JP6446298B2 - 振動測定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、振動測定装置に関し、より特定的には、接触共振の影響を軽減することができる振動測定装置に関する。
加速度センサを測定対象物に接触させて振動を測定する場合、測定対象物の接触面において接触共振が発生し、加速度センサの性能が悪化することが知られている。
接触共振は、加速度センサ自体の固有振動数よりも低い周波数で生じる。加速度センサは、加速度センサ自体の固有振動数よりも低い周波数帯域にて正確な測定が可能であるため、接触共振が生じると、加速度センサが正確な測定ができる周波数帯域は、接触共振周波数よりも低い周波数帯域に限られてしまう。
このような問題の解決手段として、例えば、特許第3944784号公報(特許文献1)には、振動ピックアップを備えた押し当て方式の振動検出装置において、振動ピックアップの測定対象物に対する振動検出面に低反発ゴムを装着することにより、振動ピックアップと測定対象物との接触共振を軽減させるようにした構成が開示されている。
特許第3944784号公報
加速度センサの測定対象物への接触方法(加速度センサに装着したコンタクトピンのようなアタッチメントを測定対象物に接触させる方法も含む。以下では単に「接触方法」ともいう。)は、押し当て方式以外にも存在し、そのそれぞれについて接触共振は生じ得る。しかし、その全てにおいて加速度センサの性能悪化が顕著であるわけではなく、加速度センサの性能がほとんど悪化しない場合もある。
例えば、ねじ止めにより加速度センサを測定対象物に固定する場合、加速度センサの性能悪化はほとんど生じない。これは、ねじ止めにより加速度センサが測定対象物に強固に固定されるため、加速度センサと測定対象物とがほとんど一体となり、加速度センサ自体の固有振動数に近い周波数で接触共振が生じるためである。
図8は、接触方法がねじ止めによる場合の接触共振周波数特性を表す図である。図8を参照して、曲線C0は、接触方法がねじ止めによる場合の接触共振周波数特性を表す曲線である。接触共振は、加速度センサの固有振動数とほぼ等しい周波数fr0において生じる。利得の値が0でフラットになっている曲線C0のf0以下の周波数帯域(以下では単に「フラットな周波数帯域」ともいう。)においては、加速度センサの入力信号と出力信号の強度が同じである。すなわち、当該周波数帯域において加速度センサは、接触共振の影響を受けずに正確な振動測定が可能である。接触方法がねじ止めである場合、加速度センサによる正確な振動測定が可能な周波数帯は周波数f0までである。
接触方法がねじ止めであるなら、接触共振がほとんど生じず、加速度センサによる正確な振動測定が可能である。しかし、ねじ止めにより加速度センサを測定対象物に固定するためには、測定対象物にねじ穴をあける必要がある。測定対象物によってはそれが許されない場合があり、そのような場合には、測定対象物を破損せずに加速度センサを測定対象物に接触させる必要がある。そのような方法としては、例えば、コンタクトピンによる接触方法(押し当て方式)、または磁石による接触方法がある。
しかし、コンタクトピンにより加速度センサを測定対象物に接触させる場合、接触共振による加速度センサの性能悪化は顕著である。これは、コンタクトピンの場合、加速度センサを手作業で測定対象物に押し当てるので、加速度センサを測定対象物に対して強固に固定できないためである。
図9は、コンタクトピンの場合における加速度センサの性能悪化を説明するための図である。図9において、曲線C0は図8のものと同じである。図9を参照して、曲線C1はコンタクトピンの場合の周波数特性を表す曲線である。コンタクトピンの場合、接触共振は周波数fr1で生じているのがわかる。周波数fr1は、接触方法がねじ止めである場合に接触共振が生じる周波数fr0よりかなり低い。その結果、曲線C1のフラットな周波数帯域の上限は、周波数f0からf1まで下がり、加速度センサは周波数f1までしか正確な振動測定ができなくなってしまう。
また、磁石により加速度センサを測定対象物に吸着させる場合も、接触共振により加速度センサの性能悪化が生じる。コンタクトピンの場合と比べると、磁石の場合は、加速度センサをより強固に測定対象物に固定することができる。そのため、加速度センサはコンタクトピンの場合ほど大きく性能劣化しない。しかし、磁石の場合も、ねじ止めによる場合ほど加速度センサを測定対象物に対して強固に固定できるとはいえず、加速度センサの性能劣化は無視できない程度に生じてしまう。
図10は、磁石の場合における加速度センサの性能悪化を説明するための図である。図10において、曲線C0は図8のものと同じである。図10を参照して、曲線C2は接触方法が磁石の場合の周波数特性を表す曲線である。磁石の場合、接触共振は周波数fr2で生じているのがわかる。周波数fr2は、接触方法がねじ止めである場合に接触共振が生じる周波数fr0より低い。その結果、曲線C2のフラットな周波数帯域の上限は、周波数f0からf2まで下がり、加速度センサは周波数f2までしか正確な振動測定ができなくなってしまう。
以上から、コンタクトピンの場合または磁石の場合のように、加速度センサを測定対象物に対してねじ止めによる場合ほど強固に固定できない場合には、接触共振による加速度センサの性能悪化を軽減する必要がある。
しかし、磁石の場合、低反発ゴムを磁石に装着すると磁石が測定対象物に十分に吸着せず、測定対象物の振動によって加速度センサが測定対象物から外れかねない。つまり、特許第3944784号公報(特許文献1)に開示されている構成のように、押し当て方式における加速度センサと測定対象物との接触方法に着目した構成は、他の接触方法においては接触共振を軽減するのに有効とはいえない。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、加速度センサの測定対象物への接触方法に依存することなく、接触共振による加速度センサの性能悪化を軽減することができる振動測定装置を提供することである。
本発明は、要約すると、測定対象物の振動を測定する振動測定装置である。振動測定装置は、加速度センサと、接触部と、フィルタ部と、処理部とを備える。接触部は、加速度センサに装着され、測定対象物に接触することによって振動を加速度センサに伝える。フィルタ部は、加速度センサからの信号を減衰して出力することが可能である。処理部は、フィルタ部から出力された信号を処理する。フィルタ部は、接触部と測定対象物との接触共振によって生じる信号成分を打ち消すように利得が設定されている。
好ましくは、フィルタ部は、入力された信号を減衰させるか否かを変更することができるように構成されている。
好ましくは、フィルタ部は、利得を変更することができるように構成されている。
好ましくは、接触部は、加速度センサに着脱自在に装着される。
好ましくは、接触部として、第1の接触部と、第1の接触部とは異なる第2の接触部とが使用可能である。フィルタ部は、第1のフィルタと、第2のフィルタと、切替部とを含み、第1のフィルタと第2のフィルタとは帯域阻止フィルタである。切替部は、加速度センサから処理部への信号路を切り替える。第1のフィルタは、第1の接触部と測定対象物との接触共振によって生じる信号成分を打ち消すように利得が設定されている。第2のフィルタは、第2の接触部と測定対象物との接触共振によって生じる信号成分を打ち消すように利得が設定されている。切替部は、信号路として、少なくとも、第1のフィルタを含む第1の信号路、または第2のフィルタを含む第2の信号路を選択することができる。
帯域阻止フィルタは、ノッチフィルタ、バンドリジェクトフィルタ、バンドストップフィルタ、バンドエリミネーションフィルタ、および入力信号を減衰させて出力するその他のフィルタ回路を含む。
好ましくは、切替部は、信号路として、帯域阻止フィルタを含まない第3の信号路をさらに選択することができる。
好ましくは、接触部は、コンタクトピンを含む。接触部は、コンタクトピンの先端が測定対象物に接触することにより測定対象物の振動を加速度センサに伝える。
好ましくは、圧力検知部をさらに備える。圧力検知部は、ピンの先端に加わる圧力を検出し、当該圧力の値を処理部に出力する。処理部は、圧力検知部が所定の値の圧力を検知したことに応じて、加速度センサからの信号の処理を開始する。
好ましくは、帯域阻止フィルタは、コンタクトピンの先端に加わる圧力が所定の値である場合の接触共振によって生じる信号成分を打ち消すように利得が設定されている。
好ましくは、接触部は、磁石を含む。接触部は、磁石によって測定対象物に吸着することにより測定対象物の振動を加速度センサへ伝える。
本発明によれば、加速度センサの測定対象物への接触方法に依存することなく、接触共振による加速度センサの性能悪化を軽減することができる。
加速度センサからの信号がそのまま処理部へ入力される場合の機能ブロック図である。 加速度センサにコンタクトピンが装着された場合の機能ブロック図である。 第1ノッチフィルタの周波数特性と効果を説明するための図である。 加速度センサに磁石が装着された場合の機能ブロック図である。 第2ノッチフィルタの周波数特性と効果を説明するための図である。 第2の実施の形態に従う振動測定装置の機能ブロック図である。 第2の実施の形態に従う振動測定装置の処理部において行なわれる処理を説明するためのフローチャートである。 接触方法がねじ止めによる場合の接触共振周波数特性を表す図である。 接触方法がコンタクトピンの場合における加速度センサの性能悪化を説明するための図である。 接触方法が磁石の場合における加速度センサの性能悪化を説明するための図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
[第1の実施の形態]
(コンタクトピンの場合)
図1は、第1の実施の形態に従う振動測定装置1において、加速度センサ10からの信号がそのまま処理部14へ入力される場合の機能ブロック図である。図1を参照して、振動測定装置1は、加速度センサ10と、接触部と、フィルタ部13と、処理部14とを備える。
第1の実施の形態においては、接触部として、コンタクトピン11(第1の接触部)、または磁石12(第2の接触部)を使用可能である。図1においては、加速度センサ10にコンタクトピン11が装着されている場合を示している。加速度センサ10に磁石12が装着された場合については後述する。
コンタクトピン11は、加速度センサ10に着脱自在に装着される。コンタクトピン11は、その先端が測定対象物Mに接触することにより測定対象物Mの振動を加速度センサ10に伝える。
フィルタ部13は、第1ノッチフィルタ131と、第2ノッチフィルタ132と、切替部とを含む。第1ノッチフィルタと第2ノッチフィルタとは、いずれも入力された信号を減衰して出力する。フィルタ部13は、加速度センサ10からの信号を減衰して出力することが可能である。処理部14はフィルタ部13から出力された信号を処理する。
第1ノッチフィルタは、コンタクトピン11と測定対象物Mとの接触共振によって生じる信号成分を打ち消すように利得が設定されている。第2ノッチフィルタは、磁石12と測定対象物Mとの接触共振によって生じる信号成分を打ち消すように利得が設定されている。
第1の実施の形態においては、切替部はスイッチ133とスイッチ134とを有する。スイッチ133はフィルタ部13の入力側に設けられ、スイッチ134はフィルタ部13の出力側に設けられている。スイッチ133とスイッチ134とは同期して作動して、加速度センサ10から処理部14への信号路を切り替える。スイッチ133とスイッチ134とが当該信号路を切り替えるタイミングとしては、例えば、振動測定装置1の使用者がボタンまたはタッチパネルのような操作部(いずれも不図示)において切替指示の操作をしたときを挙げることができる。
第1の実施の形態においては、切替部は、加速度センサ10から処理部14への信号路として、第1ノッチフィルタを含む第1の信号路、第2ノッチフィルタを含む第2の信号路、または帯域阻止フィルタを含まない第3の信号路のうちのいずれかを選択する。第1の実施の形態におけるフィルタ部13は、このように第3の信号路を選択することができることにより、入力された信号を減衰させるか否かを変更することができるように構成されているといえる。すなわち、加速度センサ10からの処理部14の信号路を第3の信号路に切り替えることにより、フィルタ部13は、加速度センサ10からの信号を減衰せずに処理部14へ出力することができる。
また、第1の実施の形態におけるフィルタ部13は、加速度センサ10から処理部14への信号路として第1の信号路と第2信号路とを選択することができることにより、フィルタ部13の利得を変更することができるように構成されている。すなわち、フィルタ部13の利得は、加速度センサ10から処理部14への信号路が第1の信号路の場合には第1ノッチフィルタの利得となり、第2の信号路の場合には第2ノッチフィルタの利得となる。
コンタクトピン11を測定対象物Mに接触させると、コンタクトピン11と測定対象物Mとの接触面において接触共振が生じる。図1においては、スイッチ133とスイッチ134とは、帯域阻止フィルタを含まない第3の信号路を選択しているから、接触共振によって生じる信号がそのまま処理部14に出力される。そのため、図7を用いて説明したように加速度センサ10は本来の性能よりも低い周波数までしか正確な測定ができない。
そこで、第1の実施の形態においては、コンタクトピン11と測定対象物Mとの接触共振によって生じる信号成分を打ち消すように利得が設定することができるフィルタ部13を備えることにより、接触共振によって生じる信号を第1ノッチフィルタ131により電気的に取り除くこととした。
図2は、振動測定装置1において、加速度センサ10にコンタクトピン11が装着された場合の機能ブロック図である。図2を参照して、フィルタ部13において、第1ノッチフィルタを含む第1の信号路が選択されている。第1の信号路に含まれる第1ノッチフィルタは、コンタクトピン11と測定対象物Mとの接触共振によって生じる信号成分を打ち消すように利得が設定されているため、コンタクトピン11と測定対象物Mとの接触共振によって生じる加速度センサ10からの信号成分は、第1ノッチフィルタ131によって打ち消されて処理部14へ出力される。以下では、第1ノッチフィルタ131のこのような作用について、周波数特性を表す曲線を用いて説明する。
図3は、振動測定装置1が備える第1ノッチフィルタ131の周波数特性と効果を説明するための図である。図3において、曲線C1は、コンタクトピン11を測定対象物Mに接触させた場合の接触共振の周波数特性を表す。曲線C3は、第1ノッチフィルタ131の周波数特性を表す。曲線C4は、コンタクトピン11を測定対象物Mに接触させた状態で加速度センサ10からの信号が第1ノッチフィルタ131を通過する場合の周波数特性を表す。
図3を参照して、コンタクトピン11の場合の接触共振は周波数fr1で生じ、曲線C1のフラットな周波数帯域の上限は周波数f1である。一方、曲線C4のフラットな周波数帯域は周波数f4まで延びる。すなわち、コンタクトピン11の場合、加速度センサ10からの信号が第1ノッチフィルタ131を通過することにより、加速度センサ10が正確な測定をすることができる周波数帯域が周波数f1からf4まで延び、接触共振による加速度センサ10の性能悪化が軽減される。
曲線C1とC3の形状に着目すると、周波数f4までの周波数帯域において、両者は原点を通る横軸についてほぼ線対称であることがわかる。すなわち、周波数f4までの周波数帯域に含まれる周波数について、曲線C1とC3のそれぞれの利得の和は0になるということである。これは、コンタクトピン11と測定対象物Mとの接触共振によって生じた信号が第1ノッチフィルタ131を通過すると、接触共振による信号成分が打ち消され、加速度センサ10に入力される信号と第1ノッチフィルタ131から出力される信号とがほぼ同じになるということを意味する。
このように、第1ノッチフィルタ131は、コンタクトピン11と測定対象物Mとの接触共振によって生じる信号成分を打ち消すように利得が設定されている。具体的には、加速度センサ10をコンタクトピン11によって測定対象物Mに接触させて接触共振の周波数特性を実際に測定し、曲線C1を予め求めておく。そして、第1ノッチフィルタ131の周波数特性が、曲線C1によって表される周波数特性とは逆の特性、すなわち曲線C3によって表される周波数特性となるように第1ノッチフィルタ131の利得を設定する。これにより、第1ノッチフィルタ131は、コンタクトピン11と測定対象物Mとの接触共振によって生じる信号成分を打ち消すことができるようになり、その結果、加速度センサ10の性能悪化を軽減できる。
(磁石の場合)
上記では、加速度センサ10にコンタクトピン11が装着されている場合について説明した。以下では、接触部として磁石12を使用し、加速度センサ10に磁石12が装着されている場合について説明する。
図4は、振動測定装置1において、加速度センサ10に磁石12が装着された場合の機能ブロック図である。図4と図2の違いは、加速度センサ10に磁石12が装着されていること、およびフィルタ部13において第2ノッチフィルタを含む第2の信号路が選択されていることである。それ以外の構成については図2と同様のため説明を繰り返さない。
図4を参照して、磁石12は、加速度センサ10に着脱自在に装着されている。磁石12は、測定対象物Mに吸着することにより測定対象物Mの振動を加速度センサ10に伝える。第2ノッチフィルタは、磁石12と測定対象物Mとの接触共振によって生じる信号成分を打ち消すように利得が設定されているため、磁石12と測定対象物Mとの接触共振によって生じる信号成分は、第2ノッチフィルタ132によって打ち消される。以下では、第2ノッチフィルタ132のこのような作用について、周波数特性を表す曲線を用いて説明する。
図5は、振動測定装置1が備える第2ノッチフィルタ132の周波数特性と効果を説明するための図である。図5において、曲線C2は、磁石12を測定対象物Mに接触させた場合の接触共振の周波数特性を表す。曲線C5は、第2ノッチフィルタ132の周波数特性を表す。曲線C6は、磁石12を測定対象物Mに吸着させた状態で加速度センサ10からの信号が第2ノッチフィルタ132を通過する場合の周波数特性を表す。
図5を参照して、磁石12の場合の接触共振は周波数fr2で生じ、曲線C2のフラットな周波数帯域の上限は周波数f2である。一方、曲線C6のフラットな周波数帯域は周波数f6まで延びる。すなわち、磁石12の場合、加速度センサ10からの信号が第2ノッチフィルタ132を通過することにより、加速度センサ10が正確な測定をすることができる周波数帯域が周波数f2からf6まで延び、接触共振による加速度センサ10の性能悪化が軽減される。
曲線C2とC5の形状に着目すると、周波数f6までの周波数帯域において、両者は原点を通る横軸についてほぼ線対称であることがわかる。すなわち、周波数f6までの周波数帯域に含まれる周波数について、曲線C2とC5のそれぞれの利得の和は0になるということである。これは、磁石12と測定対象物Mとの接触共振によって生じた信号が第2ノッチフィルタ132を通過すると、当該信号が打ち消され、加速度センサ10に入力される信号と第2ノッチフィルタ132から出力される信号とがほぼ同じになることを意味する。
このように、第2ノッチフィルタ132は、磁石12と測定対象物Mとの接触共振によって生じる信号成分を打ち消すように利得が設定されている。具体的には、加速度センサ10を磁石12によって測定対象物Mに吸着させて接触共振の周波数特性を実際に測定し、曲線C2を予め求めておく。そして、第2ノッチフィルタ132の周波数特性が、曲線C2によって表される周波数特性とは逆の特性、すなわち曲線C5によって表される周波数特性となるように第2ノッチフィルタ132の利得を設定する。これにより、第2ノッチフィルタ132は、磁石12と測定対象物Mとの接触共振によって生じる信号成分を打ち消すことができるようになり、その結果、加速度センサ10の性能悪化を軽減できる。
以上のように、第1の実施の形態に従う振動測定装置1によれば、接触方法が、コンタクトピン11の場合、あるいは磁石12の場合のいずれの場合であっても接触共振による加速度センサ10の性能悪化を軽減できる。すなわち、加速度センサ10の測定対象物Mへの接触方法に応じて、フィルタ部13の利得を設定することにより、接触方法に依存することなく、接触共振による加速度センサの性能悪化を軽減することができる。
第1の実施の形態においては、帯域阻止フィルタとしてのノッチフィルタを2つ含む振動測定装置の構成について説明したが、振動測定装置が含む帯域阻止フィルタは1つでもよいし、3つ以上であってもよい。帯域阻止フィルタが3つ以上の場合としては、例えば、異なる形状のコンタクトピンが3個以上ある場合を挙げることができる。帯域阻止フィルタが1つの場合は、帯域阻止フィルタは着脱自在であって、使用する接触部に応じて他の帯域阻止フィルタと交換可能であることが望ましい。
第1の実施の形態においては、フィルタ部は、加速度センサから処理部への信号路を、帯域阻止フィルタを含む信号路と、帯域阻止フィルタを含まない信号路との間で切り替え可能とすることで、加速度センサから入力された信号を減衰させるか否かを変更することができるように構成されていた。しかし、入力された信号を減衰させるか否かを変更可能とする構成は、第1の実施の形態の構成に限られない。例えば、帯域阻止フィルタ自体の設定を変更し、当該帯域阻止フィルタの減衰機能を停止させることによって、入力された信号を減衰させるか否かを変更することができるようにフィルタ部を構成しても構わない。
また、第1の実施の形態においては、フィルタ部13は、異なる接触方法にそれぞれ対応した第1ノッチフィルタ131,第2ノッチフィルタ132を備え、それらをスイッチ133,134により切り替え可能とすることで、フィルタ部13の利得を変更することができるように構成されていた。しかし、フィルタ部13の利得を変更することができる構成は第1の実施の形態の構成に限られない。例えば、可変コンデンサを用いてノッチフィルタ自体の利得を変更可能とすることで、フィルタ部13の利得を変更することができるようにフィルタ部13を構成しても構わない。
第1ノッチフィルタ131,第2ノッチフィルタ132による減衰処理は、アナログ処理、デジタル処理、あるいはソフトウェアによる処理のいずれでもよく、これらを複合的に用いる方法でもよい。
加速度センサ10からの信号は、電気配線を通じてアナログ信号としてフィルタ部13に入力してもよいし、無線通信によりフィルタ部13に入力してもよい。
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態において、コンタクトピン11の場合、コンタクトピン11を手作業で測定対象物に接触させる。この場合、測定対象物Mへの押しつけ圧が一定とならず、接触共振が生じる周波数が変化してしまう。そのため、接触共振によって生じる信号成分が第1ノッチフィルタによって打ち消すことができるものからずれてしまい、その結果、測定誤差が大きくなってしまう。
そこで、第2の実施の形態においては、コンタクトピン11の先端の圧力が所定の値となったことに応じて、加速度センサ10からの信号の処理を開始することにより、測定誤差を軽減することとした。第1ノッチフィルタは、コンタクトピン11の先端に加わる圧力が当該所定の値である場合の接触共振によって生じる信号成分を打ち消すように利得が設定されている。そのため、コンタクトピン11の先端の圧力が所定の値となった場合に加速度センサ10からの信号の処理を開始すれば、接触共振によって生じる信号成分は第1ノッチフィルタによって打ち消すことができ、測定誤差が小さくなる。
図6は、第2の実施の形態に従う振動測定装置2の機能ブロック図である。振動測定装置2が第1の実施の形態と異なるのは、圧力検知部20を備えること、および処理部14が圧力検知部20からの所定の信号に基づいて加速度センサ10からの信号の処理を開始するということである。これら以外については、第1の実施の形態において、コンタクトピン11が加速度センサ10に装着された場合(図2参照)と同様であるため、説明を繰り返さない。
図6を参照して、振動測定装置2は、圧力検知部20をさらに備える。圧力検知部20は、加速度センサ10とコンタクトピン11との間に設けられている。圧力検知部20はコンタクトピン11の先端に加わる圧力を検出し、当該圧力の値を処理部14に出力する。圧力検知部20は、例えば、圧電素子、圧力トランスデューサ、あるいはロードセルを含み、これらの作用により圧力を検知する。処理部14は、圧力検知部20からの信号S2を受信し、圧力検知部20が所定の値の圧力を検出したことに応じて、加速度センサ10からの信号S1の処理を開始する。
図7は、第2の実施の形態において、処理部14において行なわれる処理を説明するためのフローチャートである。図7を参照して、処理部14は、ステップS21において、圧力検知部20が所定の圧力を検出したか否かを判定する。圧力検知部20が所定の圧力を検出していない場合(S21にてNO)、処理部14は、処理をステップS21に戻す。圧力検知部20が所定の圧力を検出した場合(S21にてYES)、処理部14は、処理をステップS22に進める。処理部14は、ステップS22にて加速度センサ10からの信号を処理する。
第2の実施の形態においては、コンタクトピン11の先端の圧力が所定の値となったことに応じて、加速度センサ10からの信号の処理を処理部14が開始することにより、接触共振によって生じる信号成分を第1ノッチフィルタで打ち消して、測定誤差を軽減することができる。
また、第2の実施の形態においては、処理部14は、第1ノッチフィルタで接触共振によって生じる信号成分を打ち消すことのできるデータのみを処理することになるため、無駄な処理が行なわれず、処理部14による電力消費を抑えることができる。
第2の実施の形態においては、コンタクトピン11の先端の圧力が所定の値となったことに応じて、加速度センサ10からの信号の処理を処理部14が開始することとしたが、コンタクトピン11の先端の圧力に応じて、フィルタ部13の利得を変化させるような構成としてもよい。
圧力検知部20からの信号は、電気配線を通じてアナログ信号として処理部14に入力されてもよいし、圧力検知部20からの無線通信により処理部14に入力されてもよい。
加速度センサ10およびコンタクトピン11への圧力検知部20の取付面は切削加工以上の面精度を持ち、これら取付面にオイルもしくはグリスを充填することが望ましい。また、ねじ止めにより加速度センサ10およびコンタクトピン11に固定されることが望ましい。このような構成とすることにより、加速度センサ10、コンタクトピン11、および圧力検知部20は、強固に締結されて一体的となる。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,2 振動測定装置、10 加速度センサ、11 コンタクトピン、12 磁石、13 フィルタ部、14 処理部、20 圧力検知部、131 第1ノッチフィルタ、132 第2ノッチフィルタ、133,134 スイッチ。

Claims (10)

  1. 測定対象物の振動を測定する振動測定装置であって、
    加速度センサと、
    前記加速度センサに装着され、前記測定対象物に接触することによって振動を前記加速度センサに伝える接触部と、
    前記加速度センサからの信号を減衰して出力することが可能なフィルタ部と、
    前記フィルタ部から出力された信号を処理する処理部とを備え、
    前記フィルタ部は、前記接触部と前記測定対象物との接触共振によって生じる信号成分を打ち消すように利得が設定されている、振動測定装置。
  2. 前記フィルタ部は、入力された信号を減衰させるか否かを変更することができるように構成されている、請求項1に記載の振動測定装置。
  3. 前記フィルタ部は、利得を変更することができるように構成されている、請求項1に記載の振動測定装置。
  4. 前記接触部は、前記加速度センサに着脱自在に装着される、請求項3に記載の振動測定装置。
  5. 前記接触部として、第1の接触部と、前記第1の接触部とは異なる第2の接触部とが使用可能であり、
    前記フィルタ部は、
    帯域阻止フィルタである第1のフィルタと、
    帯域阻止フィルタである第2のフィルタと、
    前記加速度センサから前記処理部への信号路を切り替える切替部とを含み、
    前記第1のフィルタは、前記第1の接触部と前記測定対象物との接触共振によって生じる信号成分を打ち消すように利得が設定され、
    前記第2のフィルタは、前記第2の接触部と前記測定対象物との接触共振によって生じる信号成分を打ち消すように利得が設定され、
    前記切替部は、前記信号路として、少なくとも、前記第1のフィルタを含む第1の信号路、または前記第2のフィルタを含む第2の信号路を選択することができる、請求項4に記載の振動測定装置。
  6. 前記切替部は、前記信号路として、帯域阻止フィルタを含まない第3の信号路をさらに選択することができる、請求項5に記載の振動測定装置。
  7. 前記接触部は、
    コンタクトピンを含み、
    前記コンタクトピンの先端が前記測定対象物に接触することにより前記測定対象物の振動を前記加速度センサに伝える、請求項1に記載の振動測定装置。
  8. 前記コンタクトピンの先端に加わる圧力を検出し、当該圧力の値を前記処理部に出力する圧力検出部をさらに備え、
    前記処理部は、前記圧力検出部が所定の値の圧力を検知したことに応じて、前記加速度センサからの信号の処理を開始する、請求項7に記載の振動測定装置。
  9. 前記フィルタ部は、前記コンタクトピンの先端に加わる圧力が前記所定の値である場合の接触共振によって生じる信号成分を打ち消すように利得が設定可能である、請求項8に記載の振動測定装置。
  10. 前記接触部は、
    磁石を含み、
    前記磁石によって前記測定対象物に吸着することにより前記測定対象物の振動を前記加速度センサへ伝える、請求項1に記載の振動測定装置。
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