JP6449666B2 - エンジンバルブ - Google Patents
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Description
また、定格点運転時、トルク点運転時等のノック域運転時や中高負荷運転時等のエンジン高温域において、冷媒が液体状態を維持できるため、エンジンバルブから熱引きを行うことで、燃焼室を冷却してノッキングを抑制できる。ひいては、ノッキングを抑制できるため、点火時期を進角させることができ、出力及び燃費を向上できる。
図1は、本発明の一実施形態に係るエンジンバルブ1の縦断面図であり、後述する冷媒10が固体のときにエンジンバルブ1が閉じた状態を示す図である。図1では、本実施形態に係るエンジンバルブ1をガソリンエンジンの排気バルブとして適用した例を示している(図2〜図4も同様)。
図1及び図2に示すように、冷媒10が固体の場合は、中空部13内で冷媒10自体が移動することはなく、冷媒10内で対流が生じることもない。そのため、エンジンバルブ1が開いて燃焼室4内の排気から冷媒10が受けた熱の移動は、後述する冷媒10が液体の場合よりも少ない。従って、例えばアイドリング運転等のエンジン低負荷時において、燃焼室4内の排気温度が低温であるため冷媒10が固体である場合には、冷媒10が液体である場合と比べて、エンジンバルブ1による熱引きが小さい。即ち、エンジンバルブ1からの熱損失が小さく、燃費が向上する。
図3及び図4に示すように、冷媒10が液体の場合は、エンジンバルブ1が下方に移動して開いたときに、冷媒10内で対流が生じるとともに冷媒10が強制的に撹拌されて中空部13内の上部に移動し、中空部13内の上部が冷媒10で満たされる(図4参照)。そのため、エンジンバルブ1が開いて燃焼室4内の排気から冷媒10が受けた熱の移動は、上述の冷媒10が固体の場合よりも多い。加えて、冷媒10とバルブガイド22との距離が近くなるため、エンジンバルブ1からバルブガイド22に効率良く熱が伝達される。従って、例えばノック域運転時や中高負荷運転時等のエンジン高温域において、燃焼室4内の排気温度が高温であるため冷媒10が液体である場合には、冷媒10が固体である場合と比べて、エンジンバルブ1による熱引きが大きい。即ち、エンジンバルブ1からの熱損失が大きく、エンジン高温域で生じ易いノッキングが抑制される。さらには、ノッキングが抑制されるため、点火時期を進角させることができ、出力及び燃費が向上する。
ここで、図5は、エンジンのBSFCマップを示す図である。図5中、横軸はエンジン回転数を表し、縦軸はエンジントルクを表している。図5のBSFCマップは、要求されたエンジントルクに対して最も効率の良いエンジン回転数を表しており、図5中の運転領域a<運転領域b<運転領域c<運転領域dの順に、燃料消費率(g/kWh)が大きい。そのため、有段ギアを有する変速機の多段化や無段変速機の適用により、エンジンの運転が、最も燃費が良い、即ちBSFCが最も少ない運転領域a内で行われるように、ギア比が制御される。図5に示すように、通常この運転領域aはMBT域内であり、MBT域のうちBSFCが最も少ない運転領域aでは、排気温度が比較的低温となるため、このときに冷媒10が固体になることで、エンジンバルブ1からの熱損失が低減され、燃費がさらに向上する。
通常のガソリンエンジン及びハイブリッドエンジンいずれも、最も燃費の良い領域を走行するのが通常である。通常のガソリンエンジンの場合、運転者の要求に対してダイレクトに出力を出す必要があることから、低負荷時や高負荷時に燃費の悪い領域での運転を余儀なくされることがあり、その運転エリアNAは図8A中に破線で示す通りとなる。
以下、これらの各合金について、詳しく説明する。
本実施形態の冷媒10として用いるアルミニウム合金は、2元素以上を含有するアルミニウム合金である。具体的には、アルミニウムを50質量%〜86質量%含有するとともに、マグネシウムを14質量%〜50質量%含有するか、又は、マグネシウムと、リチウム、ベリリウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、インジウム、スズ、バリウム及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種と、からなる合金元素を合計で14質量%〜50質量%含有する。即ち、本実施形態のアルミニウム合金は、合金元素として少なくともマグネシウムを含み、加えて上記列挙した合金元素を1種以上含んでもよい。
図9に示すように、アルミニウム−マグネシウム合金は、マグネシウム含有量が14質量%〜85質量%、即ちアルミニウム含有量が15質量%〜86質量%の範囲内であれば、その融点はおよそ437℃〜450℃であることが分かる。
一方、高負荷時には、排気温度は通常700℃を超えるため、冷媒10は液体状態を維持できる。また、中負荷時には、排気温度は通常450℃を超えるため、冷媒10は液体状態を維持できる。
従って本実施形態では、マグネシウムを除く上記で列挙した合金元素のうち、ベリリウム、カルシウム、ストロンチウム、インジウム、スズ、バリウム及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
本実施形態の冷媒10として用いるマグネシウム合金は、2元素以上を含有するマグネシウム合金である。具体的には、マグネシウムを50質量%〜85質量%含有するとともに、アルミニウムを15質量%〜50質量%含有するか、又は、アルミニウムと、リチウム、ベリリウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、インジウム、スズ、バリウム及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種と、からなる合金元素を合計で15質量%〜50質量%含有する。即ち、本実施形態のマグネシウム合金は、合金元素として少なくともアルミニウムを含み、加えて上記列挙した合金元素を1種以上含んでもよい。
一方、高負荷時には、排気温度は通常700℃を超えるため、冷媒10は液体状態を維持できる。また、中負荷時には、排気温度は通常450℃を超えるため、冷媒10は液体状態を維持できる。
本実施形態の冷媒10として用いるナトリウム合金は、2元素以上を含有するナトリウム合金である。具体的には、ナトリウム合金は、バリウムを含有し且つナトリウムを50モル%〜72モル%含有するナトリウム合金、ビスマスを含有し且つナトリウムを50モル%〜75モル%含有するナトリウム合金、又は、スズを含有し且つナトリウムを50モル%〜79モル%含有するナトリウム合金である。
図10に示すように、ナトリウム含有量が50モル%以上のナトリウム−バリウム合金は、バリウム含有量が28モル%〜50モル%の範囲内、即ちナトリウム含有量が50モル%〜72モル%であれば、その融点はおよそ197℃であることが分かる。このように、通常の金属は合金化すると単一金属よりも融点が低下するところ、ナトリウム合金は純ナトリウム(融点98℃)よりも融点が高くなる特性を有する。
一方、高負荷時には、排気温度は通常700℃を超えるため、冷媒10は液体状態を維持できる。また、中負荷時には、排気温度は通常450℃を超えるため、冷媒10は液体状態を維持できる。
図11に示すように、ナトリウム含有量が50モル%以上のナトリウム−ビスマス合金は、ナトリウム含有量が50モル%〜75モル%の範囲内であれば、その融点はおよそ444℃であることが分かる。
一方、高負荷時には、排気温度は通常700℃を超えるため、冷媒10は液体状態を維持できる。また、中負荷時には、排気温度は通常450℃を超えるため、冷媒10は液体状態を維持できる。
図12に示すように、ナトリウム含有量が50モル%以上のナトリウム−スズ合金は、スズ含有量が21モル%〜50モル%、即ちナトリウム含有量が50モル%〜79モル%の範囲内であれば、その融点はおよそ357℃〜441℃であることが分かる。
一方、高負荷時には、排気温度は通常700℃を超えるため、冷媒10は液体状態を維持できる。また、中負荷時には、排気温度は通常450℃を超えるため、冷媒10は液体状態を維持できる。
2…シリンダヘッド
3…排気通路
4…燃焼室
5…排気ポート
10…冷媒
11…軸部
12…傘部
13…中空部
21…バルブ挿通孔
22…バルブガイド
23…バルブシート
121…外側壁
122…バルブフェイス
Claims (3)
- 軸部と、該軸部の軸方向一端側に一体的に設けられた傘部と、を含んで構成され、前記軸部から前記傘部にかけて中空部が形成されたエンジンバルブであって、
前記中空部に封入されたアルミニウム合金からなる冷媒を備え、
前記アルミニウム合金は、
アルミニウムを50質量%〜86質量%含有するとともに、
マグネシウムを14質量%〜50質量%含有するか、又は、
マグネシウムと、リチウム、ベリリウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、インジウム、スズ、バリウム及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種と、からなる合金元素を合計で14質量%〜50質量%含有するエンジンバルブ。 - 軸部と、該軸部の軸方向一端側に一体的に設けられた傘部と、を含んで構成され、前記軸部から前記傘部にかけて中空部が形成されたエンジンバルブであって、
前記中空部に封入されたナトリウム合金からなる冷媒を備え、
前記ナトリウム合金は、バリウムを含有し且つナトリウムを50モル%〜72モル%含有するナトリウム合金、ビスマスを含有し且つナトリウムを50モル%〜75モル%含有するナトリウム合金、又は、スズを含有し且つナトリウムを50モル%〜79モル%含有するナトリウム合金であるエンジンバルブ。 - 前記軸部及び前記傘部は、耐熱鋼からなり、
前記アルミニウム合金の合金元素は、マグネシウムと、ベリリウム、カルシウム、ストロンチウム、インジウム、スズ、バリウム及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種と、からなる請求項1に記載のエンジンバルブ。
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