JP6444136B2 - 前立腺癌の検出に有用な単クローン抗体およびその抗体をコードする遺伝子 - Google Patents

前立腺癌の検出に有用な単クローン抗体およびその抗体をコードする遺伝子 Download PDF

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Description

この発明は、前立腺癌の検出に貢献する単クローン抗体およびその抗体をコードする遺伝子に関し、より詳細にはSiaα2-3糖鎖検出用プローブとして有用な単クローン抗体およびその抗体をコードする遺伝子に関する。
日本における前立腺癌患者数は、急激な増加傾向にあり、2020年には肺癌に次いで罹患数第2位になると予測されている。前立腺癌は加齢とともに発症率が上昇すること、死亡率が比較的高いことから、2015年には2万人以上にまで増加すると考えられている。前立腺癌は、早期の段階ではその90%が治療可能であるが、早期発見が困難であることが死亡者数増加の原因となっている。そのため、前立腺癌の高い特異性を持つ早期診断方法の開発が進められている。
前立腺における腫瘍マーカーとしては、前立腺特異抗原(以下「PSA」と略す)が現在使用されている。PSAは早期前立腺癌において陽性率が高く、数値の変動が病勢と一致するため、臨床的に広く使用されているが、前立腺癌だけでなく、前立腺炎や前立腺肥大症などの良性疾患においても血清PSA値が上昇する。そのため現在のPSAによる検査診断法は、前立腺癌特異的なレベルには達しておらず、感度と特異度を共に満足させる基準値がないことが世界的な問題となっており、より特異度の高い前立腺癌の診断法の開発が望まれている。
PSAは、約34kDaの糖タンパク質であり、糖鎖はその分子量の約8%を占める。近年、血清中に存在するPSAの非還元シアロ糖鎖構造が、Siaα2-6から前立腺癌特異的にSiaα2-3へと変化することが示された(非特許文献1および非特許文献2参照)。癌性変化に伴うSiaα2-3糖鎖構造はPSA上の糖鎖の約10%存在することが明らかになった。
Tajiri M, Ohyama C, Wada Y. Glycobiology 18, 2-8, 2008 Ohyama C, Hosono M, Nitta K, Oh-eda M, Yoshikawa K, Habuchi T, Arai Y, Fukuda M.Glycobiology 14, 671-679, 2004
非還元末端Siaα2-3糖鎖構造を有する糖脂質(Siaα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glcβ1-1'Cer) を免疫原として単クローン抗体HYB4(以下「抗体HYB4」と略す)が樹立され、抗体HYB4を用いて前立腺癌鑑別システムが構築された。しかしながら抗体HYB4の結合性は、微量検体からの前立腺癌鑑別診断には十分ではないこと、またIgG3サブクラスのため安定性が低いことなど克服すべき点があることから汎用的な診断法にいたっていない。前立腺癌特異的早期診断法が確立され、臨床応用できれば、生検症例の絞り込みが可能になり、不必要な生検を省くことが可能となるのみならず、糖鎖構造の変異を原因とする疾患の診断にも応用できるものと期待される。
本発明は、Siaα2-3糖鎖結合親和性・特異性の構造的基盤となる抗体およびその抗体をコードする遺伝子のアミノ酸配列を明らかにすることを目的とする。
本発明は、第1〜第4の発明を含む。
第1の発明は、Siaα2-3Galβ1-4GlcNAcを認識するとともに、VH領域において、CDR1にD-L-Y-M-E、CDR2にA-S-R-N-K-A-N-D-Y-R-T-E-Y-S-A-S-V-K-G、および、CDR3にV-Y-Y-R-G-A-M-D-Yのアミノ酸配列を有し、VL領域において、CDR1にR-A-S-K-S-I-S-K-Y-L、CDR2にS-G-S-T-L-Q-S、および、CDR3にQ-Q-H-N-E-Y-P-L-Tのアミノ酸配列を有する単クローン抗体である。
第2の発明は、Siaα2-3Gal残基を認識するとともに、VH領域において、CDR1にD-Y-Y-M-D、CDR2にY-I-Y-P-N-N-G-G-I-S-Y-N-Q-N-F-K-G、および、CDR3にI-G-T-R-A-Y-F-D-Yのアミノ酸配列を有し、VL領域において、CDR1にK-S-S-Q-S-L-L-Y-S-R-N-Q-K-N-Y-L、CDR2にW-A-S-T-R-D-S、および、CDR3にQ-Q-Y-Y-S-Y-P-Y-Tのアミノ酸配列を有する単クローン抗体である。
第3の発明は、配列番号1のアミノ酸配列からなるVH領域および配列番号2のアミノ酸配列からなるVL領域を有する抗体をコードする遺伝子である。
第4の発明は、配列番号3のアミノ酸配列からなるVH領域および配列番号4のアミノ酸配列からなるVL領域を有する抗体をコードする遺伝子である。
本発明によれば、Siaα2-3糖鎖結合親和性・特異性の構造的基盤となる抗体のアミノ酸配列を明らかにすることにより、単クローン抗体のSiaα2-3糖鎖検出プローブとして有用な抗体への改変が可能となる。
糖脂質の構造を示した表 TCL-immunostaining法による抗体の糖脂質への結合性を示した図 ELISA法による抗体の糖脂質への結合性を示したグラフ ウエスタンブロッティング法による抗体のA549細胞糖たんぱく質への結合性を示した図 フローサイトメトリー法による抗体のA549細胞表面への結合性を示したグラフ 5'-Race法による抗体HYB4,D2,D4のV領域遺伝子断片の増幅Nested PCRによる生成物のアガロース電気泳動による解析を示した図 抗体HYB4,D2,D4のVH領域およびCH1領域のアミノ酸配列を示した図 抗体HYB4,D2,D4のVL領域およびCL領域のアミノ酸配列を示した図
本発明では、非還元末端Siaα2-3糖鎖構造を有する糖脂質(Siaα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glcβ1-1'Cer) を免疫原として抗体HYB4に加え、非還元末端Siaα2-3糖鎖構造をエピトープして2種類の新規の単クローン抗体D2(以下「抗体D2」と略す)および単クローン抗体D4(以下「抗体D4」と略す)を樹立した。
本発明では、3種類の抗体HYB4、抗体D2、および抗体D4のSiaα2-3糖鎖検出プローブとしての有用性を評価するために、糖鎖結合親和性・特異性の構造的基盤となるアミノ酸配列を明らかにする。具体的には、抗体の性状解析、ならびに詳細な糖鎖認識性を明らかにするとともに、当該抗体産生細胞から抗体のV領域CDR遺伝子を取得、その遺伝子配列の解析から糖鎖認識および結合親和性に関わるアミノ酸の同定を行う。
抗体HYB4、D2およびD4において、抗体を形成するHeavy chain(H鎖)とLight chain(L鎖)のV領域(以下それぞれ「VH領域」および「VL領域」と略す)をコードするそれぞれの遺伝子断片のDNA配列を明らかにした。単離されたVH領域およびVL領域の遺伝子は、開始コドン(ATG)の5'末端側に非翻訳領域を有し、その下流に順にフレームワーク領域(以下「FR」と略す)1、相補性決定領域(以下「CDR」と略す)1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4、およびCH1の一部をコードしていた。
決定されたDNA配列からアミノ酸配列に変換することにより、抗体HYB4、抗体D2および抗体D4のVH領域およびVL領域を含むタンパク質の一次構造を明らかにした(後述する図7および図8参照)。
CDRのアミノ酸配列比較から、VH領域のCDR1におけるD-X-Y-M-D/E、CDR2における(X)8〜10-I/T-X-Y-(X)4-K-G、CDR3におけるV/I-X-X-R-G/A-X-X-D-Y[Xは任意のアミノ酸]、およびVL領域のCDR1におけるK/R-X-S-X-S-I/L-(X)2〜8-Y-L、CDR2におけるX-G/A-S-T-X-X-S、CDR3におけるQ-Q-(X)3-Y-P-X-T[Xは任意のアミノ酸]がSiaα2-3Gal残基を認識するためのコンセンサスアミノ酸配列であると考えられる。他方、抗体D4は他の2つの抗体に比べてSiaα2-3Galを含む糖鎖に対する結合親和性が高いことから、Siaα2-3Gal残基認識にかかわるCDRコンセンサス配列中の抗体D4に特徴的なアミノ酸配列の置換により糖鎖に対する結合性が高くなることが示唆された。
上記の知見から、がん性変化に伴い糖鎖末端構造が変化するSiaα2-3Gal含有糖鎖に対する特異的かつ高親和性抗Siaα2-3抗体の創出につながるとともに病態形成機構の解明、疾患マーカーによるがんなどの確定診断などの臨床研究などへ応用されることが期待される。
(実験方法)
1. 単クローン抗体産生ハイブリドーマの樹立
1-1. マウスの免疫方法
Siaα2-3nLc4Cer 227.73 μgをEtOH 113.6 μlに溶かし、超音波処理後、PBS 1818.2 μlを加えて37℃に加温した。PBSで予め1 mg/mlに懸濁した酸処理済みSalmonera. minnesota菌体細胞壁溶液を568.2 μl加え、37℃、10分間静置した。この溶液を200 μl に分注して-20℃に保存した。免疫0, 4, 7, 11, 21, 25日目に、この分注液を解凍して予め麻酔をかけたC3H/HeNマウス 2匹にそれぞれ200 μlずつ尾静注した。初回免疫から24, 29日目に眼底から採血し、4℃、一晩静置後、5000 rpm、10分間遠心し血清を回収した。血清中抗体価をELISA法により確認した(後述の1-5に準じて行なった)。
1-2. マウス骨髄腫細胞株の培養および調製
マウス骨髄腫細胞としてPAI細胞(ヒュウマンサイエンス研究資源バンク、JCRB0113)を用いた。培養は、終濃度10% (w/v) ウシ胎児血清(FBS)、10 mM HEPES緩衝液(pH 7.4)、1 mM ピルビン酸ナトリウム含有RPMI-1640培地(日水製薬株式会社、05918)(以下「培養液A」とする)で37℃、5% CO2存在下で培養をした。PAI細胞の生存率が90%以上であることを確認した後、ピペッティングにより細胞を回収し、1000 rpm、5分間遠心した後、上清を除き培養液Aで懸濁して細胞を計数した。
1-3. マウス脾臓細胞の調製
免疫開始32日目(最終免疫7日後)のマウスから脾臓を無菌的に取り出した。培養液Aを入れたシャーレで、脂肪組織を除いた後、培養液Aを入れた別のシャーレのメッシュ上で脾臓をほぐし、細胞を回収した。これを1000 rpm、5 分間遠心した後、培養液A 20 mlで再懸濁し、セレストレーナーを通して組織片を除いた。1000 rpm、5 分間遠心した後、培養液A 20 mlで再懸濁後、脾臓細胞を計数した。
1-4. ハイブリドーマの作製
細胞融合当日、ポリエチレングリコール(PEG)4000(Merck社)1.0 gをテフロン(登録商標)キャップ付ガラス遠心管にとり、オートクレーブで滅菌した。前記1-2および1-3で調製したPAI細胞と脾臓細胞を、マウス1について1: 4 、マウス2については1: 5の割合でそれぞれ混合、穏やかに攪拌した後、1000 rpm、5分間遠心して上清を除いた。細胞のペレットに無血清(以下「SF」と略す)-RPMI培地20 mlを加えて穏やかに懸濁した。1000 rpm 、5分間遠心した後、上清を除きチューブの底を台上で軽くタッピングしてペレットをほぐした。滅菌しておいたPEG4000 1 mgに、SF-RPMI培地 1 mlを加えて予め調製した50 % PEG 0.8mlを、ほぐした細胞のペレットに1分間かけて徐々に滴下した。1分間かけて穏やかに攪拌した後、1分間放置し、5分間かけてSF-RPMI培地 10 mlをゆっくり加えた。1000 rpm、5分間遠心した後、上清を除去し培養液A 20 mlを加えて、穏やかに攪拌した。1000 rpm、5分間遠心した後、 10 mMヒポキサンチンナトリウム、40 μMアミノプテリン、1.6 mMチミジン(HAT)混合溶液(Gibco社)を培養液Aに100分の1量となるように加えたHAT培地を 40 ml加えて懸濁した。懸濁液を培養用96 wellマイクロプレート(Nunc社、167008)に200 μl/well(3〜5×105 個/well)となるように播種し、37℃、5% CO2存在下で培養した。細胞融合7-10日後、HAT耐性細胞の出現の有無を光学顕微鏡下で観察し、細胞が増殖しているウェルの培養上清を回収した。培養上清中の抗体価についてSiaα2-3nLc4Cerを固相化抗原としたELISA法により測定した(1-5に準じて行なった)。抗体価の高いウェルの細胞を回収し、10 mMヒポキサンチンナトリウム、1.6 mMチミジン(HAT)混合溶液(HT)(Gibco社)を培養液Aに100分の1量となるように加えたHT培地に交換し、37℃、5% CO2存在下で培養した。一定期間培養後、限界希釈法によるクローニングを行った。クローニングメディウム(三光純薬株式会社、S-Clone)を用いて0.3個細胞/wellとなるように希釈して、培養用96wellマイクロプレートに播種し、細胞増殖を光学顕微鏡下で観察し、増殖の速いハイブリドーマクローンの培養上清を回収した。培養上清中の抗体価についてSiaα2-3nLc4Cerを固相化抗原としたELISA法によりスクリーニングした。これにより高い抗体産生能、増殖能をもつハイブリドーマ細胞クローンを樹立した。
1-5. ELISA法
図1に示す糖脂質をELISAに使用した。血清中の抗体価測定およびハイブリドーマクローンのスクリーニングにはマウスに対する免疫抗原糖鎖であるSiaα2-3nLc4Cerを固相化抗原として用いた。
96wellマイクロタイタープレート Immulon 1B (Thermo scientific社、3355)に95% ethanolにて0.1 nmol/50 μlに調製した糖脂質溶液を50 μlずつ加えた。ブランクとなるウェルには95% ethanolを同量加えた。減圧下でethanolを蒸発させ、固相化後、1% human serum albumin (Sigma社、A9080) 含有Phosphate-buffered saline (以下「PBS-1」と略す) を200 μl/well加え、4°Cにて一晩放置した。PBS-1を除去後、1次抗体溶液を100 μl/well加え、室温にて1時間反応させた。抗体溶液を除去後、PBS 100 μl/wellでウェルを1回洗浄した。PBS-1で10000倍希釈したHorse-radish peroxidase (以下「HRP」と略す)標識goat anti-mouse IgG (Jackson社、115-035-068) 溶液を100 μl/well加え、室温にて1時間反応させた。2次抗体溶液を除去後、PBS 100 μl/wellで5回洗浄した。
発色及び測定は、80 mM citrate-phosphate buffer (pH 5.6) 5 mlをO−フェニレンジアミン2 mg、30% 過酸化水素2 μlを加えて溶解した発色溶液を100 μl/well加え、遮光放置して発色が見られたところで1 N HCl 100 μl/wellで停止させた。その後、測定波長492 nm、対照波長630 nmにおける吸光度を測定した。
2. 単クローン抗体の糖鎖結合特性の解析
2-1. 抗体産生ハイブリドーマ細胞の大量培養
10 cm dish (BD Falcon社, 353003) を使用して、10% (w/v) FBS 含有RPMI 1640培地 10 ml で抗体産生ハイブリドーマ細胞を37°C、5% CO2存在下で2日間前培養した。10 cm dish 6枚分の細胞を回収し、得られた細胞をRD-1添加剤 (極東製薬工業株式会社、20300) を含むE-RDF培地 (極東製薬工業株式会社、26500)で1回洗浄した。この細胞を同培地溶液2 l 中に懸濁し、大量培養装置 (スピンナーフラスコ) に移し、培養液が細胞塊で白く濁るのを指標として十分に細胞が増えるまで37°Cで回転培養を行った。
2-2. 単クローン抗体の精製
培養液を回収し、3000 rpm、4°Cで15分間遠心を行い、得られた上清をろ紙で吸引ろ過した。予めPBSで平衡化したProtein A Sepharose (カラム容量 3 ml、GE Healthcare社、17-5280-01) を充てんしたカラムに流速0.5 ml/min で導入し、その後PBSで流速1 ml/minで30分間カラムを洗浄した。0.1M Glycine/HCl buffer (pH 3.4) を用いて流速1 ml/min で溶出を行った。溶出液は、あらかじめ1M Tris/HCl (pH 8.0) を50 μl 加えた1.5 ml tube に1 ml ずつ、20フラクションに分けて回収した。
目的とする抗体の存在するフラクションを同定するために、280 nm における各フラクションの吸光度を測定した。およそ吸光度1 = 1 mg/ml をタンパク質量とみなし、吸光度の上昇がみられたフラクションを集め、MWCO 3500の透析膜 (Spectrum Labs社、132720)に入れ、3 l のPBSに対して4°Cで2日間透析した。その間、透析外液を2回交換した。
透析終了後、Micro BCA protein assay kit (Pierce社、23235) を用いてタンパク質定量を行った。まずBCA reagent A、BCA reagent B、BCA reagent Cを25: 24: 1 (by vol.)で混合し、BCA working reagentを調製した。回収した抗体溶液を100倍と200倍に希釈し、丸底マイクロプレートに100 μl ずつ加え、100 μlのBCA working reagentを加えてよく混合した。37°Cで2時間反応させてから、測定波長560 nm、対照波長450 nmの吸光度を測定した。スタンダードとして2.5-40 μg/mlに調製したBSA溶液を同様に測定し、検量線から抗体のタンパク質濃度を計算した。
50% (v/v) Glycerol抗体溶液となるように単クローン抗体溶液とGlycerolを等量混合し、-25°Cで保存した。
2-3. TLC-immunostaining
プラスチックTLCプレートに糖脂質をアプライし、acetoneで展開、風乾した後、同方向にCHCl3/MeOH/12 mM MgCl2(5: 4: 1, v/v/v)で展開、風乾した。プレートを1% (w/v) bovine serum albumin(以下「BSA」と略す)含有PBS 3 ml中に浸し、1時間振とうした。1% (w/v) BSA含有PBSで希釈した一次抗体溶液3 mlを加えて室温で1時間、振とうした。0.05% (w/v) polyoxyethylene(20) sorbitan monolaurate(以下「Tween20」と略す)含有PBS 3 mlで室温にて3分間、5回洗浄した後、1% (w/v) BSA含有PBSで希釈した二次抗体溶液3 mlを加えて室温で、1時間振とうした。PBS 3 mlで室温にて3分間、5回洗浄し、発色基質溶液 [0.06 M N,N-diethyl-p-phenylene diamine sulfate (DEPDA) (和光純薬工業株式会社、044-17072) 100 μl、0.1 M 4-chloro-1-naphtol (和光純薬工業株式会社、033-09471) 100 μl、0.1 M citrate buffer (pH 5.9) 5 ml、hydrogen peroxide (和光純薬工業株式会社、081-04215) 5 μlを混合] を加えて室温で振とうした。発色後、プレートを精製水で洗浄、風乾した。
2-4. ウエスタンブロッティング
10 cm dish 1枚に培養したA549細胞から培養上清を除去し、PBSで3回洗浄した後、PBS 1 ml を加え、Cell lifter (Costar社、3008) を用いて細胞を回収した。4°C、3500 rpm で10分間遠心し、上清を除去した。ペレットをPBS 0.5 ml に懸濁した後、超音破砕し、4°C、15000 rpm で5分間遠心することで細胞膜タンパク質画分を得た。PBSで3回洗浄した後、1% sodium dodecyl sulfate (以下「SDS」と略す) 含有TBSに1/100量のprotease inhibitorを加えたLysis bufferを50 μl加え、超音波破砕を行った。25°C、15000 rpm で5分間遠心し、得られた上清をA549 cell lysateとした。A549 cell lysate 20 μl に対し、 (5x) Sampling buffer (125 mM Tris-HCl、25% Glycerol、5% SDS、0.25%ブロモフェノールブルー) 5 μlを混合して調製したサンプルをMini protean TGX precast gel (Bio-Rad社、456-1083) の各wellに25 μlずつアプライし、ゲル一枚あたり12 mAの定電流で電気泳動した。泳動後、プラスチックプレートからゲルを取り出し、Transfer buffer (48 mM Tris base, 39 mM Glycine, 0.01% (w/v) SDS, 20% Methanol) で浸漬し、平衡化した。ポリアクリルアミドゲル1枚あたり8枚のろ紙をTransfer bufferに浸漬、平衡化した。 ろ紙と同じ大きさに切断したPVDF膜 (Bio-Rad社、162-0177) をメタノールに浸漬し、1分間振とうして活性化した後、さらにTransfer bufferで振とうして平衡化を行った。Trans blot semidry blotter (Bio-Rad社) の下面 (陽極面)から4枚のろ紙、PVDF膜、ゲル、4枚のろ紙の順に空気の入らないように重ね、PVDF膜1枚あたり300 mA の定電流で30分間、膜への転写を行った。
転写の終了したPVDF膜をフェザー替刃メスで各wellの幅で切り離し、素早くブロッキング溶液に浸漬し、室温で2時間振とうした。
0.05% (w/v) Tween20 含有Tris-buffered saline (以下「TTBS」と略す) (pH 7.6) で10分間振とうして洗浄した後、1次抗体各2 ml の溶液にPVDF膜を浸漬し、4°Cで1晩振とうを行った。TTBSで10分間ずつ3回振とうして洗浄を行った後、2次抗体各1 ml にPVDF膜を浸漬し、室温で30分間振とうして反応を行った。TTBSで5分を2回、10分を 3回以上振とうして洗浄した後、シグナルの検出を行った。
抗体を用いた検出の場合、ブロッキング溶液として5% (w/v) milk含有TTBS、1次抗体としてTTBSで希釈した単クローン抗体もしくはコントロールのIgG3 (Biolegemd社、401302)、2次抗体としてTTBSで5000倍希釈したgoat anti-mouse IgG-HRPを使用した。SuperSignal west femt maximum sensitivity substrate (Thermo scientific社、34095) のl uminol/enhancer solution とperoxide solutionの等量混合液1 ml を膜上に均一に滴下し、化学発光によってシグナルを検出した。
レクチンを用いた検出の場合、ブロッキング溶液として1% (w/v) ブロックエース (雪印乳業, UK-B80) 含有TTBS、1次抗体として1 μg/ml となるようにTTBSで希釈したBiotin-MAM (生化学工業バイオビジネス、300424)、Biotin-MAH (Vector社、B-1265)、Biotin- SSA (生化学工業バイオビジネス、300442)、2次抗体としてStreptavidin-alkaline phosphatase (ALP) (Jackson社、016-050-084) を使用した。洗浄後、PVDF膜を振とうしながら、約1 mlのWestern Blue (Promega社、S3841) を均一にPVDF膜上に滴下し、発色させた。MiiliQ水に浸漬して反応を停止した後、ろ紙にはさんで一晩室温で風乾した。
2-5. フローサイトメトリー
10 cm dish 1枚に培養したA549細胞をPBS 10 ml で3回洗浄し、1 mM EDTA-PBS 5 ml を加えて37℃で5分間反応させた後、液を吹きつけて細胞を剥離させ、5 ml の細胞懸濁液とした。これを4本の1.5 ml tubeに均等に分注し、4 ℃、3500 rpm で5分間遠心した。上清を除去し、プローブとしてPBS-1で希釈した単クローン抗体(50、100 μg/ml)、IgG(100 μg/ml)、もしくは10 μg/ml となるように希釈したBiotin-MAH、ネガティブコントロールとしてPBS-1をそれぞれ200 μlずつ加え、4 ℃で1時間反応させた。同条件で遠心し上清を除去した後、冷PBSに懸濁し遠心を行って上清を除去する洗浄操作を繰り返した。PBS-1で50倍希釈したFITC-goat anti-mouse IgG とFITC-Streptavidinを200 μlずつ加え、遮光し4 ℃で30分間反応させた。遠心を同条件で行い上清を除去した後、5 μg/ml propidium iodide 含有PBS 1 ml に懸濁し、BDI FACSCanto II (Becton, Dickinson社)を用いて解析を行った。
3. 単クローン抗体可変(V)領域遺伝子断片のクローニングと遺伝子配列解析
3-1. mRNAの抽出
10 cm dish (BD Falcon社, 353003)を使用して10% (w/v) FBS含有RPMI 1640培地10 ml 中で抗体産生ハイブリドーマ細胞を37°C、5% CO2存在下で2日間培養した。細胞を50ml チューブに回収した後、PBS 10mlで3回洗浄し、細胞ペレットを-80°Cで冷凍保存した。FastTrack 2.0 Kit (Invitrogen社、K1593-02) を用いて保存しておいた細胞からmRNAを抽出した。細胞ペレットにLysis buffer 15 mlを加えてvortexで懸濁し、細胞溶解液を20G注射針に4回通過させた。45°C、15分間加温した後、5 M NaCl 900 μlを加えて転倒混和した。細胞溶解液を20G注射針に4回通過させてDNAを剪断した。この溶液にPre-measured Oligo (dT) 20-30 Cellulose Powder 1vialを加えて2分間静置し、cellulose樹脂を湿潤させた後、50ml チューブを横置きに保ったまま28°Cで、90 rpm、1時間水平旋回することにより混和した。2000 × g、5分間遠心した後、上清を除去した。Binding buffer 20 mlで懸濁し、3000 × g、5分間遠心して樹脂を洗浄した。Binding buffer 10 mlで再度樹脂を洗浄後、続いてLow salt buffer 10 mlで樹脂を3回洗浄した。Low salt buffer 800 μlに懸濁した樹脂をspin columnに移した。spin columnをcollection tubeにセットし、mRNAをElution buffer 200 μlで2回溶出した。溶出液に2 M sodium acetate 60 μlと100% ethanol 1 mlを加えて-80°Cで15分間冷却した。4°C、15000 rpm、15分間遠心して上清を除去した後、70% ethanolでmRNA pelletを洗浄した。遠心後、上清を捨て風乾し、Elution buffer 35 μlに溶解して-80°Cで保存した。
3-2. 5'rapid amplification of cDNA ends (5'RACE)法によるcDNA合成
GeneRacer Kit (Invitrogen社、L1502-01)を使用した。抗体産生ハイブリドーマ細胞から抽出したmRNA 2 μl、Calf Intenstinal Phosphatase (CIP) 1 μl、10× CIP buffer 1 μl、RNaseOut 1 μl、DEPC water 5 μlを混合し、50°C、1時間反応させた(脱リン酸化反応)。DEPC water 90 μl、phenol/chloroform (1: 1, by vol.) 100 μlを加えて30秒間vortexした後、15000 rpm、5分間遠心した後、二層に分離した上層側(水相)を新しいチューブに回収した。Mussel glycogen 2 μl、3 M sodium acetate 10 μl、100% ethanol 220 μlを加えvortexで混合した後、-80°C、10分間冷却した。4°C、15000 rpm、20分間遠心した後、上清を捨て70% ethanolを加えて混和した。4°C、15000 rpm、2分間遠心した。風乾後、DEPC water 7 μlで脱リン酸化mRNAを溶解した。この溶液に10× Tobacco Acid Pyrophosphatase (以下「TAP」と略す) 1 μl、10× TAP buffer 1 μl、RNaseOut 1 μlを加えてvortexで混和した後、37°C、1時間反応した。DEPC water 90 μl、phenol/chloroform (1: 1, by vol.) 100 μlを加えて30秒間vortexした後、15000 rpm、5分間遠心した。水相を新しいチューブに回収した。Mussel glycogen 2 μl、3 M sodium acetate 10 μl、100% ethanol 220 μlを加えてvortexにより混合した後、-80°Cで一晩静置した。4°C、15000 rpm、20分間遠心した後、上清を捨て70% ethanolを加えて転倒混和した。4°C、15000 rpm、20分間遠心した。風乾後、DEPC water 7 μlで5'cap除去mRNAを溶解した。この溶液をGeneRacer RNA Oligo 1vial中に加え、ピペッティングでよく混和した。65℃ 5分間加温後、10× Ligase Buffer 1 μl、10 mM ATP 1 μl、RNaseOut 1 μl、T4 RNA ligase 1 μlを加えて、37°C、1時間ライゲーション反応を行った。DEPC water 90 μl、phenol/chloroform (1: 1, by vol.) 100 μlを加えて30秒間vortexした後、15000 rpm、5分間遠心した。水相を新しいチューブに回収した。Mussel glycogen 2 μl、3 M sodium acetate 10 μl、100% ethanol 220 μlを加えてvortexにより混合した後、-80°Cで10分間冷却した。4°C、15000 rpm、20分間遠心した後、上清を捨て70% ethanolを加えて転倒混和した。4°C、15000 rpm、20分間遠心した。風乾後、DEPC water 10 μlにRNA OligoをライゲーションしたmRNAを溶解した。この溶液にRandom primers 1 μl, dNTPs 1 μl, DEPC water 1 μlを加えて65°C、5分間加温した。2分間氷冷した後、5× First Strand Buffer 4 μl、0.1 M dithiothreitol 1 μl、RNaseOut 1 μl、SuperScript III RT 1 μlを加えて25°C、5分間反応した。50°C、60分間、続いて70°C、15分間反応した後、2分間氷冷した。RNase H 1 μlを加えて37°C、20分間反応し、得られた溶液をcDNAテンプレートとした。
3-3. Primary PCRによる抗体V領域遺伝子断片の増幅
GeneRacer 5' primer 3 μl、10 μM Heavy chain Rv primer (5'-ACCGATTCTCTTGATCAACTCAGTC-3') 1 μl、または10 μM Light chain Rv primer (5'-CACTCATTCCTGTTGAAGCTC-3') 1 μl、cDNAテンプレート 1 μl、10× PCR Buffer 5 μl、dNTPs 1 μl、Taq DNA polymerase 0.2 μl、100 mM MgSO4 1 μl、滅菌精製水37.8 μlを混合した溶液をGeneAmp PCR System 9700 (Applied Biosystems社) 装置を用いて、表1に示した条件でPCRを行った。
PCRによる生成物をPrimary PCR productとした。2%アガロースゲルを用いて電気泳動を行い、約700bp付近に目的遺伝子断片の増幅を確認した。
3-4. Nested PCRによる抗体V領域遺伝子断片の増幅
Primary PCR product 1 μl、GeneRacer 5'Nested primer 1 μl、10 μM Heavy chain Rv nested primer (5'-GTGGGATCCCTTCCTGAGT-3') 1 μlまたは10 μM Light chain Rv nested primer (5'-CTCCAGATGTTAACTGCTCACTGGA-3') 1 μl、10× PCR Buffer 5 μl、dNTPs 1 μl、Taq DNA polymerase 0.2 μl、100mM MgSO4 1 μl、滅菌精製水39.8μlを混合した溶液をGeneAmp PCR System 9700 (Applied Biosystems社) 装置を用いて、表2に示した条件でPCRを行った。
PCRによる生成物をPrimary PCR productとした。2%アガロースゲルを用いて電気泳動を行い、400〜500bp付近に目的遺伝子断片の増幅を確認した。
3-5. 大腸菌による抗体V領域遺伝子断片のクローニング
TOPO TA Cloning Kit for Sequencing Kit (Invitrogen社、K4575J10)を使用した。Heavy chainまたはLight chainのNested PCR 生成物 4 μl, Saly solution 1 μl, TOPO vector 1 μlを混和した。22°C、5分間反応した後、氷上に静置して抗体V領域遺伝子断片のベクターへの導入を行った。遺伝子断片導入ベクター溶液2 μlをOne shot TOP10に加えて穏やかに混和し、氷上で30分間静置した。42°C、30秒間 heat shockを与えた後、直ちに氷冷した。SOC 培地 250 μlを加えて37°C、200 rpm、1時間水平旋回による前培養を行った。前培養菌液20 μlに新たにSOC 培地 80 μlを加えて全量を50 μg/ml ampicillin含有LB寒天培地プレートに滴下し、菌液を均一に塗り拡げた。プレートを倒立静置し、37°C、18時間培養した。培養プレート上の単一コロニーを50μg/ml ampicillin含有LB液体培地 3ml中で200 rpm水平旋回により37°C、15時間培養した。培養液3mlを新たなチューブにとり、14000 rpmで5分間遠心した後、上清を捨て、菌体ペレットを得た。このペレットからWizard Plus SV Minipreps DNA Purification System (Promega社、A1460)を用いてプラスミドDNAを回収した。
3-6. 制限酵素によるプラスミドDNAの消化
回収したプラスミドDNA 8 μl、Eco RI (Roche社、11175084001) 1 μl、10× buffer 2 μl、滅菌精製水 9 μlを混合した後、37°C、2時間反応した。3%アガロースゲル電気泳動により抗体V領域遺伝子断片の確認を行った。
3-7. PCRによる抗体V領域遺伝子断片の確認
回収したプラスミドDNA 1 μl、GeneRacer 5'Nested primer 1 μl、10 μM Heavy chain Rv nested primer 1 μlまたは10 μM Light chain Rv nested primer 1 μl、10× PCR Buffer 5 μl、dNTPs 1 μl、Taq DNA Polymerase 0.2 μl、100 mM MgSO4 1 μl、滅菌精製水39.8 μlを混合した溶液をGeneAmp PCR System 9700 (Applied Biosystems社) 装置を用いて、表3に示した条件でPCRを行った。
PCR生成物を、2%アガロースゲルを用いて電気泳動を行い、500bp付近の目的遺伝子断片の存在を確認した。
3-8. 抗体V領域遺伝子断片の遺伝子配列解析
抗体V領域遺伝子断片が導入されていることが確認されたプラスミドDNAはDideoxy法によるDNAシークエンシングを行った。用いたシークエンシングプライマーは以下の通りである。
M13 forward: 5'-GTAAAACGACGGCCAG-3'
M13 reverse: 5'-CAGGAAACAGCTATGA-3'
HYBH20S: 5'-AGGAGGCTTGGTACAGT-3'
HYBH20AS: 5'-CTGAGGTAGAGGATGC-3'
HYBL5S: 5'-GCTGCATCTCCTGGAG-3'
HYBL5AS: 5'-TGAAATCTGTACCAGAGC-3'
(実験結果)
1. 単クローン抗体産生ハイブリドーマの樹立
マウスへの最終免疫から4日後、マウス血清中の抗体価をSiaα2-3nLc4Cerを固相化抗原としてELISA法により測定した。マウス血清中のSiaα2-3nLc4Cerに対する抗体価はマウス1、マウス2のいずれにおいても免疫前に採取したコントロール血清中の抗体価に比べて著しく上昇していた。最終免疫前の時点で採取した血清中の抗体価に比べて最終免疫後の方で抗体価のさらなる上昇が認められたことから、最終免疫によるブースター効果が表れたものと判断した。糖鎖抗原に対する抗体価の上昇が確認できたことから、マウスより脾臓細胞を調製し、骨髄腫由来PAI細胞と融合させてハイブリドーマ細胞を作製した。Siaα2-3nLc4Cerを固相化抗原としたELISA法によるスクリーニング、および限界希釈法によるクローニングをあわせて行った結果、抗体産生ハイブリドーマ細胞である3種類の抗体HYB4、抗体D2、および抗体D4を得た。表4に免疫した2匹のマウスから樹立された3種類の抗体HYB4、抗体D2、および抗体D4の概要を示した。ハイブリドーマ細胞が産生する抗体はいずれもサブクラスはIgG3(κ)であった。抗体HYB4および抗体D2は同じ免疫マウス(No.1)から樹立された。抗体産生陽性細胞の出現率は、いずれのマウスにおいても0.52%であった。
2. 単クローン抗体の糖鎖結合特性の解析
抗体HYB4、抗体D2、および抗体D4の糖鎖結合特性について複数の方法を用いて解析を行なった。本発明で用いた糖脂質の種類、その糖鎖構造を図1に示す。
TLC-immunostaining法では、標準物質である化学合成Siaα2-3nLc4B30、異なるシアル酸末端様式をもつ化学合成Siaα2-6nLc4B30、孵化鶏卵しょう尿膜およびウシ脳由来Siaα2-3nLc4Cer、孵化鶏卵しょう尿膜由来GM3に対して、ハイブリドーマ細胞の培養上清を1次抗体として抗体結合性を比較検討した(図2)。抗体HYB4は、化学合成、孵化鶏卵しょう尿膜およびウシ脳由来Siaα2-3nLc4Cerのいずれに対しても結合性が見られた。孵化鶏卵しょう尿膜由来GM3に対しても結合した。抗体D2は、化学合成、孵化鶏卵しょう尿膜およびウシ脳由来Siaα2-3nLc4Cerに対して結合した。一方、GM3に対して結合しなかった。抗体D4は、抗体HYB4と同様の結合性が認められたが、TLC上での糖脂質に対する結合性が他の2つの抗体よりも高いことが示唆された。以上の結果より、抗体HYB4および抗体D4は、Siaα2-3nLc4CerとGM3に共通して存在するSiaα2-3Galという非還元糖鎖末端構造に対して結合性を有することが示唆された。抗体D2は、免疫糖鎖分子であるSiaα2-3nLc4Cerへの結合性は他の2つの抗体よりも低いものの、GM3に対する結合性が認められなかったことから、非還元Siaα2-3Galβ1-4GlcNAcに対する特異性が高いことが示唆された。
図1に示した糖脂質を固相化抗原とするELISA法により、それぞれの抗体の糖鎖結合特異性を検討した(図3)。抗体HYB4は、免疫抗原であるSiaα2-3nLc4Cer以外にGM3に対して強く、GM4には弱いながらも結合性を示したが、Siaα2-6nLc4CerやnLc4Cerに対して結合しなかった。さらにSiaα2-3糖鎖構造を有していても内部分岐型であるGM1aやGM2、またはGD3のようにSiaα2-3糖鎖構造の外側にシアル酸が結合している糖脂質に対して結合性を示さなかった。一方、GM1b、GD1aには結合性を示さなかった。シアル酸の主要な2つの分子種であるNeu5AcとNeu5Gcのいずれかを有するGM3に対して結合性を調べたところ、抗体HYB4はNeu5Ac含有GM3にのみ反応した。抗体D2は、免疫抗原であるSiaα2-3nLc4Cerに反応性を示したが、それ以外の糖脂質に対して結合性を示さなかった。抗体D4は、免疫抗原であるSiaα2-3nLc4Cer以外にGM3およびGM4に対して強い結合性を示した。一方、他の糖脂質に対する結合性は認められなかった。糖鎖結合特異性の解析から、抗体HYB4は、Siaα2-3Galβ1-を非還元末端とする糖鎖に結合性を示すが、さらにその内部にある糖に対する認識性も有しており、GlcNAc残基のほうがGlc残基よりもより強く結合することが示唆された。非還元末端に認識糖鎖構造を有していても、内部糖鎖におけるNeu5Acα2-3分枝構造の存在により反応性が消失することが見いだされた。これは修飾糖鎖残基や分枝糖鎖による立体障害が生じ、抗体HYB4や抗体D4が認識糖鎖構造に対して結合できなくなるためであると考えられる。抗体D2は、Siaα2-3Galβ1-4GlcNAc-を非還元末端とする糖鎖に対する厳密な特異性を有することが示唆された。抗体D4は、抗体HYB4と類似の糖鎖特異性を示すが、Siaα2-3Galβ1-を非還元末端二糖とする糖鎖を認識しており、その内部糖鎖構造については結合性に大きな影響を及ぼさないことが示唆された。
ウエスタンブロッティング法による糖タンパク質糖鎖の検出を行い、糖鎖反応性の比較を行った(図4)。A549 細胞膜糖タンパク質に対して抗体D4は、低分子量から高分子量まで、多様な糖タンパク質に結合した。抗体HYB4は、弱い反応性ながらも30 kDaよりも高分子量のタンパク質に対して反応性を示した。一方、抗体D2は、同様の実験条件下で糖タンパク質に対する結合性は認められなかった。
フローサイトメトリー法による糖タンパク質糖鎖の検出を行い、同様にMAHとの糖鎖反応性の比較を行った(図5)。A549細胞表面への単クローン抗体結合による蛍光強度がコントロールIgG3に比べて大きく上昇したことから、3種類の抗体HYB4、抗体D2、および抗体D4はともに細胞表面糖鎖分子に対して結合できることが明らかとなった。
以上の解析から、抗体HYB4および抗体D4は糖タンパク質、糖脂質の両方を検出することができるプローブであることが明らかとなった。糖脂質を用いた糖鎖構造−反応性解析から、抗体HYB4および抗体D4で検出された多様な分子量の糖タンパク質群はN型糖鎖を有していると考えられる。また、MAM、MAHのいずれでも検出されない糖タンパク質を検出できたことから、より広い反応性をもつと考えられる。また、抗体D4は糖鎖に対する結合性が抗体HYB4よりも高いことが示唆された。抗体HYB4および抗体D4は従来のSiaα2-3糖鎖検出用抗体・レクチンに比べて高い糖鎖特異性を持ち、アグリコン部分に関わらず非還元末端糖鎖Neu5Acα2-3Galβ1-4GlcまたはNeu5Acα2-3Galβ1-4GlcNAcの3糖構造に特異的に反応することが示された。一方、抗体D2は、糖タンパク質に対して明確な結合性を示さなかったことから、糖脂質特異的に結合する抗体であることが示唆された。
3. 単クローン抗体可変(V)領域遺伝子断片のクローニングと遺伝子配列解析
5'RACE法により3つの抗体HYB4、抗体D2、および抗体D4のV領域遺伝子断片がクローン化された。クローン化操作において、Primary PCRではいずれの抗体遺伝子断片について、複数の増幅されたバンドが見られたが、Nested PCRを行うことで特異的に500〜600 bp付近の遺伝子断片が検出された(図6)。単離されたVH領域およびVL領域遺伝子は、開始コドン(ATG)の5'末端側に非翻訳領域を有し、その下流に順にFR1、相補性決定領域CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4、およびCH1の一部をコードしていた(図示せず)。
決定されたDNA配列からアミノ酸配列に変換することにより、抗体HYB4、抗体D2、および抗体D4のVH領域およびVL領域を含むタンパク質の一次構造を明らかにした(図7,8)。図7に抗体HYB4、抗体D2、および抗体D4のVH領域のアミノ酸配列、図8にVL領域のアミノ酸配列alignmentの結果を示した。抗体と抗原が結合する際、VH領域およびVL領域に存在する3箇所のCDRが抗原認識に直接かかわる領域であることが分かっている(Wels, J.A., Word, C.J., Rimm, D., Der-Balan, G.P., Martinez, H.M., Tucker, P.W., Blattner, F.R. 1984. Structural analysis of the murine IgG3 constant region gene. EMBO J. 3, 2041-2046.および Svasti, J., Milstein, C. 1972. The Complete Amino Acid Sequence of a Mouse x Light Chain. Biochem. J. 128, 427-444.参照)。
抗体HYB4、抗体D2、および抗体D4の結合特性の解析結果から、抗体D2は抗体HYB4や抗体D4に比べて抗原糖鎖構造により特異的な認識性を有していることが明らかとなった。抗体HYB4と抗体D2のVH領域では97%、VL領域では99%のアミノ酸相同性を有していた。したがって、抗体D2の示すより高い糖鎖特異性はそのVH領域の3カ所のCDR領域のアミノ酸によることが容易に推察される。抗体HYB4のCDR2に存在する79番目のアミノ酸であるIle、およびCDR3に存在する122番目のPhe、125番目のValが、それぞれD2ではThr79、Tyr122、Ala125に置換されている。Val125→Ala125は同義置換であること、Ile79→Thr79およびPhe122→Tyr122はいずれもアミノ酸側鎖に水酸基が導入される置換であり、この2箇所で親水性が高くなっている。このことが抗原糖鎖のより内部に位置する糖との相互作用を生じさせていると考えられる。糖鎖の結合しているアグリコンとしてのタンパク質と脂質の識別について、VH領域のCDRにおける3カ所の置換に加えて、VH領域のFR1におけるAla42→Gly42の置換が関与している可能性がある。
本発明において解析した3種類の抗体HYB4、抗体D2、および抗体D4はすべて非還元糖鎖末端構造としてSiaα2-3Gal残基を認識するにもかかわらず、抗体D4のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列は、抗体HYB4とはそれぞれ51%および63%の相同性を、抗体D2とはそれぞれ50%および64%の相同性を有するのみであった。CDRのアミノ酸配列から、VH領域のCDR1におけるD-X-Y-M-D/E、CDR2における(X)8〜10-I/T-X-Y-(X)4-K-G、CDR3におけるV/I-X-X-R-G/A-X-X-D-Y[Xは任意のアミノ酸]、およびVL領域のCDR1におけるK/R-X-S-X-S-I/L-(X)2〜8-Y-L、CDR2におけるX-G/A-S-T-X-X-S、CDR3におけるQ-Q-(X)3-Y-P-X-T[Xは任意のアミノ酸]がSiaα2-3Gal残基を認識するためのコンセンサスアミノ酸配列であると考えられる。他方、抗体D4は他の2つの抗体に比べてSiaα2-3Galを含む糖鎖に対する結合性が高いことから、Siaα2-3Gal残基認識にかかわるCDRコンセンサス配列中の抗体D4に特徴的なアミノ酸配列の置換により糖鎖に対する結合性が高くなることが示唆された。
以上、本発明で得られた知見は、がん性変化に伴い糖鎖末端構造が変化するSiaα2-3Gal含有糖鎖に対する特異的かつ高親和性抗Siaα2-3抗体の創出につながるとともに病態形成機構の解明、疾患マーカーによるがんなどの確定診断などの臨床研究などへ応用されることが期待される。
また、抗体HYB4、抗体D2、および抗体D4のコンセンサスアミノ酸配列を明らかにすることにより、抗体結合性を増大させるようなCDR遺伝子配列の人工的改変、さらにはより安定なIgG1サブクラス抗体への改変が可能となる。これらの人工改変抗体を用いることで、前立腺癌により高い特異性をもつ検出診断法医が確立できる。前立腺癌の急激な増加および早期発見の必要性など臨床現場でのニーズとも合致することから、前立腺癌診断用ツールとして極めて高い有用性が期待される。

Claims (4)

  1. Siaα2-3Galβ1-4GlcNAcを認識するとともに、
    VH領域において、CDR1にD-L-Y-M-E、CDR2にA-S-R-N-K-A-N-D-Y-R-T-E-Y-S-A-S-V-K-G、および、CDR3にV-Y-Y-R-G-A-M-D-Yのアミノ酸配列を有し、
    VL領域において、CDR1にR-A-S-K-S-I-S-K-Y-L、CDR2にS-G-S-T-L-Q-S、および、CDR3にQ-Q-H-N-E-Y-P-L-Tのアミノ酸配列を有する単クローン抗体。
  2. Siaα2-3Gal残基を認識するとともに、
    VH領域において、CDR1にD-Y-Y-M-D、CDR2にY-I-Y-P-N-N-G-G-I-S-Y-N-Q-N-F-K-G、および、CDR3にI-G-T-R-A-Y-F-D-Yのアミノ酸配列を有し、
    VL領域において、CDR1にK-S-S-Q-S-L-L-Y-S-R-N-Q-K-N-Y-L、CDR2にW-A-S-T-R-D-S、および、CDR3にQ-Q-Y-Y-S-Y-P-Y-Tのアミノ酸配列を有する単クローン抗体。
  3. 配列番号1のアミノ酸配列からなるVH領域および配列番号2のアミノ酸配列からなるVL領域を有する抗体をコードする遺伝子。
  4. 配列番号3のアミノ酸配列からなるVH領域および配列番号4のアミノ酸配列からなるVL領域を有する抗体をコードする遺伝子。
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