JP6447991B2 - 花粉症減感作療法の治療効果を予測する方法及び診断薬 - Google Patents

花粉症減感作療法の治療効果を予測する方法及び診断薬 Download PDF

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Description

本発明は、花粉症減感作療法の治療効果を予測する方法、及び、そのための診断薬等に関する。
スギ花粉症は日本特有の花粉症であり、2,000万人近い患者が存在すると推定されている。直接死に至る疾患ではないが、患者数が多く、また、患者の日常生活に大きな影響を与える。さらに、従来は少ないとされていた小児での発症の増加も問題になっている。
そこで、抗原エキスを用いた減感作療法が開発され(特許文献1)、既に、スギ花粉症のアレルゲンとしてスギ花粉からのグリセリン抽出物を含有する皮下投与用の減感作療法薬製剤が我が国で販売され、使用されている。さらに、舌下投与用の減感作療法薬製剤も開発され、販売される予定である。
しかし、精製アレルゲンによる免疫治療はアレルギー疾患の根治が期待できる治療法であるが、従来の皮下注射法での施行は長期間に亘って患者に少なからず痛み等の負担を伴うことより、施行数そのものが減ってきている。
そこで、本発明者らは、この弱点を改良すべく舌下投与による減感作療法の臨床試験を実施し、スギ花粉精製アレルゲンの舌下投与によるスギ花粉症症状の治療及び予防効果が皮下注射と同様に有効であることを示した(非特許文献1)。しかし、スギ花粉症症状が良好に緩和した群(good responder)が存在する一方、症状の緩和が限定的な群(poor responder)の存在が明らかとなった。Good responderには根治が期待でき、優れた治療法であるが、poor responderには負担が掛かるのみで長期間の薬物摂取が無駄になり、医療経済の面でも望ましくない。
減感作療法における治療効果を予測するバイオマーカーとして、インターロイキン又はインターロイキン12遺伝子の発現量を測定する方法が知られている(特許文献2)。しかし、このバイオマーカーを同定した元の臨床試験は、(1)投与量は最初の1ケ月が漸増で、その後は週2回(毎日が望ましい)と投与量が少ないこと、(2)オープン試験の結果であり、プラセボを用いた二重盲検試験と異なり、薬物による治療効果が必ずしも客観的に判定できてない可能性が有ること、(3)全血を用いた遺伝子発現解析であり、免疫細胞の反応がマスクされている可能性が有ること、など問題点が考えられている。
岡本らは、100名の患者を対象に実施したプラセボ対照のランダム化比較試験(5ヶ月間連日投与)において、臨床的な治療効果が確認されたgood responderと治療効果が認められなかったpoor responderの末梢血単核球の遺伝子発現変動解析(DNAアレイおよびRT-PCR)結果を比較することによって、治療効果と相関して動くCCL2遺伝子、IGHA1遺伝子及びNCF1遺伝子の3種類を同定した(特許文献3)。この3種の遺伝子発現量の変動より、高精度に治療効果を予測する方法が見出された。しかし、見出した3種類の遺伝子の検証試験の中で、(1)臨床試験の対象患者が軽症患者を主体としていたこと、(2)治療効果判定が1年目の症状改善であったこと、(3)遺伝子発現変動が治療初期の変動に限定してなかったため、軽症者のノイズを拾ったり、重症者の治療開始前や治療初期に薬効と連動して変動するマーカーを必ずしも拾い上げてない可能性が有ること、などの問題が残されていた。
特開平9-315998号公報 特開2011-87473号公報 特開2012-210167号公報
Horiguchi,Sら、A Randomized Controlled Trial of Sublingual Ceder Pollinosis. Int Arch Allergy Immunol. 2008:146:76-84
本発明は、これらの問題点を解決した最も優れた方法により見出された減感作療法の治療効果の高い精度を有する予測方法、並びに、そのための診断薬、マイクロアレイ、抗体アレイ及びRT-PCR用のプライマーを含有する組成物を提供する。
主に重症患者を対象とし、臨床試験の投薬前と投薬開始初期の患者試料を用いて遺伝子発現変動を解析し、2年目の花粉飛散ピーク時の薬物症状スコアの改善により臨床効果を評価した患者の末梢血単核球中の遺伝子の変動を測定し、解析することにより、舌下免疫療法の治療効果を予測するための方法、診断薬、マイクロアレイ、抗体アレイ及びRT-PCR用のプライマーを含有する組成物を開発した。
具体的には、本発明は、花粉症に対する減感作療法の治療効果を予測するための方法であって、
(1) 花粉症に対する減感作療法を実施する被験者から採取した血液より、単核球を単離するステップ、
(2) 前記単核球における、CFH(補体因子H)遺伝子、TNFRSF21(TNF related death receptor 6)遺伝子及びOSR2(odd-skipped related 2)遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量又は前記各遺伝子がコードするタンパク質産生量の変動を測定するステップ、及び、
(3) 前記遺伝子の発現量又はタンパク質産生量の変動より、前記減感作療法の治療効果に対する予測を決定するステップ、
を含む方法を提供する。
本発明の方法において、花粉症はスギ花粉症の場合がある。
また、本発明は、花粉症に対する減感作療法の治療効果を予測するための診断薬であって、
(a) CFHをコードするmRNA若しくはそのcDNAを特異的に検出する核酸プローブ若しくはプライマー、又はCFHを特異的に認識する抗体、
(b) TNFRSF21をコードするmRNA若しくはそのcDNAを特異的に検出する核酸プローブ若しくはプライマー、又はTNFRSF21を特異的に認識する抗体、及び、
(c) OSR2をコードするmRNA若しくはそのcDNAを特異的に検出する核酸プローブ若しくはプライマー、又はOSR2を特異的に認識する抗体、からなる群から選択される少なくとも1つを含む診断薬を提供する。
本発明の診断薬において、花粉症はスギ花粉症の場合がある。
本発明の診断薬において、該診断薬は組成物の場合がある。
さらに、本発明は、花粉症に対する減感作療法の治療効果を予測するためのマイクロアレイであって、
(a) CFHをコードするmRNA又はそのcDNAを特異的に検出する核酸プローブ、
(b) TNFRSF21をコードするmRNA又はそのcDNAを特異的に検出する核酸プローブ、及び、
(c) OSR2をコードするmRNA又はそのcDNAを特異的に検出する核酸プローブ、からなる群から選択される少なくとも1つを含むマイクロアレイを提供する。
本発明のマイクロアレイにおいて、花粉症に対する減感作療法の治療効果を予測するためのマイクロアレイであって、
(a) CFHをコードするmRNAを特異的に検出する核酸プローブは、配列番号7の核酸配列を有するポリヌクレオチドを含み、
(b) TNFRSF21をコードするmRNAを特異的に検出する核酸プローブは、配列番号8の核酸配列を有するポリヌクレオチドを含み、及び、
(c) OSR2をコードするmRNAを特異的に検出する核酸プローブは、配列番号9の核酸配列を有するポリヌクレオチドを含む場合がある。
本発明のマイクロアレイにおいて、花粉症は、スギ花粉症の場合がある。
本発明のマイクロアレイにおいて、該マイクロアレイは、前記核酸プローブを含む組成物の場合がある。
また、本発明は、花粉症に対する減感作療法の治療効果を予測するためのRT-PCR用組成物であって、
(a) CFHがコードされるmRNA又はそのcDNAを特異的に検出する一対のプライマー、
(b) TNFRSF21がコードされるmRNA又はそのcDNAを特異的に検出する一対のプライマー、及び、
(c) OSR2がコードされるmRNA又はそのcDNAを特異的に検出する一対のプライマー、からなる群から選択される少なくとも1対のプライマーを含むRT-PCR用組成物を提供する。
本発明のRT-PCR用組成物において、
(a) CFHがコードされるcDNAを特異的に検出するプライマーは、配列番号10及び11の核酸配列を有する一対のプライマーを含み、
(b) TNFRSF21がコードされるcDNAを特異的に検出するプライマーは、配列番号12及び13の核酸配列を有する一対のプライマーを含み、及び
(c) OSR2がコードされるcDNAを特異的に検出するプライマーは、配列番号14及び15の核酸配列を有する少なくとも一対のプライマーを含む場合がある。
本発明のRT-PCR用組成物において、花粉症はスギ花粉症の場合がある。
また、本発明は、花粉症に対する減感作療法の治療効果を予測するためのバイオマーカーあって、被験者より単離された単核球における、配列番号1で表されるCFHのmRNA、配列番号2で表されるCFHタンパク質、配列番号3で表されるTNFRSF21のmRNA、配列番号4で表されるTNFRS21タンパク質、配列番号5で表されるOSR2のmRNA及び配列番号6で表されるOSR2タンパク質からなる群から選択される少なくとも1つのmRNA又はタンパク質からなるバイオマーカーを提供する。
本発明のバイオマーカーにおいて、バイオマーカーは単離されたmRNA又はタンパク質の場合がある。
本発明の前記スギ花粉症に対する減感作療法において、Cry j 1又はCry j 2を含むアレルゲンを投与する場合がある。
本発明において、減感作療法のためのアレルゲンは口腔内舌下に投与される場合がある。
さらに、本発明に係る前記方法、前記バイオマーカー、前記診断薬、前記マイクロアレイ及び前記RT-PCR用組成物は、花粉症に対する減感作療法に限定されることなく、花粉症アレルゲン以外の真菌、ダニ、ハウスダスト又は動物の毛等由来のアレルゲンで惹起される気管支喘息又はアレルギー性気管支炎に対する減感作療法の治療効果の予測に使用される場合がある。
また、本発明は、減感作療法の治療効果の評価に用いられる場合がある。
本発明により、花粉症減感作療法に対する高精度の治療効果の予測診断が可能になる。その結果、減感作療法を受けスギ花粉症の根治患者が増え、対症療法の継続を必要とする患者が減り、かつ、患者のQOLを向上させることができる。一方、治療効果が期待できない患者には、他の治療法の選択をすることにより、減感作療法による副作用発現のリスクの低減や無駄な医療費の節約に繋がる。また、診断薬を用いて減感作療法に有効と予測された患者を選択し、その集団を用いて臨床試験を進めることによって、減感作療法の剤型変更や新たな減感作療法薬(ワクチンを含む)の開発が期間短縮できる。
DNAアレイの試験結果のグループ分けを表す図。解析要因:要因1の主効果(medicine)、b) 要因2の主効果(time point)、c) 交互作用(interaction)、d) 要因1と要因2の主効果、e) 要因2の主効果と交互作用、f) 要因1の主効果と交互作用、g) 要因1、2と交互作用3つの作用があるものの7つに分類した。 DNAアレイで選定した25種類のバイオマーカー候補遺伝子の遺伝子発現変動をRT-PCRで定量した結果を表す図(図2−1〜図2−3で同様)。減感作療法薬投薬前及び投薬開始後2月(「投薬2月後」と記載、以下同様)のCFH、FANK1、ENPP2、PRKCB、OLFM1、GOLIM4、SEPT7P2及びBNC2の各遺伝子発現の変動を表す。 減感作療法薬投薬前及び投薬2月後の、FSCN1、C22orf29、EIF2D、TUBB3、TNFRSF21、DTX3、ATP8B3及びCTNND1、TTC39C、及びINGXの各遺伝子発現の変動を表す。 減感作療法薬投薬前及び投薬開始後2月の、TTC39C、INGX、OSR2、FTSJ1及びBOKの各遺伝子発現の変動を表す。 各図において、「実著」は実薬投与著効群を、「実無」は実薬投与無効群を、「偽著」は偽薬投与著効群を、「偽無」は偽薬投与無効群を表す。 DNAアレイで選定した25種類のバイオマーカー候補遺伝子についてRT-PCRで定量した結果、減感作療法開始前と開始後初期との変動において、実薬著効群が他の群と異なった変動を示した5種類の遺伝子についてのRT-PCRでの定量結果(図3A〜Dで同様)。OLFM1のDNAアレイで定量した値を [投薬2月後]/[投薬前]の比として各個体別に表す図(左図)、RT-PCRで定量した値を [投薬2月後]/[投薬前]の比として各個体別に表す図(中央図)、RT-PCRで定量した値の各被験者群の [投薬前]と [投薬2月後]の各平均値で表した図(右図)。 OSR2のDNAアレイで定量した値を [投薬2月後]/[投薬前]の比として各個体別に表す図(左図)、RT-PCRで定量した値を [投薬2月後]/[投薬前]の比として各個体別に表す図(中央図)、RT-PCRで定量した値の各被験者群の [投薬前]と [投薬2月後]の各平均値で表した図(右図)。 TNFRSF21のDNAアレイで定量した値を [投薬2月後]/[投薬前]の比として各個体別に表す図(左図)、RT-PCRで定量した値を [投薬2月後]/[投薬前]の比として各個体別に表す図(中央図)、RT-PCRで定量した値の各被験者群の [投薬前]と [投薬2月後]の各平均値で表した図(右図)。 GOLIM1のDNAアレイで定量した値を [投薬2月後]/[投薬前]の比として各個体別に表す図(左図)、RT-PCRで定量した値を [投薬2月後]/[投薬前]の比として各個体別に表す図(中央図)、RT-PCRで定量した値の各被験者群の [投薬前]と [投薬2月後]の各平均値で表した図(右図)。 CFHのDNAアレイで定量した値を [投薬2月後]/[投薬前]の比として各個体別に表す図(左図)、RT-PCRで定量した値を [投薬2月後]/[投薬前]の比として各個体別に表す図(中央図)、RT-PCRで定量した値の各被験者群の [投薬前]と [投薬2月後]の各平均値で表した図(右図)。
本発明は、花粉症の減感作療法に対する治療効果の予測方法、そのための診断薬、マイクロアレイ、抗体アレイ及びRT-PCR用のプライマーを含有する組成物等を提供する。以下に、それぞれの実施の形態を記載する。
1. 花粉症に対する減感作療法の治療効果を予測するための方法
本発明は、花粉症に対する減感作療法の治療効果を予測するための方法であって、
(1) 花粉症に対する減感作療法を実施する被験者から採取した血液より、末梢血単核球を単離するステップ、
(2) 前記単核球における、CFH(補体因子H)遺伝子、TNFRSF21(TNF related death receptor 6)遺伝子及びOSR2(odd-skipped related 2)遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量又は前記各遺伝子がコードするタンパク質産生量の変動を測定するステップ、及び、
(3) 前記遺伝子の発現量又はタンパク質産生量の変動より、前記減感作療法の治療効果に対する予測を決定するステップ、
を含む方法を提供する。
花粉症は、花粉を原因として引き起こされるアレルギー性鼻炎である。花粉症患者においては、身体に本来無害であるはずの花粉に対してIgE抗体を作り、そのIgE抗体は鼻や眼の粘膜の表層にある肥満細胞に結合することにより、肥満細胞の膜に変化が生じ、細胞の中のヒスタミンなど炎症を惹起する化学伝達物質が放出され、これが鼻粘膜の神経、分泌腺、血管を刺激して発作性のくしゃみ、鼻水、鼻づまり、結膜では眼のかゆみや充血を誘発する。すなわち、排除する必要がない花粉に対して身体の防御機能が過剰に反応して、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどで花粉を除去しようとして、その結果逆に身体に負担を生じる。花粉症は原因となる花粉が飛散する時期に限ってみられるので、季節性アレルギー性鼻炎に含まれる。
本明細書において、「減感作療法」とは、「ワクチン療法」、「アレルゲン免疫療法」又は「免疫寛容療法」とも言われ、花粉症等のアレルゲンに対して気管支喘息やアレルギー性鼻炎などのアレルギー症状を示す患者に、その原因となるアレルゲンを摂取させることにより、アレルゲンに対する過敏性を減弱させることを目的とする治療法である。減感作療法の作用機序についてはいまだ明確にはなっていないが、近年T細胞の応答性の修飾等のメカニズムが研究されている。
減感作療法の効果発現メカニズムは十分に解明されていないが、舌下投与による減感作療法では口腔粘膜下の樹状細胞によるアレルゲンの捕捉が起こり、免疫反応が引き起こされると考えられている(Bahceciler NN et al.:Immunotherapy 3,747,2011)。免疫反応として、Th2細胞増加の抑制及びTh1細胞の増加、制御性T細胞の誘導、抗原特異的IgG及びIgAの増加が報告されており、その結果としてアレルギー症状の発現を抑制するものと推測されている(Bahceciler NNら、Immunotherapy 3,747,2011、Sub-Lingual Immunotherapy World Allergy Organization Position Paper 2009. World Allergy Organization J, 2,233, 2009)。
本明細書において、「被験者」とは、減感作療法を施行する、又は施行する可能性のある患者、すなわち、減感作療法のためのアレルギー疾患の原因となるアレルゲンを投与する、又は、投与する可能性のある患者をいう。
アレルゲンの摂取は、舌下投与などの経口投与、皮下投与又は筋肉内投与などの非経口投与により被験者に投与することが可能であるが、これらに限定されない。アレルゲンの投与は、少量より開始し、以後漸増し、所定の投与量まで増加した後は、維持量を投与する。アレルゲン投与の維持期間は、一般に約3年間が目途とされる。
舌下減感作療法は、皮下注射等の非経口的投与による減感作療法とは異なり、注射針を被験者の体に刺すことなく服用可能であり痛みを伴わず、また、毎日の投与を基本とするが、通院することなく患者が自宅で投与することが可能であり、さらに、アナフィラキシーショック等の副作用も少ないと評価されている。実際に、日本で実施された舌下減感作療法の臨床試験において、アナフィラキシーショックを示した患者を認めなかったと報告され、利便性、安全性、服薬コンプライアンス及び被験者のQOLの高い治療法である。
減感作療法で使用されるアレルゲンとして、上気道粘膜よりアレルゲンを体内に吸収して惹起される花粉症、アレルギー性鼻炎及び気管支喘息等を惹起するアレルゲン、並びに、食物アレルゲン等の経口摂取により惹起されるアレルギー性疾患のアレルゲンが挙げられる。
治療効果予測のために本発明が適用される減感作療法に使用されるアレルゲンとしては、アカマツ花粉、アキノキリン草花粉、カナムグラ花粉、カモガヤ花粉、キク花粉、クロマツ花粉、シラカバ花粉、スギ花粉、ヒノキ花粉、ヒメガマ花粉、ブタクサ花粉、ホウレン草花粉、ヨモギ花粉又はチモシー花粉などの花粉由来のアレルゲンなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの減感作療法薬製剤又は検査用製剤が既に市販され又は臨床試験が実施されている。
また、これらの花粉症に対する減感作療法で使用されるアレルゲンの中、スギ花粉のアレルゲンは、その減感作療法の有効性が臨床試験で確認され、市販される予定である。ヒノキ花粉の減感作療法用の減感作療法薬製剤が、現在、開発中である。
また、本発明の減感作療法の治療効果の予測に係る発明は、花粉症以外の上気道粘膜からのアレルゲンの吸収に基づくアレルギー性鼻炎又は気管支喘息に適用できる。これらのアレルギー性鼻炎又は気管支喘息に対するアレルゲンとして、アルテルナリア、アスペルギルス、カンジダ、クラドスポリウム、ペニシリウム等の真菌類由来のアレルゲン、ダニ又はハウスダスト等のアレルゲン、犬毛/兎毛/猫毛等の動物の毛由来のアレルゲンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
さらに、本発明の減感作療法の治療効果の予測に係る発明は、花粉症及び前記アレルギー性鼻炎及び気管支喘息のアレルゲン以外のアレルゲンに基づくアレルギー疾患においても適用できる。これらのアレルギー疾患におけるアレルゲンとして、アサ布、イネワラ、キヌ、モミガラ又は綿等の植物由来のアレルゲン、アジ、イワシ、カツオ、カレイ、キス、サケ、サバ、サンマ、タラ、ヒラメ、ブリ、マグロ、アサリ、イカ、エビ、カキ(貝)、カニ、タコ又はハマグリ等の魚介類由来のアレルゲン、小麦粉、米、コンニャク粉、ソバ粉、トウモロコシ、パン、モチ米、エダマメ、キャベツ、ゴマ、シイタケ(乾)、ジャガイモ、タケノコ、タマネギ、トマト、ニンジン、ホウレン草、ラッカセイ、アーモンド、サクランボ又はリンゴ等の穀物、野菜又は果実由来の食物アレルゲン、さらに、イースト(パン種)、ココア、チョコレート、牛乳、卵黄又は卵白等の食物由来のアレルゲンに対する減感作療法の治療効果の予測に本件発明を適用できるが、これらに限定されない。
また、アレルギー疾患の一つである口腔アレルギー症候群は、食物、なかでも果実を食べると口の中やのどが痒くなったり、ヒリヒリする、口の中の粘膜や口唇が腫れるといった疾患であり、この疾患と花粉症とに関係が見られるとされている。例えば代表的なものとしてシラカバ花粉症があり、30〜50%の患者が、リンゴやサクランボなどのバラ科の果実を食べると口腔アレルギー症候群を起こすことが知られ、シラカバの花粉とバラ科の果実に共通の成分(抗原)の存在が原因と考えられている。
減感作療法のためのアレルゲンを含有する減感作療法薬製剤として、経口用製剤又は非経口用製剤を調製し、使用することができる。
花粉症のアレルゲンは、例えば、花粉を原料として、50%グリセリン食塩溶液で抽出して得たアレルゲンを含む液を、さらに50%グリセリン食塩溶液で種々の濃度の希釈したものをアレルゲンエキスとして使用し、このアレルゲンエキスをさらに50%グリセリン食塩溶液で所定の濃度及び用量に希釈して、薬学的に許容可能な添加剤を加え、減感作療法薬製剤として、患者に投与することができる。
前記減感作療法薬製剤の調製に使用される薬学的に許容可能な医薬品添加剤は、当業者に公知の、安定化剤、抗酸化剤、pH調整剤、緩衝剤、懸濁剤、乳化剤、界面活性剤等の添加物を添加して、調製することができる。これらの医薬品添加剤の種類及びその用法・用量は、医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編、薬事日報社、2007年7月)などに記載され、これらの記載に従って調製し、使用することができる。
より具体的には、安定化剤として酒石酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸等の有機酸が、抗酸化剤として例えばアスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン又は没食子酸プロピル等が、pH調整剤として希塩酸又は水酸化ナトリウム水溶液等が、緩衝剤としてクエン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸若しくはアスコルビン酸又はその塩類、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸、アラニン若しくはアルギニンまたはその塩類、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸若しくはホウ酸またはその塩類が、懸濁剤又は乳化剤としてレシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート又はポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合物等が、界面活性剤として例えばポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が、使用できるが、これらに限定されない。
本発明の方法を用いることにより、スギ花粉症に対する減感作療法の治療効果の予測を行うことができる。スギ花粉症に対する減感作療法のアレルゲンとして、これらに限定されないCry j l、Cry j 2を含むアレルゲンが挙げられる。
減感作療法に使用する減感作療法薬製剤を製造するためのスギ花粉は、 本品は日本国内のスギ(Cryptomeria japonica D. Don)の花序を花粉飛散前に採取し、開葯させた後採取した花粉を乾燥したものを使用できる。これらの乾燥花粉は、黄色〜帯緑黄色の粉末で、鏡検するとき、ほぼ球形で、一口型をしており、口は突出し、その先端がカギ状に曲がっている。
Cry j l及びCry j 2は、前記スギ花粉より抽出されたアレルゲンであり、スギ花粉症の減感作療法を目的として経口投与又は非経口投与により投与される。経口投与としては、舌下投与が好ましく、アレルゲンが口腔粘膜を介して体内に吸収される。Cry j l及びCry j 2をアレルゲンとして含有する舌下投与用の製剤として、シダトレン(登録商標)スギ花粉舌下液(鳥居薬品株式会社、開発コード番号:TO-194SL)が、日本において、臨床試験に使用された。
Cry j l及びCry j 2を含む減感作療法薬の非経口投与経路としては、アナフィラキシーショック等の副作用の発生を可及的に回避するために、皮下投与、筋肉内投与が好ましい。また、投与の前に希釈したアレルゲンを用い、皮膚反応が要請の患者に被内反応により過敏度(閾値)を求め、その閾値及びその時々の患者の症状に応じ、初回投与濃度及び量、初回後の投与濃度又は量、投与回数、投与間隔並びに維持量を適宜定めることができる。
Cry j 1は、スギ花粉中に存在する主要アレルゲンの一つであり、ヒト皮膚反応活性と相関することが報告されている(安枝浩ほか:アレルギー,40,1218,1991)。Cry j 1は、スギCry j 1遺伝子の翻訳産物たるポリペプチドである。Cry j 1は、N末端側に存在するシグナルペプチド領域が除去された成熟型のポリペプチドであることが好ましい。例えば、GenBankアクセッション番号:BAA07020を参照すると、Cry j 1として、374個のアミノ酸残基からなるポリペプチドが登録されているが、成熟型のCry j 1は、BAA07020に登録された374個のアミノ酸残基からなるポリペプチドのうち、22〜374番目のアミノ酸残基からなるポリペプチドに対応する。BAA07020に登録された374個のアミノ酸残基からなるポリペプチドのうち、1〜21番目のアミノ酸残基からなる領域はシグナルペプチド領域である。成熟型のCry j 1としては、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、及び天然に存在するそのアイソタイプ(例えば、GenBankアクセッション番号D34639、D26544、D26545、AB081309、AB081310参照)等が挙げられる(特許文献3)。
Cry j 2は、スギCry j 2遺伝子の翻訳産物のポリペプチドである。Cry j 2は、N末端側に存在するシグナルペプチド領域、並びにコーディング部分のN末端及びC末端側にそれぞれ存在する2つのプロペプチド領域が除去された成熟型のポリペプチドであることが好ましい。例えば、GenBankアクセッション番号:P43212を参照すると、Cry j 2として、514個のアミノ酸残基からなるポリペプチドが登録されているが、成熟型のCry j 2は、P43212に登録された514個のアミノ酸残基からなるポリペプチドのうち、46〜433番目のアミノ酸残基からなるポリペプチドに対応する。P43212に登録された514個のアミノ酸残基からなるポリペプチドのうち、1〜22番目のアミノ酸残基からなる領域はシグナルペプチド領域であり、23〜45番目のアミノ酸残基からなる領域及び434〜514番目のアミノ酸残基からなる領域はそれぞれプロペプチド領域である。成熟型のCry j 2としては、天然に存在するそのアイソタイプ(例えば、GenBankアクセッション番号D37765、D29772、E10716、AB081403、AB081404、AB081405参照)が挙げられる(特許文献3)。
より具体的には、スギ花粉エキスを有効成分とする減感作療法薬製剤は、スギの花粉を原料とし、前記の50%グリセリン・塩化ナトリウム溶液(グリセリン50%(w/w)及び塩化ナトリウム5%(w/w))で抽出して得たアレルゲンを含む液を標準化スギ花粉エキス原液を10,000 JAU/mLとして、標準化スギ花粉エキス原液10,000 JAU/mLを0.02 mL含有する200 JAU/mLボトル(増量期用)減感作療法薬製剤(pH4.0〜5.5)、標準化スギ花粉エキス原液10,000 JAU/mLを0.2mL含有する2,000 JAU/mLボトル(増量期用)減感作療法薬製剤(pH3.5〜5.0)及び標準化スギ花粉エキス原液10,000 JAU/mLを0.2mL含有する2,000 JAU/mLパック(維持期用)減感作療法薬製剤(pH3.5〜5.0)として、濃グリセリン、塩化ナトリウムを添加物として調製できる。
JAUは、アレルギー患者の皮膚試験に基づき一般社団法人日本アレルギー学会により設定された国内独自のアレルゲン活性単位(Japanese Allergy Units/mL)であり、スギ花粉エキスにおいてはCry j 1が7.3〜21μg/mL含まれるエキスを10,000 JAU/mLと表示できる(安枝浩ほか:アレルギー,45,416,1996)。
スギ花粉症に対するCry j l及びCry j 2を含むアレルゲンの舌下投与による減感作療法においては、40 JAU/回/日より投与を開始し、2週間で2,000 JAU/回/日まで増量し、その後、維持療法として、2,000 JAU/回/日を1日1回投与する。維持療法は、3年間を目安として、長期の投与が必要と考えられている。
舌下投与の場合の用法は、例えば、所定量の減感作療法薬製剤を舌下に滴下し、2分間保持した後、飲み込む。その後5分間は、うがい・飲食を控えることにより投与される。
スギ花粉症の減感作療法に対する症状緩和に基づく治療効果の評価は、例えば、総合鼻症状薬物スコア(TNSMS)、総合鼻眼症状薬物スコア(TNOSMS)、総合眼症状薬物スコア(TOSMS)、総合鼻眼症状スコア(TNOSS)、総合鼻症状スコア(TNSS)、レスキュー薬無使用日数、Well day日数及びSevere symptom day日数などにより評価できる。各評価方法は、簡潔には、総合鼻症状薬物スコア(TNSMS):鼻症状3項目(くしゃみ、鼻汁、鼻閉)とフェキソフェナジン塩酸塩錠及びトラマゾリン塩酸塩点鼻液の薬物スコアの合計点、総合鼻眼症状薬物スコア(TNOSMS):鼻症状3項目、眼症状2項目(眼の痒み、涙目)とフェキソフェナジン塩酸塩錠、トラマゾリン塩酸塩点鼻液及びケトチフェンフマル酸塩点眼液の薬物スコアの合計点、総合眼症状薬物スコア(TOSMS):眼症状2項目とケトチフェンフマル酸塩点眼液の薬物スコアの合計点、総合鼻眼症状スコア(TNOSS):鼻症状3 項目と眼症状2項目の合計点、総合鼻症状スコア(TNSS):鼻症状3項目の合計点、及び、総合眼症状スコア(TOSS):眼症状2項目の合計点による。
総合鼻症状薬物スコア(Total Nasal Symptom Medication Score:TNSMS)によるスギ花粉症に対する減感作療法の治療効果の評価は、例えば、2シーズン目のスギ花粉飛散前及び飛散期間における総合鼻症状スコア(Total Nasal Symptom Score:TNSS)及び薬物スコア(アレグラ錠、トーク点鼻液)から「症状ピーク期+前後1週間(合計3週間)」における総合鼻症状薬物スコア(TNSMS)を主要評価項目とする。
前記総合鼻症状薬物スコア(TNSMS)から、例えば、軽症:4点未満、中等症:7点未満、重症10点未満、最重症:10点以上としてスコア付をした場合に、減感作療法開始後2年目に2段階改善した症例を著効例、減感作療法開始年に中等症で2年目に軽症になった症例を有効例、1年目に比較して2年目の重症度に変化がないか、悪化した症例を無効例、並びに、1年目及び2年目のいずれも軽症例を評価不能例として評価する評価方法において、著効例を「good responder」という。
また、本明細書において、「poor responder」とは、前記評価方法において、減感作療法開始1年目に比較して、2年目の重症度に変化がないか、悪化した症例を無効例という。
スギ花粉症に対する減感作療法の治療効果を予測する方法は、アレルゲンであるスギ花粉エキスを含む製剤の被験者への投与開始前及び/又は投与開始後に被験者の血液を採取し、公知の方法により単核球を単離し、単核球の遺伝子発現の変化を測定することにより実施できる。単離された単核球は、測定に使用するまで、凍結保存が可能であり、測定時に解凍して使用できる。
本発明において、「被験試料」は、被験者減感作療法の開始前及び/又は開始後に患者より採取した生体試料から単離されたタンパク質又はmRNAなどの試料をいう。
単核球は、白血球、リンパ球、マイクロファージ及び単球をいい、生体において、末梢血、動脈血、脾臓、骨髄、臍帯血、腹水などの器官又は試料より採取され、密度勾配遠心分離法などにより単離される。本発明においては、末梢血単核球が好ましい。
単核球中のmRNAの単離は、当業者に公知の方法で、行うことができる。簡潔には、生体試料より単離された単核球の細胞を破壊し、エタノールで核酸を沈殿し、洗浄することによって得られる。
単離されたmRNAは、遺伝子発現の定量の精度の向上のために、定量の前に公知の方法に基づき、濃度及び純度を吸光度で測定することにより、又はゲル電気泳動法などにより、クオリティーチェックを行うことができる。クオリティーチェックを行うことにより、目的とする遺伝子の変動の測定精度を向上させ、減感作療法の治療効果の予測精度を向上させることができる。
Cry j l、Cry j 2等の舌下投与による減感作療法の治療効果を予測のための被験者からの血液採取は、減感作療法開始前のみの1回、減感作療法開始後のみの1回、又は、減感作療法開始前及び開始後の2回行われ、該血液から単離された単核球中の遺伝子発現を解析することにより行う場合があり、又は、減感作療法開始前と開始後における遺伝子発現の変化を解析することにより行う場合がある。
減感作療法の治療効果を予測のためのアレルゲンの投与開始後の被験者からの血液の採取は、アレルゲン投与開始後の初期が好ましく、例えば、アレルゲン投与開始後約2月が好ましいが、これに限定されない。
本発明の減感作療法の治療効果を予測のための単核球中の遺伝子発現の測定は、CFH(補体因子H)、TNFRSF21(Tumor necrosis factor receptor superfamily member 21/TNF related death receptor 6)及びOSR2(odd-skipped related 2)からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量、又はCFH、TNFRSF21及びOSR2からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質の産生量の変動を測定することによる実施できる。また、CFH、TNFRSF21及びOSR2の中のいずれか2種類又は3種類を組み合わせることにより、減感作療法の治療効果を予測できる。
前記CFH(補体因子H)は、ヒトCFHがNCBIコード:HGNC4883として登録されており、その遺伝子は、1番染色体の1q32に位置する。CFHは、補体活性化を調節する遺伝子クラスターに属し、20個の短いコンセンサス繰り返しドメインを有するタンパク質であり、補体活性化を調節することにより、微生物感染に対する生来的な防御メカニズムを制限することが知られている。CFHのヒトのアミノ酸配列及びその遺伝子の核酸配列は、それぞれ配列番号1及び2で表される。
前記TNFRSF21(Tumor necrosis factor receptor superfamily member 21/TNF related death receptor 6)は、ヒトTNFRSF21がNCBIコード:HGNC13469として登録され、その遺伝子は、6番染色体の6p21.1に位置する。TNFRSF21は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーに属し、該タンパク質はNFκB(nuclear factor kappa-B)及びc-Jun N-terminal kinase 1とも呼ばれるMAP-K8(mitogen-activated protein kinase 8)を活性化し、細胞のアポトーシスを誘導することが知られている。ヒトにおけるTNFRSF21のアミノ酸配列及びその遺伝子の核酸配列は、それぞれ配列番号3及び4で表される。
前記OSR2(odd-skipped related 2)は、ヒトOSR2が、NCBIコードとしてHGNC:15830として登録され、その遺伝子は、8番染色体の8q22.2に位置する。OSR2は、哺乳類の転写因子であり、ヒトにおけるOSR2のアミノ酸配列及びその遺伝子の核酸配列は、それぞれ配列番号5及び6で表される。
遺伝子の発現量を測定する方法は、ノーザンブロッティング法若しくはマイクロアレイによるmRNAの発現量の測定、又は該mRNAより逆転写酵素によりcDNAを作製し、該cDNAをリアルタイムPCR法により定量する方法(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法、以下「RT-PCR」と記載)、及び前記遺伝子が翻訳されたタンパク質に特異的に結合する抗体を使用した免疫学的定量法などから選択されるが、これらに限定されない。
本明細書において、「アレイ」または「マイクロアレイ」とは、生体分子(例えば、糖鎖、タンパク質、核酸など)を基板上に整列(array)させて、固定させたデバイスである。一般に、「マクロアレイ」とは、基板上に生体分子をスポットした高密度フィルター(high density filter)をいい、「マイクロアレイ」とは、ガラス、シリコンなどの基板表面に生体分子を載せたものをいう。
本明細書において、「DNA又はRNAマイクロアレイ」とは、マイクロアレイの中、DNA又はRNAを基板上に整列させて、固定させたデバイであり、基板上のDNA又はRNAとハイブリダイズ可能な被験試料中の遺伝子等をハイブリダイズさせて、ハイブリダイズした量を定量することにより使用する。マイクロアレイにおけるハイブリダイズした量を定量する方法は、例えば、マイクロアレイ上のプローブに結合可能な蛍光標識した核酸を被験試料と共に結合し、標識体の結合量若しくは非結合量を測定することにより定量できる。
標識プローブとしては、放射性標識、蛍光標識、発光標識、FRET標識等を使用することができるが、これらに限定されない。
本明細書において、「抗体アレイ」とは、抗体を用いた免疫学的定量法の一つであり、タンパク質に対して特異的に認識し結合する抗体を直径数十μm程度のスポットとして格子状に整列させ、固定化したものである。タンパク質を蛍光、又はビオチン標識し、抗体アレイに結合後、抗体に結合した標識体のシグナルを検出することで被検体中のタンパク質の存在を確認することが可能である(Lin Y.ら、Proteomics; 3:1750-1757(2003))。
免疫学的定量法としては、前記抗体アレイの他、当業者に公知のフローサイトメトリー解析法、ラジオイムノアッセイ(RIA)法、ELISA法、ウェスタンブロッティング法、免疫組織染色法などを挙げることができるが、これらに限定されない。
前記免疫学的定量法に用いる抗体は、定量対象の抗原のエピトープに対して選択的に結合するモノクローナル抗体を当業者に公知の方法により作製できる。本発明において、これらの抗原として、CFH、TNFRSF21及びOSR2からなる群から選択されるいずれかの各エピトームを含むポリペプチドが好ましい。
本発明においては、CFH、TNFRSF21及びOSR2からなる群から選択されるいずれかを含むタンパク質を特異的に認識し結合する抗体を直径数十μm程度のスポットとして格子状に整列させ、例えば、ニトロセルロース膜又はシリコン膜等のポリマー膜上に固定化する。さらに、抗原タンパク質を蛍光、又はビオチン標識し、抗体アレイに結合後、標識体に基づくシグナルを検出することで被検体中の抗原タンパク質の存在を定量する。該定量値を解析することにより、スギ花粉症に対する減感作療法の治療効果の予測を行うことができる。
本発明の核酸プローブは、CFH遺伝子、TNFRSF21遺伝子及びOSR2遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子をコードするポリヌクレオチドの特異的な検出及び定量に使用できる。例えば、このような検出及び定量は、生体試料からの総RNAを調製した後、ノーザンブロッティング法、又は、本発明の核酸プローブが固定化された核酸アレイ法などを利用して行うことができる。核酸プローブはDNA、RNA、修飾核酸又はそれらのキメラ分子などであり得るが、安定性、簡便性等の点からDNAが好ましい。核酸プローブはまた、1本鎖又は2本鎖ポリヌクレオチドのいずれでもよい。核酸プローブのサイズは、標的遺伝子の転写産物に特異的にハイブリダイズし得る限り特に限定されないが、例えば少なくとも約15個又は16個、好ましくは約15個〜約1,000個、より好ましくは約20個〜約500個、最も好ましくは約25個〜約300個である。本発明の核酸プローブが1本鎖ポリヌクレオチドである場合、本発明の核酸プローブは本発明のアンチセンス分子と同様である。本発明の核酸プローブが2本鎖ポリヌクレオチドである場合、本発明の核酸プローブは、本発明のアンチセンス分子及びそれに相補的なポリヌクレオチド分子から構成することができる。
本発明において、プライマーを用い、ライゲーションによって作製されたポリヌクレオチドを、任意の適切な手段により検出することができる。典型的には、例えば定量性に優れたRT-PCRを用いることによって、その配列に基づいて検出される。ある態様においてRT-PCR検出反応が用いられ、ここで、使用されるRT-PCRプライマーは、ライゲーション箇所のいずれかの側に結合し、かつ、ライゲーション生成物の存在下でPCR反応が行われる。この態様において、PCR生成物はライゲーション生成物の存在下でしか検出されない場合がある。典型的には、ライゲーション生成物と結合する場合、RT-PCRプライマーは互いに500塩基対以内で結合する。
本発明の減感作療法の治療効果の予測を決定するステップは、被験者の末梢血単核球のCFH遺伝子、TNFRSF21遺伝子及びOSR2遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の減感作療法開始前後の変動を比較することにより行うことができる。
具体的には、CFHの遺伝子発現の測定により減感作療法の治療効果の予測を行う場合には、減感作療法開始前にgood responderとpoor responderとで単核球中のCFHの遺伝子又はCFHタンパク質の発現量に差を認めない。減感作療法開始後初期において、good responderは遺伝子又はCFHタンパク質の発現量がアップレギュレートされるが、poor responderはダウンレギュレートされる。そこで、減感作療法開始初期において、CFHの発現が増加する被験者をgood responderと、CFHの発現が減少する被験者をpoor responderと判別分析で判定し、決定することにより、スギ花粉症に対する減感作療法の治療効果の予測を行うことができる。
TNFRSF21の遺伝子発現の測定により減感作療法の治療効果の予測を行う場合は、good responderは、減感作療法によりTNFRSF21の遺伝子又はポリペプチドの発現がダウンレギュレートされる。一方、poor responderは、TNFRSF21の遺伝子又はポリペプチドの発現はアップレギュレートされる。そこで、減感作療法開始初期において、TNFRSF21の発現が減少する被験者をgood responderと、TNFRSF21の発現が増加する被験者をpoor responderと判別分析で判定し、決定することにより、スギ花粉症に対する減感作療法の治療効果の予測を行うことができる。
OSR2の遺伝子発現の測定により減感作療法の治療効果の予測を行う場合は、減感作療法開始前にgood responderとpoor responderとで単核球中のOSR2の遺伝子又はポリペプチド発現量に差を認めない。しかし、減感作療法開始後初期において、good responderは遺伝子又はポリペプチド発現量がアップレギュレートされるが、poor responderはダウンレギュレートされる。そこで、減感作療法開始初期において、OSR2の発現が増加する被験者をgood responderと、OSR2の発現が減少する被験者をpoor responderと判別分析により判定し、決定することにより、スギ花粉症に対する減感作療法の治療効果の予測を行うことができる。
また、CFH、TNFRSF21及びOSR2からなる群から選択される2種類以上の遺伝子発現を測定して、判別分析により判定し、決定することにより、減感作療法の治療効果を予測することができる。
2. 診断薬
本発明の形態の一つとして、花粉アレルゲンによる、花粉症に対する減感作療法の治療効果を予測するための診断薬を提供する。花粉アレルゲンによる、花粉症に対する減感作療法の治療効果を予測するための診断薬は、
(a) CFHをコードするmRNA若しくはそのcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ若しくはプライマー、又はCFHを特異的に認識し得る抗体、
(b) TNFRSF21をコードするmRNA若しくはそのcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ若しくはプライマー、又はTNFRSF21を特異的に認識し得る抗体、及び、
(c) OSR2をコードするmRNA若しくはそのcDNAを特異的に検出し得る核酸プローブ若しくはプライマー、又はOSR2を特異的に認識し得る抗体、からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
前記診断薬は、前記CFH、TNFRSF21又はOSR2の遺伝子発現を測定するための核酸プローブ、プライマー又は抗体に、定量値に影響を与えないことを条件に、当業者に公知の、安定化剤、抗酸化剤、pH調整剤、緩衝剤、懸濁剤、乳化剤、界面活性剤等の添加物を添加して、調製することができる。これらの医薬品添加剤の種類及びその用法・用量は、医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編、薬事日報社、2007年7月)などに記載され、これらの記載に従って調製し、使用することができる。また、医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編、薬事日報社、2007年7月)などに記載されていない公知の添加剤を使用することもできる。
具体的には、安定化剤として酒石酸、クエン酸、コハク酸又はフマル酸等の有機酸が、抗酸化剤として例えばアスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン又は没食子酸プロピル等が、pH調整剤として希塩酸又は水酸化ナトリウム水溶液等が、緩衝剤としてクエン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸若しくはアスコルビン酸又はその塩類、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸、アラニン若しくはアルギニン又はその塩類、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸若しくはホウ酸又はその塩類が、懸濁剤又は乳化剤としてレシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート又はポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合物等が、界面活性剤としてポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が、使用できるが、これらに限定されない。
本発明の診断薬は、前記診断薬の構成成分及び/又は該診断薬の使用方法を記載した文書又は説明書を添付することができる。また、例えば、Ficoll等の末梢血単核球を単離するための試薬を含む診断薬キットとすることもできる。
また、これらの添加剤を添加した診断薬を凍結保存し、用時解凍して使用することができる。また、これらの診断薬を凍結乾燥乾燥保存し、用時に緩衝剤又は蒸留水等を添加し、溶液にすることにより、使用することができる。
前記診断薬において、核酸プローブを含む場合には、例えば、前記のマイクロアレイを用い、被験試料として被験者の単離単核球より調製したmRNA又はそのcDNAのマイクロアレイ上の核酸プローブへの結合量を定量し、さらに、該定量値を判定分析法で解析することにより、スギ花粉症に対する減感作療法の治療効果の予測を行うことができる。
前記CFH、TNFRSF21又はOSR2のmRNAの発現量を定量するときの核酸プローブは、例えば、これらに限定されない、各々配列番号7、8及び9の核酸配列を有する核酸を含むプローブを使用することができる。
前記診断薬において、前記プライマーを含む場合には、該プライマーを用い、例えば、前記のRT-PCR法により、被験試料中の前記CFH、TNFRSF21又はOSR2の遺伝子の発現量を定量できる。RT-PCRは、当業者に公知の方法で実施できる。RT-PCRに使用するプライマーとして、CFH遺伝子の場合には配列番号10(センスプライマー)及び配列番号11(アンチセンスプライマー)が、TNFRSF21の場合には、配列番号12(センスプライマー)及び配列番号13(アンチセンスプライマー)が、OSR2の場合には、配列番号14(センスプライマー)及び配列番号15(アンチセンスプライマー)が、使用できる。
RT-PCR法で求めたmRNA又はそのcDNA量又は変動率を解析し、さらに、判定分析法で判定し、決定することにより、スギ花粉症に対する減感作療法の治療効果の予測を行うことができる。
前記診断薬において、前記抗体を含む場合には、該抗体を用い、例えば、抗体アレイなどの免疫学的定量法により、被験試料中の前記CFH、TNFRSF21又はOSR2のタンパク質の発現量を定量できる。さらに、該定量値を解析することにより、スギ花粉症に対する減感作療法の治療効果の予測を行うことができる。
被験者の単核球における前記CFH、TNFRSF21若しくはOSR2の遺伝子又は該遺伝子がコードするタンパク質を定量し、その変動を比較することにより、本発明の減感作療法の治療効果の予測し決定する。定量するCFH遺伝子、TNFRSF21遺伝子及びOSR2遺伝子は、それぞれ1種類でもよく、又は、各遺伝子を組み合わせて、減感作療法開始前若しくは開始後における正常値との比較、又は減感作療法開始前後の変動を比較することにより、被験者がgood responder若しくはpoor responderであるか、又は、被験者に対して減感作療法が奏功する可能性を算定又は決定してもよい。
3. マイクロアレイ
本発明は、さらに、別の形態として、花粉アレルゲンによる、花粉症に対する減感作療法の治療効果を予測するためのマイクロアレイであって、
(a) CFHをコードするmRNA又はそのcDNAを特異的に検出する核酸プローブ
(b) TNFRSF21をコードするmRNA又はそのcDNAを特異的に検出する核酸プローブ、及び、
(c) OSR2をコードするmRNA又はそのcDNAを特異的に検出する核酸プローブ、からなる群から選択される少なくとも1つを含む、マイクロアレイを提供する。
本発明のマイクロアレイの発明において、前記CFH、TNFRSF21又はOSR2の遺伝子発現を測定するために前記マイクロアレイを用い、被験試料として被験者の単離単核球より調製したmRNA又はそのcDNAのマイクロアレイ上の核酸プローブへのハイブリダイゼーションによる結合量を定量し、さらに、該定量値を判定分析法で解析することにより、スギ花粉症に対する減感作療法の治療効果の予測を行うことができる。
前記マイクロアレイ基板上の核酸プローブにハイブリダイズした被験試料の遺伝子の測定は、被験試料と該核酸プローブにハイブリダイズ可能な標識プローブとを共にインキュベーションし、該核酸プローブにハイブリダイズした標識プローブ量を検出することにより、測定することができる。
標識プローブとしては、放射線標識、酵素標識、蛍光標識、発光標識、蛍光性置換基と該蛍光を吸収し消光する置換基を近傍に配置したFRET現象を利用する標識等を使用することができるが、これらに限定されない。
前記CFH、TNFRSF21又はOSR2のmRNAの発現量を定量するときの核酸プローブは、例えば、これらに限定されない、各々配列番号7、8及び9の核酸配列を有する核酸を含むプローブを使用することができる。
被験者の単核球における前記CFH、TNFRSF21若しくはOSR2の遺伝子をマイクロアレイで定量し、その変動を比較することにより、本発明の減感作療法の治療効果の予測を決定する。定量するCFH遺伝子、TNFRSF21遺伝子又はOSR2遺伝子は、それぞれ1種類でもよく、又は、2種類以上の各遺伝子を組み合わせて、減感作療法開始前若しくは開始後における正常値との比較、又は減感作療法開始前後の変動を比較することにより、被験者がgood responder若しくはpoor responderであるか、又は、被験者に対して減感作療法が治療効果の予測値を算定又は決定することができる。
4. RT-PCR用組成物
本発明の別の形態として、花粉アレルゲンによる、花粉症に対する減感作療法の治療効果を予測するためのRT-PCR用組成物であって、
(a)CFHをコードするmRNA又はそのcDNAを特異的に検出する1対のプライマー、
(b)TNFRSF21をコードするmRNA又はそのcDNAを特異的に検出する1対のプライマー、及び
(c)OSR2をコードするmRNA又はそのcDNAを特異的に検出する1対のプライマー、からなる群から選択される少なくとも1対のプライマーを含むRT-PCR用組成物を提供する。
より具体的には、CFH遺伝子、TNFRSF21遺伝子及びOSR2遺伝子からなる群の少なくとも1種類の遺伝子の発現レベルを、定量可能な予め選択された遺伝子特異的プライマーを用いて、3種類の異なる遺伝子バイオマーカーのいずれか、またはそれらを組み合わせたサブセットの核酸の増幅を可能にするRT-PCR用組成物を提供する。遺伝子特異的プライマーは、前記所定の遺伝子をコードするDNAの対となる鎖にハイブリダイズし、PCR増幅によってバイオマーカー遺伝子のコードDNAの定義された領域が生産されるように設計される。
本発明のプライマーを含有するRT-PCR用組成物は、前記CFH、TNFRSF21又はOSR2の遺伝子発現を測定するためのプライマーに、定量値に影響を与えないことを条件に、当業者に公知の前記の、安定化剤、抗酸化剤、pH調整剤、緩衝剤等の添加物を添加して、調製することができる。
本発明のスギ花粉に対する減感作療法の治療効果を予測するためのプライマーを含むRT-PCR用組成物は、CFHの測定には配列番号10及び11の、TNFRSF21の測定には配列番号12及び13の、及びOSR2の測定には配列番号14及び15の核酸配列を有するプライマーを含むことができる。これらのプライマーを含む組成物を用い、前記RT-PCR法を実施し、CFH、TNFRSF21又はOSR2の遺伝子の発現量を定量できる。
被験者の単核球における前記CFH、TNFRSF21若しくはOSR2の遺伝子をRT-PCRで定量後、その変動を比較し、判別分析法で解析することにより、本発明の減感作療法の治療効果の予測を決定する。定量するCFH遺伝子、TNFRSF21遺伝子及びOSR2遺伝子は、いずれか1種類でもよく、又は、各遺伝子を組み合わせて、減感作療法開始前若しくは開始後における正常値との比較、又は減感作療法開始前後の変動を比較することにより、被験者がgood responder若しくはpoor responderであるか、又は、被験者に対して減感作療法の治療効果の予測値を算定又は決定してもよい。
5. バイオマーカー
本発明の他の形態の一つとして、減感作療法の治療効果を予測するためのバイオマーカーを提供する。
「バイオマーカー」とは、一般に通常の生物学的過程、病理学的過程、もしくは治療的介入に対する薬理学的応答の指標となるタンパク質、遺伝子又は化学物質などをいう。本明細書中で用いる場合、「バイオマーカー」との用語は、減感作療法の治療効果の予測に関連するいずれかの生物学的化合物を指す。すなわち、減感作療法に対するgood responderとpoor responderとを区別するための、又は減感作療法の治療効果を予測するための生物学的化合物をいう。
本発明のバイオマーカーは、前記遺伝子発現を測定する方法、又は該遺伝子がコードするタンパク質の産生量の変動を測定することにより、減感作療法の治療効果の予測のための指標として使用できる。
本発明のスギ花粉症の減感作療法の治療効果を予測するためのバイオマーカーは、具体的には、被験者の単核球中の、
(a) CFHをコードするmRNA及びCFHタンパク質、
(b) TNFRSF21をコードするmRNA又はTNFRSF21タンパク質、及び、
(c) OSR2をコードするmRNA又はOSR2タンパク質をいう。
前記CFH、TNFRSF21又はOSR2のmRNAの測定は、ノーザンブロッティング法、マイクロアレイによるmRNAの発現量の測定、該mRNAより逆転写酵素によりcDNAを作製し、該cDNAをPCR法又はリアルタイムPCR法により定量する方法(RT-PCR法)等で、定量することができる。これらの定量値を解析し、判別分析することにより、スギ花粉症に対する減感作療法の治療効果の予測が可能である。
本発明において、前記CFHの遺伝子発現をマイクロアレイにより定量する場合の核酸プローブとして、CFH遺伝子と特異的にハイブリダイズ可能な核酸配列を有するポリヌクレオチド、例えば、配列番号7の核酸配列を有するポリヌクレオチドを使用できるが、これに限定されない。
本発明において、前記TNFRSF21の遺伝子発現をマイクロアレイにより定量する場合の核酸プローブとして、TNFRSF21遺伝子と特異的にハイブリダイズ可能な核酸配列を有するポリヌクレオチド、例えば、配列番号8の核酸配列を有するポリヌクレオチドを使用できるが、これに限定されない。
本発明において、前記OSR2の遺伝子発現をマイクロアレイにより定量する場合の核酸プローブとして、OSR2遺伝子と特異的にハイブリダイズ可能な核酸配列を有するポリヌクレオチド、例えば、配列番号9の核酸配列を有するポリヌクレオチドを使用できるが、これに限定されない。
本発明において、前記CFHの遺伝子発現をRT-PCRにより定量する場合のプライマーとして、CFH遺伝子の5’末端のセンス配列と3’末端のアンチセンス配列にそれぞれにハイブリダイズ可能な核酸配列を有するプライマーを使用して、RT-PCR反応により遺伝子を増幅し、増幅量を測定することにより、遺伝子の発現量を測定できる。CFH遺伝子のRT-PCR用プライマーとして、例えば、配列番号10(センス配列)及び配列番号11(アンチセンス配列)の核酸配列を有するポリヌクレオチドを使用できるが、これらに限定されない。
本発明において、前記TNFRSF21の遺伝子発現をRT-PCRにより定量する場合のプライマーとして、TNFRSF21遺伝子の5’末端のセンス配列と3’末端のアンチセンス配列にそれぞれにハイブリダイズ可能な核酸配列を有するプライマーを使用して、RT-PCR反応により遺伝子を増幅し、増幅量を測定することにより、遺伝子の発現量を測定できる。TNFRSF21遺伝子のRT-PCR用プライマーとして、例えば、配列番号12(センス配列)及び配列番号13(アンチセンス配列)の核酸配列を有するポリヌクレオチドを使用できるが、これらに限定されない。
本発明において、前記OSR2の遺伝子発現をRT-PCRにより定量する場合のプライマーとして、OSR2遺伝子の5’末端のセンス配列と3’末端のアンチセンス配列にそれぞれにハイブリダイズ可能な核酸配列を有するプライマーを使用して、RT-PCR反応により遺伝子を増幅し、増幅量を測定することにより、遺伝子の発現量を測定できる。OSR2遺伝子のRT-PCR用プライマーとして、例えば、配列番号14(センス配列)及び配列番号15(アンチセンス配列)の核酸配列を有するポリヌクレオチドを使用できるが、これらに限定されない。
前記CFH、TNFRSF21又はOSR2の各タンパク質は、前記フローサイトメトリー解析法、抗体アレイ、ラジオイムノアッセイ(RIA)法、ELISA法、ウェスタンブロッティング法、免疫組織染色法などの免疫学的測定法により定量することができる。これらの定量値を解析し、判定分析することにより、スギ花粉症に対する減感作療法の治療効果の予測が可能である。
これらの免疫学的測定法で使用するヒトCFHに特異的に結合するモノクローナル抗体は、当業者に公知の方法で製造することが可能である。また、例えば、Abnova社(台湾、タイペイ)よりカタログ番号MAB0235として、Pierce Biotechnology社(米国、イリノイ州)よりカタログ番号MA1-70057としてマウス抗ヒトCFH抗体が市販されており、免疫学的方法によるヒトCFHポリペプチドの定量に、これらの市販品を利用することも可能である。
ヒトTNFRSF21に特異的に結合するモノクローナル抗体は、当業者に公知の方法で製造することが可能である。また、例えば、Acris Antibodies GmbH社(ドイツ)よりラット抗ヒトTNFRSF21モノクローナル抗体がカタログ番号AM20114PU-Nとして市販されており、TNFRSF21ポリペプチドに対する免疫学的方法による定量に、これらの市販品を利用することも可能である。
ヒトOSR2に特異的に結合するモノクローナル抗体を当業者に公知の方法で製造することが可能である。また、例えば、Abnova社(台湾、タイペイ)よりカタログ番号H00116039-Kとしてウサギ抗ヒトOSR2モノクローナル抗体が市販されており、免疫学的方法によるOSR2ポリペプチドの定量に、これらの市販品を利用することも可能である。
被験者の単核球における前記CFH、TNFRSF21若しくはOSR2の遺伝子又は該遺伝子が翻訳されたポリペプチドをバイオマーカーとして定量し、その変動を比較することにより、本発明の減感作療法の治療効果の予測を決定する。定量するCFH遺伝子、TNFRSF21遺伝子及びOSR2遺伝子は、それぞれ1種類でもよく、又は、各遺伝子を組み合わせて、減感作療法開始前若しくは開始後における正常値との比較、又は減感作療法開始前後の変動を比較することにより、被験者がgood responder若しくはpoor responderであるか、又は、被験者に対して減感作療法が奏功する治療効果を算定又は決定してもよい。
6. 遺伝子又は該遺伝子がコードするタンパク質の発現量の解析と判別分析
本発明において、減感作療法の治療効果の予測は、被験者の単核球中のCFH遺伝子、TNFRSF21遺伝子又はOSR2遺伝子又は該遺伝子がコードするタンパク質の発現量を測定して、判別分析を適用することによりスコア化し、被験者の遺伝子発現の変動、又は該遺伝子がコードするタンパク質の産生量の変動を測定し、事後確率スコアを適用することにより、被験者がgood responderであるか、若しくはpoor responderであるかを決定する、又は、減感作療法の治療効果の予測値を求めることにより行う。判別分析によるスコア化、又は事後確率スコアの適用においては、発現レベルに重み付けを適用することができる。
判別分析の例として、線形判別関数を用いる線形判別法、又は、2次判別関数を用いる非線形判別法、さらに、これらの一個抜き交差検証(leave-one-out cross-validation:LOOCV)などを使用できる。これらの判別分析は、例えばRなどの統計解析ソフトを使用することにより実施できる。また、クラスター分析法、多次元尺度法、主成分分析、因子分析、樹状法、ニューラルネットワーク法又はプロトタイプ法などを使用することもできる。
例えば、階層型クラスター分析を使用する場合には、good responder患者の単核球のCFH、TNFRSF21又はOSR2の遺伝子の変動値の基準値群(クラスター)に、被験者単核球のCFH、TNFRSF21又はOSR2の遺伝子の変動値が入れば、被験者はgood responderと判定できる。また、ユークリッド距離に基づいた多次元尺度法を使用する場合には、good responderの単核球のCFH、TNFRSF21又はOSR2の遺伝子の変動値の基準値をプロットした同じ領域に、被験者単核球のCFH、TNFRSF21又はOSR2の遺伝子の変動値がプロットされれば、good responderと判定され、離れた領域にプロットされた場合には、good responderではないと判定できる。
さらに、CFH、TNFRSF21又はOSR2の遺伝子の変動値を組み合わせて、多変量で判別分析を行うことにより、被験者に対する減感作療法の治療効果の予測を行うことができる。
また、症状の程度をスコア化し、CFH、TNFRSF21又はOSR2の遺伝子の変動値との関係を求めておき、この関係より予め基準値としてカットオフ値を定め、カットオフ値以上又は以下をgood responderと判定する方法を使用することができる。
また、減感作量の治療効果の予測には、減感作療法開始前又は開始後の被験者の単核中のCFH、TNFRSF21又はOSR2の遺伝子の発現量を定量することにより行うことができ、又は、減感作療法開始前後の被験者の単核中のCFH、TNFRSF21又はOSR2の遺伝子の発現量の変動を求めることにより、被験者に対する減感作療法の治療効果の予測を行うことができる。減感作療法開始前としては、減感作療法開始直前が好ましい。減感作療法開始後としては、減感作療法開始後初期が好ましく、減感作療法開始後約2月がより好ましい。
具体的には、CFHの遺伝子発現の測定により減感作療法の治療効果の予測を行う場合には、減感作療法開始前にgood responderとpoor responderとで単核球中のCFHの遺伝子又はCFHタンパク質の発現量に差を認めない。減感作療法開始後初期において、good responderは遺伝子又はCFHタンパク質の発現量がアップレギュレートされるが、poor responderはダウンレギュレートされる。そこで、減感作療法開始初期において、CFHの発現が増加する被験者をgood responderと、CFHの発現が減少する被験者をpoor responderと判別分析で判定し、決定することにより、スギ花粉症に対する減感作療法の治療効果の予測を行うことができる。
TNFRSF21の遺伝子発現の測定により減感作療法の治療効果の予測を行う場合は、good responderは、減感作療法によりTNFRSF21の遺伝子又はポリペプチドの発現がダウンレギュレートされる。一方、poor responderは、TNFRSF21の遺伝子又はポリペプチドの発現はアップレギュレートされる。そこで、減感作療法開始初期において、TNFRSF21の発現が減少する被験者をgood responderと、TNFRSF21の発現が増加する被験者をpoor responderと判別分析で判定し、決定することにより、スギ花粉症に対する減感作療法の治療効果の予測を行うことができる。
OSR2の遺伝子発現の測定により減感作療法の治療効果の予測を行う場合は、減感作療法回始前にgood responderとpoor responderとで単核球中のOSR2の遺伝子又はポリペプチド発現量に差を認めない。減感作療法開始後初期において、good responderは遺伝子又はポリペプチド発現量がアップレギュレートされるが、poor responderはダウンレギュレートされる。そこで、減感作療法開始初期において、OSR2の発現が増加する被験者をgood responderと、OSR2の発現が減少する被験者をpoor responderと判別分析により判定し、決定することにより、スギ花粉症に対する減感作療法の治療効果の予測を行うことができる。
また、CFH、TNFRSF21及びOSR2からなる群から選択される2以上の遺伝子発現を測定して、判別分析により判定し、決定することにより、減感作療法の治療効果を予測することができる。
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除および置換を行うことができる。
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。ここに記述される実施例は本発明の実施形態を例示するものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
1. シダトレンスギ花粉舌下液の減感作療法の治療効果を評価したスギ花粉症減感作療法薬製剤
本発明により、治療効果を判別する対象とする薬剤は、スギ(Cryptomeria japonica D.Don)花粉から抽出したCry j 1及びCry j 2を含むアレルゲンを含有する液体を減感作療法薬製剤として使用するものであり、実薬として使用した減感作療法薬製剤は、(1) シダトレンスギ花粉舌下液200 JAU/mL ボトル(1 ボトル(10 mL)中に標準化スギ花粉エキス原液10,000 JAU/mLを0.2 mL 含有する舌下液剤)、(2) シダトレンスギ花粉舌下液2,000 JAU/mLボトル(1 ボトル(10 mL)中に標準化スギ花粉エキス原液10,000 JAU/mLを2 mL含有する舌下液剤)、(3) シダトレンスギ花粉舌下液2,000 JAU/mLパック(1 パック(1 mL)中に標準化スギ花粉エキス原液10,000 JAU/mLを0.2 mL含有する舌下液剤)の3種類である。
本発明で使用した標準化スギ花粉エキス原液は、スギ花粉を50%グリセリン・塩化ナトリウム溶液で抽出した液であり、既存の医薬品である皮下投与用製剤製造のための原薬と同一であり、従来の方法により製造した標準化スギ花粉エキス原液で10,000 JAU/mL の力価を有するものである。シダトレンスギ花粉舌下液は、日局濃グリセリンと10%塩化ナトリウム溶液を等重量で混合した溶液であり、塩化ナトリウムを5%含む混液である。
シダトレンスギ花粉舌下液製剤は、スギ花粉から抽出し、調製した標準化スギ花粉エキス原液10,000 JAU/mL(以下、「本薬」と記載)を含有する舌下液剤である。日本においては、本薬を有効成分とする皮下注用製剤の『アレルゲン治療エキス「トリイ」スギ花粉1:100』、『同1:1,000』、『同1:10,000』、『同1:100,000』が1969 年1月より販売され、同製剤の抗原量を標準化した『治療用標準化アレルゲンエキス皮下注「トリイ」スギ花粉2,000 JAU/mL』及び『同200 JAU/mL』(以下、「既存スギ花粉エキス製剤」)が2000年1月より販売されており、本製剤は皮下注用製剤の製造方法を改良し、舌下投与用として開発されたものである。
本製剤には、50%グリセリン溶液が添加剤として含まれており、増量期での使用を目的とした200 JAU/mLの10 mL 製剤及び2,000 JAU/mLの10 mL製剤(以下、「ボトル容器製剤」)、並びに維持期での使用を目的とした2,000 JAU/mLの1 mL製剤(以下、「アルミラミネート容器製剤」)を使用した。
2. シダトレンスギ花粉舌下液の減感作療法の治療効果を予測するための試験の被験者、投与方法、投与スケジュール
シダトレンスギ花粉舌下液の治療効果試験の対象患者は、本舌下液製剤の二重盲検試験の対象患者であり、インフォームドコンセントを得た上で、千葉大学において臨床評価を行った患者40症例より、前記シダトレンスギ花粉舌下液による減感作療法の治療効果の予測のためのバイオマーカーの検討に用いる患者試料を選別した。
前記3種類の実薬及びそれぞれの偽薬を使用して、実薬投与患者には40 JAUから開始して毎日増量し、3週間目からは維持料の2,000 JAUが治療開始後2年目の花粉症の発症のピークを過ぎた4月30日まで維持された。また、偽薬投与患者には、実薬と同容量の偽薬が実薬投与群と同じスケジュールで投与された。
3. 被験者単核球試料の採取と保存
被験者単核球試料の採取と保存は、公知の方法で行った(特許文献3)。すなわち、治験者末梢血50 mLを採血し、LYMPHO SEPARATION MEDIUM (MP Biomedical. LLC)が10 mL入っている50 mLのグライナーチューブに移した。その後、比重分離法にて遠心分離(800g x 20 min)を行い、単核球層を採取して50 mLのファルコンチューブに移して遠心分離を行った(RT、15,000 rpm、10 min)。遠心分離後にアスピレーターで上清を除去した。上清除去後のペレット状の細胞に50 mLのPBSを再度加えて洗浄し、遠心分離を行った(RT、15,000 rpm、10 min)。上清除去後のペレット状の細胞にPBSを1 mL加えて、細胞数を計算した。その後、細胞凍結保存用セルバンカー液(日本全薬工業株式会社)に5x106 cells/mLの濃度で懸濁した。懸濁した液を凍結保存用チューブに移し、直ちに-80℃冷凍庫で保存した。
4. スギ花粉症に対する治療効果の評価
シダトレンスギ花粉舌下液の有効性の評価は、総合鼻症状薬物スコア(TNSMS)から、軽症:4点未満、中等症:7点未満、重症10点未満、最重症:10点以上として、著効例:投薬開始年に2段階改善した症例、有効例:投薬開始年に中等症で2年目に軽症になった症例、無効例:投薬開始年に比較して2年目の重症度に変化がないか、悪化した症例、評価不能例:投薬開始年及び2年目とも軽症例を基準として症例の評価を行った。なお、総合鼻症状薬物スコア(TNSMS)は、鼻症状3項目(くしゃみ、鼻汁、鼻閉)とフェキソフェナジン塩酸塩錠及びトラマゾリン塩酸塩点鼻液の薬物スコアの合計点である。
本研究において、重症患者を選択し、スギ花粉症の減感作療法薬の効果判定は治療開始後の2年目の花粉飛散ピーク時の効果判定結果を使用し、治療効果の予測のためのDNAアレイ及びRT-PCRの測定用試料は、該被験者の治療開始前、及び治療開始初期に採取した単核球の遺伝子発現の変動を検討することにより行った。
その結果、治療効果を予測するバイオマーカー探索のため、総合鼻症状薬物スコア(TNSMS)を基準とした2年目の花粉飛散ピーク時の効果判定で、23症例の被験者が、実薬投与著効患者(7例)、実薬投与無効患者(5例)、偽薬投与著効患者(4例)および偽薬投与無効患者(7例)と評価され、これらの被験者の投薬前と投薬開始後2月(以下、「投薬2月後」と記載)のRNA試料をDNAマイクロアレイ解析およびRT-PCR解析に使用した。
5. DNAアレイ解析対象試料の調製
(1) 末梢単核球細胞からのtotal RNAの単離
-80℃で保存した末梢血単核球を37℃の水浴中で3分間インキュベーションし、解凍後、10 mLのPBSが入った15 mL Falcon Tubeに移し、遠心分離を行った(RT、15,000 rpm、10 min)。遠心分離後にアスピレーターで上清を除去した。上清除去後のペレット状の細胞に10 mLのPBSを再度加えて洗浄し、遠心分離を行った(RT、15,000 rpm、10 min)。洗浄後のペレット状の細胞にTrizol 1 mLを加えてピペッティングを行い、細胞を溶解させた。クロロホルム200 mLを加えて遠心分離(4℃、15,000 rpm、15 min)し、水層を分取した。分取した水層にエタノールを終濃度55%になるように加えた。
溶液をピペッティングした後、RNeasy Kit(Qiagen)のRNeasyカラムに溶液を移し、遠心分離(RT、10,000 rpm、15 sec)後、ろ液を廃棄した。次にRW1バッファー700 μLをカラムに加え遠心分離(RT、10,000 rpm、15 sec)した。続いて、コレクションチューブを新しいチューブに交換し、RPEバッファー(エタノール添加済み)500 μLを加えて遠心分離(RT、10,000 rpm、15 sec)した後、ろ液を廃棄した。再度RPEバッファー(エタノール添加済み)500 μLを加えて遠心分離(RT、10,000 rpm、2 min)後、ろ液を廃棄し、再度、遠心分離(RT、10,000 rpm、1 min)した。最後に1.5 mLエッペンチューブにカラムを換えて、Nuclease free water 30 μLを加え、1分間室温で放置した後、遠心分離(RT、10,000 rpm、1 min)を行いtotal RNAを単離した。得られたtotal RNAは各試料ごと全て-80℃で凍結保存した。
(2) 濃度測定及びクオリティーチェック
単離したtotal RNAの1 μLを用いて、NanoDrop(NanoDrop Technologies Inc.)により吸光度測定を行い、濃度の算出及びクオリティーチェックを行った(OD 260 nm/OD 280 nmが1.8から2.0の間の値、OD 260 nm/OD 230 nmが1.5倍以上)。続いてtotal RNAの1 μLを用いて、Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies)を用いたゲル電気泳動法により、RNAのクオリティーチェックを行った(28S rRNA/18S rRNAが1.5以上、RIN(RNA Integrity Number)値が7.0以上をマイクロアレイ以下の実験に使用した)。クオリティーが低いものは、細胞からの再単離またはエタノール沈殿による再精製を行った。
(3) エタノール沈殿による再精製
単離したtotal RNAに全量が50 μLになるようにNuclease free Waterを加え、3M 酢酸ナトリウム(Applied Biosystems)5 μLと100%エタノール(Wako)125 μLを加えピペッティング後、-80℃、30 min放置した。続いて遠心分離(4℃、15,000 rpm、30 min)を行い、上清を取り除き、70%エタノール180 μLを加え、さらに遠心分離(4℃、15,000 rpm、30 min)を行い、上清を取り除き、室温で放置して乾燥させた。最後にNuclease free water 30 μLを加えて、再度濃度測定及びクオリティーチェックを行い、精製できたことを確認した。
6. DNAマイクロアレイでの解析
スギ花粉症に対する減感作療法の治療効果の予測のための遺伝子候補をスクリーニングするために、前記解析対象被験者23例より採取した単核球試料の遺伝子発現の変動をDNAマイクロアレイで解析した。
(1)試験の方法
(i)材料及び方法
前記解析対象被験者より採取した単核球試料を解析対象試料とした。DNAマイクロアレイに用いる試薬として、Quick-Amp Labeling Kit(アジレント・テクノロジー社製)、Whole Human Genome (4×44K) Oligo Microarray (アジレント・テクノロジー社製)、25×Fragmentation Buffer(アジレント・テクノロジー社製)、2×HiRPM Hybridization Buffer(アジレント・テクノロジー社製)、10×GE Blocking Agent(アジレント・テクノロジー社製)、RNeasy Mini Kit(QIAGEN)を使用した。DNAマイクロアレイに用いる機器として、NanoDrop(Thermo Fisher Scientific社)、Bioanalyzer(アジレント・テクノロジー社製)、Block Incubator(アステック社製)、DNA Microarray Scanner(アジレント・テクノロジー社製)、Hybridization Oven(アジレント・テクノロジー社製)、Feature Extraction 10.7.3(アジレント・テクノロジー社製)、Gene Spring GX12.6(アジレント・テクノロジー社製)を使用した。
(ii) 試験方法
Whole Human Genomeを測定対象とする遺伝子とした。
(a) Total RNAの調製およびラベル化実験
前記解析対象被験者の単核球試料は、前記患者より採取した末梢血より単核球RNAを公知の方法で取得した(特許文献3)。簡潔には、NanoDropおよびBioanalyzerを用いて、total RNAクオリティーチェックを行ない、total RNAクオリティーチェックを満たさないものはエタノール沈殿精製を行った。Total RNAクオリティーチェックを満たしたものはtotal RNA 250ngとQuick-Amp Labeling Kitを用いて、Quick-Amp Labeling Kitの手順書に従って、ラベル化を行った。
ラベル化されたaRNA(amplified RNA)試料はNanoDropおよびBioanalyzerを用いて、クオリティーチェックを行ない-80℃にて冷凍保存した。
より詳細には、1試料当たりspike mix 1 μL、T7 Promoter Primer 0.6 μLを加え、spike/primer mixを調製した。ピペッティングでよく混合させた後、各TotalRNA試料にspike/primer mixを1.6 μLずつ加えて、Block Incubatorでインキュベーション (65℃、10 min)した後、氷上で5 min放置した。続いて5 x First Strand Buffer 2 μL、0.1 M DTT 1 μL、10mM dNTP mix 0.5 μL、MMLV-RT 0.5 μL、RNase Inhibitor 0.25 μLを加え、cDNA合成溶液を調製した。ピペッティングでよく混合させた後、各Total RNA試料にcDNA合成溶液を4.25 μLずつ加えて、ウォーターバスでインキュベーションした(遮光 40℃、2 hr)。反応終了後Block Incubatorでインキュベーション (65℃、15 min)した後、氷上で 5 min放置した。続いてNuclease free water 7.65 μL、4×Transcription Buffer 10μL、0.1M DTT 3 μL、NTP mix 4 μL、50%PEG 3.2 μL、RNase Inhibitor 0.25 μL、Inorganic Pyrophosphatase 0.3 μL、T7 RNA Polymerase 0.4 μL、Cyanine3-CTP 1.2 μLを加え、Cy3 Transcription mixを調製した。ピペッティングでよく混合させた後、Cy3 Transcription mixを各反応溶液に30μLずつ加えて、ウォーターバスでインキュベーションした(遮光 40℃ 2hr)。反応終了後、氷上で放置した。
次に、ラベル化cRNAの精製を行った。ラベル化cRNAの精製は、RNAeasy Kit (Qiagen)を用いて行った。詳細は以下のとおりである。各反応溶液にNuclease free water 60 μL、RLTバッファー 350 μL、100%エタノール250 μLを加えた。ピペッティングでよく混合した後、RNeasyカラムに反応溶液を500 μL程度移し、遠心分離(4℃、13,000 rpm、30 sec)を行い、ろ液は廃棄した。この作業を繰り返し、試料ごとに溶液全量をRNeasyカラムに移した。各RNeasyカラムを新しいコレクションチューブに移し、RPEバッファー 500 μLをカラムに加え、遠心分離(4℃、13,000 rpm、1 min)を行い、ろ液を廃棄した。再度RPEバッファー 500 μLをカラムに加え、遠心分離(4℃、13,000 rpm、1 min)を行い、ろ液を廃棄した。各RNeasyカラムを新しいコレクションチューブに移し、遠心分離(4℃、13,000 rpm、1 min)を行った。各RNeasyカラムを1.5 mLエッペンチューブに移し、Nuclease free water 30 μL加えて室温で1分間遮光放置した後、遠心分離(4℃、13,000 rpm、1 min)を行い、カラムを捨て、ろ液を-80℃で遮光保存した。
前記で得られたラベル化cRNA 1μLを用いて、NanoDrop(NanoDrop Technologies Inc.)により吸光度測定を行い、濃度とラベル化cRNA(Cy3)の取り込み率の算出を行った(Cy3取り込み効率は9 pmol/μL以上が望ましい)。続いて、total RNAの1μLを用いて、Agilent 2100 Bioanalyzer (Agilent Technologies)によりラベル化cRNAのクオリティーチェックを行った。
(b) DNAマイクロアレイへのハイブリダイゼーション
作製したラベル化されたaRNAを公知の方法(特許文献3)と同様にDNAマイクロアレイへのハイブリダイゼーションを行った。すなわち、調製したラベル化aRNA 1,650 ngと25×Fragmentation Buffer、2×HiRPM Hybridization Buffer、10×GE Blocking Agentを用いハイブリダイゼーション溶液を調製し、Agilent Hybridizationの手順書に従って、Hybridization Oven 65℃、17hr、10 rpm の条件下、Whole Human Genome 4×44K Oligo Microarrayのプローブにハイブリダイゼーションした。ハイブリダイゼーション終了後Oligo MicroarrayをAgilent Hybridizationの手順書に従って洗浄し、DNA Microarray Scannerで測定し画像データを取得、Feature Extraction 10.7.3を用いて各遺伝子の標識シグナル強度に変換後Gene Spring GX12.6を用いて変換することにより数値化した。
詳細には、各ラベル化cRNAを氷上で解凍した後、遠心分離(1,000 rpm、10 sec)を行った。1.5 mL low-bind Nuclease free tubeにラベル化cRNA 1.65 μg、10×Blocking Agent 11 μL、25×Fragmentation Buffer 2.2 μL、Nuclease free waterを最終液量55 μLになるように加え、ボルテックス(10 sec)、遠心分離(1,000 rpm、10 sec) 後、ヒートブロックでインキュベーション(遮光 60℃、30 min)し、氷上で1min放置した。遠心分離(1,000 rpm、10 sec)後、2×GE Hybridization Buffer HI-RPM 55 μLを加えピペッティング、遠心分離(4℃、13,000 rpm、1 min)後、氷上で放置し、ハイブリダイゼーション溶液を調製した。
ハイブリダイゼーションチャンバー(Agilent Technologies)を用意し、チャンバーベースの上に4×44k ガスケットスライドをセットし、ハイブリダイゼーション溶液 100 μLをガスケットのウェルに添加した後、Whole Human Genome (4×44k) マイクロアレイスライドをガスケットスライドの上に載せ、チャンバーカバーをマイクロアレイスライドの上に載せ、クランプアッセンブリでチャンバーを固定した。チャンバーを回転させハイブリ溶液がガスケットスライド全面に行きわたることを確認した(動かない気泡がある場合はチャンバーを振って気泡を移動させた)。チャンバーをハイブリダイゼイションオーブン(Agilent Technologies)にセットし、ハイブリダイゼーションを行った(65℃、10 rpm、17 hr)。
反応終了後、ガスケット解体用Agilent Gene Expression Wash Buffer1中でガスケットとマイクロアレイスライドを取り外し、新しいAgilent Gene Expression Wash Buffer1の中で室温1分間洗浄(洗浄用液の回転数は中程度)し、続いて37℃でインキュベーションしてあるAgilent Gene Expression Wash Buffer 2の中で1分間洗浄(洗浄用液の回転数は中程度)した後、溶液からゆっくりマイクロアレイスライドを取り出し、遮光スライドケースに入れて乾燥保存した。
マイクロアレイスライドをスライドホルダーに入れ、Agilent DNA microarray Scanner(Agilent Technologies)にセットし測定を行った。測定した画像データはFeature extraction software(Agilent Technologies)を用いて、クオリティーチェックと数値化を行った。
(c) マイクロアレイでの測定結果の解析
解析対象群は、実薬著効群・無効群および偽薬著効群・無効群のそれぞれ投薬前及び投薬2月後に同一被験者から採取した試料であり、各群間でサンプル対応が付いているため、二元配置(1要因対応あり)のANOVA解析を行った。下位検定はtime point方向でTukey-Kramer法、サンプル方向でSteel-Dwass検定で有意差の有無を解析した。変動遺伝子抽出はANOVA解析でp値<0.05の遺伝子を抽出し、その中から倍率変化(fold-change、FC>1.5倍変動以上を選別)や下位検定(p値<0.05を選別)を確認し、抽出した。
(2) マイクロアレイ試験の結果
(i) マイクロアレイ試験の結果
マイクロアレイ搭載プローブ41,000個の中、解析対象となるプローブとして24,413個を選定し、残りの16,587個のプローブはバックグラウンドと同等のシグナル値のため除去した。この選定されたプローブうち、ANOVA解析で p値<0.05のプローブとして、5,590個のプローブを選定し、これらのプローブを3つの大きなカテゴリー(要因1:薬剤投与有・無[medicine effect]、要因2:time point[投薬前・投薬2月後]、交互作用[interaction])に分け、さらに7種類のカテゴリーに細分化して抽出した25種類のプローブを基にヒートマップを作成しクラスター解析を行った。サンプル方向のクラスターにおいて大きく2クラスターに分かれてさらに、4つのクラスターに分かれた。一番左側のクラスター(7サンプル)内の4サンプルが実薬著効群[投薬2月後]のサンプルであることから変動遺伝子抽出の整合性も得られた。以下で、個々の抽出プローブについてより詳細に(カテゴリーごと)解析を行った。
(ii) バイオマーカー候補遺伝子の抽出
マイクロアレイ搭載プローブ41,000個の中、解析対象となるプローブとして24,413個を選定し、残りの16,587個のプローブはバックグラウンドと同等のシグナル値のため除去した。この選定されたプローブうち、ANOVA解析で p値<0.05のプローブとして、5,590個のプローブを選定し、これらのプローブを3つの大きなカテゴリー(要因1:薬剤投与有・無[medicine effect]、要因2:time point[投薬前・投薬2月後]、交互作用[interaction])に分け、さらに7種類のカテゴリーに細分化した(図1)。
以下それぞれのカテゴリーごとに変動遺伝子の確認を行った。
a. 要因1の主効果(medicine effect)
ANOVA解析で p値<0.05で変動している遺伝子は、CFH、CENPP、SH3KBP1、SEPT7P2、PDXDC2P、RNF169、MGA、NPTN、NOL8、RABGAP1L、TMEM159、MTF1、ARHGD1B、MAP3K1、PLDN、GLB1L2、HSP90B1、TRNP1、ZNF333、ATP6V1G2、VASP、PRKCB、SCAF11、FOXN2、VAV3、D4S234E、MDM1、IPO9、CDC40、TBC1D3P2及びSLMAPの31種類のプローブであった。これらの中、実薬著効群では、FC>1.5を示すプローブを認めなかった。実薬著効群でFC<1.5以下ではあったが、他の群と変動方向が逆であったものとしてCFH、SEPT7P2及びPRKCBの3種類のプローブを認めた。この3種類のプローブは、バイオマーカー候補遺伝子となるものと判断された。
b. 要因2の主効果(time point)
ANOVA解析で p値<0.05で変動している遺伝子は、FANK1、GOLIM4、KCNH2、LOC100128420、ENPP2、BNC2、OLFM1及びCHRNA7の8種類のプローブであった。
いずれも実薬著効群でFC>1.5であり、バイオマーカー候補遺伝子と判断された。なお、実薬著効群でFC<1.5以下であったが、他の群と逆方向の変動をする遺伝子は認めなかった。
c. 交互作用(interaction)
ANOVA解析で p値<0.05で変動している遺伝子は、ADC、SIT1、PPIAL4A、HSPB11、ABHD11、GPR89B、ZNF76、ZFYVE28、VPS52、TRMT112、HIC1、GLMN、SPAST、PHF19、P4HTM、HAMP、VSIG10L、UBE2V1、SGCB、IL2RG、MAP4K4、ZNF343、RIPK2、TCEA2、EIF2D、LYOLA1、HARS、LSS、SPTAN1、TRUB2、C1orf93、XPO5、TNFRSF21、DHRS13、TRIM41、FSCN1、IL32、ATP8B3、CTNND1、C22orf29、DTX3、HARS、UPF3A、MAGED1、GPR20、AGAP7、TUBB3、IMMP1L、STYK1、EIF2C4、LAG3、LRP5L、C19orf12、PPIA、ZNF564、NANP、TTC39C、MALAT1、TMEM127、FLJ10661、LOC284454、LOC100192204及びLOC643387の63プローブであった。これらの中、TNFRSF21、FSCN1、CTNND1及びC22orf29の4種類のプローブが、倍率変化(FC)>1.5を示し、バイオマーカー遺伝子候補と判断された。また、実薬著効群の倍率変化(FC)が1.5以下であったが、他の群と逆方向の変動をする遺伝子として、EIF2D、ATP8B3、TUBB3及びTTC39Cの4種類のプローブで認め、バイオマーカー遺伝子候補と判断された。
d. 要因1と要因2の主効果で有意に変動している遺伝子
ANOVA解析でp値<0.05で変動している遺伝子は、ALCAM、SLC16A6、HLA-DQB1、SPOPL、ACBD5、HDAC7、PPIB、BCL10、PPP1R3D、CSNK1A1P1、PCMTD2、HDAC8、NDFIP2、SRP72、SLC16A6、ZDHHC20、RHOQ、FKRP、EVI2B及びSUV420H1の20種類のプローブであった。これらのプローブの中、実薬著効群で倍率変化(FC)>1.5に該当するものを認めなかった。また、実薬著効群で倍率変化(FC)が1.5以下であったが、他の群と変動方向が逆の遺伝子も認めなかった。
e. 要因2の主効果と交互作用で有意に変動している遺伝子
ANOVA 解析でp値<0.05で変動している遺伝子は、UBE2D2、OSR2、FTSJ1、TMEM209、CNTRL、MUC5AC、YBEY、HMOX2、INGX、DEFB106B、MEST、MOAP1、PLA2G12A及びRGS12の14種類のプローブであった。この中、実薬著効群でFC>1.5はOSR2、INGX及びDEFB106Bの3種類のプローブ、並びに実薬著効群は倍率変化(FC)が1.5以下であるものの、他の群と変動方向が逆のものはFTSJ1の1種類のプローブあり、これらをバイオマーカー候補遺伝子として選定した。
f. 要因1の主効果と交互作用で有意に変動している遺伝子
ANOVA解析でp値<0.05で変動している遺伝子は、MORC2、IMP4、ALKBH3、MLEC、RPRD2、EIF2S3、ULK3及びPDXDC2Pの8種類のプローブであった。これらの中、実薬著効群で倍率変化(FC)>1.5を示すプローブを認めなかった。また、実薬著効群で倍率変化(FC)は1.5以下であり、かつ、他の群と変動方向が逆のものを認めなかった。
g. 要因1、要因2と交互作用で統計学的有意に変動している遺伝子
ANOVA解析でp値<0.05で変動している遺伝子は、BOKとCD8Aの2種類のプローブであり、BOKは倍率変化(FC)<1.5であったが、他の群の変動方向と逆方向であり、バイオマーカー候補遺伝子として選定した。
(3) バイオマーカー候補遺伝子のRT-PCR試験による追試・確認のための選定
実薬著効群で倍率変化(FC)>1.5のプローブ、および実薬著効群で倍率変化(FC)が1.5以下ではあるものの、他の群と変動方向が逆のもの、合せて25種類のプローブ(ATP8B3、CHRNA7、ENPP2、INGX、SEPT7P2、BNC2、CTNND1、FANK1、KCNH2、TNFRSF21、BOK、DEFB106B、FSCN1、OLFM1、TTC39C、C22orf29、DTX3、FTSJ1、OSR2、TUBB3、CFH、EIF2D、GOLIM4、PRKCB及びLOC100128420)をバイオマーカー候補遺伝子として選定し(図2−1〜3)、これらのバイオマーカー候補遺伝子について、以下、RT-PCR試験で追試・確認を行った。(なお、Tukey-Kramer法及びSteel-Dwass検定法での有意差の解析結果は明細書に示されない。)
7.マイクロアレイで選別された遺伝子のRT-PCRによる発現量の測定
DNAマイクロアレイによるスクリーニングで選別された遺伝子の発現変動を定量精度が高いRT-PCR法で測定することにより、スギ花粉症に対する減感作療法を予測するための遺伝子候補の絞り込みを行った。
(1) 測定方法
(i) 材料及び方法
前記末梢血単核球 total RNAを被験試料とした。測定に用いる試薬は、Superscript VILO cDNA合成キット(Life Technologies社製)、TaqMan Fast Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems社製)、Universal Probe Library(Roche社製)、遺伝子増幅用プライマー(オペロン社製)、解析ソフトSDS2.3 software(Applied Biosystems社製)を使用し、使用機器として、C1000 Thermal cycler(Bio Rad社製)、7900HT Fast Real Time PCR System(Applied Biosystems社製)を使用した。
(ii) 測定対象とする遺伝子
DNAアレイにより選定された24種類の遺伝子、すなわち、CFH、PRKCB、SEPT7P2、FANK1、KCNH2、OLFM1、BNC2、ENPP2、GOLIM4、CHRNA7、FNCF1、C22orf29、TNFRSF21、CTNND1、EIF2D、DTX3、TTC39C、TUBB3、ATP8B3、INGX、OSR2、DEFB106B、FTSJ1及びBOKと、対照として18S rRNAとを測定対象とした。なお、マイクロアレイで変動を認めたLOC100128420は、かつて遺伝子として登録され、現在は遺伝子とは認められていないため以後の解析対象から除外した。
(iii) 試験方法
前記凍結保存された末梢血単核球RNAを用い、Superscript VILO cDNA合成キット(Life Technologies社製)を用いて、total RNAよりcDNAを合成し、濃度既知のスギ花粉のcDNAを標準試料として、RT-PCR法のCt(Threshold cycle)値を用いた絶対定量法で各遺伝子を定量した。さらに、併せて、S18 rRNAを用い測定値の正規化を行った。以下に、具体的な実験操作を記載した。
a. 単核球total RNA試料からのcDNAの合成
単核球total RNA試料からcDNAを公知の方法で調製した(特許文献3)。簡潔には、前記の凍結保存された被験試料を解凍し、Superscript VILO cDNA合成キットに溶かしたtotal RNA試料500 ng分およびnuclease free waterを加え総量20 μLとした。攪拌後、遠心(flash 5,000 rpm程度)し、25℃/10 min→42℃/60 min→85℃/5 min→4℃/∞の条件で、伸長反応を行った。nuclease free water 80 μLを加え、total 100 μL (5 ng/μL)の原液をつくり、-30℃にて冷凍保存した。
b. スギ花粉cDNA 希釈テンプレートの調製
スギ花粉cDNA試料を解凍し、96 well plateに150 μL/wellで、既知のcDNA(20 ng/μL)原液を標準曲線用のサンプルとして使用し、4倍希釈を順次繰り返すことにより、5濃度のスギ花粉cDNA標準溶液を調製した。具体的には、256値サンプル(s256)として、蒸留水300 μLにcDNA原液200 μLを加え、合計500 μL(8 ng/μL、原液2.5倍希釈)とした。さらに、64値サンプル(s64)として、蒸留水300 μLに cDNA原液100 μLを加え、合計400 μL (2 ng/μL、原液10倍希釈)とした。さらに、16値サンプル(s16)として0.5 ng/μL;原液40倍希釈の試料溶液、4値サンプル(s04)として125 pg/μL;原液160倍希釈の試料溶液、1値サンプル(s01)として、31.25pg/μL;原液640倍希釈の試料溶液の各400 μL溶液を調製し、この5種類の濃度の希釈系列溶液を標準曲線用ウェルに150 μLずつ添加した。
c. 被験試料テンプレートの調製
蒸留水120 μLにcDNA原液30 μLを添加した(最終濃度:1 ng/μL)。被験者の単離単核球mRNAより作製したcDNAの各試料は5倍希釈液をRT-PCRの測定に使用した。なお、陰性対照として、蒸留水150 μLずつをウェルに添加した。希釈テンプレートを添加したプレートにシールをした後、遠心(プレート遠心機2,000 rpm程度 30 sec)後、-30℃で冷凍保存した。
d. リアルタイムPCR(ABI7900 Fast)の実施
-30℃の凍結された各試料を融解後、Roche Universal probe Library を使用するプローブ試料(10 μMを0.2 μL/well)、プライマー試料(プライマーS、プライマーASの各々の100 μM、0.04 μL/well)、蒸留水0.72 μL/well及びPCR Master mix 20 μLを混合し、PCR premixを調製した(11 μL/well)。このPCR premixに被験者の単核球mRNAより作製したcDNAテンプレート9 μL/wellを混合し(合計20 μL/well)、リアルタイムPCRは、7900HT Fast Real Time PCR Systemを使用して、95℃/20 sec → [95℃/1 sec → 60℃/20 sec]、40 cyclesで増幅反応を行った。なお、Universal Probe Library(Roche社製)のFRETプローブの分解のための5'エキソヌクレアーゼはTaqMan Fast Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems社製)に含まれた。
e. 反応結果の評価およびデータの正規化及び数値のグラフ化
SDS2.3 software (Applied Biosystems社製)を用いてデータを算出し、Microsoft Excelを使ってデータの正規化と数値のグラフ化を行ない、標準曲線のslope値とR2値(相対係数)を使って実験の評価を行なった。データの正規化は、予め測定しておいた18S rRNAの定量数値を用いて行なった。
f. 因果関係の解析
スギ花粉症患者の治療前と薬物投与後の遺伝子発現量の変化と臨床効果との相関性を種々の方法で検討し、予後予測バイオマーカー候補遺伝子の治療効果の予測精度を検討した。
(2) RT-PCRでの測定結果
24種類のバイオマーカー候補遺伝子について、投薬前から投薬2月後での変動を臨床効果別にグラフ化した(図3)。なお、KCNH2、CHRNA7、DEFB106Bの3種類の遺伝子は、発現量が低いためPCRのデータを取得できなかった。
24種類のバイオマーカー候補遺伝子の中で、DNAアレイおよびRT-PCRにおいて統計学的に有意差のあるものとして、OLFM1、OSR2およびTNFRSF21を選び、PCRデータとアレイデータの倍率変化(FC)比較において相関がある遺伝子として、CFHとGOLIM4を選定した。これら5種類の遺伝子のDNAアレイおよびRT-PCRでの測定値に対して [投薬2月後]/[投薬前]比を求めた変動値を図3A〜図3Eに示した。なお、各図において、マイクロアレイによる測定結果の個体別に表した図を上段左図に、RT-PCRによる測定結果の個体別に表した図を上段右図に、各群における [投薬前]と [投薬2月後]との平均値を下段図に示した。
CFHは、実薬著効のみで遺伝子発現がアップレギュレートし、一方、無効例でダウンレギュレートしており、効果予測のバイオマーカーに成り得ると判断された。また、OSR2とTNFRSF21は、実薬無効例のみが遺伝子発現アップレギュレートを示し、効果予測のバイオマーカーに成り得ると判断された。
8. RT-PCR測定結果の判別分析
RT-PCRの測定により選別したCFH、GOLIM4、OLFM1、OSR2及びTNFRSF21の5種類の遺伝子についてそれぞれの遺伝子での減感作療法の予測精度を判別分析法により解析、評価し、さらに、CFH、OSR2及びTNFRSF21の3種類の遺伝子の中、2種類以上を組み合わせた場合の予測精度を判別分析法により解析し、評価した。
(1) 判別分析方法
DNAアレイおよびRT-PCRにおいて統計学的に有意差のある遺伝子又はRT-PCRデータとアレイデータの変動において相関がある遺伝子として選定した5種類の遺伝子について判別分析を行った。判別分析は、統計ソフトRを用い、使用したパッケージはMASS、使用した関数は線形判別がlda、非線形がqda で解析を行った。事後確率50%以上を正解と判定した。
判別分析に使用した実薬著効例7例及び実薬無効例5例のデータを表3に示した。各数値は、定量値をS18 rRNAの測定値で正規化した値を表す。

効果判定は、実著:実薬著効、実無:実薬無効を表す。
なお、判別分析(判別式構築)にあたっては、効果判定を目的変数、各ターム(投薬前及び投薬2か月後)の数値データを説明変数として、遺伝子ごとに判別式を構築し解析を行った。線形判別(lda)は1次関数を用いて判別計算を行い、非線形判別(qda)は2次関数を用いて判別計算を行った。
また、解析した5種類の遺伝子(OLFM1、OSR2、TNFRSF21、CFH及びGOLIM4)は、前記DNAマイクロアレイ実験において実薬群の投薬前に対して飛散前で効果を示さない被験者群において有意に変動した遺伝子として選別されたものであり、判別式においても全体の正解が高くかつ無効判定(NPV)の正解率が高いものの方が良い判別式である。
(2) 判別分析結果
(i) 各遺伝子単独の2データでの判別分析
CFHの減感作療法開始前(から開始2か月後(での遺伝子変動については、非線形判別で実薬著効例(good responder)及び実薬無効例(poor responder)のいずれも100%の正解率を示した(表2)。また、実薬著効例(good responder)は、非線形判別において、100%の正判別率を示した(表2)。
TNFRSF21の減感作療法開始前から開始後2月での遺伝子変動については、線形判別及び非線形判別のいずれにおいても、実薬著効例(good responder)で100%、実薬無効例(poor responder)で80%の正解率を示した(表3)。また、線形判別、非線形判別のいずれにおいても、実薬著効例(good responder)は、92%の正判別率を示した(表3)。
OSR2の減感作療法開始前から開始後2月での遺伝子変動については、線形判別及び非線形判別のいずれにおいても、実薬著効例(good responder)で100%、実薬無効例(poor responder)で80%の正解率を示した(表4)。また、線形判別、非線形判別のいずれにおいても、実薬著効例(good responder)は、92%の正判別率を示した(表4)。
GOLIM4の減感作療法開始前から開始後2月での遺伝子変動については、線形判別において実薬著効例(good responder)で86%、実薬無効例(poor responder)で40%の正解率を示し、非線形判別では、実薬著効例で86%、実薬無効例で20%の正解率を示した(表5)。また、線形判別、非線形判別のいずれにおいても、実薬著効例(good responder)は、67%の正判別率を示した(表5)。
OLFM1の減感作療法開始前から開始後2月での遺伝子変動については、線形判別において実薬著効例で57%、実薬無効例で40%の正解率を示し、非線形判別では、実薬著効例(good responder)で100%、実薬無効例(poor responder)で100%の正解率を示した(表6)。なお、被験試料2例は、遺伝子の発現量が低く、評価できなかった。また、線形判別、非線形判別において、実薬著効例(good responder)は、それぞれ50%、58%の正判別率を示した(表6)。
(ii) 2遺伝子2データの計4データでの判別分析
CFHとTNFRSF21とを組み合わせた場合の、減感作療法開始前から開始後2月での遺伝子変動については、線形判別及び非線形判別のいずれにおいても、実薬著効例(good responder)及び実薬無効例(poor responder)のいずれも100%の正解率を示した(表7)。また、線形判別、非線形判別のいずれにおいても、実薬著効例(good responder)は、100%の正判別率を示した(表7)。
CFHとOSR2とを組み合わせた場合の、減感作療法開始前から開始後2月での遺伝子変動については、線形判別での正解率は、実薬著効例(good responder)で100%、実薬無効例(poor responder)で80%を示し、また、非線形判別においては、実薬著効例(good responder)及び実薬無効例(poor responder)のいずれも100%の正解率を示した(表8)。また、線形判別、非線形判別において、実薬著効例(good responder)は、それぞれ92%、100%の正判別率を示した(表8)。
TNFRSF21とOSR2とを組み合わせた場合の、減感作療法開始前から開始後2月での遺伝子変動については、線形判別での正解率は、実薬著効例(good responder)で100%、実薬無効例(poor responder)で80%を示し、また、非線形判別においては、実薬著効例(good responder)及び実薬無効例(poor responder)のいずれも100%の正解率を示した(表9)。また、線形判別、非線形判別において、実薬著効例(good responder)は、それぞれ92%、100%の正判別率を示した(表9)。
(iii) 3遺伝子2データの計6データでの判別分析
CFH、TNFRSF21及びOSR2の3つ遺伝子を組み合わせた場合の、減感作療法開始前から開始後2月での遺伝子変動については、線形判別での正解率は、実薬著効例(good responder)で100%、実薬無効例(poor responder)で100%を示し、また、実薬著効例(good responder)は、それぞれ100%の正判別率を示した(表10)。なお、CFH、TNFRSF21及びOSR2の3つ遺伝子を組み合わせた場合の非線形判別は、使用例数が少ないため計算できなかった。
9. 総括
以上の結果より、CFH、TNFSR21及びOSR2の3つの単独の遺伝子の単核球中の遺伝子の発現の減感作療法開始前と開始後初期での変動の測定が、高い精度で減感作療法の治療効果を予測できることが示された。さらに、CFH、TNFSR21及びOSR2の中の2種類の単核球中の遺伝子の変動を組み合わせることにより、さらに、高い精度で減感作療法の治療効果を予測できることが示された。

Claims (10)

  1. 花粉症に対する減感作療法の治療効果を予測するための試験方法であって、
    (1)花粉症に対する減感作療法を実施する被験者から採取した血液より、単核球を単離するステップ、
    (2)前記単核球における、CFH(補体因子H)遺伝子、TNFRSF21(TNF related death receptor 6)遺伝子及びOSR2(odd-skipped related 2)遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量又は前記各遺伝子がコードするタンパク質産生量の減感作療法の開始前に対する減感作療法開始後の変動を測定するステップ、及び、
    (3)CFHの発現がアップレギュレートされた場合、若しくは、OSR2又はTNFRSF21の発現がダウンレギュレートされた場合には、減感作療法の効果があると、CFHの発現がダウンレギュレートされた場合、若しくは、OSR2又はTNFRSF21の発現がアップレギュレートされた場合には、減感作療法の効果が無いと、前記減感作療法の治療効果に対する予測を決定するステップ、
    を含むことを特徴とする、方法。
  2. 花粉症はスギ花粉症であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 花粉症に対する減感作療法の治療効果を予測するための診断薬であって、
    (a)CFHをコードするmRNA若しくはそのcDNAを特異的に検出する核酸プローブ若しくはプライマー、又はCFHを特異的に認識する抗体、
    (b)TNFRSF21をコードするmRNA若しくはそのcDNAを特異的に検出する核酸プローブ若しくはプライマー、又はTNFRSF21を特異的に認識する抗体、及び、
    (c)OSR2をコードするmRNA若しくはそのcDNAを特異的に検出する核酸プローブ若しくはプライマー、又はOSR2を特異的に認識する抗体、からなる群から選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする、診断薬。
  4. 花粉症はスギ花粉症であることを特徴とする、請求項3に記載の診断薬。
  5. 花粉症に対する減感作療法の治療効果を予測するためのマイクロアレイであって、
    (a)CFHをコードするmRNA又はそのcDNAを特異的に検出する核酸プローブ、
    (b)TNFRSF21をコードするmRNA又はそのcDNAを特異的に検出する核酸プローブ、及び、
    (c)OSR2をコードするmRNA又はそのcDNAを特異的に検出する核酸プローブ、からなる群から選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする、マイクロアレイ。
  6. 花粉症に対する減感作療法の治療効果を予測するためのマイクロアレイであって、
    (a)CFHをコードするmRNAを特異的に検出する核酸プローブは、配列番号7の核酸配列を有するポリヌクレオチドを含み、
    (b)TNFRSF21をコードするmRNAを特異的に検出する核酸プローブは、配列番号8の核酸配列を有するポリヌクレオチドを含み、及び、
    (c)OSR2をコードするmRNAを特異的に検出する核酸プローブは、配列番号9の核酸配列を有するポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項5に記載のマイクロアレイ。
  7. 花粉症はスギ花粉であることを特徴とする、請求項5又は6に記載のマイクロアレイ。
  8. 花粉症に対する減感作療法の治療効果を予測するためのRT-PCR用組成物であって、
    (a)CFHがコードされるmRNA又はそのcDNAを特異的に検出する一対のプライマー、
    (b)TNFRSF21がコードされるmRNA又はそのcDNAを特異的に検出する一対のプライマー、及び、
    (c)OSR2がコードされるmRNA又はそのcDNAを特異的に検出する一対のプライマー、からなる群から選択される少なくとも1対のプライマーを含むことを特徴とする、RT-PCR用組成物。
  9. 請求項8に記載のRT-PCR用組成物であって、
    (a)CFHがコードされるcDNAを特異的に検出するプライマーは、配列番号10及び11の核酸配列を有する一対のプライマー、
    (b)TNFRSF21がコードされるcDNAを特異的に検出するプライマーは、配列番号12及び13の核酸配列を有する一対のプライマー、及び、
    (c)OSR2がコードされるcDNAを特異的に検出するプライマーは、配列番号14及び15の核酸配列を有する一対のプライマー、の少なくとも一対のプライマーを含むことを特徴とする、RT-PCR用組成物。
  10. 花粉症はスギ花粉症であることを特徴とする、請求項8又は9に記載のRT-PCR用組成物。
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