酸に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルと、FRP対照サンプルの表面温度変化を示すグラフである。 60℃で1%水酸化ナトリウム水溶液に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルと、FRP対照サンプルの表面温度変化を示すグラフである。 FRP対照サンプル及びFRP劣化サンプルの最大表面温度を説明するグラフである。 複数のFRP劣化サンプルについて、表面昇温比と曲げ強度保持率との関係をプロットしたグラフである。 3種類のFRP劣化サンプルについて、表面昇温比、エコー強度比及び曲げ強度保持率を示すグラフである。
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。本発明は、以下の記載に限定されない。
(FRP対照サンプル)
FRP対照サンプルとして、ビニルエステル樹脂で(昭和電工株式会社、リポキシ(登録商標)、型番R806)サーフェイスマット(セントラルグラスファイバー株式会社、FC-30C)、チョップドストランドマット(日東紡績株式会社、MC450A-104SS)を挟持させた試験片を使用した(板厚約3mm)。試験片は、8×10cmの長方形にカットされている。
(FRP劣化サンプルの作製(工程C)/酸処理による劣化)
FRP対照サンプルと同じFRP試験片を複数枚用意した。精製水、10%塩酸、37%塩酸、10硫酸%又は32%硫酸をプラスチック製容器内に用意した。37%塩酸についてはFRP試験片を4枚ずつ、それ以外については6枚ずつ浸漬させて密封した後、精製水又は32%硫酸については65℃、それ以外については60℃の恒温槽内で静置させた。37%塩酸については1、2、3、6ヶ月経過毎、それ以外については1ヶ月経過毎に、FRP試験片1枚を容器内から取り出した。静置終了後、容器内からFRP試験片を取り出し、精製水を用いて洗浄し、室温で1日以上静置することにより乾燥させた。このような操作によって得られたFRP試験片を、酸処理によるFRP劣化サンプルとした。
(FRP劣化サンプルの作製(工程C)/アルカリ処理による劣化)
FRP対照サンプルと同じFRP試験片を6枚用意した。1%水酸化ナトリウム水溶液をプラスチック製容器内に用意し、FRP試験片を浸漬させて密封した後、60℃の恒温槽内で静置させた。1ヶ月経過毎に、FRP試験片1枚を容器内から取り出した。取り出されたFRP試験片は、精製水を用いて洗浄し、室温で1日以上静置することにより乾燥させた。このような操作によって得られたFRP試験片を、アルカリ処理によるFRP劣化サンプルとした。
なお、FRP劣化サンプルは、FRP試験片を酸化剤に浸漬したり、紫外線を照射したりすることによって作製してもよく、FRP構造物の使用状況に応じて適宜選択し得る。
(FRP劣化サンプルの外観)
図1は、FRP対照サンプル及び60℃の1%水酸化ナトリウム水溶液に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルの外観写真を示す。図2は、65℃の32%硫酸に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプル、60℃の10%硫酸に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプル及び60℃の37%塩酸に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルの外観写真を示す。酸又はアルカリに浸漬した場合、サンプル端部の断面から浸透した薬品により樹脂が劣化又は消失することによる白化が見られた。端部以外の平滑部において、1%水酸化ナトリウムは内部への浸透によるガラス繊維と樹脂のはく離に伴う白化、10%硫酸は表面樹脂の劣化によるサーフェイス繊維の露出、37%塩酸は全体の変色と表面の膨れといった変化が生じた。32%硫酸については10%硫酸と同様であるが、比較的程度の低い変化が見られた。
(赤外線サーモグラフィーを利用した表面温度変化の測定(工程B及び工程C))
図3に示すような装置構成によって、FRP対照サンプル3及びFRP劣化サンプル4の表面温度変化を測定した。装置は、すべてAT-Automation Technology GmbH製である。赤外線カメラ1として、マイクロボロメータ非冷却赤外線カメラ(IRS640S)を使用した。パルス光源2a及び2bとして、出力1.5kWのフラッシュランプを使用した。赤外線カメラ2、パルス光源2a及び2bは、インターフェースハードウェア5に接続されており、制御・解析ソフトウェア6によってパルス光源2a及び2bの照射時間の制御、赤外線カメラ1の撮影した画像の解析等が行われる。
パルス光源2a及び2bは、赤外線カメラ1の両脇に設置し、その間隔は20cmとした。パルス光源2a及び2bの向きは、FRP対照サンプル3及びFRP劣化サンプル4、並びに赤外線カメラ1の中心になるように合わせた。
パルス光源2a及び2bの照射時間は、5秒間に設定された。パルス光源2a及び2bの照射開始から15秒間の間の赤外線カメラ1によるFRP対照サンプル3及びFRP劣化サンプル4の表面温度測定データを取得し、照射前の表面温度と、照射後の最大温度との差を解析した。赤外線カメラ1の測定分解能は、0.01℃であった。
ここでは、FRP対照サンプルとFRP劣化サンプルとを併置してパルス光源を照射し、両者の表面温度変化を同時に測定したが、これは測定誤差を可能な限り小さくするためである。測定条件が同じであれば、FRP対照サンプルとFRP劣化サンプルについて、それぞれ別個にパルス光源を照射し、表面温度変化を独立して測定してもよい。
(曲げ試験(工程F))
表面温度変化を測定後のFRP対照サンプル及びFRP劣化サンプルについて、JISK7017に基づく曲げ試験を行った。試験片として、浸漬サンプルの一部(長さ80mm、幅15mm)を切り取って使用した。曲げ試験における支点間距離は60mm、試験速度は2mm/min.とした。
[FRPサンプルの表面温度測定結果]
図4は、60℃で10%硫酸に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルと、FRP対照サンプルに対して5秒間上記フラッシュランプを照射した直後の赤外線サーモグラフィーを示す。一方、図5は、このFRP劣化サンプルと、FRP対照サンプルの表面温度変化を示すグラフである。縦軸のΔTは、パルス光源照射前から上昇した温度を表している。このFRP劣化サンプルは、FRP対照サンプルよりもΔTが最大0.3℃程度高い数値を示した。
図6は、65℃で32%硫酸に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルと、FRP対照サンプルに対して5秒間上記フラッシュランプを照射した直後の赤外線サーモグラフィーを示す。一方、図7は、このFRP劣化サンプルと、FRP対照サンプルの表面温度変化を示すグラフである。縦軸のΔTは、パルス光源照射前から上昇した温度を表している。このFRP劣化サンプルは、FRP対照サンプルとのΔTの差が小さかった。
図8は、60℃で37%塩酸に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルと、FRP対照サンプルに対して5秒間上記フラッシュランプを照射した直後の赤外線サーモグラフィーを示す。一方、図9は、このFRP劣化サンプルと、FRP対照サンプルの表面温度変化を示すグラフである。縦軸のΔTは、パルス光源照射前から上昇した温度を表している。このFRP劣化サンプルは、FRP対照サンプルよりもΔTが最大1.0℃程度高い数値を示した。
図10は、65℃で精製水に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルと、FRP対照サンプルの表面温度変化を示すグラフである。縦軸のΔTは、パルス光源照射前から上昇した温度を表している。このFRP劣化サンプルは、FRP対照サンプルよりもΔTが最大0.05℃程度高い数値を示した。
図11は、60℃で10%塩酸に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルと、FRP対照サンプルの表面温度変化を示すグラフである。このFRP劣化サンプルは、FRP対照サンプルよりもΔTが最大0.15℃程度高い数値を示した。
図12は、60℃で1%水酸化ナトリウム水溶液に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルと、FRP対照サンプルの表面温度変化を示すグラフである。このFRP劣化サンプルは、FRP対照サンプルよりもΔTが最大0.15℃程度高い数値を示した。
表1は、酸処理によるFRP劣化サンプルの外観、曲げ強度及びΔTの測定結果を示す。37%塩酸に浸漬させたFRP劣化サンプルは、機械的強度の低下率が最も大きく、ΔTも最大であった。10%硫酸に浸漬させたFRP劣化サンプルは、37%塩酸に浸漬させた場合に次いで機械的強度の低下率及びΔTが大きかった。その他のFRP劣化サンプルについては、機械的強度の低下率が2割以下におけるΔTは、0.2℃未満となっていた。
[表面昇温比の算出(工程D及び工程E)]
FRP対照サンプル及びFRP劣化サンプルについて、表面昇温比を算出した。図13は、FRP対照サンプル及びFRP劣化サンプルの最大表面温度を説明するグラフである。図13では、FRP劣化サンプル及びFRP対照サンプル共に、フラッシュランプ照射開始後5秒後に表面温度が最高値を示し、それ以降は表面温度が下降している。そのため、それぞれのサンプルについて、ΔTの最高値を算出する。ここでは、FRP対照サンプルの最高ΔTはΔTBmaxで示され、FRP劣化サンプルのΔT最高値はΔTDmaxで示されている。ΔTDmaxをΔTBmaxで除した値を表面昇温比とした。
[表面昇温比と機械的強度との相関性(工程G)]
図14は、複数のFRP劣化サンプルについて、表面昇温比と曲げ強度保持率との関係をプロットしたグラフである。曲げ強度保持率とは、FRP対照サンプルの曲げ強度を「1」とした場合の、各FRP劣化サンプルの曲げ強度の相対値である。図14より、FRP劣化サンプルの表面昇温比と曲げ強度保持率との間には、負の相関性が認められた。
(工程A)
被験対象となるFRP構造物に使用されているFRPと同一FRPについて、FRP対照サンプル又はFRP劣化サンプルと同様にして表面の温度変化を測定する。FRP被験サンプルとしてFRP構造体の一部を直接利用する場合には、FRP対照サンプルとFRP被験サンプルの表面温度変化を同時に測定することが困難である。そのため、FRP対照サンプル及びFRP劣化サンプルは、別個に表面温度変化を測定しておくことが好ましい。
FRP被験サンプルとしてFRP構造体の一部を取り外して利用する場合には、測定誤差を小さくする観点から、FRP対照サンプルとFRP被験サンプルの表面温度変化を同時に測定することが好ましい。
図14のようなグラフを得ていれば、貯水槽又は反応槽のようなFRP構造物の外表面の一部分について、表面昇温比を算出することにより、温度測定部分のFRPの曲げ強度(物理的強度)を非破壊的に正確に予測することが可能である。すなわち、FRP被験サンプルについて、FRP対照サンプル及びFRP劣化サンプルと同様にしてΔT最高値(ΔTSmax)を求め、ΔTSmaxをΔTBmaxで除した値を表面昇温比として算出する。このFRP被験サンプルの表面昇温比と図14のグラフとから、FRP被験サンプルの曲げ強度を予測することが可能である。
[FRP被験サンプルの劣化診断(工程H)]
例えば、今回使用したFRPの場合、曲げ強度保持率が0.6以下になれば交換時期と判断されるのであれば、表面昇温比が1.7以上であるFRP被験サンプルは、新品のFRPと交換する必要があるほど劣化が進行していると診断され得る。一方、表面昇温比が1.1程度であれば、新品FRPの9割程度の強度を保持しているため、劣化は進行していないと診断され得る。曲げ強度保持率の基準は、FRP構造物又は使用されているFRPの種類に応じて、適宜設定され得る。
なお、60℃で10%硫酸に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルと、65℃で32%硫酸に6ヶ月間浸漬させたFRP劣化サンプルとを比較すると、酸処理条件は32%硫酸の方がシビアであったにも拘わらず、10%硫酸の方が表面昇温比は大きく、曲げ強度保持率も低い結果が得られた。このことからも、本発明の劣化診断方法は、FRPの劣化による機械的強度の低下を正確に診断することが可能である。
[本発明と超音波探傷法との比較]
表1に示されるFRP劣化サンプルのうち、10%硫酸、37%硫酸及び1%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して作製されたFRP劣化サンプルについて、超音波探傷法によるエコー減衰を以下の方法によって測定した。
超音波エコーの測定には、可搬型超音波探傷器(菱電湘南エレクトロニクス株式会社、UI25S)、探傷プローブには5MHz狭帯域型垂直探触子(ジャパンプローブ株式会社、HC10K5N)を使用した。設定条件としての音速は実測に基づいて2150m/sとし、ゲインはピークが飽和しない程度として9dBとした。FRP対照サンプル及びFRP劣化サンプルについて、測定点はランダムに20点を抽出し、その平均値、最大値、最小値を記録した。
図15は、3種類のFRP劣化サンプルについて、表面昇温比、エコー強度比及び曲げ強度保持率を示すグラフである。エコー強度比は、FRP対照サンプルのエコー強度を「1」とした場合の相対値を示す。10%硫酸及び1%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して作製されたFRP劣化サンプルについては、曲げ強度保持率が低下したサンプルの場合のエコー強度は低くなっており、曲げ強度保持率とエコー強度に相関性が認められた。
ところが、37%塩酸に浸漬して作製されたFRP劣化サンプルについては、曲げ強度保持率約0.3にまで機械的強度が減少して劣化が進行しているにも拘わらず、エコー強度は「1」であり減衰が認められなかった。すなわち、超音波探傷法によっては、37%塩酸に浸漬して作製されたFRP劣化サンプルの劣化による機械的強度の低下を全く判断できなかった。
一方、本発明では、37%塩酸に浸漬して作製されたFRP劣化サンプルの表面昇温比は、約2にまで上昇しており、FRPサンプルが劣化して機械的強度が低下していることを診断し得ることが確認された。
硫酸及び水酸化ナトリウムは、FRP内部に浸透せず、主として表面を劣化させる一方、塩酸はFRP内部に浸透して超音波の媒質として作用するため、エコー強度の減衰が小さかったと推測された。このように、超音波探傷法では全く対応できない劣化系がFRPサンプルにあることが確認された。
本発明のFRPの劣化診断方法は、FRP構造物の機械的強度の低下を非破壊的に正確に診断し得る方法として、設計、化学工業等の技術分野において有用である。
1:赤外線カメラ
2a,2b:パルス光源(フラッシュランプ)
3:FRP対照サンプル
4:FRP劣化サンプル
5:インターフェースハードウェア
6:制御・解析ソフトウェア

Claims (1)

  1. FRP被験サンプル表面温度を赤外線カメラによって測定しながら、前記FRP被験サンプルにパルス光源から熱源として光を照射し、その後照射を停止し、前記FRP被験サンプルの表面温度変化を算出する工程Aと、
    FRP対照サンプル表面温度を赤外線カメラによって測定しながら、前記FRP対照サンプルにパルス光源から熱源として光を照射し、その後照射を停止し、前記FRP対照サンプルの表面温度変化を算出する工程Bと、
    前記FRP対照サンプルを劣化させたn枚(nは複数)のFRP劣化サンプルについて、前記工程Aと同様にして前記FRP劣化サンプルの表面温度変化を算出する工程Cと、
    前記FRP被験サンプルの最大表面温度差ΔTSmaxと前記FRP対照サンプルの最大表面温度差ΔTBmaxとから表面昇温比ΔTSmax/ΔTBmax値を算出する工程Dと、
    前記FRP劣化サンプルの最大表面温度差ΔTDmaxと前記FRP対照サンプルの最大表面温度差ΔTBmaxとから表面昇温比ΔTDmax/ΔTBmax値を算出する工程Eと、
    n枚の前記FRP劣化サンプルと前記対照サンプルの機械的強度を測定する工程Fと、
    前記表面昇温比ΔTDmax/ΔTBmax値と前記機械的強度との関係式を算出する工程Gと、
    前記表面昇温比ΔT Smax /ΔTBmax値を前記関係式の表面昇温比として代入し、
    算出される前記FRP被験サンプルの機械的強度が一定基準未満であれば、前記FRP被験サンプルは劣化が進行していると判断し、
    算出される前記FRP被験サンプルの機械的強度が一定基準以上であれば、前記FRP被験サンプルは劣化が進行していないと判断する工程Hと、
    を有する、FRPの劣化診断方法。
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