JP6448416B2 - 発泡樹脂シート用樹脂組成物、および、発泡樹脂シート - Google Patents
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Description
本発明の発泡樹脂シートに用いる樹脂組成物(発泡樹脂シート用樹脂組成物)は、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対して、可塑剤(B)を20〜55質量部、エチレン系樹脂(C)を0.5〜15質量部、および、熱膨張マイクロカプセル(D)を1〜20質量部含有する。また、上記ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対して、さらにエチレン共重合ポリ塩化ビニル樹脂(E)を1〜30質量部含有することが好ましい。以下、本発明の発泡樹脂シート用樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
本発明に用いる塩化ビニル系樹脂(A)としては、任意の平均重合度の塩化ビニル系樹脂を用いることができる。好ましくは、塩化ビニル系樹脂(A)の平均重合度は、600〜2,000である。平均重合度が600以上であれば、十分な機械強度を得ることができる。一方、平均重合度が2,000以下であれば、溶融粘度の増加に伴う発熱が生じることなく、分解による着色の発生を無くすことができる。
本発明に用いる可塑剤としては、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)との相溶性が良好であれば特に限定されることはなく、公知の可塑剤を使用することができる。このような可塑剤としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル、テトラヒドロフタル酸エステル、トリクレシルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリ(2−クロロエチル)ホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジ−n−アルキル、ジブチルジグリコールアジペート、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル、フマル酸ジブチル、トリメリット酸トリス−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリアルキルや、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化綿実油、エポキシ化落花生油、エポキシ化紅花油、エポキシ化ブドウ種子油、エポキシ化オリーブ油等のエポキシ化植物油等があげられる。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いるエチレン系樹脂(C)は、エチレンを共重合成分とする共重合体であればよく、例えばエチレンと、酢酸ビニル、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エチル、メチル(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及び(メタ)アクリル酸グリシジルからなる群から選ばれる少なくとも1種以上との共重合体を例示することができ、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・無水マレイン酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル・無水マレイン酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・メチル(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体などを例示することができる。
本発明で使用する熱膨張マイクロカプセル(D)はアクリロニトリル・メタアクリロニトリル・酢酸ビニル共重合体からなるシェルと、このシェル中に封入されたブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の揮発性液体からなるカプセルであり、膨張開始温度が100〜180℃であることが好ましい。膨張を開始する温度を100℃以上とすることで、上記エチレン系樹脂(C)と熱膨張マイクロカプセル(D)とを事前に溶融混練する場合であっても、熱膨張マイクロカプセル(D)の膨張を抑制することができる。また、膨張開始温度を180℃以下とすることで、発泡樹脂シート用樹脂組成物を加熱成形する際の成形温度において該熱膨張マイクロカプセル(D)が膨張を開始し、所定の発泡樹脂シートを成形することができる。なお、上記膨張開始温度は、110〜155℃であることがより好ましく、120〜155℃がさらに好ましい。
本発明の発泡樹脂シート用樹脂組成物には、α−オレフィン類であるエチレンを塩化ビニルと共重合させた、エチレン共重合ポリ塩化ビニル樹脂(E)を含有することが好ましい。エチレン共重合ポリ塩化ビニル樹脂(E)を含有することで、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)と、上記エチレン系樹脂(C)との親和性が向上し、溶融加工時におけるプレートアウトの発生を抑制することで外観が特に良好な発泡樹脂シートが得られる。
上記ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対する上記可塑剤(B)の配合量は、20〜55質量部であることが重要である。可塑剤(B)の配合量が20質量部以上であれば、可撓性に優れる発泡樹脂シートが得られる。一方、可塑剤(B)の配合量が55質量部以下であれば、実用上十分な耐熱性を有する発泡樹脂シートが得られる。可塑剤(B)の配合量の下限は、23質量部以上であることが好ましく、26質量部以上であることがより好ましい。また、可塑剤(B)の配合量の上限は、53質量部以下であることが好ましく、51質量部以下であることがより好ましい。
エチレン系樹脂(C)の割合の下限としては、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、エチレン系樹脂(C)の割合の上限としては、13質量部以下であることが好ましく、11質量部以下であることがより好ましい。
熱膨張マイクロカプセル(D)の配合量の下限は、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。また、熱膨張マイクロカプセル(D)の配合量の上限は、17質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。
エチレン共重合ポリ塩化ビニル樹脂(E)の配合量の下限は、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。また、エチレン共重合ポリ塩化ビニル樹脂(E)の配合量の上限は、27質量部以下であることがより好ましく、25質量部以下であることがさらに好ましい。
本発明の発泡樹脂シートは、JIS K7127に基づき測定した引張破断伸度が50%以上であることが好ましく、60%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、100%以上が特に好ましい。引張破断伸度を50%以上とすることで、建築材料である床材や壁材などに使用する場合、例えば合板などに、発泡樹脂シートを張り付ける際、シートの破断を防止することができる。
λ=α×Cp×ρ (1)式
λ:熱伝導率(W/m・K)
α:熱拡散率(JIS R1611(2010)に準拠して測定した。)
Cp:比熱容量(JIS K7123(2012)に準拠して測定した。)
ρ:見かけ密度(JIS K7222(2005)に準拠して測定した。)
本発明の発泡樹脂シートの製造方法は、特に限定されないが、上記発泡樹脂シート用樹脂組成物を加熱成形することにより得ることができる。例えば、本発明の発泡樹脂シート用樹脂組成物を溶融混練して溶融樹脂組成物を得る工程、該溶融樹脂組成物を押出成形する工程、および、成形された溶融樹脂組成物を冷却する工程を有していてもよい。
発泡樹脂シート用樹脂組成物を溶融混練することにより、溶融樹脂組成物を得る。
押出成形された溶融樹脂組成物を冷却するには、例えば、冷却されたキャストロールなどの冷却機に、溶融樹脂組成物を接触させ、急冷する。これにより、溶融樹脂組成物が固化され、無延伸シートが得られる。冷却温度は、溶融温度よりも低温であれば限定されないが、冷却温度の上限は、例えば80℃以下、好ましくは、60℃以下であり、また、冷却温度の下限は、例えば0℃以上、好ましくは、10℃以上である。
<ポリ塩化ビニル系樹脂(A)>
A−1:大洋塩ビ(株)の商品名「TH−1000」(平均重合度1050)
B−1:ジェイプラス(株)の商品名「DOP」(フタル酸ジオクチル)
B−2:旭電化工業(株)の商品名「O−130P」(エポキシ化大豆油)
C−1:三井化学(株)の商品名「エバフレックスEV45LX」(エチレン・酢酸ビニル共重合体)
D−1:アクゾノーベル社の商品名「EXPANCEL930DU120」(膨張開始温度:122〜132℃)
D−2:アクゾノーベル社の商品名「EXPANCEL980DU120」(膨張開始温度:158〜173℃)
E−1:大洋塩ビ(株)の商品名「TE−1050」(平均重合度1050、エチレン含有率1.3質量%)
J−1:旭電化工業(株)の商品名「アデカスタブSP−76」(Ca−Zn系安定剤)
各実施例および各比較例の発泡樹脂シートを以下の方法により評価した。ここで、Tダイから発泡樹脂シートが押し出されてくる流れ方向を縦方向、その直交方向を横方向とする。
得られた発泡樹脂シートの熱拡散率、比熱容量、見かけ密度をそれぞれ測定し、(1)式により熱伝導率を算出した。密度が0.70g/cm3以下であれば、軽量性に優れているといえる。また、熱伝導率が0.1W/m・K以下であれば、断熱性に優れているといえる。
λ=α×Cp×ρ (1)式
λ:熱伝導率(W/m・K)
α:熱拡散率(JIS R1611(2010)に準拠して測定した。)
Cp:比熱容量(JIS K7123(2012)に準拠して測定した。)
ρ:見かけ密度(JIS K7222(2005)に準拠して測定した。)
得られた発泡樹脂シートの縦方向について、測定部分が10mm幅のダンベル試験片を使用し、JIS K7127に基づき、温度23℃、チャック間を40mm、引張速度300mm/minの条件で測定を行い、引張破断伸度(%)を算出した。引張破断伸度が50%以上であれば、機械特性に優れているといえる。
得られた発泡樹脂シートの外観を目視にて観察し、表面が平滑で良好であるものを「○」、表面がほぼ平滑でほぼ良好であるものを「△」、プレートアウト物などにより表面が荒れているものを「×」とした。本評価が「○」又は「△」であれば成形性に優れているといえる。
(実施例1)
ポリ塩化ビニル系樹脂(A−1)を100質量部、安定剤(J−1)を1質量部の割合でスーパーミキサーに投入した後、攪拌しながら材料温度を常温から130℃まで昇温する過程で可塑剤(B−1)を42質量部、可塑剤(B−2)を8質量部添加、混合した後、70℃まで冷却した時点で取り出した。得られた混合物を異方向二軸押出機に投入し、180℃で溶融混練した後、ストランド状に口金から押出し、水冷した後にペレット形状にカットしてペレット(X)を得た。一方、エチレン系樹脂(C−1)を35質量%、及び、熱膨張マイクロカプセル(D−1)を65質量%の割合でドライブレンドした後、同方向二軸押出機に投入し、溶融混練した後に水冷し、ペレット形状にカットしてペレット(Y)を得た。
得られたシートについて、上記評価方法により評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、熱膨張マイクロカプセル(D−1)の代わりに熱膨張マイクロカプセル(D−2)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、実施例2に係る発泡樹脂シートの成形、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、エチレン共重合ポリ塩化ビニル樹脂(E−1)の割合を20質量部とした以外は実施例1と同様の方法で、実施例3に係る発泡樹脂シートの成形、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、エチレン系樹脂(C−1)の割合を7質量部、熱膨張マイクロカプセル(D−1)の割合を13質量部とした以外は実施例1と同様の方法で、実施例4に係る発泡樹脂シートの成形、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、可塑剤(B−1)の割合を22質量部とした以外は実施例1と同様の方法で、実施例5に係る発泡樹脂シートの成形、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、エチレン共重合ポリ塩化ビニル樹脂(E−1)を未添加とした以外は実施例1と同様の方法で、実施例6に係る発泡樹脂シートの成形、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、エチレン共重合ポリ塩化ビニル樹脂(E−1)の割合を40質量部とした以外は実施例1と同様の方法で、実施例7に係る発泡樹脂シートの成形、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、可塑剤(B−1)の割合を12質量部、可塑剤(B−2)の割合を3質量部とした以外は実施例1と同様の方法で、比較例1に係る発泡樹脂シートの成形、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、可塑剤(B−1)の割合を52質量部とした以外は実施例1と同様の方法で、比較例2に係る発泡樹脂シートの成形、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、エチレン系樹脂(C−1)を未添加とした以外は実施例1と同様の方法で、比較例3に係る発泡樹脂シートの成形、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、エチレン系樹脂(C−1)の割合を18質量部、熱膨張マイクロカプセル(D−1)の割合を7質量部とした以外は実施例1と同様の方法で、比較例4に係る発泡樹脂シートの成形、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
表1より、実施例1〜7に係る発泡樹脂シートはいずれも、密度が低く、熱伝導率および引張破断伸度が基準値を満たし、シート外観が良好であった。これより、本発明の発泡樹脂シートは、軽量性、断熱性、機械特性および成形性に優れていることが確認された。
一方、可塑剤の含有量が本発明の規定範囲よりも少なかった比較例1に係るシートは、引張破断伸度が基準値未満であり、機械特性に劣るものであった。可塑剤の含有量が本発明の規定範囲よりも多かった比較例2に係るシート、および、エチレン系樹脂を用いなかった比較例3に係るシートは、密度および熱伝導率が高く、軽量性および断熱性に劣るものであった。エチレン系樹脂の含有量が本発明の規定範囲よりも多かった比較例4に係るシートは、シートの外観不良が生じ、成形性に劣るものだった。
Claims (6)
- ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対して、可塑剤(B)を20〜55質量部、エチレン系樹脂(C)を0.5〜15質量部、熱膨張マイクロカプセル(D)を1〜20質量部、および、エチレン共重合ポリ塩化ビニル樹脂(E)を1〜30質量部含有することを特徴とする発泡樹脂シート用樹脂組成物。
- 前記エチレン系樹脂(C)がエチレン・酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂シート用樹脂組成物。
- 前記エチレン系樹脂(C)と前記熱膨張マイクロカプセル(D)とが事前に溶融混練されていることを特徴とする請求項1または2に記載の発泡樹脂シート用樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の発泡樹脂シート用樹脂組成物を加熱成形して得られる発泡樹脂シートであって、前記加熱成形の際に加えられる熱により前記熱膨張マイクロカプセル(D)が膨張することを特徴とする発泡樹脂シート。
- JIS K7127に準拠して測定した引張破断伸度が、50%以上であることを特徴とする請求項4に記載の発泡樹脂シート。
- 熱伝導率が、0.1W/m・K以下であることを特徴とする請求項4または5に記載の発泡樹脂シート。
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