以下、本発明の第1、第2、第3、第4の実施の形態に係る超音波画像診断装置について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
(第1の実施の形態)
図1〜図12を参照して、本発明の第1の実施の形態を説明する。図1は、本実施の形態による超音波画像診断装置100の構成を示す概略ブロック図である。図1の超音波画像診断装置100は、超音波探触子101及び表示器102が接続された状態を示している。
図1に示す超音波画像診断装置100は、制御器1及び操作部2を備える。制御器1は、送信部3、受信部4、Bモード画像生成部5、ROI設定部6、Cモード画像生成部7、表示処理部8及び制御部9を含んでいる。
図2は、超音波画像診断装置100のハードウエアの主要な構成を示す図である。ハードウエアの観点では、超音波画像診断装置100は、例えば、パルサー52、ADコンバーター54、増幅器53、送信ビームフォーマー55、受信ビームフォーマー56、Bモード画像処理器58、Cモード画像処理器59、メモリ60及び演算処理器61によって構成される。超音波探触子101は超音波を送受信する複数の圧電変換素子51を含み、ケーブルとコネクタまたは無線通信手段などを介して超音波画像診断装置100に接続される。パルサー52、ADコンバーター54及び増幅器53は、圧電変換素子51の数に対応して複数用意される。メモリ60には、図1に示す各構成要素の機能を実現するための手順を規定したプログラム、及び、各構成要素を所定の手順で動作させることにより、超音波画像診断装置100、超音波探触子101及び表示器102を制御し、以下のBモード画像及びCモード画像の生成及び表示するための手順を規定したプログラムが記憶されている。これらのプログラムがメモリ60から逐次読み出され、演算処理器61により実行される。
図1に示す各構成要素は、図2に示すハードウエアを用いて構成される。
送信部3は、パルサー52及び送信ビームフォーマー55によって構成される。受信部4は、増幅器53及びADコンバーター54及び受信ビームフォーマー56によって構成される。Bモード画像生成部5は、Bモード画像処理器58によって構成され、Cモード画像生成部7は、Cモード画像処理器59によって構成され、表示処理部8は、Bモード画像処理器58及びCモード画像処理器59によって構成される。
ROI設定部6の機能は、ソフトウエアによって実現される。具体的には、メモリ60に記憶されたプログラムを演算処理器61が実行することにより、ROI設定部6の機能が実現される。つまり、ROI設定部6は、プログラムによって構成されているともいえる。
上述したハードウエアの構成は一例であって種々の改変が可能である。例えば、Bモード画像生成部5やCモード画像生成部7の機能は、ソフトウエアにより実現してもよい。また、送信ビームフォーマー55及び受信ビームフォーマー56の機能をソフトウエアにより実現してもよい。演算処理器61及びメモリ60を含むパソコンをこれらのハードウエアの代わりに用いてもよい。
また、制御器1の各機能ブロックについて、各々の機能ブロックの一部又は全部の機能を典型的には集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現することもできる。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。なお、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC(Integrated Circuit)、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサー(ReConfigurable Processor)を利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。
上述したように、超音波探触子101は、一次元方向に配列された複数の圧電変換素子51を有し、この圧電変換素子51それぞれが後述する送信部3からの送信電気信号を超音波へと変換し、超音波ビームを生成する。従って、操作者は、被計測物である被検体表面に超音波探触子101を配置することで、被検体内部に超音波ビームを照射することができる。そして、超音波探触子101は、被検体内部からの反射超音波を受信し、複数の圧電変換素子51でその反射超音波を受信電気信号へと変換して後述する受信部4に供給する。
なお、本実施の形態においては、超音波探触子101は、複数の圧電変換素子51が一次元方向に配列された超音波探触子101を例に説明するが、これに限定されるものではない。例えば、複数の圧電変換素子51が2次元に配列された超音波探触子101や一次元方向に配列された複数の圧電変換素子51が揺動する超音波探触子101などを用いることも可能である。また、制御部9の制御に基づき、送信部3は、超音波探触子101が使用する圧電変換素子51を選択し、圧電変換素子51に電圧を与えるタイミングや電圧の値を個々に変化させることによって、超音波探触子101が送信する超音波ビームの照射位置や照射方向を制御することができる。
また、超音波探触子101は、後述する送信部3や受信部4の一部の機能を含んでいてもよい。例えば、超音波探触子101は、送信部3から出力された送信電気信号を生成するための制御信号(以下、「送信信号」とする。)に基づき、超音波探触子101内で送信電気信号を生成し、この送信信号を圧電変換素子51により超音波に変換するとともに、受信した反射超音波を受信電気信号に変換し、超音波探触子101内で受信電気信号に基づき後述する受信信号を生成する構成が挙げられる。
さらに、超音波探触子101は、超音波画像診断装置100とケーブルを介して電気的に接続された構成が一般的であるが、これに限定されるものではなく、例えば、超音波探触子101は、超音波画像診断装置100との間で、送信信号や受信信号の送受信を無線通信により行う構成であってもよい。ただし、係る構成の場合は、超音波画像診断装置100及び超音波探触子101に無線通信可能な通信部を備える構成となることは言うまでもない。
表示器102は、超音波画像診断装置100(後述する表示処理部8)から出力された画像を表示する、いわゆるモニタである。なお、本実施の形態においては、表示器102が、超音波画像診断装置100に接続される構成を示しているが、例えば、表示器102と後述の操作部2が一体として構成され、操作部2の操作が表示器102をタッチ操作することにより行われる、いわゆるタッチパネル式の超音波画像診断装置の場合には、超音波画像診断装置100と表示器102とを一体として構成されることになる。ただし、本願においては、超音波画像診断装置100と表示器102とを一体として構成される場合も、「表示器102が超音波画像診断装置100に接続されている」とすることにする。
操作部2は、操作者から入力を受け取り、操作者の入力に基づく指令を超音波画像診断装置100、具体的には制御器1の制御部9に出力する。操作部2は、Bモード画像のみを表示させるモード(以下、「Bモード」とする。)か、Bモード画像上にCモード画像を重畳表示させるモード(以下、「Cモード」とする。)を、操作者が選択することできる機能を備える。そして、操作部2は、操作者がBモード画像上のCモード画像を表示させるROIの位置を指定する機能も含まれる。また、表示させるCモード画像としては、さらに、血流の状態を示す血流信号としての血流速度Vにより血流の流速及び方向をカラー表示するVモードと、血流信号としての血流のパワーPにより血流のパワーをカラー表示するPモードと、血流速度V、血流信号としての分散Tにより血流の流速及び分散をカラー表示するV−Tモードと、の表示モードのCモード画像があるものとする。操作部2は、操作者からCモードの入力を受け付けた場合に、さらにその表示モードの入力も受け付けるものとする。なお、Cモード画像の表示モードには、T(分散)モード、dP(方向付パワー)モード等を含めてもよい。
送信部3は、少なくとも送信部3で送信信号を生成し、超音波探触子101に超音波ビームを送信させる送信処理を行う。一例として、送信部3は、圧電変換素子51を有する超音波探触子101から超音波ビームを送信するための送信信号を生成する送信処理を行い、この送信信号に基づき超音波探触子101に対して所定のタイミングで発生する高圧の送信電気信号を供給することで、超音波探触子101の圧電変換素子51を駆動させる。これにより、超音波探触子101は、送信電気信号を超音波へと変換することで、被計測物である被検体に超音波ビームを照射することができる。
送信部3は、Cモード画像を表示させる場合には、Bモード画像を表示させるための送信処理に加え、Cモード画像を表示させるための送信処理が行われる。例えば、Bモード画像を表示させるための電気的な送信信号を供給した後に、Cモード画像を表示させるためのQSP(4列並列受信)用の電気的な送信信号を同一方向(同一ライン)にn(nは例えば6〜12)回繰り返し供給することを、ROI設定部6で設定されたROIの全方向(全ライン)に対して行う。また、送信部3は、送信処理時にBモード画像用の送信処理或いはCモード画像用の送信処理の付加情報を指定しておき、この付加情報を受信部4に供給する。
図3は、QSPにおける超音波の送受信を示す図である。図3に示すように、QSPでは、送信部3で生成される1方向(1ライン)の送信信号に基づく超音波探触子101からの一度の送信超音波の送信に対応して、その左右4方向(4ライン)分の反射超音波を超音波探触子101で同時に並列受信する。QSPによれば、1フレームをスキャンするための超音波の送受信回数を少なくできるので、フレームレートの向上に有効である。
受信部4は、QSPに対応する反射超音波に基づく電気的なRF(Radio Frequency)信号としての受信信号を生成する受信処理を行う。受信部4は、例えば、QSPにより超音波探触子101で反射超音波を受信し、その反射超音波に基づき変換された受信電気信号に対し、受信電気信号を増幅してA/D変換を行うことで受信信号を生成する。そして、送信部3による送信処理及び受信部4による受信処理を行うことで1枚の画像フレームに対応する複数の受信信号を取得し、これを繰り返し連続して行うことで受信部4は、複数の画像フレームに対応する複数の受信信号を取得する。
図3に示すように、QSPの並列受信の4ラインの外側の2ラインは、送信位置から遠くなるため、受信部4で生成する外側の2ラインの受信信号のゲインが、内側の2ラインのゲインに比べて低下する。本実施の形態では、外側の2ラインの受信信号のゲインの低下が後述するモーフォロジー処理により補償される。
受信部4は、送信部3から付加情報を取得し、取得した付加情報がBモード画像用の付加情報であれば受信信号をBモード画像生成部5に供給し、取得した付加情報がCモード画像用の付加情報であれば受信信号をCモード画像生成部7に供給する。以下、Bモード画像生成用の受信信号を「Bモード受信信号」、Cモード画像生成用の受信信号を「Cモード受信信号」と称することとする。
なお、本実施の形態においては、生成した画像フレームに係る受信信号を、受信部4が、Bモード画像用かCモード画像用かを選別して各ブロックに供給する構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば、生成した画像フレームに係る受信信号を、Bモード画像生成部5及びCモード画像生成部7のそれぞれで選別する構成であってもよい。
また、上述のCモード画像を表示させるための送信部3、受信部4の送受信処理は、上記のものに限定されるものではない。例えば、送信部3、受信部4の送受信処理は、6並列受信等、他の複数並列受信に対応する送受信処理としてもよい。
Bモード画像生成部5は、一般的な超音波画像診断装置と同様の構造を備え、主にBモード受信信号の振幅を解析して、被検体の内部構造が画像化されたデータ(以下、「Bモード画像データ」とする。)を生成する。このBモード画像データは、表示器102に表示するためのデータであって、主に受信信号の信号強度に応じて輝度信号へと変換され、その輝度信号を直交座標系に対応するように座標変換が施された画像信号である。Bモード画像生成部5で生成されたBモード画像データは、表示処理部8に供給される。
ROI設定部6は、操作者が操作部2の操作により指定したBモード画像上の所望の位置にROIを設定する。そして、ROI設定部6は、Bモード画上像の所望の位置に設定されたROIに係る情報を送信部3及び表示処理部8に供給する。送信部3は、このROIに係る情報を用いて、ROIが指定された範囲内の被検体に対してCモードに対応した送信処理を行うことができる。
Cモード画像生成部7は、受信部4で取得したCモードでの受信信号に基づきCモード画像を生成する。図4は、Cモード画像生成部7の内部構成を示すブロック図である。図4に示すように、具体的には、Cモード画像生成部7は、直交検波回路71と、コーナーターン制御部72と、MTIフィルター73と、相関演算部74と、データ変換部75と、ノイズカットフィルター部76と、フレーム間フィルター77と、Cモード画像変換部78と、を有し、それぞれ以下の機能を実行する。
直交検波回路71は、受信部4で取得したCモードでの受信信号を直交検波することにより、取得したCモードでの受信信号と、参照信号との位相差を算出し、複素ドプラー信号を取得する。図5(a)は、直交検波回路71の内部構成を示すブロック図である。図5(b)は、複素平面表示の複素ドプラー信号を示す図である。
図5(a)に示すように、直交検波回路71は、乗算部711,712と、LPF(Low Pass Filter)713,714と、を有する。Cモードでの受信信号をa・sin(ω0+ωd)tで表すものとする。ω0は、参照波の角振動数である。乗算部711は、Cモードでの受信信号と参照波(sinω0t)との乗算を行う。乗算部712は、Cモードでの受信信号と参照波(cosω0t)との乗算を行う。
LPF713は、乗算部711の乗算結果の信号の高周波成分をフィルタリングして、複素ドプラー信号の実成分であるドプラー信号Iとして出力する。LPF714は、乗算部712の乗算結果の信号の高周波成分をフィルタリングして、複素ドプラー信号の虚成分であるドプラー信号Qとして出力する。すると、図5(b)に示すように、ドプラー信号I,Qは、複素平面上で、複素ドプラー信号z=I+jQ=Aejθ(j:虚数単位)として表される。
振幅A、位相θは、参照波の角振動数ω0に対応する周波数f0を中心とする帯域の信号成分の振幅、位相である。このように、直交検波回路71は、振幅A、位相θを検出できる。
図6は、コーナーターン制御部72によるドプラー信号I,Qの格納を示す図である。図6に示すように、コーナーターン制御部72は、直交検波回路71から出力されたドプラー信号I,Qを、同一音響線(ライン)毎に、超音波探触子101から被検体への深さ方向と、超音波の送受信の繰り返し回数n(アンサンブル数)のアンサンブル方向と、に配列してメモリ(図示略)に格納し、深さ毎にドプラー信号I,Qをアンサンブル方向に読み出す。
図6における「()」は、(音響線方向のラインの番号,アンサンブル方向の繰り返し回数の番号)である。図6では、アンサンブル数が8の例である。実際には、アンサンブル方向の番号毎のドプラー信号I,Qのデータは、ヘッダ部と、実データ部と、を含む。コーナーターン制御部72は、メモリに格納されたドプラー信号I,Qの実データ部を、深さ毎に読み出す。
受信信号(ドプラー信号I,Q)は、Cモード画像生成に必要な血流の信号成分に加えて、不要な血管壁や組織等の情報(クラッター成分)も混在している。MTIフィルター73は、コーナーターン制御部72から出力されたドプラー信号I,Qをフィルタリングしてクラッター成分を除去する。図7は、MTIフィルター73の遮断特性を示す図である。
図7において、横軸にドプラー偏移周波数をとり、縦軸に信号強度をとり、MTIフィルター73の遮断特性を点線で表す。血流成分は、高周波、小振幅の特性を有し、クラッター成分は、低周波、大振幅の特性を有する。図7に示すように、MTIフィルター73は、クラッター成分を除去し、血流成分を透過するハイパスフィルターとしての遮断特性を有する。
相関演算部74は、次式(1)により、MTIフィルター73によりフィルタリングされたドプラー信号I,Q(複素ドプラー信号z)から、ドプラー信号の自己相関演算の平均値S(位相差ベクトルの平均値)の実部D及び虚部Nを算出する。
データ変換部75は、MTIフィルター73によりフィルタリングされたドプラー信号I,Qや、ドプラー信号の自己相関演算の平均値Sの実部D及び虚部Nから、血流速度V、パワーP、分散Tを算出する。より具体的には、データ変換部75は、次式(2)により、ドプラー信号の自己相関演算の平均値Sの実部D及び虚部Nから、血流速度Vを算出する。
また、データ変換部75は、次式(3)により、ドプラー信号I,Q(複素ドプラー信号z)から、ドプラー信号の強度の平均値としてのパワーPを算出する。
また、データ変換部75は、次式(4)により、ドプラー信号I,Q(複素ドプラー信号z)から、位相差ベクトルの大きさとパワーとの比(但し、1から引いて大小を逆転したもの)としての分散Tを算出する。
図8(a)は、本実施の形態におけるVモード、V−Tモードでのノイズカットフィルター部76の内部構成を示すブロック図である。図8(b)は、本実施の形態におけるPモードでのノイズカットフィルター部76の内部構成を示すブロック図である。ノイズカットフィルター部76は、データ変換部75により算出されたパワーPにモーフォロジー処理を施し、QSPの並列受信の外側のラインのゲイン低下を保障し、モーフォロジー処理を施したパワーPと、血流速度V、分散Tと、をフィルタリングする。図8(a)、図8(b)に示すように、ノイズカットフィルター部76は、モーフォロジー処理部761と、キーホールフィルター762と、空間フィルター763と、を有する。
図8(a)、図8(b)に示すように、Vモード、V−Tモード、Pモードのいずれにおいても、モーフォロジー処理部761は、データ変換部75により算出されたパワーPにモーフォロジー処理を施す。モーフォロジー処理は、物体形状に対する特徴を抽出する処理であり、構造要素と呼ばれる基本図形を用いて、対象図形に対し膨張処理(Dilation)や収縮処理(Erosion)、又はそれらを組み合わせた処理を施すことにより特徴抽出を行う。膨張処理は、図形の境界部分を構造要素の原点が通るように動かしたとき、構造要素が通った軌跡の部分だけ図形を膨張させる処理である。収縮処理は、膨張処理と同じように構造要素を動かしたとき、対象図形と構造要素の軌跡が重った領域を収縮する処理である。本実施の形態では、モーフォロジー処理部761は、クロージング処理として、データ変換部75により算出されたパワーPに、膨張処理及び収縮処理を順に施す。
構造要素は、任意の形状とサイズをもつ行列で構成される。図9(a)は、構造要素200を示す図である。図9(b)は、構造要素200の移動経路を示す図である。図9(a)に示すように、本実施の形態で用いられる構造要素200は、原点201と、原点201の左右に配置された隣接点202,203と、を有する。ここで、血流信号により構成される1フレームのCモードの血流信号データをCモードフレーム300とする。図9(b)に示すように、データ変換部75により算出された血流速度Vに対応する1フレームのCモードフレーム300上で、構造要素200が、同一の深さである左上端から右上端へのライン方向へ原点201が全ラインの各画素(Cモードフレーム300はいわゆる画像ではないが、Cモードフレームを構成する個々のデータを画素と表記する。以下、同じ。)を通るように移動され、次いで、一段下の左端から右端へ同様に移動される。これらの移動を繰り返すことにより、原点201がCモードフレーム300の全画素を通るように、構造要素200が移動される。なお、構造要素200として、3点の横並びの形状のものを用いたが、これに限定されるものではなく、他の数の点、形状のものを用いてもよい。
モーフォロジー処理部761は、モーフォロジー処理の膨張処理として、上記の構造要素200の移動とともに、次式(5)により、構造要素200の各点の信号値を用いて、Cモードフレーム300の各画素に対応する原点201のパワーPの値を変更する。
式(5)において、左辺のPが原点201の変更後のパワーPの値であり、右辺のPiが構造要素200の各点のパワーPの値である。つまり、膨張処理において、原点201の画素に対応するパワーPの値が、構造要素200の3点の中で最大のパワーPの点の画素に対応するパワーPの値に置き換えられる。但し、構造要素200を移動させる対象のCモードフレーム300の各画素に対応するパワーPそのものを変更するものではなく、当該Cモードフレーム300とは別にパワーPの変更後のCモードフレームの各画素に対応するパワーPを設定するものとし、以下の構造要素200の移動を伴う他の処理においても同様である。
そして、膨張処理の後、モーフォロジー処理部761は、収縮処理として、上記の構造要素200の再度の移動とともに、次式(6)により、構造要素200の各点の信号値を用いて、Cモードフレーム300の各画素に対応する原点201のパワーPの値を変更する。
式(6)において、左辺のPが原点201の変更後のパワーPの値であり、右辺のPiが構造要素200の各点のパワーPの値である。つまり、収縮処理において、原点201の画素に対応するパワーPの値が、構造要素200の3点の中で最小のパワーPの点の画素に対応するパワーPの値に置き換えられる。
図10は、血流領域及び非血流領域におけるモーフォロジー処理の概念図である。図10において、QSPの4ラインの並列受信のうち、反射超音波の内側の2ラインを「内」で表し、外側の2ラインを「外」で表し、縦方向を血流信号の信号レベルにとる。血流領域における外側の隣り合う2ラインを含む4ラインの領域を、領域R1,R2とし、非血流領域における外側の隣り合う2ラインを含む4ラインの領域を、領域R3とする。領域R1,R2において、モーフォロジー処理部761のモーフォロジー処理により、QSPにより信号レベルが低下した外側の2ラインに対応するパワーPは、上向きの矢印で示すように高められて補償される。また、領域R3において、モーフォロジー処理部761のモーフォロジー処理は、血流の辺縁に対応するパワーPの信号レベルが変更されず影響がない。
図11(a)は、血流速度V及びパワーPとの座標平面におけるキーホールフィルター762の除去する信号成分を示す図である。図11(b)は、複素座標平面におけるキーホールフィルター762の除去する信号成分を示す図である。
キーホールフィルター762は、Cモード画像のフレームを構成するパワーP、血流速度V、分散Tをフィルタリングして、ノイズを除去する。図8(a)に示すように、Vモード、V−Tモードにおいて、キーホールフィルター762は、モーフォロジー処理部761によりモーフォロジー処理が施されたパワーPと、データ変換部75により算出された血流速度Vと、により設定された除去する領域の血流速度Vを除去して、血流速度Vをフィルタリングする。Vモード、V−Tモードにおいて、血流速度Vは、画像表示(色付け)に使用される。図8(b)に示すように、Pモードにおいて、キーホールフィルター762は、モーフォロジー処理部761によりモーフォロジー処理が施されたパワーPと、データ変換部75により算出された血流速度Vと、により設定された除去する領域のパワーPを除去して、パワーPをフィルタリングする。Pモードにおいて、パワーPは、画像表示(色付け)に使用される。
キーホールフィルター762は、図11(a)に示すように、血流速度V、パワーPのうち、横軸に血流速度V、縦軸にパワーPをとる平面において、斜線で表した範囲(領域)の信号成分を除去する2次元LUT(Look Up Table)として構成される。キーホールフィルター762が「キーホールフィルター」と呼ばれるのは、図11(a)の座標平面の信号成分を除去する領域が、複素座標平面において、図11(b)に示す鍵穴の形状の領域となるからである。図11(b)において、血流速度Vがベクトルの位相角になり、パワーPがベクトルの大きさになる。
より具体的には、Vモード、V−Tモードにおいて、キーホールフィルター762は、血流速度Vが所定閾値より小さい領域の血流信号を、クラッターノイズとみなし、パワーPが所定閾値より小さい領域の血流信号を、背景ノイズとみなして、これらの領域の血流速度Vを除去する。また、Pモードにおいて、キーホールフィルター762は、血流速度Vが所定閾値より小さい領域の血流信号を、クラッターノイズとみなし、パワーPが所定閾値より小さい領域の血流信号を、背景ノイズとみなして、これらの領域のパワーPを除去する。
空間フィルター763は、Cモード画像のフレームを構成する血流速度V、パワーP、分散Tのデータをスムージングするための2次元の加重平均フィルターである。図8(a)に示すように、Vモード又はV−Tモードにおいて、空間フィルター763は、キーホールフィルター762によりフィルタリングされた血流速度Vと、データ変換部75により算出された分散Tとをフィルタリングする。図8(b)に示すように、Pモードにおいて、空間フィルター763は、キーホールフィルター762によりフィルタリングされたパワーPをフィルタリングする。
フレーム間フィルター77は、ノイズカットフィルター部76によりフィルタリングされた血流速度V、パワーPと、分散Tと、のうち、操作部2で操作入力された表示モードに対応して、Cモード画像を構成する各フレームの血流成分について、フレーム間の変化を滑らかにし残像を残すようにフィルタリングを行う。
Cモード画像変換部78は、フレーム間フィルター77によりフィルタリングされた血流速度V、パワーP、分散Tを、Cモード画像に変換して生成する。
表示処理部8は、表示器102に表示させる表示画像データを構築し、表示器102にその表示画像データを表示させる処理を行う。特に、Bモードが選択されている場合は、超音波画像として、Bモード画像生成部5で生成したBモード画像を表示画面データ中に表示させる処理を行う。また、Cモードが選択されている場合は、超音波画像として、Bモード画像生成部5で生成したBモード画像上に選択されたROIの位置に、Cモード画像生成部7で生成したCモード画像を重畳させた合成画像データを生成し、これを表示画面データ中に表示させる処理を行う。
図12(a)、図12(b)を参照して、超音波画像診断装置100によるCモード画像のゲイン補償の表示結果を説明する。図12(a)は、本実施の形態におけるVモードでの頸動脈のCモード画像を示す図である。図12(b)は、本実施の形態におけるPモードでの頸動脈のCモード画像を示す図である。ただし、超音波診断装置において一般的に実施されている空間フィルターやCモード画像変換などを省いて処理した画像を示している。
図12(a)に示すように、超音波画像診断装置100のモーフォロジー処理が施されたパワーPと、血流速度V、分散Tと、に基づくVモードでの頸動脈のCモード画像は、図17(a)の従来の超音波画像診断装置によるVモードでの頸動脈のCモード画像に比べて、QSPによる4ラインごとの縦縞が補償されている。また、図12(a)のCモード画像は、細い血流のつぶれ、血流の辺縁のボケた広がり及び背景ノイズの増幅も発生していない。
図12(b)に示すように、超音波画像診断装置100のモーフォロジー処理が施されたパワーPと、血流速度Vと、に基づくPモードでの頸動脈のCモード画像は、図17(b)の従来の超音波画像診断装置によるPモードでの頸動脈のCモード画像に比べて、QSPによる4ラインごとの縦縞が補償されている。また、図12(b)のCモード画像は、細い血流のつぶれ、血流の辺縁のボケた広がり及び背景ノイズの増幅も発生していない。
以上、本実施の形態によれば、超音波画像診断装置100は、送信部3により、超音波探触子101への送信信号を生成し、受信部4により、超音波探触子101からの1ラインの送信超音波に対応して並列受信された4ラインの反射超音波に対応する受信信号を生成し、直交検波回路71、コーナーターン制御部72、MTIフィルター73、相関演算部74、データ変換部75により、4ラインの受信信号からパワーP、血流速度V、分散Tを算出し、モーフォロジー処理部761により、パワーPにモーフォロジー処理を施し、Cモード画像変換部78により、モーフォロジー処理が施されたパワーPを含む血流信号をCモード画像に変換する。モーフォロジー処理部761は、前記算出されたパワーPに膨張処理を施し、膨張処理が施されたパワーPに収縮処理を施す。モーフォロジー処理部761は、膨張処理として、Cモード画像の各画素上に構造要素200を移動させるとともに、構造要素200上の原点201の画素に対応するパワーPを構造要素200上のパワーPが最大の点の画素に対応するパワーPに置き換え、収縮処理として、Cモード画像の各画素上に構造要素200を移動させるとともに、構造要素200上の原点201の画素に対応するパワーPを構造要素上のパワーPが最小の点の画素に対応するパワーPに置き換える。
このため、QSPでのPモード、Vモード、V−TモードのCモード画像上で、並列受信の外側のラインに対応するゲイン低下による信号の凹みを補償でき、且つ、細い血流のつぶれ、血流の辺縁のボケた広がり及び背景ノイズの増幅の発生を防ぐことができる。
(第2の実施の形態)
図13及び図14を参照して、本発明に係る第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態と同様に超音波画像診断装置100を用いるが、モーフォロジー処理部761の動作が第1の実施の形態と異なる。このため、第1の実施の形態と同じ部分の説明を省略し、主としてモーフォロジー処理部761の説明を行う。
図13(a)は、本実施の形態におけるVモード、V−Tモードでのノイズカットフィルター部76の内部構成を示すブロック図である。図13(b)は、本実施の形態におけるPモードでのノイズカットフィルター部76の内部構成を示すブロック図である。
図13(a)、図13(b)に示すように、Vモード、V−Tモード、Pモードのいずれにおいても、モーフォロジー処理部761は、データ変換部75により算出されたパワーP及び血流速度Vにモーフォロジー処理を施す。本実施の形態では、モーフォロジー処理部761は、クロージング処理として、データ変換部75により算出されたパワーPに、膨張処理及び収縮処理を順に施し、このパワーPの変更に応じて血流速度Vの値を変更する。
本実施の形態においても、モーフォロジー処理部761は、図9(b)に示すように、Cモードフレーム300上で構造要素200を移動させる。
モーフォロジー処理部761は、モーフォロジー処理の膨張処理として、上記の構造要素200の移動とともに、次式(7)により、構造要素200の各点の信号値を用いて、Cモードフレーム300の各画素に対応する原点201のパワーPの値を変更する。
式(7)において、左辺のPが原点201の変更後のパワーPの値であり、右辺のPimaxが点imaxのパワーPの値である。ただし点imaxは、構造要素200の3点の中で最大のパワーPのある点を示す。つまり、膨張処理において、原点201の画素に対応するパワーPの値が、構造要素200の3点の中で最大のパワーPの点の画素に対応するパワーPの値に置き換えられる。
さらに、モーフォロジー処理部761は、上記膨張処理と並行して、上記の構造要素200の移動とともに、次式(8)により、構造要素200の各点の信号値を用いて、Cモードフレーム300の各画素に対応する原点201の血流速度Vの値を変更する。
式(8)において、左辺のVが原点201の変更後の血流速度Vの値であり、右辺のVimaxが点imaxの血流速度Vの値である。つまり、原点201の画素に対応する血流速度Vの値が、構造要素200の3点の中で最大のパワーPの点の画素に対応する血流速度Vの値に置き換えられる。
そして、膨張処理の後、モーフォロジー処理部761は、収縮処理として、上記の構造要素200の再度の移動とともに、次式(9)により、構造要素200の各点の信号値を用いて、Cモードフレーム300の各画素に対応する原点201のパワーPの値を変更する。
式(9)において、左辺のPが原点201の変更後のパワーPの値であり、右辺のPiminが点iminのパワーPの値である。ただし、点iminは、構造要素200の3点の中で最小のパワーPのある点を示す。つまり、収縮処理において、原点201の画素に対応するパワーPの値が、構造要素200の3点の中で最小のパワーPの点の画素に対応するパワーPの値に置き換えられる。
さらに、モーフォロジー処理部761は、上記収縮処理と並行して、上記の構造要素200の再度の移動とともに、次式(10)により、構造要素200の各点の信号値を用いて、Cモードフレーム300の各画素に対応する原点201の血流速度Vの値を変更する。
式(10)において、左辺のVが原点201の置き換え後の血流速度Vの値であり、右辺のViminが点iminの血流速度Vの値である。つまり、原点201の画素に対応する血流速度Vの値が、構造要素200の3点の中で最小のパワーPの点の画素に対応する血流速度Vの値に置き換えられる。
図14(a)、図14(b)を参照して、超音波画像診断装置100によるCモード画像のゲイン補償の表示結果を説明する。図14(a)は、本実施の形態におけるVモードでの頸動脈のCモード画像を示す図である。図14(b)は、本実施の形態におけるPモードでの頸動脈のCモード画像を示す図である。
図14(a)に示すように、超音波画像診断装置100のモーフォロジー処理が施されたパワーP、血流速度Vと、分散Tと、に基づくVモードでの頸動脈のCモード画像は、図17(a)の従来の超音波画像診断装置によるVモードでの頸動脈のCモード画像に比べて、QSPによる4ラインごとの縦縞が補償されている。また、図14(a)のCモード画像は、細い血流のつぶれ、血流の辺縁のボケた広がり及び背景ノイズの増幅も発生していない。
図14(b)に示すように、超音波画像診断装置100のモーフォロジー処理が施されたパワーP、血流速度Vに基づくPモードでの頸動脈のCモード画像は、図17(b)の従来の超音波画像診断装置によるPモードでの頸動脈のCモード画像に比べて、QSPによる4ラインごとの縦縞が補償されている。また、図14(b)のCモード画像は、細い血流のつぶれ、血流の辺縁のボケた広がり及び背景ノイズの増幅も発生していない。
以上、本実施の形態によれば、モーフォロジー処理部761は、膨張処理として、Cモード画像の各画素上に構造要素200を移動させるとともに、構造要素200上の原点201の画素に対応するパワーPを構造要素200上のパワーPが最大の点の画素に対応するパワーPに置き換え、収縮処理として、Cモード画像の各画素上に構造要素200を移動させるとともに、構造要素200上の原点201の画素に対応するパワーPを構造要素200上のパワーPが最小の点の画素に対応するパワーPに置き換える。モーフォロジー処理部761は、膨張処理の構造要素200の移動とともに、構造要素200上の原点201の画素に対応する血流速度Vを前記パワーPの置き換え元の点の画素に対応する血流速度Vに置き換え、収縮処理の構造要素200の移動とともに、構造要素200上の原点201の画素に対応する血流速度を前記パワーPの置き換え元の点の画素に対応する血流速度Vに置き換える。
このため、QSPでのPモード、Vモード、V−Tモード等のCモード画像上で、ゲイン低下による信号の凹みを補償でき、且つ、細い血流のつぶれ、血流の辺縁のボケた広がり及び背景ノイズの増幅の発生を防ぐことができる。また、パワーPが低くS/N(Signal to Noise)比が低い点のパワーPをモーフォロジー処理で持ち上げてしまい、不適切な血流速度Vが表示されることを低減できる。
(第3の実施の形態)
図15を参照して、本発明に係る第3の実施の形態を説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態と同様に超音波画像診断装置100を用いるが、モーフォロジー処理部761の動作が第1の実施の形態と異なる。このため、第1の実施の形態と同じ部分の説明を省略し、主としてモーフォロジー処理部761の説明を行う。
図15は、本実施の形態におけるVモード、V−Tモードでのノイズカットフィルター部76の内部構成を示すブロック図である。
図15に示すように、Vモード、V−Tモードのいずれにおいても、モーフォロジー処理部761は、データ変換部75により算出されたパワーP及び分散Tにモーフォロジー処理を施す。本実施の形態では、モーフォロジー処理部761は、クロージング処理として、データ変換部75により算出されたパワーPに、膨張処理及び収縮処理を順に施し、このパワーPの変更に応じて分散Tの値を変更する。
本実施の形態においても、モーフォロジー処理部761は、図9(b)に示すように、Cモードフレーム300上で構造要素200を移動させる。
モーフォロジー処理部761は、モーフォロジー処理の膨張処理として、上記の構造要素200の移動とともに、式(7)により、構造要素200の各点の信号値を用いて、Cモードフレーム300の各画素に対応する原点201のパワーPの値を変更する。つまり、膨張処理において、原点201の画素に対応するパワーPの値が、構造要素200の3点の中で最大のパワーPの点の画素に対応するパワーPの値に置き換えられる。
さらに、モーフォロジー処理部761は、上記膨張処理と並行して、上記の構造要素200の移動とともに、次式(11)により、構造要素200の各点の信号値を用いて、Cモードフレーム300の各画素に対応する原点201の分散Tの値を変更する。
式(11)において、左辺のTが原点201の変更後の分散Tの信号値であり、右辺のTimaxが点imaxの分散Tの値である。つまり、原点201の画素に対応する分散Tの値が、構造要素200の3点の中で最大のパワーPの点の画素に対応する分散Tの値に置き換えられる。
そして、膨張処理の後、モーフォロジー処理部761は、収縮処理として、上記の構造要素200の再度の移動とともに、式(9)により、構造要素200の各点の信号値を用いて、Cモードフレーム300の各画素に対応する原点201のパワーPの値を変更する。つまり、収縮処理において、原点201の画素に対応するパワーPの値が、構造要素200の3点の中で最小の点の画素に対応するパワーPの値に置き換えられる。
さらに、モーフォロジー処理部761は、上記収縮処理と並行して、上記の構造要素200の再度の移動とともに、次式(12)により、構造要素200の各点の信号値を用いて、Cモードフレーム300の各画素に対応する原点201の分散Tの値を変更する。
式(12)において、左辺のTが原点201の変更後の分散Tの値であり、右辺のTiminが点iminの分散Tの値である。つまり、原点201の画素に対応する分散Tの値が、構造要素200の3点の中で最小のパワーPの点の画素に対応する分散Tの値に置き換えられる。
本実施の形態での超音波画像診断装置100のモーフォロジー処理が施されたパワーP、分散Tと、血流速度Vと、に基づくVモードでの頸動脈のCモード画像は、QSPによる4ラインごとの縦縞が補償され、細い血流のつぶれ、血流の辺縁のボケた広がり及び背景ノイズの増幅も発生しない。
Pモードでは、Cモード画像の生成に分散Tを使わない。このため、本実施の形態のPモードでの超音波画像診断装置100の動作は、図8(b)に示すように、第1の実施の形態における動作と同様となる。
以上、本実施の形態によれば、モーフォロジー処理部761は、膨張処理として、Cモード画像の各画素上に構造要素200を移動するとともに、構造要素200上の原点201の画素に対応するパワーPを構造要素200上のパワーPが最大の点の画素に対応するパワーPに置き換え、収縮処理として、Cモード画像の各画素上に構造要素200を移動させるとともに、構造要素200上の原点201の画素に対応するパワーPを構造要素200上のパワーPが最小の点の画素に対応するパワーPに置き換える。モーフォロジー処理部761は、膨張処理の構造要素200の移動とともに、構造要素200上の原点201の画素に対応する分散Tを前記パワーPの置き換え元の点の画素に対応する分散Tに置き換え、収縮処理の構造要素200の移動とともに、構造要素200上の原点201の画素に対応する分散Tを前記パワーPの置き換え元の点の画素に対応する分散Tに置き換える。
このため、QSPでのPモード、Vモード、V−Tモード等のCモード画像上で、ゲイン低下による信号の凹みを補償でき、且つ、細い血流のつぶれ、血流の辺縁のボケた広がり及び背景ノイズの増幅の発生を防ぐことができる。また、パワーPが低くS/N値が低い点のパワーPをモーフォロジー処理で持ち上げてしまい、不適切な分散Tが表示されることを低減できる。
(第4の実施の形態)
図16を参照して、本発明に係る第4の実施の形態を説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態と同様に超音波画像診断装置100を用いるが、モーフォロジー処理部761の動作が第1の実施の形態と異なる。このため、第1の実施の形態と同じ部分の説明を省略し、主としてモーフォロジー処理部761の説明を行う。
図16は、本実施の形態におけるVモード、V−Tモードでのノイズカットフィルター部76の内部構成を示すブロック図である。
図16に示すように、Vモード、V−Tモードのいずれにおいても、モーフォロジー処理部761は、データ変換部75により算出されたパワーP、血流速度V及び分散Tにモーフォロジー処理を施す。本実施の形態では、モーフォロジー処理部761は、クロージング処理として、データ変換部75により算出されたパワーPに、膨張処理及び収縮処理を順に施し、このパワーPの変更に応じて、血流速度V、分散Tの値を変更する。
本実施の形態においても、モーフォロジー処理部761は、図9(b)に示すように、Cモードフレーム300上で構造要素200を移動させる。
モーフォロジー処理部761は、モーフォロジー処理の膨張処理として、上記の構造要素200の移動とともに、式(7)により、構造要素200の各点の信号値を用いて、Cモードフレーム300の各画素に対応する原点201のパワーPの値を変更する。つまり、膨張処理において、原点201のパワーPの信号値が、構造要素200の3点の中で最大のパワーPの点のパワーPの値に置き換えられる。
さらに、モーフォロジー処理部761は、上記膨張処理と並行して、上記の構造要素200の移動とともに、式(8)により、構造要素200の各点の信号値を用いて、Cモードフレーム300の各画素に対応する原点201の血流速度Vの信号値を変更する。つまり、原点201の画素に対応する血流速度Vの値が、構造要素200の3点の中で最大のパワーPの点の画素に対応する血流速度Vの信号値に置き換えられる。
さらに、モーフォロジー処理部761は、上記膨張処理と並行して、上記の構造要素200の移動とともに、式(11)により、構造要素200の各点の信号値を用いて、Cモードフレーム300の各画素に対応する原点201の分散Tの値を変更する。つまり、原点201の画素に対応する分散Tの値が、構造要素200の3点の中で最大のパワーPの点の画素に対応する分散Tの値に置き換えられる。
そして、膨張処理の後、モーフォロジー処理部761は、収縮処理として、上記の構造要素200の再度の移動とともに、式(9)により、構造要素200の各点の信号値を用いて、Cモードフレーム300の各画素に対応する原点201のパワーPの値を変更する。つまり、収縮処理において、原点201の画素に対応するパワーP値が、構造要素200の3点の中で最小のパワーPの点の画素に対応するパワーPの値に置き換えられる。
さらに、モーフォロジー処理部761は、上記収縮処理と並行して、上記の構造要素200の再度の移動とともに、式(10)により、構造要素200の各点の信号値を用いて、Cモードフレーム300の各画素に対応する原点201の血流速度Vの信号値を変更する。つまり、原点201の画素に対応する分散Tの信号値が、構造要素200の3点の中で最小のパワーPの点の画素に対応する血流速度Vの信号値に変更される。
さらに、モーフォロジー処理部761は、上記収縮処理と並行して、上記の構造要素200の再度の移動とともに、式(12)により、構造要素200の各点の信号値を用いて、Cモードフレーム300の各画素に対応する原点201の分散Tの値を変更する。つまり、原点201の画素に対応する分散Tの値が、構造要素200の3点の中で最小のパワーPの点の画素に対応する分散Tの値に置き換えられる。
本実施の形態での超音波画像診断装置100のモーフォロジー処理が施されたパワーP、血流速度V、分散Tに基づくVモードでの頸動脈のCモード画像は、QSPによる4ラインごとの縦縞が補償され、細い血流のつぶれ、血流の辺縁のボケた広がり及び背景ノイズの増幅も発生しない。
Pモードでは、Cモード画像の生成に分散Tを使わない。このため、本実施の形態のPモードでの超音波画像診断装置100の動作は、図8(b)に示すように、第1の実施の形態における動作と同様となる。
以上、本実施の形態によれば、モーフォロジー処理部761は、膨張処理として、Cモード画像の各画素上に構造要素200を移動させるとともに、構造要素200上の原点201の画素に対応するパワーPを構造要素200上のパワーPが最大の点の画素に対応するパワーPに置き換え、収縮処理として、Cモード画像の各画素上に構造要素200を移動させるとともに、構造要素200上の原点201の画素に対応するパワーPを構造要素200上のパワーPが最小の点の画素に対応するパワーPに置き換える。モーフォロジー処理部761は、膨張処理の構造要素200の移動とともに、構造要素200上の原点の画素に対応する血流速度V、分散Tを前記パワーPの置き換え元の点の画素に対応する血流速度V、分散Tに置き換え、収縮処理の構造要素200の移動とともに、構造要素200上の原点の画素に対応する血流速度V、分散Tを前記パワーPの置き換え元の点の画素に対応する血流速度V、分散Tに置き換える。
このため、QSPでのPモード、Vモード、V−Tモード等のCモード画像上で、ゲイン低下による信号の凹みを補償でき、且つ、細い血流のつぶれ、血流の辺縁のボケた広がり及び背景ノイズの増幅の発生を防ぐことができる。また、パワーPが低くS/N値が低い点のパワーPをモーフォロジー処理で持ち上げてしまい、不適切な血流速度V、分散Tが表示されることを低減できる。
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係る好適な超音波画像診断装置及び超音波画像生成方法の一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、上記各実施の形態において、キーホールフィルター762は、Vモード、V−Tモードにおいて、パワーP、血流速度Vを用いて設定された除去する領域に対応する血流速度Vを除去し、Pモードにおいて、パワーP、血流速度Vを用いて設定された除去する領域に対応するを除去する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、キーホールフィルター762は、Vモード、V−Tモードにおいて、パワーP、血流速度Vを用いて設定された除去する領域に対応するパワーP、血流速度V、分散Tを除去し、Pモードにおいて、パワーP、血流速度Vを用いて設定された除去する領域に対応するパワーP、血流速度Vを除去する構成としてもよい。
また、上記各実施の形態において、Cモード画像処理器59がCモード画像生成部7の動作を行う構成としたが、これに限定されるものではない。Cモード画像生成部7の動作に対応する処理をプログラムの実行(例えば、演算処理器61(制御部9)によるメモリ60上のプログラムの実行)により行う構成としてもよい。本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体は、メモリ60としたが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も本発明に適用される。
また、以上の実施の形態における超音波画像診断装置100を構成する各部の細部構成及び細部動作に関して本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。